(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266587
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】CB1受容体のアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
A61K 31/57 20060101AFI20180115BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20180115BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20180115BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20180115BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20180115BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20180115BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20180115BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20180115BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20180115BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20180115BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20180115BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20180115BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20180115BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20180115BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20180115BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20180115BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20180115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20180115BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
A61K31/57
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/00
A61P3/04
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/00
A61P19/10
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/30
A61P27/06
A61P29/00
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2015-252341(P2015-252341)
(22)【出願日】2015年12月24日
(62)【分割の表示】特願2014-511826(P2014-511826)の分割
【原出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-104772(P2016-104772A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2015年12月24日
(31)【優先権主張番号】11305625.3
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ピアッツァ,ピエル・ヴィンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレ,モニーク
(72)【発明者】
【氏名】マルシカノ,ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】フェルパン,フランソワ−グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ベッロッキオ,ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】コタ,ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】ルヴェスト,ジャン−ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィティエッロ,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】スパンピナート,ウンベルト
(72)【発明者】
【氏名】マルドナド,ラファエル
【審査官】
原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−510471(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0125311(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0203658(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第2005−0023998(KR,A)
【文献】
米国特許第03244696(US,A)
【文献】
米国特許第03169133(US,A)
【文献】
Yaoxue Xuebao, 1982, Vol.17(4), p.265-274
【文献】
Huaxue Shiji, 2008, Vol.30(9), p.702-704
【文献】
Experientia, 1968, Vol.24(9), p.881-882
【文献】
Eur. J. Med. Chem., 1981, VOl.16(6), p.525-528
【文献】
J.Chem, Research, 1990, p.248-249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/57
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(D):
【化30】
(式中、
−−−R1は、C3が、−NH2、Bn−O−、又は−N
3で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Hで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、そして
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示すか、あるいは
−−−R1は、C3が、C1−8アルコキシ、Bn−O−又はN3で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Bn、−CH
3、又はC2−6アルケニルで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、そして
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示すか、あるいは
−−−R1は、C3が−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ又はBn−で置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、そして
−−−R4は、C16が−Hで置換されていることを示すか、あるいは
−−−R1は、C3が、−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Hで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、
−H又は−NR8R9(ここで、R8
は、H又はC1−8アルキルであり、R9は
、C1−8アルキルである)で置換されていることを示し、そして
−−−R4は、C16が−Hで置換されていることを示す)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩から選択され、ただし、C3及びR1の間の結合が単結合であるときは、R1は、β位にある、プレグネノロン誘導体化合物の、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;生殖障害及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置のための医薬の調製のための、使用。
【請求項2】
対象への投与後、活性なプレグネノロン下流誘導体に実質的に変換されない、請求項1記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項3】
式(D):
【化34】
(式中
−−−R1が、C3が、β位で−NH2、Bn−O−又は−N
3で置換されていることを示し、
−R2が、C17が、−Hで置換されていることを示し、
−−−R3が、C20が、=Oで置換されていることを示し、そして
−−−R4が、C16が、−Hで置換されていることを示す)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1又は2記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項4】
化合物が、5−プレグネン−3β−O−ベンジル−20−オン、3β−アミノプレグネノロン又は5−プレグネン−3β−アジド−20−オンである、請求項3記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項5】
式(D):
【化35】
(式中
−−−R1は、C3が、β位でC1−8アルコキシ、Bn−O−又はN3で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Bn、−CH
3、又はC2−6アルケニルで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、そして
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示す)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1又は2記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項6】
化合物が、17α−アリル−3β−メトキシプレグネノロン、3β−メトキシ−17α−メチルプレグネノロン、17α−ベンジル−3β−メトキシプレグネノロン、3β−ベンジルオキシ−17α−メチルプレグネノロン又は17α−ベンジル−3β−ベンジルオキシプレグネノロンである、請求項5記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項7】
式(D):
【化36】
(式中
−−−R1は、C3がβ位で−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ又はBn−で置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、そして
−−−R4は、C16が−Hで置換されていることを示す)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1又は2記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項8】
化合物が、17α−ベンジルプレグネノロン、17α−エチルプレグネノロン、17α−メチルプレグネノロン又は17−メトキシプレグネノロンである、請求項7記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項9】
式(D):
【化37】
(式中
−−−R1は、C3が、β位で−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Hで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、
−H又は−NR8R9(ここで、R8
は、H又はC1−8アルキルであり、R9は
、C1−8アルキルである)で置換されていることを示し、そして
−−−R4は、C16が−Hで置換されていることを示す)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1又は2記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項10】
化合物が、20−デオキシプレグネノロン又は20−メチルアミノ−5−プレグネン−3β−オールである、請求項9記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項11】
膀胱及び胃腸障害;心血管疾患;腎症;痙性;骨粗鬆症;疼痛;生殖障害及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置のための医薬の調製のための、請求項1〜10のいずれか1項記載のプレグネノロン誘導体化合物の使用。
【請求項12】
大麻嗜癖、依存、乱用、中毒、及び再発関連障害の処置のための医薬の調製のための、請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項13】
化合物が、17α−ベンジル−3β−フルオロプレグネノロン、17α−ベンジル−3β−ベンジルオキシプレグネノロン、3β−ベンジルオキシ−17α−メチルプレグネノロン、17α−ベンジルプレグネノロン、3β−メトキシ−17α−メチルプレグネノロン、17α−アリル−3β−メトキシプレグネノロン又は17α−ベンジル−3β−メトキシプレグネノロンである、プレグネノロン誘導体化合物。
【請求項14】
請求項13記載の化合物及び医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項15】
医薬の調製のための、請求項13記載の化合物の使用。
【請求項16】
膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎;脳炎;疼痛;及び生殖障害及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置のための医薬の調製のための、請求項13記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用、再発及び関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;生殖障害及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置において使用するための化合物に関する。
【0002】
発明の背景:
CB1受容体は、身体の主要なG共役型7回膜貫通型受容体(GCPR)の1つである。これは、脳の主なGCPRであり、また脂肪組織、肝臓、膵臓、筋肉、腎臓、膀胱、及び骨を非限定的に含む、ほとんどの体組織によっても発現されている。
【0003】
CB1は、アナンダミド及び2−アラキドニルグリセロール(2−AG)を非限定的に含む、エンドカンナビノイドと命名される内因性リガンドにより活性化される。
【0004】
内因性リガンドによる活性化を通じて、CB1は、多数の生理機能及び病理学的状態の制御に関与している。CB1受容体の活性化が関与する機能の非包括的リストは、エネルギー代謝;炎症及び免疫;線維症、骨恒常性;種々の器官、行動における脂質貯蔵及び蓄積;乱用薬物の自己投与、記憶、ストレス関連順応、正の強化因子により仲介される行動;胃腸運動能及び他の内蔵収縮器官の運動能;細胞増殖及び分化;疼痛制御;生殖及び妊孕性を含む(Marsicano et al., J Endocrinol Invest.,2006;29(3 Suppl):27-46 Review ; Pagotto U et al., Int J Obes. 2006, Suppl 1:S39-43 Review ; Pagotto U et al., Endocr Rev., 2006 (1):73-100. Review ; Bifulco M, et al. Mol Pharmacol. 2007, 71(6):1445-56 Review)。
【0005】
この広範な生理的役割のため、CB1受容体の過剰活性化は、多数の病状、疾患、及び病態生理学的過程に関与している。CB1受容体の活性化が関与する疾患及び疾患関連過程の例の非包括的リストは、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用、及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;生殖障害及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患を含む(Di Marzo et al., Nat. Rev., Drug Discov., 2004, 3 : 771-784)。
【0006】
CB1受容体はΔ9テトラヒドロカンナビノール(THC)の主な標的であり、この活性成分は大麻から得られる乱用薬物に含有される。THCがその耽溺効果ならびに行動的及び生理的かく乱効果を奏するのは、CB1活性化を介してである。加えて、CB1受容体はまた、ニコチン、オピオイド、精神覚醒薬、及びアルコールを非限定的に含む、全ての他の既知の乱用薬物の効果の仲介に関与する。CB1受容体はまた、食物、性交渉の相手、又は賭博を非限定的に含む、嗜癖を誘導することができる非薬物性強化刺激の欲求性質の仲介に関与する。乱用薬物、及び嗜癖を誘導することができる他の強化刺激についてのCB1の一般的効果は、CB1受容体の活性化がドーパミン作動性伝達の活性に及ぼす興奮性コントロールにより、説明される。従って、ドーパミン作動性伝達の活性化は、乱用薬物及び非薬物性の正の強化因子の欲求特性及び依存傾向の仲介に関与する。このため、CB1活性の遮断は、嗜癖、薬物乱用、薬物依存、及び再発の処置方法として提案されてきた(Scherma M et al., CNS Neurol Disord Drug Targets. 2008 ;7(5):468-81. Review ; Wiskerke J et al., Addict Biol. 2008;13(2):225-38. Review ; Moreira FA, et al., Addict Biol. 2008;13(2):196-212.. Review ; Lopez-Moreno JA et al, Addict. Biol. 2008;13(2):160-87. Review ; Janero DR et al., Curr Psychiatry Rep., 2007; 9(5):365-73. Review ; Laviolette SR et al., Cell Mol Life Sci., 2006;63(14):1597-613. Review ; Maldonado R, et al. Trends Neurosci., 2006; 29(4):225-32. Review ; ColomboG et al., Pharmacol Biochem Behav., 2005; 81(2):369-80. Review ; Gardner EL. Pharmacol Biochem Behav., 2005; 81(2):263-84. Review)。
【0007】
CB1受容体の阻害は、体重を減らし、心血管代謝のリスクパラメーターの改善を増すことが示されている。従って、CB1受容体アンタゴニストは、過体重を予防的に防ぎ、食物摂取の制御において助けとなり、ダイエット補助薬として助けとなり、肥満を処置し、しばしば肥満と関連する代謝障害、例えば、糖尿病及び脂質異常症を改善することが示された(Bermudez-Silva FJ et al., 2010 ; Lee HK et al. 2009; Xie S et al., 2007)。
【0008】
中心的なCB1受容体シグナル伝達は、モノアミン作動性神経伝達と機能的に結び付けられる。これが、CB1アンタゴニストを、任意の中心的モノアミン作動系における妨害によりもたらされる精神病、情動及び認知障害の処置の候補となす。さらに、CB1アゴニストは、記憶の機能障害を導く。それ故、CB1アンタゴニストは、記憶の強化に良好な候補剤である(Reibaud M et al., Eur. J. Pharmacol, 1999; 379 (l):Rl-2, and Terranova JP et al, Psychopharmacology., 1996;126(2): 165-72を参照)。CB1活性化はまた、上昇した脳のエンドカンナビノイドと関連するパーキンソン病の様な運動における機能障害及び運動障害も導き得る。それ故、CB1アンタゴニズムは、パーキンソン病の優れた候補処置であろう(Di Marzo V et al, FASEB J., 2000; 14(10): 1432-8を参照)。それ故、CB1アンタゴニストは、種々の精神医学的及び神経学的疾患の処置の候補である。
【0009】
CB1受容体はまた、Pryce G等(Br J Pharmacol, 2007, 150 (4): 519-525.)及びBaker D等(FASEB J., 2001, 15: 300-302)により開示される痙性に関与する。
【0010】
Chien FY等は、WIN55212−2である、CB(1)受容体でのカンナビノイドアゴニストが、正常及び緑内障モンキーアイの両方で眼圧を減少させることを示した。
【0011】
CB1受容体は、いくつかの末梢組織、例えば、胃腸管中の神経終末において発現し、主に、進行中の収縮性伝達物質放出を阻害することにより、胃腸の運動性を下げる。従って、CB1受容体のアンタゴニストは、低下した腸の運動性からなる病理学的状態、例えば、腹膜炎、手術、又は他の有害状況により引き起こされる麻痺性イレウスにおける使用を見出すことができた(Mascolo N et al, FASEB J., 2002 Dec; 16(14): 1973-5)。
【0012】
