特許第6266507号(P6266507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266507反射防止層を有するガラス物品およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266507
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】反射防止層を有するガラス物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/22 20060101AFI20180115BHJP
   C03C 17/23 20060101ALI20180115BHJP
   C03C 17/28 20060101ALI20180115BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20180115BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C03C17/22 Z
   C03C17/23
   C03C17/28 Z
   C03C21/00 101
   B32B17/06
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-509317(P2014-509317)
(86)(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公表番号】特表2014-520056(P2014-520056A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】US2012035073
(87)【国際公開番号】WO2012151097
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年4月1日
(31)【優先権主張番号】61/481,429
(32)【優先日】2011年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】バカ,アドラ スミス
(72)【発明者】
【氏名】ノラン,ダニエル アロイシアス
(72)【発明者】
【氏名】ペッツォルド,オデッサ ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ケサダ,マーク アレジャンドロ
(72)【発明者】
【氏名】セナラトネ,ワジーシャ
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−175601(JP,A)
【文献】 特開2009−223154(JP,A)
【文献】 特開2009−237135(JP,A)
【文献】 特開2009−139796(JP,A)
【文献】 米国特許第05492769(US,A)
【文献】 特開2001−278637(JP,A)
【文献】 特開2002−182006(JP,A)
【文献】 特開平09−188545(JP,A)
【文献】 特開2002−234754(JP,A)
【文献】 特開平07−272646(JP,A)
【文献】 特開2010−282036(JP,A)
【文献】 特開2010−222199(JP,A)
【文献】 特開2008−007365(JP,A)
【文献】 特表2010−538147(JP,A)
【文献】 特表2006−500206(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0276990(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0209752(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00 − 17/44
G02B 1/10 − 1/18
B32B 17/00 − 17/12
C03C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板、および
前記ガラス基板の表面上に堆積された、450ナノメートルから1000ナノメートルの範囲の波長で2%未満の全反射率を有する反射防止層、
を備えた透明ガラス物品であって、
前記反射防止層が、前記ガラス基板の表面上に単層に配置された六方充填された複数のナノ粒子を含み、該六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも一部が、間隙により互いから隔てられており、
前記六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも一部が、前記ガラス基板の表面内に部分的に埋め込まれている、透明ガラス物品。
【請求項2】
記六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも一部の各ナノ粒子が、その直径の半分未満の深さまで、前記ガラス基板の表面内に埋め込まれている、請求項記載の透明ガラス物品。
【請求項3】
前記反射防止層が、
(1)1%未満の透過ヘイズ、
(2)拭き操作前に測定された反射防止層の初期反射率から20%未満しか変わらない、5,000拭き後の反射率、
(3)HBから9Hまでに及ぶ硬度、
の、少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1または2いずれか1項記載の透明ガラス物品。
【請求項4】
前記ガラス基板は、イオン交換により化学強化され、かつ前記表面からガラス内の深さまで延在する、圧縮応力下にある圧縮層を有し、前記圧縮応力が少なくとも350メガパスカルであり、前記圧縮層の層の深さが少なくとも20マイクロメートルである、請求項1からいずれか1項記載の透明ガラス物品。
【請求項5】
複数のピクセルを含むディスプレイの前面に配置されたときに、スパークルを示さない、請求項1からいずれか1項記載の透明ガラス物品。
【請求項6】
ガラス基板上に反射防止層を製造する方法において、
複数のナノ粒子を前記ガラス基板の表面上に六方充填された単層に自己組織化させる工程であって、該六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも第1の部分は、間隙によって互いから隔てられている、複数のナノ粒子を自己組織化させる工程、および
前記ガラス基板の表面内に前記複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分を部分的に埋め込んで、反射防止層を形成する工程であって、前記反射防止層が、450ナノメートルから1000ナノメートルの範囲内の波長で2%未満の反射率を有するものである、反射防止層を形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項7】
前記ガラス基板の表面が、該表面から該ガラス基板内の深さまで延在する、圧縮応力下にある圧縮層を有するように該ガラス基板をイオン交換する工程であって、前記圧縮応力が少なくとも350メガパスカルであり、前記圧縮層の層の深さが少なくとも20マイクロメートルである、イオン交換する工程をさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項8】
