(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1もしくは2に記載の物品であって、前記1つ以上の生分解性材料は、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンシュウ酸、ポリ(カーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オキサエステル)、ポリ(アミドエステル)、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)、スター型ポリカプロラクトン−co−D,L−乳酸、ポリ(トリメチルカーボネート−co−カプロラクトン)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリウレタン、パリレン−C、ポリ(クエン酸−ジオール)、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、ラミニン、ゼラチン、硫酸コンドロイチン、デキストラン、キトサン、アルギン酸、ケラチン、アガロース、もしくはそれらの組み合わせからなる群から選択される、物品。
請求項1〜3のいずれかに記載の物品であって、前記1つ以上の非生分解性材料は、アクリル、ブチルゴム、エチルビニルアセテート、ポリ(アミドイミド)、ポリ(エーテルケトン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリブチレンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ化ポリビニリデン、ポリアクリレート(例えば、ポリメタクリル酸メチルおよびポリメタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリアクリルアミド(例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド))、ポリビニルアルコール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、物品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
I.定義
本明細書で使用される「せん断保持力」もしくは「せん断接着強度」は、特定の試験条件下(表面積、荷重)で、接着物品の基準領域を基準平面から表面に平行な方向にスライドさせるのに必要とされる力をいう。せん断保持力は、一般的には臨床適用への適合性の正確な予測因子ではない。なぜなら、接着の引張力への曝露が限られ、そして、記録される値は試験中にサンプルにアプライされる予荷重に強く依存するからである。そして、基材の表面の粗さの差もまた測定されるせん断接着強度に影響する。
【0017】
本明細書で使用される「90度引張接着力」は、接着物品もしくはサンプルを、湿潤な組織(例えば、ブタ腸管組織の漿膜側)に取り付けた平坦な基材(例えば、金属の小片)に固定した際に得られる接着力の値をいう。90度引張接着試験は、接着が剥離するまで表面領域が耐えることのできる最大の垂直力(張力における)を測定する。
【0018】
本明細書で使用される「毒性」は、材料もしくは装置がレシピエント中のもしくはレシピエント上のインプラントに対する望ましくない局所的(例えば、組織の炎症)もしくは全身的な影響を誘発する能力を意味する。この望ましくない影響は、インプラントもしくは適用の間もしくは後の、生体組織および/もしくは周囲の環境と、材料もしくは装置、またはそれぞれの副産物との相互作用に起因し得る。
【0019】
本明細書で使用される「組織反応性官能基」は、下層の組織との共有もしくは非共有結合相互作用の後に組織応答を引き起こす官能基を意味する。いくつかの実施態様では、官能基は高度に反応性であり、有害効果をもたらす(例えば、反応の間におよび/もしくは後に組織上において)。そのような有害効果としては、熱の発生(例えば、発熱反応)ならびに/または炎症性もしくは毒性反応を引き起こす副産物の生成が挙げられるが、それに限定されない。
【0020】
本明細書で使用される「微細突起」は、表面から伸びたマイクロスケールの特徴をいう。この特徴は、様々な形状を有することが可能であり、形状には円錐、柱状体および円柱が含まれるがそれに限定されない。
【0021】
本明細書で使用される「生体適合性」は、構造もしくは材料の、レシピエントに好ましくない局所的もしくは全身的な影響をほとんどもしくは全く誘発させず、しかし最も適切で有益な細胞もしくは組織の応答を特定の状況で引き起こし、そして、その治療の臨床的に適切なパフォーマンスを最適化しながらも、臨床状態中で所望の機能を発揮する能力をいう。(Williams, Biomaterials 29 (2008) 2941−2953参照)。
【0022】
本明細書で使用される「生分解性」という用語は、生理的条件下で分解する物質をいう。いくつかの実施態様では、生分解性物質は細胞機構および/もしくは化学過程(例えば、加水分解、酵素による分解および/もしくは酸化による分解)によって成分に分解(例えば、インビボで細胞に取り込まれた際)される物質であり、その成分は顕著な毒性効果(例えば、細胞において(例えば、成分をインビトロで細胞に加えたところ約20%より少ない細胞が死滅する))を伴わずに再利用および/もしくは排出のいずれかがされ得る。成分は一般的には炎症もしくは他の有害効果をインビボで引き起こさない。成分は、分子種および/もしくは物質の断片であり得る。いくつかの実施態様では、生分解性化合物を分解するために依存される化学反応は非触媒性である。例としては、「生分解性」ポリマーは、生理的またはエンドソームもしくはリソソーム条件下で他の種(例えば、単量体のおよび/もしくはオリゴマーの種)に分解するポリマーである。ポリマーおよびポリマーの生分解産物は生体適合性であり得る。生分解性ポリマーは必ずしも加水分解性でなくてよく、完全に分解するために酵素的作用を必要とし得る。生分解機構は、例えば、加水分解、酵素分解、ならびに環境が自然に分解因子を導入する、および/もしくは分解を誘発するような触媒が導入される機構を包含し得る。
【0023】
本明細書で使用される「生体組織」という用語は、特定の機能を発揮するために組み合わせられた類似の細胞の集合をいい、細胞の周囲の任意の細胞外マトリックスを含むことができる。
【0024】
本明細書で使用される「生体分子」という用語は、自然発生的にもしくは人工的に作成される(例えば、合成もしくは組み換え法)かに関わらず、細胞および組織において普通に見られる分子(例えば、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、炭水化物、糖、脂質、核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイド等)をいう。生体分子の具体的な分類としては、酵素、受容体、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、成長因子や走化因子といった細胞応答修飾子、抗体、ワクチン、ハプテン、毒素、インターフェロン、リボザイム、アンチセンス物質、プラスミド、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、多糖類およびこれらの成分の任意の組み合わせが挙げられるが、それに限定されない。
【0025】
II.接着物品
マイクロトポグラフィー(例えば、微細突起)を含む接着物品、ならびに接着剤、好ましくは公知の毒性および/もしくは組織反応性官能基を有する接着剤の被覆が本明細書において記載される。本明細書で記載される物品は、少なくとも約1.0、1.25もしくは1.5N/cm
2の90度引張接着力を示す。本明細書で記載される物品は接着剤がマイクロトポグラフィなしで単独で用いられた場合の治療的有効量の接着剤より少ない接着剤を含有することができ、そして、毒性および/もしくは有害副作用はわずかであるか、もしくは無くなるが、それでも同等のもしくは改善された接着強度を示すことができる。
【0026】
A.基材
