(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したバラストタンクを備える船舶では、一般に漲水する港と排水する港が異なるため、バラスト水として取り込む海水に含有される物質の除去、又は微生物の殺菌を行うことが環境保護の観点から求められる。このため、海水中の物質や微生物を処理する反応剤をバラスト水に注入すると共に、この反応剤の成分を中和する中和剤をバラスト水に注入する場合がある。しかしながら、このようなバラスト水処理システムでは、バラスト水に反応剤を注入するために反応剤を流通させるラインと、中和剤を注入するために中和剤を流通させるラインとの両方を設ける必要があり、構成が複雑になる。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、シンプルな構成とすることができるバラスト水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係るバラスト水処理システムは、船舶のバラスト水に反応剤を注入すると共に、バラスト水に反応剤を中和する中和剤を注入するバラスト水処理システムであって、反応剤及び中和剤をバラスト水に注入する注入部と、注入部より上流側に設けられ、反応剤及び中和剤が共通して流通する共通ラインと、を備えることを特徴とする。
【0007】
このバラスト水処理システムでは、反応剤と中和剤とが流通するラインにおいて注入部より上流側に、反応剤と中和剤とが共通して流通する共通ラインが設けられている。これにより、バラスト水に反応剤を注入するときは共通ラインに反応剤を流通させ、バラスト水に中和剤を注入するときは共通ラインに中和剤を流通させるため、反応剤のラインと中和剤のラインとを個別に設ける必要がない。このため、バラスト水処理システムをシンプルな構成とすることができる。また、部材の使用量が減少するため、コストの低減が可能となる。また、万一共通ラインから反応剤が漏洩した場合でも、共通ラインに中和剤を流通させるだけで漏洩した反応剤を速やかに中和できるため、安全性の向上が可能となる。
【0008】
また、本発明に係るバラスト水処理システムにおいて、反応剤は、バラスト水に殺菌処理を施す殺菌剤であり、殺菌剤は、船舶内にバラスト水を漲水するときにバラスト水に注入され、中和剤は、船舶内からバラスト水を排水するときにバラスト水に注入されることが好ましい。この場合、バラスト水として取り込む海水に含有される微生物を効率的に殺菌することができる。
【0009】
また、本発明に係るバラスト水処理システムは、共通ラインより上流側に設けられ、反応剤及び中和剤の少なくとも一方を貯留するタンクを更に備え、タンクと注入部とは隔壁で仕切られた異なる区画に配置され、共通ラインは、隔壁を貫通して設けられることが好ましい。この場合、隔壁に設ける貫通部が、共通ラインを貫通させるための一箇所のみで良いため、製造が容易になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るバラスト水処理システムによれば、シンプルな構成とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るバラスト水処理システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るバラスト水処理システムを適用した船舶を示す図である。同図に示す船舶100は、カーゴスペースに例えば油や液化天然ガスといった石油系液体貨物を積載して運搬するタンカーを例示している。船舶100は、船体101と、推進器102と、舵103とを有している。推進器102は、船舶100を推進させるものであり、例えばスクリューシャフトが用いられる。舵103は、船舶100の推進方向を制御する。
【0014】
また、船舶100は、船体101の内部に機関室2と、ポンプ室3と、バラストタンク4とを有する。また、機関室2とポンプ室3とに跨ってバラスト水処理システム1が設置されている。機関室2は、船体101の後部に設けられており、メインエンジン等が設置される区画である。ポンプ室3は、機関室2の前方に設けられており、例えば液体貨物の吸引を行うポンプ等が設置される区画である。機関室2とポンプ室3との間は隔壁7によって仕切られている。
【0015】
