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特許6266589リチウムイオン電池材料のマイクロ波乾燥
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266589
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池材料のマイクロ波乾燥
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20180122BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20180122BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20180122BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20180122BHJP
【FI】
   H01M10/058
   H01M4/139
   H01M4/1391
   H01M4/1393
   H01M4/66 A
   H01M10/0525
   H01M10/0567
   H01M10/0569
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-500609(P2015-500609)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公表番号】特表2015-511056(P2015-511056A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】US2013031320
(87)【国際公開番号】WO2013138588
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2016年2月2日
(31)【優先権主張番号】61/611,716
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514234137
【氏名又は名称】エー123 システムズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】アリソン チャド
(72)【発明者】
【氏名】アハメド イフティカール
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−022858(JP,A)
【文献】 特開2008−103098(JP,A)
【文献】 特開2003−208924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンセルを製造する方法であって、
前記リチウムイオンセルの基材の上にコーティングとして電極材料を堆積させるステップと、
気体流の下において、初期周波数から最終周波数まで周波数を増加させながら、前記堆積された電極材料に対しマイクロ波照射するステップと、
前記照射された電極材料を非水性電解質溶液で湿潤するステップと、
前記湿潤された電極材料を気密性容器内にシールするステップと、を包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電極材料が、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウムニッケルの一つ又はそれ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電極材料が、リチウムがインターカレートされた炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リチウムイオンセルの基材の上にコーティングとして電極材料を堆積させるステップは、
正の電極材料と負の電極材料とをそれぞれの基材の上に堆積するステップを含み、
前記リチウムイオンセルの基材の上にコーティングとして電極材料を堆積させるステップの後、
さらに前記正及び負の電極材料の間にセパレータ層を配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リチウムイオンセルの基材の上にコーティングとして電極材料を堆積させるステップにおいて、
