特許第6266405号(P6266405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266405射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法および鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266405
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法および鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/20 20060101AFI20180115BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B29C45/20
   B22D17/20 N
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-68788(P2014-68788)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189128(P2015-189128A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】500077672
【氏名又は名称】三洋熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 勝彦
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−233892(JP,A)
【文献】 特開昭62−128723(JP,A)
【文献】 特開2013−181819(JP,A)
【文献】 特開2007−278640(JP,A)
【文献】 特開平07−323442(JP,A)
【文献】 特開昭64−058518(JP,A)
【文献】 実開昭63−192014(JP,U)
【文献】 特開昭62−042818(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3007252(JP,U)
【文献】 特開2003−201137(JP,A)
【文献】 特開平10−166392(JP,A)
【文献】 特開2005−319639(JP,A)
【文献】 実開昭58−117918(JP,U)
【文献】 特開2009−208397(JP,A)
【文献】 特開2015−191805(JP,A)
【文献】 米国特許第04875845(US,A)
【文献】 米国特許第04378963(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0102323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
B22D 15/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形装置の射出ノズルの外表面に形成された差し込み穴に差し込まれる棒状の部分を有する温度センサーと、前記射出ノズルの前記外表面上に沿って配設される鋳込みヒーターと、をセットにして前記射出ノズルに取り付ける、射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法であって、
前記鋳込みヒーターにおいて前記射出ノズル側となる裏側面から当該裏側面とは反対側に位置される表側面までを前記温度センサーが挿通可能な内径で貫通してなる第1貫通孔と、当該第1貫通孔の内壁面から前記鋳込みヒーターの端縁面までを貫通してなる第2貫通孔とを有する貫通分岐孔が、前記鋳込みヒーターに形成された状態となるように当該鋳込みヒーターを用意する鋳込みヒーター用意ステップと、
前記鋳込みヒーターが前記射出ノズルの前記外表面上に沿い、かつ、前記第1貫通孔の位置と前記差し込み穴の位置とが一致された状態となるように前記鋳込みヒーターを配設する鋳込みヒーター配設ステップと、
前記第1貫通孔と前記差し込み穴とに前記温度センサーを連通させることで、前記鋳込みヒーターが前記射出ノズルの前記外表面に沿う方向に移動されないようにする温度センサー連通ステップと、
前記第2貫通孔に螺合させることができる大きさに形成されたねじを前記第2貫通孔に対してねじ込むことで、前記温度センサーを前記第1貫通孔の内壁面に押し付けて、当該第1貫通孔に対する前記温度センサーの抜け止めを行う温度センサー抜け止めステップと、
を有している、
射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法。
【請求項2】
射出成形装置の射出ノズルの外表面に形成された差し込み穴に差し込まれる棒状の部分を有する温度センサーと、前記射出ノズルの前記外表面上に沿って配設される鋳込みヒーターと、をセットにして前記射出ノズルに取り付けた、鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造であって、
