【実施例】
【0041】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、実施例1−1〜1−3、3−1〜3−3、3−8は参考例である。
【0042】
<アルミニウム酸化物系複合体の合成>
水酸化アルミニウム(式量78)40g(0.513mol)と水60gを混合して、ビーズミルで湿式粉砕して平均粒子径0.4μmの水酸化アルミニウムスラリーを作製した。このスラリーに0.4g(0.01mol)の水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して、よく撹拌した後、300℃で2時間、水熱状態で加熱し、平均粒子径1.2μm、厚さ100nm、AlO
0.9(OH)
1.2である板状であるアルミニウム酸化物系複合体1(複合体1)を合成した。
【0043】
複合体1を、大気中、430℃で6時間加熱して、AlO
1.05(OH)
0.9であるアルミニウム酸化物系複合体2(複合体2)を得た。
【0044】
複合体1を、大気中、450℃で6時間加熱して、AlO
1.2(OH)
0.6であるアルミニウム酸化物系複合体3(複合体3)を得た。
【0045】
複合体1を、大気中、460℃で4時間加熱して、AlO
1.3(OH)
0.4であるアルミニウム酸化物系複合体4(複合体4)を得た。
【0046】
複合体1を、大気中、470℃で3時間加熱して、AlO
1.4(OH)
0.2であるアルミニウム酸化物系複合体5(複合体5)を得た。
【0047】
複合体1を、500℃で6時間加熱して、酸化アルミニウム(Al
2O
3:AlO
x(OH)
y、x=1.5、y=0)であるアルミニウム酸化物系複合体6(複合体6)を得た。
【0048】
水酸化アルミニウム(式量78)40g(0.513mol)と水60gを混合して、ビーズミルで湿式粉砕して平均粒子径0.4μmの水酸化アルミニウムスラリーを作製した。このスラリーに0.4g(0.01mol)の水酸化ナトリウムを添加して、よく撹拌した後、170℃で4時間、水熱状態で加熱し、粒状の平均粒子径0.8μm、AlO
0.4(OH)
2.2であるアルミニウム酸化物系複合体7(複合体7)を合成した。
【0049】
(実施例1−1)
下記の材料をホモジナイザー(プライミクス(PRIMIX)製、商品名:T.K.HOMODISPER Model 2.5、回転数1500rpm)で3時間撹拌して、分散液(1)を作製した。
【0050】
複合体2 60質量部
特殊カルボン酸型高分子活性剤(花王製、商品名:ポイズ(POIZ)520)
0.5質量部
蒸留水 100質量部
【0051】
分散液(1)100質量部に、濃度0.6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(日本製紙(Nippon Paper Industries)製、商品名:MAC500LC)100質量部とアクリル系ラテックス(JSR製、商品名:TRD202A、濃度40.2質量%)を6質量部添加して、塗液(1)を作製した。
【0052】
延伸レギュラーポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(0.1dtex、長さ5mm)30質量部、延伸レギュラーPET繊維(0.3dtex、長さ5mm)40質量部、未延伸PET繊維(0.2dtex、長さ4mm)30質量部の構成で、湿式法により目付量9.5g/m
2のウェッブを作製した。この時の乾燥温度は130℃であった。次に、190℃で熱カレンダー処理を施し、厚さ15μmの多孔性支持体(1)を作製した。塗液(1)を多孔性支持体(1)に含浸させた後、100℃で乾燥させ、塗工量11g/m
2で、厚さ24μmのセパレータを得た。
【0053】
(実施例1−2)
実施例1−1における複合体2の代わりに複合体3を用いて、塗工量11g/m
2で、厚さ24μmのセパレータを得た。
【0054】
(実施例1−3)
実施例1−1における複合体2の代わりに複合体4を用いて、塗工量12g/m
2で、厚さ24μmのセパレータを得た。
【0055】
(比較例1−1)
実施例1−1における複合体2の代わりに複合体1を用いて、塗工量11g/m
2で、厚さ24μmの比較セパレータを得た。
【0056】
(比較例1−2)
実施例1−1における複合体2の代わりに複合体5を用いて、塗工量12g/m
2で、厚さ24μmの比較セパレータを得た。
【0057】
(比較例1−3)
実施例1−1における複合体2の代わりに複合体6を用いて、塗工量12g/m
2で、厚さ24μmの比較セパレータを得た。
