特許第6266584号(P6266584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266584鋳造混合物における添加剤としての有機酸金属塩の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266584
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】鋳造混合物における添加剤としての有機酸金属塩の使用
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/02 20060101AFI20180115BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B22C1/02 Z
   B22C1/00 G
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-242738(P2015-242738)
(22)【出願日】2015年12月11日
(62)【分割の表示】特願2012-544505(P2012-544505)の分割
【原出願日】2010年10月28日
(65)【公開番号】特開2016-74038(P2016-74038A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2016年1月12日
(31)【優先権主張番号】61/286,913
(32)【優先日】2009年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/873,819
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512011026
【氏名又は名称】エーエスケー ケミカルズ リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ショウマン、ラルフ、イー
(72)【発明者】
【氏名】ハーモン、ショーン、ビー
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−180643(JP,A)
【文献】 特表2004−524977(JP,A)
【文献】 特開2004−255451(JP,A)
【文献】 特開平05−023781(JP,A)
【文献】 特開平11−244990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00−1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造される鉄合金部品のベイニングを低減するための鉄合金部品を鋳造する鋳造混合物における添加剤としての有機酸金属塩の使用であって、
前記鋳造混合物はさらに鋳造用骨材としてのケイ砂及び有機バインダーを含み、
前記有機酸金属塩に含まれる金属は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記有機酸金属塩に含まれる有機酸塩は、酒石酸であり、
前記有機酸金属塩は、鋳造用骨材の重量を基準として0.25重量パーセント〜5.0重量パーセントが使用され
記有機バインダーは、フェノールウレタンバインダー、フランバインダー、アルカリフェノールレゾールバインダー、及びエポキシアクリレートバインダーからなる群から選択され、
前記有機バインダーは、鋳造用骨材の重量を基準として0.5重量パーセント〜5.0重量パーセントが使用される、
有機酸金属塩の使用。
【請求項2】
前記添加剤は、さらに酸化鉄を含み、
前記酸化鉄は、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の有機酸金属塩の使用。
【請求項3】
前記酸化鉄が赤色酸化鉄である、請求項に記載の有機酸金属塩の使用。
【請求項4】
前記有機酸金属塩は、酒石酸水素カリウムである、請求項1に記載の有機酸金属塩の使用。
【請求項5】
前記有機酸金属塩対赤色酸化鉄の重量比が1:1〜4:1である、請求項に記載の有機酸金属塩の使用。
【請求項6】
前記鋳造混合物が液体触媒を含有する、請求項1に記載の有機酸金属塩の使用。
