(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試験部が、前記電極端子間に挟まれたシート状電池の電気特性を測定し、異常検知に係る前記電極端子間のシート状電池部分を特定するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状電池試験装置。
前記試験部が、折り畳まれて電極端子が挟み込まれた前記シート状電池の両面から圧力をかける手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート状電池試験装置。
前記折畳部により折り畳まれた前記シート状電池の折り畳まれた部分に、前記電極端子を挿入する電極端子供給部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシート状電池試験装置。
前記折畳部が、前記電極端子を前記シート状電池の表面に配置した状態で、前記シート状電池を折り畳むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシート状電池試験装置。
前記シート状電池の電極層が断続的に複数形成されており、その電極層が形成されていない部分で前記シート状電池が前記折畳部により折り畳まれることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシート状電池試験装置。
前記試験工程において、折り畳まれて電極端子が挟み込まれた前記シート状電池の両面から圧力をかけた状態で試験を行うことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のシート状電池試験方法。
前記折畳工程により折り畳まれた前記シート状電池の折り畳まれた部分に、前記電極端子を挿入する電極端子供給工程を有することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載のシート状電池試験方法。
前記折畳工程において、前記電極端子を前記シート状電池の表面に配置した状態で、前記シート状電池を折り畳むことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載のシート状電池試験方法。
前記シート状電池の電極層が断続的に複数形成されており、その電極層が形成されていない部分で前記シート状電池が前記折畳工程により折り畳まれることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載のシート状電池試験方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明に係るシート状電池試験装置及びシート状電池試験方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
ここで、シート状電池の種類については、電極層(正極層及び負極層)と、その電極層の間に介在する電極間層とを有するシート状の電池の基本構成を有していれば特に限定されず、例えば化学電池や物理電池の一次電池や二次電池に広く適用することができ、特に全固体型の二次電池に好適であり、より好ましくは量子電池に適用できる。また、電極間層は、両電極の接触を防止するとともに起電力の発生や蓄電に寄与する部分であり、例えば、電解質やセパレータ、充放電層等であることができ、より好ましくは二次電池の充放電層であり、さらに好ましくは量子電池の充放電層であることができる。
【0020】
また、電池の試験装置は、電池性能を試験する装置に広く適用することができ、例えば、電池の性能検査、充放電試験、コンディショニング、充放電サイクル試験、エージング試験等を行うものである。
【0021】
(A−1)量子電池について
この実施形態では、シート状電池が量子電池である場合を例示する。そのため、はじめに量子電池の基本構成について説明する。
【0022】
量子電池は、金属酸化物の光励起構造変化を利用して、バンドギャップ中に新たなエネルギー準位を形成して電子を捕獲する動作原理に基づく二次電池である。
【0023】
量子電池は、全固体型の二次電池であり、単独の二次電池として機能する構成は、負極層と正極層との間に固体の充放電層(本明細書においては、単に「充電層」ともいう)を有するものである。
【0024】
充電層は、充電動作で電子を蓄え、放電動作で蓄電している電子を放出し、充放電がなされていない状態で電子を保持(蓄電)している層であり、光励起構造変化技術が適用されて形成されている。
【0025】
ここで、光励起構造変化は、例えば、国際公開WO/2008/053561に記載されており、その出願の発明者である中澤明氏が見出した現象(技術)である。すなわち、中澤明氏は、所定値以上のバンドギャップを持つ半導体であって透光性をもつ金属酸化物が、絶縁被覆された状態で有効な励起エネルギーを与えられると、バンドギャップ内に電子不在のエネルギー準位が多数発生することを見出した。量子電池は、これらのエネルギー準位に電子を捕獲させることで充電し、捕獲した電子を放出させることで放電するものである。
【0026】
充電層は、絶縁被膜で覆われたn型金属酸化物半導体の微粒子が、負極層3に対して薄膜状に付着され、n型金属酸化物半導体が紫外線照射によって光励起構造変化を起こし、電子を蓄えることができるように変化したものである。
【0027】
正極層は、正極本体層と、充電層に接するように形成されたp型金属酸化物半導体層とを有する。p型金属酸化物半導体層は、正極本体層から充電層への電子の注入を防止するために設けられている。
【0028】
負極層と、正極層の正極本体層とは、導電層として形成されたものであれば良い。
【0029】
このような基本構成からなる量子電池は、必要により電極層に電極端子を取り付けたり、周囲に外装部材や被覆部材等を取り付けたりして電池としての体裁を整えることができる。また、この量子電池の基本構成を複数積層し直列又は並列に接続してパッケージすることもできる。
【0030】
(A−2)シート状量子電池について
この実施形態における試験対象のシート状電池は、上記基本構成を備えたシート状の量子電池の場合で説明する。以下、このシート状量子電池について図面を参照して説明する。
【0031】
図2及び
図3は、この実施形態に係るシート状量子電池1(以下、単に「シート状電池1」とも記す)を示す図である。
図2は、シート状電池1の正面図であり、
図3は、図
2のシート状電池1のA−A線断面図である。
【0032】
図2及び
図3に示すように、この実施形態に係るシート状電池1は、前述した量子電池の基本構成である負極層3、充電層6、及び正極層2が順に積層された薄板状の長尺物である。正極層2は、充電層6上に形成されたp型金属酸化物半導体層とその上に積層された正極本体層とからなる。前記正極本体層及び負極層3は、導電性が良い層であればよく、例えば、金属板や金属膜、透明導電膜などが利用できる。
【0033】
図2に示すように、シート状電池1の長手方向における両側縁は互いに平行に形成されている。このシート状電池1の幅は特に限定されないが、例えば幅10mmから500mm程度のものとすることができる。シート状量子電池1の長さは、少なくとも一度折り曲げて重ね合わせられる長さ以上であれば特に限定されず、例えば10mm〜100m程度のものとすることができる。
【0034】
正極層2及び負極層3の膜厚は10nm〜1μm程度にでき、充電層6の膜厚は50nm〜10μm程度にできる。このシート状電池1は柔軟性を有するように構成させることができ、製造後ロール状に巻くことも可能である。
【0035】
(A−3)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る電池の試験方法及び試験装置の全体的な流れを説明する説明図である。
【0036】
図1に示すように、第1の実施形態の電池の試験方法及び試験装置100は、大別して、シート状電池1の供給を行う電池供給部(電池供給工程)51と、電池供給部51から供給されたシート状電池1を折り畳む電池折畳部(電池折畳工程)52と、電池折畳部52により折り畳まれたシート状電池1の間に電極端子を供給する電極端子供給部(電極端子供給工程)53と、電極端子供給部53により電極端子が供給されたシート状電池1を試験する試験部(試験工程)54とを有する。
【0037】
