(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生コンクリート製造原料となる、セメント、骨材、水、混和剤の各材料を切り出すための切出部、この切出部から切り出された各材料を混練する混練装置、この混練装置で混練された生コンクリートを搬送車に排出する排出部を備えた生コンクリート製造設備であって、前記各切出部に動荷重計測部を、前記混練装置から前記排出部に至る製造部位に、生コンクリート温度計測部、単位水量計測部、空気量計測部を、各々設け、さらに、今製造している生コンクリートの搬送先の搬送時間とその道中の想定外気温及び目標スランプ割増値とを入力する入力部と、前記各計測部で計測した各材料量に基づいて少なくとも細骨材率を算出すると共に、これら計測値、算出値、入力値、のそれぞれの関係テーブルを記憶したデータ部から読み出したそれぞれの値による混和剤添加量の総和を求め、オーダーされた推定強度が搬送先で発現されるために必要な該オーダーされた混和剤添加量に対する該混和剤の調整量を算出する制御部と、を備えたことを特徴とする生コンクリート製造設備。
【背景技術】
【0002】
生コンクリートの製造工程では、生コンクリートの材料となるセメント、骨材、水、混和剤(生コンクリートの硬化の促進又は遅延の化学材料)の計量と、各材料を混練装置に投入する順序及び混練時間と、混練後の生コンクリート性状を管理するようにしている。
【0003】
そして、生コンクリート工場において出荷後には、出荷日に生コンクリート打設時の一部を試料として取り出し、1週間後又は4週間後に試料とした硬化したコンクリートに対して強度試験などを行って品質の確認を行っていた。
【0004】
上記の出荷後の品質管理(確認)では、当然に1週間後又は4週間後にしか強度を判断できず、かつその判断を待って出荷するという慣習がないので品質不良が発覚するのが現場でコンクリートを打設した後ということがあった。
【0005】
そこで、現場でコンクリート打設後に品質不良が発覚する事態を回避するために、従来では、製造時に、依頼(オーダー)条件に基づいて、打設(硬化)した際の強度を計算によって予測(これを「推定強度」という)、この推定強度を満たすように、生コンクリートを製造するようにしている。
【0006】
この推定強度を満たすように製造された生コンクリートは、打設後、1週間又は4週間経過したコンクリートの強度試験においても、実用上の大きな問題となるような相違が現れることはないものの誤差範囲が広く、生コンクリートの製造における品質管理上の課題とされていた。
【0007】
推定強度と実際の強度(試験)との間で誤差が生じる要因の一つとしては、生コンクリート製造時における単位水量が挙げられる。単位水量とは、生コンクリートの製造時に用いられる、セメント、骨材、水、混和剤、の動荷重に対する、混練後の生コンクリートにおける水分量を意味する。単位水量が不正確であると推定強度と強度試験との値が乖離することとなるが、この点、本出願人は既に特許文献1において改善案を提案した。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1では推定強度と実際の強度との誤差をかなり小さくできたが、一定の誤差範囲より小さくすることができず、高品質で信頼性の高い生コンクリートを製造しようとすると、さらに精度を高める(誤差幅を狭くする)必要があった。
【0009】
そこで、上記の単位水量とは別の要因について検討した結果、運搬時間と道中の外気温などを見直して、混和剤の調整を行うことで、さらに誤差幅を狭くすることを知見した。下記の特許文献2,3は、温度管理について提案している。
【0010】
特許文献2では、製造から打設完了までの運搬時間を含む時間、これら一連の作業における外気温度、に起因して生コンクリートの性状に変化が生じること、及びこれを見越して混和剤を投入すると該混和剤と生コンクリートとの反応速度に一連の作業時間が制限を受けること、並びに日本工業規格(JIS)や国際品質標準化機構(ISO9000番代)では、ある許容条件下ならば製造から打設完了までの時間と温度が与える影響は問題がないとされていること、により、現状、厳密な品質管理が困難であるとしている。
