(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266490
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20180115BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20180115BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20180115BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
H01L29/86 301D
H01L21/20
H01L29/48 D
H01L29/48 M
H01L29/86 301F
H01L21/205
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-224076(P2014-224076)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-92169(P2016-92169A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】深澤 暁
(72)【発明者】
【氏名】大内 澄人
【審査官】
恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−081269(JP,A)
【文献】
特開2014−076925(JP,A)
【文献】
特開2007−036010(JP,A)
【文献】
特開2008−021689(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/041736(WO,A1)
【文献】
特開2006−216671(JP,A)
【文献】
特開2007−087992(JP,A)
【文献】
特開平5−343741(JP,A)
【文献】
特開平11−040850(JP,A)
【文献】
特開2002−208729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 21/20
H01L 21/205
H01L 29/47
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体層と、
前記導電体層の表面に形成されたSiC層と、
前記SiC層の表面に形成された0より大きく15nm以下の厚さを有するAlN層と、
前記AlN層の表面に形成された第1導電型のAlyGa1-yN(0≦y<1)層と、
前記AlyGa1-yN層の表面側に形成された第1の電極と、
前記導電体層の裏面側に形成された第2の電極と、を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる電流の大きさは、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧に依存する、半導体装置。
【請求項2】
前記AlyGa1-yN層の表面に形成された複合層をさらに備え、
前記複合層は、AlmGa1-mN(0<m≦1、y<m)層と、前記AlmGa1-mN層の表面に形成されたAlnGa1-nN(0≦n<1、n<m)層とを含み、
前記第1の電極は、前記導電体層から最も遠い前記AlnGa1-nN層よりも表面側に形成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記AlyGa1-yN層および前記AlnGa1-nN層の各々はn型の導電型を有しており、前記AlyGa1-yN層および前記AlnGa1-nN層の各々にはSiがドープされている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記AlyGa1-yN層および前記AlnGa1-nN層の各々の厚さは、50nm以上5μm以下である、請求項2または3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記AlmGa1-mN層の厚さは、0より大きく15nm以下である、請求項2〜4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複合層は、1層以上4層以下である、請求項2〜5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記導電体層はSi基板である、請求項1〜6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
導電体層と、前記導電体層の表面に形成されたSiC層とを含む基板を準備する工程と、
前記SiC層の表面に0より大きく15nm以下の厚さを有するAlN層を成膜する工程と、
前記AlN層の表面に第1導電型のAlyGa1-yN層(0≦y<1)を成膜する工程と、
前記AlyGa1-yN層の表面にAlmGa1-mN(0<m≦1、y<m)層を、前記AlyGa1-yN層の成膜温度よりも低温で成膜する工程と、
前記AlmGa1-mN層の表面にAlnGa1-nN層(0≦n<1、n<m)層を、前記AlmGa1-mN層の成膜温度よりも高温で成膜する工程と、
