特許第6266659号(P6266659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266659癌の治療のための安息香酸誘導体MDM2阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266659
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】癌の治療のための安息香酸誘導体MDM2阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/76 20060101AFI20180115BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20180115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180115BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C07D211/76CSP
   A61K31/445
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 111
【請求項の数】15
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2015-560283(P2015-560283)
(86)(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公表番号】特表2016-510028(P2016-510028A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】US2014018759
(87)【国際公開番号】WO2014134201
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年1月19日
(31)【優先権主張番号】61/770,901
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ヨスプ
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/153509(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/007409(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/022707(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/067185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 211/76
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物
【化1】
、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
化合物
【化2】
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項4】
治療を必要とする対象において治療するための薬学的組成物であって、有効な投薬量の請求項1および2のいずれか一項に記載の化合物を含む、薬学的組成物
【請求項5】
前記癌が、
(a)癌腫であって、膀胱、乳房、結腸、直腸、腎臓、肝臓、肺、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚、甲状腺、前立腺、および皮膚の各癌を含むもの
(b)リンパ系統の造血器腫瘍であって、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫を含むもの
(c)リンパ系統の造血器腫瘍であって、急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び前骨髄球性白血病を含むもの、
(d)間葉性由来の腫瘍であって、繊維肉腫、及び横紋筋肉腫、並びに他の肉腫であって、軟部組織及び骨肉腫を含むもの、
(e)中枢及び末梢神経系の腫瘍であって、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含むもの、
(f)黒色腫、セミノーマ、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症(xenoderoma pigmentosum)、角化棘細胞腫、甲状腺濾胞癌、カポジ肉腫、子宮内膜癌、頭頸部癌、膠芽腫、悪性腹水又は造血癌
より選択される、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項6】
前記癌がリンパ系統の造血器腫瘍である、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項7】
前記癌が軟部組織肉腫である、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項8】
前記癌が乳癌である、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項9】
前記癌が神経膠腫である、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項10】
前記癌が急性骨髄性白血病(AML)である、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項11】
前記癌が黒色腫である、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項12】
前記癌が骨髄異形成症候群である、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項13】
前記癌がp53野生型(p53WTとして特定される、請求項5から12のいずれか一項に記載の薬学的組成物
【請求項14】
前記薬学的組成物が、放射線治療と組み合わせて使用される、請求項5から12のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記薬学的組成物が、放射線治療と組み合わせて使用される、請求項13に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に癌の治療のための、治療剤として有用なMDM2阻害剤に関する。本発明はまた、MDM2阻害剤を含有する薬学的組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
p53は、細胞周期停止、アポトーシス、老化、及びDNA修復に関与する多数の遺伝子の転写を活性化することにより細胞ストレスに応答する、腫瘍抑制因子及び転写因子である。p53活性化の原因となることがまれな正常な細胞とは異なり、腫瘍細胞は、低酸素症及びアポトーシス促進性癌遺伝子活性化をはじめとする様々な障害からの絶え間ない細胞ストレス下にある。したがって、腫瘍内のp53経路の不活性化の強力な選択的利点があり、p53機能を排除することが、腫瘍生存にとって必須条件であり得ることが提案されている。この考えの裏づけとして、3つのグループの研究者らは、マウスモデルを使用して、定着腫瘍の維持には、p53機能の欠如が継続して要求されることを示している。研究者が、不活化p53を有する腫瘍にp53機能を戻すと、腫瘍は退縮した。
【0003】
p53は、固形腫瘍の50%及び液性腫瘍の10%において、突然変異及び/または喪失により不活化される。p53経路の他の主要成員もまた、癌内で遺伝子的または後成的に変化させられる。腫瘍性タンパク質であるMDM2はp53機能を阻害し、それは、遺伝子増幅により、10%という高さであると報告されている発現率で活性化される。MDM2は、次いで、別の腫瘍抑制因子であるp14ARFにより阻害される。p53の下流の変化が、p53WT腫瘍(p53野生型)内でp53経路を少なくとも部分的に不活化する原因であり得ることが示唆されている。この概念の裏づけとして、いくつかのp53WT腫瘍は、低減したアポトーシス能力を示すように見えるが、細胞周期停止を経るそれらの能力は、元の状態のままである。1つの癌治療戦略は、MDM2に結合し、かつp53とのその相互作用を無効にする、小分子の使用を伴う。MDM2は、3つの機序によりp53活性を阻害する:1)E3ユビキチンリガーゼとして機能して、p53分解を促進すること、2)p53転写性活性化ドメインに結合すること、及びそれをブロックすること、ならびに3)p53を細胞核から細胞質へ搬出すること。これら3つの機序の全ては、MDM2とp53との相互作用を無効にすることによりブロックされるだろう。特に、この治療戦略は、p53WTである腫瘍に適用され得、小分子MDM2阻害剤を用いた研究は、インビトロ及びインビボ両方における腫瘍成長の有望な減退をもたらしている。さらには、p53不活化腫瘍を有する患者においては、MDM2阻害による正常な組織内での野生型p53の安定化が、細胞分裂毒からの正常な組織の選択的保護を可能にするかもしれない。
【0004】
本発明は、p53及びMDM2間の相互作用を阻害すること、及びp53下流エフェクター遺伝子を活性化することができる化合物に関する。そのため、本発明の化合物は、癌、細菌感染症、ウイルス感染症、潰瘍、及び炎症の治療に有用であろう。特に、本発明の化合物は、乳房、結腸、肺、及び前立腺腫瘍等の固形腫瘍、ならびにリンパ腫及び白血病等の液性腫瘍を治療することに有用である。本明細書において使用される場合、MDM2は、ヒトMDM2タンパク質を意味し、p53は、ヒトp53タンパク質を意味する。ヒトMDM2は、HDM2またはhMDM2とも称され得ることに留意されたい。
【発明の概要】
【0005】
実施形態1において、本発明は、化合物
【化1】

、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0006】
実施形態2において、本発明は、化合物
【化2】
を提供する。
【0007】
実施形態3において、本発明は、実施形態1または2のいずれか一項の化合物、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物を提供する。
【0008】
実施形態4において、本発明は、治療を必要とする対象における癌の治療方法あって、該対象に、有効な投薬量の実施形態1〜2のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0009】
実施形態5において、本発明は、該癌が、膀胱、乳房、結腸、直腸、腎臓、肝臓、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、食道、胆嚢、卵巣、胆嚢、胃、子宮頚、甲状腺、前立腺、皮膚、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、急性もしくは慢性骨髄性白血病、黒色腫、子宮内膜癌、頭頸部癌、膠芽腫、または骨肉腫より選択される、実施形態4の方法を提供する。
【0010】
実施形態6において、本発明は、該癌が膀胱癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0011】
実施形態7において、本発明は、該癌が乳癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0012】
実施形態8において、本発明は、該癌が結腸癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0013】
実施形態9において、本発明は、該癌が直腸癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0014】
実施形態10において、本発明は、該癌が腎臓癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0015】
実施形態11において、本発明は、該癌が肝臓癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0016】
実施形態12において、本発明は、該癌が小細胞肺癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0017】
実施形態13において、本発明は、該癌が非小細胞肺癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0018】
実施形態14において、本発明は、該癌が食道癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0019】
実施形態15において、本発明は、該癌が胆嚢癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0020】
実施形態16において、本発明は、該癌が卵巣癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0021】
実施形態17において、本発明は、該癌が膵臓癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0022】
実施形態18において、本発明は、該癌が胃癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0023】
実施形態19において、本発明は、該癌が子宮頚癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0024】
実施形態20において、本発明は、該癌が甲状腺癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0025】
実施形態21において、本発明は、該癌が前立腺癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0026】
実施形態22において、本発明は、該癌が皮膚癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0027】
実施形態23において、本発明は、該癌が急性リンパ球性白血病である、実施形態4の方法を提供する。
【0028】
実施形態24において、本発明は、該癌が慢性骨髄性白血病である、実施形態4の方法を提供する。
【0029】
実施形態25において、本発明は、該癌が急性リンパ芽球性白血病である、実施形態4の方法を提供する。
【0030】
実施形態26において、本発明は、該癌がB細胞リンパ腫である、実施形態4の方法を提供する。
【0031】
実施形態27において、本発明は、該癌がT細胞リンパ腫である、実施形態4の方法を提供する。
【0032】
実施形態28において、本発明は、該癌がホジキンリンパ腫である、実施形態4の方法を提供する。
【0033】
実施形態29において、本発明は、該癌が非ホジキンリンパ腫である、実施形態4の方法を提供する。
【0034】
実施形態30において、本発明は、該癌が有毛細胞性リンパ腫である、実施形態4の方法を提供する。
【0035】
実施形態31において、本発明は、該癌がバーキットリンパ腫である、実施形態4の方法を提供する。
【0036】
実施形態32において、本発明は、該癌が急性骨髄性白血病である、実施形態4の方法を提供する。
【0037】
実施形態33において、本発明は、該癌が慢性骨髄性白血病である、実施形態4の方法を提供する。
【0038】
実施形態34において、本発明は、該癌が黒色腫である、実施形態4の方法を提供する。
【0039】
実施形態35において、本発明は、該癌が子宮内膜癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0040】
実施形態36において、本発明は、該癌が頭頸部癌である、実施形態4の方法を提供する。
【0041】
実施形態37において、本発明は、該癌が膠芽腫である、実施形態4の方法を提供する。
【0042】
実施形態38において、本発明は、該癌が骨肉腫である、実施形態4の方法を提供する。
【0043】
実施形態39において、本発明は、該癌がp53野生型として特定される、実施形態4、または6〜38のいずれか一項の方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、特に癌の治療のための、治療剤として有用なMDM2阻害剤を提供する。本発明はまた、MDM2阻害剤を含有する薬学的組成物にも関する。
【0045】
「−」という記号は、共有結合を表し、別の基との連結点を示すためにラジカル基においても使用され得る。化学構造において、この記号は、分子内のメチル基を表すために一般的に使用される。
【0046】
「含む」という用語は、示された構成要素を含むが他の要素を除外せず、無制限であることが意図される。
【0047】
「治療上有効量」という用語は、特定の疾患もしくは病態の1つ以上の症状を緩和、減衰、もしくは排除する、または特定の疾患もしくは病態の1つ以上の症状の発症を予防するもしくは遅らせる、化合物の量を意味する。
【0048】
「患者」及び「対象」という用語は、互換的に使用されてもよく、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヒト等の動物を意味する。特定の患者は哺乳動物である。患者という用語には、オス及びメスが含まれる。
【0049】
「薬学的に許容される」という用語は、本発明の化合物、または本化合物の塩、または本化合物を含有する製剤、または特定の賦形剤等の参照物質が、患者への投与に好適であることを意味する。
【0050】