【0011】
すなわち、特許文献2は、上記問題を解消するために、生コンクリート製造工場を1次とした場合に、該工場ではない例えば現場を2次とし、この2次練り混ぜ機能付き生コンクリート投入装置に供給される生コンクリートの温度などを測定して記録し、品質を使用目的に合致するように調整添加した混和剤を計測して記録し、揺動式充填方法などから1種又は2種以上を選択して成型用型枠及び生コンクリートに充填エネルギーを調整しながら付与する際の充填エネルギーの大きさと充填時間を成型時刻と合わせて測定して記録する、という手法が提案されている。
【0012】
特許文献3では、施工現場での試し練りなどの手間のかかる作業と試し練りされた不採用の生コンクリートの廃棄ロスをなくし、かつ施工時の気温の変化や製造ロットの変更などに依存することなく必要な混和剤の添加量が容易に調整できる手法を提案している。
【0013】
すなわち、特許文献3の製造方法では、施工時に混和剤が添加される高流動コンクリート用材料としてのセメント組成物が乾燥状態で包装材に包装された高流動コンクリート用材料の包装体であって、セメント組成物は、予め複数の温度水準において、セメント組成物を含むコンクリート材料の配合を一定にしつつ混和剤の量をのみを変化させて、目標性状を得るために必要混和剤添加量を求めるべく試験練りがなされ、かつ複数の温度水準に対応する必要混和剤添加量を少なくとも含む試験練りの結果情報を具備すればよいと提案している。
【0014】
しかしながら、特許文献2では、端的に、生コンクリートを運搬し、打設現場に到着した際、所定の容器で各要因を測定し、この測定結果と予め検証していた各要因とを比較して、混和剤の量を算出し、投入して混練するというものであって、現場での(2次)混練作業が余分に生じる点で、現場到着から打設までに手間がかかるという問題がある。
【0015】
また、特許文献2では、生コンクリート製造工場において、確認証、すなわち、依頼主からの指示に対し、目標強度をとするために、実際にはどの程度調整したかなどの詳細なデータを明記した品質保証書のような書類が作成されるが、現場において、さらに調整されるとなると、結果的に上記製造工場での確認証の意味がなくなり、品質の保証や確認ができにくくなるといった問題がある。
【0016】
一方、特許文献3は、複数の温度水準における目標性状の生コンクリートを得るために必要混和剤の量と、複数の温度水準における必要混和剤の量によって試験練りされた結果情報と、を備えることで、ある温度での生コンクリートの性状は保証できるかもしれないが、必要混和剤の量の指標値が、セメント組成物を含むコンクリート材料の配合を一定とした際のものであるため、生コンクリートの1回の出荷(製造)量、その時の配合量のオーダーが煩雑に異なる状況(通常)では実用的ではないといった問題がある。
【0017】
さらに、特許文献3は、温度に対応して混和剤を加減するのであるが、この温度が外気温や雰囲気温度で、実際に混和剤の加減により性状が変化する生コンクリートに対して間接的な要因(条件)であるので、厳密な生コンクリートの品質を管理することができないといった問題がある。
【0018】
例えば、特許文献3であれば外気温を基準としているので、外気温より生コンクリート自体の温度が高い場合は混和剤が少なくなり、一方、外気温より生コンクリート自体の温度が低い場合は混和剤を多くなり、この結果、強度(性状)にかなりの誤差が生じて、硬化速度が著しく速くなったり遅くなったりする可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の生コンクリート製造方法は、オーダー通りに製造しても現場で打設した後の強度が条件を満たさない要因を追求し、従来の混和剤添加量を決定する要件において、製造時の生コンクリート自体の温度及び外気温、並びに打設現場へ運搬する時間と道中の外気温、を混和剤添加量の決定要件として考慮することで、生コンクリートの製造時における推定強度と打設後の強度、の乖離を小さくすることができた。
