(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、製薬分野において、錠剤を大量生産できる回転式粉体圧縮成形機を使用することが一般的となっている。回転式粉体圧縮成形機は、回転するテーブルに臼孔を設け、各臼孔の上下に上杵及び下杵を上下摺動可能に保持させておき、テーブル及び杵を共に水平回転させて、上杵及び下杵が上ロール及び下ロールの間を通過する際に臼孔内に充填された粉体を圧縮成形するものである(例えば、下記特許文献2ないし4を参照)。
【0003】
研究開発段階でも、小型の回転式粉体圧縮成形機を使用することが多い。研究開発段階では、粉体圧縮成形機の生産能力はさほど求められない。一方、二層錠、三層錠又は有核錠等の様々な種類の錠剤を製造できる汎用性、多機能性が求められる。
【0004】
しかし、回転式粉体圧縮成形機を多機能化することは、たとえ小型のものであってもコスト面で負担が大きい。
【0005】
そこで、竪型式粉体圧縮成形機における上記要求を満たす構成を検討した。
【0006】
下記特許文献1では、二層構造の成形品を製造する際、第一粉末供給部がダイ上に移動して第一層を構成する粉末をダイ内に供給した後、ダイ上から移動する。次いで、第二粉末供給部がダイ上に移動して第二層を構成する粉末をダイ内に供給し、ダイ上から移動する。そして、ダイ内の粉末を上パンチ及び下パンチを以て圧縮成形することが開示されている。
【0007】
しかし、当該特許文献1において開示されているものでは、第一粉末供給部がテーブル上に残した粉末と、第二粉末供給部がテーブル上に残した粉末とが混ざり合いコンタミネーションが発生する。
【0008】
下記特許文献2では、三層錠剤を製造する回転式粉末圧縮成型機において、例えばその一層目の部分のみを圧縮成型したものを通常の成型品取り出し位置からサンプリングとして取り出すために、二層目及び三層目の粉末を臼孔内に供給した後、当該粉末が圧縮成型される前に当該粉末を臼孔内から集塵器により吸引除去することが開示されている。
【0009】
しかし、当該特許文献2において開示されているものは、臼孔に一旦投入された粉末を圧縮成型される前に臼孔内から吸引除去するというものであるため、回転盤面上に残留する不用粉末を除去してコンタミネーションを防止できない。
【0010】
次に、下記特許文献3では、回転式粉体圧縮成形機の回転テーブル上に残存する不用粉体を除去する方法が開示されている。具体的には、洗浄用粉体をテーブル上に供給し、洗浄装置の攪拌翼により洗浄用粉体を攪拌して回転盤面を洗浄して、その洗浄用粉体と共に不用粉体を集塵機構により除去するということが開示されている。
【0011】
しかし、特許文献3記載の洗浄装置は、完成した成形品を臼孔から取り出した後に回転盤面を洗浄するものであり、成形品の製造過程の途中、即ち第一のフィーダーによる第一層の粉体の充填後、第二のフィーダーによる第二層の粉体の充填前に回転盤面上を洗浄するものではない。そのため、コンタミネーションを防止できない。
【0012】
下記特許文献4では、成型品の中に核(内核、核錠)を埋設した有核錠を製造するための回転式粉末圧縮成型装置が開示されている。具体的には、回転盤の回転に同期するように核供給機の転送円盤をサーボモータにより回転させ、転送円盤から回転盤の臼孔内に核錠を供給するものである。
【0013】
しかし、竪型式粉体圧縮成形機においては、回転盤を用いないため、臼孔を有する回転盤と各臼孔に核を供給する転送円盤との間で同期をとる必要がない。そのため、特許文献4記載の機構を竪型式粉体圧縮成形機に適用できない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の粉体圧縮成形機は、二層錠、三層錠又は有核錠等の圧縮成形品を製造可能な竪型式粉体圧縮成形機であり、主として研究開発現場に提供される。
【0028】
図1ないし
図5に示すように、本実施形態の粉体圧縮成形機は、粉体が充填される臼孔12が設けられたテーブル1と、臼孔12の下方に配置され臼孔12内に充填された粉体を圧縮する下杵6と、下杵6に対向するように臼孔12の上方に配置され下杵6とともに臼孔12内に充填された粉体を圧縮する上杵7と、臼孔12内に粉体を充填する充填装置(フィードシュー)2A、2B、2Cと、テーブル1の上面の集塵を行う集塵器3とを主要な構成要素とする。
