(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266514
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】電荷注入を含む差動シリアル信号を伝達する装置および方法
(51)【国際特許分類】
H04L 25/03 20060101AFI20180115BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
H04L25/03 C
H04L25/02 V
【請求項の数】25
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-524115(P2014-524115)
(86)(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公表番号】特表2014-526206(P2014-526206A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】US2012049570
(87)【国際公開番号】WO2013020072
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月16日
(31)【優先権主張番号】13/198,490
(32)【優先日】2011年8月4日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595168543
【氏名又は名称】マイクロン テクノロジー, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100106851
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 泰久
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】キング,グレゴリー
【審査官】
森谷 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−287939(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0152749(US,A1)
【文献】
特表2007−505577(JP,A)
【文献】
特開2010−283453(JP,A)
【文献】
特開2009−141948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/03
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動シリアル信号を受信し、当該差動シリアル信号をバッファリングして、バッファリングされた差動シリアル信号を提供するように構成されたプリエンファシス回路と、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信し、当該バッファリングされた差動シリアル信号に応答して、差動通信経路を駆動するように構成された出力段回路とを備える装置であって、
前記プリエンファシス回路が、前記差動通信経路の少なくとも1つの上での信号遷移を支援するために、前記バッファリングされた差動シリアル信号に応答して、選択的に電荷を前記通信経路上に注入するように構成され、
前記バッファリングされた差動シリアル信号が、第1の信号および前記第1の信号の補完的信号である第2の信号を含み、かつ、
前記プリエンファシス回路がブースト回路を含み、前記ブースト回路が、
ブーストプルアップ回路およびブーストプルダウン回路であって、前記ブーストプルアップ回路および前記ブーストプルダウン回路の各々が、前記第1の信号を受信するように構成されている、ブーストプルアップ回路およびブーストプルダウン回路と、
前記ブーストプルアップ回路とブースト出力との間に結合された第1のドーピングタイプのスイッチングトランジスタ、および前記ブーストプルダウン回路と前記ブースト出力との間に結合された第2のドーピングタイプのスイッチングトランジスタであって、前記スイッチングトランジスタの各々が前記第2の信号を受信するように構成されたゲートを有する、スイッチングトランジスタと
を含む、
装置。
【請求項2】
前記通信経路に結合された終端回路をさらに含み、前記終端回路が差動終端を共通モードノードに提供するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記終端回路が、前記通信経路のうちの1つと前記共通モードノードとの間に100オームの抵抗を含み、かつ、前記通信経路のうちの別の1つと前記共通モードノードとの間に別の100オームの抵抗を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ブーストプルアップ回路および前記スイッチングトランジスタのうちの1つが、高電位に遷移する前記ブースト出力上の出力信号に応答して、前記ブースト出力に電荷を注入するために協働するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ブーストプルダウン回路および前記スイッチングトランジスタのうちの1つが、低電位に遷移する前記ブースト出力上の出力信号に応答して、前記ブースト出力から電荷を除去するために協働するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
パラレル信号を受信し、前記パラレル信号を差動シリアル信号に変換するように構成された並直列変換器と、
プリエンファシス回路であって、
前記差動シリアル信号を受信して、バッファリングされた差動シリアル信号を提供するように構成されたバッファと、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信し、当該バッファリングされた差動シリアル信号に応答して、差動通信経路のペアのそれぞれ1つに選択的に電荷を注入して、差動通信経路の前記ペアの前記それぞれ1つ上での信号遷移を支援するように構成されたブースト回路と
を含む、プリエンファシス回路と、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信して、前記バッファリングされた差動シリアル信号を前記差動通信経路上に駆動するように構成された出力段回路と
を備え、
前記バッファが、第1の信号および前記第1の信号の補完的信号である第2の信号を提供するように構成された交差結合インバータを含み、かつ、
前記ブースト回路が、
ブースト出力に結合された第1のドーピングタイプの第1のスイッチングトランジスタ、および前記ブースト出力に結合された第2のドーピングタイプの第2のスイッチングトランジスタと、