バラストタンク4は、機関室2の前方(すなわち、ポンプ室3の側方、又は更に前方)に設けられている。バラストタンク4は、船舶100に積載された貨物の重量に応じてバラスト水Wを漲水又は排水する。より具体的には、バラストタンク4は、貨物の重量が小さい場合はポンプで海水を吸い上げることによってバラスト水Wを漲水する。また、積載する貨物の重量が大きくなるに伴ってバラスト水Wを海へ排水する。これにより、船舶100全体として、安定性を向上すると共に十分な喫水を確保できる適当な重量への調節が可能となる。
【0016】
次に、バラスト水処理システム1の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るバラスト水処理システムにおける、漲水時の殺菌剤流通経路を概略的に示した図である。
図3は、本発明の一実施形態に係るバラスト水処理システムにおける、排水時の中和剤流通経路を概略的に示した図である。
図2、3に示すように、バラスト水処理システム1は機関室2とポンプ室3とに跨っており、隔壁7に設けられた貫通部8を貫通するように設置されている。
【0017】
バラスト水処理システム1は、バラストタンク4にバラスト水Wを漲水すると共にバラストタンク4からバラスト水Wを排水するための漲排水系31と、漲排水系31を流れるバラスト水Wに殺菌剤R及び中和剤Nを注入するための注入系11と、を備える。殺菌剤Rは、バラスト水Wとして取り込んだ海水に含有される微生物を殺菌するためにバラスト水Wに注入される。また、中和剤Nは、海洋生物に対して有害な殺菌剤Rを中和して無害化するために、殺菌剤Rを含むバラスト水Wの排水前に注入される。
【0018】
漲排水系31は、バラスト水Wとして海水を取り込む取水口の機能を有すると共にバラスト水Wを船外に排出する排水口の機能を有するシーチェスト32と、シーチェスト32からバラストタンク4までを繋いでバラスト水Wを流通させる第1のバラスト水ライン33と、第1のバラスト水ライン33の中途位置からシーチェスト32までを繋いでバラスト水Wを流通させる第2のバラスト水ライン34と、バラストタンク4から第1のバラスト水ライン33の中途位置までを繋ぎ、排水時にバラストタンク4からバラスト水Wを流す排水ライン36と、漲排水系31においてバラスト水Wを流すためのバラスト水ポンプ40と、を少なくとも有する。
【0019】
注入系11は、殺菌剤R及び中和剤Nを貯留しておくためのタンク29と、殺菌剤R及び中和剤Nが共通して流通する共通ライン5と、漲排水系31を流れるバラスト水Wに殺菌剤R及び中和剤Nを注入する注入部28と、注入系11において殺菌剤R及び中和剤Nを流すための共通ポンプ6と、を少なくとも有する。共通ライン5は、バラスト水Wに殺菌剤Rを注入するときは殺菌剤Rが流通するラインとしての機能を果たすと共に、バラスト水Wに中和剤Nを注入するときは中和剤Nが流通するラインとしての機能を果たす。また、共通ライン5は、注入部28より上流側に設けられている。ここで上流側とは、注入系11において、タンク29から注入部28へ向かう殺菌剤R及び中和剤Nの流れにおける上流側を意味する。
【0020】
本実施形態において、上記タンク29は、殺菌剤Rを貯留する殺菌剤タンク12と、中和剤Nを貯留する中和剤タンク22とに分かれている。このため、殺菌剤タンク12から共通ライン5までを繋ぐ第1の殺菌剤ライン13が設けられており、同様に、中和剤タンク22から共通ライン5までを繋ぐ第1の中和剤ライン23が設けられている。なお、タンク29は、一つのタンクであって、殺菌剤タンク12として機能すると共に中和剤タンク22として機能するものとしても良い。この場合、タンク29に殺菌剤R又は中和剤Nを必要に応じて補充する。これによると、第1の殺菌剤ライン13及び第1の中和剤ライン23を設ける必要がなくなり、更にシンプルな構成とすることができる。
【0021】
また、本実施形態において、上記注入部28は、バラスト水Wに殺菌剤Rを注入する殺菌剤注入部17と、バラスト水Wに中和剤Nを注入する中和剤注入部27とに分かれている。このため、共通ライン5から殺菌剤注入部17までを繋ぐ第2の殺菌剤ライン14が設けられており、同様に、共通ライン5から中和剤注入部27までを繋ぐ第2の中和剤ライン24が設けられている。このように、注入部28が殺菌剤注入部17と中和剤注入部27とに分かれていることで、それぞれ漲排水系31のうちの最適な位置に各注入部を設けることが可能となる。ここで、殺菌剤注入部17を設ける位置は、第1のバラスト水ライン33の途中であれば、シーチェスト32からバラストタンク4までの間におけるどの位置に設けても良い。