(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266622
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】電極アレイ及び患者から電気信号を測定する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0408 20060101AFI20180115BHJP
A61B 5/0478 20060101ALI20180115BHJP
A61B 5/0492 20060101ALI20180115BHJP
A61B 5/04 20060101ALI20180115BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
A61B5/04 300J
A61B5/04 300Q
A61B5/04 QZDM
A61B3/10 E
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-531160(P2015-531160)
(86)(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公表番号】特表2015-529113(P2015-529113A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】US2013058007
(87)【国際公開番号】WO2014039525
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年8月29日
(31)【優先権主張番号】61/696,499
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509048716
【氏名又は名称】エルケーシー テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】ダトベック、ジェームス、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デービス、チャールズ、クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ、ブライアン、アラン
(72)【発明者】
【氏名】ホベット、アナトリエ
(72)【発明者】
【氏名】ハンレス、フランク
【審査官】
佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第01629768(EP,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0030258(US,A1)
【文献】
米国特許第06032064(US,A)
【文献】
米国特許第06453186(US,B1)
【文献】
米国特許第06233472(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0031916(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0130585(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0060975(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0177767(US,A1)
【文献】
特開2011−072543(JP,A)
【文献】
特開2008−086392(JP,A)
【文献】
特開平08−140951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極アレイであって、
(a)少なくとも2つのヒドロゲル島であって、前記少なくとも2つのヒドロゲル島と接触している対応する電極を有する少なくとも2つのヒドロゲル島、
(b)電極領域、ねじれ緩衝領域及びコネクタ領域を含む可撓性絶縁基板、及び
(c)前記電極を前記コネクタ領域に電気的に接続している前記可撓性絶縁基板上に配置される導体を備え、
前記電極のすべては電極領域に配置され、
前記コネクタ領域及び前記電極領域は、ねじれ緩衝領域を介して一緒に接続され、
前記ねじれ緩衝領域は前記電極領域の長辺に接続され、前記電極領域の長辺はすべての電極を囲む最も小さい長方形の長辺として定義され、
前記ねじれ緩衝領域の前記長辺の方向の幅は前記コネクタ領域の前記長辺の方向の幅より狭く、及び
前記コネクタ領域は先端領域及び停止領域を備え、前記先端領域は端に配置され、前記停止領域は前記先端領域に隣接して配置され、前記停止領域の前記長辺の方向の幅が前記先端領域の前記長辺の方向の幅より広いことを特徴とする電極アレイ。
【請求項2】
前記コネクタ領域の前記可撓性絶縁基板の端が前記導体との電気的接触をするためにコネクタの位置決めに役立つガイドを形成する請求項1に記載の電極アレイ。
