(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266602
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】液圧コンポーネント、特に液圧ブレーキシステムの液圧コンポーネント
(51)【国際特許分類】
B60T 8/34 20060101AFI20180115BHJP
B60T 17/04 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
B60T8/34
B60T17/04 Z
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-514388(P2015-514388)
(86)(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公表番号】特表2015-523261(P2015-523261A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】EP2013057093
(87)【国際公開番号】WO2013182334
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】102012209400.8
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】シュタール,ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ブレンドルファー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンラウアー,ミヒャエル
【審査官】
谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−237557(JP,A)
【文献】
実開昭58−030096(JP,U)
【文献】
特開平06−024306(JP,A)
【文献】
実開平02−004095(JP,U)
【文献】
実開昭49−041621(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0134112(US,A1)
【文献】
特開2008−056204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/34
B60T 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延伸する袋孔を有し、端部にブレーキ液が流出する流出管路(23)が設けられる管路セクション(24)と、
前記管路セクション(24)と通流し、バルブが配置される少なくとも1つの管路(20、22)と、
前記管路セクション(24)の中に不動に配置され、ブレーキ液が流れ着く少なくとも1つの反射面(34、36)を有する円板(30,32)と、
を有する液圧コンポーネント(10)において、
前記円板(30,32)は、前記円板(30,32)の反射面(34、36)が前記管路セクション(24)の前記長手方向に対して横向きに、かつ、前記円板(30,32)の円周が、前記袋孔の内周に接触しないように前記管路セクション(24)の中に固定される、
液圧コンポーネント。
【請求項2】
前記少なくとも1つの反射面(34、36)は、少なくとも1つの第1の反射面(34)と、前記少なくとも1つの第1の反射面(34)に平行に延びる少なくとも1つの第2の反射面(36)を含む、請求項1に記載の液圧コンポーネント。
【請求項3】
前記少なくとも1つの反射面(34、36)が前記管路セクション(24)の前記長手方向において中心に配置されている、請求項1又は2に記載の液圧コンポーネント。
【請求項4】
前記少なくとも1つの反射面(34、36)が、前記管路セクション(24)の中に配置された、前記管路セクション(24)とは別部材のインサート(26)において形作られている、請求項1から3のいずれか1項に記載の液圧コンポーネント。
【請求項5】
前記インサート(26)が中心にロッド(28)を付けた形をなし、これに沿って前記少なくとも1つの反射面(34、36)が、前記管路セクション(24)の前記長手方向に対して横向きに配置されている、請求項4に記載の液圧コンポーネント。
【請求項6】
前記インサート(26)が、前記管路セクション(24)の中に位置不動で嵌め込まれた前記円板(30、32、56、58)を付けた形をなし、これに沿って前記少なくとも1つの反射面(34、36)が、前記管路セクション(24)の前記長手方向に対して横向きに配置されている、請求項4又は5に記載の液圧コンポーネント。