又、胃腸疾患について、CB1受容体はまた、肝臓疾患、特に、脂肪肝、脂肪性肝炎(NASH)、及び肝硬変に関与することも示されている。CB1活性化は、2重のメカニズムにより、これらの疾患において役割を果たす:1.肝臓での脂肪の蓄積を促進すること;2.炎症性因子、例えば、TNFαの放出を促進すること。CB1阻害剤は、これらの病状において、脂肪蓄積及びTHFα放出の両方を減少させるので有益である。3.この場合は、例えば、1.Mallat A and Lotersztajn S. Diabetes and Metabolis 34(2008) 680-684; 2.Tam J et al., HEPATOLOGY 2011;53:346-355; 3.Soren V. Siegmund SV and Schwabe RF Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 294: G357-G362, 2008; 4.DeLeve DL et al., The American Journal of Pathology, 173, No. 4, 2008; 5.Roche M et al., Immunology, 2008 125, 263-271; 6.Murumalla R et al., Journal of Inflammation 2011, 8:33; 7.Croci T, et al., British Journal of Pharmacology (2003) 140, 115-122を参照。
【0013】
CB1受容体はまた、骨を神経支配するノルアドレナリン作動性末端において発現している。CB1活性化は、ノルアドレナリン放出を阻害して、次には、閉経期に関連する骨粗鬆症を非限定的に含む、骨量を減少させる破骨細胞の活性を増大させることができる。この理由のため、CB1アンタゴニストはまた、骨粗鬆症の処置として提案されきた(Idris AI Curr Neuropharmacol. 2010 8(3):243-53)。
【0014】
CB1受容体はまた、血小板及びマクロファージ由来エンドカンナビノイドの降圧効果を仲介する血管内皮細胞において役割を果たす。CB1アンタゴニストは、エンドトキシンにより誘導される低血圧又は硬化低血圧(両方とも、上昇したレベルのエンドカンナビノイドにより特徴付けられる)の阻害において有用な剤であろう(Batkai S et al, Nat Med., 2001 Jul;7(7): 827-32を参照)。CB1はまた、血管新生を刺激し、結果として、CB1受容体の遮断は、例えば、腫瘍成長においてみられるような、血管新生の増加が病態生理学的役割を果たす疾患の処置のために、提案されてきた。
【0015】
CB1受容体はまた、心筋症、例えば、硬化心筋症、ならびに抗悪性腫瘍薬誘発性の心筋症、収縮不全、梗塞、及びアテローム性動脈硬化症を含む心血管系の病状にも関与する。CB1受容体は、血圧、炎症、脂質蓄積、血管新生、及び心収縮性のコントロールに関与する複数のメカニズムでこれらの疾患において役割を果たす。例えば、1.Batkai S et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2007, 293: H1689-H1695; 2.Seyed Ali Gaskari SA et al., British Journal of Pharmacology (2005) 146, 315-323; 3.Batkai S and Pacher P. Pharmacol Res. 2009, 60: 99-106; 4.Nissen SE et al., JAMA. 2008;299(13):1547-1560; 5.Mukhopadhyay P et al., J Am Coll Cardiol. 2007, 50: 528-536を参照。
【0016】
CB1受容体はまた、炎症性疾患、特に、皮膚炎症、UVにより誘導される皮膚炎症及び癌、皮膚線維症、ならびに創傷治癒を非限定的に含む皮膚疾患に関与することも示された。このような関係において、CB1受容体の阻害又は抑制は、これら全ての病理学的状態について有益であることが示された。例えば、1.Marquart S et al., ARTHRITIS & RHEUMATISM, 2010, 62:3467-3476; 2.Zheng D et al., Cancer Res. 2008 May 15; 68(10): 3992-3998を参照。
【0017】
さらに、エンドカンナビノイドシグナル伝達は、対応する健常な組織と比較していくつかのヒト悪性腫瘍、並びに高度の侵襲性を伴うヒト癌細胞において見出される(Sarnataro D et al., 2006 ; Gazzerro P et al., 2010 ; Santoro A, et al. 2009)。
【0018】
エンドカンナビノイドシグナル伝達はまた、受精、着床前胚、及び精子形成において必要とされ、それ故、ヒトにおける不妊及びリプロダクティブ・ヘルスの改善に関連する標的である。
【0019】
この理由のため、CB1受容体の阻害は、これら全ての病理学的状態及び関連疾患の治療として提案されてきた。
【0020】
内因性リガンドが結合して受容体を活性化する部位である、オルソステリック結合部位の阻害を介したCB1の活性の遮断を目的とする方法が、開発され、臨床試験のため提起されてきた。これらの化合物の1つであるリモナバンは、ブランド名アコンプリアで市場にある。アコンプリアは試験され、代謝障害、糖尿病及び異常脂質血症、肥満の処置について有益な効果、及びまた、ニコチン嗜癖についての1つの研究において、有益な効果を明らかにした。
【0021】
不運なことに、利用可能なオルソステリックアンタゴニスト、例えば、リモナバンはまた、CB1受容体のインバースアゴニストとして作用する(すなわち、それらは、CB1の活性化ばかりでなく、内因性リガンド不存下での受容体の基本的な活性も阻害する)。このインバースアゴニスト作用及び受容体活性の完全阻害のため、オルソステリックCB1アンタゴニストの投与に基づく利用可能な方法はまた、一連の重篤な副作用を有する。これらの副作用のため、アコンプリアの商業化は、一時的に停止され、CB1のオルソステリック部位を阻害する他の方法の開発がストップした。
【0022】
CB1受容体のオルソステリックアンタゴニストが良好な治療有効性を示した病状の多くには、新規の効率的な治療法の必要が依然としてある。結果として、オルソステリック結合に干渉することなく、CB1受容体を阻害することを可能にすることができ、オルソステリックアンタゴニストより少ない副作用を有する方法を開発する必要がある。
【0023】
故に、オルソステリック結合を緩和することなく、又は副作用を誘導することなく、CB1受容体の阻害を可能にするリガンドの開発の必要が依然として存在する。
【0024】
発明の概要:
本発明は、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用、及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;生殖障害、及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置において使用するための、式(A)
【化1】
(式中:
−−−は、結合が単結合又は2重結合であることを示し、
−−−R1は、C3が、
−H、
−ハロゲン、
−OH、
C1−8アルコキシ、
Bn−O−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、
=O、
−NR5R6(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、Bn、又はPhである)、
−O−CO−R7(式中、R7は、アルキルである)、
−O−CO−C
2H
4−COOH、又は
−N
3
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
−H、
−OH、
ハロゲン、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−6アルケニル、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、
−H、
−OH、
C1−8アルキル、
Bn、
−NR8R9(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、又はBnである)、
=CR10R11(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、H、又はC1−7アルキルである)、又は
=O
で置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、
−H、
−OH、又は
=O
で置換されていることを示し、
但し、
C16とC17の間の結合が2重結合であるとき、R2は存在せず、C17とC20の間の結合は単結合であり、
C17とC20の間の結合が2重結合であるとき、C20は、−H又は−OHで置換され、R2は存在せず、
C4とC5の間の結合が2重結合であるとき、C5とC6の間の結合は反対に単結合である)
の化合物、又はその医薬的な塩に関する。
【0025】
本発明はまた、式(II)
【化2】
(式中:
−−−は、結合が単結合又は2重結合であることを示し、
−−−R1は、C3が、−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
C3−8アルキル、
C2−8アルコキシ、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示す)、又は
(式中、
−−−R1は、C3が
C1−8アルコキシ、
Bn−O、又は
ハロゲン
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
C1−8アルキル、
C2−6アルケニル、
C1−8アルコキシ、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示す)
の化合物、又はその医薬的な塩に関する。
【0026】
発明の詳細な説明
定義
「アゴニスト」は、別の化合物又は受容体部位の活性を増強させる化合物に言及する。
【0027】
用語「アンタゴニスト」及び「阻害剤」は、受容体部位での別の化合物の活性を弱めるか又は妨げる化合物に言及し、より一般的には、受容体の活性化及び/又は活性を弱めるか又は妨げる化合物に言及する。
【0028】
「処置又は処置すること」は、治療的処置及び予防又は防止手段(ここで、対象は、標的の病的状態又は障害を妨げるか又は遅延させることである)の両方に言及する。処置を必要とするものは、障害を既に有するもの、並びに障害を有する傾向のあるもの、又は障害が妨げられるべきものを含む。故に、本明細書において処置されるべき対象は、障害を有すると診断され得るか、又は障害に罹りやすいか若しくは感受性があり得る。
【0029】
本明細書において用いられる用語「対象」は、哺乳動物、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ、及び霊長類を示す。好ましくは、本発明による対象は、ヒトである。
【0030】
「治療上有効量」は、(例えば)対象に対して治療又は予防上の利益を授けることが必要である、活性剤の最小量に向けられている。例えば、哺乳動物に対する「治療上有効量」は、障害に関連する病的症状、疾患の進行、又は生理的状態の改善、又は障害に屈服することに対する抵抗を誘導するか、改善するか、又はそうでなければ引き起こす量である。
【0031】
本明細書において用いられる用語「癌」は、無制御の細胞成長又は死により典型的に特徴付けられる対象の生理的状態に言及するか、又は述べる。癌の例は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ性悪性疾患を非限定的に含む。かかる癌のより具体的な例は、扁平細胞癌(例えば、扁平上皮細胞癌)、小細胞性肺癌、非小細胞性肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃部の癌又は胃癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸部癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、大腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌腫、腎臓癌又は腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、並びに頭部及び頸部癌を含む。
【0032】
本明細書において用いられる用語「嗜癖及び依存」は、薬理化合物、食物、性交渉の相手、賭博、危険な行動を非限定的に含む、強化刺激に対する行動変化に言及する。この行動変化は、次の特徴:1.個人が上述の刺激の消費、摂取、又は上述の刺激との接触を抑えられず、結果として、より多量の刺激を消費して、長期間これらの行動をやめることを当初目的とした試みが不成功に終わったこと;2.対象の主な活動となり、そして他の活動を無視することと関連し得る上述の刺激を得るか、消費するか、摂取するか、又は上述の刺激と接触する強力な動機;3.強化刺激の消費の停止又は強化刺激の不存下での、身体的又は心理的不快感の出現の1つ又は全てにより特徴付けられる。
【0033】
本明細書において用いられる用語「乱用」は、個々の生物の健全性が、薬理化合物、食物、性交渉の相手、賭博を非限定的に含む、強化刺激の消費、摂取、又は強化刺激との接触の結果として、永久的又は一時的に損なわれた生理的状態に言及する。これらの損傷は、心血管系の合併症、呼吸障害、肝臓疾患、感染症、外傷を非限定的に含む。身体的な健全性のこれらの損傷は、上述の嗜癖及び依存を特徴とする行動の兆候と関連し得るか、又は関連し得ない。
【0034】
本明細書において用いられる用語「再発」は、薬理化合物、食物、性交渉の相手、賭博を非限定的に含む強化刺激の消費、摂取、又は強化刺激との接触を抑えた継続的な期間の後、嗜癖、依存、又は乱用の復元に言及する。
【0035】
本明細書において用いられる用語「代謝障害」は、エネルギー力学、又はより一般的には生物の構造的もしくは機能的健全性を保証するのに必要である要素として身体により使用される化学物質の正常レベルが変化している生理的状態に言及する。これらの化学物質は、糖質、脂質、アミノ酸、及び電解物を非限定的に含む。一般的に代謝障害から生じる病状は、糖尿病及び脂質異常症を非限定的に含む。代謝障害はまた、胃腸疾患及び心血管疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症、NASH、及び肝硬変を促進し得る。代謝障害は、肥満に関連し得るか、又は特発性性質であり得る。
【0036】
「疼痛」は、特殊神経終末の刺激から生じる、不快感、苦悩、又は激しい苦痛のおおよそ局在性の感覚を意味する。電撃痛、幻想痛、刺痛、急性疼痛、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、複合性局所疼痛、神経痛、神経障害等を非限定的に含む、多くの種類の疼痛が存在する(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, 28th Edition, W. B. Saunders Company, Philadelphia, Pa.)。疼痛処置のゴールは、処置対象により認知される疼痛の重症度の程度を低減することである。
【0037】
皮膚炎症性疾患及び皮膚線維性疾患は、皮膚の変化、皮膚癌及び/又は創傷治癒過程の中断を生じる、特発性又はUVを含む外部物質により誘導される皮膚の病状に言及する。
【0038】
骨粗鬆症、神経変性疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、気分障害、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;アテローム性動脈硬化症、脂肪肝、NASH、及び肝硬変;腎症;緑内障;痙性;自己免疫性肝炎及び脳炎;生殖障害を非限定的に含む、本明細書において用いられる病状の他の指定は、医薬の任意のマニュアルにおいて定義されるそれらの医療の開始範囲内で用いられる。
【0039】
表現「Ciは、Xで置換されている」は、化学式のi位の炭素が、原子、例えば、Hもしくはハロゲン、又は官能基でありうる置換基Xを有することを意味する。
【0040】
「アルキル」は、もっぱら炭素及び水素原子からなる一価の直鎖又は分岐飽和炭化水素部分を意味する。C1−8アルキルは、1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキルを意味する。
【0041】
「アルコキシ」は、式−OR(式中、Rは、本明細書で定義されるアルキル部分である)の部分を意味する。
【0042】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子に言及する。
【0043】
「アミノ」は、式−NRR'(式中、R及びR'は、それぞれ独立して、水素、又は本明細書で定義されるアルキルである)の部分を意味する。
【0044】
略語Bnは、ベンジル基に言及する。
【0045】
略語Phは、フェニル基に言及する。
【0046】
分子面上の置換基は、実線
【化3】
として示され、βとして記載され;面の下のものは、破線
【化4】
により示され、αとして記載される。
【0047】
「場合により」は、その後記載される現象又は事情が、必要であるが、生じなくてもよいこと、及び記載が、現象又は事情が生じる場合、及びそれが生じない場合を含むことを意味する。
【0048】
CB1受容体の阻害
本発明は、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;生殖障害及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置において使用するための、式(A):
【化5】
(式中:
−−−は、結合が単結合又は2重結合であることを示し、
−−−R1は、C3が
−H、
−ハロゲン、
−OH、
C1−8アルコキシ、
Bn−O−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、
=O、
−NR5R6(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、Bn、又はPhである)、
−O−CO−R7(式中、R7は、アルキルである)、
−O−CO−C
2H
4−COOH、又は
−N
3
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
−H、
−OH、
ハロゲン、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−6アルケニル、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、
−H、
−OH、
C1−8アルキル、
Bn、
−NR8R9(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、又はBnである)、
=CR10R11(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、H又はC1−7アルキルである)、又は
=O
で置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、
−H、
−OH、又は
=O
で置換されていることを示し、
但し、
C16とC17の間の結合が2重結合であるとき、R2は存在せず、C17とC20の間の結合は単結合であり、
C17とC20の間の結合が2重結合であるとき、C20は、−H又は−OHで置換され、R2は存在せず、
C4とC5の間の結合が2重結合であるとき、C5とC6の間の結合は逆に単結合である)
の化合物、又はその医薬的な塩に関する。
【0049】
実に、本発明者等は、プレグネノロン及びその誘導体のいくつかは、CB1受容体の阻害剤であり、オルソステリック結合を修飾することなく、天然又は合成アゴニスト、又は内因性リガンドにより誘導されるCB1受容体の活性化を遮断することができることを示した。
【0050】
それ故、本発明の化合物は、CB1受容体の他のアンタゴニスト、例えば、リモナバンと同様に作用し、CB1受容体のアンタゴニストが必要とされる病状の処置において用いられ得る。
【0051】
さらに、この阻害は、内因性メカニズムである。次に、それは、内因性又は外因性アゴニストに対する受容体の応答を調節し、アゴニストの受容体への結合を遮断しないより生理的な方法で、受容体の活性を修飾する。このより生理的なメカニズムのため、阻害剤、例えば、プレグネノロン及びその誘導体は、オルソステリックアンタゴニストより少ない副作用を提示しやすい。
【0052】
CB1受容体のアンタゴニストで処置され得る膀胱及び胃腸障害の例は、肝線維症;脂肪肝;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変;アルコール性脂肪肝;内毒血症により合併した肝性虚血性再灌流傷害;急性膵炎;過活動及び有痛性膀胱障害、及び収縮性内蔵器官の運動性変化を非限定的に含む。
【0053】
CB1受容体のアンタゴニストで処置され得る炎症性疾患の例は、肥満と関連する炎症及び関節炎;慢性免疫性炎症性疾患、及び潰瘍を非限定的に含む。
【0054】
CB1受容体のアンタゴニストで処置され得る心血管疾患の例は、心筋症、例えば、硬化心筋症、抗悪性腫瘍薬により誘導される心筋症、内皮機能障害、及び鬱血性心不全と関連する血管機能障害の発症に関与する細胞死;高血圧;冠動脈疾患;アテローム性動脈硬化症;心筋梗塞;脂質の蓄積から生じる疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症、増大した血管新生により誘導される病状、及び血管新生に関与する疾患を非限定的に含む。
【0055】
CB1受容体のアンタゴニストで処置され得る代謝障害の例は、異常脂質血症、糖尿病、及び糖尿病合併症を非限定的に含む。
【0056】
CB1受容体のアンタゴニストで処置され得る嗜癖、依存、乱用、及び再発関連障害の例は、薬物依存;薬物乱用;薬物依存、乱用、及び嗜癖の再発;大麻及び派生製品の使用;大麻及び派生製品の乱用;大麻及び派生製品の毒性;大麻及び派生製品により誘導される精神病を非限定的に含む。
【0057】
CB1受容体のアンタゴニストで処置され得る神経変性障害の例は、パーキンソン病及びアルツハイマー病を非限定的に含む。
【0058】
CB1受容体のアンタゴニストで処置され得る精神障害及び神経障害の例は、統合失調症;気分障害;L−DOPAにより誘導されるジスキネジア;記憶障害を非限定的に含む。
【0059】
CB1受容体のアンタゴニストで処置され得る生殖障害の例は、不妊及び反復流産を非限定的に含む。
【0060】
CB1受容体のアンタゴニストで処置され得る皮膚炎症性疾患及び線維性疾患の例は、皮膚炎症、UVにより誘導される皮膚炎症及び癌、皮膚線維症、及び創傷治癒を非限定的に含む。
【0061】
本発明は、処置を必要とする対象における、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;生殖障害及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置方法であって、該対象に、有効量の式(A):
【化6】
(式中:
−−−は、結合が単結合又は2重結合であることを示し、
−−−R1は、C3が
−H、
−ハロゲン、
−OH、
C1−8アルコキシ、
Bn−O−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、
=O、
−NR5R6(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、Bn、又はPhである)、
−O−CO−R7(式中、R7は、アルキルである)、
−O−CO−C
2H
4−COOH、又は
−N
3
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
