【氏名又は名称】エミューゲ ヴェルク リチャード グリンペル ゲーエムベーハー ウント カンパニー ケージー ファブリック ファープレーツィシオンスヴェルクツォイゲ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
関連する溝内への挿入時に、ねじ山作成領域がねじ軸に対して径方向に関連する溝内へと突出し、溝基部(22B、24B)からの径方向間隔(Δr)を維持し、好ましくは溝フランクからの間隔も維持することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
ねじ山が作成されるワークピースの壁が、ワークピース内のコア穴、特に止まり穴または貫通穴のコア穴壁であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
m個のねじ山作成領域のうち少なくとも一つまたはそれぞれが、断面に、その正面に配置された溝作成領域よりも小さな、ねじれに追従する突起を有することを特徴とする請求項9に記載のねじ山作成工具。
m個のねじ山作成領域のうち少なくとも一つまたはそれぞれが、断面に、その正面に配置された溝作成領域と少なくとも一部が同一の、ねじれに追従する突起を有するか、または、溝作成領域よりも大きな、ねじれに追従する突起を有することを特徴とする請求項9に記載のねじ山作成工具。
作成されるねじ山のターン方向と、前記ねじ切り歯(32A、34A)がその上に配置される工具軸(A)の周りの螺旋の線のターン方向で切削を行うように、前記ねじ切り歯(32A、34A)が配置され形成されるか、または、
作成されるねじ山のターン方向と、前記ねじ切り歯(32A、34A)がその上に配置される工具軸(A)の周りの螺旋の線のターン方向とは逆向きに切削を行うように、前記ねじ切り歯(32A、34A)が配置され形成される
ことを特徴とする請求項9ないし16のいずれかに記載のねじ山作成工具。
【背景技術】
【0002】
ねじ山の作成または再構成のために、切削過程と非切削過程の両方、およびねじ切り工具が知られている。切削によるねじ山の作成は、ねじ山フライトの領域でワークピースから材料を除去することに基づいている。非切削によるねじ山の作成は、ワークピースの変形に基づいており、圧力によってワークピースにねじ山フライト(thread flight)を作成する。使用中のねじ山作成工具および加工方法の概要は、Handbuch der Gewindetechnik und Frastechnik [Manual of threading practice and milling practice], 発行元:EMUGE-FRANKEN, 出版社:Publicis Corporate Publishing, 発行年:2004 (ISBN 3-89578-232-7)に記載されている。以下では、単に「EMUGEマニュアル」と呼ぶ。
【0003】
切削によるねじ山作成の範囲には、タップ(EMUGEマニュアル、chapter 8, pages 181 to 298を参照)、ねじ切りフライス(EMUGEマニュアル、chapter 10, pages 325 to 372を参照)、および、雄ねじのみであるが、ねじ切りダイス(EMUGEマニュアル、chapter 11, pages 373 to 404を参照)が含まれる。
【0004】
タップは、作成されるねじ山のねじピッチの下方で雄ねじに沿って切刃またはねじ切り歯が配置されているねじ切り工具である。ねじ山の作成中、タップは、工具軸に対して軸方向に送り運動される一方、ワークピースの円筒形コアホール内で工具軸の周りに回転運動される。回転速度は、ねじピッチに応じた軸方向送り速度によって決まる。タップの工具軸がコアホールの中心軸と同軸にされ、タップの切刃がコアホール壁でワークピースと恒久的に係合して(連続切削)、コアホール壁に連続的なねじ山フライトを作成する。
【0005】
非切削によるねじ山作成工具の範囲には、いわゆる盛り上げタップ(cold-forming tap)(EMUGEマニュアル、chapter 9, pages 299 to 324を参照)と、雄ねじのみであるが、ねじ転造工具(EMUGEマニュアル、chapter 11, pages 373 to 404を参照)が含まれる。
【0006】
盛り上げタップは、略螺旋形に包囲するねじ山プロファイルを持つねじ山作成工具である。ねじ山プロファイルに沿って、丸みを帯びた多角形コーナー領域によって形成される複数の加圧ローブ(pressing lobe)(成形歯(shaping teeth)、冷間成形歯(cold-forming teeth)、成形ウェッジ(shaping wedge)とも呼ばれる)が配置される。これらは互いにオフセットされ、外方に突出しており、盛り上げタップの略多角形断面を形成する。ねじ山の作成中、盛り上げタップは、タップと同様に工具軸に対して軸方向に送り運動される一方、ワークピースの円筒形コアホール内で工具軸の周りに回転運動される。盛り上げタップの工具軸は、コアホールの中心軸と同軸にされる。回転速度と軸方向送り速度が、ねじピッチにしたがって互いに調整される。盛り上げタップの加圧ローブは、コアホール壁でワークピースと恒久的に係合し、塑性変形によりコアホール壁にねじ山フライトを押し込み、コアホール壁に連続的なねじ山フライトを作成する。
【0007】
さらに、もっぱら切削プロセスによって動作し、ドリルおよびねじ切りフライスで構成される複合工具が知られている。具体的には、いわゆるドリルねじ切りフライス(EMUGEマニュアル、chapter 10, page 354を参照)と、いわゆる円形ドリルねじ切りフライス(EMUGEマニュアル、chapter 10, page 355を参照)である。これらを用いて、最初にコアホールを作成し、続いてコアホール内にねじ山を作成することができる。
【0008】
ねじ山作成工具の工具シャンクは通常、長手軸周りに少なくとも略円形の形態をとるか、および/または、工作機械のチャックにワークピースとは反対側の端部が受け入れられチャックで保持される。ねじ山作成中のタップおよび盛り上げタップの回転方向は、作成されるねじ山のターンの方向に対応する。作成された雌ねじにねじ込まれる既知のねじおよびねじ山は、雌ねじと相補的である連続的な螺旋状の雄ねじを備えている。
【0009】
DE 1 176 450は、金属シートまたは同様のワークピースに雌ねじを作成する方法を開示する。この方法は、
1.それ自体が丸く一様に分布した複数の切り欠きを有する穴を開けるステップ、
2.切り欠きの数に対応する数の刃先を持つタップを挿入するステップ、
3.二つの切り欠きの間の角度に対応する角度だけタップを回転するステップ、
4.タップを引き抜くステップ
を含む。DE 1 176 450のような既知の方法では、タップ、非切削タップまたは同様の工具が部分回転のみによってねじ山を作成する。複合工具を使用すると、DE 1 176 450によると、その部分に穴を開けるときにこれらの雌ねじを形成することが可能であり、異なる直径およびピッチを持つものでさえ同時に複数の雌ねじを作成することができる。穴開け工具または単一の装置を使用して別々の動作による作成を手動で実行することができる。
【0010】
US 3,359,581は、ねじ山を作成する方法を開示する。ワークピースが一つまたは二つの軸方向溝を有しており、ねじ山作成領域は、ワークピースの溝の中に同軸に挿入される軸方向のねじ山作成領域を有している。そして、ねじ山作成工具のねじ山作成領域を用いて、一つの溝の場合には一回転、二つの溝の場合には半回転で、ワークピース内の溝の間にねじ山が作成される。ワークピースは、二つの直径方向に突出する溝を持つコア穴を有してもよいし、または二つの直径方向の溝を持つ円柱形のボルトであってもよい。第1のケースでは、ねじ山作成工具は、互いに直径方向反対側に軸方向に延びる二つのねじ山切削リッジを有するタップまたはねじ山切削工具であり、第2のケースでは、軸方向反対向きの、内向きに突出するねじ山作成リッジを有するねじ山切削ダイに類似のねじ山切削工具である。
【0011】
EP 2 218 536 A1は、主本体に雌ねじを形成する方法を開示する。最初に、特定の領域にねじ山形成手段を持つ少なくとも一つの部分を有するねじ切り工具が主本体の開口部内に挿入され、続いてねじ切り工具のほぼ360°の回転によって主本体に完全な雌ねじが形成される。ねじ切り工具は、整数の回転対称で配置されたねじ山形成手段を持つ複数の部分を有し、ねじ切り工具は、ねじ切り工具のねじ山形成手段を持つ複数の部分によって分割された、完全な円の割合の値に対応する回転角度だけ回転される。ねじ切り工具が挿入される前、整数の回転対称で主本体の内壁に配置された凹部が設けられる。上記凹部の数は、ねじ切り工具上のねじ山形成手段を持つ複数の部分に対応し、上記凹部の設計は、ねじ切り工具上のねじ山形成手段を持つ部分の設計に調和している。特に、ねじ切り工具上に、四つの凹部と四つの対応するねじ山リッジが設けられる。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、ねじ山を作成する新規な方法および新規な工具を規定することである。
【0013】
上記の目的は、請求項1の特徴による方法、および請求項10の特徴による工具の点で達成される。本発明に係る方法および工具の有利な実施形態および改良形態は、請求項1および請求項10にそれぞれ従属する請求項から明らかになる。
【0014】
ワークピースにねじ山を作成する請求項1に記載の方法は、以下の方法ステップを含む。
