【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0037】
[粘着剤ベース作製]
〈粘着剤Aの作製〉
(アクリルオリゴマー)
ジシクロペンタニルアクリレート(DCPMA、メタクリル酸ジシクロペンタニル)60重量部、メチルメタクリレート(MMA、メタクリル酸メチル)40重量部、連鎖移動剤としてのα−チオグリセロール3.5重量部、及び重合溶媒としてのトルエン100重量部を、4つ口フラスコに投入し、これらを窒素雰囲気下において70℃で1時間撹拌した。次に、重合開始剤としての2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を4つ口フラスコに投入し、70℃で2時間反応させ、続いて、80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤及び未反応モノマーを乾燥除去させ、固形状のアクリル系ポリマーを得た。このようにして得られたアクリル系ポリマーを「アクリル系ポリマー(A−1)」とした。このアクリル系ポリマー(A−1)の重量平均分子量(Mw)は5.1×10
3であった。
【0038】
(粘着剤A)
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)68重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)14.5重量部、及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)17.5重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)0.035重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、BASF社製)0.035重量部を配合した後、粘度(計測条件:BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
【0039】
次に、該プレポリマー組成物に、上記アクリル系ポリマー(B−1)5重量部、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.15重量部、シランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部を添加して混合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。上記アクリル系粘着剤組成物を、剥離フィルム(商品名「MRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが150μmとなるように塗布して、粘着剤組成物層を形成し、次いで、該粘着剤組成物層の表面に、剥離フィルム(商品名「MRN#38」、三菱樹脂株式会社製)を貼り合わせた。その後、照度:5mW/cm2、光量:1500mJ/cm2の条件で紫外線照射を行い、粘着剤組成物層を光硬化させて、粘着剤層を形成した。
【0040】
〈粘着剤Bの作製〉
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)32重量部、イソステアリルアクリレート(ISTA)48重量部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)20重量部、2種の光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF製)0.05重量部、及び光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF製)0.05重量部を、4つ口フラスコに投入してモノマー混合物を調製した。次いで、このモノマー混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、重合率約10重量%の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。このようにして得られたアクリル系ポリマーシロップの100重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.02重量部、シランカップリング剤(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製)を0.3部添加した後、これらを均一に混合してモノマー成分を調製した。
【0041】