前記AlnGa1-nN層の表面側に第1の電極を形成する工程と、
前記AlnGa1-nN層の裏面側に第2の電極を形成する工程とを備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる電流の大きさは、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧に依存する、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記AlyGa1-yN層を成膜する工程において、前記AlyGa1-yN層の成膜中にSiをドープする、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記AlnGa1-nN層を成膜する工程において、前記AlnGa1-nN層の成膜中にSiをドープする、請求項8または9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記AlN層、前記AlyGa1-yN層、前記AlmGa1-mN層、および前記AlnGa1-nN層を成膜した後で、前記導電体層を除去する工程と、
前記導電体層を除去した後で、前記第2の電極を形成する工程において、前記AlnGa1-nN層の裏面側に前記第2の電極を形成する、請求項8〜10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記導電体層を除去する工程において、前記基板を除去する、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記導電体層を除去する工程において、前記基板から最も遠い前記AlnGa1-nN層を残して、前記AlnGa1-nN層の裏面側に形成された全ての層を除去する、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、より特定的には、SiC(炭化ケイ素)層を備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは、Si(ケイ素)に比べてバンドギャップが大きく、高い絶縁破壊電界強度を有している。このため、SiCは、高耐圧を有する半導体装置の材料として期待されている。また、3C−SiC(3C型の結晶構造を有するSiC)は、GaN(窒化ガリウム)との格子定数が近いことから、GaNを成長させるためのバッファー層として使用することができる。GaNの絶縁破壊電界強度はSiCの絶縁破壊電界よりも大きいため、3C−SiCをバッファー層とすることで、より高耐圧なGaNの半導体装置を実現することができる。
【0003】
SiC層を成長させるための下地基板としては、Si基板またはバルクのSiC基板が広く用いられている。このうちSiC基板は、現在のところ4インチ程度のものしか存在しておらず、大口径化が困難であるという問題を有している。安価で大口径のSiC層を得るためには、下地基板としてSi基板を用いることが好ましい。
【0004】
GaNを含む従来の半導体装置は、たとえば下記特許文献1に開示されている。下記特許文献1には、Si基板と、Si基板上に形成されたバッファー層と、バッファー層上に形成されたGaNからなるn形半導体層と、n型半導体層上に形成されたInGaN(窒化インジウムガリウム)からなる活性層と、活性層上に形成されたGaNからなるp形半導体層と、p形半導体層上に形成されたアノード電極と、Si基板に形成されたカソード電極とを備えた半導体装置が開示されている。バッファー層は、AlN(窒化アルミニウム)からなる第1の層と、GaNからなる第2の層とを交互に積層したものである。
【0005】
また、下記特許文献2および3には、SiC層上へGaN層を形成する方法が開示されている。特許文献2には、SiC上にGaN成膜温度よりも高温下でAl
xIn
yGa
1-x-yN(0<x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)層を成膜し、その後GaN成膜温度でGaNを成膜する第1工程と、GaN成膜温度よりも低温下でAl
xIn
yGa
1-x-yN(0<x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)層を成膜し、その後GaN成膜温度でGaNを成膜する第2工程とを備えた半導体基板の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、表面に膜厚2nm以上3.5μm以下のSiC単結晶薄膜が形成されたSi基板を準備し、SiC単結晶薄膜が形成されたSi基板を所定の成長温度に加熱して、Al、In、Ga、およびNのうち少なくとも2成分から成るバッファー層を形成する工程と、バッファー層上に、バッファー層の成長温度より低い温度で、GaN結晶による三次元核を所定の密度となるように形成させる工程と、バッファー層の成長温度より低い温度で、GaN結晶による三次元核を横方向成長させて連続的なGaN単結晶膜にする工程とを備えた半導体基板の製造方法が開示されている。バッファー層は、膜厚が15nm未満であり、組成がAl
xIn
yGa