a)ねじ軸(M)を囲むワークピース(2)の壁(21)にn≧1個ねじれた溝(22、24)を作成するステップ、またはn≧1個のねじれた溝を有しねじ軸を囲むワークピースの壁を作成するステップ。
b)関連する溝のねじれに一致するねじれ挿入運動でねじれた溝(22、24)のそれぞれの中に、ねじれた溝のねじれと一致するようにねじれている工具(3)のねじれ作成領域(32、34)を挿入するステップ。
c)ねじ軸(M)の周りに工具(3)を回転させ、これと同時に回転運動の回転速度およびねじピッチに適した軸方向送り速度で、ねじ軸と同軸に工具を軸方向に送ることによって、ワークピースの壁の、溝(22、24)に隣接する各壁サブ領域(23、25)内にねじ山(36)を作成するステップであって、回転および同時の軸方向送り運動中に、各ねじ山作成領域が関連する壁サブ領域と係合し、ねじ山フライトの関連する部分を作成し、回転後に各ねじ山作成領域が同一の溝内にまたは壁の別の溝内に突出する、ステップ。
d)関連するねじれた溝のねじれに一致するねじれ除去運動で、関連する溝(22、24)から工具の各ねじ山作成領域(32、34)を移動させるステップ。
【0015】
ワークピースにねじ山を作成する請求項10に記載の工具は、以下の特徴を備える。
a)工具は工具軸(A)の周りに回転する。
b)工具は、ワークピース(2)にそれぞれ溝(22、24)を作成するための、工具軸(A)周りにねじれたn≧1個の溝作成領域(42、44)と、ワークピースにねじ山(36)を作成するための、工具軸(A)周りにねじれたm≧1個の好ましくは螺旋状のねじ山作成領域(32、34)と、を有する。
c)溝作成領域(42、44)のねじれとねじ山作成領域(32、34)のねじれとが互いに一致する。
d)m個のねじ山作成領域がそれぞれ、n個の溝作成領域のうちの一つの下流に配置され、この溝作成領域のねじれに追従する。
【0016】
従来のタッピングおよびねじ山冷間形成と比較して、本発明に係るこの方法および工具は、ねじ山の作成に要する時間をかなり削減することができる。さらに、溝を通るねじれた挿入運動のために、外側からワークピースの壁上の加工位置へと非常に迅速に工具を案内することができる。かなり小さな回転角で、またはかなり少ない回転で、ねじ山を作成することができる。最後に、ねじ山の作成後、溝を通る取り出し移動のために、ワークピースの壁から外側へと非常に迅速にねじ切り工具を案内することができる。従来技術によるタッピングまたはねじ山の冷間形成の場合、タップまたは冷間形成タップの複数回の回転が必要である。具体的には、最初は工具が中に入るプロセス中に回転が必要であり、その後、工具が戻るプロセス中に再び回転が必要である。本発明に係る方法および工具の場合、ねじれた送り運動および除去運動の組み合わせで、溝の数および配置に対応して一回転、または一回転の一部のみでさえ十分である。ここで、溝の作成に要する追加時間は、ねじ山作成中の時間節約よりもかなり短い。さらに、本発明によると、その軸方向位置およびねじ山の開始に関して、ねじ山を正確に形成することができる。溝は、ねじ山の明確な位置を構成する。
【0017】
本発明に係る組み合わせ工具は、本発明に係る方法で使用することを目的としている。一つの加工ステップで、または一つの工具のみを使用して、溝およびねじ山を作成することが可能となり、プロセス時間がさらに削減される。
【0018】
しかしながら、連続する加工ステップで別個の工具を使用して溝およびねじ山を作成してもよい。
【0019】
DE 1 176 450、US 3,359,581、EP 2 218 536 A1の引用先行技術文献から既知である直線の溝と比較して、ねじれた溝を作成すると、溝を作成するのに必要な軸方向の力が減少するという利点がある。ねじれのおかげで、軸方向の力にトルクが重畳され、工具を駆動する工具スピンドルの軸方向負荷へのダンピング効果を生む。切削による溝の作成時には、発生するチップをねじれた溝の中へとより効果的に搬出することができる。
【0020】
溝の溝ねじれピッチは、ねじピッチよりもかなり大きいことが好ましく、通常は少なくとも4倍、特に少なくとも6倍、好ましくは少なくとも18倍、さらに好ましくは少なくとも36倍大きくなるように選択される。
【0021】
代替的にまたは追加して、溝ねじれ角は、ねじピッチ角よりもかなり大きく、特に2倍より大きく、好ましくは4倍よりも大きくなるように選択される。これらの角度は、それぞれねじ軸および工具軸に対して測定される。ねじピッチ角は、軸に対する法平面に対して考慮されるのが通常であるが、比較可能性のために、本出願では、溝ねじれ角とねじピッチ角は同一の規準軸に対して規定される。これによって、従来のタッピングおよびねじ山冷間形成と比較してプロセス時間をかなり削減することが可能となり、同時に溝作成中の軸方向力も削減される。
【0022】
溝ねじれ角は好ましくは絶対的に2°〜70°、特に5°〜45°、好ましくは7°〜25°の範囲にある。
【0023】
ねじピッチ角は、通常80°〜89.5°、好ましくは85°〜89°の間にある。ねじ軸周りの溝およびねじ山のねじれ方向または回転方向は、同一であってもよい。すなわち、両方とも右回りまたは左回りであってもよい。または、ねじれ方向または回転方向が逆向き、すなわち一方が右回りでもう一方が左回りであってもよい。
【0024】
ワークピースに向かう方向の組み合わせ工具の送り運動、すなわち前進運動を用いてねじ山が作成される場合、ねじ山と溝の回転方向が同一であると有利である。ワークピースから離れる方向の工具の送り運動、すなわち後進運動を用いてねじ山が作成される場合、ねじ山と溝の回転方向が反対であると有利である。なぜなら、両方の場合とも、溝の作成中およびねじ山の作成中に、工具を同一の回転方向で回転できるからである。
【0025】
本方法の特に有利な実施形態では、ねじ山の作成中に、工具が所定の回転角だけ回転する。この回転角は、以下の条件のうちの一つまたはその組み合わせにしたがって選択または設定される。
a)二つの溝の間、好ましくは二つの直接隣接する溝の間の角度間隔と、作成されるねじ山のねじピッチと、溝のねじれピッチと作成されるねじ山のねじピッチとの差分と、の商に比例する補正項と、の合計に一致する。ねじピッチとねじれピッチは、右ねじまたは右向きのねじれの場合には正、左ねじまたは左向きのねじれの場合には負になるように好ましくは選択される。
b)ねじ山作成領域が回転前に突出している溝に直接隣接する溝の中に、回転後に各ねじ山作成領域が突出するような値。
c)互いに対して360°/nの同一の角度間隔でn個の溝が等間隔に配置または作成される場合、360°/nと、作成されるねじ山のねじピッチPと溝のねじれピッチおよび作成されるねじ山のねじピッチの差分との商と、の積に一致する比例項と、合計の整数倍で求められる。ねじピッチとねじれピッチは、右ねじまたは右向きのねじれの場合には正、左ねじまたは左向きのねじれの場合には負になるように好ましくは選択される。
【0026】
回転角補正項は、直線軸方向溝に比較して、ねじれた溝の場合、ねじ山を作成する回転のより長い(またはより短い)経路を補正する。
【0027】
好適かつ適切な実施形態では、ねじ山作成中に、好ましくは円筒面または円錐上で、各ねじれた溝または各ねじ山作成領域は、ねじ軸周りを実質的に螺旋状に延びる。
【0028】
さらに、各溝および各ねじ山作成領域は、ねじ軸または工具軸を回転する方向に対して、およびねじれピッチまたはねじれ角に対して、同一のねじれを有することが好ましい。
【0029】
対応する切削溝作成工具または被切削溝作成工具、または組み合わせ工具の溝作成領域を使用して、切削過程または被切削過程によって、溝を作成することができる。
【0030】
好適な変形形態では、溝作成工具または組み合わせ工具のn個の溝作成領域のうち少なくとも一部が、溝作成切刃を有する切削溝作成領域として形成される。溝作成切刃は特にリーマ(reaming)切刃として形成され、および/または工具の正面に配置される。
【0031】
切削溝作成領域および/または溝作成切刃のうち少なくとも一部は、軸方向またはねじり方向および/または円周方向に、具体的にはチップ分割ステップまたはエッジとして設けられる少なくとも一つのステップまたはエッジを有していてもよい。
【0032】
好適な変形形態では、溝作成領域が、正面を向いた方向にまたは正面に位置する溝切刃または正面切刃を有している。溝切刃は通常、少なくとも工具の前部において、工具の径方向に最も外側に突出する部分である。
【0033】
一実施形態では、溝切刃が少なくとも略円形であるか、および/または、溝切刃(42A)の外形が、概して第1ねじ山作成サブ領域またはねじ山作成領域の半径よりも大きい。
【0034】
一実施形態では、工具軸周りの回転方向で前方にある側面切刃が、円周方向横側で溝切刃に隣接している。好ましくは、工具軸周りの回転方向で後方にある側面領域も、溝切刃に隣接している。ねじ山の作成で生じる回転方向への工具の回転中に、正面切刃がワークピースへ横方向に切り込む。好ましくは、径方向内側で横レーキ面が正面切刃に隣接する。一方、後方側面領域は鈍角である。すなわち、切削作用を有しておらず、凸形であることが好ましい。
【0035】
溝切刃のねじり方向または軸方向後方に、自由面が隣接している。自由面は、溝切刃の外形から、第1加圧ローブまたは第1ねじ山作成サブ領域の半径よりも小さい半径まで、下方に(具体的には直線状にまたは円錐状に)傾斜していることが好ましい。
【0036】
径方向の内側で、正面レーキ面が溝切刃に隣接している。正面レーキ面は、直線状にまたは凹状に軸方向またはねじり方向の後方に延び、溝切刃を用いた溝の作成(具体的にはリーミング)の間に生成されるチップがレーキ面上に排出される。好ましくは、正面レーキ面は、軸方向またはねじり方向の前方の最低点から、工具軸と直交する平坦な中心領域まで延びる。中心領域は、工具の中央ダクトの中央開口を包囲する。中央ダクトを経由して冷却液および/または潤滑剤を供給することができる。
