(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電力系統においては、落雷等の事故による影響で発電機が脱調するのを未然に防止するための事故波及防止システムが広く用いられている。事故波及防止システムは、概略的には、オンライン事前演算型、オフライン事前演算型、事後演算型の3つに分類することができる。
【0003】
ここで、オンライン事前演算型の事故波及防止システム(以下、オンライン事前演算型システムともいう)は、事前演算部及び事後制御部を備えている。事前演算部は、事故発生前の平常時において一定周期で安定度計算を実施し、この結果に基づいて想定事故に対する制御テーブルを作成するものである。事後制御部は、事故発生時には事故条件と制御テーブルを照会することにより対応する制御を実施するものである。
【0004】
この種のオンライン事前演算型システムは、事故発生前の平常時において、実系統の電圧や潮流、遮断器入切情報などのオンライン情報を基に、想定した事故条件や系統状況などの種々の条件について安定度計算により安定判別、安定化に必要な制御量を求め、系統・事故条件との関係をテーブル化しておき、実際の事故発生時に同条件のテーブルを参照し、制御を実施する。このようなオンライン事前演算型システムは、制御テーブルを常に最新の状態に維持できるため、系統状態の変化に追随した適応性の高い制御が実現可能という利点を有している。
【0005】
一般的なオンライン事前演算型システムは、
図9に示すように、大きく分けて、系統状態観測、系統安定化演算及び系統制御実施という3つの処理がある。
【0006】
系統状態観測は、常時、電力系統の状態を監視しておき、事前状態を把握するとともに系統事故などの擾乱発生を検出して系統安定化制御のための演算を起動させる処理である。
【0007】
系統安定化演算は、演算方式に従って制御内容を決定する処理である。オンライン事前演算型システムは系統事故発生前に系統安定化演算を行う。
【0008】
系統制御実施は、実際に電源制限(電制)などの制御を実施する処理である。
【0009】
ここで、事前演算部1にあたる中央演算装置100は、オンライン情報(スーパービジョン情報、テレメータ情報)を基に作成した系統モデルを用いて周期的に安定度計算を実施して、想定事故別の電制対象情報を給電情報回線を介して中央制御装置200へ伝送する。
【0010】
事後制御部2にあたる中央制御装置200は、受信した想定事故別の電制対象情報を制御テーブルに保存する。
【0011】
事故検出端末210は、事故を検出して事故検出情報(事故点や事故様相などの情報)を中央制御装置200に伝送する。
【0012】
中央制御装置200は、制御テーブル内の電制対象情報と、伝送された事故検出情報とを基に、当該事故に対応する電制対象を選択し、制御端末装置220に転送遮断信号を出力する。
【0013】
制御端末装置220は、この転送遮断信号により対象発電機を遮断する。
【0014】
事前演算部1は、
図10に示すように、一般的には、[F1]状態推定/系統縮約(解析用モデル生成)、[F2]スクリーニング、[F3]安定度計算、[F4]安定度判定及び[F5]電制機選択、といった5種類の機能を含んでいる。
【0015】
[F1]状態推定/系統縮約(解析用モデル生成)は、オンライン事前演算型システムにおいて、脱調を防止するために必要な電制機を決定する際に(電制機選択)、安定度計算を実行するため、安定度計算に用いる解析モデルの生成を行う。状態推定は、テレメータ(TM)情報(各所線路潮流や母線電圧の計測情報)、スーパビジョン(SV)情報(遮断器入切情報)をオンラインで収集し、これらの情報を基に状態推定計算を実施して、初期系統状態を決定する。系統縮約は、外部系統から収集できるオンラインデータが限定されることや演算時間短縮の必要性などから、着目する現象に関して計算精度が維持できる範囲で外部系統を簡略化(系統縮約)した外部系統縮約モデルを生成するとともに、限られたオンラインデータで外部系統縮約モデルの各パラメータを更新する。
【0016】
[F2]スクリーニングは、オンライン事前演算型システムの性格上、さまざまな事故条件を想定して安定度判別を行う必要がある点と、これら全ての想定事故に対して安定度計算を実施するためには、相当量の計算機能力が必要となる点とを調整するための機能である。すなわち、スクリーニング機能は、簡易計算によりおおまかな安定度を把握し、明らかに安定な事故ケースについては安定度計算を省略することで、演算負荷の軽減を図るものである。システムによってはこのスクリーニング機能を有していないものも存在するが、これは最近のシステムでは計算機能力の向上によりスクリーニングの必要性が低下してきているためである。
【0017】
[F3]安定度計算は、各想定事故に対して、あるいは、スクリーニングにて不安定と判断された想定事故ケースに対して、安定度計算を実施する。オンライン事前演算型システムでは、この安定度計算がシステム全体としての所要時間の大半を占めており、前述した系統縮約やスクリーニングは安定度計算の演算負荷を減らすためのものである。なお、安定度計算の計算結果を基に次ステップ以降の安定度判別や電制機選択を行う。
【0018】