【請求項3】
隣接する前記電極間の最小距離に対する隣接する前記電極間の最大距離の比率が3未満である請求項1又は2に記載の電極アレイ。
【請求項4】
前記比率が2未満であることを特徴とする請求項3に記載の電極アレイ。
【請求項5】
前記導体及び前記電極の全てが前記可撓性絶縁基板の一方の側に位置する請求項1乃至4のいずれかに記載の電極アレイ。
【請求項6】
前記ヒドロゲル島が100グラム/インチ以上かつ1500グラム/インチ以下のステンレス鋼に対する剥離強度を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の電極アレイ。
【請求項7】
前記電極アレイが正確に3本の電極を有する請求項1乃至6のいずれかに記載の電極
アレイ。
【請求項8】
前記電極が金、銀、プラチナ、パラジウム、ロジウム、ニッケル、炭素、インジウム、スズ又は銅の少なくとも一つを含む請求項1乃至7のいずれかに記載の電極アレイ。
【請求項9】
前記電極が金、銀又は炭素の少なくとも一つを含む請求項8に記載の電極アレイ。
【請求項10】
前記電極が銀又は塩化銀の少なくとも一つを含む請求項8に記載の電極アレイ。
【請求項11】
患者に請求項1乃至10のいずれかの電極アレイを接触させる工程、及び
少なくとも一つの電極から電気信号を測定する工程
を含む患者から電気信号を測定する方法。
【請求項12】
前記電気信号は前記電極アレイの2本の電極間の電位差であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電極アレイが網膜電図を記録するのに適していることを特徴とする請求項1に記載の電極アレイ。
【請求項14】
前記電極アレイが網膜電図を記録するのに適していることを特徴とする請求項2に記載の電極アレイ。
【請求項15】
前記電気信号が網膜電図であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2012年9月4日に出願された、「電極アレイ」という名称の米国仮出願61/696,499の利益を主張する。上述した出願の全部は、参照により本願明細書に取り込まれる。
【0002】
本願明細書に記載されている発明は、米国国立衛生研究所によって与えられた助成9R44EY021121に基づき、政府の支持で製造された。したがって、助成の条件により、米国政府は、本出願における特定のライセンス権を有する。
【技術分野】
【0003】
本発明の実施形態は、改良された電極アレイ
及び患者から電気信号を測定する方法に関する。これらの電極アレイは、生理的電気信号をモニタするために用いることができる。
【背景技術】
【0004】
電極は、患者の皮膚上の生理的電気信号をモニタするために用いることができる。例えば、これらの信号は、筋肉、神経、心臓、脳、耳又は目から得ることができる。患者からのモニタリング電気信号は、例えば、さまざまな器官及び器官系の健康を測定するために用いることができる。用途は、光学、音響、触覚、熱、嗅覚及び味覚刺激からの心電図、網膜電図、神経伝導テスト、脳波図、胃筋電図及び誘発電位測定を含むが、これに限定されるものではない。
【0005】
皮膚上の生理的電気信号をモニタすることの困難の1つは、多くの電極を別に配置しなければならないことにより生じる不便性及び可変性である。この困難を克服するために電極アレイが採用されている(例えば、米国特許5,722,591、6,032,064及び6,564,079)。
【0006】
より使いやすい電極アレイを作り及び/又はパフォーマンスを高める必要がまだ存在する。
【発明の概要】
【0007】
1つの実施形態において、電極アレイが開示される。電極アレイは、少なくとも2つのヒドロゲル島(hydrogel island)を含む。ヒドロゲル島の少なくとも2つは、前記ヒドロゲル島と接触している対応する電極を有する。電極アレイは、電極領域、ねじれ緩衝領域(torsion relief region)及びコネクタ領域を含む可撓性絶縁基板をも有する。電極アレイは、電極をコネクタ領域に電気的に接続する前記基板に置かれる導体をも備える。これらの実施形態では、すべての電極は電極領域に配置される。コネクタ領域及び電極領域は、一緒にねじれ緩衝領域経由で接続することができる
。そして、すべての電極を囲む最も小さい長方形の長辺として、電極領域の長辺が定義される。
ねじれ緩衝領域の長辺方向の幅はコネクタ領域の長辺方向の幅より狭くてもよく、電極領域の長辺に接続していることができる。コネクタ領域は先端領域及び停止領域を含むことができる。そして、先端領域が電極アレイの端に配置され、停止領域が先端領域に隣接して配置され、停止領域
の長辺の方向の幅が先端領域
の長辺の方向の幅より広い。電極アレイは、例えば、生理的電気信号をモニタするために用いることができる。
【0011】
他の実施形態は、患者から生理的電気信号等の電気信号を測定するために上記の電極アレイを使用する方法を含む。当該方法は、電極アレイを患者に接触して、少なくとも一つの電極から電気信号を測定する工程を含む。電気信号は、電極アレイの2本の電極間の電位差でもよい。