−H、
−OH、
ハロゲン、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−6アルケニル、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、
−H、
−OH、
C1−8アルキル、
Bn、
−NR8R9(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、又はBnである)、
=CR10R11(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、H又はC1−7アルキルである)、又は
=O
で置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、
−H、
−OH、又は
=O
で置換されていることを示し、
但し、
C16とC17の間の結合が2重結合であるとき、R2は存在せず、C17とC20の間の結合は単結合であり、
C17とC20の間の結合が2重結合であるとき、C20は、−H又は−OHで置換され、R2は存在せず、
C4とC5の間の結合が2重結合であるとき、C5とC6の間の結合は逆に単結合である)
の化合物、その医薬的な塩を投与することを含む方法に関する。
【0062】
本発明は、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;生殖障害及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置用医薬の製造のための、式(A):
【化7】
(式中:
−−−は、結合が単結合又は2重結合であることを示し、
−−−R1は、C3が、
−H、
−ハロゲン、
−OH、
C1−8アルコキシ、
Bn−O−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、
=O、
−NR5R6(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、Bn、又はPhである)、
−O−CO−R7(式中、R7は、アルキルである)、
−O−CO−C
2H
4−COOH、又は
−N
3
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
−H、
−OH、
ハロゲン、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−6アルケニル、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、
−H、
−OH、
C1−8アルキル、
Bn、
−NR8R9(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、又はBnである)、
=CR10R11(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、H、又はC1−7アルキルである)、又は
=O
で置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、
−H、
−OH、又は
=O
で置換されていることを示し、
但し、
C16とC17の間の結合が2重結合であるとき、R2は存在せず、C17とC20の間の結合は、単結合であり、
C17とC20の間の結合が2重結合であるとき、C20は、−H又は−OHで置換され、R2は存在せず、
C4とC5の間の結合が2重結合であるとき、C5とC6の間の結合は逆に単結合である)
の化合物、又はその医薬的な塩の使用に関する。
【0063】
本発明はまた、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;及び生殖障害及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置において使用するための、本発明の式(I):
【化8】
(式中:
−−−は、結合が単結合又は2重結合であることを示し、
−−−R1は、C3が、
−H、
−ハロゲン、
−OH、
C1−8アルコキシ、
Bn−O−
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、
=O、
−NR5R6(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、Bn、又はPhである)、
−O−CO−R7(式中、R7は、アルキルである)、又は
−O−CO−C
2H
4−COOH
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
−H、
−OH、
ハロゲン、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−6アルケニル、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が
−H、
−OH、
C1−8アルキル、
Bn、
−NR8R9(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、又はBnである)、
=CR10R11(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、H、又はC1−7アルキルである)、又は
=O
で置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、
−H、
−OH、又は
=O
で置換されていることを示し、
但し、
C16とC17の間の結合が2重結合であるとき、R2は、存在せず、C17とC20の間の結合は、単結合であり、
C17とC20の間の結合が2重結合であるとき、C20は、−H又は−OHで置換され、R2は存在しない)
の化合物、又はその医薬的な塩に関する。
【0064】
本発明はまた、本発明の化合物、又はその医薬的な塩、及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0065】
「医薬的」又は「医薬的に許容される」は、必要に応じて、哺乳動物、特に、ヒトに投与されるとき、有害なアレルギー反応又は他の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物に言及する。医薬的に許容される担体は、任意の種類の無毒性の固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、被覆材料、又は剤形補助物に言及する。
【0066】
医薬的に許容される担体は、任意の種類の無毒性の固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、溶解剤、安定化剤、塩形成剤、滑沢剤、及び被覆材料、又は剤形補助物に非限定的に言及する。
【0067】
医薬組成物の形態、投与経路、投薬量、及び処方計画は、当然、処置されるべき病状、病気の重症度、患者の年齢、体重、及び性別等に依存する。
【0068】
本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、気管内、経皮、局所、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、舌下、膣内及び直腸を非限定的に含む、任意の投与経路用に製剤化され得る。
【0069】
好ましくは、本発明によると、活性成分は、経口経路により投与され、単位投薬量形態、例えば、固体投薬形態として提示される。この単位投薬形態は、成人又は小児への生成物投与を助けるために、錠剤、被覆錠剤、丸薬、粉剤、又は顆粒剤、サシェ、又は硬ゲルカプセル剤のいずれかであり得る。
【0070】
経口投与のため、任意の従来の投薬形態において、組成物は、結合剤(例えば、プレゼラチン化メイズスターチ、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、グアールガムの様なガム誘導体、カラギーナン、アルギン酸又はその塩);充填剤(例えば、ラクトース、蔗糖、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、二リン酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールの様なポリオール、フルクトース、デキストリン、マルトデキストリン等);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ナトリウムステライル、タルク、又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモでんぷん又はグリコール酸ナトリウムスターチ、クロスポビドン、クロスカルメロース等)、塩形成剤(例えば、n−メチルグルカミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は塩酸等)、又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を非限定的に含む、医薬的に許容される賦形剤を用いて古典的技術により調製される。錠剤又は硬ゲルカプセル剤は、当該技術分野において知られた方法により被覆されうる。例えば、錠剤又は硬ゲルカプセル剤は、大腸に到達するまで、活性成分を保護する腸内又は遅延放出コーティングを有することができる。
【0071】
別の可能性は、長期間(最大24時間)運ばれ、1日当たりの投与数を制限するために、活性成分を持続放出させるか、又は制御放出させることである。錠剤又は硬ゲルカプセル剤は、活性成分の制御放出を確かにするポリマーで被覆されうるか、又は錠剤の場合、それらは、マトリックス錠剤であり得、該錠剤は、活性成分の制御放出を確かにする組成物成分中に存在する(かかる成分は、非限定的に、一般的に、親水性ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、キトサン、ポリエチレンオキシド等)、不水溶性及び疎水性ポリマー(例えば、エチルセルロース、ポリ(酢酸ビニル)、酢酸セルロース等)、脂肪酸(例えば、硬化植物油、パルミトステアリン酸グリセリル等)、アルコール(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール等)、ワックス(例えば、蜜ろう、カルナバ・ワックス等)である。プレグネノロンの特定の場合、持続放出剤形はまた、プレグネノロンの下流活性代謝物の産生を減少させる機能を供するであろう。
【0072】
錠剤形態の固体組成物が調製されるとき、錠剤は、直接圧縮、湿式造粒過程又は乾式造粒過程のいずれかにより、製造され得る。使用される製造過程がいずれであれ、活性成分は、第一に、上述のビヒクル全部又は一部と混合され、次に、潤滑され、その後、錠剤に圧縮される。
【0073】
別の実施態様において、本発明は、活性成分の口腔送達に有用であり得;組成物は、従来の方法で製剤化される錠剤又はトローチ剤の形態を取ることができる。使用される成分は、成分間の割合が変わったのみで、従来の錠剤と同じである。
【0074】
好ましくは、活性成分は、局所活性のためのみに送達されることができ;錠剤は、粘膜付着性錠剤として提示される。
【0075】
他方、有効成分は、口腔内で直接送達されることができるが、全身性吸収のため、水が利用できないとき、投薬形態は、水等なしで投与されるという利点を提示する、経口用崩壊錠剤である。
【0076】
別の実施態様において、本発明は、経口投与用液体製剤としても提示されうる。それらは、例えば、液剤、シロップ剤、又は懸濁剤の形態をとることができるか、又は使用前に水又は他の適切なビヒクルと構成させるための乾燥製品として提示され得る。これらの医薬製剤は、アンプル剤としての単位投薬形態、又は一般的にバイアルに充填された複数回用量形態のいずれかであり得る。かかる液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトール又はマンニトールシロップ、蔗糖シロップ、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロース誘導体、グアールガム、キサンタンガム又はアカシアガム等のようなガム誘導体、又は硬化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチン、ポリソルベート、ポリオキシエチル化ヒマシ油、ソルビタンエステル、又はポロクサマー等);水性及び非水性ビークル(例えば、水、モノプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ゴマ油、綿実油、大豆油、ヒマシ油、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、又は分留植物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等);及び保存剤(例えば、一般的に、メチル又はプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸及びそれらの塩、ソルビン酸及びその塩、安息香酸及びその塩)を非限定的に含む、医薬的に許容される添加剤を用いて、従来技術により調製されうる。製剤はまた、必要に応じて、緩衝塩、安定化剤、酸化防止剤、香味剤、着色剤、甘味剤を含有することができる。
【0077】
本発明に適切な別の投与経路は、非経口経路である。活性成分は、静脈内経路、筋肉内経路、又は皮下経路用の適切な注射可能な製品として提示されるであろう(医薬組成物は、注射され得る剤形用の医薬的に許容されるビークルを含有しうる)。これらの組成物は、液剤又は乳剤(例えば、希薄な乳剤、マイクロエマルジョン、又はナノエマルジョン等)として提示されることができ、無菌でありうる。かかる組成物は、等張であるために、生理食塩水成分(リン酸モノナトリウム又はリン酸ジナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウム等、又はかかる塩の混合物)を含有することができる。ある種の場合、活性成分が、液剤として直接提示されるのに十分に安定でないとき、活性成分は、場合によっては、注射に適した無菌非水溶液、無菌水又は生理食塩水溶液の添加で患者への投与に適した注射可能な液剤の構成を可能にする、凍結乾燥組成物又は粉末形態のいずれかとして乾燥状態で提供される。
【0078】
最終製品は、一般的に、バイアル又はアンプル剤形態に充填されて提示される。
【0079】
投与のために使用される用量は、様々なパラメーターに応じて、特に、用いられる投与方法、関連する病状、又は処置の所望の持続に応じて、適応させることができる。
【0080】
全身の薬物レベルを維持するために、及び頻繁な注射を避けるために、デポー型非経口剤形が用いられ得る。これらの医薬剤形は、一般的に非限定的に、注射後、インサイツでゲル又はコロイド又は半固体デポーを形成する微小粒子、移植片、又は液体の形態である。かかるデポー型製剤は、生体適合及び生分解性ポリマー(例えば、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(グリコール酸)、ポリ[(乳酸)−co−(グリコール酸)等])、ポリ(乳酸)等)、非生分解性ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリエステル(アミド)、塩化ポリビニル等)、水性及び非水性ビヒクル(例えば、水、ゴマ油、綿実油、大豆油、ヒマシ油、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール又は分留植物油、プロピレングリコール、DMSO、THF、2−ピロリドン、N−メチルピロリジノン、N−ビニルピロリジノン等)を非限定的に含む、医薬的に許容される添加剤を用いて、従来技術により調製され得る。プレグネノロンの特定の場合、デポー型製剤はまた、プレグネノロンの活性下流代謝物の産生を減少させる機能を供する。
【0081】
医薬組成物を調製するために、有効量の本発明の化合物が、医薬的に許容される担体又は水性媒体中に溶解されるか、又は分散されうる。
【0082】
注射可能な使用に適した液体医薬形態は、無菌水溶剤又は分散剤;又は無菌油性成分、例えば、ゴマ油、ピーナッツ油、綿実油等、中鎖トリグリセリド、トリアセチン油、無菌プロピレングリコール、無菌ポリエチレングリコール、無菌グリセロール、又は無菌ポリオール溶液を含む非水性剤形を非限定的に含む。
【0083】
遊離塩基としての活性化合物又は医薬的に許容される塩の溶液は、適切な溶媒中、必要なら、一般的に、界面活性剤、例えば、非限定的に、ポリソルベート誘導体、ポリエトキシル化ヒマシ油(例えば、cremophor RH40等)、PEG15ヒドロキシステアレート(solutol HS15)、ポロクサマー(lutrol F68等)のような可溶化剤と、安定剤、例えば、EDTA及びその塩と、緩衝剤と、又は酸化防止剤(アスコルビン酸及びその塩、酢酸トコフェロール、又はメタ重亜硫酸ナトリウム)と混合して、調製され得る。該製剤は、微生物の成長を防ぐために保存剤を含有し得る。
【0084】
安定性の理由のため、剤形は、粉剤形態として提示されることができ、該粉剤は、無菌であり、水性溶媒又は非水性溶媒により用時に溶解される。該製剤は、一般的に、無菌の注射可能な液剤又は分散剤の用時投与用である。
【0085】
全ての場合において、形態は、無菌であり、使用、製造、及び保存条件下で安定でなければならず、微生物、例えば、細菌及び真菌の汚染活動に対して守られなければならない。
【0086】
本発明の化合物
一般式:
本発明の化合物は、式:
【化9】
(式中:
−−−は、結合が単結合又は2重結合であることを示し、
−−−R1は、C3が、
−H、
−ハロゲン、
−OH、
C1−8アルコキシ、
Bn−O−
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、
=O、
−NR5R6(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、Bn、又はPhである)、
−O−CO−R7(式中、R7は、アルキルである)、
−O−CO−C
2H
4−COOH、又は
−N
3
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
−H、
−OH、
ハロゲン、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−6アルケニル、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、
−H、
−OH、
C1−8アルキル、
Bn、
−NR8R9(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、又はBnである)、
=CR10R11(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、H、又はC1−7アルキルである)、又は
=O
で置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、
−H、
−OH、又は
=O
で置換されていることを示し、
但し、
C16とC17の間の結合が2重結合であるとき、R2は存在せず、C17とC20の間の結合は単結合であり、
C17とC20の間の結合が2重結合であるとき、C20は、−H又は−OHで置換され、R2は存在せず、
C4とC5の間の結合が2重結合であるとき、C5とC6の間の結合は、逆に単結合である)
を有する。
【0087】
1つの実施態様において、本発明の化合物は、式(I):
【化10】
(式中:
−−−は、結合が単結合又は2重結合であることを示し、
−−−R1は、C3が
−H、
−ハロゲン、
−OH、
C1−8アルコキシ、
Bn−O−
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、
=O、
−NR5R6(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、Bn、又はPhである)、
−O−CO−R7(式中、R7は、アルキルである)、又は
−O−CO−C
2H
4−COOH
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
−H、
−OH、
ハロゲン、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−6アルケニル、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、
−H、
−OH、
C1−8アルキル、
Bn、
−NR8R9(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、又はBnである)、
=CR10R11(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、H、又はC1−7アルキルである)、又は
=O
で置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、
−H、
−OH、又は
=O
で置換されていることを示し、
但し、
C16とC17の間の結合が2重結合であるとき、R2は、存在せず、C17とC20の間の結合は、単結合であり、
C17とC20の間の結合が2重結合であるとき、C20は、−H、又は−OHで置換され、R2は存在しない)
を有する。
【0088】
プレグネノロン:
具体的な実施態様において、本発明の化合物は、プレグネノロン、又はその医薬的な塩である。
【0089】
プレグネノロンは、周知のステロイド(CAS番号145−13−1)である。それは、脳及び他の器官でのステロイド合成の第1工程である。
【0090】
上述の通り、本発明者等は、プレグネノロン、及びその医薬的な塩、例えば、酢酸プレグネノロン又はヘミコハク酸プレグネノロンが、CB1受容体の阻害剤であり、次に、CB1受容体のアンタゴニストが必要とされる病理学的障害及び疾患の処置において用いられ得ることを示した。
【0091】
好ましい実施態様において、プレグネノロンは、対象中のプレグネノロンの血漿濃度が、100ng/mlを超えないような投薬量で対象に投与される。好ましくは、プレグネノロンは、持続放出剤形により投与される。
【0092】
実に、プレグネノロンが有効用量(約100ng/ml又は100ng/g組織)の範囲内にあることを可能にする低用量で投与されるとき、下流活性代謝物中のプレグネノロンの変換は減少する。従って、本発明者等は、下流活性代謝物の増加を誘導しない低濃度で投与されるプレグネノロンが、CB1受容体の活性化の効果を阻害できることを示した。このことは、プレグネノロンが、観察された治療効果が起因する下流活性代謝物を増加するために、高用量で投与されている従前の文献と比較して、重要な相違及びイノベーションである。低用量でのプレグネノロンの投与は、プロゲステロン活性、アンドロゲン活性、エストロゲン活性、グルココルチコイド活性、又は神経調節特性(アロプレグナノロン、テストステロン、DHEAを非限定的に含む、プレグネノロンに由来する他の脳ステロイドの場合のようなもの)を付与するプレグネノロンの下流活性ステロイド誘導体の増加に起因する不要かつ非所望の効果なしに、CB1依存性病状に作用するので、有利である。
【0093】
代謝を伴わないか、又は若干の代謝を伴う化合物
或は、本発明の化合物は、対象への投与後、活性なプレグネノロン下流誘導体へ実質的に変換されない。
【0094】