[F4]安定度判定は、安定度計算の結果を基に、脱調現象の有無、あるいは、動揺の収束/発散傾向の判定を行う。ここで不安定と判断された場合は、引き続き、電制機選択を行うことになる。判定手法はさまざま有るが、以下に判定ロジックの一例を示す。過渡安定度については、所定のシミュレーション時間内に、以下の(10)式、(11)式のいずれかが成立した場合に不安定であるとの判断を行う。
【0019】
δi(t)−δs(t)≧δ1 …(10)
δi(t)−δs(t)≧δ2 かつ ωi(t)−ωs(t)≧ω1 …(11)
ただし、δi、ωiは監視対象系統内発電機の内部位相角と角速度、δs、ωsは基準発電機の内部位相角と角速度、tは安定度計算におけるシミュレーション時間、δ1、δ2、ω1は安定度判別のためのしきい値である。
【0020】
[F5]電制機選択は、系統が不安定と判断される場合に、適切な制御対象発電機(電制発電機)を選択する。特に、多機系統において多数の発電機が脱調するようなケースは、安定度効果の高い発電機をいかにして選択するかが重要となる。電制機選択の一例として、前述した(10)式、あるいは、(11)式の判定条件により、最初に発電機が不安定と判断された時点から一定時間ΔTの間に不安定と判定された発電機群を脱調発電機群として抽出し、これらを電制候補機とする。
【0021】
事後制御部2は、
図11に示すように、一般的には、[F6]事故検出、[F7]電制対象判定、[F8]安定化制御などの制御演算を実施する機能を含んでいる。
【0022】
[F6]事故検出は、事故検出端末210において、線路保護リレーや母線保護リレーの動作情報などから実際に発生した事故点・事故様相を判定し、事故検出情報として中央制御装置200に送信する。同時に、事故発生直前の事故線路の潮流計測値も送信する。
【0023】
[F7]電制対象判定は、中央制御装置200において、受信した事故検出情報(事故点・事故様相)と制御テーブルを照合し、当該事故に対応した電制発電機を決定し、制御が必要な場合には転送遮断信号を制御端末装置220に送信する。
【0024】
[F8]安定化制御は、遮断制御として、制御端末装置220において転送遮断信号を受信したら、電力変化幅(ΔP)リレーなどの動作をフェイルセーフ条件に発電機を解列する。潮流補正制御は、中央制御装置200において、事故発生直前の事故線路の潮流計測値と事前演算部1から受信した監視対象設備の潮流情報(系統モデルの初期系統状態)を比較し、潮流計測値が初期系統状態よりも大幅に増加している場合には、本来の制御パターンに潮流補正制御用発電機を追加する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、各実施形態について図面を用いて説明する。
【0043】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態に係る事故波及防止システムの構成を示す模式図であり、
図9と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、ここでは異なる部分について主に述べる。なお、以下の各実施形態も同様にして重複した説明を省略する。
【0044】
第1の実施形態は、電力系統に発生した系統事故を検出すると、電力系統の安定化制御を実行することにより、系統事故の波及を防止する事故波及防止システムに関し、系統状態が急変し平常時の制御では不足制御になる場合にでも、系統現象に応じた制御対象を選択して不足制御を防止し、かつ、効率的に制御対象を選択するものである。具体的には
図9に示した中央演算装置100及び中央制御装置200に代えて、中央演算装置100’及び中央制御装置200’を備えている。
【0045】
ここで、中央演算装置100’は、記憶部101、状態推定/系統縮約部102、需要トレンド評価部103、静的系統急変設定部104、潮流計算部105、想定事故設定部106、スクリーニング部107、安定度計算部108、安定判定部109、制御対象選択部110及び制御テーブル情報決定/送信部111を備えている。
【0046】
記憶部101は、各部102〜111から読出/書込可能な記憶装置であり、例えば、平常系統モデル(平常時の系統モデル)、系統状態急変モデル(系統状態の急変時を考慮した系統モデル)、想定事故別の制御対象情報、各モデルの潮流情報、及び需要トレンド評価結果を記憶する。
【0047】
各部102〜111は、
図3のフローチャートに示す処理を実行する機能をもっている。
【0048】
具体的には例えば、状態推定/系統縮約部102は、電力系統のオンライン情報を基に、電力系統の平常状態を示す平常系統モデルを生成する平常系統モデル生成機能をもっている。
【0049】
需要トレンド評価部103は、状態推定/系統縮約部102により生成された一定期間分の平常系統モデルに基づき、現時点が需要増加時間領域か、あるいは、需要減少又は需要微少変化時間領域かを評価する需要トレンド評価機能をもっている。なお、需要トレンド評価部103は、必須の事項ではないので省略可能であるが、系統急変判定部203による判定の精度を向上させる観点から、設けた方が好ましい。
【0050】
静的系統急変設定部104は、状態推定/系統縮約部102により生成された平常系統モデルに対し、電力系統の急変状態を想定した急変パターンを設定することにより、系統状態急変モデルを生成する系統急変設定機能をもっている。また、オンライン情報が、電力系統の急変状態の発生要因となる設備や機器の稼働状況を含んでいる場合、系統急変設定機能は、当該オンライン情報を基に、系統状態急変モデルを生成してもよい。