「治療すること」、「治療する」、「治療」等の用語は、予防(preventative)(例えば、予防(prophylactic))及び緩和治療を含む。
【0051】
「賦形剤」という用語は、製剤及び/または患者への投与に典型的に含まれる、医薬品有効成分(API)以外の、任意の薬学的に許容される添加剤、担体、希釈剤、アジュバント、または他の成分を意味する。
【0052】
本発明の化合物は、治療上有効量で患者に投与される。本化合物は、単独で、または薬学的に許容される組成物または製剤の一部として、投与され得る。加えて、本化合物または組成物は、例えばボーラス注射により、全て同時に投与されるか、一連の錠剤等により複数回投与されるか、または、例えば、経皮送達を使用する等、一定期間にわたって実質的に均一に送達され得る。本化合物の用量は、時間とともに変化し得ることにも留意されたい。
【0053】
加えて、本発明の化合物は、単独で、または他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて、投与され得る。他の薬学的に活性な化合物は、本発明の化合物と同じ疾患もしくは病態、または異なる疾患もしくは病態を治療することが意図され得る。患者に複数の薬学的に活性な化合物を投与する予定、または投与している場合、化合物は同時または順次に投与され得る。例えば、錠剤の場合、活性化合物は、1つの錠剤または別個の錠剤内に含まれていてもよく、同時または任意の順番で順次に投与され得る。加えて、本組成物は異なる形態であってもよいことを認識されたい。例えば、1つ以上の化合物は、錠剤を介して送達されてもよく、別の1つの化合物は注射、またはシロップとして経口で投与される。全ての組み合わせ、送達方法、及び投与順序が企図される。
【0054】
「癌」という用語は、未制御の細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理状態を意味する。癌の一般的な分類としては、癌腫、リンパ腫、肉腫、及び芽細胞腫が挙げられる。
【0055】
本発明の化合物を、癌治療に使用することができる。癌治療の方法は、それを必要とする患者に、治療上有効量の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0056】
本発明の化合物を、腫瘍治療に使用することができる。腫瘍治療の方法は、それを必要とする患者に、治療上有効量の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0057】
本発明はまた、癌等の病態の治療のための薬剤の製造における本発明の化合物の使用にも関係する。
【0058】
本発明の化合物を用いて治療され得る癌としては、膀胱、乳房、結腸、直腸、腎臓、肝臓、肺(小細胞肺癌、及び非小細胞肺癌)、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚、甲状腺、前立腺、及び皮膚(扁平上皮細胞癌を含む)の癌等の癌腫、リンパ系統の造血器腫瘍(白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞性リンパ腫、及びバーキットリンパ腫を含む)、骨髄系統の造血器腫瘍(急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び前骨髄球性白血病を含む)、間葉性由来の腫瘍(繊維肉腫、及び横紋筋肉腫、ならびに、他の肉腫、例えば、軟部組織及び骨)、中枢及び末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む)、及び他の腫瘍(黒色腫、セミノーマ、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症(xenoderoma pigmentosum)、角化棘細胞腫、甲状腺濾胞癌、及びカポジ肉腫を含む)等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物を用いて治療することができる他の癌としては、子宮内膜癌、頭頸部癌、膠芽腫、悪性腹水、及び造血癌が挙げられる。
【0059】
本発明の化合物によって治療することができる特定の癌としては、軟部組織肉腫、骨肉腫等の骨癌、乳房腫瘍、膀胱癌、リーフラウメニ症候群、脳腫瘍、横紋筋肉腫、副腎皮質癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、及び急性骨髄性白血病(AML)が挙げられる。
【0060】
癌治療に関する本発明の特定の実施形態において、癌は、p53野生型(p53WT)として特定される。別の特定の実施形態において、癌は、p53WT及びCDKN2A突然変異体として特定される。別の態様において、本発明は、どの患者に本発明の化合物を投与すべきかを決定するための診断を提供する。例えば、患者の癌細胞の試料を採取し、分析して、p53及び/またはCDKN2Aに関して癌細胞の状態を決定し得る。1つの態様において、p53に関して突然変異する癌を有する患者よりも、p53WTである癌を有する患者が、治療のために選択される。別の態様において、p53WTであり、かつ突然変異体CDNK2Aタンパク質を有する癌の患者が、これらの特性を有しない患者よりも、選択される。分析のために癌細胞を採取することは、当業者に周知である。「p53WT」という用語は、ゲノムDNA配列番号NC_000017バージョン9(7512445..7531642)(GenBank)によってコードされるタンパク質、cDNA配列番号NM_000546(GenBank)によってコードされるタンパク質、またはGenBank配列番号NP_000537.3を有するタンパク質を意味する。「CDNK2A突然変異体」という用語は、野生型でないCDNK2Aタンパク質を意味する。「CDKN2A野生型」という用語は、ゲノムDNA配列番号9:21957751−21984490(Ensembl ID)によってコードされるタンパク質、cDNA配列番号NM_000077(GenBank)もしくはNM_058195 9GenBank)によってコードされるタンパク質、またはGenBank配列番号NP_000068もしくはNP_478102を有するタンパク質を意味する。
【0061】
本発明の化合物はまた、甲状腺過形成(特に、グレーブス病)等の過剰増殖性障害、及び嚢胞(多嚢胞性卵巣症候群(シュタインレベンタール症候群)に特有の卵巣支質の血管過剰等)を治療するために使用することもできる。
【0062】
本発明の化合物はまた、以下の疾患または病態を治療するために使用することもできる:喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、乾癬、接触性皮膚炎、結膜炎、アレルギー性鼻炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、及びハンチントン病。
【0063】
本発明の化合物はまた、炎症性疾患、低酸素症、潰瘍、ウイルス感染症、細菌感染症、及び細菌性敗血症の治療にも使用することができる。
【0064】
本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、1つ以上の追加の薬学的に活性な化合物/薬剤と組み合わせて投与してもよい。特定の実施形態において、追加の薬学的に活性な薬剤は、癌を治療するために使用することができる薬剤である。例えば、追加の薬学的に活性な薬剤は、抗腫瘍薬、抗血管新生剤、化学療法剤、及びペプチド系(peptidal)癌治療剤より選択することができる。さらに別の実施形態において、抗腫瘍薬は、抗生物質型薬剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、免疫剤、インターフェロン型薬剤、キナーゼ阻害剤、混合型薬剤、及びそれらの組み合わせより選択される。追加の薬学的に活性な化合物/薬剤は、従来の有機化学小分子であってもよく、または、タンパク質、抗体、ペプチド体、DNA、RNA等の高分子、もしくはそのような高分子の断片であり得ることにも留意されたい。
【0065】
癌治療に使用することができ、1つ以上の本発明の化合物と組み合わせて使用することができる、具体的な薬学的に活性な薬剤の例としては、メトトレキサート、タモキシフェン、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、シスプラチン、カルボプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、パシタクセル(pacitaxel)、チオグアニン、イダルビシン、ダクチノマイシン、イマチニブ、ゲムシタビン、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルムスチン、cladisat.NaCl水溶液、シクロホスファミン、シタラビン、デカラジン、ドセタキセル、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、フルダラビン、ミトスマイシン(mitosmycin)、ミトキサン(mitoxane)、ミトキサントロン、トポテカン、ビノレルビン、アドリアマイシン、ミスラム(mithram)、イミキモド、アレムツズマブ(alemtuzmab)、エキセメスタン、ベバシズマブ、セツキシマブ、アザシチジン、クロファラビン、デシタビン、デサチニブ(desatinib)、デクスラゾキサン、ドセタキセル、エピルビシン、オキサリプラチン、エルロチニブ、ラロキシフェン、フルベストラント、レトロゾール、ゲフィチニブ、ゲムツズマブ、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、イキサベピロン、ラパチニブ、レナリドマイド、アミノレブリン酸、テモゾロミド、ネララビン、ソラフェニブ、ニロチニブ、ペグアスパラガーゼ、ペメトレキセド、リツキシマブ、ダサチニブ、サリドマイド、ベキサロテン、テムシロリムス、ボルテゾミブ、ボリノスタット、カペシタビン、ゾレドロン酸、アナストロゾール、スニチニブ、アプレピタント、及びネララビン、またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0066】
癌治療に使用することができ、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる、追加の薬学的に活性な薬剤としては、血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤、肝細胞成長因子/散乱因子(HGF/SF)阻害剤、アンジオポエチン1及び/または2阻害剤、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)アゴニスト、組換えヒトapo2リガンド(TRAIL)、インスリン様成長因子1受容体(IGFR−1)阻害剤、cFMS阻害剤、HER2阻害剤、c−met阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、CDK4及び/または6阻害剤、及びB−raf阻害剤が挙げられる。
【0067】
癌治療に使用することができ、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる、さらなる追加の薬学的に活性な薬剤としては、好ましくは癌細胞上のタンパク質と結合する抗体が、リンカーを使用して癌細胞に対して有害な化学化合物と結合する、抗体薬物複合体(ADC)が挙げられる。癌細胞に対して有害な化学化合物の例としては、マイタンシノイド誘導体及びオーリスタチン誘導体が挙げられる。
【0068】
癌治療に使用することができ、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる、依然としてさらなる追加の薬学的に活性な薬剤としては、エポエチンアルファ、ダルベポエチンアルファ、パニツムマブ、ペグフィルグラスチム、パリフェルミン、フィルグラスチム、デノスマブ、アンセスチム、AMG 102、AMG 319、AMG 386、AMG 479(ガニツマブ)、AMG 511、AMG 900、AMG 655(コナツブマブ)、AMG 745、AMG 951、及びAMG 706(モテサニブ)、またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0069】
別の態様において、本発明は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)経路内のタンパク質の阻害剤である1つ以上の医薬品と組み合わせた本発明の化合物の使用に関する。本発明の化合物とPI3K経路内のタンパク質の阻害剤との組み合わせは、癌細胞成長アッセイにおいて、増強されたアポトーシス及び細胞死滅をはじめとする相乗作用を示している。PI3K経路内のタンパク質の例としては、PI3K、mTOR、及びPKB(Aktとしても知られる)が挙げられる。PI3Kタンパク質は、α、β、δ、またはγを含むいくつかのイソ型で存在する。本発明の化合物と組み合わせて使用することができるPI3K阻害剤は、1つ以上のイソ型に関して選択的であり得ることが企図される。選択的とは、化合物が1つ以上のイソ型を他のイソ型よりも阻害することを意味する。選択性は、当業者に周知の概念であり、インビトロもしくは細胞に基づくアッセイの周知の活性で測定することができる。好ましい選択性は、1つ以上のイソ型について他のイソ型よりも2倍超、好ましくは10倍、またはより好ましくは100倍大きい選択性を含む。1つの態様において、本発明の化合物と組み合わせて使用することができるPI3K阻害剤は、PI3Kα選択的阻害剤である。別の態様において、本化合物は、PI3Kδ選択的阻害剤である。
【0070】
本発明の化合物と組み合わせて使用することができるPI3K阻害剤の例としては、以下に開示されるものが挙げられる:PCT公開出願番号WO2010/151791、PCT公開出願番号WO2010/151737、PCT公開出願番号WO2010/151735、PCT公開出願番号WO2010151740、PCT公開出願番号WO2008/118455、PCT公開出願番号WO2008/118454、PCT公開出願番号WO2008/118468、米国公開出願番号US20100331293、米国公開出願番号US20100331306、米国公開出願番号US20090023761、米国公開出願番号US20090030002、米国公開出願番号US20090137581、米国公開出願番号US2009/0054405、米国公開出願番号US2009/0163489、米国公開出願番号US2010/0273764、米国公開出願番号US2011/0092504、またはPCT公開出願番号WO2010/108074。
【0071】
本発明の化合物と組み合わせた使用に好ましいPI3K阻害剤としては、
【化3】
、またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0072】
下記の式IIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩もまた好ましく、
【化4】
式中、Xは、フッ素または水素であり、Yは、水素またはメチルであり、Zは、水素またはメチルである。
【0073】
PI3K及びmTORの両方を阻害する化合物(二重阻害剤)は公知である。依然として別の態様において、本発明は、本発明の化合物と組み合わせて使用するためのPI3K及びmTOR二重阻害剤の使用を提供する。
【0074】
mTORは、PI3K経路内のタンパク質である。本発明の化合物と組み合わせてmTOR阻害剤を使用することが、本発明の別の態様である。本発明の化合物と組み合わせて使用することができるmTOR阻害剤としては、以下の文書に開示されているものが挙げられる:PCT公開出願番号WO2010/132598、またはPCT公開出願番号WO2010/096314。
【0075】
PKB(Akt)もまた、PI3K経路内のタンパク質である。本発明の化合物と組み合わせてmTOR阻害剤を使用することが、本発明の別の態様である。本発明の化合物と組み合わせて使用することができるPKB阻害剤としては、以下の文書に開示されるものが挙げられる:米国特許番号7,354,944、米国特許番号7,700,636、米国特許番号7,919,514、米国特許番号7,514,566、米国特許出願公開番号US2009/0270445 A1、米国特許番号7,919,504、米国特許番号7,897,619、またはPCT公開出願番号WO2010/083246 A1。
【0076】
本発明の化合物は、CDK4及び/または6阻害剤と組み合わせて使用することができる。本発明の化合物と組み合わせて使用することができるCDK4及び/または6阻害剤としては、以下の文書に開示されるものが挙げられる:PCT公開出願番号WO2009/085185、または米国特許出願公開番号US2011/0097305。
【0077】
本発明の化合物は、吐き気を治療する薬学的に活性な薬剤と組み合わせて使用することもできる。吐き気を治療するために使用することができる薬剤の例としては、ドロナビノール、グラニセトロン、メトクロプラミド、オンダンセトロン、及びプロクロルペラジン、またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0078】
