(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のイオン注入装置において、前記スキャンロボットは、互いに直交している水平ローディング位置及び垂直イオン注入位置を有しており、前記スキャンロボットは、前記複数のワークピースが前記イオンビームの経路内に位置するように、前記キャリアを前記水平ローディング位置から前記垂直イオン注入位置へ回転させるように構成されているイオン注入装置。
請求項8に記載のイオン注入装置において、前記スキャンロボットは、互いに直交している水平ローディング位置及び垂直イオン注入位置を有しており、前記スキャンロボットは、前記複数のワークピースが前記イオンビームの経路内に位置するように、前記キャリアを前記水平ローディング位置から前記垂直イオン注入位置へ回転させるように構成されているイオン注入装置。
請求項14に記載のイオン注入装置において、このイオン注入装置が更に、前記処理室、すなわち第1の処理室及び前記第2の処理室に連結された他の、すなわち第2の移送室を具えているイオン注入装置。
請求項18に記載のイオン注入方法において、前記ローディングを水平ローディング位置で行い、前記ブランケットイオン注入及び前記選択的なイオン注入を垂直イオン注入位置で行い、前記水平ローディング位置及び前記垂直イオン注入位置は互いに直交しているようにするイオン注入方法。
請求項18に記載のイオン注入方法において、前記ブランケットイオン注入と、前記マスクの前記連結と、前記選択的なイオン注入とを、前記複数のワークピースを収容している室内の真空を遮断することなく実行するイオン注入方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の開示を一層良好に理解するために、添付図面を参照するが、これらの添付図面は参考のために導入したものである。
【0010】
ここでは、イオン注入装置を太陽電池に関して説明する。しかし、イオン注入装置は、半導体ウエハ、発光ダイオード(LED)、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウエハ、その他のデバイスのような他のワークピースに対しても用いることができる。従って、本発明は、以下に述べる特定の実施例に限定されるものではない。
【0011】
図1は、イオン注入装置のアーキテクチャの第1実施例のブロック線図を示す上面透視図である。イオン注入装置100はイオン源101を有する。一実施例では、このイオン源101は、質量分析なしに動作するRFプラズマ源とする。RFプラズマ源は、ガスからプラズマを発生させるためにアンテナを用いている。傍熱陰極(IHC)又は当業者にとって既知の他の設計のような他のイオン源を用いることもできる。イオン源101は筐体内に配置することができるとともに、ガスボックス(図示せず)に連結することができる。イオンビーム110は、抽出電極114を用いてイオン源101から処理室102内に抽出される。処理室102内のワークピースは、ある場合には抽出電極114のすぐ下流にあるようにする。特定の一実施例では、イオンビーム110をイオン源101から処理室102内のワークピースに向けて直線的に投射させる。イオン源101と処理室102との間の抽出孔は抽出電極114間に又はこれら抽出電極114に隣接させて配置することができる。
図1に示すように、抽出電極114に隣接する壁部はまさに、イオン源101と処理室102との間にある。
【0012】
処理室102には、スキャン(走査)ロボット又はその他のワークピース移動システムを含めることができる。この処理室102内では、マスクをイオンビーム110の経路内に配置しうるように、マスクローダを位置決めしうる。マスクは例えば、ワークピースを収容しているキャリア上に配置しうる。このマスクは、複数のワークピースを覆うのに充分な大きさの寸法を有することができるとともに、各ワークピース内でイオン注入すべき領域を規定する孔を有することができる。従って、マスクはワークピースを少なくとも部分的に被覆するものであり、各ワークピースの表面全体よりも小さい個所のイオン注入を実行することができる。他の実施例では、マスクをキャリア上に配置することなしにイオンビーム110の経路内に固定させる。更に他の実施例では、マスクをキャリア上に配置することなしにイオンビーム110内とイオンビーム110の外部とで移動しうるようにする。マスクの大きさは、このマスク中の孔がイオンビームの一部を通過させてワークピースの特定の領域にイオン注入させるが、このマスクがイオンビーム110を100%被覆するか又はイオンビーム110を100%よりも少なく被覆しうるようにできる。従って、これらの領域の1つはワークピースの表面全体よりも小さくしうる。マスクがイオンビーム110を100%よりも少なく被覆する場合には、ワークピースのブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入の双方が生じるようにしうる。この場合、ブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入は別々に行うか又は少なくとも部分的に同時にすることができる。特定の一実施例では、マスクの寸法は、アレイ状態に配置しうる複数のワークピースを被覆するのに充分な大きさとする。マスクは、複数の組の孔を有し、各組は複数のワークピースの1つに対応させる。
