(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光ファイバをガラス・チューブ内に挿入するステップであって、前記光ファイバが、シリカ・コアを備え、前記光ファイバがクラッドをさらに備え、前記クラッドが第1の屈折率を有し、前記ガラス・チューブが第2の屈折率を有し、前記第2の屈折率が前記第1の屈折率よりも高い、挿入するステップと、
前記ガラス・チューブを摂氏900度と摂氏1000度との間のある温度に加熱するステップと、
前記ガラス・チューブをつぶしてガラス・バッファを形成するステップであって、前記クラッドへの外乱がなく、前記ガラス・バッファが前記クラッドの厚さ以上の厚さを有する、つぶすステップと
を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ファイバ・レーザを採用する高出力用途では、光ファイバを互いに接合することがしばしばある。テーパ付けされたファイバ束(TFB)内のテーパの後など、接合後に、クラッド内に光が伝播しているのが見いだされるのは、普通である。光ファイバがシングル・モード・ファイバ(SMF)であるかマルチモード・ファイバ(MMF)であるかに関わらず、クラッドから光を取り除くまたは取り去ることが好ましい。現在では、ポリマー・コーティングを使用して、クラッドからこの不要な光を取り去る。ポリマー・コーティングを使用することの1つの欠点は、材料に依存して、特定の角度で光がポリマーに入ることが可能な屈折率をポリマー・コーティングが有し、したがって、過熱し、その結果、損傷および障害をもたらすことになる場合がある。
【0008】
具体的には、ポリマー・コーティングには、脆弱な2つの区域が存在する。第1の区域は、テーパと出力ファイバとの間の接合直後の接着点である。接合が完全にコア−クラッドを整合していない場合、コアの光がクラッドに間接的に注入されるおそれがある。間接的に注入された光は、それがクラッドと整合する屈折率を有する材料に到達するまで、全内部反射(TIR)を介して、クラッドに沿って導かれることになる。その屈折率が整合する材料は、典型的には、ポリマー・コーティングである。
【0009】
光がポリマー・コーティングに入ると、ポリマー・コーティングが過熱し、しばしば熱障害および損傷をもたらす。ポリマー・コーティングが過熱する速度は、しばしば厚さの関数である。したがって、エッジが取り去られた接点では、ポリマー・コーティングがより薄くなり、これらのエッジが取り去られた接点において温度がより高くなる場合がある。ポリマー・コーティング内に導かれた、およそ200から300ミリワット(mW)のクラッドの光が、温度を著しく上昇させることを実験が示している。したがって、想像できるように、2キロワット(kW)の出力を取り扱うことを意味するレーザ・コンバイナへの応用例では、特に、現在の仕様が95以上のコンバイナ効率を必要としており、これは、光の100から200ワット(W)の範囲がクラッド領域内に導かれる可能性のあることに言い換えられるので、著しい過熱をもたらす場合がある。
【0010】
従来は、この過剰な加熱は、アルミニウム筐体にファイバを放熱するように、取り去られた区域にわたって流された低屈折率の接着材料により制御される。加えて、
熱的コンパウンドが使用されて、ファイバをさらに放熱し、ポリマー・コーティング内の残留光を散乱させた。残念ながら、そのような低屈折率の接着材料がシステムに堅さを加え、典型的には、クラッド光を取り除くために使用されない。したがって、クラッド内の光のほとんどは、接着点を越えて伝播する。
【0011】
脆弱な第2の区域は、クラッドが露出されるようにコーティングが取り去られている、光ファイバのモード・ストリッパ領域である。露出したクラッドによって、光がクラッドを通って伝播し、脱出することが可能になる。典型的には、コーティングが取り去られた後で、露出したファイバはアルミニウム筐体内に配置され、低屈折率の接着材料と接着される。次いで、
熱的コンパウンドがむき出しのファイバの長さを覆うように配置され、このことによって、光を通すと光を散乱することができる境界が作られる。散乱した光は無指向性となることができ、したがって、異なる開口数でファイバ内に再注入することができる。クラッドとモード・ストリッパ領域内の