【請求項7】
使用される前記有機酸金属塩の総量が、鋳造用骨材の重量を基準として0.5重量パーセント〜4.0重量パーセントである、請求項1に記載の有機酸金属塩の使用。
【請求項8】
使用される前記有機酸金属塩の総量が、鋳造用骨材の重量を基準として0.5重量パーセント〜2.5重量パーセントである、請求項1に記載の有機酸金属塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ケイ砂(SiO、石英)は、モールド(mold)及びコアを製造するために金属鋳物工業において骨材(aggregate)として広く使用されている。これは、「生砂(greensand)」(水及び粘土によって結合される砂)及び化学結合した砂のいずれにも使用される。フェノールウレタン、フラン、エポキシアクリル、エステル硬化フェノールを含めた様々な無機及び有機化学バインダーが使用される。
【0002】
バインダーを砂と混合し、混合物を工具内で圧縮して所望のモールド又はコアの形とし、次いで、バインダーが硬化して砂の粒子を互いに結合させる。次に、モールド及びコア部材を組み立ててモールドパッケージとし、金属をパッケージ内に注ぎ、所望の鋳物の形状をした内部キャビティを満たす。液体金属からの熱は、特に1100℃を超える融点を有する鉄合金の場合、バインダーを分解し、砂を加熱し始める。ケイ砂が加熱されると熱膨張が起こる。この膨張は、砂粒子の結晶構造が転移するおよそ570℃に温度が到達するまでは比較的直線的である。この構造転移は急速な等温膨張を伴い、それに続いて、さらなる熱膨張と共に別の結晶構造変化が起きるおよそ980℃までの熱収縮の期間がある。
【0003】
砂粒子のこれらの急速な体積変化は、鋳物表面近傍の砂の層に機械的応力を発生させ、これはモールド内の高温溶融液体金属と接触するモールド表面又はコア表面の亀裂を引き起こす恐れがあると考えられる。溶融液体金属がこれらの亀裂内に流れ込み、鋳物表面でベイン(vein)又は鋳ばり(fin)を形成する恐れがある。これらは望ましくないものであり、取り除くのに時間及び努力を要する。内部に小さい中空状の通路を有する、重要な用途においては、ベインが通路にわたって伸び、通路をふさぐことがある。これらの重要な鋳物の例は、水ジャケットを有するエンジンブロック及びヘッドであり、この水ジャケットは発見が困難で取り除くのがよりいっそう困難な場所にあるベインによってふさがれる可能性がある。
【0004】
天然ジルコン、亜クロム酸塩、カンラン石、並びに人工セラミック及び他の骨材を含む他のタイプの骨材も、「砂」のモールド及びコアを製造するのに使用できる。これらはより低い膨張率を有し、相変化がなく、ベイニング(veining)欠陥が形成される傾向がはるかに低いが、はるかに高価でもある。
【0005】
砂添加剤は、ベイニングの傾向を低減するためにケイ砂と共に使用されている。これらの砂添加剤は典型的には、それらの作用のメカニズムに基づいて3つの主なカテゴリーに分類される。
【0006】
第1のカテゴリーは、シリカ単独よりも膨張値が低いシリカ及びジルコン砂の90:10混合物などの、「低膨張骨材」からなる。天然骨材に加えて、セラミック(ムライト)ビーズ、ケイ酸アルミニウムの「ミクロスフィア」、又は溶融シリカのような人工骨材を使用してもよい。
【0007】
第2のカテゴリーは、木粉、デキストリン、及びデンプンなどの「有機緩衝材」からなる。ケイ砂と混合すると、それらは砂粒子間の若干の体積を占める。したがって、溶融金属をモールドに注ぐと、溶融金属からの熱が過剰な有機材料を直ちに焼き尽くす。有機材料によってそれまでに占められた体積は、その後「クッション」又は砂が膨張する空間をもたらすことができ、そのため砂における応力の蓄積を低減する。
【0008】
砂添加剤の第3のカテゴリーは、砂粒子の表面と反応して砂の表層を化学的に変化させ、得られる砂の膨張特性を変化させる「フラックス」からなる。そのようなフラックスの例は、砂添加剤として長く使われている、ヘマタイト(Fe)及びマグネタイト(Fe)で、いずれも酸化鉄である。他のフラックス型砂添加剤としては、酸化チタン(TiO)及び酸化リチウム(LiO)を含有する材料、例えば、リシア輝石が挙げられる。いくつかの異なるフラックス型添加剤の組合せを使用すると有益な効果を有する場合があることも実証されている。これはヘマタイトが他の添加剤と共に使用される場合に特に当てはまる。