前記第1のスイッチングトランジスタに結合されたブーストプルアップ回路であって、前記ブーストプルアップ回路および前記第1のスイッチングトランジスタが、高電位に遷移する前記ブースト出力上の出力信号に応答して、前記ブースト出力に電荷を注入するために協働するように構成されている、ブーストプルアップ回路と、
前記第2のスイッチングトランジスタに結合されたブーストプルダウン回路であって、前記ブーストプルダウン回路および前記第2のスイッチングトランジスタが、低電位に遷移する前記ブースト出力上の前記出力信号に応答して、前記ブースト出力から電荷を除去するために協働するように構成されている、ブーストプルダウン回路と
を含み、
前記ブーストプルアップ回路および前記ブーストプルダウン回路の各々が、前記第1の信号を受信するよう構成され、かつ前記スイッチングトランジスタの各々が前記第2の信号を受信するように構成されたそれぞれのゲートを有する、装置。
【請求項7】
終端回路をさらに備え、前記終端回路が、
共通モードノードを提供するためのトランジスタスタックと、
前記差動通信経路のうちの一方と、前記共通モードノードとの間の第1の抵抗と、
前記差動通信経路のうちの他方と、前記共通モードノードとの間の第2の抵抗と
を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ブーストプルアップ回路がプレチャージ装置を含み、前記プレチャージ装置は、プルアップキャパシタンスに結合されたプルアップトランジスタを含み、前記プルアップトランジスタは、前記第1の信号を受信するように構成されたゲートを有し、前記プルアップキャパシタンス、前記プルアップトランジスタ、および前記第1のスイッチングトランジスタが、低電位にある前記第1の信号および前記出力信号に応答して、電荷を前記プルアップキャパシタンスに格納し、かつ、高電位に遷移する前記第1の信号および前記出力信号に応答して、電荷を前記プルアップキャパシタンスから前記ブースト出力に放電するために協働するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記ブーストプルダウン回路がプレチャージ装置を含み、前記プレチャージ装置は、プルダウンキャパシタンスに結合されたプルダウントランジスタを含み、前記プルダウントランジスタは、前記第1の信号を受信するように構成されたゲートを有し、前記プルダウンキャパシタンス、前記プルダウントランジスタ、および前記第2のスイッチングトランジスタが、高電位にある前記第1の信号および前記出力信号に応答して、電荷を前記プルダウンキャパシタンスに格納し、かつ、低電位に遷移する前記第1の信号および前記出力信号に応答して、電荷を前記ブースト出力から放電するために協働するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
プリエンファシス回路であって、
差動シリアル信号を受信して、バッファリングされた差動シリアル信号を第1の信号および前記第1の信号の補完的信号である第2の出力で提供するように構成されたバッファと、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信して、差動通信経路上に選択的に電荷を注入して前記差動通信経路上での信号遷移を支援するように構成されたブースト回路のセットであって、
各セットが、第1のブースト回路および第2のブースト回路を含み、
各ブースト回路が第1の入力、第2の入力、イネーブル入力、およびブースト出力を含み、
前記第1のブースト回路について、前記第1の入力が前記バッファの前記第1の出力に結合され、前記第2の入力が前記バッファの前記第2の出力に結合され、かつ、前記ブースト出力が前記差動通信経路のうちの一方に結合され、
前記第2のブースト回路について、前記第1の入力が前記バッファの前記第2の出力に結合され、前記第2の入力が前記バッファの前記第1の出力に結合され、かつ、前記ブースト出力が前記差動通信経路のうちの他方に結合されている、ブースト回路のセットと、
を含む、プリエンファシス回路と、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信して、前記バッファリングされた差動シリアル信号を前記差動通信経路上に駆動するように構成された出力段回路と
を備え、
各ブースト回路が、
前記第2の入力に結合されたブーストプルアップ回路と、
前記第2の入力に結合されたブーストプルダウン回路と、
前記ブーストプルアップ回路と前記ブースト出力との間に結合されたpタイプのトランジスタ、および前記ブーストプルダウン回路と前記ブースト出力との間に結合されたnタイプのトランジスタであって、前記トランジスタの各々が前記第1の入力に結合されたそれぞれのゲートを有する、トランジスタとを含む、
装置。
【請求項11】
前記ブーストプルアップ回路が、前記第2の入力およびpタイプのイネーブルトランジスタに結合されたプルアッププレチャージ装置を含み、かつ、
前記ブーストプルダウン回路が、前記第2の入力およびnタイプのイネーブルトランジスタに結合されたプルダウンプレチャージ装置を含み、各ブースト回路が、前記イネーブル入力に結合され、かつ前記ブーストプルアップ回路と前記ブーストプルダウン回路との間に結合されたそれぞれのインバータを含む、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記プルアッププレチャージ装置が、
前記第2の入力に結合されたゲートを有するpタイプのプルアップトランジスタと、
前記pタイプのプルアップトランジスタと供給電圧との間に結合されるように構成されたブーストプルアップキャパシタンスと
を含み、かつ、
前記プルダウンプレチャージ装置が、
前記第2の入力に結合されたゲートを有するnタイプのプルダウントランジスタと、
前記nタイプのプルダウントランジスタと供給電圧との間に結合されるように構成されたブーストプルダウンキャパシタンスと
を含む、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
差動シリアル信号を受信し、かつ、バッファリングされた差動シリアル信号を提供するために前記差動シリアル信号をバッファリングするように構成されたプリエンファシス回路であって、前記プリエンファシス回路が、前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信し、差動通信経路に選択的に電荷を注入して前記差動通信経路上での信号遷移を支援するように構成されている、プリエンファシス回路と、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信し、かつ、前記バッファリングされた差動信号を前記差動通信経路上に駆動するように構成された出力段回路と、
終端回路であって、前記終端回路が、
共通モードノードを提供するためのトランジスタスタックと、
前記差動通信経路のうちの一方と、前記共通モードノードとの間の第1の抵抗と、