【0058】
(比較例1−4)
実施例1−1における複合体2の代わりに複合体7を用いて、塗工量14g/m
2で、厚さ24μmの比較セパレータを得た。
【0059】
[膜抵抗の測定]
直径3cmと直径1.5cmの円柱形の銅の間に電解液を含浸させたセパレータを挟み込みこんだ。電解液には、リチウム二次電池用電解液(溶媒:EC/DEC/DME=1/1/1(体積比)、支持電解質:六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)1mol/l)を用いた。両銅を電極として、Solatron製、Electrochemical Mesurement Unit SI−1280Bを用いて、電極間の抵抗値を20kHz、10mVのバイアス電圧で測定した。結果を表1に与えた。
【0060】
[電池特性の評価]
アルミニウム箔上に、マンガン酸リチウム、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを100/5/3の質量比で200g/m
2塗工し、溶剤を乾燥して、さらにプレスをかけて正極を作製した。一方、銅箔上に、球状人造黒鉛、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを85/15/5の質量比で100g/m
2塗工し、乾燥後プレスをかけて負極を作製した。
【0061】
両電極間にセパレータを挟み込み、リチウム二次電池用電解液(溶媒:EC/DEC/DME=1/1/1(体積比)、支持電解質:LiPF
6 1mol/l)を滴下し、減圧化でアルミニウム箔ラミネートフィルム中に封止して、リチウム二次電池を作製した。次に、リチウム二次電池を0.2Cで4.2Vまで充電し、0.2C(300分の放電時間)の条件での放電開始から30分後の電圧から電圧降下値を求め、この電圧降下値から内部抵抗を測定した。さらに、1Cでの充放電を100回繰り返して、1回目の放電容量に対する100回目の放電容量の割合(容量維持率)を測定した。結果を表1に与えた。
【0062】
多孔性支持体と無機微粒子を含有してなる多孔質膜層を有する電池用セパレータにおいて、無機微粒子が、水酸化アルミニウムが残存するアルミニウム酸化物系複合体である場合、即ち無機微粒子がAlO
x(OH)
y(0.0≦x≦1.0、2x+y=3)の場合(比較例1−1及び1−4)、電解液に対する濡れ性が高く、膜抵抗と電池の内部抵抗は低く抑制できたが、電池を繰り返し使用した場合、電池の容量低下が激しかった。比較例1−4では、ガスの発生も確認され、電池が膨張した。一方、無機微粒子が酸化アルミニウムの構造が主となるアルミニウム酸化物系複合体である場合、即ち無機粒子がAlO
x(OH)
y(1.3<x、2x+y=3)の場合(比較例1−2及び1−3)、電解液に対する濡れ性が低下して、膜抵抗や電池の内部抵抗が上昇するという好ましくない結果を得た。これに対し、無機微粒子がAlO
x(OH)
y(1.0<x≦1.3、0.4≦y<1.0、2x+y=3)で示されるアルミニウム酸化物系複合体である実施例1−1〜1−3の場合、膜抵抗と電池の内部抵抗が低く、かつ繰り返し使用時にも電池の容量低下が抑えられ、耐久性に優れた電池用セパレータが得られた。
【0063】
【表1】
【0064】
<アルミニウム酸化物系複合体の合成>
アンモニウムアルミニウム炭酸塩(NH
4AlCO
3(OH)
2、式量139)70g(0.504mol)と水100gを混合し、ビーズミルで湿式粉砕し、平均粒子径0.5μmのスラリーを作製した。これを160℃で12時間、水熱状態で加熱し、平均粒子径1.0μm、AlO
1.1(OH)
0.8の粒状のアルミニウム酸化物系複合体8を合成した。アルミニウム酸化物系複合体8のX線回折スペクトルを測定し、
図1に与えた。
【0065】
水酸化アルミニウム(式量78)40g(0.513mol)と水60gを混合して、ビーズミルで湿式粉砕して平均粒子径0.3μmの水酸化アルミニウムスラリーを作製した。このスラリーに0.4g(0.01mol)の水酸化ナトリウムを添加して、よく撹拌した後、120℃で4時間、水熱状態で加熱し、平均粒子径1.0μm、AlO
0.9(OH)
1.2である粒状のアルミニウム酸化物系複合体9(複合体9)を合成した。アルミニウム酸化物系複合体9のX線回折スペクトルを測定し、
図2に与えた。
【0066】
図1及び2から、アルミニウム酸化物系複合体8では、2θ=14.4°のピーク強度(P1)よりも、2θ=28.2°のピーク強度(P2)が大きく(P1<P2)、アルミニウム酸化物系複合体9では、ピーク強度P2よりも、ピーク強度P1が大きい(P1>P2)。