本明細書で記載される物品は基材を含む。基材は生分解性材料、非生分解性材料もしくはそれらの組み合わせから形成されるか、もしくはそれを含むことができる。いくつかの実施態様では、基材はすべてもしくは部分的に生分解性である。
【0027】
適切な生分解性材料としては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンシュウ酸、ポリ(カーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オキサエステル)、ポリ(アミドエステル)、ポリ(無水物)(例えば、ポリ(グリセロールセバシン酸)(PGS)およびポリ(グリセロールセバシン酸アクリレート)(PGSA))、ポリホスファゼン、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)、スター型ポリカプロラクトン−co−D,L−乳酸、ポリ(トリメチルカーボネート−co−カプロラクトン)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリウレタン、パリレン−C、ポリ(クエン酸−ジオール)、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、ラミニン、ゼラチン、硫酸コンドロイチン、デキストラン、キトサン、アルギン酸、ケラチン、カーボンナノチューブ、アガロースもしくはそれらの組み合わせが挙げられるが、それに限定されない。いくつかの実施態様では、材料はポリカプロラクトン(PCL)である。
【0028】
適切な非生分解性の材料としては、アクリル、ブチルゴム、エチルビニルアセテート、ポリ(アミドイミド)、ポリ(エーテルケトン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリブチレンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ化ポリビニリデン、ポリアクリレート(例えば、ポリメタクリル酸メチルおよびポリメタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリアクリルアミド(例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド))およびポリビニルアルコールが挙げられるが、それに限定されない。
【0029】
いくつかの実施態様では、材料は疎水性である。例えば、実施例で用いられた、平坦でパターン加工されていないPCLは96±4度の水接触角を有する。微細特徴の追加は、表面の接触角を増大させる。実施例で用いられたマイクロパターン加工されたPCLの場合では、水接触角は128±6度まで増大した。接着剤が疎水性であると考えられる実施態様(例えば、シアノアクリレート)においては、パターン加工された疎水性表面で測定された際に接着剤の接触角が減少し、結果として表面上での接着剤の広がりがより良くなった。いくつかの実施態様では、マイクロパターン加工された基材の水接触角は少なくとも約100、105、110、115、120、125もしくは130度である。
【0030】
B.微細特徴
本明細書で記載される物品は、多数の微細特徴を含む。いくつかの実施態様では、微細特徴は微細突起である。突起は任意の形状、例えば円錐、柱状体、円柱、円錐台、多角形断面を有する角柱、正角錐もしくは非正角錐およびそれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施態様では、突起は実質的に円柱状でない。いくつかの実施態様では、突起は、底面が先端より大きな平均の直径を有する円錐状である。
【0031】
突起は、物品の1つの位置もしくは面の中もしくは上に、あるいは物品の複数の位置もしくは面の中もしくは上に組み込むことができる。突起はまた積層することもでき、そのため突起の複数の層が物品のもう1つの位置もしくは面に見られる。突起のそれぞれの層は、同じ組成および/もしくは寸法、ならびに/あるいは異なる組成および/もしくは寸法を有することができる。
【0032】
突起は、基材を形成するのに使用されたものと同一の材料、もしくは基材を形成するのに使用された材料と異なる1つ以上の材料で形成され得る。例えば、突起は、基材に含有される組成より硬いもしくは堅い材料を含有することができる。より硬い組成は、突起がより容易に適用部位(例えば、組織)を貫通することを可能にし、それにより接触面積および接着力を増すことができる。同時に、より柔らかい組成は、基材が柔軟に、そして容易に適用表面に適合できるようになることを可能にする。
【0033】
いくつかの実施態様では、突起および基材は異なる分解速度を有する組成を含有することができ、適用可能であれば、活性薬剤の送達に影響し得る。例えば、接着物品の一部が速やかに分解し薬剤のボーラス送達を提供することが可能であり、そして接着物品のそれ以外の部分が比較的ゆっくりと生分解されることで薬剤の長期間の放出を提供することが可能である。特定の実施態様では、突起は基材より低い分解速度を有し、それにより突起は速やかに分解しない。いくつかの実施態様では、突起を作成するのに用いられた材料は、1つ以上の所望の機械的性質(例えば、ヤング率)を有するとして選択される。いくつかの実施態様では、ヤング率は約1MPaから100MPaを超える。いくつかの実施態様では、材料は限られた可塑性を有し、50、60、70、80、90、もしくは100MPaより大きいヤング率を有する。他の実施態様では、材料は可塑性であり17MPaより小さいヤング率(例えば、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、もしくは5MPaより小さい)を有する。
【0034】
いくつかの実施態様では、基材および/もしくは突起は多孔質であってよい。多孔性は組織の接着物品への内殖を促進し、そして物品の組織への固定を向上させることができる(例えば、機械的なかみ合わせとして働くことによって)。多孔性はまた、接着物品の生分解性および/もしくは活性薬剤の送達を制御するために選択され得る。いくつかの実施態様では、基材および/もしくは突起は、約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、もしくは80%より大きい割合の多孔性を有する。基材および/もしくは突起は、約10nmから約1ミクロンまでの平均孔径を有し得る。
【0035】
突起は、約5ミクロンから約50ミクロン、好ましくは約5ミクロンから約40ミクロン、より好ましくは約5ミクロンから約30ミクロンの平均の高さを有し得る。いくつかの実施態様では、平均の高さは約10ミクロンより大きい(例えば、約11ミクロンから約20ミクロン、好ましくは約13ミクロンから約20ミクロン、より好ましくは約15ミクロンから約20ミクロン)。いくつかの実施態様では、平均の高さは約13ミクロンもしくは約19ミクロンである。
【0036】
突起は、約1ミクロンから約10ミクロン、好ましくは約2ミクロンから約10ミクロン、より好ましくは約2ミクロンから約8ミクロン、最も好ましくは約3ミクロンから約6ミクロンの平均の底面の幅を有し得る。いくつかの実施態様では、平均の底面の幅は約5ミクロンである。突起は、約0.05ミクロンから約10ミクロンまでの平均の先端の幅を有し得る。
【0037】
突起は、約0.2ミクロンから約500ミクロン、好ましくは約1ミクロンから約250ミクロン、好ましくは約1ミクロンから約100ミクロン、より好ましくは約1ミクロンから約50ミクロン、最も好ましくは約1ミクロンから約25ミクロンの平均の中心から中心の間隔を有し得る。いくつかの実施態様では、平均の中心から中心の間隔は約5ミクロンから20ミクロン、好ましくは約5ミクロンから約15ミクロンである、いくつかの実施態様では間隔は約10ミクロンである。
【0038】
突起は、約0.1:1から約500:1、好ましくは1:1から約250:1、好ましくは1:1から約100:1、より好ましくは約1:1から約50:1、最も好ましくは約1:1から約25:1の底面の幅に対する平均の高さの割合を有し得る。いくつかの実施態様では、割合は約1:1から約20:1、好ましくは約1:1から約15:1、より好ましくは約1:1から約10:1である。特定の実施態様では、割合は約2:1から約7:1(例えば、約3:1、4:1、5:1、もしくは6:1)である。いくつかの実施態様では割合は約4:1である。