1-x-yN(0.05≦x≦1,0≦y≦0.5,x+y≦1)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−60234号公報
【特許文献2】特開2013−179121号公報
【特許文献3】特開2014−76925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
GaN層を用いて縦型のデバイスを含む半導体装置を作製した場合、従来の技術には、縦方向(基板表面に垂直な方向)の電気抵抗が高く、消費電力が大きいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、消費電力を低減することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の局面に従う半導体装置は、導電体層と、導電体層の表面に形成されたSiC層と、SiC層の表面に形成された
0より大きく15nm以下の厚さを有するAlN層と、
AlN層の表面に形成された第1導電型のAl
yGa
1-yN(0≦y<
1)層と、Al
yGa
1-yN層の表面側に形成された第1の電極と、導電体層の裏面側に形成された第2の電極と、を備え、第1の電極と第2の電極との間に流れる電流の大きさは、第1の電極と第2の電極との間の電圧に依存する。
【0011】
上記半導体装置において好ましくは、Al
yGa
1-yN層の表面に形成された複合層をさらに備え、複合層は、Al
mGa
1-mN(0<m≦1、y<m)層と、Al
mGa
1-mN層の表面に形成されたAl
nGa
1-nN(0≦n<1
、n<m)層とを含み、第1の電極は、導電体層から最も遠いAl
nGa
1-nN層よりも表面側に形成される。
【0012】
上記半導体装置において好ましくは、Al
yGa
1-yN層およびAl
nGa
1-nN層の各々はn型の導電型を有しており、Al
yGa
1-yN層およびAl
nGa
1-nN層の各々にはSiがドープされている。
【0013】
上記半導体装置において好ましくは、Al
yGa
1-yN層およびAl
nGa
1-nN層の各々の厚さは、50nm以上5μm以下である。
【0014】
上記半導体装置において好ましくは、
AlmGa1-mN層の厚さは、0より大きく15nm以下である。
【0015】
上記半導体装置において好ましくは、複合層は、1層以上4層以下である。
【0016】
上記半導体装置において好ましくは、導電体層はSi基板である。
【0017】
本発明の他の局面に従う半導体装置の製造方法は、導電体層と、導電体層の表面に形成されたSiC層とを含む基板を準備する工程と、SiC層の表面に
0より大きく15nm以下の厚さを有するAlN層を成膜する工程と、
AlN層の表面に第1導電型のAl
yGa
1-yN層(0≦y<
1)を成膜する工程と、Al
yGa
1-yN層の表面にAl
mGa
1-mN(0<m≦1、y<m)層を、Al
yGa
1-yN層の成膜温度よりも低温で成膜する工程と、Al
mGa
1-mN層の表面にAl
nGa
1-nN層(0≦n<1
、n<m)層を、Al
mGa
1-mN層の成膜温度よりも高温で成膜する工程と、Al
nGa
1-nN層の表面側に第1の電極を形成する工程と、Al
nGa
1-nN層の裏面側に第2の電極を形成する工程とを備え、第1の電極と第2の電極との間に流れる電流の大きさは、第1の電極と第2の電極との間の電圧に依存する。
【0018】
上記製造方法において好ましくは、Al
yGa
1-yN層を成膜する工程において、Al
yGa
1-yN層の成膜中にSiをドープする。
【0019】
上記製造方法において好ましくは、Al
nGa
1-nN層を成膜する工程において、Al
nGa
1-nN層の成膜中にSiをドープする。
【0020】
上記製造方法において好ましくは、
AlN層、Al
yGa
1-yN層、Al
mGa
1-mN層、およびAl
nGa
1-nN層を成膜した後で、導電体層を除去する工程と、導電体層を除去した後で、第2の電極を形成する工程において、Al
nGa
1-nN層の裏面側に第2の電極を形成する。
【0021】
上記製造方法において好ましくは、導電体層を除去する工程において、基板を除去する。
【0022】
上記製造方法において好ましくは、導電体層を除去する工程において、基板から最も遠いAl
nGa
1-nN層を残して、Al
nGa
1-nN層の裏面側に形成された全ての層を除去する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、消費電力を低減することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態における半導体装置の製造方法の第1の工程を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態における半導体装置の製造方法の第2の工程を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態における半導体装置の製造方法の第3の工程を示す断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態における半導体装置の製造方法の第4の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。