【請求項7】
前記円板(56、58)が少なくとも1つの貫通口(60)を前記円板(56、58)の中心に備えている、請求項6に記載の液圧コンポーネント。
【請求項8】
前記管路セクション(24)の中に2つの前記円板(30、32、56、58)が互いに所定の間隔をあけて位置不動で嵌め込まれている、請求項6又は7に記載の液圧コンポーネント。
【請求項9】
前記少なくとも1つの管路(20、22)は、第1の管路(20)と前記第1の管路とは別の第2の管路(22)を含み、前記少なくとも1つの第1の反射面は前記第1の管路に面する側に配置され、前記少なくとも1つの第2の反射面は前記第2の管路に面する側に配置される、請求項2に記載の液圧コンポーネント。
【請求項10】
前記液圧コンポーネント(10)は、液圧ブレーキシステムの液圧コンポーネントであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の液圧コンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液が通流する管路セクションを持つ液圧コンポーネント、特に液圧ブレーキシステムの液圧コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、例えば乗用車、トラック等では、ブレーキシステムで制御されるブレーキ圧を準備するために液圧ユニットを使用する。特に、この種の液圧ユニットを使って、アンチロックブレーキシステム(ABS)、アンチスリップレギュレーション(ASR)及び/又は横滑り防止機構(ESP)の機能を実現させる。ブレーキ圧配分のために、液圧ユニットは、複数のポンプピストンないしはポンプエレメントと複数のバルブを備えた少なくとも1つのポンプを具備する。バルブは通例、電磁制御式で、これにより、個々のブレーキ回路において極短時間で様々なブレーキ圧を準備することができる。この種の液圧ブレーキシステムでは、圧力脈動及びこれと共に生じるノイズを回避するためにダンパを使用する。圧力脈動は、液圧ユニット自体において、また、残りのブレーキシステムにおいて、ポンプエレメントを使ってのブレーキ液の圧縮により発生する。更にダンパを使って回避しようとするのは、特に、バルブ切り換え時の突然の圧力上昇による圧力波により発生するノイズである。
【0003】
液圧ブレーキシステムにおける圧力脈動減衰のためのダンパは、例えば特許文献1から知られている。特許文献2から知られているブレーキシステムの液圧ユニットのピストンポンプでは、ピストンポンプの断続的な吐き出しによる圧力ピークを崩すためにそのシリンダ穴が押しのけ室の側でダイアフラムにより密閉されている。ダイアフラムは、通流するブレーキ液により弾性変形させることのできる板製の深絞り部品である。弾性変形可能であることが、付属の流出室での圧力変化を減衰させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第10305310B4号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19732771A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、特にコスト的に好ましい仕方で圧力脈動と圧力ピークを大幅に減衰できるようにする液圧コンポーネント、特にブレーキシステムの液圧ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明通り、ブレーキ液が通流する管路セクションを持ち、その中に、ブレーキ液が流れ着く少なくとも1つの第1の反射面が配置された液圧コンポーネント、特に液圧ブレーキシステムの液圧コンポーネントが作られている。発明通りの解決をもってすれば、振動、圧力波及びそこから生じ得る誤動作又はノイズが、目標通りに付属の液圧コンポーネントの管路セクションに嵌め込まれる少なくとも1つの反射面によって低減されるか又は無くされる。反射面は圧力波を反射し、その破壊的干渉により、その都度反射された圧力波と圧力脈動が相殺されることになる。特に、2つの互いに向き合う反射面の間の構造空間が、いわゆるλ/4型ダンパを作る。構造空間の長さは、ここで、減衰すべき圧力波の波長の1/4である。このダンパを使って、圧力波の一部の相位置を180°回転させる。つまり、発明通り少なくとも1つの反射面を使って、圧力波による妨害に対抗する干渉を作るのである。
【発明の効果】
【0007】
