(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
段差部に架け渡される仮設式のスロープ装置としては、例えば、特許文献1に示されるように、直状の板材で構成され、該スロープ上を車椅子等が直線状に走行するものが一般的であった。
【0003】
しかし、係る直板状のスロープ装置では、該スロープへの乗り降りスペースとしてスロープ装置の両端外方に比較的広いスペースを確保することが必要であり、このようなスペースを確保できない場所では、スロープ装置の設置そのものが困難となる。
【0004】
このような事情から、例えば、特許文献2,3には、通路方向を直交方向に設定したスロープが提案されている。即ち、特許文献2及び特許文献3に示されるものは、共に、建物の窓から車椅子を出入りさせるものであって、窓の直外側に踊場を設け、この踊場を、建物の壁面に沿って設けられたスロープに接続して構成され、これによって窓の手前側スペースの狭小化を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、これら特許文献2,3に示されるスロープ装置では、踊場を設け、この踊場の一側に直板状のスロープを接続する構成であることから、このスロープ装置を通って車椅子を移動させる場合、必ず踊場部分で車椅子の方向転換を行うことが必要であって、踊場スペースを車椅子の方向転換が可能な大きさに設定することが必要で、この踊場部分を含むスロープ装置全体の大型化を招来するとともに、車椅子の操作が煩雑であって、特に車椅子の使用者が身障者とか高齢者などの身体的弱者であり、しかもその者が介助者によらずに自らが走行操作を行うような場合にあっては、車椅子での移動そのものが極めて困難になるという問題があった。
【0007】
このような事情に鑑みれば、スロープ装置を螺旋板状に形成し、車椅子を走行途中で方向転換させることなく連続的に移動可能とすることが考えられるが(例えば、特許文献4参照)、係る螺旋板構造によれば、スロープ装置の設置条件によっては、スロープ装置への乗り降りが困難となる恐れがある。これを
図12に基づいて簡単に説明する。
【0008】
図12(イ)は、段差部の高位面Gaと低位面Gbの間に、一例として、平面視略直角に湾曲する螺旋板状で構成されるスロープ装置Zを架け渡した状態を示す平面図である。また、
図12(ロ)は、
図12(イ)に示したスロープ装置Zの内周縁Z1と外周縁Z2を展開図示した正面図である。このスロープ装置Zの掛け渡し状態においては、該スロープ装置Zの高位端Zaと低位端Zbは、共に、その全幅に亘って高位面Ga及び低位面Gbに接している。即ち、このスロープ装置Zは、高位面Gaと低位面Gbの段差高が「h」であるとき、スロープ装置Zの高位端Zaと低位端Zbが、共に、その全幅に亘って高位面Ga及び低位面Gbに接するように設定したものであり、この状態を「基準状態」とする(以下の説明においても同じ)。
【0009】
一方、
図12(ハ)は、上記スロープ装置Zを、段差高「h1」(h1>h)の段差部に架け渡したときの上記スロープ装置Zを展開図示した正面図である。そして、ここでは、設置状態の一例として、上記スロープ装置Zの高位端Zaを上記高位面Gaに対してその全幅で接触させた状態を示している。この設置状態では、段差高「h1」が基準状態における段差高「h」より高いことから、上記スロープ装置Zの低位端Zbは、その低位端Zbの幅方向の一端(外周縁Z2の端)が点接触し、それ以外の部分は低位面Gbから上方へ浮き上がった状態(片当り状態)となる。したがって、このスロープ装置Zの低位端Zb側からの車椅子の乗り降りは困難となる。
【0010】
逆に、
図12(ニ)は、上記スロープ装置Zを、段差高「h2」(h2<h)の段差部に架け渡したときの上記スロープ装置Zを展開図示した正面図である。そして、ここでも、上記スロープ装置Zの高位端Zaを上記高位面Gaに対してその全幅で接触させている。すると、段差高「h2」が基準状態における段差高「h」より低いことから、上記スロープ装置Zの低位端Zbは、該低位端Zbの幅方向の一端(内周縁Z1の端)が点接触し、それ以外の部分は低位面Gbから上方へ浮き上がった状態(片当り状態)となる。したがって、この場合も、スロープ装置Zの低位端Zb側からの車椅子の乗り降りは困難となる。
【0011】