【0013】
イオンビーム110の経路内には計測システム103を配置することもできる。この計測システム103は、ワークピースがイオン注入される個所の後に配置することができ、ワークピースにイオン注入されていない場合にイオンビーム110のみを測定しうるようにするが、他の構成も可能である。
【0014】
処理室102は、少なくとも1つの移送ロボット115を収容している移送室104に連結されている。特定の一実施例では、移送室104内で2つの移送ロボットを用いるようにする。各移送ロボットは例えば、シングルアームロボットとしうる。移送室104は本例では、ロードロック105及びロードロック106に連結させる。移送室104内の移送ロボット115は、ワークピースを処理室102と、ロードロック105及びロードロック106との間に移動させるのに用いられる。一例では、移送ロボット115によりワークピースを処理室102内のキャリア上に配置しうるようにする。他の例では、移送室104又はロードロック105内でキャリアにワークピースをローディングし、移送ロボット115を用いてこのキャリアを処理室102に移動させるようにする。
【0015】
第1のロードロック105はワークピース移動システム107に連結され、第2のロードロック106はワークピース移動システム108に連結されている。ワークピース移動システム107及び108は、インタフェース109に連結されている。処理室102及び移送室104は真空状態で動作させることができ、ワークピース移動システム107及び108は大気圧又は空気中で動作させることができる。一例では、ロードロック105及びロードロック106を大気及び真空状態間で循環させる。
【0016】
イオン注入装置100はワークピースを処理室からローディングし且つそのアンローディングを行なう2つの経路を有する。太陽電池のようなワークピースは、これらワークピースの積層体を収容しているラック、カセット又はキャリアを用いるようにしてインタフェース109内にローディングしうる。一例では、ワークピース移動システム108を用いてワークピースをロードロック106に移動させる。ロードロック106は真空排気され、ワークピースを移送室104に移動させる。これらワークピースは処理室102内でイオン注入され、移送室104に戻され、ロードロック105に移動される。これらワークピースは、大気状態に戻された後にワークピース移動システム107を用いてインタフェース109に戻るように移動される。他の実施例では、ワークピース移動システム107及びワークピース移動システム108の双方がワークピースをローディング及びアンローディングするようにする。その理由は、各ワークピース移動システムが、互いに異なる方向に進むように動作しうる複数のコンベヤベルトを有している為である。上述したことは単なる例示であり、イオン注入装置100を用いる他の処理の流れも可能であること勿論である。
【0017】
他の実施例では、他のロードロック及びワークピース移動システムを移送室104に取付ける。この追加のワークピース移動システムはインタフェース109に取付けられる。この追加のロードロック及びワークピース移動システムを加えることにより、処理室102からのワークピースのローディング及びアンローディングのための第3の経路を提供する。更に他の追加のロードロック及びワークピース移動システムを用いることもできる。他の代替例では、ロードロック105及びロードロック106の各々に複数の室を設け、各室がロードロック又はアンローディング用の独自の孔又はポートを有するようにする。
【0018】
ワークピースは、移動及び処理室102内でのイオン注入のためにキャリア上に配置しうる。このキャリアは例えば、アレイ配置の16個のワークピース又は4×4ワークピースのマトリックスを保持しうるが、他の個数又は他の配置も可能である。キャリアはグラファイト、炭化ケイ素又はその他の材料から形成しうる。キャリアは、機械力、磁気力又はその他の機構を用いるスキャンロボット、ロールプラット又はその他のあるロボットのような、処理室102内の他の装置に取付けたりこの他の装置から取外したりすることができる。
【0019】
一例では、一連のコンベヤ111及び一連のコンベヤ112を、インタフェース109と、ワークピース移動システム107、108又はロードロック105、106の一部分との間に位置させる。一連のコンベヤ111及び112の各々にはその一例で3つのコンベヤベルトを設けることができ、これら一連のコンベヤ111及び112の各々は、幅が1つのワークピースであるワークピースのラインを移動させるように構成されている。例えば、一連のコンベヤ112はワークピースをインタフェース109からロードロック106に移動させることができる。例えば、ワークピース移動システム108内のガントリーロボット、ガントリーロボット及びスワップロボット又はその他のあるロボットがワークピースを一連のコンベヤ112からロードロック106内にローディングすることができる。同様に、ワークピース移動システム107内のガントリーロボット、ガントリーロボット及びスワップロボット又はその他のあるロボットがワークピースをロードロック105から一連のコンベヤ111上にアンローディングすることができる。特定の一実施例では、ガントリーロボットが、一時に4つのワークピースを一連のコンベヤ112から持上げて、ロードロック106内に挿入するためのスワップロボット上に配置するようにする。