特許第6266510号(P6266510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266510生きている細胞または生物体の増殖または活性を制御するための金属キレート組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266510
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】生きている細胞または生物体の増殖または活性を制御するための金属キレート組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/79 20060101AFI20180115BHJP
   A61K 33/18 20060101ALI20180115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180115BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20180115BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61K31/79
   A61K33/18
   A61P35/00
   A61P31/04
   A61P33/00
【請求項の数】14
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2014-513869(P2014-513869)
(86)(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公表番号】特表2014-522405(P2014-522405A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】CA2012000562
(87)【国際公開番号】WO2012167368
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年6月2日
(31)【優先権主張番号】61/494,664
(32)【優先日】2011年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513309100
【氏名又は名称】キレーション パートナーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルバイン,ブルース エドワード
(72)【発明者】
【氏名】フェング,ミンファ
(72)【発明者】
【氏名】フーバー,アン ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】キドゥビー,デニス キース
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 J Lab Clin Med,1996年,Vol.127, No.6,p.574-82
【文献】 J Pharm Pharmacol,2011年 5月19日,Vol.63, No.7,p.893-903
【文献】 Bioorg Med Chem Lett,2002年,Vol.12, No.22,p.3297-300
【文献】 J Pharmacol Exp Ther,1985年,Vol.232, No.3,p.644-649
【文献】 Gynecologic Oncology,2003年,Vol.90,p.91-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 33/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている細胞がその増殖または活性のために利用する必須遷移系金属の量を不十分な状態とすることにより、その増殖または活性を低下させる目的で使用するためのキレート組成物であって、
該キレート組成物は、必須の遷移系の金属をキレートするための水性媒体中で可溶性のキレート組成物であり;
該キレート組成物は:
担体材料と;
担体材料の構造に加えられている1つ以上の適切な金属結合化学基と;
を含んでおり、
該1つ以上の適切な金属結合化学基が、1つ以上のカルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの型であり;
該キレート組成物は、該生きている細胞に正常には取り込まれることがないように1500ダルトンという、金属(単数または複数)の結合の前に測定された最小分子量と、組成物が可溶性のままであることを可能にするように十分に低い上方分子量を有しており、かつ必須の遷移系の金属に結合可能であり;そして、
該キレート組成物は、水性媒体中で、その結合された遷移系の金属とともに生きている細胞の細胞外環境で、実質的に可溶性のままであり、それによって、生きている細胞の該結合した必須遷移金属の取り込みを妨げる、キレート組成物。
【請求項2】
前記担体材料が、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプン、スチレンまたはアクリルアミドから構成される、請求項1に記載のキレート組成物。
【請求項3】
前記キレート組成物が、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプンまたはアクリルアミドから構成される担体材料の構造に加えられた3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンの金属結合化学基を含む、請求項1に記載のキレート組成物。
【請求項4】
前記キレート組成物が、該金属結合化学基を含む金属結合モノマーを含んでいる第一のモノマー基と、適切な第二のモノマー基とが混合されて、該第一および第二のモノマー基が重合することによって製造され、その結果、得られたコポリマーは、水溶液中で可溶性のままであって、金属キレート活性を有する、請求項1に記載のキレート組成物。
【請求項5】
前記金属結合モノマーが、3−ヒドロキシ−1−(β−メタクリルアミドエチル)−2−メチル−4(1H)−ピリジノンであり、前記第二のモノマーが、1−ビニル−2−ピロリドンまたはN,N−ジメチル−アクリルアミドであり、および最終のキレート組成物が、該第一のおよび第二のモノマー基のうちの1つ以上を含んでいる可溶性コポリマーである、請求項4に記載のキレート組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のキレート組成物であって、該キレート組成物が、ヨウ素含有キレート組成物であり、ここで前記担体材料が、ヨウ素と結合されたビニルピロリドンまたはデンプンから構成され、ここで該ヨウ素含有キレート組成物が、金属キレート組成物の金属キレート性状に加えて、ヨウ素によって寄与される抗微生物特性を有する、キレート組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のキレート組成物であって、該金属キレート組成物が、魚またはヒトを含む動物における疾患を処置するのにおける使用のためであり、該疾患が、1つ以上の微生物細胞、癌細胞または単細胞もしくは多細胞の寄生生物に起因する、キレート組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のキレート組成物であって、該金属キレート組成物が、魚またはヒトを含む動物における疾患を処置するのにおける使用のために、単独で投与するため、または抗菌剤、代謝拮抗剤、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤もしくは抗癌剤のうちの1つ以上を含む別の抗細胞剤と組み合わせた投与のためであり、該疾患が、1つ以上の微生物細胞、癌細胞または単細胞もしくは多細胞の寄生生物に起因する、キレート組成物。
【請求項9】
前記疾患を生じる1つ以上の細胞が動物自体の細胞である、請求項8に記載のキレート組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のキレート組成物であって、該金属キレート組成物が、水系のヘルスケアまたは消費財における1つ以上の腐敗微生物の細胞の増殖または活性を低下させるための使用のためであり、ここで金属キレート組成物を用いて製品を単独でまたは化学的防腐剤と組み合わせて処理し、その結果、この処理は、水系の製品中での微生物増殖および/または腐敗の程度を軽減する、キレート組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のキレート組成物であって、細胞の増殖または活性の低下が、別の抗細胞剤の活性に対する耐性を増加させる必須金属の不十分な取り込み、または生きていない組織もしくは生きている組織表面上にバイオフィルムとして増殖する能力の低下を該細胞が有することの結果である、キレート組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のキレート組成物、および薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含んでいる、生きている細胞がその増殖または活性のために利用する必須遷移系金属の量を不十分な状態とすることにより、その増殖または活性を低下させる目的で使用するための、薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のキレート組成物であって、抗微生物剤、代謝拮抗剤、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤または抗癌剤のうちの1つ以上を含んでいる抗細胞剤を含む、薬学的組成物中での賦形剤としての使用のためのキレート組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のキレート組成物の製造方法であって、
該金属結合化学基を含む金属結合モノマーを含んでいる第一のモノマー基と、適切な第二のモノマー基とを重合することを含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体に可溶性である金属キレート組成物およびその使用に関する。さらに具体的には、本発明は、少なくとも一部は、適切な担体材料に対して加えられるか、またはその中に組み込まれているキレート性状を含んでいる組成物であって、その結果その得られた金属キレート組成物が水性媒体に可溶性である組成物に関している。本発明はまた、許容可能な鉄封鎖強度を保有しており、標的されている細胞に対して、この組成物によって封鎖される鉄のアクセスを防止、阻害または低減する物理的形態を呈することができるキレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生きている細胞の生理学および代謝の多くの本質的な態様に関して、その細胞が、ヒトによる使用について意図される生成物における腐敗原因の微生物であるか、または身体内の病原性細胞であって、ヒトまたは動物または魚類の疾患を生じ得るか(すなわち、例えば、微生物病原体(細菌、真菌または寄生生物)、または病原性の動物の癌細胞)であるかにかかわらず、鉄は必要であり、他の金属で置き換えることはできない。鉄に関するこの必須の必要性で唯一知られている例外は、特定の非病原性の乳酸棹菌(Lactobacilli bacteria)だけである。
【0003】
従って、この一般的に普遍的な鉄の必要性は、細胞の増殖を妨げるかまたは停止する新しい手段の有用な標的であろう。今まで、必要な特徴を保有する適切な化合物がないせいで、細胞の鉄栄養に影響することではごく限られた進歩しかなかった。細菌、真菌、寄生生物および動物細胞は通常は、1つ以上の種々のFe取り込み機構を保有し、この機構が細胞膜/外部環境の境界で作用して、これらの細胞機構は本質的に、図1に示されるような細胞内での使用に関して外部環境から鉄を内部移行するように機能する。
【0004】
酵素の表面レセプター/還元/輸送系(I)からの鉄還元は、好気性環境で不溶性Fe3+として優勢である鉄を、より可溶性のFe2+型にするために重要であり、この機構は、ほとんどの細菌、真菌および動物細胞で見出される。病原性細菌および酵母は一般に、複数のFe取り込み機構を保有するが、動物細胞は、微生物型の親鉄剤(シデロホア)を生成することも利用することもない。親鉄剤(シデロホア)は、微生物細胞によって主に生成されるキレート化合物である。脊椎動物の細胞は、親鉄剤(シデロホア)を用いるのではなく、動物の肝細胞によって典型的には生成されるタンパク質トランスフェリン(II)を利用し、これは、血流を通じて腸から身体の他の全ての細胞へシャトル鉄を循環する。特定の病原性の微生物は、細胞(II)へのトランスフェリン分子取り込みなしで、膜のシャトルキャリアにこれを移すことによってトランスフェリンのFeに結合して利用する能力を発達させた。他の細菌および真菌は、微生物および動物の細胞によって生成される別の鉄担持化合物であるヘムを取り込み得る。ヘムは、レセプター/輸送系(II)および細胞によって直接細胞に取り込まれ得、次いで細胞は、ヘム鉄を内部で用いる。種々の細菌および真菌は、種々の異種の親鉄剤(シデロホア)を、細胞表面シャトル系(III)でこれらから鉄を除去することによって他の微生物によって生成される場合、利用し得る。鉄還元機構(I)は潜在的に、いくつかの細胞で異種の親鉄剤(シデロホア)またはトランスフェリンから鉄を除去するのにおいて、ある役割を果たし得る。種々の細菌のおよび真菌の病原体は、鉄の必要性に応答してそれら自身の自家の親鉄剤(シデロホア)を産生し、それらを細胞外環境に分泌し、次いで外部環境(IV)からキレートされる鉄でこれらをバックアップする。寄生性の動物の細胞は、それほど研究されていないが、ヘムを獲得するものがあることが知られており、それらは真菌または動物の細胞などの
他の真核生物細胞と同様の獲得機構を使用している可能性がある。理論によって拘束されるものではないが、下の表1は、図1に図示されており、上記で考察されるような種々の鉄獲得機構をさらに比較するものである。
【0005】
【表1】
【0006】
特定の細胞腫について見出され得るように、表1にまとめられ、図1に図示されるような単純化され一般化されたFe取り込み機構のバリエーションがある。しかし、この開示の目的に関しては、4つの一般化された機構(I〜IV)は、細菌、真菌、ならびにヒトおよび寄生生物細胞を含む他の動物の細胞を含む動物細胞についての一般的なFe栄養を適切にまとめている。細胞によって内部で必要とされるFeは、Feを担持する分子がレセプター/輸送系によって細胞表面で阻止された後、その分子から開放されるか、またはFeは、鉄を担持している分子とともに細胞中に直接取り込まれるという、2つの統一的な特徴があることが理解される。
【0007】
従来の金属キレート化合物、例えば、鉄キレーターデフェロキサミン(desferoxamine)(デフェロキサミン(desferrioxamine)Bまたはデスフェラル(商標)(Novartis Ltd.が市販)とも呼ばれる)またはデフェリプロン(1,2−ジメチル−3−ヒドロキシ−ピリド−4−オン、Apotex Pharmaceutical Companyが市販)は、ヒトの鉄代謝障害を処置することに関する医療目的に既に用いられている。これらの障害に関しては、これらの化合物は、身体内の鉄をキレートして、可溶性の低分子量の鉄−キレーター複合体として鉄を排出する。それらの使用はまた、感染および癌の処置についても提唱されている。従って、特許文献1は、癌の処置のためのデフェロキサミンB塩の使用を開示しており、一方、特許文献
2および特許文献3は、寄生生物感染の処置のためのデフェリプロンのような3−ヒドロキシ−ピリド−4−オンの使用を開示している。さらに、デフェリプロンまたはヒドロキサメート、例えば、デスフェラルは、Pneumocystis carniの寄生生物感染の処置のための抗生物質に対する補助剤として特許文献4に提唱された。他の微生物キレーター、例えば、エキソケリンは、癌の処置に関して特許文献5に提唱されている。種々のキレーターがまた、特許文献6;7;8;9および10に開示されたような、抗生物質、防腐剤または抗菌剤への添加物として開示されている。
【0008】
3−ヒドロキシ−4−ピリジノンの他のN−置換された(特許文献11)またはシクロアルキル(特許文献12)誘導体類は、鉄の過剰負荷の医学的条件を救済するため、または寄生生物感染もしくは他の疾患を処置するための別の薬剤としての使用について記載されている。
【0009】
しかし、上述のような全てのこれらの以前に開示された低分子量のキレーター(すなわち、例えば、1500ダルトン以下の低分子量を有するキレーター)は、共通の問題を被る。この問題とは、病原性細胞を含むほとんどの細胞が、容易にアクセス可能であり、かつこれらの低分子量キレーターを、それらの必要な鉄の供給源として用いるということである。約1500ダルトン以下というサイズの分子は、原核生物(例えば、細菌)および真核生物(例えば、真菌および動物の)細胞の細胞膜に透過し得る。従って、これらの従来の低分子量化合物および低分子量の組成物の鉄キレートは、特定の細菌および他の細胞(制御されることが所望される)によって、すなわち、図1に示される鉄獲得機構の1つのこのような細胞による使用を通じて、鉄について潜在的に利用可能である。この基礎的な問題は、以前に開示されたキレーターおよび細胞増殖を制御するための組成物の潜在的な使用を重度に制限する。
【0010】
さらに、使用される特定のキレーターを利用できる細胞を制御する試みにおける、これらの以前に開示されたキレーターのうちの1つの不適切な使用は、問題である場合があり、防腐、感染制御または癌の制御の状況を潜在的に悪化する場合がある。これに関して、デフェリプロンおよび類似のキレーター、例えば、特許文献13に開示されるキレーターは、実験室での培養において動物細胞に鉄を供給することが公知である。従って、これらのキレーターは、動物の癌細胞を処置するために有用であることは期待できない。クエン酸は、特許文献14および特許文献15に開示されるように、適切なキレーターの定義を満たすキレーターの例であるが、クエン酸塩は、種々の細胞を増殖するために用いられる培養培地中で可溶性でありかつ利用可能な鉄を作製するために用いられる場合が多い(Porterfield,J.,S.1978)。同様に、細胞の増殖を制御するための特許文献16に開示される、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレーターを用いて、植物および他の細胞についての増殖培地中で金属を供給する(HughesおよびPoole.1989,)。従って、EDTAのような約1500ダルトン未満の低い分子量の公知の可溶性のキレーターおよびその関連の化合物の全体的な化学的ファミリーは、もし多くの細胞が、鉄の送達に関してこれらを潜在的に利用できるならば、感染、癌または微生物の腐敗の制御における使用のためのキレーターとして問題があるかもしれない。
【0011】
グラム陰性の細菌は、感染原因の細菌の主要なカテゴリーを含み、これらは、デフェリプロン、デスフェラルおよび上で引用された先行技術で開示されたキレーターのような、多くの他のキレーターを利用できる一般化されたFe取り込み機構を保有することが示された(非特許文献1)。病原性酵母および他の真菌はまた、上述の先行技術で開示されたような種々のキレーターを利用できる(非特許文献2)。
【0012】
不溶性の支持性の担体材料に加えられた金属結合性状から構成されたキレート組成物が
以前に開示されている。例えば、特許文献17で開示される組成物は、不溶性のキレート組成物を提供するために、不溶性の支持体材料に対してデフェロキサミンまたはカテコールのような公知の金属キレート分子を加えることに関する。このような不溶性の組成物によって、処理されるべき水性媒体との組成物の物理的接触/処理されるべき水性媒体からの組成物の除去が可能になる。しかし、このような以前に開示されたキレーターは、それらが不溶型であるせいで、ヒトを含む動物内での処置には不適切である。不溶性の組成物は、身体内、例えば、血流内への投与には適していない。
【0013】
細菌の付着およびバイオフィルム形成は、疾患発達の間の細菌のおよび真菌の病原体の重要な細胞活性であることがここで認識される(非特許文献3)。典型的な鉄キレーター、例えば、デフェロキサミンは、実験室では、単収縮の運動性を増大し、バイオフィルム形成を制限することが示されている(非特許文献4)。細菌のまたは真菌の疾患の初期段階の間の鉄供給の適切な制限は、例えば、呼吸器もしくは尿生殖路の上皮表面上、または尿路カテーテルのような留置性の医療器具上でバイオフィルムを樹立する病原性の細胞活性を妨害し得る。先行技術で開示されるような鉄キレーターは、これらのキレーターを利用するか、またはそうでなければこれらから鉄を得ることができる病原体について病原体の微生物付着の活性を妨害するための使用に関して同じ限界を被る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,663,201号明細書
【特許文献2】米国特許第5,256,676号明細書
【特許文献3】米国特許第6,825,204号明細書
【特許文献4】米国特許第5,302,598号明細書
【特許文献5】米国特許第5,837,677号明細書
【特許文献6】米国特許第6,793,914号明細書
【特許文献7】米国特許第6,267,979号明細書
【特許文献8】米国特許第5,573,800号明細書
【特許文献9】米国特許第6,165,484号明細書
【特許文献10】米国特許第6,893,630号明細書
【特許文献11】米国特許第6,932,960号明細書
【特許文献12】米国特許第7,410,985号明細書
【特許文献13】米国特許第6,767,741号明細書
【特許文献14】米国特許第6,165,484号明細書
【特許文献15】米国特許第6,267,979号明細書
【特許文献16】米国特許第6,767,741号明細書
【特許文献17】米国特許第4,530,963号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】スティンジ・エー(Stintzi,A.)、シー・バーンズ(C.Barnes)、ジェイ・スー・ケー・エヌ・レイモンド(J.Xu,K.N.Raymond).マイクロバイアル・アイアン・トランスポート・ビア・ア・シデロフォア・シャトル(Microbial iron transport via a siderophore shuttle):ア・メンブラン・イオン・トランスポート・パラダイム(a membrane ion transport paradigm).2000年、PNAS 97:10691−10696
【非特許文献2】ハワード・ディー・エイチ(Howard,D.H.)、アクイジション・トランスポート・アンド・ストレージ・オブ・アイアン・バイ・パソジェニック・ファンギ(Acquisition,Transport,and Storage of Iron by Pathogenic Fungi)クリニカル・マイクロバイオロジー・レビューズ(Clinical Microbiology Reviews)、1999年、12:394〜104。
【非特許文献3】ヘンツァー・エム・エム・ギウスコウ(Hentzer M,M.Givskov)、ファーマコロジカル・インヒビション・オブ・クオラム・センシング・フォー・ザ・トリートメント・オブ・クロニック・バクテリアル・インフェクションズ(Pharmacological inhibition of quorum sensing for the treatment of chronic bacterial infections).ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)、2003年、112:1300〜1307。
【非特許文献4】シン(Singh)ら、ア・コンポーネント・オブ・インネート・イムニティー・プレベンツ・バクテリアル・バイオフィルム・デベロップメント(A component of innate immunity prevents bacterial biofilm development).ネイチャー(Nature),2002年、417:552−555。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、鉄を封鎖するために使用され得る鉄キレート化合物が必要である。また、意図される標的細胞によって利用可能でないか、または容易に利用できない鉄キレート化合物も必要である。さらに、例えば、ある構造の低分子量キレーターの金属結合特性を組み込んでいるキレート組成物であって、これらのキレーターが、担体に加えられており、結果としてこれらが十分に高い分子サイズとなり、そのため細胞に取り込まれないか、またはそうでなければ細胞によってそれらの鉄がアクセスされないようなキレート組成物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
少なくとも一般には水性媒体中に可溶である金属キレート組成物が提供される。さらに、特定の実施形態では、許容可能な鉄封鎖強度を保有しており、かつ標的されている細胞へのこの組成物によって封鎖される鉄のアクセスを潜在的に阻害するか、または容易なアクセスを可能にしない物理的形態が存在することが可能である、キレート組成物が提供される。適切な担体材料に加えられるか、または組み込まれたキレート性状を含んでおり、その結果、得られた金属キレート組成物が水性媒体に溶解性である組成物もまた、種々の実施形態で提供される。さらなる態様によれば、生きている細胞または生物体の外部環境で、鉄および/または他の必須金属(すなわち、1つ以上の必須金属)をキレートし得、その結果このキレートされた金属が、潜在的には、細胞または生物体の正常な金属(例えば、鉄)獲得機構にもはや容易にアクセスできない、可溶性組成物が提供される。
【0018】
キレート組成物の使用の結果として、そのように処理された細胞または生物体は、十分な量の必須の鉄または他の微量必須金属(単数または複数)を奪われている場合があり、結果として、その細胞または生物体は、それらの活性または増殖において障害され得る。特定のキレート組成物は潜在的に、生成物の腐敗に関する活性、ヒトを含む動物での疾患の発生、および/または抗生物質もしくは防腐的化合物などの抗細胞剤の作用に対する抵抗を含めて、細胞増殖および細胞活性を制限する手段を提供する。鉄または別の微量金属に結合するため、および微生物細胞(真菌および細菌を含む)への、そしてまた寄生生物体および動物の癌細胞への、そのアクセスを実質的に拒絶するためには、種々のキレート組成物がまた有用である。
【0019】
本発明は、さらなる態様によれば、病原性細胞または生物体(抗細胞剤に対する耐性を有する細胞および生物体を含む)によって生じる疾患の経過を改善するために、魚類また
はヒトを含む動物を処置するための金属キレート組成物の実施形態を利用するための方法を提供する。本発明は、さらなる態様によれば、微生物腐敗から生成物を防腐するための金属キレート組成物の実施形態の開発(すなわち、方法)を可能にし、提供する。本発明は、なおさらなる態様によれば、それらの構造内にピロリドンまたはデンプンを含んでいる特定の金属キレート組成物であって、ここでヨウ素がデンプンまたはピロリドン性状に加えられており、その結果このヨウ素含有キレート組成物が2つの様式の活性を、すなわち、ヨウ素含量に関連して、そしてまたキレート組成物の金属キレート性状から、保有する金属キレート組成物を提供する。
【0020】
特定のこのような化合物は、標的されるべき細胞から鉄を潜在的に除去または封鎖し得、それ自体は、これらの化合物が標的とする細胞によって、鉄に関して利用可能ではないか、または容易に利用可能ではない。鉄に結合する化合物は一般的には、鉄キレーターと呼ばれる。
【0021】
一般には、本発明の態様は、水性媒体から金属を採取(例えば、結合)できる物質であって、
−キレート(形成)性状と、
−(水、すなわち、水性媒体)可溶性性状(少なくとも、単独である場合(すなわち、金属なし)および、意図される使用環境次第で、また、結合された金属(単数または複数)と会合する場合)と;
−上述の可溶性性状が好ましい分子量性状(すなわち、意図する用途の水性媒体に関して)(例えば、特定の実施形態で1500ダルトンより大きい分子量、および例えば、他の特定の実施形態で5000ダルトンより大きい分子量)と、