【0039】
突起の密度は、平面(例えば、パターン加工されていない表面)と比較したパターン表面の相対的な表面積を変化させるように操作することができる。いくつかの実施態様では、微細特徴の導入によって、パターン加工されていない平面と比較して、表面積が少なくとも約1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.50、2.75もしくは3.0もしくはそれより大きい割合で増加する。
【0040】
特定の実施態様では、微細構造は円錐、円錐状または底面が円形もしくは半円形であり先端の直径よりも大きい直径を有する構造である。構造の平均の高さは約10ミクロンより大きく、例えば約11ミクロンから約20ミクロン、好ましくは約13ミクロンから約20ミクロン、より好ましくは約15から約20ミクロンである。いくつかの実施態様では平均の高さは約13ミクロンもしくは約19ミクロンである。突起は、約1ミクロンから約10ミクロン、好ましくは約2から約8ミクロン、好ましくは約2から約5ミクロン、好ましくは約3から約7ミクロン、好ましくは約3,4,5,6もしくは7ミクロンの平均の底面の幅を有し得る。突起は、7、6、5、4、もしくは3より小さいアスペクト比(平均の突起の底面直径に対する平均の突起の高さの割合)を有する。
【0041】
C.接着剤
基材および/もしくは微細特徴は、全体をもしくは部分的に1以上の接着剤で被覆される。いくつかの実施態様では、接着剤は少なくとも2の接着剤の混合であるか、あるいは、少なくとも2の異なる接着剤で基材および/もしくは微細特徴の少なくとも2の異なる領域が被覆される。いくつかの実施態様では、接着剤は、微細特徴なしで治療的有効量で使用された場合に、毒性および/もしくは有害副作用を示す、もしくはもたらす。組織と反応して共有結合を形成する反応性官能基を有する全ての接着剤が必ずしも毒性というわけではない。毒性は接着剤の分解から形成される副産物によっても生じ得る。例えば、シアノアクリレートの毒性は、大部分が分解中にホルムアルデヒドが生成されることによるものである。有害副作用は、高度に反応性の官能基(例えば、反応に際して熱を発生(例えば、発熱反応)させ、組織に損傷を与え得る。)の存在によって引き起こされ得る。
【0042】
代表的な接着剤としては、シアノアクリレート(例えば、メチル−2−シアノアクリレート、エチル−2−シアノアクリレート、イソブチル−2−シアノアクリレート、オクチル−2−シアノアクリレートおよびブチル−2−シアノアクリレート);アルデヒド接着剤(例えば、デキストラン−アルデヒド);アクリレート接着剤;ウレタン接着剤;ヒドロキシスクシンイミド接着剤、カテコール含有接着剤(例えば、DOPA接着剤)およびその組み合わせが挙げられるが、それに限定されない。
【0043】
微細特徴(例えば、微細突起)の組み込みは、代表的にマイクロトポグラフィなしで使用される接着剤の量よりも少ない量で、接着剤の薄い被覆の適用を可能にし、臨床適用のために必要な90度引張接着強度を示す。いくつかの実施態様では、被覆の厚さは、突起の存在を有意に損なわない程度である。例えば、被覆の厚さは、微細突起の高さの75%より小さい(例えば、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、もしくは5%より小さい)。
【0044】
いくつかの実施態様では、被覆の厚さは約1ミクロンから約5ミクロン、好ましくは約1ミクロンから約4ミクロン、好ましくは約2ミクロンから約3ミクロンである。いくつかの実施態様では、被覆の厚さは約2.5ミクロンである。接着剤の被覆の厚さは、スピンコーターの速度によって制御され得る。
【0045】
本明細書で記載される物品の特徴の寸法は、特に特徴の高さが、先行技術の特徴より実質的に大きい。
【0046】
D.犠牲層
いくつかの実施態様では、物品は、適用の前に接着層を保護するために、接着層上を被覆する1以上の犠牲層を含有する。例えば、シアノアクリレートは、適用前に空気中の水分と反応し得る。保護層は、周囲の水分との反応を防ぐ障壁として働くことができる。
【0047】
1以上の犠牲層は、接着物品が意図した表面に完全に接着する前に、接着物品を調整もしくは配置しなおすこともまた、可能にし得る。犠牲層は、接着物品が適用部位に完全に接着する前に、基材および/もしくは突起の表面から除去することができる。組織との化学的および/もしくは物理的相互作用は、犠牲層が接着物品の表面から除去される機構の1つであり得る。例えば、犠牲層は組織にアプライされた際にゆっくりと溶解する塩の被覆もしくは障壁を含有し得る。ゆっくりとした溶解は、物品が組織に過度に強固に接着する前に、ユーザーが接着物品を調整もしくは配置しなおすための時間を提供する。犠牲層を除去することのできる他の方法としては、光、pH、温度、音および/もしくは物理機構が挙げられるが、それに限定されない。
【0048】
接着物品は、放出薬剤(例えば、生体分子)を含有した感圧粒子を含有することができる。接着物品が正しく配置された後に、十分な圧力もしくは他の刺激が、放出薬剤を放出および/もしくは接着を実現するために加えられ得る。代替として、犠牲層は、接着物品を適用部位に接触させる前に適用部位にアプライすることができる。
【0049】
他の実施態様では、犠牲層は、アプライされた接着部位に留まり、そして、接着部位から接着物品が除去された後の所望の期間にわたって分解するように設計される。例えば、犠牲層を含む接着物品の接触によって生じるパターンは、物品が除去された後も接触組織表面に存続することができる。このパターンは、例えば、細胞接着のための部位もしくは限局的な接着箇所、および/もしくは外科適用のための目に見える標識を提供することができる。
【0050】
代表的な材料としては、水性環境で、好ましくは速やかに、溶解する材料(例えば、糖、またはポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールもしくはポリアクリル酸を含有するポリマー)が挙げられるが、それに限定されない。他の実施態様では、犠牲層材料は、pH依存性の溶解性(例えば、アクリル系ポリマー(例えば、オイドラギット)、セルロースもしくはキトサンならびにそれらの誘導体)を有する。他のポリマーとしては生分解性ポリマーが包含され、生分解性ポリマーとしては、上記で列挙したポリマーと同様に、PLA、PGA、PLGAが挙げられるが、それに限定されない。犠牲層はまた、剥離ライナー(例えば、架橋シリコーン)であってもよく、表面から物理的手段によって除去される。
【0051】
E.治療、予防、および/もしくは診断用薬剤
基材および/もしくは微細特徴は、1以上の治療用薬剤、予防用薬剤、診断用薬剤、および/もしくは栄養補助食品を含有することができる。薬剤は、小分子(例えば、2000、1500、1000、750、もしくは500原子質量単位(amu)より小さい分子量)もしくは生体分子(例えば、ペプチド、タンパク質、酵素、核酸、多糖類、およびそれらの組み合わせ)であってよい。
【0052】
代表的な薬剤の分類としては、抗ウイルス薬剤(例えば、抗AIDS薬剤)、化学療法剤(例えば、抗癌剤)、抗生物質、免疫抑制剤、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、催眠剤、抗ヒスタミン剤、潤滑剤、精神安定剤、抗痙攣剤、筋弛緩剤、抗パーキンソン物質、チャネル阻害剤を含む鎮痙剤および筋収縮剤、縮瞳剤および抗コリン作用剤、抗緑内障化合物、抗寄生虫および/もしくは抗原虫化合物、細胞成長阻害剤を含む細胞外マトリックス相互作用の修飾因子および接着促進もしくは阻害分子、血管拡張剤、DNA、RNAもしくはタンパク質合成の阻害剤、降圧剤、鎮痛剤、解熱剤、ステロイド性および非ステロイド性の抗炎症剤、血管新生因子の促進もしくは阻害剤、分泌因子の促進もしくは阻害剤、抗凝血剤および/もしくは抗血栓剤、局所麻酔剤、点眼剤、プロスタグランジン、抗うつ剤、抗精神病物質、制吐剤、成長因子、プロトンポンプ阻害剤、ホルモン、ビタミン、遺伝子送達システム、ならびにイメージング剤が挙げられるが、それに限定されない。
【0053】