加えて、本発明の化合物は、癌治療に使用することができる他の薬剤、例えばアセマンナン、アクラルビシン、アルデスロイキン、アリトレチノイン、アミホスチン、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アルグラビン(arglabin)、三酸化ヒ素、BAM 002(Novelos)、ビカルタミド、ブロクスウリジン、セルモロイキン、セトロレリックス、クラドリビン、クロトリマゾール、DA 3030(Dong−A)、ダクリズマブ、デニロイキンジフチトクス、デスロレリン、ジラゼプ、ドコサノール、ドキセルカルシフェロール、ドキシフルリジン、ブロモクリプチン、シタラビン、HITジクロフェナク、インターフェロンアルファ、トレチノイン、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エミテフール、エピルビシン、エポエチンベータ、リン酸エトポシド、エクシスリンド、ファドロゾール、フィナステリド、リン酸フルダラビン、ホルメスタン、ホテムスチン、硝酸ガリウム、ゲムツズマブゾガマイシン、ギメラシル/オテラシル/テガフールの合剤、グリコピン(glycopine)、ゴセレリン、ヘプタプラチン(heptaplatin)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎児アルファフェトプロテイン、イバンドロン酸、インターフェロンアルファ、天然型インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ−2、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、インターフェロンアルファ−N1、インターフェロンアルファ−n3、インターフェロンアルファコン−1、天然型インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンベータ1a、インターフェロンベータ1b、天然型インターフェロンガンマ、インターフェロンガンマ−1a、インターフェロンガンマ−1b、インターロイキン−1ベータ、ヨーベングアン、イルソグラジン、ランレオチド、LC 9018(Yakult)、レフルノミド、レノグラスチム、レンチナン硫酸、レトロゾール、白血球アルファインターフェロン、リュープロレリン、レバミソール+フルオロウラシル、リアロゾール、ロバプラチン、ロニダミン、ロバスタチン、マソプロコール、メラルソプロール、メトクロプラミド、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトキサントロン、モルグラモスチム、ナファレリン、ナロキソン+ペンタゾシン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ニルタミド、ノスカピン、新規赤血球生成刺激タンパク質、NSC 631570オクトレオチド、オプレルベキン、オサテロン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペグインターフェロンアルファ−2b、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ピシバニール、ピラルビシン、ウサギ抗胸腺細胞ポリクローナル抗体、ポリエチレングリコールインターフェロンアルファ−2a、ポルフィマーナトリウム、ラルチトレキセド、ラスブリカーゼ、レニウムRe186エチドロネート、RIIレチンアミド、ロムルチド、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、サルグラモスチム、シゾフィラン、ソブゾキサン、ソネルミン(sonermin)、塩化ストロンチウム−89、スラミン、タソネルミン、タザロテン、テガフール、テモポルフィン、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、チマルファシン、サイロトロピンアルファ、トレミフェン、トシツモマブ−ヨウ素131、トレオスルファン、トレチノイン、トリロスタン、トリメトレキサート、トリプトレリン、天然型腫瘍壊死因子アルファ、ウベニメクス、膀胱癌ワクチン、丸山ワクチン、黒色腫ライセートワクチン、バルルビシン、ベルテポルフィン、ビルリジン、ジノスタチンスチマラマー、アバレリクス、AE 941(Aeterna)、アンバムスチン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、bcl−2(Genta)、APC 8015(Dendreon)、デキサミノグルテチミド、ジアジクオン、EL 532(Elan)、EM 800(Endorecherche)、エニルウラシル、エタニダゾール、フェンレチニド、フィルグラスチムSD01(Amgen)、ガロシタビン、ガストリン17免疫原、HLA−B7遺伝子療法(Vical)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒスタミン二塩酸塩、イブリツモマブチウキセタン、イロマスタット、IM 862(Cytran)、インターロイキン−2、イプロキシフェン、LDI 200(Milkhaus)、レリジスチム、リンツズマブ、CA125モノクロナール抗体(MAb)(Biomira)、癌MAb(Japan Pharmaceutical Development)、HER−2及びFc MAb(Medarex)、イディオタイプ105AD7 MAb(CRC Technology)、イディオタイプCEA MAb(Trilex)、LYM−1−ヨウ素131 MAb(Techniclone)、多形性上皮性ムチン−イットリウム90 MAb(Antisoma)、マリマスタット、メノガリル、ミツモマブ、モテキサフィンガドリニウム、MX 6(Galderma)、ノラトレキシド、P30タンパク質、ペグビソマント、ポルフィロマイシン、プリノマスタット、RL0903(Shire)、ルビテカン、サトラプラチン、フェニル酢酸ナトリウム、スパルホス酸、SRL172(SR Pharma)、SU5416(Pfizer)、TA077(Tanabe)、テトラチオモリブデート、タリブラスチン、トロンボポイエチン、エチルエチオプルプリンスズ、チラパザミン、癌ワクチン(Biomira)、黒色腫ワクチン(New York University)、黒色腫ワクチン(Sloan Kettering Institute)、黒色腫オンコライセートワクチン(New York Medical College)、ウイルス性黒色腫細胞ライセートワクチン(Royal Newcastle Hospital)、またはバルスポダールと組み合わせて使用することができる。また、上に引用された薬剤を、適切な場合、薬学的に許容される塩として投与してもよい。
【0079】
本発明の化合物を、放射線療法、ホルモン療法、外科手術、及び免疫療法と組み合わせて使用してもよく、それらの療法は当業者に周知である。
【0080】
本発明の1つの態様は、別個に投与され得る薬学的に活性な化合物の組み合わせを用いた疾患/病態の治療を企図するので、本発明は、別個の薬学的組成物をキット形態に組み合わせることにさらに関する。本キットは、本発明の化合物、及び第2の薬学的化合物という、2つの別個の薬学的組成物を含む。本キットは、別個の組成物を収容するための容器、例えば分割されたボトルまたは分割されたホイルパケットを含む。容器の追加の例としては、注射器、箱、バッグが挙げられる。典型的に、本キットは、別個の構成成分の使用のための指示書を含む。キット形態は、別個の構成成分が、好ましくは異なる剤形(例えば、経口及び非経口)で投与されるとき、異なる投与間隔で投与されるとき、または処方する医師もしくは獣医師により、その組み合わせの個々の構成成分の滴定が望まれるとき、特に有利である。
【0081】
そのようなキットの例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは、包装産業において周知であり、薬学的単位剤形(錠剤、カプセル等)の包装に広く使用されている。ブリスターパックは、一般的に、好ましくは透明なプラスチック材料のホイルで覆われた比較的硬い材料のシートから成る。包装工程中、プラスチックホイル内に凹所が形成される。この凹所は、包装される錠剤またはカプセルのサイズ及び形状を有する。次に、錠剤またはカプセルがこの凹所内に置かれ、比較的硬い材料のシートが、凹所が形成された方向とは反対側のホイルの前面において、プラスチックホイルに封をする。結果として、錠剤またはカプセルは、プラスチックホイルとシートとの間の凹所内に密封される。好ましくは、シートの強度は、凹所に対して手で圧力を加え、それによってシート内の凹所がある場所に開口部が形成されることにより、錠剤またはカプセルを取り出すことができる程のものである。次いで、錠剤またはカプセルは、該開口部を介して取り出され得る。
【0082】
キット上に記憶補助を提供することが望ましい場合があり、例えば、錠剤またはカプセルの隣に数字がある形態では、投薬計画の日付に対応した数字によって、どの錠剤またはカプセルを摂取すべきか特定される。そのような記憶補助の別の例は、例えば、「第1週、月、火、...等..第2週、月、火、..」等のような、カードに印刷されるカレンダーである。記憶補助の他の変形は、容易に明らかであるだろう。「1日用量」は、所与の一日に摂取される1つのの錠剤もしくはカプセル、またはいくつかの丸剤もしくはカプセルであり得る。また、本発明の化合物の1日用量は、1つの錠剤またはカプセルから成り得る一方、第2の化合物の1日用量は、いくつかの錠剤またはカプセルから成り得、及びその反対もあり得る。記憶補助は、これを反映して、活性薬剤の正しい投与を援助すべきである。
【0083】
本発明の別の特定の実施形態において、1日用量を意図された使用の順に一つずつ分注するように設計されたディスペンサーが提供される。好ましくは、ディスペンサーは、投薬計画の遵守をさらに促進するために、記憶補助を備える。そのような記憶補助の一例は、分注された1日用量の数を示す機械式カウンタである。そのような記憶補助の別の例は、例えば、最後の一日量が摂取された日を読み出す、及び/またはいつ次の用量を摂取すべきか気付かせる、液晶読出しまたは可聴の注意信号と一体となった蓄電式マイクロチップメモリである。
【0084】
本発明の化合物及び他の薬学的に活性な化合物を、所望であれば、患者に対して、経口的に、直腸に、非経口的に(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下)、嚢内に、膣内に、腹腔内に、膀胱内に、局所的に(例えば、粉末剤、軟膏剤、または点滴薬)、または口腔もしくは鼻腔噴霧剤として、投与できる。薬学的に活性な薬剤を投与するために当業者によって使用されるすべての方法が企図される。
【0085】
非経口注射に好適な組成物は、生理学的に許容される無菌性水性もしくは非水性溶液、分散体、懸濁液、または乳化剤、及び無菌性注射可能溶液もしくは分散体への再構成のための無菌性粉末剤を含んでもよい。好適な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、それらの好適な混合物、植物油(オリーブ油等)、及びエチルオレエート等の注射可能な有機エステルが挙げられる。例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散体の場合は要求される粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。
【0086】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等のアジュバントを含有してもよい。微生物汚染は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の様々な抗菌薬及び抗真菌薬を添加することにより、防止することができる。また、例えば、糖、塩化ナトリウム等の等張剤を含むことが望ましい場合もある。注射可能な薬学的組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、アルミニウムモノステアレート、及びゼラチンの使用によりもたらすことができる。
【0087】
経口投与のための固体剤形は、カプセル、錠剤、粉末剤、及び顆粒剤を含む。そのような固体剤形において、活性化合物は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム等の少なくとも1つの不活性の慣例的賦形剤(または担体)、または(a)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、及びケイ酸、(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシア、(c)保水剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複雑ケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム、(a)溶解遅延剤、例えば、パラフィン、(f)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、及びグリセロールモノステアレート、(h)吸着剤、例えば、カオリン、及びベントナイト、ならびに(i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物、と混合される。カプセル、及び錠剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。
【0088】
類型の固形組成物はまた、ラクトースまたは乳糖といった賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコール等を使用した軟及び硬充填ゼラチンカプセル内で充填剤として使用されてもよい。
【0089】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、及び顆粒剤等の固体剤形は、当該技術分野において周知の腸溶コーティング等、コーティング及びシェルを用いて調剤することができる。それらは、不透明化剤も含有してもよく、本活性化合物(複数可)を遅延式で腸管のある特定の部分内に放出するような組成物でもあり得る。使用され得る包埋組成物は、高分子物質及びワックスである。本活性化合物はまた、適切な場合、上記の賦形剤のうちの1つ以上とともにした、マイクロカプセル化形態であり得る。
【0090】
経口投与のための液状剤形は、薬学的に許容される乳化剤、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシル剤を含む。本活性化合物に加え、液状剤形は、水もしくは他の溶媒等の当該技術分野において一般に使用される不活性希釈剤、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、具体的には、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ひまし油、ならびに胡麻油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、またはそれらの物質の混合物等を含有してもよい。
【0091】
そのような不活性希釈剤の他に、本組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味料、着香料、ならびに芳香剤等のアジュバントも含み得る。懸濁液は、本活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールならびにソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、及びトラガント、またはそれらの物質の混合物等を含有してもよい。
【0092】
直腸投与のための組成物は、好ましい坐剤であり、本発明の化合物と、通常室温では固体だが体温では液体であるため、直腸または膣腔内で溶けて本活性構成成分を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックス等の適切な非刺激性賦形剤もしくは担体とを混合することによって調製することができる。
【0093】
本発明の化合物の局所投与のための剤形は、軟膏剤、粉末剤、噴霧剤、及び吸入剤を含む。本活性化合物(複数可)は、無菌条件下で、生理学的に許容される担体、及び必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝剤、もしくは噴射剤と混合される。眼科用製剤、眼軟膏剤、粉末剤、及び溶液もまた、本発明の範囲内にあるものとして企図される。
【0094】
本発明の化合物を、1日当たり約0.1〜約3,000mgの範囲の用量レベルで患者に投与することができる。約70kgの体重を有する正常な成人にとっては、体重1キログラム当たり約0.01〜約100mgの範囲の用量が、典型的に十分である。使用され得る具体的な用量及び用量範囲は、患者の要件、治療する病態もしくは疾患の重症度、及び投与される化合物の薬学的活性を含む、いくつかの要因に依存する。特定の患者のための用量範囲及び最適用量の決定は、当該技術分野の範囲内である。
【0095】
本発明の化合物を、薬学的に許容される塩、エステル、アミド、またはプロドラッグとして投与することができる。「塩」という用語は、本発明の化合物の無機及び有機塩を指す。化合物の最終分離及び精製中に、または、精製した化合物を、その遊離塩基もしくは酸性型において、適切な有機もしくは無機塩基もしくは酸と別々に反応させ、かように形成される塩を分離することによって、塩をインサイツで調製することができる。代表的な塩としては、水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩(palmitiate)、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(naphthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリルスルホン酸塩等が挙げられる。塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ及びアルカリ土類金属に基づくカチオン、ならびに非毒性アンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンを含むがそれらに限定されない、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含んでもよい。例えば、S.M.Berge,et al.,“Pharmaceutical Salts,”J Pharm Sci,66:1−19(1977)を参照のこと。