このガントリーロボット又は異なるガントリーロボットが一時に4つのワークピースをスワップロボットから持上げて一連のコンベヤ111に移動させることができる。このガントリーロボットは、真空力、静電力、機械力又はその他のある機構を用いてワークピースを移動させることができ、各ガントリーロボットはワークピースをローディング又はアンローディングしうる。一連のコンベヤ111及び112はワークピースを直接インタフェース109に又はインタフェース109から移送することができ、或いは他の組のコンベヤにより一連のコンベヤ111及び112をインタフェース109に連結することができる。インタフェース109内には、ハンドラ―ロボットを設けて、例えば、カセットを一連のコンベヤ111及び112に且つこれらコンベヤから移動させるようにすることができる。より多くのロボットを必要とする場合があり、製造処理能力の仕様を満足させるために、ロボット間で幾つかのワークピース移送を行うことができる。
【0020】
上述したところでは、ワークピース移動システム108及びワークピース移動システム107の特定の実施例につき説明したが、他の設計も可能である。ワークピース又はキャリア或いはこれらの組合せを移動させるロボット、コンベヤベルト、その他の機構を用いることもできる。
【0021】
図2は、イオン注入装置のアーキテクチャの第2の実施例のブロック線図を示す上面透視図である。この実施例は、1つのみのロードロック(106)及び1つのみのワークピース移動システム(108)を有する。従って、イオン注入装置113は、処理室102からのワークピースのローディング及びアンローディングを行なう単一の経路を有するが、複数のキャリアをイオン注入装置113の周囲で少なくとも部分的で同時にシャッフルさせることができる。一連のコンベヤ112におけるコンベヤベルトの各々は、一実施例においてローディング及びアンローディングの双方を行うようにしうる。イオン注入装置113は、特定の一実施例で処理室102又は移送室104に連結したキャリア保管領域を有するようにしうる。
【0022】
図3及び4は、ここに開示するイオン注入装置のアーキテクチャの例を用いてイオン注入を実施する第1の実施例を示す透視図である。
図3では、ワークピース202がキャリア201上又は内に配置されている。キャリア201は、回転させるか又は傾けることのできるスキャンロボット200上に配置されている。このキャリア201はワークピース202を物理的又は機械的に保持しうるが、システムは、ワークピース202を位置決めするのに静電クランプを採用することもできる。従って、スキャンロボット200は、1つの表面上に静電クランプを有するようにしうる。
【0023】
イオン源101は抽出孔204(
図3では斜線を付してある)を有している。この抽出孔204は、
図3に示すのとは異なる設計にすることができる。
図1及び2のイオンビーム110のようなイオンビームは抽出孔204から射出される。抽出電極は、抽出孔204の付近に配置することができる。マスク203は、このマスク203の孔がワークピース202で選択的なイオン注入が望まれている領域に整列されるように、マスクローダ205を用いてy方向でキャリア201に取付け又は連結される。マスクローダ205は、マスク203を移動させる又は操作するロボットシステム、機械システム又は磁気システムとすることができる。
【0024】
特定の一実施例では、スキャンロボット200は、キャリア201がこのスキャンロボット200上にローディングされるか、又はワークピース202がキャリア201内にローディングされる水平ローディング位置を有するようにする。スキャンロボット200は、ワークピース202にイオン注入するとともにイオンビームによりワークピース202をスキャニングするための垂直イオン注入位置をも有する。スキャンロボット200は、互いにほぼ直交しているようにしうる2つの位置間で回転させることができる。他の角度関係も可能であること勿論である。
【0025】
特定の一例では、マスクローダ205を用いてマスク203をキャリア201上に降下させる。このマスクローダ205は、1段式のロボットとすることができる。このマスク203は、(ラッチのような)機械式の締め具又はクランプ部材や、磁気式の締め具又はクランプ部材や、その他の機構を用いてキャリアに連結することができる。ワークピース202は予めキャリア201内で整列させておき、このキャリア201へのマスク203の適切な連結により所望のイオン注入が確実に生じるようにしうる。
【0026】
図4では、キャリア201とワークピース202とが90°回転され、ワークピース202が、抽出孔204から抽出されたイオンビームの方向(すなわちz方向)に対し垂直となるようになっている。この回転にはスキャンロボット200を用いることができる。ワークピース202は抽出孔204から射出されたイオンビームを交差するx方向でスキャニングされ、各ワークピースがイオン注入されるようにする。従って、イオンビームを通る又は交差するスキャニングは直線的としうる。イオン注入後、マスク203をワークピース202又はキャリア201から除去することができ、この処理にはマスクローダ205を用いることができる。マスク203は、処理室の第1の領域内でキャリア201に取付けるか又はワークピース202上に配置しうる。処理室の第2の領域は(イオン源101の反対側で)x方向において第1の領域に対向させることができる。この第2の領域は、ワークピース202を一時的に保管するのに用いうるか、或いはマスク203を取付けるか又は除去するためのマスクローダ205を有するようにすることもできる。
