特許第6266471号(P6266471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266471
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】流体循環装置および荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/02 20060101AFI20180115BHJP
   H01J 37/141 20060101ALI20180115BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   F25D17/02 304
   H01J37/141 B
   F28D7/10 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-169248(P2014-169248)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-44876(P2016-44876A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】羽持 満
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−233147(JP,A)
【文献】 米国特許第5287706(US,A)
【文献】 実開昭60−146275(JP,U)
【文献】 特開2006−307523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 9/00
F25D 17/02
F28D 1/00 〜 13/00
H01J 37/141
F28C 3/04
H05K 7/20
B23Q 11/12 〜 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱負荷に流体を供給する流体循環装置であって、
前記熱負荷から戻る前記流体を収容する流体収容容器と、
前記流体収容容器の供給口から供給される前記流体の温度を調整する温度調整部と、
前記流体を前記熱負荷に送るポンプと、
を含み、
前記流体収容容器内には、入口が前記流体収容容器内に開放され、出口が前記供給口に接続された曲がり流路が設けられている、流体循環装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記曲がり流路は、少なくとも一部が螺旋状に設けられている、流体循環装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記曲がり流路の入口は、チューブの一端で構成され、
前記チューブの一端は、円筒形の前記流体収容容器の動径方向に沿って配置されている、流体循環装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記曲がり流路は、少なくとも一部が渦巻状に設けられている、流体循環装置。
【請求項5】
請求項2または4において、
前記曲がり流路は、樹脂または金属からなるチューブを含んで構成されている、流体循環装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記曲がり流路は、
渦巻き状の仕切り板と、
前記仕切り板上に配置された蓋体と、
を含んで構成されている、流体循環装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記曲がり流路は、
一端が前記流体収容容器内に開放された複数の曲がり管と、
複数の前記曲がり管の他端が接続された混合器と、
を含んで構成され、
前記混合器は、前記供給口に接続されている、流体循環装置。
【請求項8】
請求項7において、
複数の前記曲がり管は、平面視で回転対称な位置関係に配置されている、流体循環装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、
前記流体収容容器は、円筒形である、流体循環装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の流体循環装置を含む、荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項10において、
熱負荷を含み、
前記熱負荷を通った前記流体は、前記流体収容容器を通って前記温度調整部に至る、荷
電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体循環装置および荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡や荷電粒子ビーム描画装置等の荷電粒子線装置では、高精度の温度管理が必要である。例えば、電子顕微鏡や荷電粒子ビーム描画装置に用いられる電子レンズは、コイルに流れる電流による発熱を伴うため冷却の必要がある。このとき、電子レンズを冷却するための冷却水の許容される温度変動範囲は、きわめて小さい。そのため、電子顕微鏡や荷電粒子線装置に用いられる冷却水循環装置には、冷却水に対して、高い温度安定度が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、循環水(冷却水)を貯める水槽と、循環水を冷却する冷凍機と、循環水を加熱する電気ヒーターと、を備え、循環水が外部機器を冷却する冷却水循環装置であって、ヒーターをOFF状態にし、冷凍機をON/OFF制御して循環水の温度を制御する第1の運転モードと、冷凍機をON状態にし、ヒーターを用いて第1の運転モードよりも狭い温度変動幅で循環水を温度制御する第2の運転モードを備えることで、循環水の温度変動幅を適切に制御する冷却水循環装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−40631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷却水循環装置では、例えば、電子レンズにおける発生熱量が変化した場合、水槽に戻る冷却水の温度と水槽内の冷却水の温度には、大きな差が発生する。