特許第6266375号(P6266375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266375
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20180115BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20180115BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   H01M2/06 K
   H01G11/78
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-28600(P2014-28600)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-153694(P2015-153694A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】田中 和美
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−325925(JP,A)
【文献】 特開2005−018990(JP,A)
【文献】 特開2000−048781(JP,A)
【文献】 特開2009−224147(JP,A)
【文献】 特開2008−041494(JP,A)
【文献】 特開2012−033563(JP,A)
【文献】 特開2002−324524(JP,A)
【文献】 特開2004−006226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01M 2/06
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有し、1対の電極端子を有する電極体と、
シートを重ね合わせて平面視矩形状に形成され、前記電極体を収納する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記シートの間に前記電極体を収納した収納部と、
前記収納部の周囲において重ね合わせられた前記シート同士が熱融着されてなる周縁部と、
を有し、
前記周縁部のうち、前記電極端子が引き出されていない少なくとも一つの辺の周縁部の端部が前記周縁部上で前記収納部方向に折り返され、さらに再熱融着され前記端部が絶縁テープで被覆されることにより折り返し部形成され
前記折り返し部は、前記収納部の厚みより薄くなっており、
前記収納部は、前記電極体から見て外側の方向に凸部を有し、
前記折り返し部は前記凸部側に折り返されることを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記電極端子が引き出されていない前記周縁部の隣り合う辺が交差する箇所に切り欠き部設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記収納部の厚さが3mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、電気化学セルは、各種デバイスの電源などに利用されている。電気化学セルの1つの形態として、例えば下記特許文献1および特許文献2のようなラミネートフィルム外装体からなる電池が提案されている。
【0003】
特許文献1においては、外装体の周縁部を折り返し、接着テープ貼り付けることにより、電池本体の外形寸法を小さくしている。また、特許文献2においては、接着性を有する絶縁テープを用いてラミネートフィルム端面を保護することで、ラミネートフィルム端面に露出した金属箔が電池負極と短絡して腐食を起こす現象を防止している。
【0004】
さらに、図7を用いて従来例の概要を説明する。図7は、従来例の薄型の電気化学セルの概略図であり、(a)は平面図、(b)は、第1直線25での断面図である。
従来例では、図7に示す電極体11の一対の側辺に近接する外装体21の周縁部29がある。周縁部29のラミネートフィルム端面に露出した金属箔を被覆するために、2枚の絶縁テープ41が貼り付けられている。絶縁テープ41は、断面図(b)に示すようにコの字形に貼られていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−250516号公報
【特許文献2】特開2005−197218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような電気化学セルは、近年、電気化学セルを搭載する機器の薄型化により、より薄型の電気化学セルの要望が高まっているが、図7に示す周縁部の構造となっているため、面積的に小さく出来ない。
【0007】