次いで、上記のように調製したモノマー成分を、片面をシリコーンで剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルMRF、三菱樹脂(株)製)の剥離処理面に、最終的な厚みが100μmになるように塗布して塗布層を形成した。次いで、塗布されたモノマー成分の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルMRE、三菱樹脂(株)製)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして被覆した。これにより、モノマー成分の塗布層を酸素から遮断した。このようにして得られた塗布層を有するシートに、ケミカルライトランプ((株)東芝製)を用いて照度5mW/cm2(約350nmに最大感度をもつトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を360秒間照射して、塗布層を硬化させて粘着剤層を形成し、粘着剤層の両面に剥離シートが設けられた粘着シート(基材レスタイプ、粘着剤層の厚み:100μm)を作製した。
【0042】
〈粘着剤Cの作製〉
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、モノマー成分として、ブチルアクリレート(BA)99部、4ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA1部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部及び重合溶媒として酢酸エチルを固形分が30%になるように投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後60℃にフラスコを加熱し、7時間反応させて重量平均分子量(Mw)110万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマーの溶液(固形分100部)に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学(株)製「タケネートD110N」)0.1部、シランカップリング剤(信越化学(株)製「KBM−403」)0.1部を加えて粘着剤組成物(溶液)を調製した。このようにして調製した粘着剤溶液を、剥離シートの離型処理面に乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、常圧下、60℃で1分間及び150℃で1分間加熱乾燥し、さらに23℃で120時間エージングを行って粘着剤層を作成した。
【0043】
[屈折率調整層付粘着剤の作製]
〈粘着剤A/高屈折率材料のナノ粒子分散液を使用する事例〉
(粘着剤A/ナノ粒子分散液(分散媒:エタノール)を使用した事例)
粘着剤層の厚さが150μmであって、該粘着剤層の両面が軽剥離PET剥離シートで保護されている状態の粘着剤A(粘着剤層の屈折率:1.49)の一方の軽剥離PET剥離シートを剥離した。露出した粘着剤層の表面に、高屈折率粒子を含有する分散液としてのジルコニア粒子(ZrO
2、屈折率:2.17、平均一次粒子径:20nm)を含有する塗布用処理液(分散媒:エタノール、粒子濃度:1.5重量%、分散液の透過率:75%、CIKナノテック(株)製)を、屈折率調整区分の厚さが20nm〜300nmになるようにバーコーターRDS No.5で塗布し、110℃の乾燥オーブンで180秒間乾燥させた。次いで、ジルコニア(ZrO
2)粒子が分散された粘着剤層表面に、PET剥離シートを貼り合わせ、粘着剤シートを得た。なお、このようにしてジルコニア粒子の平均一次粒子径を、TEM観察により計測した。
【0044】
〈他の事例〉
上記の事例と同様にして、下記の粘着剤及び高屈折率材料のナノ粒子分散液を使用して、同様に粘着剤シートを作製した。使用材料は、粘着剤B(屈折率1.48)、粘着剤C(屈折率1.47)、ZrO
2ナノ粒子分散液(分散媒:エタノール、粒径20nm)、ZrO
2ナノ粒子分散液(分散媒:エタノール、粒径30nm)、及びZrO
2ナノ粒子分散液(分散媒:n-プロパノール、粒径20nm)であった。
【0045】
〈粘着剤A/高屈折率材料としてスチレンオリゴマー溶液を使用した事例〉
粘着剤層の厚さが150μmであって、該粘着剤層の両面が軽剥離PET剥離シートで保護された状態の粘着剤A(粘着剤層の屈折率:1.49)の一方の軽剥離PET剥離シートを剥離した。露出した粘着剤層の表面に、予め固形分濃度2重量%となるようにトルエンに分散したスチレンオリゴマー溶液(屈折率:1.60、ヤスハラケミカル社製、SX−100)を、屈折率調整層の厚さが20nm〜300nmになるようにバーコーターRDS No.5で塗布し、110℃の乾燥オーブンで180秒間乾燥させた。次いで、スチレンを配置した粘着剤層表面に、PET剥離シートを貼り合わせ、粘着剤シートを得た。
【0046】
[評価方法]
<粘着剤層の表面状態の観察>
実施例のそれぞれにおける粘着剤層の高屈折率材料粒子を有する側の表面を、FE−SEMを用いて、加速電圧2kV、観察倍率500倍、2,000倍、5,000倍、及び20,000倍で観察した。
図8にその20,000倍写真を示す。高屈折率材料粒子が均一に分散されていることが分かる。