そのため、例えば、電子レンズにおける発生熱量が急激に変化した場合などには、水槽に戻る冷却水の温度が急激に変化して、冷却水の温度安定度を悪化させる要因となる場合がある。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、流体の温度安定度を高めることができる流体循環装置を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記流体循環装置を含む荷電粒子線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る流体循環装置は、
熱負荷に流体を供給する流体循環装置であって、
前記熱負荷から戻る前記流体を収容する流体収容容器と、
前記流体収容容器の供給口から供給される前記流体の温度を調整する温度調整部と、
前記流体を前記熱負荷に送るポンプと、
を含み、
前記流体収容容器内には、入口が前記流体収容容器内に開放され、出口が前記供給口に接続された曲がり流路が設けられている。
【0008】
このような流体循環装置では、流体収容容器内には、入口が流体収容容器内に開放され、出口がリザーバータンクの供給口に接続された曲がり流路が設けられているため、曲がり流路内において、流体を、乱流、せん断流れ、二次流れ等により攪拌することができ、
曲がり流路内の流体の温度を均一化することができる。さらに、流体収容容器内の流体と曲がり流路内の流体との間の熱交換によって、曲がり流路内の流体の温度をより均一化することができる。したがって、例えば、流体収容容器に戻る流体の温度が急激に変化したとしても、曲がり流路によって流体の温度を均一化して温度調整部に送ることができる。これにより、温度調整部に供給される流体の温度の急激な変化を減少させることができ、温度調整部による流体の温度制御に対する外乱要因を抑制し、流体の温度安定度を高めることができる。
【0009】
(2)本発明に係る流体循環装置において、
前記曲がり流路は、少なくとも一部が螺旋状に設けられていてもよい。
【0010】
このような流体循環装置では、曲がり流路の少なくとも一部が螺旋状に設けられているため、曲がり流路内において、流体を二次流れにより攪拌することができ、流体の温度を均一化することができる。
【0011】
(3)本発明に係る流体循環装置において、
前記曲がり流路の入口は、チューブの一端で構成され、
前記チューブの一端は、円筒形の前記流体収容容器の動径方向に沿って配置されていてもよい。
【0012】
このような流体循環装置では、曲がり流路の入口となるチューブの一端が流体収容容器の動径方向に沿って配置されているため、流体収容容器内の流体に一様な流れを作り出すことができ、流体収容容器内の流体を攪拌することができる。したがって、流体収容容器内の流体を攪拌するための攪拌機等を別途設ける必要がなく、装置の簡略化、低コスト化を図ることができる。
【0013】
(4)本発明に係る流体循環装置において、
前記曲がり流路は、少なくとも一部が渦巻状に設けられていてもよい。
【0014】
このような流体循環装置では、曲がり流路の少なくとも一部が渦巻状に設けられているため、曲がり流路内において、流体を二次流れにより攪拌することができ、流体の温度を均一化することができる。
【0015】
(5)本発明に係る流体循環装置において、
前記曲がり流路は、樹脂または金属からなるチューブを含んで構成されていてもよい。
【0016】
このような流体循環装置では、曲がり流路を簡易な構成で実現することができる。
【0017】
(6)本発明に係る流体循環装置において、
前記曲がり流路は、
渦巻き状の仕切り板と、
前記仕切り板上に配置された蓋体と、
を含んで構成されていてもよい。
【0018】
このような流体循環装置では、曲がり流路を簡易な構成で実現することができる。
【0019】
(7)本発明に係る流体循環装置において、
前記曲がり流路は、
一端が前記流体収容容器内に開放された複数の曲がり管と、
複数の前記曲がり管の他端が接続された混合器と、
を含んで構成され、
前記混合器は、前記供給口に接続されていてもよい。
【0020】
このような流体循環装置では、曲がり流路では、複数の曲がり管から吸い込んだ流体を混合器で混合して供給口から供給することができるため、例えば温度が急激に変化した流体が流体収容容器に戻ったとしても、曲がり管が1つの場合と比べて、流体収容容器の供給口から供給される流体の温度を均一化することができる。
【0021】
(8)本発明に係る流体循環装置において、
複数の前記曲がり管は、平面視で回転対称な位置関係に配置されていてもよい。
【0022】
このような流体循環装置では、例えば、流体収容容器内の流体に一様な流れを容易につくることができる。
【0023】
(9)本発明に係る流体循環装置において、
前記流体収容容器は、円筒形であってもよい。
【0024】
このような流体循環装置では、例えば、流体に流体収容容器の内壁面に沿った流れをつくることができる。
【0025】
(10)本発明に係る荷電粒子線装置は、
本発明に係る流体循環装置を含む。
【0026】
このような荷電粒子線装置では、流体の温度安定度を高めることができる流体循環装置を含むため、熱負荷に安定した温度の流体を供給することができる。
【0027】
(11)本発明に係る荷電粒子線装置において、
熱負荷を含み、