【0037】
さらなる実施形態では、n個の溝作成領域のうち少なくとも一部が、非切削態様で動作するか、および/またはワークピース材料の塑性変形や圧痕(impression)により動作する溝作成領域として形成される。各溝作成領域は、工具軸周りの円周方向に実質的に延びる成形スパイン(shaping spine)(または成形リッジ、加圧リッジ)を有することが好ましい。軸方向またはねじり方向で観察すると、成形スパインは、溝作成領域の径方向で最も高い隆起であり、および/または径方向で最も外側に突出している。成形スパインの軸方向またはねじり方向前方には前面が配置されており、これがランオン表面として機能する。溝作成領域は、ランオン表面を用いて最初にワークピースの表面を押し込み、変形力をゆっくりと増加させる。前面は、成形スパインよりも径方向内側に位置するとともに工具の正面に配置される正面プロファイルを、軸方向で成形スパインに接続する。各溝作成領域は、成形スパインの軸方向またはねじり方向の後方に後面を有している。後面は、成形スパインから軸方向またはねじり方向の下方に傾斜するとともに、ワークピース材料を流す空き空間を提供する。
【0038】
成形スパインは、径方向の最も外側に突出する最大部を有することが好ましい。成形スパインは、一つのフランク(flank)では、最大部から、最大部よりも径方向内側に位置する第1終点まで下方に傾斜し、また、別のフランクでは、最大部から、最大部よりも径方向内側に位置する第2終点まで下方に傾斜する。一方の終点が他方の終点よりも径方向内側に位置し、および/または、成形スパインの一方のフランクが他方のフランクよりも短いと好ましい。
【0039】
正面プロファイルは通常、成形スパインと同形状であり、一つの最大部と、最大部から終点まで下方に傾斜する二つのフランクと、を有している。この場合、前面は、対応する点および線を接続することが好ましい。例えば、正面プロファイルと成形スパインの対応する最大部、および/または対応する終点、および/または対応するフランクを、互いに接続することが好ましい。前面は、正面プロファイルと成形スパインとの間を、実質的に直線状に、内向き凸状に、外向きの曲線状に、または任意の連続関数をたどって軸方向に延びることが好ましい。
【0040】
溝は、ワークピースの壁に後で作成されてもよいし、ワークピースの壁とともに作成されてもよい。
【0041】
好適な実施形態では、断面において、m個のねじ山作成領域のうち少なくとも一つまたはそれぞれが、ねじれに追従する突起がその正面または上流に配置される溝作成領域よりも小さい。その結果、各ねじ山作成領域は、溝の縁、特に溝の基部からの間隔またはクリアランスを持ち、正面に位置する溝作成領域によってワークピースに作成される溝に対しての摩擦を小さくして、実質的に自由に移動、特に挿入または除去が可能になる。
【0042】
関連する溝内への挿入時には特に、ねじ山作成領域は、ねじ軸に対して径方向の関連する溝内へと突出し、溝基部からの径方向間隔を維持し、好ましくは溝フランクからの間隔も維持する。
【0043】
しかしながら、特定の実施形態では、断面において、m個のねじ山作成領域のうち少なくとも一つまたはそれぞれが、ねじれに追従する突起がその正面に配置される溝作成領域と少なくとも部分的に同一であるか、または溝作成領域よりも大きくてもよい。
【0044】
これは、ねじ山作成領域(単数または複数)が、溝作成領域によって、好ましくは被切削形成によって作成される溝をさらに再加工または作成することを意図しているときに特に好都合である。
【0045】
他の全ての実施形態と組み合わせることが可能である本発明の係る別の工具は、工具軸の周りを回転し、ワークピースにねじ山を作成するための工具軸の周りにねじれたm≧1個のねじ山作成領域を有する。ねじ山作成工具が、例えば円筒形である後部と、後部に隣接して直径が小さくなる前部と、を有するシャンクを備え、シャンクを通して工具軸が延びる。後部の端部に、シャンクをクランプするためのクランプ領域が形成される。前部が、後部とは反対側を向くか正面に配置される前面に向けて、m個のねじ山作成領域を有する。m個のねじ山作成領域が、工具軸の周りにねじれるねじ山作成リッジのねじれた列の形態をしており、m=2の場合、ねじ山作成リッジは、工具軸の両側に互いに正反対の位置に配置されている。ねじ山作成リッジは、所望のねじ山のねじピッチに沿って延び、いずれも一つの加圧ローブを有しており、加圧ローブは、工具軸に対して径方向の最も外側に突出し、ワークピースにねじ山フライトを塑性的に押し付けする。二つのねじ山作成領域の異なるねじ山作成リッジまたは加圧ローブの外形が、全軸長にわたり互いに等しい。ねじ山作成領域は、介在する外面によって分離されており、外面は、ねじ山作成領域(32、34)よりも外径が小さく、ねじ山作成領域に対して径方向に凹んでおり、および/または、外面がねじ山作成領域の間に空き空間を形成している。好ましくはねじ山作成領域がいずれも第1角度範囲をカバーし、外面がいずれも第2角度範囲をカバーしており、好ましくは、第1角度範囲が第2角度範囲の1〜2.5倍の間隔であり、加圧ローブがそれぞれの角度範囲の好ましくは中心に位置する。外面は、凸状の外向きバルジを有する。
【0046】
一実施形態では、n個の溝作成領域が、工具軸の周りで互いに対して360°/nの一様な角度間隔で配置される。すなわち、n個の溝作成領域が一様に分布する。しかしながら、非一様の分布も可能である。
【0047】
本発明の一変形形態では、溝作成領域の工具軸周りの角度成分と、その背後に位置するねじ山作成領域の工具軸周りの角度成分が、7.2°から45°の間であり、特に13°から40°の間であり、好ましくは27°から36°の間である。
【0048】
ねじ山作成領域は通常、ねじ山作成工具の他の外面よりも、径方向外側に突出している。
【0049】
本発明の一変形形態では、少なくとも一つのねじ山作成領域がねじ山形成(例えば冷間形成)領域であり、形成および非切削過程によってねじ山フライトの部分を作成する。および/または、ねじ山作成工具のねじ山作成領域のうち少なくとも一部が、螺旋の線上に配置されたねじ山加圧ローブを有している。ねじ山加圧ローブは、ねじピッチおよびターン方向の観点で、作成されるねじ山に対応する。ねじ山加圧ローブは、ねじ山作成領域内で径方向に最も外側に突出するが、溝作成領域よりも径方向外側への広がりは小さい。この場合、ねじ山作成領域は、機能の観点で、盛り上げタップに由来する。
【0050】
好適な実施形態では、少なくとも一つのねじ山作成領域がねじ山切削領域であり、切削過程によってねじ山フライトの部分を作成する。ねじ山作成工具のねじ山作成領域のうち少なくとも一部が、螺旋の線上に配置されたねじ切り歯を有している。ねじ切り歯は、ねじピッチおよびターン方向の観点で、作成されるねじ山に対応する。ねじ切り歯は、ねじ山作成領域内で径方向の最も外側に突出するが、溝作成領域よりも径方向外側への広がりは小さい。ねじ切り歯は、切削方向または回転方向とは反対の方向で、好ましくは外側自由面に隣接する。ねじ切り歯は、作成されるねじ山フライトのねじ山プロファイルの断面に反映されるねじ山切刃または切削プロファイルを有している。
【0051】
一実施形態では、作成されるねじ山のターン方向と、ねじ切り歯がその上に配置される工具軸周りの螺旋の線のターン方向で切削を行うように、ねじ切り歯が配置され形成される。これは、作成されるねじ山が右ねじである場合、ねじ切り歯も右回りすなわち右向きに切削を行い、作成されるねじ山が左ねじである場合、ねじ切り歯も左回りすなわち左向きに切削を行うことを意味する。
【0052】
ワークピース内への方向、すなわちワークピースに向かう(外側から内側、または観察者から離れる)方向で観察するときに、ねじ山が時計回りに回転する場合(すなわち回転方向が時計回りであるか、右回転に相当する場合)、ねじ山は右ねじまたは右巻きであると呼ばれる。また、ねじ山が反時計回りに回転する(左回転の)場合、ねじ山は左ねじまたは左巻きであると呼ばれる。同一の用語体系が螺旋の線にも通常は当てはまる。
【0053】
このように、ねじ山を作成中の工具およびねじ山作成領域の回転方向は、ねじ山のターン方向に対応している。言い換えると、雌ねじの場合、ねじ山にねじ込まれるねじと同じ方向に工具が回転し、雄ねじの場合、ねじ山にねじ込まれるナットと同じ方向に工具が回転する。
【0054】
一実施形態では、作成されるねじ山のターン方向と、ねじ切り歯がその上に配置される工具軸周りの螺旋の線のターン方向で切削を行うように、ねじ切り歯が配置され形成される。これは、作成されるねじ山が右ねじである場合、ねじ切り歯も右回りすなわち右向きに切削を行い、作成されるねじ山が左ねじである場合、ねじ切り歯も左回りすなわち左向きに切削を行うことを意味する。このように、ねじ山を作成中の工具およびねじ山作成領域の回転方向は、ねじ山のターン方向に対応している。言い換えると、雌ねじの場合、ねじ山にねじ込まれるねじと同じ方向に工具が回転し、雄ねじの場合、ねじ山にねじ込まれるナットと同じ方向に工具が回転する。これは、既知のタップの回転方向と対応する。
【0055】
しかしながら、本発明の特別な代替実施形態では、作成されるねじ山のターン方向と、ねじ切り歯がその上に配置される工具軸周りの螺旋の線のターン方向と逆向きに切削を行うように、ねじ切り歯が配置され形成される。
【0056】