発明通りの解決の有利な一進化形態では、少なくとも、第1の反射面に平行に延びる少なくとも1つの第2の反射面が設けられている。互いに平行な両反射面は、互いに向き合う2つの側壁に沿って干渉が生じる反射空間を作り出す。その上、第1の反射面から所与の間隔をあけて更なる反射面を設けることができ、これにより、流れ着く圧力波はそれぞれ異なる時点で反射され、従って、それぞれ異なる周波数範囲の干渉が生じることになる。こうして、目標通り、ブレーキシステムにおいて過度の共振増幅につながりそうな周波数範囲を制御することができる。
【0008】
発明通り使用される管路セクションは、好ましくは縦方向延伸部を有し、少なくとも1つの第1の反射面が管路セクションの縦方向延伸部に対して横向きに整列している。この反射面は、従って、管路セクションを通流する液体の主流れ方向に対して横向きに位置し、これで、この液体にとって強力な衝撃反射を呈する。
【0009】
更に有利には、管路セクションは横方向延伸部を有し、少なくとも1つの第1の反射面は管路セクションの横方向延伸部の一部領域にだけ及んでいる。このような反射面であるから、このほかに、管路セクションをブレーキ液が通流できる横断面積が十分残っている。自由横断面積は、好ましくは、目指す反射に鑑みて、通流する液体の所望の流れ抵抗に比例して決められる。
【0010】
特に好ましくは、少なくとも1つの第1の反射面が、管路セクションの横方向で見てその中心に配置されている。このような反射面は、これで作られる干渉を管路セクション内でほぼ対称形の分布させることにつながる。更に、このようにして得られるダンパの幾何形状は、例えばシミュレーションを使っても感じ取れるように限定されている。
【0011】
少なくとも1つの第1の反射面は、また好ましくは少なくとも1つの第2の反射面も、好ましくは管路セクションの中に配置されたインサートにおいて形作られている。そのようなインサートは、液圧コンポーネントと別個に、目指す干渉と同調させて高い仕上げ精度で製作することができる。更に、インサートは、周辺条件、特に残りのブレーキシステムの脈動挙動に極めて良好に適合させることができる。このインサートは、好ましくは、管路セクションを正面側で密閉する蓋に配置されており、又は、この蓋と一体の形ないしはワンピースの形に作られている。従って、管路セクションに蓋を嵌め込み、固定する時にインサートを単純な仕方でその管路セクションの中に特に位置不動かつ持続安定的に配置することが可能である。
【0012】
インサートは、有利には、中心にロッドを付けた形をなし、これに沿って少なくとも1つの第1の反射面が、また好ましくは少なくとも1つの第2の反射面も、管路セクションの縦方向延伸部に対して横向きに配置されている。このロッドは、有利には管路セクションの中心に位置し、複数の反射面を特に互いに平行に所与の間隔をあけて連続的に配置できるようにする支えを形作る。
【0013】
更に好ましくは、インサートは、管路セクションの中に位置不動で嵌め込まれた円板を付けた形をなし、これに沿って少なくとも1つの第1の反射面が、管路セクションの縦方向延伸部に対して横向きに配置されている。この円板も、管路セクションを通流する液体の流れ方向に対して横向きの限定的な反射面を作り、そこで、コスト的に好ましい単純な仕方で管路セクションの中に設けることができる。
【0014】
円板は、特に好ましくは、少なくとも1つの貫通口を特に円板の中心に備えている。円板は、ここで好ましくは、外側のホルダで管路セクションの中に固定され、管路セクションの中のインサートとして固定され、又は、管路セクションの中にその形状通りに作られている。貫通口は、ブレーキ液の通流のために望まれる面積の横断面を解放する。横断面に関して点対称の形の干渉を管路セクションの中に作るためには、貫通口を管路セクションの中心に設けることが有利である。
【0015】
特に好ましくは、管路セクションの中に2つの円板が互いに所定の間隔をあけて位置不動で嵌め込まれている。このような円板をもってすれば、すでに上に挙げた利点、すなわち、管路セクションの中に複数の反射面を互いに平行に相前後して配置することの利点が、特にコスト的に好ましい材料節約の仕方で得られる。
【0016】
以下、発明通りの解決の一実施例を添付図面に則して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるブレーキシステムの液圧ユニットの形の液圧コンポーネントの側面図である。
【
図2】液圧ユニット内に配置された、反射面を持つインサートの第1の実施例の、
図1の断面A−Aにおける断面図である。
【
図7】液圧ユニット内に配置されたインサートの第5の実施例の、
図2の断面A−Aにおける断面図である。
【
図8】反射面を持つ発明通りのインサートの働き方を見せる、
