特許第6266619号(P6266619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266619粘着剤層を有する光学部材積層体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266619
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】粘着剤層を有する光学部材積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20180115BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180115BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B32B7/02 103
   B32B7/12
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-526826(P2015-526826)
(86)(22)【出願日】2015年1月16日
(86)【国際出願番号】JP2015051130
(87)【国際公開番号】WO2015108159
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2015年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-7310(P2014-7310)
(32)【優先日】2014年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-7311(P2014-7311)
(32)【優先日】2014年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】梅本 徹
(72)【発明者】
【氏名】形見 普史
(72)【発明者】
【氏名】鷹尾 寛行
(72)【発明者】
【氏名】野中 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】保井 淳
(72)【発明者】
【氏名】疋田 貴巳
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−131032(JP,A)
【文献】 特開2013−202844(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/029536(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/133645(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/073797(WO,A1)
【文献】 特開2013−037057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 1/10 − 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な第1光学部材を所定パターンの透明導電性層が形成された第2光学部材に接合するための粘着剤層に、該粘着剤層の前記第2光学部材及び前記透明導電性層に面する側において、前記粘着剤層の粘着剤ベース材料の屈折率より高く、前記透明導電性層の屈折率より低い屈折率を有する、透明な粘着性屈折率調整用区分を形成し、
該透明な粘着性屈折率調整用区分が前記透明導電性層及び前記第2光学部材に面し、前記粘着剤層の反対側の面が前記第1光学部材に面する状態で、該透明導電性層及び該第2光学部材上に該透明な粘着性屈折率調整用区分を接合し、前記粘着剤層の前記反対側の面を前記第1光学部材に接合して、前記屈折率調整用区分が、該透明導電性層と前記第2光学部材との間の段差を埋めるように該透明導電性層と該第2光学部材の両方に接する状態にし、
前記第1光学部材を通って入射する外光の、前記粘着剤ベース層と前記屈折率調整用区分との界面における反射光と、前記屈折率調整用区分と前記透明導電性層との界面における反射光とが、光学的干渉により少なくとも部分的に相殺されるようにする
ことを特徴とする光学部材積層体内における内部反射抑制方法。
【請求項2】
請求項に記載した方法であって、前記第1光学部材を通って入射する外光の、前記粘着剤層における前記粘着剤ベース材料により本質的に形成される区分と前記屈折率調整用区分との界面における反射光と、前記屈折率調整用区分と前記第2光学部材との界面における反射光とが、光学的干渉により少なくとも部分的に相殺されるようにすることを特徴とする光学部材積層体内における内部反射抑制方法。
【請求項3】
透明な第1光学部材を第2光学部材に接合するための透明な粘着剤層を備える光学部材積層体の製造方法であって、
透明な粘着剤ベース材料により本質的に形成される粘着剤層を準備し、
前記粘着剤ベース材料より高い屈折率を有する屈折率調整材料の粒子を含む塗工液を準備し、
前記粘着剤層の一方の面に前記塗工液を塗布して、該塗工液に含まれる前記屈折率調整材料の粒子を、前記粘着剤層の前記一方の面から厚み方向に浸透させ、
前記粘着剤層を乾燥させることによって前記塗工液の液体部分を蒸発させる
工程によって、前記屈折率調整材料の粒子が分散状に含まれる屈折率調整区分を前記一方の面から厚み方向に有する屈折率調整区分付粘着剤層を形成する段階と、
前記屈折率調整区分付粘着剤層を、前記一方の面とは反対側の面である他方の面において前記第1光学部材に接合し、前記一方の面において前記第2光学部材に接合する段階とを含むことを特徴とする光学部材積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載した光学部材積層体の製造方法であって、前記屈折率調整区分は、前記第2光学部材の屈折率より低い屈折率を有することを特徴とする光学部材積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項又はに記載した光学部材積層体の製造方法であって、前記第2光学部材には前記粘着剤層に面する側に所定パターンの透明導電性層が形成され、前記屈折率調整区分は、該透明導電性層と前記第2光学部材との間の段差を埋めるように該透明導電性層と該第2光学部材の両方に接合され、前記屈折率調整区分は、前記透明導電性層の屈折率より低い屈折率を有することを特徴とする光学部材積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を有する光学部材積層体及びその製造方法に関する。特に本発明は、透明な光学部材を他の光学部材に接合するための粘着剤層を有する光学部材積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置又は有機EL表示装置のような表示装置は、偏光フィルム、位相差フィルム、カバーガラス等の透明カバー部材、その他種々の透明光学部材を、他の光学部材に接合するために粘着剤を使用する。すなわち、接合される2つの光学部材の間に粘着剤層が配置され、該2つの光学部材は、これらを互いに押し付けることにより接合されて、光学部材積層体が形成される。このような構成の光学部材積層体は、表示装置において、透明光学部材の側が視認側となるように配置される。この構成において、視認側の透明光学部材から外光が入射したとき、入射光が粘着剤層と非視認側の光学部材との界面で反射して視認側に戻る、という問題がある。この問題は、外光の入射角が浅いとき、特に顕著になる。