前記熱負荷を通った前記流体は、前記流体収容容器を通って前記温度調整部に至ってもよい。
【0028】
このような荷電粒子線装置では、熱負荷を通った流体は、流体収容容器を通って温度調整部に至るため、例えば、熱負荷における発生熱量が急激に変化して流体収容容器に戻る流体の温度が急激に変化した場合でも、上述したように曲がり流路によって流体の温度を均一化することができる。したがって、このような荷電粒子線装置では、温度調整部に供給される流体の温度を均一化することができ、温度調整部における流体の温度制御における外乱要因を抑制し、熱負荷に供給される流体の温度安定度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態の流体循環装置を含む荷電粒子線装置の構成を示す模式図。
図2】第1実施形態の流体循環装置のリザーバータンクを模式的に示す平面図。
図3】第1実施形態の流体循環装置のリザーバータンクを模式的に示す断面図。
図4】第2実施形態の流体循環装置のリザーバータンクを模式的に示す平面図。
図5】第2実施形態の流体循環装置のリザーバータンクを模式的に示す断面図。
図6】第3実施形態の流体循環装置のリザーバータンクを模式的に示す断面図。
図7】第3実施形態の流体循環装置のリザーバータンクを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものでは
ない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0031】
1. 第1実施形態
1.1. 流体循環装置
まず、第1実施形態に係る流体循環装置について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る流体循環装置100を含む荷電粒子線装置1000の構成を模式的に示す図である。なお、図1に示す矢印は、循環水の流れを表している。
【0032】
流体循環装置100は、荷電粒子線装置1000に組み込まれている。荷電粒子線装置1000は、例えば、電子顕微鏡である。当該電子顕微鏡は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)、走査電子顕微鏡(SEM)等である。流体循環装置100は、熱負荷1010,1020を冷却するための循環水を供給する。熱負荷1010,1020は、例えば、電子顕微鏡の電子レンズや、当該電子レンズの電源、油拡散ポンプ等である。荷電粒子線装置1000は、図示の例では、2つの熱負荷1010,1020を有しているが、熱負荷の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0033】
流体循環装置100では、冷却水としての循環水は、送水ポンプ20によって送水流路2から熱負荷1010,1020に送られる。熱負荷1010,1020を通り温められた循環水(リターン水)は戻水流路4を通って、リザーバータンク10に収容される。熱負荷1010,1020から戻った循環水は、リザーバータンク10に一時的に収容された後、送水ポンプ20を介して熱交換器32等からなる温度調整部30で温度調整される(冷却される)。そして、冷却された循環水は、送水流路2から、熱負荷1010,1020に送られる。このように流体循環装置100は、循環水を循環させて熱負荷1010,1020に循環水を供給し、熱負荷1010,1020を冷却する。
【0034】
流体循環装置100は、図1に示すように、送水流路2と、戻水流路4と、リザーバータンク(流体収容容器)10と、送水ポンプ20と、温度調整部30と、温度センサー40と、を含む。
【0035】
送水流路2は、循環水を熱負荷1010に送るための流路である。送水流路2は、温度調整部30で温度調整(冷却)された循環水が流れる。送水流路2は、熱負荷1010,1020に循環水を流通させるための流路1002に接続されている。送水流路2は、温度調整部30と流路1002とを接続している。荷電粒子線装置1000において、流路1002を通って熱負荷1010,1020に供給された循環水は、流路1004を通って流体循環装置100に戻る。
【0036】
戻水流路4は、熱負荷1010,1020を流通した循環水を、温度調整部30に導くための流路である。戻水流路4は、熱負荷1010,1020を流通した循環水を、流路1004からリザーバータンク10、ポンプ20を介して、温度調整部30に導く。戻水流路4は、流路1004と温度調整部30とを接続している。
【0037】
荷電粒子線装置1000では、送水流路2、流路1002、流路1004、および戻水流路4によって、循環水を循環させるための循環流路が構成されている。循環流路は、循環水を、温度調整部30と熱負荷1010,1020との間で循環させる。
【0038】
リザーバータンク10は、熱負荷1010,1020から戻った循環水を一時的に収容する容器である。リザーバータンク80は、戻水流路4に設けられている。リザーバータンク10には、熱負荷1010,1020で温められた循環水(リターン水)が導入される。リザーバータンク10に収容された循環水は、供給口12からポンプ20を介して温
度調整部30に送られる。リザーバータンク10の構成については後述する。
【0039】
送水ポンプ20は、循環水を熱負荷1010,1020に送る。荷電粒子線装置1000では、送水ポンプ20によって、送水流路2、流路1002、流路1004、および戻水流路4からなる循環流路に循環水を循環させることができる。
【0040】
温度調整部30は、リザーバータンク10の供給口12(図2,3参照)から供給される循環水の温度を調整する。温度調整部30は、熱負荷1010,1020を流通して流体循環装置100に戻った循環水の温度を調整する。熱負荷1010,1020から戻った循環水は、リザーバータンク10で一時的に収容された後、リザーバータンク10の供給口12から送水ポンプ20を介して、温度調整部30に送られる。温度調整部30は熱交換器32を含んで構成されている。熱交換器32では、冷媒を介して循環水と熱交換を行う。これにより、循環水を冷却することができる。