なお、このようなスロープ装置Zの片当り状態は、上記とは逆に、スロープ装置Zの低位端Zbをその全幅に亘って上記低位面Gbに接触させた場合には、該スロープZの高位端Za側において発生する。また、これら両者の中間的状態として、上記スロープ装置Zの高位端Zaと低位端Zbの双方が高位面Gaと低位面Gbに対して片当り状態となるように設定することもできるが、この場合には、上記各場合よりも片当りによるスロープ装置Zの高位端Za及び低位端Zbの上記高位面Ga及び低位面Gbに対する上下方向への離間程度は小さいものの、上記スロープ装置Zの高位端Zaと低位端Zbの双方において車椅子の乗り降りが困難となる。
【0012】
以上のような課題が存在することから、螺旋板状のスロープは、特許文献4の記載からしてその着想は比較的容易であるとしても、これを仮設式のスロープ装置として具体化する技術は未だ提案されていない。
【0013】
そこで本願発明は、螺旋板状のスロープ装置を具現するための技術を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の第1の発明では、高位面と低位面の間に架け渡されるスロープ装置であって、所定の高さ範囲で且つ平面視において通路方向の一端側から他端側に向けて湾曲する螺旋板状のスロープ本体と、上記スロープ本体を所定姿勢で支持する支持手段と、上記スロープ本体の少なくとも一端に設けられた端部スロープを備えるとともに、該端部スロープを、上記スロープ本体の端部にその幅方向に列設配置され且つ列設軸線回りに相対回動可能とされた複数の単板で構成したことを特徴としている。
【0015】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係るスロープ装置において、上記スロープ本体を、平面視において略直角に湾曲する形状としたことを特徴としている。
【0016】
本願の第3の発明では、上記第1または第2の発明に係るスロープ装置において、上記支持手段を、複数の連結ピースの使用数を変更することで高さ調整が可能な支柱で構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
(a)本願の第1の発明に係るスロープ装置によれば、所定の高さ範囲で且つ平面視において通路方向の一端側から他端側に向けて湾曲する螺旋板状のスロープ本体と、上記スロープ本体を所定姿勢で支持する支持手段と、上記スロープ本体の少なくとも一端に設けられた端部スロープを備えるとともに、該端部スロープを、上記スロープ本体の端部にその幅方向に列設配置され且つ列設軸線回りに相対回動可能とされた複数の単板で構成したので、上記スロープ本体を高位面と低位面の間に架け渡した状態において、該スロープ本体は上記支持手段によって所定姿勢で支持されるとともに、該スロープ本体の少なくとも一端と上記高位面または低位面との間は上記端部スロープによって接続される。
【0018】
この場合、上記スロープ本体の一端と上記高位面または低位面とが略平行に対向しているときは(即ち、高位面と低位面の段差高が、当初設定したスロープ本体の基準状態における高さに略合致しているとき)、上記端部スロープの各単板は略同一の回動位置に設定され且つスロープ本体の幅方向に列設して略平板面を形成する。したがって、上記端部スロープを通って上記スロープ本体への車椅子の乗り降りが可能とされる。
【0019】
一方、上記スロープ本体の一端と上記高位面または低位面とが傾斜状に対向しているときは(即ち、高位面と低位面の段差高が、当初設定したスロープ本体の基準状態における高さと異なっているとき)、上記端部スロープの幅方向に列設された上記各単板のそれぞれが、該各単板それぞれの位置における対向間隔に対応して個別に回動し、上記スロープ本体の幅方向に所定の捩れをもって順次連続する略曲板面を形成する。したがって、上記スロープ本体の一端と上記高位面または低位面との間の対向間隔が上記端部スロープによって消滅され、該端部スロープを通って上記スロープ本体への車椅子の乗り降りが可能とされる。
【0020】
即ち、この発明のスロープ装置によれば、その設置場所の段差が所定範囲内であれば、該段差の大小に拘わらず、常に上記スロープ本体の端部と段差部の高位面または低位面とが上記端部スロープによって滑らかに接続され、上記高位面側及び低位面側から上記スロープ本体への乗り降りが可能とされる。したがって、車椅子を上記スロープ本体を通って走行させることができ、しかも、走行途中において車椅子を一時停止させ方向転換を行う必要もなく、車椅子の連続的且つ軽快な走行が担保される。