試験部54は、シート状電池1の試験を行う部分であり、例えば、電池の性能検査、充放電試験、コンディショニング、充放電サイクル試験、エージング試験等を行う。この試験部54は、電池試験機106と、押圧部107とを有する。
【0038】
電池試験機106は、電池折畳部52により折り畳まれて蛇腹状となったシート状電池1(以下、折り畳まれて蛇腹状になったシート状電池を「蛇腹状電池」ともいう)を、その間や上下面に配設された電気接続用の正極端子板21及び負極端子板22を用いて、電池性能の検査、充放電試験、コンディショニング、充放電サイクル試験、エージング試験等の試験を行うために必要な電力の供給や電気特性の測定を行うものである。
【0039】
押圧部107は、蛇腹状電池1を、その折り畳み部分や上下面に正極端子板21及び負極端子板22が配置された状態で両外面から挟んで圧力を加えるものである。押圧部107がシート状電池1に圧力を加えることにより、蛇腹状電池1の折り畳み部分に挟まれたり上下面に配置されたりしている正極端子板21及び負極端子板22と、シート状電池1の電極層2、3との接触を確実にすることができる。この実施形態では、押圧部107が、折り畳まれたシート状電池1を載せる押圧台109と、その押圧台109に載せられたシート状電池1を上方から下方に向かって押圧する押圧板108と、この押圧板108を押圧方向に可動させる図示しない押圧機構部とを有している。
【0040】
押圧板108は、蛇腹状電池1に対して、例えば上方から下方に向けて圧力を加えるための板状体である。押圧板108は、押圧可能な平坦な押圧面を有しており、前記押圧機構部によりシート状電池1の上方から押圧台109に向かって、前記押圧面を略水平に保ちながら下方に移動し、蛇腹状電池1の上面を押圧する。ここで、押圧板108は、正極端子板21及び負極端子板22とシート状電池1との接触性を良好なものとするために、蛇腹状電池1の上面全体を押圧する押圧面を有するものであることができるが、少なくとも正極端子板21及び負極端子板22の導電部と、蛇腹状電池1の電極層2、3とが接触する領域(すなわち、シート状電池1の上面の一部領域)を押圧する押圧面を有するものであっても良い。
【0041】
前記押圧機構部は、折り畳まれたシート状電池1の上面をあらかじめ設定した圧力で押圧させることができるように押圧板108を動作させる部分である。前記押圧機構部は、押圧板108を上下に移動させる機構を備え、押圧板108の前記押圧面を下向き水平に保持しながら下方に向かって移動させるとともに、所定の圧力での押圧状態を維持できるように構成されている。
【0042】
押圧台109は、蛇腹状電池1を載置するものであって、押圧板108の押圧方向の下側に設けられているものである。押圧台109は、押圧板108の押圧面と対向する平坦な載置面を有しており、押圧板108により押圧される載置面上のシート状電池1を下面から支持するものである。前記載置面は、蛇腹状電池1の下面全体を支持するものであることができるが、少なくとも正極端子板21及び負極端子板22の導電性部材と、蛇腹状のシート状電池1の電極層とが接触する領域(すなわち、シート状電池1の下面の一部領域)を支持するものであっても良い。これにより、折り畳まれたシート状電池1を、押圧板108と押圧台109とで挟み込み圧力を加えることができる。
【0043】
なお、押圧部107により押圧する折り畳まれたシート状電池1は、直接押圧台109の載置面に載せても良いし、後述するようにトレー101に載せた状態で載せてもよい。
【0044】
また、この実施形態では、押圧台109を固定した状態で、押圧板108を上方から下方に移動させて押圧する場合を例示するが、これに限定されるものではない。つまり、折り畳まれたシート状電池1を両面から挟んで圧力を加えることができるのであれば、例えば、押圧板108を固定して押圧台109を下方から上方に押し上げて押圧するようにしても良い。また例えば、押圧台109及び押圧板108が可動式のものであり、押圧台109が下方から上方に移動すると共に、押圧板108が上方から下方に移動するものであっても良い。
【0045】
さらに、この実施形態では、押圧板108の押圧面が水平に保持されたまま下方に移動する場合を例示した。しかし、これに限らず、例えば前記押圧機構部が押圧板108を回動可能にするものであってもよい。すなわち、押圧台109上にシート状電池1が載せられた後に、押圧板108を所定の高さに設定するとともに、押圧板108の押圧面を垂直又は傾斜した状態から水平の位置まで回動させることでシート状電池1を押圧するものであっても良い。
【0046】
図5は、第1の実施形態に係る正極端子板21の構造を説明する説明図であり、
図5(A)は、正極端子板21の平面図であり、
図5(B)は、
図5(A)のB−B線断面矢視図である。
【0047】
図5に示すように、正極端子板21は、絶縁性の材料からなる絶縁層211cの両面に、導電性部材からなる導電部212a、212bが積層されている。つまり、正極端子板21は、絶縁層211cを第一の導電部212a及び第二の導電部212bで挟んだ構造となっている。これにより第一の導電部212aと第二の導電部212bの間は、絶縁層211cにより絶縁されている。導電部212a及び212bの端部には電線213a、213bがそれぞれ接続されている。導電部212a及び212bの端部(この例では電線213a、213bが接続されている側の端部)は、シート状電池1に挟み込まれる際に折り畳み部分からはみ出す可能性がある部分であり、表面に絶縁層211a、211cが形成されている。これにより試験中の短絡を防止できる。電線213a、213bは電池試験機106の正極側端子105aに接続される。
【0048】
また、正極端子板21の導電部212a、212bは、全面が電気的接触に機能する場合を示したが、部分的又は多点で電気的接触に機能するものであっても良い。
【0049】
例えば、正極端子板21の導電部212a及び212bは、
図6に例示するように正極端子板21の表面において、ストライプ状に導電性部材が設けられているものであっても良い。また例えば、
図7に例示するように、正極端子板21の表面に格子状の導電性部材が設けられているものであっても良い。さらに例えば、
図8に例示するように、正極端子板21の表面に複数の波状の導電性部材が設けられているものであっても良い。また
図9に例示するように、正極端子板21の表面にエンボス状の導電性部材が設けられているものであっても良い。正極端子板21の表面における導電部212a及び212bの形状は、
図6〜
図9に例示するものに限定されるものではなく、その他に櫛歯状であっても良いし、メッシュ状等としても良い。
【0050】
図10は、第1の実施形態に係る負極端子板22の構造を説明する説明図であり、
図10(A)は、負極端子板22の平面図であり、
図10(B)は、
図10(A)のC−C線断面矢視図である。
【0051】
図10に示すように、負極端子板22は、平板状の導電性部材からなる導電部222を備え、その端部にはワイヤ223が接続されている。ワイヤ223は電池試験機106の負極側端子105bに接続される。
【0052】
負極端子板22の導電部222は、その全面が電気的接触に機能する場合を示したが、部分的又は多点で電気的接触に機能するものであっても良い。
【0053】
例えば、
図6から
図9に示した正極端子板21の場合と同様に、導電部222は負極端子板22の表面において、ストライプ状や格子状、複数の波状、エンボス状に導電性部材が設けられているものであっても良い。また櫛歯状やメッシュ状等に導電性部材が設けられているものであっても良い。
【0054】
正極端子板21は、導電部212a、212bを介して電気的に充分に低い抵抗値で正極層2と電池試験機106の正極側接続端子105aとの間で接続できるならば、その形状や材質は限定されるものでない。同様に、負極端子板22は、導電部222を介して電気的に充分に低い抵抗値で負極層3と電池試験機106の負極側接続端子105bとの間で接続できるならば、その形状や材質は限定されるものでない。なお、正極端子板21及び負極端子板22の正面視形状については、この例では1つの試験体の形状が長方形をしていることから、それに広く接触できるという点で長方形状であることが好ましい。
【0055】
なお、正極端子板21及び負極端子板22は、説明便宜上、「板」と表現しているが、正極端子板21及び負極端子板22は、薄板だけでなく、薄膜状のものであっても良い。また、線状のものや、棒状のものにすることも可能である。
【0056】
図4は、第1の実施形態に係る折り畳んだシート状電池1と電池試験機106との接続関係を示す図である。