【0012】
他の実施形態は、患者から2つの生理的電気信号等の少なくとも2つの電気信号を測定するために上記の電極アレイの対を使用する方法を含む。当該方法は、一対の電極アレイを得て、両方の電極アレイを患者に接触して、各配列から少なくとも一つの電極から電気信号を測定する工程を含む。電気信号は、2つの電極対間の電位差でもよく、各対の部材が同じ電極アレイにあってもなくてもよい。
【0013】
前述の一般的説明及び以下の詳細な説明は典型的及び説明的なものであり、請求される本発明を制限するものではないことを理解すべきである。前述の背景及び概要は、請求された本発明に対するいかなる独立制限も提供することを目的としない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図面は、本明細書中に組み込まれて、本明細書の一部を構成するものであり、本発明のいくつかの実施形態を例示して、詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0015】
【
図1a】
図1aは、患者側から見た電極アレイの一実施例の分解図である。
【0016】
【
図1b】
図1bは、オペレータ側から見た電極アレイの一実施例の分解図である。
【0017】
【0018】
【
図2】
図2は、オペレータ側から見た電極アレイのある実施形態の図である。
【0019】
【
図3】
図3は、患者側から見た一対の電極アレイのある実施形態の図である。
【0020】
【
図4a-4e】
図4a―4eは、オペレータ側から見た電極アレイの対上のマーキングの組を示すいくつかの実施例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明は、あらゆる当業者が本発明を製造し使用することができるために提供される。説明のために、特定の命名法は、本発明の完全な理解を提供するために記載される。しかし、これらの具体的な詳細が本発明を実施することを必要としないことは、当業者にとって明らかである。特定の用途の説明は、代表例だけとして設けられている。本発明は、図示した実施例に限られていることを目的としなくて、本願明細書において開示される原則及び特徴と整合した最も広い可能性がある範囲を与えられるものである。
【0022】
定められない限り、本発明に関連して使用する科学的及び専門的な用語は当業者によって一般に理解される意味を有する。本願明細書において記載されているそれらと類似又は同等であるいかなる方法、装置及び材料が本開示の内容の実行において用いられるが、代表的な方法、装置及び材料がここでは記載されている。更に、文脈により必要でない限り、単数語は複数を含み、複数語は単数を含む。
【0023】
本明細書中で使用する場合、「ヒドロゲル」という用語は、水により全体にわたって膨張される非流体コロイドネットワーク又はポリマーネットワークを意味する。ヒドロゲルは、医薬、バイオフィードバック又は生物学的テスト技術において公知のあらゆる電気伝導、水を含むゲルのこともいう。ヒドロゲルは、例えば、シリコーン、ポリアクリルアミド、酸化ポリエチレン、polyAMPS、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリレート重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、アガロース、メチルセルロース又はヒアルロナンを含むことができる。ヒドロゲルは、水膨張したコロイドネットワーク又はポリマーネットワークと同様に機械的強化部材を任意に含むことができる。更に、ヒドロゲルが第2のヒドロゲルに接触しない場合、ヒドロゲルは「ヒドロゲル島」である。例えば、1つのヒドロゲルは、常にヒドロゲル島である。別の例として、相互に非接触である場合、3つのヒドロゲルは3つのヒドロゲル島を形成する。
【0024】
本明細書において、「患者」という用語は、電気信号が測定されることになっている、ヒトであるか他の哺乳類のことをいう。本発明の電極アレイが電気信号の測定を可能にするために患者に接触すると考えられる。
【0025】
本明細書中で使用する場合、「基板」という用語は、電極及び導体が配置されることができる支持材料をいう。基板は、例えば、プラスチックの単一の板又は材料の積層体でもよい。使用するプラスチックは、以下:ポリカーボネート、セルロース、ポリエステル繊維塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ABS、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、PTFE、アセタール、ポリエステル、PVDF、FEP、PFA、ULTEM、PEEK、ポリイミド、ガロライト(garolite)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び二軸配向ポリエチレンテレフタレート(boPET)の一つ以上(すなわち、組合せ)から選択することができる。