【0096】
本発明の化合物の薬学的に許容されるエステルの例としては、C〜Cアルキルエステルが挙げられる。許容されるエステルとしてはさらに、C〜Cシクロアルキルエステル、ならびにベンジル等のアリールアルキルエステルが挙げられる。C〜Cアルキルエステルが一般に使用される。本発明の化合物のエステルは、当該技術分野において周知の方法に従って調製され得る。
【0097】
本発明の化合物の薬学的に許容されるアミドの例としては、アンモニアから誘導されるアミド、第一級C〜Cアルキルアミン、及び第二級C〜Cジアルキルアミンが挙げられる。第二級アミンの場合、アミンは、少なくとも1個の窒素原子を含有する5または6員ヘテロシクロアルキル基の形態であってもよい。アンモニアから誘導されるアミド、C〜C第一級アルキルアミン、及びC〜Cジアルキル第二級アミンが、一般に使用される。本発明の化合物のアミドは、当業者に周知の方法に従って調製され得る。
【0098】
「プロドラッグ」という用語は、インビボで転換されて本発明の化合物をもたらす化合物を意味する。転換は、血液中の加水分解を介する等、様々な機序によって生じ得る。プロドラッグ使用の考察は、T.Higuchi and W.Stella,“Prodrugs as Novel Delivery Systems,“Vol.14 of the A.C.S.Symposium Seriesによって、及びBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987において提供される。
【0099】
例示すると、本発明の化合物はカルボン酸官能基を含有するので、プロドラッグは、酸基の水素原子を、(C〜Cアルキル、(C〜C1)アルカノイルオキシメチル、4〜9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5〜10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)エチル、3〜6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4〜7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5〜8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3〜9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4〜10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、ガンマ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル(β−ジメチルアミノエチル等)、カルバモイル−(C〜C)アルキル、N,N−ジ(C〜C)アルキルカルバモイル−(C〜C)アルキル、及びピペリジノ−、ピロリジノ−、もしくはモルホリノ(C)アルキル等の基で置き換えることにより形成されるエステルを含有することができる。
【0100】
本発明の化合物は、不斉もしくはキラル中心を含有してもよく、それ故に、異なる立体異性形態で存在する。本化合物の全ての立体異性形態、ならびにラセミ混合物を含むそれらの混合物が、本発明の部分を形成することが企図される。加えて、本発明は、全ての幾何及び位置異性体を企図する。例えば、本化合物が二重結合を含む場合、シス型及びトランス型の両方(それぞれZ及びEと指定される)、ならびに混合物が企図される。
【0101】
ジアステレオ異性混合物等の立体異性体の混合物を、クロマトグラフィ及び/または分別結晶等の公知の方法により、それらの物理的化学差異に基づいて、それらの個々の立体化学的構成成分に分離することができる。鏡像異性体もまた、鏡像異性混合物を適切な光学活性化合物(例えば、アルコール)と反応させてジアステレオ異性混合物に変換し、ジアステレオ異性体を分離し、個々のジアステレオ異性体を対応する純粋な鏡像異性体へと変換すること(例えば、加水分解すること)により、分離することができる。また、いくつかの化合物は、アトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)であってもよい。
【0102】
本発明の化合物は、非溶媒和形態、ならびに水(水和物)、エタノール等などの薬学的に許容される溶媒とともに溶媒和形態で存在してもよい。本発明は、溶媒和及び非溶媒和の両方の形態を企図及び包含する。
【0103】
本発明の化合物が異なる互変異性形態で存在し得ることも可能である。本発明の化合物の全ての互変異性体が企図される。例えば、テトラゾール部分の全ての互変異性形態が本発明に含まれる。また、例えば、本化合物の全てのケト‐エノールまたはイミン−エナミン形態が本発明に含まれる。
【0104】
当業者は、本明細書に含まれる化合物名及び構造が化合物の特定の互変異性体に基づき得ることを認識するであろう。特定の互変異性体のみの名称または構造が使用され得るが、別途記載されない限り、全ての互変異性体が本発明により包含されることが意図される。
【0105】
本発明は、合成化学者に周知の方法等の検査技法を使用してインビトロで合成される、または新陳代謝、発酵、消化等を介する等インビボ技術を使用して合成される化合物を包含することも意図される。本発明の化合物を、インビトロ及びインビボ技術の組み合わせを使用して合成され得ることも企図される。
【0106】
本発明はまた、1個以上の原子が通常天然に見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられていることを除いて、本明細書内に引用されるものと同一の同位体的標識化化合物も含む。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、亜リン酸、フッ素、及び塩素の同位体、例えば、H、H、13C、14C、15N、16O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、及び36Clが挙げられる。1つの態様において、本発明は、1個以上の水素原子が重水素(H)原子と置き換わる化合物に関する。
【0107】
前述の同位体及び/または他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物は、本発明の範囲内である。本発明のある特定の同位体的標識化化合物、例えばH及び14C等の放射性同位体が組み込まれるようなものが、薬物及び/または物質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム、すなわち、H、及び炭素−14、すなわち、14C同位体が、それらの調製及び検出の容易性により特に好ましい。さらに、重水素、すなわち、H等のより重い同位体との置換が、より優れた代謝安定性から生じるある特定の療法的有利、例えば、増加したインビボ半減期または低減された投与量要件を与えることができるため、いくつかの状況において好まれる場合がある。本発明の同位体的標識化化合物は、一般的に、容易に入手可能な同位体的標識化試薬を非同位体的標識化試薬の代わりに用いることにより調製することができる。
【0108】
本発明の化合物は、結晶状態を含む、ならびに非晶状態として、様々な固体状態で存在してもよい。本発明化合物の多形とも称される異なる結晶状態、及び非晶状態は、本発明の部分として企図される。
【0109】
本発明の化合物の合成において、ある特定の脱離基を使用することが望ましい場合がある。「脱離基」(「LG」)という用語は、一般的に、求核基により置き換え可能な基を指す。そのような脱離基は、当該技術分野において公知である。脱離基の例としては、ハロゲン化合物(例えば、I、Br、F、Cl)、スルホン酸塩(例えば、メシル酸塩、トシル酸塩)、硫化物(例えば、SCH)、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール等が挙げられるが、それらに限定されない。求核基の例としては、アミン、チオール、アルコール、グリニャール試薬、アニオン種(例えば、アルコキシド、アミド、カルバニオン)等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0110】
本明細書内に引用される全ての特許、公開特許出願、及び他の刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
以下に提示される実施例は、本発明の特定の実施形態を例示する。これらの実施例は、代表的であることが意図され、いかなる様式においても本特許請求の範囲を制限することを目的としない。別途記述がない限り、本明細書内で固体に対してパーセントが使用されるとき、それは、参照される固体組成物に対する重量パーセントである。本明細書内で液体に対してパーセントが使用されるとき、それは、参照される溶液に対する容量パーセントである。
【0112】
H−NMRスペクトルを、Bruker 5−mm z−軸勾配BBIプローブを装着した500 MHz Bruker Avance III分析計システム(Bruker Biospin、Billerica、MA)、またはBruker 5−mm z−軸勾配BBOプローブを装着した400 MHz Bruker Avance IIもしくはAvance III分析計システムで獲得した。試料を、概して、NMR分析のために、600μLのDMSO−dまたはCDODのいずれかの中に溶解させた。H化学シフトは、DMSO−dでは2.50ppm、CDODでは3.30ppmで、分析のために使用した重溶媒からの残留プロトン信号に関して参照した。
【0113】
有意なピークを集計し、概して、プロトンの数、多重度(sは一重項、dは二重項、ddは二重項の二重項、tは三重項、qは四重項、mは多重項、br sは広幅一重項)、及びヘルツ単位での結合定数(複数可)を含む。
【0114】
電子衝撃イオン化(EI)質量スペクトルを、概して、Agilent Technologies 6140 Quadrupole LC/MS質量分析計上で記録した。質量分析測定結果を、電荷に対する質量の比率として報告し、時としてその後に各イオンの比存在度が続く(括弧内)。下記の実施例内の出発原料は、概して、Sigma−Aldrich、St.Louis、MO等の商用供給源から、または文献手順を介するかのいずれかで入手可能である。
【0115】
本明細書内では、以下の略称が使用され得る:
【表1】
【実施例】
【0116】
本明細書内における本発明の化合物は、一般的に、市販の出発原料で開始し、当業者に公知の合成技術を使用して調製することができる。
【0117】
[実施例1]
2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)酢酸(2011年12月8日公開のWO2011/153509(Amgen Inc.)の実施例351
【化5】
ステップA.2−(3−クロロフェニル)−1−(4−クロロフェニル)エタノン
【化6】
ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(テトラヒドロフラン中1M、117mL)を、テトラヒドロフラン(58mL)中の2−(3−クロロフェニル)酢酸(10g、58.6mmol)の−78℃溶液に、1時間かけて徐々に添加した。−78℃で40分間撹拌後、テトラヒドロフラン(35mL)中のメチル4−クロロベンゾエート(10g、58.6mmol)の溶液を、10分の期間をかけて添加した。その反応物を、−78℃で3時間撹拌し、次いで25℃まで温めた。25℃で2時間後、その反応物を、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応停止処理し、大部分のテトラヒドロフランを減圧下で除去した。残渣を酢酸エチル(2回、100mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した。生成物をエーテル/ペンタンから再結晶化させ、表題化合物を白色固体として得た。
【0118】
H NMR(500MHz,DMSO−d,δppm):8.05(m,2H)、7.62(m,2H)、7.33(m,3H)、7.21(br d,J=7.3Hz,1H)、4.45(s,2H)。MS(ESI)=265.1[M+H]
【0119】
ステップB:メチル4−(3−クロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−2−メチル−5−オキソペンタノエート
【化7】
メチルメタクリレート(12.65mL、119mmol)を、テトラヒドロフラン(283mL)中の2−(3−クロロフェニル)−1−(4−クロロフェニル)エタノン(30g、113mmol、実施例1、ステップA)の溶液に添加した。次いでカリウムtert−ブトキシド(1.27g、11.3mmol)を添加し、反応物を室温で2日間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、300mLの酢酸エチルで置き換えた。有機相をブライン(50mL)、水(3回、50mL)、及びブライン(50mL)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、メチル4−(3−クロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−2−メチル−5−オキソペンタノエートをジアステレオ異性体のおよそ1:1混合物として得た。
【0120】
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):7.87(m,2H)、7.38(m,2H),7.27〜7.14(一連のm,4H),4.61(m,1H),3.69(s,1.5H),3.60(s,1.5H)、2.45(m,1H)、2.34(m,1H)、2.10(ddd,J=13.9,9.4,5.5Hz,0.5H)、1.96(ddd,J=13.7,9.0,4.3Hz,0.5H)、1.22(d,J=7.0Hz,1.5H)、1.16(d,J=7.0,1.5H)。MS(ESI)=387.0[M+23]
【0121】
ステップC:(3S,5R,6R)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン、及び(3R,5R,6R)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン
【化8】
メチル4−(3−クロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−2−メチル−5−オキソペンタノエート(40g、104.0mmol、実施例1、ステップB)を、200mLの無水トルエン中に溶解させ、真空下で濃縮した。残渣を、使用前に2時間、高真空下に置いた。化合物を2×20gのバッチに分け、以下のように処理した:無水2−プロパノール(104mL)中のメチル4−(3−クロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−2−メチル−5−オキソペンタノエート(20g、52.0mmol)を、250mLガラス製水素化容器中、カリウムtert−ブトキシド(2.33g、20.8mmol)で処理した。3.8mLのトルエン中のRuCl(S−xylbinap)(S−DAIPEN)(0.191g、0.156mmol、Strem Chemicals,Inc.、Newburyport、MA)を添加した。1.5時間後、容器を50psi(344.7kPa)まで加圧し、水素で5回パージし、室温で撹拌させた。その反応物に、必要に応じて追加の水素を注入した。3日後、反応物を組み合わせ、50%飽和塩化アンモニウム溶液と酢酸エチルとの間で分割した。水層を酢酸エチルで抽出した。組み合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物(主として、(4R,5R)−イソプロピル4−(3−クロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−5−ヒドロキシ−2−メチルペンタノエート)を、テトラヒドロフラン(450mL)及びメタノール(150mL)中に溶解させた。水酸化リチウム(1.4M、149mL、208mmol)を添加し、その溶液を室温で24時間撹拌した。その混合物を真空下で濃縮し、残渣を酢酸エチル中に再溶解させた。1Nの塩酸水溶液を、水層が約1のpHを有するまで、撹拌しながら添加した。層を分離し、有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。その物質を200mLの無水トルエン中に溶解させ、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸塩(PPTS、0.784g、3.12mmol)で処理した。その反応物を、ディーンスターク条件下で、セコ酸が消費されるまで(約2時間)加熱して還流させた。その反応物を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム(50mL)及びブライン(50mL)で洗浄した。その溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗物質を、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィ(120gカラム、100%ジクロロメタンで溶離)によって精製した。表題化合物を、およそ94:6の鏡像異性体比、及びメチルジアステレオ異性体の7:3混合物を有する白色固体として得た。