【0027】
図5は、
図3及び4に示すイオン注入を実行する第1の実施例を示す
上面透視図
及び側面図である。
図5の右側に示すように、キャリア201はその上に又は中に4つのワークピース202を有する。他の実施例では、キャリア201の上又は中に4つよりも多い又は少ないワークピース202を設けることができる。例えば、一実施例では16個のワークピース202をキャリア201の上又は内に配置することができる。マスク203はワークピース202上のキャリア201に取付ける。
【0028】
図5の左側に示すように、イオンビーム110によりワークピース202にイオン注入する。イオンビーム110は、イオン源101の抽出孔204からz方向に抽出される。ワークピース202はスキャンロボット200により回転させるか又は傾け、これらワークピースがz方向に対し垂直となるようにする。例えば、ワークピース202を90°傾けて、
図5の左側に示すように配置する。ワークピース202にイオン注入するために、キャリア201をx方向でスキャニングしうる。イオンビーム110を(重力に対し垂直としうる)z方向に投射することにより、イオン注入装置の設計を簡単化するとともに、ワークピース202上の粒子の堆積を低減させることもできる。上述したところでは、単一のスキャニング軸(x方向)のみを説明したが、他の実施例では(x方向及びy方向のような)2軸のスキャニングを実行しうる。又、
図5ではマスク203をワークピース202上に示してあるが、マスク203とワークピース202との間にギャップを設けることができる。
【0029】
他の実施例では、キャリアが垂直位置にある際に(すなわち、ワークピース202が、抽出孔204から抽出されるイオンビームの方向に対し垂直にある際に)、マスク203がキャリア201上にローディングされる。マスク203は、キャリア201に移送される前に、機械力又は磁気力を用いるマスクローダを使用して処理室の壁部上に保持させることができる。このことは、
図3に示すマスクローダ205に類似させることができ、或いはキャリア201へのこの特定の移送を可能としうる異なる設計を採用しうる。
【0030】
上述したところでは特にキャリア201を開示してあるが、このようなキャリア201を用いない他の実施例も可能である。この特定の実施例では、ワークピース202を個々にプラテンにクランピング(緊締)させるか又はスキャンロボット200の他のプラットホーム上に配置させ、イオン注入中にワークピース202を保持するようにする。1つ以上のワークピース202を同時にクランピング又は保持するようにしうる。一例では、イオン注入中にワークピース202を保持するのに静電クランプを用いる。
【0031】
特定の一実施例では、ワークピース202をキャリア201上に又はこのキャリア内にマトリックスにローディングする。このマトリックスは2×2、2×4、4×4又はその他のマトリックス寸法とすることができる。ブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入の双方を実行することができる。キャリア201上又は内に、或いはスキャンロボット200上にローディングされたキャリア201上又は内にワークピース202をローディングする場合には、スキャンロボット200を水平のローディング位置にすることができる。スキャンロボット200はキャリア201を垂直のイオン注入位置に回転させるとともに、イオンビーム110を介してワークピース202をスキャニングする。この場合、このスキャンロボットが、ワークピース202をx方向に移動させ、各ワークピース202の表面全体のブランケットイオン注入を実行させる。イオンビーム110はこのブランケットイオン注入中に各ワークピース202の全体にイオン注入する。一例では、スキャンロボット200によりキャリア201を水平のローディング位置に戻るように回転させ、マスク203をキャリア201上に又はワークピース202を覆うようにローディング又は連結するようにしうる。他の例では、スキャンロボット200が依然としてその垂直のイオン注入位置にある間に、マスク203がキャリア201に又はワークピースを覆うようにローディング又は連結されるようにする。スキャンロボット200はイオンビーム110を介してワークピース202及びマスク203をスキャニングする。この場合、このスキャンロボットが、ワークピース202をx方向に移動させ、マスク203がローディング又は連結された後に各ワークピース202の表面の領域の選択的なイオン注入を実行させる。この選択的なイオン注入中、イオンビーム110はマスク203を通して各ワークピース202の領域にイオン注入する。マスク203は、スキャンロボット200が水平のローディング位置か又は垂直のイオン注入位置の何れかにある間、除去されている。スキャンロボット200が水平のローディング位置にある間、ワークピース202はキャリア201からアンローディング、すなわち除去されるか、又はキャリア201がスキャンロボット200からアンローディングされる。マスク203が選択的なイオン注入の前にローディング又は連結されており且つブランケットイオン注入前にアンローディング又は除去されている場合には、ブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入を何れの順序でも実行することができること勿論である。他の実施例では、ブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入の代わりに、2つの選択的なイオン注入を実行することができる。この場合、2つの異なるイオン注入パターンを形成するために2つの異なるマスク203を必要としうる。