【0029】
テーブル1には臼設置部13が存在しており、その内に臼11を装着する。臼11は、上下に貫通した臼孔12を有する、TSM国際規格又はEU規格に準拠した金型である。この臼11は、本粉体圧縮成形機を用いて開発された圧縮成形品を量産するために用いられる、回転式粉体圧縮成形機に適用されるものと共通である。なお、臼11を使用せず、テーブル1自体に上下に貫通した臼孔12を穿ち設けてもよい。
【0030】
下杵6は、その上端部(杵先)が臼孔12に挿入されて当該臼孔12に対し摺動可能であるように、下杵保持部4に保持される。下杵6の上端部は、常時臼孔12に挿入してある。下杵6は、サーボモータ等の駆動源(図示せず)により、上下に進退動作する。
【0031】
上杵7は、その下端部(杵先)が臼孔12に挿入されて当該臼孔12に対し摺動可能であるように、上杵保持部5に保持される。上杵7の下端部は、臼孔12に対して出入りする。上杵7もまた、サーボモータ等の駆動源(図示せず)により、上下に進退動作する。
【0032】
下杵6及び上杵7もまた、臼と同様、TSM国際規格又はEU規格に準拠した金型である。また、下杵6及び上杵7は、回転式粉体圧縮成形機に適用されるものと共通である。
【0033】
ホッパ22の上方部位は漏斗状に上方に向けて拡開している。下杵6及び上杵7により圧縮成形される粉体をホッパ22に投入することにより、当該粉体がそれぞれの充填装置2A、2B及び2Cに供給される。
【0034】
充填装置2A、2B、2Cは、テーブル1の上面に対して摺動し粉体を臼孔12に充填する。充填装置2A、2B、2Cは、内径が臼孔12よりも十分大きく上下に貫通した充填部211と、擦り切り板212とを有する板状体である。
【0035】
充填装置2A、2B、2Cは、サーボモータ等の駆動源(図示せず)により、臼孔12に粉体を充填する充填位置(
図4に示す位置)と、ホッパ22から充填部211に粉体が供給される供給位置(
図2、
図3及び
図5に示す位置)との間で往復動作する。充填位置にあるとき、充填装置2A、2B、2Cは、テーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域に覆い被さる。同時に、その充填部211が臼孔12の直上に位置付けられ、充填部211内の粉体が臼孔12内に充填される。
【0036】
翻って、供給位置にあるとき、充填装置2A、2B、2Cは、テーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域から移動する。同時に、その充填部211がホッパ22の直下に位置付けられ、ホッパ22に貯留されている粉体を受け入れる。
【0037】
また、擦り切り板212は、充填部211から臼孔12への粉体の注入の後、下杵6の上昇によって臼孔12から溢れ出した粉体を擦り切り、臼孔12上から除去する。
【0038】
図1に示しているように、本実施形態では、充填装置2A、2B、2Cを備えており、各充填装置2A、2B、2Cが臼孔12から見て相異なる三方から臼孔12に対して進退し、臼孔12に粉体を充填する。各充填装置2A、2B、2Cの構造及び機構は共通しており、上述した通りのものである。各充填装置2A、2B、2Cのホッパ22には、互いに別種の粉体を投入することもできるし、同種の粉体を投入することもできる。
【0039】
集塵器3は、上杵7に連動して上下動する駆動体31と、駆動体31を介して上杵7に連動して上下動しテーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域に覆い被さる集塵ケース32と、集塵ケース32に接続して集塵ケース32の内部を減圧する吸引ダクト33とを要素とする。
【0040】
本実施形態において、駆動体31は、上杵7と平行に上下方向に伸長したシャフト状をなしており、上杵7と同じ保持部5に保持される。駆動体31の上端部は、上杵7の上端部と同じくサーボモータ等の駆動源に連結しており、上杵7とともに上下に進退動作する。但し、上杵7と異なり、駆動体31は、駆動源に対し相対的に上下方向に沿ってある程度の範囲内で変位することが可能である。
【0041】
