(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266552
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】燃料取扱装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
G21C 19/18 20060101AFI20180115BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
G21C19/18 D
B66C15/00 B
B66C15/00 J
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-40934(P2015-40934)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-161424(P2016-161424A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】花田 瞬
(72)【発明者】
【氏名】岩間 国彦
(72)【発明者】
【氏名】長野 真士
(72)【発明者】
【氏名】中野 健
【審査官】
藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−178884(JP,A)
【文献】
特開2011−088560(JP,A)
【文献】
特開2011−257220(JP,A)
【文献】
特開2002−082193(JP,A)
【文献】
特開平10−010283(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0085177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/18
G21C 19/00
B66C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用軌道上を走行台車車輪を介して移動する走行台車と、該走行台車上に設置され、前記走行用軌道とは直交する方向に設置されている横行用軌道上を横行台車車輪を介して移動する横行台車と、該横行台車に搭載され、原子炉圧力容器内の燃料集合体を前記原子炉圧力容器内から取出すために把持する燃料把持装置とを備え、
前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪が弾性体で形成され、かつ、地震発生の検知信号に基づいて、前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の剛性を変化させる剛性制御装置を備えていることを特徴とする燃料取扱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料取扱装置において、
前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪はゴムタイヤから成り、該ゴムタイヤの空気圧が、地震発生の検知信号に基づいて前記剛性制御装置により変えられることを特徴とする燃料取扱装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料取扱装置において、
前記ゴムタイヤの周囲が、異種材料で囲まれていることを特徴とする燃料取扱装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料取扱装置において、
前記剛性制御装置は、装置本体に設置された統合制御装置と、地震情報を取得し、取得した地震情報を前記統合制御装置に送信する地震検知装置と、前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の空気圧を監視し、前記走行台車車輪及び横行台車車輪の状態を前記統合制御装置へフィードバックすると共に、前記統合制御装置からの指令に基づき前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の空気圧を調整する空気圧制御装置とから成ることを特徴とする燃料取扱装置。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料取扱装置において、
前記空気圧制御装置は、予め確認されている前記燃料取扱装置への地震入力が低減される固有周期に対応した剛性となるまで、前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の空気圧を変化させることを特徴とする燃料取扱装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料取扱装置において、
前記走行台車及び/又は横行台車には、地震時に前記走行台車及び/又は横行台車が前記走行用軌道及び/又は横行用軌道から脱線するのを防止する脱線防止手段が設置されていることを特徴とする燃料取扱装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料取扱装置において、
前記走行用軌道及び横行用軌道は、レール又はピットであることを特徴とする燃料取扱装置。
【請求項8】