【0009】
砂添加剤の既存のカテゴリーは鋳物のベイニングを低減することができるが、砂添加剤の3つすべてのカテゴリーはいずれも、いくつかの重要な欠点を有する。低膨張骨材はケイ砂と比較して高価な傾向があり、比較的高レベル(砂を基準として10パーセントを上回る)で使用する必要がある。有機緩衝材は液体金属への暴露時にモールド又はコアによって生成される気体の総量を増大させる傾向があり、約1パーセントを超えるレベルで使用されるとモールド/コアの強度を著しく低下させる恐れがある。フラックス型砂添加剤は現在最も広く使用される添加剤であるが、それらもいくつかの欠点を有する。例えば、酸化鉄は、砂を基準として(BOS)約2重量パーセントを上回って使用すると、差込み(metal penetration)の増大を引き起こすことがあり、高レベルで使用するとモールド/コアの強度を低下させることがある。酸化リチウムを有するリシア輝石は高価であり、典型的には高レベルで、例えば、砂を基準として(BOS)4〜8重量パーセントで使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/286,913号
【特許文献2】米国特許第3,485,497号
【特許文献3】米国特許第3,409,579号
【特許文献4】米国特許第4,526,219号
【特許文献5】米国特許第3,485,797号
【特許文献6】米国特許第4,985,489号
【特許文献7】米国特許第4,750,716号
【特許文献8】米国特許第4,391,642号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】AFS Transactions、149〜158頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、骨材及び有機酸塩、好ましくはクエン酸塩、酢酸塩、及び酒石酸塩を含む鋳造混合物を記載する。有機酸塩を、骨材の重量を基準として5.0重量パーセント未満の量で、さらには1.0重量パーセント以下の量で使用して、鋳造混合物によって調製される金属鋳物のベイニングを効果的に低減することができる。本開示は、ウォームボックス(warm−box)法、ホットボックス(hot−box)法、ノーベーク(no−bake)法、及びコールドボックス(cold−box)法によって鋳型を作るための鋳造混合物の使用、金属鋳物を作るためのこれらの鋳型の使用、並びにこの方法によって調製される金属鋳物も記載している。この鋳造混合物を使用する場合、金属部品を鋳造するのに使用される鋳型から作られた金属鋳物において、ベイニングが低減又は排除される。
【0013】
有機酸塩は一般に酸性であり、砂バインダーの化学的性質に干渉し得るので、有機酸塩を鋳造混合物において使用してベイニングを改善できることは驚くべきことであった。例えば、ウォームボックス用バインダーは酸性触媒を使用するので、有機酸塩が存在すると早期に反応を開始させる可能性がある。一方で、コールドボックス用フェノールウレタンバインダーはアルカリの触媒作用を受け、有機酸塩が存在すると反応を遅らせるか、又はより高レベルの触媒を必要とする可能性がある。有機酸塩はまた、金属の鋳造温度を十分に下回る温度で分解し、一般にモールド及びコアに対して有害と考えられている水及び他の気体を放出する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
鋳造混合物の砂添加剤として使用される有機塩の例としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩、及び酒石酸水素カリウムが挙げられる。
【0015】
鋳造混合物中で使用される有機酸塩の量は、金属部品を鋳造するのに使用される鋳型(例えば、モールド及びコア)によって作られる金属鋳物のベイニングを低減又は排除するのに有効な量である。有機酸塩の有効量は典型的には鋳造用骨材の重量を基準として0.25重量パーセント〜5.0重量パーセント、好ましくは鋳造用骨材の重量を基準として0.5重量パーセン〜3.0重量パーセント、最も好ましくは鋳造用骨材の重量を基準として0.75重量パーセント〜2.0重量パーセントである。