【0026】
改良された電極アレイは、更なる目的、特徴及びその利点と同様に、特定の好ましい実施形態の以下の詳細な説明から、より完全に理解される。これらの電極アレイは、皮膚から生理的電気信号等の生理的電気信号をモニタするために用いることができる。例えば、これらの信号は、筋肉、神経、心臓、脳、一方又は両方の耳又は一方又は両方の目から生じることができる。両側性に対称形の器官及び組織に、一対の電極アレイを好都合に用いることができる。
【0027】
図1a及び
図1bは、電極アレイ100の一実施例の分解図である。
図1cは、
図1aから導電層110の拡大を有する。この例では、電極アレイ100は、ヒドロゲル島(101a、101b、101c)、任意の絶縁層102及び導電層110の層を含む。すべてのヒドロゲル島はまとめて参照番号101と呼ぶことができる。ヒドロゲル島101a、101b、101cはそれぞれ、電極108a、108b、108cに接触するように、絶縁層102は開口103を有する。すべての電極はまとめて参照番号108と呼ぶことができる。電極108は、導電層110上に配置される。導電層110は、可撓性絶縁基板104を有する。基板104は論理的にはコネクタ領域106、ねじれ緩衝領域105及び電極領域111に分裂することができ、この例では基板104の残りとなる。
図1cにおいて、導電層110は、コネクタ領域106にねじれ緩衝領域105経由で対応する電極108a、108b及び108cを電気的に接続する導体107a、107b及び107c(まとめて107)を有する。例えば、電極108aは、コネクタ領域106の接触位置109aに導体107aを介して接続している。接触位置109b及び109cはそれぞれ、電極108b及び108cに、導体107b及び107cを介して同様に接続される。
【0028】
3つのヒドロゲル島(101a、101b、101c)及び3本の電極(108a、108b、108c)が
図1a及び
図1bに示されるが、他の量も考えられる。例えば、電極108bは、省略されることができる。この場合、対応するヒドロゲル島101bは、省略されても省略されなくてもよく、ヒドロゲル島101bは、電極アレイ100を被験者に付着するのを助けるためにさらに有用でありうる。他の実施形態において、4以上のヒドロゲル島を用いることができ、そのうち少なくとも二つが対応する電極を有する。例えば、電極アレイ100は、5、10、20、50又はそれ以上の電極を有することができる。
【0029】
絶縁層102は、ヒドロゲル島が意図される電極以外の電極に接続する導体に接触するのを防止する。絶縁層102が用いられないときは、ビアを用いることができ、又は、より小さいヒドロゲル島は遠隔導体をコネクタ領域106(例えば、ヒドロゲル101bのそばのルーティング導体107c)に送るために用いることができる。
【0030】
存在するとき、開口103は電極108の寸法より大きくてもよく、小さくてもよく、あるいは、等しくてもよい。開口103がその対応する電極108より小さい場合、開口103はその電極の有効な大きさを規定する。絶縁層102の製造又は絶縁層102及び導電層110の登録の製造耐性による電極サイズの可変性を低減するために、開口103は、電極108の寸法と異なってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル島101は、電極と患者との間に電気信号を運ぶために、使用中、患者の皮膚に接触する。ヒドロゲル島101は、電極アレイ100が患者の皮膚に付着するか又は患者の皮膚を支持するのを助けることもできる。加えて、電極アレイ100は泡付接着剤、感圧性接着剤又は電極アレイが患者の皮膚に付着するか又は患者の皮膚を支持することを助ける他の材料を含むことができる。但し、この種の物質は必ずしも必要とされるものではなく、また
図1には示されていない。
【0032】
いくつかの実施形態では、後述するように、ねじれ緩衝領域105は改良された動作を提供する。動作中、電極アレイ100は、患者の皮膚に接触する。電極アレイ100は、患者の体の関連部分の形状に適合するように可撓性を有する。一方、電極アレイ100と取付けられた器具との間に電気信号を運ぶ電気コネクタの形状に、コネクタ領域106は、おおむね適合する。また、使用中、すなわち患者の体の接触領域の形状に適合させる際に、コネクタ領域106の形状は電極領域111と同じ形状ではない。そのため、電極アレイ100は曲がるようにできている。この曲げによって、患者の体への付着を低減し、従って、患者から電気信号を測定する電極アレイ100の能力に影響を及ぼすヒドロゲル島101上に力が生じる場合がある。ねじれ緩衝領域105は、曲げ剛性を低減して、この付着問題を改善するように、コネクタ領域106より狭い。各種実施形態において、ねじれ緩衝領域105は、コネクタ領域106の最大幅に対する様々な範囲に属する幅を有することができる。例えば、ねじれ緩衝領域105は、コネクタ領域106の最大幅より少ない0.9、0.8、0.7、0.5、0.3、0.2、又は0.1倍未満の幅を有することができる。幅の他の範囲も同様に選択することができる。電気コネクタがおそらく患者の皮膚から離れるにつれて、電気コネクタの重量の効果を減らすために、単一のヒドロゲル島を剥ぎ取る可能性があり、ねじれ緩衝領域は電極領域の長辺に接続し、すべての電極を囲む最も小さい長方形の長辺として、電極領域の長辺が定義される。従って、コネクタの重量はヒドロゲル全体により均一に分布し、作動中に、電極領域の短辺が電極領域の長辺より重力方向に近くに配置されると仮定する。
