特許第6266378号(P6266378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社セイコーアイ・インフォテックの特許一覧

<>
  • 特許6266378-インクジェットプリンター 図000002
  • 特許6266378-インクジェットプリンター 図000003
  • 特許6266378-インクジェットプリンター 図000004
  • 特許6266378-インクジェットプリンター 図000005
  • 特許6266378-インクジェットプリンター 図000006
  • 特許6266378-インクジェットプリンター 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266378
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   B41J2/01 205
   B41J2/01 213
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-34808(P2014-34808)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-160313(P2015-160313A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】395003187
【氏名又は名称】株式会社OKIデータ・インフォテック
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】花島 優介
【審査官】 高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−194855(JP,A)
【文献】 特開2002−144549(JP,A)
【文献】 特開2002−036515(JP,A)
【文献】 特開2000−094662(JP,A)
【文献】 特開2005−246840(JP,A)
【文献】 特開2006−027139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有し、該ノズルから記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載して前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジの下面側に対向して配置され前記記録媒体を保持するプラテンと、
前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
を有し、
前記ノズルを複数のブロックに分け、前記記録媒体の前記キャリッジの移動方向に沿う同一ラインの記録を異なる前記ブロックに属する前記ノズルによって記録し、前記キャリッジの1回の走査による前記記録媒体への記録は、予め決められたプリントマスクに基づいて前記ノズル毎の吐出率が制御されるインクジェトプリンターにおいて、
前記記録ヘッドは3以上の前記ブロックを有し、
前記ノズルの内の異常のある不良ノズルの位置を記憶する不良ノズル記憶手段と、
前記不良ノズル記憶手段に記憶された前記不良ノズルの属する前記ブロック以外の前記ブロックにおける前記不良ノズルの位置に対応する前記ノズルを前記ブロック毎に特定し、該特定された前記ノズルの前記プリントマスクに基づく前記吐出率に前記不良ノズルの前記プリントマスクに基づく前記吐出率を分散させて加えた値となる新たな吐出率を求める演算を行う演算手段と、
前記特定された前記ノズルによって前記不良ノズルを代替して記録する場合に、前記特定された前記ノズルに対して前記新たな吐出率を用いて記録を行う制御をする制御手段と、を有し、
前記特定された前記ノズルは第1代替ノズルと第2代替ノズルを含み、
前記演算手段は、前記プリントマスクに基づいて1走査分の印刷データを生成し、該印刷データの内の前記不良ノズルに対応する列に含まれ、前記インクを前記ノズルから吐出させる値を有する画素データ毎に、該画素データを、前記第1代替ノズルと前記第2代替ノズルを含む前記特定された前記ノズル毎の前記プリントマスクに基づく前記吐出率に応じて演算された閾値と乱数とに基づいて選択され、前記不良ノズルを代替する前記ノズルに対応する前記印刷データの列における前記画素データに対応する位置に移動させることで前記印刷データを修正し、前記制御手段は該修正した前記印刷データに基づき記録することで、前記不良ノズルの前記プリントマスクに基づく前記吐出率を前記第1代替ノズルと前記第2代替ノズルを含む前記特定された前記ノズル毎に分散させた前記新たな前記吐出率によった記録をすることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記記録ヘッドの前記搬送方向の一方の端の前記ノズルを含む前記ブロックの前記プリントマスクに基づく前記吐出率は、前記一方の端から他方の端に向かうほど前記プリントマスクに基づく前記吐出率が高くなり、前記他方の端の前記ノズルを含む前記ブロックの前記プリントマスクに基づく前記吐出率は、前記一方の端から他方の端に向かうほど前記プリントマスクに基づく前記吐出率が低くなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙、樹脂フィルムなどの記録媒体にインクを吐出して画像等を記録するインクジェットプリンターが広く知られている。インクジェットプリンターの中には、記録媒体の搬送方向に沿って配列された複数のノズルを備える記録ヘッドを記録媒体の搬送方向に対して直角の方向に移動させながらインクを吐出することで画像を記録するものがある。