【0003】
また、近年増加傾向にあるタッチパネルを備えた表示装置にあっては、透明光学部材が接合される被接合側光学部材の表面には、パターン化されたITO(インジウム・スズ酸化物)のような透明で導電性の層が形成される。このような表示装置においては、粘着剤層と透明導電性層との間の界面における入射光の内部反射の影響で、視認側から透明導電性層のパターンが見えるようになる、という「パターン見え」の問題が指摘されている。
【0004】
いずれの場合にも、内部反射は、粘着剤と被接合側光学部材及び透明導電性層の屈折率差に起因する。特許第4640740号公報(特許文献1)は、この問題に対処するための手法を教示する。すなわち、該特許文献1は、透明光学部材と粘着剤層との間の界面、及び、粘着剤層と被接合側光学部材との間の界面における光の全反射を低減できる粘着剤組成物を開示する。ここに開示された組成物は、乾燥後及び/又は硬化後の屈折率が高く、透明光学部材及び被接合側光学部材の屈折率に近いものである、と説明されている。この特許文献1の教示は、2つの光学部材を接合する粘着剤層全体を、該2つの光学部材の屈折率に近い屈折率をもつものとすることである。
【0005】
この特許文献1により教示された手法は、界面反射を抑制する点では効果があるであろうが、特定のモノマー成分を使用するものであるため、組成物自体が高価になる、という問題がある。
【0006】
特許第5564748号公報(特許文献2)は、分散平均粒子径が1nm以上、かつ20nm以下の酸化ジルコニウム又は酸化チタン粒子を、アクリル系樹脂からなる透明粘着剤の厚み全体にわたり分散させた構成の屈折率が調整された粘着剤を開示する。この粘着剤は、高屈折率材料である酸化ジルコニウム又は酸化チタン粒子を透明粘着剤に混合しているので、粘着剤層全体の屈折率が高くなり、上述した界面反射を抑制することができると考えられる。しかし、特許文献2の手法では、高屈折率材料を多量に使用する必要があり、粘着剤としての特性の低下が懸念され、かつ高価になる。また、使用される高屈折率材料は無機物質の粒子であるため、分散が困難であり、散乱による白濁を生じる、という問題がある。このため、有機材料の粒子を使用することも考えられるが、その場合には、着色の問題を解決することが容易ではなくなる。
【0007】
特許第5520752号公報(特許文献3)は、特許文献2に記載の手法を改良するために、粘着剤に分散される金属酸化物粒子を高分子で被覆することを提案する。特許文献3が教示することは、特許文献2の粘着剤層では、粘着剤層の表面に金属酸化物が露出するため、粘着性が低下する、という問題があるので、該金属酸化物粒子を高分子により被覆して、この問題を解決する、というものである。この特許文献3により提案される手法は、粘着剤層の粘着性については或る程度の改善は可能であるかも知れないが、特許文献2に関連して指摘した問題の多くは解決されない。特に、特許文献3に記載された構成は、金属酸化物粒子を特定の高分子で被覆するものであるため、特許文献2の構成よりも、さらに高価になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4640740号公報
【特許文献2】特許第5564748号公報
【特許文献3】特許第5520752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、容易かつ安価に製造できる粘着剤層を使用して、光学部材積層体における内部反射を効果的に抑制することができる積層体の構成を提供することを主たる目的とする。
【0010】
本発明の別の目的は、屈折率調整区分をもった粘着剤層を有する光学部材積層体の構成により、該積層体における内部反射を効果的に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡潔に述べると、本発明は、上述の目的を達成するため、単一層として形成される粘着剤層の一方の表面から厚み方向のある範囲にわたって、粘着剤層のベース材料よりも高い屈折率を有する屈折率調整区分を形成することによって光学部材積層体の内部反射を抑制するものである。
【0012】
一態様において、本発明は、透明な第1光学部材を第2光学部材に接合するための透明で、特定の構成をもった粘着剤層を備える光学部材積層体を提供する。特定の構成をもった該粘着剤層は、単一層として形成され、第1光学部材に面する側の第1の主面から厚み方向にわたって透明な粘着剤ベース材料により本質的に形成されるベース粘着剤区分と、該単一層の粘着剤層の第2光学部材に面する側の第2の主面から厚み方向にわたって形成された透明で粘着性の屈折率調整用区分とを含む。そして、該屈折率調整用区分は、単一層の粘着剤ベース材料に、該粘着剤ベース材料の屈折率より高い屈折率を有する材料を含ませた構成である。この構成において、粘着剤層の屈折率調整用区分は、第2光学部材の屈折率より低い屈折率を有するものとすることができる。
【0013】
本発明の別の態様においては、第2光学部材には粘着剤層に面する側に所定パターンの透明導電性層が形成される。そして、屈折率調整用区分は、該透明導電性層と第2光学部材との間の段差を埋めるように該透明導電性層と該第2光学部材の両方に接しており、該屈折率調整用区分は、透明導電性層の屈折率より低い屈折率を有する。この構成において、第2光学部材には、粘着剤層に面する側の表面に、透明導電性層の屈折率より低い屈折率を有する屈折率調整層を形成し、粘着剤層の屈折率調整用区分は、該第2光学部材の表面に形成された該屈折率調整層の屈折率より高い屈折率を有するものとすることができる。
【0014】
屈折率調整用区分は、厚みを20nm〜600nmとすることが好ましい。屈折率調整用区分は、粘着剤ベース材料と同じ粘着性材料に該粘着性材料より高い屈折率を有する高屈折率材料の粒子が分散された構成とし、この高屈折率材料粒子により該屈折率調整用区分の平均屈折率を高めるようにすることができる。
【0015】
第2光学部材に所定パターンの透明導電性層が形成された構成では、屈折率調整用区分は、粘着剤ベース材料と同じ粘着性材料に該粘着性材料より高い屈折率を有する高屈折率材料の粒子を分散させて該屈折率調整用区分の平均屈折率を高める構成とし、透明導電性層の屈折率が1.75〜2.14であり、粘着剤ベース材料の屈折率が1.40〜1.55である場合に、高屈折率材料の粒子の屈折率は1.60〜2.74とすることが好ましい。高屈折率材料の粒子は、TEM観察による平均一次粒子径が3nm〜100nmであることが好ましい。また、高屈折率材料は、TiO2、ZrO2、CeO2、Al23、BaTiO3、Nb25、及びSnO2からなる群から選択された1又は複数の化合物とすることができる。屈折率調整用区分と第2光学部材との間の接合面には、高屈折材料の粒子が第2光学部材に接触する領域と、該屈折率調整用区分の粘着性材料が該第2光学部材に接触するマトリクス領域とが形成される。この場合において、高屈折材料の粒子が第2光学部材に接触する領域は、面積比30〜99%の範囲で形成されることが好ましい。また、高屈折率材料の粒子と粘着剤ベース材料の屈折率の差が0.2〜1.3であることが好ましい。
【0016】