本発明に係る工具の特別な形態のおかげで、これが可能になる。なぜなら、ターンイン中にねじ山を常に切削する既知のタップとは対照的に、ワークピースの壁に係合することなく、ワークピースの壁の溝を通してねじ切り歯をワークピース内にまたはワークピース上に最初に移動することができ、ターンアウト中のみねじ山を切削することができるからである。
【0057】
したがって、作成されるねじ山が右ねじである場合、作成されるねじ山が右ねじである場合、ねじ切り歯が左回りすなわち左向きに切削を行い、作成されるねじ山が左ねじである場合、ねじ切り歯が右回りすなわち右向きに切削を行うことを意味する。したがって、ねじ山を作成中の工具およびねじ山作成領域の回転方向は、ねじ山のターンとは反対方向である。言い換えると、雌ねじの場合、ねじ山から抜かれるねじと同じ方向に工具が回転し、雄ねじの場合、ねじ山から抜かれるナットと同じ方向に工具が回転する。
【0058】
既知のねじ切り工具またはねじ山冷間成形工具に対する本発明に係る工具の利点は、ねじ山作成工具が、タップまたは盛り上げタップであれば従来から設けられているランオンコーン(run-on cone)または切削開始領域を有する必要がないことである。なお、ランオンコーンまたは切削開始領域では、ねじ切り歯または加圧ローブの最大径方向間隔が、タップまたは盛り上げタップの端部から前進する円錐面に沿って増加する。こうして、止まり穴の場合であっても、より大きな軸長に沿って軸方向に完全なねじ山フライトを作成することが可能になる。なぜなら、ランオンコーンまたは切削開始領域の長さにわたり生じる不完全なねじ山フライトが排除されるからである。さらに、ねじ山作成工具をより短く設計することができる。これは、他の利点はさておき、作業高さが小さい場合には特に好ましい効果である。
【0059】
一般に、一つのねじ切り歯または一つのねじ山冷間形成ウェッジのみの外形プロファイルが、この歯またはウェッジによって作成されるねじ山フライト部分の最終的なねじ山プロファイルを既に規定している。
【0060】
特別な改良形態では、各ねじ山作成領域が、異なるねじ山外形プロファイルを持つ少なくとも二つのオフセットされたねじ山作成サブ領域に分割される。任意の所望のねじ山外形プロファイルを、任意の所望の順序で組み合わせることができる。こうすると、異なるねじ山作成サブ領域に対応する異なるねじ山サブ領域において、ねじ山作成工具を用いて作成されたねじ山にねじ込まれるねじのクランプ力を異ならせることが可能になる。具体的には、ねじ山プロファイルが小さい方のねじ山サブ領域にねじ込まれるねじに対し、より大きなクランプ作用を設定することが可能である。
【0061】
一つの有利な実施形態では、後方ねじ山作成サブ領域の軸方向前方にすなわち正面側に位置する、好ましくは前方ねじ山作成サブ領域である第1ねじ山作成サブ領域が、好ましくは後方ねじ山作成サブ領域である第2ねじ山作成サブ領域よりも、(具体的にはプロファイル先端に、しかし適切な場合はプロファイルの側面にも)少なくとも部分的に小さい寸法または外形寸法を持つねじ山外形プロファイルを有している。
【0062】
後方ねじ山作成サブ領域によって作成された後方ねじ山サブ領域内に、低いクランプ作用すなわちより緩い力で最初にねじがねじ込まれ、続いて、前方ねじ山作成サブ領域によって作成された前方ねじ山サブ領域に、より大きなクランプ作用すなわちよりしっかりと強い力でねじがねじ込まれることが可能になると好ましい。
【0063】
一つの特別な改良形態では、第1ねじ山作成サブ領域(具体的には前方ねじ山作成サブ領域)がそれぞれ、ねじ山外形プロファイルにおいて、プロファイルの先端に平坦部を有しており、および/または、第2ねじ山作成サブ領域(具体的には後方ねじ山作成サブ領域)がそれぞれ、第1ねじ山作成サブ領域(具体的には前方ねじ山作成サブ領域)のねじ山外形プロファイルよりも径方向外側に突出するプロファイル先端を有するねじ山外形プロファイルを有している。
【0064】
一つの有利な実施形態では、ねじ山作成サブ領域(具体的には、第1ねじ山作成サブ領域または前方ねじ山作成サブ領域)の直径は、もう一方のねじ山作成サブ領域(具体的には、第2ねじ山作成サブ領域または後方ねじ山作成サブ領域)の直径よりも小さい。
【0065】
本発明のこのような改良は、既知のタップまたは盛り上げタップでは技術的に不可能である。
【0066】
ねじ山が作成されるワークピースの壁は、ワークピースのコアホール(具体的には止まり穴または貫通穴)のコアホール壁であることが好ましく、この結果、ねじ山は雌ねじになる。しかしながら、ワークピースの外壁に雄ねじを作成することも可能である。
【0067】
溝作成領域および/またはねじ山作成領域は、工具キャリアまたは工具シャンクに、好ましくは既製の部品として、好ましくは取り外し可能または交換可能に固定される。
【0068】
例示的な実施形態に基づき、以下で本発明をさらに詳細に説明する。以下の模式的な図面を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
対応する部分および寸法は、
図1ないし22において同一の参照番号で示されている。
【0071】
図1は、ワークピース2内のコアホール20の断面図である。コアホール20は、中心軸Mを包囲し直径がDである円筒形のコアホール壁21を有している。中心軸Mに対する径方向が、矢印および参照符号rで示されている。
【0072】
図2によると、続いて、二つのねじれた、好ましくは螺旋状またはへリックス形状の溝22、24がコアホール壁21内に作成される。軸方向溝22、24は、中心軸Mに対して直径方向の両側に(すなわち、具体的には互いに対して180°オフセットされるように)形成され配置される。溝22、24のねじれまたは螺旋は、
図2、3−5のような純粋な断面図では実際には見ることはできないが、実際、
図5では模式的に示されており、例えば
図6、8、17、19では容易に見ることができ、より詳細に後述される。
【0073】
溝22、24の外径から測定した深さ、またはコアホール20の元の円筒形のコアホール壁21から測定した深さがtで示されている。この深さtは、溝22と24の両方で同一であることが好ましい。溝22の径方向外側の溝基部が22Bで示されており、これに対応する溝24の溝基部が24Bで示されている。
図2内で溝22と24の間を反時計回りに延びるコアホール壁21の壁サブ領域が23で示されており、溝22と24の間で反対側に位置する壁サブ領域が25で示されている。
【0074】
コアホール20の円周全体およびコアホール壁に対しての(すなわち、360°に対しての)溝22または24の円周成分に対応する角度成分βは、2%から12.5%の間であり、好ましくは7.5%から10%の間である。角度で表現すると、7.2°から45°の間であり、好ましくは27°から36°の間である。各壁サブ領域23、25の、残りの円周成分に対応する角度成分yは、(360°−2β)/2=180°−βである。
【0075】
図1のコア穴20は、切削プロセス、特にドリル工具またはミリング工具を用いて好ましくは作成される。続いて、
図2のようなコア穴20内に溝22、24が別個の工具を用いて作成される。二つの溝を作成するために、別個の溝作成工具をそれぞれ使用してもよいし、以下で説明するように、組み合わせ溝およびねじ山作成工具を使用してもよい。
【0076】
図22は、ねじれた溝作成領域142、144を持つ溝作成工具10の例示的な実施形態を示す。これを用いて、成形および非切削プロセスによってコア穴20内にねじれた溝22、24を作成することができる。
【0077】
しかしながら、代替的に、例えばミリング工具である一つの工具を用いて、または金属シートなどの薄いワークピースの場合にはねじれ運動とともに移動する穴開け工具を用いて、または一つの加工ステップで、
図2のように溝22、24を持つコア穴20を同様に作成することが可能である。したがって、
図1のようなコア穴は不要である。
【0078】
図2に示した、溝22、24が設けられたコア穴20へのねじ山の作成について、
図3−5を参照して以下で説明する。
【0079】
図3によると、工具軸Aの周りを回転するねじ山作成工具3が、コアホール20の中心軸Mに対して工具軸Aを同軸にして、コアホール20内に挿入される。工具3は、工具軸Aに対して直径方向に配置された(または、互いに対して180°オフセットされた)二つのねじ山作成領域32、34を有している。より詳細には、ねじ山作成工具3は、ねじ山作成領域32、34の間に二つの円筒形外面33、35を有している。
【0080】
溝22、24内へのねじ山作成領域32、34の挿入中、ねじ山作成領域32、34は、好ましくは軸方向送り運動と回転運動の重ね合わせによる対応する螺旋運動を制御することによって、溝22、24のねじれまたは螺旋に追従する。コア穴20の溝22、24内への工具3とねじ山作成領域32、34の挿入中の軸方向送り運動の送り速度は、工具3が1回の完全な回転を実行するのと同じ時間内に軸方向送りまたは軸方向移動がねじれまたは螺旋のピッチと正確に一致するように、回転運動の回転速度と、溝22、24のねじれピッチまたは螺旋のピッチと、に適合される。したがって、ねじれた溝22、24内への挿入中の工具3の軸方向送り速度は、溝22、24のねじれピッチと工具3の回転周波数との積に一致する。
【0081】
しかしながら、純粋な軸方向送り運動の場合、および工具3が溝22、24のねじれとは反対向きに特定の範囲だけ回転することが同時に許容されている場合、溝22、24がねじ山作成領域32、34を螺旋運動に案内することも想定可能である。
【0082】
ねじれた溝22、24内へのねじれまたは螺旋挿入運動中の工具3の回転は、回転方向に関して、溝22、24のねじれ方向すなわち螺旋の回転の方向に適合され、(ねじ山作成領域に対して)図示の回転方向Sまたは反対向きの回転方向に一致してもよい。