【0051】
潮流計算部105は、各部102,104により生成されたモデル毎に、当該モデルを用いて、潮流計算を実行して当該モデルの初期状態を決定するとともに、系統事故として発生可能な事故地点及び事故様相で示される想定事故を起こす直前の潮流を示す事前潮流値を計算する潮流計算機能をもっている。
【0052】
想定事故設定部106は、系統事故として発生可能な事故地点及び事故様相で示される想定事故を設定する機能と、各モデル毎及び想定事故毎に、スクリーニング指標値に応じて優先順位を設定する優先順位設定機能とをもっている。
【0053】
スクリーニング部107は、各部102,104,106により生成された各モデル毎及び想定事故毎に、安定度計算よりも簡易な計算により、安定度の厳しさを表すスクリーニング指標値を算出するスクリーニング機能をもっている。
【0054】
安定度計算部108は、各部102,104により生成されたモデル毎に、当該モデルを用いて安定度計算を実行することにより、想定事故に対する安定化制御量を求める安定度計算機能をもっている。ここで、安定度計算機能は、優先順位に従って安定度計算を実行する一方、優先順位が低い方のモデル及び想定事故に対しては、優先順位が高い方の当該モデルの同一想定事故に対して求めた安定化制御量を基に、安定度計算を実行してもよい。
【0055】
安定判定部109は、安定度計算部108の安定度計算の実行結果を基に、監視対象系統内発電機の脱調現象の有無、あるいは動揺の収束/発散傾向を判定することにより、安定か否かを判定する機能をもっている。
【0056】
制御対象選択部110は、各部102,104により生成されたモデル毎に、想定事故に対する安定化制御量に相当する制御対象を示す制御対象情報を選択する機能と、当該選択した制御対象情報を記憶部101に書込む機能とをもっている。
【0057】
制御テーブル情報決定/送信部111は、記憶部101内の想定事故別の制御対象情報と、各モデルの潮流情報と、需要トレンド評価結果とを含む制御テーブル情報を事後制御部2’へ送信する。
【0058】
中央制御装置200’は、制御テーブル記憶部201、制御テーブル更新部202、系統急変判定部203及び制御対象判定部204を備えている。
【0059】
制御テーブル記憶部201は、各部202〜204から読出/書込可能な記憶装置であり、例えば
図2に示すように、想定事故別の制御対象情報と潮流情報を保存した制御テーブル201aを記憶している。
【0060】
制御テーブル更新部202は、中央演算装置200’から受けた制御テーブル情報を制御テーブル記憶部201内の制御テーブル201aに書込むことにより、当該制御テーブル201aを更新する機能をもっている。なお、制御テーブル情報決定/送信部111、制御テーブル記憶部201及び制御テーブル更新部202は、モデル毎に、想定事故の事故地点及び事故様相と、制御対象情報と、事前潮流値とを対応付けて制御テーブル201aに保存する保存手段を構成している。
【0061】
系統急変判定部203は、事故検出端末210により電力系統の系統事故を検出したら、当該系統事故の事故地点及び事故様相を含む事故検出情報に基づいて制御テーブル201aを検索し、当該事故検出情報内の事故地点及び事故様相に対応して当該制御テーブル201aから読出した事前潮流値と、系統事故を検出する直前の潮流計測値とから電力系統の状態が急変したか否かを判定するとともに、現状の系統状態が生成されたどのモデルに相当するかを識別する急変判定機能をもっている。ここで、急変判定機能は、需要トレンド評価部103による評価の結果、現時点が需要増加時間領域の場合、当該需要時間領域の需要変動(日負荷変動曲線に沿った需要変動)による潮流増加分を除去して、急変したか否かの判定を実行してもよい。
【0062】
制御対象判定部204は、系統急変判定部203による判定結果と、事故検出端末210から受けた事故検出情報と、制御テーブル記憶部201内の制御テーブル201aとを照合することにより、現在の系統状態と当該事故に対応する制御対象を選択する機能と、制御が必要な場合には転送遮断信号を制御端末装置220に送信する機能とをもっている。
【0063】
事故検出端末210は、前述した事故検出機能[F6]を有する事故検出部211を備えている。
【0064】
制御端末装置220は、安定化制御部221を備えている。
【0065】
安定化制御部221は、中央制御装置200’から転送遮断信号を受信したら、電力変化幅(ΔP)リレーなどの動作をフェイルセーフ条件に制御対象を安定化制御(発電機遮断、調相の開放/投入、負荷遮断など)する機能をもっている。なお、制御対象判定部204及び安定化制御部220は、急変判定部203による識別の結果と事故検出情報とを基に制御テーブル201aを検索し、当該モデルに対応した当該制御テーブルから読出した制御対象に基づいて、安定化制御を実行する安定化制御手段を構成している。
【0066】
次に、以上のように構成された事故波及防止システムの動作について
図3のフローチャート(一定周期で起動)を参照しながら説明する。
【0068】