【0033】
コネクタ領域106は、先端領域112及び停止領域113を含むことができる。使用する電気コネクタは、先端領域112上に作動中に摺動することができる。いくつかの実施形態では、停止領域113は、コネクタが電極アレイ100上により遠くに摺動するのを物理的に止める。いくつかの実施形態では、停止領域113は、コネクタが電極アレイ100に十分に装着されるユーザに、視覚のフィードバックを提供する。いくつかの実施形態では、コネクタがコネクタ領域106上で摺動することをより容易にするように、先端領域112は、
図1に示すように、テーパー側面を有する。先端領域112は、直線状側面を有することもできる。先端領域112は、コネクタの配列の援助に、一つ以上の穴又は切欠きを有することができる。
【0034】
電極108は、金属又は半導体から製造することができる。作動中の電極108は、電子/正孔の流れをヒドロゲル島101のイオンの流れに変換することが可能である。電極108は、金、銀、プラチナ、パラジウム、ロジウム、ニッケル、炭素、インジウム、スズ又は銅の少なくとも一つから製造することができる。電極108は、金、銀又は炭素の少なくとも一つを含むことができる。電極108は、銀/塩化銀を含むことができる。電極108は、印刷、シルクスクリーニング、インクジェット印刷、スパッタリング又は印刷回路基板の製作方法等の当該技術分野に公知のあらゆる手段によって基板104上に配置することができる。電極108は、シルクスクリーンの銀、銀/塩化銀、カーボンブラック又はカーボンナノチューブでもよい。大きな電気化学的表面積を有することにより、インピーダンスが低下し、動作が改善する。
【0035】
導体107は、金属又は半導体から製造することができる。導体107は、電極108を製造するために用いられる材料と同じ又は異なる材料から、製造することができる。
導体107は、電極108を製作するために用いる方法と同じ種類の方法を使用して製造することができる。いくつかの実施形態では、導体107は、同一材料から作られ、電極108と同時に基板104上に配置される。いくつかの実施形態では、導体107が最初に積層され、電極108は導体107の一部上に積層される。例えば、導体107は、銀/塩化銀層が電極108に塗布される前に塗布されるシルクスクリーンのカーボンブラックでもよい。あるいは、導体107は、炭素又は銀/塩化銀層が電極108に塗布される前に塗布されるシルクスクリーンの銀でもよい。いくつかの実施形態では、導体107及び電極108は、シルクスクリーンプロセスを使用して製造する銀/塩化銀である。
【0036】
導体107a、107b、107cは、コネクタ領域106に対応する接触位置109a、109b、109c(集合的に109)を有することができる。電極アレイ100に接続する電気コネクタのより大きな目標を作るように、接触位置109は、導体107より広くてもよい。コネクタ領域106の端のいくつかは、接触位置109に電気接続を行うためにコネクタを配置する際に役立つガイドを形成することができる。接触位置109は、金属又は半導体から製造することができる。接触位置109は、導体107と同じ又は異なる材料から製造してもよい。接触位置109は、導体109を製造するために用いる方法と同じ種類の方法を用いて製造することができる。いくつかの実施形態では、導体107が最初に積層され、接触位置109は導体107の一部上に積層される。例えば、導体107は、銀又は金の層が接触位置109に塗布される前に塗布されるシルクスクリーンのカーボンブラックでもよい。いくつかの実施形態では、導体107及び接触位置109は、シルクスクリーンプロセスを使用して製造する銀/塩化銀である。
【0037】
いくつかの実施形態では、電極108は、実質的に均一に離間する。いくつかの実施形態では、隣接する電極間の最小距離に対する隣接する電極間の最大距離の比率は3未満である。いくつかの実施形態では、比率は2未満である。いくつかの実施形態では、比率は1.5未満である。隣接する電極間の距離は、直線又は曲線のエンドポイントの1つが1本の電極にあり、他のエンドポイントが他の電極にある基板に沿って動く最短の直線又は曲線として、定義される。
【0038】