前記イオン交換する工程が、前記複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分を前記ガラス基板の表面内に埋め込んだ後に行われる、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2011年5月2日に出願された米国仮特許出願第61/481429号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は反射防止層に関する。本開示は、より詳しくは、反射防止層を有するガラス基板に関する。
【背景技術】
【0003】
通信装置またはエンターテイメント装置などの多種多様な電子装置のディスプレイスクリーンまたは窓に、一般に反射防止コーティングが施されている。そのような反射防止表面は、スクリーンまたは窓に貼り付けられた接着フイルムの形態をとる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの接着フイルムは、スクリーンまたは窓からの反射を防ぐ追加の多数の屈折率干渉コーティングが被覆されることがある。貼付けの過程でディスプレイとフイルムとの間に空気が閉じ込められることがあり、それによって、ディスプレイの視聴を乱すエアポケットが生じてしまう。さらに、そのようなフイルムは、使用中にかき傷が付き易く、長期間の使用に耐えるのに必要な耐久性が欠如している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
耐久性の反射防止コーティングおよびそのようなコーティングを有するガラス物品が提供される。この反射防止コーティングは、ガラス物品の表面上に配置されたか、またはその中に少なくとも部分的に埋め込まれた(例えば、加熱中にガラスの表面中にナノ粒子を沈ませることにより、またはナノ粒子の少なくとも一部が結合剤内に含まれていない状態で、ガラスの表面にナノ粒子を固定する結合剤を提供することにより)公称でまたは実質的に六方充填された(hexagonally packed)ナノ粒子の層を含む。その反射防止コーティングまたは反射防止層を製造する方法およびそのような反射防止層を有するガラス物品も提供される。
【0006】
1つのタイプの透明ガラス物品は、ガラス基板、およびそのガラス基板の表面上に配置された、約450ナノメートル(nm)から約1000nmの範囲の波長で約2%未満の全反射率を有する反射防止層を備えることができる。この反射防止層は、ガラス基板の表面上に単層に配置された公称で六方充填された複数のナノ粒子を備えることができ、よって、公称で六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも一部が、間隙によって互いから隔てられている。全反射率は、反射防止層自体のものであり、ガラス基板からのどのような反射の寄与も含まない。
【0007】
このタイプの透明ガラス物品のある実施の形態において、公称で六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも一部(すなわち、いくらかまたは全て)がガラス基板の表面内に部分的に埋め込まれている。公称で六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも一部は、ガラス基板の表面内に、その直径の約半分未満の深さまで埋め込まれていて差し支えない。
【0008】
このタイプの透明ガラス物品の他の実施の形態において、透明ガラス物品は、ガラス基板の表面上に配置された無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤をさらに含むことができ、それゆえ、公称で六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも一部が無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤中に埋め込まれている。公称で六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも一部の各ナノ粒子は、無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤中に、その直径の約半分未満の深さまで埋め込まれていて差し支えない。無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤は、シルセスキオキサン、メチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、フェニルシロキサン、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属ホウ酸塩、またはそれらの組合せから選択することができる。
【0009】
このタイプのある透明ガラス物品において、公称で六方充填された複数のナノ粒子は、約80nmから約200nmの平均直径を有する。
【0010】
このタイプの様々な透明ガラス物品は、様々な物理的特性を示し得る。例えば、反射防止層は、約1%未満の透過ヘイズを有し得る。同様に、ガラス基板は、イオン交換によって化学強化して、表面からガラス中のある深さまで延在する圧縮応力下にある圧縮層を有する表面を生じることができ、ここで、圧縮応力は少なくとも350メガパスカル(MPa)であり、圧縮層の層の深さは少なくとも20マイクロメートル(μm)である。この圧縮応力および層の深さは、それぞれ、少なくとも500MPaおよび少なくとも60μmとなることができる。また、透明ガラス物品は、複数のピクセルを含むディスプレイの前面に配置された場合、全くスパークル(sparkle)を示さないことができる。それに加え、反射防止層は、拭く前に測定された反射防止層の初期反射率から約20%未満しか変化しない5,000拭き(wipe)後の反射率を有し得る。さらに、反射防止層は、以下に定義されるような、HBから9Hまでに及ぶ硬度を有し得る。ある場合には、透明ガラス物品は、これらの物理的特性の内の複数を示し得る。
【0011】
ガラス基板の表面上に配置できる反射防止層の1つのタイプは、結合剤およびその結合剤内に部分的に埋め込まれた複数のナノ粒子を含み得る。この複数のナノ粒子は、ガラス基板の表面上に単層に公称で六方充填されることができ、それゆえ、隣接するナノ粒子の少なくとも一部は、間隙によって互いから隔てられている。反射防止層自体は、約450nmから約1000nmの範囲内の波長で約2%未満の全反射率を有し得る。
【0012】
このタイプの反射防止層のある実施の形態において、複数のナノ粒子の各々は直径を有することができ、複数のナノ粒子の各々は結合在中にその直径の約半分未満の深さまで埋め込まれ得る。複数のナノ粒子の各々が、球形、非球形、長円体、または多角形であることが可能である。ある場合には、複数のナノ粒子の各々は、約80nmから約200nmの範囲内の直径を有し得る。
【0013】
このタイプの様々な反射防止層は、様々な物理的特性を示し得る。例えば、反射防止層は、約1%未満の透過ヘイズを有し得る。また、反射防止層は、複数のピクセルを含むディスプレイの前面に配置された場合、全くスパークルを示さないことができる。それに加え、反射防止層は、拭く前に測定された反射防止層の初期反射率から約20%未満しか変化しない5,000拭き後の反射率を有し得る。さらに、反射防止層は、以下に定義されるような、HBから9Hまでに及ぶ硬度を有し得る。ある場合には、反射防止層は、これらの物理的特性の内の複数を示し得る。
