特許第6266547号(P6266547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266547
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】壁紙裏打ち用不織布
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/12 20060101AFI20180115BHJP
   D21H 27/20 20060101ALI20180115BHJP
   D21H 13/16 20060101ALI20180115BHJP
   D21H 19/36 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   D21H11/12
   D21H27/20 A
   D21H13/16
   D21H19/36 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-21287(P2015-21287)
(22)【出願日】2015年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-141922(P2016-141922A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光男
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−060061(JP,A)
【文献】 特開2009−287149(JP,A)
【文献】 特開2009−179900(JP,A)
【文献】 特開2007−077526(JP,A)
【文献】 特開2004−238772(JP,A)
【文献】 米国特許第04333863(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層構造の壁紙裏打ち用不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層はパルプ繊維とコットンリンターと繊維状バインダーとを含むことを特徴とする壁紙裏打ち用不織布。
【請求項2】
第2層の繊維状バインダーの一部又は全てがポリビニルアルコール繊維である請求項1記載の壁紙裏打ち用不織布。
【請求項3】
第2層表面に顔料が付与されている請求項1又は2記載の壁紙裏打ち用不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層構造の壁紙裏打ち用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低価格である上に、印刷加工、発泡加工、エンボス加工等の種々の加工適性を持ち合わせていることから、デザイン性、色柄等が豊富であるビニル壁紙等が室内装飾用内装材として広く用いられている。
【0003】
壁紙を壁に施工する際、壁紙裏面に澱粉や酢酸ビニルエマルジョンやメチルセルロース等の水溶性の糊をロールコーターで塗布し、糊付けした壁紙の糊面を内側にして折り畳み、壁に貼るまで暫く放置した後、壁面への貼り付け作業を行う。この糊付けから施工までの放置された状態では、パルプ繊維のみからなる壁紙用裏打ち紙は、水溶性の糊によってカールしたり、伸びたりする現象が起こる。また、石膏ボードやコンクリート等の壁面に貼り付けて数日後に完全に糊が乾燥すると、逆に収縮する現象が起こる。そのため、壁紙用裏打ち紙には乾燥状態と湿潤状態での寸法変化が小さいことが要求される。この対策として、ポリアルキレングリコールを塗布した壁紙(例えば、特許文献1参照)、スルファミン酸グアニジン誘導体、表面サイズ剤、バインダーからなる混合液を含浸した壁紙(例えば、特許文献2参照)が開示されている。また、寸法変化が小さい内装材としては、紙基材に合成繊維又は無機質材料を添加して、防カビを目的とした水中伸度が1%未満の壁紙等の内装材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
また、近年、居住空間の高級化と多様化が進んでおり、これに伴い新築住宅に比べ既設住宅のリフォームによる壁紙の貼り替え需要が多くなってきている。リフォームを行う際に問題となるのは、壁紙を壁から剥がす際の作業性である。従って、壁紙を壁面から剥がす際の剥離強度が弱い、いわゆるピール特性に優れた壁紙が求められている。ピール特性に優れた壁紙としては、糊にメチルセルロースを用いた壁紙が開示されている(例えば、特許文献4参照)。さらに、壁紙にはデザイン、意匠性を高めるための印刷やボリューム感を高めるための発泡性ポリ塩化ビニル樹脂のコーティングが行われ、表層が設けられる。そのため、壁紙用裏打ち紙の印刷やポリ塩化ビニル樹脂コーティングが施される側には、印刷適性やコーティング適性が必要となる。
【0005】