ヒドロゲル101は、水及びイオンをポリマーマトリックスに含むことができる。表面積が大きいことにより、皮膚へのインピーダンスが低減し、更にヒドロゲルの皮膚への付着が増大する。ヒドロゲルの表面積が極端に大きいと、電気信号の空間的分解能が減少する。ヒドロゲルの粘着性が強すぎると皮膚から除去するとき不快であり、電極アレイが例えば目の下のような敏感な皮膚に使われる場合特に重要である。粘着性が十分でないヒドロゲルを用いると、接触を確実にする他のいかなる手段も設けられていない実施形態では、電極アレイの接触が劣ることになるおそれがある。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル島は、100グラム/1インチ以上かつ1500グラム/1インチ以下のステンレス鋼に対する剥離強度を有する。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル島は、400グラム/1インチ以上かつ1000グラム/1インチ以下のステンレス鋼に対する剥離強度を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、
図1に示す実施形態を含め、電極の全てが基板の一方の側に位置する。他の実施形態は、両側上に電極を有することができる。
【0040】
ここで
図2を見ると、電極アレイ200は、本発明の他の実施形態である。電極アレイ200は、コネクタ領域206及び電極領域211を有する可撓性絶縁基板204を含め、類似のヒドロゲル島201a、201b、202cならびに電極アレイ100の他の特徴の多数を有する。電極アレイ200は、ねじれ緩衝領域205、コネクタ領域206を任意に有し、上記した電極アレイ100の他の特徴と同様に、先端及び停止領域を含む。いくつかの実施形態では、2つのヒドロゲル島だけが必要とされる。電極アレイ200上の導体は、電極アレイ100の導体と類似している。電極アレイ200は、新たな特徴:シールド導体214を含むシールドを有する。シールド導体214は、電極が基板204の第1側部中を占める基板204の第2側部上に対応する領域の少なくとも半分をカバーする。シールド導体214は固くてもよく、又は、メッシュ、櫛又はハッチパターンを有する領域を含むことができる。メッシュ、櫛又はハッチパターンはシールド導体204の材料費を低減することができ、使用中患者により容易に適合するように、電極アレイ200の剛性を低減することができる。シールド導体214の領域は、シールド導体のあらゆる櫛構造の互いに嵌合された空間でも同様にあらゆるメッシュ又はハッチパターンの内部も含むために規定される。
図2に示すように、シールド導体214は、すべての電極領域及び大部分の導体域をカバーすることができる。任意には、シールド導体214は、コネクタ領域まで伸び、及び/又は基板204の全ての第2側部をカバーすることができる。いくつかの実施形態では、シールドは、単にシールド導体214である。
【0041】
電極アレイ100の場合に記載されているように、電極アレイ200は電極領域211の電極をコネクタ領域206に接続する導体を有する。これらの導体は、電極と同じ側上、電極の反対側、又は、組合せ上に配置することができる。
【0042】
電極アレイ200の電極は、環境から容量結合される干渉に影響されやすくてもよい。シールド導体214はいくつか又はすべての電極の環境への静電容量を引き下げることができ、電極アレイ200での測定を外部の干渉を減らすことによってより清潔にする。この機能を実行するために、シールド導体214は、電極の少なくとも一部をカバーすることができる。好都合には、シールド導体214は、電極の側と反対の基板204の側に積層することができる。あるいは、シールド導体214は、基板204に取り付けられる付加的な層の少なくとも一部を形成することができる。例えば、シールドは、基板204に積層される接着剤付導電層又は導電層であることができる。
【0043】
シールド導体214は、電極に任意に接続していることができるか又はすべての電極から分離されることができる。例えば、シールド導体214は、ヒドロゲル島201Bに対応する電極に接続していることができる。別の例として、シールド導体214は、シールド導体214と電気コネクタ間の電気接続をイネーブルするために、コネクタ領域の接触位置を有することができる。動作中、シールド導体214は、計測器の接地点、計測器の基準電圧又は少なくとも2本の電極上のコモンモード信号を測定してキャンセルしようとする右脚駆動出力に駆動されることができる。シールド導体214が電極に接続している場合、接続は、電極アレイ200上でビアを用いて又は電極アレイ200の外にある電気コネクタ及び配線を用いてなされた接続を介してなされてもよい。
【0044】
シールド導体214は、金属又は半導体で製造することができる。シールド導体214は、金、銀、プラチナ、パラジウム、ロジウム、ニッケル、炭素、インジウム、スズ又は銅の少なくとも一つで製造することができる。他の実施形態では、シールド導体214は、金、銀又は炭素の少なくとも一つで製造することができる。さらなる態様において、シールド導体214は、銀/塩化銀を含むことができる。シールド導体214は、印刷、シルクスクリーニング、インクジェット印刷、スパッタリング又は印刷回路基板の製作方法等の当該技術分野で公知のあらゆる手段によってシールド上又は基板104上に積層することができる。シールド導体214は、シルクスクリーンの銀、銀/塩化銀、カーボンブラック又はカーボンナノチューブでもよい。