熱的コンパウンドとの間の最初の接触は、ファイバの性能に悪影響を及ぼすおそれがある加熱問題を呈する。
【0012】
これらの過熱問題を考慮して、本開示は、クラッドから光を取り除き、それにより、過熱問題のいくつかを改善するためのガラス・バッファを教示する。クラッドよりも高い屈折率を有するガラス・バッファを使用することによって、余分のクラッド光を取り除くことになる。さらに、その熱特性に起因して、ガラス・バッファは、ポリマー・バッファよりも大きい熱耐性を有しており、それにより、任意の過熱問題がさらに低減される。
【0013】
いくつかの実施形態の概要を提供したので、ここで、図面に図示されるような実施形態の説明への詳細な参照がなされる。いくつかの実施形態がこれらの図面に関連して記載されるが、本明細書に開示される1つの実施形態または複数の実施形態に本開示を制限する意図はない。反対に、意図しているのは、全ての代替物、修正物および等価物をカバーすることである。
【0014】
熱的コンパウンド層を有するガラス・バッファ
図1は、クラッド104により囲まれるシリカ・コア102を有する光ファイバ100の、1つの実施形態を示す。ガラス・バッファ106は、クラッド104の径方向外側に、好ましくは、クラッド104と直接接触して位置決めされる。いくつかの実施形態では、ガラス・バッファ106は、クラッド104の約2倍の厚さである。他の実施形態では、ガラス・バッファ106は、クラッド104の2倍の厚さよりも厚い。ガラス・バッファ106は、クラッド104の屈折率よりも高い屈折率を有する。好ましい実施形態では、ガラス・バッファ106は、摂氏約900度と約1000度の間の融点温度、および約1.47の屈折率を有する、ホウケイ酸塩を含む。
【0015】
ガラスの熱特性に起因して、ガラス・バッファ106は、ポリマー・ベースのバッファよりも高い温度に耐えることが可能である。加えて、クラッド104とガラス・バッファ106との間の屈折率の違いに起因して、ガラス・バッファ106は、クラッド光を取り去ることが可能である。理解することができるように、ガラス・バッファの長さは、NAの違いに比例することになる(例えば、NAの違いが大きい場合はより短い長さ、NAの違いが小さい場合はより長い長さ)。ガラス・バッファ106は、既存の技術より優れてもいる。というのは、ガラス・バッファ106が、光ファイバのシリカ・コア102およびクラッド104の融点よりも低い融点を有しているからである。この違いによって、ファイバの性能の改善、およびガラス・バッファ106とクラッド104との間でより効果的な接着が可能になる。
【0016】
図1の実施形態を続けて、ガラス・バッファ106の径方向外側に
熱的コンパウンド層108(例えば、Therm−A−Form(登録商標)により製造され、市販されている、低濃度T644)がある。この
熱的コンパウンド層108の追加によって、光ファイバ100の熱特性がさらに改善される。
図1に示されるように、アルミニウム筐体110が、
熱的コンパウンド層108を囲む。
【0017】
動作では、高出力コア光101が、光ファイバのシリカ・コア102を通って伝播する。コア光101が、テーパまたは出力光接合112直後に、左から右に伝播する様子が示される。コア信号光101は、全内部反射(TIR)を介して、接合112でクラッド104内に注入することができる。クラッド光103は、クラッド光103がガラス・バッファ106に到達するまでクラッド104の長さを導かれ、ガラス・バッファ106のより高い屈折率に起因して、クラッド光103がガラス・バッファ106内に屈折され、そこで光が下流に向けて伝播され、最終的にガラス・バッファ106から自由空間114に放出される。したがって、ガラス・バッファ106は、疑似導波路としての役割を果たす。
【0018】
ポリマー・バッファを採用する従来のシステムでは、光の屈折によって、熱が上昇した区域をもたらし、過熱およびその後の障害の可能性につながることになる。しかし、従来のシステムとは異なり、ガラス・バッファ106の熱特性によって、過熱しにくくなる。
熱的コンパウンド層108は、より低い屈折率を有する。したがって、(あったとしても)非常に少量の光107が、ガラス・バッファ106から