図4では、シート状電池1については、電気接続用の正極端子板21及び負極端子板22が挿入された状態を示している。また、
図4では、シート状電池1に接触する正極端子板21及び負極端子板22と電池試験機106との接続関係を示している。
【0057】
図4において、電池折畳部52により折り畳まれたシート状電池1は蛇腹状となり、その内側に折り込まれた部分の隙間に、電極端子供給部53により電極端子板21、22が挿入されている。また、折り畳まれたシート状電池1の上面及び下面には、負極端子板22が配置されている。
【0058】
シート状電池1の正極層2が内側になるように折り込まれた部分には、正極端子としての正極端子板21が挿入される。また、シート状電池1の負極層3が内側になるように折り込まれた部分には、負極端子としての負極端子板22が挿入される。つまり、蛇腹状電池1の折り畳み部分には、正極端子板21と負極端子板22とが交互にシート状電池1に接触することになる。
【0059】
電池試験機106は、蛇腹状電池1に接触している正極端子板21及び負極端子板22を電気接続用の電極端子として接続端子105a、105bに接続し、試験のための電力供給を行なうものである(例えば、電圧を印加したり、電流を流したりする)。正極端子板21は、電線213a、213bを介して電池試験機106の正極側端子105aに接続されている。また、負極端子板22は、電線223を介して電池試験機106の負極側端子105bに接続されている。
【0060】
なお、電池試験機106は、正極端子板21と負極端子板22との間に電圧をかけたり電流を流したりする機能に加え、正極端子板21と負極端子板22の間の電流や電圧等の電気特性を測定する機能を有するようにしても良い。また、電池試験機106は、測定された電気特性があらかじめ登録されている許容範囲内にあるかどうかを判断して、その測定箇所の電池が正常であるか異常であるかの判定をする機能を有するようにしてもよい。異常個所(試験体)はその異常と判定される測定値が測定された正極端子板21と負極端子板22が特定されることにより、あるいは正極端子板21の導電部212a、212bが特定されることにより判断される。
【0061】
また、電池試験機106は、折り畳まれたシート状電池の隣り合う折線の間あるいはシート状電池1の端辺とその隣の折線の間のシート部分を1個の試験体とみなした場合に、複数の試験体に対して同時に並列的に試験を行うことができる。さらに、電池試験機106は、複数の試験体を並列的に試験することができるため、同時に試験を行っている複数の試験体のうち、いずれかの試験体に不具合があった場合には、その不具合が生じた試験体への電気供給を個別的に遮断することができる。換言すれば、不具合が生じていない試験体の試験を継続させることができるため、試験の効率化を図ることができる。
【0062】
試験完了後、シート状電池1は電極端子板21、22が抜き取られ、蛇腹状のまま次の工程に移されたり、保管されたりする。なお、試験工程で異常が検知された部分の電池(例えば、異常を検知した正極端子板21と負極端子板22とに挟まれた試験体)については、その後の工程でその部分を補修したり、取り除いたりすることができる。
【0063】
ここで、
図4に示すように、シート状電池1を折り畳み蛇腹状にすることができるため、試験スペースを狭くすることができる。また、前工程から試験工程への移行や、試験工程から次工程への移行の際のハンドリングが良く、保管の際のスペースも狭くすることができる。また、シート状電池1を蛇腹状にして、折り畳み部分に電気接続用の電極端子板21、22を挟み込むことができるため、シート状電池1の複数箇所を同時に試験することができ、試験の効率化を図れる。また、試験に使用している電極端子やその導電部を特定することにより、シート状電池1における試験箇所の特定が容易になり、電気特性の測定による異常箇所の特定も容易になる。
【0064】
図11は、折り畳んだシート状電池1と電極端子板21及び22との接触関係の詳細を説明する断面図である。なお、
図11では、接触関係を明確にするためにシート状電池1の厚み方向の寸法を強調して示している。
【0065】
図11は、シート状電池1を交互に折り畳んだ場合の一部を示している。
図11において、シート状電池1の負極層3は負極端子板22(導電部222)と接触しており、シート状電池1の正極層2は正極端子板21の導電部212a、212bと接触している。シート状電池1が折り畳まれることにより、正極層2は正極端子板21を介して対向するものとなり、負極層3は負極端子板22を介して対向するものとなる。正極端子板21は、その先端が、折り畳まれたシート状電池1の折曲部の内面に接するかその少し手前まで挿入される。また、同様に、負極端子板22は、その先端が、折り畳まれたシート状電池1の折曲部の内面に接するか少し手前まで挿入される。
【0066】
また、シート状電池1の両端の試験体は、負極層3が外側に来るように折り畳まれており、その負極層3に負極端子板22(導電部222)が接するように配置されている。なお、シート状電池1の端の試験体において正極層2が外側に来るように折り畳まれている場合は、その正極層2上に正極端子板21を配置し、正極層2と接触している導電部に接続された電線のみを電池試験機106の端子に接続するようにするとよい。
【0067】
このように電極端子板21、22がシート状電池1に接触することにより、一つの試験体は、負極層3が一つの負極端子板22(導電部222)と接続され、正極層2が一つの正極端子板21の一方の面の導電部212aまたは212bと接続される。
【0068】
次に、電池供給部51の構成について
図1を参照して説明する。
【0069】
電池供給部51は、シート状電池1を後の電池折畳工程やそれに続く電極端子供給工程に送り出すためのものである。
【0070】
図1に示すように、電池供給部51は、シート供給部111と、シート引出部112とを有している。
【0071】
シート供給部111は、シート状電池1をロール状に巻回したもの(以下、単に「シートロール」とも言う)を回転可能に支持するためのロール支持部114を備えている。シートロールはその巻回軸が、ロール支持部114の回転軸と一致するようにロール支持部114に取り付けられている。ロール支持部114には、図示しない駆動部(例えばモータ等)を設け、それにより回転するように構成してもよい。
【0072】
シート引き出し部112は、シート供給部111から繰り出されたシート状電池1を所定位置まで引き出すものである。例えば、シート引き出し部112は、シート状電池1の両面を挟持する挟持部を有しており、その挟持部がシート状電池1を挟みこんで所定量だけシート状電池1を移動させるように構成することができる。前記したとおりロール支持部114に駆動部が設けられている場合は、シート引出部112の引出量とロール支持部114の回転とを調整するように駆動部を連携させながら所定位置までシート状電池1を引き出すようにするとよい。
【0073】
なお、本実施の形態では、ロール支持部114の回転軸は水平方向に向き、シートの引き出し方向は垂直方向下側に設定しているので、シート状電池1は試験装置100の上方から下方に送り出されるように構成されている。また、実施形態に係るシート供給部111は、ロール状のシート状電池1を繰り出す場合を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、巻回していないシート状の電池1をそのまま繰り出すようにしても良い。また、シート供給部111は、シート状電池1が位置ずれせず正常に繰り出されるようにするため、繰り出されたシート状電池1の幅方向を検知するセンサ及び位置補正制御部を有するようにして位置補正を行うようにしても良く、また、シート状電池1のたるみを防止するような機構を設けてもよい。
【0074】
次に、電池折畳部52の構成について
図1を参照しながら説明する。電池折畳部52は、シート状電池1の折り畳みを行うものである。
【0075】
この実施形態では、シート状電池1の折り畳みは、折り畳み方向を交互に変えながら蛇腹状に折り畳む場合を例示する。
【0076】
電池折畳部52は、シート切断部121と、シート折畳機構部122とを有する。
【0077】
シート切断部121は、電池供給部51より繰り出されたシート状電池1を切断する機構である。シート折畳機構部122で行う折り畳みの間隔や回数に応じて切断する長さを設定する。
【0078】