【0003】
この種の記録ヘッドには、インクの吐出が出来ない、あるいはインクが曲がって吐出されるなどのノズルの不良がある場合がある。このような不良ノズルのある記録ヘッドによって作画された画像は、白筋や濃い線が生じる場合がある。不良ノズルの原因は、記録ヘッドに何らかしらの異常があることが考えられる。例えば、ノズルに傷があり、正常に吐出できない場合や、ノズルにごみが詰まりインクが吐出できない状態になっている場合や、ノズルの回りにインク滴が付着し所望の方向にインクが吐出できない状態になっている場合などの原因が考えられる。記録ヘッドに異常がある場合は、記録ヘッドを清掃して直る場合もあるが、直らない場合も有る。直らない場合は、他のノズルによって代替してインクを吐出させることもできるが、正確な不良ノズルの位置を特定する必要がある。
【0004】
不良ノズルを特定する技術としては、例えば特開2011−126197号公報に開示されている技術がある。この技術は、記録媒体にノズルごとに所定数のインクを連続で吐出し、記録媒体にラインを描くものである。これによれば、インクの吐出がされないノズルがあった場合はラインが形成されず、不良ノズルが存在することが分かる。また、記録されるはずであったラインの位置を、例えば記録されたテストパターンを目視で何番目のノズルによって形成されるべきラインであるかを確認し、記録ヘッド上の不良ノズルの位置を特定することができる。
また、発見された異常ノズルの位置は機器を制御する制御部に記憶し、他のノズルによって代替する様に制御することで、記録ヘッドを交換せずに記録が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−126197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
隣接するノズルによって不良ノズルを代替する場合は、記録されるドットの位置が異なるので、記録された画像の画質は劣るものとなる。また、記録ヘッドを複数のブロックに分け、異なるブロックに配置されているノズルによって、一ラインをブロックの異なる複数のノズルによって作画するマルチパス方式の記録の場合であって、ブロック毎にノズルの印字率が異なる場合は、他のブロックのノズルの印字率が平常時より高いものとなり、記録された画像の画質は劣るものとなる。この原因は吐出制御において、記録ヘッドの1回の走査(走査をスキャンとも言う)の記録結果をみたとき、濃度の濃い部分と薄い部分がある。たとえば、濃度の薄い部分で濃い部分の代替を行おうとすると、そこだけ作画の順序が大きく異なることになり、画質の劣化を生じる。
異なるノズルで代替する技術の場合に、不良ノズルが正常であった場合の画像と完全に同一の画質にすることはできないことは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、不良ノズルを正常ノズルで代替して記録した場合の画質の劣化を極力抑えることで、見劣りの無い画像の画質を得ることが可能なインクジェットプリンターを提供する。
【0008】
本願発明のインクジェットプリンターは、複数のノズルを有し、該ノズルから記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載して前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジの下面側に対向して配置され前記記録媒体を保持するプラテンと、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を有し、前記ノズルを複数のブロックに分け、前記記録媒体の前記キャリッジの移動方向に沿う同一ラインの記録を異なる前記ブロックに属する前記ノズルによって記録し、前記キャリッジの1回の走査による前記記録媒体への記録は、予め決められたプリントマスクに基づいて前記ノズル毎の吐出率が制御されるインクジェトプリンターにおいて、前記記録ヘッドは3以上の前記ブロックを有し、前記ノズルの内の異常のある不良ノズルの位置を記憶する不良ノズル記憶手段と、前記不良ノズル記憶手段に記憶された前記不良ノズルの属する前記ブロック以外の前記ブロックにおける前記不良ノズルの位置に対応する前記ノズルを前記ブロック毎に特定し、該特定