しかしながら、パルプ繊維のみからなる壁紙用裏打ち紙、紙基材に単に合成繊維又は無機質材料を添加した壁紙用裏打ち紙では、層間強度が弱いために壁紙の層間で剥離してしまい、壁面に壁紙の一部がランダムに残り作業性を低下させるばかりでなく、貼り替え後の仕上がりに凹凸ができてしまうという問題があった。また、毛羽立ちによって、印刷適性やコーティング適性が不十分だという問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するために、2層構造の壁紙裏打ち用抄合わせ不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層は有機繊維とパルプ繊維と繊維状バインダーとを含むことを特徴とする壁紙裏打ち用抄合わせ不織布が開示されている(例えば、特許文献5参照)
【0007】
また、印刷適性を高めるために、コットンリンターパルプと合成繊維からなる化粧シートやコットン繊維(コットンリンター又は綿パルプ)と合成繊維とからなる混抄紙と壁紙用裏打ち紙が積層された壁装材、コットン繊維と合成繊維とからなる第1の混抄紙と、紙パルプ繊維と合成繊維とからなる第2の混抄紙と、壁紙用裏打ち紙とが積層された壁装材等が提案されている。しかし、ピール特性を満足するものではなかった(例えば、特許文献6〜8参照)。
【0008】
また、近年、印刷仕上がりが鮮明で美しいことから、凹版印刷方法であるグラビア印刷が主流になっている。グラビア印刷は版の絵柄となる部分が凹状になっており、その凹部にインキを詰めて印刷する。この方法による印刷物は、凸版印刷方法や平版印刷方法による印刷物よりも厚くインキをつけることができるので迫力のあるものとなる。しかし、グラビア印刷で鮮明な印刷物を得るためには、印刷時に版の凹部にあるインキを瞬時に吸い上げることが要求される。また、同様に、スクリーン印刷、インクジェット印刷などでも、インキを瞬時に吸い上げることが要求される。このインキを吸い上げる能力について、従来の壁紙裏打ち用不織布では改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−81700号公報
【特許文献2】特開平10−273896号公報
【特許文献3】特開2001−303491号公報
【特許文献4】特開2005−154968号公報
【特許文献5】特開2009−179900号公報
【特許文献6】特開2007−92260号公報
【特許文献7】特開2003−127317号公報
【特許文献8】特開2003−155699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、寸法安定性が良好であると共に、ピール特性を有し、凹版印刷等の印刷における印刷適性やコーティング適性をも有する壁紙裏打ち用不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するため研究を行った結果、下記壁紙裏打ち用不織布を見出した。
【0012】
(1)2層構造の壁紙裏打ち用不織布において、第1層はパルプ繊維と繊維状バインダーとを含み、第2層はパルプ繊維とコットンリンターと繊維状バインダーとを含むことを特徴とする壁紙裏打ち用不織布。
【0013】
(2)第2層の繊維状バインダーの一部又は全てがポリビニルアルコール繊維である上記(1)記載の壁紙裏打ち用不織布。
【0014】
(3)第2層表面に顔料が付与されている上記(1)又は(2)記載の壁紙裏打ち用不織布。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂コーティングや印刷等の加工がなされて壁紙として使われる壁紙裏打ち用不織布に関し、第1層と第2層とで機能分離することにより、第2層が凹版印刷等の印刷における印刷適性やコーティング時の欠点となる毛羽立ちを抑え、コーティング適性を備え、第1層が壁面から壁紙を剥離する際のピール特性を付与し、さらに両層で寸法安定性を良好に備えた壁紙裏打ち用の不織布を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】叩解していないコットンリンターの繊維の電子顕微鏡写真である。
図2】叩解していない針葉樹からなるパルプ繊維の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の2層構造の壁紙裏打ち用不織布は、石膏ボードやコンクリート等からなる壁面又は壁紙用裏打ち用不織布の第1層表面に塗布された糊によって、壁面に貼り付けられる。本発明の壁紙裏打ち用不織布の第1層は、パルプ繊維を含むことで、繊維状バインダーを含んでいても、親水性に調整されている。また、適度に叩解されたパルプ繊維を用いることにより、繊維間に一定の空隙部を有し、吸水性が調整されている。パルプ繊維の叩解度は、300mlCSF以上が好ましく、400mlCSF以上がより好ましい。叩解度が300mlCSF未満の場合には、空隙部分が少なくなって吸水性が低下することがあり、糊が入り込みにくくなって直ぐに乾いてしまい、作業性が低下する場合がある。
【0018】
パルプ繊維は、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含むものとする。これらの繊維は、本発明の性能を阻害しない範囲であれば、フィブリル化されていてもなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等を使用してもよい。本発明の壁紙裏打ち用不織布の第1層に配合されるパルプ繊維の比率は、第1層全体に対して、50〜97質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、70〜93質量%がさらに好ましい。50質量%未満の場合、強度維持、寸法安定性は良好であるが、空隙部が多くなって、糊の必要量が増すことがある。一方、97質量%を超えると、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあり、また、貼り替え時に層間剥離を起こしてしまうことがある。さらに、寸法安定性が得られないこともある。