前記鋳込みヒーターは、前記射出ノズル側となる裏側面から当該裏側面とは反対側に位置される表側面までを前記温度センサーが挿通可能な内径で貫通してなる第1貫通孔と、当該第1貫通孔の内壁面から前記鋳込みヒーターの端縁面までを貫通してなる第2貫通孔とを有する貫通分岐孔を備え、かつ、前記射出ノズルの前記外表面上に前記第1貫通孔の位置と前記差し込み穴の位置とが一致された状態となるように配設され、
前記温度センサーは、前記第1貫通孔と前記差し込み穴とに連通されることで前記鋳込みヒーターが前記射出ノズルの前記外表面に沿う方向に移動されないようにし、かつ、前記第2貫通孔に螺合させることができるねじの前記第2貫通孔に対するねじ込みによって前記温度センサーを前記第1貫通孔の内壁面に押し付けることで、当該第1貫通孔に対する抜け止めがなされている、
鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置の射出ノズルの外表面上に沿って配設されるヒーターと、棒状の温度センサーとをセットにして上記射出ノズルに取り付ける方法およびその取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記取り付け構造に関する技術としては、例えば下記の特許文献1に記載されている技術が知られている。この技術では、板状ヒーターなどの加熱ヒーターを射出成形装置の射出ノズルの外表面に沿うように取り付けるための取り付け部を、筒状のセンサーホルダーが固定されたものにする。そして、上記技術では、上記センサーホルダーの筒と上記射出ノズルに形成された開孔部とに丸棒状の温度センサーを連通させる。上記技術によれば、温度センサーによって加熱ヒーターが射出ノズルの外表面上に沿う方向に移動されないようにされた加熱ヒーターの取り付け構造を実現させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4914386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載されている技術では、上記取り付け構造を実現させるために、この加熱ヒーターの取り付け部に固定される筒状のセンサーホルダーが必要となる。このため、上記技術により上記取り付け構造を実現させる際には、この取り付け構造が上記センサーホルダーによって複雑化されるという問題が発生していた。
【0005】
本発明は、射出成形装置の射出ノズルの外表面上に沿って配設されるヒーターと、棒状の温度センサーとをセットにして射出ノズルに取り付ける際に、温度センサーをヒーターに保持させるものである。そして、本発明は、温度センサーを保持するためのセンサーホルダーの部品を不要として、温度センサーによりヒーターが射出ノズルの外表面上に沿う方向に移動されないようにされたヒーターの取り付け構造を、より単純にすることを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法および鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造は以下の手段をとる。
【0007】
まず、第1の発明は、棒状の部分を有する温度センサーと鋳込みヒーターとをセットにして射出成形装置の射出ノズルに取り付ける、射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法である。ここで、温度センサーの棒状の部分は、射出成形装置の射出ノズルの外表面に形成された差し込み穴に差し込まれるものである。また、鋳込みヒーターは、射出ノズルの外表面上に沿って配設されるものである。
【0008】
上記第1の発明は、後述する貫通分岐孔が鋳込みヒーターに形成された状態となるようにこの鋳込みヒーターを用意する鋳込みヒーター用意ステップを有している。ここで、貫通分岐孔は、後述する第2貫通孔と後述する第1貫通孔とを有するものである。この第1貫通孔は、鋳込みヒーターにおいて射出ノズル側となる裏側面からこの裏側面とは反対側に位置される表側面までを温度センサーが挿通可能な内径で貫通してなるものである。また、第2貫通孔は、第1貫通孔の内壁面から鋳込みヒーターの端縁面までを貫通してなるものである。また、上記第1の発明は、鋳込みヒーターが射出ノズルの外表面上に沿い、かつ、第1貫通孔の位置と差し込み穴の位置とが一致された状態となるように鋳込みヒーターを配設する鋳込みヒーター配設ステップを有している。また、上記第1の発明は、第1貫通孔と差し込み穴とに温度センサーを連通させることで、鋳込みヒーターが射出ノズルの外表面に沿う方向に移動されないようにする温度センサー連通ステップを有している。また、上記第1の発明は、第2貫通孔に螺合させることができる大きさに形成されたねじを第2貫通孔に対してねじ込むことで、温度センサーを第1貫通孔の内壁面に押し付けて、この第1貫通孔に対する温度センサーの抜け止めを行う温度センサー抜け止めステップを有している。
【0009】