【0045】
複数の電極アレイを用いるいくつかの実施形態において、シールド導体214は、視覚的に電極アレイを区別するために、異なる色の材料でできていてもよい。例えば、一対の電極アレイを用いる場合、対の一方は炭素シールド導体を有してもよく、他方は銀/塩化銀シールド導体を有してもよい。
【0046】
ここで
図3を見ると、ヒトの左右の側から生理的電気信号をモニタするための一対の電極アレイの例示的実施形態が示される。対300は、電極アレイ301a及び電極アレイ301bを含む。要素の関係をよりよく示すために、電極アレイ301aのすべての特徴は数字の後に文字「a」によって示され、一方、電極アレイ301bのすべての特徴は数字の後に文字「b」によって示される。
【0047】
両方の電極アレイは、可撓性絶縁基板(304a及び304b)の一部として、コネクタ領域(306a及び306b)を有する。電極308aa、308ab、308acは電極アレイ301a上に配置され、一方、電極308ba、308bb及び308bcは電極アレイ301b上に配置される。導体307aa、307ab、307acはそれぞれ、電極308aa、308ab、308acと接触位置309aa、309ab及び309ac間の電気接続を提供する。同様に、導体307ba、307bb、307bcはそれぞれ、電極308ba、308bb、308bcと接触位置309baの間の電気接続、309bb及び309bcを提供する。電極アレイ301b上の接触位置がコネクタ領域306bで見られると共に、電極アレイ301a上の接触位置はコネクタ領域306aで見られる。両方の電極アレイは、任意のねじれ緩衝領域305a及び305bを有し、それぞれ、電極アレイ100及び/又は電極アレイ200に記載されている他の特徴を任意に有することができる。
【0048】
1つのコネクタが両方の電極アレイに電気接続を代替的に行うことができるように、対300の電極アレイは接触位置309aa、309ab及び309acと同じパターンの接触位置309ba、309bb及び309bcを有する。例えば、接触位置309aaは、接触位置309baと同じ位置(最も左)にあることができる。更に、電極アレイ301aになされる各接続は電極アレイ301bに類似する接続を有するように、コネクタを設計することが可能である。この特性は、同じくコネクタ領域306aにコネクタ領域306bと同じ形状を作ることによって、
図3の実施形態において確実にされ、両方の電極アレイ上の接触領域と同一サイズ及び位置を有する。代替の実施形態では、1つのコネクタが両方の電極に用いることができる限り、コネクタ領域形状は電極アレイ間で異なっていてもよい。あるいは、1つのコネクタが両方の電極に用いることができる限り、接触位置は電極アレイ間のサイズ又は位置において異なっていてもよい。
【0049】
対300は、例えば、患者の左右の側から生理的電気信号をモニタするために用いることができる。例えば、電極アレイ301aは患者の左側に配置することができ、電極301bは患者の右側に配置することができる。より具体的な例として、電極308acが左の目の下に配置され、電極308aaが左のこめかみの近くに配置されるように、電極アレイ301aを配置することができる。同様に、電極308bcが右目の下に配置され,電極308baは右側のこめかみの近くに配置されるように、電極アレイ301bを配置することができる。これらの例において、電極配置は、同じ接触位置にマップする。例えば、目の下の電極は、両方の電極アレイの最も右の接触領域309ac又は309bcに電気的に接続している。
【0050】
都合のよいことに、対300のいずれの電極アレイにも接続している計測器は、電気信号を同じように読み取ることができる。具体的な例として、
(1)電極308ac/308bcはそれぞれ、左/右目の下の皮膚に配置され、電極308aa/308baはそれぞれ、左/右側のこめかみの近くに配置され、
(2)電圧差は、接触位置309ac/309bcと接触位置309aa/309ba間でそれぞれ測定され、
(3)両眼は正電位を生成する、
と仮定する。次いで、対300の鏡面対称により、電極アレイ301a及び電極アレイ301bによって測定される電圧差は、両方正である。
【0051】
通常対300では、第2の電極アレイ上の接触位置と電極位置との関係は、第1の電極アレイ上の接触位置と電極位置との関係に対する鏡像である。必要ではないが、第2の電極アレイの基板は、第1の電極アレイの基板の実質的に鏡像であってもよい。
【0052】