事故波及防止システムは、事前演算部1’において、平常系統モデルと系統状態急変モデルとを生成し、モデル毎に想定事故別の安定化制御量を算出する。そして、事後制御部2’では、事故発生直前の系統状態を判定して、系統状態が急変している状態の場合は、系統状態急変モデルを用いて求めた安定化制御量を基に安定化制御を実施し、それ以外は、平常系統モデルを用いて求めた安定化制御量を基に安定化制御を実施する。
【0069】
以上が動作の概要である。続いて、このような動作を詳細に説明する。但し、ステップST1の状態推定/系統縮約の処理、ステップST5の想定事故設定の処理、ステップST6のスクリーニングの処理、ステップST10の安定度計算、ステップST11,ST12の安定判定の処理、ステップST13の制御対象選択の処理については、非特許文献1等に記載の方法と同様のため、概要のみを説明する。
【0070】
ステップST1において、事前演算部1’の状態推定/系統縮約部102では、前述した状態推定/系統縮約機能[F1]による処理を実行することにより、平常系統モデルを生成する。また、状態推定/系統縮約部102では、当該生成した一定期間分の平常系統モデルを記憶部201に保存する。
【0071】
ステップST2において、需要トレンド評価部103では、通常の需要変動(日負荷変動曲線に沿った需要変動)に基づいて、現時点が需要が増加している時間帯かどうかを過去の演算結果を用いて推定する。具体的には、過去の演算において、ステップST1で生成及び保存された一定期間分の平常系統モデルを記憶部201から読出し、当該平常系統モデルを用いて監視対象系統の需要変動の傾向を評価して、現時点が需要が増加している時間帯か、それとも、需要が低下していたり、ほとんど変化していない時間帯なのかを推定し、需要トレンド評価結果として記憶部201に保存する。
【0072】
需要変動の評価は、複数保存した過去の平常系統モデルから監視対象系統の総需要を算出し、
図4に一例を示すように、総需要と各モデルを生成した時刻との関係から評価する。例えば、トレンド判定期間Tdem内の総需要が単調増加し、変化分ΔDEMが判定しきい値ΔDEMSH以上の場合には、需要増加時間領域と推定する。すなわち、需要トレンド評価部103は、下記(1)式と(2)式が成立したとき、需要増加時間領域と推定し、成立しないときは、需要減少または需要微少変化時間領域と推定する。なお、
図4は一例であり総需要の単調増加を判定条件の1条件としたが、増加傾向を判定する条件はこの限りではない。また、判定に用いる総需要データの数やトレンド判定期間Tdemは任意に可能なものとする。
【0073】
DEM(i)>DEM(i+1) …(1)
ΔDEM≧ΔDEMSH …(2)
ここで、iは0〜トレンド判定期間内の過去の総需要データ数−1で、0が現時点を表す。
【0074】
ステップST3において、静的系統急変設定部104では、ステップST1で生成された平常系統モデルに対し、フリッカが発生する大口需要家ノードや外部系統との連系点ノードに、フリッカ、あるいは、流入電力に相当する消費電力(負荷)有効分PL、無効分QL、または、発電電力有効分PG、無効分QGを設定した系統状態急変モデルを生成する。系統状態急変モデルは一つに限る必要はなく、系統状態の急変パターン(フリッカや流入電力が発生するノード、および、消費電力・発電電力の大きさが異なる急変パターン)を複数設定しておき、複数の系統状態急変モデルを生成してもよい。
【0075】
なお、急変要因となる設備の稼働状況がオンライン情報として入手可能であれば、静的系統急変設定部104は、稼動状況に応じて系統状態急変モデルを生成する。例えば、大口需要家の操業/停止や稼動時の消費電力量、外部系統との連系設備の運転/停止や受送電電力量などのオンライン情報を用いて、設備の稼働状況を反映した系統状態急変モデルを生成する。また、生成された系統状態急変モデルは、記憶部201に保存される。
【0076】
ステップST4において、潮流計算部105では、平常系統モデルと系統状態急変モデルの各モデルで潮流計算を実施して、初期状態を決定するとともに、各モデルの潮流情報として、監視対象(事故を想定する設備)の線路や変圧器の潮流値、母線に流入する潮流値を記憶部201に保存する。
【0077】
ステップST5において、想定事故設定部106では、記憶部201内の平常系統モデル及び系統状態急変モデルに対し、事故点及び事故様相を含む想定事故ケースを設定する。
【0078】
ステップST6において、スクリーニング部107では、簡易計算に基づいて各想定事故ケースのスクリーニング指標値を算出する。
【0079】
安定/不安定を判定するためのスクリーニング指標値算出手法は、安定度の厳しさを数値化した算出手法を用いて、算出したスクリーニング指標値を保存しておく。従来の算出方法として、例えば、非特許文献1に記載の多機系統においては発電機間の減速力アンバランス量により安定度が支配されることに着目した減速力指標方式を用いてもよい。この方式は、指標値が大きいほど、安定度が厳しいことになる。
【0080】
ステップST7において、スクリーニング部107は、全ての想定事故ケースについて処理が終了したか否かを判定し、終了していなければステップST5に戻り、終了していればステップST8に進む。
【0081】
ステップST8において、スクリーニング部107は、全ての系統モデルについて処理が終了したか否かを判定し、終了していなければステップST5に戻り、終了していればステップST9に進む。
【0082】