を有する物質を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態では、1つ以上の必須金属をキレートするためのキレート組成物を提供し、このキレート組成物は実質的に、水性媒体に可溶性であり、かつ担体材料の構造に加えられるか、またはその中に組み込まれている1つ以上の金属結合化学基を含んでおり、その結果、この得られたキレート組成物が、1つ以上の金属に結合できて、その結合された金属(単数または複数)とともに水性媒体中で実質的に可溶性のままである。このような組成物の開発は、例えば、キレート組成物に対してそのように結合された金属(単数または複数)が、細胞または寄生生物生物体によって、取り込みおよび使用について利用可能性が少なくなり、この細胞または寄生生物が、それらの増殖のためにこのような微量の金属(単数または複数)を必要としており、このキレート組成物の作用の結果として、この細胞または寄生生物体が増殖を続ける能力が、潜在的にある程度低下されることを目的とする場合がある。
【0023】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、必須金属は微量の必須金属である。
【0024】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記適切な金属結合化学基は、1つ以上のカルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの化学型から選択される。
【0025】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、デフェロキサミンまたはデフェリプロンの金属結合化学基と類似性を有する金属結合化学基を含む。
【0026】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプン、スチレンまたはアクリルアミドから構
成される担体材料を有する。
【0027】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプンまたはアクリルアミドのポリマーマトリックスから構成される担体材料中に組み込まれた3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンの金属結合基を含んでいる。
【0028】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、1500ダルトンという、下方分子量限界(すなわち、金属(単数または複数)の結合の前に測定した)、および組成物が可溶性のままである(金属(単数または複数)を結合した状態でも)ことを可能にするの十分に低い、上方分子量限界を有する。
【0029】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記微量金属は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウムまたはニッケルのうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記金属キレート組成物は、疾患を生じる微生物細胞(単数または複数)、癌細胞(単数または複数)または寄生生物(単数または複数)を含んでいる群の1つ以上のメンバーに起因する疾患を有する、魚類またはヒトを含めて、動物での疾患処置に用いられる。
【0031】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記微生物細胞は、真核生物菌界由来の真菌細胞である。
【0032】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記真菌細胞はCandida albicansである。
【0033】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記微生物細胞は、細菌ドメイン由来の細菌細胞である。
【0034】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記細菌細胞はStaphylococcus aureusである。
【0035】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記癌細胞は、処置される動物内で生じた。
【0036】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記寄生生物体は、ヒトまたは他の動物における寄生生物感染を生じ得る寄生動物の群のうちの1つである。
【0037】
上記で概説された組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記細胞は、動物自体の細胞であり、この動物は、金属関連の疾患を有しており、このキレート組成物が、該金属関連の疾患に関連する原因金属の一部をキレートし、この金属関連の疾患における改善をもたらす。
【0038】
本発明の別の実施形態は、動物の中で疾患の原因の細胞(単数または複数)または生物体(単数または複数)の増殖を制御するための処置方法を提供し、この方法は:
i)この動物内でまたは動物上で病原性微生物または癌細胞または寄生生物体のうちの1つ以上から生じるような疾患に罹患しているヒトまたは魚類を含めて動物上または動物中にキレート組成物を投与する工程を包含し;
ここで、該キレート組成物は、適切な担体材料の構造に対して加えられるかまたはその中
に組み込まれている、適切な金属結合性状(単数または複数)を含み、その結果、得られた組成物は、金属、必要に応じて必須の金属にキレート活性を有しており、かつ水(金属含有)媒体の中で可溶性のままである(例えば、上記のような組成物);
ここで、このキレート組成物は、動物において、および病原性細胞または生物体の細胞外環境において、少なくとも1つの(微量)金属元素の少なくとも一部に結合するように、薬学的に有効な量で投与され、この微量金属は、処理されている病原性の細胞または生物体に必須である。処置の目的によれば、(微量)金属は潜在的に、キレート組成物の使用の結果として病原性細胞または生物体に対して少なくともアクセス性が劣るようにできて、さらなる結果として、動物で疾患を生じる病原性の細胞または生物体の能力が阻害される。
【0039】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記病原性の微生物細胞は、真菌細胞および真核生物菌界のメンバーである。
【0040】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記真菌細胞は、真菌Candida albicansである。
【0041】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記病原性の微生物細胞は、細菌細胞および細菌ドメインのメンバーである。
【0042】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記細菌細胞は、細菌Staphylococcus aureusである。
【0043】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記適切な金属結合化学基は、上記カルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの化学基から選択される。
【0044】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記キレート組成物は、デフェロキサミンまたはデフェリプロンのものと類似の官能性金属結合基を含む。
【0045】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプン、スチレンまたはアクリルアミドから選択される担体材料を有する。
【0046】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプンまたはアクリルアミドから構成される担体中に組み込まれた3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンの金属結合基を含む。
【0047】
上記で概説した方法のさらなる態様では、水性媒体に可溶性のままである上記キレート組成物は、1500ダルトンという、下方分子量限界(金属(単数または複数)の結合の前に測定した)、および組成物が可溶性のままであることを可能にするの十分に低い、上方分子量限界を有する。
【0048】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記微量金属は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウムまたはニッケルである。
【0049】
本発明の別の実施形態は、1つ以上の必須金属をキレートするために適切なキレート組成物を提供し、このキレート組成物は、水性媒体に可溶性であり、かつ適切な担体材料の構造に対して加えられるかまたはその中に組み込まれている、1つ以上の適切な金属結合化学基から構成されており、その結果、得られたキレート組成物は、1つ以上の金属に結
合可能であり、水性媒体の中で、その結合された金属(単数または複数)とともに可溶性のままであり、キレート組成物にそのように結合されたこの金属(単数または複数)は、望ましくない細胞によって、または寄生生物生物体によって、取り込みおよび使用について利用可能性が少なくなる。この種類の組成物は例えば、このような(微量)金属(単数または複数)を、その増殖に必要とする望ましくない細胞または望ましくない寄生生物体に対して潜在的に開発され得、そしてこの望ましくない細胞または望ましくない寄生生物体は、1つ以上の化学的抗細胞剤または化学的防腐剤の作用に対してある程度の耐性を保有し、そしてこのキレート組成物を開発する目的は、この細胞または寄生生物体が増殖し、かつ化学的な抗細胞剤または化学的な防腐剤の作用に抵抗する能力を損なうことである。
【0050】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記必須金属は、微量の必須金属である。
【0051】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記適切な金属結合化学基は、1つ以上のカルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの化学型から選択される。
【0052】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、デフェロキサミンまたはデフェリプロンのものと類似性を保有する金属結合化学基を含む。
【0053】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプン、スチレンまたはアクリルアミドから構成される担体材料を有する。
【0054】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプンまたはアクリルアミドから構成される担体材料中に組み込まれた3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンの金属結合化学基を含んでいる。
【0055】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記組成物は、1500ダルトンという、下方分子量限界(金属(単数または複数)の結合の前に測定した)、およびこの組成物が可溶性のままであることを可能にするの十分に低い、上方分子量限界を有する。
【0056】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記微量金属は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウムまたはニッケルのうちの少なくとも1つを含む。
【0057】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記金属キレート組成物は、疾患を生じる微生物細胞、または癌細胞、または寄生生物のうちの1つ以上から生じるような疾患を有する、ヒトまたは魚類を含めて、動物での処置に用いられ、この疾患を生じる微生物細胞、または癌細胞、または寄生生物は、上記化学的な抗細胞剤の作用に対してある程度の耐性を有する。
【0058】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記微生物細胞は、真核生物菌界由来の真菌細胞である。
【0059】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記真菌細胞はCandida albicansである。
【0060】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記微生物細胞は、細菌ドメイン由来の細菌細胞である。
【0061】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記細菌細胞はStaphylococcus aureusである。
【0062】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記癌細胞は、処置されるべき動物内で生じた。
【0063】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記寄生生物体は、ヒトまたは他の動物における寄生生物感染を生じ得る寄生動物の群のうちの1つである。
【0064】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記水性媒体は、ヒトまたは他の動物(単数または複数)(例えば、哺乳動物、鳥類、魚類、など)による使用のための市販の製品内にあり、化学的保存料を含んでおり、上記細胞は、腐敗の原因である真菌または細菌の微生物細胞であり、上記キレート組成物は、上記微生物腐敗細胞の増殖のために必要な金属のうちの1つ以上に結合する。キレート組成物による(微量)金属(単数または複数)の結合の1つの可能性のある結果は、上記微生物腐敗細胞の増殖を制御するための上記化学的保存料の作用が可能性として増強されることである。
【0065】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記保存料は、微生物増殖を阻害する化合物であるか、または化学的抗酸化剤である。
【0066】
本発明の別の実施形態は、動物の中で疾患の原因の細胞または生物体の増殖を制御するための方法を提供し、この方法は:
この動物内で病原性微生物または癌細胞または寄生生物体のうちの1つ以上から生じるような疾患に罹患しているヒト、魚類または鳥を含めて動物へ、有効量のキレート組成物を、少なくとも1つの抗細胞剤の投与の前、間または後のいずれかで投与する工程であって、この抗細胞剤は、病原性微生物または癌細胞または寄生生物体に対するその公知の活性に基づいて選択される工程を包含し;
ここで、該キレート組成物は、適切な担体材料の構造内に加えられるかまたはその中に組み込まれている、適切な金属結合化学基を含み、その結果、得られた組成物は、金属にキレート活性を有しており、かつ水含有媒体(例えば、上記のような組成物)の中で可溶性のままである。キレート組成物を投与する1つの目的は、動物において、および病原性細胞または生物体の細胞外環境において、少なくとも1つの(微量)金属元素の(少なくとも)一部に結合することである場合があり、この微量金属は、処理されている病原性の細胞または生物体に必須であり、その結果この(微量)金属は、キレート組成物の使用の結果として病原性細胞または生物体に対してアクセス性が劣るようになり、それによって、病原性細胞または生物体に対して微量金属の利用可能性が少なくなることに起因して抗細胞剤の作用を増強して、結果として、病原性細胞または生物体が動物で疾患を生じる能力が阻害される。
【0067】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記病原性の微生物細胞は、真菌細胞および真核生物菌界のメンバーである。
【0068】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記真菌細胞は、真菌Candida albicansである。
【0069】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記微生物細胞は、細菌細胞、および細菌ド
メインのメンバーである。
【0070】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記細菌細胞は、細菌Staphylococcus aureusである。
【0071】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記適切な金属結合化学基は、カルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの化学基から選択される。
【0072】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記キレート組成物は、デフェロキサミンまたはデフェリプロンのものと類似の官能性金属結合基を含む。
【0073】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプン、スチレンまたはアクリルアミドから構成される担体材料を有する。
【0074】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプンまたはアクリルアミドから構成される担体中に組み込まれた3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンの金属結合基を含む。
【0075】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記水含有培地中で可溶性を保持したままであるこのキレート組成物は、1500ダルトンという、下方分子量限界(金属(単数または複数)の結合の前に測定した)、およびこの組成物が可溶性のままであることを可能にするの十分に低い、上方分子量限界を有する。
【0076】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記微量金属は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウムまたはニッケルである。
【0077】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記抗細胞剤は、抗菌剤、代謝拮抗剤、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤または抗癌剤が以下のうちの1つ以上である。
【0078】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記抗菌剤、代謝拮抗剤、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤または抗癌 抗細胞剤は、以下から選択される:ペニシリン類、セフェム類、セファロスポリン類、カルバペネム類、ペネム類、単環式β−ラクタム類、マクロライド類、ケトライド類、ストレプトグラミン類、リンコサミン類、フルオロキノロン類、クマリン抗生物質、グリコペプチド類、モノバクタム類、リポグリコペプチド類、アンサマイシン類、フェニコール類、ニトロイミダゾール類、ホスホマイシン、オルトソマイシン類、パルディマイシン、プリマイシン、ベンゾナフチリドン類、ムチリン類、オキサゾリジノン類、スルホンアミド類、ニトロフラン類、ポリエン類、ベンジルピリミジン類、バシトラシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン類、エリスロマイシン類、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、アミノグリコシド類、ムピロシン、フシジン酸、スペクチノマイシン、リファマイシン類、キノロン類、シプロフロキサシン、ニトロフラントイン、5−フルオロシトシン、トリメトプリム、スルホンアミド類、トリメトレキサート、イミダゾール類、トリアゾール類、ジドブジン、ガンシクロビル、ビジラビン、アシクロビル、アマンチジン類、イドクスウリジン、フォスカーネット、トリフルリジン、リバビリン、ペンシクロビル、スタブジン、キノリン類、キノリン誘導体類、ジアミノピリミジン類、ハロファントリン、ピリメタミン、クロログアニド、キニン、アトバコン、ジロキサニドフロエート、エフロルニチン、メラルソプロール、メトロニダゾール、ニトロフラン類、ペンタミジン、他のジアミジン類、スチボグルコン酸ナトリウム、スラミン、ニトロソウレア、フルオロウラシルブレオマイシン、抗微生物ペプチド、抗菌性サーファクタント
、ハロゲン類、アルデヒド類、または上述のいずれかの化学的に関連している化合物および/もしくは誘導体類。
【0079】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記可溶性キレーターは、上記動物に投与され、その結果この可溶性キレーターは、半透過性デバイス内にあり、このデバイス内の可溶性キレート組成物は、このデバイス内に保持されており、鉄および/または他の微量金属に結合する能力を有しており、このキレート組成物の使用の結果として、このデバイスの外側、および病原性の細胞もしくは生物体の細胞外環境中の鉄および/または他の微量の金属(単数または複数)の濃度が低くなりかつ、病原性の細胞または生物体にとってアクセスしにくくなり、この微量金属が、処置されている病原性の細胞または生物体に対して必須であり、この抗細胞剤の作用が、この病原性の細胞または生物体にとって利用可能な鉄または微量金属が少ないことに起因して増強され、結果として、この病原性細胞または生物体が動物において疾患を生じる能力がいくらか阻害される。
【0080】
本発明の別の実施形態は、1つ以上の必須金属、必要に応じて微量の必須金属をキレートするために適切なキレート組成物を提供し、このキレート組成物は、水性媒体に可溶性であり、かつ適切な担体材料の構造に加えられるかまたはその中に組み込まれた1つ以上の適切な金属結合化学基から構成され、その結果得られたキレート組成物は、1つ以上の微量金属に結合し、かつその結合した微量の金属(単数または複数)とともに実質的に水性媒体に可溶性のままである。この組成物の開発の1つの目的は、潜在的に、このキレート組成物にそのように結合した(微量)金属(単数または複数)が、細胞または病原性細胞による取り込みおよび使用について利用可能性が少なくなり、この細胞または病原性細胞がこのような微量金属(単数または複数)を活性について必要とし、そしてこのキレート組成物の作用の結果として、この細胞または寄生生物体が活性を継続する能力が阻害されることである。
【0081】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記適切な金属結合化学基は、1つ以上のカルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの化学型から選択される。
【0082】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、デフェロキサミンまたはデフェリプロンのものと類似の金属結合化学基を含む。
【0083】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプン、スチレンまたはアクリルアミドから構成される担体材料を有する。
【0084】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプンまたはアクリルアミドから構成される担体中に組み込まれた3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンの金属結合化学基を含む。
【0085】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記組成物は、1500ダルトンという、下方分子量限界(金属(単数または複数)の結合の前に測定した)、およびこの組成物が可溶性のままであることを可能にするの十分に低い、上方分子量限界を有する。
【0086】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記微量金属は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウムまたはニッケルのうちの少なくとも1つを含む。
【0087】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記水性媒体は、ヒト
、または鳥もしくは魚を含めて別の動物内にある。
【0088】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記細胞は、真核生物菌界由来の真菌細胞である。
【0089】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記真菌細胞は、Candida albicansである。
【0090】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記細胞は、細菌ドメイン由来の細菌細胞である。
【0091】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記細菌細胞は、Staphylococcus aureusである。
【0092】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記細胞は、処置される動物内で生じた癌細胞である。
【0093】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記寄生生物体は、ヒトまたは他の動物において寄生生物感染を生じ得る寄生動物の群のうちの1つである。
【0094】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記細胞または寄生生物体の活性は、ヒトもしくは他の動物の身体の表面上に、または身体内の医学的に移植されたデバイス上に増殖性のバイオフィルムを形成するものである。
【0095】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記適切な担体材料の一部は、医学的に移植されたデバイスの一部である。
【0096】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記活性は、化学的抗細胞剤または化学的保存料の活性に抵抗するものである。
【0097】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記化学的抗細胞剤は以下のうちの1つである:ペニシリン類、セフェム類、セファロスポリン類、カルバペネム類、ペネム類、単環式β−ラクタム類、マクロライド類、ケトライド類、ストレプトグラミン類、リンコサミン類、フルオロキノロン類、クマリン抗生物質、グリコペプチド類、モノバクタム類、リポグリコペプチド類、アンサマイシン類、フェニコール類、ニトロイミダゾール類、ホスホマイシン、オルトソマイシン類、パルディマイシン、プリマイシン、ベンゾナフチリドン類、ムチリン類、オキサゾリジノン類、スルホンアミド類、ニトロフラン類、ポリエン類、ベンジルピリミジン類、バシトラシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン類、エリスロマイシン類、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、アミノグリコシド類、ムピロシン、フシジン酸、スペクチノマイシン、リファマイシン類、キノロン類、シプロフロキサシン、ニトロフラントイン、5−フルオロシトシン,トリメトプリム、スルホンアミド類、トリメトレキサート、イミダゾール類、トリアゾール類、ジドブジン、ガンシクロビル、ビジラビン、アシクロビル、アマンチジン類、イドクスウリジン、フォスカーネット、トリフルリジン、リバビリン、ペンシクロビル、スタブジン、キノリン類、キノリン誘導体類、ジアミノピリミジン類、ハロファントリン、ピリメタミン、クロログアニド、キニン、アトバコン、ジロキサニドフロエート、エフロルニチン、メラルソプロール、メトロニダゾール、ニトロフラン類、ペンタミジン、他のジアミジン類、スチボグルコン酸ナトリウム、スラミン、ニトロソウレア、フルオロウラシルブレオマイシン、抗微生物ペプチド、抗菌性サーファクタント、ハロゲン類、アルデヒド類、または上述のいずれかの化学的に関連している化合物および/もしくは誘導体類。