プレグネノロンは、一般的に、下流活性ステロイドの不活性な前駆体と考えられている。プレグネノロン硫酸塩、アロプレグナノロン、DHEA、DHEA硫酸塩を非限定的に含む、活性プレグネノロン下流誘導体は、種々の行動機能の制御に関与している。
【0095】
しかしながら、本発明者等は、CB1受容体の阻害が、プレグネノロン特異的であり、活性な下流プレグネノロン誘導体と関係しないことを示した。
【0096】
プレグネノロン代謝物へ変換されないか、又は実質的に変換されないプレグネノロンの誘導体の使用が、プレグネロンの前駆体であり、プロゲステロン活性、アンドロゲン活性、エストロゲン活性、グルココルチコイド活性、又は神経調節特性(アロプレグナノロン、テストステロン、DHEAを非限定的に含む、プレグネノロンに由来する他の脳ステロイドの場合のようなもの)を付与する代謝物と関連し得る副作用を回避する。
【0097】
活性なプレグネノロン下流誘導体に変換される又はされない本発明の化合物の能力は、この化合物を投与すること、例えば、50mg/kgでラットに投与し、30分後にラットを屠殺し、ラットの側坐核におけるアロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンの濃度をGC/MSにより測定し、これらの濃度を、ビヒクル又はプレグネノロンのみを注射したラット中のアロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンと比較することにより、評価されうる。
【0098】
或は、化合物は、培養下でプレグネノロンを代謝する酵素を発現する任意の細胞株に投与され、次に、細胞内又は細胞培地中のアロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンの含有量をGC/MSにより測定し、これらの濃度をビヒクル又はプレグネノロンのみを受け取った細胞培地中のアロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンと比較することができる。
【0099】
1つの実施態様において、本発明の化合物は、式I
(式中、
−−−R1は、C3が、
−H、−ハロゲン、−OH、C2−8アルコキシ、Bn−O−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、
=O、
−NR5R6(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、Bn、又はPhである)、
−O−CO−R7(式中、R7は、アルキルである)、又は
−O−CO−C
2H
4−COOHで置換されていることを示し、
−R2、
−−−R3、
−−−R4は、既に定義された通りである)
の化合物である。
【0100】
本発明者等は、広範囲のプレグネノロンの誘導体を試験して、それらがCB1に対する阻害活性を維持することから、対象への投与後、活性なプレグネノロン下流誘導体に実質的に変換されない、プレグネノロンの誘導体を見出した。
【0101】
誘導体のいくつかの群が見出された。
【0102】
C16とC17の間の結合、及びC17とC20の間の結合は、単結合である
1つの実施態様において、C16とC17の間の結合、及びC17とC20の間の結合は、単結合である。
【0103】
C4とC5の間の結合は、2重結合である
1つの実施態様において、C3とC4の間の結合、及びC5とC6の間の結合は、単結合であり、C4とC5の間の結合は、2重結合である。
【0104】
この実施態様において、本発明の化合物は、式B:
【化11】
(式中:
−−−R1は、C3が、−OH、又は=Oで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−H、−OH、C1−8アルキル、ハロゲン、又はBnで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、−OH、又は=Oで置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示す)
を有する。
【0105】
実に、本発明者等は、C4とC5の間の2重結合を有し、上で開示された通りR1、R2、及び/又はR3で置換されているプレグネノロンの誘導体が、プレグネノロンの下流誘導体に変換されないことを見出した。
【0106】
好ましくは、化合物は、4−プレグネン−17α,20α−ジオール−3−オン、4−プレグネン−3β,20α−ジオール、4−プレグネン−20α−オール−3−オン、17α−メチルプロゲステロン、及び17α−ベンジルプロゲステロンからなる群より選択される。
【0107】
C5とC6の間の結合、及びC4とC5の間の結合は、単結合である
1つの実施態様において、C3とC4の間、C5とC6の間、及びC4とC5の間の結合は、単結合である。
【0108】
この実施態様において、本発明の化合物は、式(C)
【化12】
(式中:
−−−R1は、C3が、=O、又は−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Hで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示す)
を有する。
【0109】
好ましくは、該化合物は、5β−プレグナン−3,20−ジオン、又は5β−プレグナン−3β−オール−20−オンである。
【0110】
C5とC6の間の結合は、2重結合である
1つの実施態様において、C3とC4の間の結合、及びC4とC5の間の結合は、単結合であり、C5とC6の間の結合は、2重結合である。
【0111】
この実施態様において、本発明の化合物は、式(D):
【化13】
を有する。
【0112】
この実施態様において、本発明の化合物は、好ましくは、C3、C17、及び/又はC20で修飾されたプレグネノロンである。
【0113】
C3での修飾:
1つの実施態様において、化合物は、C3で修飾されたプレグネノロンである。
【0114】
この実施態様において、化合物は、式(D)を有し、
−−−R1は、C3が、
−H、−ハロゲン、C1−8アルコキシ、Bn−O−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、
=O、
−NR5R6(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、Bn、又はPhである)、
−O−CO−R7(式中、R7は、アルキルである)、又は
−O−CO−C
2H
4−COOH
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Hで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、−Hが置換されていることを示す。
【0115】
或は、この実施態様において、化合物は、式(D)を有し、
−−−R1は、C3が、
ハロゲン、Bn−O、又は−N
3で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Hで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示す。
【0116】
好ましくは、この実施態様の化合物は、3β−ベンジルオキシプレグネノロン、3−アジドプレグネノロン、及び3β−フルオロプレグネノロンからなる群より選択される。
【0117】
C3及びC17での修飾:
1つの実施態様において、本発明の化合物は、C3及びC17で修飾されたプレグネノロンである。
【0118】
この実施態様において、化合物は、式(D)を有し、
−−−R1は、C3が、C1−8アルコキシ、ハロゲン、Bn−O−、又はN
3で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、Bn、−CH
3、又はC2−6アルケニルで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示す。
【0119】
好ましくは、この実施態様の化合物は、3β−フルオロ−17α−メチルプレグネノロン、17α−ベンジル−3β−フルオロプレグネノロン、17α−ベンジル−3β−ベンジルオキシプレグネノロン、及び3β−ベンジルオキシ−17α−メチルプレグネノロンからなる群より選択される。
【0120】
C17での修飾:
1つの実施態様において、化合物は、C17のみで修飾されたプレグネノロンである。
【0121】
この実施態様において、化合物は、式(D)を有し、
−−−R1は、C3が、−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
−OH、ハロゲン、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、C2−6アルケニル、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示し、
−−R3は、C20が、=Oで置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示す。
【0122】
好ましくは、−R2は、C17が、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、又はBn−で置換されていることを示す。
【0123】
より好ましくは、該化合物は、17α−メチルプレグネノロン、17α−ベンジルプレグネノロン、17−メトキシプレグネノロン、及び17α−エチルプレグネノロンからなる群より選択される。
【0124】
C3及び/又はC17での修飾
本発明はまた、式(II)
【化14】
(式中、
−−−は、結合が単結合又は2重結合であることを示し、
−−−R1は、C3が、−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
C3−8アルキル、
C2−8アルコキシ、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示す)又は
(式中、
−−−R1は、C3が、
C1−8アルコキシ、
Bn−O、又は
ハロゲン
で置換されていることを示し、
−R2は、C17が、
C1−8アルキル、
C2−6アルケニル、
C1−8アルコキシ、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているBn−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシル、又はハロゲンで場合により置換されているPh−、又は
Bn−O−
で置換されていることを示す)
の化合物、又はその医薬的な塩に関する。
【0125】
好ましくは、式IIの化合物は、3β−フルオロ−17α−メチルプレグネノロン、17α−ベンジル−3β−フルオロプレグネノロン、17α−ベンジル−3β−ベンジルオキシプレグネノロン、3β−ベンジルオキシ−17α−メチルプレグネノロン、17α−ベンジルプレグネノロン、3β−メトキシ−17α−メチルプレグネノロン、17α−アリル−3β−メトキシプレグネノロン、及び17α−ベンジル−3β−メトキシプレグネノロンからなる群より選択される。
【0126】
本発明はまた、式IIの化合物、又はその医薬的な塩、及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0127】
C20での修飾:
1つの実施態様において、化合物は、C20で修飾されたプレグネノロンである。
【0128】
この実施態様において、化合物は、式D
(式中:
−−−R1は、C3が−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Hで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、
−H、−OH、及びC1−8アルキル、Bn、
−NR8R9(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して、H、C1−8アルキル、又はBnである)、
=CR10R11(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、H、又はC1−7アルキルである)、又は
=Oで置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示す)
を有する。
【0129】
好ましくは、
−−−R3は、C20が、−H、−OH、又は−NR8R9(式中、R8及びR9は、それぞれ独立して、H、又はC1−8アルキルである)で置換されていることを示す。
【0130】
より好ましくは、該化合物は、5−プレグネン−3β,20α−ジオール、20−デオキシプレグネノロン、及び20−メチルアミノ−5−プレグネン−3β−オールからなる群より選択される。
【0131】
C20及びC16での修飾:
1つの実施態様において、化合物は、C20及び/又はC16で修飾されたプレグネノロンである。
【0132】
この実施態様において、化合物は、式D
(式中、
−−−R1は、C3が、−OHで置換されていることを示し、
−R2は、C17が、−Hで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、−OH、又は−Hで置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、−OH、又は=Oで置換されていることを示す)
を有する。
【0133】
C16とC17との間の結合は、2重結合であり、C17とC20の間の結合は、単結合である
別の実施態様において、C16とC17の間の結合は、2重結合であり、C17とC20の間の結合は、単結合であり、
−−−R1は、C3が、−H、−OH、又は=Oで置換されていることを示し、
−−−R3は、C20が、−H、−OH、又は=Oで置換されていることを示し、
−−−R4は、C16が、−Hで置換されていることを示す。
【0134】
この実施態様は、以下の式E
【化15】
において開示される。
【0135】
好ましくは、該化合物は、5,16プレグナジエン−20−オンである。
【0136】
R1は、β位にある:
最も好ましい実施態様において、C3とR1、及びC3とC4のあいだの結合が単結合であるとき、R1はβ位にある。
【0137】
実に、本発明者等は、R1をα位に有する誘導体とは対照的に、R1をβ位に有する誘導体が、GABA及びグルタマート受容体について効果を有さず、これらの受容体の修飾により誘導される副作用、例えば、鎮静作用、記憶機能障害、運動性動揺のようなもの(これらに限定されない)を回避することを示した。さらに、C3をβ位に有する誘導体は、CB1受容体の阻害活性を保持する。
【0138】
病的状態又は障害の処置:
本発明はまた、処置方法において使用するための、上で定義された本発明の化合物、又はその医薬的な塩に関する。
【0139】
1つの実施態様において、上で定義された式IIの化合物、又はその医薬的な塩は、処置方法において使用するためのものである。
【0140】
本発明はまた、医薬の製造のための、上で定義された本発明の化合物、又はその医薬的な塩に関する。
【0141】
1つの実施態様において、上で定義された式IIの化合物、又はその医薬的な塩は、医薬の製造のためのものである。
【0142】
本発明はまた、必要とする対象における病的状態又は障害の処置方法であって、該対象に、有効量の上で定義された本発明の化合物、又はその医薬的な塩を投与することを含む方法に関する。
【0143】
本発明はまた、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;生殖障害;及び皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置において使用するための、上で定義された本発明の化合物、又はその医薬的な塩に関する。
【0144】
本発明は、必要とする対象における、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;生殖障害;皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置方法であって、該対象に有効量の上で定義された本発明の化合物、又はその医薬的な塩を投与することを含む方法に関する。
【0145】
本発明は、膀胱及び胃腸障害;炎症性疾患;心血管疾患;腎症;緑内障;痙性;癌;骨粗鬆症;代謝障害;肥満;嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害;精神障害及び神経障害;神経変性障害;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛;皮膚炎症性疾患及び線維性疾患からなる群より選択される病的状態又は障害の処置用医薬の製造のための、上で定義された本発明の化合物の使用に関する。
【0146】
胃腸疾患:
好ましい実施態様において、本発明の化合物は、胃腸疾患の処置において使用するためのものである。
【0147】
好ましい実施態様において、本発明の化合物の使用は、胃腸疾患の処置用医薬の製造のためのものである。
【0148】
好ましい実施態様において、方法は、必要とする対象における胃腸疾患の処置方法であって、該対象に、有効量の化合物を投与することを含む。
【0149】
好ましくは、本発明の化合物は、肝臓疾患、特に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び肝硬変の処置において使用するためのものである。
【0150】
実に、本発明者等は、プレグネノロン及びその誘導体が、肥満モデルにおいて脂質蓄積、及びTNFαの産生を阻害することを示した。
【0151】
肥満又は代謝障害:
好ましい実施態様において、本発明の化合物は、肥満又は代謝障害の処置において使用するためのものである。
【0152】
好ましい実施態様において、本発明の化合物の使用は、肥満又は代謝障害の処置用医薬の製造のためのものである。
【0153】
好ましい実施態様において、方法は、必要とする対象における肥満又は代謝障害の処置方法であって、該対象に、有効量の化合物を投与することを含む。
【0154】
好ましくは、本発明の化合物は、糖尿病及び脂質異常症の処置において使用するためのものである。
【0155】
実に、本発明者等は、プレグネノロン及びその誘導体が、肥満モデルにおいて急性食物摂取、脂肪蓄積、及びTNFαの産生を阻害することを示した。
【0156】
嗜好、依存、乱用及び再発関連障害:
別の好ましい実施態様において、本発明の化合物は、嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害の処置において使用するためのものである。
【0157】
好ましい実施態様において、本発明の化合物の使用は、嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害の処置用医薬の製造のためのものである。
【0158】
別の好ましい実施態様において、方法は、必要とする対象における嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害の処置方法であり、該対象に有効量の化合物を投与することを含む。
【0159】
好ましくは、本発明の化合物は、大麻嗜癖、依存、乱用、中毒、及び再発関連障害の処置において使用するためのものである。
【0160】
実に、本発明者等は、特に、プレグネノロン及びその誘導体が、THCによるCB1受容体の活性化により誘導されるエンドカンナビノイドの四徴;THCにより誘導される食物摂取;THCにより誘導される記憶機能障害;THCにより誘導されるシナプス伝達の変化;CB1アゴニストの自己投与を阻害することを示した。
【0161】
好ましくは、本発明の化合物は、アルコール嗜癖、依存、乱用及び再発関連障害の処置において使用するためのものである。
【0162】
神経変性及び精神障害:
別の好ましい実施態様において、本発明の化合物は、神経変性及び精神障害の処置において使用するためのものである。
【0163】
別の好ましい実施態様において、本発明の化合物の使用は、神経変性及び精神障害の処置用医薬の製造のためのものである。
【0164】
別の好ましい実施態様において、方法は、必要とする対象における神経変性及び精神障害の処置方法であり、該対象に、有効量の化合物を投与することを含む。
【0165】
好ましくは、本発明の化合物は、パーキンソン病及び統合失調症の処置において使用するためのものである。
【0166】
従って、本発明者等は、プレグネノロンが、THC又はコカインのいずれかにより増大されるドーパミン作動系の活性、及び興奮性シナプス伝達についてのCB1活性化の効果を調整できることを示した。
【0167】
皮膚炎症疾患及び線維性疾患:
別の好ましい実施態様において、本発明の化合物は、皮膚炎症性疾患及び線維性疾患の処置において使用するためのものである。
【0168】
別の好ましい実施態様において、本発明の化合物の使用は、皮膚炎症性疾患及び線維性疾患の処置用医薬の製造のためのものである。
【0169】
別の好ましい実施態様において、方法は、皮膚炎症性疾患及び線維性疾患の処置方法である。従って、本発明者等は、本発明の化合物が、TNFαの産生を阻害することを示した。
【0170】
好ましくは、本発明の化合物は、皮膚炎症、UVにより誘導される皮膚炎症及び癌、皮膚線維症及び創傷治癒の処置において使用するためのものである。
【0171】
循環器疾患:
別の好ましい実施態様において、本発明の化合物は、循環器疾患の処置において使用するためのものである。
【0172】
別の好ましい実施態様において、本発明の化合物の使用は、循環器疾患の処置用医薬の製造のためのものである。
【0173】
別の好ましい実施態様において、方法は、循環器疾患の処置方法である。
【0174】
従って、本発明者等は、本発明の化合物が、脂質の蓄積を低減し、TNFαの産生を阻害することを示した。
【0175】
好ましくは、本発明の化合物は、心筋症の処置において使用するためのものである。
【0176】
より好ましくは、本発明の化合物は、硬化心筋症、及び抗悪性腫瘍薬により誘導される心筋症、収縮不全、梗塞、及びアテローム性動脈硬化症からなる群より選択される心筋症の処置において使用するためのものである。
【0177】
本発明は、以下の図及び実施例によりさらに説明される。しかしながら、これらの実施例及び図は、決して、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【
図1】
図1は、Wistarラットにおいて、以下を表すダイアグラムを示す:(A)側坐核におけるプレグネノロン(PREG)、アロプレグナノロン(ALLO)、エピアロプレグナノロン(EPI)、テストステロン(T)、及びジヒドロテストステロン(DHT)の基底レベル。(B)側坐核におけるプレグネノロン濃度の高くかつ長期の増加を誘導する、THC注射(3mg/kg、ip)の効果。側坐核におけるプレグネノロンのずっと少ない増加を誘導する、他の乱用薬物:コカイン(20mg/kg、ip)、モルヒネ(2mg/kg、ip)、ニコチン(0.4mg/kg、ip)、及びエタノール(1g/kg、ip)の効果。プレグネノロンについて観察されるものよりずっと低い、プレグネノロン由来の下流ステロイド:アロプレグナノロン(C)、エピアロプレグナノロン(D)、テストステロン(E)、及びDHT(F)についてのTHC及び他の乱用薬物の効果。矢印は、全ての薬物の注射時間を示す。データを、平均±SEM(1群当たりn=6〜8)として表す。
【
図2】