前記電極材料は、前記基材上に水性スラリーが堆積されてなる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電極材料を堆積するステップが、前記電極材料を前記基材の上にスプレーコーティング及び/又は転写コーティングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が金属箔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記非水性電解質溶液が、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、及び炭酸ジエチルの一つ又はそれ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非水性電解質溶液は、溶媒に吸湿性の固体が溶解されてなる請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はリチウムイオン電池の製造に関しており、より具体的には、リチウムイオン電池で使用する電極材料を脱水するためのマイクロ波照射の使用に関している。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の各セルは負電極及び正電極を含む。負電極は、銅又はニッケル基材に分散された、リチウムイオンがインターカレートされ炭素が減じられた材料から構成され得る。正電極は、アルミニウム基材に分散されたリチウム金属酸化物から構成され得る。正及び負電極は層状に配置され得て、それらの間には絶縁性セパレータが配置されて短絡を防ぐ。結果として得られる積層構造は所望のセル形状に折り畳まれるか又は巻かれ得て、セルの外部コンタクトに接続され、非水性電解質溶液で湿潤されて、それから適切な容器内にシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−108624号公報
【特許文献2】特開2010−113874号公報
【特許文献3】特開2011−82059号公報
【特許文献4】特開2012−22858号公報
【特許文献5】特開2012−33364号公報
【特許文献6】米国特許第5,462,820号公報
【特許文献7】米国特許第5,654,114号公報
【特許文献8】米国特許第5,792,574号公報
【特許文献9】米国特許第5,985,488号公報
【特許文献10】米国特許第6,152,971号公報
【特許文献11】米国特許第6,162,264号公報
【特許文献12】米国特許第6,998,191号公報
【特許文献13】米国特許第7,081,320号公報
【特許文献14】米国特許第7,135,253号公報
【特許文献15】米国特許第7,303,594号公報
【特許文献16】米国特許第7,378,189号公報
【特許文献17】米国特許第7,615,313号公報
【特許文献18】米国特許第7,640,150号公報
【特許文献19】米国特許第7,851,087号公報
【特許文献20】米国特許第7,854,773号公報
【特許文献21】米国特許出願公開第2003/0087158号公報
【特許文献22】米国特許出願公開第2005/0031961号公報
【特許文献23】米国特許出願公開第2005/0130039号公報
【特許文献24】米国特許出願公開第2006/0141138号公報
【特許文献25】米国特許出願公開第2008/0131782号公報
【特許文献26】米国特許出願公開第2009/0110992号公報
【特許文献27】米国特許出願公開第2010/0206363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、リチウムイオンセルの性能及び長寿命は、セル容器内にシールされた材料から湿気、すなわち水分がどの程度まで排除されるかに依存し得る。したがって、正及び負電極層は、電解質溶液の添加に先立って、電極材料を脱水させるために真空中で加熱され得る。しかし、真空での取り扱いはコストが掛かり且つ時間を要し、連続的、すなわちロール・トゥ・ロールの処理には容易に適用できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本開示の一つの実施形態は、リチウムイオンセルを製造する方法を提供する。この方法は、リチウムイオンセルの基材の上にコーティングとして電極材料を堆積させるステップと、堆積された電極材料に対しマイクロ波を周波数を変化させながら照射するステップと、照射された電極材料を非水性電解質溶液で湿潤するステップと、湿潤された電極材料を気密性容器内にシールするステップと、を含む。他の実施形態は、リチウムイオンセルを製造する装置を提供する。この装置は、電極材料堆積ステージと、マイクロ波脱水ステージと、湿潤ステージと、シール処理ステージと、を含む。堆積ステージは、リチウムイオンセルの基材の上にコーティングとして電極材料を堆積させるように構成される。脱水ステージは、堆積された電極材料に対しマイクロ波を周波数を変化させながら照射するよう構成されたマイクロ波エミッタを含む。湿潤ステージは、照射された電極材料を非水性電解質溶液で湿潤するように構成される。シール処理ステージは、湿潤された電極材料を気密性容器内にシールするように構成される。
【0006】
上記の記述は、本開示の選択された部分を単純化された方法で導入するために提供されており、キーとなる又は本質的な特徴を特定するためではない。特許請求される主題は特許請求項に規定されているが、上記の内容、あるいはここで参照されるあらゆる問題又は不都合な点を解決するための実現化に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本開示の実施形態にしたがったリチウムイオンセル電極の特徴を断面図で示す図である。