【0047】
<グラデーション構造の観察>
実施例の粘着剤層の高屈折率材料粒子を有する側の表面近傍の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率30,000倍で観察した。その結果を
図9(a)(b)に示す。
図9(a)では、屈折率調整用区分の厚みのほぼ全体にわたって高屈折率材料粒子がほぼ均一に分布しているが、
図9(b)の例では、粘着剤層における高屈折率材料粒子の分布が、粘着剤層の表面で最も高く、粘着剤層の厚さ方向に従って減少していく分布を有することが分かる。
【0048】
<平均表面屈折率>
実施例及び比較例で得られた粘着シートの平均表面屈折率を、分光エリプソメーター(EC−400、JA.Woolam製)を用いてナトリウムD線(589nm)における屈折率を測定した。実施例及び比較例の粘着シートでは、両面の剥離シートを剥離して、粒子を塗布していない面に黒板を貼り合わせた状態で、粒子が塗布されている面の平均屈折率を測定した。比較例の粘着シートでは、両方の剥離シートを剥離して、一方の面に黒板を貼り合わせた状態で、粘着剤層表面の平均屈折率を測定した。
【0049】
<屈折率調整層の厚さの測定>
粘着剤層の深さ方向の断面を調整し、TEM観察を行った。得られたTEM像(直接倍率3000〜30000倍)から屈折率調整層の厚さの測定を計測した。屈折率調整層の厚みは、粘着剤ベース層との調整層との界面の凸凹の平均値とし、粘着剤ベース層との界面の判別が困難な場合には、表面TEM像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理し、ナノ粒子の90%が存在する領域の深さを調整層の厚みとした。
【0050】
<高屈折率粒子の面積比率>
粘着剤層の粒子塗布側の表面を、FE−SEMを用いて、加速電圧2kV、観察倍率500倍、2,000倍、5,000倍で観察した。得られた表面SEM像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理することで、長辺23μm、短辺18μmの長方形領域における全体面積に対する面積として高屈折率粒子の占める面積比率(%)を求めた。
【0051】
<全光線透過率、ヘイズ値>
実施例及び比較例で得られた粘着シートでは、粒子塗布側の剥離シートを剥離して、スライドガラス(商品名:白研磨 No.1、厚さ:0.8〜1.0mm、全光線透過率:92%、ヘイズ:0.2%、松浪硝子工業(株)製)に貼り合わせた。さらに他方の剥離シートを剥離して、粘着剤層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。また、比較例の粘着シートでは、一方の剥離シートを剥離して、スライドガラス(商品名:白研磨 No.1、厚さ:0.8〜1.0mm、全光線透過率:92%、ヘイズ:0.2%、松浪硝子工業(株)製)に貼り合わせ、さらに他方の剥離シートを剥離して、粘着剤層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。上記試験片の可視光領域における全光線透過率、ヘイズ値を、ヘイズメーター(装置名:HM−150、(株)村上色彩研究所製)を用いて測定した。
【0052】
<180度ピール接着力(ガラス板に対する180度引き剥がし接着力)>
実施例及び比較例で得られた粘着シートから、長さ100mm、幅20mmのシート片を切り出した。次いで、実施例及び比較例のシート片では、粒子が塗布されていない側の剥離シートを剥離して、PETフィルム(商品名:ルミラー S−10、厚さ:25μm、東レ(株)製)を貼付(裏打ち)した。また、比較例1、2のシート片では、一方の剥離シートを剥離して、PETフィルム(商品名:ルミラー S−10、厚さ:25μm、東レ(株)製)を貼付(裏打ち)した。次に、他方の剥離シートを剥離して、試験板としてのガラス板(商品名:ソーダライムガラス ♯0050、松浪硝子工業(株)製)に、2kgローラー、1往復の圧着条件で圧着し、試験板/粘着剤層/PETフィルムから構成されるサンプルを作製した。
【0053】
得られたサンプルについて、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)し、その後、23℃、50%R.H.の雰囲気下で30分間放冷した。放冷後、引張試験機(装置名:オートグラフ AG−IS、(株)島津製作所製)を用い、JIS Z0237に準拠して、23℃、50%R.H.の雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、試験板から粘着シート(粘着剤層/PETフィルム)を引きはがし、180°引き剥がし接着力(N/20mm)を測定した。また、各実施例、比較例において、高屈折率粒子未塗布の粘着シートを作製し、当該高屈折率粒子未塗布の粘着シートにおいても、上記同様に、180度ピール接着力を測定し(ベース粘着剤層の接着力)、ベース粘着剤層の接着力に対する各サンプルの180度ピール接着力の比率(%)を計算した。