【0019】
第1層に配合される繊維状バインダーは、断面が扁平なパルプ繊維とは異なり、真円状又は真円状に近い形状であり、パルプ繊維同士の間に存在させることによって、空隙部を増す働きをすると共に、耐水性に乏しいパルプ繊維同士を接着させることによって湿潤状態においても強度を維持し、糊が塗布されたときの伸びや施工されて乾燥した後の収縮等の寸法変化を抑える働きがある。また、石膏ボードやコンクリート等の壁面に施工された壁紙をリフォーム時に剥がす際には、壁面と壁紙の間に存在する糊層で剥離させることが重要であるが、繊維状バインダーを配合しないパルプ繊維のみの場合や、パルプ繊維とバインダー性能を有しない合成繊維のみの場合には、層間強度が弱いために壁紙の層間で剥離してしまい、壁面に壁紙の一部がランダムに残り、作業性を低下させるばかりでなく、貼り替え後の仕上がりに凹凸ができてしまう。本発明では、繊維状バインダーを第1層に配合していることで、壁紙の層間剥離を抑制することが可能となっている。本発明において、第1層に配合される繊維状バインダーの比率は、第1層全体に対して、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、7〜30質量%がさらに好ましい。3質量%未満の場合、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあるばかりでなく、貼り替え時に層間剥離を起こしてしまうこともある。また、寸法安定性が得られない場合もある。一方、50質量%を超えると、強度維持、寸法安定性は良好であるが、空隙部が多くなって、糊の必要量が増すこともある。
【0020】
繊維状バインダーの繊度は、0.1〜5.6デシテックスが好ましく、0.6〜3.3デシテックスがより好ましく、1.1〜2.2デシテックスがさらに好ましい。0.1デシテックス未満の場合、不織布が緻密で薄いものになってしまうことがある。一方、5.6デシテックスを超えた場合、パルプ繊維との接点が少なくなり、湿潤状態下での強度維持が困難になることがあるばかりでなく、均一な地合いが取れないことがある。繊維状バインダーの繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがあり、十分な強度が得られないことがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり、均一な地合いが得られないことがある。
【0021】
繊維状バインダーとしては、単成分からなる単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、不織布の空隙部を保持したまま、耐水強度を向上させることができる。繊維状バインダーとしては、例えば、ポリプロピレンの短繊維、ポリエステルの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール(PVA)繊維のような繊維状バインダーも使用することができる。特に、芯鞘繊維が空隙部確保と強度発現の両方を備えているので好ましい。
【0022】
本発明において、第1層には、パルプ繊維、繊維状バインダーに加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、バインダー性能を有しないパルプ繊維以外の繊維を配合することができ、その結果、さらに空隙部を増すことができる。このような繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維等の合成繊維、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維等の無機繊維が挙げられる。
【0023】
本発明の壁紙裏打ち用不織布の第2層は、コットンリンターとパルプ繊維と繊維状バインダーを含む。この第2層表面は、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂等が表面にコーティングされたり、印刷がなされたりする面であることから、第2層は繊維状バインダーで寸法安定性を保たせ、コットンリンターで適当な空隙部を保持しつつ、凹版印刷等の印刷における印刷適性を高め、パルプ繊維で目を詰めてコーティングや印刷時の過剰な浸透を押さえて平坦性を良好なものに保たせている。さらに、繊維状バインダーの一部をPVA繊維にすることによって、毛羽立ちのより少ない平坦な表面が得られることから、コーティングや印刷後の表面も平滑になる。
【0024】
第2層において、パルプ繊維と繊維状バインダーとコットンリンターの配合量を合計で100質量%とした場合に、繊維状バインダーの比率は2〜40質量%、好ましくは4〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%である。2質量%未満であると寸法安定性が悪く、40質量%を超えるとコーティングや印刷時に浸透量が過剰となってしまうという問題が発生する場合がある。