シート折畳機構部122は、折り畳み方向を交互に変えてシート状電池1を蛇腹状に折り畳むものである。
【0079】
図12は、第1の実施形態に係るシート折畳機構部122の折り畳み動作の例を説明する説明図である。
【0080】
例えば、シート折畳機構部122は、折り畳むシート状電池1の幅方向に回転軸を有する回動部128と、その回動部128に設けられた一対の折曲部125a、125bと、その折曲部125a、125bにシート状電池1を押しつけてシート状電池1に折り目を付けるプレス部126a,126bとを有している。一対の折曲部125a、125bは、回動部128の回転軸を挟んでその回転軸に平行に間隔をあけて回動部128に取り付けられている。
図12に示すように、例えば、折曲部125a、125bは、断面が鋭角な部材であり、その鋭角な先端部124a、124bを形成する斜面部127a、127bと、支持面部129a、129bとを有している。一対の折曲部125a、125bは、先端部124a、124bが互いに外側の向きになるとともに、斜面部127a、127bが、互いに逆側に傾斜するように回動部128上に設けられている。また、支持面部129a、129bは、同一平面上又はシート状電池1の厚さ程度離間して平行に位置している。
【0081】
そして、一対の折曲部125a、125bの間にシート状電池1が通っている状態で、回動部128を支持面
部129a、129bがシート状電池1と接する方向に回転させ、支持面部129a、129bとシート状電池1が接した後さらに所定角度回転させる。これにより折曲部125a、125bの先端部124a、124bによりシート状電池1が折り曲げられる。さらに、折曲部125a、125bの斜面部127a、127bと略平行なプレス面を有するプレス部126a、126bが斜面部127a、127bに向けて移動してシート状電池1を押圧する。これにより、折曲部125a、125bの先端部124a、124bの位置するところが折り目となりシート状電池1は折り曲げられる。
【0082】
そして、折り曲げ後にプレス部126a、126bが元の位置に戻り、回動部128が逆向きに元の位置まで回転する。その後、折り曲げられたシート状電池1が電池供給部51によって折曲部125a、125bの間を通って送り出される。
【0083】
また、シート折畳機構部122は、シート状電池1が所定の距離進むごとに、折曲部125a、125bによりシート状電池1を折り曲げること、プレス部126a、126bにより押圧すること、及び、折曲部125a、125bとプレス部126a、126bを元の位置に戻してシート状電池1を所定長さ繰り出すことを繰り返すことで、蛇腹状のシート状電池1を形成する。
【0084】
なお、この例では一度の折り畳み動作で、シート状電池1に二つの折り目を付けることができるので、折り畳み動作は一つの試験体分の間隔をあけるごとに行っている。折り畳まれたシート状電池1は、電極端子供給部53に送り出される。
【0085】
次に、電極端子供給部53の構成について
図1を参照しながら説明する。
【0086】
電極端子供給部53は、折り畳まれたシート状電池1に電極端子板21、22の挟み込みを行うものである。電極端子供給部53は、谷折りされた部分の隙間を所定の間隔でかつ所定の位置に保持する図示しないシート保持部と、そのシート保持部により形成された隙間に電極端子板21、22を挿入する電極端子板供給部135とを有する。電極端子板供給部135は、本実施形態では、正極端子板21を挿入するための正極端子板供給部135aと、負極端子板22を供給するための負極端子板供給部135bとを有する。
【0087】
正極端子板供給部135aの近傍には、あらかじめ挿入する複数の正極端子板21が用意されており、正極端子板供給部135aはその用意されている正極端子板21のうちの1個を取り出し水平に保持した状態で、前記シート保持部により形成されている正極層2が内側に折り畳まれた部分の隙間に正極端子板21を挿入する。
【0088】
同様に、負極端子板供給部135bの近傍には、あらかじめ挿入する複数の負極端子板22が用意されており、負極端子板供給部135bはその用意されている負極端子板22のうちの1個を取り出し水平に保持した状態で、前記シート保持部により形成されている負極層3が内側に折り畳まれた部分の隙間に負極端子板22を差し込む。
【0089】
この動作を電池折畳部52により折り畳まれて電極端子供給部53に送り出されたシート状電池1に対して繰り返す。電極端子が挿入されたシート状電池1は、トレー101上に積み重ねられる。
【0090】
なお、折り畳まれたシート状電池1の上面と下面については、その電極層に応じた電極端子板が配置される。例えば蛇腹状電池1の上面及び下面が負極層3の場合は、蛇腹状電池1の下面の下に負
極端子板22が配置され、上面の上に負
極端子板22が載せられる。
【0091】
また、電極端子板21、22の挿入位置については、シート状電池1の折り畳み間隔やシート幅などを考慮し、電極端子板21、22の導電部212a、212b、222が試験体のほぼ中央に位置するように設定される。また、電極端子板21、22が挿入された蛇腹状電池1は、そのまま次工程である試験工程に移してもよいが、折り畳まれたシート状電池1の上下面から軽く押圧した状態を維持するように仮止めした後に移すようにしてもよい。この場合は、電極端子板21、22がシート状電池1からずれ難いという点で好ましい。
【0092】
また、電極端子板21、22と電池試験機106との接続は、例えば電線213a、213b、223の両端や中間など任意の位置にコネクタを設けて行ってもよい。また、電極端子板21、22は、電池試験機106と接続された状態でシート状電池1に供給されても良いし、供給後に電池試験機106と接続しても良い。また、押圧部107による押圧中に接続しても良い。
【0093】
トレー101上に積み重ねられたシート状電池1は、トレー101に載せられたまま試験工程に移される。
【0094】
なお、試験装置100は、上記構成要素以外に他の構成要素を含むものであっても良い。例えば、電池折畳部51は、
シート状電池1の張力を制御するための機構部や、シール状電池1の幅方向の位置を検知して所定位置に電気接続用の電極端子を固定するための機構部等を備えるようにしても良い。また、シート状電池1を保持して送り出すためのローラを適宜設けてもよい。
【0095】
また、この実施形態では、ロール状のシート状電池1を試験装置100の上方から下方に繰り出して蛇腹状に折り畳む場合を例示している。しかし、試験装置100は、ロール状のシート状電池1を、試験装置100の水平方向に一旦移動させて、蛇腹状に折り畳み、折り畳み後の蛇腹状のシート状電池1を下側に積み重ねていくようにしても良い。
【0096】
次に、第1の実施形態に係る電池の試験装置100の動作を、
図1を用いて説明する。
【0097】
[ステップ1](シート状電池準備ステップ)
ロール状に巻回されたシート状電池1が、シート供給部111に取り付けられ、シート状電池1の端部がシート引き出し部112に達するようにセットされる。
【0098】
[ステップ2](シート状電池供給ステップ)
シート引き出し部112は、シート状電池1の端部がセットされると、所定の位置までシート状電池1を引き出す。このとき、例えば、シート引き出し部112が有する挟持部がシート状電池1の両面を挟持し、下方向に挟持部が移動することでシート状電池1を下方向に引き出すようにしても良い。また別の方法としては、シート引き出し部112が1対のローラを有しており、その1対のローラがシート状電池1を挟み込んで回転することにより、シート状電池1を下方向に引き出すようにしても良い。
【0099】
このシート状電池1の引き出しは、電池折畳部52や電極端子供給部53の動きに合わせて必要な長さが適宜供給されるように継続される。
【0100】
[ステップ3](シート状電池折り畳みステップ)
引き出されたシート状電池1がシート折畳機構部122に達すると、その折曲部125a、125bやプレス部126a、126b等の折り曲げ手段を用いて折り曲げられる。詳細な動作については前述したので説明を省略する。これにより、シート状電池1が所定の間隔で交互に折り曲げられることにより蛇腹状に折り畳まれる。折り曲げられたシート状電池1は、電極端子供給部53に設けられたトレー101上に積み重ねられる。所定回数折り曲げられたシート状電池1は、シート切断部121により切断される。
【0101】
[ステップ4](電極端子供給ステップ)