【0032】
図6及び7は、ここに開示するイオン注入装置のアーキテクチャの実施例を用いてイオン注入を実行する第2の実施例を示す透視図である。本例では、イオン源101がy方向でワークピース202又は処理室の上方に配置されている(すなわち、イオンビーム110が重力とほぼ平行な方向に投射される)。
図6では、マスク203における孔が、ワークピース202で選択的なイオン注入が望まれている領域に整列されるように、例えばマスクローダ205により、このマスク203をy方向でキャリア201に取付けるか又は連結する。
図7では、各ワークピースにイオン注入されるように、これらのワークピース202をx方向でスキャニングする。イオン注入後は、例えばマスクローダ205を用いて、マスク203をワークピース202又はキャリア201から除去しうる。この処理は処理室の第1領域内で実行しうる。処理室の第2領域はx方向で第1領域とは反対側に(イオン源101の反対側に)位置させることができる。この第2領域を用いてワークピース202を一時的に保管するようにするか、或いはこの第2領域が、マスク203を取付けるか又は除去するためのマスクローダ205を有するようにすることもできる。
【0033】
ここに開示した実施例を用いてブランケットイオン注入を行いたい場合には、マスク203を使用しない。この場合には、抽出孔204から抽出されたイオンビームによりマスク203を用いずにワークピース202をスキャニングする。ある実施例では、ブランケットイオン注入と選択的なイオン注入との双方が望まれているものとする。ブランケットイオン注入と、マスク203を用いる選択的なイオン注入との双方は、イオン注入の順序に応じてワークピース202の周囲の真空を遮断することなく実行することができる。例えば、ブランケットイオン注入を実行し、次いでマスク203をキャリア201に又はキャリア201を覆うように取付け、選択的なイオン注入を実行するようにしうる。他の例では、マスク203をキャリア201に又はキャリア201を覆うように取付け、選択的なイオン注入を実行し、マスク203をキャリア201から除去し、次いでブランケットイオン注入を実行する。ブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入に際し所望のドーズ量を得るためには、イオンビーム110を通過させる1つ以上の経路が必要となりうる。
【0034】
他の実施例では、マスクを用いる代わりに又はマスクを補完するために、孔を有するシ−スモディファイアをイオン源上に又はイオン源内に配置する。このシ−スモディファイアは、プラズマシースに影響を与えることによりイオンを選択的なイオン注入となるように集束させる。イオン源又はビーム電流に対するワークピースのスキャニング速度は、選択的なイオン注入を実行するか、又はブランケットイオン注入と選択的なイオン注入との組合せを実行するように変化させることができる。シ−スモディファイアにおける孔の形状も、選択的な且つブランケットイオン注入を実行するか、又はブランケットイオン注入だけを実行するように変えることができる。又、イオン源に対して他の集束イオンビームシステムを用いて選択的なイオン注入を達成するようにしうる。
【0035】
ここに開示した実施例は、ブランケットイオン注入に対して約3000ウエハ/時間(wph)の処理能力で、又は選択的なイオン注入に対して約2000wphの処理能力で動作しうる。他の処理能力も可能であること勿論である。ある構成では、ここに開示したイオン注入装置が6000wphまで達成するように動作するようにすることができる。
【0036】
一実施例ではワークピースを冷却させるように特徴づける。一実施例では裏面ガス冷却法を用いることができ、裏面ガス冷却システムを、例えばキャリア201又はスキャンロボット200の一部とすることができる。ワークピースは、例えば300℃又は200℃よりも低く保つようにしうる。リン、ヒ素、ホウ素や、当業者にとって知られている他のn型ドーパント、他のp型ドーパント、金属や、その他の種をイオン注入することができる。イオン注入のドーズ量はE15cm
-2程度とすることができるが、他のイオン注入ドーズ量も可能である。マスクを用いるか、又はその他の選択的なイオン注入方法を用いるイオン注入手段の寸法は約300μmよりも小さくしうる。ここに開示した実施例では、イオンビームは質量分析されていない。しかし、他の実施例では、処理室102に取付けられているビームラインには質量分析器が含まれているようにする。このような一実施例では、イオンビームが湾曲又は偏向されて、不所望なイオン種を、又は不所望なエネルギーを有するイオンを除外する。これにより、あるイオン注入処理に対する汚染を低減させることができる。ここに開示したイオン源の1つを、堆積、エッチング又はその他の機能が得られるように変更又は構成することもできる。
【0037】