【0083】
ねじ山作成領域32、34は、外面33、35よりも径方向外側に突出している。ねじ山作成工具3の、外面33から外面35までの直径がdで示されている。
【0084】
ねじ山作成領域32、34は、螺旋状の線上に配置されたねじ切り歯32A、34Aを有している(いずれの場合も、
図3の断面図では一つのねじ切り歯のみが見える)。螺旋状またはへリックス状の線は、工具軸Aの周りに作成されるねじ山のねじピッチに対応する。上記のねじ山作成領域は、ねじ切り歯32A、34Aに隣接する外側自由面32B、34Bを有している。
図3では、ねじ切り歯32A、34Aは、工具軸Aの周りの回転方向Sで観察したときに正面側に配置され、自由面32B、34Bは、いずれもねじ切り歯32A、34Aから後方に延びる。ねじ切り歯32A、34Aは、ねじ山作成工具3のねじ山作成領域32、34の、径方向で最も外側に突出している領域である。ねじ切り歯32Aまたは34Aの、ねじ山作成工具3の外周の残りの部分に対する(すなわち、ねじ山作成工具3の外面33、35に対する)径方向の高さがhで示されている。この高さは、ねじ山作成領域32、34の両方で同一であることが好ましい。
【0085】
各溝22または24の溝基部22B、24Bに対するねじ切り歯32A、34Aの径方向の間隔が、Δrで示されている。この間隔は、溝22、24の両方で同一であることが好ましい。典型的に、径方向間隔Δrは、溝深さtの1/20から1/5の間である。
【0086】
ねじ山作成領域32は、径方向rで溝22内に突出し、ねじ山作成領域34は溝24内に突出する。各寸法に対して次式が当てはまる:d<Dおよびd/2+h<D/2+t。
【0087】
コアホール壁21の壁サブ領域23とねじ山作成工具3の対向する外面33との間の径方向間隔すなわちギャップ幅と、コアホール壁21の壁サブ領域25とねじ山作成工具3の対向する外面35との間の径方向間隔すなわちギャップとが、gで示されている。これは、g=(D−d)/2に対応する。このギャップ幅gと、自由面32Bまたは34Bと溝基部22Bまたは24Bとの間の径方向間隔Δrとは、明瞭さのために誇張したスケールでそれぞれ図示されている。ねじ山作成工具3と、コアホール20のコアホール壁21または溝22、24との間の隙間は、通常はもっと小さい。0.01<g/D<0.1であると好ましいが、他のパラメータ関係を選択してもよい。
【0088】
ねじ山作成領域32、34と溝22、24との間の円周方向のクリアランスを確保し、溝22、24内へのねじ山作成領域32、34の低摩擦挿入を可能にし、工具またはワークピースへの損傷を避けるために、
図3に示すように、各ねじ山作成領域32、34のそれぞれの角度成分(または円周方向の大きさまたは開口角度)β’は、関連する溝22、24の角度成分βよりも小さい。
【0089】
図面とのずれとして、ねじ山作成領域はより狭く、すなわちより小さな角度成分β’を持つように選択することができるし、好ましくは溝も対応するように選択することもできる。
【0090】
図4は、ねじ山作成中に、ワークピース2のコアホール20内で
図3に示した位置に対して回転方向Sに角度αだけ回転した工具3を示している。
【0091】
ねじ山作成中に、回転方向Sへの回転運動に加えて、工具3は、軸方向送り運動または線形送り運動を用いて(
図4の断面図では観察することができない)、工具軸Aおよび中心軸Mにと同軸にコアホール20の内部へと移動されている。この軸方向送り運動の送り速度は、回転方向Sの回転運動の回転速度と、所望のねじピッチPと、溝22、24のねじれとに適合される。
【0092】
ねじ山作成工具3の回転角度αの回転運動と、これと同時の軸方向送り運動の結果、コアホール20のコアホール壁21に、ねじ山のねじ山フライト(thread flight)の一部が作成される。具体的には、ねじ山フライトは、壁サブ領域25内の溝22から前進するとともに、壁サブ領域23内の溝24から前進する。図示のために、
図4の断面図では、作成済みのねじ山フライト36の1ターンで既に作成されているサブ領域の全体が示されている(厳密に言うと、これは断面では隠されている)。
【0093】
溝22、24のねじりに対応する螺旋列内で互いに対してオフセットして配置された複数のねじ切り歯32A、34Aが、各ねじ山作成領域32、34内に好ましくは配置される。ねじ山作成工具3の半回転(α=180°)およびP/2の同時送り運動の間に、それぞれの列内のねじ切り歯32A、34Aの数に対応して、螺旋列内のねじ切り歯の数に対応する、ねじ山フライト36の複数のねじ山ターンが作成される。このねじ山ターンはいずれも溝22、24によって中断される。ここで、互いに直径方向の反対側に位置するねじ切り歯32A、34Aは、P/2だけオフセットされて配置される。これは、壁領域23および壁領域25内に別個に作成されたねじ山フライト36の半分のターンが、ねじピッチPを持つ螺旋の線上の所望のねじ山プロファイルに沿って、溝22、24の後で一つになるようにするためである。
【0094】
ここで、ねじ切り歯32Aまたは34Aの径方向高さhは、ねじ山フライト36のねじ山基部36Bの、コアホール壁21からの間隔を決定する。
【0095】
各ねじ山切歯32A、34Aが溝22、24から前進してそれぞれ次の溝24、22に着地するような工具3の機能的に完全な回転は、この場合、介在する壁サブ領域23、25の全体をカバーし、ねじ山フライト36がその全体に作成される。
【0096】
このような機能的に完全な回転の後の状態が
図5に示されている。以前は溝22内に突出していたねじ山作成領域32が、今や直径方向反対側の溝24内に突出し、また、以前は溝24内に突出していたねじ山作成領域34が、今や溝22内に突出しており、それぞれ溝基部24B、22Bに対して径方向の間隔Δrを有している。
【0097】
その結果、さらなるステップで、ねじれた溝22、24のねじれに対応する中心軸M周りの螺旋引き抜き運動で、コア穴20から再びねじ山作成工具3を取り出すことができる。なぜなら、作成されるねじ山フライト36に起因する損傷なしで、ねじれた溝24、22に沿った螺旋またはねじれ引き抜き運動でねじ山作成領域32、34を外側に移動させることができるからである。
【0098】
溝22、24のねじれのため、二つの溝22、24の間の工具3の機能的に完全な回転の回転角αは、直線の軸方向溝の場合のようにちょうど180°ではなく、回転角補正Δαによって補正される。この補正は、溝22、24のねじれピッチとねじピッチとによって決まる。
【0099】
n≧1個の溝があり、コア穴壁21に溝を等間隔または一様に、すなわち360°/nの間隔角度で分配する場合、二つの溝22、24の間の工具3の機能的に完全な回転に対する回転角αは、
α=360°/n+Δα
となる。ここで、
Δα=360°/n・P/(PN−P)
異なる表現では、
α=360°/n(1+P/(PN−P))
但し、作成されるねじ山のねじピッチをP、溝のねじれピッチ、すなわち中心軸M周りの溝22、24が完全に回転するための軸方向移動距離をPNとする。PおよびPNは、右ねじまたは右向きのねじれの場合には正となるように選択され、左ねじまたは左向きのねじれの場合には負となるように選択される。こうして、PとPN−Pの商にしたがって補正が決定される。
【0100】
溝が非等間隔に配置または非一様に分布している場合、溝内にねじ山作成領域を挿入し引き出すことができるようにするためには、軸対称であるかn回回転対称であって各ねじ山作成領域がわずかな角度の回転でも関連する溝内に突出する場合を除き、一般に少なくとも360°の完全な回転が必要になる。上述した回転角度補正Δαは、非等間隔の場合および非一様の分布の場合にも適用可能である。
【0101】
溝のねじれ方向または回転方向は、ねじ山のねじれ方向または回転方向と同じ、すなわち両方とも右にまたは左にねじれていることが好ましい。なぜなら、溝作成領域とねじ山作成領域との間で工具の回転方向が変化する必要はないからである。しかしながら、反対向きのねじれ方向または回転方向を選択することも可能である。すなわち、ねじ山が右向きのねじれであり、溝が左向きのねじれであってもよい。その逆でもよい。
【0102】
一つの利点は、対応するチップの成長およびワークピース内へのねじ切り歯の侵入深さの成長を実現するために、並びに、切削圧力が大きくなりすぎないようにするために、最終的に改良タップである工具3が、タップの端部から前進する円錐面に沿ってねじ切り歯の最大径方向間隔が増大する部分であるランオンコーン(run-on cone)または切削開始領域を有する必要がないことである。
【0103】
事前に作成された溝22、24内にねじ山作成領域32、34を係合させる本発明に係る工具3の場合、ねじ切り歯32A、34Aの径方向高さhのように、完全なねじ山プロファイル深さを持つねじ山フライトを一様に作成することができる。また、ねじ山の軸方向ねじ長にわたり観察すると、コアホール20のような止まり穴の場合であっても、従来のタップであればタップのカットスタータ(cut-starter)またはランオンコーンによって作成される不完全なねじ山フライトを持つサブ領域を失うことがない。こうして、部分的な回転にわたり作成されるねじ山フライト36が、軸方向ねじ長の全体にわたって完成する。これは、二つの溝22、24の領域内でねじ山フライト36が中断するために生じる特定の強度上のデメリットを上回る利点である。
【0104】
さらに、溝22、24を作成する追加ステップが必要であるにもかかわらず、溝22、24を持たない円形のコアホールに従来のタップを用いてねじ山を作成する場合よりも短時間で、実際のねじ山作成プロセスを実行することができる。