図1B】本開示の実施形態にしたがったリチウムイオンセル電極の特徴を断面図で示す図である。
図2A】本開示のある実施形態にしたがった円筒状のリチウムイオンセルで使用するために構成された正及び負電極を示す図である。
図2B】本開示のある実施形態にしたがった円筒状のリチウムイオンセルの特徴を示す図である。
図3A】本開示のある実施形態にしたがったフラットパック状のリチウムイオンセルで使用するために構成された正及び負電極を示す図である。
図3B】本開示のある実施形態にしたがったフラットパック状のリチウムイオンセルの特徴を示す図である。
図4】本開示のある実施形態にしたがったリチウムイオンセルの製造装置を表すブロック図である。
図5】本開示のある実施形態にしたがったリチウムイオンセルの製造装置のマイクロ波脱水ステージの特徴を示す図である。
図6】本開示のある実施形態にしたがったリチウムイオンセルの製造方法例を示す図である。
図7】本開示のある実施形態にしたがったリチウムイオンセルの製造装置のマイクロ波脱水ステージにおいて電極材料を照射する方法例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の特徴がここで、例によって且つ上記でリストされた描写された実施形態を参照して記述される。一つ又はそれ以上の実施形態にて実質的に同じであり得る構成要素、処理ステップ、及びその他の要素は調和して特定され、最小限の繰り返しで記述される。しかし、調和して特定された要素がまた、ある程度までは異なり得ることに留意されたい。さらに、本開示に含まれる描かれた図面が模式的なものであり、一般的に同じ縮尺で描かれていないことにも留意されたい。さらに、様々な図面の縮尺、アスペクト比、及び図面に示された構成要素の数が、ある特徴又は関係を見やすくするために意図的に歪まされていることがある。
【0009】
図1Aは、リチウムイオンセル電極10を断面で模式的に示す。電極は、基材12と、その基材上に支持された電解活性コーティング14とを含む。一般に、電極10はセルの正電極10P又は負電極10Nであり得る。正電極の電解活性コーティングはリチウム金属酸化物を含み得て、いくつかのみを示すと、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウムニッケルのようなものである。正電極の基材はアルミ箔であり得る。負電極の電解活性コーティングは、リチウムがインターカレートされたグラファイトを含む任意の形態のリチウムがインターカレートされた炭素を備え得る。負電極の基材は銅又はニッケル箔であり得る。いくつかの実施形態では、一方又は両方の電解活性コーティングは水性又は非水性のスラリーが対応する基材に塗布され、それによって顕著な量の水分を電極に与える。さらに、一方又は両方の電極はバインダ又は接着剤のような他の材料を同様に含み得て、それらもまた水及び/又はその他のプロトン性化合物を含み得る。
【0010】
図1Aは基材の片方のみがコーティングされた電極を示しているが、両側がコーティングされた電極が本開示に完全に適合し、且つ以下に提示される方法に完全に適用可能である。したがって、図1Bは、両側が電解活性コーティング14及び14’でコーティングされた基材12を有する電極10’を示す。そのような実施形態では、片側のコーティングは他の側のコーティングと同じか又は少なくともいくらか異なり得る。
【0011】
図2Aに示されるように、正電極10P及び負電極10Nは、円筒状のリチウムイオンセルでの使用のために「ジェリーロール」構造16に巻かれ得る。この実施形態では、電極は積層され、短絡を防ぐためにそれらの間に配置された多孔性セパレータシート18と共に巻かれる。図2Bは、電気コンタクト20、容器22、及びシールキャップ23を有する円筒状リチウムイオンセル19の例を示す。電気コンタクトは、正及び負電極それぞれの基材12P及び12Nの延長であり得る。他の実施形態では、図3Aにおけるように、正及び負の電極10P及び10Nはそれぞれ、それらの間に多孔性セパレータシート18が配置されて積層され、「フラットパック」構造24に折り畳まれ得る。後者の構成は、図3Bに示されるようなフラットパック状リチウムイオンセル25で使用され得る。
【0012】
リチウムイオンセルを完成させるために、非水性電解質溶液、例えばイオン化した非プロトン性溶媒に溶けたリチウム塩が容器内に注入され、それからそれがシールされる。いくつかの実施形態では、非プロトン性溶媒は、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、及び炭酸ジエチルのうちの一つ又はそれ以上を含み得る。これら及びその他の実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、又は過塩素酸リチウムのような吸湿性の固体であり得る。
【0013】