トレー101上に積み重ねられたシート状電池1は、その積み重ね途中あるいは折り曲げ完了後、シート状電池1の負極層3側の谷折り部に負極端子板22が挟み込まれ、正極層2側の谷折り部に正極端子板21が挟みこまれる。すなわち、折り畳まれたシート状電池1が図示しないシート保持部により負極層3側の谷折り部の開口が所定の間隔で所定位置にくるように保持され、そこに負極端子板22を水平に保持した状態で待機していた負極端子板供給部135bがその負極端子板22を所定位置まで挿入する。その後、負極端子板供給部135bは挿入した負極端子板22を離すとともに、前記シート保持部による開口の保持も解除される。 同様に、折り畳まれたシート状電池1が図示しないシート保持部により正極層2側の谷折り部の開口が所定の間隔で所定位置にくるように保持され、そこに正極端子板21を水平に保持した状態で待機していた正極端子板供給部135aがその正極端子板21を所定位置まで挿入する。その後、正極端子板供給部135aは挿入した正極端子板21を離すとともに、前記シート保持部による開口の保持も解除される。この挿入操作を繰り返すことにより電極端子板21、22が挟みこまれた蛇腹状電池1が載置トレー101上に積み上げられる。なお、蛇腹状電池1の下面に配置する電極端子板については、あらかじめトレー101の所定位置に配置して置き、上面に配置する電極端子板については折り畳み完了後に上面に載せられる。
【0102】
[ステップ5](電極端子板挿入済シート状電池搬送ステップ)
電極端子板21,22が挿入された蛇腹状電池1が載せられたトレー101は、試験部54に送られ、押圧台109の上に載せられる。
【0103】
[ステップ6](電池試験機接続ステップ)
押圧台109上に載せられたシート状電池1に挿入されている正極端子板21は電線213a、213bを介して、電池試験機106の正極側端子105aに接続される。また、負極端子板22は電線223を介して電池試験機106の負極側端子105bに接続される。
【0104】
[ステップ7](押圧ステップ)
蛇腹状電池1が押圧台109の上に載せられると、押圧部107の押圧板108が、蛇腹状電池1の上方から下方に向けて圧力を加える。これにより蛇腹状電池1は、押圧板108と押圧台109とにより上下から挟まれて圧力が加えられるため、電極端子板21、22の導電部212a、212b、222がシート状電池1の電極層2、3と密着する。
【0105】
[ステップ8](試験ステップ)
蛇腹状電池1に挿入された電極端子21、22と電池試験機106とが接続されるとともに、押圧部107により押圧されて電極端子板21、22の導電部212a、212b、222とシート状電池1の電極層2、3との接触が確実になると、電池試験機106はシート状電池1に対して所望の試験に必要な電力供給や電気特性の測定を行って試験を行う。試験を終えると押圧部107はシート状電池1の押圧を解除し、押圧板108を所定の高さまで上昇させる。また、電極端子板21、22と電池試験機106との接続が解除される。試験により異常箇所が検知された場合は、その異常を検知した電極端子板21、22の導電部212a、212b、222が特定されるため、その導電部のシート状電池1への接触位置の情報によりシート状電池1の異常が検知された試験体を特定することができる。
【0106】
[ステップ9](搬出ステップ)
試験を終えたシート状電池1は、電極端子板21、22が引き抜かれ、トレー101上に蛇腹状に折り畳まれたまま次の工程へ搬送される。
【0107】
なお、後の工程としては、シート状電池1のカットや積層、巻回等の加工、電極端子や被覆部材、外装部材等の実装部品の取り付けなどが行われる。
【0108】
また、シート状電池1は、試験体1枚から形成されてもよいし、切り離された複数の試験体を重ねてもよい。また、切り離されていない状態で蛇腹状に折り畳まれたまま重ねてもよい。複数のシート状電池1を重ねる場合は、各シート状電池1を直列又は並列に接続することができる。また試験工程で欠陥箇所と判断された試験体がある場合は、その試験体を取り除いてもよい。
【0109】
なお、この実施形態では、電極端子板21、22は電池試験機106に接続される試験専用の電極端子板21、22の場合で説明したが、電池製品自体の電気接続用の電極端子板として兼用しても良い。この場合は、試験工程終了後に電池試験機106との接続をとかれただけでシート状電池1から電極端子板21、22を抜き取らずに、次の工程に回される。
【0110】
(A−4)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、シート状電池を交互に折り畳み、その折り畳まれたシート状電池の間に電極端子を挟み込むことにより、電池の試験装置の装置規模を小さくして、試験スペースの狭小化を図ることができる。また、シート状電池に対して同時に複数箇所で試験を行うことができるので試験時間の短縮化を図ることができる。また、試験対象であるシート状電池の電極端子供給工程から試験工程への搬入や、試験工程から次工程への搬出のハンドリングが容易になる。
【0111】
また、正極端子板の上面の導電部と下面の導電部が絶縁層により絶縁されているため、試験体ごとに試験用の電力の供給や、電気特性の測定が可能となる。
【0112】
さらに、折り畳まれたシート状電池を、少なくとも試験中に押圧するため、蛇腹状に折り曲げられることによる復元力による接触不良が防止できる。
【0113】
(B)第2の実施形態
次に、本発明に係るシート状電池試験装置及びシート状電池試験方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0114】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、シート状電池が、量子電池である場合を例示する。
【0115】
また電池の試験装置は、第1の実施形態と同様に、電池性能を検査・試験する装置に広く適用することができる。
【0116】
(B−1)試験対象のシート状量子電池について
第2の実施形態における試験対象のシート状量子電池について図面を参照して説明する。
【0117】
図13及び
図14は、第2の実施形態に係るシート状量子電池1A(以下、単に「シート状電池1A」とも記す)を示す図である。
図13は、シート状電池1Aの正面図であり、
図14(A)は、
図13のシート状電池1AのD−D線断面図、
図14(B)は、
図13のシート状電池1AのE−E線断面図である。
【0118】
図13及び
図14に示すように、第2の実施形態に係るシート状電池1Aは、第1の実施形態に係るシート状電池1と同様に、前述した量子電池の基本構成である負極層3、充電層6、及び正極層2aが順に積層された薄板状の長尺物からなるが、その正極層2aが断続的に複数形成されている点で第1実施形態と異なる。すなわち、正極層2aが充電層6上にシート状電池1Aの長手方向に間隔をあけて並んで積層されている。この例において、それぞれの正極層2aは正面視形状が同じ長方形状に形成されており、隣り合う正極層2aの間には、正極層が存在しない部分(負極層3と充電層6だけが積層された部分)がそれぞれ一定の幅で形成されている。この正極層2aが形成されていない部分は、蛇腹状に折り曲げる際の折り曲げ部分に当たるので、この正極層が形成されていない部分によって区切られた部分がそれぞれ一つの試験体となる。正極層2aを断続的に形成する方法としては、正極層2aを形成するときに断続的に生成してもよいし、第1の実施形態と同様に正極層を一様に形成後、正極層を削ったり、例えばエッチングやレーザ照射等によって除去したりすることにより形成することができる。上記した点以外は第1実施の形態と同じなので説明を省略する。
【0119】
このように折り畳み部分に正極層2を形成しないことにより、試験体ごとに試験用電力の供給、電気特性の測定ができるので、試験体ごとの測定結果をより精度よく行うことができる。
【0120】
(B−2)第2の実施形態の構成
図15は、第2の実施形態に係る試験装置100Aの概略的な構成を示す構成図である。第1の実施形態と同様の構成については同じ番号をつけて説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0121】
第2の実施形態に係る試験装置100Aは、シート状電池1Aの供給を行う電池供給部(電池供給工程)51と、電池供給部51から供給されたシート状電池1Aに電極端子板(正極端子板21、負極端子板22)を供給しつつ折り畳む電極端子供給・折畳部(電極端子供給・折畳工程)55と、電極端子供給・折畳部55により折り畳まれるとともに電極端子板21、22が供給されたシート状電池1Aを試験する試験部(試験工程)54とを有する。