走行用軌道上を走行台車車輪を介して移動する走行台車と、該走行台車上に設置され、前記走行用軌道とは直交する方向に設置されている横行用軌道上を横行台車車輪を介して移動する横行台車と、該横行台車に搭載され、原子炉圧力容器内の燃料集合体を前記原子炉圧力容器内から取出すために把持する燃料把持装置とを備えた燃料取扱装置を運転する際に、
地震発生の検知信号に基づいて、弾性体で形成された前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の剛性を剛性制御装置で変化させることを特徴とする燃料取扱装置の運転方法。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料取扱装置の運転方法において、
前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪はゴムタイヤから成り、該ゴムタイヤの空気圧が、地震発生の検知信号に基づいて前記剛性制御装置により変えられることを特徴とする燃料取扱装置の運転方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の燃料取扱装置の運転方法において、
装置本体に設置された統合制御装置と、地震情報を取得し、取得した地震情報を前記統合制御装置に送信する地震検知装置と、前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の空気圧を監視し、前記走行台車車輪及び横行台車車輪の状態を前記統合制御装置へフィードバックすると共に、前記統合制御装置からの指令に基づき前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の空気圧を調整する空気圧制御装置とから成る前記剛性制御装置で、前記走行台車車輪及び横行台車車輪の空気圧を変えることを特徴とする燃料取扱装置の運転方法。
【請求項11】
請求項10に記載の燃料取扱装置の運転方法において、
予め確認されている前記燃料取扱装置への地震入力が低減される固有周期に対応した剛性となるまで、前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の空気圧を、前記空気圧制御装置で変えることを特徴とする燃料取扱装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料取扱装置及びその運転方法に係り、特に、原子力施設に設置され、原子炉圧力容器内の燃料集合体の装荷や取替え作業を行うものに好適な燃料取扱装置及びその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料取扱装置について、
図1〜
図5を用いて説明する。
図1は、本発明に係わる燃料取扱装置の全体構成を示し、
図2は、燃料取扱装置による炉心からの燃料集合体の取り出しを説明するための図である。
【0003】
該図に示す如く、原子力施設の燃料取扱装置1は、原子炉起動前及び原子炉の停止中に行われる定期検査時に、原子炉圧力容器2内の燃料集合体12の装荷や取替え作業を行うものである。
【0004】
この燃料取扱装置1による作業は、使用済みの燃料集合体12を原子炉圧力容器2から取出し、燃料貯蔵プール3内に設置された使用済み燃料貯蔵ラック13へ移送する作業や、新しい燃料集合体12を原子炉圧力容器2に装荷する作業であり、これらの作業と合わせて、炉心内において燃焼度のばらつきがある燃料集合体12の配置換えを行うようにしている。
【0005】
上述した燃料取扱装置1は、通常、原子炉ウェルプール4を跨ぐように設置され、オペレーティングフロア5上に敷設された走行レール6上を自在に走行可能な走行台車7と、その走行台車7上に走行レール6と直交する直角な水平方向へ設置された横行レール8上を自在に横行可能な横行台車9と、横行台車9上に搭載された燃料把持装置10とから概略構成されている。この燃料把持装置10の下部先端の把持機構11で燃料集合体12をつかみ、燃料把持装置10を引上げた状態で、走行、横行し、燃料集合体12の移送を行う。
【0006】
従来、上述した走行台車7及び横行台車9は、鉄製の車輪を介して走行レール6及び横行レール8と取合っており、両者の取合い部は剛構造となっている。
【0007】
また、燃料取扱装置1には、地震時に走行台車7及び/又は横行台車9が走行レール6及び/又は横行レール8から脱線や転倒するのを防止するため、
図3に示すように、走行レール6及び/又は横行レール8を両側から挟みこむように転倒防止金具14が走行台車7及び/又は横行台車9に取り付けられている。
【0008】
この転倒防止金具14は、据付時に走行レール6及び/又は横行レール8との間にある程度の隙間を設けて設置されており、通常運用時は走行レール6及び/又は横行レール8と接触しない構造であるが、地震時などには走行レール6及び/又は横行レール8と接触することで、走行台車7及/又は横行台車9の走行レール6及び/又は横行レール8の直角方向(鉛直方向と水平方向)への変位を制限し、走行台車7及び/又は横行台車9が脱線若しくは転倒することを防止している。
【0009】
走行台車7及び/又は横行台車9の脱線、転倒を防止するための類似の構造として、
図4に示す脱線防止金具15や
図5に示す干渉壁16などがある。走行レール6及び/又は横行レール8に対する横方向の変位に対しては、脱線防止金具15を走行レール6及び/又は横行レール8と接触させるか、若しくは走行台車7及/又は横行台車9を干渉壁16と接触させることで、走行台車7及び/又は横行台車9の脱線を防止している。鉛直方向の変位に対しては、脱線防止金具15の長さや干渉壁16の高さを、走行台車7及び/又は横行台車9の浮上がり以上に設定することで脱線を防止している。