屈折率調整用区分は、粘着剤ベース材料と同じ粘着性材料に、該粘着性材料より高い屈折率を有する粒子、ポリマー又はオリゴマーの形態の有機材料が含まれることによって該屈折率調整用区分の平均屈折率を高めるように構成されたものとすることができる。また、この構成の粘着剤層が、第2光学部材に透明導電性層が形成された構成に適用される場合には、透明導電性層の屈折率は1.75〜2.14とし、粘着剤ベース材料の屈折率は1.40〜1.55とし、有機材料の屈折率は1.59〜2.04とすることが好ましい。ここで用いられる高屈折率を有する有機材料としては、特に限定されないが、スチレン系のような芳香環を有する樹脂のほか、硫黄や窒素等のヘテロ原子を含む樹脂(例えばチオールやトリアジン環を含ポリマー)が挙げられる。また、粒子としてはナノメートルサイズの有機ナノ粒子、球状高分子を含み、粒径はTEM観察による平均一次粒子径が3nm〜100nmであることが好ましい。
【0017】
粘着剤層は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。高屈折率材料の粒子は、複数の粒子が凝集した凝集体の形態で存在する部分を含むことができる。また、通常は、屈折率調整用区分に含まれる高屈折材料の粒子は、粘着剤層の厚み方向に、不規則な深さで存在する。
【0018】
本発明は、別の態様において、光学部材積層体内における内部反射抑制方法を提供する。この方法は、透明な第1光学部材を所定パターンの透明導電性層が形成された第2光学部材に接合するための粘着剤層に、該粘着剤層の第2光学部材及び透明導電性層に面する側において、粘着剤層の粘着剤ベース材料の屈折率より高く、透明導電性層の屈折率より低い屈折率を有する、透明な粘着性屈折率調整用区分を形成し、該透明な粘着性屈折率調整用区分が透明導電性層及び第2光学部材に面し、粘着剤層の反対側の面が第1光学部材に面する状態で、該透明導電性層及び該第2光学部材上に該透明な粘着性屈折率調整用区分を接合し、粘着剤層の該反対側の面を第1光学部材に接合して、屈折率調整用区分が、該透明導電性層と前記第2光学部材との間の段差を埋めるように該透明導電性層と該第2光学部材の両方に接する状態にし、第1光学部材を通って入射する外光の、粘着剤ベース層と屈折率調整用区分との界面における反射光と、屈折率調整用区分と透明導電性層との界面における反射光とが、光学的干渉により少なくとも部分的に相殺されるようにするものである。
【0019】
本発明のこの内部反射抑制方法においては、第1光学部材を通って入射する外光の、粘着剤層における粘着剤ベース材料により本質的に形成される区分と屈折率調整用区分との界面における反射光と、屈折率調整用区分と第2光学部材との界面における反射光とが、光学的干渉により少なくとも部分的に相殺されるようにすることができる。
【0020】
本発明は、さらに、別の態様において、透明な第1光学部材を第2光学部材に接合するための透明な粘着剤層を備える光学部材積層体の製造方法を提供する。この方法は、屈折率調整区分付粘着剤層を形成する段階を含む。この段階は、透明な粘着剤ベース材料により本質的に形成される粘着剤層と、該粘着剤ベース材料より高い屈折率を有する屈折率調整材料の粒子を含む塗工液とを、それぞれ準備し、該粘着剤層の一方の面に該塗工液を塗布して、該塗工液に含まれる屈折率調整材料の粒子を、粘着剤層の一方の面から厚み方向に浸透させ、該粘着剤層を乾燥させることによって該塗工液の液体部分を蒸発させる工程によって、行われる。この方法は、さらに、該屈折率調整区分付粘着剤層を、該一方の面とは反対側の面である他方の面において該第1光学部材に接合し、該一方の面において該第2光学部材に接合する段階を含む。
【0021】
この光学部材積層体の製造方法においては、屈折率調整区分は、第2光学部材の屈折率より低い屈折率を有するものすることができる。或いは、該第2光学部材として、粘着剤層に面する側に所定パターンの透明導電性層が形成されたものを使用し、該屈折率調整区分は、該透明導電性層と該第2光学部材との間の段差を埋めるように該透明導電性層と該第2光学部材の両方に接合し、該屈折率調整区分は、透明導電性層の屈折率より低い屈折率を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、粘着剤層の一つの面から厚み方向に、粘着剤層のベース材料より高い屈折率を有する屈折率調整区分を形成するので、ヘイズ値を高めることなく高屈折率の領域を形成することが可能になる。高屈折率の領域は、第2光学部材との間の屈折率差を調整することができ、これによって粘着剤層と第2光学部材との間の界面における反射を抑制することができる。また、第2光学部材側にパターン化された透明導電性層が形成された構成においては、該透明導電性層と第2光学部材の屈折率に対する粘着剤層の屈折率調整区分の屈折率を調整することにより、界面反射を抑制することが可能になる。さらに、該透明導電性層における反射光と第2光学部材表面における反射光、及び粘着剤層内部に生じる反射光との間における、反射光同士の位相差による相殺効果で第1光学部材側に戻る反射光を大幅に低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の最も単純な実施形態の一例を示す光学部材積層体の断面図である。
図2】本発明の光学部材積層体に使用される粘着剤層の一実施形態を示す断面図である。
図3】パターン化された透明導電性層が形成された構成に図2に示す粘着剤層13が適用された実施形態を示す断面図である。
図4】第2光学部材に接触する粘着剤層の主面の状態を示す平面図である。
図5図2に示す粘着剤層を作製するための工程を示すもので、(a)は分散液の塗布工程を、(b)は高屈折率材料粒子の浸透工程を、(c)は乾燥工程を、それぞれ示す概略図である。
図6】本発明の実施例において作製した第2光学部材の構成を示すもので、(a)(b)(c)は、それぞれITO付第2光学部材(1)(2)(3)を示す。
図7】本発明の実施例による光学部材積層体の構成を示すもので、(a)(b)(c)は、実施例1、2、3をそれぞれ示す。
図8】本発明の実施例により作製された粘着剤層の屈折率調整用区分の表面状態を示す20000倍SEM写真である。
図9】(a)(b)は、それぞれ本発明の異なる実施例により得られた粘着剤層における屈折率調整用区分の高屈折率材料粒子分布を示す30000倍TEM断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図に関連して説明する。図1は、本発明の最も単純な実施形態の一例を示す光学部材積層体1の断面図であり、この光学部材積層体1は、光学的に透明な第1光学部材2と、該第1光学部材2に光学的に透明な粘着剤層3を介して接合された第2光学部材4とから構成されている。該透明な第1光学部材2は、偏光フィルム、位相差フィルム、その他の光学的表示装置に使用される光学フィルム、或いは光学的表示装置の視認側カバーガラスのような透明カバー部材により構成することができる。第1光学部材2は、粘着剤層3の第1の主面5に、第2光学部材4は、粘着剤層3の第2の主面6に、それぞれ接合される。
【0025】
図示の光学部材積層体1において、透明な粘着剤層3は、粘着剤ベース材料により本質的に形成されるベース粘着剤区分3aと、該ベース粘着剤区分3aより高い屈折率を有する屈折率調整用区分3bとを有する。ベース粘着剤区分3aを形成する粘着剤ベース材料の屈折率は、第1光学部材2の屈折率に近い屈折率を有することが好ましい。
【0026】