【0025】
コットンリンターは、繊維表面から発生している直径がナノメートルサイズのフィブリル状の微細繊維を有しており、この微細繊維が水性インキや油性インキを瞬時に吸収し、コットンリンター幹部にインキを移動させることから、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等における印刷適性を高める。図1は叩解していないコットンリンターの繊維を倍率7000倍の電子顕微鏡で撮影した写真であり、コットンリンターは叩解することなく直径がナノメートルサイズのフィブリルが発生していることが分かる。図2は叩解していない針葉樹からなるパルプ繊維を倍率7000倍の電子顕微鏡で撮影した写真である。パルプ繊維表面から直径がナノメートルサイズのフィブリルは発生していないことが分かる。
【0026】
コットンリンターは叩解処理することなく使用できる。しかし、地合いを良くするために軽度な叩解処理をしてもよい。その場合の叩解度は、300mlCSF以上が好ましく、より好ましくは400mlCSF以上である。
【0027】
コットンリンターの比率は、パルプ繊維と繊維状バインダーとコットンリンターの配合量を合計で100質量%とした場合に、3〜50質量%、好ましくは、6〜45質量%、より好ましくは、10〜40質量%である。3質量%未満の場合、凹版印刷等の印刷での印刷適性向上の効果が低くなる場合があり、一方、50質量%を超えた場合、強度が出にくい場合や寸法安定性が低下する場合がある。
【0028】
パルプ繊維の比率は、パルプ繊維と繊維状バインダーとコットンリンターの配合量を合計で100質量%とした場合に、20〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、30〜80質量%がさらに好ましい。20質量%未満の場合、空隙部が多すぎるため、ポリ塩化ビニルのコーティング時に浸透量が過剰となってしまうことがあり、一方、95質量%を超えると寸法安定性が悪くなることがある。
【0029】
本発明において、第2層で使用するパルプ繊維としては、上記の第1層に用いるパルプ繊維を使用できる。また、第2層で使用する繊維状バインダーとしては、上記の第1層に用いる繊維状バインダーを使用できる。また、芯鞘繊維を好ましく使用できる。さらに、PVA繊維を単独又は芯鞘繊維と併用することがより好ましい。PVA繊維は、適当な原料PVAを用いて適当な条件で製造した繊維であり、常温の水ではほとんど溶解しないで繊維形態を保っているが、抄紙後のヤンキードライヤー面に第2層表面が接して加熱されると容易に溶解し始め、その瞬間にタッチロールのごとき設備で加圧することにより、繊維間にまたがって繊維状バインダーとなり、その後の脱水乾燥によって再凝固し、芯鞘繊維のみでは得られない毛羽立ちの少ない平滑な面が得られる。また、高温水中でなければ容易に離れない強力な紙層構成繊維となる。
【0030】
このPVA繊維の接着力に及ぼす影響は色々考えられるが、大別して水中軟化点、繊度、繊維長の3点から考えることができる。まず、水中軟化点について説明する。水中軟化点は、実際抄紙の場合、湿紙がドライヤーにより熱を受け、繊維状バインダーが溶け始めて接着機能を示す温度を大体示している。水中軟化点の低いPVA繊維を使用する程、接着の前提条件である繊維状バインダーの溶解が容易となり接着効果が大きくなる。水中軟化点の低い方が、接着効果の点からはよいが、ドライヤーへの付着は起こり易い。PVA繊維が溶解するためには、その水中軟化点以上に湿紙の温度が高くなる必要があり、従って乾燥温度が高い程接着効果が大きく、強度は向上する。湿紙中の水温がPVA繊維の水中軟化点以下では、繊維状バインダーの溶解が起こらず、従ってバインダー効果はまったく失われる。ヤンキードライヤーの場合、ドライヤーのスチーム温度は100〜160℃程度で、これに接触している湿紙の温度は60〜90℃と考えられるから、PVA繊維の水中軟化点として65〜85℃のものを選定すると十分な接着力を得ることができる。
【0031】
次に、繊度については、細くなるに従って強度は向上する。このことは同一質量比で添加した場合、細い繊維を用いると、添加本数が多くなって接着点の数が増えるため、接着力が大きくなるからである。但し、あまり繊度が小さくなりすぎると、不織布が緻密になりすぎることがある。PVA繊維の繊度は、特に限定しないが、0.1〜5.6デシテックスが好ましく、0.3〜3.3デシテックスがより好ましく、0.6〜2.2デシテックスがさらに好ましい。最後に、PVA繊維の繊維長は、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから抜け落ちることがあり、十分な強度が得られないことがある。一方、20mmを超えた場合、水に分散する際にもつれ等を起こすことがあり均一な地合いが得られないことがある。
【0032】