図8〜10はキャリアの実施例を示す斜視図である。
図8におけるキャリア201は4×4のマトリックスとした16個のワークピース202を有している。各ワークピース202はフレーム300で囲まれている。キャリア201は、一実施例では、ワークピース202がローディングされている側とは反対のキャリア201の側に基部を有するようにしうる。他の実施例では、フレーム300を両側で開放状態にする。
【0038】
各フレーム300は、
図9に示すように1つ以上の押圧部(プッシャ)301を有することができる。この押圧部301は、バネ仕掛けの回転アームに連結することができる。押圧部301は、突出している場合に、ワークピース202をフレーム300の反対側の壁部の方向に移動させる。一例では、フレーム300の2つの隣接壁部の各々が1つ以上の押圧部301を有するようにする。これにより、ワークピース202を押圧部301側とは反対側のフレーム300の壁部の方向に移動させる。これにより、ワークピース202を隅部内に圧入させるか又は壁部に対接させるように押圧することによりワークピースの整列を達成することができる。押圧部301は、ワークピース202に接触してワークピース202を保持又は把持するのに役立つようにする溝付端部又は湾曲端部を有するようにしうる。
【0039】
図10に示すように、フレーム300は1つ以上の保持機構302を有することもできる。一実施例では、これらの保持機構302を保持ピンとすることができる。各保持機構302は、ワークピース202に接触してワークピース202を保持又は把持するのに役立つようにする溝付端部又は湾曲端部を有するようにしうる。押圧部301は保持機構302と作用して、ワークピース202をフレーム300内に保持させるようにしうる。フレーム300には、一例ではワークピース202を保持機構302から外部に押出すことのできる1つ以上の釈放機構303を設けることもできる。
【0040】
図11は、イオン注入装置のアーキテクチャの第3実施例のブロック線図を示す上面透視図である。本例の一部は
図1の実施例に類似している。しかし、イオン注入装置400はロードロック402及び403に連結された第2の移送室401を有している。移送室(第1の移送室)104及び第2の移送室401の各々は、移送ロボット115に類似させることのできる少なくとも1つの移送ロボット(図示せず)を有することができる。ロードロック402及び403はそれぞれワークピース移動システム404及び405に連結され、これらワークピース移動システム404及び405はそれぞれ一連のコンベヤ407及び408を有している。ワークピース移動システム404及び405は、ワークピース移動システム107及び108に類似させることができる。ワークピース移動システム404及び405は、インタフェース406に連結されている。ワークピース移動システム404及び405におけるガントリーロボット又はその他の何らかのロボットや、これらのロボットの組合せにより、一連のコンベヤ407及び408とロードロック402及び403との間にワークピースをローディングすることができる。本例によれば、ワークピースに対する入力及び出力経路を複数にすることができる。キャリアは、処理室102の内外で1又は2方向において循環させることができる。
【0041】
図12は、イオン注入装置のアーキテクチャの第4実施例のブロック線図を示す上面透視図である。本例は
図11に類似しているが、ロードロック403をインタフェース406に連結する1つのみのワークピース移動システム405と、ロードロック406をインタフェース109に連結する1つのみのワークピース移動システム108とを有するものである。このイオン注入装置409は、ワークピースに対する入力及び出力経路を複数とすることができる。一例では、ワークピース移動システム108及び405の一方がワークピースをローディングするためのものとし、他方がワークピースをアンローディングするためのものとする。他の例では、ワークピース移動システム108及び405の各々がワークピースをローディング及びアンローディングするためのものとする。
【0042】
図11及び12の実施例におけるインタフェース406はインタフェース109と同じものとするか又はインタフェース109に連結するようにすることもできる。従って、これらインタフェースは同じユニットの一部とし、カセットをローディング又はアンローディングするのに用いるロボットを共有するようにしうる。インタフェース406は、
図11及び12に示すようにインタフェース109から分離させることもできること勿論である。
【0043】
ここに開示した実施例は複数のキャリアを保持することができる。これらのキャリアは、ワークピースのイオン注入及びローディング又はアンローディング中に種々の位置に循環させるか又は保管させることができる。
図2の実施例は5個のキャリアを用いることができる。
図1の実施例は8個のキャリアを用いることができる。
図12の実施例は10個のキャリアを用いることができる。
図11の実施例は16個のキャリアを用いることができる。各実施例では、より多くの又はより少ないキャリアを用いることができること勿論である。これらの個数は単に例示のためだけのものである。
【0044】