【0067】
(実施例2−1)
下記の材料をホモジナイザー(プライミクス製、商品名:T.K.HOMODISPER Model 2.5、回転数1500rpm)で3時間撹拌して、分散液(2)を作製した。
【0068】
複合体8 30質量部
特殊カルボン酸型高分子活性剤(花王製、商品名:ポイズ520) 0.6質量部
蒸留水 150質量部
【0069】
分散液(2)100質量部に、濃度0.6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(日本製紙製、商品名:MAC500LC)50質量部とアクリル系ラテックス(JSR製、商品名:TRD202A、濃度40.2質量%)を3質量部添加して、塗液(2)を作製した。
【0070】
延伸レギュラーPET繊維(0.1dtex、長さ5mm)30質量部、延伸レギュラーPET繊維(0.3dtex、長さ5mm)40質量部、未延伸PET繊維(0.2dtex、長さ4mm)30質量部の構成で、湿式法により目付量8.0g/m
2のウェッブを作製した。この時の乾燥温度は130℃であった。次に、190℃で熱カレンダー処理を施し、厚さ15μmの多孔性支持体(2)を作製した。塗液(2)を多孔性支持体(2)に含浸させた後、100℃で乾燥させ、塗工量9.0g/m
2で、厚さ22μmのセパレータを得た。
【0071】
(比較例2−1)
下記の材料をホモジナイザー(プライミクス製、商品名:T.K.HOMODISPER Model 2.5、回転数1500rpm)で3時間撹拌して、分散液(3)を作製した。
【0072】
複合体9 30質量部
特殊カルボン酸型高分子活性剤(花王製、商品名:ポイズ520) 0.6質量部
蒸留水 150質量部
【0073】
分散液(3)100質量部に、濃度0.6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(日本製紙製、商品名:MAC500LC)50質量部とアクリル系ラテックス(JSR製、商品名:TRD202A、濃度40.2質量%)を3質量部添加して、塗液(3)を作製した。塗液(3)を多孔性支持体(2)に含浸させた後、100℃で乾燥させて、塗工量9.0g/m
2で、厚さ22μmのセパレータを得た。
【0074】
[電池特性の評価]
アルミニウム箔上に、マンガン酸リチウム、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを100/5/3の質量比で200g/m
2塗工し、溶剤を乾燥して、さらにプレスをかけて正極を作製した。一方、銅箔上に、球状人造黒鉛、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを85/15/5の質量比で100g/m
2塗工し、乾燥後プレスをかけて負極を作製した。
【0075】
両電極間にセパレータを挟み込み、リチウム二次電池用電解液(溶媒:EC/DEC/DME=1/1/1(体積比)、支持電解質:LiPF
6 1mol/l)を滴下し、減圧化でアルミニウム箔ラミネートフィルム中に封止して、リチウム二次電池を作製した。次に、リチウム二次電池を0.2Cで4.2Vまで充電し、0.2C(300分の放電時間)の条件での放電開始から30分後の電圧から電圧降下値を求め、この電圧降下値から内部抵抗を測定した。また、1Cにおける放電容量と充電容量を測定し、初回の放電効率(放電容量/充電容量×100)を測定した。さらに、電池を80℃で24時間加熱した後に、1Cにおける放電容量と充電容量を測定し、加熱後の放電効率を測定した。結果を表2に与えた。
【0076】
実施例2−1と比較例2−1では、どちらも、厚さ22μmの薄膜化セパレータが得られている。しかし、P1よりもP2が大きい(P1<P2)アルミニウム酸化物系複合体8を使用した実施例2−1のセパレータを用いた電池は、P1よりもP2が小さい(P1>P2)アルミニウム酸化物系複合体9を使用した比較例2−1のセパレータを用いた電池よりも、内部抵抗が低く、加熱による放電効率の低下も抑制されていた。
【0077】
【表2】
【0078】
<アルミニウム酸化物系複合体の合成>
水酸化アルミニウム(式量78)40g(0.513mol)と水60gを混合して、ビーズミルで湿式粉砕して平均粒子径0.3μmの水酸化アルミニウムスラリーを作製した。このスラリーに0.4g(0.01mol)の水酸化ナトリウムを添加して、よく撹拌した後、160℃で2時間、水熱状態で加熱し、平均粒子径1.0μm、AlO
0.9(OH)