【0098】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記化学的保存料は、微生物増殖を阻害するか、または化学的抗酸化剤である。
【0099】
本発明の別の実施形態は、微生物または酸化的な化学的分解および腐敗から水含有製品を防腐するための方法を提供し、この方法は:
i)製品、またはこの製品を処方するために用いられる少なくとも1つの水性成分を、第一工程で、この製品または水性成分中の鉄または他の金属(単数または複数)、必要に応じて微量金属(単数または複数)の少なくとも一部を、不溶性キレート組成物によって結合することを可能にさせるために、この製品または水性成分と、不溶性のキレート組成物とを、適切な接触手段を用いて、接触させること、続いて、この不溶性の組成物の製品または水性成分からの分離によって、処理して、それによって、第一の処理された製品または第一の処理された水性成分を形成し、その結果、この鉄または他の金属(単数または複数)の少なくとも一部が、この不溶性のキレート組成物と共に別に回収され、この第一の処理された製品またはこの製品のこの第一の処理された水性成分は、その鉄または他の金属(単数または複数)の含量が低下される、工程と;ii)工程(i)由来の第一の処理された製品またはこの製品の第一の処理された水性成分を、(i)第二の工程において、全ての他の成分と合わせた製品処方品を得るべく他の製品成分に添加する前または後のいずれかで、可溶性のキレート組成物で処理し、ここでこの可溶性キレート組成物は、まだ存在したままで、第一の処理工程によって除去されていない、鉄または他の金属(単数または複数)の少なくとも一部と結合するためである、工程と;を包含する。工程(ii)において可溶性キレート組成物によって鉄または他の微量金属を結合する1つの目的は、微生物腐敗の生物体にとっての、または構成成分の変性を生じる酸化的化学反応における関与についての、金属のアクセス可能性を低下することである;微生物腐敗の生物体にとっての金属のアクセス可能性の欠失は、製品中での増殖能力を阻害するか、または処理された製品に含まれる化学的防腐剤(単数または複数)の作用に対してさらに感受性になるように意図されており、結果としてこの製品は、微生物または酸化的腐敗からより良好に防腐されることに関して増強される。
【0100】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記不溶性のキレート組成物は、適切な担体材料の構造に加えられるかまたはその中に組み込まれた1つ以上の適切な金属結合化学基から構成されており、その結果この得られたキレート組成物は、水性媒体中で不溶性であり、かつ1つ以上の(微量の)金属に結合する能力を有する。
【0101】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記適切な金属結合化学基は、1つ以上のカルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの化学型から選択される。
【0102】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記金属結合化学基は、デフェロキサミンまたはデフェリプロンのものと類似性を保有する。
【0103】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記適切な担体材料は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプン、スチレン、アクリルアミドまたはシリカから構成され、その結果最終のキレート組成物が、水含有媒体中で不溶性である。
【0104】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記不溶性のキレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプンまたはアクリルアミドから構成される担体材料中に組み込まれた3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンの金属結合化学基を含んでいる。
【0105】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記微量金属は、鉄、マンガン、銅、コバル
ト、マグネシウムまたはニッケルのうちの少なくとも1つを含む。
【0106】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記可溶性キレート組成物は、適切な担体材料の構造に加えられるかまたはその中に組み込まれた1つ以上の適切な金属結合化学基から構成されており、その結果、得られたキレート組成物は水性媒体に可溶性であり、かつ1つ以上の微量金属を結合する能力を有している。
【0107】
上記で概説した方法のさらなる態様では、工程ii)の上記可溶性キレート組成物は、上記第一の処理された製品または上記製品の第一の処理された水性成分に添加された半透過性デバイス内に含まれ、その結果、このキレート組成物は、このデバイスからこのデバイスを含有する第一の処理された製品またはこの製品の第一の処理された水性成分のバルク中へ浸透することを可能にするには高すぎる分子量のものであるが、この第一の処理された製品の水性媒体または製品の第一の処理された水性成分は、このデバイスを通じて浸透し交換し得、それによって、このデバイス内の可溶性のキレート組成物と接触し、このデバイス内のこの可溶性キレート組成物は、この第一の処理された製品またはこの製品の第一の処理された水性成分から鉄または他の微量金属の少なくとも一部を除去するために、この第一の処理された製品または製品の第一の処理された水性成分中に含まれる鉄および/または他の微量金属に結合する能力を有しており、その結果、この第一の処理された製品または製品の第一の処理された水性成分の中の鉄および/または他の微量の金属(単数または複数)の濃度は、このデバイスの外側では、ある程度低くされる。
【0108】
上記で概説した方法のさらなる態様では、工程iの上記不溶性のキレート組成物は、デバイス内に不溶性のキレート組成物を保持しており、不溶性のキレート組成物がデバイス内に存在するのではなく第一の処理された製品のバルクに物理的に侵入することを許さない、透過性のデバイス内に含まれ、この不溶性のキレート組成物を含んでいるデバイスは、この第一の処理された製品から分けられてはおらず、その結果、上記鉄または上記他の(微量の)金属(単数または複数)の少なくとも一部は、このデバイス内の不溶性のキレート組成物中に保持され、そしてこの第一の処理された製品は、このデバイスの外側で、その鉄または他の(微量の)金属(単数または複数)の含量がいくらか減少されている。
【0109】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記適切な金属結合化学基は、1つ以上のカルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの化学型から選択される。
【0110】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記金属結合化学基は、デフェロキサミンまたはデフェリプロンのものと類似性を保有する。
【0111】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記適切な担体材料は、水含有媒体中で可溶性である、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプン、スチレン、またはアクリルアミドから構成される。
【0112】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記可溶性キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプンまたはアクリルアミドから構成される担体材料中に組み込まれた3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンの金属結合化学基を含んでいる。
【0113】
上記で概説した方法のさらなる態様では、水含有培地中で可溶性を保持したままである上記キレート組成物は、1500ダルトンという、下方分子量限界(金属(単数または複数)の結合の前に測定した)、およびこの組成物が可溶性のままであることを可能にするの十分に低い、上方分子量限界を有する。
【0114】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記微量金属は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウムまたはニッケルのうちの少なくとも1つを含む。
【0115】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記微生物腐敗の生物体は、真菌または細菌のいずれかである。
【0116】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記真菌または細菌の生物体は、上記で言及されるような上記化学的保存料(単数または複数)に対してある程度の耐性を有する。
【0117】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記化学的保存料(単数または複数)は以下:プロピオン酸およびプロピオン酸塩類;ソルビン酸およびソルビン酸塩類;安息香酸および安息香酸塩類;二酢酸ナトリウム;乳酸;二酸化硫黄、亜硫酸塩;亜硝酸ナトリウム;塩化ナトリウム;アルデヒド含有または遊離化合物、水銀含有化合物;抗酸化剤;界面活性剤、例えば、四級アンモニウム化合物および可溶性イオン錯化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸から選択される。
【0118】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記製品構成成分の変性を生じる酸化的化学反応中での関与についてアクセス性が少ない他の微量金属は、銅、マンガン、コバルト、またはニッケルのうちの1つである。
【0119】
本発明の別の実施形態は、水含有製品を、微生物または酸化的な化学的分解および腐敗から防腐するための方法であって、ここでこの製品は、可溶性のキレート組成物で処理され、この可溶性キレート組成物は、製品中に存在する鉄または他の(微量)金属(単数または複数)(の少なくとも一部)に結合してこの微生物腐敗の生物体に対して低い金属アクセス性を創出し、この製品におけるそれらの増殖能力および活性を阻害し、および/またはこの腐敗生物体はこの製品中に含まれた化学的保存料(単数または複数)の作用に対してさらに感受性になり、結果として、この製品が微生物または酸化的腐敗からより良好に防腐されることに関して増強される、方法を提供する。
【0120】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記可溶性キレート組成物は、適切な担体材料の構造に加えられるかまたはその中に組み込まれた1つ以上の適切な金属結合化学基から構成されており、その結果、得られたキレート組成物は、水性媒体に可溶性であり、かつ1つ以上の微量金属を結合する能力を有する。
【0121】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記適切な金属結合化学基は、1つ以上のカルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの化学型から選択される。
【0122】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記金属結合化学基は、デフェロキサミンまたはデフェリプロンのものと類似性を保有する。
【0123】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記適切な担体材料は、水含有媒体中で可溶性である、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプン、スチレン、またはアクリルアミドから構成される。
【0124】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記可溶性キレート組成物は、ビニルピロリドン、デキストラン、デンプンまたはアクリルアミドから構成される担体材料中に組み込まれた3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンの金属結合化学基を含む。
【0125】
上記で概説した方法のさらなる態様では、水含有培地中で可溶性を保持したままである
上記キレート組成物は、1500ダルトンという、下方分子量限界(金属(単数または複数)の結合の前に測定した)、およびこの組成物が可溶性のままであることを可能にするの十分に低い、上方分子量限界を有する。
【0126】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記微量金属は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウムまたはニッケルのうちの少なくとも1つを含む。
【0127】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記微生物腐敗の生物体は、真菌または細菌のいずれかである。
【0128】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記真菌または細菌の生物体は、上述のような化学的保存料(単数または複数)に対してある程度の耐性を有する。
【0129】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記化学的保存料(単数または複数)は以下:プロピオン酸およびプロピオン酸塩類;ソルビン酸およびソルビン酸塩類;安息香酸および安息香酸塩類;二酢酸ナトリウム;乳酸;二酸化硫黄、亜硫酸塩;亜硝酸ナトリウム;塩化ナトリウム;アルデヒド含有または遊離化合物、水銀含有化合物;抗酸化剤;界面活性剤、例えば、四級アンモニウム化合物および可溶性イオン錯化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸から選択される。
【0130】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記製品構成成分の変性を生じる酸化的化学反応中での関与についてアクセス性が少ない上記他の微量金属は、銅、マンガン、コバルト、またはニッケルのうちの1つである、方法。
【0131】
上記で概説した方法のさらなる態様では、上記可溶性キレート組成物は、上記製品に添加された半透過性デバイス内に含まれ、その結果このキレート組成物は、このデバイスからこのデバイスを含んでいる製品のバルクへ浸透することを可能にするには高すぎる分子量のものであるが、この製品の水性媒体がこのデバイスを通じて浸透し交換し得、それによって、このデバイス内の可溶性キレート組成物と接触し、このデバイス内の可溶性キレート組成物は、この製品から鉄または他の微量金属の少なくとも一部を除去するためにこの製品中に含まれる鉄および/または他の微量金属に結合する能力を有しており、その結果、この製品の鉄および/または他の金属(単数または複数)の濃度は、このデバイスの外側で低くされる。
【0132】
本発明の別の実施形態は、1つ以上の必須金属、必要に応じて微量の金属をキレートするために適切なキレート組成物であって、このキレート組成物が、水性媒体に可溶性であり、かつ適切な担体材料の構造に加えられるかまたはその中に組み込まれた1つ以上の適切な金属結合化学基から構成され、その結果得られたキレート組成物が、1つ以上の金属に結合し、かつその結合した微量の金属(単数または複数)とともに水性媒体に可溶性のままであり、ここで、この金属結合化学基が、金属結合モノマーを含んでいるモノマー基の一部であり、この金属結合モノマーが、第二のモノマー基と混合され、この2つのモノマー基は、重合されて、その結果、得られたコポリマーが、水溶液中で可溶性のままであって、金属キレート活性を有する、キレート組成物を提供する。
【0133】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記金属結合化学基は、フェノレート/カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノンの化学的分類から選択される。
【0134】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記金属結合化学基は、化学的に用いられるデスフェラルまたはデフェリプロンの金属結合化学基と同様である
【0135】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記第二のモノマー基は、アクリルアミド、スチレンまたはピロリドンの化学的分類から選択される。
【0136】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記金属キレート活性は、鉄、マンガン、銅、コバルト、マグネシウムまたはニッケルに関するものである。
【0137】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記組成物は、金属の結合の前に1.5×10〜10ダルトンという分子量を有する。
【0138】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記金属結合モノマーは、3−ヒドロキシ−1−(β−メタクリルアミドエチル)−2−メチル−4(1H)−ピリジノンであり、上記第二のモノマーは、1−ビニル−2−ピロリドンであり、上記最終のキレート組成物は、この2つのモノマー基の直鎖の可溶性コポリマーである。
【0139】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記金属結合モノマーは、3−ヒドロキシ−1−(β−メタクリルアミドエチル)−2−メチル−4(1H)−ピリジノンであり、上記第二のモノマーは、N,N−ジメチル−アクリルアミドであり、および最終のキレート組成物は、この2つのモノマー基の直鎖の可溶性コポリマーである。
【0140】
上記で概説した組成物(単数または複数)のさらなる態様では、上記組成物は、不溶性であるかまたは可溶性であり、ここでピロリドン、ポリビニルピロリドンまたはデンプンが、組成物またはコポリマーの性状であり、これらの性状は、ヨウ素に結合し得、かつこの組成物は、ヨウ素で処理され、その結果、ヨウ素は化学的に、この組成物またはコポリマーの性状を含んでいるピロリドン、ポリビニルピロリドンまたはデンプンに結合され、かつ得られたヨウ素含有のキレート組成物は、金属キレート組成物の金属キレート性状に加えて、ヨウ素によって寄与される抗細胞特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図1】典型的な鉄取り込み機構の模式図である。
図2】実施例8から得られたデータのグラフである。
図3】実施例9から得られたデータのグラフである。
図4】実施例10から得られたデータのグラフである。
図5】実施例13から得られたデータのグラフである。
図6】実施例14から得られたデータのグラフである。
図7】実施例20から得られたデータのグラフである。
図8】実施例21から得られたデータのグラフである。
図9】実施例22から得られたデータのグラフである。
図10】実施例22から得られたデータのグラフである。
図11】実施例23から得られたデータのグラフである。
図12】実施例23から得られたデータのグラフである。
図13】実施例24から得られたデータのグラフである。
図14】実施例26の化学合成手順のまとめである。
図15】実施例26Bについて得られたデータのグラフである。
図16】実施例26Cについて得られたデータのグラフである。
図17】実施例27についての化学合成手順のまとめである。
図18】実施例28で得られたデータのグラフである。
図19】実施例29で得られたデータのグラフである。
図20】実施例30で得られたデータのグラフである。
図21】実施例30で得られたデータのグラフである。
図22】実施例31で得られたデータのグラフである。
図23】実施例23で得られた結果の一連のグラフである。
図24】実施例33で得られた結果のグラフである。
図25】実施例36で得られた結果のグラフである。
図26】実施例37で得られた結果のグラフである。
図27】実施例38で得られた結果のグラフである。
図28】実施例41で得られた結果のグラフである。
図29】実施例41で得られた結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0142】
以下は、本発明の実施形態の例示的な説明であり、限定を意図したものではなく、単なる本発明およびその態様の例示である。下に考察される理論は、限定されるものではなく、束縛することは意図していないことが理解されよう。鉄封鎖のキレート組成物および方法は、例示であって限定ではない。
【0143】
細胞の全てのFe獲得機構は、細胞の表面でまたは細胞の表面付近で細胞膜に位置されて、細胞の外部環境からFeを獲得するように機能するという重要な性状を有することが理解されよう。細胞によって直接内部移行されるべき分子サイズ(式量)が大きすぎるか、および/または細胞表面レセプター/Fe輸送系によって物理的にアクセスされるには大き過ぎるかもしくはかさ高過ぎる、本明細書に記載の特定のキレート組成物を含むキレート組成物は、細菌、真菌または動物細胞についてのFe供給源として利用可能性が少ないであろう。このようなアクセス可能でないかまたはアクセス性が乏しいキレーターは、もし他の従来のキレーター、親鉄剤(シデロホア)またはトランスフェリンのFe結合親和性に対して、アクセス可能であるかまたはより高いFe結合強度を有する場合、細胞の外部環境において鉄についてアクセスするのが困難なシンクを潜在的に提供し得、これによってFeは細胞にかなり利用しにくくなる。
【0144】
銅、マンガン、ニッケル、コバルトおよびマグネシウムを含めて、他の微量の必須金属に関してある程度同様の態様が存在する。これらの他の金属は、細胞により程度を変化することが必要とされ、これらの金属のうちの1つを要する細胞に関しては、この細胞は、この金属もまた細胞の外部環境から獲得しなければならない。従って、金属を必要とする細胞の外部環境におけるこれらの他の微量金属の1つに結合し、細胞による取り込みに関してアクセス性が少ない形態でこの金属を結合するキレート組成物はまた、細胞についてその金属の利用可能性の低下を生じ得る。
【0145】
腐敗または病原性の細胞を拒絶することに基づきそれらを標的として、鉄または他の増殖−必須金属(単数または複数)によって、製品の防腐および/または疾患制御のための革新的なアプローチが得られる。従って、金属の剥奪を通じた原因の細胞増殖の妨害は、可能性としては、微生物腐敗を妨げるか、または他の化学的防腐剤の作用に対して腐敗微生物を感受性にし得る。同様に、Feの剥奪を通じた病原性細胞の増殖の妨害は、病原体に対して正常な宿主防御機構の有効性を増大し得るか、あるいは、ある範囲の他の抗細胞剤、例えば、従来用いられる抗生物質または癌化学療法剤の活性に対して病原性細胞を感受性にする。この開示の目的に関して、細胞の増殖は、細胞の活性(これは可能性としては増殖を必ずしも必要とはしない)とは区別され得ることが注目されるべきである。このように、非増殖性細胞は、やはり生きていて、抗細胞剤を変性するような活動を行う場合がある。
【0146】
本明細書で開示される特定の組成物によって影響され得る細胞の他の活性としては、微
生物からの二次代謝物(すなわち、それらの産生において鉄または細胞に利用可能な他の金属の量による影響を受けるもの)の産生、例えば、Candida種などの酵母におけるフラビン産生、またはActinomycetes種における抗生物質産生が挙げられる。本明細書で例示されるキレート組成物は、細胞への鉄を制限してCandida albicansでのフラビンのような二次代謝物の産生を促進するために、有用であるかまたは潜在的に有用であると見出された。
【0147】
キレート組成物によって潜在的に影響され得る細胞のさらに別の活性は、ヒトまたは他の動物の体における種々の細胞の組み合わせた活性によって生じる一般的な炎症性の応答である。特定のキレート組成物のキレート活性は、炎症性の応答の態様に部分的に関与する鉄または他の金属を封鎖することを通じて、炎症性応答を低減または緩和する。
【0148】
特定のキレート組成物は、一方では、細胞増殖、すなわち細胞複製を、および他方では細胞活性を妨害するために、有用であるかまたは潜在的に有用であると見出された。
【0149】
理論によって束縛されることは望まないが、共通の問題によって、細胞の増殖および活性を制御するための以前に開示されたキレーターの使用が制限されることが確認された。この問題は、これらの化合物の可溶性の性質に関するのではなく、これらのキレーター化合物の比較的小さい分子サイズに関しており、その結果これらの化合物は、細胞に取り込まれ得るかおよび/またはそれらの鉄に関して細胞の表面でアクセスされ得る(すなわち、図1および表1に示される機構を使用することによって)。この問題が、アクセス可能な金属結合特性(例えば、既存のキレーターのもの以上に効果的な特性)を、合成構造に組み込む(それでも水性媒体中に可溶であるままである)、より高い分子量のキレート組成物を提供することによって克服され得ることも確認された。例えば、キレート組成物は、担体材料に加えられたキレーター性状(単数または複数)を有してもよく、その結果、この得られたキレート組成物は、細胞中に容易に取り込まれないように、または細胞によってその鉄が容易にアクセスされないように、分子量サイズが十分大きく、ただし、なお処置されるべき細胞の周囲の水環境では可溶性であるままであるように分子量サイズが十分に低いままである。これに関して、処置されるべき細胞を囲む水性環境で可溶性のままであるために十分に低い分子サイズであるが、処置されている細胞の取り込み機構にアクセス可能であるキレート組成物またはその会合した金属(例えば、鉄)をもはや有さないように十分に高い分子サイズの水溶性のキレート組成物が提供されるように、1つの型のキレート組成物は、他の担体構成を有する組成物に、またはコポリマーマトリックスに組み込まれた化学キレート性状を含む。
【0150】
不溶性のキレート組成物を得るための、3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンを含む組成物を含んでいるコポリマー内の金属キレート分子の共重合化が報告された(Feng,M,1996)。しかし、このような以前に開示されたキレート組成物はまた、水性媒体中で不溶性である組成物に関し、このような先行技術は、本明細書に開示の可溶性のキレート組成物に関してなんらか動機づけを教示も、示唆も、提供もしない。
【0151】
一実施形態では、任意の関連する鉄を含む組成物が、このキレート組成物で処置されている細胞に対する鉄供給源としてアクセスできないように、水性媒体中で可溶性である形態の、3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オンまたは他の関連しているヒドロキシピリジノンまたは他の種類のキレート基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、フェノレートまたはヒドロキサメートによって提供される活性を含めて、キレート活性を有するキレート組成物の生成が提供される。
【0152】