【0105】
従来技術で知られている直線の溝と比較して、ねじれた溝は、溝作成中に必要な軸方向力が減少するという利点がある。ねじれのおかげで、軸力にトルクが重ね合わされ、これが工具スピンドルの軸方向負荷のダンピング効果を有する。切削による溝の作成中、精製するチップをねじれた溝内へとより効果的に排出することができる。
【0106】
さらに、有利なことに、具体的にはオイルまたはオイルエアロゾルの形態である冷却液および/または潤滑剤を、溝22、24を通してねじ山作成部位へと導くことが可能であり、またチップ排出のために上記の溝を使用することができる。さらに、少なくとも最後に生成されるチップをねじ切り歯によって溝22、24内に導入し、冷却液および/または潤滑剤を用いて比較的大量のチップをそこに排出することも可能である。
【0107】
ねじ山作成領域32、34へのまたはそこからの冷却液および/または潤滑剤の輸送のために、および/または、ねじ山作成領域32、34からのチップの排出のために、ねじ山作成工具3が、ねじ山作成領域32、34上にまたはそこに向けて延びる外側の溝および/または内側のダクトを有していてもよい。
【0108】
図1ないし5のコアホール20は、貫通穴または止まり穴のいずれであってもよい。ワークピースの壁は、図示のように、雌ねじが作成されるワークピース内の連続的なまたは非連続的な穴の内壁であってもよい。しかしながら、本工具は雄ねじの作成にも同様に使用することができる。雄ねじでは、シャンクまたはボルトなどの外壁に溝、続いてねじ山が作成される。ねじ山作成工具のねじ山作成領域が、これと対応して内面に配置されるか内側に向けられ、ワークピースの外壁に外側から工具が係合する。ねじ山作成工具は、ワークピースの壁よりも直径が大きいが、雌ねじの場合には、ねじ山作成工具はワークピースの壁よりも直径が小さい。
【0109】
図6ないし8は、本発明に係る工具を用いて貫通穴であるコアホール20内に作成されたねじを、ねじ山作成工具3が既に引き出された状態で示す。
【0110】
コアホール20のコアホール壁21の壁サブ領域23、25に、ねじ山フライト36が完全に作成されており、溝22、24の領域のみでねじ山が中断している。コアホール20の中心軸Mは、(中断した)ねじ山フライト36を持つ作成済みのねじのねじ軸でもある。
【0111】
図8は、ねじ山フライト36のねじピッチPおよび(中心軸Mに特攻する断面に対する)ねじピッチ角ψを示す。比較のために、視認可能なねじれた溝24の溝ねじれピッチPN(その半分のPN/2が図示されている)および溝ねじれ角θを示す。
【0112】
溝の螺旋は、プロセス中の時間的な利点を獲得し保持するために、ねじ山の螺旋よりもかなり広くかつ急になるように通常は選択される。この利点は既に説明しており、従来技術のような直線の溝の場合には特に優れており、ねじれた溝の場合でさえも、従来のタッピングまたはねじ山冷間形成と比較して優れている。
【0113】
これは、工具3のねじ山作成領域32、34の二つのねじ山歯の間隔またはピッチに特に一致するねじピッチPが、溝ねじれピッチPNよりもかなり小さくなるように選択されることを意味する。溝ねじれピッチPNは、好ましくは工具3のねじれたねじ山作成領域32、34のピッチに一致しており、通常はPN>4P、特にPN>6P、好ましくはPN>18Pであり、PN>36Pを選択することも可能である。および/または、中心軸Mまたは工具軸Aに関して測定したとき、ねじ山ライン上に位置する一つのねじ山歯からねじ山ライン上に位置する次のねじ山歯までの角度に対応する、ねじ山フライト36のねじピッチ角ψは、溝ねじれ角θよりもかなり大きい。溝ねじれ角θは、工具3のねじれたねじ山作成領域32、34のねじれ角に特に一致しており、同様に中心軸Mまたは工具軸Aに対して測定したときに、特にψ>2θであり好ましくはψ>4θである。
【0114】
溝ねじれ角θの好適な絶対値は、通常2°〜70°であり、特に5°〜45°であり、好ましくは7°〜25°である。
【0115】
ねじピッチ角ψの好適な絶対値は、通常80°〜89.5°であり、好ましくは85°〜89°である。
【0116】
さらなる実施形態では、
図3ないし5に示した本発明に係る改良タップの代わりに、ねじ山作成工具として、本発明に係る改良された盛り上げタップ(cold-forming tap)が用いられてもよい。この場合、ねじ山作成領域は、ねじ切り歯の代わりに、径方向外側に突出する加圧ローブ(pressing lobe)または冷間成形歯(cold-forming teeth)を備えている。加圧ローブまたは冷間成形歯は、ねじ山作成工具の回転運動および同時の軸方向送り運動の間に、コアホール壁21内への塑性押し込みによって、非切削態様でねじ山フライトを作成する。具体的には、溝の溝基部に対して径方向の間隔を空けて、ねじ山作成領域の中心に加圧ローブが配置されてもよい。
【0117】
ねじ山切歯32A、32Bをねじ山成形歯または押圧ローブで置換した場合、加工移動およびジオメトリに関しては、上記の説明が同様に適用される。
【0118】
図9および10は、本発明に係るねじ切り工具3の例示的な実施形態を示す。ねじ切り工具3は、非切削冷間形成タップの形態であり、溝作成領域を有しておらず、既に作成されたねじれた溝22、24を持つコア穴20内にねじ山を作成するために使用される。
【0119】
ねじ切り工具3は、例えば円筒形である後部9と、後部9に隣接して直径が小さくなる前部8と、を有するシャンク5を備え、シャンクを通して工具軸Aが延びる。後部9の端部には、ねじ切り工具3を駆動する工作機械、具体的には工具軸Aの周りにねじ切り工具3を回転させる工作機械のクランプ手段(具体的にはチャックまたはクランピングジョー)でシャンク5をクランプするための多角形部7または他の形のクランプ領域が形成されている。
【0120】
前部8は、後部9とは反対側を向き正面に配置される前面6に向けて(すなわち自由端に向けて)、二つのねじ山作成領域32、34を有している。ねじ山作成領域32、34は、それぞれ工具軸Aの周りにねじれて延びるねじ山作成リッジの列の形態をしており、工具軸Aの両側に互いに正反対の位置に配置されている。
【0121】
ねじ山作成リッジは、所望のねじのねじピッチに沿って延び、工具軸Aに対して直角の平面に関してねじピッチ角度だけ傾いている。ねじ山作成リッジは、いずれも一つの加圧ローブまたは成形ウェッジ(shaping wedge)を有している。加圧ローブまたは成形ウェッジは、工具軸Aに対して径方向の最も外側に突出しており、ワークピース内にねじ山フライトを塑性的に付ける。
【0122】
正面6から突出するねじ山作成領域32の最初の三つのねじ山作成リッジの加圧ローブが、
図9内に32−1、32−2、32−3で示されている。ねじ山作成領域34の最初の三つのねじ山作成リッジの加圧ローブは、34−1、34−2、34−3で示されている。
図10では、一番前の加圧ローブ32−1、34−1のみを見ることができる。
【0123】
二つのねじ山作成領域32、34のねじ山作成リッジの半径、すなわち工具軸Aからの間隔は、一定であるか互いに等しい。この点で、正面6で最も前方に位置する成形ウェッジまたは加圧ローブ32−1、32−2、32−3、34−1、34−2、34−3の半径でさえ、互いに等しい。
図9および
図10の両方に示すように、盛り上げタップすなわちねじ山作成工具3は、初期形成円錐部(initial-forming cone)を有しておらず、したがって最初のねじ山成形ウェッジにおいて半径が増大していない。むしろ、ねじ山作成領域32、34のいずれにおいても、全てのねじ山作成リッジの加圧ローブの半径が同一、すなわち全軸長にわたり一定である。ねじ山作成リッジの加圧ローブ32−1、32−2、32−3を含む、最も外側に突出する成形ウェッジまたは加圧ローブは、工具軸と平行に延びる(つまり、径方向の間隔が一定である)ローブ軸B上に位置している。ねじ山作成領域34の加圧ローブ34−1、34−2、34−3を持つねじ山作成リッジにも同じことが当てはまる。
【0124】
二つのねじ山作成領域32、34は、介在する外面33、35によって分離されている。外面33、35は、ねじ山作成領域32、34よりも工具軸Aからの半径が小さい、つまり外径が小さい。すなわち、外面33、35は、ねじ山作成領域に対して径方向に凹んでいる。このため、ねじ山作成領域32、34は、ねじ山作成工具3の前部8において径方向に最も外側に突出する部分であり、外面33、35は、ねじ山作成領域32と34の間に空き空間を形成している。
【0125】
ねじ山作成領域32、34の間にある、ねじ山作成工具3の外面33、35は、特殊な形状を有しており、外向きに凸状に膨らんでバルジ(隆起)52、54に至る。凸状のバルジ52、54の結果、剛性が高くなる。
【0126】
二つのねじ山作成領域32、34のねじ山作成リッジの直径または半径は一定である。すなわち、正面6で最前方に位置している外向きに突出する成形ウェッジ32−1、32−2、32−3の外径は、いずれも同一である。このように、盛り上げタップすなわちねじ山作成工具3は、ねじ基部におけるねじ山フライトの連続的な深化または差し込み(working-in)のために、最初のねじ山成形ウェッジにおいて外径が増加する初期形成円錐部またはランオン領域を有していない。むしろ、最初の三つのねじ山作成リッジ32−1、32−2、32−3に基づき示されるように、全てのねじ山作成リッジおよび成形ウェッジの半径が、ねじ山作成領域32、34のいずれでも同一、すなわち全軸長にわたり一定である。ねじ山作成リッジの最も外側に突出する成形ウェッジまたは加圧ローブは、工具軸Aと平行にすなわち一様な径方向間隔を有して延びるローブ軸B上に位置している。同じことが、ねじ山作成領域34のねじ山作成リッジにも当てはまる(