【0122】
電池供給部51と試験部54は、第1の実施形態に係る試験装置100と同一又は対応するものを適用することができるため、ここでの詳細な説明を省略する。
【0123】
図16は、折り畳んだシート状電池1Aと電極端子板21及び22との接触関係の詳細を説明する断面図であり、シート状電池1を交互に折り畳んだ場合の一部を示している。なお、
図16では、接触関係を明確にするためにシート状電池1Aの厚み方向の寸法を強調して示している。
【0124】
図16において、第1の実施形態と異なる点は、正極層2aが内側に折り畳まれる折り目部分及び正極層2aが外側に折り畳まれる部分の折り目部分に、正極層が形成されていない部分が位置している点である。シート状電池1Aが折り畳まれることにより、同じ内折り部にある2つの正極層2aは正極端子板21を介して対向するものとなる。そして、シート状電池1Aのそれぞれの正極層2aが正極端子板21の導電部212aまたは212bと接触している。上記した以外は、第1の実施形態の
図11と同じなので詳細な説明を省略する。
【0125】
電極端子供給・折畳部55は、電池供給部51から繰り出されてくるシート状電池1Aに対して、折り畳み方向を交互に変えながら折り畳むと同時に、折り畳んだシート状電池1Aの間に電気接続用の電極端子板21、22を挟み込んだ蛇腹状のシート状電池1Aを形成するものである。
【0126】
電極端子供給・折畳部55は、シート切断部121と、シート折畳機構部122Aとを有する。シート切断部121は、第1の実施形態と同一又は対応するものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0127】
シート折畳機構部122Aは、電池供給部51から繰り出されたシート状電池1Aの片面側又は両面側に電極端子板21、22を配置し、その電極端子板21、22をシート状電池1Aとともに両外側から押さえこみ、電極端子板21、22を支持しながらシート状電池1Aを折り畳むものである。
【0128】
図17は、第2の実施形態に係るシート折畳機構部122Aの動作の例を説明する説明図である。
【0129】
例えば、シート折畳機構部122Aは、電極端子板21、22をシート状電池1Aの表面に平行に近接させて配置する図示しない電極端子板供給部と、前記電極端子板供給部によって供給された電極端子板21、22ごとシート状電池1Aを両面側から挟持しシート状電池1Aの幅方向を軸に回転する一対の折曲部525a、525bと、その一対の折曲部525a、525bを互いに接近させるとともに一緒に回転させる挟持可動部528と、その折曲部525a、525bにシート状電池1Aを押しつけてシート状電池1Aに折り目を付けるプレス部526a,526bとを有している。
【0130】
図17に示すように、例えば折曲部525a、525bは、両端の先端の断面が鋭角な部材であり、その鋭角な先端部524a、524bを形成する斜面部527a、527bと挟持面部529a、529bとを有している。一対の折曲部525a、525bは、先端部524a、524bが折り畳まれるシート状電池1Aの幅方向と平行になるように配置されるとともに、挟持面部529a、529bが間隔をあけて対向するように配置される。
【0131】
そして、一対の折曲部525a、525bの間にシート状電池1Aが通っている状態で、前記電極端子板供給部がシート状電池1Aの負極層3側に負
極端子板22を近接させ、正極層2側に正極端子板21を近接させる。その状態で挟持可動部528が折曲部525a、525bをその挟持面部529a、529bが互いに接近するよう移動させて、電極端子板21、22ごとシート状電池1Aを挟持する。その後、挟持可動部528はその挟持した状態のまま折曲部525a、525bを所定角度、例えば挟持面529a、529bが水平になるまで回転させる。これにより折曲部525a、525bの先端部524a、524bによりシート状電池1Aが折り曲げられる。
【0132】
さらに、折曲部525a、525bの斜面部527a、527bと略平行なプレス面を有するプレス部526a、526bが斜面部527a、527bに向けて移動してシート状電池1Aを押圧する。これにより、折曲部525a、525bの先端部524a、524bの位置するところが折り目となりシート状電池1Aは折り曲げられる。
【0133】
そして、折り曲げ後にプレス部526a、526bが元の位置に戻るとともに、折曲部525a、525bが挟持可動部528により互いに離れる方向に移動して挟持状態を解除する。その後、折り曲げられたシート状電池1Aが電池供給部51によって送り出される。なお、この時、折曲部525a、525bは、必要によりシート状電池1Aの移動の妨げにならない位置に退避させるとよい。
【0134】
また、シート折畳機構部122Aは、シート状電池
1Aが所定の距離進むごとに、折曲部525a、525bによりシート状電池1Aを折り曲げること、プレス部526a、526bにより押圧すること、及び、プレス部526a、526bの押圧と折曲部525a、525bによる挟持を解除してシート状電池1Aを所定の長さ繰り出すこと、を繰り返すことで、蛇腹状のシート状電池1Aを形成する。電極端子が挿入されたシート状電池1Aは、トレー101上に積み重ねられる。
【0135】
なお、この例では一度の折り畳み動作でシート状電池1Aの両面に電極端子を供給するとともに、シート状電池1Aに二つの折り目を付けることができるので、折り畳み動作は一つの試験体分の間隔をあけるごとに行っている。また、シート状電池の繰り出しは、前記した正極層2が形成されていない部分に折り目がくるように設定されている。
【0136】
なお、折り畳み動作を行う間隔、折曲部525a、525bの回転方向や電極端子板の供給の仕方等は、シート状電池1Aが交互に折り畳まれてその谷折り部分にそれぞれ一つの電極端子板が挿入されるものであれば、適宜変更することができる。
【0137】
トレー101上に積み重ねられたシート状電池1Aは、トレー101に載せられたまま試験工程に移される。
【0138】
次に、第2の実施形態に係る試験装置100Aの動作を、
図15を用いて説明する。
【0139】
第1の実施形態に係る試験装置100におけるステップ1及び2、並びにステップ5〜9については、第2の実施形態と同一又は対応するものなので、ここでの詳細な説明を省略する。従って、以下では、ステップ2とステップ5の間の動作を説明する。
【0140】
[電極端子供給・電池折畳ステップ]
電池供給部51から電極端子供給・折畳部55へシート状電池1Aが所定の位置まで繰り出されてくると、シート折畳機構部122Aは、電極端子板供給部により電極端子板21、22を供給するとともに、折曲部525a、525bやプレス部526a、526b等の折り曲げ手段を用いて折り曲げる。詳細な動作については前述した通りなので説明を省略する。これにより、シート状電池1Aを折り畳むと同時に、正極端子板21及び負極端子板22を蛇腹状に折り畳んだシート状電池1Aの折り畳み部分に配置させることができる。折り曲げられたシート状電池
1Aは、トレー101上に積み重ねられる。所定回数折り曲げられたシート状電池
1Aは、シート切断部121により切断される。なお、蛇腹状電池
1Aの下面に配置する電極端子板については、あらかじめトレー101の所定位置に配置しておいてもよいし、上面に配置する電極端子板については折り畳み完了後に上面に載せてもよい。
【0141】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、電極端子が挟まれた状態でシート状電池が折り畳まれるので、第1の実施の形態と同様の効果を有することができる。また、第2の実施形態では、電極端子を接触させた状態で折り畳むので、折り畳み後にシート状電池に電極端子を挿入する工程が必要なく、装置の簡略化や処理時間の短縮ができる。
【0142】
また、折り畳み部分に正極層2を形成しないことにより、試験体毎に試験用電力の供給や電気特性の測定ができるので、測定結果をより精度よく行うことができる。
【0143】
(C)第3の実施形態
次に、本発明に係るシート状電池試験装置及びシート状電池試験方法の第3の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0144】
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、シート状電池が、量子電池である場合を例示する。