熱的コンパウンド層108に脱出する。光がガラス・バッファ106から脱出する限り、脱出する光が、加熱されやすい区域120を生じさせる。しかし、
熱的コンパウンド層108が、ヒート・シンクを実現することにより、区域120に存在する熱をさらに減少させる。スルー・ザ・ガラス・バッファ106の方向変更と組み合わせたこのヒート・シンクによって、不要なクラッド光103に起因するファイバ損傷の危険性が低減される。
【0019】
ガラス・バッファの熱特性の改善の実験的検証
ガラス・バッファの熱特性は、実験的に確認された。ここで、第1のMMF(完全充填され、開口数(NA)0.16、105ミクロン・コア、125ミクロン・クラッドのマルチモード光ファイバ)は、第2のMMF(50ミクロン・コア、360ミクロン・クラッド)に接合された。第1のMMFのコアは、直接接合として、第2のMMFのコアに中心をおいて、位置合わせされた。ホウケイ酸塩バッファが、第2のMMFの360ミクロン・クラッドに、約5ミリメートル(5mm)の長さ、約2.5ミリメートル(2.5mm)の厚さで付けられた。
【0020】
コア・サイズは、第1のMMFから第2のMMFのクラッド内にコア光の注入を可能にするように、意図的に不一致にされた。23ワット(W)の出力が、第1のMMFへと放たれた。105ミクロンと50ミクロンの内部コア比は約23%であった。したがって、第1のMMFの105ミクロン・コア内を伝播する光の約23%が第2のMMFの50ミクロン・コアに伝播され、残りの光(約77%)が第2のMMFのクラッド内に注入されることになった。第2のMMF内のそのクラッド光は、次いで、ガラス・バッファにより取り去られた。第2のMMFのモード・ストリッパ領域の長さの端で行われた測定は、全出力の約23%が第2のMMFのコア内に残ったことを示した。
【0021】
さらに、ガラス・バッファがクラッド光の約77%を取り去ったことを確認するために、第2のMMFが劈開され、劈開点で基準測定が行われた。基準測定は、第2のMMFを高い屈折率を有するコーティングを有する第3のMMF(50ミクロン・コア、360ミクロン・クラッド)と、コア−クラッド整合接合することで行われた。第2のMMFの劈開された端で行われた基準測定は、第3のMMFの端で測定された出力に等しかった。換言すれば、第2のMMFの劈開された端と第3のMMFの端との間に違いは存在せず、したがって、全ての残留クラッド光がガラス・バッファによりクラッドから取り去られたことを確認した。
【0022】
熱的コンパウンド層なしのガラス・バッファ
図2は、クラッド204により囲まれるシリカ・コア202を有する光ファイバ200の、別の実施形態を示す。ガラス・バッファ206は、クラッド204の径方向外側に、やはり好ましくは、クラッド204と直接接触して位置決めされる。ガラス・バッファ206は、クラッド204の屈折率よりも高い屈折率を有し、好ましい実施形態では、ガラス・バッファ206は、ホウケイ酸塩を含む。ガラス・バッファ206の径方向外側に、ガラス・バッファ206を囲むアルミニウム筐体210がある。
【0023】
動作では、コア光201が、光ファイバのシリカ・コア202を通り、接合212後のクラッド204内も伝播する。クラッド光203は、クラッド光203がガラス・バッファ206に到達するまでクラッド204の長さを導かれ、ガラス・バッファ206のより高い屈折率に起因して、クラッド光203がガラス・バッファ206内に屈折され、そこで光が下流に向けて伝播され、最終的にガラス・バッファ206から自由空間214に放出される。
【0024】
図1の実施形態と同様に、(あったとしても)非常に少量の光207が、ガラス・バッファ206から脱出する。光がガラス・バッファ206から脱出する限り、脱出する光が、加熱されやすい、アルミニウム筐体210内の区域220を生じさせる。しかし、スルー・ザ・ガラス・バッファ206の方向変換が、アルミニウム筐体210の加熱を十分に低減する。
図1の実施形態とは異なり、
図2の実施形態は、
熱的コンパウンド層(
図1の108)を含まない。したがって、