【0014】
ガラス基板上に反射防止層を製造する方法の1つのタイプは、複数のナノ粒子をガラス基板の表面上に公称で六方充填された単層に自己組織化させる工程であって、公称で六方充填された複数のナノ粒子の少なくとも第1の部分は、間隙によって互いから隔てられている工程を含み得る。この方法は、ガラス基板の表面内に、または結合剤内に複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分を部分的に埋め込んで、反射防止層を形成する工程であって、結合剤が無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤であり、反射防止層が、約450nmから約1000nmの範囲内の波長で約2%未満の反射率を有するものである工程を含む。
【0015】
このタイプの方法のある実施の形態において、複数のナノ粒子を自己組織化する工程が、回転被覆、浸漬被覆、グラビア印刷、ドクターブレーディング、吹付け塗り、スロットダイ・コーティング、またはそれらの組合せによって、複数のナノ粒子を含む分散液をガラス基板の表面に施す工程を伴い得る。
【0016】
このタイプの方法のいくつかの実施の形態において、ガラス基板の表面内に複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分を部分的に埋め込む工程は、複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分のナノ粒子の一部がガラスの表面中に沈むように、ガラス基板および/または複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分を、ガラス基板の焼鈍点より高い温度で加熱する工程を含む。このタイプの方法の他の実施の形態において、無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤内に複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分を部分的に埋め込む工程は、ガラス基板の表面上および複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分のナノ粒子の間の空間中に無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤を配置する工程を含む。これらの後者の実施の形態において、複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分の各ナノ粒子は、無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤内にその直径の約半分未満の深さまで埋め込まれ得る。
【0017】
このタイプの方法は、ガラス基板の表面が、表面からガラス基板内のある深さまで延在する圧縮応力下にある圧縮層を有するようにこのガラス基板をイオン交換する工程であって、その圧縮応力は少なくとも350MPaであり、圧縮層の層の深さは少なくとも20μmである工程をさらに含み得る。イオン交換により、圧縮応力および層の深さは、それぞれ、少なくとも500MPaおよび少なくとも60μmとなることができる。ある場合には、イオン交換は、複数のナノ粒子の少なくとも第2の部分をガラス基板の表面内または結合剤内に部分的に埋め込んだ後に行われる。
【0018】
このタイプの方法は、自己組織化工程の前であっても後であっても差し支えない、ガラス基板の表面をエッチングすることを含む工程も含み得る。
【0019】
ガラス基板上に反射防止層を製造するこのタイプの方法により、様々な物理的特性を示すことができる透明ガラス物品を製造できる。例えば、反射防止層は、約1%未満の透過ヘイズを有し得る。また、透明ガラス物品は、複数のピクセルを含むディスプレイの前面に配置された場合、全くスパークルを示さないことができる。それに加え、反射防止層は、拭く前に測定された反射防止層の初期反射率から約20%未満しか変化しない5,000拭き後の反射率を有し得る。さらに、反射防止層は、以下に定義されるような、HBから9Hまでに及ぶ硬度を有し得る。ある場合には、このタイプの方法により、結果として、これらの物理的特性の内の複数を示し得る透明ガラス物品を製造できる。
【0020】
ガラス基板上に反射防止層を製造する別のタイプの方法は、隣接するナノ粒子が間隙によって互いから隔てられるように、複数のナノ粒子をガラス基板の表面上に公称で六方充填された単層に自己組織化する工程、および複数のナノ粒子を表面内に部分的に埋め込んで、約450nmから約1000nmの範囲内の波長で約2%未満の全反射率をそれ自体で有する反射防止層を形成する工程を含み得る。
【0021】
ガラス基板上に反射防止層を製造するさらに別のタイプの方法は、隣接するナノ粒子が間隙によって互いから隔てられるように、複数のナノ粒子をガラス基板の表面上に公称で六方充填された単層に自己組織化する工程、およびその表面上の無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤内に複数のナノ粒子を部分的に埋め込んで、約450nmから約1000nmの範囲内の波長で約2%未満の全反射率を有する反射防止層を形成する工程を含み得る。
【0022】
これらと他の態様、利点、および顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付図面、および付随の特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)は反射防止層を有するガラス物品の説明図、(b)は反射防止層を有するガラス物品の断面図、(c)は別の反射防止層を有するガラス物品の断面図
図2】ガラス物品の表面にナノ粒子が埋め込まれている、ガラス物品の表面の平面図の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
図3】ガラス物品の表面にナノ粒子が埋め込まれているガラス物品に関する入射光の波長の関数として、計算した反射率をプロットしたグラフ
図4a】粒子間の距離が異なる反射防止層に関する、入射光の波長の関数として、計算した反射率をプロットしたグラフ
図4b】結合剤の深さが異なる反射防止層に関する、入射光の波長の関数として、計算した反射率をプロットしたグラフ
図4c】異なるサイズのナノ粒子を含む反射防止層に関する、入射光の波長の関数として、反射防止層の計算した反射率をプロットしたグラフ
図5】対照サンプルおよび片面に反射防止層を有する表面に関する、波長の関数として、実験により得た全反射率および拡散反射率の曲線をプロットしたグラフ
図6a】120nmまたは150nmいずれかの平均直径を有するナノ粒子を含む反射防止層に関する、波長の関数として、実験により得た全反射率および拡散反射率の曲線をプロットした第1のグラフ
図6b】120nmまたは150nmいずれかの平均直径を有するナノ粒子を含む反射防止層に関する、波長の関数として、実験により得た全反射率および拡散反射率の曲線をプロットした第2のグラフ