上記第1の発明によれば、射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターと温度センサーとをセットにして取り付ける際に、この温度センサーは上記射出ノズルの外表面上に沿って配設される鋳込みヒーターの厚みの範囲内で抜け止めされた状態に保持される。これにより、温度センサーを保持するためのセンサーホルダーの部品を不要として、温度センサーにより鋳込みヒーターが射出ノズルの外表面に沿う方向に移動されないようにされた鋳込みヒーターの取り付け構造を、より単純にすることができる。
【0010】
ついで、第2の発明は、射出成形装置の射出ノズルの外表面に形成された差し込み穴に差し込まれる棒状の部分を有する温度センサーと鋳込みヒーターとをセットにして射出ノズルに取り付けた、鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造である。この鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造においては、射出ノズルに取り付けられる鋳込みヒーターは、射出ノズルの外表面上に沿って配設されるものである。
【0011】
上記第2の発明において、鋳込みヒーターは、後述する第1貫通孔と後述する第2貫通孔とを有する貫通分岐孔を備えたものである。ここで、第1貫通孔は、射出ノズル側となる裏側面からこの裏側面とは反対側に位置される表側面までを温度センサーが挿通可能な内径で貫通してなるものである。また、第2貫通孔は、第1貫通孔の内壁面から鋳込みヒーターの端縁面までを貫通してなるものである。また、上記鋳込みヒーターは、射出ノズルの外表面上に第1貫通孔の位置と差し込み穴の位置とが一致された状態となるように配設される。また、上記第2の発明において、温度センサーは、第1貫通孔と差し込み穴とに連通されることで鋳込みヒーターが射出ノズルの外表面に沿う方向に移動されないようにする。また、上記温度センサーは、第2貫通孔に螺合させることができるねじの第2貫通孔に対するねじ込みによって温度センサーを第1貫通孔の内壁面に押し付けることで、この第1貫通孔に対する抜け止めがなされている。
【0012】
上記第2の発明によれば、射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターとセットで取り付けられる温度センサーは、上記射出ノズルの外表面上に沿って配設される鋳込みヒーターの厚みの範囲内で抜け止めされた状態に保持される。これにより、温度センサーを保持するためのセンサーホルダーの部品を不要として、温度センサーにより鋳込みヒーターが射出ノズルの外表面上に沿う方向に移動されないようにされた鋳込みヒーターの取り付け構造を、より単純にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態にかかる鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造を表した斜視図である。
図2】上記実施形態にかかる鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造を表した正面図である。
図3図2のIII−III線断面矢視図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法を表した説明図であり、本発明の鋳込みヒーター配設ステップを表す。
図5】本発明の一実施形態にかかる射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法を表した説明図であり、本発明の温度センサー連通ステップを表す。
図6】本発明の一実施形態にかかる射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法を表した説明図であり、本発明の温度センサー抜け止めステップを表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図6を用いて説明する。なお、以下において、鋳込みヒーター10のシーズヒーター10A(図2参照)に電力を供給するために使用されるリード線などの付随的な構成については、その図示および詳細な説明を省略する。
【0015】
始めに、本発明の一実施形態にかかる鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造について、主に図1ないし図3を用いて説明する。この取り付け構造は、図1ないし図3に示すように、射出成形装置(図示省略)の射出ノズル20に棒状の温度センサー21と筒形状の鋳込みヒーター10とをセットにして取り付けた、鋳込みヒーターの射出成形装置の射出ノズルへの取り付け構造である。ここで、鋳込みヒーター10の筒形状は、図1に示すように、射出ノズル20において鋳込みヒーター10が取り付けられる部分の形状(例えば直円筒形状)を取り巻くことができる形状(例えば直円筒形状)として設定されるものである。
【0016】
鋳込みヒーター10は、図2および図3に示すように、つるまき線形状(図2参照)に曲げられたシーズヒーター10Aを金属(具体的にはアルミニウム)によって鋳ぐるんで鋳ぐるみ部11を形成したものである。また、鋳込みヒーター10は、鋳ぐるみ部11に内蔵されたシーズヒーター10Aに電力が供給されることで、このシーズヒーター10Aを発熱させて射出ノズル20を加熱するものである。