前記差動通信経路のうちの他方と、前記共通モードノードとの間の第2の抵抗と
を含む、前記終端回路と
を備え、
前記トランジスタスタックは、第1の電源ラインと前記共通モードノードとの間に接続された第1のトランジスタと、前記第1の電源ラインとは異なる第2の電源ラインと前記共通モードノードとの間に接続された第2のトランジスタと、を備える装置。
【請求項14】
前記バッファリングされた差動シリアル信号が、第1の信号および前記第1の信号の補完的信号である第2の信号を含み、かつ、
前記プリエンファシス回路がブースト回路を含み、各ブースト回路が、
ブーストプルアップ回路およびブーストプルダウン回路であって、前記ブーストプルアップ回路および前記ブーストプルダウン回路の各々が、前記第1の信号を受信するように構成されている、ブーストプルアップ回路およびブーストプルダウン回路と、
前記ブーストプルアップ回路とブースト出力との間に結合された第1のスイッチングトランジスタ、および前記ブーストプルダウン回路と前記ブースト出力との間に結合された第2のスイッチングトランジスタであって、前記スイッチングトランジスタの各々が前記第2の信号を受信するように構成されたそれぞれのゲートを有する、スイッチングトランジスタと
を含む、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ブーストプルアップ回路がプルアッププレチャージ装置を含み、前記プルアッププレチャージ装置が、プルアップキャパシタンスに結合されたプルアップトランジスタを含み、前記プルアップトランジスタが前記第1の信号を受信するように構成されたゲートを有する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ブーストプルダウン回路がプルダウンプレチャージ装置を含み、前記プルダウンプレチャージ装置が、プルダウンキャパシタンスに結合されたプルダウントランジスタを含み、前記プルダウントランジスタが前記第1の信号を受信するように構成されたゲートを有する、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
パラレル通信信号を提供するように構成されたチップエレクトロニクスと、
前記パラレル通信信号を差動シリアル信号に変換するように構成された並直列変換器と、
送信機回路であって、前記送信機回路が、
前記差動シリアル信号を前記並直列変換器から受信して、バッファリングされた差動シリアル信号を提供するように構成されたプリエンファシス回路であって、前記プリエンファシス回路が、前記差動シリアル信号に応答して、差動通信経路上に選択的に電荷を注入して前記差動通信経路上での信号遷移を支援するように構成されている、プリエンファシス回路と、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信して、前記バッファリングされた差動シリアル信号に応答して、前記差動通信経路を駆動するように構成された出力段回路と
を含む、送信機回路と、
前記差動通信経路に結合された終端回路をさらに含み、前記終端回路が、差動終端を共通モードノードに提供するように構成され、
前記終端回路が、
前記共通モードノードを提供するためのトランジスタスタックと、
前記差動通信経路のうちの一方と、前記共通モードノードとの間の第1の抵抗と、
前記差動通信経路のうちの他方と、前記共通モードノードとの間の第2の抵抗と
を備え、
前記トランジスタスタックは、第1の電源ラインと前記共通モードノードとの間に接続された第1のトランジスタと、前記第1の電源ラインとは異なる第2の電源ラインと前記共通モードノードとの間に接続された第2のトランジスタと、を備える、装置。
【請求項18】
前記プリエンファシス回路がブースト回路を含み、かつ、前記ブースト回路の各々がイネーブル入力を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記ブースト回路が、各々が第1のブースト回路および第2のブースト回路を含む、ブースト回路のセット内で有効にされるように構成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
第1の集積回路チップおよび前記第1の集積回路チップに積み重ねられた第2の集積回路チップであって、前記第1および第2の集積回路チップが差動通信経路を通じて互いに通信するように構成され、前記第1および第2の集積回路チップの各々が、
パラレル通信信号を差動シリアル信号に変換するように構成された並直列変換器と、
送信機回路であって、前記送信機回路が、
前記差動シリアル信号を受信し、かつ、バッファリングされた差動シリアル信号を提供するために前記差動シリアル信号をバッファリングするように構成されたプリエンファシス回路であって、前記プリエンファシス回路が、前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信し、前記差動通信経路に選択的に電荷を注入して前記差動通信経路上での信号遷移を支援するように構成されている、プリエンファシス回路と、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を受信し、かつ、前記バッファリングされた差動シリアル信号を前記差動通信経路上に駆動するように構成された出力段回路と、
終端回路であって、共通モードノードを提供するためのトランジスタスタックと、前記差動通信経路のうちの一方と前記共通モードノードとの間の第1の抵抗と、前記差動通信経路のうちの他方と前記共通モードノードとの間の第2の抵抗とを含む、前記終端回路と
を含み、前記トランジスタスタックは、第1の電源ラインと前記共通モードノードとの間に接続された第1のトランジスタと、前記第1の電源ラインとは異なる第2の電源ラインと前記共通モードノードとの間に接続された第2のトランジスタと、を含む、送信機回路と
を含む、第1および第2の集積回路チップ
を含む、装置。
【請求項21】
前記バッファリングされた差動シリアル信号が、第1の信号および前記第1の信号の補完的信号である第2の信号を含み、かつ、
前記プリエンファシス回路がブースト回路を含み、各ブースト回路が、
ブーストプルアップ回路およびブーストプルダウン回路であって、前記ブーストプルアップ回路および前記ブーストプルダウン回路の各々が、前記第1の信号を受信するように構成されている、ブーストプルアップ回路およびブーストプルダウン回路と、
前記ブーストプルアップ回路とブースト出力との間に結合された第1のスイッチングトランジスタ、および前記ブーストプルダウン回路と前記ブースト出力との間に結合された第2のスイッチングトランジスタであって、前記スイッチングトランジスタの各々が前記第2の信号を受信するように構成されたそれぞれのゲートを有する、スイッチングトランジスタと
を含む、
請求項20に記載の装置。