【0054】
<高屈折率粒子を含有する分散液の透過率>
高屈折率粒子を含有する分散液の透過率は、光電比色計(AC−114、OPTIMA社製)で530nmのフィルターを用いて測定した。分散溶媒単独の透過率を100%として、各実施例、比較例で使用した分散液の透過率(%)を測定した。
【0055】
<反射抑制率の測定>
実施例及び比較例の光学部材積層体の一方の面を反射率測定面とし、反対側の面に黒PET基材付テープ(リンテック(株)製 PET75NBPET38)を貼って反射率測定用の試料とした。光学部材積層体の反射率測定面側の反射率(Y値)を反射型分光光度計(U4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)により測定した。測定は、透明導電層をエッチングした部分と、エッチングしていない部分の双方の位置で行った。すなわち、透明導電層をエッチングした部分(開口部)の測定は、粘着剤層の屈折率調整層と光学部材積層体の屈折率調整層との界面の反射率であり、エッチングしていない部分(パターン部)の測定は、粘着剤層の屈折率調整層と透明導電層界面の反射率を示す。
【0056】
反射抑制率は、エッチングした部分とエッチングしてない部分のそれぞれについて、下式に基づきを算出した。なお、下記式中の「粒子がない場合の反射率(%)」とは、比較例(粒子を用いない場合)の光学部材積層体の反射率である。すなわち、反射抑制率は、屈折率調整層を有することでどの程度反射率が低減できたかを示す指標である。
反射抑制率(%)=反射率(%)−粒子がない場合の反射率(%)
【0057】
[屈折率調整層付粘着剤と透明導電層の積層体の作製]
<基材としてゼオノア(COP)を使用する透明導電層の作製>
厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(商品名:「ゼオノアZF16」、面内複屈折率:0.0001、日本ゼオン(株)製)の両面に、直径3μmの複数の粒子(商品名:「SSX105」、積水樹脂(株)製)を、バインダー樹脂(商品名:「ユニディックRS29−120」、DIC社製)100部に対して0.07部添加した塗工液をバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで両面にアンチブロッキング層を有するフィルムを形成した(以下、COP基材)。次に、COP基材の片面に、屈折率調整剤(商品名:「オプスター KZ6661」、JSR(株)製)をバーコーターにより塗布し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで、厚さ100nm、屈折率1.65の屈折率調整層を形成した。得られたCOP基材の屈折率調整層の表面に、巻き取り式スパッタ装置において、透明導電層として厚さ23nmのインジウムスズ酸化物層(ITO)を積層した。
【0058】
<基材としてPETを使用する透明導電性層の作製>
厚さ50μmのPETフィルム(商品名:「ルミラー:U40」東レ社製)の片面に直径3μmの複数の粒子(商品名:「SSX105」、積水樹脂(株)製)を、バインダー樹脂(商品名:「ユニディックRS29−120」、DIC社製)100部に対して0.1部添加した塗工液を、バーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブン下1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで片面に膜厚1.5μmのアンチブロッキング層を形成した。次に、先ほど塗工した面とは逆面に、ハードコート用樹脂(商品名:「オプスター KZ7540(シリカナノ粒子含有)」、JSR(株)製)をMIBKで固形分10%になるように調整した塗工液を、バーコーターを用いて塗工し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで膜厚1.5μmのハードコート層を有するフィルムを形成した(以下、PET基材)。
次に、先ほど得られたハードコート層の上に、屈折率調整剤(商品名:「オプスター H0001(ジルコニアナノ粒子含有)」、JSR(株)製)をMIBKで固形分10%になるように調整した塗工液を、バーコーターを用いて塗工し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで膜厚35nm、屈折率1.63の屈折率調整層2を形成した。次に、前述の屈折率調整層2の上に、屈折率調整剤(商品名:「L−005(中空ナノシリカ粒子含有)」、JSR(株)製)をMIBKで固形分1.5%になるように調整した塗工液を、バーコーターを用いて塗工し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで膜厚40nm、屈折率1.49の屈折率調整層1を形成した。その後、屈折率調整層1、2を有するPET基材を、巻き取り式スパッタ装置に投入し、屈折率調整層1の表面に、透明導電層として厚み23nmのインジウムスズ酸化物層(ITO)を積層した。