【0122】
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):7.22〜6.98(一連のm,5H)、6.91(dt,J=7.4,1.2Hz,0.3H)、6.81(m,2H)、6.73(dt,J=7.6,1.4Hz,0.7H)、5.76(d,J=4.1Hz,0.3H)、5.69(d,J=4.7Hz,0.7H)、3.67(dt,J=6.6,4.3Hz,0.3H)、3.55(td,J=7.8,4.7Hz,0.7H)、2.96(四重項のd,J=13.5,6.7Hz,0.7H)、2.81(m,0.3H)、2.56(dt,J=14.3,8.0Hz,0.7H)、2.32(dt,J=13.69,7.0Hz,0.3H)、2.06(ddd,J=13.7,8.4,4.1,0.3H)、1.85(ddd,J=14.1,12.5,7.4,0.7H)、1.42(d,J=7.0Hz,0.9H)、1.41(d,J=6.7Hz,2.1H)。MS(ESI)=357.0[M+23]。[α](22℃,c=1.0,CHCl)=−31.9°;m.p.98〜99℃。
【0123】
ステップD.(3S,5R,6R)−3−アリル−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン
【化9】
−35℃(アセトニトリル/ドライアイス浴)の、テトラヒドロフラン(22mL)中の(3S,5R,6R)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン、及び(3R,5S,6S)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン(4.5g、13.4mmol、実施例1、ステップC)、ならびに臭化アリル(3.48mL、40.3mmol)の溶液を、テトラヒドロフラン(1.0M、17.45mL、17.45mmol)中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液で処理した。その反応物を、1時間かけて−5℃まで温め、次いで50%飽和塩化アンモニウムで反応停止処理した。その反応物を100mLの酢酸エチルで希釈し、層を分離した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、真空下で静置して、表題化合物を白色固体として得た。キラルSFC(92%CO、8%メタノール(20mMアンモニア)、5mL/分、Phenomenex Lux−2カラム(Phenomenex、Torrance.CA)、100バール(10,000kPa)、40℃、5分法)を使用して、本化合物が96:4の鏡像異性体比を有することを決定した。(主要鏡像異性体:表題化合物、保持時間=2.45分、96%;少量鏡像異性体(構造は図示せず、保持時間=2.12分、4%)。表題化合物を、ヘプタン(40mL中4.7gスラリー化)に還流で添加することにより再結晶化させ、1.5mLのトルエンを滴加して可溶化した。その溶液を0℃まで冷却した。白色固体を濾過し、20mLの冷ヘプタンですすぎ、白色粉末を得た。キラルSFC(92%CO、8%メタノール、Phenomenex Lux−2カラム、上記と同じ方法)が、99.2:0.8の鏡像異性体比を示した。(主要鏡像異性体、2.45分、99.2%;少量鏡像異性体:2.12分、0.8%)
【0124】
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):7.24(ddd,J=8.0,2.0,1.2Hz,1H)、7.20−7.15(一連のm,3H)、6.91(t,J=2.0Hz,1H)、6.78(br d,J=7.6Hz,1H)、6.60(m,2H)、5.84(ddt,J=17.6,10.2,7.4Hz,1H)、5.70(d,J=5.3Hz,1H)、5.21〜5.13(一連のm,2H)、3.82(dt,J=11.7,4.5Hz,1H)、2.62(ABXJAB=13.7Hz,JAX=7.6Hz,1H)、2.53(ABX,JAB=13.9Hz,JBX=7.2Hz,1H)。1.99(dd,J=14.1,11.9Hz,1H)、1.92(ddd,J=13.9,3.9,1.2Hz,1H)。13C NMR(CDCl,100MHz,δppm):175.9、140.2、134.5、134.3、134.0、132.2、129.8、128.6、128.0、127.9、127.8、126.4、119.9、83.9、44.5、42.4、40.7、31.8、26.1。MS(ESI)=375.2[M+H]。IR=1730cm−1。[α](24℃,c=1.0,CHCl)=−191°。m.p.111〜114℃。
【0125】
ステップE.(2S)−2−((2R)−2−(3−クロロフェニル)−3−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)−N−((S)−1−シクロプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2−メチルペント−4−エナミド
【化10】
(3S,5R,6R)−3−アリル−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン(125.0g、333mmol、実施例1、ステップD)を、(S)−2−アミノ−2−シクロプロピルエタノール(101g、999mmol)に添加し、反応混合物を、110℃で、アルゴン下で25時間加熱した。その反応混合物を、酢酸イソプロピルで希釈し、室温まで冷却し、3Mの塩酸(400mL)を徐々に添加した。その混合物を室温で20分間撹拌し、層を分離した。有機層を1Mの塩酸(200mL)及びブラインで洗浄し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、所望の生成物を茶色の油(159g)として得た。
【0126】
ステップF.(3S,5S,6R,8S)−8−アリル−6−(3−クロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−3−シクロプロピル−8−メチル−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロオキサゾロ[3,2−a]ピリジン−4−イウム 4−メチルベンゼンスルホン酸塩
【化11】
磁気撹拌棒、添加漏斗、セプタム、内部温度センサを備えた2Lの四口丸底フラスコに、p−トルエンスルホン酸無水物(240g、734mmol)、及び無水ジクロロメタン(600mL)を充填した。内部温度を14℃に調整し、混合物を10分間撹拌した。無水ジクロロメタン(400mL)中の(S)−2−((2R,3R)−2−(3−クロロフェニル)−3−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)−N−((S)−1−シクロプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2−メチルペント−4−エナミド(159.0g、334mmol、実施例1、ステップE)の溶液を、その反応混合物に添加した。温度は17℃まで上昇した後、14℃に戻った。反応混合物を7℃まで冷却し、2,6−ルチジン(160mL、1372mmol)(活性化4Å分子ふるい上で乾燥させた)を、添加漏斗を介して、反応混合物に滴加した。添加は1時間後に完了した。反応混合物を水槽から取り出し、室温で1時間撹拌した。反応混合物を、16時間還流で加熱した。LCMSは、いくらかの中間物が残存することを示した。追加のp−トルエンスルホン酸無水物(0.25当量)及びルチジン(0.5当量)を添加し、反応混合物を8時間還流で加熱した。LCMSは、反応が完了したことを示した。反応混合物を室温まで冷却し、添加漏斗を介して、1Mの硫酸水溶液(764mL、764mmol)に撹拌しながら添加した。添加には30分を要し、その後、溶液を室温で30分間撹拌した。層を分離し、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、茶色のシロップを得た。そのシロップからいかなるジクロロメタンをも除去するため、それを酢酸エチル中に取り込み、真空下で2回濃縮して、濃厚な茶色のシロップを得た。酢酸エチル(2L)を添加し、全てのシロップが溶解するまで(約45分)混合物を60℃で加熱した。その溶液を室温まで冷却しながら撹拌した。2時間後に結晶が形成され、混合物を1時間10℃まで冷却した後、真空濾過及び冷たい(10℃)酢酸エチルでの洗浄により、固体を収集した。これにより、70gの所望の生成物をオフホワイトの結晶性固体として得た。濾液を真空下で1.5Lまで濃縮し、混合物を10℃で1.5時間撹拌した。混合物を真空下で濾過して、NMRによりルチジニウムトシレートであることが示された薄茶色の結晶性固体を得た。濾液を真空下で濃縮して、茶色のシロップ(161g)を得た。ヘプタンをそのシロップに添加し、その混合物を加熱した。最小量の酢酸エチルを、原料が溶解するまで添加した。その溶液を室温まで冷却し、次いで冷凍室内に置いた。結果として生じた固体を、真空濾過により収集し、冷たい(0℃)酢酸エチルで洗浄して、所望の生成物をオフホワイトの結晶性固体(34g)として得た。濾液を濃縮して、茶褐色の油を得、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィ(1.5kg SiOカラム、ヘキサン中20%〜100%のアセトンの勾配溶離)により精製して、所望の生成物を薄茶色のシロップ(73g)として得た。
【0127】
H NMR(500MHz,CDCl,δppm):−0.3〜−0.2(m,2H)、0.06〜0.11(m,1H)、0.31〜0.36(m,1H)、0.38〜0.43(m,1H)、1.57(s,3H)、1.91(dd,J=3.7及び13.9Hz、1H),2.36(s,3H),2.64(dd,J=7.3and13.7Hz,1H),2.72(dd,J=7.6及び13.7Hz,1H)、2.95(t,J=13.9Hz,1H)、3.32(dt,J=3.7及び10.8Hz,1H)、4.47(t,J=8.6Hz,1H)、4.57〜4.62(m,1H)、5.32(d,J=16.9Hz,1H)、5.35(d,J=10.3Hz,1H)、5.46(t,J=9.5Hz,1H)、5.82(d,J=10.5Hz,1H)、5.84〜5.93(m,1H)、6.94(br s,1H)、7.04(s,1H)、7.14〜7.20(m,5H)、7.28〜7.40(m,3H)、7.88(d,J=8.1Hz,2H))。MS(ESI)440.1[M+H]
【0128】
ステップG.(3S,5R,6S)−3−アリル−1−((S)−2−(tert−ブチルチオ)−1−シクロプロピルエチル)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチルピペリジン−2−オン
【化12】
2−メチル−2−プロパンチオール(0.195mL、1.796mmol、活性化4Å分子ふるい上で乾燥させた)を、無水テトラヒドロフラン(4mL)中のテトラヒドロフラン(1.0M、1.8mL、1.8mmol)中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液に、室温で添加した。その反応混合物を60℃で加熱した。60℃で15分後、(3S,5S,6R,8S)−8−アリル−6−(3−クロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−3−シクロプロピル−8−メチル−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロオキサゾロ[3,2−a]ピリジン−4−イウム 4−メチルベンゼンスルホン酸塩(1.00g、1.632mmol、実施例1、ステップF)を、固体として添加した。その反応混合物を60℃で12時間加熱し、次いで室温まで冷却し、水で希釈した。その溶液を酢酸エチルで3回抽出し、有機物をプールし、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、上清をデカントし、真空下で濃縮して、茶色の油を得た。フラッシュクロマトグラフィ(80g SiOカラム、ヘキサン中10〜60%の酢酸エチル勾配溶離による精製により、所望の生成物を無色のシロップとして得た。
【0129】
H NMR(500MHz,CDCl,δppm):−0.88〜−0.85(m,1H)、−0.16〜−0.13(m,1H)、0.22〜0.27(m,1H)、0.39〜0.44(m,1H)、1.28(s,3H)、1.35(s,9H)、1.66〜1.71(m,1H)、1.86(dd,J=3.2及び13.5Hz,1H)、2.16(t,J=13.7,1H)、2.21〜2.27(m,1H)、2.60(dd,J=4.4及び12.0Hz,1H)、2.65(d,J=7.6Hz,2H)、3.12(dt,J=3.2及び10.3Hz,1H)、3.60(t,J=11.3Hz,1H)、4.68(d,J=10.3Hz,1H)、5.16〜5.19(m,2H)、5.83〜5.92(m,1H)、6.79(d,J=7.6Hz,1H)、6.93〜7.04(m,3H)、7.09〜7.16(m,2H)、7.19〜7.24(m,2H)。MS(ESI)530.2[M+H]
【0130】
ステップH.2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)酢酸
【化13】
塩化ルテニウム(III)水和物(30.0mg、0.135mmol)を、酢酸エチル(12mL)、アセトニトリル(12mL)、及び水(18mL)中の(3S,5R,6S)−3−アリル−1−((S)−2−(tert−ブチルチオ)−1−シクロプロピルエチル)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチルピペリジン−2−オン(3.25g、6.13mmol、実施例1、ステップH)、及び過ヨウ素酸ナトリウム(1.33g)の溶液に、18℃で添加した。添加時に温度は25℃まで上昇した。温度を22℃より下に維持しながら、追加の過ヨウ素酸ナトリウムを、1回1.33gを5回、30分かけて添加した。1.5時間後、LCMSが、反応が完了したことを示し、過ヨウ素酸ナトリウム(1当量)を添加した。1.5時間後、反応混合物を真空濾過し、酢酸エチルで洗浄し、層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機物を組み合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、緑色の油を得た。フラッシュクロマトグラフィ(330g SiOカラム、ヘキサン中0%〜20%イソプロパノールの勾配溶離による精製により、表題化合物を白色固体として得た。
【0131】
H NMR(500MHz,CDCl,δppm):−1.15〜−1.05(m,1H)、−0.35〜−0.25(m,1H)、0.18〜0.28(m,1H)、0.33〜0.40(m,1H)、1.45(s,9H)、1.51(s,3H)、1.86(dd,J=2.7及び13.7Hz,1H)、1.87〜1.93(m,1H)、2.47(t,J=13.9,1H)、2.72〜2.76(m,1H)、2.76(d,J=15.5Hz,1H),2.93(d,J=13.7Hz,1H)、3.12(d,J=15.1Hz,1H)、3.12(dt,J=2.7and12.5Hz,1H)、4.29(t,J=11.5Hz,1H)、4.95(d,J=10.8Hz,1H)、6.86〜6.89(m,1H)、6.96(br s,1H),7.08〜7.14(m,3H)、7.15〜7.35(m,3H)。MS(ESI)580.2[M+H]
【0132】
[実施例2]
2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)アセトアミド
【化14】
塩化オキサリル(0.033mL、0.379mmol)を、無水ジクロロメタン(1.5mL)中の2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)酢酸(0.200g、0.344mmol、実施例1、ステップH)の溶液に、室温で添加した。その反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで真空下で濃縮して、酸塩化物を白色の泡(206mg)として得た。リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(テトラヒドロフラン中1.0M、0.516mL、0.516mmol)、及び無水テトラヒドロフラン(0.5mL)を、室温で添加した。その反応混合物を室温で5.5時間撹拌し、次いで1Nの塩酸で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。有機物をプールし、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、上清をデカントし、真空下で濃縮して、黄色の泡を得た。フラッシュクロマトグラフィ(12g SiOカラム;35%〜100%酢酸エチルの勾配溶離)による精製により、表題化合物をオフホワイトの泡として得た。
【0133】