【請求項22】
差動シリアル信号を伝達する方法であって、
バッファリングされた差動シリアル信号を提供するために前記差動シリアル信号をバッファリングすることと、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を使用して、プレチャージ装置を選択的に充電することと、
前記バッファリングされた差動シリアル信号を出力段の出力から通信経路上に出力することと、
前記通信経路上の電位が低電位から高電位に遷移するときに、前記バッファリングされた差動シリアル信号に応答して、前記プレチャージ装置を、前記通信経路のうちの1つに放電することと
を含む、方法。
【請求項23】
放電することが、
ブーストプルアップ回路を使用して、前記通信経路のうちの前記1つの上に選択的に電荷を注入することの1つを含む、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
差動終端を使用して、前記通信経路を終端処理することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のトランジスタの制御端子及び前記第2のトランジスタの制御端子は、それぞれ前記共通モードノードに接続されている、請求項13、17、及び20のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔優先出願〕
本願は、2011年8月4日に出願された、米国出願第13/198,490号からの優先権利益を主張し、それは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ドライバは、集積回路(「IC」)間または単一のIC内のいずれかで、信号伝達用に使用される回路である。限定ではなく例として、ドライバは、例えば、データ信号をメモリとの間でやりとりするため、または制御信号をメモリコントローラとの間でやりとりするためなど、信号を伝達するために使用できる。
【0003】
「差動(differential)」出力ドライバは、実質的に同時に2つの入力信号を受信し、実質的に同時に2つの出力信号を生成する。情報は、通常、2つの出力信号間の電位差によって伝達される。一方の出力信号は、通常、第1の供給電圧(例えば、VCC)に実質的に等しい電位を有し、他方の出力信号は、通常、第2の供給電圧(例えば、負電圧または接地であり得る、例えば、VSS)に実質的に等しい電位を有する。かかる信号のペアは、差動信号として知られている。一方の出力信号の電圧に影響を及ぼす任意のノイズまたはジッターは、しばしば、実質的に同じ方法で、他方の出力信号の電圧に影響を及ぼし得るので、差動出力ドライバは比較的ノイズおよびジッターに影響されない。
【0004】
並直列変換器/直並列変換器(SerDes)の直列化機能は、パラレル信号(例えば、データ信号)を(例えば、シリアルデータの伝送に備えて)シリアル信号(複数)に変換し、SerDesの逆直列化機能は、受信したシリアル信号(複数)をパラレル信号に変換する。SerDesは、広いビット幅のパラレルバスを利用して、パラレルバスよりもずっと高い頻度率で切り替える差動信号を出力できる。低速のパラレル通信経路よりもむしろ高速のシリアル通信経路を通じた信号の伝達(例えば、伝送)は、複雑性、費用、電力、および必要スペースを減らしながら、大量のデータの二地点間の移動を可能にする。従って、SerDesは、所要電力および集積回路領域を減らしながら、高いデータスループットを達成し得る。
【0005】
本発明の実施形態は、添付の図面の図において、限定ではなく例として、示されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に従った、送信機回路を示す。
【
図3】本発明の実施形態に従った、終端回路を示す。
【
図4】本発明の実施形態に従った、集積回路チップ間の差動シリアル通信を示す。
【
図5】本発明の実施形態に従った、集積回路チップを示す。
【
図6】本発明の実施形態に従った、
図1における100または
図5における516で示され得るような、差動シリアル送信機回路の略図である。
【
図7】本発明の実施形態に従った、出力段回路を示す。
【
図8】本発明の実施形態に従った、プリエンファシス回路の高レベル概観を示す。
【
図9】本発明の実施形態に従った、プリエンファシスブースト回路を示す。
【
図10】本発明の実施形態に従った、ブーストプルアップおよびプルダウン回路を示す。
【
図11】本発明の実施形態に従った、ブーストプルアップおよびプルダウン回路を示す。
【
図12A】それぞれの信号の異なる状態に対するプリエンファシスブースト回路動作を示す。
【
図12B】それぞれの信号の異なる状態に対するプリエンファシスブースト回路動作を示す。
【
図12C】それぞれの信号の異なる状態に対するプリエンファシスブースト回路動作を示す。
【
図12D】それぞれの信号の異なる状態に対するプリエンファシスブースト回路動作を示す。
【
図13】本発明の実施形態に従った、差動送信機回路の出力段をプレチャージするための方法を示す。
【
図14】本発明の実施形態に従った、出力ノード上のプリエンファシスプログラム可能性を示す。
【
図15A】−5dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。
【
図15B】−5dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。
【
図15C】−5dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。
【
図15D】−5dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。
【
図15E】−5dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。
【
図16A】−10dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。
【
図16B】−10dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。
【
図16C】−10dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。
【
図16D】−10dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明は、限定ではなく、例として、本発明の様々な実施形態を示す添付の図を参照する。これらの実施形態は、当業者が、これらおよび他の実施形態を実施できるように十分詳細に説明されている。他の実施形態が利用され得、構造的、論理的、および電気的変更がこれらの実施形態に対して行われ得る。様々な実施形態は、いくつかの実施形態が新しい実施形態を形成するために1つまたは複数の他の実施形態と結合できるので、必ずしも互いに排他的ではない。以下の詳細な説明は、それ故、制限的な意味でとられるべきでない。