【0041】
冷媒は、冷却器34によって循環流路31を循環する。冷媒の流量は、電子膨張弁33の開度を制御部(図示せず)で制御することで調整される。制御部は、温度センサー40によって測定された循環水の温度に基づいて、熱負荷1010,1020に送られる循環水の温度が所望の温度となるように電子膨張弁33の開度を制御する。これにより、送水流路2を流れる循環水の温度を所望の温度に調整することができる。冷却器34は、さらに、コンプレッサーや、熱交換器等を含んで構成されていてもよい。
【0042】
温度調整部30は、図示はしないが、さらに、循環水を加熱するためのヒーターを含んで構成されていてもよい。この場合、前記制御部は、温度センサー40の測定結果に基づいて、電子膨張弁33およびヒーターの少なくとも一方を制御して、循環水の温度を調整する。
【0043】
温度センサー40は、送水流路2に設けられており、熱負荷1010,1020に送られる循環水の温度を測定する。温度センサー40は、例えば、金属の電気抵抗値が温度変化によって変動することを利用したセンサーである。温度センサー40は、測定した循環水の温度の情報を前記制御部に送る。
【0044】
次に、リザーバータンク10の構成について、図面を参照しながら説明する。図2はリザーバータンク10を模式的に示す平面図である。図3は、リザーバータンク10を模式的に示す断面図であり、図2のIII−III線断面図である。
【0045】
リザーバータンク10は、例えば、円筒形である。なお、リザーバータンク10の形状は、円筒形に限定されず、例えば、角筒形であってもよい。リザーバータンク10の下部(底部)には、供給口12が設けられている。供給口12は、戻水流路4に接続されており、戻水流路4を介して、送水ポンプ20に接続されている。
【0046】
リザーバータンク10内には、曲がり流路50が設けられている。曲がり流路50は、入口がリザーバータンク10内に開放され、出口が供給口12に接続されている。すなわち、曲がり流路50は、リザーバータンク10から供給口12までの循環水が流れる道である。曲がり流路50は、少なくとも一部が螺旋状に設けられている。本明細書において、螺旋とは、3次元曲線の一種で、円柱面上をまわりながら軸方向に一定の速度で進んでいくときにできる曲線である。なお、軸を旋回する回数は特に限定されない。
【0047】
曲がり流路50は、チューブ52で構成されている。チューブ52は、一端(開放端)54がリザーバータンク10内に開放され、他端56が供給口12に接続されている。すなわち、チューブ52の開放端54が曲がり流路50の入口となり、チューブ52の他端
56が曲がり流路50の出口となる。
【0048】
チューブ52は、リザーバータンク10の内壁面14に沿って少なくとも一部が螺旋状に設けられている。なお、チューブ52の螺旋状に設けられた部分は、例えば、リザーバータンク10が角筒形である場合、内壁面14に沿ってなくてもよい。
【0049】
チューブ52の開放端54は、円筒形のリザーバータンク10の動径方向Rに沿って配置されている。これにより、リザーバータンク10内の循環水に、リザーバータンク10の内壁面14に沿った一様な流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水を攪拌することができる。チューブ52の開放端54は、平面視で円筒形のリザーバータンク10の中心よりも内壁面14側に配置される。チューブ52の開放端54は、リザーバータンク10の内壁面14の近傍に配置されることが望ましい。これにより、リザーバータンク10内の循環水により強い流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水をより攪拌することができる。
【0050】
チューブ52の材質は、例えば、樹脂、金属等である。チューブ52は、チューブ52の外表面と内を通る循環水との間で熱交換が起こりやすい材質、厚さであることが望ましい。これにより、チューブ52の外表面と内を通る循環水との間の熱交換によって、チューブ52内の循環水の温度を均一化することができる。
【0051】
チューブ52の内径は、その中の循環水の流れが乱流領域になる大きさである。具体的には、チューブ52の内径は、例えば、レイノルズ数が3000以上となるような大きさに設定される。これにより、チューブ52の中の循環水の流れを、乱流領域にすることができる。チューブ52の長さは、例えば、数m程度である。
【0052】
次に、流体循環装置100の動作について説明する。
【0053】
送水ポンプ20が作動すると、チューブ52の開放端54からリザーバータンク10内の循環水が吸い込まれる。
【0054】
チューブ52に吸い込まれた循環水は、チューブ52内が乱流であることにより攪拌される。また、チューブ52内の循環水は、チューブ52の内壁面近傍のせん断流れによっても攪拌される。さらに、チューブ52内の循環水には、チューブ52の曲がりによって遠心力による二次流れが発生する。これによっても、チューブ52内の循環水は攪拌される。
【0055】
このように、曲がり流路50内において循環水が、乱流、せん断流れ、二次流れにより攪拌されるため、例えば、仮に温度が急激に変化した循環水がリザーバータンク10に戻った場合に、温度が急激に変化した循環水がチューブ52に導入されても、循環水の流れの方向に温度の均一化を進めることができる。
【0056】
さらに、チューブ52は、リザーバータンク10内に配置されている。そのため、チューブ52の外表面とチューブ52内の循環水との間で熱交換が起こり、チューブ52内の循環水の温度をより均一化することができる。
