【実施例】
【0043】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は質量基準である。
【0044】
(実施例1)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)、未叩解コットンリンターを80:10:10の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量70g/m
2となるように第2層を先に抄造した。
【0045】
別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を97:3の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量30g/m
2となるように抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層表面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/m
2の壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0046】
(実施例2)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを90:10の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0047】
(実施例3)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを70:30の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0048】
(実施例4)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを50:50の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0049】
(実施例5)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを40:60の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0050】
(比較例1)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを100:0の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0051】
(比較例2)
実施例1の第1層の芯鞘状繊維状バインダーの代わりに帝人社製ポリエステル繊維(1.7デシテックス×5mm、バインダー性能を有しない有機繊維)を用いて、パルプ繊維、有機繊維を70:30の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0052】
(実施例6)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)、未叩解コットンリンター、繊維状バインダー(商品名:VPB107、クラレ社製、1.1デシテックス×3mm、PVA繊維)を70:5:20:5の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量80g/m
2となるように第2層を先に抄造した。
【0053】
次に、別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を80:20の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量20g/m
2となるように抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/m
2の壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0054】
(実施例7)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を70:0:20:10の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0055】
(実施例8)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を45:10:40:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0056】
(実施例9)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を79:10:6:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0057】
(実施例10)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を82:10:3:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0058】
(比較例3)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を85:10:0:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0059】
(比較例4)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、帝人社製ポリエステル繊維(1.7デシテックス×5mm、バインダー性能を有しない有機繊維)、PVA繊維を75:10:20:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0060】
(比較例5)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を80:0:20:0の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0061】
(比較例6)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)を投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量20g/m
2となるように第1層を先に抄造した。
【0062】
別のパルパー分散タンク中の水に未叩解コットンリンター、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を95:5の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量80g/m
2となるように抄造する。先に抄造した第1層と第2層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第1層表面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/m
2の壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0063】
(比較例7)