粘着剤ベース材料は、光学用途に使用可能な粘着性を有する透明な材料であれば特に制限はない。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及びポリエーテル系粘着剤から適宜選択して使用することができる。透明性、加工性及び耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。粘着剤ベース材料は、上記の粘着剤のいずれかを単独で、或いは、2種類以上を組み合わせて使用することができる。アクリル系粘着剤のベースポリマーとして用いるアクリル系ポリマーは、特に限定する意味ではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマ−のホモポリマー又はコポリマーであることが好ましい。ここで、「(メタ)アクリル」という表現は、「アクリル」及び「メタクリル」のうちのいずれか一方又は両方を意味するものとして使用されるもので、他の場合も同様である。本発明において、アクリル系ポリマーという用語は、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他に、これと共重合可能な他のモノマ−も含まれる意味で使用される。粘着剤ベース材料の屈折率は、一般に、1.40〜1.55である。
【0027】
粘着剤層3の厚みは特に限定されるものではないが、通常は5μm〜500μm、好ましくは、5μm〜400μm、さらに好ましくは、5μm〜500μmである。このうち、屈折率調整用区分3bの厚みは、好ましくは20nm〜600nmであり、より好ましくは20nm〜300nm、さらに好ましくは20nm〜200nmである。屈折率調整区分3bとベース粘着剤区分3aとの境界は、不規則な凹凸形状になるが、本発明においては、屈折率調整区分3bの厚みは、凹凸形状の深さの測定値を平均することにより決定される。ベース粘着剤区分の厚みは、粘着剤層3の厚みから屈折率調整区分3bの厚みを引いた値になる。粘着剤層3全体の全光線透過率は、JIS K7361に準拠して測定した値で80%以上、好ましくは90%以上である。粘着剤層3の全光線透過率は、高いほど好ましい。
【0028】
屈折率調整用区分3bは、例えば粘着剤ベース材料より高い屈折率を有する樹脂材料の溶液を、粘着剤ベース材料により形成された粘着剤層の一方の面に所定量塗布し、乾燥させることによって形成することができる。この目的に使用することができる樹脂材料としては、例えば、特許文献1に記載された粘着剤組成物がある。或いは、粘着剤ベース材料より高い屈折率を有する有機物、例えばスチレンオリゴマーを固形物として分散させた分散液を粘着剤ベース材料の層の表面に塗布して乾燥させる方法によってもよい。しかし、本発明においては、以下に図2について説明するように、粘着剤ベース材料により形成された粘着剤層の一方の面から高屈折率材料の粒子を浸透させ、粘着剤層の該一方の面に隣接する領域に、該高屈折率材料の粒子が分散させられるようにすることが好ましい。
【0029】
以下に、図2を参照して、本発明の一実施形態による粘着剤層13の構成を詳細に説明する。
【0030】
図2に示す本発明の実施形態による粘着剤層13は、図1に示す実施形態の粘着剤層3と同様に、第1の主面15及び第2の主面16をもち、粘着剤ベース材料により本質的に形成されるベース粘着剤区分13aと、該ベース粘着剤区分13aより高い屈折率を有する屈折率調整用区分13bとを有する構成であるが、本実施形態においては、屈折率調整用区分13bは、第2の主面16から厚み方向の深さにわたって粘着剤ベース材料内に浸透し、粘着剤ベース材料内に分散された高屈折率材料の粒子17を含むことにより、ベース粘着剤区分13aより高い屈折率を有するように構成されている。
【0031】
屈折率調整用区分13bにおける高屈折率材料粒子17の屈折率は、1.7〜2.7の範囲であることが好ましい。高屈折率材料の粒子と粘着剤ベース材料の屈折率の差は0.2〜1.3であることが好ましい。本発明のこの実施形態において使用できる高屈折率材料としては、TiO2、ZrO2、CeO2、Al23、BaTiO2、Nb25及びSnO2があり、これらの群から選ばれた1又は複数の化合物を使用して高屈折率材料粒子17を形成することができる。高屈折率材料粒子17の平均一次粒径は、3nm〜100nmとすればよく、粒子は、個々に分散状態で、或いは一部が凝集した状態で、屈折率調整用区分13b内に分布される。屈折率調整用区分13bとベース粘着剤区分13aとの境界は、図1に関連して説明したように、不規則な凹凸形状となっているが、屈折率調整用区分13bの厚み測定にあたっては、各測定位置において、高屈折率材料粒子17の90%が存在する深さの範囲を、その測定位置における区分13bの厚み測定値とし、複数の測定位置における測定値を平均して屈折率調整用区分13bの厚みとする。
【0032】
図3は、タッチパネルセンサーを構成するために、第2光学部材4の粘着剤層側表面に、例えばパターン化されたITO膜のような透明導電性層7が形成された構成に、図2に示す粘着剤層13が適用された実施形態を示す断面図である。この場合における第2光学部材4の例としては、例えば液晶表示装置又は有機EL表示装置における表示パネルのガラス基板を挙げることができる。
【0033】
図3に示すように、粘着剤層13の屈折率調整用区分13bの主面16は、第2光学部材4と透明導電性層7との間の段差を埋めるように、第2光学部材4の粘着剤層側表面と透明導電性層7の両方に接合される。図4は、第2光学部材4に接触する粘着剤層13の主面16の状態を示す平面図である。図4に示されるように、粘着剤ベース材料のマトリクス18に高屈折率材料粒子17が島状に分散された、海島構成になっており、第2光学部材4に粘着剤層13が接触する面では、第2光学部材4に対して粘着剤ベース材料が接触する部分と、高屈折率材料粒子17が接触する部分とが存在する。この位置における高屈折率材料粒子17と粘着剤ベース材料との面積比は、30〜99%の範囲とすることが好ましい。面積比は、一辺が10μm〜200μmの方形領域において、該方形領域の全体面積に対する高屈折率材料粒子17の占める面積の割合とし、複数の方形領域について測定を行い、その測定値を平均することにより面積比が求められる。
【0034】
図5(a)(b)(c)は、図2に示す粘着剤層13を製造する工程を概略的に示す図である。先ず、上述した高屈折率材料粒子17を溶媒に分散させた分散液19と、粘着剤ベース材料の層20を準備する。次いで、図5(a)に示すように、この分散液19を粘着剤ベース材料層20の表面に塗布する。粘着剤ベース材料層20の表面は、分散液19の溶媒により膨潤され、その過程で分散液19内の高屈折率材料粒子17が、粘着剤ベース材料層20内に、厚み方向に浸透する。この状態を図5(b)に示す。その後、乾燥工程により粘着剤ベース材料層20を乾燥させることにより、分散液19の溶媒を蒸発させて、図2に示す粘着剤層13を得ることができる。この状態を図5(c)に示す。
【0035】
粘着剤ベース材料層20に対する高屈折率材料粒子17の浸透深さは、粘着剤ベース材料と分散液19の溶媒との関係で定まる。溶媒は、浸透深さが上述した値になるように、適当に選定することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0037】
[粘着剤ベース作製]
〈粘着剤Aの作製〉
(アクリルオリゴマー)
ジシクロペンタニルアクリレート(DCPMA、メタクリル酸ジシクロペンタニル)60重量部、メチルメタクリレート(MMA、メタクリル酸メチル)40重量部、連鎖移動剤としてのα−チオグリセロール3.5重量部、及び重合溶媒としてのトルエン100重量部を、4つ口フラスコに投入し、これらを窒素雰囲気下において70℃で1時間撹拌した。次に、重合開始剤としての2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を4つ口フラスコに投入し、70℃で2時間反応させ、続いて、80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤及び未反応モノマーを乾燥除去させ、固形状のアクリル系ポリマーを得た。このようにして得られたアクリル系ポリマーを「アクリル系ポリマー(A−1)」とした。このアクリル系ポリマー(A−1)の重量平均分子量(Mw)は5.1×103であった。