集塵ケース32は、上壁321と、上壁321の周縁部より垂下する側壁322とが内部空間323を包囲する、下方に開口した薄い箱状をなす。上壁321における、臼孔12の直上の部位には、上下に貫通して上杵7が挿通される杵挿通孔324が穿たれている。また、上壁321における、駆動体31の直下の部位には、駆動体31の下端部が係合する係合孔325が形成されている。
【0042】
集塵ケース32の上壁321の上面と、上杵保持部5の下面とは、上下方向に対向している。その上で、集塵ケース32と上杵保持部5との間には、弾性付勢力を発揮する付勢部材34が設けられる。付勢部材34は、集塵の際に集塵ケース32をテーブル1の上面に押し付けて密着させる役割を担う。本実施形態では、付勢部材として弾性変形可能な圧縮コイルばね34を、駆動体31に巻き回すようにして装着している。
【0043】
集塵ケース32は、
図5に示す集塵位置と、
図2ないし
図4に示す退避位置との間で上下往復動作する。集塵位置にあるとき、集塵ケース32の上壁321及び側壁322が、テーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域を囲繞して、当該領域を他の領域から隔絶する。上杵7の下端部が臼孔12内に挿入されて臼孔12内の粉体を圧縮するとき、当該上杵7のテーブル1及び臼孔12に対する上下方向の変位量の多寡に応じて、駆動体31が駆動源及び上杵7に連動して上方に変位する。その際、上杵保持部5の下面と集塵ケース32の上面との間に介在する圧縮コイルばね34が適度に伸長し、集塵ケース32に無理な力を加えることなく当該集塵ケース32をテーブル1の上面に押し付ける。
【0044】
翻って、退避位置にあるとき、集塵ケース32は、テーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域から浮上し、当該領域を開放する。上杵保持部5の下面と集塵ケース32の上面との離間距離が小さくなることから、圧縮コイルばね34は圧縮される。
【0045】
吸引ダクト33は、集塵ケース32の基端部に連接するとともに、臼孔12から見て各充填装置2A、2B、2Cが進退する方向とは異なる方向に向けて伸長している。吸引ダクト33の内部は、集塵ケース32の内部空間323に連通する。この吸引ダクト33は、吸引力を発生させるエジェクタ(噴射ポンプ。図示せず)に接続している。エジェクタは、その吸引力により吸引ダクト33及び集塵ケース32の内部空間323を減圧し、集塵ケース32の内部空間323に面したテーブル1上に存在する粉体を吸引除去するために働く。エジェクタによる吸引力の発生のタイミング及びその吸引力の大きさは、集塵ケース32とエジェクタとの間の流路上に介在する電磁弁(図示せず)の操作を通じて制御可能である。
【0046】
本竪型式粉体圧縮成形機を用いて二層錠を製造する方法の具体的手順を述べる。
【0047】
成形品の製造過程の当初において、各充填装置2A、2B、2Cはそれぞれの供給位置にある。また、上杵7及び駆動体31は降下しておらず、上杵7の下端部は臼孔12に挿入されていない。集塵ケース32は退避位置にある。
【0048】
まず、供給位置の充填装置2Aの充填部211にホッパ22から粉体が供給される。そして充填装置2Aが供給位置から充填位置へと移動し、充填装置2Aの充填部211における粉体を臼孔12内に充填する第一の充填工程が行われる。このとき充填装置2Aは、他の充填装置2B、2Cや上杵7、並びに集塵ケース32とは干渉しない。
【0049】
第一の充填工程の後、充填装置2Aは充填位置から供給位置へと移動するが、その際に充填装置2Aの擦り切り板212が臼孔12の上縁から溢れる粉体を擦り切る。
【0050】
次に、上杵7が下降してその下端部が臼孔12内に挿入され、上杵7の下端部と下杵6の上端部とで臼孔12内の粉体を圧縮(仮圧縮)する第一の圧縮行程が行われる。第一の圧縮行程により、二層錠の第一層(下層)が成形される。
【0051】
さらに、上杵7の下降と連動して、駆動体31、駆動体31が係合する集塵ケース32、及び集塵ケース32に接続する吸引ダクト33が下降し、集塵ケース32が集塵位置へと位置付けられる。このとき、上杵7、駆動体31及び集塵ケース32は、各充填装置2A、2B、2Cとは干渉しない。集塵位置にある集塵ケース32の側壁322の下端面は、テーブル1の上面に密接する。その上で、エジェクタにより吸引力を発生させ、集塵ケース32の内部空間323を減圧して、テーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域に残留する粉体を吸引する集塵工程が行われる。この集塵工程による集塵は、第一の圧縮行程による粉体の圧縮と同時に並行して行われる。これにより圧縮成形品の製造工程が短縮化される。