【0057】
また、チューブ52の開放端54は、円筒形のリザーバータンク10の動径方向Rに沿って配置されているため、リザーバータンク10内の循環水にリザーバータンク10の内壁面14に沿った一様な流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水を攪拌することができる。これにより、リザーバータンク10内の循環水の温度を均一化させることができる。
【0058】
チューブ52内を通過した循環水は、リザーバータンク10の供給口12から送水ポンプ20を介して、温度調整部30(熱交換器32)に送られる。循環水は、熱交換器32によって所望の温度に冷却される。
【0059】
ここで、温度調整部30に供給される循環水は、上述のように、曲がり流路50(チューブ52)によって温度が均一化される。そのため、温度が急激に変化した循環水が曲がり流路50内に吸い込まれた場合でも、送水ポンプ20を介して温度調整部30に供給される循環水の温度を均一化することができる。
【0060】
温度調整部30(熱交換器32)で所望の温度に冷却された循環水は、荷電粒子線装置1000の熱負荷1010,1020に送られる。熱負荷1010,1020を通り温められた循環水(リターン水)はリザーバータンク10に戻る。このように流体循環装置100では、循環水を循環させることによって、熱負荷1010,1020を冷却している。
【0061】
流体循環装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0062】
流体循環装置100では、リザーバータンク10内には、入口がリザーバータンク10内に開放され、出口がリザーバータンク10の供給口12に接続された曲がり流路50が設けられている。そのため、曲がり流路50内において、循環水を、乱流、せん断流れ、二次流れにより攪拌することができ、曲がり流路50内の循環水の温度を均一化することができる。さらに、リザーバータンク10内の循環水と曲がり流路50内の循環水との間の熱交換によって、曲がり流路50内の循環水の温度をより均一化することができる。したがって、熱負荷1010,1020を通ってリザーバータンク10に戻る循環水の温度が急激に変化したとしても、曲がり流路50によって循環水の温度を均一化して温度調整部30に送ることができる。これにより、温度調整部30に供給される循環水の温度の急激な変化を減少させることができ、温度調整部30による水温制御に対する外乱要因を抑制し、循環水の温度安定度を高めることができる。
【0063】
流体循環装置100では、曲がり流路50は、少なくとも一部が螺旋状に設けられている。これにより、曲がり流路50内において、循環水を二次流れにより攪拌することができ、循環水の温度を均一化することができる。
【0064】
流体循環装置100では、曲がり流路50は、樹脂または金属からなるチューブ52を含んで構成されている。このように流体循環装置100では、曲がり流路50を簡易な構成で実現することができる。
【0065】
流体循環装置100では、チューブ52の一端54は、円筒形のリザーバータンク10の動径方向Rに沿って配置されている。これにより、リザーバータンク10内の循環水に一様な流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水を攪拌することができる。したがって、流体循環装置100では、リザーバータンク10内の循環水を攪拌するための攪拌機等を別途設ける必要がなく、装置の簡略化、低コスト化を図ることができる。
【0066】
流体循環装置100では、リザーバータンク10は、円筒形である。そのため、例えば、曲がり流路50によって、循環水にリザーバータンク10の内壁面14に沿った流れをつくることができる。
【0067】
荷電粒子線装置1000では、循環水の温度安定度を高めることができる流体循環装置
100を含むため、熱負荷1010,1020に安定した温度の循環水を供給することができる。
【0068】
また、荷電粒子線装置1000では、熱負荷1010,1020を通った循環水は、リザーバータンク10を通って温度調整部30に至る。そのため、例えば、熱負荷1010,1020における発生熱量が急激に変化してリザーバータンク10に戻る循環水の温度が急激に変化した場合でも、上述したように曲がり流路50によって循環水の温度を均一化することができる。したがって、荷電粒子線装置1000では、温度調整部30(熱交換器32)に供給される循環水の温度を均一化することができ、熱負荷1010,1020に供給される循環水の温度安定度を高めることができる。
【0069】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る流体循環装置について、図面を参照しながら説明する。第2実施形態に係る流体循環装置の構成を示す図は、図1に示す流体循環装置100の構成を示す図と同様でありその図示を省略する。ただし、第2実施形態に係る流体循環装置では、曲がり流路50の構成が、第1実施形態に係る流体循環装置100と異なる。
【0070】
以下、第2実施形態に係る流体循環装置において、第1実施形態に係る流体循環装置100と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0071】
図4は、第2実施形態に係る流体循環装置のリザーバータンク10を模式的に示す平面図である。図5は、リザーバータンク10を模式的に示す断面図であり、図4のV−V線断面図である。
【0072】