H NMR(500MHz,CDCl,δppm):−1.10〜−1.00(m,1H)、−0.38〜−0.325(m,1H)、0.17〜0.26(m,1H)、0.30〜0.38(m,1H)、1.43(s,3H)、1.44(s,9H)、1.85〜1.92(m,1H)、2.00(dd,J=2.7及び13.5Hz,1H)、2.39(t,J=13.7,1H)、2.65〜2.75(m,1H)、2.73〜2.80(m,2H)、2.90〜2.96(m,1H)、3.31(dt,J=2.9及び10.8Hz,1H)、4.30〜4.38(m,1H)、4.96(d,J=10.8Hz,1H)、5.63(br s,1H)、6.64(br s,1H)、6.90〜6.91(m,1H)、7.00(s,2H)、7.06〜7.11(m,3H)、7.12−7.29(m,2H)。MS(ESI)579.2[M+H]
【0134】
[実施例3]
2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)−N−フェニルアセトアミド
【化15】
N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、0.117g、0.612mmol)を、2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−5−(3−クロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)酢酸(0.118g、0.204mmol、実施例1、ステップH)、及びアニリン(0.020mL、0.225mmol)の溶液に、0℃で添加した。添加完了後、反応混合物を氷浴から取り出し、室温で19時間撹拌した。その反応混合物を氷冷の1Mの塩酸で希釈してpHを1に調整し、その溶液をエーテルで2回抽出した。組み合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、上清をデカントし、真空下で濃縮して、オレンジ色の油を得た。フラッシュクロマトグラフィ(12g SiOカラム、ヘキサン中15%〜100%の酢酸エチルの勾配溶離による精製により、表題化合物を白色の泡として得た。
【0135】
H NMR(500MHz,CDCl,δppm):−1.32〜−1.20(m,1H)、−0.40〜−0.28(m,1H)、−0.28〜−0.10(m,1H)、0.30〜0.40(m,1H)、1.45(s,9H)、1.47(s,3H)、1.94(br s,1H)、2.07(dd,J=2.7及び13.7Hz,1H)、2.39(t,J=13.7,1H)、2.67〜2.73(m,2H)、2.95(t,J=13.5Hz,2H)、3.30(dt,J=2.7及び11.0Hz,1H)、4.31(br t,J=11.7Hz,1H)、4.94(d,J=10.8Hz,1H)、6.86〜6.89(m,1H),6.99(s,1H)、7.02〜7.09(m,6H)、7.17(t,J=7.3Hz,1H)、7.38(t,J=8.3Hz,2H)、7.66(d,J=7.8Hz,2H)。MS(ESI)655.3[M+H]
【0136】
[実施例4]
2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)酢酸
【化16】
ステップA.メチル−4−クロロ−3−フルオロベンゾエート
【化17】
メタノール(4.5L)中の4−クロロ−3−フルオロ安息香酸(450.0g、2.586mol、Fluororochem、Derbyshire、UK)の溶液を、0℃まで冷却し、塩化チオニル(450.0mL)を30分かけて添加した。その反応混合物を周囲温度で12時間撹拌した。その反応物をTLCでモニタリングした。完了すると、溶媒を減圧下で除去し、残渣を1.0Mの炭酸水素ナトリウム溶液(500mL)で反応停止処理した。水層をジクロロメタン(2回、5.0L)で抽出した。組み合わせた有機層をブライン(2.5L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、表題化合物を薄茶色の固体として得た。粗化合物を、さらなる精製をせずに、次のステップで使用した。
【0137】
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):7.82〜7.74(m,2H)、7.46(dd,J=8.2,7.5Hz,1H)、3.92(s,3H)。
【0138】
ステップB.1−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−2−(3−クロロフェニル)エタノン
【化18】
ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(テトラヒドロフラン中1M、4L、4000mmol)を、1時間かけて、無水テトラヒドロフラン(1.75L)中の3−クロロフェニル酢酸(250.0g、1465mmol)の溶液に、−78℃で、窒素下で添加した。結果として生じた反応混合物を−78℃でさらに1時間撹拌した。次いで、テトラヒドロフラン(500mL)中のメチル−4−クロロ−3−フルオロベンゾエート(221.0g、1175mmol、実施例4、ステップA)の溶液を、1時間かけて、−78℃で添加し、結果として生じた反応混合物を同じ温度で2時間撹拌した。その反応物をTLCでモニタリングした。完了時に、反応混合物を2Nの塩酸(2.5L)で反応停止処理し、水相を酢酸エチル(2回、2.5L)で抽出した。組み合わせた有機層をブライン(2.5L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗物質を得、それをフラッシュカラムクロマトグラフィ(シリカゲル:100〜200メッシュ、生成物はヘキサン中2%の酢酸エチルにおいて溶離)により精製して、表題化合物を白色固体として得た。
【0139】
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):7.74(ddd,J=10.1,8.9,1.8Hz,2H)、7.56〜7.48(m,1H)、7.26(t,J=6.4Hz,3H)、7.12(d,J=5.7Hz,1H)、4.22(s,2H)。MS(ESI)282.9[M+H]
【0140】
ステップC.メチル5−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−4−(3−クロロフェニル)−2−メチル−5−オキソペンタノエート
【化19】
メチルメタクリレート(125.0g、1097mmol)、及びカリウムtert−ブトキシド(テトラヒドロフラン中1M、115mL、115mmol)を、無水テトラヒドロフラン(2.61L)中の1−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−2−(3−クロロフェニル)エタノン(327.0g、1160mmol、実施例4、ステップB)の溶液に、0℃で順次添加した。その反応混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで周囲温度まで温め、12時間撹拌した。完了時に、反応物を水(1.0L)で反応停止処理し、酢酸エチル(2回、2.5L)で抽出した。組み合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗物質を得て、それをフラッシュカラムクロマトグラフィ(シリカゲル:60〜120メッシュ、生成物はヘキサン中4%の酢酸エチルにおいて溶離)により精製し、表題化合物(ジアステレオ異性体の混合物)を薄黄色の液体として得た。
【0141】
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):7.74〜7.61(m,4H)、7.47〜7.40(m,2H)、7.28〜7.18(m,6H)、7.16〜7.10(m,2H)、4.56(m,2H)、3.68(s,3H),3.60(s,3H)、2.50〜2.39(m,2H)、2.37〜2.25(m,2H)、2.10〜2.02(m,1H)、1.94(ddd,J=13.6,9.1,4.2Hz,1H)、1.21(d,J=7.0Hz,3H)、1.15(d,J=7.0Hz,3H)。MS(ESI)383.0[M+H]
【0142】
ステップD.(3S,5R,6R)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン、及び(3R,5R,6R)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン
【化20】
メチル5−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−4−(3−クロロフェニル)−2−メチル−5−オキソペンタノエート(138.0g、360mmol、実施例4、ステップC)(グローブバッグに移す前に氷上で10分間冷却した)を充填した2000mL反応器中、無水2−プロパノール(500mL)及びカリウムtert−ブトキシド(16.16g、144mmol)を、アルゴン下で密封したグローブバッグの中で順次追加した。この混合物を30分間撹拌させた。30.0mLトルエン中のRuCl(S−xylbinap)(S−DAIPEN)(1.759g、1.440mmol、Strem Chemicals,Inc.、Newburyport、MA、グローブバッグ内で秤量)を添加した。その反応物を室温で2時間激しく撹拌した。その容器を水素化装置上に設置し、水素で3回パージし、50psi(344.7kPa)まで加圧した。反応物を室温で一晩撹拌させた。完了時、反応物を水(1.5L)で反応停止処理し、酢酸エチル(2回、2.5L)で抽出した。有機層をブライン(1.5L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗物質を得て、それをフラッシュカラムクロマトグラフィ(シリカゲル;60〜120メッシュ;生成物はヘキサン中12%の酢酸エチルにおいて溶離)により精製して、暗色の液体をジアステレオ異性体として得た。
【0143】
生成物をテトラヒドロフラン(1.9L)及びメタノール(480mL)中の(240.0g、581mmol)中に溶解させ、水酸化リチウム一水和物(2.5M水溶液、480.0mL)を添加した。その反応混合物を周囲温度で12時間撹拌した。完了時に、溶媒を減圧下で除去し、残渣を2Nの塩酸でpH5〜6の間まで酸性化した。水相を酢酸エチル(2回、1.0L)で抽出した。組み合わせた有機層をブライン(750mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、暗色の液体を得、それをさらなる精製をせず使用した。
【0144】
粗中間物の一部(25.4g、主としてセコ酸)を、ディーンスターク装置を備えた500mL丸底フラスコに添加した。ピリジニウムp−トルエンスルホン酸塩(0.516g、2.053mmol)、及びトルエン(274mL)を添加し、混合物を1時間還流させた(油槽温度約150℃)。反応物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。反応物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)で希釈し、ジエチルエーテル(2回、150mL)で抽出し、ブライン(150mL)で洗浄した。組み合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(3分割、330g SiO/各、ヘキサン中0%〜30%のアセトンの勾配溶離、35分)による精製により、表題化合物を淡黄色の固体、及びC2でジアステレオ異性体の1:1.6混合物として得た。MS(ESI)353.05[M+H]
【0145】
ステップE.(3S,5R,6R)−3−アリル−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン
【化21】
(3S,5R,6R)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン、及び(3R,5R,6R)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン(18g、51.0mmol、実施例4、ステップD)を、炉乾燥500mL丸底フラスコに添加した。その固体を無水トルエン中に溶解させ、濃縮して偶発的な水を除去した。テトラヒドロフラン(200mL)中の3−ブロモプロプ−1−エン(11.02mL、127mmol、添加前に未希釈で塩基性アルミナに通過させた)を添加し、反応器を排気し、アルゴンを3回補充した。リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1.0M、56.1mL、56.1mmol)を−40℃(ドライアイス/アセトニトリル浴)で滴加し、アルゴン下で撹拌した。反応物を−10℃まで徐々に温め、−10℃で3時間撹拌した。反応物を飽和塩化アンモニウム(10mL)で反応停止処理し、濃縮し、粗生成物を水(150mL)及びジエチルエーテル(200mL)で希釈した。層を分離し、水層をジエチルエーテル(200mL/各)で、もう2回洗浄した。組み合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で残渣まで濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(2回、330g シリカゲルカラム、ヘキサン中0%〜30%のアセトンの勾配溶離)により精製して、表題化合物を白色固体として得た。あるいは生成物を、ジクロロメタン中の最小限のヘキサンから結晶化することができる。鏡像異性体過剰は、キラルSFC(90%CO、10%メタノール(20mMアンモニア)、5.0mL/分、100バール(10,000kPa)、40℃、5分法、Phenomenex Lux−2(Phenomenex、Torrance、CA)(100mmx4.6mm、5μmカラム)、保持時間:1.62分(マイナー)及び2.17分(メジャー))により、87%であると決定した。純度は、ヘキサン及びジクロロメタン中の再結晶化を介して98%超まで高めることが可能である。
【0146】
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):7.24〜7.17(m,3H)、6.94(s,1H)、6.80(d,J=7.5Hz,1H)、6.48(dd,J=10.0,1.9Hz,1H)、6.40(d,J=8.3Hz,1H)、5.90〜5.76(m,1H)、5.69(d,J=5.2Hz,1H)、5.20〜5.13(m,2H)、3.81(dd,J=13.9,6.9Hz,1H)、2.62(dd,J=13.8,7.6Hz,1H)、2.50(dd,J=13.8,7.3Hz,1H)、1.96(d,J=8.4Hz,2H)、1.40(s,3H)。MS(ESI)393.1[M+H]
【0147】
ステップF.(2S)−2−((2R)−3−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−2−(3−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)−N−((S)−1−シクロプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2−メチルペント−4−エナミド
【化22】
ナトリウムメトキシド(メタノール中25%、60.7ml、265mmol)を、メタノール(177mL)中の(S)−2−アミノ−2−シクロプロピルエタノール塩酸塩(36.5g、265mmol、NetChem Inc.、Ontario、Canada)の溶液に、0℃で添加した。添加中に沈殿物が形成された。添加完了後、反応混合物を氷浴から取り出し、室温まで温めた。反応混合物を真空下で濾過し、固体をジクロロメタンで洗浄した。濾液を真空下で濃縮して、濁った茶色の油を得た。その油をジクロロメタン(150mL)中に溶解させ、真空下で濾過し、固体相をジクロロメタンで洗浄して、濾液を透明なオレンジ色の溶液として得た。その溶液を真空下で濃縮して、(S)−2−アミノ−2−シクロプロピルエタノールを薄茶色の液体として得た。
【0148】
(3S,5R,6R)−3−アリル−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン(32g、81mmol、実施例4、ステップE)を、(S)−2−アミノ−2−シクロプロピルエタノール(26.7g、265mmol)と組み合わせ、その懸濁液を100℃で一晩加熱した。その反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチルで希釈し、1Nの塩酸(2回)、水、及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮して、表題化合物を白色固体として得た。
【0149】
H NMR(500MHz,CDCl,δppm):0.23〜0.30(m,2H)、0.45〜0.56(m,2H)、0.81(m,1H)、1.12(s,3H)、1.92〜2.09(m,3H)、2.39(dd,J=13.6,7.2Hz,1H)、2.86(br s,1H)、2.95(dtd,J=9.5,6.3,6.3,2.9Hz,1H)、3.44(dd,J=11.0,5.6Hz,1H)、3.49(m,1H)、3.61(dd,J=11.0,2.9Hz,1H)、4.78(d,J=5.6Hz,1H)、4.95〜5.13(m,2H)、5.63(m,1H)、5.99(d,J=6.4Hz,1H)、6.94〜7.16(m,3H)、7.16〜7.32(m,4H)。MS(ESI)494[M+H]
【0150】
ステップG.(3S,5R,6S)−3−アリル−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−1−((S)−1−シクロプロピル−2−ヒドロキシエチル)−3−メチルピペリジン−2−オン
【化23】