【0021】
また、上記スロープ装置は、そのスロープ本体が、通路方向の一端側から他端側に向けて湾曲する螺旋板状とされ、該スロープ装置の段差部への設置状態においては、段差面に沿う方向から上記スロープ本体に乗り降りすることができることから、例えば、直板状のスロープを設置する場合のように段差面の手前側に大きなスペースを確保する必要が無く、より小さなスペースに設置することができ、スロープ装置の適用範囲が拡大し、延いてはスロープ装置の商品価値が向上する。
【0022】
(b)本願の第2の発明では、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記スロープ本体を、平面視において略直角に湾曲する形状としているので、上記スロープ装置の段差面から手前側への延出幅を最小に抑えることができ、該スロープ装置の小スペースへの設置性がさらに向上する。
【0023】
(c)本願の第3の発明では、上記(a)または(b)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記支持手段を、複数の連結ピースの使用数を変更することで高さ調整が可能な支柱で構成したので、上記スロープ装置を段差部に設置する場合、上記スロープ本体の高位端と低位端の高さをより細かく調整して段差部の高位面と低位面との高さ方向の相対位置を所望の位置に的確に設定することができ、この結果、上記スロープ装置の設置状態での安定性が確保され、延いては上記スロープ装置の使用上の安全性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
A:第1の実施形態
図1〜
図3には、本願発明の第1の実施形態に係るスロープ装置1を示している。このスロープ装置1は、段差部の高位面Gaと低位面Gbの間に架け渡されて、人とか車椅子の通行に供されるものであって、次述するスロープ本体2と該スロープ本体2の通路方向両端2a、2bに取り付けられた端部スロープ3を備えて構成される。
【0026】
上記スロープ本体2は、所定の高さ範囲で且つ平面視において通路方向の一端2a(以下、実施形態に対応させて「高位端2a」という)側から他端2b(以下、実施形態に対応させて「低位端2b」という)側に向けて略直角に湾曲する螺旋板状の形体を有するものであって、
図1、
図5及び
図6に示すように、樹脂発泡成形体で構成される螺旋板状の芯材24の両表面に繊維強化プラスチック製の補強シート材25を貼着固定してなる本体部21と、該本体部21の高位端2a側に固定された高位側端部材22Aと低位端2b側に固定された低位側端部材22Bと、上記本体部21の左右両縁部にそれぞれ嵌合固定された側縁材23を備えて構成される。
【0027】
なお、上述のように、上記スロープ本体2の一端2aを「高位端2a」、他端2bを「低位端2b」としたことから、上記本体部21の両端にそれぞれ固定された上記高位側端部材22Aと低位側端部材22Bは、それぞれ上記スロープ本体2の高位端2a及び低位端2bに該当する。
【0028】
上記高位側端部材22A及び低位側端部材22Bは、共に、アルミ押出材で構成されるものであって、
図5、
図6に示すように、その外端面には、スロープ本体2の幅方向に延びる嵌合凹条26と当接部27とが、該各端部材22A,22Bの高さ方向に適宜離間した状態で設けられている。そして、これら各端部材22A,22Bの上記嵌合凹条26部分に、次述する端部スロープ3を構成する各単板4が取り付けられる。
【0029】
上記端部スロープ3は、上記スロープ本体2の高位端2aに位置する上記高位側端部材22Aと低位端2bに位置する上記低位側端部材22Bにそれぞれ取り付けられて、該スロープ本体2への車椅子の安全な乗り降りを可能とするものであって、
図5及び
図6に示すように、5枚の単板4を備えて構成される。
【0030】
上記単板4は、例えば、アルミ押出材で一体形成されるものであって、
図5及び
図6に示すように、基端側から先端側に向かってその高さが漸減する略クサビ状の断面形状を有しており、その基端側の端面には、その幅方向に延出する嵌合凸条41と当接部42が、該単板4の高さ方向に適宜離間して設けられている。そして、この単板4は、その嵌合凸条41を上記スロープ本体2の上記高位側端部材22Aに設けられた上記嵌合凹条26にその軸方向から嵌合させることで、該高位側端部材22Aに連結される。