周縁部自体の面積を小さくすると、封止性が低下し、電気化学セル内への水分進入などにより性能が劣化することがある。そのため、周縁部の幅として3mm程度確保する必要がある。また、周縁部を図7の厚み方向に折り曲げる方法があるが、電極体を収納した収納部における厚さが3mm以下の電気化学セルの場合、セルの厚さ以上に折り返した周縁部が飛び出すことになり、外形寸法を薄型とすることが出来ないという課題があった。
そこで本発明は、薄型構造が容易な電気化学セルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の電気化学セルは、正極および負極を有し、1対の電極端子を有する電極体と、シートを重ね合わせて形成され、前記電極体を収納する外装体と、を備え、前記外装体は、前記シートの間に前記電極体を収納した収納部と、前記収納部の周囲において前記シートの3辺を密着させた周縁部と、を有し、前記周縁部の少なくとも一部は、前記周縁部上で前記収納部方向に折り返されて折り返し部を形成し、 前記折り返し部は、前記収納部の厚みより薄くなっており、前記収納部は、前記電極体から見て外側の方向に凸部を有し、前記折り返し部は前記凸部側に折り返されることを特徴とする。
この構成によれば、周縁部は、収納部方向に折り返されるため、電気化学セルの面積および外形寸法は小さくなる。また、折り返し部を特に凸部側に折り返し収納部より薄くすれば、折り返し部の厚みにより電気化学セルの厚みが増すことが無いため、結果として、薄型の電気化学セルを提供できる。
【0009】
さらに本発明の電気化学セルは、前記周縁部のうち、前記電極端子を出していない2辺の前記周縁部が交差する箇所に切り欠き部を設けることを特徴とする。
この構成によれば、当該箇所のみ、シートが過剰に重なることがなく、薄型構造を確保できるため、結果として、薄型の電気化学セルを提供できる。
【0010】
さらに本発明の電気化学セルは、前記折り返し部が、再熱融着されていることを特徴とする。
この構成によれば、熱融着により硬化した樹脂層において、折り曲げにより生じた白化部が再熱融着により再融解するため、白化部の微小なクラックが解消される。そのため、樹脂層の微小なクラックをパスとする外部からの水分の侵入や、電解液の漏れなどを抑制できる。また、樹脂層の微小なクラックをパスとして金属箔が電解液と接触することにより生じる合金化反応を抑制できる。したがって、耐久性の高い電気化学セルを得ることができる。また、再熱融着時の加圧により、再融解した樹脂部がつぶれ、折り返し部の厚さを薄く出来るため、結果として、薄型の電気化学セルを提供できる。
【0011】
さらに本発明の電気化学セルは、前記周縁部はシートの金属箔が露出した最端部を有し、前記最端部は絶縁テープで被覆されていることを特徴とする。
この構成によれば、最端部が被覆され、他の導電部との短絡をよりなくすことができる。また、折り返し部の開きを抑える役割も果たすため、電気化学セルを薄型に保つことも可能であるため、結果として、薄型の電気化学セルを提供できる。
【0012】
さらに本発明の電気化学セルは、前記収納部の厚さが3mm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、封止性を確保しつつ、薄型の電気化学セルを提供することできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気化学セルによれば、周縁部は、電極体側に折り返されるため、電気化学セルの面積は小さくなる。また、周縁部の端部を電極体にかからない位置とすれば、収納部の高さより高くなることがなく、結果として、薄型の電気化学セルを提供できる。また、周縁部の端部となるラミネートフィルム端面に金属箔が露出しない状態とすることもできるため、信頼性の高い電気化学セルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の電気化学セルの概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図2】第1実施形態の電気化学セルの概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図3】第2実施形態の電気化学セルの概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は、周縁部を折り返す前の平面図である。
図4】第2実施形態の電気化学セルの概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図5】第2実施形態の電気化学セルの概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図6】第3実施形態の電気化学セルの概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は、周縁部を折り返す前の平面図である。
図7】従来例の電気化学セルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で用いる図面では、わかりやすくするために便宜上、絶縁テープ、再熱融着部にハッチングを付している。