図13は、イオン注入装置のアーキテクチャの第5実施例のブロック線図を示す上面透視図である。イオン注入装置410は処理室102及び処理室412を有する。これら処理室は双方とも移送室104に連結されており、この移送室は移送ロボット115に類似する移送ロボット(図示せず)を有することができる。処理室412は、イオンビーム414を発生するイオン源411を有している。処理室412は計測システム413も有している。処理室412、イオン源411及び計測システム413は、処理室102、イオン源101及び計測システム103にそれぞれ類似させることができる。この場合、処理室102はキャリア保管領域415に連結されている。イオン注入装置410では1つ以上のキャリア保管領域415を用いることができるが、
図13には1つのみのキャリア保管領域を示している。例えば、処理室102を2つのキャリア保管領域415に連結させることができる。
【0045】
処理室412におけるワークピースは、一例では抽出電極420のすぐ下流に位置させる。特定の一実施例では、イオンビーム414をイオン源411から処理室412内のワークピースに向けて直線で投射させる。イオン源411及び処理室412間の抽出孔は抽出電極420間又は抽出電極420の付近に位置させることができる。
図13に示すように、抽出電極420に隣接する壁部はまさに、イオン源411と処理室412との間にある。
【0046】
イオン注入装置410における処理室102及び処理室412の各々は、ブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入を、又は2つのブランケットイオン注入を、又は2つの選択的なイオン注入を実行しうる。イオンビーム110及び414の各々に対しては、互いに異なるイオン注入種又は同じイオン注入種を用いることができる。従って、これらの2つの選択的なイオン注入に対して用いるマスクは互いに異ならせることができる。これらのイオン注入の全ては、ワークピースの周囲の真空を遮断することなく実行することができる。ここに開示した他の実施例にも同様に、2つ以上の処理室を取付けることができる。又、各移送室が各処理室に連結されるように、種々の移送室を連結させることができる。1つの移送室が2つの処理室の一方にのみ連結しうるようにする場合も存在しうること勿論である。
【0047】
一例では、2つの処理室及び2つの移送室により、移送室に連結されたワークピース移送システム及びロードロックを有するリング状の経路を形成しうる。従って、追加の移送室により
図13に示す処理室102及び412を結合させることができる。ワークピースは、リング状の経路の全体を通るように循環しうるか、又はリング状の経路の半分のみを通るように循環しうる。2つのワークピースの流れにより、動作可能時間(アップタイム)及び処理能力を改善することができる。従って、2つのワークピースの流れを用いるイオン注入装置におけるワークピースは、他方の移送室を通過することなく同じ移送室に入るとともにここから出ることができる。本例では、ワークピースは双方のイオン源によりイオン注入されるが、元の移送室に戻るように循環される。
【0048】
更に他の例では、2つの処理室をリング状に結合させるようにすることができるとともに、ブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入が各処理室で生じるようにすることができる。従って、各ワークピースには合計で4回のイオン注入を行うことができる。各イオン源は異なるイオン種をイオン注入するようにすることができる。ワークピースは双方の移送室を通して循環させることができるとともに、元の移送室か又は他の移送室の何れかを通して出すようにしうる。各処理室は、同じワークピースに対してブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入の双方を実行することができる。従って、ワークピースの2つの流れを存在させることができ、循環により選択的なイオン注入に対するマスクの配置又は除去を補償しうるようにする。
【0049】
図14は、イオン注入装置のアーキテクチャの第6実施例のブロック線図を示す上面透視図である。イオン注入装置417は、2つの処理室102及び412と、2つの移送室104及び401と、2つのキャリア保管領域415及び416とを有している。このイオン注入装置417は並列経路を用いて動作でき、1個所の故障がイオン注入装置417の全体の動作を停止させないようになっている。これにより、イオン注入装置417に関する動作可能時間を増大させる。他の利点は、ワークピースを同じ個所で入れたり出したりしうることである。イオン注入装置417はイオンビームの利用を高めることができる。その理由は、第1の組のワークピースは、第2の組のワークピースがイオン注入されるのを待っているとともに、第2の組のワークピースが待っているか又はほかの個所に移動され且つ第3の組のワークピースと置換えられている間に直ちにイオン注入を開始することができる為である。第1の組のワークピースを、他の組のワークピースがローディング又はアンローディングされている間にイオン注入することにより、処理能力を高めることができる。
【0050】
これらの並列経路を