細菌の接着およびバイオフィルム形成は、疾患の発達の間の細菌および真菌の病原体についての重要な細胞活性であることが現在認識されている(Hentzer M.,M.
Givskov,2003.)。デフェロキサミン(desferrioxamine)のような鉄キレーターは、実験室では、単収縮運動を増大して、バイオフィルム形成を制限することが示されている(Singhら、2002)。細菌または真菌の疾患の初期段階の間の鉄供給の適切な制限は、病原性細胞が、例えば、呼吸器官もしくは泌尿生殖器官の上皮表面上で、または尿路カテーテルのような留置式の医療デバイスの上で、バイオフィルムを樹立する活性を妨害し得る。先行技術で開示された鉄キレーターは、これらのキレーターを利用するか、そうでなければこれらから鉄を得ることができる病原体についての微生物接着の活性を妨害するのにおける使用に関して同じ限界を被る。上記で概説したとおり、例えば、これらのキレーターが担体に加えられている構造での低分子量キレーターの金属結合特性を組み込んでおり、結果として、細胞に取り込まれないように、そうでなければ細胞にとってそれらの鉄へアクセスできないように、十分に高い分子サイズである、利用可能なキレート組成物があれば有利である。従って、このようなキレート組成物の使用は、発病機序の間のバイオフィルム形成の微生物活性を妨害し、従って、発病の過程を妨げて、感染を処置または予防するための基礎を提供し得る。このようなキレート組成物は可能性としてはまた、バイオフィルム形成の微生物活性を妨げ得、そして、バイオフィルム増殖および汚染で問題となりやすいことが公知の食品、飲料または水を取り扱う産業系でのバイオフィルム増殖を制御する手段を提供し得る。ここで再び、本発明のキレート組成物の好ましい形態は、処置されるべき細胞の周囲の水性環境で可溶性のままであるために十分に低い分子サイズであるが、処置されている細胞の取り込み機構にアクセス可能であるキレート組成物またはその会合した鉄をもはや有さないように十分に高い分子サイズの水溶性のキレート組成物が得られるように、例えば、他の担体構成を有する組成物中に、またはコポリマーマトリックス中に組み込まれた公知の化学的なキレート性状を含む。
【0153】
Staphylococcus aureusまたはClostridium difficileのような医療上重要な細菌の細胞の活性としての抗生物質耐性は、今では、医薬において重要な問題となっている(Martinez,J.L.,およびF.Baquero.2002)。Candida albicansのような真菌の病原体に関して同様の問題が生じた(Prasad,R.およびK.Kapoor.2005)。これらのいわゆる「超強力細菌(super−bugs)」は、ある範囲の抗生物質に対して極めて耐性であり、主要な疾患の脅威である。従来の抗生物質、例えば、ペニシリン類は、抗細胞剤であり、それらは、種々の細胞機能を標的する。抗細胞剤に対する耐性は、使用される抗生物質を不活性化するかまたは排除できる細胞の活性を通じて生じる。実験室では細菌に対する鉄の制限は、例えば、ミノサイクリンに対するActinobacillus actinoycetemcomitansの感受性(Grenier,D.,M.−P.Huot,D.Mayrand.2000.)またはトブラマイシンに対するPseudomonas aeruginosaの感受性(Singh P.K.,M.R.Parsek,E.P.Greenberg,M.J.Welsh.2002)および真菌、例えば、Candida albicansについての感受性を増大することが示された。従って、適切なキレーターの使用を通じた鉄の保留は、正常な抗生物質感受性を有する標的病原体、およびヒトを含めた動物での感染を生じる抗生物質耐性株を標的し得る。先行技術で開示される鉄キレーターはここでも、動物での抗生物質の作用を増強するのにおける使用に関して同じ限界を被る。なぜならこれらは、鉄の供給源としていくつかの病原体によって用いられ得るからである。またしても、例えば、これらのキレーターが担体に加えられている構造での低分子量キレーターの金属結合特性を組み込んでおり、結果として、細胞に取り込まれないように、そうでなければ細胞によってそれらの鉄へアクセスできないように、十分に高い分子サイズ(式量)である、キレート組成物を提供することが有利である。このようなキレート組成物の使用は、病原性の微生物活性を制御するために用いられる抗生物質の効果に対抗する病原性細胞の問題となる微生物活性を妨害し得る。従って、キレート組成物は、抗生物質の作用を増強し得る。さらにまた、1つの
形態のキレート組成物は、処置されるべき細胞の周囲の水性環境で可溶性のままであるために十分に低い分子サイズであるが、処置されている細胞の取り込み機構にアクセス可能であるキレート組成物またはその会合した鉄をもはや有さないように十分に高い分子サイズの水溶性のキレート組成物が得られるように、例えば、他の担体構成を有する組成物中に、またはコポリマーマトリックス中に組み込まれた公知の化学的なキレート性状を含む。ここでは、可溶性のキレート組成物は、細胞が鉄を得る能力を妨害し、それによって、細胞の病原性を制御するための抗生物質の作用の改善が可能になる。
【0154】
寄生生物はまた、鉄の要求があり、そしてTrypanosoma cruziによる感染の間の鉄の利用可能性は、疾患の転帰における決定要因であることが示された(LalondeおよびHolbein,1984;)。クロロキン耐性のマラリア感染からのPlasmodium falciparumは、サイクリン抗生物質(テトラサイクリン、ミノサイクリンなど)およびキノロン類(ナルフロキサシン、オキソフロキサシン)に対してインビトロで感受性であることが示された。これらの抗生物質の活性は、過剰な鉄が提供された場合に減少され、このことは、それらの活性が、寄生生物の鉄代謝に部分的に関連していたことを示唆している(Pradinesら、2001)。従って、寄生生物疾患の間の鉄供給の適切な制限は、抗寄生生物剤に対する感受性に関連する寄生生物体の増殖または活性を妨害し得る。しかし、ここでも、米国特許第5,256,676号および同第6,825,204号のような先行技術に開示される鉄キレーターは、寄生生物病原体の増殖または活性の妨害におけるそれらの使用について上記で考察されたのと同じ限界を被る。寄生生物はやはり、以前に開示されたキレート物質の存在下で鉄を得ることができよう。さらにここでも、1つの形態のキレート組成物は、処置されるべき細胞の周囲の水性環境で可溶性のままであるために十分に低い分子サイズであるが、処置されている寄生生物体または細胞の取り込み機構にアクセス可能であるキレート組成物またはその会合した鉄をもはや有さないように十分に高い分子サイズの水溶性のキレート組成物が得られるように、例えば、他の担体構成を有する組成物中に、またはコポリマーマトリックス中に組み込まれた化学的なキレート性状を含む。
【0155】
トランスフェリン(および関連のラクトフェリン)は、鉄の輸送および防御のために脊椎動物によって産生されるタンパク質の自然な分類の一部であり、このトランスフェリンタンパク質は、1500ダルトンを超える分子量サイズのタンパク質である。しかし、トランスフェリンは、多くの微生物病原体、癌細胞およびほとんどの動物細胞にとってアクセス可能である。なぜなら、ほとんどの脊椎動物細胞および種々の微生物病原体は、これらの鉄タンパク質を、それらの正常な鉄栄養機構の一部として、すなわち、トランスフェリンタンパク質によって担持される鉄を得るために、効率的に認識して結合する表面レセプターを保有するからである(図1および表1を参照のこと)。トランスフェリンまたはラクトフェリン(またはこれらの分子の一部)は、抗微生物の治療目的について提唱された(米国特許第7,446,089号および米国特許第5,656,591)、しかし、それらの有用性は限られている。なぜなら、それらは、鉄の供給源として種々の細菌および真菌病原体によって利用できるからである。本明細書に開示されるキレート組成物のさらなる形態は、処置されるべき細胞の周囲の水性環境で可溶性のままであるために十分に低い分子サイズであるが、処置されている細胞の細胞表面レセプターまたは他の鉄取り込み機構にアクセス可能であるキレート組成物またはその会合した金属(例えば、鉄)をもはや有さないように十分に高い分子サイズの水溶性のキレート組成物が得られるように、他の担体構成を有する組成物中に、またはコポリマーマトリックス中に組み込まれた化学的なキレート性状を含む。キレート組成物の1つの形態としては、トランスフェリンタンパク質の分子サイズと同様の分子サイズ、すなわち、約100kDaを有し、かつトランスフェリンで利用可能な3つ以上の鉄結合部位を有する水溶性のポリマーキレート組成物構造が挙げられる。さらに、これらの鉄結合部位は、より高い効率を有し、その結果、キレート組成物は、トランスフェリンよりも強力に鉄に結合し、また、トランスフェリンに
結合して、トランスフェリンから鉄を除去するために存在する細胞表面レセプターによって/細胞表面レセプターで、認識もアクセスもできない。特定の態様によれば、可溶性のキレート組成物は、動物に、例えば、点眼もしくは膣医薬の成分として目または膣に投与されてもよく、ここでは、これらの可溶性のキレート組成物は、金属(単数または複数)、例えば、微量金属に結合し、例えば、身体中のこれらの位置でラクトフェリンによって提供されるような自然な防御機構を増強する。
【0156】
癌治療のために鉄キレートを用いるための見込みをレビューした(Bussら、2003。しかし、癌の処置における従来のキレーターの使用では、不十分な結果しか得られず(Bussら、2003)、これはおそらく、利用される医療的なキレーターが、もともと鉄を病理学的に過剰に負荷された患者から過量の鉄を取り除くために、開発されたものであって、これらのキレーターは、癌細胞の鉄獲得機構を効率的に取り扱うためには必要な効率(すなわち、十分に高い分子量または鉄結合強度)が無い場合があるからである。これらの知見は、癌細胞によってアクセスできないキレート組成物の物理的形態とカップリングされた鉄に有効な親和性を有するキレート組成物の必要性を指摘するものである。癌細胞は、身体の非癌細胞と同様に、トランスフェリンを、その増殖に必要な場合、鉄の供給源として利用し、トランスフェリンを収容して、使用のために細胞の内側にその鉄を解放する表面レセプターを保有する。鉄に有効な親和性(すなわち、正常な動物の鉄担体タンパク質、例えば、トランスフェリンまたはラクトフェリンの親和性を超える)を有しており、癌細胞の外部の水性環境で示されるようなキレート組成物であって、細胞レセプターによってアクセス可能でなく、癌細胞に輸送可能でもないキレート組成物は、癌細胞増殖を抑制するか、または癌細胞の活性を変更して、他の抗細胞剤(化学的および放射線)に対して癌細胞を感受性にし得る、新規な治療の基礎を提供し得るであろう。
【0157】
米国特許第5,663,201のような先行技術で開示されるような鉄キレーターおよびキレート組成物は、癌細胞の増殖または活性を妨害するのにおける使用について上記で考察されるのと同じ限界を被る。ここでもまた、例えば、これらのキレーターが担体に加えられている構造中に低分子量キレーターの金属結合特性を組み込んでおり、結果として、癌細胞に取り込まれないように、そうでなければ癌細胞によるそれらの鉄について認識してアクセスできないように、十分に高い分子サイズであるが、患者中へのそれらの導入を容易にして、処置されるべき癌細胞のすぐ周囲の水性環境で鉄除去をもたらすように十分に小さい分子量サイズのままであるキレート組成物を提供することが可能性としては有利である。従って、このようなキレート組成物の使用は、発病機序の間の癌細胞の増殖および活性を妨害し得、そしてまたトランスフェリンによって送達されるFeを遮断することに少なくとも基づいて、他の抗癌剤の作用を改善し得る。
【0158】
一実施形態では、可溶性キレート組成物は例えば、水溶性のキレート組成物を提供するために、適切な可溶性の担体材料に結合された適切な化学的なキレート性状を含んでもよい。適切なキレート性状としては、限定するものではないが、カルボキシル、ヒドロキシル、フェノレート、カテコレート、ヒドロキサメートまたはヒドロキシピリジノン化学基が挙げられる。適切な担体材料としては、限定するものではないが、デンプン、デキストラン、スチレン、アクリルアミドまたはピロリドンが挙げられる。特定の実施形態としては、例えば、ピロリドン、スチレンまたはアクリルアミドのような適切なポリマー形成モノマー基を有するコポリマーマトリクス中にキレートモノマー基として組み込まれた適切な化学キレート基から構成される組成物が挙げられる。
【0159】
米国特許第4,530,963号には、培地を処理するために用いられる不溶性のキレート組成物を利用する、増殖培地からの鉄除去、次いで、それらの金属イオン封鎖された鉄が培地から物理的に除去されることは、処理された培地での微生物増殖の阻害を達成するのに有用であることが以前に開示されている。同様の関係が、他の必須金属に関して種
々の程度まで成り立つことが予想され得る。なぜなら、銅、マンガン、コバルト、ニッケル、マグネシウム、亜鉛などの金属は、病原性の微生物および癌細胞を含んでいる細胞の増殖において重要な役割を果たすからである(例えば、Huberら、1990を参照のこと)。しかし、脊椎動物宿主(ホスト)で鉄を封鎖するために不溶性のキレート組成物を利用する場合には、その金属イオン封鎖された鉄とともにキレーターを物理的に添加または除去することは実際的ではない。脊椎動物の宿主に投与可能であり、かつ宿主内で鉄を封鎖可能なキレート組成物は、その宿主へ投与できる形態、すなわち、理想的には、宿主の体液中で可溶性となる形態でなければならない。さらに、可溶性キレート組成物は、それらが利用される水性環境中でのそれらの溶解度に起因して、不溶性のキレート組成物とは対照的に、処理環境での鉄へのさらに良好なアクセスに関して水性環境の範囲に良好に浸透し得、従って、可溶性のキレート組成物は、処置されている環境中において鉄に関して、鉄キレート収集特徴の改善がある。脊椎動物宿主における使用のための可溶性の性質のキレート組成物は、本発明の態様である。ここでは、キレート組成物の1つの形態は、処置されるべき細胞の周囲の水性環境で可溶性のままであるために十分に低い分子サイズであるが、処置されている細胞の取り込み機構にアクセス可能であるキレート組成物またはその会合した鉄をもはや有さないように十分に高い分子サイズの水溶性のキレート組成物が得られるように、例えば、他の担体構成を有する組成物中に、またはコポリマーマトリックス中に組み込まれた化学的なキレート性状(例えば、その内容全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,530,963号に教示されるような)を含む。これに関して、可溶性のキレート組成物は一般には、細菌の細胞、真菌の細胞、寄生生物の細胞もしくは癌細胞に容易に取り込まれないように、または細胞表面レセプター(細胞の内部状況へ鉄を送達するために組成物からFeを除去することを容易にし得る)によって容易に認識され結合されるように、十分に大きい分子サイズを有し得る。他方では、分子サイズ(すなわち、重量)の上限には、キレート組成物が水含有培地、および意図される用途の環境で可溶性のままであることを依然として可能にするのにこの上限のサイズが十分に低い条件でのみ、制限はなく;分子サイズは、例えば、1500ダルトンより大きくてもよい(例えば、少なくとも5,000〜最大で3,000,000ダルトン)。可溶性キレート組成物は、低分子量組成物として提供される場合でさえ、細胞レセプターおよび取り込み機構によって認識されないであろう。
【0160】
水性媒体から鉄を物理的に除去するために用いられる不溶性のキレート組成物の使用に関連する別の問題は、不溶性のキレート組成物の使用後に処理された培地中に残っている残留の鉄が、特定の微生物のある程度の増殖を可能にするのに十分な濃度でやはり存在し得るということである。細胞にアクセスできない形態の鉄に結合する可溶性のキレート組成物の使用は、この問題を克服するための手段であり得、そしてそれら自体の上の培地を防腐するため、または不溶性のキレート組成物によって第一工程で処理された培地を防腐するために利用可能であろう。
【0161】
さらなる実施形態では、標的細胞へ有意に透過可能でないように、および標的細胞の表面に関連する鉄獲得機構にアクセス可能でないように、ただしなお処置されている標的細胞周囲の水環境における金属を封鎖できる、十分な分子サイズの可溶性のキレート組成物が提供される。この作用の結果として、処置されている細胞は、鉄をある程度欠いており、この鉄不足の結果として、標的細胞内でそれらの作用を発揮する種々の他の抗細胞化合物の作用が増強される。
【0162】
微生物および寄生生物疾患および癌に関する従来の化学的治療は、ある範囲の抗細胞化合物(放射線療法とは別)を使用し、これらの剤は一般には、標的細胞の種々の内部状況に浸透して入り、そこで、病原性細胞の細胞増殖の種々の態様および呼吸機構を標的とする。これらの剤は、広義には、以下のような分類にまとめることができる:
a)細菌または真菌の細胞壁合成を阻害する抗菌剤、例えば、抗菌のペニシリン類、セ
ファロスポリン類、カルバペネム類、サイクロセリン、バンコマイシン、バシトラシン、イミダゾール類、およびエタンブトール、ならびに抗菌剤、例えば、シロファンギン(cilofungin)およびプラディマイシン類;
b)細菌または真菌の細胞膜の損傷を生じる抗菌剤、例えば、界面活性剤、例えば、ポリミキシン類、およびコリステメテート(colistemethate)および抗真菌剤、例えば、ナイスタチンおよびアンホテリシンB;
c)脂質合成を阻害する抗菌剤、例えば、フルコナゾールによって代表されるアゾールクラスの化合物などの抗真菌剤。
d)細菌タンパク質合成を阻害する抗菌剤、例えば、クロラムフェニコール、テトラサイクリン類、エリスロマイシン類、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、アミノグリコシド類、ムピロシン、フシジン酸、およびスペクチノマイシン;
e)核酸の合成または代謝を阻害する抗菌剤、例えば、リファマイシン類、キノロン類、シプロフロキサシン、ニトロフラントインおよび抗真菌の5−フルオロシトシン;
f)代謝拮抗剤、例えば、トリメトプリム、スルホンアミド類、トリメトレキサート、イミダゾール類、およびトリアゾール類;
g)抗ウイルス剤、例えば、ジドブジン、ガンシクロビル、ビジラビン、アシクロビル、アマンチジン類、イドクスウリジン、フォスカーネット、トリフルリジン、リバビリン、ペンシクロビル、およびスタブジン;
h)抗寄生生物剤、例えば、クロロキン、他のキノリン類、キノリン誘導体類、ジアミノピリミジン類、ハロファントリン、ピリメタミン、クロログアニド、キニン、アトバコン、ジロキサニドフロエート、エフロルニチン、メラルソプロール、メトロニダゾール、ニトロフラン類、ペンタミジン、他のジアミジン類、スチボグルコン酸ナトリウム、およびスラミン;
i)照射または化学剤を含めて抗癌剤、例えば、アルキル化剤、例えば、ニトロソウレア、およびロムスチン代謝拮抗剤、例えば、ピリミジン類似体フルオロウラシル、および抗生物質、例えば、ブレオマイシン。
【0163】
本開示の目的に関して、上述の剤は、抗細胞剤と呼ぶ。これらの抗細胞剤は一般には、標的細胞へ浸透し、次いで、標的細胞(病原性の真菌、細菌、寄生生物または癌細胞である)を損傷し最終的には殺傷する。全ての種類の病原性細胞が、以下を含む種々の機構を通じて抗細胞剤に対する耐性の機構を発達することが公知である:中和(剤の分解)、排出(細胞への剤の浸透の防止)および/または抗細胞剤から課された損傷を修復する修復機構の使用。これらの耐性機構によって、特定の抗細胞剤の有効性の消失を生じるか、または病原性細胞を制御するためのこの剤の極めて高用量またはより長期投与の必要性が生じ得る。このような耐性機構は、制限のない増殖に必須の栄養が十分にある標的細胞ではさらに貪欲であり、反応性であることが予測されるべきである。特定の実施形態によれば、鉄のような必須金属の供給を制限することを通じて病原性細胞に対するストレスを生じさせる。この鉄または金属枯渇ストレスの結果として、病原性細胞が増殖するか、または抗細胞剤への抵抗に関連する活動を行う能力が損なわれ得る。本明細書で開示される組成物のようなキレート組成物と抗細胞剤とを利用する結果として、処置される細胞の増殖または活性を制御する別の能力および抗細胞剤に由来する細胞殺傷効果の増強がもたらされ得る。
【0164】
本開示の主題であるキレート組成物は、単独で利用されてもよいし、あるいは、病原性細胞の増殖もしくは活性を制御し、またはこれらの細胞を殺傷するための他の抗細胞剤とともに利用されてもよい。キレート組成物は、例えば、注射によって身体内に投与されてもよく、または、身体上に、例えば、上皮細胞上に与えられてもよい。キレート組成物はまた、創傷部位での微生物増殖の制御を補助する創傷被覆材に組み込まれてもよいし、またはポリマー材料とともに、留置式の医療デバイスでの微生物増殖を妨害するために、このようなデバイスの製造に利用されてもよい。ヒドロゲル、縫合糸、包帯などのような創
傷被覆材の中の、またはコーティングとして、もしくはカテーテル、シャントおよび他の留置式の医療デバイスを製造するために用いられるポリマー材料内に組み込まれる、本明細書で開示されるキレート組成物の適用も考慮される。ここでは、水性媒体中のキレート組成物の溶解度に起因して、これらは創傷部位中に、または医療デバイスから拡散して、金属に結合して、病原性細胞に対するその利用可能性を制限し得る。可溶性のキレート組成物は、例えば、抗細胞剤(単数または複数)と混合されてもよく、この可溶性のキレート組成物は、混合物中で賦形剤成分として機能し、それによって、この抗細胞剤のバイオアベイラビリティまたは活性を維持または増強するように働く。
【0165】
別の態様では、金属結合化学基は、金属結合化学基を組み込むための担体材料としてのデバイス自体の構成要素材料のうちの1つの直接使用によって、医療デバイス中に組み込まれ得る。
【0166】
さらに別の態様では、可溶性キレート組成物は、半透過性デバイスであって、その周囲の水性環境において鉄または他の金属が浸透してデバイスに入り、そこでキレート組成物によって結合され、一方で、この可溶性キレート組成物自体は、そのデバイス内にそれが結合した任意の金属とともに保持されており、それによって、処置されるべき細胞の水環境で利用不能なデバイスに対して外側に金属(単数または複数)を残している、半透過性デバイス内での使用に関して提示される。
【0167】
病原性細胞における抗細胞剤に対する耐性の問題は、微生物であっても癌細胞であっても、重要な健康の問題であって、その重要性は増している。従って、別の態様は、微生物疾患および癌の化学療法に対するアプローチに関する。このアプローチは、微量の必須金属が細胞の活性、増殖および複製において果たす役割を利用するための手段を提供し、そして細胞の呼吸、増殖および修復における干渉は、標的された細胞の内側に浸透して細胞損傷を負わせる他の抗細胞剤の作用を補完して増強し得る。具体的には、本発明者らは、病原性細胞に浸透不能であり、抗細胞抗生物質剤の存在において、病原性細胞の細胞外環境から鉄を封鎖するキレート組成物の適用は、病原性の構成物質耐性の臨床的に単離されたStaphylococcus aureusまたはCandia albicans細胞が以前に有意な耐性を発達した抗細胞剤に対して、これらを、より感受性にさせることを確認した。この方法は、他の他の病原性の細菌の細胞、真菌の細胞または癌細胞にも、同様に寄生生物体にもあてはまる。
【0168】
さらに、これらを使用するための特定の組成物および方法は、腐敗または汚染微生物の制御に対してあてはまり、ここで鉄または他の金属の除去または金属イオン封鎖が、他の防腐的化合物に対する補助を提供する。
【0169】
従来の化学的保存料を種々の健康製品および消費財に加えて、これらを使用のために保存(防腐)する。このような製品の腐敗は、健康および安全性の問題を呈し得る。これらの製品は、その製品の水性組成物および腐敗微生物の増殖を可能にする栄養の内容物のせいで、製品に入り込んで増殖する生物体からの微生物の腐敗に感受性である。このような栄養としては、腐敗微生物の増殖に必要な微量必須金属が挙げられる。
【0170】
従来の化学的防腐剤としては、限定するものではないが、以下;プロピオン酸およびプロピオン酸塩類;ソルビン酸およびソルビン酸塩類;安息香酸および安息香酸塩類;二酢酸ナトリウム;乳酸;二酸化硫黄,亜硫酸塩;亜硝酸ナトリウム;塩化ナトリウム;アルデヒド含有または放出化合物、水銀含有化合物;抗酸化剤;界面活性剤、例えば、四級アンモニウム化合物および可溶性イオン錯化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸が挙げられる。腐敗微生物に必要な微量金属の一部を取り上げ、結果として利用できる微量金属の供給を減らし、1つ以上の従来の防腐剤に対する腐敗微生物の感受性を増大するキレート
組成物もまた提供される。
【0171】
従って、ある態様では、本発明は、1つ以上の(生物学的に)必須の金属の細胞取り込み(すなわち、細胞壁または細胞膜を通じる)を阻害(例えば、拒絶)および/または使用(細胞内)するための、(インビボおよび/またはインビトロ)金属抱き締め(loving)または結合(すなわち、金属(イオン)封鎖、金属(イオン)隔離(quarantining)または金属(イオン)カムフラージュ(camouflaging))組成物または物質(すなわち、金属キレート組成物または物質)に関し、ここで金属抱き締めまたは結合の組成物または物質は、水性媒体(例えば、水、果実防腐シロップ、血漿、栄養など)の中で可溶性(本明細書に記載のとおり)であり、このような金属抱き締めまたは結合の組成物または物質は、1500〜10ダルトン(例えば、10,000ダルトン,3,000,000ダルトン,5,000〜10,000ダルトン,150,000〜2,500,000ダルトンなど)の分子量を有する。
【0172】
この金属の抱き締めまたは結合の組成物または物質は、1つ以上の(適切なまたは所望の)金属結合リガンド(例えば、(公知−本明細書に援用される先行技術を参照のこと)有機キレート)基を含んでもよい。金属の抱き締めまたは結合(すなわち、封鎖、隔離(quarantining)またはカムフラージュ(camouflaging))組成物または物質は、例えば、(適切なまたは所望の)基質成分に対して共有結合されるか、または共有結合的に組み込まれている(例えば、そのモノマーセグメントとして)金属結合リガンド成分(部分または一部)を含んでもよい。この基質成分(例えば、公知のポリマー型基質)は、所望のまたは必要な分子量および溶解度(すなわち、必須または所望の溶解度を単独(すなわち金属なし)で、所望の場合または必要な場合、結合した金属(単数または複数)と会合した場合の両方で)を有する組成物または物質を(リガンド成分とともに)提供するのに十分な任意の所望のまたは必須の割合で存在し得る。金属結合リガンド部分(部分または成分)は、例えば、細胞の金属取り込み機構に対して1つ以上の必須金属を優先的に結合できる場合がある。鉄が、必須金属である場合、金属結合リガンド部分(部分または成分)は、例えば、1つ以上の(公知の)親鉄剤(シデロホア)またはキレート基または化合物(例えば、その内容全体が参照によって本明細書に援用される、本明細書で引用される特許で述べられた材料)によって提供されてもよい。
【0173】
本発明は、種々の態様によれば、Fe(または他の必須金属(単数または複数)イオン)を含有する水性媒体(例えば、水、果実防腐シロップ(fruit preservation syrup)、血漿、栄養媒体など)において、細胞または生物体に利用可能なFe(または他の必須金属(単数または複数))含量をその使用に関して、この培地が、この水性媒体に可溶の親鉄剤(シデロホア)(または金属抱き締めまたは結合)組成物と接触するという点で特徴付けられる0.1μM未満まで低下することによって、微生物増殖を阻害するための方法であって、この可溶性の親鉄剤(シデロホア)または金属抱き締めもしくは結合の組成物が、1500〜10ダルトンという分子量を有している、方法を提供する。
【0174】