生体分子の例としては、成長因子もしくはリガンド(例えば、形質転換成長因子β(TGF−β)、酸性繊維芽細胞成長因子、塩基性繊維芽細胞成長因子、上皮成長因子、インスリン成長因子IおよびII(IGF−IおよびII)、血管内皮由来成長因子、骨形成タンパク質、血小板由来成長因子、ヘパリン結合性成長因子、造血成長因子、およびペプチド成長因子)が挙げられるが、それに限定されない。細胞外マトリックス構成物(例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン等)もまた、細胞のリクルートメント、移動および代謝、ならびに材料の分解および機械的性質を操作するために、基材、突起および/もしくは接着剤と組み合わせられ得る。いくつかの実施態様では、プロテオグリカンおよびグルコサミノグリカンが、基材、突起および接着剤に共有結合もしくは非共有結合する。
【0054】
E.細胞
いくつかの実施態様では、物品もしくはその一部分は細胞を播種される、もしくは細胞を含有する。代表的な細胞タイプとしては、角化細胞、繊維芽細胞、靭帯細胞、内皮細胞、肺細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、膵島細胞、神経細胞、肝細胞、腎細胞、膀胱細胞、尿路上皮細胞、幹細胞もしくは始原細胞、神経芽細胞腫、軟骨細胞、皮膚細胞および造骨細胞が挙げられるが、それに限定されない。
【0055】
III.製造の方法
本明細書で記載される接着物品は、様々な技術を用いて製作することができる。代表的な技術としては、接触型リソグラフィ、ナノドローイング、フォトリソグラフィーに続くエッチングもしくはナノモールディング、ならびに垂直に整列した多層カーボンナノチューブを用いたナノキャスティングが挙げられる。例えば、Geim A K,Dubonos S V,Grigorieva I V,Novoselov K S,Zhukov A A,Shapoval S Y. Microfabricated adhesive mimicking gecko foot−hair. Nat Mater 2003;2(7):461−3;eong H E,Lee S H,Kim P,Suh K Y. Stretched Polymer Nanohairs by Nanodrawing. Nano Letters 2006;6(7):1508−1513;およびYurdumakan B,Raravikar N R,Ajayan P M,Dhinojwala A. Synthetic gecko foot−hairs from multiwalled carbon nanotubes. Chem. Commun.(Camb)2005(30):3799−801を参照。様々な実施態様で製作方法は高温および/もしくは過酷な化学修飾を避ける。
【0056】
いくつかの実施態様では、テンプレートは、例えばフォトリソグラフィーとそれに続く反応性イオンエッチング(RIE)の組み合わせを用いて作成される。テンプレートは、突起の形状、パターニング、および寸法を有する多数のモールドキャビティ、または突起をもたらすような形状を含有する。他の実施態様では、突起を有するモールドが第2のモールドに転写され、同様のキャビティを生成する(例えば、このプロセスはソフトリソグラフィーによってなされ得る)。次に基材材料は、この第2のモールド中に堆積される。突起および/もしくは基材のための材料はキャビティに充填され、そしてテンプレート上に配置される。いくつかの実施態様では、キャビティを充填するために高真空は用いられないが、他の実施態様においては、真空および/もしくは温度変化がキャビティを充填するために用いられる。突起および基材の材料は、例えば、室温で数分の熱UV照射を用いて硬化される。他の実施態様では、突起のための材料はテンプレート上のキャビティを充填するために高温で融解され、それに続いて固体の状態を得るために冷却される。次に、硬化された材料は、被覆されていない接着物品を提供するためにテンプレートから分離される。
【0057】
複雑な構造を製作するため、テンプレートは、より大きなモールドキャビティを形成するため上端の上にパターン加工されたフォトレジストを有することができる。フォトレジストの複数の層は、より大きな構造のためのスピンオンおよびラミネートされたレジストを用いてパターン加工され得る。構造を解放するため、フォトレジストは溶媒に溶解され得る。
【0058】
接着剤は、当該分野で公知の技術を用いて微細突起および/もしくは基材にアプライされ得る。被覆の方法には、スピンコーティング、溶液流延法、ラングミュア−ブロジェット沈着、および化学蒸着(CVD)が挙げられるが、それに限定されない。
【0059】
物品が1つ以上の治療用薬剤を含有する実施態様において、予防、および/もしくは診断用薬剤そして/あるいは細胞も接着剤に同様に組み込まれ得る。特定の材料(例えば、薬剤および/もしくは細胞)はまた、基材および/もしくは突起を形成するために用いられた材料と緊密に混合され得る。
【0060】
いくつかの実施態様では、マイクロトポグラフィを形成するためのモールドは、フォトリソグラフィーを用いて調製された。例えば、基材(例えば、所望の厚さ(例えば、2ミクロン)の酸化層を有するシリコンウェハ)は、表面を脱水するためにベーキングされ、そしてレジストの付着を促進する材料でスピンコートされた。レジストの付着の促進のための適切な材料としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられるが、それに限定されない。被覆された基材は、所望の厚さのレジスト膜を得るためにベーキングされ得る。レジストの露光は、当該分野で公知の技術/装置(例えば、Karl Suss MA−6コンタクトアライナ)を用いてなされ得る。露光量および現像時間は当業者によって容易に決定され得る。PRマイクロパターン加工されたシリコンウェハは酸素プラズマによって処理され得る。
【0061】
マイクロパターンはフォトレジストから下部の酸化層へ、当該分野で公知の技術(例えば、反応性イオンエッチング)によって、最終的なマイクロモールドを生成するために転写され得る。例えば、マルチプレックス反応性イオンエッチング装置(Surface Technology Systems)が、それぞれ14.4および1.6sccmのガス流入速度のCHF
3/CF
4、20mTorrの圧力および200WのRF電力レベルで酸化層をエッチングするために用いられ、結果として約3nm/秒の酸化層エッチング速度がもたらされた。エッチングの後に、PR層は、基材をアセトンおよびSVC−12(Microchem)にそれぞれ30分間、EKC−270剥離剤に3時間まで浸漬することによって除去された。次に、基材はDI水で10分間完全に洗浄され、回転乾燥された。
【0062】
物品のパターン加工は、当該分野で公知の技術を用いてなされ得る。例えば、フィルム、パッチなどのパターン加工のためにネガのモールドは、適切な材料(例えば、ポリウレタンアクリレート樹脂(PUA))を用いて、ポジのシリコンモールドを用いたソフトリソグラフィーによって調製することが可能であり、それに続いて適切な材料(例えば、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン(TTT,Gelest))を用いた表面処理がなされ得る。
【0063】
いくつかの実施態様では、PDMSプレポリマーがPUAモールド上に流し込まれ、真空下で脱気され、そして60℃においてオーバーナイトで硬化された。PCLのマイクロパターニングのために、ネガのPDMSモールドがシリコンモールドから直接製造され、それに続いてTTTを用いた表面処理がなされた。ポリカプロラクトン(PCL)を含有する実施態様のために、PCL(例えば、Mw=43,000−50,000g/mol,Polysciences)膜がネガのPDMSモールド上で130℃において融解され、それに続いてパターン転写を保証するためテフロン(登録商標)プレートに圧着された。PCL膜は冷却の後慎重に取り外された。パターン転写の効率は走査型電子顕微鏡(SEM,FEI/Phillips XL30 FEG−ESEM)を用いて評価された。
【0064】