図2は、C57Bl/6マウスにおけるTHCにより誘導される行動の四徴についてのプレグネノロンの負の制御を表すダイヤグラムを示す。THC用量依存性(ビヒクル群)は、(A)自発運動活性[F(3,59)=17.7、P<0.001]、及び(B)体温(対照と比較されたデルタT)[F(3,59)=39.9、P<0.001]を減少させ、(C)カタレプシー(移動を開始する潜時)[F(3,59)=47.5、P<0.001]及び(D)鎮痛(ホットプレート試験における侵害刺激反応を開始する潜時)[F(3,59)=5.15、P<0.01]を増加させた。プレグネノロンの合成を遮断するP450scc阻害剤であるアミノグルテチミド(AMG、50mg/kg、ip)は、全てのTHCの行動効果:(A)自発運動の抑制[F(3,98)=13.8、P<0.001]、(B)低体温[F(3,98)=4.7、P<0.01]、(C)カタレプシー[F(3,98)=2.1,P<0.05]、及び(D)鎮痛[F(3,98)=2.2、P<0.05]を増大させた。プレグネノロン(PREG、6mg/kg、sc)は、THC(10mg/kg、ip)の効果を減少させ、(E)自発運動、(F)体温、(G)カタレプシー、及び(H)鎮痛についてAMG(50mg/kg、ip)の効果を完全にレスキューした。プレグネノロンは、THCを受けていない動物において効果を有さなかった。データを、平均±SEM(1群当たりn=6〜12)として表す。ビヒクル処置マウスと比較して、
*=P<0.05;
**=P<0.01;
***=P<0.001。
【
図3】
図3は、CB1により仲介される食物摂取のプレグネノロンによる阻害を表すダイヤグラムを示す。(A)自由に餌を与えたWistarラットにおけるTHC(0.5mg/kg、ip)により誘導される食物摂取の増加は、プレグネノロン注射[F(3,94)=3.65;P<0.02]により、用量に依存して阻害された。(B)24時間食物欠乏C57Bl/6マウスにおけるTHC(1mg/kg、ip)により誘導される食物摂取の増加は、プレグネノロン(2mg/kg、sc)により抑制された。(C)プレグネノロンは、24時間食物欠乏C57Bl/6マウスにおいて、食物摂取を用量に依存して減少させた。(D)24時間食物欠乏C57Bl/6マウスにおいて、プレグネノロン(PREG 6mg/kg)により誘導される食物摂取の減少は、CB1RアンタゴニストであるSR141716A(0.05mg/kg、ip)での事前処置により、逆転された。データを、平均±SEM(1群当たりn=6〜12)として表す。ビヒクル処置マウスと比較して、
*=P<0.05;
**=P<0.01;
***=P<0.001。
【
図4】
図4は、脳におけるプレグネノロン由来下流活性ステロイドについて、プレグネノロン注射の効果を表すダイヤグラムを示す。(A)プレグネノロン投与(s.c.)は、24時間食物欠乏C57Bl/6マウスの前頭皮質及び視床下部[それぞれ、F(3,19)=20,P<0001;F(3,19)=23、P<0.001]において、プレグネノロンレベルを用量に依存して増加させた。プレグネノロンは、(B)アロプレグナノロン、(C)エピアロプレグナノロンの濃度を変更しなかった。データを、平均±SEM(1群当たりn=7〜8)として表す。ビヒクル処置動物(PREG 0mg/kg)と比較して、
*=P<0.05、
***=P<0.001。
【
図5】
図5は、CD1マウスにおいて、CB1アゴニストであるWIN55,512−2の自己投与のプレグネノロンによる阻害を表すダイヤグラムを示す。(A)WIN55,512−2の自己投与(0,0125mg/kg/注射)の取得中、鼻を突く回数は、不活性な穴より、活性な穴において有意に多かった[F(1,18)=38.3、P<0.001]。(B)取得後、プレグネノロンの注射(2又は4mg/kg、sc)は、活性な穴における応答数を減少させた。(C)プレグネノロンはまた、累進比率スケジュールのブレークポイントの減少により測定されるように、WIN55,512−2の動機付けを減少させた。データを、平均±SEM(1群当たりn=5〜8)として表す。ビヒクル処置動物(PREG 0mg/kg)と比較して、
**=P<0.05、
***=P<0.001。
【
図6】
図6は、記憶について、THCの副作用のプレグネノロンによる阻害を表すダイヤグラムを示す。物体認知試験において判別指標により示される通り、THC(10mg/kg、ip)は、有意な記憶喪失を誘導し、そしてそれは、プレグネノロン(PREG、6mg/kg、sc)により、消滅された[F(3,23)=24.6、P<0.001]。データを、平均±SEM(1群当たりn=6〜7)として表す。ビヒクル処置マウスと比較して、
***=P<0.001。
【
図7】
図7は、THCにより誘導されるドーパミン作動性活性の増加のプレグネノロンによる阻害を表すダイヤグラムを示す。ラットにおけるプレグネノロン注射(PREG、2mg/kg、sc)は、(A)腹部被蓋野(VTA)ドーパミン作動性ニューロンの発火率[F(4,32)=7.14、p<0.001]、及び(B)側坐核におけるドーパミン流出の増加[F(10,80)=10.80、p<0.001]において、Δ
9−テトラヒドロカンナビノール(THC)により誘導される増加を減少させた。THCの累積用量(0.15〜1.2mg/kg)を、時間0で、4分かけてi.v.投与した(1投薬当たり1分記録)。
【
図8】
図8は、ラットにおけるコカインプレグネノロン注射(PREG、2mg/kg、sc)により誘導されるドーパミン作動性活性の緩和のプレグネノロンによる阻害が、(A)ドーパミン作動性ニューロンの破壊活性におけるコカインにより誘導される減少、及び側坐核におけるドーパミン流出の増加を消滅させることを表すダイヤグラムを示す。コカインの累積用量(0.0125〜0.8mg/kg)を、時間0で、4分かけてi.v.投与した(1投薬当たり1分記録)。ビヒクル処置ラットと比較して、*=P<0.05、**=P<0.01、***=P<0.001。
【
図9】
図9は、体重及び食物摂取について、プレグネノロン投与の効果を表すダイヤグラムを示す。(A)暗期の始まる前に、1日に1回皮下注射したプレグネノロン5mg/kg(PREG5)は、高脂肪食餌を与えた動物において、体重の有意な減少を徐々に誘導した[F(1,29)=3.13;p<0.001]。(B)しかしながら、プレグネノロンは、食物摂取を緩和しなかった。
【
図10】
図10は、肥満マウスにおける、脂肪蓄積及び除脂肪量について、プレグネノロンの効果を表すダイヤグラムを示す。暗サイクルの始まる前に、1日に1回皮下注射したプレグネノロンは、脂肪量の増加を依存的にブロックし(A,C)、高脂肪食餌を与えている間観察される除脂肪量の減少を鈍らせた(B,D)。脂肪量及び除脂肪量を、磁気共鳴を用いて、マウスにおいて算出した。プレグネノロン投与開始前に、PRE=値を得た。プレグネノロン又はビークルでの処置の30日後に、POST=値を得た。*=P<0.05、**=P<0.01。
【
図11】
図11は、LPSにより誘導されるTNFαの増加のプレグネノロンによる阻害を表すダイヤグラムを示す。プレグネノロン(6mg/kg皮下)又はビークル溶液の注射の30分後に、細菌毒素LPSを腹腔内注射した。プレグネノロンは、LPSの注射により誘導されるTNFαの増加を半減させた。
*=P<0.5
【
図12】
図12は、ラットの側坐核における興奮性シナプス電流のTHCにより誘導される阻害のプレグネノロンによる阻害を表すダイヤグラムを示す。局所軸索(アクソン)を電気的に刺激することにより誘導される興奮性シナプス後電流(EPSC)を、成体ラットから得られた脳切片中の主なニューロンである側坐核におけるパッチクランプを用いて、記録した。(A)THC(20mM)のバス適用は、対照切片におけるシナプス伝達を確実に阻害した(阻害の34.3±3.7%、N=8)。切片を100nMプレグネノロンで予め処理したとき、THCの効果は有意に弱められた(阻害の15.1±1.8%、N=9)。(B)シナプス電流トレースを、代表的実験から、ベースラインとTHC暴露の40分後で平均化した。
***T検定:t=4.820、df=15、p=0.0002。
【
図13】
図13は、マウス側坐核における興奮性シナプス伝達のTHCにより誘導される阻害のプレグネノロンによる阻害を表すダイヤグラムを示す。(A)局所軸索を電気的に刺激することにより誘導されるフィールド興奮性シナプス後電位(fEPSP)を、成体マウスから得られた側坐核脳切片において記録した。THCのバス適用は、対照切片において、シナプス伝達の用量に依存した阻害を誘導した(N=5〜9)。切片を100nMプレグネノロンで予め処理したとき、THCの効果は減少された(N=5〜6)。(B)代表的なfEPSP平均トレースを、ベースラインの最中とTHC暴露の40分後に記録した。2方法ANOVA:プレグネノロン効果p<0.002;THC効果p<0.0003。
【
図14】
図14は、プレグネノロンがCB1受容体の活性化の阻害剤であり、そして、それがCB1のアゴニストのオルソステリック結合を修飾しないことを表すダイヤグラムを示す。プレグネノロン(10
−12〜10
−4M)は、CHO細胞により発現されるヒトCB1受容体へのCB1アゴニスト[3H]CP55,940の特異的結合を修飾しなかった。データを、平均±SEMとして表す(濃度当たりn=2〜3)。
【
図15】
図15は、不安様行動について、プレグネノロンの効果の欠如を表すダイヤグラムを示す。高架式十字迷路のオープンアームへのエントリー数及びそこで過ごした時間の%により、不安様行動を測定した。プレグネノロンは、その最大行動効果に対応する1〜6mg/kgの効果的行動用量より十分に多い用量(10mg/kg)でさえ、不安様行動を誘導しなかった。CB1受容体のオルソステリックアンタゴニストであるリモナバンは、10mg/kgで、オープンアームへのエントリー数及びそこで過ごした時間の減少により示される不安の増加を誘導した。P1、P6、P10=プレグネノロン1、6、10mg/kg。Rimo10=リモナバン10mg/kg。V=ビヒクル。
*=P<0.05;
***=P<0.001。
【
図16】
図16は、GABA−A受容体により仲介される電流についてプレグネノロンの効果の欠如を示すダイヤグラムを表す。成体マウスNAc PNから記録したmIPSCは、−80mVに電圧を固定した。対照(N=16)及びプレグネノロン(100nM:N=15;1μM:N=11)又はアロプレグナノロン(100nM:N=18;1μM N=11)で予め処理した切片由来のmIPSCの振幅(ANOVA f=5.39、df=4,66、p<0.001)、及び減衰期間(ANOVA f=24.7、df=4,66、p<0.0001)の概要。hoc試験後:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。B.mIPSC記録の代表的トレース。C.ピークに対して正規化された平均mIPSCトレース。1μMアロプレグナノロンのみが、mIPSC減衰期に実質的に影響したことに注意。cont=対照;preg=プレグネノロン;allo=アロプレグナノロン。
【
図17】
図17は、プレグネノロンが、AMPAR又も、NMDARにより介在される電流も修飾しないことを示すダイヤグラムを表す。(A)成体マウス側坐核の主なニューロンから記録したmEPSCは、−80mVで電圧を固定し、a)対照(N=16)、及びプレグネノロン(100nM)で予め処理した(N=15)切片から記録されたmEPSCは、同様の振幅(T検定:t=1.16、df=29、p=0.25)及び減衰期間(T検定:t=1.28、df=29、p=0.21)を示した。b)平均mEPSCトレースは、カイネティクスがプレグネノロンにより影響されないことを示すピークに対して正規化された。c)mEPSC記録の代表的トレース。B.全細胞電流は、25μM NMDA、1分間のバス適用により誘導されるNAc PNにおいて記録された。a)NMDAR−誘導電流は、対照(N=17)と100nMプレグネノロン(N=12)及び1μM(N=7)(ANOVA:f=0.09、df=2,33、p=0.91)で予め処理した切片間で同等であった。b)−30mVで電圧を固定したNAc PNの保持電流について、NMDAの効果を示す代表的実験。cont=対照;preg=プレグネノロン。
【
図18】
図18は、側坐核ステロイド含有について、プレグネノロン及び、C3及びC17合成誘導体3−フルオロプレグネノロン(CP1)、17−メチルプレグネノロン(CP2)、及び3−フルオロ−17−メチルプレグネノロン(CP3)の高用量(50mg/kg、sc)注射の効果を表すダイヤグラムを示す。プレグネノロンは、Wistarラットの側坐核において、アロプレグナノロン(A)、及びエピアロプレグナノロン(B)レベルを増加させたが、3−フルオロプレグネノロン、17−メチルプレグネノロン、又は3−フルオロ−17−メチルプレグネノロンは増加させなかった。データを、平均±SEM(1群当たりn=5〜7)として表す。
【
図19】
図19は、C3及びC17合成誘導体3−フルオロプレグネノロン(CP1)、17−メチルプレグネノロン(CP2)、及び3−フルオロ−17−メチルプレグネノロン(CP3)が、食物摂取を減少させることを示すダイヤグラムを表す。(A)自由に食餌を与えたWistarラットにおいて、THC(0.5mg/kg、sc)により誘導される食物摂取の増加は、17−メチルプレグネノロン(8mg/kg、sc)により有意に減少され、統計的に有意でない減少傾向も、3−フルオロプレグネノロン及び3−フルオロ−17−メチルプレグネノロンの後に観察された。(B)プレグネノロン[(F4,28)=5,5;P<0.01]、3−フルオロプレグネノロン[(F3,20)=3;P<0.05]、17−メチルプレグネノロン[(F3,20)=5.3;P<0.01]、及び3−フルオロ−17−メチルプレグネノロン[(F3,20)=4;P<0.02]は、24時間食物欠乏C57Bl/6マウスにおいて、食物摂取を用量に依存して減少させた。(C)プレグネノロン、3−フルオロプレグネノロン、17−メチルプレグネノロン、及び3−フルオロ−17−メチルプレグネノロン(2mg/kg、sc)は、24時間食物欠乏C57Bl/6マウスにおいて、THCにより誘導される過食症を減少させた。(D)24時間食物欠乏C57Bl/6マウスにおいて、THCにより誘導される過食症について、プレグネノロン及び17−メチルプレグネノロンの全用量応答効果。両化合物について、第1の有効用量は1mg/kgであった。データを、平均±SEM(1群当たりn=6〜8)として表す。ビヒクル処置マウスと比較して、
*=P<0.05、
**=P<0.01;
***=P<0.001。THC処置マウスと比較して、##=P<0.01;###=P<0.001。
【
図20】
図20は、プレグネノロン及び下流代謝物アロプレグナノロンのレベルについて、Alzetミニポンプを用いたプレグネノロンの定常状態投与の効果を表すダイヤグラムを示す。プレグネノロンの皮下注射は、短い時間(<1時間)持続するプレグネノロンレベルの増加を誘導し(A)、又、少なくとも1時間に渡り、アロプレグナノロンレベルを増加させた(D)。Alzetミニポンプを介したプレグネノロンの投与(B、C)は、プレグネノロンの血漿レベルを用量依存的に増加させたが、アロプレグナノロンの血漿レベルを増加させなかった(E、F)。
【0179】
実施例
プレグネノロンの誘導体の合成例:
プレグネノロンは、周知であり、市販されており、その誘導体の合成のために前駆体として用いることができる。
【0180】
アルキルで置換されているC17を有するプレグネノロンの誘導体の合成例:
以下に示す通り、C17位にてアルキルで置換された化合物を合成するために、第1工程において、対応する酢酸エノールを形成する。次に、それをグリニャール試薬で処理して、エノラートを生成し、続いて、求電子試薬で捕捉した。求電子試薬は、優先的に、ヨード−又はブロモ−アルキル、−アリル、−ベンジル又は−アリールであった。
【化16】
【0181】
−ORで置換されているC17を有するプレグネノロンの誘導体の合成例
以下の図は、アルコールを用いて銅により仲介される官能化による、アルコキシ−、ベンジルオキシ−、及びアリールオキシプレグネノロンで置換されたC17の取得方法を示す。
【化17】
【0182】
ハロゲンで置換されているC3及びRで置換されているC17を有するプレグネノロンの誘導体の合成例:
以下に示す通り、C3のアルコール官能基をフッ素原子で置換するために、Rで置換されているC17を有するプレグネノロンの誘導体を、DASTで処理する。
【化18】
【0183】
アルコキシで置換されているC3を有するプレグネノロンの誘導体の合成例:
以下に示す通り、C3位でのエーテル官能基の形成は、第1工程において、アルコールを脱離基として対応するトシレートに転換することを必要とする。次に、C3−アルコキシプレグネノロンの形成に至るために、それを適切なアルコールで処理する。
【化19】
【0184】
=Oで置換されているC3及びRで置換されているC17を有するプレグネノロンの誘導体の合成例:
以下に示す通り、=Oで置換されているC3及びRで置換されているC17を有するプレグネノロンの誘導体を得るために、C17置換プレグネノロンを酸化剤で処理して、アルコール官能基を対応するケトンへ酸化し、続いて、2重結合の自発的な異性化により、修飾プロゲステロンを与える。
【化20】
【0185】
CB1受容体の阻害におけるプレグネノロン及びその誘導体の役割例
材料及び方法:
動物
動物を、温度(22℃)及び湿度(60%)にコントロールされた動物施設において、一定の明暗サイクル(点灯、8:00〜20:00)下で、個々に飼育した。食物摂取実験、及びWIN55,212−2の自己投与の実験期間中を除き、食物及び水は、実験を通じて自由に利用可能であった。到着後、実験前2週間、動物を定期的に調べた。ラットにおける食物摂取実験、及び暗期中に行ったCD1マウスにおけるWIN55,212−2自己投与期間の試験を除き、大抵の実験を明期中に行った。全ての実験を、European Unionの勧告(86/609/EEC)を厳密に順守して行った。
【0186】
成体オスWistarラット(3〜4月齢)、C57Bl/6Nマウス(2〜3月齢)C57Bl/6jマウス(2〜3月齢)、及びCD1マウス(実験開始時の体重25〜30g)を、Charles River Laboratories(France)から購入した。CB1欠損(CB1−/−)及びD1−CB1変異(D1−CB1−/−)マウスを、Marsicano et al., Nature. 2002 418:530-4;Monory et al., PLoS Biol. 2007 5(10):e269に記載されるように、我々の実験室において作成した。
【0187】
薬
Δ9−テトラヒドロカンビノール(THC、Sigma-Aldrich、France)を、100%エタノール中の30mg/ml(w/v)溶液として購入した。注射前、この溶液を、Tween80(1滴/3ml)、及び生理食塩水(2.5%)で1:40希釈したジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解した。ビヒクル溶液は、全ての成分(1滴/Tween80 3ml、DMSO(2.5%)、及び終濃度1.8%のエタノール得るため生理食塩水で希釈したエタノール)を含有していた。コカインHCl(Cooperation Pharmaceutique Francaise、France)、硫酸モルヒネ(Francopia、France)、酒石酸水素ニコチン(Sigma-Aldrich、France)、及びUSPアルコール(95%、Sigma-Aldrich、France)を、生理食塩水に溶解した。HU210、JWH133、及びAM251を、Tocris、UKから、WIN55,212−2、E.Coli0111:B4由来のアミノグルテチミド(AMG)プレグネノロン(5−プレグネン−3β−オール−20−オン)リポポリサッカライド(LPS)をSigma-Aldrich(France)から、リモナバン(SR141716A)を、Cayman Chemical(Interchim、Montlucon、France)から購入した。
【0188】
合成化合物である3−フルオロプレグネノロン;17−メチルプレグネノロン、及び3−フルオロ−17−メチルプレグネノロンを、AtlanChimPharma(France)により合成した。薬物溶液を、Tween80(1滴/3ml)、及びDMSO(2.5%)又はNMP(2.5%)に溶解し、生理食塩水溶液にて希釈した。THC、コカイン、モルヒネ、ニコチン、エタノール、HU210、JWH133、AM251、WIN55,212−2、AMG、及びSR141716Aを腹腔内注射(ip)し、プレグネノロン又はプレグネノロン誘導体を、皮下注射(sc)した。注射容量は、ラットについて、1ml/kg体重、マウスについて10ml/kg体重であった。
【0189】
SA実験において、WIN55,212−2(Sigma Chemical Co.、Madrid、Spain)を、Tween80 1滴に溶解し、生理食塩水溶液において希釈した。塩酸ケタミン(100mg/kg)(Imalgene 1000;Rhone Merieux、Lyon、France)と塩酸キシラジン(20mg/kg)(Sigma、Madrid、Spain)を混合し、エタノール(5%)及び蒸留水(95%)に溶解した。この麻酔薬混合物を、カテーテル移植に先立ち、20ml/kg体重の注射容量で腹腔内注射した。チオペンタールナトリウム(5mg/ml)(Braun Medical S.A、Barcelona、Spain)を、蒸留水に溶解し、静脈内カテーテルを通した0.1mlの注入により、デリバリーした。インビトロヒトCB1受容体機能アッセイのため、プレグネノロン、及びCP55940を、終濃度100mMまでDMSO中に溶解し、−20℃で保存した。
【0190】
神経ステロイド定量化
血液及び脳試料採取
動物を断頭により屠殺し、胴体血液をEDTAでコートしたチューブに集め、2000×gで10分間遠心し、上清を−20℃で保存した。脳を速やかに採取し、脳領域を氷上に解剖し、試料を迅速に氷にて凍結し、−80℃で保存した。
【0191】
GC/MSによるステロイドレベルの測定
プレグネノロン(5−プレグネン−3β−オール−20−オン)、アロプレグナノロン(3α−ヒドロキシ−5α−プレグナン−20−オン)、エピアロプレグナノロン(3β−ヒドロキシ−5α−プレグナン−オール−20−オン)、テストステロン、及び5αジヒドロテストステロンの血漿、脳、及び培地レベルを、既に記載された抽出、精製、及び定量プロトコール(George O, et al., Biol Psychiatry. 2010 68: 956-63、Vallee M, et al., Anal Biochem. 2000, 287:153-66)に従い、GC/MSにより決定した。
【0192】
THC行動の4分子
体温
直腸プローブ(RET3プローブ、Physitemp instruments、USA)を用いて、意識のあるマウスにおいて、体温を測定し、thermalert monitoring thermometer(TH-5、Physitemp instruments、USA)によりモニタリングした。
【0193】
自発運動活性
自発運動を、自動開放フィールドシステム(箱の大きさ100×100×30cm、照明10lux、ビデオ追跡システム:Viewpoint、Lyon、France)又コンピューターによりモニターされるフォトセルビーム(Imetronic、France)を取り付けたPlexiglasケージ(長さ19cm×幅11cm×高さ14cm)により測定した。動物を15分間個々に試験した。動物が箱内で移動した累積水平距離を記録した。
【0194】
カタレプシー