以降の説明において、半導体装置を構成する各層の「表面」とは、図中上側の面を指しており、「裏面」とは、図中下側の面を指している。「表面に形成された」とは、表面に接触して形成されたことを指しており、「裏面に形成された」とは、裏面に接触して形成されたことを指している。「表面側」とは、「表面」と接触する位置と、「表面」とは距離を隔てた図中上側の位置とを含む位置とを含む意味である。「裏面側」とは、「裏面」と接触する位置と、「裏面」とは距離を隔てた図中下側の位置とを含む意味である。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【0028】
図1を参照して、本実施の形態における半導体装置は、ショットキーバリアダイオードを含んでいる。半導体装置は、Si基板1と、SiC層2と、AlN層3と、GaN層4と、AlN層5と、GaN層6と、電極9および10とを備えている。
【0029】
Si基板1(導電体層の一例)は、n型のSiよりなっている。Si基板1は、表面1aおよび裏面1bを有している。Si基板1の表面1aは、Si結晶の(111)面で構成されている。
【0030】
SiC層2は、Si基板1の表面1aに形成されている。Si基板1は、たとえば3C−SiC、4H−SiC、または6H−SiCなどよりなっている。特に、SiC層2がSi基板1上にエピタキシャル成長されたものである場合、一般的に、SiC層2は3C−SiCよりなっている。SiC層2の厚さは、たとえば2nm以上3.5μm以下である。
【0031】
SiC層2は、Si基板1の表面を炭化することで得られたSiCよりなる下地層上に、MBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学蒸着)法、またはLPE(液相エピタキシー)法などを用いて、SiCをホモエピタキシャル成長させることによって形成されてもよい。SiC層2は、Si基板1の表面を炭化することのみによって形成されてもよい。さらに、SiC層2は、バッファー層を挟んでSi基板1の表面上にSiCをヘテロエピタキシャル成長させることによって形成されてもよい。
【0032】
AlN層(HT(High Temperature)−AlN層)3は、SiC層2の表面に形成されている。AlN層3は、SiC層2とGaN層4との格子定数の差を緩和するバッファー層としての機能を果たす。AlN層3は、たとえばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成される。AlN層3の成長温度は、たとえば1100℃以上1300℃以下とされる。AlN層3の成膜温度は任意であり、後述するGaN層4の成膜温度と同程度の温度であってもよいが、後述するGaN層4の成膜温度よりも高いことが好ましい。AlN層3の成長温度は、たとえば1100℃以上1300℃以下とされる。このとき、Al源ガスとしては、たとえばTMA(Tri Methyl Aluminium)や、TEA(Tri Ethyl Aluminium)などが用いられる。N源ガスとしては、たとえばNH
3(アンモニア)が用いられる。AlN層3の厚さは、0より大きく15nm以下であることが好ましい。これにより、AlN層3内に形成される転位を低減し、GaN層4の結晶性を良好にすることができる。加えて、AlN層3の形成に要する時間を短縮することができる。
【0033】
なお、AlN層3は、Al原子の一部をGa原子で置き換えることにより、Al
xGa
1-xN(0<x≦1)層とされてもよい。但し、GaN層4の結晶性を確保するためには、Al
xGa
1-xN層はAlNであること(Al原子をGa原子で置き換えないこと)が好ましい。
【0034】
GaN層4は、AlN層3の表面に形成されている。GaN層4は、Siがドープされており、n型の導電型を有している。GaN層4の厚さは、50nm以上5μm以下であることが好ましい。GaN層4の厚さは、200nm以上2μm以下であることがより好ましい。これにより、基板の反りを抑制しつつ高品質なGaN層を得ることができる。
【0035】
GaN層4は、たとえばMOCVD法を用いて、次の方法で形成される。始めに、GaN結晶による三次元核を所定の密度となるように形成させる。続いて、AlN層3の成長温度より低い温度で、GaN結晶による三次元核を横方向成長させて連続的なGaN単結晶膜にする。このとき、Ga源ガスとしては、たとえば、TMG(Tri Methyl Gallium)や、TEG(Tri Ethyl Gallium)などが用いられる。N源ガスとしては、たとえばNH
3が用いられる。Si源ガスとしては、たとえばSiH
4(シラン)が用いられる。この方法のように、GaN層4の成膜中にSiをドープすることにより、n型のGaN層4を簡易な方法で作製することができる。
【0036】
三次元核を形成させる工程、およびGaN結晶による三次元核を横方向成長させる工程における処理温度(GaN層4の成膜温度)は、たとえば900℃以上1200℃以下である。
【0037】
なお、GaN層4は、Ga原子の一部をAl原子で置き換えることにより、Al