また、中和剤注入部27を設ける位置は、バラストタンク4から排水ライン36、続いて第1のバラスト水ライン33、さらに第2のバラスト水ライン34を経て、例えばシーチェスト32等の排水口(バラスト水Wを排水するものであれば、シーチェスト32以外の排水口であってもよい)に至るまでの間であれば、どの位置に設けても良い。なお、注入部28は、一つの注入部であって、殺菌剤注入部17として機能すると共に中和剤注入部27として機能するものとしても良い。この場合、第2の殺菌剤ライン14と第2の中和剤ライン24とを設ける必要がなくなり、更にシンプルな構成とすることができる。
【0022】
また、バラスト水処理システム1は、機関室2とポンプ室3とに跨って設置されている。機関室2側には注入系11の上流側が設置されており、ポンプ室3側には注入系11の下流側及び漲排水系31が設置されている。注入系11において、機関室2側には少なくとも殺菌剤タンク12と中和剤タンク22とが設けられると共に、ポンプ室3側には少なくとも殺菌剤注入部17と中和剤注入部27とが設けられている。また、共通ライン5が、機関室2とポンプ室3との間の隔壁7に設けられた貫通部8を貫通するように設けられている。なお、本実施形態において共通ポンプ6は機関室2側に設置されているが、共通ライン5の途中であれば、ポンプ室3側に設置されていても良い。
【0023】
なお、
図2,3に示すように、バラスト水処理システム1の各ラインにはバルブが設けられている。バルブを設ける位置は、注入系11においては、殺菌剤Rのみを流通させる場合と、中和剤Nのみを流通させる場合とを制御することができれば、具体的なバルブの配置は特に限定されない。同様に、漲排水系31においては、漲水時にはシーチェスト32からバラストタンク4へバラスト水Wを流すことができて、排水時にはバラストタンク4から例えばシーチェスト32等の排水口(バラスト水Wを排水するものであれば、シーチェスト32以外の排水口であってもよい)へバラスト水Wを流すことができれば、具体的なバルブの配置は特に限定されない。なお、本実施形態では、注入系11において、第1の殺菌剤ライン13に第1の殺菌剤バルブ15が設けられ、第1の中和剤ライン23に第1の中和剤バルブ25が設けられている。また、第2の殺菌剤ライン14に第2の殺菌剤バルブ16が設けられ、第2の中和剤ライン24に第2の中和剤バルブ26が設けられている。また、漲排水系31において、第1のバラスト水ライン33に第1のバラスト水バルブ37及び第2のバラスト水バルブ38が設けられ、第2のバラスト水ライン34に第3のバラスト水バルブ39が設けられている。
【0024】
続いて、上述したバラスト水処理システム1の動作について説明する。
【0025】
漲水時には、第1のバラスト水バルブ37及び第2のバラスト水バルブ38を開き、第3のバラスト水バルブ39を閉じると共に、バラスト水ポンプ40を駆動する。これにより、海水がバラスト水Wとしてシーチェスト32から流入し、第1のバラスト水ライン33を流れてバラストタンク4に入る(矢印A1)。一方、排水時には、第1のバラスト水バルブ37を閉じ、第2のバラスト水バルブ38及び第3のバラスト水バルブ39を開くと共に、バラスト水ポンプ40を駆動する。これにより、バラストタンク4に貯留されていたバラスト水Wが、排水ライン36から第1のバラスト水ライン33を流れ、続いて第2のバラスト水ライン34を流れて、例えばシーチェスト32等の排水口(バラスト水Wを排水するものであれば、シーチェスト32以外の排水口であってもよい)から海に排水される(矢印A2)。
【0026】
ここで、従来のバラスト水処理システム51では、漲水時には、
図6に示す通り、殺菌剤Rが殺菌剤タンク62から殺菌剤ポンプ67によって殺菌剤ライン63を下流に流され、バラスト水Wに注入される(矢印A5)。一方、排水時には、
図7に示す通り、中和剤Nが中和剤タンク72から中和剤ポンプ77によって中和剤ライン73を下流に流され、バラスト水Wに注入される(矢印A6)。このように、殺菌剤ライン63は殺菌剤Rの流通専用に設けられており、中和剤ライン73は中和剤Nの流通専用に設けられている。従って、殺菌剤ライン63、中和剤ライン73は、それぞれ漲水時、排水時にしか使用されない。また、殺菌剤ポンプ67は殺菌剤Rを流すためだけに設けられており、中和剤ポンプ77は中和剤Nを流すためだけに設けられている。さらに、機関室2とポンプ室3との間を仕切る隔壁7には、殺菌剤ライン63が貫通する殺菌剤ライン用貫通部68と、中和剤ライン73が貫通する中和剤ライン用貫通部78とが設けられている。