【0145】
また電池の試験装置は、第1の実施形態と同様に、電池性能を検査・試験する装置に広く適用することができる。
【0146】
(C−1)試験対象のシート状量子電池について
第3の実施形態における試験対象のシート状量子電池について図面を参照して説明する。
【0147】
図18及び
図19は、第3の実施形態に係るシート状量子電池10(以下、単に「シート状電池10」とも記す)を示す図である。
図18は、シート状電池10の正面図であり、
図19は、
図18のシート状電池10のF−F線断面図である。
【0148】
図18及び
図19に示すように、第3の実施形態に係るシート状電池10は、前述した量子電池の基本構成である負極層13、充電層16a、16b及び正極層12a、12bが積層された薄板状の長尺物からなるが、負極層13の両面にそれぞれ充電層16a、16b及び正極層12a、12bが順に積層されている点で上記第1の実施形態に係るシート状電池1と異なる。すなわち、負極層13の一方の面に、充電層16aと正極層12aが順に積層され、負極層13の他方の面に、充電層16bと正極層12bが順に積層されている。そして、負極層13の周縁部(例えば幅方向や長さ方向の端部)には、充電層16a、16bや正極層12a、12bに被覆されていない部分が設けられており、この部分が電池試験機の負極側端子との接続に使われる。本実施形態では、負極層13が充電層16a、16bや正極層12a、12bより幅が広く、かつ、それぞれの層が幅方向中央に揃えて積層しているため、充電層16a、16bや正極層12a、12bに被覆されていない負極層3の部分がシート状電池10の幅方向の両側に形成されている。上記した点以外は第1実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0149】
このように第3の実施形態に係るシート状電池10は、両面に充電層16a、16bを備えているため、正面の面積当たりの蓄電量を大きくすることができる。
【0150】
(C−2)第3の実施形態の構成
図20は、第3の実施形態に係る試験装置100Bの概略的な構成を示す構成図である。第1の実施形態と同様の構成については同じ番号をつけて説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0151】
第3の実施形態に係る試験装置100Bは、シート状電池10の供給を行う電池供給部(電池供給工程)51と、電池供給部51から供給されたシート状電池10を折り畳む電池折畳部(電池折畳工程)52と、電池折畳部52により折り畳まれたシート状電池10の間に電極端子を供給する電極端子供給部(電極端子供給工程)56と、電極端子供給部56により電極端子が供給されたシート状電池10を試験する試験部(試験工程)57とを有する。
【0152】
電池供給部51と電池折畳部52は、第1の実施形態に係る試験装置100と同一又は対応するものを適用することができるため、ここでの詳細な説明を省略する。
【0153】
電極端子供給部56は、折り畳まれたシート状電池10に正極端子板21の挟み込みを行うものである。正極端子板は、第1の実施形態で説明した正極端子板21を使用することができる。
【0154】
電極端子供給部56は、シート状電池10の谷折りされた部分の隙間を所定の間隔でかつ所定の位置に保持する図示しないシート保持部と、そのシート保持部により形成された隙間に正極端子板21を挿入する電極端子板供給部165とを有する。
【0155】
電極端子板供給部165は、本実施形態では、一方の側に開口した谷折り部に正極端子板21を挿入するための正極端子板供給部165aと、他方の側に開口した谷折り部に正極端子板21を供給するための正極端子板供給部165bとを有する。
【0156】
正極端子板供給部165a、165bの近傍には、あらかじめ挿入する複数の正極端子板21が用意されており、正極端子板供給部165a、165bはその用意されている正極端子板21のうちの1個を取り出し水平に保持した状態で、前記シート保持部により形成されているシート状電池10の谷折り部分の隙間に正極端子板21を挿入する。
【0157】
この動作を電池折畳部52により折り畳まれて電極端子供給部56に送り出されたシート状電池10に対して繰り返す。正極端子板が挿入されたシート状電池10は、トレー101上に積み重ねられる。
【0158】
なお、折り畳まれたシート状電池10の上面と下面については、片方の面にだけ導電部を設けた正極端子板23(片面正極端子板23ともいう)を使用することができる。片面正極端子板23は、
図21に示すように、一方の面に絶縁層231が形成され、他方の面に導電性部材からなる導電部232が形成されている。導電部232の端部には電線233が接続されている。この電線233が接続されている側の端部は、折り畳まれたシート状電池
10の上下面に配置された際に、その上下面からはみ出す可能性がある部分であり、両面が絶縁層により被覆されている。電線233は電池試験機116の正極側端子115aに接続される。この片面正極端子板23の導電部232は、上記した正極端子板21の導電部212と同様に、全面が電気的接触に機能するものであっても良いし、部分的又は多点で電気的接触に機能するものであっても良い。片面正極端子板23は、折り畳まれたシート状電池10の上面または下面に、導電部232が接触する向きで配置される。この配置は、正極端子板供給部165a、165bを用いて行っても良いし、あらかじめトレー101上に配置したり、別の手段で折り畳まれたシート状電池の上面に載せても良い。
【0159】
トレー101上に積み重ねられたシート状電池10は、トレー101に載せられたまま試験工程に移される。
【0160】
試験部57は、第1の実施形態と同様にシート状電池10の試験を行う部分であり、電池試験機116と、押圧部107とを有する。押圧部107は、第1の実施形態に係る試験装置100と同一又は対応するものを適用することができるため、ここでの詳細な説明を省略する。
【0161】
電池試験機116は、電池折畳部52により折り畳まれたシート状電池10を、その間や上下面に配置された電気接続用の正極端子板21、23を用いて、電池性能の検査、充放電試験、コンディショニング、充放電サイクル試験、エージング試験等の試験を行うために必要な電力の供給や電気特性の測定を行うものである。
【0162】
図21は、第3の実施形態に係る折り畳んだシート状電池10と電池試験機116との接続関係を示す図であり、
図22は、
図21におけるK−K線断面図である。
図21では、折り畳まれたシート状電池10と、その間や上下面に設けられた電気接続用の正極端子板21、23との接触状態を断面図で示している。また、シート状電池10に接触する正極端子板21、23と電池試験機116との接続関係も示している。なお、
図21及び
図22では、接触関係を明確にするためにシート状電池
10の厚み方向の寸法を強調して示している。また、
図21は、6つに折り畳んだ例を示しているが、折数はこれに限定されない。
【0163】
図21において、電池折畳部52により折り畳まれたシート状電池10は蛇腹状となり、その内側に折り込まれた部分の隙間に、電極端子供給部56により正極端子板21が挿入されている。また、折り畳まれたシート状電池の上下面には、片面正極端子板23が配置されている。
【0164】
図21において、シート状電池10の正極層12a、12bは正極端子板21、23の導電部と接触している。シート状電池10が折り畳まれることにより、正極層12aは正極端子板21を介して対向するものとなり、正極層12bは正極端子板21を介して対向するものとなる。
【0165】
また、シート状電池10の両端の試験体は、正極層12bが外側に来るように折り畳まれており、その正極層12bに片面正極端子板23がその導電部232を接触させるように配置されている。なお、この例では折り畳まれたシート状電池の上下面には片面正極端子板23を用いているが、中間に挿入されている正極端子板21と同じものを用いても良い。その場合は、正極層12と接触している導電部212に接続された電線213のみを電池試験機116の接続端子に接続するようにするとよい。
【0166】
電池試験機116は、蛇腹状電池10に接触している正極端子板21を電気接続用の電極端子として正極側端子115aに接続し、シート状電池10の負極層13が露出している部分を負極側端子115bに接続し、試験のための電力供給を行なうものである(例えば、電圧を印加したり、電流を流したりする)。