yGa
1-yN層(0≦y<1、y<x、好ましくはy≦0.2、より好ましくはy≦0.1)とされてもよい。但し、GaN層4の結晶性を確保するためには、Al
yGa
1-yN層はGaNであること(Ga原子をAl原子で置き換えないこと)が好ましい。
【0038】
AlN層(LT(Low Temperature)−AlN層)5は、GaN層4の表面に形成されている。AlN層5は、GaNの結晶性を維持したまま基板の反りを抑制する中間層としての機能を果たす。AlN層5は、たとえばMOCVD法を用いて形成される。AlN層5の成長温度は、GaN層4および6の成膜温度よりも低温とされる。AlN層5の厚さは、0より大きく20nm以下であることが好ましい。AlN層5の厚さは、15
nm以下であることがより好ましい。
【0039】
なお、AlN層5は、Al原子の一部をGa原子で置き換えることにより、Al
mGa
1-mN(0<m≦1、y<m)層とされてもよい。但し、GaN層6の結晶性を確保するためには、Al
mGa
1-mN層はAlNであること(Al原子をGa原子で置き換えないこと)が好ましい。xの値とmの値とは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0040】
GaN層6は、AlN層5の表面に形成されている。GaN層4は、Siがドープされており、n型の導電型を有している。GaN層6は、成膜温度も含めてGaN層4と同様の方法で形成される。GaN層6の厚さは、50nm以上5μm以下であることが好ましい。なお、GaN層6のSiドープ濃度は、形成するデバイスの種類に応じて、他のGaN層2およびGaN層4とは異なる値にしてもよい。
【0041】
なお、GaN層6は、Ga原子の一部をAl原子で置き換えることにより、Al
nGa
1-nN層(0≦n<1、n<x、n<m)とされてもよい。但し、GaN層4の結晶性を確保するためには、Al
nGa
1-nN層はGaNであること(Ga原子をAl原子で置き換えないこと)が好ましい。GaN層6のn型不純物濃度は、GaN層4のn型不純物濃度よりも低くてもよい。また、GaN層6の上部のn型不純物濃度がGaN層6の下部のn型不純物濃度よりも低くてもよい。yの値とnの値とは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0042】
AlN層5とGaN層6とは複合層7を構成している。GaN層4の表面側に形成される複合層の数(ここでは1層)は任意であるが、1層以上4層以下であることが好ましい。複数の複合層が積層して形成されている場合、電極9は、SiC層2から最も離れた位置に存在する複合層のGaN層6よりも表面側に形成される。複数の複合層中の各層のmの値またはnの値は、互いに異なっていてもよい。
【0043】
電極9は、アノード電極であり、GaN層6の表面に形成されている。電極9はGaN層6とショットキー接触している。電極9は、たとえばAu(金)よりなっている。電極9は、たとえば蒸着法、MOCVD法、またはスパッタ法などにより形成される。
【0044】
電極10は、カソード電極であり、Si基板1の裏面1bに形成されている。電極10は、たとえば、Alなどよりなっている。電極10は、たとえば蒸着法、MOCVD法、またはスパッタ法などにより形成される。
【0045】
本実施の形態における半導体装置は、次のように動作する。電極10が接地された状態で、電極9に正の電位が付与されると、電極9から電極10に電流Iが流れる。AlN層3および5は薄いため、電子は、トンネル効果によりAlN層3および5の各々を通過することができる。電流Iの大きさは、電極9と電極10との間の電圧に依存する。
【0046】
本実施の形態における半導体装置は、次の方法で製造される。Si基板1と、SiC層2とを含む構造(基板)8を準備する。SiC層2の表面にAlN層3を形成する。AlN層3の表面にGaN層4を、AlN層3の成膜温度より低温で成膜する。GaN層4の表面にAlN層5を形成する。AlN層5の表面にGaN層6を、AlN層5の成膜温度より低温で成膜する。GaN層6の表面(AlN層3の表面側)に電極9を形成する。Si基板1の裏面1b(AlN層3の裏面側)に電極10を形成する。
【0047】
AlNの格子定数は、GaNの格子定数よりもわずかに小さい。このため、本実施の形態のように、AlN層3を下地としてGaN層4を形成すると、GaN層4に圧縮応力が加わり、GaN層4にクラックが発生しにくくなる。これにより、良質な結晶のGaN層4を得ることができ、GaN層4の電気抵抗を低減することができる。一方で、AlN層3は、他の層と比較して高い電気抵抗を有している。本実施の形態では、SiC層2上にAlN層3を形成することにより、AlN層3の表面に形成されるGaN層4の結晶を良質に保ちつつ、AlN層3の厚さを小さくすることができる。その結果、電極9と電極10との間の電気抵抗が低減され、半導体装置の消費電力を低減することができる。また、Si基板1上にSiC層2を形成することにより、安価で大口径の半導体装置を得ることができる。さらに、Si基板1上にSiC層2を形成することにより、AlN層3を薄くしても、GaとSiとの反応に起因するメルトバックエッチングによる欠陥の発生を防ぐことができる。