【0010】
なお、燃料取扱装置1の耐震性確保に対する関連技術として、下記の特許文献1〜3に開示されている技術が知られている。
【0011】
特許文献1には、上述したような燃料取扱装置において、従来、設計時に考慮されている地震時の車輪のすべり効果による地震応答低減効果を更に上回る効果を得るために、地震発生感知時に台車の制動を解除する車輪制動解除装置と、地震終了感知時に台車を制動状態にする車輪制動装置とを有することが記載されている。
【0012】
また、特許文献2には、上述したような燃料取扱装置において、他の機器と干渉する位置に新たな構造物を設置することなく、主要部材を重量化させないで地震時の荷重を低減するため、走行台車を構成するガーダ及びサドルの取合い部に、ガーダとサドルをバネで接合して撓ませるバネ構造を用いた免震装置を有することが記載されている。
【0013】
更に、特許文献3には、上述したような燃料取扱装置において、入力される地震動を低減するために、地震の予知情報に基づき、地震動到達前に横行台車を最も地震動の影響の少ない固有周期に対応する横行台車位置に移動させる制御装置を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−178884号公報
【特許文献2】特開2012−154766号公報
【特許文献3】特開2011−43400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の燃料取扱装置の耐震性確保の手段としては、燃料取扱装置本体の部材及び転倒防止金具やレールを地震応答に耐える強度で設計し、地震動の見直しなどで強度が不足した場合は、部材の追設による補強や小規模な構造については取替えにより耐震性を確保することが一般的である。
【0016】
しかしながら、これらの対応は燃料取扱装置の質量を増加させてしまう場合があり、レールの基礎構造といったコンクリート中に埋設されていて、部材の追設や構造変更といった対応が困難な部位への荷重増加を招く恐れがある。
【0017】
特に、2011年の東日本大震災を受け、各原子力施設にて設定される基準地震動の震度が大きくなる傾向にあり、機器の耐震性を確保するために、部材追設等による耐震性の向上が考えられるが、部材の追設工事は原子力施設内での作業が必要となるため、規模の大きな構造部分の補強となると、工事自体が困難な場合が出てくる恐れがある。また、本体質量も増加するため、走行レール下の基礎構造への負担も大きくなり、更に、工事規模を広げる必要が生じる可能性もある。
【0018】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、走行台車や横行台車の主要部材の補強、構造変更による重量化を招くことなく耐震性確保が可能な燃料取扱装置及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の燃料取扱装置は、上記目的を達成するために、走行用軌道上を走行台車車輪を介して移動する走行台車と、該走行台車上に設置され、前記走行用軌道とは直交する方向に設置されている横行用軌道上を横行台車車輪を介して移動する横行台車と、該横行台車に搭載され、原子炉圧力容器内の燃料集合体を前記原子炉圧力容器内から取出すために把持する燃料把持装置とを備え、前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪が弾性体で形成され、かつ、地震発生の検知信号に基づいて、前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の剛性を変化させる剛性制御装置を備えていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の燃料取扱装置の運転方法は、上記目的を達成するために、走行用軌道上を走行台車車輪を介して移動する走行台車と、該走行台車上に設置され、前記走行用軌道とは直交する方向に設置されている横行用軌道上を横行台車車輪を介して移動する横行台車と、該横行台車に搭載され、原子炉圧力容器内の燃料集合体を前記原子炉圧力容器内から取出すために把持する燃料把持装置とを備えた燃料取扱装置を運転する際に、地震発生の検知信号に基づいて、弾性体で形成された前記走行台車及び横行台車のそれぞれの前記走行台車車輪及び横行台車車輪の剛性を剛性制御装置で変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、走行台車や横行台車の主要部材の補強、構造変更による重量化を招くことなく耐震性確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係わる燃料取扱装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した燃料取扱装置による炉心からの燃料集合体の取り出しを説明するための図である。
【
図3】従来の燃料取扱装置に採用されている転倒防止金具の例を示す斜視図である。
【
図4】従来の燃料取扱装置に採用されている転倒防止金具の他の例を示す斜視図である。
【
図5】従来の燃料取扱装置に採用されている転倒防止金具の更に他の例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の燃料取扱装置の実施例1における主要な構成を示す図である。