図4は、一つの実施形態において、リチウムイオンセルを製造する装置26の様々なステージを示す高いレベルのブロック図である。この装置は、電極材料堆積ステージ28、マイクロ波脱水ステージ30、湿潤ステージ32、及びシール処理ステージ34を含む。堆積ステージは、リチウムイオンセルの基材12の上に電極材料をコーティングとして堆積するように構成される。マイクロ波脱水ステージは、堆積された電極材料に対しマイクロ波を周波数を変化させながら照射するように構成される。いくつかの実施形態では、マイクロ波脱水ステージは、電極材料及び基材を連続したシートとして運搬するように構成される。湿潤ステージは、照射された電極材料を非水性電解質溶液で湿潤するように構成される。シール処理ステージは、湿潤された電極材料を気密性容器内にシールするように構成される。
【0014】
上述のように、リチウムイオンセルの性能及び長寿命は、セル容器内にシールされた材料から湿気がどの程度まで排除されるかに依存し得る。したがって、図5は、一つの実施形態におけるマイクロ波脱水ステージ30の例の特徴を示す。描かれているマイクロ波脱水ステージは、可変周波数のマイクロ波加熱を使用して、電極材料の連続シートを脱水させるように構成される。
【0015】
マイクロ波脱水ステージ30は供給ローラ36を含み、そこから脱水されるべき材料が供給される。描かれた実施形態では、電極は、マイクロ波脱水ステージに連続シートとして供給される。したがって、供給ローラは、シートに適切な量の張力を維持するように構成され得る。一つの実施形態では、シートの幅は、仕上がったリチウムイオンセルにおける電極の幅と実質的に同じであり得る。いくつかの実施形態では、マイクロ波脱水ステージに供給された電極材料は、先の図面の正電極10P又は負電極10Nの構造を有し得る。それは、基材12の上に配置された電解活性コーティング14を含み得る。他の実施形態では、マイクロ波脱水ステージに供給された電極材料は、より複雑な積層構造を有し得る。例えば、それは正及び負電極層の両方、及び一つ又はそれ以上のセパレータシート18を含み得る。
【0016】
引き続き図5において、マイクロ波脱水ステージ30はまた気体導管38を含み、これは流入口40、流出口42、及び電極材料の通過を可能にするような適切な寸法の開口部44を有する。気体導管は、電極材料が照射されるときに電極材料上に気体を導くように構成されている。気体導管の少なくとも上部窓46は、ガラス又はセラミックのようなマイクロ波透過性材料から形成され得る。原理的には、任意の乾燥した非マイクロ波吸収性気体が流入口40を通して入れられて、湿気を気体導管の外に運び出すために使用され得る。例としては、窒素、アルゴン、二酸化炭素、及び脱湿空気を含む。
【0017】
気体の流れは電極乾燥処理を助け得るが、全てのアプリケーションで必要とされないことがある。したがって、気体導管38は、脱水されるべき材料がオープンスペースを通って運ばれ、湿気が対流によって雰囲気中に運び去られるオープン構造が好まれる実施形態では、省略され得る。マイクロ波脱水ステージ30はまた、巻き取りロール48も含み、これは、電極材料をステージを通して引っ張り、脱水された材料を将来の使用のために貯蔵するように構成されている。
【0018】
マイクロ波脱水ステージ30では、電極材料の脱水の主要なモードは、マイクロ波照射の吸収による加熱である。したがって、この装置はマイクロ波エミッタ50を含み、これは、気体導管38を通して且つ脱水されるべき材料の上に、その照射を向けるように構成される。
【0019】
ここで発明者は、ここで記述されている電極材料の脱水のためには、固定周波数のマイクロ波照射が不都合であり得ることを見出した。何らかの特定の理論に束縛されることなしに、固定周波数のマイクロ波照射は、照射されている空間にノード面(節面)を蓄積させ、これは、脱水されるべき材料が金属、例えば金属箔基材12を含むときに問題となる。ノード面は、導電性の物体に、主としてその上に、電流及び電荷の局在化をもたらすと考えられる。これは、不均一な加熱、アーク放電、及び電極への損傷をもたらす可能性がある。しかし、周波数をスキャンすることによって、すなわち照射周波数を時間とともに変化させることによって、これらのノード面は回避され、電極材料をより均一に加熱することが可能になる。
【0020】
したがって、マイクロ波エミッタ50は可変周波数マイクロ波エミッタであり得る。一つの実施形態では、マイクロ波エミッタから利用可能な照射の周波数は、1.0ギガヘルツ(GHz)から8.0GHzまで連続的に調整可能であり得る。他の実施形態では、照射の周波数は同じ範囲に渡って離散ステップで調整可能であり得る。これより、マイクロ波エミッタの周波数は、電極材料が脱水ステージを運ばれるにつれて増加(ramp up)又は減少(ramp down)するように構成され得る。いくつかの実施形態では、マイクロ波照射の可変周波数は、電極材料に沿ってノード面が形成されることを防ぐように選択され得る。この特徴は、特に基材が電極材料と共に照射される金属基材である場合に、望まれない効果を妨げ得る。
【0021】