【0052】
第一の圧縮行程及び集塵工程の後、上杵7、駆動体31、集塵ケース32及び吸引ダクト33が上昇し、上杵7の下端部が臼孔12から抜出されるとともに集塵ダクト33が退避位置に移動する。
【0053】
続いて、供給位置の充填装置2Bの充填部211にホッパ22から粉体が供給される。そして充填装置2Bが供給位置から充填位置へと移動し、充填装置2Bの充填部211における粉体を臼孔12内に充填する第二の充填工程が行われる。このとき、充填装置2Bは、他の充填装置2A、2Cや上杵7、並びに集塵ケース32とは干渉しない。
【0054】
第二の充填工程の後、充填装置2Bは充填位置から供給位置へと移動するが、その際に充填装置2Bの擦り切り板212が臼孔12の上縁から溢れる粉体を擦り切る。
【0055】
次に、上杵7が下降してその下端部が臼孔12内に挿入され、上杵7の下端部と下杵6の上端部とで臼孔12内の粉体を圧縮(本圧縮、又は仮圧縮及び本圧縮)する第二の圧縮行程が行われる。第二の圧縮行程により、二層錠の第二層(上層)が成形され、二層錠が完成する。
【0056】
図7は、三層錠を製造するための一般的な回転式粉体圧縮成形機の中心展開図である。この回転式粉体圧縮成形機の基本構成は、周知のものと同様である。
【0057】
図8は、竪型式粉体圧縮成形機における上杵7及び下杵6の高さ位置の変位の軌跡、及び両杵7、6による打錠圧力の推移を示している。
図8中、上杵7の杵先の高さ位置及び圧力を太い一点鎖線で表し、下杵6の杵先高さ位置及び圧力を太い二点鎖線で表している。
【0058】
本実施形態の竪型式粉体圧縮成形機において、上杵7及び下杵6を各々駆動するサーボモータ等の駆動源は、
図7に示した杵7、6の変位の軌跡及び打錠圧力の推移を模擬的に具現するように作動する。即ち、竪型式粉体圧縮成形機において、回転式粉体圧縮成形機と同等の打錠条件を実現する。
【0059】
さらに、上杵7の下降と連動して、駆動体31、集塵ケース32及び吸引ダクト33が下降し、集塵ケース32が集塵位置へと位置付けられる。このとき、上杵7、駆動体31及び集塵ケース32は、各充填装置2A、2B、2Cとは干渉しない。集塵位置にある集塵ケース32の側壁322の下端面は、テーブル1の上面に密接する。その上で、エジェクタにより吸引力を発生させ、集塵ケース32の内部空間323を減圧して、テーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域に残留する粉体その他の塵芥を吸引する集塵工程が行われる。この集塵工程による集塵は、第二の圧縮行程による粉体の圧縮と同時に並行して行われる。
【0060】
第二の圧縮行程及び集塵工程の後、上杵7、駆動体31、集塵ケース32及び吸引ダクト33が上昇し、上杵7の下端部が臼孔12から抜出されるとともに集塵ダクト33が退避位置に帰還する。
【0061】
最後に、下杵6を上昇させ、その上端部にて臼孔12内の圧縮成形品を臼孔12から取り出す取出工程が行われる。
【0062】
本竪型式粉体圧縮成形機を用いて三層錠を製造する場合には、二層錠の製造方法における第二の圧縮行程(仮圧縮)及び集塵工程と、成形品の取出工程との間に、以下に述べる第三の充填工程、第三の圧縮行程及び集塵工程が追加される。
【0063】
第三の充填工程では、供給位置の充填装置2Cの充填部211にホッパ22から粉体が供給される。そして充填装置2Cが供給位置から充填位置へと移動し、充填装置2Cの充填部211における粉体を臼孔12内に充填する。このとき、充填装置2Cは、他の充填装置2A、2Bや上杵7、並びに集塵ケース32とは干渉しない。
【0064】
第三の充填工程の後、充填装置2Cは充填位置から供給位置へと移動するが、その際に擦り切り板212が臼孔12の上縁から溢れる粉体を擦り切る。
【0065】
第三の圧縮行程では、上杵7が下降してその下端部が臼孔12内に挿入され、上杵7の下端部と下杵6の上端部とで臼孔12内の粉体を圧縮(本圧縮、又は仮圧縮及び本圧縮)する。第三の圧縮行程により、三層錠の第三層(最上層)が成形され、三層錠が完成する。