図7】反射防止層を有するガラス物品を製造する方法を表す流れ図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図に亘り、同様の参照文字が、同様の部品または対応する部品を指す。別記しない限り、「上部」、「下部」、「外側」、「内側」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語と考えるべきではない。その上、群が、複数の要素およびその組合せの群の少なくとも1つを含むとして記載されているときはいつでも、その群は、個別か、または互いに組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつを含む、から実質的になる、またはからなると理解される。同様に、群が、複数の要素およびその組合せの群の少なくとも1つからなるとして記載されているときはいつでも、その群は、個別か、または互いに組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつからなると理解される。別記しない限り、値の範囲は、列挙された場合、その範囲の上限と下限の両方およびそれらの間の任意の範囲を含む。ここに用いたように、単数形は、別記しない限り、「少なくとも1つ」すなわち「1つ以上」を意味する。
【0025】
図面を参照すると、図解は、特定の実施の形態を説明する目的のためであり、本開示または付随の特許請求の範囲をそれに制限することは意図されていないことが理解されよう。図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、その図面の特定の特徴および特定の視野は、明瞭さと簡潔さのために、縮尺または図式で誇張されて示されているかもしれない。
【0026】
上述したように、反射防止層およびガラス基板の(すなわち、少なくとも1つの)表面上に配置された反射防止層を有する透明ガラス物品が提供される。ここに用いたように、「反射防止の」または「反射防止」という用語は、一般に、関心のある特定のスペクトルに亘りそこに入射する光の正反射率を妨害するその層または物品の能力を称する。
【0027】
反射防止層は、ガラス基板または物品の複数の表面上に配置することができるが、便宜上(それに制限することを全く意図せずに)、以下に提供される図面とその説明は、片面に配置された反射防止層を有するガラス物品を称する。
【0028】
反射防止層110を有するガラス物品または基板100の平面図が図1(a)に示されており、一方で、図1(b)および(c)は、反射防止層110を有するガラス物品100の断面側面図である。複数のナノ粒子112が、ガラス物品100の表面105上に配置されているか、またはその表面105内に少なくとも部分的に埋め込まれている。ある態様において、ナノ粒子112は、表面105上に単層で実質的にまたは公称で六方充填された構成またはアレイ115(図1(a))に配列されている。ここに用いたように、「実質的に六方充填された」または「公称で六方充填された」という用語は、ガラス基板の表面上のナノ粒子の充填配列を称する。そのような配列において、表面上のナノ粒子の圧倒的大多数は、いわゆる「六方最密充填」パターン(すなわち、所定の粒子が、その粒子を取り囲む六角形の形状で配列された6つの最も近い隣接粒子を有する)で配列される。ある実施の形態において、ナノ粒子の少なくとも80パーセント(%)が、六方最密充填パターンで配列されている。他の状況において、ナノ粒子の少なくとも90パーセントが六方最密充填パターンで配列されている。
【0029】
隣接するナノ粒子(例えば、図1(a)〜(c)における112a,112b)は、間隙117によって互いから隔てられていてよい。ここに用いたように、「間隙(gap)」という用語は、粒子間の距離または隣接するナノ粒子間の間隔(spacing)を称し、個々のナノ粒子112の平均直径(d)の間の平均距離によって表される。ここに用いたように、「直径」という用語の標準的な意味は、完全に球形の粒子の直径のみに制限されず、当該技術分野で公知のサイズ測定技法により決定されるナノ粒子の平均粒径、非球形ナノ粒子の長径または外寸、およびそのような非球形粒子を囲むまたは取り囲む最小の球体の直径も称する。
【0030】
ナノ粒子112は、ナノ粒子112を含む分散液により、回転被覆、浸漬被覆などの自己組織化技法によって、表面105上に配置してよい。いくつかの実施の形態において、反射防止層110は、約1%未満の反射率を有し、いくつかの実施の形態において、約450nmから約1000nmの範囲内の波長λを有する放射線に関して約1.5%未満の反射率を有する。この波長範囲における低い反射率は、ディスプレイ用途にとって特に有用である。他の実施の形態において、反射防止層110は、約450nmから約1000nmに及ぶ波長λに関して約2%未満の反射率を有する。この450〜1000nm範囲における低い反射率は、光起電用途にとって特に有用である。
【0031】
ナノ粒子112は、耐久性であり、磨耗に対して耐性であり、ガラス基板105の屈折率とほぼ同じであり得る低い屈折率を有する。いくつかの実施の形態において、ナノ粒子112は、高分子粒子、無機酸化物またはフッ化物(例えば、セリウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、マグネシウム、シリコンなどの)など、それらの組合せ、またはそれらの混合物を含む。ナノ粒子112は形状が実質的に球形であってよい(すなわち、ナノ粒子112は、全体の形状が球体の形状に類似している限り、完全に球形、ほぼ球形、両軸が互いにほぼ等しい長円体、または多角形であってよい)。他の実施の形態において、ナノ粒子112は、形状が円錐状またはほぼ円錐状であって差し支えない。ナノ粒子112は、約80nmから約200nm、いくつかの実施の形態において、約80nmから約180nmの範囲内の直径を有し得る。
【0032】
いくつかの実施の形態において、ナノ粒子112は、表面105およびガラス物品100にナノ粒子112を固定、結合、または付着させるように表面105内に部分的に埋め込まれ、それゆえ、耐久性および耐引掻き性を有する反射防止層110を提供する。ナノ粒子112は、いくつかの実施の形態において、ガラス物品または基板100を、下にあるガラスの焼鈍点より高い温度まで加熱し、ガラス物品100の表面105を軟化させ、ナノ粒子112を、図1(b)に図示されるように、ガラス物品100の表面105中に部分的に沈ませ、その中に埋め込むことによって、表面105内に部分的に埋め込んでもよい。図2は、ガラス物品100の表面の平面図の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、ここで、ナノ粒子112は、ガラス物品100をその焼鈍点より高い温度に加熱し、ナノ粒子112をガラス物品100の表面105中に沈ませることによって、ガラス物品100の表面105内に埋め込まれていた。このSEM画像に示されるように、ナノ粒子112は、公称で六方充填された構成またはアレイ115に自己組織化されていた。
【0033】
いくつかの実施の形態において、反射防止層110は、粒子112をそれらの「赤道」(すなわち、ナノ粒子の直径の半分と等しい深さ)まで埋め込み、次いで、埋め込まれていないナノ粒子の部分を除去する(例えば、エッチングプロセスを使用して)ことによって、形成してもよい。そのような反射防止層に関する、有効屈折率法を使用して計算され、ガラス物品の反射防止層から反射される光の割合として表される、屈折率が、図3において波長の関数としてプロットされている。