棒カタレプシー試験により、カタレプシーを測定した。台表面から3.5cmで水平に固定した直径1cmの棒上に、マウスの前足を置いた。落ちるまでの時間を記録した。
【0195】
鎮痛
ホットプレート鎮痛メーター(BIO−HC1.00、Bioseb、France)を用いて、鎮痛を測定した。プレートを52℃±0.1℃まで加熱し、マウスが、不快感(本明細書で逃避潜時として定義される、足をなめるか又はたじろぐ、又はプレート上でのジャンプ)の最初の兆候を示すまでの時間を記録した。60秒のカットオフ時間をセットし、組織損傷を防いだ。
【0196】
物体認識課題
2本のアームのL迷路(各アームの大きさ:長さ30cm×幅4.5cm)において、薄暗い条件(50〜60lux)下で、物体認識を測定した。慣れ、トレーニング、及び試験セッションに対応する、連続して3日間、毎日9分間のセッションについて、動物を個々に試験した。1日目(慣れのセッション)、マウスに物体のないL迷路を探索させた。2日目(トレーニングセッション)、2個の同一物体を、迷路の各アームの端に提示した。物体のあるアームについて優先性は現れない(データを示していない)が、物体及びアームを、各マウス/条件について無作為化した。3日目(試験セッション)、なじみのある物体の1つを、新たな物体と置き換え、2つの物体(新規及びなじみ)それぞれを探索する総時間を計算した。各アームで費やす時間、及び物体(なじみ又は新規)を探索する時間を記録した。物体の探索を、2cm未満の距離で鼻を物体に向けることとして定義した。試験セッション中、判別指標を、2つの物体を探索する総時間により割った、新規又はなじみの物体のいずれかを探索する時間の差として計算した。判別指標が高ければ高いほど、なじみの物体について、より優れた記憶力を反映していると考える(Puighermanal et al., 2009)。
【0197】
食物摂取測定
動物のホームケージにおける食物の消費を測定することにより、食物摂取を評価した。各動物について、標準的実験用固形飼料(U.A.R.、France)50〜100gを、清潔なホームケージ内に置いた。残った食物の量を1時間後に計量し、消費された食物の量を計算した。
【0198】
WIN55,212−2自己投与
動物に自己注入WIN55,212−2(WIN)を学習させた静脈内自己投与実験を、マウスオペラントチャンバー(Model ENV−307A−CT, Medical Associates, Georgia, VT, USA)にて、既に記載の手順(Mendizabal V, et al., Neuropsychopharmacology. 2006, 31:1957−66)を用いて、行った。
【0199】
インビボ微小透析と電気生理学の結びつけ
一般的手法。手術及び灌流手順を行って、同時の電気生理的モニタリングと微小透析モニタリングを可能にした。簡単に言うと、ラットを、イソフルレン/空気の2%混合物を用いて麻酔し、カテーテルを、静脈内薬物投与のために大腿静脈内に挿入した。その後、ガス麻酔(手術中2%イソフルレン、電気生理学及び微小透析実験中1.5%イソフルレン)を一定に運ぶためのノーズマスクを備えた定位枠(David Kopf Instruments、Phymep、Paris、France)内に動物を置き、それらの直腸温度をモニターし、加温パッド(CMA 150、Carnegie Medecin、Phymep)により37±1℃に維持した。微小透析プローブ(CMA/11、2mm長、240μm外径、Cuprophan;Carnegie Medicin、Phymep)、及び記録電極(ガラスマイクロピペットTW150F-4、2〜3μm外径、WPI-Europe、Aston Stevenage、UK)を、それぞれ、シェル細分化[座標,ブレグマに対してmm内:前後方向(AP)=+1.7、側部(L)=1、腹部(V)−8]に対応する右側坐核の中間腹部部分、及び右腹部被蓋野(VTA)(座標、ブレグマに対してmm内:AP=−5.4〜5.8、L=0.4〜0.8、V=−7.0〜8.5)内に、Paxinos and Watson地図に従い埋め込んだ。2mM硫酸ナトリウムバッファーでpH7.4に調節した、154.1mM Cl
−、147mM Na
+、2.7mM K
+、1mM Mg
2+、及び1.2mM Ca
2+を含有する人工脳脊髄液(aCSF)を用いて、微小灌流ポンプ(CMA111、Carnegie Medicin、Phymep)により、一定速度2μL/分でプローブを灌流した。次に、灌流を2時間維持し、灌流液中のドーパミン(DA)レベルを安定化させた。
【0200】
プローブ灌流開始の2時間(安定化期間)後に、DAニューロン発火の1単位記録、及びDA細胞外レベルのモニターを開始した。透析液(30μL)を、15分毎に氷上に回収し、直ちに分析して、DA細胞外レベルの基底値(ベースライン)を決定し、DA含有が10%未満で変動する3つの連続試料により定義した(9)。薬物処置(THC又はコカイン)投与の30分前に、電気生理的記録のためのDAニューロンの研究を行った。DAニューロン発火頻度を3〜5分間記録して、DAニューロンの平均頻度放出の10%未満の変動により定義される発火基底値を得た。灌流液中のDAニューロン発火及びDA細胞外レベルの安定な基底値を得たら、薬理学的処置を行った。
【0201】
DAニューロンの記録。0.5M酢酸ナトリウム(インピーダンス、2〜5MΩ)に溶解した1%Fast Greenで充填したガラスマイクロピペットを用いて、VTAに位置するニューロンの1単位活性を細胞外で記録した。シグナルをフィルター処理(帯域通過、0.4〜1kHz)し、高インピーダンス増幅器(Dagan2400A、Dagan Corporation、USA)により増幅し、個々のスパイクをウィンドウ弁別器(WD-2、Dagan Corporation、USA)により単離し、アナログ−デジタルストレージスコープ(HM507、Hameg、Frankfurt、Germany)上に表示した。次に、実験を、CED 1401インタフェース(Cambridge Electronic Design、Cambridge、UK)に接続したコンピューターにより、Spike2ソフトウエア(Cambridge Electronic Design、Cambridge、UK)を用いて、オンラインで試料採取した。既に公開された基準(12〜14)に従い、VTA DAニューロンを同定した。発火頻度を、スパイク/秒の数として定義した。
【0202】
DAアッセイ。DAを定量化するために、逆相Equisil BDSカラム(C18;2×250mm、粒子サイズ5μm;Cluzeau Info Labo、Ste Foy la Grande France)、及び+450mV対Ag/AgClにセットしたガラス状炭素電極を伴った電流測定検出器(Antec Leyden DECADE II、Alpha-mos、Toulouse、France)を備えたHPLC装置に、透析液を注入した。移動相の組成は、10%メタノールプラスのオルトリン酸でpH4.8に調節した70mM NaH
2PO
4、0.1mM Na
2EDTA、及び0.1mM オクチルスルホン酸であった。DAについての感度は、シグナル/ノイズ比3:1を伴う0.3pg/20μLであった。
【0203】
組織学。各実験の最後に、電極を介して、直接連続電流(−20μA、15分間)を通して、Fast Greenダイを押し出し、記録部位の同定を可能にした。その後、脳を取り出し、NaCl(0.9%)/パラホルムアルデヒド溶液(10%)において固定した。Neutral Redで染色した連続冠状切片(60μm)上の顕微鏡検査により、VTA中の電極の位置、及び側坐核中の微小透析プローブの位置を決定した。
【0204】
食餌により誘発される肥満、及び脂肪蓄積の評価
2月齢オスC57BL/6Jマウスは、60%高脂肪食餌(HFD;カタログ番号D12492、Research Diets、New Brunswick、NJ)を8週間自由に与えられ、その後、プレグネノロン又はビヒクルのいずれかで処置された。薬理学的処置の開始前の体重、脂肪量、及び絶食時グルコースレベルを一致させることにより、3つの処置群の動物の均一分配を保証した。
【0205】
身体の組成分析。マウスをHFD上に置く前、並びにプレグネノロン又はビヒクルでの慢性的処置の直前及び終わりに、EchoMRI分析計(EchoMedical Systems、Houston、TX)を用いて、脂肪量及び除脂肪量をインビボで評価した。
【0206】
血漿遊離脂肪酸の測定。4週間の処置の終わりに、DIOマウス由来の胴体血液を集め、製造元の指示(Abcam、カタログ番号65341)に従い、比色反応キットにより、血漿遊離脂肪酸(FFA)を測定した。
【0207】
血漿TNFαの測定。胴体血液を集め、3000rpmで15分間、4℃で遠心した。TNFαの測定を行うまで、血漿を−80℃で保存した。製造元の指示(Fisher Scientific、カタログ番号E6473C)に従い、ELISAキットを用いて、血漿TNFαレベルを評価した。
【0208】
脳切片上の電気生理学
切片調製。動物をイソフルランで深く麻酔し、スクロース−ベースの生理的溶液を用いて、4℃(23mM NaHCO
3、70mM コリンCl、75mM スクロース、25mM グルコース、2.5mM KCl、1.25mM NaH
2PO
4、7mM MgCl
2、及び0.5mM CaCl
2)で経心的に灌流させた。脳を取り出し、前頭面において、ビブラトーム(Campden Instruments、Loughborough、UK)を用いて、切片化した(250〜300μm)。切片化過程の間、脳をスクロースベース溶液中で維持した。切断後直ちに、切片を23mM NaHCO
3、120mM NaCl、11mM グルコース、2.5mM KCl、1.2mM NaH
2PO
4、2.4mM MgCl
2、1.2mM CaCl
2を含有する低カルシウム人工脳脊髄液(低Ca
2+ACSF)において、32℃で、40分間、保存した。次に、記録まで、低Ca
2+ACSFにおいて、室温で、切片を保存した。
【0209】
電気生理学。Axopatch-1D増幅器(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて、記録を行った。データを1〜2kHzでフィルターし、10kHzで、Digidata 1332Aインターフェース(Molecular Devices)上にデジタル化し、Clampex9を用いて、PC上に集め、Clampfit 10(Molecular Devices)を用いて分析した。
【0210】
全細胞パッチクランプ記録を、NAcコア主ニューロン(PNs)から実施し行った。微分干渉赤外ビデオ顕微鏡(Leica DM LFSS microscope、Leica Microsystems、Germany;Camera Till Photonics、Germany)を用いて、細胞を同定した。
【0211】
AMPAR及びNMDAR−仲介電流を記録するため、ガラスパッチクランプ電極(抵抗性4〜6MOhms)を、セシウムベースの溶液(125mM グルコン酸、125mM CsOH、10mM HEPES、10mM NaCl、0.3mM EGTA、0.05mM スペルミン、10mM TEA−Cl、2mM MgCl
2、0.3mM CaCl
2、4mM Na
2ATP、0.3mM NaGTP、0.2mM cAMP)で充填した。阻害電流を記録するため、80mM グルコン酸、80mM CsOH、30mM CsCl、20mM NaClを除き、同様の溶液を用いた。塩化物濃度が高くなればなるほど、過分極電位で記録したときより強力な推進力を好む。抵抗性を評価する実験を通じて、(Ra)を、2−mV過分極パルスで評価した。Raは補償されず、実験中、Raが>25MΩ、又は>20%変化したなら、細胞を拒絶した。細胞に侵入する前に、増幅器の参照電位をゼロに調節した。
【0212】
fEPSPsのため、細胞外ガラス記録及び刺激電極をACSFで満たした。シナプス電位を、10秒毎に20Hzで運ばれる、2種の電気的刺激(0.1〜0.25mA、200μsec 持続)により誘起した。記録電極から背内側方向に>150μmの距離に、刺激電極を置いた。
【0213】
データ取得及び分析。AMPAR−仲介シナプス電流:GABA−A受容体を、50μMピクロトキシンを灌流培地に加えることにより、ブロックした。過分極電位で記録することにより、NMDARの関与を除外した。誘起シナプス電流及びmEPSCのため、細胞は、それぞれ、−70mV、及び−80mVで固定した電圧であった。0.5μM TTXの存在下でmEPSCを記録した。
【0214】
NMDAR−仲介電流:NMDARを、電圧依存性マグネシウムブロックから解放するために、NMDAにより誘導される保持電流の変化を、−30mVで電圧固定した細胞において測定した。AMPAR及びGABA−A受容体を、それぞれ、20μM DNQX及び50μMピクロトキシンでブロックした。
【0215】
GABA−A受容体−仲介電流:mIPSCを、AMPAR及びNMDARアンタゴニスト(それぞれ、20μM DNQX及び50μM AP−5)の存在下で記録した。
【0216】
mEPSC−mIPSC分析:典型的には、慣らした後、細胞を20分間平衡状態にし、続く10分間のmEPSC−mIPSCの記録を分析に用いた。いくつかの典型的現象を平均化することから得たテンプレートを用いて、mEPSC−mIPSCを検出した(Clampfit 10、Molecular Devices)。テンプレートを、データトレースに沿って、一度にワンポイントスライドした。それぞれの位置で、テンプレートを場合により測定し、データに合わせるために補正した。ベースラインノイズの2.5SDと同等の、7pA及び10pAのより小さい振幅閾値を、それぞれmEPSC及びmIPSCに適用した。各細胞について、mEPSC−mIPSCのカイネティクスを、平均的現象から、Clampfit10を用いて測定した。減衰期間を推定するために、2つの指数関数的曲線を、以下の方程式:y(t)=A1・e
(−t/τ1)+A2・e
(−t/τ2)(式中、Aは振幅であり、tは時間であり、τは減衰期間定数である)により与えられる電流の減衰期の5〜95%にフィットさせた。次に、加重τを計算した。
【0217】
インビトロヒトCB1受容体アッセイ
プレグネノロンのオルソステリック結合についての結合アッセイを、ヒトCB1受容体発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を用いて評価した。
【0218】
プレグネノロンのCB1結合を、CHO細胞において発現されるヒトCB1カンナビノイド受容体のアゴニスト部位についての対するプレグネノロンの親和性により評価し、CB1アゴニスト[3H]CP55940の放射性リガンド結合アッセイにて決定した。実験を、CEREP Franceにより、この供給者の標準的手順を用いて、行った。
【0219】
高架式十字迷路
高架式十字迷路を、中央の台(10×10cm)、及びそこから互いに90°の角度で伸びた4本のアーム木(45×10cm)により作成した。クローズドアームと呼ばれる2つの反対アームは、50cmの高さの周囲壁を有していた。オープンアームと呼ばれる他の2つのアームは、壁を有さない。部屋の床から66cmで迷路をつるし、明るく照らした(120lux)。試験は、中央の台に動物を置くこと、エントリー数、及び5分間記録した迷路の各コンパートメントで過ごした時間からなっていた。エントリー数、及びオープアームで過ごした時間は、不安様行動の指標と考えられ、一方、エントリーの総数は、自発運動活性の指標である。
【0220】
インビトロでの代謝の研究
成体チャイニーズハムスター卵巣細胞の生検から初期化された親CHO細胞株由来のサブクローンとして得られたCHO−K1細胞株(#CCL-61、ATCC-LGC、USA)を用いた。CHO−K1細胞を、24ウェルプレート(#353047、BD Biosciences、USA)上に、適切な濃度(25×10
4細胞/ウェル)に、90% DMEM-Glutamax;(#31966-21、Life technologies、USA)及び10% Fetal Bovine Serum(#10270-106、Life technologies、USA)により構成されるフレッシュな、抗生物質フリーの培地中に播種した。
【0221】
プレグネノロンの定常状態投与
ポンプ速度0.15μl/時間(model 2006)を有するマイクロ浸透圧ポンプ(Alzet Osmotis Pumps、Charles River、France)を、125又は250mg/mlの濃度(それぞれ、1日用量12又は24mg/kg体重に対応する)で、PEG300(85%)、及びエタノール(15%)に溶解したプレグネノロンで満たし、軽く麻酔した後に、皮下に埋め込んだ。全てのポンプを、埋め込む前、生理食塩水中、37℃で、60時間浸すことにより、用意した。
【0222】
統計的分析
分散の二元配置又は一元配置分析(ANOVA)、Newman-Keuls、スチューデントT検定を用いて、統計分析を行った。全ての結果を、平均±S.E.Mとして表した。GraphPad Prism(GraphPad Software Inc.、La Jolla、CA、USA)、又はStatistica 5.0(著作権)(StatSoft Inc、Tulsa、OK、USA)を用いて、統計的試験を行った。
【0223】
結果:
I.CB1活性化は、プレグネノロン合成及び濃度を増加させる
実施例1:THCは、他の乱用薬物より、脳のプレグネノロン濃度を増加させる
この実施例において、本発明者等は、オスWistarラットにおいて、プレグネノロンの産生について主な乱用薬物の注射の効果を分析した。全組織において、ステロイド合成の第1工程は、下流活性分子の不活性な前駆体として多いに考えられてきたプレグネノロンの産生である。例えば、脳において、プレグネノロンから出発して、2つの並行する酵素カスケードが、一方で、アロプレグナノロン及びその立体異性体、エピアロプレグナノロンを、他方で、テストステロン及びその代謝物DHTを産生させる。微かな構造の違いを区別することが可能な唯一の技術であるGC−MSを用いて、これらの脳ステロイドを定量した。ほとんどの無条件の行動効果のためのED50に対応する用量:精神刺激薬であるコカイン(20mg/kg)、オピオイドモルヒネ(2mg/kg)、ニコチン(0,4mg/kg)、アルコール(1g/kg)、及び大麻、Δ9テトラヒドロカンナビノール(THC)(3mg/kg)の活性原理で、主要な種類の乱用薬物を、皮下注射又は腹腔内注射した。いくつかの上行脳構造、腹側中脳、視床下部、線条複合体、及び前頭皮質において、注射の15、30、及び120分後に、ニューロステロイドの濃度を分析した。
【0224】
全ての脳構造研究(前頭皮質、線条体、側坐核、腹側中脳)において、非常に類似する結果を得た。腹側線条体(側坐核)についての実施例において示す通り、ステロイドの基底レベル(
図1A)は、プレグネノロン及びテストステロンについて約1ng/g組織から、エピアロプレグナノロンについて0.2ng/gの範囲にあった。DHT及びアロプレグナノロンは、中間体レベル約0.4ng/gを有した。全ての乱用薬物が、注射の15〜30分後に、プレグネノロンの脳濃度を増加させた(
図1B)。著しいことに、THCにより誘導されるプレグネノロンの増加は、他の乱用薬物により誘導されるものより数倍高かった:すなわち、他の乱用薬物について約200%の増加に比べ、THCについて約1500%の増加であった。
【0225】
実施例2:THCは、用量に依存した様式で、ラットの脳におけるプレグネノロン濃度を増加させる
この実施例において、本発明者等は、上述の実施例において示す通り、注射の30分後に観察される薬物効果のピックで測定したプレグネノロンの体濃度について、異なる濃度のTHC(0.3、0.9、1.5、3、6、及び9mg/kg)又はビヒクルのオスWistarラットへの投与の効果をさらに特徴付けた。これらの実験は、脳で観察されるプレグネノロンの増加が、約3mg/kgのED50を伴い、用量依存性であることを示した。実施例は、血漿及びいくつかの脳構造:前頭皮質(FCX);側坐核(ACC);線条体(STR);視床下部(HYP)において観察されるデータを提供した。THC投与後、プレグネノロンは、比較可能な様式で、全ての研究した脳構造において増加した。プレグネノロンはまた、血漿において増加したが、この増加は、脳で観察されるものより数倍低かった。
【0226】
実施例3:THCは、用量に依存した様式で、マウスの脳におけるプレグネノロン濃度を増加させる
この実施例において、本発明者等は、マウスにおけるTHCの効果を研究することにより、プレグネノロンの濃度について、THC投与の効果をさらに特徴付けた。注射の30分後、薬物効果のピックにて、プレグネノロンを測定した。これらの実験は、マウスにおいても、THCがプレグネノロンの用量依存的増加を誘導することを示した。実施例は、いくつかの脳構造:前頭皮質(FCX);側坐核(ACC);線条体(STR)から得られたデータを提供した。THCは、全てのこれらの脳構造においてプレグネノロン濃度の同様の増加を誘導した。
【0227】
実施例4:CB1受容体のアゴニストは、THCにより誘導されるものと同様のプレグネノロン濃度の増加を誘導する
脳におけるTHCの効果は、Gタンパク質共役型7回膜貫通型受容体(GCPR)のファミリーにより、そして主に、CB1及びCB2受容体により仲介される。THCは、CB1受容体の活性化を介して、プレグネノロン合成を増加させた。従って、合成混合物であるCB1/CB2アゴニストWin55,212、及びCB2受容体よりCB1についてより高い親和性を有するアゴニスト(HU210)の両方の独立した群のラット(1群当たりn=6〜12)への注射は、プレグネノロンの有意な増加を誘導した。対照的に、CB1受容体よりCB2についてより高い親和性を有するアゴニスト(JWH,133)は、プレグネノロン濃度についてずっと低く、有意でない効果を有する。
【0228】
実施例5:プレグネノロンにおいてのTHCにより誘導される増加は、CB1受容体のアンタゴニストにより抑制される
CB1活性についてのTHC効果の依存は、THCの投与(3mg/kg、i.p)により、Wistarラットの側坐核において誘導されるプレグネノロン濃度の増加が、THC注射の30分前に注射したCB1選択性アンタゴニストの投与(AM251、8mg/kg、i.p.)によりブロックされるという知見により、さらに示された(1群当たりn=6)。
【0229】
実施例6:プレグネノロンにおけるTHCにより誘導される増加は、CB1受容体を欠く変異動物において抑制される
この実施例において、本発明者等は、THCにより誘導されるプレグネノロン増加のCB1受容体への依存をさらに分析した。この目的のため、本発明者等は、CB1受容体の発現が構造的に欠損している変異マウス(1群当たりn=6〜8)における、プレグネノロンについてTHCの効果を研究した。実施例は、側坐核において得られたデータを示している。THCにより誘導されるプレグネノロンの増加は、CB1受容体が全種類の細胞において欠損しているか又はドーパミン作動性D1受容体を発現する神経集団において選択的に欠損している変異動物において、完全に抑制された。この変異体において、CB1受容体は、側坐核中の大抵のGABAニューロンにおいて欠損している。最近の実験は、脳において、THCが、ニューロンにより発現されるCB1受容体に作用することにより、プレグネノロンを増加させることを示す。
【0230】
考察:
上記実施例において提示したデータは、本明細書で開示の知見:「哺乳動物におけるCB1受容体の活性化は、プレグネノロンの合成を誘導し、身体中のこのステロイド濃度を増加させる」の支持に集中している。
【0231】