【0066】
下杵6及び上杵7の杵先の軌道は、
図7に示すような回転式粉体圧縮成形機における三層錠の製造のための下杵及び上杵の軌道に近似させるべく、
図8に示すような軌道にする。これにより回転式粉体圧縮成形機において圧縮成形する条件に近似できる。
【0067】
さらに、集塵工程では、上杵7の下降と連動して、駆動体31、集塵ケース32及び吸引ダクト33が下降し、集塵ケース32が集塵位置へと位置付けられる。このとき、上杵7、駆動体31及び集塵ケース32は、各充填装置2A、2B、2Cとは干渉しない。集塵位置にある集塵ケース32の側壁322の下端面は、テーブル1の上面に密接する。その上で、エジェクタにより吸引力を発生させ、集塵ケース32の内部空間323を減圧して、テーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域に残留する粉体を吸引する。この集塵工程による集塵は、第三の圧縮行程による粉体の圧縮と同時に並行して行われる。
【0068】
第二の圧縮行程及び集塵工程の後、臼孔12から圧縮成形品を取り出す取出工程が行われる。
【0069】
本実施形態では、上下に貫通した臼孔12が設けられたテーブル1と、前記臼孔12の下方に配置され上端部が臼孔12に挿入されて摺動可能である下杵6と、前記下杵6に対向するように前記臼孔12の上方に配置され下端部が臼孔12に挿入されて摺動可能である上杵7と、前記下杵6及び前記上杵7により圧縮成形される粉体を前記臼孔12内に充填する充填装置2A、2B、2Cと、前記上杵7の下端部が前記臼孔12内に挿入された状態で前記テーブル1の上面の集塵を行う集塵器3とを備える竪型式粉体圧縮成形機を構成した。
【0070】
本実施形態の圧縮成形品の製造方法は、テーブル1に設けられた臼孔12内に充填された粉体を、上端部が当該臼孔12に挿入される下杵6及び下端部が当該臼孔12に挿入される上杵7により圧縮成形して成形品を製造する方法であって、前記上杵7の下端部が前記臼孔12内に挿入された状態で前記テーブル1の上面の集塵を行う集塵工程を備える。
【0071】
本実施形態によれば、上杵7及び下杵6により臼孔12内の粉体を圧縮成形している最中にテーブル1の上面の集塵を行うようにしたため、二層錠や三層錠の各層を構成する粉体のコンタミネーションの発生を抑止しながら、一個の成形品の製造に要する時間を短縮できる。
【0072】
前記下杵6及び前記上杵7が回転式粉体圧縮成形機に使用可能な金型であるため、本実施形態の竪型式粉体圧縮成形機を用いて開発した製品を回転式粉体圧縮成形機によって量産するスケールアップが容易となる。加えて、研究開発段階で、打錠障害の有無を事前に確認可能となる。
【0073】
また、本実施形態では、上下に貫通した臼孔12が設けられたテーブル1と、前記臼孔12の下方に配置され上端部が臼孔12に挿入されて摺動可能である下杵6と、前記下杵6に対向するように前記臼孔12の上方に配置され下端部が臼孔12に挿入されて摺動可能である上杵7と、前記下杵6及び前記上杵7により圧縮成形される粉体を前記臼孔12内に充填する充填装置2A、2B、2Cと、前記テーブル1の上面の集塵を行う集塵器3とを備える粉体圧縮成形機であって、前記集塵器3が、前記上杵7に連動して上下動する駆動体31と、前記駆動体31に係合し、当該駆動体31の上下動に起因して、前記テーブル1の上面における前記臼孔12の周囲の領域に覆い被さる集塵位置と前記テーブル1の上面から上方に離間した退避位置との間で上下動する集塵ケース32と、前記集塵ケース32に接続し集塵ケース32の内部323を減圧する吸引ダクト33とを有するものである。そのため、粉体の臼孔12への充填時に集塵ケース32を退避位置に移動させて充填装置2A、2B、2Cとの干渉を避けることができる。集塵器3が臼孔12の直上に配されることで、省スペース化が実現されるだけでなく、集塵工程にてテーブル1の上面に残存する粉体を上方に吸い上げることとなり、上杵7を臼孔12に挿入した状態で臼孔12の周囲を十分に清浄化できる。
【0074】
充填装置を2以上有するため、第一層を構成する粉体を充填装置2Aに供給し、第二層を構成する粉体を充填装置2Bに供給(三層錠の場合には、さらに第三層を構成する粉体を充填装置2Cに供給)するようにして、複数の層を有する圧縮成形品を簡便に製造できる。