いくつかの実施態様では、接着剤はスピンコーティングによってパターン加工された表面上にアプライされ得る。CA被覆の厚さは、被覆されたパターン加工された表面および被覆されていないパターン加工された表面(実験条件あたりn=4の異なる基材)の断面から得られたSEM画像の分析によって測定され得る。非被覆のおよびCAスピンコートされたパターンの間の高さの差異は、CA接着剤層の厚さを測定するのに用いられ得る。
【0065】
IV.使用する方法
本明細書で記載される接着物品は、接着が必要とされるもしくは所望されるいかなる適用においても用いることができる。物品がアプライされる表面は、乾燥していても、もしくは湿潤であっても(例えば、水性環境(例えば、生体組織中))よい。本明細書で記載される接着物品は、体内でもしくは体表において(例えば、皮膚上で)用いることができる。本明細書で記載される物品は様々な適用において用いることができ、適用としては、創傷もしくは外科的部位の封鎖もしくは密封、組織貼付(例えば、縫合およびステープルに加えてもしくは代用として)、生理活性薬剤送達の媒体(例えば、抗生物質、薬物等の送達)、中空器官吻合のための防水密封剤、固定のための医療装置、皮膚接着、組織感染を防ぐための物理化学的障壁、組織加強固定のための物理的支持、ヘルニア、潰瘍、および火傷治療のための網状移植片、止血用傷用被覆材、糖尿病性潰瘍のためのパッチ、接着を妨げる腹腔インプラント、生分解性接着剤、インビボおよびインビトロのセンサー、カテ−テル、外科用接着剤、心臓用のパッチ/接着剤、胆管用のパッチ/接着剤、腸管用のステント、金属の被覆、微細加工への適用が含まれるが、それに限定されない。接着物品は、強力に下層の組織に付着し続けている間、様々な機械的変形に適合する、もしくはそこから回復することができる。
【0066】
いくつかの実施態様では、本明細書で記載される物品は医療適用(例えば、医療装置として)において用いられる。さらに具体的には、接着物品は組織(例えば、インビボの1つ以上の組織)の結合に用いられ得る。損傷した組織の形状に沿った密封は、優れた表面接着と張力がかけられている間のせん断強度の必要性から、困難であり得る。例えば、肺穿刺、穿刺された血管および腸管の吻合は、密封するのが困難な創傷であり得る。本明細書で記載される接着物品は、形状に沿った創傷の封鎖および密封を提供するため組織の機械的特性に適合するように設計され得る。そのような接着物品は組織が相当に運動するような場所での適用において特に有用であり得る。本明細書で記載される接着物品が組織にアプライされることによって、組織は突起および/もしくは基材の表面に適合することができ、それによって接触面積、および接着物品と組織の間の接着力が増大する。いくつかの実施態様では、突起は組織に貫入し、接着物品を組織に固定する。しかし、実際に突起が組織に貫入しているか否かに関わらず、突起、基材および組織は機械的に干渉し、そして係合することによって、接着物品および組織の間でのせん断力および引張力に耐える機械的かみ合わせを提供する。
【0067】
他の例として、本明細書で記載される接着物品は外科用テープとして用いることができる。生体適合性、生分解性の外科用テープは、例えば、手術の間に出血を止めるために使用することができ、しかし外科医が創傷を縫合して封鎖する前に除去する必要がない。テープは時間とともに生体分解され得る。
【0068】
いくつかの実施態様では、接着物品は生分解性のステントの中に製造され得る。ステントは血管の径を増大させ、管中の流量を増加させることができるが、ステントが生分解性であるため、血管を再び狭め得るような血栓症についてのもしくは瘢痕組織によるステントの被覆についての減少したリスクを伴って血管の径を拡張することができる。ステントが分解するまでに、定位置に留まって、そして原型を維持している時間は、患者ごとに異なり得、そして部分的には封鎖の量および患者の年齢(例えば、より高齢の患者は回復により長い時間が必要となり得る)に依存し得る。特定の実施態様では、接着物品はステントの外側の表面を覆うことで(突起を外側に伸ばして)、非被覆のステントよりも組織に非侵襲的な方法で血管壁にステントを接着させるのを補助することができる。同様に、接着物品は組織に接触している装置の表面を被覆することができ、組織に接着することのできる適切な界面を提供できる。
【0069】
他の適用としては、肺切除術に続く空気漏出の防止;外科手順の時間の短縮(例えば、縫合は一針ごとに組織を整列させる必要があり得るが、接着テープは一度で組織を整列させられ得る);硬膜を密封すること;腹腔鏡下の手順を簡単にすること(例えば、狭い空間で結び目を結ぶのは困難であり得るが、テープは巻き上げて、そして大口径の針もしくは套管針を通じて配置され、そして外科的部位上で引き出すことが可能である);分解性の皮膚接着剤として(例えば、分解するにしたがって薬剤を放出することができる)の適用;ステーブルもしくはタックの必要性をなくすもしくは減らすヘルニアマトリックスとしての適用;失血の防止;器官もしくは組織を外科手順中に操作すること(例えば、肝臓を脇に避けて、そこに固定すること);角膜の移植片を正しい位置に固定すること;薬剤を送達するためにおよび/もしくは心筋梗塞後の心臓の肥大を減少させるために心臓に貼付すること;他の材料を組織に取り付けること(例えば、移植組織の生着を促進すること、または薬剤送達装置もしくは足場もしくはその他の構造物を組織もしくは器官に取り付けること);縫合もしくはステープルを増強すること;力を組織全体に分散させること;漏洩を防止すること;皮膚上の保護膜として火傷の皮膚からの水分の蒸発を防止すること;瘢痕用医薬の送達のためのパッチとしての適用;装置(例えば、薬剤送達装置、センサー)を組織に取り付けること;装置(例えば、薬剤送達装置)を粘膜(例えば、口、腸管、肛門、鼻孔、膣等)に取り付けること;脳手術もしくは装置のインプラントの後に脳組織の頭蓋への癒着を防止すること;組織間の癒着および/もしくは組織−装置の癒着のための癒着の障壁(外科的適用にアプライされるものとして)としての適用;血管からの失血を防止すること;口腔内で装置を固定するテープとして(例えば、義歯および口腔装置を固定するため)の適用;軟組織を骨に固定するテープとしての適用;腹膜癒着を防止すること(例えば、片面が接着性で、そして別の面がそうでないような場合)、ならびに/または開存孔を処置もしくは密封することが挙げられるが、それに限定されない。
【0070】
本明細書で記載される接着物品は、例えば、外科用の器具(例えば、ピンセット、開創器)といった道具を被覆すること、もしくは対象(例えば、組織)を操作(例えば、把持)する道具の能力を向上させることにもまた用いることが可能である。本明細書で記載される接着物品は、生体適合性で分解性の接着剤を有することが有用であるような工業的適用(例えば、分解産物の潜在的な毒性を減少させるため(例えば、海洋分野への適用(例えば、水中での使用、船舶の表面への接着等)))においてもまた用いることが可能である。他の適用としては、皮膚への衣服の貼付(例えば、ストラップレスのブラジャー)、電子装置の基材(例えば組織(例えば、皮膚)もしくは衣服)への貼付が挙げられる。
【0071】
接着物品が治療、予防、および/もしくは診断用の薬剤を有する実施態様において、薬剤は接着物品が位置する場所に局所的に送達され得る。接着物品は一般的に可塑性であるため、適用部位に適合し、そして患者が動くのに合わせて一緒に動くことができる。
【0072】
A.接着強度
本明細書で記載される物品は、臨床適用に適切な90度引張接着強度を示す。いくつかの実施態様では、90度引張強度は少なくとも約1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.50、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75もしくは4.0N/cm
2またはそれより大きい。微細特徴の形状、寸法および接着剤の被覆の厚さの組み合わせが、特に湿潤組織において、接着剤の毒性および組織反応性を最小化しながら同時に接着強度を最大化することを可能にするということがデータによって示される。
【0073】
例えば、