次に、上記実施例において提示したデータは、身体中のプレグネノロン濃度を増加させる一般化方法の提供に集中する。
【0232】
実施例において提示した、集中する証拠は、以下の通り要約されうる:
第1に、プレグネノロンは、CB1受容体の3つの異なるアゴニスト:THC、HU210、及びWin55,212の投与により、用量に依存して増加する。対照的に、プレグネノロンは、CB1受容体についてより、CB2について、より高い親和性を有するアゴニストにより、有意に増加しなかった。CB1アゴニストにより誘導されるプレグネノロン濃度の増加を、2つの異なる種(マウス、及びラット)において確認し、脳及び血漿の両方で見出した。
【0233】
第2に、THCにより誘導されるプレグネノロンの増加は、CB1アンタゴニストの投与により抑制され、CB1受容体を欠く変異動物において無効にされた。
【0234】
II.プレグネノロンは、CB1受容体について、ネガティブフィードバックを及ぼし、CB1受容体活性化の効果を阻害する
実施例7:プレグネノロンのTHCにより誘導される増加は、CB1受容体の活性化についてネガティブフィードバックを提供する
これらの実施例において、本発明者等は、CB1受容体のTHC活性により誘導されるプレグネノロンの増加の可能性のある機能的役割を分析した。本発明者等は、プレグネノロンが、CB1受容体の刺激により仲介される効果についてネガティブフィードバックを及ぼすことを見出した。
【0235】
CB1受容体の活性化は、カンナビノイドの四徴と呼ばれる4つの効果(1.低自発運動、2.低体温、3.カタレプシー(運動を開始する能力の障害)、及び4.鎮痛を含む)により、通常同定される。従って、THC(3、10、15mg/kg)のC57Bl/6Nへの注射(1群当たりn=7〜8)は、用量に依存して、i)オープン・フィールドにおける自発運動活性の減少;ii)体温の低下;iii)運動を開始する潜時の増加(増加したカタレプシー);及びiv)侵害受容閾値の増加を誘導した(
図2A〜D)。
【0236】
四徴を観察するTHCの用量(3〜15mg/kg THC)は、プレグネノロン濃度の強い増加を誘導するので、本発明者等は、THCの30分前に注射し、行動をTHC注射の30分後に経時的に測定して、プレグネノロン合成アミノグルテチミド(AMG、50mg/kg、ip)の阻害剤の効果を分析した。AMGは、THCの全行動効果を強力に増加させ(
図2A〜D)、この増強は、プレグネノロンの外因性注射(6mg/kg)により完璧に覆され(
図2E〜H)、AMG投与の観察される効果のプレグネノロンへの依存を示した。これらのデータは、CB1受容体の活性化により誘導されるプレグネノロンの分泌が、例えば、CB1の活性化から生じる効果を、ネガティブフィードバックループで阻害する機能を供することを示している。
【0237】
実施例8:プレグネノロンは、THCによるCB1受容体の活性化により誘導されるエンドカンナビノイドの四徴を阻害する
これらの実施例において、本発明者等は、プレグネノロンの外因性投与がまた、THCにより誘導されるカンナビノイドの四徴を阻害することができるかどうかを分析した。
【0238】
THC前、かつAMGの不存在下でのプレグネノロン投与(6mg/kg)は、THCにより誘導されるカンナビノイドの四徴の全行動:自発運動活性、体温、カタレプシー、及び疼痛閾値を減少させた(
図2E〜H)。しかしながら、THC不存在下でのプレグネノロン自体の投与は、自発運動活性、体温、カタレプシー、及び疼痛閾値についての効果を有しない(
図2E〜H)。
【0239】
実施例9:プレグネノロンは、THCに誘導される食物摂取の増加を阻害する
CB1受容体の活性から生じる効果を阻害するプレグネノロンの能力の更なる例を提供するために、次に、本発明者等は、プレグネノロン(THCの30分前に注射した)がまた、THCに誘導される食物摂取の増加を阻害するかできるかどうかを研究した。
【0240】
THCは、十分に飽食させたラット(0.5mg/kg、1群当たりn=7〜8)、及び24時間食物欠乏マウス(1群当たりn=7〜8、1mg/kg)において、食物摂取を増加させることを示した。十分に飽食させたラット(
図3A)において、プレグネノロンは、2mg/kgでの統計的に有意な効果を伴って、THCにより誘導される食物摂取を用量に依存して減少させた。この用量はまた、マウスにおいて、THCの注射により誘導される食物摂取の増加を抑制した(
図3B)。この用量で、プレグネノロンは、基底食物摂取を有意に緩和しなかった(
図3A、B)。
【0241】
実施例10:プレグネノロンは、食物欠乏により誘発される食物摂取の増加を阻害する
内因性エンドカンナビノイドによるCB1活性は、生理的食物摂取(すなわち、外因性CB1アンタゴニスト、例えば、THCにより刺激されない食物摂取)の制御に関与していた。次に、本発明者等は、プレグネノロン投与が、THCを受け取らなかった、食物欠乏動物において、食物摂取を緩和することができるかどうかを、更に評価した。本発明者等は、プレグネノロンが、食物欠乏マウスにおいて、食物摂取を依存的に減少させ(
図3C)、しかしながら、第1の統計的に有意な用量(6mg/kg)が、THCにより誘導される食物摂取をブロックすることができるもの(2mg/kg)より高いことを見出した。
【0242】
実施例11:プレグネノロンは、CB1依存性メカニズムを通じた食物欠乏により誘導される食物摂取の増加を阻害する
多くの生理的システムは、食物摂取を制御する。この理由のため、この実施例において、本発明者等は、THCで処置していない食物欠乏動物におけるプレグネノロンにより誘発される食物摂取の減少が、CB1受容体に依存するかどうかを確かめた。本発明者等は、食物欠乏動物においてプレグネノロンにより誘導される食物摂取の減少について、CB1アンタゴニストSR141716A(0.05mg/kg、ip)での事前処置の効果を研究した。本発明者等は、食物欠乏動物における食物摂取について、プレグネノロンにより誘発される阻害は、CB1受容体に依存することを見出した。従って、プレグネノロン投与前30分間食物を制限したマウスへ投与されたCB1アンタゴニストSR141716Aは、プレグネノロン投与により誘発される食物摂取の減少を抑制した(
図3D)。
【0243】
実施例12:プレグネノロンは、CB1アゴニストの自己投与を阻害する
嗜癖を誘導するTHCの能力に関連するCB1活性のポジティブ増強効果に対するプレグネノロン投与の効果を分析するために、本発明者等は、既に記載されたプロトコール(Soria et al., 2006;Mendizabal et al., 2006)に従い行われる静脈内自己投与モデルを用いた。静脈内自己投与は、嗜癖の最善の行動モデルと考えられる。このモデルにおいて、動物は、薬物の静脈内注射を得るために、操作的な応答(本発明者の場合、穴に鼻を突く)を生じることを習得した。マウスは、容易にCB1アゴニストWIN55,212を自己投与し(1回注射当たり12.5μg/kg)、応答が予定された結果を招かない(不活性)不活性な装置と比較して、応答が、この化合物の注入の引き金をひく(活性)装置について明確な好みを示す(
図5A)。2又は4mg/kgプレグネノロンのラテン方格法(すなわち、自己投与セッション前)での投与は、WIN55,212の自己投与を大いに減少させた。加えて、プレグネノロン投与はまた、累進比率(PR)スケジュールにおいて、ブレークポイントの減少により示されるような、自己投与WIN55,212の動機付けも減少させた(
図5C)。このスケジュールにおいて、動物は、1つの薬物注入を受けるために、増加数の応答(比)を生じることが必要とされ、ブレークポイントは、完了した最終比であり、薬物について動機付けの信頼できる処置と考えられる。PRセッションについて、注射をもたらす応答の条件は、以下の連続:1−2−3−5−12−18−27−40−60−90−135−200−300−450−675−1000に従い拡大した。
【0244】
実施例13:プレグネノロンは、THC投与により誘導される記憶喪失を阻害する
この実施例において、本発明者等は、CB1活性化の効果を阻害するプレグネノロンの能力をさらに分析した。CB1活性の補足的効果は、記憶機能障害の誘導である。この効果は、大麻使用の副作用の1つ:最近の記憶の喪失により特徴付けられる認知機能障害と関連する。トレーニングの10分後に注射したTHC(10mg/kg)によるCB1受容体活性化は、マウスにおける物体認知課題の記憶力を強く損なう(
図6)。
【0245】
トレーニング後直ちに注射したプレグネノロンでの事前処置(6mg/kg)は、10mg/kgTHCの記憶喪失作用を強く鈍らせた。しかしながら、プレグネノロン(6mg/kg)は、THCの不存下で投与したとき、記憶力の変化を全く誘導しなかった(
図6)。
【0246】
実施例14:プレグネノロンは、THC投与により誘導されるドーパミン作動性活性の増加を阻害する
この実施例において、本発明者等は、CB1活性化の効果を阻害するプレグネノロン能力を更に分析した。大麻は、順に、動機付けから行動までのシフトを制御する脳領域である側坐核における神経伝達物質であるドーパミンの放出を増加させるCB1受容体を活性化することにより、その常習特性を働かせると考えられる。THCにより引き起こされるドーパミン作動性活性の増加についてプレグネノロンの効果(
図7)を、2つのパラメーター:1.側坐核におけるドーパミン作動性終末のレベルでのドーパミンの放出;及び2.腹側被蓋野(VTA)における細胞体レベルでのドーパミン作動性ニューロンの電気的活性を並行して記録して研究した。プレグネノロン(2mg/kg皮下注射、THCの30分前)は、ドーパミン放出、THCにより誘導されるドーパミン作動性ニューロンの活性における増加を強く鈍らせた。THC又はコカインを、指数関数的に増加する累積的用量(0.15〜1.2mg/kg)で静脈内投与した。それぞれの投薬後、連続投与の1分前にDAニューロン発火を記録した(
図7)。
【0247】
実施例15:プレグネノロンは、コカイン投与により誘導される、ドーパミン作動性活性の増加を阻害する
この実施例において、本発明者等は、ドーパミン作動系の活性化を阻害するプレグネノロンの能力を更に分析した。上記実施例において、プレグネノロンは、THCにより誘導されるドーパミン作動系の運動亢進と拮抗することができた。本実施例(
図8)において、プレグネノロン(2mg/kg皮下投与、コカインの30分前)が、精神刺激薬、例えば、コカインにより誘導されるドーパミン作動系の活性の増加と拮抗することもできることが示される。コカインを、指数関数的に増加する累積的用量(0.0125〜0.8mg/kg)で静脈内投与した。それぞれの投薬後、DAニューロン発火を続く投与の1分前に記録した。精神刺激薬により誘導されるドーパミン作動性活性の増加が、精神病の実験モデルの1つであると考えられているので、この結果は、統合失調症に関連する。従って、精神刺激薬により誘導されるドーパミンの増大は、これらの薬物の使用後に、ヒトにおいて生じ得る急性精神病の発症の原因となる。
【0248】
実施例16:プレグネノロンは、高脂肪食餌を受けた動物における体重増加及び脂肪蓄積を阻害する
この実施例において、本発明者等は、肥満の状況におけるCB1活性の効果を阻害するプレグネノロンの能力を分析した。代謝障害についてのプレグネノロンの効果を、食餌により誘発される肥満のモデル(DIO)を用いて、マウスにおいて、研究した。この手順において、動物を、肥満を徐々に誘導する高脂肪食餌(脂肪60%)にて維持する。これらの動物において、過体重及び過剰な脂肪蓄積を既に誘導したこの食餌について、8週間後に、プレグネノロンでの処置を、30日間(1日1回2mg/kg又は5mg/kg、n=8)開始した。プレグネノロンは、処置の15日後から現れ(
図9A)、食物摂取を修飾しない(
図9B)遅延効果を伴った体重を減少させた。
【0249】
結果として、体重についてのプレグネノロン効果は、一次代謝効果に起因せず、食物摂取についての行動効果に起因しないと思われる。これを、プレグネノロン処置下で、動物の脂肪量及び除脂肪量について、異なる効果が存在することを明らかにした磁気共鳴で行った身体組成の分析により、確かめた(
図10)。高脂肪食餌中の対照動物において、脂肪量の割合は徐々に増加し、一方で除脂肪量は減少した。動物を、最高用量のプレグネノロン(5mg/kg)で処理したとき、脂肪量の増加を抑制し、一方で、除脂肪量の減少を鈍らせた。
【0250】
DIOモデルにおけるプレグネノロンの食物摂取についての効果の欠如は、プレグネノロンが食物摂取を減少させる絶食/リフィーディングモデルを用いて観察されるものと反対であると思われる(
図3)。このことは、餌を与える条件(DIOモデルにおける高脂肪食餌対絶食/リフィーディングモデルにおける標準的な固形飼料)、又は絶食動物において、食物への再暴露の最初の1時間の間に誘導される突発摂食についてのプレグネノロンの潜在的特異性効果に起因し得る。この理由のため、絶食/リフィーディングモデルにおいて、食物摂取を、1時間、古典的に評価し、一方、DIOモデルにおいて、食物摂取を24時間に渡り評価する。続く実験において、プレグネノロンの効果を、24時間に渡り、絶食/リフィーディングモデルにおいても研究した。観察した結果は、リフィーディングの最初の1時間中のプレグネノロンの効果を確認したが、有意な効果は24時間に渡って見られなかった。これらのデータは、エンドカンナビノイド系及びCB1受容体を強く活性化する絶食により誘導される突発摂食についてのプレグネノロンの特異的効果を示す。24時間食物摂取についてのプレグネノロンの効果のこの欠如は、食物摂取を24時間に渡り大いに減少させることが既に示された参照CB1オルソステリック受容体アンタゴニストのリモナバンの既知の作用と非常に異なる。同様に、高脂肪食餌中、リモナバンは、処置の最初の1週間、食物摂取を減少させることを示し、一方、プレグネノロンは示さなかった(
図9A)。
【0251】
実施例17:プレグネノロンは、LPSにより誘導されるTNF−αの増加を阻害する
この実施例において、本発明者等は、炎症及び線維症の状況において、CB1活性の効果を阻害するプレグネノロンの能力を更に分析した。CB1受容体の活性は、オルソステリックアンタゴニスト(例えば、リモナバン)によるこの受容体の阻害が、炎症誘発性刺激により誘導されるTNF−α、例えば、LPSの増加を減少させる事実にもかかわらず、示す通り炎症及び線維過程に関与する。TNF−αは、線維症の促進により関与する炎症性刺激への細胞応答の1つである。LPS投与の30分前のプレグネノロンのマウスへの投与(6mg/kg、皮下)は、LPS投与の90分後に測定されるTNF−αの増加を半減させた(
図11)。
【0252】
実施例18:プレグネノロンは、シナプス伝達についてのCB1活性の効果を阻害する
この実施例において、本発明者等は、シナプス伝達の状況において、CB1活性の効果を阻害するプレグネノロンの能力を更に分析した。CB1受容体の活性化は、神経伝達物質の放出を阻害することにより、シナプス伝達を抑制することが、広く記載されている。このことは、脳の多くの領域において、興奮性及び阻害性シナプスの両方で観察されている。本発明者等は、プレグネノロンが、側坐核(NAc)において、興奮性シナプス伝達を阻害するTHCの能力を変えるかどうかを評価した。成体NAcにおいて、全細胞パッチクランプ記録を行い、AMPAR−仲介EPSCを、局所軸索の電気的刺激により誘導した。THCのバス灌流は、対照切片(阻害の34.3±3.7%)において、EPSC振幅を確かに減少させた。切片を100nMプレグネノロン(阻害の15.1±1.8%,p<0.001)で予め処置したとき、THCの効果が有意に減弱した(
図12)。
【0253】
広範囲のTHC濃度についてプレグネノロンの効果を試験するために、本発明者等は、NAc切片におけるfEPSPを記録した。数時間の安定なfEPSP測定を達成する可能性に起因し、この技術は、理想的に研究されて、用量応答性曲線を実行し、CB1受容体機能に対処するために既に用いられた(Robbe et al., 2001;Mato et al., 2004)。従って、局所軸索を電気的に刺激することにより、AMPARにより仲介される誘起fEPSPを記録した。切片をコントロールするためのTHCのバス灌流は、fEPSPを用量に依存した方法(10μM:23.9±6.0%;20μM:35.3±4.7%;40μM:48.6±3.6%)で阻害した。結果として、THCは、100nMプレグネノロンと予めインキュベーションした切片におけるシナプス伝達のより少ない阻害を誘導した(10μM:11.1±3.2%;20μM:22.7±2.7%;40μM:34.6±3.1%;2方向ANOVA神経ステロイドファクターp=0.001)(
図13)。
【0254】
全体として、これらのデータは、神経ステロイドプレグネノロンが、興奮性シナプス伝達のCB1受容体依存性調節を活性化するTHCの能力を損なうことを示す。
【0255】
考察:
上記実施例で提示されるデータは、「CB1の活性化により、身体内で誘導されるプレグネノロン濃度の増加が、CB1受容体の活性について、内因性ネガティブフィードバックを提供する。このネガティブフィードバックは、内因的に産生されるか、又は外因的に投与されるプレグネノロンが、CB1活性化の効果と拮抗するという事実により、実現される」という、本明細書において開示される発見に集中する。
【0256】
次に、上記実施例において提示されるデータは、プレグネノロンの投与により、CB1受容体の活性化の効果を阻害する一般的方法の提供に集中する。
【0257】
これらの集中する証拠は、以下の通り要約される:
第1に、CB1活性化により誘導されるプレグネノロンの内因性増加が、CB1活性化の効果を減少させる機能を供する内因性ネガティブフィードバックを提供したので、CB1により仲介される効果に対するプレグネノロンの阻害作用は、生理的に関連するものであった。従って、CB1活性により誘導されるプレグネノロンの産生がブロックされると、THCの行動効果は増加した。
【0258】
第2に、プレグネノロンの外因的投与は、CB1受容体の活性化により誘導される多数の効果:1.低自発運動;2.カタレプシー;3.低体温;4.鎮痛;5.絶食−リフィーディングモデルにおける食物摂取;7.THCにより誘導される食物摂取;6.CB1アゴニストの静脈内自己投与;7.THCにより誘導される記憶喪失;8.THC又はコカインによるドーパミン作動系の活性化;9.肥満モデルにおける脂肪蓄積及び体重増加;9.TNF−αの産生;10.THCにより誘導されるシナプス伝達の阻害、を阻害することができた。
【0259】
第3に、CB1により仲介される効果に対するプレグネノロンの阻害作用を、2つの異なる種:ラット及びマウスにおいて見出した。
【0260】
本発明者等により本明細書において示されるこれらの多数のパラメーターについての収束効果は、CB1受容体の活性化の効果を増加させて減少させない、完全に反対に予測される他の既知のステロイドの効果についての以前の知見に基づいて、固有かつ予測できないものである。例えば、多くのステロイド、例えば、プレグナノロン、アロプレグナノロン、及びそれらの誘導体は、GABA受容体の活性化を促進することが記載されている。次に、GABA受容体の活性化を増強する化合物がTHCによるCB1活性化の効果を増加させることが示されたので、これらのステロイドはCB1活性化の効果を増加させるべきである(Bellocchio L et al., Nature Neurosci 2010, 13:281-3; Pertwee RG and Wickens AP. Neuropharmacology. 1991, 30:237-44 ; Pertwee RG, et al., Neuropharmacology. 1988 27:1265-70)。同様に、現在の知見に基づいて、又、プロゲステロン及びプロゲステロン化合物、他の性ステロイド、及びグルココルチコイドは、CB1活性化の効果を増加させると予測される(Anaraki DK et al., Europ. J. Pharmacol, 2008, 586, 186-196; Rdriguez de Fonseca F, et al., Life Sci. 1993, 54: 159-170 ; Becker JB, Rudick CN. Pharmacol Biochem Behav. 1999 , 64:53-7; Piazza PV and Le Moal M Brain Res Rev 1997, 25:359-72)。
【0261】
III.プレグネノロンは、CB1のオルソステリックアンタゴニスト及び他の向神経活性ステロイドより少ない副作用及びより少ない非特異的作用を有する、CB1受容体の阻害剤である
実施例19:プレグネノロンは、CB1受容体へのオルソステリック結合を修飾しない
上記実施例は、CB1活性化の研究された全ての効果を阻害することができることを示している。これらの知見に基づき、この実施例において、本発明者等は、プレグネノロンとCB1受容体との間の可能性のある相互作用を研究した。本発明者等は、プレグネノロンが、CB1のオルソステリックアンタゴニストとして作用することができるかどうかを分析した。このことは、プレグネノロンがCHO細胞の血漿膜上に存在するCB1受容体へのCB1アゴニスト[3H]CP55,940のオルソステリック結合を置き換えないので、事実とは異なる(
図14)。プレグネノロンは、オルソステリックアンタゴニストとして作用しないが、本発明者等により生み出された予備的証拠は、それがアロステリック阻害剤として作用し得ることを示す。
【0262】
実施例20:プレグネノロンは、不安様行動を誘導しない
CB1のオルソステリックアンタゴニストの主要な副作用の1つは、行動の副作用、特に、抗うつ状態の誘導である。これらの効果は、第1のCB1オルソステリックアンタゴニストリモナバンの販売承認を抑制する規制当局により、十分に重大であると判断された。プレグネノロンの異なる安全性プロファイルを立証するために、その効果を、不安の動物モデルである高架式十字迷路を用いて、CB1オルソステリックアンタゴニスト/インバースアゴニストリモナバン(両方の薬物を皮下投与)の1つと比較した。不安の増加が、ヒトにおけるこの化合物の主な不所望の副作用だったので、この試験を選択した。マウスに、プレグネノロン(1、6、10mg/kg)、リモナバン(10mg/kg)、又はビヒクル(1群当たり少なくともn=7)のいずれかを皮下注射し、30分後、十字迷路の中央の台に置き、オープンアーム及びクローズドアーム内で過ごした時間及びそこへのエントリー数を5分間記録する。この研究(
図15)は、十字迷路のオープンアームへのエントリー数及びそこで過ごした時間の減少により示されるように、リモナバンの不安惹起効果を確認した。対照的に、プレグネノロンは、不安の増加を誘導しなかった(
図15)。
【0263】
実施例21:プレグネノロンは、GABA−A受容体の活性を修飾しない
この実施例において、本発明者等は、他の神経伝達物質受容体、特に、GABA−A受容体について、プレグネノロン効果の特異性を試験した。従って、他の活性ステロイド、例えば、アロプレグナノロン及びプレグナノロンは、GABA受容体の活性化を促進する重要な行動効果を有する。
【0264】
シナプス後GABAの官能基上のプレグネノロンの効果を評価するために、本発明者等は、mIPSCを記録し、群間のその振幅及び減衰期間を比較した。本発明者等は、mIPSC振幅及び減衰期間が、対照(振幅:17.9±0.8pA;減衰期間:11.1±0.3ms)とプレグネノロンで予め処置された切片(それぞれ、100nM及び1μM、;振幅:17.3±0.4pA、15.9±0.4pA;減衰期間:10.2±0.4ms、10.8±0.5ms)間で類似することを観察した。プレグネノロンの効果の欠如とは対照的に、GABA−A受容体のモジュレーターであることが知られている神経ステロイドアロプレグナノロンは、mIPSC特性(それぞれ、100nM及び1μM;振幅:15.9±0.5pA、20.2±1.2pA、p<0.001;減衰期間:13.6±0.7ms、22.7±2.3ms、p<0.0001)を有意に修飾した(