ジクロロメタン(80mL)中の(2S)−2−((2R)−3−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−2−(3−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)−N−((S)−1−シクロプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2−メチルペント−4−エナミド(40.2g、81mmol、実施例4、ステップF)の溶液を、ジクロロメタン(220mL)中のp−トルエンスルホン酸無水物(66.3g、203mmol)に、0℃で添加し、その反応混合物を同温度で10分間撹拌した。2,6−ルチジン(43.6mL、374mmol、Aldrich、St.Louis、MO)を、添加漏斗を介して、0℃で滴加した。反応混合物を徐々に室温まで温め、次いでそれを還流で撹拌した。24時間後、水(600mL)中の炭酸水素ナトリウム(68.3g、814mmol)、及び1,2−ジクロロエタン(300mL)を順次添加した。その反応混合物を還流で1時間加熱し、次いで室温まで冷却した。層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出した。組み合わせた有機層を1Nの塩酸、水、及びブラインで洗浄し、次いで減圧下で濃縮した。残渣を、フラッシュクロマトグラフィ(1.5kg SiOカラム、ヘキサン中10%〜50%の酢酸エチルの勾配溶離)により精製して、表題化合物を白色固体として得た。
【0151】
H NMR(500MHz,CDCl,δppm):0.06(m,1H)、0.26(m,1H)、0.57〜0.67(m,2H)、0.85(m,1H)、1.25(s,3H)、1.85〜2.20(m,2H)、2.57〜2.65(m,2H)、3.09(ddd,J=11.8,9.8,4.8Hz,1H)、3.19(t,J=10.0Hz,1H)、3.36(td,J=10.3,4.6Hz,1H)、3.63(dd,J=11.0,4.6Hz,1H)、4.86(d,J=10.0Hz,1H)、5.16〜5.19(m,2H)、5.87(m,1H)、6.77(dd,J=7.7,1.6Hz,1H)、6.80〜6.90(m,2H)、7.02(t,J=2.0Hz,1H)、7,16(dd,J=10.0,7.7Hz,1H)、7.21(dd,J=10.0,1.6Hz,1H)、7.29(t,J=10.0Hz,1H)。MS(ESI)476[M+H]
【0152】
ステップH.(3S,5S,6R,8S)−8−アリル−5−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−6−(3−クロロフェニル)−3−シクロプロピル−8−メチル−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロオキサゾロ[3,2−a]ピリジン−4−イウム 4−メチルベンゼンスルホン酸塩
【化24】
p−トルエンスルホン酸一水和物(30.3g、159mmol、Aldrich、St.Louis、MO)を、トルエン(386mL)中の(3S,5R,6S)−3−アリル−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−1−((S)−1−シクロプロピル−2−ヒドロキシエチル)−3−メチルピペリジン−2−オン(73.6g、154mmol)の溶液に添加した。その反応混合物を、ディーンスターク装置を使用して、還流で加熱した。4時間後、反応物を冷却し、減圧下で濃縮して、表題化合物を淡黄色のシロップとして得た。粗生成物を、さらなる精製をせずに、次のステップで使用した。
【0153】
H NMR(500MHz,CDCl,δppm):−0.25〜−0.10(m,2H)、0.08〜0.18(m,1H)、0.33〜0.50(m,2H)、1.57(s,3H)、1.92(dd,J=3.7及び13.9Hz,1H)、2.37(s,3H)、2.63(dd,J=7.3及び13.7Hz,1H)、2.72(dd,J=7.6及び13.7Hz,1H)、2.93(t,J=13.7Hz,1H)、3.29(m,1H)、4.51(t,J=8.6Hz,1H)、4.57〜4.63(m,1H)、5.33(d,J=17.1Hz,1H)、5.37(d,J=10.5Hz,1H)、5.47(dd,J=9.1and10.0Hz,1H)、5.75−5.93(m,2H)、6.80(br s,1H)、7.08(s,1H)、7.16〜7.20(m,5H)、7.25〜7.32(m,2H)、7.87(d,J=8.3Hz,2H)。MS(ESI)458[M+H]
【0154】
ステップI.(3S,5R,6S)−3−アリル−1−((S)−2−(tert−ブチルチオ)−1−シクロプロピルエチル)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチルピペリジン−2−オン
【化25】
2−メチル−2−プロパンチオール(15.25mL、135mmol、活性化4Å分子ふるい上で乾燥させた)を、テトラヒドロフラン(1.0M、135mL、135mmol)中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液に、500mL丸底フラスコ中、室温で、アルゴン下で添加した。その反応混合物を60℃まで加熱した。30分後、無水テトラヒドロフラン(100mL)中の(3S,5S,6R,8S)−8−アリル−5−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−6−(3−クロロフェニル)−3−シクロプロピル−8−メチル−2,3,5,6,7,8−ヘキサヒドロオキサゾロ[3,2−a]ピリジン−4−イウム 4−メチルベンゼンスルホン酸塩(78g、123mmol、実施例4、ステップH)の溶液を、カニューレを介して添加した。反応混合物を60℃で3時間加熱し、次いで室温まで冷却した。反応混合物を水で反応停止処理し、酢酸エチルで3回抽出した。有機物をプールし、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、黄色の泡を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィ(1.5kg SiOカラム、ヘキサン中5%〜30%の酢酸エチルの勾配溶離による精製により、表題化合物をオフホワイトの泡として得た。
【0155】
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):−0.89〜−0.80(m,1H)、−0.15to−0.09(m,1H)、0.27〜0.34(m,1H)、0.41〜0.48(m,1H)、1.28(s,3H)、1.35(s,9H)、1.70〜1.77(m,1H)、1.86(dd,J=3.1及び13.5Hz,1H)、2.16(t,J=13.7,1H)、2.17〜2.23(m,1H)、2.60〜2.63(m,3H)、3.09(dt,J=3.1及び10.4Hz,1H)、3.62(t,J=11.1Hz,1H)、4.70(d,J=10.1Hz,1H)、5.16(s,1H)、5.19〜5.21(m,1H)、5.82〜5.93(m,1H)、6.65〜6.80(m,1H)、6.80〜6.83(m,1H)、6.84〜6.98(m,1H)、7.05〜7.07(m,1H)、7.12−7.18(m,2H)、7.19〜7.26(m,1H)。MS(ESI)548.2[M+H]
【0156】
ステップJ.2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)酢酸
【化26】
塩化ルテニウム(III)水和物(0.562mg、2.493mmol)を、酢酸エチル(216mL)、アセトニトリル(216mL)、及び水(324mL)中の(3S,5R,6S)−3−アリル−1−((S)−2−(tert−ブチルチオ)−1−シクロプロピルエチル)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチルピペリジン−2−オン(62.17g、113mmol、実施例4、ステップI)、及び過ヨウ素酸ナトリウム(24.67g)の混合物に、20℃で添加した。温度は29℃まで素早く上昇した。その反応混合物を20℃まで冷却し、残りの過ヨウ素酸ナトリウムの等量を、内部反応温度を25℃より低く維持するように注意して、1回24.67gを5回、2時間かけて添加した。反応が不完全だったため、追加の過ヨウ素酸ナトリウム(13g)を添加した。温度は22℃から25℃に上昇した。さらに1.5時間撹拌した後、反応混合物を真空下で濾過し、酢酸エチルで洗浄した。層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機物をプールし、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、濃緑色の泡を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィ(1.5kg SiOカラム、ヘキサン中0%〜20%のイソプロパノールの勾配溶離)による精製により、オフホワイトの泡を得た。ヘプタン(970mL)中の15%の酢酸エチルをその泡に添加し、その混合物を、泡が溶解するまで80℃で加熱した。次いでその溶液を徐々に冷却し、60℃において、先に得た結晶物質をその溶液に蒔いた。その混合物を室温まで冷却し、次いで室温で2時間置いた後、真空濾過により固体を収集し、非常に淡いピンク色を有する白色固体(57.1g)を得た。母液を真空下で濃縮して、ピンク色の泡(8.7g)を得た。ヘプタン(130mL)の15%の酢酸エチルをその泡に添加し、それを80℃で加熱して、物質を完全に溶解させた。その溶液を冷却し、50℃において、それに結晶物質を蒔いた。室温まで冷却した後、固体を真空濾過により収集して、非常に淡いピンク色を有する白色結晶性固体を得た。
【0157】
H NMR(500MHz,CDCl,δppm):−1.10〜−1.00(m,1H)、−0.30〜−0.22(m,1H)、0.27−0.37(m,1H)、0.38〜0.43(m,1H)、1.45(s,9H)、1.50(s,3H)、1.87(dd,J=2.7及び13.7Hz,1H)、1.89〜1.95(m,1H)、2.46(t,J=13.7,1H)、2.69〜2.73(m,1H)、2.78(d,J=14.9Hz,1H)、2.93(dd,J=2.0及び13.7Hz,1H)、3.07(d,J=14.9Hz,1H)、3.11(dt,J=2.7及び11.0Hz,1H)、4.30(t,J=13.5Hz,1H)、4.98(d,J=10.8Hz,1H),6.75〜6.87(m,1H)、6.88〜6.90(m,1H)、6.98(br s,1H)、7.02〜7.09(m,1H)、7.11〜7.16(m,2H)、7.16〜7.25(m,1H)。MS(ESI)598.1[M+H]
【0158】
[実施例5]
4−(2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)アセタミド)−2−メトキシ安息香酸
【化27】
ステップA.メチル 4−(2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)アセタミド)−2−メトキシベンゾエート
【化28】
N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、76g、398mmol)を、ピリジン(332mL)中の2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)酢酸(79.4g、133mmol、実施例4、ステップJ)、及びメチル 4−アミノ−2−メトキシベンゾエート(26.4g、146mmol)の混合物に、3℃で添加した。その混合物を室温まで温め、室温で16時間撹拌した。その反応混合物を0℃まで冷却し、1Mの塩酸(1L)の氷冷溶液に添加した。エーテル(1L)を添加し、層を激しく揺り動かして分離した。有機層を1Mの塩酸(6回、500mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(500mL)、ブライン(500mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、オフホワイトの泡を得た。
【0159】
H NMR(400MHz,CDCl,δppm):−1.20〜−1.12(m,1H)、−0.35〜−0.20(m,1H)、0.05〜0.20(m,1H)、0.32〜0.45(m,1H)、1.45(s,9H)、1.48(s,3H)、1.86〜1.98(m,1H)、2.03(dd,J=2.7及び13.7Hz,1H)、2.43(t,J=13.7,1H)、2.64〜2.75(m,1H)、2.80(d,J=14.3Hz,1H)、2.89〜2.96(m,2H)、3.24(dt,J=2.5及び10.8Hz,1H)、3.89(s,3H)、3.96(s,3H)、4.28〜4.36(m,1H)、4.98(d,J=10.8Hz,1H)、6.85〜6.93(m,3H)、6.99(br s,1H)、7.06〜7.18(m,4H)、7.82(br s,1H)、7.85(d,J=8.4Hz,1H)、8.81(br s,1H)。MS(ESI)761.2[M+H]
【0160】
ステップB.4−(2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)アセタミド)−2−メトキシ安息香酸
【化29】
水(295mL)中の水酸化リチウム一水和物(18.2g、433mmol)の溶液を、テトラヒドロフラン(591mL)及びメタノール(197mL)中のメチル 4−(2−((3R,5R,6S)−1−((S)−2−(tert−ブチルスルホニル)−1−シクロプロピルエチル)−6−(4−クロロ−3−フルオロフェニル)−5−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−オキソピペリジン−3−イル)アセタミド)−2−メトキシベンゾエート(164.9g、217mmol、実施例5、ステップA)の溶液に、室温で添加した。室温で15時間撹拌した後、微量のエステルが残ったため、反応混合物を50℃で1時間加熱した。反応が完了したときに、混合物を真空下で濃縮して、テトラヒドロフラン及びメタノールを除去した。その濃厚な混合物を水(1L)で希釈し、1Mの塩酸(1L)を添加した。結果として生じた白色固体を、ブフナー漏斗内で真空濾過により収集した。真空を解除し、濾過ケーキに水(1L)を添加した。その物質をヘラで撹拌して、それを水中に均等に懸濁させた。次いで液体を真空濾過により除去した。この洗浄サイクルをさらに3回繰り返して、白色固体を得た。その固体を、45℃で、真空下で3日間乾燥させて、表題化合物を白色固体として得た。
【0161】
H NMR(500MHz,DMSO−d)δppm −1.30〜−1.12(m,1H)、−0.30〜−0.13(m,1H)、0.14〜0.25(m,1H)、0.25〜0.38(m,1H)、1.30(s,3H)、1.34(s,9H)、1.75〜1.86(m,1H)、2.08〜2.18(m,2H)、2.50〜2.60(m,1H)、2.66(d,J=13.7,1H)、3.02〜3.16(m,2H)、3.40〜3.50(m,1H)、3.77(s,3H)、4.05〜4.20(m,1H)、4.89(d,J=10.5Hz,1H)、6.90〜6.93(m,3H)、7.19(d,J=8.8Hz,1H)、7.22〜7.26(m,3H)、7.40〜7.50(m,1H)、7.54(br s,1H)、7.68(d,J=8.6Hz,1H)10.44(s,1H)、12.29(br s,1H)。MS(ESI)747.2[M+H]
【0162】
生物学的アッセイ
ホモジニアス時間分解蛍光アッセイ(HTRF1及びHTRF2アッセイ)
インビトロHTRFアッセイのための標準アッセイ条件は、1X PBS緩衝剤pH7.4中のブラック384ウェルCostarポリプロピレンプレート内の50μl合計反応量、1mM DTT、0.1% BSA、2.5nMg ST−hMDM2(aa 1−188)、5nM ビチオン化p53(aa 1−83)、1.8nM SA−XLent(Cisbio;Bedford、MA)、0.6nM 抗GSTクリプテートモノクロナール抗体(Cisbio;Bedford、MA)、及び200mM KFで構成された。ヒトMDM2のアミノ酸残基1〜188を、アミノ末端グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質(GST−hMDM2)として、大腸菌内において発現させた。ヒトp53の残基1〜83を、アミノ末端AviTag(商標)−TrxA−6xHis融合タンパク質(ビチオン化p53)として、大腸菌内において発現させた。各タンパク質は、親和クロマトグラフィによって、細胞ペーストから精製した。
【0163】
具体的には、10μLのGST−hMDM2を、10%DMSO中10μlの希釈化合物(さまざまな濃度、段階希釈される)とともに、室温で20分間インキュベートした。20μLのビチオン化p53を、GST−hMDM2+化合物混合物に添加し、次いで室温で60分間インキュベートした。SA−XLent、抗GSTクリプテート抗体、及びKFからなる10μLの検出用緩衝剤を、GST−hMDM2、ビチオン化p53、及び化合物反応物に添加し、平衡に達するよう4時間を超えて室温で放置した。反応物中のDMSOの最終濃度は2%であった。時間分解蛍光示数を、マイクロプレートマルチラベルリーダー上で測定した。抑制のパーセンテージは、nutlin−3に対して計算された。
【0164】
HTRF2アッセイでは、全てのアッセイ条件は上記と同じままであり、例外として試薬の濃度において以下の変化があった:0.2nM GST−hMDM2(1〜188)、0.5nM ビチオン化p53(1〜83)、0.18nM SA−XLent、及び100mM KF。