【
図7】本発明の燃料取扱装置の実施例1における動作を説明するためのフロー図である。
【
図8(a)】本発明の燃料取扱装置の実施例1における効果を説明するための図であり、ゴムタイヤで構成される走行台車車輪20a又は横行台車車輪20b内の空気圧が高い状態(通常運用時)を示すものである。
【
図8(b)】本発明の燃料取扱装置の実施例1における効果を説明するための図であり、ゴムタイヤで構成される走行台車車輪20a又は横行台車車輪20b内の空気圧を下げた状態(地震時)を示すものである。
【
図9】
図8(a)及び
図8(b)に基づく周期と地震加速度の関係を示す特性図である。
【
図10】本発明の燃料取扱装置の実施例2の車輪と走行用ピットの関係を示す断面図である。
【
図11】本発明の燃料取扱装置の実施例3の車輪を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の燃料取扱装置及びその運転方法を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0024】
本発明の燃料取扱装置の実施例1の構成を
図6に、また、実施例1の燃料取扱装置の動作の流れを
図7に示す。なお、本実施例の燃料取扱装置の全体構成は
図1及び
図2に示す構成と略同様であり、ここでは、本発明に関連する部分の説明とする。
【0025】
図6に示す如く、本実施例の燃料取扱装置1は、走行用軌道である走行レール6上をゴムタイヤから成る弾性体で形成された走行台車車輪20aを介して移動する走行台車7と、この走行台車7上に設置され、走行レール6とは直交する方向に設置されている横行用軌道である横行レール8上をゴムタイヤから成る弾性体で形成された横行台車車輪20bを介して移動する横行台車9と、この横行台車9に搭載され、原子炉圧力容器2内の燃料集合体12を原子炉圧力容器2内から取出すために把持する燃料把持装置10と、地震発生の検知信号に基づいて、走行台車7及び横行台車9の走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bの空気圧を変化させる剛性制御装置とから概略構成されている。
【0026】
そして、上述の剛性制御装置は、装置本体に設置された統合制御装置18と、地震情報を取得し、取得した地震情報を統合制御装置18に送信する地震検知装置17と、走行台車7及び横行台車9の走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bの空気圧を監視し、走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bの状態を統合制御装置18へフィードバックすると共に、統合制御装置18からの指令に基づき走行台車7及び横行台車9の走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bの空気圧を調整する空気圧制御装置19a及び19bと、空気圧を回復させる際に利用する空気圧縮機21a及び21bとから構成されている。
【0027】
また、空気圧制御装置19a及び19bは、予め確認されている燃料取扱装置1への地震入力が低減される固有周期に対応した剛性となるまで、走行台車7及び横行台車9の走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bの空気圧を下げるようにしている。具体的には、統合制御装置18からの指令に基づき空気圧制御装置19a及び19bが走行台車7及び横行台車9の走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bの空気圧を下げ、同時に各車輪の空気圧の状態をリアルタイムで統合制御装置18へフィードバックすることで、燃料取扱装置1の固有周期が予め確認されている周期となるように、各車輪の空気圧を制御するものである。
【0028】
更に、詳細に説明すると、本実施例の燃料取扱装置1は、気象庁から発信される緊急地震速報や原子力施設の地震計などから地震情報を取得し、地震の検知信号を燃料取扱装置1の本体(具体的には走行台車7)に設置された統合制御装置18へ送信する機能を有する地震検知装置(図示しない原子炉建屋に設置され、例えば、加速度センサから成る)17を有する。また、走行台車7及び横行台車9のゴムタイヤで構成される走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bのタイヤ内空気圧を常時監視し、走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bの状態を統合制御装置18へ常時フィードバックする機能を有し、かつ、統合制御装置18からの指令に基づきタイヤ内空気圧を調整する機能を有した空気圧制御装置19a及び19bと空気圧縮機21a及び21bを有している。
【0029】
燃料取扱装置1の本体に設置された統合制御装置18は、地震検知装置17から取得した情報に基づき、空気圧制御装置19a及び19bに、空気圧を調整して走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bの剛性を変化させる機構の作動指令を出す。この指令に基づき、予め数値計算等で確認した「有意に地震入力が低減される固有周期」に対応した剛性となるまで走行台車車輪20a及び横行台車車輪20bのタイヤ内空気圧を変化させるものである。