【0008】
差動シリアル入出力回路は、高データ速度での堅牢な信号通信を可能にする。従来のプリエンファシス方法は、メインの出力経路および別個の、パラレルプリエンファシス経路を有しており、領域および電力の両方を増加する。従来の送信機回路は3pj/ビット〜6pj/ビットを消費する。
【0009】
対照的に、本発明のある実施形態に従った送信機回路は、プリエンファシスを出力段と組み合わせることができ、それは、高速動作を維持しながら、領域の削減および電力の低減という結果となり得る。改善された設計は、例えば、終端電流を減らすか、かつ/または内部の送信機回路を単純化することができ、それは、送信機回路内で必要な電力を減らすことができる。このアーキテクチャは、単一のデータ経路および単一のクロック経路を可能にする。この新しい送信機の一実施形態は、約0.5pj/ビット〜0.7pj/ビットを消費し得るが、これは、標準的なSerDes送信機実施態様と比較して、5〜10倍の所要電力の削減を示す。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に従った、送信機回路を示す。送信機回路は、ドライバとして使用できる。送信機回路100は、差動シリアル信号101を受信し、差動シリアル信号102を通信経路(例えば、回線、パッドなど)を通じて駆動する。図示した送信機回路100は、プリエンファシス回路103、出力段回路104、および終端回路105を含む。プリエンファシス回路103は、差動シリアル信号を(例えば、SerDes内で実装され得るような、データ並直列変換器から)受信できる。プリエンファシス回路103は、差動シリアル信号を経路106を介して出力段回路104に提供(例えば、送信)し、また、経路107を介して、出力段回路104に結合された通信経路に、選択的に電荷を注入することもできる。選択的な電荷注入は、例えば、通信経路の比較的大きなキャパシタンスが通信経路上での信号遷移に与える悪影響を補正するために使用できる。従って、通信経路上に注入された電荷は、例えば、遷移速度を論理ハイレベルに向上できる。
【0011】
終端回路105は、振幅を生成するために必要な電流を最小限にするためになど、差動終端を提供する。比較として、従来の入出力回路200を
図2に示し、また、本発明の実施形態に従った終端回路を
図3に示す。従来の入出力回路200は、終端を接地するために50オームを使用する。図に示すように、送信機および受信機の各々に対して、50オームの抵抗208が、差動通信経路の各々と接地との間に配置されている。各経路が、終端抵抗の1つを含むので、等価抵抗は、並列した2つの50オーム抵抗である。従って、
図2に示す終端回路200は、25オームのシステム終端インピーダンスという結果になる。
【0012】
対照的に、本発明の実施形態は、100オームの差動終端を使用する。
図3に示すように、100オームの抵抗309(ここで、抵抗が、個別抵抗および/または寄生抵抗によって提供され得る)が、差動通信経路の各々に、およびPMOSとNMOSトランジスタスタック311との間の共通モードノード310に結合される。トランジスタスタック311は、VDDとVSS電位との間の共通モード電圧を決定する。経路の各々が終端抵抗の1つを含むので、等価抵抗は、並列した2つの100オーム抵抗である。従って、かかる終端回路は、50オームのシステム終端インピーダンスを提供して、システム終端のインピーダンスを25オームから50オームに効果的に2倍にするが、これは、終端電流を減らして、通信所要電力を節約するのに役立つはずである。
【0013】
図4は、一実施形態に従った、チップ413Aと413Bとの間の差動シリアル通信412を示す。限定ではなく、例として、2つ以上のチップが一緒に積み重ねられ得る。例えば、チップ413Bは、チップ413Aの上に接合されて、(例えば、直接的または間接的のいずれかで、電気的に接続されて)電気的に結合され得る。これは、積み重ねられたチップの構造のフットプリントを増加させることなく、総集積回路領域を増加できる。しかし、かかる構造に対する設計課題は、チップのスタックから発する熱を除去するか、または他の方法で制御することであり得る。本発明の実施形態は、構造から散逸される熱を減らすために、チップ間通信用の電力消費を削減できる。
【0014】
図5は、本発明の実施形態に従った、集積回路チップを示す。図示したチップ513は、チップエレクトロニクス514、パラレル/シリアル通信変換回路515(SerDesの直列化機能など)、および送信機回路516を含む。チップエレクトロニクス514は、変換回路515への幅広いパラレル経路517内にパラレル信号を提供(例えば、出力)し、変換回路515は、そのパラレル信号を、送信機回路516への差動シリアル通信経路518を介して提供される差動シリアル信号に変換する。送信機回路516は、別のチップへの差動通信経路512を介して、差動シリアル信号を受信、調整、および駆動する。図示した変換回路515は、パラレル通信経路517を通して受信したデータを一時的に格納するために使用されるデータおよびクロックバッファ519、ならびに差動シリアル通信経路518を通した通信に適した差動シリアル信号を形成するためにバッファ内に格納されたデータを使用するように構成されている差動データ並直列変換器520を含む。図示した差動シリアル送信機回路516は、ドライバとして動作可能であるが、
図1に示す回路に似ており、プリエンファシス回路521、出力段回路522、および終端回路523を含む。プリエンファシス回路521は、差動シリアル送信機回路516内に組み込まれる。従って、プリエンファシス回路521は、変換回路515が通信信号(例えば、データ)を直列化した後、通信経路518を経由して差動シリアル信号を受信する。従って、経路517の各々がプリエンファシス回路を利用するような、パラレル通信経路517上の通信信号についてプリエンファシスを実行することと比較すると、
図5に示す実施形態は、プリエンファシス回路の数を減らして、設計を単純化し、それ故、使用される電力を削減するはずである。
【0015】
図6は、本発明の実施形態に従った、
図1における回路100もしくは
図5における回路516に似ているか、またはそれと同一である、差動シリアル送信機回路600の略図である。図示した回路600は、プリエンファシス回路621、出力段回路622、および終端回路623を含む。終端は、
図3に関連して上述したように、100オームの差動終端である。出力段622は、
図7にさらに詳細に示しており、プリエンファシス回路は、
図8〜
図9にさらに詳細に示している。
【0016】