【0025】
本発明の生コンクリート製造方法は、例えば、生コンクリート製造原料となる、セメント、骨材、水、混和剤の各材料を切り出すための切出部、この切出部から切り出された各材料を混練する混練装置、この混練装置で混練された生コンクリートを搬送車に排出する排出部を備え、前記各切出部に動荷重計測部を、前記混練装置から前記排出部に至る製造部位に、生コンクリート温度計測部、単位水量計測部、空気量計測部を、各々設け、さらに、今製造している生コンクリートの搬送先の搬送時間とその道中の想定外気温及び目標スランプ割増値とを入力する入力部と、前記各計測部で計測した各材料量に基づいて少なくとも細骨材率を算出すると共に、これら計測値、算出値、入力値、のそれぞれの関係テーブルを記憶したデータ部から読み出した
それぞれの値による混和剤添加量の総和を求め、オーダーされた推定強度が搬送先で発現されるために必要な該オーダーされた混和剤
添加量に対する該混和剤の調整量を算出する制御部と、を備えた本発明の生コンクリート製造設備によって実施される。
【0026】
すなわち、本発明の生コンクリート製造方法は、従来の手法において製造工場出荷時と所定時間をかけて運搬した打設現場における生コンクリート性状が相違することに起因した製造時の推定強度と打設後の強度が乖離するトラブル、例えばオーダー通りに製造して推定強度を満たす生コンクリートを出荷しても、打設後、1週間又は4週間の強度試験で必要な強度を満たさないといった品質の保証ができないといったことを抑制する。
【0027】
すなわち、本発明の生コンクリート製造方法は、生コンクリートの搬送先に搬送されるまでの時間と外気温、つまり、生コンクリート製造工場における製造時から、打設現場にまでの生コンクリートの性状の変化も考慮して混和剤添加量を決定することで上記のトラブルの抑制しており、混和剤添加量を算出するにあたって、まず、次の情報、及びその情報に基づいた演算を行う。
【0028】
混和剤の添加量を決定するために必要となる情報は、(オーダーされた)生コンクリートの製造のための情報とは別に、次の計測値、算出値、入力値を必要とする。
【0029】
(計測値)
・※動荷重値:原料の動荷重値(オーダー値の確認用)
・外気温:混練装置又は排出部に設けた外気温度計測器による外気温度
・生コンクリート温度:混練装置又は排出部に設けた計測器による生コンクリート温度
・空気量:混練装置に設けた空気量計測器による生コンクリートの空気量
・単位水量:混練装置に設けた単位水量計測器による生コンクリートの水分量
【0030】
(算出値)
・細骨材率:切出部に原料切り出し時に計測される動荷重値より算出
・※空気量:空気量計測器の計測値と共に原料の動荷重値により算出(計測値の評価用)
・※単位水量:単位水量計測器と共に原料の動荷重値により算出(計測値の評価用)
【0031】
(入力値)
・運搬時間と道中外気温:搬送先までの搬送時間の値及び道中の想定外気温
・スランプ割増:工程管理目標のスランプ割増値
【0032】
これらに基づいた混和剤添加量の決定手法について、以下に説明する。計測値における「動荷重値」、「外気温」「生コンクリート温度」、「空気量」、「単位水量」は、混練装置やウェットバッチホッパ内又は生コンクリートの排出部のいずれかにおいて一時的に保管された生コンクリートを対象に計測機器を用いて測定した実測値を用いる。
【0033】
算出値の「細骨材率」は、動荷重値より算出する。なお、上記計測値における「空気量」と「単位水量」は、各々の計測値の妥当性評価のため、本例では、動荷重値を用いた計算値も採用する。
【0034】
入力値の「運搬時間と道中外気温」は、製造日とその日の時間帯による道路渋滞情報に基づいておよそ想定される運搬時間及びその道中における気象庁等情報による道中の外気温を入力する。また、「スランプ割増」は、工程管理目標とするスランプ割増値を入力する。
【0035】
次にこれら全ての変動要素に対する混和剤の添加量を求める。なお、各変動要素における混和剤の添加量は、標準配合の混和剤量に対する増減量を意味する。