【0034】
他の実施の形態において、ナノ粒子112は、ガラス物品100の表面105上にそれ自体が配置された結合剤120内に部分的に埋め込まれている(図1(c))。結合剤120は、回転被覆、浸漬被覆、グラビア印刷、ドクターブレーディング、吹付け塗り、スロットダイ・コーティングなどによって表面105に施されて、間隙117を少なくとも部分的に充填し、図1(a)および図2に示されたものに類似の公称で六方充填された構成またはアレイ115を得てもよい。結合剤120は、ナノ粒子112を表面105に固定、付着、または結合させるように働き、無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤を含んでよい。例示の無機結合剤としては、アルカリ金属ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム)、アルカリ金属ホウ酸塩などが挙げられる。例示の有機ケイ素結合剤としては、シルセスキオキサン(すなわち、実験化学式RSiO1.5を有する化合物、式中、Rは、水素もしくはアルキル基、アルケン基、アリール基、またはアリーレン基のいずれかである)、シロキサン(例えば、メチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、フェニルシロキサン)などが挙げられる。
【0035】
有機結合剤、および特に高分子結合剤は、物品および反射防止コーティングがその後の処理中に曝露される条件に対する低い耐久性/安定性、およびその条件に対する低い適合性のために、ここに記載された物品および反射防止コーティングの結合剤としての機能を果たせないことに留意することが重要である。例えば、純粋に有機である結合剤は、ガラス基板の化学強化(例えば、イオン交換)に関連する温度および/または化学物質に耐えることができない、または最も純粋に有機である結合剤は、イオン交換プロセスを行うことができない(すなわち、多くの有機結合剤は、イオンをその中に拡散または移行させることができない)。少なくともこれらの理由のために、ここに記載された反射防止コーティングおよびガラス物品は、純粋に有機である結合剤の使用は考えていない。
【0036】
隣接するナノ粒子112の間の間隙117の存在が、反射防止層110−およびガラス物品100−に反射防止特性を与える。間隙117には、結合剤120が部分的に充填されている、空気が部分的に充填されている、または結合剤120と空気の混合物が充填されているであろう。所望の反射率レベルを達成するために、粒子を含まないまたは粒子を有さない表面105の区域は、これにより光が反射防止層110およびガラス物品100を通過させるので、最小にされるべきである。したがって、間隙117の標準偏差は、ナノ粒子112の直径dの約2倍未満であるべきである。いくつかの実施の形態において、間隙117は約300nm以下であり(すなわち、それらの直径の間の距離として取られるナノ粒子間の平均間隙が約300nm以下であり)、他の実施の形態において、間隙117は、約100nm以下である。いくつかの実施の形態において、隣接するナノ粒子は、互いに直接接触しており、粒子間の距離または間隙117がゼロである。
【0037】
複数のナノ粒子112の各々がガラス物品100の表面105内または結合剤120内のいずれかに埋め込まれる深さd1も、反射防止層110の反射率に影響する。いくつかの実施の形態において、深さd1は、ナノ粒子112の直径または外寸dの約半分未満(すなわち、約50%未満)である。他の実施の形態において、深さd1は、ナノ粒子112の直径dの約3/8未満(すなわち、約37.5%未満)、さらに他の実施の形態において、直径dの約1/4未満(すなわち、約25%未満)である。
【0038】
最小の反射率が生じる波長は、粒径、結合剤の深さd1、および粒子間の距離(すなわち、間隙117)に依存する。有機結合剤を使用してガラス物品100の表面105に付着したナノ粒子を含む反射防止表面について計算された反射率曲線が、図4a〜cにおいて波長λの関数としてプロットされており、ここで、反射率は、ガラス物品の反射防止表面から反射した光の割合として表されている。反射率曲線は、有効屈折率法を使用して計算され、その方法において、有効屈折率は、反射防止層が被覆された表面中に伝搬し、そこから出る光の透過の深さの関数として計算される。一旦、屈折率関数が定義されたら、反射率は再帰式を使用して計算される。直径150nmを有するナノ粒子を含む反射防止層に関する反射率への粒子間の距離または空隙の効果が、図4aに示されている。ナノ粒子は、ナノ粒子の直径dの1/4(25%)の深さd1(すなわち、d/4)まで結合剤中に埋め込まれている。反射率は、間隙117がナノ粒子112の直径の0%(すなわち、隣接するナノ粒子が互いに接触している)(図4aの曲線aに示されている)、5%(図4aの曲線b)、および15%(図4aの曲線c)である条件ついて計算した。図4aに示されるように、反射率は、空隙の増加と共に減少する。その上、最小の反射率が得られる波長は、間隙の減少と共に増加する。
【0039】
互いに接触している(すなわち、間隙117がゼロである)150nmのナノ粒子を含む反射防止表面に関する反射率への結合剤の深さ(すなわち、ナノ粒子が結合剤中に埋め込まれている深さ)の影響が、図4bに示されている。反射率は、ナノ粒子112の直径の半分(図4bの曲線d)、3/8(図4bの曲線e)、および1/4(曲線4bの曲線f)の結合剤の深さについて計算した。図4bに示されているように、反射率は、結合剤の深さの減少と共に減少する。
【0040】
対照サンプルおよび片面に反射防止層を有する表面に関する、実験により得られた反射率曲線が、図5に波長の関数としてプロットされており、ここで、反射率は、反射防止表面から反射した光の百分率として表されている。対照サンプル(図5の曲線1)は、約8%の反射率を有する、反射防止層を持たないガラス基板である。曲線a〜dの各々に示された反射防止層は、100nmのナノ粒子を含む。曲線aは、結合剤を有さない反射防止層について得た。曲線b〜dは、異なる量のケイ酸ナトリウム結合剤を含む。反射防止層中のケイ酸ナトリウム結合剤の量は、曲線bから曲線dまで進むに連れて、増加する。曲線a〜dにおける反射率値は、基板の背面または反対面からの4%の反射率の寄与を含み、この面は反射防止層を持たなかった。したがって、反射防止層のみの反射率は、図5にプロットされた値から4%を引くことによって予測できる。図5にプロットされたデータは、反射率値が、結合剤の深さの増加と共に増加することを示している。また、最小反射率が観察される波長は、結合剤の深さが増加するにつれて、短い波長へとシフトし、したがって、先に記載された理論計算に一致している。
【0041】
反射率へのナノ粒子のサイズの影響が、図4cに示されている。図4cに示されたデータは、ナノ粒子が互いに接触しており、結合剤の深さがナノ粒子の直径の1/4である、反射防止層または表面について計算した。反射率は、100nm(図4cの曲線g)、125nm(図4cの曲線h)、および150nm(図4cの曲線i)のナノ粒子のサイズ/直径について計算した。図4cに示されるように、最小反射率が生じる波長は、ナノ粒子のサイズが増加するにつれて増加し、一方で、最小反射率の値は、ナノ粒子のサイズにより実質的に不変である。