図6に示すように、(例えば、SerDesによって提供される)差動シリアル信号618は、プリエンファシス回路621への通信経路(例えば、真の信号経路(TRUE)および補完的な信号経路(COMP))を通じて提供される。プリエンファシス回路621は、電荷注入経路625を経由して、通信経路628上に選択的に電荷を注入するように構成された1つまたは複数のブースト回路624を含む。プリエンファシス回路621は、選択的に電荷を通信経路628に注入するためにどのブースト回路(複数)が有効にされるかを制御するイネーブル信号626を受信する。いくつかの実施形態では、イネーブル信号626は、マルチビット信号である。例えば、2ビットのイネーブル信号は、最大で4(2
2)セットまでのブースト回路を個々に有効にでき、また、4ビットのイネーブル信号は、最大で16(2
4)セットまでのブースト回路を個々に有効にできる。プリエンファシス回路621は、受信した差動シリアル信号618をバッファリングして、そのバッファリングされたシリアル信号を、TRUEおよびCOMP信号経路を含む、差動経路627を通じて、出力段622に提供(例えば、出力)し、出力段622は、バッファリングされた差動シリアル信号を、差動通信経路628のTRUEおよびCOMP経路を通じて、駆動するが、それらは、プリエンファシス回路621からの選択的な電荷注入によってブーストされる。バイアス回路629については、
図7の説明と共に、以下で説明する。
【0017】
図の以下の説明では、第1および第2のドーピングタイプのトランジスタの特定例として、PMOSおよびNMOSトランジスタに言及される。第1のドーピングタイプのトランジスタは、pタイプのトランジスタであり得、pタイプのトランジスタの一例はPMOSトランジスタであり;また、第2のドーピングタイプのトランジスタは、nタイプのトランジスタであり得、nタイプのトランジスタの一例はNMOSトランジスタである。MOSは、金属‐酸化物‐半導体(metal−oxide−semiconductor)に対する頭文字であるが、最新のトランジスタはしばしば、金属の代わりに、または金属に加えて、ポリ(poly)を使用する。従って、MOSという用語は、金属ゲートに限定されることを意図しない。
【0018】
図7は、出力段回路722の一実施形態を示す。出力段722は、PMOS電流ミラーを提供するために、
図6のバイアス回路629内のPMOSトランジスタ631とともに動作するPMOSトランジスタ730、およびNMOS電流ミラーを提供するために、
図6のバイアス回路629内のNMOSトランジスタ633とともに動作するNMOSトランジスタ732を含む。出力段722は、PMOSトランジスタ734および735ならびにNMOSトランジスタ736および737を含む、差動スイッチングトランジスタを含む。PMOSトランジスタ734のゲートおよびNMOSトランジスタ736のゲートは、バッファリングされた差動シリアル信号627のTRUE信号をプリエンファシス回路624から受信し、PMOSトランジスタ735のゲートおよびNMOSトランジスタ737のゲートは、バッファリングされた差動シリアル信号627のCOMP信号をプリエンファシス回路624から受信する。差動ドライバ出力信号のTRUE信号が、トランジスタ735と737との間のノードEから駆動され、差動ドライバ出力信号用のCOMP信号が、トランジスタ734と736との間のノードFから駆動される。出力段用のバイアス回路629は、プログラマブル電流源638を含む。プログラマブル電流源の一例は、電圧制御式電流源を含む。電流源638からのプログラムされた電流は、NMOSおよびPMOS電流ミラー構成により、PMOSおよびNMOSトランジスタ730および732を通って流れる。NMOSトランジスタ633および639は、PMOSトランジスタ631を流れる電流フローを制御するNMOS電流ミラーを提供し、そのPMOSトランジスタ631は、PMOSトランジスタ730と電流ミラーを形成する。NMOSトランジスタ633および639は、NMOSトランジスタ732を流れる電流を制御するためにもNMOS電流ミラーを形成する。従って、プログラマブル電流源638は、差動通信経路628上での電圧振幅のために、トランジスタ730および732により、差動通信経路628に対して提供される電流、および差動通信経路628から提供される電流の制限を制御する。図示したバイアス回路629は、キャパシタンス641および642も含む。(個別のコンデンサおよび/または寄生容量によって提供され得る)これらのキャパシタンス641および642は、トランジスタ730および732のゲートに印加された電圧を平坦化して制御するが、それは、差動通信経路628への、および差動通信経路628からの利用可能な電流フローを維持する。本開示の内容を読むと、当業者には明らかであるように、電流制御を達成するために、NMOSおよびPMOSミラー回路の他の相補的な構成が使用され得る。
【0019】
図8は、本発明の実施形態に従った、プリエンファシス回路821の高レベル概観を示す。プリエンファシスは、例えば、チャネルにおける損失を補正して、送信等化を提供するために使用できる。図の左側は、バッファリングされた差動信号を
図7に示す出力段722に提供する、バッファを、交差結合インバータ843の形式で示す。インバータ843は、積み重ねられたPMOSおよびNMOSトランジスタ844、845、846および847を含む。トランジスタ844および845のゲートは、
図6に618として示している、差動シリアル通信経路818のTRUE信号経路に接続され、トランジスタ846および847のゲートは、差動シリアル通信経路818のCOMP信号経路に接続される。クロックインバータフィードバック848は、交差結合インバータ843に対して安定した切換点を保持するために使用できる。クロックインバータフィードバック848は、相対する方向に接続された2つのインバータを使用して形成され得る。インバータ843は、バッファリングされた差動シリアル信号をノードCおよびノードDを経由して、出力段に提供する。
【0020】
図示したブースト回路849は、2つセットで動作するが、セット内の一方のブースト回路849Aは、TRUE信号について動作し、セット内のもう一方のブースト回路849Bは、COMP信号について動作する。図に示すように、TRUE信号が、TRUEブースト回路849Aの真の信号入力INで受信され、かつ、COMPブースト回路849Bの補完的な信号入力INBUFで受信され、また、COMP信号が、TRUEブースト回路849Aの補完的な信号入力INBUFで受信され、かつ、COMPブースト回路849Bの真の信号入力で受信される。追加の真および補完的ペアのブースト回路(例えば、849C、および849D)が含まれ得る。TRUEブースト回路の出力は、COMP信号であり、それは、
図6の電荷注入経路625のCOMP経路に接続され、また、COMPブースト回路の出力は、TRUE信号であり、それは、