【0016】
(第1実施形態)
最初に、第1実施形態の電気化学セルについて説明する。
図1は、第1実施形態の電気化学セルの概略図である。図1において、(a)は平面図、(b)は、第一直線25で切った場合を仮定した断面図である。本実施形態は、電気化学セルとして、非水電解質二次電池110を例に挙げて説明する。
【0017】
図1に示すように、非水電解質二次電池110は、正極および負極を有する電極体11と、ラミネートフィルムなどからなる外装体のシートを重ね合わせて形成され、電極体11を収納する外装体21と、を備える。外装体21は、シートの間に電極体11を収納した収納部23と、収納部23の周囲においてシートを熱融着させた周縁部29と、を有する。
【0018】
収納部23は、前記シートのうち一方のシートを重ね合わせ方向から見て矩形状に、電極体から見て外側の方向に形成される。また、収納部23には電極体11を収納する凸部が一方に形成されていてもよい。また、シートが重ね合わされた周縁部29は、電極体11側に折り返され、折り返し部30a、折り返し部30bを構成する。この折り返し部30a及び折り返し部30bは、さらに凸部側に折り返されることが好ましい。
【0019】
電極体11は、セパレータを介して互いに積層された正極および負極を含み、正極および負極は、電解液などの非水電解質に接している。また、電極体11は、収納部23から外装体21の外部に引き出された1対の電極端子13を有する。電極端子13は、電極体11の先端辺において一定の間隔で配置され、外装体21の内部にて電極体11の正極および負極とそれぞれ電気的に接続されており、周縁部29と交差して外装体21の外部へ導出されている。
【0020】
電極体11の正極は、例えば、アルミニウムなどの金属箔の集電体に正極活物質を付着させたものである。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム、チタン酸リチウムやマンガン酸リチウムなどのように、リチウムと遷移金属とを含む複酸化物である。負極は、銅などの金属箔の集電体に負極活物質を付着させたものである。負極活物質は、例えば、シリコン酸化物、グラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム、LiAl等である。
【0021】
セパレータは、リチウムイオンを通す特性を有する。セパレータは、例えば、樹脂ポーラスフィルム、ガラス製不織布、樹脂製不織布の1つ、または2以上の組み合わせを含む。この電極体11は、正極と負極の一方から他方へリチウムイオンが移動することにより、電荷を蓄積(充電)したり電荷を放出(放電)したりすることができる。
【0022】
外装体21は、電極体11の厚み方向から見た外形が概ね矩形状である。外装体21は、矩形状のシートを重ね合わせて形成されている。本実施形態では、外装体21は1枚の矩形状のシートの第1シート部と第2シート部との間を二つ折りにして、その折り目を除く3辺に沿って第1シート部と第2シート部とを熱融着することで形成されている。
【0023】
シートはラミネートフィルムであり、金属箔と、金属箔の内側面に設けられた樹脂層と、金属箔の外側面に設けられた保護層と、を有する。金属箔は、例えばアルミニウムなどの水分や酸素を遮断する金属材料を用いて形成されている。樹脂層は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、アイオノマー、エチレン‐メタクリレート共重合樹脂などの熱可塑性樹脂を用いて形成される。保護層は、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、あるいはナイロン樹脂を用いて形成される。外装体21は、樹脂層同士が接触するようにシートを重ね合わせて形成される。また、シートは、裁断などにより矩形状に形成されるため、その端部は金属箔の断面が露出した状態になっている。
【0024】
図1に示すように、外装体21は、シートの間に電極体11を収納した収納部23を有する。
収納部23は、シートの重ね合わせ方向から見て矩形状に形成され、電極体11の一つの辺がシートの折り目(図1においては、外装体11の周縁部29のない部分)に略一致するように配置されている。
【0025】
収納部23は、プレス成形等により、電極体11を収容するための凸部を形成されることが好ましい。だが、電極体が、比較的薄い場合は、必ずしもプレス成形する必要はない。重ねあわせたシートの1面にたわみを持たせ、もう一面に張力を持たせたまま熱融着する等して、片面に平面部、もう片面に凸部を形成してもよい。なお、片面が完全な平面にならなかった場合は、周縁部29からの凸が大きいほうを凸部として扱う。
【0026】
図1に示すように、外装体21は、収納部23の周囲においてシートを重ね合わせた周縁部29を有する。