対300の類似する要素は、電極アレイ100又は電極アレイ200で見られる対応する要素と同じ又は類似の方法で造ることができ、同じ又は類似する材料で製造することができる。例えば、対300の電極は、電極108と同様の方法で造ることができる。対300の導体は、導体107と同様に造ることができる。
【0053】
対300の電極アレイは、電極アレイ100に記載されている方法と同じ又は類似の方法で造られ、同じ又は類似の材料から製造されるヒドロゲルを任意に含むことができる。第2の電極アレイのヒドロゲル島は、第1の電極アレイのヒドロゲル島の実質的に鏡像であることができる。
【0054】
対300の電極アレイは、電極アレイ200に記載されている方法と同じ又は類似の方法で造られ、同じ又は類似の材料で製造されるシールドを任意に含むことができる。
【0055】
対300の電極アレイは、互いに接続していても互いに接続していなくてもよい。接続していることにより、電極を患者に取り付けるオペレータが誤って電極を患者に取り付けることが少なくなるかもしれない利点を有するが、解剖学的な相違により制限されるといった不都合もある。
【0056】
ここで
図4を見ると、一対の電極アレイをマークするための例示的実施形態が示される。
図4において、対401、対402、対403、対404及び対405は、電極と反対側から示される。対401、402、403、404、及び405は、それぞれの対の各電極アレイ上に異なるマーキングを有する。これらのマーキングは、例えば、電極アレイの所望の配置方向、電極アレイのテスト順序又は他の情報を示すために用いることができる。
図4aは、電極アレイが、近く又は上に配置されなければならない身体の解剖学的部分を表すマーキングを示す。例えば、シンボル422a及びシンボル422bは、目の近くに配置されなければならない電極アレイの部分を示すことができる目を示す。いくつかの実施形態は、より正確に電極アレイの所望の位置を示す付加的なシンボル421aと421bとを有することができる。
図4bは、423aが特徴的なパターンを有するマーキング又は明らかに423aをマーキング423bと区別する色彩を示す。色違いは、異なる材料のシールド導体214から生じる場合がある。例えば、マーキング423bは炭素を含むことができると共に、マーキング423aは銀を含むことができる。
図4cは、右側(424a)又は左側(424b)のためにインデントされる電極アレイ403を示すために言葉を用いるマーキングを示す。
図4dは、数字を用いるマーキングを示す。数字は、試験順序を示すこともできる。数字425bが2番目にテストされなければならない電極アレイを示すことができると共に、数字425aは最初にテストされなければならない電極アレイを示すことができる。
図4eは、電極アレイが近く又は上に配置されなければならない身体の解剖学的部分を表すマーキングを示す。例えば、シンボル426a及びシンボル426bは、目の近くに配置されなければならない電極アレイの部分を示すことができる目を示す。いくつかの実施形態は付加的なシンボル427a及び427bを有することができ、それは電極アレイの輪郭であり、解剖学的部分に対する電極アレイの所望の位置をより正確に示す。色、言葉、シンボル及び写真の組合せも考えられる。
【0057】
これらのマークされた電極対は、対300の、電極アレイ100の、又は電極アレイ200の特徴を有することができる。
【0058】
本願明細書において記載されている実施形態による電極アレイのサイズは、意図された患者のサイズに合致するために拡大・縮小されることができる。例えば、ヒト乳児用の電極アレイは、ヒト成人用の電極アレイより小さくてもよい。
【0059】
この開示において図は表される電極アレイに類似する形状を有するが、他の形状も考えられる。例えば、
図3の電極アレイの対は、患者への配置を誤らないように接続することができる。
【0060】
患者から生理的電気信号等の電気信号を測定するために、本発明の電極アレイを使用する方法及び電極アレイの対が考えられる。例えば、これらの信号は、筋肉、神経、心臓、脳、一方又は両方の耳又は一方又は両方の目から得ることができる。当該方法は、電極配列又は電極アレイの対を得る工程、患者を電極アレイ又は電極アレイの対に接触させる工程、及び少なくとも一つの電極から電気信号を測定する工程を含むことができる。電圧測定値のための基準電位は、患者に容量結合される他の電極又は導体であることができる。患者は、ヒトであることができる。例えば電圧計及びオシロスコープ等の一般的なデータ獲得システムならびに網膜電図写真(例えば、LKC RETEVAL(商標)装置又はLKC UTAS装置、Gaithersburg、MD,米国))等の特定の用途のために設計されたデータ獲得システムを含む電気信号を測定するために用いることができる多くの装置が利用可能である。
【0061】
本発明は、本願明細書中に記載されている具体的実施形態によってその範囲を制限されるものではない。実際、本願明細書中に記載されている変更態様に加えて本発明のさまざまな変更態様は、前述及び添付の図から当業者にとって明らかになる。この種の変更態様は請求の範囲に属することが意図される。