された前記ノズルの前記プリントマスクに基づく前記吐出率に前記不良ノズルの前記プリントマスクに基づく前記吐出率を分散させて加えた値となる新たな吐出率を求める演算を行う演算手段と、前記特定された前記ノズルによって前記不良ノズルを代替して記録する場合に、前記特定された前記ノズルに対して前記新たな吐出率を用いて記録を行う制御をする制御手段と、を有し、前記特定された前記ノズルは第1代替ノズルと第2代替ノズルを含み、前記演算手段は、前記プリントマスクに基づいて1走査分の印刷データを生成し、該印刷データの内の前記不良ノズルに対応する列に含まれ、前記インクを前記ノズルから吐出させる値を有する画素データ毎に、該画素データを、前記第1代替ノズルと前記第2代替ノズルを含む前記特定された前記ノズル毎の前記プリントマスクに基づく前記吐出率に応じて演算された閾値と乱数とに基づいて選択され、前記不良ノズルを代替する前記ノズルに対応する前記印刷データの列における前記画素データに対応する位置に移動させることで前記印刷データを修正し、前記制御手段は該修正した前記印刷データに基づき記録することで、前記不良ノズルの前記プリントマスクに基づく前記吐出率を前記第1代替ノズルと前記第2代替ノズルを含む前記特定された前記ノズル毎に分散させた前記新たな前記吐出率によった記録をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインクジェットプリンターによれば、不良ノズルを正常ノズルで代替して記録する場合に、画質の劣化を抑え、高画質の記録媒体に記録された画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、インクジェットプリンターの構成を説明する図である。
図2図2は、記録ヘッドのノズルに対応する印字率を説明する図である。
図3図3は、インクジェットプリンターのブロック図である。
図4図4は、動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、代替印刷を説明する図である。
図6図6は、インクジェットプリンターの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。
図1は、インクジェットプリンターの構成を説明する図である。筐体2はインクジェットプリンター1の外装を構成する。記録ヘッド5はインクを吐出するインクジェットヘッドである。この記録ヘッド5はキャリッジ4に搭載され、記録媒体17の上空を往復走査する。ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色夫々のインクに対応する4台の記録ヘッド5が、キャリッジ4に搭載されている。4色以上のカラーでもよい。記録媒体17は、平板のプラテン6に吸着されながら間欠搬送される。プラテン6に支持された記録媒体17に記録ヘッド5からインクを吐出して画像を記録する。搬送と走査を交互に繰り返しながら所望の画像を完成させる。
【0012】
キャリッジ4は、直線状のレール3に案内されて、記録媒体17の搬送方向に対して交差する方向に往復走査する。この例では、記録媒体17の搬送方向に対して直角方向に移動する。キャリッジ4は、ベルト7に固定されている。ベルト7は1対のプーリー9に掛け回されている。一方のプーリー9にはモーター8が接続され、その駆動によりレール3に沿って往復走査する。キャリッジ4の位置は、キャリッジ4の移動方向に沿って配置されたリニアスケール10をリニアエンコーダー11によって検出することで取得できる。
【0013】
プラテン6には、複数の吸引孔が設けられ、プラテン6の下部にあるダクト13に連通している。ダクト13は、パイプ14によって、ファン15に接続され、ファン15よって吸引孔から空気を吸引し、排出口16から筐体2の外部に排気する。
【0014】
プラテン6の記録媒体17の搬送方向の前方および後方に、記録媒体17を支持するペーパーガイドが設けられている。この図の例では紙面奥行き方向の前側にはフロントペーパーガイドが、後側にはリアペーパーガイドが配置されている。記録媒体17は、リアペーパーガイド、プラテン6、フロントペーパーガイドの順に案内され、搬送される。リアペーパーガイドとプラテン6の間には、プラテン6に沿って複数の搬送ローラー18が一定間隔で配置されている。搬送ローラー18は、駆動ローラーと、それに押圧されたピンチローラーの対のローラーで構成され、対になっている2つのローラーによって挟持され、駆動ローラーの回転によって記録媒体17が搬送される。
【0015】
また、記録ヘッド5のインク詰まりの防止、復帰をさせるためにメンテナンスステーション12が備わる。メンテナンスステーション12は、記録ヘッド5に対して離接するキャップを備え、そのキャップによってノズル面を封止してインクの乾燥を防止する。また、キャップを吸引することで、記録ヘッド5のノズルからインクを吸引することができる。吸引することで詰まりを解消することができる。このようなメンテナンスが行われる。