【0038】
(粘着剤A)
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)68重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)14.5重量部、及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)17.5重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)0.035重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、BASF社製)0.035重量部を配合した後、粘度(計測条件:BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
【0039】
次に、該プレポリマー組成物に、上記アクリル系ポリマー(B−1)5重量部、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.15重量部、シランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部を添加して混合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。上記アクリル系粘着剤組成物を、剥離フィルム(商品名「MRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが150μmとなるように塗布して、粘着剤組成物層を形成し、次いで、該粘着剤組成物層の表面に、剥離フィルム(商品名「MRN#38」、三菱樹脂株式会社製)を貼り合わせた。その後、照度:5mW/cm2、光量:1500mJ/cm2の条件で紫外線照射を行い、粘着剤組成物層を光硬化させて、粘着剤層を形成した。
【0040】
〈粘着剤Bの作製〉
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)32重量部、イソステアリルアクリレート(ISTA)48重量部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)20重量部、2種の光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF製)0.05重量部、及び光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF製)0.05重量部を、4つ口フラスコに投入してモノマー混合物を調製した。次いで、このモノマー混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、重合率約10重量%の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。このようにして得られたアクリル系ポリマーシロップの100重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.02重量部、シランカップリング剤(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製)を0.3部添加した後、これらを均一に混合してモノマー成分を調製した。
【0041】
次いで、上記のように調製したモノマー成分を、片面をシリコーンで剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルMRF、三菱樹脂(株)製)の剥離処理面に、最終的な厚みが100μmになるように塗布して塗布層を形成した。次いで、塗布されたモノマー成分の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルMRE、三菱樹脂(株)製)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして被覆した。これにより、モノマー成分の塗布層を酸素から遮断した。このようにして得られた塗布層を有するシートに、ケミカルライトランプ((株)東芝製)を用いて照度5mW/cm2(約350nmに最大感度をもつトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を360秒間照射して、塗布層を硬化させて粘着剤層を形成し、粘着剤層の両面に剥離シートが設けられた粘着シート(基材レスタイプ、粘着剤層の厚み:100μm)を作製した。
【0042】
〈粘着剤Cの作製〉
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、モノマー成分として、ブチルアクリレート(BA)99部、4ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA1部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部及び重合溶媒として酢酸エチルを固形分が30%になるように投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後60℃にフラスコを加熱し、7時間反応させて重量平均分子量(Mw)110万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマーの溶液(固形分100部)に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学(株)製「タケネートD110N」)0.1部、シランカップリング剤(信越化学(株)製「KBM−403」)0.1部を加えて粘着剤組成物(溶液)を調製した。このようにして調製した粘着剤溶液を、剥離シートの離型処理面に乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、常圧下、60℃で1分間及び150℃で1分間加熱乾燥し、さらに23℃で120時間エージングを行って粘着剤層を作成した。
【0043】
[屈折率調整層付粘着剤の作製]
〈粘着剤A/高屈折率材料のナノ粒子分散液を使用する事例〉
(粘着剤A/ナノ粒子分散液(分散媒:エタノール)を使用した事例)
粘着剤層の厚さが150μmであって、該粘着剤層の両面が軽剥離PET剥離シートで保護されている状態の粘着剤A(粘着剤層の屈折率:1.49)の一方の軽剥離PET剥離シートを剥離した。露出した粘着剤層の表面に、高屈折率粒子を含有する分散液としてのジルコニア粒子(ZrO2、屈折率:2.17、平均一次粒子径:20nm)を含有する塗布用処理液(分散媒:エタノール、粒子濃度:1.5重量%、分散液の透過率:75%、CIKナノテック(株)製)を、屈折率調整区分の厚さが20nm〜300nmになるようにバーコーターRDS No.5で塗布し、110℃の乾燥オーブンで180秒間乾燥させた。次いで、ジルコニア(ZrO2)粒子が分散された粘着剤層表面に、PET剥離シートを貼り合わせ、粘着剤シートを得た。なお、このようにしてジルコニア粒子の平均一次粒子径を、TEM観察により計測した。