【0027】
これに対し、本発明に係るバラスト水処理システム1は、漲水時には、
図2に示す通り、第1の殺菌剤バルブ15及び第2の殺菌剤バルブ16を開き、第1の中和剤バルブ25及び第2の中和剤バルブ26を閉じると共に、共通ポンプ6を駆動する。これにより、殺菌剤Rが、殺菌剤タンク12から第1の殺菌剤ライン13を流れ、合流部9を経て共通ライン5に流れ、更に分岐部10を経て第2の殺菌剤ライン14に流れて殺菌剤注入部17に至る(矢印A3)。従って、バラスト水Wは、殺菌剤注入部17を通過する際に殺菌剤Rを注入されるため、バラストタンク4に漲水されるバラスト水Wは殺菌剤Rによって水中の微生物が殺菌された状態となる。
【0028】
一方、排水時には、
図3に示す通り、第1の殺菌剤バルブ15及び第2の殺菌剤バルブ16を閉じ、第1の中和剤バルブ25及び第2の中和剤バルブ26を開くと共に、共通ポンプ6を駆動する。これにより、中和剤Nが、中和剤タンク22から第1の中和剤ライン23を流れ、合流部9を経て共通ライン5に流れ、更に分岐部10を経て第2の中和剤ライン24に流れて中和剤注入部27に至る(矢印A4)。従って、バラスト水Wには殺菌剤Rが残存している可能性があるが、中和剤注入部27を通過する際に中和剤Nを注入されるため、海に排水されるバラスト水Wは殺菌剤Rが中和されて無害化された状態となる。
【0029】
なお、共通ライン5に殺菌剤Rを流通させた後、殺菌剤Rの流通を止めたとしても、共通ライン5の内部には殺菌剤Rが残存する。その後、共通ライン5に中和剤Nを流通させた場合、共通ライン5の内部に残存する殺菌剤Rと、新たに流通した中和剤Nとが混合されることになる。しかし、殺菌剤Rと中和剤Nとが混合されても殺菌剤Rが中和されるだけであるため特段の害はない。また、新たに流通する中和剤Nの一部は残存する殺菌剤Rの中和に用いられることになる。しかし、共通ライン5の内部に残存する殺菌剤Rの総量は、バラスト水Wに注入される中和剤Nの総量に比べて非常に少ないため、ラインの共通化による殺菌及び中和の性能低下は無視できる程度である。
【0030】
図4は、共通ラインから殺菌剤が漏洩した状態を概略的に示した図である。
図5は、漏洩した殺菌剤を中和剤で中和する状態を概略的に示した図である。
図4,5に示すように、本発明に係るバラスト水処理システム1では、漲水時に万一共通ライン5が破損したとしても、漏洩した殺菌剤Rを速やかに中和できる。すなわち、殺菌剤Rが漏洩した場合には、上述したように各バルブを開閉して中和剤Nが共通ライン5を流通できる状態とする。これにより、共通ライン5の破損箇所Cから中和剤Nが漏洩するため、共通ライン5の外部において殺菌剤Rに中和剤Nが混合される。従って、漏洩した殺菌剤Rを速やかに中和することができる。更に、例えば殺菌剤Rの漏洩が微少量であるため漏洩の発見が遅れたとしても、バラスト水Wの排水時に中和剤Nが同じ破損箇所Cから微少量だけ漏洩するため、自動的に殺菌剤Rが中和される。従って、殺菌剤Rの漏洩の発見までの間に、汚染が周辺に広がることを防止することができる。
【0031】
なお、このように漏洩した殺菌剤Rを中和する手段は、例えば殺菌剤Rの流量センサを共通ライン5の上流部及び下流部に設置して殺菌剤Rの漏洩を自動検知し、漏洩を検知した場合は各バルブを電磁弁により自動開閉する機構とすることも可能である。この場合、漏洩した殺菌剤Rを確実に、且つ、より速やかに中和できる。
【0032】
以上説明したように、バラスト水処理システム1では、殺菌剤Rと中和剤Nとが流通するラインにおいて、殺菌剤注入部17及び中和剤注入部27より上流側に、殺菌剤Rと中和剤Nとが共通して流通する共通ライン5が設けられている。これにより、漲水時には共通ライン5に殺菌剤Rを流通させ、排水時には共通ライン5に中和剤Nを流通させるため、殺菌剤Rのラインと中和剤Nのラインとを個別に設ける必要がない。このため、バラスト水処理システム1をシンプルな構成とすることができる。また、部材の使用量が減少するため、コストの低減が可能となる。また、万一共通ライン5から殺菌剤Rが漏洩した場合でも、共通ライン5に中和剤Nを流通させるだけで漏洩した殺菌剤Rを速やかに中和できるため、安全性の向上が可能となる。
【0033】