ステップST9において、想定事故設定部106では、ステップST6で算出されたスクリーニング指標値に基づいて、安定度計算を実施する系統モデル及び想定事故ケースの優先順位を決定する。ここでは、各系統モデルの同一想定事故ケースのスクリーニング指標値を比較し、スクリーニング指標値(安定度の厳しさを示す数値)が小さい方の系統モデルを高い優先順位に決定する。なお、この優先順位に従って、安定度計算部108、安定度判定部109、制御対象選択部110の処理が実行されることになる。
【0083】
また、制御対象設備が多種に亘る場合、制御対象選択部110では、制御対象設備の種別毎に優先順位を事前設定しておく。
【0084】
ステップST10において、安定度計算部108では、ステップST9で決定された優先順位に従って、各想定事故ケースに対して、安定度計算を実施して安定化制御量を求める。
【0085】
ステップST11,ST12において、安定度判定部109では、前述した安定度判定機能[F4]の処理によって安定か否かを判定し、安定のときには計算対象とした想定事故ケースの安定化制御内容を確定しステップST14に進み、不安定のときにはステップST13に進む。
【0086】
ステップST13において、制御対象選択部110では、前述した電制機選択機能[F5]の処理を実行し、ステップST10に戻る。
【0087】
なお、制御対象選択部110では、安定度判定部109で不安定となった場合に、制御対象を選定し、動特性解析データに安定化制御シーケンスを設定する。通常は、安定化制御なしの状態からとし、不安定判定時には随時制御対象を追加する。但し、優先順位が低い系統モデルにおいて制御対象を選定する際には、先に実施した優先度が高い系統モデルの同一想定事故ケースの安定化制御量の算出結果を参照して、それと同じ安定化制御内容を出発点とする。その際、出発点となる安定化制御内容が複数の制御対象種別にわたっている場合には、制御の優先順位が最も高い設備のみ選択した状態を出発点とする。例えば、先に実施した優先順位が高い系統モデルの同一想定事故ケースの安定化制御内容が、発電機A・Bの2台、調相A・Bの2群で、制御の優先順位が発電機>調相とすれば、発電機A・Bの2台、調相制御なしを出発点とする。このようにして、優先順位が低いケースにおいて制御対象選択と安定度計算の回数を低減する。
【0088】
ステップST14において、安定判定部109は、全ての想定事故ケースについて処理が終了したか否かを判定し、終了していなければステップST9に戻り、終了していればステップST15に進む。
【0089】
ステップST15において、安定判定部109は、全ての系統モデルについて処理が終了したか否かを判定し、終了していなければステップST9に戻り、終了していればステップST16に進む。
【0090】
上記処理により、モデル毎の想定事故別の制御対象が求まる。
【0091】
ステップST16において、制御テーブル情報決定/送信部111では、系統モデル(平常系統モデル・系統状態急変モデル)を識別する識別情報と、各系統モデルの想定事故別の制御対象情報と、各系統モデルの潮流情報と、需要トレンド評価結果とを含む制御テーブル情報を事後制御部2’へ送信する。なお、各系統モデルの潮流情報は、監視対象(事故を想定する設備)の線路や変圧器の潮流値、母線に流入する潮流値、を含んでいる。需要トレンド評価結果は、現時点が需要が増加している時間帯かどうかを推定(評価)した結果を示す情報である。
【0092】
事後制御部2’では、制御テーブル更新部202が制御テーブル情報を受信し、
図2に示すように、制御テーブル情報を含む制御テーブル201aを制御テーブル記憶部201に保存する。これにより、系統モデルを識別する識別情報毎に、想定事故の事故地点及び事故様相と制御対象情報と事前潮流値とが対応付けられて制御テーブルに保存される。
【0093】
一方、事故検出部211では、監視対象の線路や変圧器、母線の事故を常時監視するとともに、線路や変圧器の潮流値、母線に流入する潮流値を常時計測して潮流計測値をメモリ(図示せず)に保存する。事故検出部211は、監視対象設備の事故を検出すると、事故地点・事故様相を判定し、保存した潮流計測値の中から事故発生直前の潮流計測値Pfaを読み出す。しかる後、事故検出部211は、事故地点・事故様相を示す事故検出情報と、事故発生直前の潮流計測値Pfaとを中央制御装置200’に送信する。
【0094】
中央制御装置200’の系統急変判定部203では、受信した事故検出情報及び潮流計測値Pfaに基づいて、事故発生時の系統状態が平常であるか、あるいは、急変した状態であるか判定する。
【0095】
具体的には系統急変判定部203では、受信した事故検出情報を基に制御テーブル201aを参照して、平常系統モデルの当該事故ケースの潮流値Pfbを読み出し、事故発生直前の潮流計測値Pfaと比較して、(3)式が成立する場合には系統状態を平常と判定し、(4)式が成立する場合には系統状態を急変した状態と判定する。
【0096】
Pfa≦Pfb+α …(3)
Pfa>Pfb+α …(4)
なお、αは、通常の需要変動(日負荷変動曲線に沿った需要変動)による潮流増加分の影響を除くための定数である。定数αは、制御テーブル201aの需要トレンド評価結果が需要増加時間領域の場合には予め設定した値とし、需要減少または需要微少変化時間領域の場合には零とする。これにより、通常の需要変動(需要増加)による潮流増加を系統急変状態と判定しないようにする。