【0044】
〈他の事例〉
上記の事例と同様にして、下記の粘着剤及び高屈折率材料のナノ粒子分散液を使用して、同様に粘着剤シートを作製した。使用材料は、粘着剤B(屈折率1.48)、粘着剤C(屈折率1.47)、ZrO2ナノ粒子分散液(分散媒:エタノール、粒径20nm)、ZrO2ナノ粒子分散液(分散媒:エタノール、粒径30nm)、及びZrO2ナノ粒子分散液(分散媒:n-プロパノール、粒径20nm)であった。
【0045】
〈粘着剤A/高屈折率材料としてスチレンオリゴマー溶液を使用した事例〉
粘着剤層の厚さが150μmであって、該粘着剤層の両面が軽剥離PET剥離シートで保護された状態の粘着剤A(粘着剤層の屈折率:1.49)の一方の軽剥離PET剥離シートを剥離した。露出した粘着剤層の表面に、予め固形分濃度2重量%となるようにトルエンに分散したスチレンオリゴマー溶液(屈折率:1.60、ヤスハラケミカル社製、SX−100)を、屈折率調整層の厚さが20nm〜300nmになるようにバーコーターRDS No.5で塗布し、110℃の乾燥オーブンで180秒間乾燥させた。次いで、スチレンを配置した粘着剤層表面に、PET剥離シートを貼り合わせ、粘着剤シートを得た。
【0046】
[評価方法]
<粘着剤層の表面状態の観察>
実施例のそれぞれにおける粘着剤層の高屈折率材料粒子を有する側の表面を、FE−SEMを用いて、加速電圧2kV、観察倍率500倍、2,000倍、5,000倍、及び20,000倍で観察した。図8にその20,000倍写真を示す。高屈折率材料粒子が均一に分散されていることが分かる。
【0047】
<グラデーション構造の観察>
実施例の粘着剤層の高屈折率材料粒子を有する側の表面近傍の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率30,000倍で観察した。その結果を図9(a)(b)に示す。図9(a)では、屈折率調整用区分の厚みのほぼ全体にわたって高屈折率材料粒子がほぼ均一に分布しているが、図9(b)の例では、粘着剤層における高屈折率材料粒子の分布が、粘着剤層の表面で最も高く、粘着剤層の厚さ方向に従って減少していく分布を有することが分かる。
【0048】
<平均表面屈折率>
実施例及び比較例で得られた粘着シートの平均表面屈折率を、分光エリプソメーター(EC−400、JA.Woolam製)を用いてナトリウムD線(589nm)における屈折率を測定した。実施例及び比較例の粘着シートでは、両面の剥離シートを剥離して、粒子を塗布していない面に黒板を貼り合わせた状態で、粒子が塗布されている面の平均屈折率を測定した。比較例の粘着シートでは、両方の剥離シートを剥離して、一方の面に黒板を貼り合わせた状態で、粘着剤層表面の平均屈折率を測定した。
【0049】
<屈折率調整層の厚さの測定>
粘着剤層の深さ方向の断面を調整し、TEM観察を行った。得られたTEM像(直接倍率3000〜30000倍)から屈折率調整層の厚さの測定を計測した。屈折率調整層の厚みは、粘着剤ベース層との調整層との界面の凸凹の平均値とし、粘着剤ベース層との界面の判別が困難な場合には、表面TEM像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理し、ナノ粒子の90%が存在する領域の深さを調整層の厚みとした。
【0050】
<高屈折率粒子の面積比率>
粘着剤層の粒子塗布側の表面を、FE−SEMを用いて、加速電圧2kV、観察倍率500倍、2,000倍、5,000倍で観察した。得られた表面SEM像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理することで、長辺23μm、短辺18μmの長方形領域における全体面積に対する面積として高屈折率粒子の占める面積比率(%)を求めた。
【0051】
<全光線透過率、ヘイズ値>
実施例及び比較例で得られた粘着シートでは、粒子塗布側の剥離シートを剥離して、スライドガラス(商品名:白研磨 No.1、厚さ:0.8〜1.0mm、全光線透過率:92%、ヘイズ:0.2%、松浪硝子工業(株)製)に貼り合わせた。さらに他方の剥離シートを剥離して、粘着剤層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。また、比較例の粘着シートでは、一方の剥離シートを剥離して、スライドガラス(商品名:白研磨 No.1、厚さ:0.8〜1.0mm、全光線透過率:92%、ヘイズ:0.2%、松浪硝子工業(株)製)に貼り合わせ、さらに他方の剥離シートを剥離して、粘着剤層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。上記試験片の可視光領域における全光線透過率、ヘイズ値を、ヘイズメーター(装置名:HM−150、(株)村上色彩研究所製)を用いて測定した。
【0052】
<180度ピール接着力(ガラス板に対する180度引き剥がし接着力)>
実施例及び比較例で得られた粘着シートから、長さ100mm、幅20mmのシート片を切り出した。次いで、実施例及び比較例のシート片では、粒子が塗布されていない側の剥離シートを剥離して、PETフィルム(商品名:ルミラー S−10、厚さ:25μm、東レ(株)製)を貼付(裏打ち)した。また、比較例1、2のシート片では、一方の剥離シートを剥離して、PETフィルム(商品名:ルミラー S−10、厚さ:25μm、東レ(株)製)を貼付(裏打ち)した。次に、他方の剥離シートを剥離して、試験板としてのガラス板(商品名:ソーダライムガラス ♯0050、松浪硝子工業(株)製)に、2kgローラー、1往復の圧着条件で圧着し、試験板/粘着剤層/PETフィルムから構成されるサンプルを作製した。
【0053】
得られたサンプルについて、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)し、その後、23℃、50%R.H.の雰囲気下で30分間放冷した。放冷後、引張試験機(装置名:オートグラフ AG−IS、(株)島津製作所製)を用い、JIS Z0237に準拠して、23℃、50%R.H.の雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、試験板から粘着シート(粘着剤層/PETフィルム)を引きはがし、180°引き剥がし接着力(N/20mm)を測定した。また、各実施例、比較例において、高屈折率粒子未塗布の粘着シートを作製し、当該高屈折率粒子未塗布の粘着シートにおいても、上記同様に、180度ピール接着力を測定し(ベース粘着剤層の接着力)、ベース粘着剤層の接着力に対する各サンプルの180度ピール接着力の比率(%)を計算した。
【0054】
<高屈折率粒子を含有する分散液の透過率>
高屈折率粒子を含有する分散液の透過率は、光電比色計(AC−114、OPTIMA社製)で530nmのフィルターを用いて測定した。分散溶媒単独の透過率を100%として、各実施例、比較例で使用した分散液の透過率(%)を測定した。
【0055】
<反射抑制率の測定>
実施例及び比較例の光学部材積層体の一方の面を反射率測定面とし、反対側の面に黒PET基材付テープ(リンテック(株)製 PET75NBPET38)を貼って反射率測定用の試料とした。光学部材積層体の反射率測定面側の反射率(Y値)を反射型分光光度計(U4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)により測定した。測定は、透明導電層をエッチングした部分と、エッチングしていない部分の双方の位置で行った。すなわち、透明導電層をエッチングした部分(開口部)の測定は、粘着剤層の屈折率調整層と光学部材積層体の屈折率調整層との界面の反射率であり、エッチングしていない部分(パターン部)の測定は、粘着剤層の屈折率調整層と透明導電層界面の反射率を示す。