【0059】
<基材としてガラスを使用する透明導電層の作製>
無アルカリガラス(屈折率1.53)の一方の面に、スパッタリング法によりITO膜を形成し、非結晶化ITO膜(屈折率1.85)を有する透明導電性基材を作製した。この非結晶性ITO薄膜のSn比率は、3重量%であった。なお、ITO薄膜のSn比率は、Sn原子の重量/(Sn原子の重量+In原子の重量)から算出した。
【0060】
<タッチパネルセンサとして機能する光学部材積層体の製造>
上記透明導電層上の一部にフォトレジスト膜を形成した後、これを25℃、5重量%の塩酸(塩化水素水溶液)に1分間浸漬して、透明導電層のエッチングを行った。これにより電極配線パターンに相当する透明導電層が存在する部分(パターン部)と、除去された部分(開口部)とを作製した。上述した粘着剤シートの高屈折率材料粒子を有する側のPET剥離シートを剥離し、パターニングされた透明導電層の上に、該粘着剤シートの粘着剤層(前記高屈折率粒子を有する側)と該透明導電層とが接触するように、該粘着剤シートを積層した。粘着剤シートの反対側のPET剥離シートを剥離した後に、表面保護及び光学測定のためにスライドガラス又は厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(商品名:「ゼオノアZF16」、面内複屈折率:0.0001、日本ゼオン(株)製)を貼り合せた。
【0061】
[第2光学部材の作製]
第2光学部材4として、
図6(a)に示す積層体21と
図6(b)に示す積層体31を準備した。
図6(a)に示す積層体21は、屈折率1.53のCOP基材22の一表面上に屈折率1.65の屈折率調整層23が形成され、該屈折率調整層23の上に、パターン化されたITO層24が形成された構成である。ITOの屈折率は、1.9であった。この積層体21を「ITO付第2光学部材(1)」と呼ぶ。
【0062】
図6(b)に示す積層体31は、屈折率1.57のPET基材32の一表面上に屈折率1.63の屈折率調整層33が形成され、該屈折率調整層33の上に、さらに屈折率1.49の別の屈折率調整層33aが形成され、該屈折率調整層33aの上に、パターン化されたITO層34が形成された構成である。この場合においても、ITOの屈折率は、1.9であった。この積層体31を「ITO付第2光学部材(2)」と呼ぶ。
【0063】
さらに、
図6(c)に示す「ITO付第2光学部材(3)」と呼ぶ積層体41を作製した。このITO付第2光学部材(3)の積層体41は、屈折率1.53のガラス基板42にパターン付けされていないITO層44を形成した構成である。
【0064】
[実施例1]
図7(a)に示すように、ITO付第2光学部材(1)を、本発明の一実施形態による粘着剤層25を介して第1光学部材2を構成するガラスウインドウ26に接合した。ガラスウインドウ26の屈折率は1.53であった。粘着剤層25は、粘着剤Aにより形成された屈折率1.49のベース粘着剤区分25aと、屈折率1.68の屈折率調整用区分25bを有するものであった。屈折率調整用区分25bは、平均粒径20nmの酸化ジルコニウム粒子をエタノール液に分散させた、酸化ジルコニウム粒子1.5wt%の分散液を、粘着剤Aからなる粘着剤層の表面に塗布し、酸化ジルコニウム粒子を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。粘着剤層25の厚みは150μmであり、屈折率調整用区分25bの厚みは150nmであった。この実施例1における屈折率調整用区分25bの表面写真を
図8に、断面写真を
図9(a)に、それぞれ示す。反射率測定のために、COP基材22の屈折率調整層23とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム27を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例2]
図7(b)に示すように、ITO付第2光学部材(2)を、本発明の他の実施形態による粘着剤層35を介して第1光学部材2を構成するガラスウインドウ36に接合した。ガラスウインドウ26の屈折率は1.53であった。粘着剤層35は、粘着剤Bにより形成された屈折率1.48のベース粘着剤区分35aと、屈折率1.62の屈折率調整用区分35bを有するものであった。屈折率調整用区分35bは、平均粒径20nmの酸化ジルコニウム粒子をn‐プロパノール液に分散させた、酸化ジルコニウム粒子2.0wt%の分散液を、粘着剤Bからなる粘着剤層の表面に塗布し、酸化ジルコニウム粒子を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。粘着剤層35の厚みは100μmであり、屈折率調整用区分35bの厚みは500nmであった。この実施例2においける屈折率調整用区分35bの断面写真を