図14において破線418及び419で示してある。各組のワークピースはロードロック403又はロードロック106から入れられる。この組のワークピースは同じロードロックに戻されてイオン注入装置417から除去される。1つの経路からの1組のワークピースには、何れかの経路からの他の組のワークピースがイオン注入装置417内で循環している間にイオン注入させることができる。ワークピースの移動、ローディング、アンローディング及びイオン注入のタイミング及び順序付けは最大の処理能力が得られるように設定しうる。一実施例では、イオンビーム110とイオンビーム414とが互いに異なるイオン注入種を用いるようにするが、これらイオンビーム110及び414が互いに同じイオン注入種を用いるようにすることもできる。他の実施例では、各組のワークピースの複数のイオン注入経路がイオン源101及び414の各々を通過し、所望のイオン注入ドーズ量が得られるように、又はイオン源101及び414の各々からのブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入が得られるようにする。ワークピースは、処理能力を増大させるか、又はイオン注入装置417内に破損個所又はエラーがある場合に、異なるロードロック106又は403を通ってイオン注入装置に入れたりイオン注入装置から出したりすることができること勿論である。
【0051】
2つのワークピースの流れを有する同様なイオン注入装置は、
図11及び12に示すように1つのみのイオン源と1つのみの処理室とを有するようにしうる。ワークピースは、他の移送室を通過させることなく同じ移送室入れたり同じ移送室から出したりすることができる。単一の処理室により同じワークピースに対して選択的なイオン注入とブランケットイオン注入との双方を実行しうる。従って、ワークピースの2つの流れを存在させることができ、循環により選択的なイオン注入に対するマスクの配置又は除去を補償しうるようにする。
【0052】
連鎖的なイオン注入を実行させる場合、反転ステーションを含めることができる。この反転ステーションによれば、キャリアを180°反転させるか(例えば、キャリアが基部を有さない場合)、或いはワークピースを180°反転させてこれらのワークピースを異なるキャリアに配置するか、同じキャリアに戻すようにしうる。ワークピース又はキャリアを反転させるのにロボットを用いることができる。この反転処理によればワークピースの両面にイオン注入を行うことができるものであり、このことはある種の太陽電池の設計に必要となりうるものである。一実施例では、ワークピースを、その一方の表面を上に向けてイオン注入装置に入れ、他方の表面を上に向けてイオン注入装置から出すようにしうる。
【0053】
反転ステーションは、同じ真空状態で処理室に連結させるか、又は同じ真空状態で移送ステーションに連結させるか、或いは真空以外で連結させることができる。移送ステーションは例えば、外部のコンベヤにより反転ステーションに連結することができる。特定の一実施例では、
図13のキャリア保管領域415又は
図14のキャリア保管領域415及び416を反転ステーションとして機能させることもできる。
【0054】
ここに開示した実施例は、連鎖的に又は非連鎖的に動作しうる。連鎖的イオン注入を実行しうるイオン注入によれば、ブランケットイオン注入及び選択的なイオン注入を、又は2つのブランケットイオン注入を、又は2つの選択的なイオン注入を、又は同じ1つ以上の処理室内で2つ以上のイオン注入の他の組合せを、真空を遮断することなく実行することができる。連鎖的なイオン注入を実行する単一のイオン注入装置を用いることにより例えば、製造設備における製造装置の設置面積を減少させるか、使用する交換部品又は消費部品を少なくするか、全費用を低減させることができる。その理由は、必要とするコンベヤ又はその他の構成要素が少なくて足りる為である。ここに開示した実施例を用いる連鎖的なイオン注入装置及び非連鎖的なイオン注入装置は双方共、現存するイオン注入装置に比べて処理能力を高めることができる。
【0055】
ここに開示した種々の構成要素(例えば、ワークピース移動システム、移送室)はモジュール形式の要素とすることができる。従って、標準の構成要素を組合せて異なる構成にすることができる。これらの異なる構成は異なる処理能力を有し、異なる種類のイオン注入を実行するか、又は異なる種類のワークピースにイオン注入するのに用いることができる。
【0056】
一例では、単一のイオン注入装置を用いて選択エミッタ(SE)太陽電池を製造することができる。他の例では、単一のイオン注入装置を用いてインターディジテイト加工された(櫛形)バックコンタクト(IBC)太陽電池を製造することができる。この場合、少なくとも2つの選択的なイオン注入を用い、これらの選択的なイオン注入がそれぞれ異なるイオン注入種を有するようにしうる。しかし、ある種のSE及びIBC太陽電池は、この場合よりも多くのイオン注入ステップを用いる。他の設計の太陽電池もここに開示したイオン注入の設計を用いてイオン注入しうる。
【0057】
本発明の範囲は、ここに開示した特定の実施例に限定されるものではない。実際に、上述したこと及び添付図面から当業者にとって明らかなように、他の種々の実施例及び変形例を、ここに開示したことに加えうるものである。すなわち、これらの他の実施例及び変形例は本発明の範囲に入るものである。更に、特定の目的のための特定の環境における特定の実施の関連で本発明を開示したが、当業者にとって認識されるように、本発明の有効性はこれらに限定されるものではなく、本発明は如何なる目的にも対する如何なる環境においても有効に実施しうるものである。従って、特許請求の範囲は上述した本発明の全範囲及び精神を考慮して解釈されるべきものである。