【0056】
反射抑制率は、エッチングした部分とエッチングしてない部分のそれぞれについて、下式に基づきを算出した。なお、下記式中の「粒子がない場合の反射率(%)」とは、比較例(粒子を用いない場合)の光学部材積層体の反射率である。すなわち、反射抑制率は、屈折率調整層を有することでどの程度反射率が低減できたかを示す指標である。
反射抑制率(%)=反射率(%)−粒子がない場合の反射率(%)
【0057】
[屈折率調整層付粘着剤と透明導電層の積層体の作製]
<基材としてゼオノア(COP)を使用する透明導電層の作製>
厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(商品名:「ゼオノアZF16」、面内複屈折率:0.0001、日本ゼオン(株)製)の両面に、直径3μmの複数の粒子(商品名:「SSX105」、積水樹脂(株)製)を、バインダー樹脂(商品名:「ユニディックRS29−120」、DIC社製)100部に対して0.07部添加した塗工液をバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで両面にアンチブロッキング層を有するフィルムを形成した(以下、COP基材)。次に、COP基材の片面に、屈折率調整剤(商品名:「オプスター KZ6661」、JSR(株)製)をバーコーターにより塗布し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで、厚さ100nm、屈折率1.65の屈折率調整層を形成した。得られたCOP基材の屈折率調整層の表面に、巻き取り式スパッタ装置において、透明導電層として厚さ23nmのインジウムスズ酸化物層(ITO)を積層した。
【0058】
<基材としてPETを使用する透明導電性層の作製>
厚さ50μmのPETフィルム(商品名:「ルミラー:U40」東レ社製)の片面に直径3μmの複数の粒子(商品名:「SSX105」、積水樹脂(株)製)を、バインダー樹脂(商品名:「ユニディックRS29−120」、DIC社製)100部に対して0.1部添加した塗工液を、バーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブン下1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで片面に膜厚1.5μmのアンチブロッキング層を形成した。次に、先ほど塗工した面とは逆面に、ハードコート用樹脂(商品名:「オプスター KZ7540(シリカナノ粒子含有)」、JSR(株)製)をMIBKで固形分10%になるように調整した塗工液を、バーコーターを用いて塗工し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで膜厚1.5μmのハードコート層を有するフィルムを形成した(以下、PET基材)。
次に、先ほど得られたハードコート層の上に、屈折率調整剤(商品名:「オプスター H0001(ジルコニアナノ粒子含有)」、JSR(株)製)をMIBKで固形分10%になるように調整した塗工液を、バーコーターを用いて塗工し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで膜厚35nm、屈折率1.63の屈折率調整層2を形成した。次に、前述の屈折率調整層2の上に、屈折率調整剤(商品名:「L−005(中空ナノシリカ粒子含有)」、JSR(株)製)をMIBKで固形分1.5%になるように調整した塗工液を、バーコーターを用いて塗工し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで膜厚40nm、屈折率1.49の屈折率調整層1を形成した。その後、屈折率調整層1、2を有するPET基材を、巻き取り式スパッタ装置に投入し、屈折率調整層1の表面に、透明導電層として厚み23nmのインジウムスズ酸化物層(ITO)を積層した。
【0059】
<基材としてガラスを使用する透明導電層の作製>
無アルカリガラス(屈折率1.53)の一方の面に、スパッタリング法によりITO膜を形成し、非結晶化ITO膜(屈折率1.85)を有する透明導電性基材を作製した。この非結晶性ITO薄膜のSn比率は、3重量%であった。なお、ITO薄膜のSn比率は、Sn原子の重量/(Sn原子の重量+In原子の重量)から算出した。
【0060】
<タッチパネルセンサとして機能する光学部材積層体の製造>
上記透明導電層上の一部にフォトレジスト膜を形成した後、これを25℃、5重量%の塩酸(塩化水素水溶液)に1分間浸漬して、透明導電層のエッチングを行った。これにより電極配線パターンに相当する透明導電層が存在する部分(パターン部)と、除去された部分(開口部)とを作製した。上述した粘着剤シートの高屈折率材料粒子を有する側のPET剥離シートを剥離し、パターニングされた透明導電層の上に、該粘着剤シートの粘着剤層(前記高屈折率粒子を有する側)と該透明導電層とが接触するように、該粘着剤シートを積層した。粘着剤シートの反対側のPET剥離シートを剥離した後に、表面保護及び光学測定のためにスライドガラス又は厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(商品名:「ゼオノアZF16」、面内複屈折率:0.0001、日本ゼオン(株)製)を貼り合せた。
【0061】
[第2光学部材の作製]
第2光学部材4として、図6(a)に示す積層体21と図6(b)に示す積層体31を準備した。図6(a)に示す積層体21は、屈折率1.53のCOP基材22の一表面上に屈折率1.65の屈折率調整層23が形成され、該屈折率調整層23の上に、パターン化されたITO層24が形成された構成である。ITOの屈折率は、1.9であった。この積層体21を「ITO付第2光学部材(1)」と呼ぶ。
【0062】
図6(b)に示す積層体31は、屈折率1.57のPET基材32の一表面上に屈折率1.63の屈折率調整層33が形成され、該屈折率調整層33の上に、さらに屈折率1.49の別の屈折率調整層33aが形成され、該屈折率調整層33aの上に、パターン化されたITO層34が形成された構成である。この場合においても、ITOの屈折率は、1.9であった。この積層体31を「ITO付第2光学部材(2)」と呼ぶ。
【0063】
さらに、図6(c)に示す「ITO付第2光学部材(3)」と呼ぶ積層体41を作製した。このITO付第2光学部材(3)の積層体41は、屈折率1.53のガラス基板42にパターン付けされていないITO層44を形成した構成である。
【0064】
[実施例1]
図7(a)に示すように、ITO付第2光学部材(1)を、本発明の一実施形態による粘着剤層25を介して第1光学部材2を構成するガラスウインドウ26に接合した。ガラスウインドウ26の屈折率は1.53であった。粘着剤層25は、粘着剤Aにより形成された屈折率1.49のベース粘着剤区分25aと、屈折率1.68の屈折率調整用区分25bを有するものであった。屈折率調整用区分25bは、平均粒径20nmの酸化ジルコニウム粒子をエタノール液に分散させた、酸化ジルコニウム粒子1.5wt%の分散液を、粘着剤Aからなる粘着剤層の表面に塗布し、酸化ジルコニウム粒子を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。粘着剤層25の厚みは150μmであり、屈折率調整用区分25bの厚みは150nmであった。この実施例1における屈折率調整用区分25bの表面写真を図8に、断面写真を図9(a)に、それぞれ示す。反射率測定のために、COP基材22の屈折率調整層23とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム27を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例2]