【0017】
なお、鋳込みヒーター10は、図2および図4に示すように、その筒形状の内部に射出ノズル20が差し込まれた状態でこの射出ノズル20に取り付けられ、かつ、この取り付けの際に射出ノズル20の外表面20A上に沿ってこの外表面20Aに密着されるようになっている。この構成によれば、鋳込みヒーター10から射出ノズル20への熱伝導効率が向上された鋳込みヒーター10を提供することができる。
【0018】
温度センサー21は、図3に示すように、一端が閉塞された金属管であるシース21Aの内部に絶縁物21Cおよび熱電対21Bを封入して、この熱電対21Bが発生させる熱起電力を温度の検出結果として制御装置(図示省略)に出力させるようにしたものである。ここで、温度センサー21は、射出ノズル20の外表面20Aに垂直にうがたれた差し込み穴20Bに差し込まれて密嵌されることで、射出ノズル20の温度に対応する検出結果を出力するようになっている。なお、上記制御装置は、温度センサー21が出力する温度の検出結果に対応して鋳込みヒーター10のシーズヒーター10Aに供給する電力の大きさを調整することで、射出ノズル20の温度のフィードバック制御を実現させるものである。
【0019】
ところで、温度センサー21のシース21Aおよび熱電対21Bは、それぞれ可とう性を有するように形成されている。また、温度センサー21の絶縁物21Cは、絶縁物質からなる粉粒体(具体的には酸化マグネシウムの粉末)とされることで、シース21Aおよび熱電対21Bの変形を許容するようになっている。これにより、温度センサー21は、図1および図3に示すように、シース21Aおよび熱電対21Bの可とう性により決定される曲げ範囲内で曲げ変形させた後に、その曲げ状態を維持することができるようになっている。
【0020】
さて、鋳込みヒーター10は、図1および図3に示すように、射出ノズル20に対して、その外表面20Aに形成された差し込み穴20Bに覆いかぶさるように配設される。ここで、鋳込みヒーター10は、差し込み穴20Bに覆いかぶさる部分に貫通分岐孔12を備えることで、温度センサー21の差し込み穴20Bへの差し込みを実現させるようになっている。
【0021】
貫通分岐孔12は、図3に示すように、鋳ぐるみ部11の一方側(図示上側)の端縁面11Cに平行に形成された第1貫通孔12Aから、端縁面11Cに垂直に形成された第2貫通孔12Bを直交分岐させたT字穴として形成されている。より詳しくは、貫通分岐孔12は、鋳ぐるみ部11において射出ノズル20側(図示右側)となる裏側面11Aから裏側面11Aとは反対側(図示左側)となる表側面11Bまでを、温度センサー21が挿通可能な内径で貫通してなる第1貫通孔12Aを備えている。また、貫通分岐孔12は、第1貫通孔12Aの内壁面のうち上記一方側となる内壁面から、鋳ぐるみ部11の端縁面11Cまでを貫通してなる第2貫通孔12Bを備えている。
【0022】
第1貫通孔12Aは、射出ノズル20の外表面20Aへの鋳込みヒーター10の配設(図4参照)の際に、外表面20Aに開口される差し込み穴20Bの位置に一致されるように位置される。この差し込み穴20Bと第1貫通孔12Aとには、図1および図3に示すように、温度センサー21が連通された状態に差し込まれている。これにより、温度センサー21は、鋳込みヒーター10が射出ノズル20の外表面20Aに沿う方向に移動されないようにすることを実現させる。
【0023】
第2貫通孔12Bは、図3に示すように、その内壁面にタッピング加工によってねじ山が形成され、このねじ山によっていもねじ13(例えば平先のホーローセットスクリュー)を螺合させることができる構成とされている。このいもねじ13は、本発明における「ねじ」に相当する。なお、本明細書において、「いもねじ」は、図3に示された平先のホーローセットスクリューに限定されず、貫通孔の内部に全体を入り込ませた状態でこの貫通孔に螺合することができる任意の種類のねじを指すものである。すなわち、本明細書における「いもねじ」は、ながねじなどの全ねじおよびスタッドボルトを含んだ概念である。
【0024】
いもねじ13は、その全体が第2貫通孔12Bの内部に入り込んだ状態で第1貫通孔12A側(図示下側)に向かってねじ込まれることで、この第1貫通孔12Aの内壁面に温度センサー21を押し付けてこの温度センサー21の抜け止めを行うものである。言いかえると、温度センサー21は、第2貫通孔12Bの内部に全体が入り込んだいもねじ13の第2貫通孔12Bに対するねじ込みによって第1貫通孔12Aの内壁面に押し付けられることで、この第1貫通孔12Aに対する抜け止めがなされている。
【0025】
上述した各構成によれば、射出成形装置の射出ノズル20に鋳込みヒーター10とセットで取り付けられる温度センサー21は、射出ノズル20の外表面20A上に沿って配設される鋳込みヒーター10の厚みの範囲内で抜け止めされた状態に保持される。これにより、温度センサー21を保持するためのセンサーホルダーの部品を不要として、温度センサー21により鋳込みヒーター10が外表面20Aに沿う方向に移動されないようにされた鋳込みヒーター10の取り付け構造を、より単純にすることができる。