【0016】
有機酸塩に加えて、鋳造混合物は、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及び酸化リチウム含有化合物などの既知の砂添加剤を含有していてもよい。赤色酸化鉄は有機酸塩と共に使用するのが特に有用である。赤色酸化鉄を有機酸塩と共に使用する場合、これは典型的には1:1〜5:1、好ましくは2:1〜4:1のクエン酸塩及び/又は酢酸塩対赤色酸化鉄の重量比で使用される。
【0017】
鋳造混合物は鋳造用バインダーを含有していてもよい。これらの鋳造用バインダーは当技術分野において良く知られている。バインダーが鋳型を十分に一緒に保持し、硬化触媒の存在下で重合するならば、任意の無機又は有機のウォームボックス用、ホットボックス用、ノーベーク用、又はコールドボックス用バインダーを使用できる。そのようなバインダーの例は、とりわけ、フェノール樹脂、フェノールウレタンバインダー、フランバインダー、アルカリフェノールレゾールバインダー、及びエポキシ−アクリルバインダーである。特に好ましいのはフェノールウレタンバインダー及びエポキシ−アクリルバインダーである。フェノールウレタンバインダーは米国特許第3,485,497号及び第3,409,579号に記載されており、これらは本明細書により参照として本開示に組み込まれる。これらのバインダーは二液系に基づき、一方はフェノール樹脂成分であり、他方はポリイソシアネート成分である。酸化剤の存在下で二酸化硫黄によって硬化されるエポキシ−アクリルバインダーは米国特許第4,526,219号に記載されており、これは本明細書により参照として本開示に組み込まれる。
【0018】
必要とされるバインダーの量は、形状を維持し効果的な硬化を可能にするのに有効な量であり、すなわち、これは硬化後の取り扱い又は自立が可能である鋳型をもたらすことになる。バインダーの有効量は典型的には、鋳造用骨材の重量を基準として約0.1重量パーセントを上回る。好ましくはバインダーの量は約0.5重量パーセント〜約5重量パーセントの範囲、より好ましくは約0.5〜約2重量パーセントの範囲である。
【0019】
ノーベーク法による鋳造混合物の硬化は、液体硬化触媒を鋳造混合物と混合し(あるいは最初に液体硬化触媒を鋳造混合物と混合し)、触媒を含有する鋳造混合物を成形し、成形した鋳造混合物を、典型的には周囲温度で熱を加えずに、硬化させることによって行われる。ウォームボックス法及びホットボックス法は、硬化を促進するために工具及び/又は鋳型を加熱すること以外、ノーベーク法と同様である。好ましい液体硬化触媒は、本明細書により参照として本開示に組み込まれる米国特許第3,485,797号に記載される、ノーベーク法のための第3級アミンである。そのような液体硬化触媒の具体例としては、アルキル基が1〜4個の炭素原子を有する4−アルキルピリジン、イソキノリン、アリールピリジン、例えば、フェニルピリジン、ピリジン、アクリジン、2−メトキシピリジン、ピリダジン、3−クロロピリジン、キノリン、N−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール、4,4’−ジピリジン、4−フェニルプロピルピリジン、1−メチルベンズイミダゾール、及び1,4−チアジンなどが挙げられる。ウォームボックス法、ホットボックス法、又はノーベーク法においてフランバインダーを使用する場合、典型的に使用される硬化触媒は、無機又は有機酸、例えば、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、HCl、及びHSOなどの強酸である。リン酸などの弱酸を使用することもできる。
【0020】
コールドボックス法による鋳型の硬化は、鋳造混合物を型に吹き込むか又は詰め込み、鋳型を蒸気又は気体の触媒と接触させることによって行われる。選択される化学バインダーに応じて、第3級アミン、二酸化炭素、ギ酸メチル、及び二酸化硫黄などの、様々な蒸気又は蒸気/気体混合物又は気体を使用できる。当業者ならば、どの気体状硬化剤が使用するバインダーに適しているかがわかるであろう。例えば、アミン蒸気/気体混合物はフェノール−ウレタン樹脂と共に使用する。二酸化硫黄(酸化剤と併用)はエポキシ−アクリル樹脂と共に使用する。