【0097】
また、系統急変判定部203では、
図2に示した制御テーブル201aのように、複数の系統状態急変モデルで安定化制御量を求めている場合には、潮流値Pfbnが小さいモデルから順番に潮流計測値Pfaと比較し、(5)式が成立した場合には、(5)式が成立した系統条件急変モデルで想定した系統状態の急変が現在の系統で発生しているものと判定する。これにより、現在の系統状態がどの系統状態急変モデルに近いか識別する。
【0098】
Pfa≦Pfbn+α …(5)
ここで、nは系統状態急変モデルの潮流値Pfbを小さい順に整列したときの通し番号を示し、最大値は系統状態急変モデルの数となる。
【0099】
制御対象判定部204では、系統急変判定部203の判定結果が示す系統モデルの識別結果(現在の系統状態)と、受信した事故検出情報とを基に制御テーブル201aを検索し、当該系統モデルの当該事故に対応する制御対象を選択し、制御が必要な場合には転送遮断信号を制御端末装置220に送信する。
【0100】
安定化制御部221では、転送遮断信号を受信したら、電力変化幅(ΔP)リレーなどの動作をフェイルセーフ条件に制御対象を安定化制御(発電機遮断、調相の開放/投入、負荷遮断など)する。
【0101】
上述したように本実施形態によれば、事前演算部1’では、平常系統モデルと系統状態急変モデルとを生成し、モデル毎に想定事故別の安定化制御量を算出し、安定化制御量に相当する制御対象を示す制御対象情報を選択し、事後制御部2’では、事故発生直前の系統状態を判定して、急変状態の場合には、系統状態急変モデルを用いて求めた安定化制御量に相当する制御対象を示す制御対象情報を基に安定化制御を実施する構成により、系統状態が急変し平常時の制御では不足制御になる場合にでも、系統現象に応じた制御対象を選択して不足制御を防止し、かつ、効率的に制御対象を選択することができる。
【0102】
補足すると、急変した潮流状態に応じた組合せの制御対象を選択し、不足制御を防止して確実に安定化することができる。また、系統安定化演算に用いる系統モデルや想定事故ケースが増えた場合に演算負荷の低減を図ることができる。
【0103】
<第2の実施形態>
図5は第2の実施形態に係る事故波及防止システムの構成を示す模式図である。
【0104】
第2の実施形態は、事前演算部1’で実施する安定度計算において、系統事故の模擬に加えて、大口需要家フリッカなどによる需要急変や外部系統との連系設備の緊急的な制御による電力流入増加などの発生についても模擬した状態で安定度計算を実施し、安定化制御量を算出するものである。
【0105】
具体的には
図1に示した静的系統急変設定部104に代えて、
図5に示すように、動的系統急変設定部112を中央演算装置100’が備えている。
【0106】
補足すると、想定事故設定部106では、従来と同様に安定度計算部108で用いる動特性解析データに想定事故ケースの事故シーケンスの設定を行う。動的系統急変設定部112では、安定度計算部108で安定度計算に用いられる平常状態時の動特性解析データに電力系統の系統状態急変シーケンス(系統状態の急変を起こす事故シーケンス)を設定することにより、状態急変時の動特性解析データを作成する系統急変設定機能をもっている。
【0107】
具体的には、動的系統急変設定部112は、フリッカが発生する大口需要家ノードや外部系統との連系点ノードに対し、フリッカや流入電力に相当する消費電力(負荷)有効分PL、無効分QL、または、発電電力有効分PG、無効分QGが、任意のタイミングで加わるように、動特性解析データに系統状態急変シーケンスを設定する。系統状態急変の発生タイミングは、系統事故と同時か、系統事故よりも若干早く発生するように設定する。系統状態急変パターンは一つに限る必要はなく、複数設定してもよい。また、消費電力(負荷)PL、QL、発電電力PG、QGは時系列的に変化するものとして与えてもよい。
【0108】
なお、急変要因となる設備や機器の稼働状況がオンライン情報として入手可能であれば、稼動状況に応じて系統状態急変シーケンスを設定する。例えば、大口需要家の操業/停止や稼動時の消費電力量、外部系統との連系設備の運転/停止や受電電力量などのオンライン情報を用いて、設備や機器の稼働状況を反映した系統状態急変シーケンスを設定する。
【0109】
次に、以上のように構成された事故波及防止システムの動作を
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0110】
いま、ステップST1,ST2,ST4が前述同様に実行されたとする。
【0111】
ステップST5において、想定事故設定部106では、従来と同様に安定度計算部108で用いる動特性解析データに想定事故ケースの事故シーケンスを設定する。
【0112】
ステップST5−1において、動的系統急変設定部112では、安定度計算部108で用いる動特性解析データに、系統状態の急変を起こす系統状態急変シーケンスを設定する。
【0113】
ステップST6,ST7において、スクリーニング部107は、前述した動作を実行する。
【0114】
ステップST8’において、スクリーニング部107は、全ての系統状態急変シーケンスについて処理が終了したか否かを判定し、終了していなければステップST5に戻り、終了していればステップST9に進む。