(可溶性)キレーター物質は、本明細書に記載のその意図される目的を留意しながら、任意の適切なまたは有効な量で、すなわち、細胞増殖の所望のまたは必須の制御を提供し、または細胞活性に影響するような量で、処置すべき水性媒体に加えるかまたは組み込んでもよい。水性媒体に関連するキレーター物質の量は、例えば、処置される水系の種類(インビトロまたはインビボ)、キレーター物質によって結び付けられる鉄(および/または他の必須金属)の含有量、標的される細胞の種類(細菌、酵母、寄生生物または癌細胞)および所望の転帰(すなわち、これは、増殖を妨げるか、または特定の細胞活性に作用することである)に依存する。例えば、わずか25μg/mlという可溶性キレーターの添加が、抗細胞剤フルコナゾールに対してインビトロでのCandida albica
nsの感受性を増大(10倍を超えるまで)することが示された(実施例19に示されるとおり)。C.albicansの増殖を制御するためには(すなわち、増殖の制御が所望の転帰である場合、および抗細胞剤の添加と組み合わされない場合)、より高量の可溶性キレーターが必要があると予想されることを理解すべきである。従って、48時間の間のこの同じ酵母の増殖の完全な制御には、実施例18に示されるとおり、500μg/mlという可溶性キレーターの投薬量を必要とした。可溶性キレーターが機能すべきホストの部位(例えば、血中または膣液)で有効な濃度を達成するには、ヒトまたは他の動物に対する可溶性キレーターの投与は、十分な投与の投薬量を必要とすることが理解されるべきである。一般には、増殖の制御が所望される転帰である場合、および抗細胞剤なしで用いる場合、処置されるべき水性環境(その部位)に存在する鉄(および/または他の金属)濃度の量を上回って、過剰(例えば、2倍〜5倍過剰)の鉄(および/または他の必須金属)キレート能力を得るために、十分な可溶性キレーターを添加するか、または投与する。可溶性キレーターが抗細胞剤への細胞の耐性を低下する目的のために抗細胞剤と組み合わせて投与される場合、より小さい有効投薬量が予想されることが理解されるべきである。
【0175】
ヨウ素は、周知の抗菌剤であり、かつヨウ素溶液(チンキ剤)の形態で消毒剤として、またはポリビニルピロリドン(ポピドンヨード溶液)に結合されたヨウ素として用いられる。デンプンへのヨウ素の結合もまた周知である。ヨウ素の抗菌活性は、化学的に別個であり、本明細書に開示される金属キレート組成物の活性とは異なる。特定の金属キレート組成物、および、具体的には、ピロリドンまたはデンプンの構造的性状を含むものがまた、ヨウ素に結合し得、そしてヨウ素を保持し得、その結果、開示される得られたヨウ素含有の可溶性または不溶性のキレート組成物がその金属結合活性を保持し、またヨウ素関連抗菌活性を含んでいる(すなわち、その金属結合活性に加えて)ことが確認された。
【0176】
上記の物質(金属を取り上げることができる)の種々の成分は、その意図される用途の環境を留意しながら選択されるべきである;すなわち、この成分は、物質が、意図される用途の環境で許容できる方式で機能するように選択されるべきであることが当然ながら本明細書で理解される。例えば、本発明の薬剤または食物の適用の状況では、上記の物質の種々の成分は、薬学的に許容される物質(金属を取り上げることができる)、許容される食品添加物(例えば、防腐)物質(金属を取り上げることができる)などを提供するように選択されるべきである。本明細書に記載されるような物質は、例えば、化粧品(すなわち、防腐型の材料として)に関連する適用を有する場合があり、従って、この種類の適用の状況でアクセス可能でなければならない。
【0177】
本発明の特定の組成物は、ヒト、および魚を含めて他の動物の疾患、例としては、細菌、真菌および寄生生物(この疾患を処置するために用いられる従来の抗細胞剤に対して、それらによって獲得されるある程度の耐性を有するこれらの微生物の株を含んでいる)によって生じる微生物感染の疾患、ならびにヒト、および魚を含めて他の動物内で生じる癌を処置するために用いられ得ることが理解されるべきである。
【0178】
鉄がまた、ヒトおよび他の動物の全体的な炎症性応答において重要な役割を果たすという多数の証拠があり(De Domenicoら、2010)、鉄は、動物の身体の特定の細胞によって産生される炎症性応答の一部である反応性酸化機構の生成に関与し、この炎症は、例えば、感染もしくは癌の間、またはそれ自体に生じる。特定の組成物を用いて、炎症性細胞の活性を制御し、それによって、それ自体に生じ得る炎症を、すなわち、炎症性状態もしくは疾患として、またはヒトおよび魚を含めて他の動物の他の疾患(細菌、真菌および寄生生物によって生じる微生物感染を含む)に伴う炎症として、処置してもよいことを理解すべきである。
【0179】
医学的用途(例えば、抗生物質化合物)、または工業用途(例えば、クエン酸、またはフラビン類、例えば、Hsuら,2011を参照のこと)のための、微生物からの所望の天然産物としての特定の二次代謝物の産生は、鉄によって影響される細胞の活性であり得、例えば、その結果、それらの産生は、微生物に対する低い鉄利用性の条件下で増強され得るという証拠もある。このような遺伝子操作された遺伝子産物の産生を調節および増強するための手段を提供するために、鉄によって調節される公知の遺伝子オペロン内に、所望の産物についてさらなる新しい所望の遺伝子コードを置くことも可能性としては、有用である。ここでの潜在的な利点とは、二次代謝物の産生または鉄調節生成物が、低い鉄供給によって、または鉄離脱によって、(C、N、Sなどの十分な供給が所望の生成物への組み込みにやはり利用可能である条件下で)産生細胞による産生へ誘導され得るということである。本発明の組成物が、微生物中の二次的な代謝産物の活性を、それらの鉄の結合によって、制御するために用いられ得る(すなわち、このような二次代謝産物の活性が、産生微生物の環境で利用可能な鉄供給によって影響される場合)ことが理解されるべきである。
【0180】
「金属抱き締めまたは結合の組成物または物質」、またはその任意の誘導体という表現は、水性媒体に関して、水性環境中で、必須金属(単数または複数)に対する細胞アクセスを阻害(および/または拒絶)するように1つ以上の必須金属と結合する能力を有するキレート組成物または物質を指すことが本明細書では理解されるべきである。
【0181】
「必須金属」という言及は、増殖および/または維持に関して細胞によって必要とされる金属を指すことが本明細書では理解されるべきである。
【0182】
「物質の群」、「置換基の群」、特定の特徴(例えば、分子量、温度、濃度、時間など)の「範囲」などが言及される場合、本発明は、その中のなんであろうと部分的範囲または下位集団のありとあらゆる特定のメンバーおよび組み合わせに関し、本明細書に明らかに組み込む。従って、任意の特定の範囲または群とは、ある範囲または群のありとあらゆるメンバーを個々に、ならびにその中に包含されるありとあらゆる可能性のある部分的範囲または下位集団;ならびに同様に、その中の任意の部分的範囲または下位集団に対して;を指す簡略表現と理解されるべきである。したがって、例えば、
−炭素原子の数に関して、1〜10個の範囲の炭素原子という言及は、本明細書では、炭素原子のありとあらゆる個々の数、および部分的範囲、例えば、1炭素原子、3炭素原子、4〜6炭素原子などを組み込むものと理解されるべきである;
−1500ダルトンを超える分子量(例えば、平均分子量)に関して、本明細書では、(本明細書で言及される溶解度の要件の影響下にある)分子量は、広範囲にわたってもよい、例えば、5000ダルトンを超える分子量、1500ダルトンを超える分子量、1500〜10,000,000ダルトンという分子量、15,000〜10,000,000ダルトンという分子量、1500〜3,000,000ダルトンという分子量、1500〜2,000,000ダルトンという分子量、10,000ダルトンという分子量、80,000ダルトンという分子量、100,000ダルトンという分子量などということが理解されるべきである。
−反応時間に関しては、1分以上の時間とは、ありとあらゆる個々の時間、同様に、1分を超える部分的範囲、例えば、1分、3〜15分、1分〜20時間、1〜3時間、16時間、3時間〜20時間などが、本明細書に特異的に援用されているものとして理解されるべきである。
−他のパラメーター、例えば、濃度、要素などに関しても同様。
【0183】
従って、本明細書では、例えば、1〜10個の炭素原子を含んでいるアルキル基という言及は、オクチル、6〜10個の炭素原子の直鎖アルキル基(例えば、C6−10)、「1〜6個の炭素原子の直鎖アルキル基」、すなわち、例えば、メチル、エチル、プロピル
、ブチル、ペンチル、およびヘキシル;などを包含し、特異的に指すことが理解されるべきである。
【0184】
例えば、さらに、本明細書では、1〜10個の炭素原子を含んでいるアルキル基という言及は、「3〜6個の炭素原子の分岐したアルキル基」を包含して、特異的に指すこと;「3〜6個の炭素原子の分岐したアルキル基」という言及は、例えば、限定するものではないが、イソ−ブチル、tert−ブチル、2−ペンチル(すなわち、2−メチル−ブチル)、3−ペンチル(すなわち、3−メチル−ブチル;イソペンチル)、ネオペンチル、tert−ペンチル、などを包含すること;などが理解されるべきである。
【0185】
本明細書では、例えば、分類または小分類は本明細書において本質的に、どんなものであれ、ありとあらゆる可能性のある方式で定義されていることが具体的には、理解されるべきである。従って、例えば、任意の分類、小分類または個々に関する本明細書の定義は、正のおよび負のまたは排他的な定義の両方を包含する、すなわち、本明細書の定義は、任意のかつ全ての定義を組み込んでいることが理解されるべきであり、この定義は、特定の個々の化合物、分類または小分類を正として含んでいるとして、および/またはその特定の個々の化合物、分類または小分類または組み合わせを排除しているとして表現され得る;例えば、ある化合物の式の定義についての排他的定義は、以下のように読み取ってもよい:「ただし、RおよびRのうちの1つがメチルであり、他がHである場合は、Rは、2位置を占有しなくてもよい」。
【実施例】
【0186】
以下の非限定的な実施例は、本発明の種々の態様を例示するために提供されるが、決して本発明の範囲を限定する意図ではない。
【0187】
実施例1;キレート組成物の調製のために有用な1−アミノエチル−3−ヒドロキシ−2−メチル−4(1H)−ピリジノン(AHMP)キレーター中間体の合成。
このキレーター中間体の合成は、ほかのいずれかで記載されている(Fengら、1993)。この実施例に関しては以下の手順を使用した:
【0188】
1リットルのフラスコに以下を添加した:0.35モルの3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン、450mlのメタノール、0.4モルの塩化ベンジルおよび水50ml中の水酸化ナトリウム0.37モルの溶液。この混合物を、6時間還流させ、次いで室温で一晩撹拌した。次いで、バキュームを用いてメタノールをエバポレートして、その残渣を200mlの水と混合し、次いで3つの別々の100mlのアリコートの塩化メチレンを用いて抽出した。3つの塩化メチレン抽出物を、プールして、50mlの5%のNaOHを3回交換して、次いで50mlの水を3回交換して洗浄する。次いで、抽出物を、固体MgSOで乾燥した。MgSOを除くための濾過および溶媒のエバポレーションの後、76.6グラムの粗3−ベンジルオキシ−2−メチル−4−ピロンを回収した。次いで、この金属を、1リットルのフラスコ中で、500mlのエタノール、1.65モルのエチレンジアミンおよび2mlの水と混合して、室温で一晩撹拌した。この溶媒および過剰のエチレンジアミンを、減圧下で除去して、黄色−褐色の油状の液体を得て、これを400mlの水を用いて倍散して、65.5gの黄色の1−(2−アミノエチル)−3−ベンジルオキシ−2−メチル−4−(1H)−ピリジノンを得た。この生成物を500mlの6MのHClに溶解して、その溶液を、室温で一晩撹拌した。淡黄色の生成物の固体を、エバポレーション後に回収して真空中で乾燥した。これを500mlの6MのHCl中に再溶解して、室温で4日間撹拌して、再度乾燥するまでエバポレートした。この固体残渣を、約50mlのアセトンで洗浄して、粗生成物を得た。これは濾過することが困難であったので、150mlの4MのHClおよび70mlのエタノールを添加して、その混合物を、固体が溶解するまで再還流した。次いで、その生成物を、冷蔵庫での貯蔵によって
再結晶化して、アセトンで洗浄し、乾燥して秤量した。最終のAHMP生成物は黄色であった。
【0189】
実施例2;ヒドロキシエチルデンプンまたはデキストランと、AHMPによって提供される3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オン活性キレート基とを含んでいる可溶性キレート組成物の合成
可溶性のヒドロキシエチルデンプンまたはデキストランサンプルの10%(重量/容積)の水溶液を、0.1Mのメタ過ヨウ素酸ナトリウムを用いて別々に酸化して、ポリマー上に反応性のアルデヒド基を生成した。低分子量物質(<10,000ダルトンの材料)を透析により除去したあと、活性化された可溶性の多糖類を、AHMP、1−アミノエチル−3−ヒドロキシ−2−メチル−4(1H)−ピリジノン(実施例1で調製)の0.1M溶液と、中性からわずかにアルカリ性のpHで反応させた。次いで、ポリマー上で、キレート剤のアミノ基とアルデヒド基との間で形成されたシッフ塩基を、連結を安定化するために過剰のシアノ水素化ホウ素ナトリウムによって還元して、一方で、デンプンまたはデキストラン上の残りの未反応のアルデヒド基は、過剰の水素化ホウ素ナトリウムで還元した。この可溶性のキレートポリマー組成物の生成物を、水に対するVisking透析バッグ中での透析によって、48時間にわたって透析水を5回交換して精製した。用いた透析チューブの分子量カットオフサイズは、10,000ダルトンであって、この透析バッグ中に保持されている最終の可溶性キレート組成物の生成物は、≧10,000ダルトンという分子量を有した。得られたキレート組成物の鉄結合能力を、キレート組成物の試験部分への過剰の鉄−クエン酸塩溶液の添加によって確認した。試験した部分は赤く変わり、このことは、ポリマー中のキレーターピリジノン基に対する鉄の結合を示している。10,000ダルトン未満のサイズの材料を透析して除くこと以外の工程は、これらのサンプル調製には行わなかったことが理解されるべきである。さらに精錬された、すなわち、低い分子量(例えば、1500ダルトンを超える)生成物またはより小さい生成物のサイズ分布を得るためのさらなる工程を、限外濾過および/またはクロマトグラフィー精製のような、すなわち所定の分子量分布のより精錬された生成物を得ることに関して、従来公知の方法を用いて行ってもよいことに注意すべきである。最終のキレート組成物は、凍結乾燥によって得て、懸濁の水を除去して、この乾燥生成物は、使用の際の水に自由に溶けることが見出された。
【0190】
実施例3;キレート組成物の調製のために有用な3−ヒドロキシ−1−(β−メタクリルアミドエチル)−2−メチル−4(1H)−ピリジノン(MAHMP)キレートモノマーの合成。
このキレートモノマー中間体の合成は、以前にほかのどこかで記載されている(Fengら、1993)。本実施例には以下の手順を使用した。
【0191】
磁気スターラーおよび滴下漏斗を装着した250mlのフラスコに、実施例1で調製した12.1gのAHMPを、50mlの水に溶解した。その後に、0.18モルのトリエチルアミン(ET3N)および100mlのCHCN(アセトニトリル)を添加し、その混合物を氷浴上に置いた。次いで、塩化アクリロイル(CClO)、0.06モルを、1.5時間にわたって滴下し、一方で混合物を氷浴中に保持していた。この添加後、撹拌を室温で2時間続けた。次いで混合物を乾燥するまでエバポレートして、溶媒を除去し、その固体残渣を250mlの熱いアセトンで洗浄し、濾過して、その濾液をエバポレートして、約100mlのアセトンを除去し、次いで、これを冷蔵庫の中で一晩貯蔵した。トリエチル−塩化アンモニウムの最初の針状結晶を(もし形成されれば)、濾過によって除去して、濾液を冷蔵庫に戻し、固体を形成させた。固体を濾過して、10mlのクロロホルム(CHCl)で洗浄し、次いで、1:1のメタノール:エタノールに溶解して;全部で12mlを、このフラスコに80℃で水浴中で滴下した。最終のMAHMPは
、4℃での再結晶化によって、アルコール混合物から得た。
【0192】
実施例4;可溶性直鎖のポリビニルピロリドン高分子担体中に共重合された活性なピリジノンキレート剤を含んでいる可溶性キレート組成物の合成。
実施例3で調製した、MAHMP,3−ヒドロキシ−1−(β−メタクリルアミドエチル)−2−メチル−4(1H)−ピリジノン(2.5ミリモル,0.59g)を、機械的スターラーを備えた250mlのフラスコ中で50mlの水に50℃で溶解して、第一のモノマー(キレートモノマー)を得た。第二のモノマー,1−ビニル−2−ピロリドン(54ミリモル)を撹拌しながら添加して、その混合物を室温まで冷却した。硫酸アンモニウム(0.057g)を添加し、そのフラスコを窒素を用いて20分間フラッシュした後に、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.1ml)を添加して、重合化を、40℃で2時間行った。このコポリマー溶液を、Visking透析バッグ中に入れて、蒸留水に対して48時間、透析し、ここでは新鮮な水で5回交換した。用いられる特定の透析チューブの分子量カットオフサイズは、約10,000ダルトンであり、従って、透析バッグ中に保持される最終の生成物は、≧10,000ダルトンという分子量を有した。最終のキレート組成物の生成物を凍結乾燥によって得て、水に大量に溶けることを確認した。上記の手順によって行われるような3つの別々のサンプル調製を、X線回折を用いてそれらの平均分子量に関して試験した。分子量に関するこれらの試験は、西オーストラリア、パースのCommonwealth Scientific and Industrial Research Organisation (CSIRO)の実験室で個々に行った。可溶性キレート組成物の3つのサンプルは、以下の実測の分子量を有した:1.73×10ダルトン;3.32×10ダルトンおよび8.2×10ダルトン。これらの結果によって、可溶性キレート組成物を調製する合成手順の再現性、および精製される可溶性組成物の分子サイズの相対的な均一性が示される;この3つのトライアルで結果として、80,000〜330,000ダルトンという平均分子量の可溶性組成物が得られた。10,000ダルトン未満のサイズの材料を透析すること以外には、これらのサンプル調製では他に工程は行わなかったことが理解されるべきである。さらに精錬された、すなわち、より低い分子量またはより小さい生成物サイズの分布を、限外濾過および/またはクロマトグラフィー精製のような、すなわち、所定の所望の分子量のさらに精錬された生成物を得ることに関する、従来公知の方法を用いてとることができた。
【0193】
実施例5;架橋された不溶性のポリアクリルアミド高分子担体中に共重合された活性なキレート剤を含んでいる不溶性のキレート組成物の合成。
提供された手順は、ジメチル−アクリルアミドモノマー基が散在されている活性キレート基(3−ヒドロキシ−4(1H)−ピリジノン基官能性の)を含んでおり、2%のビス−アクリルアミド基との鎖架橋を有しているアクリルアミドポリマーを達成することであった。種々の程度のリガンド密度および架橋が、モノマーおよび架橋基の用いられる割合の適切な調節を通じて達成され得ることに注意のこと。実施例3で調製した、MAHMP,3−ヒドロキシ−1−(β−メタクリルアミドエチル)−2−メチル−4(1H)−ピリジノン(3.0ミリモル、0.715g)を、機械的スターラーを備えた250mlのフラスコ中の50mlの水に50℃で溶解した。N,N−ジメチル−アクリルアミド(54ミリモル、5.6ml)およびN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミド(3.0ミリモル、0.505g)を撹拌しながら添加して、その混合物を、室温まで冷却した。過硫酸アンモニウム(0.137g)、n−ヘキサン(100ml)、四塩化炭素(25ml)およびモノステアリン酸ソルビタン(100mg)を添加して、その混合物を、Nを用いて20分間フラッシュした。次いで、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.2ml)を添加し、重合化反応を、2時間行った。得られたポリマーを濾過して、水(150ml)、2−プロパノール(50ml)、およびアセトン(50ml)を用いて洗浄した。アセトンで洗浄した生成物を、真空オーブン中で60℃一晩乾燥さ
せた。この不溶性のキレート組成物によって、実施例6由来の可溶性バージョンとの比較試験を行った。
【0194】
実施例6;直鎖の可溶性ポリアクリルアミド高分子担体中に共重合された活性キレート剤を含んでいる可溶性キレート組成物の合成。
提供される手順は、実施例5のジメチル−アクリルアミドモノマー基が散在されており、ただし鎖架橋はない、3−ヒドロキシ−4(1H)−ピリジノン基の官能性の活性キレート基を含んでいる、可溶性アクリルアミドポリマーを得ることであった。実施例3のように調製したMAHMP,3−ヒドロキシ−1−(β−メタクリルアミドエチル)−2−メチル−4(1H)−ピリジノン(2.5ミリモル、0.59g)を、機械的スターラーを備える250mlのフラスコ中で50mlの水に50℃で溶解した。N,N−ジメチル−アクリルアミド(54ミリモル、5.6ml)を、撹拌しながら添加して、その混合物を室温まで冷却した。過硫酸アンモニウム(0.057g)を添加し、そのフラスコを、窒素を用いて20分間フラッシュして、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(0.1ml)を添加し、重合化は、40℃で2時間行った。このポリマー溶液を、Visking透析バッグ中に入れて、蒸留水に対して48時間透析し、ここでは新鮮な水で5回交換した。用いられる透析チューブの分子量カットオフサイズは、約10,000ダルトンであり、従って、透析バッグ中に保持される最終の生成物は、≧10,000ダルトンという分子量を有した。最終の生成物を凍結乾燥によって得て、水に大量に溶けることを確認した。10,000ダルトン未満のサイズの材料を透析すること以外には、これらのサンプル調製では他に工程は行わなかったことが理解されるべきである。さらに精錬された、すなわち、より低い分子量またはより小さい生成物サイズの分布を得るさらなる工程を、限外濾過および/またはクロマトグラフィー精製のような、すなわち、所定の所望の分子量のさらに精錬された生成物を得ることに関する、従来公知の方法を用いて行うことができた。
【0195】
このキレート組成物の可溶性バージョンは、ポリマー架橋の非存在のみが実施例5の組成物とは異なっており、従って、これらの比較試験は、この可溶性バージョン、対、不溶性のバージョンの特徴および利点を確立するために有用であった。
【0196】
実施例7;不溶性のおよび可溶性のキレート組成物の物理的特性の比較。
それぞれ、実施例5および実施例6で調製される、不溶性および可溶性のキレート組成物の物理的特性は、代表的なサンプル中で特徴付けられ、以下のような結果であった:
実施例5由来の不溶性キレート組成物:
(1)外観:黄色い球状ビーズ(金属負荷なし)、赤い球状ビーズ(鉄の負荷)
(2)粒子サイズ:直径129μm(無負荷、乾燥)、直径121μm(鉄負荷、乾燥)のビーズ
(3)水への溶解度:なし、粒子ビーズの不溶性懸濁液
(4)活性なキレート剤の密度:842μモル/キレート組成物1gあたり(鉄結合能力の試験から決定)。
実施例6由来の可溶性キレート組成物:
(1)外観:黄色い線維;麦わら色の溶液(鉄の添加なし);透明な赤い溶液(鉄の添加)
(2)分子量:X線回折によって決定して(4.32±0.2)×10ダルトン
(3)水への溶解度:36mg/ml
(4)活性なキレート剤の密度:862μモル/キレート組成物1gあたり(鉄結合能力の試験から決定)。
【0197】
これらの結果、上記の実施例由来の可溶性および不溶性の両方のキレート高分子組成物は、キレート化に関して同様の能力を有し、すなわち、ポリマー担体の単位質量あたりの
組み込まれたキレート活性の密度は、同様であるが、これらの組成物は、異なる物理的特性を有したことが示された。可溶性のバージョンは、約4,000,000ダルトンという分子量を有したが、水中では可溶性のままであった。可溶性のキレート組成物の他のサンプルは、80,000ダルトン程度の低い分子量を有した。
【0198】
実施例8;キレート組成物中のキレート基組み込みの安定性
実施例5で調製された、0.5gの不溶性のキレート組成物を、丸底の三つ首フラスコ中で、50mlのリン酸塩緩衝液(10mM、pH7.0)中に懸濁した。空気に開口したフラスコを、37℃で保持した温度の水浴中でrotavapor上で回転させた。種々の時点で、3.0mlの上清液を、取り出して、その上清の吸光度を282nmで測定した。活性剤の放出(最初に結合した総活性キレート剤の%)を、282nmでのその吸光係数に基づいて算出した。図2に示される結果によって、担持されたキレーター(carried−chelator)からのキレート基活性の極めてわずかな遊離しか示されず、このことは、担持されたキレーター組成物の高い程度の化学的安定性を示している。この化学的安定性試験は、キレート組成物の不溶性の性質、すなわち、可溶性キレート活性の遊離に関する試験によって容易になった。実施例6由来のキレート組成物の可溶性バージョンは、また同様に高い安定性を有しており、その金属結合リガンドを遊離しないことが予想される(なぜならこれが異なるのは鎖架橋に関してのみであり、すなわち、ポリマー鎖は、キレートモノマーの残りに対する金属結合性状の化学的連結と同様の化学的組成である)ことに注目すべきである。
【0199】
実施例9;可溶性のキレート組成物の鉄キレート動態
1.5mlの0.116%(重量/容積)溶液(10mMのリン酸塩緩衝液の中,pH7.0)からなる、実施例6で調製した、可溶性キレート組成物のサンプルを、2.5mlの0.3mMの鉄(III)クエン酸塩溶液(10mMのリン酸塩緩衝液,pH7.0に溶解)と混合して、フラスコ中で25℃で撹拌した。456nmでの溶液の吸光度を、キレート組成物と鉄溶液との最初の混合後に種々の時点で測定した。鉄−キレート組成物複合体の濃度の経時的な増大を、鉄複合体についての減衰係数の使用によって、456nmでの反応混合物の吸収から決定し、それによって、結合した鉄の濃度を決定した。図3のグラフに示される結果によって、2〜3分内のほぼ完全なFe取り込みをともなう、クエン酸塩から可溶性キレート組成物への急速な取り込みが示される。
【0200】
実施例10;不溶性のキレート組成物の鉄キレート動態の比較
この実施例は、実施例9と一緒になって、可溶性キレート組成物に対する不溶性キレート組成物についての金属結合の比較を示す。実施例5で調製した、不溶性キレート組成物の118.8mgのサンプルを、3.0mlの水を含む三つ首丸底フラスコ中で、0.5時間膨張させ、次いで97mlの0.3mMの鉄(III)クエン酸塩溶液が含有されるリン酸塩緩衝液(10mM、pH7.0)を添加した。そのフラスコを、25℃の水浴中でrotavapor上で、大気に開口して回転させた。鉄溶液の添加後種々の時点で、1.5mlの上清を、不溶性のキレート組成物の固体を除去せずに取り出して、溶液中に残っている鉄の濃度を測定した。次いで、不溶性キレート組成物上の鉄複合体の経時的な濃度を、差分によって算出した。図4にグラフにした結果によって、不溶性キレート組成物上への鉄の取り込みが示される。鉄結合の相対的な率を比較することによって(すなわち、実施例9対実施例10)、可溶性キレート組成物が、不溶性のキレート組成物よりもかなり急激に鉄に結合することが理解されよう(すなわち、可溶性組成物に関して10分未満で結合した約80%のFe(実施例9由来のデータのグラフより)、対、図4に示されるわずか3時間後での不溶性のバージョンによって結合される80%のFe)。この結果によって、本発明の可溶性キレート組成物によって提供される重要な予期されない利点、すなわち、不溶性のキレート組成物で獲得可能な結合率よりもかなり高いFe結合率が図示される。
【0201】
実施例11;ポリマーキレート組成物対非ポリマー遊離キレーターの鉄結合強度。