【0167】
正極端子板21は、電線213a、213bを介して、片面正極端子板23は電線233を介して電池試験機116の正極側端子115aに接続されている。また、シート状電池10の負極層13は、電線223を介して電池試験機116の負極側端子115bに接続されている。負極層13と電線223との接続は、充電層16及び正極層12が形成されていない負極層13の部分を使って接続することができる。なお、接続箇所は、1箇所でも良いし、複数箇所接続しても良い(例えば試験体毎に接続)。また、負極層13に接続端子を設けそれを介して接続しても良い。
【0168】
なお、電池試験機116は、正極端子板21と負極層13との間に電圧をかけたり電流を流したりする機能に加え、正極端子板21と負極層との間の電流や電圧等の電気特性を測定する機能を有するようにしても良い。また、電池試験機116は、測定された電気特性があらかじめ登録されている許容範囲内にあるかどうかを判断して、その測定箇所の電池が正常であるか異常であるかの判定をする機能を有するようにしてもよい。異常箇所はその異常と判定される測定値が測定された正極端子板21、23あるいはその導電部が特定されることによ
り判断される。
【0169】
試験完了後、シート状電池10は、電極端子板21、23が抜き取られ、蛇腹状のまま次の工程に移されたり、保管されたりする。なお、試験工程で異常が検知された部分の電池(例えば、異常を検知した正極端子板の導電部と接触する試験体)については、その後の工程でその部分を補修したり、取り除いたりすることができる。
【0170】
(C−3)第3の実施形態の効果
以上のように、第3の実施形態によれば、シート状電池を交互に折り畳み、その折り畳まれたシート状電池の間に電極端子を挟み込むことにより、第1の実施
形態と同様の効果を有することができる。
【0171】
また、正極端子板の上面の導電部と下面の導電部が絶縁層により絶縁されているため、試験体ごとに試験用の電力の供給や、電気特性の測定が可能となる。
【0172】
また、第3の実施形態では、試験対象のシート状電池の表面が両面とも正極層となり、正極端子板が折り畳まれたシート状電池の谷折り部分や上下面に配置されるが、この場合でも試験体毎あるいは試験体の片面毎に測定ができ、異常箇所の特定を容易にできる。
【0173】
(D)第4の実施形態
次に、本発明に係るシート状電池試験装置及びシート状電池試験方法の第4の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0174】
第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、シート状電池が、量子電池である場合を例示する。
【0175】
また電池の試験装置は、第1の実施形態と同様に、電池性能を検査・試験する装置に広く適用することができる。
【0176】
(D−1)試験対象のシート状量子電池について
第4の実施形態における試験対象のシート状量子電池について図面を参照して説明する。
【0177】
図23及び
図24は、第4の実施形態に係るシート状量子電池10A(以下、単に「シート状電池10A」とも記す)を示す図である。
図23は、シート状電池10Aの正面図であり、
図24(A)は、
図23のシート状電池10AのG−G線断面図であり、
図24(B)は、
図23のシート状電池10AのH−H線断面図である。
【0178】
図23及び
図24に示すように、第4の実施形態に係るシート状電池10Aは、第3の実施形態に係るシート状電池10と同様に負極層13の一方の面に充電層16aと正極層12aが順に積層され、他方の面に充電層16bと正極層12bが順に積層された薄板状の長尺物からなるが、その正極層12a、12bが断続的に形成されている点で第3の実施形態と異なる。すなわち、正極層12aが充電層16a上にシート状電池10Aの長手方向に間隔をあけて並んで積層されており、正極層12bが充電層16b上にシート状電池10Aの長手方向に間隔をあけて並んで積層されている。正極層12aと12bは負極層13に対して対称な位置に形成されている。この例において、それぞれの正極層12a、12bは正面視形状が同じ長方形状に形成されており、隣り合う正極層12a、12bの間には、正極層が存在しない部分(負極層13と充電層16a,16bだけが積層された部分)がそれぞれ一定の幅で形成されている。この正極層が形成されていない部分は、蛇腹状に折り曲げる際の折り曲げ部分に当たるので、この正極層が形成されていない部分によって区切られた部分がそれぞれ一つの試験体となる。正極層12a、12bを断続的に形成する方法としては、正極層12a、12bを形成するときに断続的に生成してもよいし、第3の実施形態と同様に正極層を一様に形成後、正極層を削ったり、例えばエッチングやレーザ照射等によって除去したりすることにより形成することができる。上記した点以外は第3の実施形態と同じなので説明を省略する。
【0179】
このように折り畳み部分に正極層を形成しないことにより、試験体毎に試験用電力の供給、電気特性の測定ができるので、測定結果をより精度よく行うことができる。
【0180】
(D−2)第4の実施形態の構成
第4の実施形態に係る試験装置は第3の実施形態の試験装置100Bを用いることができるので、第3の実施形態と同様の構成については同じ番号をつけて説明を省略し、第3の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0181】
図25は、第4の実施形態に係る折り畳んだシート状電池10Aと電池試験機116との接続関係を示す図である。
図25では、折り畳まれたシート状電池10Aと、その間や上下面に設けられた電気接続用の正極端子板21、23との接触状態を断面図で示している。また、シート状電池10Aに接触する正極端子板21、23と電池試験機116との接続関係も示している。
図25におけるL−L線断面図は、
図21におけるK−K線断面図(
図22参照)と同じなので説明を省略する。なお、
図25では、接触関係を明確にするためにシート状電池
10Aの厚み方向の寸法を強調して示している。また、
図25は、6つに折り畳んだ例を示しているが、折数はこれに限定されない。
【0182】
図25において、第3の実施形態と異なる点は、シート状電池10Aが折り畳まれる折り目部分の両面に正極層が形成されていない部分が位置している点である。シート状電池10Aが折り畳まれることにより、同じ内折り部にある2つの正極層12a、12bは正極端子板21を介して対向するものとなる。そして、シート状電池10Aの一方の面に形成されたそれぞれの正極層12aは、正極端子板21の導電部212aまたは212bと接触しており、他方の面に形成されたそれぞれの正極層12bは、正極端子板21または23の導電部212a、212bまたは232と接触している。上記した以外は、第3の実施形態の
図21と同じなので詳細な説明を省略する。
【0183】
(D−3)第4の実施形態の効果
以上のように、第4の実施形態によれば、シート状電池を交互に折り畳み、その折り畳まれたシート状電池の間に電極端子を挟み込むことにより、第1の実施形態と同様の効果を有することができる。
【0184】
また、折り畳み部分に正極層を形成しないことにより、試験体毎あるいは試験体の片面毎に試験用電力の供給や電気特性の測定ができるので、測定結果をより精度よく行うことができる。
【0185】
(E)他の実施形態
上述した各実施形態の説明においても、種々の変形実施形態を言及したが、更に以下に例示するような変形実施形態にも広く適用することができる。
【0186】
上述した各実施形態では、電極端子板を全ての折り畳み部分に交互に挟む場合を例示したが、一部の折り畳み部分に挟み込むようにすることもでき、例えば、1段とばしなど、一定の間隔をあけて挟み込むようにしても良い。
【0187】
また、第1の実施形態の試験対象であるシート状電池1を、第2の実施形態の試験装置100Aを用いて試験してもよいし、第2の実施形態の試験対象であるシート状電池1Aを、第1の実施形態の試験装置100を用いて試験してもよい。
【0188】
また、上述した各実施形態では、折り畳まれたシート状電池の上下面に電極端子板を配置する場合を例示したが、その電極端子板の配置を省略する替わりに、押圧板や押圧台、トレーに電極端子板の機能を持たせるようにしてもよい。その場合は、押圧板や押圧台、トレーを電池試験機の接続端子に接続するようにするとよい。