図1Aに示されるように4つの異なるトポグラフィが調製された:(1)は4.4ミクロンの底面直径、20.0ミクロンの高さ、および19.0ミクロンの間隔を有する円錐であり、(2)は2.9ミクロンの底面直径、20.3ミクロンの高さ、および10.0ミクロンの間隔を有する円錐であり、(3)は2.6ミクロンの底面直径、7.1ミクロンの高さ、および5.0ミクロンの間隔を有する円錐であり、そして(4)は4.9ミクロンの底面直径、19.0ミクロンの高さ、および9.5ミクロンの間隔を有する円錐である。次に、接着剤はパターン加工された表面上にスピンコートされた。
【0074】
トポグラフィ4を有するパッチが最も高い接着力を有していた。トポグラフィ4の総表面積はスピンコーティング前のトポグラフィ3と同程度であったが、2つのトポグラフィの接着力の値は有意に異なっていた;トポグラフィ3の特徴の高さはトポグラフィ4に比較して低かったため、トポグラフィ3のマイクロパターンはスピンコーティングによって容易に閉塞された。最もアスペクト比の高いピラー(トポグラフィ2)のCAコーティングは、パターンの崩壊を引き起こし、接着力は全く向上しなかった。似たようなサイズの特徴の密度を増加させることは、接着力を有意に向上させた(トポグラフィ1対トポグラフィ4を参照)。表面上のピラーの密度、そしてそれによる接触面積の増加は、接着力の向上に大きな効果を有した。パターン加工された表面は、スピンコーティング手順の後に平面より多くの接着剤を保持することができた(p<0.05)。しかし、接触面積の増加を考慮すると、パターン加工されたサンプル上の単位面積当たりの接着剤の量は、平面基材の0.78倍以下であった。言い換えると、平面と比較してパターン加工された表面上では接着剤の層が薄かった。
【0075】
湿潤腸管組織に対するインビトロ引張接着試験によって、平面基材と比較した際に薄い接着剤被覆の接着力の向上におけるトポグラフィの有効性が確認された。パターン加工された表面にスピンコートされた接着剤の接着力は、5μLの接着剤で被覆された平面のもしくはパターン加工されたPCLによって得られた接着力と同程度であった。パターン加工されたサンプルの向上したパフォーマンスは、サンプルを1時間以上PBS中に浸漬した場合であっても、依然として観察できた。重要なことに、このアプローチは、硬いPCLおよび可塑性のPDMSの両者を用いて実証されており、異なる機械的性質(すなわち、硬さ)を有する材料を用いる際にも普遍的であると考えられる。
【0076】
パターン加工されスピンコートされたサンプルに対する炎症性反応は、まだ1週間の時点では、パターン加工され被覆されていない材料に対する炎症性反応と同程度であった。インプラント後3週間では、被覆されていない材料に対する炎症は安定であったところ、スピンコートされた材料に対する炎症性反応は、血管新生の発生率の上昇および巨大細胞の出現によって証明されるように、わずかに増大した。接着剤がアプライされている両方の条件(スピンコートもしくは5μL)において1週間の時点では細胞壊死が観察された;しかしながら、3週間後には5μLのCAがアプライされた条件のみで依然として細胞壊死が引き起こされた。長期の反応は毒性産物の放出によって説明され得るところ、初めの細胞壊死は接着剤の組織表面への反応性によって説明され得る。パターン加工された非被覆のサンプルおよびスピンコートされたサンプルの間で炎症性反応の程度もしくは線維化嚢の厚さにおいて統計的な差異が観察されなかったところ、5μLの接着剤で被覆されたサンプルのインプラントはまた、パターン加工された非被覆のサンプルおよびスピンコートされたサンプルの両者と両方の時点で比較して、より重篤な炎症性反応およびより厚い線維化嚢をもたらす。
【実施例】
【0077】
実施例1.パターン加工、被覆された表面の作成
シリコンマイクロモールド製作
酸化層を有するシリコンウェハが表面を脱水するために110℃でベーキングされ、そして、レジストの付着を促進するため5000rpmで10秒間ヘキサメチルジシラザンをスピンコートされた。次にフォトレジスト(Shipley 1805)がウェハ上に3500rpmで20秒間スピンコート(EVG110)された。約500nmの厚さのレジスト膜を得るため、ウェハは115℃で1分間ホットプレート上でソフトベークされた。レジスト露光は、Karl Suss MA−6コンタクトアライナを用いて96mJ/cm
2の露光量でなされ、そして、レジストはShipley MF−319現像機で45秒間現像され、それに続いて脱イオン(DI)水による3分間の洗浄および回転乾燥がなされた。得られたエッチングされたウェハはポジの外形を有していた。
【0078】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)およびポリカプロラクトン(PCL)膜のマイクロパターニングおよび特性評価
ポリジメチルシロキサン(PDMS)のパターン加工のため、ポジのシリコンモールドを用いたソフトリソグラフィーによってポリウレタンアクリレート樹脂(PUA)を用いてネガモールドが初めに調製され、それに続いて(トリデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン(TTT, Gelest)を用いて表面処理がなされた。PDMSのプレポリマーがPUAのモールド上に流し込まれ、真空下で脱気され、そして60℃にてオーバーナイトで硬化された。
【0079】
ポリカプロラクトン(PCL)のマイクロパターニングのために、ネガのPDMSモールドがシリコンモールドから直接製作され、それに続いてTTTを用いた表面処理がなされた。PCL(Mw=43,000−50,000g/mol,Polysciences)膜はネガのPDMSモールドの表面上において130℃で融解され、それに続いてパターン転写を保証するためにテフロン(登録商標)プレートに圧着された。冷却の後、PCL膜は慎重に取り外された。パターン転写の効率は、走査型電子顕微鏡(SEM,FEI/Phillips XL30 FEG−ESEM)を用いて評価された。
【0080】
PDMSおよびPCL膜のCAスピンコーティング手順
15μLのCA(Dermabond(登録商標),Medstarsutures)がPDMSおよびPCLのパターン加工された表面および平面上に3000RPMでスピンコートされた。CA被覆の厚さは、被覆されたパターン加工された表面および被覆されていないパターン加工された表面から得られたSEM画像の分析によって測定された。
【0081】
引張接着力試験
引張接着力は50Nのロードセルを装備したADMET eXpert 7601ユニバーサルテスターを用いて行われた。実験条件には、(1)3000RPMでCAをスピンコートしたマイクロパターン加工された表面、(2)3000RPMでCAをスピンコートした平面、(3)5μLのCAを有する平面、(4)5μLのCAを有するパターン加工された表面(PDMS基材は条件あたりn=3、PCL基材は条件あたりn=6)が挙げられる。5μlの接着剤は、スピンコートされていない基材にアプライされた(追加の量の接着剤は組織への適用の後容易に除去された)。スピンコートされたパッチの表面の均一なコーティングを保証するため、15μlの接着剤がアプライされた。CA被覆の後直ちに、サンプルはあらかじめ平面の金属の小片に固定された湿潤なブタ腸管組織の漿膜側に取り付けられた。サンプルは5分間の空気への曝露もしくは1時間のリン酸緩衝食塩水への浸漬によって硬化され、それに続いて8mm/分で引張りが行われた。接着力は引張試験の間に観察された最大の力として記録された。組織および接着剤の間の接触領域は6mmの直径を有する円であった。
【0082】
CA被覆されたPCL表面の特性評価
接触角分析
平面の、およびマイクロパターン加工されたPCL上のCAの広がりは前進接触角測定によって評価され、超純水と比較された(条件あたりn=4)。
【0083】
CA接着剤層の化学的マッピング
エネルギー分散型X線分光分析(EDX)が、CAがどのようにマイクロパターン加工された表面を覆っているかを可視化するために行われた。CA接着剤は、均一な分散のためにオレイン酸によって官能性をもたせた酸化鉄ナノ粒子(IO,10nm,Oceananotech)と混合され、それに続いてパターン加工されたPCL表面上において3000RPMで3分間スピンコートがなされた。IOの封入は、SEMの分析を通して確認されたように接着剤層の厚さに影響を与えない。データはFEI/Phillips XL30 FEG−ESEMと組み合わせたX線検出器を用いて25kVで収集された。鉄のシグナルはEDXを通じて容易に検出してマッピングすることができた。