【0042】
対照サンプルおよび片面に反射防止層を有する表面に関する、実験により得られた反射率曲線が、図6aおよび6bに波長の関数としてプロットされており、ここで、反射率は、反射防止層を有する表面から反射した光の百分率として表されている。対照サンプル(図6bの曲線1)は、反射防止層を持たないガラス基板であり、約8%の反射率を有する。反射防止層は、120nm(図6aおよび6bにおいてAと記されている)または150nm(図6aおよび6bにおいてBと記されている)いずれかの平均直径および様々な深さの有機結合剤を有するナノ粒子を含む。図6aおよび6bにおける反射率値は、反射防止層を持たない、基板の背面または反対面からの4%の反射率の寄与を含む。したがって、反射防止層のみの反射率は、図6aおよび6bにプロットされた値から4%を引くことによって予測できる。図6aおよび6bにプロットされたデータは、反射防止表面が、150nmの直径を有するナノ粒子を含む場合、550nmで観察された反射率が約1%以下であることを示している。
【0043】
コーティングの耐久性(クロック耐性(Crock Resistance)とも称される)は、反射防止コーティング110の布による繰り返しの摩擦に耐える能力を称する。クロック耐性試験は、衣類または織物とタッチスクリーン装置との間の物理的接触を模倣し、そのような処理後の基板上に配置されたコーティングの耐久性を決定することを意味する。
【0044】
クロックメーター(Crockmeter)は、そのような摩擦に曝される表面のクロック耐性を決定するために使用される標準装置である。クロックメーターは、荷重されたアームの端部に取り付けられた摩擦用の先端、すなわち「指」との直接の接触にガラススライドを曝す。クロックメーターに設けられた標準的な指は、直径15mmの中実のアクリル棒材である。標準的なクロック耐性試験用の1枚の清浄な布をこのアクリル製の指に取り付ける。次いで、指を900gの圧力でサンプル上に載せ、耐久性/クロック耐性の変化を観察するために、アームをサンプルに亘り前後に繰り返し機械的に動かす。ここに記載した試験に使用したクロックメーターは、毎分60回転の一定のストローク速度を提供するモーター式モデルである。クロックメーター試験は、その内容をここに全て引用する、「Standard Test Method for Determination of Abrasion and Smudge Resistance of Images Produced from Business Copy Products」ASTM試験法F1319−94に記載されている。
【0045】
ここに記載されたコーティング、表面、および基板のクロック耐性または耐久性は、ASTM試験法F1319−94により定義される特定の拭き数後の光学的(例えば、反射率、ヘイズ、または透過率)測定値により決定される。1つの実施の形態において、ここに記載されたガラス物品100の反射防止層110の反射率は、拭き操作前に測定した初期反射率値から、100拭き後に約20%未満しか変化しない。いくつかの実施の形態において、1000拭き後に、反射防止層110の反射率は、初期反射率値から約20%未満しか変化せず、他の実施の形態において、5000拭き後に、反射防止層110の反射率は、初期反射率値から約20%未満しか変化しない。
【0046】
いくつかの実施の形態において、反射防止層は、ASTM試験法D3363−05により定義されるように、HBから9Hまでに及ぶ硬度または耐引掻き性を有する。
【0047】
いくつかの実施の形態において、先に記載されたガラス物品および反射防止層は、複数のピクセルを含むピクセル化ディスプレイの前面に配置されたときに、スパークルを示さない。ディスプレイの「スパークル(sparkle)」または「輝き(dazzle)」は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、タッチスクリーンなどのピクセル化ディスプレイシステムに光散乱表面を導入した場合に生じ得る、投影システムまたはレーザシステムに観察され特徴付けられる「スパークル」または「スペックル(speckle)」のタイプとはタイプと起源が異なる、一般に望ましくない副作用である。スパークルは、ディスプレイの非常に微細な不鮮明な外観に関連し、ディスプレイの視角の変化により粒子のパターンがシフトするように見えるであろう。ディスプレイのスパークルは、ほぼピクセルレベルのサイズ規模で明るいスポットと暗いスポットまたは着色スポットとして現れることもある。
【0048】
スパークルの程度は、ガラス物品および反射防止層が示す透過ヘイズの量により特徴付けられるであろう。ここに用いたように、「ヘイズ」という用語は、ASTM法D1003により、約±2.5°の角度の円錐の外側に散乱する透過光の割合を称する。したがって、いくつかの実施の形態において、反射防止層は約1%未満の透過ヘイズを有する。
【0049】
表1には、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス基板の片面に配置された上述した反射防止層に関する硬度、透過率、ヘイズ、および反射率の値が列挙されている。反射防止層は、120nmまたは150nmいずれかの直径および有機または有機ケイ素いずれかの結合剤を有するシリカナノ粒子からなった。ガラス基板の表面を、最初に、1〜5質量%のシリカのナノ粒子の水性懸濁液を含む一次層で回転被覆した。ナノ粒子の単層のコーティングは、懸濁液中のナノ粒子の濃度、増減速度(ramp speed)、回転速度などを変えることによって、行った。
【0050】
一次層を乾燥させた後、ガラス基板の表面を、結合剤を含む二次層で浸漬被覆した。いくつかのサンプルにおいて、有機ケイ素結合剤は、25質量%の水素シルセスキオキサン(ダウコーニング社(Dow Corning)により供給されたFOX−14)のメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液からなった。他のサンプルにおいて、有機ケイ素結合剤は、メチルシロキサン結合剤の原液の20〜50質量%のイソプロピルアルコール溶液からなった。そのような結合剤の非限定的例としては、ハネウェル・インターナショナル社(Honeywell International, Inc.)により製造されている、ACCUGLASS(登録商標)111、211、311、512Bメチルシロキサンスピンオンポリマーなどが挙げられる。二次結合剤層の厚さは、結合剤の濃度、浸漬の引出し速度、および被覆時間を変えることによって、変えても差し支えない。二次層の被覆後、サンプルを、約1時間に亘り300℃から315℃に及ぶ温度で加熱した。あるいは、有機ケイ素結合剤被覆サンプルのいくつかは、結合剤層から有機官能基を除去するために、約1時間に亘り約500℃以上に加熱した。そのような物品を製造する方法に関して以下に記載するように、ガラスサンプルのいくつかは、熱処理後にイオン交換した。
【0051】
表1には、ガラス基板および直径100nmのナノ粒子を、ガラスの焼鈍点より高い温度に加熱し、ナノ粒子をガラスの表面内に沈める−その中に埋め込ませる−ことによって形成された反射防止層を有するサンプル(表1のサンプルA);市販のDNP反射防止フイルムを有する第1の対照サンプル(表1のサンプルB);および被覆されていない第2の対照サンプル(表1のサンプルC)も含まれている。