【0031】
このようにして上記単板4を上記高位側端部材22A側に順次連結することで、複数の単板4が上記スロープ本体2の幅方向に列設され、これによって上記端部スロープ3が構成される。なお、上記スロープ本体2の低位側端部材22B側においても、上記と同様にして、上記端部スロープ3が取り付けられる。また、この実施形態では、上記端部スロープ3を5枚の単板4で構成したが、本願発明は係る構成に限定されるものでなく、上記端部スロープ3を構成する上記単板4の数は任意に増減設定できるものである。
【0032】
上記端部スロープ3の各単板4は、それぞれ列設軸線L回りに相対回動可能とされており、
図6に示すように、上方側への最大回動は、該単板4に設けた上記当接部42が上記高位側端部材22A側の上記当接部27に当接することで規制される(この位置を、上動規制位置という)。そして、この規制状態においては、上記高位側端部材22A側の当接部27と上記単板4側の当接部42との当接点と、上記高位側端部材22A側の嵌合凹条26と上記単板4側の上記嵌合凸条41との嵌合点とが該単板4の厚さ方向において適宜離間していることで、該単板4をそれ以上に上方へ回動させる方向の荷重に対抗することができる。
【0033】
一方、上記単板4の下方側への最大回動は、上記高位側端部材22A側に設けた凸部28が上記単板4側に設けた凹部44に当接することで規制される(この位置を、下動規制位置という)。したがって、上記単板4は上記嵌合部を回動中心として、上動規制位置と下動規制位置の間で回動可能となっており、これら各単板4は、後述するように、上記高位側端部材22A及び低位側端部材22Bの幅方向における傾斜状態に対応してその回動位置が自動的に(即ち、上記単板4の嵌合部回りの自重回転力と、該単板4の先端部と上記高位面Gaまたは低位面Gbとの当接によって)設定される。
【0034】
ここで、上記スロープ本体2の螺旋板状の形体設定について、
図4を参照して説明する。上記スロープ本体2は、上述のように、所定の高さ範囲で且つ平面視において高位端2a側から低位端2b側に向けて略直角に湾曲する螺旋板状の形体を有するものであるが、ここでいう上記「所定の高さ」とは、既述した「基準状態」における高さであり、この実施形態では、
図4に示すように段差面Gcの高さ「h」を想定している。
【0035】
なお、
図12を用いた先の説明では、上記スロープ本体2の高位端2aと低位端2bの双方が段差部の高位面Gaと低位面Gbに対してその全幅で接触する状態を「基準状態」として定義したが、この実施形態では、後述するように、上記スロープ本体2の低位端2bを上記低位面Gbと平行に設定し、この低位端2bに後述の端部スロープ3を接続する場合を例とって説明する都合上、該端部スロープ3の先端がその全幅に亘って接触する低位面Gbから高位面Gaまでの高さ「ha」を上記「所定の高さ」と規定する。したがって、
図4に示す「基準状態」においては、上記スロープ本体2の低位端2bに取り付けられた上記端部スロープ3はその全幅においてその先端部が上記低位面Gbに接触する一方、該スロープ本体2の高位端2aは、上記高位面Gaと同じ高さ位置で該高位面Gaと平行となっており、該高位端2aに取り付けられた上記端部スロープ3はその全幅に亘って上記端部スロープ3が上記高位面Gaに接触した状態となる。
【0036】
このように、上記スロープ本体2の螺旋板状の形体を設定したことから、この実施形態のように上記スロープ装置1を基準状態とは異なる高さの段差部に設置した場合には、上記「基準状態」の場合のように上記スロープ本体2の高位端2aと低位端2bの双方が段差部の高位面Gaと低位面Gbの双方に対して平行となることはなく、少なくとも一方は「片当り状態」となる。そして、この「片当り状態」においては、上記スロープ本体2の高位端2aまたは低位端2bと上記高位面Gaまたは低位面Gbの間に略クサビ状に傾斜する隙間が生じることは既述の通りである。
【0037】
このような「片当り状態」に起因する上記隙間を解消して、上記高位面Gaまたは低位面Gbから上記スロープ本体2への車椅子の乗り降りを可能とするのが上記端部スロープ3であって、本願発明のスロープ装置1においてはこの端部スロープ3が最重要な要素となっている。以下、この点を踏まえて、上記スロープ装置1の設置及びその作用効果等について説明する。