【0016】
図2は、記録ヘッドのノズルに対応する印字率を説明する図である。この図で扱うインクジェット式の記録ヘッド19では、第1ブロック20、第2ブロック21、第3ブロック22の3部分に分割されているものを例として説明する。複数パス印刷を行う場合に、不良ノズルを他のブロックのノズルで代替できるようにする。この例では、記録ヘッド19を3ブロックに分け、3パスで印刷する例で説明する。また、パス数を増やした場合は、分割数が増えることになる。不良ノズル23はインクを吐出できない不良のノズルであり第1ブロック20に含まれるノズルである。この不良ノズル23を他のノズルで代替する。第1代替ノズル24は、第2ブロック21に含まれる正常ノズルであり、不良ノズル23の記録位置と同じラインを記録し、代替するノズルである。第2代替ノズル25は、第3ブロック22に含まれる正常ノズルであり、不良ノズル23の記録位置と同じラインを記録し、代替するノズルである。各ブロックの先頭からの距離が同じノズルである。
【0017】
各ノズルの印字率は、第1ブロック20のノズル印字率グラフ26、第2ブロック21のノズル印字率グラフ27、第3ブロック22のノズル印字率グラフ28で示される。印字率は、1回の走査で各ノズルを吐出可能な状態にする割合である。図2の例では、記録ヘッドを3ブロックに分け、各ブロック1回ずつ、計3回の記録で画を完成させる。各ブロックには、同じラインを形成するノズルが含まれる。夫々のブロックの印字率が決められている。例えば、3パスで画を完成させる場合を考えると、3パスで100%になるように、第1ブロック20は10%から45%、第2ブロック21は45%一定、第3ブロックは45%から10%、に各ノズルに対応する印字率がグラフの様に設定されている。
【0018】
不良ノズル23を代替する場合に、他のブロックの第1代替ノズル24、第2代替ノズル25によって代替される。不良ノズル23が印字する印字率29の部分を、第1代替印字率32と第2代替印字率33に分散させ、夫々を、第1代替ノズル24の印字率30と第2代替ノズル25の印字率31に加えて印字することになる。
【0019】
この場合に、印字率の低いノズルを用いて印字率の高い不良ノズルを代替させると、代替するノズルの近辺のノズルは印字率が低いので、代替した部分のラインのドットが多くなり、周辺のラインに比べ目立つラインが形成される。そこで、代替するノズルの印字率に応じて、代替させるノズルの印字率を分散させる。印字率の小さいノズルで代替する場合より、印字率の大きいノズルの方に余分に代替させ、代替した結果のドットを目立たなくすることができる。
【0020】
図3は、インクジェットプリンターのブロック図である。制御回路34はインクジェットプリンター1の全体の制御を司る制御回路であり、ROM39に記憶されているプログラムに従って動作する。ROM39には、他に制御に関する設定値、初期などの値が記録されている。RAM38は、データの一時記憶や制御回路34のワークエリアとして使用される。
【0021】
リニアエンコーダー11は制御回路34に接続され、制御回路34によって制御される。リニアエンコーダー11によって検出された値は制御回路34に入力される。リニアエンコーダー11からの値に基づいて、キャリッジ4の位置を演算する。また、キャリッジ4に搭載され、所定の位置に配置されている記録ヘッド5の位置、及びノズルの位置も演算し求めることができる。
【0022】
記録手段35はキャリッジ4、記録ヘッド5を含み、記録媒体17にインクで画像を記録する手段である。記録手段35は制御回路34によって制御される。キャリッジ移動手段36は、ベルト7、プーリー9、モーター8を含み、キャリッジ4をレール3に沿って移動する手段である。キャリッジ移動手段36は制御回路34によって制御される。キャリッジ4の位置は、制御回路34によって把握されるので、記録媒体17上の所望の位置に記録ヘッド5からインクを吐出することができる。
【0023】
搬送手段37は、搬送ローラー18を含み、記録媒体17を搬送させる手段である。搬送手段37は制御回路34の制御によって動作し、制御回路34は、記録媒体17の搬送量を制御できる。
【0024】
次に動作について説明する。図4は、動作を説明するフローチャートである。不良ノズルの1走査分の印刷データを非吐出データに変更すると共に、一時的に不良ノズルの1走査分の印刷データをRAM38に記憶する(ステップS1)。不良ノズルがどのブロックに属し、またどの位置にあるかを取得してRAM38に記憶し、さらに、不良ノズルの位置に応じた基準値を演算し、RAM38に記憶する(ステップS2)。例えば、基準値は、1走査における最大印字率に対する不良ノズルの印字率の比の値である。例えば、最大印字率が45%で、不良ノズルの印字率が40%であれば、比の値は0.9である。また、基準値は、ドットを分散させるために用いる値であり、印字率のグラフの形状によって変えることもできる。
【0025】