曲がり流路50は、図4に示すように、少なくとも一部が渦巻状に設けられている。本明細書において、渦巻状とは、2次元曲線の一種で、旋回するにつれ中心に近づく曲線である。なお、軸を旋回する回数は特に限定されない。曲がり流路50は、リザーバータンク10の内壁面14の近傍に設けられた入口から旋回を開始し、旋回するにつれリザーバータンク10の中心に近づく曲線状であり、当該中心に曲がり流路50の出口が位置している。曲がり流路50の出口は、リザーバータンク10の供給口12に接続されている。
【0073】
曲がり流路50は、吸い込み管210と、仕切り板212と、蓋体214と、を含んで構成されている。
【0074】
吸い込み管210は、リザーバータンク10内の循環水を、曲がり流路50の渦巻状の部分に導くための管である。吸い込み管210は、吸い込み口216を有している。吸い込み口216が曲がり流路50の入口となる。吸い込み管210は、蓋体214に接合されている。
【0075】
吸い込み管210の吸い込み口216は、円筒形のリザーバータンク10の動径方向に沿って配置されている。これにより、リザーバータンク10内の循環水に一様な流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水を攪拌することができる。吸い込み管210の吸い込み口216は、平面視で円筒形のリザーバータンク10の中心よりも内壁面14側に配置されている。吸い込み管210の吸い込み口216は、リザーバータンク10の内壁面14の近傍に配置されることが望ましい。これにより、リザーバータンク10内の循環水により強い流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水をより攪拌することができる。
【0076】
仕切り板212は、渦巻状に設けられている。仕切り板212は、蓋体214に接合されている。仕切り板212と、蓋体214と、リザーバータンク10の内底面および内壁
面14と、によって区画された空間が曲がり流路50の渦巻状に形成された部分となる。曲がり流路50は、その中の循環水の流れが乱流領域になるような、形状および大きさを有している。
【0077】
吸い込み管210、仕切り板212、および蓋体214の材質は、樹脂、金属等である。吸い込み管210、仕切り板212、および蓋体214の材質は、蓋体214の外表面と内を通る循環水との間で熱交換が起こりやすい材質、厚さであることが望ましい。これにより、蓋体214の外表面と内を通る循環水との間の熱交換によって、曲がり流路50を通る循環水の温度を均一化することができる。
【0078】
なお、図示はしないが、曲がり流路50は、樹脂または金属からなるチューブをリザーバータンク10の内底面に渦巻き状に設置したものであってもよい。
【0079】
次に、第2実施形態に係る流体循環装置の動作について説明する。
【0080】
送水ポンプ20が作動すると、吸い込み口216からリザーバータンク10内の循環水が吸い込まれる。
【0081】
吸い込み口216から吸い込まれた循環水は、曲がり流路50内が乱流であることにより攪拌される。また、曲がり流路50内の循環水は、曲がり流路50を構成している仕切り板212、蓋体214等の近傍のせん断流れによっても攪拌される。さらに、曲がり流路50内の循環水には、曲がり流路50の渦巻状の曲がりによって遠心力による二次流れが発生する。これによっても、曲がり流路50内の循環水は攪拌される。
【0082】
このように、曲がり流路50内において循環水が、乱流、せん断流れ、二次流れにより攪拌されるため、例えば、仮に温度が急激に変化した循環水がリザーバータンク10に戻った場合に、温度が急激に変化した循環水が曲がり流路50に導入されても、循環水の流れの方向に温度の均一化を進めることができる。
【0083】
さらに、曲がり流路50は、リザーバータンク10内に配置されている。そのため、蓋体214の外表面と曲がり流路50内の循環水との間で熱交換が起こり、曲がり流路50内の循環水の温度をより均一化することができる。
【0084】
また、吸い込み口216は、円筒形のリザーバータンク10の動径方向に沿って配置されているため、リザーバータンク10内の循環水に一様な流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水を攪拌することができる。
【0085】
曲がり流路50内を通過した循環水は、リザーバータンク10の供給口12から、送水ポンプ20を介して、温度調整部30(熱交換器32)に送られる。循環水は、熱交換器32によって所望の温度に冷却される。
【0086】
ここで、温度調整部30に供給される循環水は、上述のように、曲がり流路50によって温度が均一化される。そのため、温度が急激に変化した循環水が曲がり流路50内に吸い込まれた場合でも、送水ポンプ20を介して温度調整部30に供給される循環水の温度を均一化することができる。
【0087】
温度調整部30(熱交換器32)で所望の温度に冷却された循環水は、荷電粒子線装置1000の熱負荷1010,1020に送られる。熱負荷1010,1020を通り温められた循環水(リターン水)はリザーバータンク10に戻る。このように第2実施形態に係る流体循環装置では、循環水を循環させることによって、熱負荷1010,1020を
冷却している。
【0088】
第2実施形態に係る流体循環装置は、例えば、以下の特徴を有する。
【0089】
第2実施形態に係る流体循環装置では、第1実施形態に係る流体循環装置100と同様に、リザーバータンク10内に曲がり流路50が設けられているため、温度調整部30に供給される循環水の温度の急激な変化を減少させることができ、温度調整部30による水温制御に対する外乱要因を抑制し、循環水の温度安定度を高めることができる。
【0090】
さらに、第2実施形態に係る流体循環装置では、曲がり流路50は、少なくとも一部が渦巻状に設けられている。これにより、曲がり流路50内において、循環水を二次流れにより攪拌することができ、循環水の温度を均一化することができる。