【0030】
図7を用いて上述した本実施例の燃料取扱装置1の動作を説明する。
【0031】
図7に示す如く、地震検知装置17で取得した地震情報が統合制御装置18へ送信されることで地震情報を検出(S1)して地震情報を取得したか否かを判断(S2)し、地震情報を取得していないのであれば通常状態を維持(S3)しスタートへ戻る。一方、地震情報を取得していれば空気圧制御装置19a及び19bへ作動指令(S4)を送信し、空気圧制御装置19a及び19bによりタイヤ(走行台車車輪20a及び横行台車車輪20b)内の減圧を開始する(S5)。
【0032】
また、空気圧制御装置19a及び19bでは、タイヤ(走行台車車輪20a及び横行台車車輪20b)内の圧力を監視しており(S6)、空気圧制御装置19a及び19bで監視されたタイヤ(走行台車車輪20a及び横行台車車輪20b)内の圧力レベルが予め設定された圧力レベルより小さいか否かを判断している(S7)。ここで、タイヤ(走行台車車輪20a及び横行台車車輪20b)内の圧力レベルが予め設定された圧力レベルより小さくなければS5に戻り、タイヤ(走行台車車輪20a及び横行台車車輪20b)内の圧力レベルが予め設定された圧力レベルより小さければ、タイヤ(走行台車車輪20a及び横行台車車輪20b)内の減圧を停止(S8)し、免震状態を維持(S9)し終了する。
【0033】
次に、
図8(a)、
図8(b)及び
図9を用いて本発明の燃料取扱装置の実施例1における効果を説明する。
【0034】
図8(a)は、ゴムタイヤで構成される走行台車車輪20a又は横行台車車輪20b内の空気圧が高い状態(通常運用時)であり、
図8(b)は、ゴムタイヤで構成される走行台車車輪20a又は横行台車車輪20b内の空気圧を下げた状態(地震時)である。なお、
図8(a)及び
図8(b)において、22は車軸、23はホイールである。
【0035】
図8(a)及び
図8(b)に示す如く、ゴムタイヤで構成される走行台車車輪20a又は横行台車車輪20b内の空気圧を下げると鉛直剛性がk
1からk
2へ低下することで、燃料取扱装置1の鉛直方向の剛性がK
1からK
2へ低下し、これにより、
図9に示す如く、下記の数1で求められる卓越周期がT
1から数2で求められるT
2へ伸長する。
【0036】
このように、卓越周期(T
1)を地震加速度が小さい周期領域(卓越周期(T
2))へ遷移することで、燃料取扱装置1への地震入力(
図9の地震加速度)が低減されることがわかる。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
また、上述した例は、震源が原子力施設から離れており、地震到達前に、燃料取扱装置1の剛性を変化させた場合であるが、緊急地震速報の遅れや震源が原子力施設に近い場合は、地震到達後に空気圧制御装置19a及び19bを作動させることになる。しかし、この場合でもリアルタイムで剛性が変化することで、燃料取扱装置1の固有周期も地震中に変化し続けるため、特定の固有周期における共振が回避され、地震応答が増幅するのを防止する効果がある。
【0040】
このように、本実施例の燃料取扱装置は、地震の検知信号をもとに、地震到達前或いは地震時にリアルタイムで、走行台車の主要構造であるガーダ端部の支持剛性を変化させることが可能である。これにより、予め地震動の影響が少ない固有周期に対応する剛性へ変化させることで地震入力を低減若しくは地震到達後でもリアルタイムで剛性を変化させることで地震応答が増幅するのを防止することが可能である。
【0041】
従って、
従って、本実施例の燃料取扱装置は、走行台車や横行台車の主要部材の補強、構造変更による重量化を招くことなく燃料取扱装置本体の耐震性確保が可能である。
【実施例2】
【0042】
図10に、本発明の燃料取扱装置1の実施例2を示す。上述した実施例1では、走行用軌道として走行レール6又は横行レール9を用いたが、本実施例では、走行用軌道として凹状の走行用ピット24を用いたものである。
【0043】
実施例1で説明した燃料取扱装置1の走行台車車輪20a又は横行台車車輪20bを、本実施例の走行用ピット24内を直接走行させても実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例3】
【0044】
図11及び
図12に、本発明の燃料取扱装置1の実施例3を示す。上述した実施例1では、走行台車車輪20a又は横行台車車輪20bをゴムタイヤで構成していたが、本実施例では、ゴムタイヤの周囲をゴムタイヤとは異種の材料25で囲み、走行面とゴムタイヤが直接接地しないようにしたものである。
【0045】
このような構成の本実施例であっても、実施例1と同様な効果を得ることができるし、実施例3と実施例2を組み合わせても良いことは言うまでもない。
【0046】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…燃料取扱装置、2…原子炉圧力容器、3…燃料貯蔵プール、4…原子炉ウェルプール、5…オペレーティングフロア、6…走行レール、7…走行台車、8…横行レール、9…横行台車、10…燃料把持装置、11…把持機構、12…燃料集合体、13…燃料貯蔵ラック、14…転倒防止金具、15…脱線防止金具、16…干渉壁、17…地震検知装置、18…統合制御装置、19a、19b…空気圧制御装置、20a…走行台車車輪、20b…横行台車車輪、21a、21b…空気圧縮機、22…車軸、23…ホイール、24…走行用ピット、25…異種の材料。