パルパー分散タンク中の水に未叩解コットンリンター、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を95:5の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第3層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量40g/m
2となるように第3層を先に抄造した。
【0064】
別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、繊維長1.2mmのポリエチレン繊維を90:10の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量40g/m
2となるように抄造する。先に抄造した第3層と第2層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第3層表面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量80g/m
2の2層の不織布を得た。
【0065】
この2層の不織布の第2層面に、第1層として500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)のみで抄造した坪量20g/m
2の紙をエチレン−酢酸ビニルエマルジョン接着剤(商品名:ボンドSP800、コニシ社製)を用いて貼り合わせて、坪量100g/m
2の壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0066】
(実施例11)
顔料として二酸化チタン(商品名:W−10、石原産業社製)、バインダーとしてアクリルエマルジョン(商品名:ボンコート(登録商標)MAT−200−E、DIC社製)及びポリビニルアルコール(商品名:PVA−110、クラレ社製)をそれぞれ100:20:5の比率で水に分散、混合し顔料塗工液を作製した。本塗工液をエアナイフ塗工装置にて実施例6の壁紙裏打ち用不織布の第2層面に乾燥質量で25g/m
2塗工後乾燥させ、第2層表面に顔料が付与されている壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0067】
(実施例12)
顔料をカオリン(商品名:ニュークレイ、エンゲルハード社製)に変えた以外は、実施例11と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0068】
(パルプの叩解度)
JIS P 8121に準じ、パルプのカナダ標準濾水度を測定した。
【0069】
試験1(寸法安定性)
壁紙裏打ち用不織布を温度20℃、湿度65%RHの環境下で24時間以上調湿し、サンプルの横方向の長さ(原寸)を正確に測定する。このサンプルを温度23℃の水中へ5分間浸した後、速やかにサンプルの長さを測定し、原寸に対する伸び率を求めた。0に近い程、寸法安定性がよい。従来の経験則より伸び率は0.6%以内が望ましく、最低でも1.0%以内が必要である。これらの結果を表1に示した。
【0070】
試験2(毛羽立ち)
壁紙裏打ち用不織布を温度23℃、湿度50%RH環境下で24時間調湿した後、MD方向32cm×CD方向15cmとなるように裁断した。なお、サンプリングの際は紙面を擦らないように十分注意をして行った。ガラス板上に坪量150g/m
2の上質紙2枚を敷き、クリップにて固定した。次に幅250mm×長さ130mm×厚さ15mmの金属直方体(重さ400g)にガーゼを4重に巻きつけ、上質紙面を2回擦りガーゼ面をならした。上質紙上に壁紙裏打ち用不織布を、ポリ塩化ビニル塗工面となる第2層を上にしてのせ、第2層表面を用意したガーゼを巻きつけた金属直方体にて、自重によりMD方向に向かって1回擦った。壁紙裏打ち用不織布の向きを変え、先ほどとは逆方向に向かって1回擦った。この壁紙裏打ち用不織布の擦った場所に、アプリケーターを用い、塗工厚200μmの塩化ビニルペーストを塗工し、145℃の乾燥機中に1分間入れ、塩化ビニルペーストをゲル化させた。ゲル化したポリ塩化ビニル層面の中央部に5cm×10cmの切り抜いた型紙をのせ、その中に発生した突起物の数を計測した。結果は、同様にして作製したサンプル4枚の計測値の合計(200cm
2あたりの個数)で評価し、計測した突起物の数が25個以下を「◎」、26〜50個を「○」、51〜150個を「△」、151個以上を「×」と評価した。これらの結果を表1に示した。
【0071】
試験3(ピール特性)
メチルセルロース系壁紙用粉末糊を5質量%濃度となるように水で希釈して十分撹拌した糊溶液を、壁紙裏打ち用不織布の第1層面にウェット塗工量が150g/m
2になるように塗工し、厚さ12.5mmの準不燃石膏ボード(商品名:タイガーハイクリンボード、吉野石膏社製)に貼着し、10日後に、幅5cm、長さ10cmの長方形に切れ目を入れて引き剥がし、剥がれた状態を観察した。石膏ボードと壁紙裏打ち用不織布の第1層面の間で綺麗に剥離できたものを「○」、石膏ボード表面に少量第1層面の一部が残るが全面剥離できたものを「△」、壁紙裏打ち用不織布の層間で剥離又は切れたものを「×」と評価した。これらの結果を表1に示した。
【0072】
試験4(印刷適性)
グラビア印刷機を用いて第2層面に水性インキ(黒)で印刷し、印刷状態を観察し、◎〜×の評価を行った。結果を表1に示した。
◎:印刷状態が非常に良好
○:印刷状態が良好
△:僅かに印刷抜けが見られる
×:印刷抜けが多く使用できない
【0073】
試験5(不透明度)
実施例6、11及び12の壁紙裏打ち用不織布の不透明度をJIS P 8149:2000に準じて測定し、隠蔽性の評価を行った。壁紙裏打ち用不織布の不透明度は84%以上が好ましい。より好ましくは86%以上であり、隠蔽性が良好となる。不透明度が84%未満の場合、壁紙メーカーにて改めて壁紙裏打ち用不織布に隠蔽性を付与する工程を省略することが可能となる。結果を表2に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜10の壁紙裏打ち用不織布は寸法安定性、毛羽立ち、ピール特性、印刷適性の全てが良好であり、壁紙裏打ち用として有用に活用できる。さらに実施例11及び12は、第2層表面に顔料を付与していることから不透明度が高く、石膏ボードやコンクリート等の壁面の透けを防止できる。比較例1及び2は、壁面に接する第1層に繊維状バインダーを配合していないため、ピール特性が悪かった。比較例3及び4は、第2層にコットンリンターを配合していないため、印刷適性が悪かった。比較例5は、第2層に繊維状バインダーを配合していないため、毛羽立ちが悪かった。比較例6は、第2層にコットンリンターを95質量%配合しているために印刷適性が非常に良好であったが、第1層に繊維状バインダーを配合していないため、ピール特性が悪かった。比較例7は、3層構造で第3層にコットンリンターを95質量%配合しているために、印刷適性が非常に良好であったが、第1層に繊維状バインダーを配合していないためピール特性が悪かった。
【0077】
実施例5の壁紙裏打ち用不織布は、寸法安定性、毛羽立ち、ピール特性、印刷適性の試験結果は良好であったが、試験3において、糊溶液を塗工した際に、糊溶液が浸透し易い傾向が確認された。実施例7と実施例6を比較すると、繊維状バインダーとしてPVA繊維を多く用いた実施例7の方が、毛羽立ちの抑制効果が高いことが確認された。