図16)。
【0265】
結論として、このデータは、GABA−Aにより介在されるシナプス電流が、神経ステロイドであるプレグネノロンにより仲介されないことを示唆する。次に、このデータは、既に示されているように(米国特許第5,232,917号)、プレグネノロンのC3β位がGABA受容体上での効果を抑制することを確認している。本発明者等は、ここで、C3β位が、代わりに、CB1受容体の活性化を阻害する性質を与えることを発見する。
【0266】
実施例22:プレグネノロンはグルタミン酸受容体の活性を修飾しない
この実施例において、本発明者等は、他の神経伝達物質受容体、特に、NMDA及びAMPA受容体について、プレグネノロン効果の特異性を試験した。従って、他の活性ステロイド、例えば、DHEA及びDHEA硫酸塩は、グルタマート受容体の活性化を修飾することにより、行動効果を誘導すると想定した。
【0267】
AMPA受容体電流についてプレグネノロンの効果を評価するために、本発明者等は、mEPSCに依存しない作用の可能性を記録することにした。この場合において、シナプス電流は神経伝達物質の確率量子的放出から生じ、また神経ステロイドがシナプス小胞の内容を変えないと仮定すると、記録したmEPSCの振幅及びカイネティクスはシナプス後受容体の機能に依存する。
【0268】
本発明者等は、プレグネノロンが、成体NAcにおいて、AMPAR機能を修飾しないことを見出した(
図17A)。従って、対照及びプレグネノロン(100nM)で処理した切片由来のAMPAR−仲介mEPSCは、同様の振幅(対照:14.4±0.8pA、プレグネノロン:15.7±0.7pA、p=0.25)、及び減衰期間(対照:4.76±0.08ms、プレグネノロン:4.62±0.06ms、p=0.21)を示した。
【0269】
NMDA受容体により仲介される電流を定量するために、本発明者等は異なる方策を用いた。遅いカイネティクス及び電位依存のため、NMDAR−仲介mEPSCの単離は、AMPAR−仲介電流についてのものと同じ程度に信頼できるものではない。従って、本発明者等は、外因的に適用したNMDA応答における、全細胞電流を記録することにした。−30mVに電位固定したNAc PNにおいて、25μM NMDAの1分間のバス灌流は、対照切片(115±15.5pA)及びプレグネノロンで予め処理した切片(100nM:107±9.6pA;1μM:108.9±12.5pA;p=0.91)において、同様の大きさの内向電流を誘導した(
図17B)。
【0270】
全体として、これらの実験は、プレグネノロンが、げっ歯類の成体NAcにおいて、主なシナプス後イオンチャンネル型グルタマート作動性受容体の機能に影響しないことを示した。これらのデータはまた、エタノン(メチルケトン)を有するステロイド環の17位におけるケトンの置換が、NMDA及びAMPA受容体についての活性を抑制し、CB1受容体の活性化を阻害する性質を与えることを示した。
【0271】
考察:
上記実施例において提示するデータは、本明細書において開示の発見:「プレグネノロンは、オルソステリックアンタゴニスト及び他の向神経活性ステロイドとは異なり、プレグネノロンがCB1のオルソステリックアンタゴニスト及び他の向神経活性ステロイドより少ない非特異的及びより少ない非所望の効果を有することを示す薬理学的プロファイルを有するヒトCB1受容体の阻害剤として作用する」を示すことに集中する。
【0272】
次に、上記実施例において提示するデータは、プレグネノロンの投与により、CB1受容体の活性化の阻害を誘導する一般的な方法の提供に向けられる。結果として、上記実施例において提示するデータは、CB1受容体の活性化に関連する全病状、及び/又はプレグネノロンの投与によるCB1受容体の阻害から利益を受けることができる病状を、CB1のオルソステリックアンタゴニスト及び他の活性ステロイド(DHEA、アロプレグナノロン、及びプレグナノロンを非限定的に含む)の可能性のある副作用を伴うことなく、処置するか又は軽減する一般的な方法の提供に向けられる。
【0273】
これらの集中する証拠は、以下の通り要約されうる:
第1に、プレグネノロンは、オルソステリックアゴニストの結合を緩和せず、一方、CB1受容体の活性化から生じる効果を阻害する。このプロファイルは、アロステリックな阻害剤の1つに対応し得る。
【0274】
第2に、オルソステリックアンタゴニストとは異なり、プレグネノロンは、脂肪蓄積を減少させるものの、不安を誘導せず(実施例20)、肥満モデルにおいて食物摂取を減少させもしない(実施例18)。食物摂取の緩和を欠くプレグネノロンの純粋な代謝作用はまた、プレグネノロンについてのより少ない副作用を予測する。体重及び代謝についてのCB1のオルソステリックアンタゴニスト、例えば、リモナバンの効果についての研究は、これらの化合物が、2重の作用(食物摂取の減少から生じる体重の減少(効果の約50%)による第1の作用及び直接的な代謝効果からの第2の作用)を伴って代謝に作用することを示した。CB1のオルソステリック受容体アンタゴニストの副作用、特に、うつ病の増加は、食物摂取について行動効果を含むようである。従って、肥満集団において、食物摂取を減少させる全ての触診、薬理学的、外科的、又は行動処置がまた、対象の最大5%において、重篤な行動障害、特に、鬱病を誘導することは周知である。
【0275】
最後に、他の向神経活性ステロイドとは異なって、プレグネノロンは、GABA及びグルタマート受容体についての効果を欠く。このことは、プレグネノロンが、鎮静ならびに記憶力及び運動行動の機能障害を誘導する、覚醒状態の重要な緩和を誘導し得る、これらのステロイドのいくつかの副作用を有しないと予測するのに重要である。
【0276】
IV.プレグネノロンに由来する他の活性ステロイドにおける変形が制限されているプレグネノロン誘導体は、CB1受容体活性化の効果の阻害剤として作用する
実施例23:下流活性ステロイドにおける変形が制限されているプレグネノロンの誘導体は、インビボでアロプレグナノロン及びエピ−アロプレグナノロンを生じない
一般式Aに記載の化合物の例として、本発明者等は、本明細書において、以下により得た3つの化合物を試験した:
1.フッ素原子によるC3のOH基の置換、これは3−フルオロプレグネノロン(CP1)と呼ばれる化合物を生じた。
2.メチル基でのC17の4級化、これは17−メチルプレグネノロン(CP2)と呼ばれる化合物を生じた。
3.フッ素原子によるC3のOH基の置換、及びメチル基でのC17の4級化、これは3−フルオロ−17−メチルプレグネノロン(CP3)と呼ばれる化合物を生じた。
【0277】
Wistarラットに高用量(50mg/kg、1群当たりn=6〜7)で注射した修飾プレグネノロン誘導体(化合物:CP1、CP2、CP3)のいずれもがアロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンの産生を誘導せず(
図18)、一方で、アロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンが、プレグネノロンの注射(50mg/kg)後、増加した(
図18)。アロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンの濃度を、注射の30分後、GC/MSにより個々の動物の側坐核において測定した。
【0278】
実施例24:下流活性ステロイドにおける変形が、インビトロで制限されているプレグネノロンの誘導体
この実施例において、本発明者等は、CHO細胞細胞におけるインビトロ試験を用いて、プレグネノロン誘導体の代謝をさらに分析した。卵巣に由来するこれらの細胞は、プレグネノロンを下流ステロイドに代謝するのに必要な全ての酵素を有する。特に、これらの細胞への48時間のプレグネノロン(1μM)の投与は、アロプレグナノロン、エピアロプレグナノロンにおいて有意な増加を生じ、培地中のTHDOCのよりずっと少ない増加を生じた(表1A)。合計55種の化合物とプレグネノロンを試験し、これらの化合物のうち、25種のみが、下流活性ステロイドへの代謝がないか、その代謝を有意に減少させた(表1B〜D、表2A、B)。残りの化合物は、1又はいくつかのプレグネノロンの下流ステロイド、例えば、アロプレグナノロン、エピアロプレグナノロン、THDOC、テストステロン、及びDHEAに多かれ少なかれ代謝された。
【0279】
【表1】
【0280】
【表2】
【0281】
【表3】
【0282】
【表4】
【0283】
表1.CHO細胞における減少した代謝物を伴うプレグネノロン誘導体。結果を、プレグネノロンで処理したCHO細胞からの変化の百分率として(表2A)、又はpg/ml(0=検出限度未満の濃度)として表す。ALLO=アロプレグナノロン、EPIALLO=エピアロプレグナノロン、PREG=プレグネノロン、TESTO=テストステロン。
【0284】
【表5】
【0285】
【表6】
【0286】
表2.CHO細胞における減少した代謝物を伴うプレグネノロン誘導体。結果を、プレグネノロンで処理したCHO細胞からの変化の百分率として(表2A)、又はpg/ml(0=検出限度未満の濃度)として表す。ALLO=アロプレグナノロン、EPIALLO=エピアロプレグナノロン、PREG=プレグネノロン、TESTO=テストステロン。
【0287】
表3において示され得る通り、ステロイド代謝についての現在の知見は、プレグネノロンの修飾が、代謝を顕著に減少させるかさせないかを完全に予測することを可能にしない。例えば、C20におけるα−ヒドロキシル基は、代謝を減少させ、一方、C20におけるβ−ヒドロキシル基は減少させなかった。同様に、C5においてβ−水素を有する化合物は、減少させた代謝を有し、一方、C5α化合物は強力に代謝された。又、C3及びC17における選択的基、又はいくつかの特異的組み合わせは、代謝をブロックした。
【0288】
【表7】
【0289】
【表8】
【0290】
【表9】
【0291】
【表10】
【0292】
【表11】
【0293】
【表12】
【0294】
表3.下流活性ステロイドへの有意な代謝を減少させるか、又は維持するプレグネノロン誘導体の比較
【0295】
実施例25:下流活性ステロイドにおける変形が制限されるプレグネノロン誘導体は、CB1受容体活性化の効果を阻害する
一般式Aに記載の化合物の例として、本発明者等は、ラット又はマウスにおける、THCでの刺激後及び/又は食物欠乏後の化合物3−フルオロプレグネノロン、17−メチルプレグネノロン、3−フルオロ−17−メチルプレグネノロンの食物摂取についての効果を、本明細書に示す実施例において試験した。化合物3−フルオロプレグネノロン、17−メチルプレグネノロン、3−フルオロ−17−メチルプレグネノロンは、食物摂取についてのCB1活性化の効果を阻害することができた。化合物17−メチルプレグネノロンは、CB1受容体活性化の効果の阻害において、プレグネノロン及び3−フルオロプレグネノロン及び3−フルオロ−17−メチルプレグネノロンより効果的であると思われた(
図19)。化合物17−メチルプレグネノロンは、ラットにおいて、THCにより誘導される食物摂取の増加を有意に減少させることができ、一方、食物摂取を減少させる傾向のみを、他の2種の化合物について観察した(
図19A)。食物制限マウスにおいて、全ての化合物は、食物摂取を減少させた。しかしながら、統計的に有意な効果を、最小用量(4mg/kg)で、化合物17−メチルプレグネノロンについて得たが、一方、6mg/kgがプレグネノロン及び3−フルオロプレグネノロン及び3−フルオロ−17−メチルプレグネノロンで統計的有意差に至るのに必要であった(
図19B)。最後に、マウスにおいてTHCに誘導される食物摂取の増加は、マウスにおいて、2mg/kgで全ての化合物により減少された(
図19C)。食物摂取におけるTHCにより誘導される増加についての用量応答機能は、プレグネノロンと17−メチルプレグネノロンの両方が、1mg/kgでこの行動を阻害し、一方、用量0.5mg/kgは有効でないことを示した。
【0296】
下流活性ステロイドの代謝が減少されている他のプレグネノロン誘導体(表4)を、阻害能力について試験した:1.CB1受容体の活性化を評価するための信頼に足る方法と認められている、THCにより誘導されるカンナビノイドの四徴の効果(体温及び自発運動活性における減少(THC10mg/kg、化合物6mg/kg、THCの15〜30分前);2.CB1活性化の典型的効果である、THCに誘導される食物摂取の増加(THC0.5〜1mg/kg、化合物2〜4mg/kg、THCの30分前);3.LPSにより誘導されるTNFαにおける増加、CB1アンタゴニストの典型である別の効果(化合物6mg/kg、LPSの15分前)。それぞれの化合物及びそれぞれの試験について、独立群の動物を用いた(1種の化合物/1試験当たり少なくともn=6)。
【0297】
【表13】
【0298】
【表14】
【0299】
【表15】
【0300】
【表16】
【0301】
【表17】
【0302】
表4.減少した代謝を有するプレグネノロン誘導体によるCB1活性化の阻害。プレグネノロン誘導体(2〜6mg/kg)で処置したマウス(1群当たり少なくともn=6)を、ビークルで処置した適切な対照と比較した。10mg/kgTHCの投与後、身体温度及び自発運動活性の変化を、0.5〜1mg/kgTHCの注射後、食物摂取を、及びLPSの全身注射後、TNFαを調べた。nt=試験していないこと。スチューデントt検定を用いて、統計処理した。
【0303】
C3位においてβ−ヒドロキシル基を維持した化合物について、C17におけるメチル又はベンジル又はメトキシル基での置換は、良好なレベルのCB1活性の拮抗作用を維持したプレグネノロン誘導体を生成した(表4A)。また、C20位がα−ヒドロキシル基で置換されているとき、及び/又はC5−C6の2重結合がC5−C4位置にシフトしたとき又はC5においてβ−水素で置換されたとき、良好なレベルの活性化を観察した(表4A)。対照的に、C17位におけるエチル基、C20位におけるケトンの抑制又はメチルアミノ基での置換は、CB1活性の拮抗作用を大いに減少させた(表4B)。C3位におけるアルコール官能基の抑制又はフルオロもしくはアジドもしくはベンジルオキシル基での置換は、CB1活性の良好な代謝を伴った化合物を生成した(表4C)。対照的に、C3におけるメトキシル基でのアルコールの置換は、CB1活性の顕著な減少を誘導した(表4D)。C3のアルコールがケトンで置換されているとき、CB1活性の拮抗作用における一般的減少も起こった(表4E)。しかしながら、C3にケトンを有する化合物の減少した活性は、C5、C20、及びC17位における修飾により、改善され得た。C20及びC17位のα−ヒドロキシル基、又はC5位におけるC5−C6の2重結合のβ−水素での置換は、ケトン化合物であるCB1アンタゴニストを改善した(表4E)。
【0304】
考察:
これらの収束データは、以下の通り要約することができる:
第1に、一般式Aは、プレグネノロンによりもたらされる活性ステロイドにおける変形が制限されている、プレグネノロンの誘導体を得ることを可能にする。下流活性ステロイドへの代謝を減少させるか、またはその代謝をさせないプレグネノロンの化学的修飾の能力を、従前の知見又は当該技術分野の専門家により予測されえないので、この式は最初である。
【0305】
第2に、一般式I及び/又はIIは、異なるシステムモデル:1.マウスとラットの両方においてTHCにより誘導される食物摂取;2.マウスにおいて、食物制限により誘導される食物摂取;3.THCにより誘導されるカンナビノイドの四徴に属する行動;4.LPSにより誘導されるTNFαの増加において、CB1活性の効果を阻害することができるプレグネノロンの誘導体の産生を可能にする。
【0306】
V.CB1受容体活性化の効果の阻害は、プレグネノロン特異的であり、下流代謝物を含まない
実施例26:THCは、プレグネノロン由来の下流活性ステロイドのものより、オスwistarラットの脳において、プレグネノロン濃度を増加させた
この実施例において、本発明者等は、THC(3mg/kg sc)のオスWistarラットへの投与が、時間をかけて、プレグネノロン由来ステロイドのいくつか、特に、アロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンの有意な増加を誘導したことを示す。しかしながら、THCのプレグネノロンについての効果は、プレグネノロンに由来する下流ステロイド上で観察される任意の効果より数桁高かった(
図1C〜F)。
【0307】
THCを、種々の用量でオスWistarラットに投与したとき、本発明者等は、THCは、プレグネノロン下流由来ステロイド、アロプレグナノロン、及びエピアロプレガナノロンの濃度を増加させたが、一方、テストステロン及びDHTの有意な増加はなかったことを見出した。しかしながら、最大用量のTHCの後でさえ、他のステロイドの濃度の増加は、プレグネノロンについて観察されるものよりずっと小さかった。
【0308】
実施例27:THCは、マウスにおいてプレグネノロン由来下流活性ステロイドを増加させない
THCを、種々の用量でオスのマウスに投与したとき、プレグネノロン濃度の強力な用量依存性増加を観察した。しかしながら、マウスにおいて、プレグネノロン由来の下流活性ステロイドのアロプレグナノロン及びエピアロプレガナノロン、テストステロン、及びDHTは、脳において有意に増加しなかった。
【0309】
実施例28:食物摂取を阻害するプレグネノロンの用量は、脳においてプレグネノロン由来の下流活性ステロイドの濃度を増加させなかった
この実施例において、本発明者等は、マウスにおいてCB1活性の効果を阻害することができるプレグネノロンの用量(2〜8mg/kg)の効果を研究した。2〜8mg/kgのプレグネノロン注射は、プレグネノロンの脳レベルを増加させ;しかしながら、それらは、マウスの脳における下流代謝物、例えば、エピアロプレグナノロン及びアロプレグナノロンの濃度を修飾しなかった(
図4)。
【0310】
考察
これらの集中するデータを、以下の通り要約することができる:
第1に、ラットにおけるTHC投与によるCB1活性化は、プレグネノロンより、アロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンにおいてずっと小さな増加を誘導する。マウスにおいて、THC投与は、アロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンを有意に増加させなかった。結果として、プレグネノロン濃度の内因性増加により働く、CB1の活性化のネガティブフィードバック(これは、マウスにおいて調べられた)は、プレグネノロンに由来する下流活性ステロイドの続く増加に起因し得ない。
【0311】
第2に、CB1活性化の効果のプレグネノロンによる阻害を、マウスにおいて観察した用量の範囲(2〜8mg/kg)におけるプレグネノロンの外因性投与は、脳においてアロプレグナノロン又はエピアロプレグナノロンのどちらも増加させなかった(
図2)。結果として、プレグネノロン投与後に観察されるCB1活性の阻害は、プレグネノロンに由来する下流活性ステロイドのその後の増加に起因し得ない。
【0312】
最後に、プレグナノロン及びアロプレグナノロン及び他の下流活性ステロイドに変形されない式I及び/又はIIに従い得られるプレグネノロンの誘導体は、依然として、CB1活性化の効果を阻害することができる。結果として、プレグネノロン投与後に観察されるCB1受容体の阻害及び/又はCB1効果の阻害は、プレグネノロン由来の下流活性ステロイドに起因し得ない。
【0313】
VI.下流向神経活性代謝物の誘導及び増加のない、プレグネノロンの投与方法
実施例24.下流活性ステロイドにおいて代謝を減少させることを可能にする持続放出剤形をシミュレートする方法でのプレグネノロンの投与
ここで、本発明者等は、CB1活性化を阻害することができるが、下流向神経活性ステロイドを増加させない用量でのプレグネノロンの投与方法を例証した。
【0314】
プレグネノロンを、皮下(6mg/kg)、又はプレグネノロンの持続放出製剤をシミュレートするAlzetマイクロ浸透圧ポンプ(Alzet Osmotis Pumps、Charles River、France、model 2006)により投与したとき、プレグネノロン血漿レベルについて、プレグネノロン投与の効果を比較した(1群当たりn=5)。従って、皮下に埋め込んだこれらのミニポンプは、プレグネノロンの一定の放出をもたらす。2種のプレグネノロン濃度を、0.6mg/kg/時間及び1mg/kg/時間(皮下に投与した用量より、10倍及び6倍少ない)として用いた。マウスにおける6mg/kgでのプレグネノロンの皮下投与は、脳においてアロプレグネノロンの濃度を増加させないが(
図4)、下流活性ステロイドの有意な増加を血漿において観察した(
図20)。6mg/kgで皮下投与したプレグネノロンは、プレグネノロンの血漿レベルを増加させたが(約100ng/ml)、アロプレグナノロンの増加を誘導した。皮下に投与したプレグネノロンの半減期は、非常に短く(30分)、アロプレグナノロンの増加を1時間に渡り維持した(
図20)。それどころか、Alzetミニポンプを介して、0.6mg/kg/時間でプレグネノロンを一定に投与したとき、プレグネノロンは、皮下注射後に観察される最大増加範囲内で増加したが、アロプレグナノロンを増加させなかった(
図20)。また、プレグネノロンレベルは、2週に渡り効果的な治療用量の範囲内のままであった。プレグネノロン血漿濃度を6mg/kg投与後に観察したものの2倍に増加させた1mg/kg/時間でプレグネノロンを投与したときでさえ、アロプレグナノロンは増加しなかった(
図20)。
【0315】
考察
プレグネノロンは、精神疾患、ある種の炎症及び代謝障害、ある種の嗜好、特に、ニコチン嗜癖、及びアルコールの処置方法として、従前の資料において記載されている。しかしながら、全てのこの方法において、プレグネノロンの投与の治療的効果が起因する、下流向神経活性ステロイドを増加させるための明確な目標を伴って、プレグネノロンを高濃度で用いた。本明細書において、本発明者等は、プレグネノロン自体は、下流向神経活性ステロイドの関与なしに、従前の資料において用いられたものよりずっと少ない用量で、CB1受容体の活性化に関与する病状を処置するのに有用であり得ることを示す。この状況において、プレグネノロンは、非常に短い半減期(約30分)を有するので、持続放出剤形は、治療範囲内にプレグネノロンレベルを維持するために、有用であり得る。Alzetミニポンプを用いてかかる剤形をシュミレーションすることにより、本発明者等は、低い1時間当たりの濃度でのプレグネノロンの定常投与は、2つの目的:1.CB1活性化の全効果をブロックすることができる範囲内である、プレグネノロンの安定濃度(約100ng/ml)を誘導すること;及び2.下流活性ステロイド、例えば、アロプレグナノロンの増加を減少させること、に至ることを可能にすることを示す。次に、これらの結果は、プレグネノロンの持続放出剤形の使用を通じて、CB1が関与する疾患を処置するため、プレグネノロン自体の薬理学的効果の利点を有し、下流ステロイドの非所望の効果を減少させ、低用量で、プレグネノロンを投与する方法を提供する。
【0316】
参考文献
本出願を通じて、種々の参考文献が、本発明が関連する当該技術分野の状況を記載している。これらの参考文献の開示は、引用により本開示に取り込まれる。
【0317】
【表18】