Fe結合強度の測定は、異なるキレート材料に関して測定および比較され得る。遊離キレーター、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オン(デフェリプロンとして公知)、デフェリプロンに対して機能的に類似のキレート基を保有している可溶性キレート組成物(実施例6で調製)、および、デフェリプロンに対して機能的に類似のキレート基を保有している不溶性キレート組成物(すなわち、実施例5で調製)の鉄結合に関する全体的なFe結合または会合の定数を、Fe(III)に関して決定し、その結果を、下の表に示す。別の広範に用いられる遊離のキレーターエチレンジアミン四酢酸すなわちEDTA(米国特許第6,165,484号に開示されるキレーターに特有)の会合定数をまた、比較の目的のために決定した。
【0202】
【表2】
【0203】
これらの結果によって、遊離のキレート基、特に米国特許第6,165,484号に開示のキレート基に比較して、本発明のキレート組成物の鉄に対する高い結合強度および改善された結合強度が示される。本発明のキレート組成物は、デフェリプロンを上回って100倍増大した鉄結合を示した。可溶性の遊離のキレーターEDTAに比較した本発明のキレート組成物の優位性はまた、これらの結果からも予測できる。
【0204】
実施例12;可溶性キレート組成物によるデフェロキサミンからの鉄の剥離。
実施例4のとおりに調製した20mlの可溶性キレート組成物、または実施例6のとおりに調製した可溶性組成物(両方ともFeに対して同様のキレート能力を有しており、リン酸緩衝化合物生理食塩水(PBS)、pH7に懸濁した)を、別々の透析バッグ中に入れて、20mlの2.0mMのデフェロキサミン(Novartis Ltd.から得られたDesferal)(1.3mMのFe(III)をPBS中に含有)に対して、24時間、室温で別々に透析した。外側のデフェロキサミン溶液からキレート組成物を含有する透析バッグへの鉄損失を測定した。
【0205】
実施例4由来の可溶性キレーターは、12時間のインキュベーション期間の後に、全体の鉄のうち71%を含んでおり、デフェロキサミンBが結合したのはのこりわずか29%であることが見出された。
【0206】
実施例6由来の可溶性キレーターは、インキュベーション期間の終わりまでにデフェロキサミンからFeのうち67%を取り除いたことが見出された。
【0207】
本実施例によって、ポリビニルピロリドンまたはポリアクリルアミド担体材料のいずれかの上で調製された可溶性のキレート組成物は、同様の鉄結合能力を有し、両方の可溶性組成物が、臨床的に用いられるデフェロキサミン(Desferal)キレーターから鉄
を除去できた、すなわち、Feに対する可溶性キレート組成物の強度は、デフェロキサミン(Desferal)によって提供される結合強度を超えたことが示される。
【0208】
実施例13;Staphylococcus aureusに対する可溶性および不溶性のキレート組成物の抗菌活性。
可溶性および不溶性のキレート組成物(それぞれ、実施例6および実施例5で調製した)を、インビトロで、それらがStaphylococcus aureus株Y67Nの増殖を抑制する能力について試験した。この株は、Professor Warren
Grubb,Curtin University,Perth Australiaの培養コレクションから得たもので、同所から入手可能である。種々の量のキレート組成物(鉄結合能力の量に基づいて添加に関して正規化した)(金属結合リガンド濃度当量)を、試験管中に含まれる無菌のトリプチカーゼダイズブロス培地のサンプルに添加した。活発に増殖する細菌培養物を用いて、サンプルに接種し、次いで、これらを24時間、37℃でインキュベートした。液体サンプル中の生きている細菌細胞を定量する方法である、細菌のコロニー形成単位(CFU)についてのプレートカウントを次に、図5のグラフに示されるの各々のサンプルについて決定した。その結果によって、増殖培地に対するキレート組成物の添加は、細菌細胞の増殖を、添加されたキレート組成物の量(添加された鉄結合キレーターリガンドの量として表現)に関して用量依存性を示す方式で妨害することが示される。この結果によってまた、可溶性キレート組成物、対、不溶性の組成物についてより高く、より顕著な活性が示され、すなわち、可溶性キレート組成物に加えられたFe結合能力がさらに少量でも、キレート組成物のより大量の類似の不溶性バージョンに関してよりも大きい細菌殺傷または細菌増殖の阻害が生じた。
【0209】
実施例14;Staphylococcus aureusの臨床単離株について、従来のキレーターデフェリプロンと比較した可溶性キレート組成物の抗菌活性。
ヒト感染から得られたStaphylococcus aureusの臨床単離株は、Warren Grubb,Curtin University,Perth Australiaの培養コレクションから得たもので、同所から入手可能である。オーストラリア、パースのRoyal Perth Hospitalの患者から得た臨床単離株は、世界のどこか他の場所で得られたこの細菌の他の臨床単離株と強力な類似性を有することが予想され得ることが注目されるべきである。なぜなら、Staphylococcus aureus中の抗生物質耐性特徴の遺伝的決定基は現在、一般に理解されているからである。従って、実施例14〜17に示されるのと同様の結果が、いずれか他で得られ、かつこれらの実施例に関して試験されたものと同様の抗生物質耐性パターンを有している他の臨床単離株で予想可能である。
【0210】
全部で9つの臨床株を、以下のような実施例6のとおりに調製したデフェリプロンまたは可溶性キレート組成物のいずれかに対するその株の感受性について試験した:株WBG525、WBG8860、WBG248、WBG8701、WBG7913X1876、WBG4530およびWBG541(デフェリプロンに対する感受性について)、ならびに株WBG525、WBG8860、WBG4330およびWBG1320(実施例6のとおりに調製した可溶性キレート組成物に対する感受性について)。従って、このシリーズの試験に関して、全部で7つの株を、デフェリプロンに対するそれらの株の感受性について試験し、そして4つの株を、可溶性キレート組成物に対するそれらの株の感受性について試験した。この株のうち2つ、WBG525およびWBG8860を、デフェリプロンおよび可溶性キレート組成物の両方に対するそれらの株の感受性について試験した。各々の株の4〜6個の個々の細菌コロニー(血液寒天培地上でのそれらの増殖から得られた)を、Mueller−Hintonブロス(MHB)中に回収して、それらが、0.5McFarland標準以上の光学密度に達するまで37℃でインキュベートした。その培養物を、MHBを用いて、0.5McFarland標準に達するまで希釈した。これ
らの標準液の希釈物(10−1)を、試験接種に用いた。血液寒天培地上で、次いでMHB中での細菌株の増殖は、細菌の接種が、試験の前に鉄に関して制限されていないことを保証し、むしろ、細菌の細胞が十分な内因性の鉄の供給を有することが、保証されたことが理解されるべきである。MHB媒体はまた、試験微生物の鉄要求を上回っており、増殖細胞の外部環境において豊富な利用可能なFeを供給することが公知である。
【0211】
デフェリプロンまたは可溶性キレート組成物のある範囲の希釈を、ある範囲の加えられた鉄キレート能力(Fe結合当量で測定して)が得られるように、試験管中でMHB中に調製した。試験管あたりの最終容積は、500μlであった。細菌接種物(適切なS.aureus株の10−1希釈の25μl)を各々の試験管に添加した。この試験管を、37℃で往復シェーカー上である角度で一晩インキュベートして、その増殖の結果を、追加のデフェリプロンも可溶性のキレート組成物の添加していない、コントロールサンプルに比較して、試験サンプルの分光光度計を用いて600nmの波長で測定した濁度に基づいて増殖のパーセンテージとしてスコア付けした。その結果を図6のグラフに示す。デフェリプロンは、増殖のごく軽度の阻害しか示さず、7mMのFe結合当量を超える高濃度で添加された場合でさえ、増殖の約15%阻害しか生じなかった。比較して、可溶性キレート組成物は、添加されたわずか2mMのFe結合当量(増殖の約25%阻害を生じる)で、かなり低い濃度で増殖の有意な阻害を生じた。これらの結果によって、3−ヒドロキシ−ピリジン(4)オンによって提供されるFe結合は、低分子量デフェリプロン(<700ダルトン)上で提供される場合、比較的効果がないが、可溶性キレート組成物上に存在する場合は、臨床的Staphylococcus aureus株の増殖の阻害に関して、かなり効果的であることが示される。本実施例について試験された可溶性キレート組成物は、80,000ダルトン〜300,000ダルトンという分子量を有した。この可溶性キレート組成物は、これらの細菌株の細胞中へ取り込まれるには、分子量が大きすぎるが、デフェリプロンは、細胞によって取り込まれることが予想される。
【0212】
実施例15;可溶性キレート組成物は、関連の不溶性組成物または関連の遊離のキレート分子のいずれよりも有効に抗細胞剤ストレプトマイシンに対するStaphylococcus aureusの臨床単離株の感受性を増大する。
本実施例に関して、ならびにまた実施例16および17に関しての抗生物質感受性試験は、わずかに改変している、抗生物質感受性の最小阻害濃度(MIC)決定のためのNCCLS(now Clinical and Laboratory Standards Institute)方法に従って行った。Staphylococcus aureus(S.aureus)の感受性のまたは抗生物質耐性の株を、血液寒天プレート上で、一晩37℃で増殖させた。各々の株の4〜6個の個々のコロニーを、ミューラーヒルトンブロス(MHB)中に回収して、それらが、0.5McFarland標準以上の光学密度に達するまで37℃でインキュベートした。その培養物を0.5McFarland標準に等しくなるまでMHBで希釈した。これらの標準液の希釈物(10−1)を接種に用いた。抗生物質耐性のStaphylococcus aureusの種々の株を、下の結果に示されるようにこれらの試験について用いた。血液寒天培地上で、次いでMHB中での細菌株の増殖は、接種が試験の前に鉄に関して制限されておらず、むしろ、細菌の細胞が十分な内因性の鉄の供給を有することを、保証したと理解すべきである。
【0213】
試験抗生物質のある範囲の2倍希釈物を、MHB中で調製した。最終の所望の濃度は、2.5〜1280μg/mlにおよんだ。実施例6もしくは実施例5で調製された、可溶性および不溶性のキレート組成物、または遊離の鉄キレート剤デフェリプロンを、抗生物質含有の試験管に、既知濃度の鉄結合能力(鉄結合当量と呼ぶ)で添加して、異なる組成物または遊離のキレーターの直接比較を可能にした。1チューブあたりの最終容積は、500μlであった。細菌接種物(適切なS.aureus株の10−1希釈の25μl)を各々の試験管に添加した。この試験管を、37℃で往復シェーカー上である角度で一晩
インキュベートして、その結果を、濁度に基づく増殖または増殖なし(濁度なし)としてスコア付けした。抗生物質の最小阻害濃度(MIC)は、増殖の結果から決定した。
【0214】
可溶性の遊離の臨床的なキレーターデフェリプロン、不溶性のキレート組成物(実施例5のとおりに調製)および可溶性キレート組成物(実施例6のとおりに調製)の存在下におけるストレプトマイシンに対する、Warren Grubb,Curtin University,Perth,Australiaの培養収集物から得られた株WBG525の感受性の比較の試験では、下の表に示される結果が得られた。
【0215】
【表3】
【0216】
これらの結果、コントロールの試験に示されるようなストレプトマイシンに対するこの臨床株の高い程度の耐性が示され、すなわち、640μg/mlのストレプトマイシンという濃度は、MIC濃度に達するには十分でなかった。臨床的に利用されるキレーターデフェリプロンは、7.4mMのFe結合当量で与えられた場合でさえ、ストレプトマイシンに対する細菌の感受性を増大するために有用ではなく、すなわち、増殖は、わずかに低下されるが、MICは到達されなかった。デフェリプロンとして添加された7.4mMの結合能は、7.4mMのFeまたは培地1mlあたり約0.4mgのFeを結合するのに必要なキレート能力の量に相当する。MHBは、約0.3μg/mlまたは約5μMという濃度で鉄を含むことが公知である。より高濃度での試験(表に示さない)によって、デフェリプロンは、15mMのFe結合当量でさえ、640μg/ml濃度のストレプトマイシンで試験した場合、やはり細菌細胞のわずかな増殖を可能にしたことが示された。実施例5で調製した不溶性のキレート組成物は、4.3mMのFe結合当量という濃度ではまた、ストレプトマイシンに対する細菌の感受性の増大には有効ではなかった。不溶性のキレート組成物に関してより高濃度での試験(結果の表には示さない)では、8.6mMのFe結合当量の添加は、MICを320μg/mlまで低下したことが示され、これによって、これは、遊離のキレーターデフェリプロンよりも有効であったことが示される。可溶性キレート組成物の添加は、ストレプトマイシンに対する細菌の感受性において劇的な増大をもたらした。可溶性キレート組成物のわずか2.2mMのFe結合当量の添加では、ストレプトマイシンについてMICをちょうど160μg/mlまで下げた。これらの結果、抗細胞剤に対して細菌の病原性細胞の感受性を増大することに関する、本発明の可溶性キレート組成物によって提供される予期せぬ、かつ劇的な改善が示される。
【0217】
実施例16;可溶性のキレート組成物は、種々の抗細胞抗生物質剤に対する臨床的に単離されたStaphylococcus aureusの感受性を増大する。
一連の試験を、種々の抗生物質抗細胞剤を用いて、実施例15のとおり設定した。臨床的に単離された株は、Warren Grubb,Curtin University,Perth,Australiaの培養コレクションから入手した。実施例6のとおりに調製した、種々の抗生物質についてMIC値に対する可溶性キレートポリマーを添加す
る効果を、添加されるFe結合当量の2つの濃度で、可溶性キレート組成物の添加なしでのMIC値と比較して試験して、下の表に示されるような結果を得た。
【0218】
【表4】
【0219】
これらの結果によって、可溶性キレート組成物が、種々の抗生物質抗細胞剤に対する種々の臨床的に単離された抗生物質耐性のStaphylococcus aureus株の感受性を増大したことが示される。同様に、示される可溶性キレート組成物の添加は、添加濃度が高いほど有効性を増大し、すなわち、効果は用量依存性であった。
【0220】
これらの上記の結果によって、抗生物質を含むキレート組成物を含むことによって、極めて耐性の病原性のStaphylococcus aureusを含んでいる、種々の細菌に関してある範囲の従来用いられる抗生物質の有効量を増大する能力が示される。
【0221】
希釈系列において隣接する試験管よりも100%多いかまたは少ない抗生物質を各々が含んでいる、一連の試験管中での、単なる顕微鏡的増殖の有無に基づいてスコア付されるため、この種類の試験は比較的粗く、かつ鋭敏ではないこともまた理解されるべきである。血液寒天培地上でのこの株の事前増殖はまた、保存的結果を提供し、従って、増殖条件は、試験される細菌細胞が、試験前に鉄に関して完全に満足されていることを保証する。脊椎動物宿主内での臨床状況では、抗生物質に遭遇する時、細菌が鉄制限環境にある可能性が高い(担持されたキレーター組成物の供給の効果を劇的に増大し得る状況)。鉄制限条件または最小鉄満足条件下での増殖、例えば、コントロールされた鉄含量を有する化学的に規定された培地上での増殖、対、鉄が豊富な血液寒天培地上でまたは過剰の鉄を含むMHB中で増殖された細菌で行った同様の一連の試験によって、キレート組成物の抗生物質との相乗効果に対する、細菌株の感受性のさらなる増強が示されると期待される。この態様は、極めて重要である。なぜなら、鉄は、微生物に対して、これらがヒトのような動物宿主で増殖している場合、極めて低濃度でのみ利用可能であることが現在周知であるからである。これに基づけば、抗生物質などの抗細胞剤に対する、臨床的な感染原因の微生物の感受性を増大する正の影響は、インビボではさらに顕著であることが予想され得る。
【0222】
実施例17;抗生物質抗細胞剤に対するStaphylococcus aureusの感受性に関する、可溶性キレート組成物の増強効果の鉄中和。
一連の抗生物質感受性試験を、実施例6で調製したような可溶性キレート組成物を利用する実施例16のように設定した。Warren Grubb,Curtin University,Perth,Australiaの培養コレクションから得られる、種々
の臨床的に単離されたStaphylococcus aureus株、および種々の抗生物質による別々の試験系列を使用したが、各々の系列について、供給されたキレート組成物の2倍のキレート能力を供給するのに十分な鉄の添加を含んでいるコントロール試験も含んだ。下に示す結果によって、可溶性のキレート組成物が、抗生物質耐性のStaphylococcus aureusについてペニシリン、テトラサイクリンおよびシプロフロキサシンに対する細菌の抗生物質耐性を低下すること、ならびにキレート組成物の増強効果が、鉄に関連すること(なぜなら、可溶性キレート組成物と共に鉄を添加することで、キレート組成物の増強効果を無効化されるからである)が示される。
a)ペニシリンでの株WBG8701:
ペニシリンによるこの株についてのMICは、640μg/mlであって、このことは、ペニシリンに対するその極めて高い耐性を示している。実施例6のとおりに調製された可溶性キレート組成物の4.4mMのFe結合当量の添加によって、MICは320μg/mlまで低下された。しかし、鉄負荷のキレート組成物は、MICを低下しなかった。
b)テトラサイクリンでの株WBG8516x541:
この株のテトラサイクリンに関するMICは、160μg/mlであって、このMICは、(a)についてと同様の可溶性キレート組成物の添加を通じて80μg/mlまで低下された。鉄飽和のキレート組成物の添加は、160μg/mlというMICを生じ、このことは、キレート組成物による増強が、可溶性キレート組成物の鉄結合能力に関連したことを示している。
【0223】
この種の試験は、得られた結果が、試験系列中で1つの試験管から次へ2倍異なる抗生物質濃度を各々が含んでいる、一連の試験管中での、単なる顕微鏡的増殖の有無に基づいてスコア付けされているため、比較的感受性が劣ることが実施例15および16に関してと同様ここでも注目されるべきである。同様に、標準のMICプロトコールは、増殖を生じない最低濃度のスコアリングを必要とする。これらの試験では、報告されたMICより下の濃度で、部分的な増殖の低下が観察された。この態様は、重要な意味を有する場合がある。なぜなら、抗生物質およびキレート組成物の両方のより低濃度でも部分的阻害が見られたことは、実際上、臨床的な有意性を有し得るからである。血液寒天培地上のこれらの細菌株の事前増殖でもまた、保守的な結果が得られ、こうした増殖条件は、試験される細菌細胞が、試験前に鉄に関して完全に満足されており、鉄が貯蔵された状態で試験に入ったであろうことが保証された。脊椎動物宿主内での臨床状況では、抗生物質に遭遇する時、細菌が鉄制限環境にある可能性が高い(キレート組成物の増強効果を劇的に増大し得る状況)。鉄制限条件または最小鉄満足条件下で、例えば、血液寒天培地およびMHBの代わりにコントロールされた鉄含量を有する化学的に規定された培地上で、増殖された細菌細胞で行った同様の一連の試験では、キレート組成物によって得られるような細菌株のさらに増強された感受性を示すことが予想される。
【0224】
実施例18;可溶性のキレート組成物によるCandida albicansの増殖の阻害。
Candida albicansは、ヒトで疾患を生じ得る真菌の酵母病原体である。この酵母は、実験室で、低いおよび高い鉄含有の培養培地でのその増殖について、ならびに実施例4のように調製された種々の濃度の可溶性キレート組成物の添加の効果について試験した。好気性増殖に適切であるが、無機の鉄成分の添加なしで作製される化学的に規定の培地を用いて、その残留の鉄含量のみを含む(すなわち、他の培地成分に存在する混入の鉄によって寄与されるような)、詳細に規定された培地を提供した。この培地であるGPPは、他のいずれかに記載されている(Dumitru,R.、J.M.Hornby、およびK.W.Nickerson.2004)。次いで、この培地を、4時間、室温で振盪しながら、実施例5のとおり調製した、不溶性のキレートのサンプルの2g/リットルと接触させ、次いで濾過して、抽出された培地から不溶性のキレート組成物を分けた。この手順によって、部分的にFeが除去(すなわち、低い残留濃度まで)されてい
る基本培地を提供した。この抽出された培地を、その鉄含量に関して測定し、<0.08μMのFeを含むことを見出した。この抽出された培地は、増殖に関して低い鉄条件に相当し、これを、抽出された培地であって、ただし0.5μMのFeまたは5.0μMのFeのいずれかを達成するようにFeを再添加された培地と比較した。試験された酵母株の供給源は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)の株ATCC10231であった。種々の濃度の可溶性のキレーター(試験した濃度の範囲は、0.02〜1mg/mlであった)が有無の両方の状況の3つの培地の種々のサンプル中の増殖の程度を、30℃のサンプルのインキュベーションの間に種々の時点で、600nmの波長で光学密度(OD)について分光光度の読み取りを用いて追跡し、続いて、Candida albicansの活発に増殖している細胞をそれらに接種した。
【0225】
下の表の結果によって、可溶性キレート組成物は、増殖培地の最初のFe含量が低いとき、3週間にわたって酵母の増殖を阻害したことが示される。増殖培地中で高いFeレベルでは、可溶性のキレーターによる阻害が低下された。これらの結果によって、酵母の増殖に利用可能なFeの供給を低減および制限することによる病原性酵母の増殖の阻害が示される。
【0226】
【表5】
【0227】
実施例19;可溶性キレート組成物は、抗細胞剤フルコナゾールに対するCandida albicansの感受性を増大する。
Candida albicans ATCC 10231、酵母細胞(実施例18においてのように、追加のFeを添加しなかった既定の培地で増殖された)を、ヒトでの真菌増殖および病原性を制御するために通常用いられるアゾール分類の抗生物質の原型としての抗細胞剤である、フルコナゾールに対するそれらの感受性について、およびフルコナゾールに加えて実施例4で調製したとおりの可溶性キレート組成物を用いて、同じ培地中で試験した。抗菌抗生物質のアゾールクラスの典型的なメンバーとしてのフルコナゾールであって、これは、ステロール合成を阻害することによって機能する。
【0228】
実施例15で利用されるような標準のNCCLS MIC手順を利用して、80%の増殖阻害をもたらすMIC濃度を、剤との種々の長さの接触(4日、10日、および42日)の後に決定した。下の表に示される結果によって、酵母は、可溶性キレーターの存在下で、可溶性キレーターが、フルコナゾールに対する感受性に対する用量依存性の改善を提供したとき、フルコナゾールに対してかなり感受性であったこと、およびFe−飽和可溶性キレーターのサンプルは、フルコナゾール感受性を変更しなかったので、その可溶性キレーター増強効果が、そのFe結合活性に起因したということ、が示される。ごく少量の可溶性キレート組成物をこれらの試験に添加し、この少量の可溶性キレーターの添加のみでは(すなわち、抗生物質を添加しない場合)、酵母の増殖に顕著な影響はなかったことに注目することが重要である。本実施例によって、本発明で開示された可溶性キレート組
成物のうちの1つによる、従来の抗真菌の抗生物質(フルコナゾール)の抗細胞活性の増強が示される。
【0229】
【表6】
【0230】
これらの結果、少量の可溶性キレート組成物の添加でさえ、抗細胞剤フルコナゾールに対する酵母の感受性を増大すること、およびキレート組成物の影響が、その鉄結合活性に直接関連していること、すなわち、可溶性キレート組成物と共にFeを添加することにより、その増強の影響が無効化されたことが示される。これらの結果、また、細胞の増殖制御と、細胞の活性制御との間の相違もまた示される。この試験について選択された少量の可溶性キレート組成物は、それ自体が増殖の阻害を生じるには不十分であったが、抗細胞剤フルコナゾールの作用に抵抗する酵母活性に影響するには十分であった。
【0231】
実施例20;水性製品からの過剰の鉄の第一の除去、それに続く可溶性キレート組成物による、Feの残りの部分のキレート化を通じた製品の微生物防腐の実証。
腐敗微生物の増殖に対して極めて感受性である水性媒体に対する可溶性キレート組成物の添加と組み合わせた、不溶性キレート組成物による鉄抽出の能力を評価するための腐敗試験を、以下のとおり設定した。0.5μMのFeを含有している実施例18について用いたGPP媒体に、未処置のコントロールを示すために、American Type Culture Collectionの株ATCC 20217として得た腐敗酵母Candida viniを接種した。図7のグラフでみることができるように、腐敗酵母は、抽出培地なしのコントロール中で急速に増殖した。GPP培地のサンプルはまた、実施例5のとおり調製した不溶性のキレート組成物で抽出された。不溶性のキレート組成物の5gのサンプルを、脱イオン水中で水和し、Buchner濾過装置上で脱イオン水中で2回洗浄し、濾紙(VW Corporation)の上に収集した。GPP完全培地の1リットルのサンプルを、20℃で2時間、200rpm(往復シェーカー)で振盪しながら、フラスコ中で、洗浄された不溶性のキレート組成物とバッチ接触させて、その含まれた鉄の部分的な除去を得た。抽出された培地を、濾紙上での不溶性キレート組成物の除去によって回収して、抽出された培地を、濾過滅菌して(0.22μmのMillipore Corporation)、非抽出媒体について行ったように、Candida
viniの接種によるチャレンジ試験に用いた。原子吸収分光光度計によって測定した抽出媒体中の残留Fe濃度は、<4ppbであった。
【0232】
抽出された培地で得られた結果によって、不溶性のキレート組成物は、GPPからFeを除去するために極めて有効であり、Fe含量を0.5μM(28ppb)から<0.08μM(4ppb)(この試験に利用された測定装置の下方検出限界)まで低下させたことが示される。この結果、Feをこの低レベルまで除去することで、酵母の増殖は、ほぼ
10時間まで遅らせられ、増殖の程度は、コントロールの非抽出媒体で得られたよりも実質的に少ないという点で、培地のある程度の防腐が得られることが示された。しかし、ある程度の増殖が最終的には生じ、そのように、防腐は改善されたが、抽出培地中では完全ではなかったことが理解される。これらの試験に添加された化学的な防腐剤は他にはなく、単に鉄の除去に起因し得るなんらかの防腐が観察されたことに注意のこと。実施例4で調製された可溶性キレート組成物の、不溶性組成物を用いて最初に抽出され培地への0.25mg/mlの濃度での添加は、腐敗性のCandida vini酵母の増殖を完全に防いだ。別の試験では、より低濃度の可溶性のキレート組成物がまた、この高い程度の防腐を提供するのに有効であったこと、および可溶性キレート組成物を飽和するためのFeの添加が、腐敗酵母を増殖させて、それによって達成された防腐を逆転させたことが示された。これらの結果によって、可溶性キレート組成物は、キレート組成物として腐敗酵母Candida viniによってアクセスできない形態でFeに結合できて、残りの少量の鉄が処理された培地中に存在するけれども、酵母は、可溶性キレート組成物がその鉄結合能力に関して飽和されない限り、増殖できなかったことが示される。本実施例は、不溶性キレート組成物を用いて、水性媒体からほとんどの鉄を最初に抽出すること、次いで、可溶性キレート組成物を添加して、媒体中の残りの鉄を腐敗微生物にとってアクセスできないようにすることによって微生物腐敗から防腐を達成する能力を示す。
【0233】
Fe除去で示された、増殖の遅れまたは増殖の減少によって、酵母細胞が鉄欠乏であることが示された。これに基づいて、および種々の他の実施例における他の支持する結果を考慮すると、Feを除去するか、またはFeを微生物細胞にとって利用しにくくすることに関連するこのような防腐処置は、任意の添加された化学的防腐剤に対する、腐敗酵母および他の微生物の感受性を増大する、すなわち、鉄の利用可能性の減少を組み合わせることで、他の化学的防腐剤の作用の有効性を増大することが予想される、ということが理解されるべきである。
【0234】