【0091】
また、第2実施形態に係る流体循環装置では、曲がり流路50は、渦巻き状の仕切り板212と、仕切り板212上に配置された蓋体214と、を含んで構成されている。このように第2実施形態に係る流体循環装置は、曲がり流路50を簡易な構成で実現することができる。
【0092】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る流体循環装置について、図面を参照しながら説明する。第3実施形態に係る流体循環装置の構成を示す図は、図1に示す流体循環装置100の構成を示す図と同様でありその図示を省略する。ただし、第3実施形態に係る流体循環装置では、曲がり流路50の構成が、第1実施形態に係る流体循環装置100と異なる。
【0093】
以下、第3実施形態に係る流体循環装置において、第1実施形態に係る流体循環装置100と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0094】
図6は、第3実施形態に係る流体循環装置のリザーバータンク10を模式的に示す断面図である。図7は、リザーバータンク10を模式的に示す図である。なお、図6は、図7のVI−VI線断面図である。
【0095】
曲がり流路50は、図6および図7に示すように、複数の曲がり管300と、混合器310と、を含んで構成されている。
【0096】
曲がり管300は、一端(開放端)306がリザーバータンク10内に開放されている。曲がり管300の開放端306が曲がり流路50の入口となる。また、曲がり管300の他端308は混合器310に接続されている。曲がり管300は、図示の例では、1つの曲がり部302と、1つの直線部304と、で構成されている。
【0097】
なお、図示はしないが、曲がり管300は、曲がり部302が複数設けられていてもよい。また、曲がり管300は、螺旋状に設けられていてもよいし、渦巻状に設けられていてもよい。
【0098】
曲がり管300の開放端306は、円筒形のリザーバータンク10の動径方向に沿って配置されている。これにより、リザーバータンク10内の循環水に一様な流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水を攪拌することができる。曲がり管300の開放端306は、平面視で円筒形のリザーバータンク10の中心よりも内壁面14側に配置されている。曲がり管300の開放端54は、リザーバータンク10の内壁面14の近傍に配置されることが望ましい。これにより、リザーバータンク10内の循環水により強い流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水をより攪拌することが
できる。
【0099】
曲がり管300の材質は、例えば、樹脂、金属等である。曲がり管300は、曲がり管300の外表面と内を通る循環水との間で熱交換が起こりやすい材質、厚さであることが望ましい。これにより、曲がり管300の外表面と内を通る循環水との間の熱交換によって循環水の温度を均一化することができる。
【0100】
曲がり管300の内径は、その中の循環水の流れが乱流領域になる大きさである。曲がり管300の内径は、例えば、レイノルズ数が3000以上となるような大きさに設定される。これにより、曲がり管300の中の循環水の流れを、乱流領域にすることができる。
【0101】
複数の曲がり管300は、図6に示すように、平面視でリザーバータンク10の中心に関して、回転対称な位置関係に配置されている。図示の例では、4つの曲がり管300が、平面視で、4回対称の位置関係にある。言い換えると、平面視で、1つの曲がり管300をリザーバータンク10の中心まわりに90°((360/n)°、n=4)ずつ回転させるとその他の各曲がり管300に重なる。4つの曲がり管300からなる構造体の平面形状は、4回対称である。
【0102】
なお、曲がり管300の数は、2つ以上であれば特に限定されない。
【0103】
混合器310は、円筒状の容器である。混合器310は、リザーバータンク10の内底面に配置されている。混合器310には、複数の曲がり管300の他端308(開放端306と反対側の端)が接続されている。混合器310内は、複数の曲がり管300を介してのみ、リザーバータンク10内と連通している。曲がり管300の他端308は、当該他端308から放出された循環水が混合器310内において混合器310の内壁面14に沿って進むように配置されている。図示の例では、曲がり管300の他端308は、混合器310の中心を向かないように配置されている。
【0104】
混合器310は、リザーバータンク10の供給口12に接続されている。すなわち、混合器310が曲がり流路50の出口を構成している。
【0105】
混合器310の材質は、例えば、樹脂、金属等である。混合器310は、混合器310の外表面と内を通る循環水との間で熱交換が起こりやすい材質、厚さであることが望ましい。これにより、混合器310の外表面と内を通る循環水との間の熱交換によって、循環水の温度を均一化することができる。
【0106】
次に、第3実施形態に係る流体循環装置の動作について説明する。
【0107】
送水ポンプ20が作動すると、それぞれの曲がり管300の開放端306からリザーバータンク10内の循環水が吸い込まれる。
【0108】
複数の曲がり管300の開放端306から吸い込まれた循環水は、曲がり管300内が乱流であることにより攪拌される。また、曲がり管300内の循環水は、曲がり管300の内壁面近傍のせん断流れによっても攪拌される。さらに、曲がり管300内の循環水には、曲がり管300の曲がりによって遠心力による二次流れが発生する。これによっても、循環水は攪拌される。
【0109】
各曲がり管300から吸い込まれた循環水は、混合器310内で混合され、攪拌される。そして、リザーバータンク10の供給口12から戻水流路4に送られる。