【0026】
また、いもねじ13の全体を第2貫通孔12Bに入り込ませる構成によれば、射出ノズル20に取り付けられた鋳込みヒーター10における端縁面11Cからの突出をなくして、この突出と射出ノズル20に取り付けられる他部材との干渉をなくすことができる。ここで、上記「他部材」は、具体的には、鋳込みヒーター10とは別に射出ノズル20に取り付けられる加熱ヒーター(図示省略)などである。
【0027】
なお、本明細書において、「鋳込みヒーター10の厚み」とは、鋳込みヒーター10の鋳ぐるみ部11における、裏側面11Aと表側面11Bとの間の厚み(図3参照)のことをいう。ここで、本実施形態の鋳込みヒーター10は、その厚みが一定とされ、かつ、鋳ぐるみ部11において端縁面11Cが裏側面11Aおよび表側面11Bのそれぞれに直交されるように形成されている。このため、射出ノズル20の径方向(図3で見て左右方向)で見た端縁面11Cの幅は、上記鋳込みヒーター10の厚みと等しくなっている。
【0028】
ところで、貫通分岐孔12の第1貫通孔12Aは、図1および図3に示すように、鋳込みヒーター10の鋳ぐるみ部11において上述した一方側(図3で見て上側)となる筒端部分に形成されている。この構成によれば、第1貫通孔12Aを上記一方側の端縁面11Cに近づけて配設することで第2貫通孔12Bの長さを短くし、この第2貫通孔12Bに対するいもねじ13のねじ込みを容易にすることが可能となる。
【0029】
ついで、上述した鋳込みヒーター10の射出成形装置の射出ノズル20への取り付け構造を実現させる方法について、主に図4ないし図6を用いて説明する。なお、以下においては、温度センサー21を適宜に曲げ変形させるステップなどの付随的なステップについて、その図示および詳細な説明を省略する。
【0030】
上記方法においては、まず、上述した構成の貫通分岐孔12が鋳込みヒーター10に形成された状態となるようにこの鋳込みヒーター10を用意する。このステップは、本発明における「鋳込みヒーター用意ステップ」に相当する。
【0031】
ついで、図4に実線および隠れ線で示すように、貫通分岐孔12の第2貫通孔12Bにおける端縁面11C上の開口にいもねじ13をセットして、このいもねじ13を第2貫通孔12Bに仮留めさせる。このステップは、以下においては「仮留めステップ」とも称する。なお、上記いもねじ13の仮留めは、図4および図5に示すように、第2貫通孔12Bにいもねじ13をねじ入れて、このいもねじ13において締結器具が差し込まれる側の端部(図5で見て上側の端部)を端縁面11Cから突出された状態とすることで行われる。
【0032】
さらに、図4に仮想線で示すように、鋳込みヒーター10をその筒形状の内部に射出ノズル20が差し込まれた状態に配設する。このステップは、本発明における「鋳込みヒーター配設ステップ」に相当する。この鋳込みヒーター配設ステップにおいては、鋳込みヒーター10は、射出ノズル20を取り巻いてこの射出ノズル20の外表面20A上に沿った状態とされる。このため、鋳込みヒーター10は、射出ノズル20の外表面20Aに沿う方向(すなわち、上述した射出ノズル20の直円筒形状における周方向および軸方向)以外の方向への移動が規制される。また、上記鋳込みヒーター配設ステップにおいては、鋳込みヒーター10は、その配設位置が射出ノズル20の外表面20Aに沿う方向への移動により調整されることで、その第1貫通孔12Aの位置が射出ノズル20の差し込み穴20Bの位置に一致される。
【0033】
続いて、図5に示すように、上記鋳込みヒーター配設ステップにおいて位置が調整された鋳込みヒーター10の第1貫通孔12Aと射出ノズル20の差し込み穴20Bとに温度センサー21を連通させる。このステップは、本発明における「温度センサー連通ステップ」に相当する。この温度センサー連通ステップにより、鋳込みヒーター10は、温度センサー21によって差し込み穴20Bにピン留めされた状態となり、射出ノズル20の外表面20Aに沿う方向に移動されないようにされる。なお、鋳込みヒーター10は、上記鋳込みヒーター配設ステップにおいて射出ノズル20の外表面20Aに沿う方向以外の方向への移動が規制されているため、上記温度センサー連通ステップの後には射出ノズル20に対して動かないように固定された状態となる。
【0034】
そして、図6に示すように、上記温度センサー連通ステップにおいて鋳込みヒーター10を差し込み穴20Bにピン留めした温度センサー21の抜け止めを行う。このステップは、本発明における「温度センサー抜け止めステップ」に相当する。この温度センサー抜け止めステップにより、温度センサー21および鋳込みヒーター10は両方とも射出ノズル20に取り付けられた状態となり、上述した鋳込みヒーター10の射出成形装置の射出ノズル20への取り付け構造は完成される。
【0035】