【0036】
「生コンクリート温度」及び「外気温」による混和剤の添加量は表1に示す関係式により求める。各工場では、室温20±2℃の環境条件下の室内試験結果に基づいて標準配合が規定されており、生コンクリートの発注者はこの標準配合の中からオーダー配合を選択する。
【0037】
生コンクリート温度は、JISA5308やJASS 5鉄筋コンクリート工事や建築工事管理指針等による「暑中におけるコンクリート及び寒中コンクリート」の取り扱いによると、荷卸時のコンクリート温度を原則として5℃以上35℃以下と想定し、混練直後の生コンクリート温度が外気温より低い場合は、短い時間で外気温程度まで温度が上昇する傾向がある。したがって、実際に測定した製造工場における「外気温」と「生コンクリート温度」の関係から、生コンクリート温度≧外気温の場合には生コンクリート温度を、生コンクリート温度<外気温の場合は外気温を採用する。
【0038】
生コンクリート温度による混和剤添加量=α1×生コンクリート温度+β1 −(1)
【0040】
「空気量」による混和剤の添加量は表2に示す関係式により求める。工程管理で目標とする空気量は、工場毎に規定されており、実際に測定した空気量と混和剤添加量の関係は、空気量が多い場合は混和剤が少なくなり、空気量が少ない場合は混和剤が多くなる。空気量の算出は、動荷重値から算出される単位容積質量と空気量の関係に基づいて求める。なお、空気量の検証範囲は、JISA5308に規定されている、3.0%以上6.0%以下の範囲としている。
【0041】
空気量による混和剤添加量=α2×空気量+β2 −(2)
【0043】
「単位水量」による混和剤の添加量は表3に示す関係式により求める。単位水量は単位水量計測部による単位水量(及び後述の実施例では表面水率計測部3Bによって計測している表面水率)について、実測値を動荷重値に基づいて算出した値で妥当性を評価している。標準配合の単位水量よりも測定した単位水量が多い場合は混和剤量が少なく、測定した単位水量が少ない場合は混和剤量が多くなる関係がある。
【0044】
単位水量による混和剤添加量=α3×単位水量+β3 −(3)
【0046】
「細骨材率」による混和剤の添加量は表4に示す関係式により求める。細骨材率とは、それぞれの骨材の表面水率を除いた細骨材と粗骨材全体における細骨材の割合を意味し、細骨材率によりスランプが変動する。よって細骨材率により変動するスランプを見かけ上同じスランプとするための混和剤量に換算し、この混和剤添加量と細骨材率との関係を表4に示している。なお、細骨材率は、動荷重値より算出する(表面水率の実測値によって算出してもよい)。表4から、細骨材率が大きな値のコンクリートはモルタル量が多くなり、粘性が増えることで、スランプが小さくなり、混和剤を多く添加することとなる。
【0047】
細骨材率による混和剤添加量=α4×細骨材率+β4 −(4)
【0049】
「運搬時間と道中外気温」による混和剤の添加量は表5に示す関係式により求める。予め調べた外気温20℃の標準期に運搬時間によるスランプロス分の関係に基づいて、見かけ上のスランプロス分の混和剤添加量と運搬時間の関係を評価しておく。表5には、生コンクリートを納入する現場までの、当日の道路情報と道中の地域の気温情報を勘案した運搬時間と混和剤添加量の関係を示す。なお、表5中、実線は運搬経路の外気温を考慮した場合の温度で0.5≦γ≦1.5の間で調整される混和剤の添加領域の境界線であり、破線は外気温20℃のときの運搬時間に対する標準混和剤添加量を各々示している。この表5より標準期の外気温に較べて当日の運搬経路を考慮した外気温の評価を行い、温度による影響係数γを設定する。
【0050】
例えば工場における製造時の外気温より運搬経路の外気温が高いことが見込まれる場合は影響係数γ>1となり、運搬経路の外気温が工場における製造時の外気温以下と見込まれる場合は影響係数γ≦1となる。
【0051】
運搬時間と道中外気温による混和剤添加量=(α5×運搬時間+β6)×γ −(5)