【0038】
図1〜
図3には、本願発明に係るスロープ装置1を、段差部に架け渡した設置状態を示している。ここで、このスロープ装置1が設置された段差部は、
図2、
図3に示すように、段差高さが「hb」であって、
図4に示す基準状態の段差高さ「ha」よりも高くなっている。したがって、上記スロープ装置1をこの段差部の高位面Gaと低位面Gbの間に設置した場合、「片当り状態」が生じるわけであるが、特にこの実施形態では、設置状態の一例として、上記スロープ本体2の低位端2b側はこれを上記低位面Gbと平行に設定し、「片当り状態」を上記スロープ本体2の高位端2a側のみに生じさせるようにしている。したがって、上記スロープ本体2の高位端2aにおいては、その幅方向の一端(内周側の端部)が上記高位面Gaと同じ高さとなり、該端部より外周寄り側は上記高位面Gaから上方へ次第に離間するように傾斜した状態となる。
【0039】
なお、この実施形態においては、上記スロープ本体2の高位端2aは直接上記高位面Ga上に載置されるのではなく、該高位面Gaの前縁の直前に位置させていることから、上記スロープ本体2をこの姿勢で保持する必要があり、そのために、該スロープ本体2の下面側に複数の支柱5を設けている。即ち、この実施形態では、上記支柱5を、上記スロープ本体2の高位端2aにある上記高位側端部材22Aの左右両側と、低位端2bにある上記低位側端部材22Bの左右両側、及び内周縁部の周方向中間位置と外周縁部の周方向中間位置の合計6位置に配置している。この場合、これら6個の支柱5のうち、上記低位側端部材22Bの左右両側に設けられた一対の支柱5は同一高さとされるが、これら以外の位置に配置された支柱5はそれぞれその配置位置に応じて支柱5の高さが異なっている。
【0040】
このように、上記支柱5は、その配置位置に応じてその高さを調整する必要があることから、この実施形態では
図7に示すように、軸方向の一端にボルト52を、他端にボルト孔53を備えた短軸状の支柱ピース51を適数個連結するとともに、その下端には接地台54を、上端には受部材55を、それぞれ取り付ける構成とし、該支柱ピース51の使用個数の選択によって所要長さの支柱5を得るようにしている。したがって、上記スロープ装置1を段差部に設置する場合、上記スロープ本体2の高位端の高さをより細かく調整して段差部の高位面Gaとの高さ方向の相対位置を所望の位置に的確に設定することができ、上記スロープ装置1の設置状態での安定性が確保され、延いては上記スロープ装置1の使用上の安全性が向上する。
【0041】
以上のようにして、上記スロープ本体2を6本の支柱5で支持して当初予定の位置に、予定の姿勢で固定保持する。この状態において、上記スロープ本体2の高位端2aと低位端2bにそれぞれ端部スロープ3を連結する。この端部スロープ3を連結した状態が
図1〜
図3に示す状態である。このスロープ装置1の設置状態においては、高位端2a側は高位面Gaに対して傾斜した状態となっており、このままの状態では上記高位端2aと上記高位面Gaの間に、該高位端2aの幅方向において次第に拡大変化する隙間が生じ、この部分に車椅子を走行させることが困難となる。
【0042】
そこで、この実施形態においては、上記スロープ本体2の高位端2a側に連結された上記端部スロープ3を、その厚さ方向(上下方向)に回動自在な複数個5個の単板4を、該高位端2aの幅方向に列設して構成した。係る構成によれば、上記各単板4は、これらがそれぞれ対応する位置における上記隙間の大きさに応じて回動し(即ち、隙間が大きいほど上記高位端2aからの下降傾斜角が大きくなるように回動し)、上記隙間を消滅させた状態で、上記スロープ本体2の高位端2aと上記高位面Gaの間に架設される(
図2、
図3参照)。
【0043】
この結果、上記スロープ本体2の高位端2aと上記高位面Gaの間は、順次傾斜角が異なりながら該高位端2aの幅方向に列設された上記各単板4からなる上記端部スロープ3によって連続的に接続される。また、上記スロープ本体2の低位端2b側は、ここに連結された上記端部スロープ3が、上記各単板4が同一回動位置で列設されて平板状形体とされる。したがって、上記スロープ本体2の高位端2a側の上記端部スロープ3を通って該スロープ本体2と上記高位面Gaの間での車椅子の乗り降り、及び上記スロープ本体2の低位端2b側の上記端部スロープ3を通って該スロープ本体2と上記低位面Gbの間での車椅子の乗り降りが、共に可能となり、車椅子の使用者あるいは車椅子の介助者等は、上記スロープ装置1を通ることで、走行途中での車椅子の方向転換操作を行うことなく、高位面Gaと低位面Gbの間を連続的且つ軽快に移動させることができ、延いては車椅子の安全走行が担保される。