熱的コンパウンド層を用いて起こるよりも、より多くの光および熱が、アルミニウム筐体内に吸収される。しかし、ガラス・バッファ206は、依然として、ポリマー・コーティングにわたって、光および結果として生じる熱を著しく減少させる。
【0025】
熱マップ
図3Aおよび
図3Bは、どのようにガラス・バッファ106が熱の蓄積を減少させるかを示す熱マップである。具体的には、
図3Aは、どのように
図1の光ファイバが機能するかを示す熱マップである。対照的に、
図3Bは、ポリマー・バッファを有する従来型の光ファイバ内の、加熱の区域を示す熱マップである。
【0026】
図3Aの熱マップを生成するために、2つのコアが不一致にされたファイバが互いに接合され、(左から右に伝播される)光がファイバ内に注入された。約23ワット(W)のマルチモード光がファイバ内に注入され、意図的なコアの不一致に起因して、マルチモード光がクラッド内に伝播した。ガラス・バッファの特性によって、ガラス・バッファが導波路としての役割を果たすことが可能となり、このことによって、光が脱出することが可能となった。ガラスの融点は、1000℃より高いので、ヒート・シンクは不必要であった。この構成によって、光の77%が取り去られ、デバイスは、約3.55℃/Wの熱係数に言い換えられる、約63℃に温度が上がることになった。
【0027】
図3Bの熱マップは、従来のポリマー・バッファおよびヒート・シンクとしての役割を果たす金属筐体を備える、コアが不一致にされたファイバを使用して生成された。やはり、コアの不一致によって、光がクラッド内に伝播されることになった。
図3Bでは、約22Wのマルチモード光がファイバ内に注入され、その光の約65%が取り去られた。この構成によって、デバイスは、約6.57℃/Wの熱係数(ガラス・バッファの熱係数の2倍近く)に言い換えられる、約94℃に温度が上がることになった。換言すれば、ポリマー・バッファの熱特性に起因して、ファイバから取り去られた光は伝送されず、代わりに熱エネルギーに変換された。金属筐体がヒート・シンクとしての役割を果たす一方で、
図3Bの構成は、より多くの熱を生成し、最終的に、熱のためにくすぶった。
【0028】
したがって、
図3Aおよび
図3Bの例からわかるように、ガラス・バッファの性能(
図3A)は、ポリマー・バッファの性能(
図3B)より優れている。
【0029】
製造方法
ガラス・バッファ106、206を有する光ファイバ100、200、ならびにそれぞれの性能特性(
図3Aおよび
図3B)を記載してきたが、ガラス・バッファ106、206を有する光ファイバ100、200を製造する方法の1つの実施形態を示す
図4に注意を向けられたい。
図4の実施形態で示されるように、光ファイバが、クラッドよりも高い屈折率およびクラッドまたはコアよりも低い融点を有する、開放端ガラス・チューブの中に挿入される(401)。1つの好ましい実施形態では、ガラス・チューブはホウケイ酸塩からなる。次いで、ガラス・チューブおよび光ファイバは、ガラス・チューブの融点に加熱される(402)。印加される熱によって、光ファイバの周りでガラス・チューブがつぶれ(403)、ガラス・バッファを形成することになる。ガラス・チューブは光ファイバのコアまたはクラッドの融点よりも低い融点を有するので、ファイバの周りのガラス・チューブのつぶれ(403)によって、シリカ・コアまたはクラッドへの外乱のないガラス・バッファが作られる。一度形成されると、ガラス・バッファのより高い屈折率および優れた付着品質のために、ガラス・バッファは、光ファイバに対し、従来のポリマー・バッファよりも良好な界面を提供する。
【0030】
例示的な実施形態が示され、記載されてきたが、記載されたような開示に対し、いくつかの変更、修正、または改変をすることができることは、当業者には明らかであろう。例えば、好ましい実施形態では、特にホウケイ酸塩が述べられているが、所望のより低い融点およびより高い屈折率を有する他の材料を使用してバッファを形成できることが、当業者には明白であろう。また、1つの実施形態では、(Therm−A−Form(登録商標)からの)T644が述べられているが、同様の特性を有する異なる
熱的コンパウンドも、代替実施形態で使用できることが、当業者には理解されよう。したがって、全てのそのような変更、修正、および改変は、本開示の範囲内であると理解されるべきである。