本発明において、第2層には、パルプ繊維、リンターパルプ、繊維状バインダーに加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、パルプ繊維及びコットンリンター以外のバインダー性能を有しない繊維を配合することができ、その結果、さらに空隙部を増すことができる。このような繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維等の合成繊維、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維等の無機繊維を挙げることができる。
【0033】
本発明の壁紙裏打ち用不織布の坪量は、特に限定しないが、15g/m以上が好ましく、60g/m以上がより好ましい。15g/m未満では、引張強度、硬さに問題があり、コーティングや印刷の際にカールの発生や断紙を起こす恐れがある。一方、カールや断紙の抑制効果は、坪量が200g/mを超えた領域ではほとんど変わらないため、坪量は200g/m以下とすることが好ましく、150g/m以下としてもよい。
【0034】
第1層の坪量は、5g/m以上が好ましく、20g/m以上がより好ましい。5g/m未満の場合、第1層表面に水溶性の糊を塗布する際に、第2層にまで糊が達してしまい、第1層の役割を果たさなくなってしまうことがある。一方、糊の浸透を抑制する効果は、坪量が100g/mを超えた領域ではほとんど変わらないため、第1層の坪量は100g/m以下とすることが好ましく、80g/m以下としてもよい。
【0035】
第2層の坪量は、10g/m以上が好ましく、30g/m以上がより好ましい。10g/m未満の場合、均一な地合いを得ることが困難となり、毛羽立ちが発生する恐れがある。一方、150g/mを超えた領域では、毛羽立ちの抑制効果はほとんど変わらないため、第2層の坪量は150g/m以下とすることが好ましく、120g/m以下としてもよい。
【0036】
本発明の壁紙裏打ち用不織布には、必要に応じてサイズ剤を配合することができる。サイズ剤としては、本発明の所望の効果を損なわないものであれば、強化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、合成サイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)など公知のサイズ剤のいずれをも用いることができる。
【0037】
この他に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、従来から使用されている各種アニオン性、ノニオン性、カチオン性、あるいは両性の歩留り向上剤、濾水剤、分散剤、紙力向上剤や粘剤が必要に応じて適宜選択して使用される。なお、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を目的に応じて適宜添加することも可能である。
【0038】
また、必要に応じて、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の填料や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の自己消火性を有する填料等も配合できる。特にコンクリートや石膏ボード等の壁面が透けて見えないようにするために隠蔽性、不透明度を高めるためには二酸化チタンが有用である。これら填料の添加量は、隠蔽性、難燃性、不織布の強度等を考慮して、壁紙裏打ち用不織布100質量%に対し、5〜30質量%である。
【0039】
本発明の壁紙裏打ち用不織布の第1層は、石膏ボードやコンクリート等の壁面に接着される面であり、第2層は印刷されたり、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂をコーティングされたりする面である。坪量比率は、特に限定されないが、壁紙としての印刷適性、コーティング適性、ボリューム感を付与することを考慮して、第1層より第2層の坪量を大きくすることが好ましい。
【0040】
本発明における壁紙裏打ち用不織布の製造方法は、例えば、以下のように行うことができる。第2層は、水に叩解後のパルプ繊維、繊維状バインダー、コットンリンター、必要に応じてサイズ剤等を混合分散した後、パルプスラリーとして貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ抄紙機に送り、目標の坪量となるように第2層を先に抄造する。次に、第1層は、水に叩解後のパルプ繊維、繊維状バインダー、必要に応じてサイズ剤等を混合分散した後、貯蔵タンクに送り、このスラリーを第1層用として一定量ずつ抄紙機に送り、先に抄造した第2層に第1層の目標の坪量となるように抄合わせる。さらに、この抄合わせたシートをプレス後、第2層面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し壁紙裏打ち用不織布とすることができる。
【0041】
本発明において得られた壁紙裏打ち用不織布の第2層表面には、発泡性ポリ塩化ビニル樹脂や印刷の目止め、毛羽立ちの抑制といった目的で、さらに顔料を付与することができる。顔料の付与は、顔料とバインダーを含む塗液を第2層表面に含浸又は塗工することによって可能である。顔料としては、抄紙工程で填料として添加可能なクレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン等を使用できる。特にコンクリートや石膏ボード等の壁面が透けて見えないようにするために、隠蔽性、不透明度を高めるには二酸化チタンが有用である。また、自己消火性をもたせるために、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を使用できる。壁紙裏打ち用不織布100質量%に対して、付与する顔料の割合は3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、7〜30質量%がさらに好ましい。