図6の電荷注入経路625のTRUE経路に接続される。各有効にされたブースト回路は、選択的な電荷注入を出力段の出力に提供できる。イネーブル信号は、例えば、TRUEおよびCOMPブースト回路849Aおよび849Bの単一のペアを有効または無効にするための単一ビット信号であり得るか、またはTRUEおよびCOMPブースト回路の2つ以上のペアをアドレス指定可能なマルチビット信号であり得る。例えば、2ビットのイネーブル信号は、最大で4(2
2)ペアまでのTRUEおよびCOMPブースト回路をアドレス指定し得る。追加のブースト回路が、他のブースト回路と一緒に有効にされるために追加され得る。また、3ビット以上のイネーブル信号は、例えば、追加のブースト回路を一意に有効にするための追加の一意のアドレスを提供するために、使用され得る。これらの個々に有効にされたブースト回路は、プログラマブルプリエンファシスレベルに対して様々なレベルのプリエンファシスを提供できる。
【0021】
図9は、本発明の実施形態に従った、プリエンファシスブースト回路949を示す。図示した回路949は、ブースト回路の出力、および従って、出力段の対応する出力上へのソース電流に対するブーストプルアップ回路950を含む。図示した回路949は、ブースト回路の出力からのシンク電流に対するブーストプルダウン回路951も含む。IN入力は、TRUEブースト回路に対してTRUE信号を受信し、COMPブースト回路に対してCOMP信号を受信する;また、INBUF入力は、TRUEブースト回路に対してCOMP信号を受信し、COMPブースト回路に対してTRUE信号を受信する。インバータ952を用いて、
図10および
図11を参照すると、ENABLE入力上の信号は、ブーストプルダウン回路951およびブーストプルアップ回路950を有効にするか、またはブーストプルアップ回路950およびブーストプルダウン回路951を無効にする。IN入力上の信号が、PMOSおよびNMOSスイッチングトランジスタ953および954に提供され、それらは、反転されたブースト出力を提供するために、IN信号を反転する。PMOSスイッチングトランジスタ953は、ブーストプルアップ回路950からの電荷が反転されたブースト出力上に選択的に注入(例えば、追加、印加など)されるようにし、NMOSスイッチングトランジスタ954は、電荷が、反転されたブースト出力からブーストプルダウン回路951を通して選択的に除去されるようにする。ブーストプルアップ回路950からの選択的な電荷注入およびブーストプルダウン回路951を通じた選択的な電荷除去は、プリエンファシスを提供できる。INBUF入力上の信号は、IN終端上の信号に対して補完的である。
【0022】
図10および
図11は、本発明の実施形態に従った、ブーストプルアップおよびプルダウン回路を示す。PMOSトランジスタ1055およびNMOSトランジスタ1156は両方とも、プログラマブル出力を提供するために、(例えば、プリエンファシス回路のブースト回路の)プリエンファシス回路のブーストプルアップおよびブーストプルダウン回路を有効にするイネーブル信号に応答する。INBUF信号は、PMOSプレチャージ装置1057によって受信されるが、それは、PMOSプルアップトランジスタ1058およびブーストプルアップキャパシタンス1059を含む。PMOSプレチャージ装置1057は、信号INBUFが低い場合にキャパシタンス1059上に電荷を格納し、信号INBUFが低から高に遷移する場合に(例えば、キャパシタンス1059を放電することにより)電荷を出力ノード上に注入する。INBUF信号は、NMOSプレチャージ装置1160によっても受信されるが、それは、NMOSプルダウントランジスタ1061およびブーストプルダウンコンデンサ1062を含む。NMOSプレチャージ装置1060は、信号INBUFが高い場合にキャパシタンス1062上に電荷を格納し、信号INBUFが高から低に遷移する場合に電荷を出力ノードから除去する。例として、いくつかの実施形態は、ブースト回路の有効にされたセットに対する所望のプリエンファシスステップに対して電荷を提供するために、キャパシタンス1059および1062に約20fFのキャパシタンスを提供する。キャパシタンスの値ならびにトランジスタ1058および1061のサイジングは、チャネル損失を補正するために、所望の電流出力を出力ノードに提供するため、一緒にサイジングされる。
【0023】
図12A〜
図12Dは、True信号がHighである場合の状態(
図12A)、True信号がHighからLowに遷移した後の過渡状態(
図12B)、True信号がLowである場合の状態(
図12C)、およびTrue信号がLowからHighに遷移するときの過渡状態(
図12D)を含む、差動シリアル信号の異なる状態に対するプリエンファシスブースト回路を示す。
図12Bは、HighからLowに遷移するTrue信号に応答して、インバータ出力に電荷を注入するブーストプルアップを示し、
図12Dは、LowからHighに遷移するTrue信号に応答して、インバータ出力から電荷を除去するブーストプルダウンを示す。ENABLE PMOSトランジスタ1255およびNMOSトランジスタ1256は、
図12A〜
図12Dの全てに対してONである。
【0024】
図12Aは、True信号がHighである場合の状態に対するプリエンファシスブースト回路を示す。INがHighである場合にLowである、インバータ出力は、出力回路に対するCOMP出力に接続される。INがHighである場合、INBUFはLowである。従って、インバータのPMOSトランジスタ1253はOFFであり、インバータのNMOSトランジスタ1254はONであり、PMOSプルアップトランジスタ1258はONであり、NMOSプルダウントランジスタ1261はOFFである。プルアッププレチャージ装置1257は、プルアッププレチャージ装置の出力がほぼVDDの電位を有するので、ブーストプルアップキャパシタンス1259上に電荷を格納する。トランジスタ1254および1256がONであるので、プルダウンプレチャージ装置1260の出力での電位は、インバータ出力での負のCOMP信号に対応する。
【0025】
図12Bは、True信号がHighからLowに遷移した後の過渡状態に対するプリエンファシスブースト回路を示す。NMOSおよびPMOSトランジスタが両方とも導通する、わずかな期間があることが認識される。この図は、トランジスタが切り替えられた後を示すことを意図しているが、回路内の過渡応答は、装置のプレチャージ機能を提供する。従って、インバータのPMOSトランジスタ1253はONであり、インバータのNMOSトランジスタ1254はOFFであり、PMOSプルアップトランジスタ1258はOFFであり、NMOSプルダウントランジスタ1261はONである。
【0026】