【0021】
本明細書により参照として本開示に組み込まれる米国特許第4,526,219号を参照のこと。二酸化炭素(本明細書により参照として本開示に組み込まれる米国特許第4,985,489号を参照のこと)又はメチルエステル(本明細書により参照として本開示に組み込まれる米国特許第4,750,716号を参照のこと)はアルカリフェノールレゾール樹脂と共に使用する。二酸化炭素はまたケイ酸塩をベースとするバインダーと共に使用する。本明細書により参照として本開示に組み込まれる米国特許第4,391,642号を参照のこと。
【0022】
好ましくはバインダーは、米国特許第3,409,579号に記載されるような方法で、トリエチルアミンなどの第3級アミンガスを、成形した鋳造混合物に通すことによって硬化されるコールドボックス用フェノールウレタンバインダー、又は米国特許第4,526,219号に記載されるように酸化剤の存在下で二酸化硫黄によって硬化されるエポキシアクリルバインダーである。
【0023】
離型剤、溶媒、可使時間延長剤、シリコーン化合物などの他の添加剤を鋳造混合物に加えてもよいことは、当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0024】
例A(比較例)及び例1(実施例)において、Badger 5574ケイ砂を、1.25パーセントBOSのCHEM−REZ(登録商標)995フランバインダー(Ashland Inc.より市販されている)、20パーセントBOB(バインダーを基準とする)のCHEM−REZ FC521触媒(Ashland Inc.より市販されている)、及び表1に示す量(砂の重量を基準として、BOS)の砂添加剤と混合し、混合物を約235℃に維持されているコアボックス(corebox)へ吹き込むことにより、ウォームボックス法によって試験コア(直径2”×高さ2”の円筒形コア)を製造した。
【0025】
例B(比較例)及び例2〜4(実施例)において、Wedron 540ケイ砂を表1の1.0パーセントのISOCURE(登録商標)TKW 10/20フェノールウレタンバインダー(Ashland Inc.より市販されている2液系フェノールウレタンバインダー、I液対II液の比は1:1)と混合し、この混合物を直径2”×高さ2”の円筒形キャビティを有するコアボックス中に吹き込み、コアをTEA触媒によって硬化させることにより、コールドボックス法によって試験コアを調製した。
【0026】
試験コアがモールドアセンブリの中に接着されている「差込み(penetration)」試験用の鋳物を用いて、試験コアのベイニング特性を測定した。次いで、温度がおよそ1450℃である溶融したClass 30のねずみ鋳鉄を、試験コアの入ったモールドアセンブリへ注ぐ。ベイニングに関する差込み試験及び機械的差込み(mechanical penetration)は、Tordoff及びTenagliaによりAFS Transactions、149〜158頁(AFS 84th Annual meeting、St. Louis、Mo.、4月21〜25日、1980年)に記載されている。表面の欠陥を目視観察によって測定し、鋳物の評価を経験及び試験用鋳物の写真に基づいて行った。
【0027】
鋳物を冷却してサンドブラストによって洗浄し、コアによって作られたキャビティの内表面を評価し、ベイニングについて目視で比較し、1〜5のスケールで評価する。ここで5は最も悪い状態のベイニングを表し、1はベイニングがないことを示す。結果を以下の表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1のデータは明らかに、1.0重量パーセントBOSもの低いレベルであっても、クエン酸塩、酢酸塩、及び酒石酸塩などの有機酸塩を含有する鋳造混合物を用いて調製した試験コアが試験用鋳物のベイニングを低減することを示す。
【0030】
開示及び実施例は様々な組合せ、修正、及び特許請求の範囲内にあるパラメーターへの調節が可能であり、したがって特許請求の範囲は代替実施形態を含むと解釈されるべきである。
【0031】
(付記1)
鋳造混合物であって、
(a)鋳造用骨材と、
(b)前記鋳造混合物によって調製される金属鋳物のベイニングを低減するのに有効な量の有機酸塩と