【0042】
顔料を付与する方法としては、抄紙工程の中間に設置された2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、コンマコーター、バーコーター、グラビアコーター、キスコーター等の含浸又は塗工装置による処理が可能であるが、これに限定されるものではない。また、抄紙後にオフマシン装置での含浸又は塗工処理も可能である。
【実施例】
【0043】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は質量基準である。
【0044】
(実施例1)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)、未叩解コットンリンターを80:10:10の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量70g/mとなるように第2層を先に抄造した。
【0045】
別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を97:3の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量30g/mとなるように抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層表面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/mの壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0046】
(実施例2)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを90:10の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0047】
(実施例3)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを70:30の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0048】
(実施例4)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを50:50の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0049】
(実施例5)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを40:60の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0050】
(比較例1)
実施例1の第1層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダーを100:0の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0051】
(比較例2)
実施例1の第1層の芯鞘状繊維状バインダーの代わりに帝人社製ポリエステル繊維(1.7デシテックス×5mm、バインダー性能を有しない有機繊維)を用いて、パルプ繊維、有機繊維を70:30の比率に変えた以外は、実施例1と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0052】
(実施例6)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)、未叩解コットンリンター、繊維状バインダー(商品名:VPB107、クラレ社製、1.1デシテックス×3mm、PVA繊維)を70:5:20:5の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量80g/mとなるように第2層を先に抄造した。
【0053】
次に、別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を80:20の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量20g/mとなるように抄造する。先に抄造した第2層と第1層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第2層面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/mの壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0054】