【0115】
ステップST9において、想定事故設定部106では、ステップST6で算出されたスクリーニング指標値に基づいて、想定事故ケースの優先順位を決定する。なお、系統状態急変シーケンスなしの場合とありの場合の優先順位は、系統状態急変シーケンスなしの方を高くする。この優先順位に従って、安定度計算部108、安定度判定部109、制御対象選択部110の処理が実行されることになる。
【0116】
また、制御対象設備が多種に亘る場合は、想定事故設定部106は、前述同様に、制御対象設備の種別毎に選択優先順位を事前設定しておく。
【0117】
ステップST9−1において、動的系統急変設定部112では、安定度計算部108で用いる動特性解析データに、系統状態の急変を起こす系統状態急変シーケンスを設定する。
【0118】
ステップST10’において、安定度計算部108では、系統状態急変シーケンスなしの場合とありの場合の各計算パターンで、動特性解析データを用いる安定度計算を実施して、平常状態の安定化制御量と、急変が発生した状態の安定化制御量を求めるとともに、各計算パターンの潮流情報として、監視対象(事故を想定する設備)の線路や変圧器の潮流値、母線に流入する潮流値を保存する。
【0119】
ステップST11〜ST12、ST14は前述同様に実行されるが、ST13において、制御対象選択部110では、安定度判定部109で不安定となった場合に、制御対象を選定し、動特性解析データに安定化制御シーケンスを設定する。通常は、安定化制御なしの状態からとし、不安定判定時には随時制御対象を追加する。但し、優先順位が低い系統状態急変シーケンスありの場合の制御対象を選択する際には、先に実施した優先度が高い系統状態急変シーケンスなしの場合の同一想定事故ケースの安定化制御量の算出結果を参照して、それと同じ安定化制御内容を出発点とする。その際、出発点となる安定化制御内容が複数の制御対象種別にわたっている場合には、制御の優先順位が最も高い設備のみを選択した状態を出発点とする。例えば、先に実施した優先順位が高い系統状態急変シーケンスなしの場合の同一想定事故ケースの安定化制御内容が、発電機A・Bの2台、調相A・Bの2群で、制御の優先順位が発電機>調相とすれば、発電機A・Bの2台、調相制御なしを出発点とする。このようにして、優先順位が低いケースにおいて制御対象選択と安定度計算の回数を低減する。但し、優先順位に基づく順序としては、系統状態急変シーケンスなしの場合の安定化制御量を優先的に求めてから、系統状態急変シーケンスありの場合の安定化制御量を求める場合に限らず、逆にしてもよい。系統状態急変シーケンスあり時の安定化制御量を最大制御量とし、それを出発点に制御量を減らしていくようにして安定化制御量を算出してもよい。この場合、通常とは逆の順序で制御対象選択を行う。
【0120】
ステップST15’において、安定判定部109は、全ての系統状態急変シーケンスについて処理が終了したか否かを判定し、終了していなければステップST9に戻り、終了していればステップST16に進む。
【0121】
以上により、系統状態急変模擬なし、ありの各計算パターンにおける想定事故別の制御対象が求まる。
【0122】
ステップST16において、制御テーブル情報決定/送信部111では、計算パターン(系統状態急変シーケンスのパターン)を識別する識別情報と、各計算パターンの想定事故別の制御対象情報と、各計算パターンの潮流情報とを含む制御テーブル情報を事後制御部2’へ送信する。なお、潮流情報は、監視対象(事故を想定する設備)の線路や変圧器の潮流値、母線に流入する潮流値、を含んでいる。
【0123】
事後制御部2’では、制御テーブル更新部202が、制御テーブル情報を受信して制御テーブル記憶部201内の制御テーブルに保存する。これにより、系統状態急変シーケンスのパターンを識別する識別情報毎に、想定事故の事故地点及び事故様相と、制御対象情報と、事前潮流値とが対応付けて制御テーブルに保存される。
図2に示した制御テーブル201aの一例において、系統状態急変シーケンスなしの制御テーブルは平常系統モデル(系統状態急変シーケンスなしの場合を識別する識別情報)の列に相当し、系統状態急変シーケンスありの制御テーブルは系統状態急変モデル1(系統状態急変シーケンスありの場合を識別する識別情報)の列に相当する。複数の系統状態急変シーケンスにおいて安定化制御量を求めている場合には、系統状態急変モデル2以降に相当する。以下、事後制御部2’は、第1の実施形態と同様に動作する。
【0124】
例えば、系統急変判定部203は、前述同様に、事故発生時の系統状態が平常であるか、あるいは、急変した状態であるかを判定する。これにより、現在の系統状態がどの系統状態急変パターンに相当するかを識別する。また、制御対象判定部204は、系統急変判定部203の判定結果が示す系統状態急変パターンの識別結果(現在の系統状態)と、受信した事故検出情報とを基に制御テーブル201aを検索し、当該系統状態急変パターンの当該事故に対応する制御対象を選択し、制御が必要な場合には転送遮断信号を制御端末装置220に送信する。
【0125】
上述したように本実施形態によれば、静的系統急変設定部104に代えて、動的系統急変設定部112を備えた構成により、第1の実施形態の効果に加え、系統急変による発電機などの過渡的な応動(動特性)の影響も考慮した安定判別を行うことができる。