図9には表れていない)。空き空間52、54およびねじ山作成領域32、34の特殊な形状により、
図1ないし8のようなねじ山作成のために、
図9または
図10に示すねじ冷間成形工具3を使用することが可能になる。すなわち、ワークピース2内に事前に作成された溝22、24内に、ねじ山作成領域32、34がねじり方向に挿入され、続いて、ねじ山作成領域32、34が再び関連する溝22、24内で停止するまで、または反対側の溝24、22内で停止するまで、ねじ山作成工具3が上述した態様で回転される。その後、ワークピース2から工具3を再びねじり方向に引き出すことができる。
【0127】
図11ないし15は、本発明に係る複合工具4の様々な実例を示す。複合工具4の前部8には、二つの切削ねじ山作成領域32、34に加えて、ねじ山作成領域32のねじり方向前方に溝作成領域42が、ねじ山作成領域34のねじり方向前方に溝作成領域44が、正面6に配置されている。
【0128】
各溝作成領域42、44は、軸方向前方を向き正面6に位置している溝切刃42A、44Aを有している。溝切刃42A、44Aは、径方向で最も外側に突出している領域であり、また、前部8において工具3の径方向外側に位置するこれらの領域のうち、軸方向で最も前方に位置する領域でもある。
【0129】
溝切刃42A、44Aは、少なくとも略円形であってもよい。
図15に示すように、溝切刃42Aの半径r0は、第1ねじ山作成サブ領域321の半径r1よりも、半径差Δrだけ大きく、また、第2ねじ山作成サブ領域322の半径r2(
図15では、半径r1と同一である)よりも、半径差Δrだけ大きい。
【0130】
各溝切刃42A、44Aには、工具軸Aの周りの回転方向Sにおいて前方にある側面切刃42D、44Dが、円周方向において横方向に隣接している。また、工具軸Aの周りの回転方向Sにおいて後方にある側面領域42E、44Eが、円周方向で横方向に隣接している。
【0131】
ねじ山作成のために行われる回転方向Sへの工具4の回転の間、正面切刃42D、44Dがワークピース内を横方向に切削する。チップを排出するためのレーキ面42F、44Fが径方向内側で正面切刃に隣接する。一方、後面領域42E、44Eは鈍角であり、好ましくは凸形である。なぜなら、後面領域は追従するだけであり、切削を行う必要がないからである。
【0132】
溝切刃42A、44Aの軸方向後方には、自由表面42B、44Bが隣接している。
図15に示すように、自由表面42B、44Bは下方に傾斜している。具体的には、半径r0から第1加圧ローブ32−1の半径r1よりも小さい半径になるまで線形にまたは円錐状に傾斜している。
【0133】
溝切刃42Aの径方向内側には、正面レーキ面42Cが隣接している。溝切刃44Aの径方向内側には、レーキ面44Cが隣接している。レーキ面は、軸方向後方に直線状にまたは凹状に曲がって延びる。溝切刃42A、44Aを用いた溝のリーミング中に生成されるチップがレーキ面上に排出される。レーキ面42C、44Cは、軸方向前方の最低点から、工具軸Aと直交する平坦な中心領域51まで延びる。中心領域は、工具4の中心ダクト50の中心開口部を包囲している。中心ダクト50を経由して冷却液および/または潤滑剤を供給することができる。
【0134】
図11ないし15に係る複合工具4における二つのねじ山作成領域32、34は、好ましくは切削作用を付与するように設計されており、工具軸Aの周りの回転方向Sにおいて前方に配置された複数のねじ切り歯32A、34Aを有している。ねじ切り歯の外側切刃は、作成されるねじのプロファイルの形状に一致する。ねじ切り歯32A、34Aにより生成されるチップ用の、径方向内側に延びるレーキ面が、それぞれ32C、34Cで示されている。外側では、ねじ切り歯32A、34Aの回転方向Sと逆側に外側自由面32B、34Bが隣接している。外側自由面32B、34Bは、回転方向Sにおいて後方にありわずかに外向きに膨らんでいる側面領域32E、34Eで終了する。
【0135】
正面6から前進して観察すると、それぞれ一つのねじ切り歯を有する、ねじ山作成領域32の最初の三つのねじ山作成サブ領域が、
図15内の32−1〜32−3によって示されている。
【0136】
ねじ切り歯32A、34Aは、ねじ山作成領域32、34の径方向で最も外側に突出している領域である。
図15から容易に分かるように、溝作成領域42、44は、ねじ山作成領域32、34よりも径方向にさらに外側に突出している。
【0137】
二つのねじ山作成領域32と34は、介在する工具4の外面33、35によって互いに分離されている。ねじ山作成領域の前方に位置する溝作成領域42、44は、介在する工具4の外面43、45によって互いに分離されている。外面33、35と外面43、45とは、ねじ山作成領域32、34および溝作成領域42、44よりも、工具軸Aからの半径が小さく、すなわち外径が小さく、切削ねじ山作成領域32、34と溝作成領域42、44との間に空き空間を形成する。空き空間は、チップの排出の役目も果たす。
【0138】
製造を簡単にするために、ねじ山作成領域32、34、溝作成領域42、44、外面33、35、および外面43、45の、回転方向Sの前後にある側方領域の形状および輪郭は、互いに適合されることが好ましい。具体的には、工具軸Aに沿った直角投写内で上下に位置するかまたは合同であることが好ましい。すなわち、例えばレーキ面32Cと42F、側面領域32Eと42E、外面33と43、および外面35と45が、互いに適合される、具体的には共に削られる。
【0139】
複合工具3の外面33、43と外面35、45はそれぞれ、切刃に直接隣接する凹状に内向きに延びる部分、すなわち溝切刃42D、44Dとねじ切り歯32A、34Aを最初に形成する。この部分は、それぞれレーキ面32C、42Cと、レーキ面42F、44Fとを形成し、続いて、凸状に外向きに膨らんでバルジ52、54に至る。その後、他方の側で外側に延び、凸状の側面領域32E、34Eと側面領域42E、44Eとに至る。凸状のバルジ52、54のために、トルクに対する優れた剛性と安定性が実現する。
【0140】
工具4の軸方向送り運動と軸方向のリーミングすなわち切削プロセスの間、溝切刃42D、44Dの輪郭が、溝22、24の溝輪郭にそれぞれ反映される。それに続く回転運動の間、ねじ切り歯32A、34Aがねじ山フライト36を作成する。
【0141】
図11ないし15に示す実施形態では、溝切刃42A、44Aが、工具軸Aと直交する共通の平面内に位置する。すなわち、軸方向で同じ高さにある。このため、切刃の裏側すなわち溝切刃の背後に位置する溝作成領域42、44の自由面42B、44Bは、ねじピッチに対応した異なる長さになる。しかしながら、図示しない実施形態では、溝作成領域42、44の軸長を等しくできるように、溝切刃42A、44Aが、互いに対してねじピッチ分だけ軸方向にオフセットされて配置されていてもよい。
【0142】
本発明によると、ねじ山作成領域は、一つの溝(例えば22または24)と次の溝(例えば24または22)の間のわずかな回転のみでねじ山を加工する。ねじ山の螺旋の一部を形成するとともに溝によって互いに中断または分離される、個々のねじ山フライト部分が作成される。各ねじ山作成領域と、各ねじ切り歯、ねじ山成形歯またはウェッジは、次の溝までの回転の間のみ、関連する個別に作成されるねじ山フライト部分を作成する。ねじ山作成領域およびそのねじ切り歯またはねじ山形成ウェッジがねじ山フライト部分を通過し、一度だけねじ山フライト部分を作成する。次の一つの溝までの各ねじ山作成領域の回転の間、二つの溝の間のねじ山フライト部分を、二つの連続するねじ山作成領域およびそれらのねじ切り歯またはねじ山成形ウェッジのみが通り抜け、これを連続的に加工する。反対に考えると、各ねじ山作成領域と、各ねじ切り歯またはねじ山成形歯またはねじ山成形ウェッジが、二つの連続する個別のねじ山フライト部分でワークピースの表面を加工する。すなわち、一つは、i=1(1≦i≦n)の第1溝とi=2の次の溝との間であり、もう一つはi=2の次の溝とその次の一つの溝(i=3、但しn=2の場合には再びi=1)との間である。m番目の連続する溝までさらにm回転する一般的なケース(但し、mは整数)では、並んで位置するm個のねじ切り歯またはねじ山成形ウェッジが、同一のねじ山フライト部分を加工する。極めてまれな状況では、mが2より大きくなるように選択されるか、または多くて3であるが、常にm=1で十分である。
【0143】
一つのみのねじ切り歯またはねじ山成形ウェッジ(または、最大でm個のねじ切り歯またはねじ山成形ウェッジ)の外形が、上記の歯またはウェッジによって作成されるねじ山フライト部分の最終的なねじ山プロファイルを既に定義している。
【0144】
こうして、本発明によると、実用的に任意の事前に定義されたねじ山プロファイルを持つ個々のねじ山フライト部分でねじ山を構成することが可能になる。各ねじ山フライト部分のねじ山プロファイルは、他のねじ山フライト部分から独立して、回転中にねじ山フライト部分に割り当てられるねじ切り歯またはねじ山成形ウェッジの外形プロファイルと相補的になるように反映され成形される。
【0145】