【0052】
表1に列挙された反射率値は、反射防止層を有さないガラス基板の背面すなわち反対の面からの4%の反射率の寄与を含む。したがって、反射防止層のみの反射率は、表1に列挙された値から4%を引くことによって、予測できる。
【表1】
【0053】
ここに記載された透明ガラス物品は、様々な実施の形態において、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、またはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスを含んで差し支えない。1つの実施の形態において、その透明ガラス物品は、アルミナ、少なくとも1種類のアルカリ金属、およびいくつかの実施の形態において、50モル%超のSiO2、他の実施の形態において、少なくとも58モル%の、さらに他の実施の形態において、少なくとも60モル%のSiO2を含むアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスを含み、ここで、比
【0054】
式中、改質剤はアルカリ金属酸化物である。このガラスは、特別な実施の形態において、約58モル%から約72モル%のSiO2、約9モル%から約17モル%のAl23、約2モル%から約12モル%のB23、約8モル%から約16モル%のNa2O、および0モル%から約4モル%のK2Oを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、比
【0055】
式中、改質剤はアルカリ金属酸化物である。
【0056】
別の実施の形態において、前記透明ガラス物品は、約61モル%から約75モル%のSiO2、約7モル%から約15モル%のAl23、0モル%から約12モル%のB23、約9モル%から約21モル%のNa2O、0モル%から約4モル%のK2O、0モル%から約7モル%のMgO、および0モル%から約3モル%のCaOを含む、から実質的になる、またはからなるアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む。
【0057】
さらに別の実施の形態において、前記透明ガラス物品は、約60モル%から約70モル%のSiO2、約6モル%から約14モル%のAl23、0モル%から約15モル%のB23、0モル%から約15モル%のLi2O、0モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約10モル%のK2O、0モル%から約8モル%のMgO、0モル%から約10モル%のCaO、0モル%から約5モル%のZrO2、0モル%から約1モル%のSnO2、0モル%から約1モル%のCeO2、50ppm未満のAs23、および50ppm未満のSb23を含み、から実質的になり、またはからなり、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む。
【0058】
さらに別の実施の形態において、前記透明ガラス物品は、約64モル%から約68モル%のSiO2、約12モル%から約16モル%のNa2O、約8モル%から約12モル%のAl23、0モル%から約3モル%のB23、約2モル%から約5モル%のK2O、約4モル%から約6モル%のMgO、および0モル%から約5モル%のCaOを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、66モル%≦SiO2+B23+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B23+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B23)−Al23≧2モル%、2モル%≦Na2O−Al23≦6モル%、および4モル%≦(Na2O+K2O)−Al23≦10モル%である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む。
【0059】
他の実施の形態において、前記透明ガラス物品は、SiO2、Al23、P25、および少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物(R2O)を含み、ここで、0.75≦[(P25(モル%)+R2O(モル%))/M23(モル%)]≦1.2、式中、M23=Al23+B23。いくつかの実施の形態において、[(P25(モル%)+R2O(モル%))/M23(モル%)]=1、いくつかの実施の形態において、前記ガラスはB23を含まず、M23=Al23。前記ガラスは、いくつかの実施の形態において、約40から約70モル%のSiO2、0から約28モル%のB23、約0から約28モル%のAl23、約1から約14モル%のP25、および約12から約16モル%のR2Oを含む。いくつかの実施の形態において、前記ガラスは、約40から約64モル%のSiO2、0から約8モル%のB23、約16から約28モル%のAl23、約2から約12モル%のP25、および約12から約16モル%のR2Oを含む。前記ガラスは、以下に限られないが、MgOやCaOなどのアルカリ土類金属酸化物を少なくとも1種類さらに含んでもよい。
【0060】
いくつかの実施の形態において、前記透明ガラス物品はリチウムを含まない(すなわち、このガラスは、不純物として微量存在するかもしれないが、意図的に添加されたLi2Oを含まない)。いくつかの実施の形態において、このガラスは、Li2Oを1モルパーセント(モル%)未満しか、他の実施の形態において、Li2Oを0.1モル%未満しか含まない。いくつかの実施の形態において、そのようなガラスは、ヒ素、アンチモン、およびバリウムの内の少なくとも1種類を含まない(すなわち、そのガラスは、不純物として微量存在するかもしれないが、意図的に添加されたAs23、Sb23、およびBaOを含まない)。
【0061】
いくつかの実施の形態において、前記透明ガラス物品は、当該技術分野に公知の化学的手段または熱的手段のいずれかによって強化できるガラス基板を含む。1つの実施の形態において、透明ガラス物品は、イオン交換によって化学強化されるイオン交換可能なガラスである。このプロセスにおいて、ガラスの表面またはその近くになる金属イオンが、ガラス中の金属イオンと同じ価数を有するより大きい金属イオンと交換される。その交換は、ガラスを、例えば、そのより大きい金属イオンを含有する溶融塩浴などのイオン交換媒質と接触させることによって一般に行われる。その金属イオンは、典型的に、例えば、アルカリ金属イオンなどの一価の金属イオンである。1つの非限定的な実施例において、イオン交換によりナトリウムイオンを含有するガラス基板の化学強化は、そのガラス基板を、硝酸ナトリウム(KNO3)などの溶融カリウム塩を含むイオン交換浴中に浸漬することによって、行われる。
【0062】
イオン交換プロセスにおけるより大きい金属イオンによる小さい金属イオンの交換によって、表面から、圧縮応力下にある深さ(「層の深さ」とも称される)まで延在するガラス中の領域が生じる。透明ガラス基板の表面にあるこの圧縮応力は、ガラス基板の内部の引張応力(「中央張力」とも称される)により釣り合わされる。いくつかの実施の形態において、ここに記載された透明ガラス基板の表面は、イオン交換により強化されたときに、少なくとも350MPaの圧縮応力を有し、圧縮応力下にある領域は、表面より下に少なくとも15μmの層の深さまで延在する。