1.2のアルミニウム酸化物系複合体10を合成した。次に、アルミニウム酸化物系複合体10を430℃で6時間加熱して、平均粒子径1.0μm、AlO
1.05(OH)
0.9である粒状のアルミニウム酸化物系複合体11(複合体11)を得た。
【0079】
アンモニウムアルミニウム炭酸塩(NH
4AlCO
3(OH)
2、式量139)70g(0.504mol)と水100gを混合し、ビーズミルで湿式粉砕し、平均粒子径0.5μmのスラリーを作製した。これを200℃で12時間、水熱状態で加熱し、平均粒子径2.2μm、AlO
1.1(OH)
0.8である粒状のアルミニウム酸化物系複合体12(複合体12)を得た。
【0080】
アルミニウム酸化物系複合体10を470℃で6時間加熱して、平均粒子径1.0μmのAlO
1.2(OH)
0.6である粒状のアルミニウム酸化物系複合体13(複合体13)を得た。
【0081】
水酸化アルミニウム(式量78)40g(0.513mol)と水60gを混合して、ビーズミルで湿式粉砕して平均粒子径0.1μmの水酸化アルミニウムスラリーを作製した。このスラリーに0.4g(0.01mol)の水酸化ナトリウムを添加して、よく撹拌したのち、130℃で4時間、水熱状態で加熱し、平均粒子径0.6μm、AlO
0.9(OH)
1.2である粒状のアルミニウム酸化物系複合体14(複合体14)を合成した。
【0082】
水酸化アルミニウム(式量78)40g(0.513mol)と水60gを混合して、ビーズミルで湿式粉砕して平均粒子径0.1μmの水酸化アルミニウムスラリーを作製した。このスラリーに1.2g(0.03mol)の水酸化ナトリウムを添加して、よく撹拌したのち、130℃で4時間、水熱状態で加熱し、平均粒子径0.2μm、AlO
0.9(OH)
1.2である粒状のアルミニウム酸化物系複合体15(複合体15)を合成した。
【0083】
(実施例3−1)
下記の材料をホモジナイザー(プライミクス製、商品名:T.K.HOMODISPER Model 2.5、回転数1500rpm)で3時間撹拌して、分散液(4)を作製した。
【0084】
複合体11 30質量部
特殊カルボン酸型高分子活性剤(花王製、商品名:ポイズ520) 0.6質量部
蒸留水 150質量部
【0085】
分散液(4)100質量部に、濃度0.6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(日本製紙製、商品名:MAC500LC)50質量部とアクリル系ラテックス(JSR製、商品名:TRD202A、濃度40.2質量%)を3質量部添加して、塗液(4)を作製した。複合体11の平均粒子径は、合成時と同じく1.0μmであった。塗液(4)を多孔性支持体(2)に含浸させた後、100℃で乾燥させて、塗工量9.0g/m
2で、厚さ22μmのセパレータを得た。
【0086】
(実施例3−2)
塗工量を7.0g/m
2にした以外は実施例3−1と同様にして、厚さ21μmのセパレータを得た。
【0087】
(実施例3−3)
塗工量を6.0g/m
2にした以外は実施例3−1と同様にして、厚さ20μmのセパレータを得た。
【0088】
(実施例3−4)
下記の材料をビーズミルで2時間撹拌して、分散液(5)を作製した。
【0089】
複合体12 30質量部
特殊カルボン酸型高分子活性剤(花王製、商品名:ポイズ520) 0.6質量部
蒸留水 150質量部
【0090】
分散液(5)100質量部に、濃度0.6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(日本製紙製、商品名:MAC500LC)50質量部とアクリル系ラテックス(JSR製、商品名:TRD202A、濃度40.2質量%)を3質量部添加して、塗液(5)を作製した。複合体12の平均粒子径は1.0μmであった。
【0091】
塗液(5)を多孔性支持体(2)に含浸させた後、100℃で乾燥させて、塗工量7.0g/m
2で、厚さ21μmのセパレータを得た。
【0092】
(実施例3−5)
下記の材料をビーズミルで12時間撹拌して、分散液(6)を作製した。
【0093】
複合体12 30質量部
特殊カルボン酸型高分子活性剤(花王製、商品名:ポイズ520) 0.6質量部
蒸留水 150質量部
【0094】
分散液(6)100質量部に、濃度0.6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(日本製紙製、商品名:MAC500LC)50質量部とアクリル系ラテックス(JSR製、商品名:TRD202A、濃度40.2質量%)を3質量部添加して、塗液(6)を作製した。複合体12の平均粒子径は0.6μmであった。