【0110】
このように、循環水は、各曲がり管300内において、乱流、せん断流れ、二次流れにより攪拌され、混合器310内において混合され攪拌されることにより、例えば、仮にリザーバータンク10内に温度が急激に変化した循環水がリザーバータンク10に戻った場合に、温度が急激に変化した循環水が曲がり管300に吸い込まれても、循環水の流れの方向に温度の均一化を進めることができる。また、曲がり管300が4箇所に設けられているため、この温度が急激に変化した循環水が4箇所同時に吸い込まれる確率は小さく、曲がり管300が1つの場合と比べて、供給口12から供給される循環水の温度を均一化することができる。
【0111】
さらに、曲がり管300および混合器310は、リザーバータンク10内に配置されている。そのため、曲がり管300および混合器310の外表面と曲がり管300内の循環水との間で熱交換が起こり、曲がり管300内の循環水の温度をより均一化することができる。
【0112】
また、曲がり管300の開放端306は、円筒形のリザーバータンク10の動径方向に沿って配置されているため、リザーバータンク10内の循環水にリザーバータンク10の内壁面14に沿った一様な流れを作り出すことができ、リザーバータンク10内の循環水を攪拌することができる。
【0113】
複数の曲がり管300および混合器310を通過した循環水は、リザーバータンク10の供給口12から送水ポンプ20を介して、温度調整部30(熱交換器32)に送られる。循環水は、熱交換器32によって所望の温度に冷却される。
【0114】
ここで、温度調整部30に供給される循環水は、上述のように、曲がり流路50によって温度が均一化される。そのため、温度が急激に変化した循環水が曲がり流路50内に吸い込まれた場合でも、送水ポンプ20を介して温度調整部30に供給される循環の温度を、均一化することができる。
【0115】
温度調整部30(熱交換器32)で所望の温度に冷却された循環水は、荷電粒子線装置1000の熱負荷1010,1020に送られる。熱負荷1010,1020を通り温められた循環水(リターン水)はリザーバータンク10に戻る。このように第3実施形態に係る流体循環装置では、循環水を循環させることによって、熱負荷1010,1020を冷却している。
【0116】
第3実施形態に係る流体循環装置は、例えば、以下の特徴を有する。
【0117】
第3実施形態に係る流体循環装置では、第1実施形態に係る流体循環装置100と同様に、リザーバータンク10内に曲がり流路50が設けられているため、温度調整部30に供給される循環水の温度の急激な変化を減少させることができ、温度調整部30による水温制御に対する外乱要因を抑制し、循環水の温度安定度を高めることができる。
【0118】
さらに、第3実施形態に係る流体循環装置では、曲がり流路50は、一端306がリザーバータンク10内に開放された複数の曲がり管300と、複数の曲がり管300の他端308が接続された混合器310と、を含んで構成され、混合器310は、リザーバータンク10の供給口12に接続されている。このように、曲がり流路50では、複数の曲がり管300から吸い込んだ循環水を混合器310で混合して供給口12から供給することができるため、例えば温度が急激に変化した循環水がリザーバータンク10に戻ったとしても、曲がり管300が1つの場合と比べて、温度調整部30に供給される循環水の温度を均一化することができる。
【0119】
第3実施形態に係る流体循環装置では、複数の曲がり管300は、平面視で回転対称な位置関係に配置されている。そのため、例えば、リザーバータンク10内の循環水にリザーバータンク10の内壁面14に沿った一様な流れを容易につくることができる。
【0120】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0121】
例えば、上述した第1〜第3実施形態では、本発明に係る流体循環装置が組み込まれる荷電粒子線装置として電子顕微鏡を挙げて説明したが、本発明に係る流体循環装置は熱負荷を有するその他の荷電粒子線装置にも適用できる。このような荷電粒子線装置としては、例えば、荷電粒子ビーム描画装置などが挙げられる。
【0122】
また、上述した第1〜第3実施形態では、本発明に係る流体循環装置が水を循環させる例について説明したが、本発明に係る流体循環装置では、水以外の液体、気体等の流体を循環させてもよい。
【0123】
また、上述した第1〜第3実施形態では、本発明に係る流体循環装置は熱交換器で循環水を冷却する例について説明したが、本発明に係る流体循環装置では流体をヒーター等で所望の温度に加熱してもよい。このような流体循環装置は、例えば、熱負荷に室温以上の流体を提供する場合に用いることができる。
【0124】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0125】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0126】
2…送水流路、4…戻水流路、10…リザーバータンク(流体収容容器)、12…供給口、14…内壁面、20…送水ポンプ、30…温度調整部、31…循環流路、32…熱交換器、33…電子膨張弁、34…冷却器、40…温度センサー、50…流路、52…チューブ、54…一端、56…他端、100…流体循環装置、210…吸い込み管、212…仕切り板、214…蓋体、216…吸い込み口、300…曲がり管、302…曲がり部、304…直線部、306…一端、308…他端、310…混合器、1000…荷電粒子線装置、1002,1004…流路、1010,1020…熱負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7