【0063】
別の態様において、両方とも先に記載された、反射防止層およびその反射防止層を有するガラス物品を製造する方法も提供される。反射防止層を有するガラス物品を製造する方法700が図7に示されている。方法700の随意的な第1の工程710において、最初に透明ガラス基板を提供する。このガラス基板は、様々な実施の形態において、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、またはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスからなっていてよい。このガラス基板は、以下に限られないが、フロート技法、鋳型法、注型法、およびスロットドロー法、フュージョンドロー法などのダウンドロー法を含む、当該技術分野に公知の方法によって形成してよい。
【0064】
工程720において、複数のナノ粒子を、ガラス物品の表面上に公称で六方充填された単層に自己組織化させる。先に記載したように、これらのナノ粒子は、高分子粒子、無機酸化物またはフッ化物(例えば、セリウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、マグネシウム、シリコンなどの)など、それらの組合せ、またはそれらの混合物を含んでよく、形状が実質的に球形、ほぼ球形、長円体、多角形、または円錐状であってよい。複数のナノ粒子は、約80nmから約200nm、いくつかの実施の形態において、約80nmから約180nmの範囲にある平均直径を有する。隣接するナノ粒子は、先に記載したように、ある間隔だけ互いから隔てられていても、互いに接触していてもよい。自己組織化は、いくつかの実施の形態において、以下に限られないが、回転被覆、浸漬被覆、グラビア印刷、ドクターブレーディング、吹付け塗り、スロットダイ・コーティングなどの手段を使用して、ナノ粒子を含む分散液でガラス基板の表面を被覆することによって行われる。例えば、一次シリカナノ粒子層は、1〜5質量%のシリカナノ粒子/水またはイソプロピルアルコール分散液を使用して、基板を浸漬および/または回転被覆し、その後、乾燥させることによって形成できる。単層コーティングは、懸濁液中のナノ粒子濃度、基板の引出し速度、回転速度などを変えることによって、得てもよい。一次層の乾燥後、結合剤を表面上に浸漬被覆する。
【0065】
次いで、自己組織化ナノ粒子に、埋込み工程(工程730)を行って、反射防止層を形成しても差し支えない(工程740)。1つのシナリオにおいて、埋込み工程(工程730)は、自己組織化ナノ粒子をガラス基板自体の表面内に部分的に埋め込む工程を含む。例えば、ガラス基板およびナノ粒子は、ガラス基板の焼鈍点より高い温度に加熱され、ナノ粒子の一部がその基板中に沈み込む。ナノ粒子は、いくつかの場合では、その自重で表面中に沈み込むのに対し、ナノ粒子をガラス基板中に埋め込むために、ガラス基板またはナノ粒子のいずれかに力を印加してもよい。
【0066】
埋込み工程(730)の別のシナリオにおいて、ナノ粒子は結合剤中に部分的に埋め込まれる。そのような結合剤は、先に記載された無機結合剤および/または有機ケイ素結合剤を含み、回転被覆、浸漬被覆、グラビア印刷、ドクターブレーディング、吹付け塗り、スロットダイ・コーティングなどによってガラス基板の表面に施されてよい。
【0067】
いくつかの実施の形態において、無機結合剤は可溶性ケイ酸塩(すなわち、アルカリ金属およびシリカSiO2を含む水溶性ガラス)である。そのような可溶性ガラスの非限定的例としては、SiO2:Na2Oの比が約2.00から約3.22の範囲にあるケイ酸ナトリウムが挙げられ、SiO2:Na2Oの比が約2.5以上だと、ナノ粒子の基板の表面への付着がよりよくなる。
【0068】
工程730において、ナノ粒子は、ナノ粒子の直径または外寸の約半分未満(すなわち、約50%未満)である深さまでガラス基板の表面または結合剤内に部分的に埋め込まれる。他の実施の形態において、その深さは、ナノ粒子の直径の約3/8未満(すなわち、約37.5%未満)、さらに他の実施の形態において、直径の約1/4未満(すなわち、約25%未満)である。
【0069】
先に記載したように、結果として得られた反射防止層(工程740)は、約450nmから約1000nmの範囲の波長で、約2%未満の反射率、いくつかの実施の形態において、約450nmから約700nmの範囲に波長λを有する放射線について、約1.5%未満の反射率を有する。その上、反射防止層は、約1%未満の透過ヘイズを有してよく、ピクセル化ディスプレイの前面に配置された場合、スパークルを示さない。
【0070】
いくつかの実施の形態において、方法700は、必要に応じて、先に記載したように、ガラス基板をイオン交換する工程(工程712,712a)を含む。複数のナノ粒子が有機結合剤中に埋め込まれる場合、ガラス基板は、複数のナノ粒子の自己組織化(工程720)の前にイオン交換される。ナノ粒子が無機結合剤中に埋め込まれる場合、ガラス基板は、複数のナノ粒子の自己組織化(工程720)の前(工程712)または結合剤中のナノ粒子の埋込みの工程(工程730)の後(工程712a)のいずれにイオン交換してもよい。ナノ粒子が、先に記載したように、ガラス基板中に直接埋め込まれる場合、ガラス基板は、ナノ粒子がガラス基板の表面に埋め込まれた(工程730)後にイオン交換される(工程712a)。
【0071】
いくつかの実施の形態において、方法700は、ガラス基板の表面をエッチングする工程(工程715)をさらに含む。そのようなエッチング工程は、ガラス物品または基板の衝撃損傷に対する耐性を改善するために行われる。いくつかの実施の形態において、エッチング工程(工程715)はイオン交換工程(工程712)に続いてよい。1つの実施の形態において、ガラス基板の表面は、5%のHFおよび5%のH2SO4の溶液によりエッチングされる。そのようなエッチング工程は、その内容をここに全て引用する、2010年1月7日に出願された米国仮特許出願第61/293032号からの優先権を主張する、「Impact-Damage-Resistant Glass Sheet」と題する、James J. Price等により2011年1月7日に出願された米国特許出願第12/986424号に記載されている。いくつかの実施の形態において、エッチング工程715はイオン交換工程712の後に続く。
【0072】
ガラス基板上に反射防止層を製造する方法も提供される。この方法は、複数のナノ粒子を公称で六方充填された単層に自己組織化する工程、および基板の表面またはその基板の表面上に堆積された結合剤中に自己組織化されたナノ粒子を部分的に埋め込んで、反射防止層を形成する工程を有してなる。自己組織化する工程および複数のナノ粒子を表面に埋め込む工程は、先に記載されている。
【0073】
説明の目的で典型的な実施の形態を述べてきたが、先に記載は、本開示の範囲または付随に特許請求の範囲への制限と考えるべきではない。したがって、本開示の精神および範囲または付随の特許請求の範囲から逸脱せずに、様々な改変、適用、および改変が当業者に想起されるであろう。
【符号の説明】
【0074】
100 ガラス物品または基板
110 反射防止層
112 ナノ粒子
117 間隙
120 結合剤
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6a
図6b
図7