(実施例7)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を70:0:20:10の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0055】
(実施例8)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を45:10:40:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0056】
(実施例9)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を79:10:6:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0057】
(実施例10)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を82:10:3:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0058】
(比較例3)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を85:10:0:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0059】
(比較例4)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、帝人社製ポリエステル繊維(1.7デシテックス×5mm、バインダー性能を有しない有機繊維)、PVA繊維を75:10:20:5の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0060】
(比較例5)
実施例6の第2層のパルプ繊維、芯鞘状繊維状バインダー、コットンリンター、PVA繊維を80:0:20:0の比率に変えた以外は、実施例6と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0061】
(比較例6)
パルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)を投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第1層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量20g/mとなるように第1層を先に抄造した。
【0062】
別のパルパー分散タンク中の水に未叩解コットンリンター、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を95:5の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量80g/mとなるように抄造する。先に抄造した第1層と第2層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第1層表面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量100g/mの壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0063】
(比較例7)
パルパー分散タンク中の水に未叩解コットンリンター、芯鞘繊維状バインダー(商品名:メルティー4080、ユニチカ社製、2.2デシテックス×5mm)を95:5の比率で投入して10分間混合分散した後、第一貯蔵タンクに送り、第3層用として一定量ずつ第一抄紙ヘッドに送り、坪量40g/mとなるように第3層を先に抄造した。
【0064】
別のパルパー分散タンク中の水に500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)、繊維長1.2mmのポリエチレン繊維を90:10の比率で投入して10分間混合分散した後、第二貯蔵タンクに送り、第2層用として一定量ずつ第二抄紙ヘッドに送り、坪量40g/mとなるように抄造する。先に抄造した第3層と第2層を湿紙の状態で抄合わせた後にプレスを行い、第3層表面がヤンキードライヤー面に当たるようにして乾燥し、坪量80g/mの2層の不織布を得た。
【0065】
この2層の不織布の第2層面に、第1層として500mlCSFに叩解したNBKP(パルプ繊維)のみで抄造した坪量20g/mの紙をエチレン−酢酸ビニルエマルジョン接着剤(商品名:ボンドSP800、コニシ社製)を用いて貼り合わせて、坪量100g/mの壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0066】
(実施例11)
顔料として二酸化チタン(商品名:W−10、石原産業社製)、バインダーとしてアクリルエマルジョン(商品名:ボンコート(登録商標)MAT−200−E、DIC社製)及びポリビニルアルコール(商品名:PVA−110、クラレ社製)をそれぞれ100:20:5の比率で水に分散、混合し顔料塗工液を作製した。本塗工液をエアナイフ塗工装置にて実施例6の壁紙裏打ち用不織布の第2層面に乾燥質量で25g/m塗工後乾燥させ、第2層表面に顔料が付与されている壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0067】