※γ:工場外気温と運搬経路の外気温との温度差による影響係数 0.5≦γ≦1.5
【0053】
「スランプ割増」による混和剤の添加量は表6に示す関係式により求める。生コンクリート製造の管理において目標とするスランプは、購入者から指定されたオーダー配合の目標スランプに定められた許容範囲の要求があり、現場管理者から打設部位毎に指定を受けることがあり、打設現場に応じた許容差を含んだスランプとしている(スランプ割増という)。つまり、スランプ割増で設定されても打設現場においては現場監督者からの目標スランプとなるよう混和剤の添加量を調整する。表6には、コンクリート製造時のスランプ割増量と混和剤添加量の関係を示している。この表6より「スランプ割増」による混和剤添加量を次の関係式によって求める。
【0054】
スランプ割増による混和剤添加量=α6×スランプ割増量+β6 −(6)
【0056】
本発明の生コンクリート製造方法は、上記の各変動要素による各々(1)〜(6)で求めた混和剤添加量に基づいて、つまり各変動要素によって得た混和剤添加量(1)〜(6)の総和を求め、オーダーされた混和剤添加量に対する調整量を算出する。
【0057】
このようにして得た最終的な混和剤添加量は、従来の断片的な要素に基づくものではなく、各変動要素の当該製造環境下において求めた適切な量の総合値であるため、打設後に硬化したコンクリートの強度は、推定強度との乖離が小さくできる一方、荷卸時のフレッシュ性状も現場管理者から要求されたフレッシュ性状との乖離が小さくできる。
【0058】
従来、例えば水の割増による方法と混練段階におけるオペレータの目視によるスランプ管理を行っていたので、単位水量が異常に多くなり、トンネル壁面、天井を含むコンクリート面の剥落事故のように耐久性不足や、例えば橋脚や橋梁におけるコンクリートの曲げ、剪断、ひび割れ、かぶり、剥落、鉄筋の露出といった強度不足を招いていた。また、従来、製造工程で厳格に軽量や測定を行ったうえで推定強度を求めても、推定強度を求める条件が「製造工場」における諸条件に基づいたものであって、打設現場での強度を何ら保証するものではなかった。
【0059】
そこで、本発明の生コンクリート製造方法によれば、混和剤添加量を求めるうえで運搬時間と道中の外気温の要件も加味しているので、打設現場までで生じ得る生コンクリートの性状変化に対応した推定強度にて正しく出荷することができ、打設後の強度との乖離もほとんどなく、オーダーされたワーカビリティと耐久性及び強度のいずれも満足させる品質とすることができる信頼性の高い生コンクリートとすることができる。
【実施例1】
【0060】
以下、
図1〜
図3を用いて本発明の具体的実施例について説明する。1は、本発明の生コンクリート製造方法が実施される本発明の生コンクリート製造設備である。なお、この生コンクリート製造設備1は、生コンクリートの製造、管理、混練、出荷、を行う設備である。
【0061】
2はセメント切出部、3は骨材切出部、4は水供給部、5は混和剤切出部であり、セメント切出部2、骨材切出部3、混和剤切出部5のそれぞれには、各材料の質量を計測するセメント動荷重計測部2A、骨材動荷重計測部3A、表面水率計測部3B、水動荷重計測部4A、混和剤動荷重計測部5Aが各々設けられている。
【0062】
6は、セメント切出部2、骨材切出部3、水供給部4、混和剤切出部5から、供給された各材料を混練する混練装置であり、この混練装置6には、本例では生コンクリートの温度を計測する生コンクリート温度計測部6A、混練装置6周辺の外気温を計測する外気温計測部6B、単位水量を計測する単位水量計測部6C、空気量を測定する空気量測定部6Dが各々設けられている。なお、混練装置6には混練時間を計測する時間計測部や混練回数を計測する混練回数計測部も設けられている(不図示)。
【0063】
7は、混練装置6から供給された生コンクリートを切り出す生コンクリート切出部(排出部)であり、この生コンクリート切出部7には、出荷量計測部7A、が設けられている。なお、上記の各計測部6A〜6Dは、本例では混練装置6に設けたが生コンクリート切出部7に設けてもよい。つまり、上記の各計測部6A〜6Dは、該混練装置6から生コンクリート切出部7に至る製造工程中、一時的に生コンクリートを保管する箇所に設ければよい。