次に、副走査方向にノズル数、主走査方向に記録媒体の幅のドットを形成するエリアの画素に相当する領域をRAM38上に取り、不良ノズルの位置の各画素に対して乱数を生成する(ステップS3)。乱数の最大値は、印字率の単位の逆数以上が好ましい。例えば、印字率の単位が0.01、すなわち1%ならば、乱数の最大値は100以上が好ましい、より好ましくはその2倍以上の200以上である。例えば、255を乱数の最大値として説明する。
【0026】
次に、乱数の最大値に、不良ノズルの位置に応じた基準値を掛け、閾値を演算し、RAM38に格納する(ステップS4)。
次に、領域の先頭の画素から乱数を加算する(ステップS5)。そして、その加算した値が閾値以内か否かを比較し、閾値以内であればステップS7へ、否であればステップS8に移行する(ステップS6)。
【0027】
ステップS7では、その画素を代替する2つのノズルの内の印字率の高いブロックに吐出するデータを移動する。そして、次のステップに移行する。ステップ8では、乱数の加算結果を0に初期化して、その画素を代替する2つのノズルの内の印字率の低いブロックに吐出するデータを移動する。そして、次のステップに移行する。ステップ8で、閾値を超えても強制的に0にせずに加算し続けてもよい。乱数の最大値まで加算でき、この最大値を超えた場合に、超えた部分を次の加算の最初の値にするように加算ループさせても良い。この場合に閾値を超えているか、キャリー出た場合を判断の基準にすればよい。
ステップ9では、最後まで加算をしたか否かを判断し、していなければステップS5に移行し、していれば、分散の処理を終了する。
【0028】
このように、乱数と分散のための基準値を用いて、不良ノズルが吐出するはずだったドットを、代替するノズルから吐出するドット数を決める。すなわち、不良ノズルの吐出するドットを、代替するノズルの印字率に応じて分散させて吐出させることができる。乱数を用いることで、ランダムであるが、印字率の高い代替ノズルと低い代替ノズルに好適に分散させることができる。4パス以上の印刷モードで、不良ノズルを代替する場合は、代替するノズル毎の印字率に応じて分散させるために、その印刷モード毎に基準値を予め決めて分散させる。例えば、4パスの場合は、基準値A<基準値Bの2つの基準値を設けることで、乱数を、基準値Bを超えるまで加算し、1つ目のノズルから3つ目のノズルまで分散させることができる。乱数及び乱数の最大値と基準値を用いるこの方法は、印字率の細かさや、異なる印字率を用いて吐出を制御する場合に、乱数の最大値と基準値のパラメータを変えるだけで主な制御部分を変えずに、容易に各印字率のノズルの代替に対応できるので効果がある。他の例としては、印字率に応じた代替ノズル印字率関数を予め決めて、関数に応じて代替をすることも考えられる。また、基準値を用い、この基準値を変えることで分散のさせ方が変わるので、官能的に閾値を決めることができる。
【0029】
図5は、代替印刷を説明する図である。RAM38に取った画素領域40は、縦にノズル数、横に用紙幅分の領域である。図は、1走査分の1色分の領域である。不良ノズル23が吐出する画素行44、第1代替ノズルが吐出する画素行45、第2代替ノズルが吐出する画素行46のうち、塗りつぶしてある部分の画素が、不良ノズルが無かった場合に吐出する画素を示している。この時の印字率は図2に示されている不良ノズル23が印字する印字率29、第1代替印字率32、第2代替印字率33に対応する率で吐出される。不良ノズル23を代替する場合は、乱数の最大値、例えば255と、基準値0.9を用いて閾値229を演算する。不良ノズル23の吐出する初めの吐出データ47から乱数を加算して、閾値229と比較し、画素行45と画素行46に分散させて移動させる。移動結果は斜線の画素である。閾値が大きめなので、画素行45に多く移動している。第2代替ノズルの印字率は低いので、代替するドットが少ない方が、周辺のノズルと比べ目立たなくなる。
【0030】
図6は、インクジェットプリンターの外観図である。インクジェットプリンターの外観図である。インクジェットプリンター1は、脚部51で支えている。脚部51は筐体2の下面の両端方に固定される。フロントペーパーガイド52に沿って、フロントペーパーガイド52と窓部54の間の隙間から、記録後の記録媒体17が矢印53で示される方向に排出される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明はインクジェットプリンターに利用できる。特に幅広の記録媒体に記録する大型のインクジェットプリンターに利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 インクジェットプリンター
2 筐体
3 レール
4 キャリッジ
5 記録ヘッド
6 プラテン
7 ベルト
8 モーター
9 プーリー
10 リニアスケール
11 エンコーダー
12 メンテナンスステーション
17 記録媒体
18 搬送ローラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6