【0126】
<第3の実施形態>
図7は第3の実施形態に係る事故波及防止システムの構成を示す模式図である。
【0127】
第3の実施形態は、事前演算部1’の中央演算装置100’を多重化した構成により、各系列の演算周期(演算タイミング)をずらすことにより制御テーブル記憶部201の更新周期を短くするものである。
【0128】
具体的には事前演算部1’は、複数系列の中央演算装置100’と、複数系列の中央演算装置100’の演算周期を系列数で案分した時間間隔だけずらすように調整する調整部120とを備えている。
【0129】
図8は、多重系(2重系)において演算タイミングをずらして運用した場合の各系列の演算周期のイメージ図である。各系列の1周期の演算時間が同じ場合には、演算を開始するタイミングを半周期ずらすように調整(運用)することにより、制御テーブル記憶部201の更新周期を演算周期の半分にする。
【0130】
なお、調整部120は、1周期の演算時間が変化する場合には、各系列の演算時間を管理して、各系列の演算開始タイミングが半周期ずれるように調整してもよい。また、調整部120を設けずに、どちらかの系列を基準にして、一方の系列は、基準系列の演算周期に対して演算開始タイミングが半期ずれる動作をするようにしてもよい。ここで、
図8は2重系の例を示しているが、更に多重化してもよく、いずれにしても、調整部120は、1周期の演算時間を系列数で案分した時間間隔で各系列の演算を開始するように演算タイミングを調整する。
【0131】
また、本実施形態の事前演算部1’及び事後制御部2’は、制御テーブル記憶部201の更新周期が各系列の中央演算装置100’の演算周期よりも短いことを除き、第1の実施形態と同様に動作する。
【0132】
上述したように本実施形態によれば、事前演算部1’の中央演算装置100’の演算周期よりも短い間隔で制御テーブルを更新でき、これにより、系統事故発生時の潮流断面と安定化制御量を求めた際の潮流断面をより近い状態に保つことが可能となるので、不足制御を防止して確実に安定化することができる。
【0133】
なお、本実施形態は、第1の実施形態の中央演算装置100’を多重化した場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、第2の実施形態の中央演算装置100”を多重化した変形例としても同様に実施して同様の効果を得ることができる。
【0134】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、平常系統モデルと、系統状態急変モデル又は状態急変時の動特性解析データとを生成し、平常系統モデルと、系統状態急変モデル又は状態急変時の動特性解析データとに応じて想定事故別の安定化制御量を算出し、安定化制御量に相当する制御対象情報を選択し、事故発生直前の系統状態を判定して、急変状態の場合には、系統状態急変モデル又は状態急変時の動特性解析データに応じた安定化制御量に相当する制御対象情報を基に安定化制御を実施する構成により、系統状態が急変し平常時の制御では不足制御になる場合にでも、系統現象に応じた制御対象を選択して不足制御を防止し、かつ、効率的に制御対象を選択できる。
【0135】
なお、上記の各実施形態に記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、光磁気ディスク(MO)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【0136】
また、この記憶媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であっても良い。
【0137】
また、記憶媒体からコンピュータにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワークソフト等のMW(ミドルウェア)等が上記実施形態を実現するための各処理の一部を実行しても良い。
【0138】
さらに、各実施形態における記憶媒体は、コンピュータと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝送されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0139】
また、記憶媒体は1つに限らず、複数の媒体から上記の各実施形態における処理が実行される場合も本発明における記憶媒体に含まれ、媒体構成は何れの構成であっても良い。
【0140】
なお、各実施形態におけるコンピュータは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上記の各実施形態における各処理を実行するものであって、パソコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であっても良い。
【0141】
また、各実施形態におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本発明の機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0142】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。