(実施例12)
顔料をカオリン(商品名:ニュークレイ、エンゲルハード社製)に変えた以外は、実施例11と同様にして壁紙裏打ち用不織布を得た。
【0068】
(パルプの叩解度)
JIS P 8121に準じ、パルプのカナダ標準濾水度を測定した。
【0069】
試験1(寸法安定性)
壁紙裏打ち用不織布を温度20℃、湿度65%RHの環境下で24時間以上調湿し、サンプルの横方向の長さ(原寸)を正確に測定する。このサンプルを温度23℃の水中へ5分間浸した後、速やかにサンプルの長さを測定し、原寸に対する伸び率を求めた。0に近い程、寸法安定性がよい。従来の経験則より伸び率は0.6%以内が望ましく、最低でも1.0%以内が必要である。これらの結果を表1に示した。
【0070】
試験2(毛羽立ち)
壁紙裏打ち用不織布を温度23℃、湿度50%RH環境下で24時間調湿した後、MD方向32cm×CD方向15cmとなるように裁断した。なお、サンプリングの際は紙面を擦らないように十分注意をして行った。ガラス板上に坪量150g/mの上質紙2枚を敷き、クリップにて固定した。次に幅250mm×長さ130mm×厚さ15mmの金属直方体(重さ400g)にガーゼを4重に巻きつけ、上質紙面を2回擦りガーゼ面をならした。上質紙上に壁紙裏打ち用不織布を、ポリ塩化ビニル塗工面となる第2層を上にしてのせ、第2層表面を用意したガーゼを巻きつけた金属直方体にて、自重によりMD方向に向かって1回擦った。壁紙裏打ち用不織布の向きを変え、先ほどとは逆方向に向かって1回擦った。この壁紙裏打ち用不織布の擦った場所に、アプリケーターを用い、塗工厚200μmの塩化ビニルペーストを塗工し、145℃の乾燥機中に1分間入れ、塩化ビニルペーストをゲル化させた。ゲル化したポリ塩化ビニル層面の中央部に5cm×10cmの切り抜いた型紙をのせ、その中に発生した突起物の数を計測した。結果は、同様にして作製したサンプル4枚の計測値の合計(200cmあたりの個数)で評価し、計測した突起物の数が25個以下を「◎」、26〜50個を「○」、51〜150個を「△」、151個以上を「×」と評価した。これらの結果を表1に示した。
【0071】
試験3(ピール特性)
メチルセルロース系壁紙用粉末糊を5質量%濃度となるように水で希釈して十分撹拌した糊溶液を、壁紙裏打ち用不織布の第1層面にウェット塗工量が150g/mになるように塗工し、厚さ12.5mmの準不燃石膏ボード(商品名:タイガーハイクリンボード、吉野石膏社製)に貼着し、10日後に、幅5cm、長さ10cmの長方形に切れ目を入れて引き剥がし、剥がれた状態を観察した。石膏ボードと壁紙裏打ち用不織布の第1層面の間で綺麗に剥離できたものを「○」、石膏ボード表面に少量第1層面の一部が残るが全面剥離できたものを「△」、壁紙裏打ち用不織布の層間で剥離又は切れたものを「×」と評価した。これらの結果を表1に示した。
【0072】
試験4(印刷適性)
グラビア印刷機を用いて第2層面に水性インキ(黒)で印刷し、印刷状態を観察し、◎〜×の評価を行った。結果を表1に示した。
◎:印刷状態が非常に良好
○:印刷状態が良好
△:僅かに印刷抜けが見られる
×:印刷抜けが多く使用できない
【0073】
試験5(不透明度)
実施例6、11及び12の壁紙裏打ち用不織布の不透明度をJIS P 8149:2000に準じて測定し、隠蔽性の評価を行った。壁紙裏打ち用不織布の不透明度は84%以上が好ましい。より好ましくは86%以上であり、隠蔽性が良好となる。不透明度が84%未満の場合、壁紙メーカーにて改めて壁紙裏打ち用不織布に隠蔽性を付与する工程を省略することが可能となる。結果を表2に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜10の壁紙裏打ち用不織布は寸法安定性、毛羽立ち、ピール特性、印刷適性の全てが良好であり、壁紙裏打ち用として有用に活用できる。さらに実施例11及び12は、第2層表面に顔料を付与していることから不透明度が高く、石膏ボードやコンクリート等の壁面の透けを防止できる。比較例1及び2は、壁面に接する第1層に繊維状バインダーを配合していないため、ピール特性が悪かった。比較例3及び4は、第2層にコットンリンターを配合していないため、印刷適性が悪かった。比較例5は、第2層に繊維状バインダーを配合していないため、毛羽立ちが悪かった。比較例6は、第2層にコットンリンターを95質量%配合しているために印刷適性が非常に良好であったが、第1層に繊維状バインダーを配合していないため、ピール特性が悪かった。比較例7は、3層構造で第3層にコットンリンターを95質量%配合しているために、印刷適性が非常に良好であったが、第1層に繊維状バインダーを配合していないためピール特性が悪かった。
【0077】
実施例5の壁紙裏打ち用不織布は、寸法安定性、毛羽立ち、ピール特性、印刷適性の試験結果は良好であったが、試験3において、糊溶液を塗工した際に、糊溶液が浸透し易い傾向が確認された。実施例7と実施例6を比較すると、繊維状バインダーとしてPVA繊維を多く用いた実施例7の方が、毛羽立ちの抑制効果が高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の活用例として、寸法安定性が良好でピール特性を有し、印刷適性やコーティング適性を有する壁紙等が挙げられる。
図1
図2