【0075】
本竪型式粉体圧縮成形機を用いて有核錠を製造する場合、
図6に示すように充填装置2A、2B、2Cの一つを、有核錠の内部に埋設される核(内核、核錠)を臼孔12内に供給する供給装置2Dに置換する。
【0076】
上述の竪型式粉体圧縮成形機を用いて有核錠を製造する方法の具体的手順を述べる。まず、供給位置の充填装置2Aの充填部211にホッパ22から粉体が供給される。そして充填装置2Aが供給位置から充填位置へと移動し、充填装置2Aの充填部211における粉体を臼孔12内に充填する第一の充填工程が行われる。
【0077】
第一の充填工程の後、充填装置2Aは充填位置から供給位置へと移動するが、その際に擦り切り板212が臼孔12の上縁から溢れる粉体を擦り切って除去する。
【0078】
次に、上杵7が下降してその下端部が臼孔12内に挿入され、上杵7の下端部と下杵6の上端部とで臼孔12内の粉体を圧縮(仮圧縮)する第一の圧縮行程が行われる。なお、この圧縮行程は必須ではなく、上杵7を臼孔12内に挿入するものの粉体を殆ど又は全く圧縮しなくてもよい。
【0079】
さらに、上杵7の下降と連動して、駆動体31、駆動体31が係合する集塵ケース32、及び集塵ケース32に接続する吸引ダクト33が下降し、集塵ケース32が集塵位置へと位置付けられる。集塵位置にある集塵ケース32の側壁322の下端面は、テーブル1の上面に密接する。その上で、エジェクタにより吸引力を発生させ、集塵ケース32の内部空間323を減圧して、テーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域に残留する粉体を吸引する集塵工程が行われる。
【0080】
第一の圧縮行程及び集塵工程の後、上杵7、駆動体31、集塵ケース32及び吸引ダクト33が上昇し、上杵7の下端部が臼孔12から抜出されるとともに集塵ダクト33が退避位置に移動する。
【0081】
続いて、供給位置の供給装置2Dにパーツフィーダ24から核が供給される。そして供給装置2Dが供給位置から核供給位置(充填位置)へと移動し、供給装置2Dの核を臼孔12内に供給する核供給工程が行われる。
【0082】
並びに、供給位置の充填装置2Aの充填部211にホッパ22から粉体が供給される。そして充填装置2Bが供給位置から充填位置へと移動し、充填装置2B充填部211における粉体を臼孔12内に充填する第二の充填工程が行われる。第二の充填工程により、先に臼孔12内に供給された核が粉体により被覆される。
【0083】
第二の充填工程の後、供給部23は充填位置から供給位置へと移動する。
【0084】
次に、上杵7が下降してその下端部が臼孔12内に挿入され、上杵7の下端部と下杵6の上端部とで臼孔12内の粉体を圧縮(本圧縮、又は仮圧縮及び本圧縮)する第二の圧縮行程が行われる。第二の圧縮行程により、有核錠が完成する。
【0085】
さらに、上杵7の下降と連動して、駆動体31、集塵ケース32及び吸引ダクト33が下降し、集塵ケース32が集塵位置へと位置付けられる。集塵位置にある集塵ケース32の側壁322の下端面は、テーブル1の上面に密接する。その上で、エジェクタにより吸引力を発生させ、集塵ケース32の内部空間323を減圧して、テーブル1の上面における臼孔12の周囲の領域に残留する粉体を吸引する集塵工程が行われる。この集塵工程による集塵は、第二の圧縮行程による粉体の圧縮と同時に並行して行われる。
【0086】
第二の圧縮行程及び集塵工程の後、上杵7、駆動体31、集塵ケース32及び吸引ダクト33が上昇し、上杵7の下端部が臼孔12から抜出されるとともに集塵ダクト33が退避位置に移動する。
【0087】
最後に、下杵6を上昇させ、その上端部にて臼孔12内の圧縮成形品を臼孔12から取り出す取出工程が行われる。
【0088】
なお、本発明は以上に詳述した各実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、集塵ケース32を上下方向に駆動していたが、充填装置2A、2B若しくは2C又は供給装置2Dと同様に、集塵ケース32をテーブル1の上面に沿って摺動するものとしても構わない。
【0089】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形ができる。