【0084】
CA定量
スピンコーティング後の平面およびパターン加工されたサンプルの間でのCAの定量は、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES,ACTIVA−S Horiba Jobin Yvon)を用いて行われた。CA−IO接着剤でスピンコートされたパターン加工されたもしくは平面のパッチ、またはCA−IO接着剤のみが、アセトン中で可溶化された。IO粒子は連続遠心分離によって有機物から単離され、そして、クロロホルムに再懸濁された。クロロホルムの蒸発に続いて、IOナノ粒子は王水中で消化され、その蒸発の後、水性2%硝酸に再懸濁された。次にサンプルあたりの鉄の相対量が評価され、そしてその相対量はサンプルあたりのCA量(条件あたりn=5)と相関した。
【0085】
マイクロパターン加工されたPCLの皮下(s.c.)インビボ生体適合性の研究
全ての外科的手順はマサチューセッツジェネラルホスピタルの所内動物実験委員会(IACUC)の承認を受け、そして実験動物の管理および使用のためのNIHガイドラインに従って行われた。
【0086】
パターン加工されたPCL、パターン加工されCAでスピンコートされたPCL、パターン加工され15μLのCAで覆われたPCL(処方および時点あたりn=3)の生体適合性プロファイルが評価された。7mmの直径を有するPCLディスクは、オーバーナイトでのUV照射によって消毒された。成体雌性ルイス系統ラット(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)が本研究において用いられた。6か所の皮下1.5cm長の正中切開が、麻酔された動物それぞれの背面にてなされた。パッチを被覆する手順は手術室内で行われ、そしてサンプルは直ちに、そして無作為に皮下のポケットにインプラントされた。動物は7日目および21日目に屠殺され、そしてインプラントおよび周囲の組織が回収された。炎症性反応を特徴付けるため、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびに抗−CD68染色が行われた。
【0087】
インビボの機能的研究
全ての外科的手順はマサチューセッツジェネラルホスピタルの所内動物実験委員会(IACUC)の承認を受け、そして実験動物の管理および使用のためのNIHガイドラインに従って行われた。外科的修復を必要とする損傷を封鎖するための平面のおよびパターン加工されたCAでスピンコートされたPCLパッチの使用は、ラットモデルを用いて結腸および胃の穿孔処理によって評価された。成体雌性ルイス系統ラット(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)が用いられた。全ての試験されたPCLパッチはUV照射によってオーバーナイトで消毒された。両方のモデルで、損傷は3mm径の皮膚生検パンチを用いて作成された。出血は、圧迫および電気焼灼によって制御された。結腸の修復のために、7−8mmの直径を有する平面のもしくはパターン加工されたパッチがCAの薄層で被覆され、そして直ちに損傷にアプライされた。付着の程度は、情報を与えられていない外科医によって定性的に評価された(平面サンプルについてn=8、パターン加工されたサンプルについてn=11)。
【0088】
結腸損傷をパターン加工されスピンコートされたパッチで封鎖された動物は、7日間生存した(n=6)。スピンコートされパターン加工されたパッチへの組織応答を評価するため、H&E染色が用いられた。胃の修復の実験群は(1)直径7mmのパターン加工、スピンコートされたPCLパッチ、(2)グラハムパッチ、もしくは(3)偽手術され、損傷を封鎖されていない動物、を包含する。グラハムパッチを用いた損傷封鎖は、網を損傷上に縫合することからなる。この手順では縫合が用いられた。動物は、初めの処理の後、7日目(パターン加工、スピンコートされたパッチについてn=3、グラハムパッチについてn=1)および14日目(パターン加工、スピンコートされたパッチについてn=3、グラハムパッチについてn=2、偽手術の動物についてn=2)に屠殺された。それぞれの条件での腹部癒着の程度が評価され、そして0(癒着していない)から10(腹腔全体におよぶ広範な癒着)までに分級された。H&E染色は、異なる封鎖技術に対しての組織応答を評価するために用いられた。
【0089】
統計的データは平均±標準偏差として表現される。事後テューキー法を伴う一元配置ANOVAが、(1)PDMSおよびPCLパッチ材料の接着強度におけるトポグラフィおよびCA量の効果の測定、(2)非被覆および被覆されたPCLパッチの皮下生体適合性の評価および(3)異なる技術を用いた胃損傷封鎖の後の腹腔接着の程度の測定に焦点を当てた実験における統計的差異を検証するために用いられた。スピンコーティングの後に平面のもしくはパターン加工されたPCL表面に残存するCA接着剤の量を比較するために独立t検定が用いられた。データは、0.05以下のP値が得られた際に有意なものとみなした。
【0090】
結果
異なるミクロンスケールのトポグラフィが、シリコンウェハの化学的エッチングによって調製され、次に異なる素材(例えば、PDMS)のパターン加工のために用いられた(
図1A)。このサイズスケールは、表面トポグラフィの存在を損なわずにCAのミクロンスケールの層の被覆ができるように選択された。ピラーアレイのデザインは、CAの薄膜の接着強度に対する接触表面積の効果を評価するために選択され(
図1B)、トポグラフィによって最大で2.6倍までの増加があった。異なるトポグラフィ間での幾何学的な相関性はまた、ピラーのアスペクト比および底面直径(トポグラフィ2対4)、間隔距離(トポグラフィ1対4)、ならびに全体のパターンのスケール(トポグラフィ3)の接着強度に対する効果を比較することも可能にする。
【0091】
ピラーアレイの接着促進への効果を測定する初めのスクリーニングは、可塑性PDMSを基材材料として用いて行われた。PDMSは簡単におよび再現性よくパターン加工することができ、そして良好な可塑特性を有するため、接着におけるトポグラフィの効果を試験するために広範に使用されるモデル材料である。インビトロ引張接着力測定は、湿潤腸管組織へのパッチ適用の5分後の被覆された表面に対して行われた。この硬化時間は、通常の外科適用中に費やされる平均の時間を考慮して選択された。採用されたスピンコーティング法(
図1C)は、パターン加工された表面上のCA接着剤の均一な層(
図1D)を得ることを可能にした。他のトポグラフィではわずかな増加しかもしくは増加が観察されなかったところ、トポグラフィ4では接着強度における有意な増加が観察された(p<0.05)(
図1E)。興味深いことに、トポグラフィ4はトポグラフィ3と同程度の総表面積を示していたが、観察された接着力の値は異なっており、接着促進におけるピラーの高さの重要性が強調される。より低いピラーの高さ(トポグラフィ3)では、パターンがCAによってほぼ完全に覆われ、平面と同程度の接着力の値という結果になった。しかしながら、試験された最も高いアスペクト比のピラー(トポグラフィ2)では、CA被覆によってパターン崩壊が起こり、接着力に対しての改善はみられなかった。同一のピラーのサイズ(トポグラフィ1対トポグラフィ4)では、表面上のピラーの密度、そしてそれによる接触面積の増加は、接着力の向上に大きな効果を有していた。
【0092】
スクリーニングの結果を考慮して、トポグラフィ4がさらなる研究のために選択された。医療適用への翻案を可能にするため、生分解性および生体適合性の材料であるポリカプロラクトン(PCL)がパッチ材料として用いられた。PCLは内部適用についてFDAに承認されており(例えば、生分解性縫合糸)、そして他の研究においてもその創傷封鎖適用での好ましい生体適合性プロファイルが実証されている。低い融解温度(〜60℃)を考慮すると、PCLは熱エンボシングによって有機溶媒の使用を必要とせずに、そして大きな表面積にわたって高い再現性で容易にパターン加工することができる。
【0093】