既知のタップまたは盛り上げタップの場合、ねじ山フライト部分への歯の個別割り当ては不可能である。さらに、従来技術に係る工具の場合、正面に最も近い軸方向前方に位置する軸方向最前面のねじ切り歯またはねじ山成形歯は、回転運動中に、ねじ長の全体にわたりねじ山フライトの全体を通して導かれ、最後のねじ山に対応する、パイロットねじ山プロファイルを持つパイロットねじ山フライトを作成する。上記のパイロットねじ山フライトおよびパイロットねじ山プロファイルは、ねじ山プロファイルのねじ山基部および/またはねじ山フランクにおいて、後続のねじ切り歯またはねじ山成形歯によって、さらに加工されるかまたは再加工される。例えば、前から二番目のねじ切り歯またはねじ山成形歯は、最前のねじ切り歯またはねじ山成形歯と前から二番目のねじ切り歯またはねじ山成形歯との間の距離をパイロットねじ山の全長から引いた長さにわたり、最前のねじ切り歯またはねじ山成形歯によって作成されたパイロットねじ山フライトを通り抜ける。ねじ山の螺旋に沿って配置されワークピース上の同一点で引き続き加工を実行するねじ切り歯またはねじ山成形歯によって、ねじ山フランクを持つねじ山フライトのねじ山プロファイルがワークピース内に引き続き加工される。この加工順序は、既知のねじ切り工具のランオン領域で特に顕著である。
【0146】
本発明により、ねじ長にわたるねじ山の軸方向分割が可能になる。これは、タップまたは盛り上げタップでは今まで不可能であった。原理的に、任意の所望のねじ山プロファイルを、任意の所望の順序または組み合わせで、異なるねじ山部分に作成することができる。工具の前進方向すなわちねじ山内への方向において第2ねじ山フライト部分の前に位置する第1ねじ山フライト部分が、第2ねじ山フライト部分よりも(具体的にはねじ山基部において、適切な場合にはねじ山フランクにおいて)小さな寸法または外寸を持つねじ山フライトを有しているようなねじ山を、作成することさえ可能である。これは、既知のタップまたは盛り上げタップでは技術的に不可能である。
【0147】
図9に示したねじ山作成工具4を開始点とする図示しないねじ山作成工具14のさらなる実施形態では、溝作成領域42の後方にあるねじ山作成領域32と、溝作成領域44の後方にあるねじ山作成領域34とを、ねじり方向に互いにオフセットして配置された二つのねじ山作成サブ領域に分割することができる。正面6の側に配置され、関連する溝作成領域42または44に直接隣接して配置される前方ねじ山作成サブ領域では、
図9と比べると、ねじ山切削プロファイルまたは外形プロファイルにおいて、歯の先端領域に一つの平坦部が存在するねじ切り歯32A、34Aが設けられている。平坦部は、ワークピース内に相補的に作成されるねじ山フライトのねじ山基部に反映される。一方、正面6とは反対側の、前方ねじ山作成サブ領域の背後に位置する後方ねじ山作成サブ領域では、作成されるねじ山の完全なねじ山プロファイルに対応するねじ山切削プロファイルまたは外形プロファイルがねじ切り歯32Aまたは34Aに与えられている。例えば、ねじ切り歯32A、34Aは、より鋭いか外縁またはスパイン(尾根)に融合する歯先端を有している。歯先端は、ワークピース内のねじ山フライトの対応して形成されるねじ山基部に反映される。
【0148】
こうして作成された各ねじ山フライト部分は、関連するねじ切り歯32A、34Aの外形プロファイル(例えば台形の締まり嵌めねじ)に正確に対応するねじ山プロファイルを有している。ねじ切り歯の外側平坦部が、ねじ山フライト部分の対応する平坦なまたは深さの小さいねじ山基部に反映される。このようにして作成された異なるねじ山プロファイルを持つ全てのねじ山フライト部分は、ねじピッチがPである共通のねじ山螺旋上に位置する。
【0149】
例示的な実施形態では、前方ねじ山サブ領域の直径が、後方ねじ山サブ領域の直径よりも小さい。こうすると、前方ねじ山サブ領域では、スクリューまたはねじ切りボルト用のクランプ作用を実現できる一方で、完全なねじ山として形成された後方ねじ山サブ領域では、このようなクランプ作用は生じない。図示した例示的な実施形態とは対照的に、ねじ山プロファイルの他の実用的な任意の軸方向分布を持つねじ山を作成することが可能である。例えば、後方ねじ山サブ領域内でクランプ作用が生じるように、前方ねじ山サブ領域におけるねじ山プロファイルと、後方ねじ山サブ領域におけるねじ山プロファイルとを、単に逆にしてもよい。
【0150】
ねじ切り歯32A、34Aを用いてねじ山作成領域32、34を切削する代わりに、またはこれに加えて、全ての実施形態において、ワークピースに成形作用を付与するねじ山作成領域32、34を設けてもよい。すなわち、ワークピースを押し込んでワークピースを塑性変形させ、例えば
図9または
図10に示したようなねじ山加圧ローブを有するねじ山作成領域32、34を設けてもよい。
【0151】
さらに、2より多数の(例えば3つまたは四つの)ねじ山作成領域を設けることも可能である(いずれの場合も、複合工具の場合はその前方に溝作成領域が配置される)。ねじ山作成領域が一様分布で(すなわち、一様な角度間隔で)配置されてもよいし、非一様な分布で配置されてもよい。
【0152】
図示しないさらなる実施形態では、既知の盛り上げタップまたはタップのように、工具の複数回の回転中に連続するパスでねじ山フライトの深さを作成するために、ランオン円錐領域におけるねじ山加圧ローブまたはねじ切り歯の径方向外側の寸法が、最終的なねじ山深さに対応する最大の外寸になるまで、増加するようにしてもよい。この実施形態は、ねじ長が比較的大きい場合に特に適しており、ねじ山作成過程の間に工具に作用するトルクを低減する。
【0153】
最後に、工具の切削またはチップ除去による溝作成領域の代わりにまたはこれに加えて、非切削態様で動作し、特に塑性変形または圧痕(impression)によって材料に溝を加工する溝作成領域を設けることも可能である。
【0154】
非切削態様で動作するこのような溝作成領域42、44を有する組み合わせ工具4の例示的な実施形態が、
図20および21に示されている。
【0155】
各溝作成領域42、44は、工具軸Aの周りに実質的に円周方向に延びる中心成形スパイン(または成形リッジ、加圧リッジ)42G、44Gを有している。工具軸Aの軸方向で観察すると、成形スパイン42G、44Gは、溝作成領域42、44の径方向で最大の隆起である。すなわち、成形スパイン42G、44Gは、工具軸Aに対して最大の径方向間隔を有し、最も外側に突出している。
【0156】
各溝作成領域42、44は、成形スパイン42G、44Gの軸方向前方に、前面42F、44Fを有している。前面42F、44Fは、前面プロファイル42G’、44G’から成形スパイン42G、44Gまで軸方向に上昇する。前面プロファイル42G’、44G’は、工具4の正面6上で成形スパイン42G、44Gよりも径方向のさらに内側に位置し、ランオン表面を形成している。溝作成領域42、44は、ランオン表面を用いて最初にワークピースの表面を押し込み、変形力をゆっくりと増加させる。
【0157】
成形スパイン42G、44Gの背後では、溝作成領域42、44の後面42H、44Hが軸方向に隣接している。後面42H、44Hは、成形スパイン42G、44から軸方向に下方に傾斜している。
【0158】
成形スパイン42G、44G自体は、円周方向で観察すると、径方向の最も外側に突出する隆起、具体的には最大部42I、44Iを有している。成形スパインは、両円周方向で最大部42I、44Iから径方向下方に傾斜している。具体的には、一つのフランク(側面)42J、44Jでは、最大部42I、44Iよりも径方向のさらに内側に位置する後方終点42L、44Lまで下方に傾斜し、別のフランク42K、44Kでは、最大部42I、44Iよりも径方向のさらに内側に位置する前方終点42M、44Mまで下方に傾斜している。
図24に示す例では、終点42M、44Mは、終点42L、44Lよりも径方向にさらに内側に位置しており、フランク42J、44Jはフランク42K、44Kよりも短い。したがって、最大部42I、44Iは、溝作成領域42、44の後部領域42E、44Eと後方終点42L、44Lにより接近して位置している。溝作成領域42、44のこの非対称な形状のために、溝の成形中の工具の剛性が高まり、および/または、後に続くねじ山作成領域32、34に適応している。しかしながら、対称的な形状も可能である。
【0159】
正面プロファイル42G’、44G’は、成形スパイン42G、44Gと同様の形状であり、最大部42I’、44I’と、最大部から終点42L’、44L’まで下方に傾斜しているフランク42J’、44J’と、最大部から終点42M’、44M’まで下方に傾斜しているフランク42K’、44K’と、を有している。前面42F、44Fは、対応する最大部42Iと42I’、44Iと44I’を接続し、対応する終点42Lと42L’、44Lと44L’を接続する。自明なことに、前面42F、44Fは、その間にあるフランク42Jと42J’、44Jと44J’、42Kと42K’、44Kと44K’を接続する。
【0160】
図22ないし24の例示的な実施形態では、前面42F、44Fが、正面プロファイルと成形スパインとの間で軸方向に実質的に直線的に延びるか、
図25の例示的な実施形態のように内向きの凹形の曲線状に延びる。変形力の所望の成長または軸勾配に応じて、前面42F、44Fは、これらのまたは他の多数の異なる形状をとることができる。
【0161】
成形スパイン42G、44Gと前面42F、44Fからなる円周方向の両側で下方に傾斜するくさび形状によって、溝作成領域42、44をワークピース内へと軸方向に移動させるときに、ワークピース材料を側方にすなわち円周方向に流すことが可能になる。
【0162】
図20ないし21の例示的な実施形態では、工具4のねじ山作成領域32、34は、切削作用を有してもよいし非切削作用を有してもよい。
【0163】
ワークピースの好適な材料は金属、具体的にはアルミニウム合金、マグネシウム合金、および他の軽金属であるが、本発明はこれらの材料に限定されない。さらに、ワークピースとして、特に鋼鉄または他の材料からなる圧肉または中実のワークピース、薄肉の部品または金属板の両方を使用することができる。