【0095】
塗液(6)を多孔性支持体(2)に含浸させた後、100℃で乾燥させて、塗工量5.8g/m
2で、厚さ20μmのセパレータを得た。
【0096】
(実施例3−6)
下記の材料をビーズミルで24時間撹拌して、分散液(7)を作製した。
【0097】
複合体12 30質量部
特殊カルボン酸型高分子活性剤(花王製、商品名:ポイズ520) 1.2質量部
蒸留水 150質量部
【0098】
分散液(7)100質量部に、濃度0.6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(日本製紙製、商品名:MAC500LC)50質量部とアクリル系ラテックス(JSR製、商品名:TRD202A、濃度40.2質量%)を3質量部添加して、塗液(7)を作製した。複合体12の平均粒子径は0.3μmであった。
【0099】
塗液(7)を多孔性支持体(2)に含浸させた後、100℃で乾燥させて、塗工量4.5g/m
2で、厚さ19μmのセパレータを得た。
【0100】
(実施例3−7)
下記の材料をビーズミルで24時間撹拌して、分散液(8)を作製した。
【0101】
複合体12 30質量部
特殊カルボン酸型高分子活性剤(花王製、商品名:ポイズ520) 3.0質量部
蒸留水 150質量部
【0102】
分散液(8)100質量部に、濃度0.6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(日本製紙製、商品名:MAC500LC)50質量部とアクリル系ラテックス(JSR製、商品名:TRD202A、濃度40.2質量%)を3質量部添加して、塗液(8)を作製した。複合体12の平均粒子径は0.2μmであった。
【0103】
塗液(8)を多孔性支持体(2)に含浸させた後、100℃で乾燥させて、塗工量4.5g/m
2で、厚さ19μmのセパレータを得た。
【0104】
(実施例3−8)
複合体1の代わりに複合体3を用い、塗工量を9.0g/m
2にした以外は、実施例3−1と同様にして、厚さ21μmのセパレータを得た。
【0105】
(実施例3−9)
下記の材料をホモジナイザー(プライミクス製、商品名:T.K.HOMODISPER Model 2.5、回転数1500rpm)で3時間撹拌して、分散液(9)を作製した。
【0106】
複合体12 30質量部
特殊カルボン酸型高分子活性剤(花王製、商品名:ポイズ520) 0.6質量部
蒸留水 150質量部
【0107】
分散液(9)100質量部に、濃度0.6質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(日本製紙製、商品名:MAC500LC)50質量部とアクリル系ラテックス(JSR製、商品名:TRD202A、濃度40.2質量%)を3質量部添加して、塗液(1)を作製した。複合体2の平均粒子径は、合成時と同じく2.2μmであった。
【0108】
塗液(9)を多孔性支持体(2)に含浸させて、100℃で乾燥させて、塗工量15.0g/m
2で、厚さ27μmのセパレータを得た。
【0109】
(実施例3−10)
塗工量を9.0g/m
2にした以外は実施例3−9と同様にして、厚さ24μmのセパレータを得た。
【0110】
(実施例3−11)
塗工量を7.0g/m
2にした以外は実施例3−9と同様にして、厚さ22μmのセパレータを得た。
【0111】
(比較例3−1)
複合体12の代わりに複合体14を用い、塗工量を6.0g/m
2にした以外は、実施例3−9と同様にして、厚さ20μmのセパレータを得た。
【0112】
(比較例3−2)
複合体2の代わりに複合体15を用い、塗工量を4.5g/m
2にした以外は、実施例3−9と同様にして、厚さ19μmのセパレータを得た。
【0113】
[電池特性の評価]
アルミニウム箔上に、マンガン酸リチウム、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを100/5/3の質量比で200g/m
2塗工し、溶剤を乾燥して、さらにプレスをかけて正極を作製した。一方、銅箔上に、球状人造黒鉛、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを85/15/5の質量比で100g/m
2塗工し、乾燥後プレスをかけて負極を作製した。
【0114】
両電極間にセパレータを挟み込み、リチウム二次電池用電解液(溶媒:EC/DEC/DME=1/1/1(体積比)、支持電解質:LiPF