実施例21;従来用いられる防腐剤と組み合わせた可溶性キレート組成物の添加を通じた製品の防腐の実証。
追加の鉄の添加のない(すなわち、酵母に利用可能なわずかだが十分なFeは、他の添加された培地成分とともに存在することによって寄与された)、実施例18について規定の培地中で増殖される、酵母細胞、Candida albicans ATCC 10231を、試験のチャレンジ試験系列において防腐剤に対するその感受性について試験して、ここでは、最小阻害濃度(MIC)を、ソルビン酸カリウムおよびメチルパラベン(2つの広範に用いられる化学的保存料)について、防腐剤単独での試験において、および実施例4で調製された12.5または25μg/mlのいずれかの可溶性キレート組成物が防腐剤とともに含まれている、他の試験において、決定した。種々の試験についてのMIC値(増殖の80%阻害を達成する)は、30℃でのチャレンジインキュベーションの2日後および10日後に決定し、その結果を下の表に示す。これらの結果によって、本発明の可溶性キレート組成物の1つの存在下で利用した場合、これらの防腐剤について実質的に低下されたMIC(4−10Xまで減少)(すなわち、防腐剤の大きく増大した力価)が、実証される。可溶性キレート組成物のFeキレート活性を満足する(飽和する)ために十分なFe添加による、添加されたFeを用いる追加の試験によって、可溶性キレート組成物の存在下での増強された防腐剤の活性は、可溶性キレート組成物のFeキレート活性に直接起因することが示された。
【0235】
【表7】
【0236】
実施例22;微生物に対する鉄を制限すること、および微生物増殖を妨害することに関連する可溶性キレート組成物の分子量の重要性の実証。
Candida albicans ATCC 10231を、その感受性に関して試験した:医学的キレーターデフェリプロン(図8のグラフの#1)(Apotex Pharmaceuticalsの製品);本明細書の可溶性キレート組成物の調製のために用いられる前駆体化合物、例としては、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン(図8のグラフの#2)、実施例1由来のAHMP(図8のグラフの#3)、および実施例2由来のMAHMP(図8のグラフの#4)およびまた、実施例4由来の可溶性キレート組成物(図8のグラフ中の#5)。酵母を、鉄の追加することなしに(すなわち、酵母にとって利用可能なわずかだが十分なFeが、他の添加された培地成分とともに存在して与えられた)、実施例18についてのように規定の培地中で増殖させた。試験のキレート材料を添加された規定の培地中での酵母の増殖を、30℃で84時間のインキュベーションおよび増殖の後に、キレート材料をなんら入れられなかったコントロールのサンプルと比較した。図8のグラフの結果、キレート化合物の群および対応する可溶性キレート組成物(全てがヒドロキシピリジノン金属配位性状を保有する)は、酵母に対して鉄を制限するそれらの能力に関して異なることが示される。具体的には、化合物#1、#2、#3および#4は、実質的に増殖を制限せず、これらの各々は、1500ダルトン未満の分子サイズ、すなわち、これらの分子が、酵母細胞によって内部移行できるように十分に低い分子サイズのものである。酵母によって内部移行されるこれらのキレーターは、酵母細胞に対する鉄供給を制限できなかった。対照的に、実施例4のような可溶性キレート組成物(これは、これらの同じキレート化学的前駆体から、すなわち、具体的には、前駆体#2、#3および#4から合成される)、低濃度でさえ酵母の増殖を阻害し、この可溶性のキレート組成物は、10,000ダルトンを超える分子サイズのものであった。従って、低分子量キレーター、例えば、デフェリプロンおよび同様の化合物は、増殖を可能にしたが、デフェリプロンと同様の官能基を含んでおり、ただし分子量が1500ダルトンを超える可溶性のキレート組成物は、増殖を制限した(試験された種々の化合物が各々、それらのピリジノン官能基を通じて鉄を結合できたにもかかわらず)。
【0237】
従って、これらの結果によって、微生物細胞によって容易に内部移行できないように、または鉄担持分子のレセプターによって細胞の外部表面でその鉄にアクセスできないように、そして可溶性キレート組成物が、鉄に結合し、かつこの鉄を、細胞(これらの細胞は、細胞による使用のためにその細胞の内側に鉄を必要とする)に鉄が容易に利用されない
酵母細胞の外部環境に保持するように、十分に大きい分子サイズの可溶性キレート組成物を有するという重要性および有用性が示される。
【0238】
実施例22B;コポリマーの可溶性キレート組成物中への活性なFe結合モノマーMAHMPの組み込みの実証。
実施例3で調製したモノマーMAHMP、実施例4で調製した可溶性キレート組成物、および実施例6で調製した可溶性キレート組成物の吸収スペクトルを、図9のグラフに示される200〜500nmのそれらの吸収スペクトルに関して比較した。サンプルを水に溶解して、水を含んでいる参照細胞とともにスキャンした。その結果、MAHMPは、紫外範囲で吸収し、最大は約275nmであって、300nmを超えれば吸収はわずかであることが示される。MAHMPと同様の吸収が、ピロリドン(すなわち、実施例4のように)またはアクリルアミド(すなわち、実施例6のように)のいずれかでできたコポリマーの場合に、キレート組成物ポリマー内で検出された。
【0239】
可溶性キレート組成物内のキレートピリジノン活性基の鉄結合活性は、400〜650nmの吸収の図10のグラフに示されるとおり、水に溶解されたサンプルと鉄とを反応することによって示された。MAHMPへの鉄の添加は、赤い発色団を生じ、ここで最大の吸収は、約460nmであって、同様の発色団がまた、MAHMPとビニル−ピロリドン(実施例4由来の可溶性キレート組成物)およびジメチル−アクリルアミド(実施例6の可溶性キレート組成物)のいずれかとのコポリマーとして作製された可溶性キレート組成物中で(すなわち、それらが鉄と反応した後)観察された。
【0240】
実施例23;可溶性キレート組成物の分子量性状の実証。
可溶性キレート組成物のサンプルは、合成が実施例4に記載の量および容積の2倍を用いて行ったこと以外は、実施例4にあるとおり調製した。新しく調製したサンプルの容積の半分を、8,000ダルトン(Da)の分子量カットオフを有する透析チューブ中で、4リットルの新鮮な脱イオン水に対して2回(各々の工程について24時間)透析した。次いで、この透析チューブ内の可溶性キレート組成物を回収して、試験用の乾燥サンプルを凍結乾燥によって得た。新しく調製した可溶性のキレート組成物のもう半分の方は透析せず、ただし、これを、可溶性キレート組成物分子の分子量に関して、各々が異なる分子量排除サイズの連続系列の限外濾過膜を通過させることによって、サイズ分画し、ここでは追加で1リットルの水を、各々の濾過段階に用いて、特定の限外濾過サイズの各々を通過するほとんどの分子を洗浄し、ここでは窒素ガス圧を用いて、濾過を補助した。以下の分子量サイズの範囲の材料に相当する以下の別々の画分を得た:>100kDa;10kDa−100kDaおよび1kDa−10kDa(kDa=1000Da)。これらの別々の画分の各々を、回収して、凍結乾燥し、試験用の乾燥サンプルを得た。
【0241】
各々のサイズ画分の相対的な重量による収量は、下の表に示されるような3つのサイズ画分の合わせた重量の関数として決定した:
【0242】
【表8】
【0243】
これらの収量の結果、本実施例の調製物についての可溶性キレート組成物のほとんどが、1kDaより大きく最大100kDaまでの分子サイズであって、この粒子サンプルのうち100kDaを超えるものはわずかであったことが示された。
【0244】
上記のサイズ画分の各々の吸収スペクトル、ならびに直接透析によって調製されたサンプル(すなわち、>8kDaのサイズの可溶性キレーター)、およびまたMAHMPの参照サンプル(すなわち、実施例3で調製されるキレートモノマー前駆体)を、実施例22に記載されるように、それらと鉄との反応後に比較した。これらの結果を、図11のグラフに示す(ここでkDa=kD)。
【0245】
図11のグラフの吸収スペクトルによって、これらの種々の分子サイズ画分の一般的に類似の(すなわち、コポリマー内の鉄−結合キレート基のそれらの内容物の相対量に関して)化学組成が示される。キレートモノマー基MAHMP単独、および可溶性キレート組成物内にある場合のこの基は、それに鉄が結合された時は、発色団を示し、この最大吸収は、約460nmであった。
【0246】
これらの種々の画分の相対的な抗菌阻害活性に関する試験の結果は、酵母Candida albicansに対して0.25mg/mlの濃度で各々試験し、かつ実施例22に記載のものと同様に試験して、図12のグラフに示す。100kDaを超える画分は、この抗菌試験について材料の回収が不十分であることに相当し、従って、これは試験しなかった。これらの結果は、1kDaより大きいサイズであって、最大で100kDaのサイズである場合、可溶性キレート組成物の同様の活性を示す。可溶性キレート組成物の3つの分子サイズ画分全てが、強力な抗菌活性を提供し、これは14日というインキュベーション期間の後でさえ生じるコントロールの増殖の5%未満であった。500Da未満の分子サイズでありおよび可溶性キレート組成物に対する前駆体モノマーであるMAHMPは、実施例21の結果でも示されたように、この酵母の増殖を容易に支持することが見出された。
【0247】
従って、この実施例によって、本発明の可溶性キレート組成物を調製するために用いられるMAHMP前駆体のような低分子量可溶性キレーター、すなわち、約1500Da未満のサイズの低分子量キレーターおよび特に、500Da未満のサイズのこのMAHMPの例は、それらがCandida albicansの増殖を支持するという点で抗菌性ではないことが示される。約1000Daを超える分子サイズを有する本発明の可溶性キレート組成物は、この酵母に阻害性であった。
【0248】
試験された可溶性キレート組成物のサイズの下限は、名目上は1000Daであり、すなわち、利用される限外濾過膜の言及される下限排除を考えれば、このフィルターで得られる実際に濾過された可溶性キレーター画分で優勢なのは、1500Daを実質的に超える分子量サイズのものである可能性が高く、すなわち、1500Daを十分超える平均分子量を有するポリマー分子サイズの正規分布が予期される。MAHMPは、約236Daという分子量を有し、ビニルピロリドンは、約111Daという分子量を有する。これらの2つのモノマーの群からできた可溶性キレート組成物は、1500Daを超える分子量を有し、これは、両モノマーのコポリマーまたは各々の材料の約4モノマー単位からなるMAHMPモノマーのホモポリマーを有する。
【0249】
実施例24;ピロリドンおよび/またはポリピロリドンをその化学構造中に含んでいる可溶性キレート組成物のFeキレート活性と組み合わせたヨウ素の抗菌活性の実証。
追加で鉄を加えることなく(すなわち、酵母にとって利用可能なわずかだが十分なFeが、他の添加された培地成分とともに存在して与えられた)、実施例18の規定の培地で
増殖させた酵母細胞Candida albicans ATCC 10231を、0.5μMまたは5.0μMのいずれかの鉄を添加した新鮮な培地に接種して、実施例4由来の可溶性キレート組成物に対するそれらの感受性について試験した(ここでこのキレート組成物は、以下のとおり、ヨウ素でさらに処理した)。
【0250】
実施例4のとおりに調製された可溶性キレート組成物のサンプルを、水の中に20mg/mlで溶解し、そしてヨウ素溶液(水の中にKI)を添加して、組成物上に10%(w/w)ヨウ素の潜在的な負荷を達成した。ヨウ素の添加後、可溶性キレーター/ヨウ素の溶液を、12時間、脱イオン水に対して透析して(8,000MWカットオフの透析チューブ)、次いで透析された組成物を回収して、その抗菌活性を、ヨウ素で処理していない可溶性キレート組成物のサンプルと比較した。この実施例に関しては、透析を行って、利用可能なヨウ素のかなりの部分が溶液中で遊離のヨウ素ではなく、むしろ可溶性キレート組成物の性状に結合した残留ヨウ素であったことを保証した。サンプルを、それらの抗菌活性について、低Feを添加して増殖した酵母(図13のグラフA)および高Feを添加して増殖した酵母(図13のグラフB)と比較した。
【0251】
図13のグラフAおよびBの結果によって、低いFe条件下では、可溶性キレーターおよびヨウ素と結合した可溶性キレーターの両方とも、未処理のコントロール(キレート組成物の添加なし)と比較して抗菌性であったことが示される。高Feを添加した場合(すなわち、可溶性キレート組成物のFeキレート抗菌活性を克服するために十分なFeを添加)、ヨウ素添加なしの可溶性キレート組成物は、過剰のFeの存在に起因して活性が少なく、ただし、ヨウ素を含んでいる可溶性キレート組成物は、やはりその抗菌活性を保持したままである。この比較によって、可溶性キレート組成物に結合された、ヨウ素の別の抗菌活性が示される。従って、ヨウ素を含んでいる可溶性のキレート組成物は、2つの方式の抗菌活性を有した;1つは、酵母増殖を妨げるその鉄封鎖活性に関し、もう1つは、酵母に対するヨウ素抗真菌作用に関する(ヨウ素は、公知の抗菌作用および非金属関連の作用をそれ自体に有する)。
【0252】
実施例25;可溶性キレート組成物の血液適合性。
【0253】
これらの試験は、標準の臨床的な実験手順を用いて行った。実施例4で調製した、可溶性キレート組成物の3つの別々のサンプルを、ヒト血漿サンプルに対して、0.25mg/mlの濃度で添加した。プロトロンビン時間および部分トロンボプラスチン時間を、確立された臨床試験手順を用いて、コントロールの血漿サンプルと比較して、臨床血液実験室で測定した。3つ全ての可溶性のキレート組成物サンプルおよびコントロールの血漿が、1.2分というプロトロンビン時間を生じ(国際標準比(International
Normalized Ratio);INR)、一方で部分トロンボプラスチン時間は、可溶性のキレート組成物によってわずかに延長された(平均51.8 vs.32.9 PTT)。可溶性キレート組成物は、血小板凝集に対して影響がないことが観察された。これらの結果によって、可溶性キレート組成物は、血液適合性について能力を有し、従って、ヒトおよび他の動物宿主に対する全身的投与のための用途を有することが示される。
【0254】
実施例26;AHMPおよびMAHMPの合成および特徴付け。
AHMPおよびMAHMPは、それぞれ、実施例1および3に詳細な手順に従って合成したが、ただし下に詳細に説明するように収率および純度を増大するためにわずかに改変して合成した。全体的な合成スキームは図14でわかる。
【0255】
A 3−(ベンジルオキシ)−2−メチル−4H−ピラン−4−オンの合成:
4つ首のフラスコに室温で、20Lまで、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン(
1Kg,7.93モル、1当量)、続いてメタノール(10.2L,10.2容積)を充填した。次いで、塩化ベンジル(1.36L、11.9モル、1.5当量)を、付加ロートを用いて滴下して充填した。この次に、水酸化ナトリウムの溶液(333.3g、8.33モル、1.05当量、1.12Lの水に溶解)を添加して、淡黄色の透明溶液を得た。この溶液を、75〜80℃で6時間還流し、次いでRTで一晩撹拌した。反応の進行は、TLCによってモニターした。一般には、反応は、一晩撹拌後に完了した。
【0256】
一旦、反応が完了すれば、その溶媒を、減圧下でエバポレートして、得られた黄色がかったオレンジ色の油状物を4.5Lの水と混合し、塩化メチレン(DCM)(3×2.5L)で抽出した。DCM抽出物を組み合わせて、それぞれ、5%のNaOH溶液(3×1.2L)および水(3×1.2L)を用いて洗浄した。この合わせたNaOH洗浄物を、再度、DCM(1.5L)で抽出した。有機画分を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮し、黄色がかったオレンジ色の油状物を得た。
【0257】
収率:1.8Kg(105%粗)。
B 1−(2−アミノエチル)−3−ベンジルオキシ−2−メチル−4(1H)−ピリジノン)の合成:3−(ベンジルオキシ)−2−メチル−4H−ピラン−4−オン(1.3Kg,6.01モル、1当量、前の工程からの粗材料)を、4つ首のフラスコに20Lまで充填し、次いでエタノール(8.5L,6.5容積)を添加して、透明な溶液を得た。次いで、エチレンジアミン(1.8L,27.95モル、4.65当量)および水(34mL,0.03容積)を次に導入した。この溶液をRTで一晩撹拌した。反応の進行は、TLCによってモニターした。一般には、この反応は、一晩撹拌した後に完了した。
【0258】
反応が完了した後、溶媒および過剰のエチレンジアミンを、65℃で真空下で除去して、黄色がかった褐色の油状物を得た。得られた油状物を、水(7L)と混合して、DCM(3×3L)で抽出した。その有機画分を組み合わせ、濃縮して、黄色がかった褐色油状物を得た。
【0259】
注記:小規模の合成の際は、DCMでの抽出の前の水との最終混合で、固体が生じた。このプロトコールを大規模にした場合、材料は、凝固せず、従って、DCMで抽出して、濃縮した。
【0260】
収率:1.175Kg(76%粗)。
図15に示す、高圧液体クロマトグラフィーの分析結果によって、AHMPは、>95%を超える純度を有することが示された。
【0261】
C 3−ヒドロキシ−1−(β−メタクリルアミドエチル)−2−メチル−4(1H)−ピリジノン(MAHMP)の合成:
2Lのフラスコに、AHMP(100g,0.488モル、1当量)を、続いて水(413mL,4.13容積)を添加して、透明な溶液を得た。その後、トリエチルアミン(204mL,1.46モル、3当量)およびアセトニトリル(826mL,8.26容積)を添加して、得られた溶液を、氷浴に入れて、0℃で撹拌した。次いで、メタクリロイルクロリド(47.46mL,0.488モル、1当量)を、0〜5℃に保持された反応混合物に滴下漏斗を用いて1.5時間にわたって滴下した。次いで、この反応質量を、RT(室温)にして、3時間撹拌した。反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターした。
【0262】
反応(3h)の完了後、溶媒を、減圧下で除去して、黄色い固体を得た。次いで、この固体をアセトン(2L)で洗浄して、濾過した。一旦、濾過が完了すれば、追加の固体は、最初に透明な濾液から分離した。従って、材料を再度濾過した。次いで、濾液をエバポ
レートして、約800mLのアセトンを除去して、0〜5℃で18時間冷蔵庫中に保持して、その後に、形成された固体を濾過によって回収して、淡黄色の固体(76g)を得た。次いで、これをアセトン(190mL)を用いて4時間撹拌して、濾過して、MAHMP(50g)を、オフホワイトの固体として得た。
【0263】
注記:上記の全体的プロセスを行った後、NMR分析では時に、いくつかのバッチでは不純物としてトリエチルアミン塩酸塩の存在が示された。これは、クロロホルム中でスラリーにすること(2.5V,3h)続いて濾過によって除去された。
【0264】
収率:50g(43.4%)。
【0265】
図16で示される、高圧液体クロマトグラフィーの分析の結果によって、MAHMPは98%を超える純度を有することが示された。
【0266】
実施例27;可溶性の直鎖のポリビニルピロリドン高分子担体中で共重合された活性なピリジノンキレート剤を含んでいる可溶性キレート組成物の合成最適化。
実施例4に記載された可溶性ポリマーキレート組成物の合成条件を、図17に示され、下の表に記載されるように、金属キレートモノマーMAHMPの一定量を保持したままで、重合化反応物濃縮物の割合および重合化反応物の量を変化することによって試験した。参照標準としてMAHMPを用いる薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて、各々の試験で得られた生成物画分中の未処理のMAHMPについて試験した。
【0267】
【表9】
【0268】
上記の試験結果によって、利用可能なMAHMPのバルクをさらに完全に利用するために、反応物の量を調節できた(すなわち、これを可溶性のポリマー生成物中に組み込むことによって)ことが示された。TLCでは生成物サンプル中で未反応のMAHMPを検出できなかったことで、未反応のMAHMPの量が低いことが示された。
【0269】
実施例28;可溶性の直鎖のポリビニルピロリドン高分子担体中に共重合された活性なピリジノンキレート剤を含んでいる可溶性のキレート組成物の分子量分布の比較
脱イオン水中に溶解された約6mgの可溶性のポリマー材料のサンプルを、Sepharose CL−6B(Aldrich Chemical Company)の2.5cm×48cmの充填カラムを通じて脱イオン水を用いる上向き流によって別々にクロマトグラフィーにかけて、約300mlの水を用いるサンプルの溶出の間に、各々約4.5mlの画分を収集した。個々の画分を、280nmの吸収材料の含量に関して、および450nmでの吸収について、0.01mlの0.18MのFeSO/0.54Mのクエン酸ナトリウム溶液の添加(画分中の材料中のMAHMP含量に起因する鉄結合活性を検出するために添加)の後に測定した。以下のサンプルを比較した:実施例4のとおりに調製し、約8kDaという名目上のサイズ排除の膜による透析を行った可溶性ポリマー;実施例27試験5のとおりに調製したサンプルの一部の凍結乾燥後に得られた可溶性ポリマー、および実施例27試験5で得られたサンプルの一部のトルエンを用いる共沸水除去によって調製されたサンプル(両方とも約8kDaの名目上のサイズ排除の膜で透析が行われた)。Sepharose CL−6Bカラムは、2MDの71kDaおよび12kDaという平均分子量の3つの異なる直鎖デキストラン標準(Sigma/Aldrich)を用いて別々に較正し、ここでカラム画分におけるこれらの検出は、炭水化物の検出のためのフェノール−硫酸方法を用い、またMAHMPのサンプルは、実施例26のとおりに調製した。
【0270】
可溶性ポリマーサンプルの溶出プロフィールおよび相対分子量(既知のデキストランサンプルおよびMAHMPに比較することによって決定される)を、図18に示す。サンプル1は、実施例4の手順により、約8kDaという名目上のサイズ排除の膜による透析を行って得られたものであった。サンプル2は、凍結乾燥によって実施例27の試験5で得られたものであって、サンプル3は、実施例27の試験5における共沸乾燥で得られたものであった。
【0271】
これらの結果によれば、得られた可溶性ポリマーは、8kDa〜71kDaの各々の分子サイズ(分子量)の材料のバルクで同様の分子サイズ分布であったことが示される。これらのサンプルのいずれにも2MD(ほぼSepharoseカラムの排除限界であって、このサイズ以上の材料は、分離せず、カラムの空隙容積中に溶出する)以上のサイズの材料はない。実施例4の材料について用いられた水性サイズ分離クロマトグラフィー対X線回折によるサンプルの分子量分析によって、いくらか低い分子量が示された。後者は、より正確である(溶液中で水和されたポリマーについて決定されている)ことが期待される。分子サイズの下限は、正確に決定することが困難であるが、透析を、8kDaという名目上のサイズ排除特徴の膜で行ったならば、得られた可溶性ポリマー材料のバルクは、分子量1500Daよりも大きいと結論できよう。
【0272】
実施例29;可溶性の直鎖のポリビニルピロリドン高分子担体中で共重合された活性なピリジノンキレート剤を含んでいる可溶性キレート組成物についての合成条件最適化。
可溶性ポリマーのサンプルを、実施例4に記載のとおり調製し、未処理の重合化画分を、以下のとおり分離した。Sephadex G25(GE Healthcare Sciences)を含んでいる、リンス/排出された、事前充填のPD10脱塩分画カラムに2.5mlのサンプルを加えて、浸透可能にさせた。次いで、3.5mlの水の添加によってサンプルを溶出させて、空隙容量の画分材料を得て、溶出したサンプル画分をガラスの試験管へ収集した。引き続き、さらに3.5mlの水の添加およびこの溶出された画分の収集によって、空隙容量画分よりも大きい画分を得た。これらの脱塩カラムは、空隙容量画分中で10kDa以上の材料をより低分子量の材料(第二の10kDa以下の画分で溶出する)から分離することが報告されている。従って、第一の画分中の可溶性のポリマー材料は、未反応のMAHMPおよび他の試薬から分けられる。この空隙容量画分の
うち0.1mlの小サンプルを、0.9mlの水で希釈し、次いで0.02mlの0.18MのFeSO/0.54Mのクエン酸ナトリウムを添加して、MAHMPによってポリマー材料に寄与される(すなわち、ポリマー中に組み込まれる)Fe結合活性と反応させた。このサンプルのこのような2つのサンプルの450nmでの平均吸光度を決定して、この吸光度の値を、同様に調製された(ただし重合化条件の変更から生じた)サンプルとの比較のための参照のコントロール(100%)に相当するとみなした。変化された合成条件としては、温度(50℃対コントロールの40℃)、ならびに重合化試薬である過硫酸アンモニウムおよびテトラメチルエチレンジアミンの量が挙げられた。これらの試験の結果を、図19のグラフに示す。これらの結果は、重合化温度を上昇することによって、ならびに特に、過硫酸塩およびテトラメチルエチレンジアミン重合化反応物の濃度を増大することによって、可溶性ポリビニルピロリドンポリマーへのMAHMPの相対的な組み込みを増大することが可能であったことを示した。
【0273】
実施例30;可溶性の直鎖のポリアクリルアミド高分子担体鎖中で共重合された活性なピリジノンキレート剤を含んでいる可溶性キレート組成物のための合成条件最適化。
可溶性ポリマーのサンプルを、実施例6に記載のとおり調製し、未処理の重合化された画分を以下のとおりわけた。2.5mlのサンプルを、Sephadex G25(GE
Healthcare Sciences)を含んでいる、リンス/排出された、事前充填のPD10脱塩分画カラムに加えて、浸透可能にさせた。次いで、3.5mlの水の添加によってサンプルを溶出させて、空隙容量の画分材料を得て、溶出したサンプル画分をガラスの試験管へ収集した。引き続き、さらに3.5mlの水の添加、およびこの溶出された画分の収集によって、より大きい空隙容量画分が得られた。これらの脱塩カラムは、空隙容量画分中で10kDa以上の材料をより低分子量材料(第二の10kDa以下の画分で溶出する)から分離することが報告されている。従って、第一の画分中の可溶性のポリマー材料は、未反応のMAHMPおよび他の試薬から分けられる。この空隙容量画分のうち0.1mlの小サンプルを、0.9mlの水で希釈し、次いで0.02mlの0.18MのFeSO/0.54Mのクエン酸ナトリウムを添加して、MAHMPによってポリマー材料に与えられる(すなわち、ポリマー中に組み込まれる)Fe結合活性と反応させた。このサンプルのこのような2つのサンプルの450nmでの平均吸光度を決定して、この吸光度の値を、同様に調製された(ただし重合化条件の変更から生じた)サンプルとの比較のための参照のコントロール(100%)に相当するとみなした。変化された合成条件としては、温度(50℃対コントロールの40℃)、ならびに重合化試薬である過硫酸アンモニウムおよびテトラメチルエチレンジアミンの量(例えば、コントロールで用いられる量の50%、またはコントロールで用いられる量の2×)が挙げられた。この可溶性ポリマーの重合化は、ポリビニルピロリドンで調製された同様の材料(すなわち、実施例29で調製されたものなど)について見出されたよりもかなり急速であった。通気サンプルの試験には、空気でのフラッシュ対他の試験サンプルについて行われたような窒素ガスでの通常のフラッシュを含んでいた。重合化の開始の時点での反応混合物の温度はさらに重要であり、重合化試薬である過硫酸塩およびTEMEDを添加する時の最初の温度が20℃を超えると、混合物のゲル化、または極めて粘性のポリマー材料の形成をもたらす場合が多いことが見出された。このことは、十分に高い分子量の場合には、もはや水溶性ではない極めて高分子量のポリマーへの急速な重合化が起こることを示した。TEMED添加の前の少なくとも20℃への試薬溶液の最初の冷却、重合化の間の混合物の有効な温度制御、およびTEMEDのより緩徐な添加(例えば、全量を添加するまで各々5分間隔で漸増的に総TEMEDのうちわずか10%のみが添加される)によって、この可溶性ポリマーのさらに制御された重合化が得られた。重合化の間に試薬および温度の量を変化する結果は、PD10分離の空隙容量画分における材料のFe結合活性に基づく、ポリマーに組み込まれたMAHMPの量に影響し、これらの試験の結果を図20のグラフに示す。