図2の断面A−Aにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、アルミニウムから作られた液圧ブロック12を包含する液圧ユニットの形の液圧コンポーネント10が描かれている。液圧ブロック12に8個のボア穴が形作られており、そのうちの1つの袋穴14が、図示されていないポンプエレメントを受容するのに役立つ。更なる1つの袋穴が、これに対して横向きに走る3つの袋穴の形の管路18、20及び22をつなぐ連絡管路16として役立つ。3つの管路18、20及び22は更に、連絡管路16に対して平行に延び、管路セクション24をなす更なる1つの袋穴に通じている。
【0019】
取り付けが完了した液圧コンポーネント10では、管路18、20及び22の中にそれぞれ1つの図示されていないバルブが配置されている。管路18、20及び22は、ブレーキ液を特に付属のブレーキシステムの図示されていないブレーキに向けて通流できるようにする液圧コンポーネント10のためのフローラインを形成する。加えて、袋穴の形をなした管路セクション24の底に流出管路23が設けられている。
【0020】
管路セクション24の中に、中央ロッド28をもって管路セクション24の縦方向に延びるインサート26が配置されている。ロッド28には、管路18、20及び22から所定の間隔をあけて縦方向に対して横向きに2つの円板30及び32が配置されている。円板30及び32はそれぞれ円形をなし、管路セクション24の横方向の広がり全体を完全にではないが、ほぼ全体にまたがるだけの直径を有する。これらは、ロッド28により管路セクション24の中心に位置不動で保持される。
【0021】
円板30及び32は各々、その管路20及び22に面した側にそれぞれ第1の反射面34、第2の反射面36を備えており、これらが、円板の正面側でロッド28を中心として環状に広がる。円板30及び32はそこで管路セクション24を、それぞれ自らの端で反射面34、反射面36と境界を接するチャンバに細分する。
図8から分かる通り、この種の反射面34及び36においてそれぞれ、流れ着く圧力波38の衝突により反射波40が発生する。この2つの波、圧力波38と反射波40は、その破壊的干渉の結果、反射面34に流れてくるブレーキ液の波の振幅を減じることになる。従って、反射面34の後方を流れるブレーキ液は、すでに圧力波42が弱められてしまっており、結果として、ノイズは減じられ、後位のブレーキシステムの負荷は減じられることになる。特に、反射面34での反射が、付属の圧力波の波長の1/4の間隔で生じる結果、この圧力波はほとんど消失することになる。これは、この圧力波の周波数の整数倍の波長を持つ圧力波にも当てはまる。
【0022】
袋穴として形作られた管路セクション24は、液圧ブロック12に嵌め込まれ、その中にコーキングにより位置不動かつ液密で固定されたプラグ形の蓋44で外側が密閉されている。ロッド28は、
図2、3及び4の実施例では、蓋44とワンピースの形に作られている。
図5の実施例では、ロッド28は、その正面側に形作られたねじ付きセクション46を使って蓋44とねじ留めされている。
【0023】
図6の実施例では、ロッド28は、その蓋44に面した前端に、横方向に延びる支え面48を付けており、ここで、ロッドは嵌め込まれた状態で蓋44に接触し、これで支えることができる。
【0024】
管路セクション24は、段付きの形に作られており、その段付き部の軸方向を向いた接触面50が、
図3〜6に示されたインサート26の中央ロッド28の第2の正面側横向きの支え面52に当たっている。ここで、第2の正面側支え面52に、半径方向外側の、直径方向で向き合う2つの凹部54が設けられており、この中をブレーキ液は軸方向に通流できる。
【0025】
図7では、インサート26が2つの円板56及び58から作られた管路セクション24を持つ液圧ブロック12の一実施例が図解されている。両方の円板56及び58は、管路セクション24の中に横向きに、互いに相対して、かつ、軸方向配置の管路18、20及び22に相対して所定の間隔をあけて圧し込められている。これらは、そこに生じる押圧力が自らの外縁に加えられることにより位置不動で管路セクション24の中に配置されている。両円板56及び58の各々の中心に貫通口60が設けられており、これを通ってブレーキ液は円板56及び58を通流することができる。これで、円板56及び58にそれぞれ環状の反射面34、36が作られる。
【符号の説明】
【0026】
10 液圧コンポーネント
12 液圧ブロック
14 袋穴
16 連絡管路
18 管路
20 管路
22 管路
23 流出管路
24 管路セクション
26 インサート
28 ロッド
30 円板
32 円板
34 第1の反射面
36 第2の反射面
38 圧力波
40 反射波
42 圧力波
44 蓋
56 円板
58 円板
60 貫通口