【0049】
図2は、本発明の第2の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【0050】
図2を参照して、本実施の形態における半導体装置は、Si基板およびSiC層が除去されている点において、第1の実施の形態の半導体装置の構成と異なっている。電極10は、AlN層3の裏面側に形成されている。電極10とAlN層3とは直接接触していてもよいし、任意の導電体を挟んでいてもよい。
【0051】
本実施の形態における半導体装置の上述以外の構成は、第1の実施の形態における半導体装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0052】
次に、
図3〜
図6を用いて、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。
【0053】
図3を参照して、第1の実施の形態の製造方法と同様の方法で、Si基板1と、SiC層2と、AlN層3と、GaN層4と、AlN層5と、GaN層6と、電極9とを形成する。電極9をパターニングする際に電極9の表面9aにレジストを形成した場合には、このレジストを除去せずに保護膜として残すことが好ましい。
【0054】
図4を参照して、たとえばエレクトロンワックスなどの接着剤を用いて、電極9の表面9aに支持基板21を貼り付ける。支持基板21は、たとえばSiまたはSiCなどよりなっている。
【0055】
図5を参照して、たとえば熱硝酸または沸硝酸などを用いたウェットエッチングにより、Si基板1を除去する。続いて、ドライエッチングなどにより、SiC層2を除去する。これにより、基板8が除去され、AlN層3の裏面3aが露出する。なお、SiC層2を除去せずに残してもよい。基板8の除去は、AlN層3およびGaN層4を形成した後に行われればよい。さらに、基板8から最も遠いGaN層(図中最も上にあるGaN層)を残して、残されるGaN層の裏面側に形成された全ての層を除去してもよい。
【0056】
図6を参照して、Ag(銀)ペーストなどの導電性接着剤を用いて、AlN層3の裏面3a(SiC層を残した場合にはSiC層2の裏面、基板8から最も遠いGaN層の裏面側に形成された全ての層を除去した場合、基板8から最も遠いGaN層の裏面)に電極10を貼り付ける。続いて、たとえば加熱することにより、支持基板21を除去する。次に、たとえばアセトンなどの溶媒を用いて、電極9の表面9aに残存している接着剤および保護膜を除去する。以上により、
図2に示す半導体装置が得られる。なお、電極10として、基板1よりも導電性が高い基板を貼り付けることもできる。
【0057】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。加えて、半導体装置の厚さが、Si基板およびSiC層を除いた厚さとなるため、半導体装置の薄型化を図ることができ、縦方向の電気抵抗を低減することができる。
【0059】
半導体装置を構成する各層の厚さは、分光エリプソメーターを用いて測定される。分光エリプソメーターは、偏光である入射光を測定対象に照射し、測定対象からの反射光を受光する。S偏光とP偏光とでは位相のズレや反射率の違いがあるため、反射光の偏光状態は、入射光の偏光状態とは異なるものになっている。この偏光状態の変化は、入射光の波長、入射角度、膜の光学定数、および膜厚などに依存する。分光エリプソメーターは、得られた反射光から、入射光の波長や入射角に基づいて膜の光学定数や膜厚を算出する。
【0060】
上述の実施の形態において、導電体層はSi基板以外のものであってもよい。導電体層は、たとえばCu(銅)またはAlなどの金属や、GaAs(ガリウム砒素)、Ge(ゲルマニウム)、またはSiなどの導電性の半導体層よりなっていてもよい。
【0061】
上述の実施の形態の各々において、AlN層5およびGaN層6が省略され、GaN層4の表面に電極9が直接形成されてもよい。この場合には、製造工程を簡略化することができ、半導体装置を簡易な構成とすることができる。また、GaN層6の表面側に、さらにAlN層およびGaN層が積層されてもよい。この場合には、GaN層の結晶の品質を向上することができる。
【0062】
半導体装置に形成されるデバイスは任意の縦型のデバイスであればよく、上述ショットキーバリアダイオードの他、MOSFET、LED(Light Emitting Diode)、サイリスタ、または半導体レーザーなどであってもよい。半導体装置は、Al
yGa
1-yN層の表面側に形成された第1の電極と、Si基板の裏面側に形成された第2の電極との間に流れる電流の大きさが、第1の電極と第2の電極との間の電圧に依存するものであればよい。
【0063】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 Si(ケイ素)基板
1a Si基板の表面
1b Si基板の裏面
2 SiC(炭化ケイ素)層
3,5 AlN(窒化アルミニウム)層
3a AlN層の裏面
4,6 GaN(窒化ガリウム)層
7a,7b 複合層
8 Si基板とSiC層とを含む構造(基板)
9,10 電極
9a 電極の表面
21 支持基板
I 電流