プルアッププレチャージ装置1257は、電位をブーストプルアップキャパシタンス1259からインバータ出力上に放電し、従って、(例えば、インバータ出力上の電位がLowからHighに遷移するときに信号遷移を支援するため)電荷をインバータ出力に注入する。プルアッププレチャージ装置1257の出力は、ほぼVDDの電位からインバータ出力の電位に低下し、次いで、インバータ出力の電位が上昇すると再度上昇する。プルダウンプレチャージ装置1260内のトランジスタ1261はONであるが、インバータのNMOSトランジスタ1254がOFFであるので、プルダウンプレチャージ装置1260の出力ノードは、負電位からVSSに上昇する。
【0027】
図12Cは、True信号がLowである場合の状態に対するプリエンファシスブースト回路を示す。INがLowである場合、インバータ出力はHighである。INがLowである場合、INBUFはHighである。従って、インバータのPMOSトランジスタ1253はONであり、インバータのNMOSトランジスタ1254はOFFであり、PMOSプルアップトランジスタ1258はOFFであり、NMOSプルダウントランジスタ1261はONである。プルアッププレチャージ装置1257の出力は、トランジスタ1253および1255は両方ともONであるので、インバータ出力上のHigh電位に対応する電位を有する。トランジスタ1261がONであるので、プルダウンプレチャージ装置1260の出力での電位は、VSSに対応する。
【0028】
図12Dは、True信号がLowからHighに遷移した後の過渡状態に対するプリエンファシスブースト回路を示す。NMOSおよびPMOSトランジスタが両方とも導通する、わずかな期間があることが認識される。この図は、トランジスタが切り替えられた後を示すことを意図しているが、装置のプレチャージ機能を提供する過渡電流がある。従って、インバータのPMOSトランジスタ1253がOFFであり、インバータのNMOSトランジスタ1254がONであり、PMOSプルアップトランジスタ1258がONであり、NMOSプルダウントランジスタ1261がOFFである。
【0029】
プルアッププレチャージ装置1257は、キャパシタンス1259を充電しており、プルアッププレチャージ装置1257出力での電位がVDDまで上昇する。NMOSプレチャージ出力において印加されるステップアップ電圧は高周波イベントであり、キャパシタンス1262を通るVSSへの過渡高周波応答を生じる。電流がインバータ出力から流れて、キャパシタンス1262を充電するとき、NMOSプレチャージ出力の電位がVSSからインバータ出力の電位に上昇し、次いで、インバータ出力の電位が負電位に低下すると、それとともに低下する。
【0030】
図13は、本発明の実施形態に従った、差動送信機回路の出力段をプレチャージするための方法を示す。送信機回路は、少なくとも1つのプリエンファシス回路を含み、それは、ブースト回路を含むことができる。1370で、ブースト回路の少なくとも1つのセットが有効にされる。ブースト回路のセットでは、第1のブースト回路が差動通信経路のうちの第1の1つに結合され、第2のブースト回路が差動通信経路のうちの第2の1つに結合される。各ブースト回路がインバータを含む場合、第1のブースト回路に対するTrue入力信号が、出力段の出力に対するComp信号として出力され、第2のブースト回路に対するComp入力信号が、出力段の出力に対するTrue信号として出力される。イネーブル信号は、2つ以上のブースト回路を選択的に有効にするために使用されるマルチビットイネーブル信号であり得る。1371で、送信機回路が差動終端回路を使用して終端処理されるが、それは、終端抵抗を流れる電流を減らし、従って、回路の電力使用を減らすことができる。1372で、差動シリアル信号が、送信機回路から通信経路を通じて伝達(例えば、伝送)される。1373で、差動シリアル信号の伝達は、送信機回路内の出力段回路および送信機回路内の1つまたは複数の有効にされたプリエンファシスブースト回路の両方において、並直列変換器から提供された差動シリアル信号を受信することを含む。1374で、出力ノードが高電位に遷移すると、有効にされたプリエンファシスブースト回路(複数)を使用して、出力段回路の出力ノードに選択的に電荷を注入し、また、出力ノードが低電位に遷移すると、有効にされたプリエンファシスブースト回路(複数)を使用して、出力段回路の出力ノードから選択的に電荷を除去することにより、通信経路損失を補正することを含め、差動シリアル信号が、出力段回路から送信される。例えば、有効にされたプリエンファシスブースト回路が、差動通信経路の1つに対する出力上に電荷を注入すると、別の有効にされたプリエンファシス回路が、差動通信経路の他の1つから電荷を除去する。プリエンファシスブースト回路内のブーストプルアップ回路は、選択的に電荷を注入し、プリエンファシスブースト回路内のブーストプルダウン回路は、選択的に電荷を除去する。
【0031】
図14は、出力ノード上のプリエンファシスプログラム可能性のシミュレーションを示す。これらの図は、ブースト回路なし、ならびに1つ、2つ、3つ、および4つのブースト回路の有効にされたセットに対する信号遷移を示す。ブースト回路の有効にされたセットは、より高速で大規模な信号遷移を可能にする。
図15〜
図16に関して示すように、回路のプログラム可能性は、適切な数のブースト回路セットが、通信経路の所与の特性に対して有効にできるようにする。
図15は、−5dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示し、
図16は、−10dBチャネル損失に対する異なるプリエンファシスレベル下でのアイダイアグラムを示す。−5dBチャネル損失の通信経路に対して、最も一貫した遷移は、ブースト回路の2つの有効にされたセットによって提供されるように見える。−10dBチャネル損失の通信経路に対して、最も一貫した遷移は、ブースト回路の4つの有効にされたセットによって提供されるように見える。これらの図は、通信経路上でのより大きなチャネル損失を補正するため、より多くの電荷を通信経路上に選択的に注入するために、追加のブースト回路が有効にできることを大まかに示すために例として提供される。プリエンファシスの量は、プレチャージ装置に対して使用されるキャパシタンスによって決まり得る。
【0032】
本明細書では、特定の実施形態を示して説明しているが、当業者には、同じ目的を達成するために計算された任意の配置が、図示した特定の実施形態と置換され得ることが理解されるであろう。例えば、本文書では、NMOSトランジスタに言及するが、回路機構は他のNタイプのトランジスタを使用するように設計され得、また、本文書では、PMOSトランジスタに言及するが、回路機構は他のPタイプのトランジスタを使用するように設計され得る。図示した回路は、他のnタイプおよびpタイプのトランジスタで設計され得る。様々な実施形態は、本明細書に記載する実施形態の置換および/または組合せを使用する。前述の説明は、制限ではなく、例示を意図していること、および本明細書で採用された句法または用語は、説明のためであることが理解されるべきである。