【0064】
以上が、生コンクリート製造設備1のうち屋外に設けた設備であり、屋外設備の各計測部による計測信号、各部の稼働指示信号、は屋内設備として設けられた管理部11に入力、管理部11から出力、されるように構成されている。なお、屋内設備と屋外設備の接続関係は後述する。
【0065】
生コンクリート製造設備1のうち屋内に設けられた管理部11は、実質的にはパーソナルコンピュータで構成され、該パーソナルコンピュータに備えたCPU及びメモリが制御部12、ハードディスクがデータ部13、キーボード及びマウスが入力部14、ディスプレイ(やプリンタ)が出力部15、とされている。
【0066】
生コンクリート製造方法は、具体的にはプログラムであり、管理部11においてはデータ部12からプログラム全体が制御部12に読み出され、制御部12が、各種入力データとデータ部13から読み出した各値に対する関係テーブルや関係式に基づいて各種演算を行うと共に、屋外設備の各部を制御して生コンクリートの製造、管理、混練、出荷可否の判断を行う。
【0067】
制御部12は、演算部12Aにて各計測部2A,3A,3B,4A,5A,6A,6B,6C,6Dの「計測値」、後述する「入力値」、及び前記計測値に基づいた「算出値」に基づいてオーダーされた混和剤添加量に対する調整量を算出する。
【0068】
ここで、屋外設備と屋内設備との接続構成について説明する。制御部12において、配合指示部12Bは、セメント切出部2、骨材切出部3、水供給部4、混和剤切出部5に対して各々配合量の指示信号を出力する。また、セメント動荷重計測部2A、骨材動荷重計測部3A、表面水率計測部3B、水動荷重計測部4A、混和剤動荷重計測部5Aは演算部12Aに対して各々計測値の信号を出力する。
【0069】
制御部12は混練装置6に対して混練時間と混練回数の指示信号を出力して該混練装置6を制御する一方、生コンクリート温度計測部6A及び外気温計測部6Bからの温度の計測信号を受信する。
【0070】
制御部12は生コンクリート切出部7に対して出荷指示信号を出力する。また、出荷量計測部7Aは演算部12Aに対して各々計測値の信号を出力する。
【0071】
制御部12における判定部12Cは、生コンクリート切出部7に対して、上記演算部12Aで演算された適正な混和剤が投入され、混練されて、搬入先において(現場打設時に)推定強度が適正かつ計画通りに発揮される状態となったか否かを判定して、出荷(切り出し)の可否を出力する。
【0072】
以下に、上記構成の生コンクリート製造設備1を用いた本発明の生コンクリート製造方法について
図2及び
図3を用いて説明する。管理部11において、生コンクリート製造方法(以下、プログラムという)が実行され、屋外側の各部が制御・稼働する。
【0073】
また、プログラムが実行されている状況下において、屋外側の各部からの計測の信号や入力部14から信号が演算部12Aに送られてここで演算されると共に、計測値、入力値、演算値の信号に基づいて混和剤調整量が演算・決定されてこの値が配合指示部12Bに送られる。演算部12Aで得た最終的な生コンクリートの状態については出荷判定部12Cに送られて出荷適否がここで判定される。
【0074】
詳述すると、まず、生コンクリートの製造オーダー票に基づいて、セメント、骨材、水、混和剤、の量を入力部14を介して入力し(手順1、以下S1と記す)、この入力値に基づいて、制御部12はセメント切出部2、骨材切出部3、水供給部4、混和剤切出部5に配合指示信号を出力し、各材料が、それぞれセメント動荷重計測部2A、骨材動荷重計測部3A、水動荷重計測部4A、混和剤動荷重計測部5Aに、切り出され、又は供給される(S2)。
【0075】
セメント動荷重計測部2A、骨材動荷重計測部3A、水動荷重計測部4A、混和剤動荷重計測部5Aの計測値は、演算部12Aへ出力され、演算部12Aは、オーダーされた量の各材料が計測されたか否かを確認する(S4)。S4において、オーダー通りの量ではない場合(S4でNo)、各材料を廃棄し(S5)、最初からやり直すために処理はS1に戻る。