上記温度センサー抜け止めステップにおいては、まず、上述した仮留めステップにおいて第2貫通孔12Bに仮留めされたいもねじ13を回転させて、いもねじ13の全体を第2貫通孔12Bの内部に螺合された状態に入り込ませる作業を行う。この作業は、以下においては「第1の作業」とも称する。この際、上述した仮留めステップを上述した鋳込みヒーター配設ステップの前に実行することで、いもねじ13を第2貫通孔12Bの開口にセットする際に射出ノズル20が邪魔になることを回避して、上述した各ステップに必要な作業量を減らすことができる。なお、上記第1の作業において、いもねじ13の回転は、射出ノズル20との干渉を回避できるように適宜選択された締結器具(例えば図6に示すヘキサゴンレンチ90を参照)によって実現される。
【0036】
ついで、全体が第2貫通孔12Bに螺合されたいもねじ13を上記締結器具によってさらに回転させることでいもねじ13を図6の仮想線で示す位置にまでねじ込み、このいもねじ13によって第1貫通孔12Aに挿通された温度センサー21を押圧する作業を行う。この作業は、以下においては「第2の作業」とも称する。この第2の作業により、温度センサー21は、第1貫通孔12Aの内壁面に押し付けられ、この内壁面との間に発生される摩擦により第1貫通孔12Aに対して抜け止めされた状態(図3参照)となる。
【0037】
上述した各ステップによれば、射出ノズル20に鋳込みヒーター10と温度センサー21とをセットにして取り付ける際に、この温度センサー21は射出ノズル20の外表面20A上に沿った鋳込みヒーター10の厚みの範囲内で抜け止めされて保持される。これにより、温度センサー21を保持するセンサーホルダーの部品を不要として、温度センサー21により鋳込みヒーター10が外表面20Aに沿う方向に移動されないようにされた鋳込みヒーター10の取り付け構造を、より単純にすることができる。
【0038】
また、いもねじ13の全体を第2貫通孔12Bに入り込ませる第1の作業によれば、射出ノズル20に取り付けられる鋳込みヒーター10における端縁面11Cからの突出をなくし、この突出と射出ノズル20に取り付けられる他部材との干渉をなくすことができる。ここで、上記「他部材」は、具体的には、鋳込みヒーター10とは別に射出ノズル20に取り付けられる加熱ヒーター(図示省略)などである。
【0039】
本発明は、上述した一実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0040】
(1)本発明を適用することができる鋳込みヒーターの形状は直円筒形状に限定されない。すなわち、本発明の鋳込みヒーターの筒形状を、直円筒形状から任意の筒形状(例えば楕円筒形状あるいは角筒形状など)に変更した変形例を採用することができる。また、射出成形装置の射出ノズルに取り付けられる平板形状あるいは湾曲板形状の鋳込みヒーターに対して本発明を適用することもできる。
【0041】
(2)上述した温度センサー抜け止めステップにおける温度センサーの抜け止めは、この温度センサーと第1貫通孔の内壁面との摩擦によって実現されるものに限定されない。すなわち、例えば錐体形状のとがり先を有するいもねじを第2貫通孔にねじ込んで、上記いもねじのとがり先を温度センサーに突き刺して温度センサーを抜け止めする変形例を採用することができる。また、例えば先端部分にマシンキーが一体あるいは別体に付属されたいもねじを第2貫通孔にねじ込んで、上記いもねじのマシンキーを温度センサーに前もって形成されたキー溝に嵌合させて温度センサーを抜け止めする変形例を採用することもできる。
【0042】
(3)本発明において、温度センサーは、鋳込みヒーターの第1貫通孔と射出ノズルの差し込み穴とに連通することが可能な棒状の部分を有するものであればよい。すなわち、温度センサーを、例えば測温抵抗体、サーミスタ温度計、バイメタル温度計、あるいは、液体充満圧力式温度計など、棒状の部分を有する任意の種類の温度センサーに変更することができる。
【0043】
(4)本発明は、鋳込みヒーターの第2貫通孔にねじ込まれるいもねじを任意の種類のねじ(例えば半ねじ)に変更した場合でも実施することができるものである。
【0044】
(5)本発明において、貫通分岐孔の具体的な構成および形状は、第1貫通孔に挿通される温度センサーおよび第2貫通孔にねじ込まれるねじの種類および形状に応じて適宜変更することができるものである。
【0045】
(6)本発明の射出成形装置の射出ノズルに鋳込みヒーターを取り付ける方法において、各ステップおよび作業の実行順は上述した実施形態の順序に限定されない。すなわち、例えば上述した仮留めステップを上述した第1の作業の直前に実行するなど、各ステップおよび作業の実行順を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 鋳込みヒーター
10A シーズヒーター
11 鋳ぐるみ部
11A 裏側面
11B 表側面
11C 端縁面
12 貫通分岐孔
12A 第1貫通孔
12B 第2貫通孔
13 いもねじ(ねじ)
20 射出ノズル
20A 外表面
20B 差し込み穴
21 温度センサー
21A シース
21B 熱電対
21C 絶縁物
90 ヘキサゴンレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6