【0044】
B:第2の実施形態
図8には、本願発明の第2の実施形態に係るスロープ装置1を示している。この実施形態は、上記スロープ装置1を上記第1の実施形態の場合よりもさらに高い段差部に架け渡す場合に好適な構造であって、上記スロープ本体2をより長い支柱5によって支持固定するとともに、該スロープ本体2の低位端2bには、例えば、単一構成で且つ通路長さの長い直状スロープ6を連結したものである。
【0045】
したがって、この実施形態のスロープ装置1は、その仕様を大きく変更することなく、より大きな段差部にも適用できるものであり、該スロープ装置1の適用範囲を拡大するという点において有効である。なお、上記以外の構成、作用効果等は上記第1実施形態の場合と同様であり、その該当説明を援用する。
【0046】
C:第3の実施形態
図9には、本願発明の第3の実施形態に係るスロープ装置1を示している。この実施形態は、上記第1の実施形態においては上記スロープ本体2の高位端2a、即ち、上記高位側端部材22A部分を上記高位面Gaの手前側に位置させ、該高位側端部材22Aをその両端部に設けた上記支柱5によって支持固定するようにしていたのに対して、上記スロープ本体2の高位側端部材22A部分を上記高位面Ga上に位置させ、該高位側端部材22Aの低位側端部を上記高位面Gaに支持させる一方、高位側端部を上記高位面Gaとの間に配置した支柱5によって支持するようにしたものである。
【0047】
この状態のスロープ装置1では、上記第1の実施形態の場合よりも該スロープ装置1を上記段差面Gc側に近づけることができるので、該段差面Gcの手前側のスペースがより小さい場合でも該スロープ装置1を設置できるという利点がある。また、上記スロープ本体2の上記高位側端部材22Aの一端側を上記高位面Gaに支持させたことで該支柱5の配置本数を減らすことができ、経済的であると同時に、スロープ装置1の設置作業の簡略化が図れるという利点もある。なお、上記以外の構成、作用効果等は上記第1実施形態の場合と同様であり、その該当説明を援用する。
【0048】
D:第4の実施形態
図10には、本願発明の第4の実施形態に係るスロープ装置1を示している。上記第1の実施形態においては、上記スロープ本体2を、その平面視において、上記高位側端部材22A側における走行線が上記段差面Gcに略直交し、上記低位側端部材22B側における走行線が上記段差面Gcに略平行となるように設定していたのに対して、この実施形態では、上記スロープ装置1を平面視において所定角度だけ回転させて、上記低位側端部材22Bにおける走行線の方向を上記段差面Gcより外方側へ傾斜させたものである。
【0049】
係る構成によれば、上記低位側端部材22Bにおける走行線が上記段差面Gcから離れることから、例えば、上記段差面Gcの直前領域に障害物があり、該走行線を上記段差面Gcに平行とすれば車椅子と障害物の干渉が懸念されるような場合でも、係る干渉を回避して上記スロープ装置1へ安全に乗り降りすることができるという利点がある。なお、上記以外の構成、作用効果等は上記第1実施形態の場合と同様であり、その該当説明を援用する。
【0050】
第5の実施形態
図11には、本願発明の第5の実施形態に係るスロープ装置1を示している。上記各実施形態におけるスロープ装置1では、上記スロープ本体2を、平面視においてその高位端2aから低位端2bに向けて略直角に湾曲する螺旋板状に形成していたのに対して、この実施形態においては、上記スロープ本体2の平面視における湾曲角度を鋭角に設定したものである。
【0051】
係る構成によれば、上記低位端2bにおける走行線が上記段差面Gcから大きく離れることから、該段差面Gcの近傍に障害物が存在するような場合であっても、これを容易に回避して上記スロープ装置1を設置することができ、その設置自由度が向上するとともに、湾曲走行する距離が短くなることから車椅子の走行性が向上するという利点がある。なお、上記以外の構成、作用効果等は上記第1実施形態の場合と同様であり、その該当説明を援用する。