この方法によって得られたパターンは、約13.2±1.0μmの高さおよび5.15±0.4μmの底面直径を有していた。CAはPCLのパターン加工された表面を均一に被覆した(
図1F)。SEMの測定より、基部における被覆の厚さは約2.6±1.4μmであった。
【0094】
湿潤腸管組織に対するインビトロ引張接着試験によって、平面基材と比較した際に薄いCA被覆の接着力の向上におけるトポグラフィの有効性が確認された(
図1G)。パターン加工された表面にスピンコートされたCAの接着力は、5μLのCAで被覆された平面のもしくはパターン加工されたPCLによって得られた接着力と同程度であった。パターン加工されたサンプルの向上したパフォーマンスは、サンプルを1時間以上PBS中に浸漬した場合であっても、依然として観察できた(
図2)。重要なことに、本明細書で硬いPCLおよび可塑性のPDMSの両者を用いて実証されているように、このアプローチは異なる機械的性質(すなわち、硬さ)を有する材料を用いる際にも普遍的であると考えられる。
【0095】
PCLの疎水的な特性は、表面パターンの存在において大きく促進され、結果として水接触角が96±4度(平面)から128±6度(パターン加工された表面)へと増大した。CAの疎水的な特性により、その接触角は平面のPCL表面(28±7度)と比較して、パターン加工されたPCL表面(12±4度)上で測定された際には減少している(
図2A)。これはパターン加工された表面では平面と比較してより良いCAの広がりをもたらす。
【0096】
スピンコーティングの後にCAがどのようにピラー構造を覆っているかを評価するために化学的マッピングが採用された。CAおよびPCLの間の類似した化学組成を考慮して、CA中に封入したIOの検出に基づく間接的な方法が用いられた。CA中のIOの存在はスピンコーティングのプロセス、そして最終的な接着剤層の厚さに対して影響を与えない(
図1Gおよび3B)。EDX分析によってCA接着剤がパターンの全長を覆っていることが確認され、そして、したがってCAで被覆されている面積はパターン加工されたパッチの総表面積と等価である。しかしながら、SEM画像からは、パターンの基部においてより多くの接着剤の集積が起こっているように考えられる(
図1G)。
【0097】
スピンコートされパターン加工された表面、平面、もしくは5μLの接着剤に対するCA接着剤の相対量が、CA接着剤中に封入されたIOから検出される鉄シグナルに基づくICP−AESによって定量された。スピンコーティングのプロセスは、スピンコーティングなしで5μLの接着剤がアプライされたものと比較して、平面基材においてCAの量を13±2分の1へと減少させることができる(
図3C)。パターン加工された表面は、スピンコーティング手順の後、平面よりも多くのCAを保持していることが可能であった(p<0.05)。しかし、接触面積の増加を考慮すると、パターン加工されたサンプル上の単位面積当たりのCAの量は、平面基材の0.78倍以下であった。言い換えると、平面と比較してパターン加工された表面上ではCA層が薄かった。
【0098】
表面トポグラフィと組織がどのように相互作用するか測定するため、CAでスピンコートされパターン加工されたPDMSのSEM画像が評価され、それに続いて腸管組織からの引張張力試験が行われた。これらによって、表面トポグラフィと組織とのかみ合わせが明らかにされた(
図3D)。これらのデータは、機械的なかみ合わせおよび増大した接触面積がパターン加工された表面の向上したパフォーマンスを媒介し得るということを示唆している。これは、スピンコートされた平面のおよびパターン加工されたサンプルを比較した際に、表面積の増加(2.3倍以下、PCLパッチ材料について)および接着強度の増加(2.6倍以下、
図1H)の大きさのオーダーが同程度であることによってさらに支持される。
【0099】
組織との界面でのCA接着剤の量がどのように組織応答に影響を与えるか評価するため、インビボの生体適合性実験が行われた。H&Eおよび抗CD68染色が、皮下インプラントの後1および3週間の時点での組織応答を評価するために用いられた。パターン加工されスピンコートされたサンプルに対する炎症性反応は、まだ1週間の時点では、パターン加工され被覆されていない材料に対する炎症性反応と同程度であった。インプラント後3週間では、被覆されていない材料に対する炎症は安定であったところ、スピンコートされた材料に対する炎症性反応は、血管新生の発生率の上昇および巨大細胞の出現によって証明されるように、わずかに増大した。CAがアプライされていた両方の条件(スピンコートもしくは5μL)において1週間の時点では細胞壊死が観察された;しかしながら、3週間後には5μLのCAがアプライされた条件のみで依然として細胞壊死が引き起こされた。長期の反応は毒性産物の放出によって説明され得るところ、初めの細胞壊死はCAの組織表面への反応性によって説明され得る。パターン加工された非被覆のサンプルおよびスピンコートされたサンプルの間で炎症性反応の程度もしくは線維化嚢の厚さにおいて統計的な差異が観察されなかったところ、5μLのCAで被覆されたサンプルのインプラントはまた、パターン加工された非被覆のサンプルおよびスピンコートされたサンプルの両者と両方の時点で比較して、より重篤な炎症性反応およびより厚い線維化嚢をもたらした(
図4A)。CAの組織毒性は、組織界面にアプライされる接着剤の量に高度に依存していた。マイクロトポグラフィによる界面表面積の増加が組織接着を最大化するところ、接着剤のスピンコーティングは、接着剤の量および分解中に放出されるその毒性産物を減少させた。
【0100】
スピンコートされたサンプルの内部組織損傷の機能的封鎖を促進する能力は、結腸もしくは胃穿刺を有するラットモデルを用いて評価された。スピンコートされた平面のもしくはパターン加工されたパッチの結腸表面への初めの接着の程度は、組織への適用の後直ちに情報を与えられていない外科医によって分級された。接着パッチは損傷の表面上にアプライされ、そして接着の程度には統計的に有意な差がみられ、スピンコートされパターン加工されたサンプルの、スピンコートされた平面のサンプルに対するより良いパフォーマンスが確認された(
図4B)。取り付けがうまくいった場合、全てのパッチは蠕動運動に耐え、そして研究の7日間の間損傷を保護し続けた。損傷の周辺では大きな炎症性反応は観察されず、減少した量のCAが用いられた際の好ましい生体適合性プロファイルが確認された。
【0101】
パターン加工されスピンコートされたパッチは、3mmの直径の穿刺損傷を覆いながら胃表面に接着し、少なくとも14日間接着を維持することもまた可能であった。対照として、胃腸系の損傷に対して日常的に用いられるグラハムパッチ技術を用いて胃の損傷が封鎖された。これには、組織修復を促進する前駆細胞を含有していることが公知の網を損傷上に縫合することが伴う。重要なことに、インプラントの14日後に、パターン加工されスピンコートされたパッチで胃損傷を封鎖された動物では極小の腹部癒着が観察されたのに対し、グラハムパッチおよび偽手術された動物では極小−中程度もしくは重篤な癒着がそれぞれ観察された(
図4C)。これらのデータは、パッチが損傷の漏出防止の密封剤を提供することができるということを示唆する。CA接着剤の粘膜再生に対する影響は、パッチの下の組織のH&E染色によって評価された。先行研究では、悪化した炎症性反応は組織修復および再生を阻害するということが実証されている。7日目まででは損傷は、グラハムパッチとパターン加工されスピンコートされたパッチの両者で依然として見られた。
【0102】
表面トポグラフィは、基材と組織の間の接触面積を増加させることにより、薄い接着剤の被覆のパフォーマンスを向上させる。重要なことに、それは組織−パッチ材料間の界面における接着剤の量の減少を可能にし、その接着強度を損なうことなく反応性接着剤の生体適合性プロファイルを改善させる。本研究は、組織にアプライされるCA接着剤の量と、観察される組織毒性および炎症性の反応との相互関係を示す最初の実証であると考えられる。このコンセプトに基づくと、他の接着剤の送達のアプローチが、引き起こされる毒性を最小化しながらCAの接着強度を最大化させるために開発され得る。これらのアプローチは、CA接着剤の適用範囲および変換を、外部適用を超えて広げ得る。