図7(b)に示すように、ITO付第2光学部材(2)を、本発明の他の実施形態による粘着剤層35を介して第1光学部材2を構成するガラスウインドウ36に接合した。ガラスウインドウ26の屈折率は1.53であった。粘着剤層35は、粘着剤Bにより形成された屈折率1.48のベース粘着剤区分35aと、屈折率1.62の屈折率調整用区分35bを有するものであった。屈折率調整用区分35bは、平均粒径20nmの酸化ジルコニウム粒子をn‐プロパノール液に分散させた、酸化ジルコニウム粒子2.0wt%の分散液を、粘着剤Bからなる粘着剤層の表面に塗布し、酸化ジルコニウム粒子を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。粘着剤層35の厚みは100μmであり、屈折率調整用区分35bの厚みは500nmであった。この実施例2においける屈折率調整用区分35bの断面写真を図9(b)に示す。反射率測定のために、PET基材32の屈折率調整層33とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム37を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
[実施例3]
図7(c)に示すように、ITO付第2光学部材(3)を、本発明のさらに他の実施形態による粘着剤層45を介して第1光学部材2を構成するウインドウ46に接合した。ウインドウ46は、ゼオノアフィルム(ZF14−100、登録商標)により作製した、屈折率1.53の透明部材である。粘着剤層45は、粘着剤Cにより形成された屈折率1.46のベース粘着剤区分45aと、屈折率1.70の屈折率調整用区分45bを有するものであった。屈折率調整用区分45bは、平均粒径30nmの酸化ジルコニウム粒子をエタノール液に分散させた、酸化ジルコニウム粒子1.5wt%の分散液を、粘着剤Cからなる粘着剤層の表面に塗布し、酸化ジルコニウム粒子を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。粘着剤層45の厚みは25μmであり、屈折率調整用区分45bの厚みは200nmであった。反射率測定のために、ガラス基板42のITO層44とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム47を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例4]
実施例1とは異なる構成の粘着剤層を使用して、図7(a)に示すものと同様な光学部材積層体を作製した。この実施例においては、ITO付第2光学部材(1)を、本発明のさらに別の実施形態による粘着剤層25を介して第1光学部材2を構成するガラスウインドウ26に接合した。ガラスウインドウ26の屈折率は1.53であった。粘着剤層25は、粘着剤Aにより形成された屈折率1.49のベース粘着剤区分25aと、屈折率1.65の屈折率調整用区分25bを有するものであった。屈折率調整用区分25bは、平均粒径20nmの酸化チタン粒子をn‐ブタノール液に分散させた、酸化チタン粒子0.5wt%の分散液を、粘着剤Aからなる粘着剤層の表面に塗布し、酸化チタン粒子を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。この実施例における粘着剤層25の厚みは150μmであり、屈折率調整用区分25bの厚みは130nmであった。反射率測定のために、COP基材22の屈折率調整層23とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム27を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例5]
屈折率1.60のスチレンオリゴマーを使用して屈折率調整用区分を形成することにより、図7(a)に示すものと同様な光学部材積層体を作製した。この実施例においては、ITO付第2光学部材(1)を、本発明のさらに別の実施形態による粘着剤層25を介して第1光学部材2を構成するガラスウインドウ26に接合した。ガラスウインドウ26の屈折率は1.53であった。粘着剤層25は、粘着剤Aにより形成された屈折率1.49のベース粘着剤区分25aと、屈折率1.55の屈折率調整用区分25bを有するものであった。屈折率調整用区分25bは、固形分として屈折率1.60のスチレンオリゴマーをトルエン液に分散させた固形分2wt%の分散液を、粘着剤Aからなる粘着剤層の表面に塗布し、固形分を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。この実施例における粘着剤層25の厚みは150μmであり、屈折率調整用区分25bの厚みは300nmであった。反射率測定のために、COP基材22の屈折率調整層23とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム27を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
[比較例1]
ITO付第2光学部材(1)を、粘着剤Aのみからなる粘着剤層を介して第1光学部材2を構成する屈折率1.53のガラスウインドウ26に接合して、比較例1の光学部材積層体を作製した。
【0070】
[比較例2]
ITO付第2光学部材(2)を、粘着剤Bのみからなる粘着剤層を介して第1光学部材2を構成する屈折率1.53のガラスウインドウ26に接合して、比較例2の光学部材積層体を作製した。
【0071】
[比較例3]
ITO付第2光学部材(3)を、粘着剤Cのみからなる粘着剤層を介して第1光学部材2を構成する屈折率1.53のガラスウインドウ26に接合して、比較例3の光学部材積層体を作製した。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上述べたように、本発明においては、第1光学部材と第2光学部材とを接合する粘着剤層において、第2光学部材側の面から厚み方向に、粘着剤ベース材料の屈折率より高い屈折率を有する屈折率調整区分を設けたので、外光の内部反射光が第1光学部材を通って戻るのを抑制できる。本発明は、液晶表示装置及び有機EL表示装置のような光学的表示装置に適用することができる。本発明は、特に、タッチセンサーを有するタッチパネル方式の表示装置に有利に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1・・・光学部材積層体
2・・・第1光学部材
3,13・・・透明な粘着剤層
3a、13a・・・ベース粘着剤区分
3b、13b・・・屈折率調整用区分
4・・・第2光学部材
7・・・透明導電性層
17・・・高屈折率材料粒子
19・・・分散液
20・・・粘着剤ベース材料
21、31・・・積層体
22・・・COP基材
23・・・屈折率調整層
24・・・ITO層
25・・・粘着剤層
26・・・ガラスウインドウ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9