また、バラスト水処理システム1では、反応剤は、バラスト水Wに殺菌処理を施す殺菌剤Rであり、殺菌剤Rは、船舶100内にバラスト水Wを漲水するときにバラスト水Wに注入され、中和剤Nは、船舶100内からバラスト水Wを排水するときにバラスト水Wに注入される。この場合、バラスト水Wとして取り込む海水に含有される微生物を効率的に殺菌することができる。
【0034】
また、バラスト水処理システム1では、共通ライン5より上流側に設けられた殺菌剤タンク12及び中和剤タンク22を更に備え、殺菌剤タンク12及び中和剤タンク22と殺菌剤注入部17及び中和剤注入部27とは、隔壁7で仕切られた機関室2、ポンプ室3にそれぞれ配置されている。そして、共通ライン5は、隔壁7を貫通して設けられている。この場合、隔壁7に設ける貫通部8が、共通ライン5を貫通させるための一箇所のみで良いため、製造が容易になる。
【0035】
なお、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態ではバラスト水Wに注入する反応剤として殺菌剤Rを例示したが、本発明は、反応剤として具体的に、次亜塩素酸水溶液(次亜塩素酸化合物を清水で水溶したもの)、オゾンガス(もしくは、オゾンガスを水溶したもの)、二酸化炭素(二酸化炭素が水溶したもの)、又は、海水もしくは清水を電気分解して生成される活性物質、といった物質を用いることができ、上記物質を中和する物質(中和剤)として具体的に、共通して次亜塩素酸ナトリウム、又は亜硫酸ナトリウムを用いることができる。この場合、バラスト水Wとして取り込む海水に含有される物質や微生物に応じて、上記物質から最適な反応剤及び中和剤を適宜選択してバラスト水Wを処理することが可能となる。
【0036】
また、上記実施形態では、第1の殺菌剤バルブ15を設置した第1の殺菌剤ライン13と、第1の中和剤バルブ25を設置した第1の中和剤ライン23とが下流側に設けられた合流部9で合流する構成を例示した。しかし、本発明は、上記第1の殺菌剤バルブ15と第1の中和剤バルブ25との代わりに、合流部9に三方弁を設ける構成としてもよい。この場合、部品数を削減することができ、バラスト水処理システム1を更にシンプルな構成とすることができる。
【0037】
また、上記実施形態において、バラスト水処理システム1を構成する各バルブは、手動によって開閉を行うものであっても電磁弁等によって開閉を行うものであってもよい。手動によって開閉を行うものとすればコストを低減することができる。一方、電磁弁によって開閉を行うものとすれば、バルブの開閉を迅速且つ容易に行うことができる。
【0038】
ここで、上記実施形態では、船舶100としてタンカーを例示している。タンカーのように、例えば石油系液体貨物といった可燃性物質を積載する船舶においては、カーゴスペースに隣接する区画は防爆エリアとされる。防爆エリアには、安全のため、非防爆型電気品を装備した殺菌剤タンク12及び中和剤タンク22を設置することは避けられる。
【0039】
上記実施形態では、バラスト水処理システム1は防爆エリアであるポンプ室3と非防爆エリアである機関室2とに跨って設置されており、殺菌剤タンク12及び中和剤タンク22を非防爆エリアである機関室2に配置することで安全性を確保する構成を開示している。しかし、本発明は、殺菌剤タンク12及び中和剤タンク22を機関室2より更に後方の区画に設置してもよい。すなわち、機関室2の後方に、例えば舵機室といった区画が設けられている船舶においては、非防爆エリアである上記舵機室に殺菌剤タンク12及び中和剤タンク22を設置できる。この場合、船舶の構造に即した最適なレイアウトを選択することができるため、レイアウトの自由度が高くなる。
【0040】
また、非防爆型電気品を装備した殺菌剤タンク12及び中和剤タンク22自体に防爆処理を施すことにより、殺菌剤タンク12及び中和剤タンク22を防爆エリアに設置することも可能となる。この場合も、レイアウトの自由度が高くなる。
【0041】
更に、上記実施形態では船舶100としてタンカーを例示したが、本発明は、バラストタンク4を有する船舶であればどのような船舶であっても適用が可能であり、例えばバルクキャリアー等に適用してもよい。この場合、バルクキャリアーには原油や液化天然ガスといった石油系液体貨物を積載することがないため、上述した防爆エリアが存在しない。従って、殺菌剤タンク12、中和剤タンク22に防爆処理を施さなくてもバラスト水処理システム1の自由なレイアウトが可能となる。