6 1mol/l)を滴下し、減圧化でアルミニウム箔ラミネートフィルム中に封止して、リチウム二次電池を作製した。次に、リチウム二次電池を0.2Cで4.2Vまで充電し、0.2C(300分の放電時間)の条件での放電開始から30分後の電圧から電圧降下値を求め、この電圧降下値から内部抵抗を測定した。また、1Cにおける放電容量と充電容量を測定し、初回の放電効率(放電容量/充電容量×100)を測定した。さらに、電池を80℃で24時間加熱した後に、1Cにおける放電容量と充電容量を測定し、加熱後の放電効率を測定した。結果を表3に与えた。また、各セパレータの平均細孔径を測定して、表3に与えた。
【0115】
【表3】
【0116】
実施例3−1〜3−8のセパレータは、多孔性支持体と無機微粒子を含有してなる多孔質膜層を有し、無機微粒子が、水熱合成によって得られたAlO
x(OH)
y(1.0<x≦1.3、0.4≦y<1.0、2x+y=3)で示されるアルミニウム酸化物系複合体であり、その平均粒子径が0.2〜1.0μmであるセパレータである。いずれのセパレータも、厚さが22μm以下であり、薄膜化に対応することができている。また、無機微粒子の過剰な水酸基が少ないため、無機微粒子の電解液への耐久性が高く、初回放電効率と加熱後放電効率を比較すると、ほとんど同じであった。
【0117】
実施例3−9〜3−11では、無機微粒子が2.2μmの水熱合成によって得られたAlO
x(OH)
y(1.0<x≦1.3、0.4≦y<1.0、2x+y=3)で示されるアルミニウム酸化物系複合体である。平均粒子径が1.0μmを超えているため、塗工量が7.0g/m
2及び9.0g/m
2であり、セパレータの厚さが24μmと22μmである実施例3−10及び3−11では、平均細孔径が増大して、放電効率が低くなった。この無機微粒子では、電池を安定に動作させるためには、実施例3−9のように、塗工量15g/m
2が必要であり、その場合、セパレータの厚さは27μmで、薄膜化に対応することが難しかった。
【0118】
比較例3−1では、無機微粒子の平均粒子径が0.6μmであり、比較例3−2では、無機微粒子の平均粒子径が0.2μmである。そのため、どちらも厚さ20μm以下のセパレータが得られていて、初回放電効率は90%であり、問題が無かった。しかし、xが1.0以下であり(x≦1.0)、yが1.0以上であるため(y≧1.0)、無機微粒子の過剰な水酸基によって、加熱によって電池特性が著しく低下し、加熱後放電効率は55%以下にまで低下した。
【0119】
実施例3−1〜3−4では、平均粒子径1.0μmで、水熱合成によって得られたAlO
x(OH)
y(1.0<x≦1.3、0.4≦y<1.0、2x+y=3)で示されるアルミニウム酸化物系複合体を用いている。塗工量が6.0g/m
2である実施例3−3では、実施例3−1、3−2及び3−4と比較して、放電効率が低下した。よって、電池をより安定に動作させるためには、塗工量は7.0g/m
2以上であることが好ましいことがわかる。なお、実施例3−1〜3−4では、セパレータの厚さが20〜22μmであり、塗工量が6.0g/m
2である実施例3−3では、20μmである。実施例3−5では、平均粒子径0.6μmのアルミニウム酸化物系複合体を用いているが、塗工量が5.8g/m
2と少ないにも係わらず、放電効率も高く、内部抵抗も低く、電池を安定に動作させることができ、厚さが20μmという薄膜化セパレータの製造が可能であった。
【0120】
実施例3−6及び3−7では、無機微粒子の平均粒子径が更に小さく、0.3μm及び0.2μmである。その結果、塗工量が4.5g/m
2と少なく、セパレータの厚さは19μmであり、更に薄くすることができた。無機微粒子の平均粒子径が小さくなったため、無機微粒子の充填率が上がり、電池の内部抵抗が実施例3−1〜3−5と比較すると、若干増大した。しかし、初回放電効率は90%と高く、加熱後放電効率も高かった。
【0121】
実施例3−8で使用したアルミニウム酸化物系複合体13は、x=1.2、y=0.6であり、実施例3−1で使用したアルミニウム酸化物系複合体11は、x=1.05、y=0.9である。アルミニウム酸化物系複合体の水酸基の量が多い実施例3−1の方が、内部抵抗は低く優れていて、該水酸基の量が少ない実施例3−8の方が、放電効率が高く優れていた。
【0122】
これらの結果より、過剰な水酸基が少なく、平均粒子径が0.2〜1.0μmである無機微粒子によって、薄膜化セパレータを製造することができ、特に厚さ20μm程度又はそれ以下のセパレータを製造することもでき、かつ、電解液への耐久性が高く、電池を安定に動作させることができ、電池の内部抵抗を低くすることもできることが示された。