周縁部29は、電極端子13が引き出される第1辺と、第1辺と交差する第2辺、さらに、第2辺と交差する第3辺と、を有する。また、周縁部29は、収納部23の周囲を密封するようにシートが熱融着された状態となっており、重ね合わせたシートの樹脂層同士を融点程度まで加熱することで形成される。熱融着は、ヒーターにより過熱された加熱プレスにて行われる。本実施形態では、まず、外装体21を平板状のステージ部材に載置し、ステージ部材と所定の温度に加熱したヒーターとで外装体21の周縁部29を挟み込んで、第1辺と対向する第3辺を熱融着する。こうすることで、周縁部29の第2辺を開口とする袋状の外装体21を形成する。そして、この開口からシートの内側に電解液を注入した後に、熱融着していない周縁部29の第2辺を熱融着することで、収納部23を密封する。なお、樹脂層が例えばポリプロピレンで形成された場合、ポリプロピレンの融点は一般に120度から140度であるため、ヒーターの温度は150度程度であることが望ましい。
【0027】
次に、図1(a)に示すように、周縁部29の第3辺を中間部から折り返し、折り返し部30bを形成する。さらに周縁部29の第2辺を中間部から折り返し、折り返し部30aを形成する。
【0028】
図1(b)に示すように、折り返し部30aを周縁部29上に設け、収納部23の手前にすることにより、折り返し部30aが収納部23に乗り上げて電気化学セル110の厚さを増加させることはなくなる。
これらの構成により、外装体21の面積を小さくすることができる効果がある。
【0029】
周縁部29の端部の折り返す前は、シートの金属箔が露出した状態であり他の導電部との短絡の危険があった。しかし、本実施例に示すように折り返し部を形成することにより、他の導電部との短絡の確率を下げることが出来る。
【0030】
また、図2は周縁部に絶縁テープを貼った場合を示した第1実施形態の電気化学セルの概略図である。図2において、(a)は平面図、(b)は、第一直線25で切った場合を仮定した断面図である。図2(a)に示すように、折り返された周縁部29の端部である折り返し部30a、折り返し部30bは、絶縁テープ41で被覆されてもよい。これにより、周縁部29の第2辺、第3辺の端部のシートの金属箔が露出した部分(最端部)が被覆され、他の導電部との短絡をよりなくすことができる。また、折り返し部の開きを抑える役割も果たすため、電気化学セルを薄型に保つことも可能である。
この絶縁テープ41は、電気絶縁性に優れ、高強度を有する点で、例えばポリイミドテープが好適である。
【0031】
このように、本実施形態の非水電解質二次電池110は、正極および負極を有する電極体11と、シートを重ね合わせて形成され、電極体11を収納する外装体21と、を備える。外装体21は、シートの間に電極体11を収納した収納部23と、収納部23の周囲においてシートを密着させた周縁部29と、を有する。周縁部29の少なくとも一部は、収納部23方向へ折り返されており、必要に応じ絶縁テープ41で被覆されている、ことを特徴とする。
本実施形態によれば、電気化学セル110の面積を小さくでき、外部との短絡を防止することができるため、小形で、高信頼性の非水電解質二次電池を得ることができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に第2実施形態の電気化学セルについて説明する。
図3図4及び図5は、第2実施形態の電気化学セルの概略図である。図3において、(a)は平面図、(b)は、第一直線25で切った場合を仮定した断面図、(c)は周縁部を折り返す前の平面図である。図4は、周縁部に絶縁テープを貼った場合を示しており、(a)は平面図、(b)は、第一直線25で切った場合を仮定した断面図である。図5は、周縁部を加熱し、再溶着部を形成した場合の概略図であり、(a)は平面図、(b)は、第一直線25で切った場合を仮定した断面図である。
【0033】
第2実施形態の電気化学セルは、図3(c)に示したように、折り返す前の周縁部に切り欠きを設けた点、図5に示したように折り返し部を再加熱した点が、第1実施形態と異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0034】
まず、図3(c)に周縁部29を折り返す前の平面図を示した。周縁部の図中、右下となる周縁部の交差部に切り欠き部32を設けた。第1折り返し線27a、27bから折り返すことにより、図3(a)の折り返し部30a、30bを形成した。切り欠き部32により、図3(a)の右下の部分は、折り返し部30a、30bが重ならない。そのため、当該箇所のみ、シートが過剰に重なることがなく、薄型構造を確保できた。
【0035】
次に、図4(a)に示すように、折り返された周縁部29の端部を、絶縁テープ41で被覆した。これにより、周縁部29の第2辺、第3辺の端部のシートの金属箔が露出した部分は、被覆されたことになり、他の導電部との短絡をより確実になくすことができる。
【0036】