【0274】
図21にグラフ化された結果は、透析による分離なし、またはPD10脱塩カラムを用いた、重合化された反応混合物の相対的なサイズ分布を示す。すなわち、重合化後の原料の重合化反応混合物のサンプルを、Sepharose CL−6Bのカラムに加えて、水で溶出して、分析用に種々の溶出画分を得た。これらの結果、より高温で重合化を行った場合、より高分子量の材料へのMAHMPの組み込み量の増大が示される。約100mlで溶出する材料は、Sepharose(カラム空隙容量)のサイズ分離の上限に近いほぼ2MDaという極めて高い分子量のポリマー材料に相当するが、約200mlまたはそれより後で溶出する材料は、かなり低い分子量の材料に相当する。未反応のMAHMPは、最後に、すなわち、最高の溶出容積で溶出するであろう。
【0275】
実施例31;可溶性の直鎖のポリビニルピロリドン高分子担体中で共重合された活性なピリジノンキレート剤、対、可溶性の直鎖のポリアクリルアミド高分子担体鎖中で共重合された活性なピリジノンキレート剤を含んでいる、可溶性キレート組成物の分子サイズ(分子量)の比較。
実施例29および実施例30から得られる未処理の重合化反応混合物のサンプルを、8kDaという名目上の排除限界を有する透析チューブ膜を用いて、水に対して透析し、透析膜に保持される8kDaを超える材料を、分子量サイズ分布またはそれらの可溶性のポリマー材料と比較した。サンプルを、Sepharose CL−6Bのカラムに加え、約300mlの水で溶出した。約4.5mlという収集された画分を、0.01mlの0.18MのFeSO/0.54Mクエン酸ナトリウムで処理して、MAHMPピリジノンキレート剤の存在を検出し、それらの吸光度を、450nmで測定した。図22の結果は、実施例29で調製した(TEMEDのコントロール量の2倍を、40℃での重合化で利用した)可溶性の直鎖のポリビニルピロリドン高分子担体中で共重合された活性なピリジノンキレート剤から構成された可溶性ポリマーのサイズ分布を、実施例30で調製した(重合化を50℃で行った)可溶性の直鎖のポリビニルピロリドン高分子担体鎖中で共重合された活性なピリジノンキレート剤から構成された可溶性ポリマーに対して、比較した。
【0276】
これらの結果を、実施例27〜実施例30の結果と一緒にすれば、すなわち、適切な担体材料の選択によって、および重合化条件の制御によって、得られる可溶性ポリマーキレート組成物の相対的な分子サイズ分布を調製することが可能である(すなわち、ある範囲の所望の分子サイズ/重量を達成するように、例えば、ポリビニルピロリドン高分子担体鎖またはポリアクリルアミド高分子担体鎖で作製するなど)ことが示される。例えば、ヒトでの可溶性ポリマー材料の全身的な使用は、すなわち、腎臓および尿路における除去によって身体から排出されるのを可能にするように、比較的低い分子サイズ、例えば、30kDa未満の使用に利点があるが、ヒトでの局所適用、例えば、眼または他の外部部位へは、身体の全身的様相へ容易に吸収されない高分子量の材料の使用が有益である場合がある。
【0277】
実施例32;サイズ排除クロマトグラフィー分離による可溶性ポリマー組成物の精製。
実施例4で調製した未処理の重合化反応生成物の混合物を処理して、以下のような未反応のMAHMPおよび重合化試薬から構成される低分子量画分から分離して、所望の高分子量画分を回収した。重合化混合物の2.5mlのサンプルを、Sephadex G−25の排液されたカラム(PD10分離カラム,GE Healthcare)に加えて、カラムに浸透させた。高分子量成分に相当する、溶出された材料の第一の画分(PD10 V)を、3.5mlの脱イオン水を加えることによって得て、溶出された材料を単一の試験管に収集した。低分子量成分に相当する、第二の溶出された画分(>PD10 V)を、さらに3.5mlの水を加えることによって別々に得て、第二の画分を別の試験管に収集した。2つの画分のサンプルを、Sepharose C1−6Bのカラムに適用し、300mlの水で溶出させることによって分析して、それらの含まれる材料の相
対的なサイズ分布を明らかにし、ここで溶出された画分は、280nm(未処理)、および450nm(0.01mlの0.18MのFeSO/0.54Mクエン酸ナトリウムの添加後)の両方の吸収について分析した。未処理の重合混合物および8kDaという名目上の排除限界を有する透析チューブを用いる透析後の重合化混合物のサンプルもまた、クロマトグラフィーにかけて、比較のために分析した。この精製のための結果は、図23に示す。これらの結果によって、所望の高い方の分子量の可溶性ポリマーキレーターを、低い方の分子量の残留反応生成物から、Sephadex G−25を用いるサイズ排除分離クロマトグラフィーによって分離することが可能であり、この分離によって、透析分離によって得られるものと同様の分離および精製が得られることが示される。例えば、Sephadex G−25でのカラム分離による所望のポリマーキレーターの分離精製および回収は、使用のために大量の材料を得るための大規模化に関して有利である。
【0278】
実施例33;可溶性の直鎖のポリビニルピロリドン高分子担体中に共重合された活性なピリジノンキレート剤を含んでいる可溶性キレート組成物の鉄結合能力
実施例4の方法によって、または実施例27試験5の方法によって得られた0.5mgの可溶性ポリマーのサンプル(水の中)を、一連の別々の試験管に入れて、ここに種々の量のFeSO(3×モル過剰のクエン酸ナトリウムに含有される)を添加し、全てを水で最終的に同じ容積にした。この試験管を混合して、各々のサンプルの吸光度を450nmで測定した。その結果を図24にグラフで示しており、ここでは、添加される鉄の量に対する吸光度を、各々のポリマーサンプルについてプロットする。同じキレートポリマーの試験シリーズ中の各々の試験管は、同じ潜在的な総鉄結合能力を有する同じ量の組成物を含んだ。従って、最大吸収値(その後に、追加の鉄なしでは吸光度の増大は生じなかった)によって、キレート組成物の鉄結合能力を飽和するために必要な鉄の添加の量が示された。これらの結果から、可溶性キレーターの両方のサンプルの最大Fe結合能力は、同様であり、両方ともキレートポリマー1mgあたり約2μモルまたは約10%(w/w)であった。両方の可溶性キレート組成物とも、図18に示されるように約12kDaの平均分子量を有することに基づいて、この組成物の特異的結合能は、可溶性組成物の1μモルあたり約24,000μモルであった。
【0279】
この結果は、鉄結合防御タンパク質ラクトフェリンと比較可能であり、ここでは、80kDa/モルという分子量を有するラクトフェリンの各モルが、1モル当たり2原子のFeのみを結合する。従って、可溶性キレート組成物は、かなり大きいFe容量、すなわち、ラクトフェリンよりも何桁も大きいFe容量を有した。
【0280】
実施例34;可溶性キレート組成物は、抗真菌剤ナイスタチンに対するCandida
albicansの感受性を増大する。
実施例18および実施例19のように追加のFeなしで規定の培地で増殖した酵母細胞Candida albicans ATCC 10231を、ナイスタチン(ヒトで真菌増殖および病原性を制御するために一般に用いられるポリエン系抗生物質の分類の原型の抗真菌剤)、およびナイスタチンに加えて可溶性キレート組成物(実施例4で調製)に対するそれらの感受性について、同じ培地中で試験した。ポリエンの分類の抗真菌剤の典型であるナイスタチンは、その抗真菌活性の機構の一部として膜損傷を生じる。
【0281】
実施例15で利用した標準のNCCLS MIC手順を利用して、80%の増殖阻害をもたらすMIC濃度を、その薬剤との異なる長さの接触(4日、10日および21日)後に決定した。下の表に示す結果によって、この酵母が、可溶性キレーターの存在下にあった場合、ナイスタチンに対してかなり感受性であって、この可溶性キレーターは、ナイスタチンに対する酵母の感受性に対して実質的な改善をもたらしたことが示された。これらの試験では、ごく少量の可溶性キレート組成物が添加され、この少量の可溶性キレーターの添加だけ(すなわち、ナイスタチンを添加しない場合)では、酵母の増殖に顕著な影響
はなかったことに注目することが重要である。本実施例によって、本発明で開示される可溶性キレート組成物の1つによる従来の抗真菌の抗生物質ナイスタチンの抗細胞活性の増強が示される。
【0282】
【表10】
【0283】
これらの結果によって、本発明の少量の可溶性キレート組成物の添加でさえ、抗細胞性の抗生物質剤ナイスタチンに対する酵母の感受性を増大することが示される。
【0284】
実施例35;可溶性キレート組成物は、抗細胞剤フルオロシトシンに対する細胞の感受性を増大する
フルオロシトシンは、真菌細胞および癌細胞を含めて種々の真核生物細胞に対して抗細胞活性を有するピリミジン類似体の薬物である。これは、真核生物細胞内に取り込まれて活性型に変換されるプロドラッグであり、その細胞内で核酸合成を妨害し、そのようなものとして抗癌(代謝拮抗)薬のグループの代表である。本発明の可溶性キレート組成物がその抗細胞活性を増強する能力を、酵母細胞を典型的な代表的な真核生物試験細胞系として用いて、試験した。
【0285】
実施例18および実施例19のようなFeの添加なしの規定の培地で増殖した酵母細胞Candida albicans ATCC 10231を、同じ培地中で、5−フルオロシトシン(ヒトでの真菌および癌細胞増殖を制御するために一般に用いられるピリジン類似体の分類の原型例として)およびフルオロシトシンに加えて可溶性のキレート組成物(実施例4に調製)に対するそれらの感受性に関して試験した。
【0286】
実施例15で利用される標準のNCCLS MIC手順を利用して、80%の増殖阻害をもたらすMIC濃度を、その薬剤との異なる長さの接触(4日、10日および21日)後に決定した。下の表に示す結果によって、この酵母が、可溶性キレーターの存在下にあった場合、フルオロシトシンに対してかなり感受性であったことが示され、この可溶性キレーターは、フルオロシトシンに対する酵母の感受性に対して実質的な改善をもたらした。これらの試験では、ごく少量の可溶性キレート組成物が添加され、この少量の可溶性キレーターの添加だけ(すなわち、フルオロシトシンを添加しない場合)では、酵母の増殖に顕著な影響はなかったことに注目することが重要である。本実施例によって、本発明で開示される可溶性キレート組成物の1つによる従来の抗真菌の抗細胞活性の増強が示される。
【0287】
【表11】
【0288】
実施例36;従来用いられる保存料(防腐剤)であるソルベートと組み合わせた半透過性デバイス内の可溶性キレート組成物の添加による製品の防腐の実証。
追加の鉄の添加なし(すなわち、酵母にとって利用可能なわずかだが十分なFeが、他の添加された培地成分とともに存在して与えられた)で、例えば実施例18の規定の培地で増殖させた酵母細胞Candida albicans ATCC 10231を、同じ培地(ここへソルベートを0.025mg/mlで添加した)を用いて振盪フラスコ培養中でチャレンジ増殖試験において、保存料ソルベートに対するその感受性について試験した。1つのこのような培養物中には、コントロールとして培地だけが存在した。第二に、ソルベートが、培地中に0.025mg/mlで存在し、そして第三の培地では、ソルベートは、0.025mg/mlで、実施例4で調製した0.3mgの可溶性キレート組成物とともに含まれた。このキレーターは、培養培地に直接加えられるのではなく、培養培地内の透析膜内に提供され、その結果透析膜デバイスの外面のみが、培養培地のバルクと接触され、キレーターは膜バッグ内にある。この透析膜は、可溶性キレーターを調製するために用いた同じ種類であり、従って、ここでのその使用によって、添加されたキレーターは、半透過性膜、すなわち透析チューブ内から、培養培地と接触するように、膜デバイス内に保持されることが保証された。従って、キレーターは酵母細胞と直接の物理的な接触ではないが、なんらかの鉄またはソルベートまたは他の低分子量培地構成要素または低分子量酵母細胞生成物は、試験環境において、半透過性デバイスの内外に拡散し得る。第四の試験では、同様の透析バッグ内に0.3mg可溶性キレーターを添加したが、ソルベートは培地には添加しなかった。全ての4つの試験培養物に酵母を接種して、増殖を、120時間の試験期間にわたって600nmでの光学密度測定によって試験培地中で間隔を空けてモニターした。これらの試験の結果を、図25のグラフに示す。これらの結果によって、ソルベートのみでは酵母増殖の遅延および緩徐化だけだが、ソルベートとともに半透過性デバイス中にキレーターがあれば、増殖を完全に妨げたことが示される。キレーターは、半透過性デバイス内で単独で提供されれば、増殖を実質的に遅らせるが、この試験では、キレーターのみでは最終的には増殖が生じた。
【0289】
実施例37;半透過性デバイス内の可溶性キレート組成物の添加による抗真菌剤フルコナゾールの活性の増強の実証。
追加の鉄の添加なし(すなわち、酵母にとって利用可能なわずかだが十分なFeが、他の添加された培地成分とともに存在して与えられた)で、例えば実施例18の規定の培地で増殖させた酵母細胞Candida albicans ATCC 10231を、同じ培地(ここへフルコナゾールを0.083μg/mlで添加した)を用いて振盪フラスコ培養中でチャレンジ増殖試験において、抗真菌抗生物質剤フルコナゾールに対するその感受性について試験した。1つのこのような培養物中には、コントロールとして培地だけが存在した。第二に、フルコナゾールが、培地中に0.083μg/mlで存在し、そして第三の培地では、フルコナゾールは、0.083μg/mlで、実施例4で調製した0.3mgの可溶性キレート組成物とともに含まれた。このキレーターは、培養培地に直接
加えられるのではなく、培養培地内の透析膜内に提供され、その結果透析膜デバイスの外面のみが、培養培地のバルクと接触され、キレーターは膜バッグ内である。この透析膜は、可溶性キレーターを調製するために用いた同じ種類であり、従って、ここでのその使用によって、添加されたキレーターは、半透過性膜、すなわち透析チューブ内から、培養培地と接触するように、膜デバイス内に保持されることが保証された。従って、キレーターは酵母細胞と直接の物理的な接触ではないが、なんらかの鉄またはソルベートまたは他の低分子量の培地構成要素または低分子量の酵母細胞代謝生成物は、試験環境において、半透過性デバイスの内外に拡散し得る。第四の試験では、同様の透析バッグ内の0.3mg可溶性キレーターを添加したが、フルコナゾールは培地には添加しなかった。全ての4つの試験培養物に酵母を接種して、増殖を、120時間の試験期間にわたって600nmでの光学密度測定によって試験培地中で間隔を空けてモニターした。これらの試験の結果を、図26のグラフに示す。これらの結果によって、フルコナゾールのみでは酵母増殖の遅延および部分的な制限だけだが、フルコナゾールとともに半透過性デバイス中にキレーターがあれば、増殖を完全に妨げたことが示される。キレーターは、半透過性デバイス内で単独で提供されれば、増殖を実質的に遅らせるが、この試験では、キレーターのみでは最終的には増殖が生じた。
【0290】
実施例38;鉄除去によって微生物増殖を制限する能力の実証、および微生物増殖のための鉄供給の用量依存性の確立。
鉄を、化学的に規定された細胞栄養培養培地であるRPMI−1640培養培地(Sigma Chemical Company)から選択的に除去した。この培地を、実施例5のように調製した不溶性のキレートを含む2g/リットルの液体培地と、室温で4時間振盪しながら接触させ、続いて、濾過して、処理した培地から不溶性のキレート組成物を分けた。この手順によって、Feが部分的に除去された(すなわち、極めて低い残留濃度まで)基本培地を得た、抽出された培地を、基本の培養培地として用いるために濾過滅菌して、ここに既知量のFeを再添加した。鉄を濃縮溶液として添加して、培地中で所望の最終濃度を達成して、鉄溶液は、FeSOから作成し、ここでは3M過剰のクエン酸ナトリウムが含有される溶液を用いて、全ての鉄がFe−クエン酸塩複合体として存在するようにして、その安定性および溶解度を確保した。処理した培地をその鉄含量に関して測定し、他の生物学的に重要な金属および元素は、高解像度のプラズマ発光分析によって、未処理の培地についての分析と比較した。下の表のデータによって、この培地からのFe除去に関する比較的高い特異性が示される。Mg、Ca、Pなどのような微生物細胞栄養に必要な主な鉄および金属は、不溶性キレート組成物処理によって除去されなかった。鉄とより密接に化学的に関連するが、細胞栄養としては鉄ほど重要ではないいくつかの微量金属がまた、不溶性のキレート組成物によって部分的に除去され、そしてこれらの金属としては、Mn、CoおよびMoが挙げられた。処理の結果としてNiおよびBaのような特定の元素にみられた濃度上昇は、処理工程の間の汚染元素導入のせいである可能性が高い。このような汚染物の導入は、不溶性組成物および濾過材料などのより広範な予備浄化の洗浄を通じて回避できよう。
【0291】
【表12】
【0292】
実施例13〜実施例19で試験されるものに添加するために選択された、代表的な細菌(グラム陽性およびグラム陰性の両方の種類)および真菌(酵母)を、基本培地中での増殖について試験して、この基本培地には鉄を添加した。試験微生物としては、Pseudomonas aeruginosa株PA01、Escherichia coli ATCC#25922、Staphylococcus aureus ATCC#29213およびSaccharomyces cerevisiaeDL1が含まれた。図27のグラフに示す結果によって、鉄含量の低下したRPMI培地(残留のFe濃度は約0.01μMのFe)でのこれらの試験微生物の増殖の大きな低下または欠失が示される。3つの細菌種は、ちょうど0.01μMというFe濃度を有する処理された培地中では有意な程度まで増殖できなかったが、増殖の能力は、Fe添加によって用量依存性の方式で培地中で修復された。試験した3つの細菌株のうち、Pseudomonas aeruginosaは、より高いFe必要性を有するようであって、1.4μMの添加によって完全な増殖が修復された(より高用量(グラフには示さない)でも同様の結果が得られた)。Staphylococcus aureusは、最小のFe必要性を有すると思われ、ちょうど0.09μMで完全な増殖が得られた。酵母Saccharomyces
cerevisiaeは、抽出されたRPMI中でわずかに増殖し、完全な増殖能力は、0.09μMのFeの添加によって修復された。
【0293】
実施例39;微生物の増殖に対する本発明の可溶性キレート組成物および従来の低分子キレーターの影響。
実施例4および実施例6で調製された可溶性キレート組成物、ならびに商業的に臨床上用いられている低分子量(<1500Da)キレーターであるデスフェラル(Novartis Pharmaceutical Company)およびデフェリプロン(Apotex Pharmaceutical Company)を、実施例38のように処理したRPMI培地であって、ただしここにFeを、部分的なFe制限条件下で細菌の増殖を許容した既知濃度まで再添加した(すなわち、ヒトまたは他の動物中でのこれらの細菌による感染の間に利用可能な低Fe環境供給を刺激するように)RPMI培地中で、代表的な病原性細菌種に対するそれらのMICについて試験した。MIC試験は、実施例15に記載のものと同様の方式で行い、ただし、試験の系列は、マルチウェルのマイクロタイタープレートで行い、各々のウェルでは別の処理試験を行った。
【0294】
下の表の結果によって、本発明の可溶性キレーターが、3つの細菌病原体の全てに対して、試験した両方のFeレベルで阻害性であったことが示され、ここで試験したFe濃度が高いほどMIC値はわずかに増大し、このことは、この阻害が、試験中のFe量に関連していたことを示している。表中で≦として示されるMIC値については、これらは、試験した最低濃度で完全な阻害を示した。表中で>として示されるMIC値については、これらは、試験した最高濃度で阻害を示さなかった。臨床的に用いられたキレーターは、Pseudomonas aeruginosaの場合は阻害性ではなく、試験した最高濃度で(デスフェラルに関しては300μg/mlおよびデフェリプロンに関しては100μg/ml)阻害は観察されなかった。Staphylococcus aureusは、デスフェラルによって阻害されず、本発明の可溶性組成物についてよりも少ない程度までデフェリプロンによって阻害された。逆に、Escherichia coliは、デフェリプロンによっては阻害されないが、デスフェラルによっては実質的に阻害された。これらの結果によって、細胞の外部環境においてFeをしっかりと封鎖し、標的されている細胞によってそれらのFeについて取り込まれることもなく、表面アクセス可能でもない、本発明のキレート組成物による、感染の間の宿主中に存在するような低Fe環境で獲得可能な増殖の一般的な阻害が示される。この結果は、低分子量(<1500Da)キレーター(標的されている細胞中へ取り込まれ得るか、または処理されている細胞の表面でそれらのFeについてアクセス可能である)で観察される均一な感受性の欠如および感受性の可変性とは、これらの従来のキレーターの低い分子量および/またはこのような低分子量キレーターのFe封鎖に関する低い有効性に起因して、正反対である。
【0295】
【表13】
【0296】
実施例40;栄養的鉄供給が、従来利用される抗生物質に対する病原性微生物の感受性に影響することの実証。
代表的な病原性細菌(グラム陽性およびグラム陰性の両方の種類)を、正常なRPMI培地(その典型的な0.11μMのFe含量を有する)中で、およびRPMI培地(実施例38のように本発明の不溶性キレート組成物のうちの1つで処理されており、次にここにFeを再添加して、ヒトまたは他の動物の感染の間の鉄制限環境において典型的な比較的低い既知のFe添加を行う)の両方において、従来利用される抗生物質剤に対するそれらの感受性について試験した。試験微生物としては、Pseudomonas aeruginosa株PA01、Escherichia coli ATCC#25922、およびStaphylococcus aureus ATCC#29213が含まれた。下の表に示される結果によって、各々の細菌が、未処理のRPMI培地中におけるより高いFe含量に対して、より低いFe含量の培地中で試験した抗生物質の少なくともいくつかについては、感受性の増大(MICの低下)を示したことが示される。表中で≦として示されるMIC値については、これらは、試験した最低濃度で完全な阻害を示した。表中で>として示されるMIC値については、これらは、試験した最高濃度で阻害を示さなかった。試験されたPseudomonas aeruginosaの株は、試験されたほとんどの抗生物質に対して耐性であった。Staphylococcus aureusおよびEscherichia coliは両方とも、試験された抗生物質のうちのいくつかに対して感受性の増大を示した。これらの結果によって、種々の化学的クラスの抗細胞剤が、抗細胞剤によって標的される病原性細菌に対して鉄が利用できないようにすることを通じて種々の病原性細菌に対するそれらの活性に関して改善され得ることがさらに一般的に示される。
【0297】
【表14】
【0298】
実施例41;フラビンの産生に対する本発明の可溶性キレート組成物の影響、Candida albicansによる二次代謝物産生活性に影響する例。
実施例18に関して規定の抽出培地中で、およびこの抽出された培地(補充の鉄の既知の添加物を(FeSO/3M過剰のクエン酸ナトリウムの溶液として)添加した)で増殖された、酵母細胞Candida albicans ATCC 10231を、フラビン化合物の産生に関して試験した。図28に示される吸収スペクトルを有する培養培地中での黄色い色素沈着によって証明されるフラビン産生(培養培地中に分泌された産生さ
れたフラビンからの約375nmおよび450nmでの吸収ピーク)は、増殖の間、低い鉄濃度では見られたが高い鉄濃度では見られなかった。フラビン産生は、図29に示されるこれらの試験の結果では、各々の量の鉄添加で、オーブン乾燥した細胞バイオマス1gあたりでの450nmの吸収単位として表現された。これらの結果によって、低量の鉄が酵母細胞に供給されたとき、フラビン産生が高く、より高い鉄の量が存在する場合、酵母によるフラビン産生が最低であることが示される。
【0299】
フラビン産生が比較的大量の利用可能な鉄に起因して抑制される条件下で調製された培養物を、次いで、実施例4または実施例6で調製された本発明の可溶性キレーターの添加後にフラビン産生について、すなわち、培養物にキレーターを添加していないコントロールと比べて試験した。他のフラビン抑制の鉄レベルを含んでいるこのような培養物への、これらの可溶性キレーターのいずれかの、例えば、0.25mg/mlの濃度での添加は、450nmで吸収される培養培地中での細胞産物材料の産生の増大によって観察されるように、この酵母によるフラビン産生を増強した。従って、可溶性キレーターは、培養培地中で鉄を封鎖し、これによって、鉄は酵母細胞によってアクセスできなくなり、従って、酵母細胞によるフラビンの産生が誘導された。
【0300】
実施例42;ヒドロキシエチルデンプンまたはデキストランに加えられたミモシンを含んでいる可溶性キレート組成物の合成
実施例2で調製された可溶性のヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デキストランのサンプルを、ミモシン(β−(N−(3−ヒドロキシ−4−ピリドン))−α−アミノプロピオン酸)の0.075M溶液と、中性からわずかにアルカリのpHで反応させた。次いで、ミモシンのアミノ基とポリマー上のアルデヒド基との間で形成されたシッフ塩基を、連結を安定化するために過剰のシアノ水素化ホウ素ナトリウムによって還元して、一方で、デンプンまたはデキストラン上の残りの未反応のアルデヒド基を、過剰の水素化ホウ素ナトリウムで還元した。この可溶性のキレートポリマー組成物の生成物を、水に対してVisking透析バッグ中での透析によって、48時間にわたって透析水を5回交換して精製した。用いた透析チューブの分子量カットオフサイズは、約10,000ダルトンであり、従って、この透析バッグ中に保持されている最終の可溶性キレート組成物の生成物は、≧10,000ダルトンという分子量を有した。得られた可溶性のキレート組成物の鉄結合能力を、キレート組成物の試験部分への過剰の鉄−クエン酸塩溶液の添加によって確認した。試験した部分は赤く変わり、このことは、担体ポリマーに結合したミモシンによって貢献されるようなキレーターピリジノン基に対する鉄の結合を示している。10,000ダルトン未満のサイズの材料を透析して除くこと以外の工程は、これらのサンプル調製には行わなかったことが理解されるべきである。さらに精錬された、すなわち、下方分子量(例えば、1500ダルトンを超える)生成物またはより小さい生成物のサイズ分布を得るためのさらなる工程を、限外濾過および/またはクロマトグラフィー精製のような、すなわち所定の分子量分布の、より精錬された生成物を得ることに関して、従来公知の方法を用いて行ってもよいことに注意すべきである。最終のキレート組成物は、凍結乾燥によって得て、懸濁の水を除去して、この乾燥生成物は、使用の際の水に自由に溶けることが見出された。
【0301】
本開示全体を通じて言及される引用文献の全内容は、米国特許第4,530,963号;同第5,256,676号;同第5,302,598号;同第5,573,800号;同第5,837,677号;同第5,663,201号;同第5,656,591号;同第6,165,484号;同第6,267,979号;同第6,767,741号;同第6,793,914号;同第6,825,204号;同第6,893,630号;同第6,932,960号;同第7,410,985号;および同第7,446,089号を含めて引用文献によって本明細書に援用される。
【0302】
本発明は、複数の例示的な実施例に関して記載された。しかし、多数の改変および変更が、特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることが当業者に理解される。
【0303】
引用文献
以下の引用文献も参照によって本明細書に援用される:
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