【0165】
EdUアッセイ
SJSA−1を、1ウェルにつき2.8×10細胞の密度で、40μLの成長培地中の384ウェル細胞培養プレート内に播種し、37℃及び5%COで、24時間インキュベートした。成長培地は、10mM HEPES、1mM ピルビン酸ナトリウム、1X ペニシリン−ストレプトマイシン、2mM グルタミン、及び10%FBSを補充したRPMI 1640培地(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)から成った。
【0166】
翌日、成長培地を除去し、10mM HEPES、1mM ピリビン酸ナトリウム、1X ペニシリン−ストレプトマイシン、2mM グルタミン、及び10%ヒト血清を補充したRPMI 1640から成る化合物培地に置き換えた。DMSO中に溶解させた試験化合物を、化合物培地で希釈し、33μM〜3pMの濃度範囲まで細胞に添加した。その細胞を16時間、37℃及び5%COで16時間、化合物で処理した。3日目に、Click−It EdU HCSアッセイを使用して、化合物処理後の細胞増殖状態を決定した。化合物培地中に溶解させたEdUを、10μMの最終濃度まで細胞に添加した。次いでその細胞を37℃及び5%COで1時間インキュベートした。EdU標識後、Click−It EdU HCSアッセイ手順を、384ウェル形式用に調整するためにアッセイ容量を25μLまで減らし、製造メーカの指示に従って実行した。要するに、細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、PBS中0.1%Triton−X 100で透過処理した。PBSで洗浄後、細胞を、Click−It反応緩衝剤及びNuclearMask(商標)Blue染料で順次処理した。次いで細胞を洗浄し、Operaハイコンテンツスクリーニングシステム(PerkinElmer Life and Analytical Sciences)を使用して撮像した。細胞に組み込まれたEdUのパーセンテージを計算し、IC50計算に使用した。
【0167】
Click−It EdU HCSアッセイキットは、Life Technologies(Grand Island、NY)より入手し、RPMI1640、L−グルタミン、HEPES、及びピリビン酸ナトリウムは、Cellgro(Manassas、VA)より入手した。384ウェル細胞培養プレートは、PerkinElmer Life and Analytical Sciences(Waltham、MA)より入手した。FBSは、HyClone/ThermoFisher Scientific(Logan、UT)より入手し、ヒト血清は、Bioreclamation(Hicksville、NY)より入手した。SJSA−1細胞株は、ATCC(Manassas、VA)より入手した。
【0168】
DMSO処理済ウェルからの値を、POC(対照パーセント)=100に、及び非EdU標識細胞をPOC=0に、正規化した。IC50値を、Genedata Screener V9.0.1を使用して決定した。Genedata Screenerにおいて用量反応データ分析に使用される曲線当てはめアルゴリズムは、ROUT(外れ値検出によるロバスト回帰)と称されるロバストな当てはめアルゴリズムのカスタム実装形態であり、4パラメータロジスティック(4PL)Hillモデルを使用する。このアルゴリズムは、ロバストな、非線形回帰を実行し、外れ値を検出するためにデータ点の残差を分析し、次いで、外れ値として先に定義されたデータ点を無視して単純曲線フィットを実施する。
【0169】
モデル:
【数1】
ROUT実装形態は、4つの当てはめパラメータ(So、Sinf、AC50 IP、nHill)を当てはめ、4つのフィットパラメータおよび当てはめ結果(最大活性、AC50移行)を、それらの95%信頼区間とともに返す:
【表2】
【0170】
ヒト肝細胞固有クリアランスアッセイ
20人のドナーからプールされた凍結ヒト肝細胞(Celsis−In Vitro Technologies、Baltimore、MD)を使用して、実施例化合物の固有クリアランスを決定した。インキュベーション内の肝細胞の生存率は70〜75%であった。各実施例化合物を、100万細胞/mLの密度で肝細胞を含有する細胞インキュベーション培地(Celsis−In Vitro Technologies、Baltimore、MD)1つにつき500nMの濃度で、インキュベートした。1アリコートのインキュベーション混合物(100μL)を、各時間点のために調製した。インキュベーションは、37℃のインキュベータ内で、100%相対湿度で空気95%及びCO5%の雰囲気下において、1400rpmで振とうしながら実行した。0、5、15、30、60、及び90分で、インキュベーション混合物のアリコートをインキュベータから取り出し、0.1%(v/v)ギ酸及び内部標準(7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルクマリン)を含有するアセトニトリルで反応停止処理した。次いで試料を、5700rpm(6100g)で、4℃で10分間遠心分離した。上澄みを試料プレートに移し、0.1%ギ酸を含有する同量の水と混合し、LC−MS/MSを使用して分析した。
【0171】
試料分析のためのLC−MS/MSシステムは、陰イオンモードで作動するAPI4000三連四重質量分析計(Applied Biosystems、Inc.、Foster City、CA)と連動した逆相UHPLC(Shimadzu Model Nexera LC−30AD、Shimadzu Scientific Instruments,Inc、Columbia、MD)で構成された。クロマトグラフ分離を、55℃で1.2mL/分の移動相流量で維持されるPhenomenex Kinetex Luna C18カラム(Phenomenex、Torrance、CA)(2×50mm、2.6μm)を使用して達成した。移動相は、水中0.1%ギ酸(A)及びアセトニトリル中0.1%ギ酸(B)で構成された。勾配溶離プログラムを以下のように適用した:初期線形を0.8分で95%A/5%Bから5%A/95%Bに上昇させ、0.2分間5%A/95%Bで保持し、次いで0.1分で95%A/5%Bに戻し、次の注入の前にさらに0.5分間この構成で再平衡させた。適切な多重反応モニタリング(MRM)トランジションを、各実施例化合物の検出のために使用し、MRMトランジションm/z 229.2→201.2を、内部標準(7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルクマリン)の検出のために使用した。
【0172】
固有クリアランス(CLint)を、以下の等式(Obach、1997及び1999)を基に、肝細胞インキュベーション内の実施例化合物のインビトロt1/2から計算した。
【数2】
【0173】
ヒト肝細胞固有クリアランスアッセイ及び計算のための参考文献
Ye Q.,Jiang B.M.,Chan H.,Lixia J(公開準備中)Optimization of Hepatocyte Intrinsic Clearance Assay for Human Metabolic Clearance Prediction:Impact of Assay Conditions on Prediction Accuracy。
Obach RS(1997)Nonspecific binding to microsomes:impact on scale−up of in vitro intrinsic clearance to hepatic clearance as assessed through examination of warfarin,imipramine,and propranolol.Drug Metab Dispos 25:1359−1369。
Obach RS(1999)Prediction of human clearance of twenty−nine drugs from hepatic microsomal intrinsic clearance data.An examination of in vitro half−live approach and nonspecific binding to microsomes.Drug Metab Dispos 27:1350−1359。
【0174】
ヒト肝細胞CYP1A2、CYP2B6、CYP3A4誘導アッセイ
材料。オメプラゾール、フェノバルビタール、リファンピシン、デキサメタゾン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クレブスヘンゼライト緩衝剤(KHB)(KHBの成分=組織培養水中、0.30g/L硫酸マグネシウム七水和物、0.16g/L第一リン酸カリウム、0.36g/L塩化カリウム、6.95g/L塩化ナトリウム、2.1g/L炭酸水素ナトリウム、0.38g/L塩化カルシウム二水和物、12.6mM 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES))、フェナセチン、アセトアミノフェン、ブプロピオン塩酸塩、テストステロン、6β−ヒドロキシテストステロン、プラゾシン塩酸塩、細胞培養等級水、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、及びウィリアム培地E(WME)を、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)より購入した。インシュリン−トランスフェリン−セレンサプリメント(ITS)、ペニシリン−ストレプトマイシン−L−グルタミンサプリメント(PSG)、ウシ胎児血清(FBS)、リン酸塩緩衝食ブライン(PBS)、凍結肝細胞融解培地(CHRM)、及び凍結成人ヒト肝細胞の3つの個々のドナーロットを、Life Technologies(Grand Island、NY)より入手した。I型コラーゲンプレコート24ウェルプレート、及びヒドロキシブプロピオンは、Becton Dickinson Labware(Bedford、MA)より得た。ヒトCYP1A2、CYP2B6、CYP3A4、及び18S rRNAのための分岐 DNA(b−DNA)プローブセット、ならびにPanomics Discovery XL Kitは、Affymetrix Inc.(Santa Clara、CA)より購入した。
【0175】
インビトロ法。1日目、肝細胞播種培地(HPM)を、1X PSG、1X ITS、0.1μM デキサメタゾン、及び10%FBSの最終濃度までDMEMを補足することによって調製した。肝細胞維持培地(HMM)の形成を、1X PSG、1X ITS、及び0.1μM デキサメタゾンの最終濃度までWMEを補充することによって達成した。凍結ヒト肝細胞のバイアルを、37℃の水槽内で静かに旋回させることによって1.5〜2分間解凍し、直ちに各個人の肝細胞ロットをCHRMバイアル中に置き、100g、25℃で、10分間遠心分離した。CHRM培地をペレット状の肝細胞から取り除き、各個人のロットをHPM中に静かに再懸濁させた。肝細胞の各ロットを、血球計数器を使用して数え、HPMで0.75×10総細胞数/mLの最終濃度まで希釈した。各調製の生存率は、90%以上であった。個々のロットを、およそ0.38×10細胞数/ウェルで、コラーゲンコート24ウェルプレート内に播種した。肝細胞を、95%空気/5%CO及び90%相対湿度の雰囲気下において、37℃のインキュベータ(Steri−Cult CO Incubator、Model 3310、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)内に置き、細胞に3〜6時間の付着期間を与えた。付着期間後、播種培地及び非付着細胞を吸引によって除去し、37℃HMMを各細胞(0.5mL/ウェル)に添加し、細胞を一晩インキュベートした。2日目、培地を吸引し、新たな37℃HMMを、一晩の馴養期間、細胞に再適用した。3日目および4日目、培地を吸引し、DMSO(0.1%、溶媒対照)、オメプラゾール(50μM、CYP1A2陽性対照誘導剤)、フェノバルビタール(1000μM、CYP2B6陽性対照誘導剤)、リファンピシン(10μM、CYP3A4陽性対照誘導剤)のいずれかを含有する新たな37℃HMM、実施例1〜5を、ウェル(0.5mL/ウェル、N=3ウェル/処理/CYPイソ型)に適用した。試験する実施例化合物を、0.1%DMSOの最終インキュベーション濃度となるよう、DMSO保存溶液中で調製した。実施例化合物処理を、合計48時間維持した。5日目、培地を吸引し、肝細胞をKHB(37℃、pH7.4)で静かに一度洗浄した。KHBを除去し、KHBの第2の適用を行った(0.5mL/ウェル)。肝細胞をインキュベータ内に戻し、10分間KHBに馴養させた。P450酵素活性を、KHB(37℃、pH7.4、0.5mL/ウェル)中に溶解させたマーカ基質フェナセチン(100μM、CYP1A2プローブ基質、30分インキュベーション)、ブプロピオン塩酸塩(100μM、CYP2B6プローブ基質、20分インキュベーション)、及びテストステロン(200μM、CYP3A4プローブ基質、14分インキュベーション)の添加により、続いて決定した。基質インキュベーション期間後、緩衝剤を収集し、分析するまで−80℃で保存した。mRNA分析に使用される肝細胞を、PBS(0.5mL/ウェル、25℃、カルシウム及びマグネシウムを含有)中で一度洗浄し、プロトコル調製済b−DNA溶解緩衝剤を各ウェルに添加した(0.5mL/ウェル)。溶解緩衝剤を上下に5回静かにピペット操作することにより、肝細胞を溶解させ、プレートを、分析するまで−80℃で保存した。
【0176】
P450活性分析。アセトアミノフェン、ヒドロキシブプロピオン、及び6β−ヒドロキシテストステロン(それぞれ、フェナセチンのCYP1A2代謝、ブプロピオン塩酸塩のCYP2B6代謝、テストステロンのCYP3A4代謝のための代謝産物)の分析及び定量を、逆相高速液体クロマトグラフ(Shimadzu、Kyoto、Japan)、及び三連四重質量分析計(API 5000、Applied Biosystems、Foster City、CA)を含むシステム上で、多重反応モニタリングを介して、Turbo IonSpray(Applied Biosystems)を使用して、液体クロマトグラフィ−タンデム質量分析により実施した。検体(25μL)をC18カラム(Onyx Monolithic C18、100×3.0m;Phenomenex、Torrance、CA)に載せ、分析物を、4.6分で、移動相A(0.1%酢酸及び5%メタノールを有する水)からB(0.1%酢酸及び95%メタノールを有する水)への直線勾配で溶離した。流量は1mL/分であった。その代謝産物を、代謝産物と、内部標準(プラゾシン)と、真正アセトアミノフェン、ヒドロキシブプロピオン、及び6β−ヒドロキシテストステロンを使用して調製された標準曲線とのピーク面積比率の比較により定量した。
【0177】
P450 mRNA分析。CYP1A2、CYP2B6、及びCYP3A4 mRNA含有量を、製造メーカの指示に従って実施されるアッセイで、Panomics Discover XL Kitを使用した分岐DNA(b−DNA)信号増幅技術を用いて決定した。捕捉増量剤、標識増量剤、及びヒトCYP1A2、CYP2B6、CYP3A4、及び18S rRNAのための遮断プローブを含むb−DNAプローブセットを、Affymetrix Incより購入した。プレート洗浄ステップを、Elx405自動マイクロプレート洗浄器(BioTek Instruments Inc.、Winooski、VT)上で実施し、Luminoskan Ascentマイクロプレートルミノメータ(Thermo Lab Systems、Helsinki、Finland)上で、発光を分析した。P450 mRNAレベルを、ハウスキーピング遺伝子18S rRNAのmRNAレベルに正規化した。
【0178】
データ報告。mRNA分析用の各P450イソ型について、溶媒対照(溶媒対照を1.0に設定)での倍増を、陽性対照及び実施例化合物の各処理群に対し計算した。加えて、陽性対照のパーセントを、次の方程式に従って、全ての処理群のmRNAレベルに対して計算した。
%陽性対照=[(実施例化合物で処理された細胞の活性−溶媒のみで処理された細胞の活性)/(陽性対照で処理された細胞の活性−溶媒のみで処理された細胞の活性)]×100
【0179】
評価基準
なし=20%未満PC(陽性対照)
中=20〜39%PC
強=40%以上PC
【0180】
mRNA転写誘導アッセイデータ
CYP1A2またはCYP2B6データ
実施例1〜5の化合物のいずれもCYP1A2またはCYP2B6の誘導を示さなかった。
【表3】
【0181】
実施例4を作るための実施例1の化合物へのフッ素基の添加が、実施例1の化合物よりも高いヒト肝細胞クリアランスをもたらす。このデータを見ると、実施例5の化合物もまたフッ素基を含有しているが、実施例1または4の化合物のいずれよりも低いヒト肝細胞クリアランスを示すことは驚きであり、予期していなかった。
【0182】
加えて、実施例1のカルボン酸官能基がアミド(実施例2)に変換されるとき、肝細胞クリアランスは増大し、フェニルアミド誘導体が作られるとき(実施例3)、さらに増大する。さらには、実施例2及び3の両方が、CYP3A4 mRNA誘導を示す。フッ素基及び誘導体化フェニルアミド官能基の両方を含有する実施例5の化合物が、CYP3A4 mRNA誘導を示さず、さらに、実施例1〜4のいずれよりも低いヒト肝細胞クリアランスを示すことはさらに驚きであり、予期していなかった。ヒト肝細胞クリアランスデータ及びCYP3A4 mRNA誘導データは、ヒト治療のための適切な化合物の選択を助けるために、当業者によって使用されることに留意されたい。