【0076】
S4において、各材料がオーダーされた量であった場合(S4でYes)、演算部12Aは、S3で計測した計測値に基づいて、細骨材率を算出し(S6)、空気量を算出し(S7)、単位水量を算出する(S8)。なお、S7で算出した空気量、S8で算出した単位水量、の各算出値は、後述する混練装置6における単位水量計測部6C、空気量計測部6Dの計測値の評価用としてバッファする。
【0077】
各材料の計測後、該各材料は混練装置6へ送られ、ここで所定の時間と所定の回数、つまりオーダーされた推定強度となる性状となるよう混練される(S9)。この混練装置6では、混練終了間際に、生コンクリート温度計測部6Aにより生コンクリート温度が(S10)、外気温計測部6Bにより混練装置6周辺の外気温が(S11)、単位水量計測部6Cにより単位水量が(S12)、空気量計測部6Dにより空気量が(S13)、各々計測される。なお、S10〜S13はこの順序で無くても良い。
【0078】
S13の後、演算部12Aは、S13における空気量の計測値がS7の演算値と近似しているか否か(S14)、S12における単位水量の計測値がS8の演算値と近似しているか否か(S15)、つまり計測値が演算値に対して信用できる値か否かを評価し、S14,S15において一方で信用できる値ではない(S14,S15でNo)の場合は、演算部12Aは、出力部15に警告を表示し(S16)、修正処理を行い(S17)、再度S12の計測処理へ戻る。
【0079】
S14,S15において計測値と演算値が許容範囲の値であった場合(S14,S15でYes)、続いて、操作者がそのオーダー票に基づいて、入力部14からその生コンクリートの運搬先までの運搬時間と(S18)、道中の想定外気温(S19)を入力する。
【0080】
そして、混練終了時には、混和剤の調整量を決定する全ての計測値、入力値、算出値が演算部12Aに揃うこととなり、演算部12Aは、生コンクリート温度による上記式(1)から(S20)、空気量による上記式(2)から(S21)、単位水量による上記式(3)から(S22)、細骨材率による上記式(4)から(S23)、運搬時間と道中外気温による上記式(5)から(S24)、スランプ割増による上記式(6)から(S25)、各々必要な混和剤添加量を算出し、これら各混和剤添加量の総和からオーダー票に記載の混和剤量を差し引いた値を演算し、必要な調整量を算出する(S26)。
【0081】
続いて、演算部12Aは、配合指示部12Bを介して、S26で演算した必要となる混和剤種と(調整)量を混和剤動荷重計測部5Aにて計測のうえ、混練装置6に切り出して、混練する(S27)。この後、制御部12は、混練装置6から生コンクリートを生コンクリート切出部7へ送る旨の信号を出力し(S28)、判定部12Cが、生コンクリートの推定強度及び生コンクリートの性状の(各種値による)確認を行う(S29)。
【0082】
S29において、判定部12Cが、出荷に適していないと判断した場合(S29でNo)、制御部12は出力部15に警告を表示し(S30)、廃棄処理を行って(S31)、処理はS1に戻り、出荷に適していると判断した場合(S29でYes)、制御部12は生コンクリート切出部7に対して、出荷すべく生コンクリートの切り出しのための信号を出力し(S32)、処理は終了する。
【0083】
このように、本発明では、生コンクリートの性状に係る種々の条件、特に生コンクリート製造設備1での製造・出荷段階の性状と、打設現場での性状が変化する点を配慮して、運搬時間と道中外気温の条件も含めて混和剤添加量(オーダー値に対する調整量)を求めることとしているので、推定強度は打設現場において計画どおりに発揮され、かつ打設後も推定強度から大きく乖離することのない想定範囲内の強度を発現させることができると共にオーダーされたワーカビリティと耐久性及び強度のいずれも満足させる品質で信頼性の高い生コンクリートとすることができる。