図9(b)に示す。反射率測定のために、PET基材32の屈折率調整層33とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム37を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
[実施例3]
図7(c)に示すように、ITO付第2光学部材(3)を、本発明のさらに他の実施形態による粘着剤層45を介して第1光学部材2を構成するウインドウ46に接合した。ウインドウ46は、ゼオノアフィルム(ZF14−100、登録商標)により作製した、屈折率1.53の透明部材である。粘着剤層45は、粘着剤Cにより形成された屈折率1.46のベース粘着剤区分45aと、屈折率1.70の屈折率調整用区分45bを有するものであった。屈折率調整用区分45bは、平均粒径30nmの酸化ジルコニウム粒子をエタノール液に分散させた、酸化ジルコニウム粒子1.5wt%の分散液を、粘着剤Cからなる粘着剤層の表面に塗布し、酸化ジルコニウム粒子を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。粘着剤層45の厚みは25μmであり、屈折率調整用区分45bの厚みは200nmであった。反射率測定のために、ガラス基板42のITO層44とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム47を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例4]
実施例1とは異なる構成の粘着剤層を使用して、
図7(a)に示すものと同様な光学部材積層体を作製した。この実施例においては、ITO付第2光学部材(1)を、本発明のさらに別の実施形態による粘着剤層25を介して第1光学部材2を構成するガラスウインドウ26に接合した。ガラスウインドウ26の屈折率は1.53であった。粘着剤層25は、粘着剤Aにより形成された屈折率1.49のベース粘着剤区分25aと、屈折率1.65の屈折率調整用区分25bを有するものであった。屈折率調整用区分25bは、平均粒径20nmの酸化チタン粒子をn‐ブタノール液に分散させた、酸化チタン粒子0.5wt%の分散液を、粘着剤Aからなる粘着剤層の表面に塗布し、酸化チタン粒子を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。この実施例における粘着剤層25の厚みは150μmであり、屈折率調整用区分25bの厚みは130nmであった。反射率測定のために、COP基材22の屈折率調整層23とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム27を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例5]
屈折率1.60のスチレンオリゴマーを使用して屈折率調整用区分を形成することにより、
図7(a)に示すものと同様な光学部材積層体を作製した。この実施例においては、ITO付第2光学部材(1)を、本発明のさらに別の実施形態による粘着剤層25を介して第1光学部材2を構成するガラスウインドウ26に接合した。ガラスウインドウ26の屈折率は1.53であった。粘着剤層25は、粘着剤Aにより形成された屈折率1.49のベース粘着剤区分25aと、屈折率1.55の屈折率調整用区分25bを有するものであった。屈折率調整用区分25bは、固形分として屈折率1.60のスチレンオリゴマーをトルエン液に分散させた固形分2wt%の分散液を、粘着剤Aからなる粘着剤層の表面に塗布し、固形分を粘着剤層の一方の表面から厚み方向に浸透させ、乾燥させることによって得られたものである。この実施例における粘着剤層25の厚みは150μmであり、屈折率調整用区分25bの厚みは300nmであった。反射率測定のために、COP基材22の屈折率調整層23とは反対側の面である裏面には、黒色のPETフィルム27を貼った。このようにして得られた光学部材積層体の光学特性を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
[比較例1]
ITO付第2光学部材(1)を、粘着剤Aのみからなる粘着剤層を介して第1光学部材2を構成する屈折率1.53のガラスウインドウ26に接合して、比較例1の光学部材積層体を作製した。
【0070】
[比較例2]
ITO付第2光学部材(2)を、粘着剤Bのみからなる粘着剤層を介して第1光学部材2を構成する屈折率1.53のガラスウインドウ26に接合して、比較例2の光学部材積層体を作製した。
【0071】
[比較例3]
ITO付第2光学部材(3)を、粘着剤Cのみからなる粘着剤層を介して第1光学部材2を構成する屈折率1.53のガラスウインドウ26に接合して、比較例3の光学部材積層体を作製した。
【表1】