を含む、鋳造混合物。
(付記2)
赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、及びそれらの混合物からなる群から選択される酸化鉄をさらに含む、付記1に記載の鋳造混合物。
(付記3)
酸化鉄が赤色酸化鉄である、付記2に記載の鋳造混合物。
(付記4)
鋳造用骨材がケイ砂を含む、付記3に記載の鋳造混合物。
(付記5)
有機酸塩が、クエン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される、付記4に記載の鋳造混合物。
(付記6)
塩がクエン酸ナトリウムである、付記5に記載の鋳造混合物。
(付記7)
有機酸塩対赤色酸化鉄の重量比が1:1〜4:1である、付記4又は5に記載の鋳造混合物。
(付記8)
有機酸塩対赤色酸化鉄の重量比が1:1〜2:1である、付記7に記載の鋳造混合物。
(付記9)
鋳造混合物が有機バインダーを含有する、付記9に記載の鋳造混合物。
(付記10)
バインダーがフェノールウレタンバインダー又はエポキシアクリレートバインダーである、付記9に記載の鋳造混合物。
(付記11)
鋳造混合物が触媒を含有する、付記10に記載の鋳造混合物。
(付記12)
鋳造混合物中の有機酸塩の量が、鋳造用骨材の重量を基準として0.5重量パーセント〜4.0重量パーセントである、付記9に記載の鋳造混合物。
(付記13)
鋳造混合物中の有機酸塩の量が、鋳造用骨材の重量を基準として0.5重量パーセント〜4.0重量パーセントである、付記11に記載の鋳造混合物。
(付記14)
鋳造混合物中の有機酸塩の量が、鋳造用骨材の重量を基準として0.5重量パーセント〜2.5重量パーセントである、付記12に記載の鋳造混合物。
(付記15)
鋳造混合物中の有機酸塩の量が、鋳造用骨材の重量を基準として0.5重量パーセント〜2.5重量パーセントである、付記13に記載の鋳造混合物。
(付記16)
(a)付記9に記載の鋳造混合物を型に導入して鋳型を形成するステップと、
(b)(A)の鋳型を、鋳型を硬化させることができる蒸気硬化触媒と接触させるステップと、
(c)(B)から得られる前記鋳型を、前記鋳型が取り扱い可能になるまで硬化させるステップと、
(d)前記鋳型を型からはずすステップと
を含む、鋳型を調製するためのコールドボックス法。
(付記17)
(a)付記16に記載の方法によって調製された鋳型をモールドアセンブリにはめ込むステップと、
(b)金属を液体状態のうちに前記モールドアセンブリへ注ぐステップと、
(c)前記金属を冷却及び固体化させるステップと、
(d)次いで、鋳造した金属部品をモールドアセンブリから引離すステップと
を含む、金属部品の鋳造方法。
(付記18)
付記17に従って調製した金属部品。
(付記19)
(a)付記11に記載の鋳造混合物を型に導入して鋳型を形成するステップと、
(b)(A)の前記鋳型を、前記鋳型が取り扱い可能になるまで硬化させるステップと、
(c)前記鋳型を型からはずすステップと
を含む、鋳型を調製するためのノーベーク法。
(付記20)
(a)付記19に記載の方法によって調製された鋳型をモールドアセンブリにはめ込むステップと、
(b)金属を液体状態のうちに前記モールドアセンブリへ注ぐステップと、
(c)前記金属を冷却及び固体化させるステップと、
(d)次いで、鋳造した金属部品をモールドアセンブリから引離すステップと
を含む、金属部品の鋳造方法。
(付記21)
付記20に従って調製した金属部品。
(付記22)
(a)付記11に記載の鋳造混合物を型に導入して鋳型を形成するステップと、
(b)前記鋳型を150℃〜260℃の温度に加熱するステップと、
(c)(A)の前記鋳型を、前記鋳型が取り扱い可能になるまで硬化させるステップと、
(d)前記鋳型を型からはずすステップと
を含む、鋳型を調製するためのウォームボックス法。
(付記23)
(a)付記22に記載の方法によって調製された鋳型をモールドアセンブリにはめ込むステップと、
(b)金属を液体状態のうちに前記モールドアセンブリへ注ぐステップと、
(c)前記金属を冷却及び固体化させるステップと、
(d)次いで、鋳造した金属部品をモールドアセンブリから引離すステップと
を含む、金属部品の鋳造方法。
(付記24)
付記23に従って調製した金属部品。