一つの非限定的な実施形態では、マイクロ波エミッタの全体パワー出力は、照射される電極材料の1平方メートル当たり10キロワットであり得る。他の実施形態ではパワーはより大きいことがある。単一電極試験では、最大500ワットのパワーが使用された。しかし、ここに示された数値及び範囲は例に過ぎず、他の値及び範囲もまた企図され得る。
【0022】
上述された構成は、リチウムイオンセルを製造する様々な方法を可能にする。したがっていくつかのそのような方法が、例として、引き続いて上記の構成を参照しながらここで記述される。しかし、ここで記述される方法、及び本開示の範囲内に完全に含まれる他の方法が、他の構成によって同様に実現され得ることを理解されたい。さらに、ここに記述され且つ/又は描かれる処理ステップのいくつかは、ある実施形態では、本開示の範囲から逸脱することなく省略され得る。同様に、処理ステップの提示された順序は、所期の結果を達成するために常に求められるわけではなく、描写及び記述の容易さのために提供されている。描写された動作、機能、又は操作の一つ又はそれ以上は、使用される特定の戦略に依存して、反復して実行され得る。
【0023】
図6は、一つの実施形態におけるリチウムイオンセルの製造方法52の一例を描いている。方法52の54にて、上記で記述されたように、電解活性コーティングが箔基材の上に堆積されて、セルの正又は負の電極材料を形成する。基材は、連続シートの形態であり得る。一つの実施形態では、電解活性コーティングは、連続スプレーコーティング又は転写コーティング処理を介して塗布され得る。一つの実施形態では、電解活性コーティングは、水性又は非水性スラリーを塗布され得る。
【0024】
56にて、堆積された電極材料は、マイクロ波脱水ステージ30のようなマイクロ波脱水ステージで、マイクロ波照射で照射される。いくつかの実施形態では、電極材料は、マイクロ波脱水ステージに入る前に空気中で前もって乾燥されるか又は部分的に乾燥される。58にて、脱水された電極材料は補完的な電極材料で積層され、これもまた同じ又は類似の処理で脱水され得る。一つの実施形態では、電極材料は、上述されたように一つ又はそれ以上のセパレータ層と一緒に積層され得る。他の実施形態では、マイクロ波脱水の対象となる電極材料は、それぞれの基材の上に堆積された正負両方の電極材料を含み得て、正負の電極材料の間にセパレータ層が配置される。
【0025】
60にて、積層された材料は、リチウムイオンセルの所望の最終形状にしたがって折り畳まれるか又は巻かれる。62にて、セルの外部コンタクトを介して電極基材材料との電気接続が取られ、積層された構造は容器内に挿入される。64にて、非水性電解質溶液が容器に追加されて、照射された電極材料を湿潤する。66にて、容器がシールされ、気密させる。
【0026】
図7は、リチウムイオンセルを製造するための装置のマイクロ波脱水ステージにて電極材料を照射する方法56Aの例を描いている。方法56Aは、先の方法のブロック56のより具体的な実施形態であり得る。しかし、方法56Aはまた、独立して使用され得る。
【0027】
方法56Aの68にて、電極材料が気体導管に運ばれる。一つの実施形態では、電極材料は、供給ローラから巻き取りローラまで気体導管の開口部を通って運ばれ得る。70にて、窒素、アルゴン、二酸化炭素、又は脱湿空気のような乾燥した気体が、流入口から流出口まで気体導管を通って流される。他の実施形態では、上記で述べられたように、強制気体流が省略される。72で、マイクロ波エミッタの周波数が初期周波数に設定され、これはいくつかの例では1.0GHzであり得る。74にて、マイクロ波エミッタの周波数が、最終周波数まで線形的に増加される。一つの非限定的な例では、最終周波数は8.0GHzであり得て、増加は10分間に渡って生じ得る。一つの実施形態では、増加の時間期間は、電極材料の所与の部分が一端から他端まで気体導管又はマイクロ波照射場を通過するために掛かる時間に一致し得る。他の実施形態では、周波数は、電極材料の一部が一端から他端まで通過するために掛かる時間において、初期周波数から最終周波数まで増加され且つそれから初期周波数まで戻され得る。
【0028】
リチウムイオンセルで使用されるための電極材料の連続した、例えばロール・トゥ・ロールの処理の数多くの利点にも関わらず、本開示はまた、バッチタイプの処理にもまたふさわしい。一つの例では、個別のスタンプされた電極が、気体流の下で可変周波数マイクロ波にて照射されて、脱水を実行し得る。さらに、マイクロ波照射によって除去されるべき主要な成分として水分が特定されてきているが、この技法はまた、他の揮発性成分、例えばセル製造で使用されるバインダ及び/又は接着剤を介して導入され得る水分以外のプロトン性化合物の残留物もベークする。
【0029】
最後に、上述された物品、システム、及び方法は本開示の実施形態であり、様々な数値的な変動及び拡張が同様に企図され得る非限定的な例であることを理解されたい。したがって、本開示は、ここで開示された物品、システム、及び方法の全ての新規で且つ非自明な組み合わせ、並びにそれらの任意の及び全ての等価物を含む。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7