図5(a)および(b)に示すように、第一の加熱を行い、熱融着により封止した後、折り返し部30a、30bを形成し、さらにその後当該箇所に対して第二の加熱を行い、再熱溶着部44を形成した。第一の加熱で硬化した樹脂層において、折り返し部30a、30bを形成するための折り曲げにより生じた白化部が、第二の加熱による再熱融着により再融解するため、白化部の微小なクラックが解消される。そのため、樹脂層の微小なクラックをパスとする外部からの水分の侵入や、電解液の漏れなどを抑制できる。また、樹脂層の微小なクラックをパスとして金属箔が電解液と接触することにより生じる合金化反応を抑制できる。したがって、耐久性の高い電気化学セルを得ることができる。
また、第二の加熱の際、折り返し部30a、30bを挟み込み、加圧することにより、折り返し部の厚さを薄く出来る。さらに、折り返し部の形状保持にも効果がある。
【0037】
このように、本実施形態における非水電解質二次電池210は、折り返し部形成による厚さの増加や作業性の低下を改善することを特徴とする。また、折り返し部を再熱融着することにより、信頼性を向上した電気化学セルを得ることができる。
【0038】
なお、切り欠き部32の形状は特に限定されるものではなく、周縁部の図中、右下となる周縁部の交差部の重なりが、切り欠き部を設けない場合より重なり数が少なくなる形状であればよい。切り欠き部を設ける前の電気化学セルの形状を矩形とすると、図3(c)の切り欠き部32を設けるためには、周縁部の図中、右下となる周縁部の交差部を直角三角形に切り取る必要がある。この切り取る形状は、矩形としても、扇形としてもよく特に限定されるものではない、切り欠き部を設けない場合の最大4重の折り返しが、それ以下となればよい。
【0039】
(第3実施形態)
次に第3実施形態の電気化学セルについて説明する。
図6は、第3実施形態の電気化学セルの概略図であり、(a)は平面図、(b)は、第一直線25で切った場合を仮定した断面図、(c)は、周縁部を折り返す前の平面図である。図6に示す第3実施形態では、折り返し部が多重になっている点で、第1実施形態および第2実施形態とは異なっている。なお、第1実施形態および第2実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0040】
図6(c)に周縁部29を折り返す前の平面図を示した。周縁部の図中、右下となる周縁部の交差部に切り欠き部32を設けた。第2折り返し線28a、28bから折り返し、
さらに第1折り返し線27a、27bから折り返すことにより、図6(a)の折り返し部30a、30bを形成した。
【0041】
これにより、周縁部29の第2辺、第3辺の端部のシートの金属箔が露出した部分は、シート表面の保護層と近接し被覆されたことになり、他の導電部との短絡をより確実になくすことができる。そのため、絶縁テープを削減することができる。また、この場合、折り返し部の厚みは、外装体21を含めた収納部23の厚みよりも薄ければ、何重に折り返してもよい。また、周縁部29を多重に折り返ししているため、第一実施形態及び第二実施形態と比較して折り返し部がやや厚くなるため、図5で示した再溶着部を形成することは有効である。
【0042】
このように、本実施形態における非水電解質二次電池310は、折り返し部形成による厚さ増を改善することを特徴とする。また、絶縁テープを削減できるため、コスト的に優位な電気化学セルを得ることができる。
【0043】
また、シートを熱融着して封止を行う電気化学セルの場合、周縁部自体の面積を小さくすると、封止性が低下し、電気化学セル内への水分進入などにより性能が劣化することがある。そのため、周縁部の幅として3mm程度は確保する必要がある。厚さが3mm以下の電気化学セルの場合は、従来のように周縁部を厚み方向に折り曲げると、電気化学セルよりはみ出すことになり、外形寸法を薄型とすることが出来ないという課題があった。そのため、本発明は、電極体を収納した収納部における厚さが3mm以下の電気化学セルの場合に、特に有効であり、封止性を確保しつつ、薄型の電気化学セルを提供することできる。
【0044】
また、3辺の周縁部のうち少なくとも一つを折り返せば、面積削減の効果があるが、電極端子が出ていない2つを折り返せばより、面積を削減した電気化学セルが提供できるためより有効である。
【0045】
なお、この発明は上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態においては、電気化学セルの一例として、非水電解質二次電池を例に挙げて説明したが、電気二重層キャパシタや一次電池であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
110、210、310…非水電解質二次電池(電気化学セル)
11…電極体
13…電極端子
21…外装体
23…収納部
25…第1直線
27a、27b…第1折り返し線
28a、28b…第2折り返し線
29…周縁部
30a、30b…折り返し部
32…切り欠き部
41a、41b…絶縁テープ
44…再熱融着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7