(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266672
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】生化学反応システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20180115BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20180115BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
G01N21/78 C
【請求項の数】22
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-36278(P2016-36278)
(22)【出願日】2016年2月26日
(62)【分割の表示】特願2013-503175(P2013-503175)の分割
【原出願日】2011年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-146835(P2016-146835A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2016年3月16日
(31)【優先権主張番号】1005704.0
(32)【優先日】2010年4月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511166839
【氏名又は名称】アイティ−アイエス インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IT−IS INTERNATIONAL LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター, ベンジャミン, マスターマン
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル, ジェームス, リチャード
【審査官】
松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−502228(JP,A)
【文献】
特開2009−278971(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0124723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
G01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定の温度と最低の所定の温度との間で循環し、
前記システムは、
サーマルマウントの第一の面において前記少なくとも一つの反応容器を支持する前記サーマルマウントであって、前記サーマルマウントは前記第一の面に対向する第二の面を有する前記サーマルマウントと、
第一の面と該第一の面に対向する第二の面を有する柔軟接着剤の第一の層であって、前記柔軟接着剤の前記第一の層の前記第一の面は前記サーマルマウントの前記第二の面と機械的かつ熱的に接触する前記柔軟接着剤の第一の層と、
熱電モジュールであって、前記柔軟接着剤の前記第一の層の前記第二の面と機械的かつ熱的に接触する第一の熱伝導性側面と、前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面に対向する第二の熱伝導性側面とを有し、電源へ接続するための一対の導線が接続する一対の電気接点が備わっている前記熱電モジュールと、
第一の面と該第一の面に対向する第二の面を有する柔軟接着剤の第二の層であって、前記柔軟接着剤の前記第二の層の前記第一の面は前記熱電モジュールの前記第二の熱伝導性側面と機械的かつ熱的に接触する前記柔軟接着剤の第二の層と、
前記柔軟接着剤の前記第二の層の前記第二の面と機械的かつ熱的に接触するヒートシンクとを有し、
前記柔軟接着剤は、その中に分散した熱伝導性材料を有するシリコーン接着剤を含み、前記柔軟接着剤は、前記サーマルマウントと前記熱電モジュールと前記ヒートシンクが、熱サイクルの間に、機械的損傷を生じることなく互いに相対的に動けるように弾性があり、
前記柔軟接着剤の前記第一および第二の層は、それらを通して実質的に一様な熱伝導性を有するように塗布され、前記柔軟接着剤は、前記熱電モジュールの前記第一および第二の熱伝導性側面よりも熱伝導性が低く、それによって前記柔軟接着剤の前記第一および第二の層を通して伝達される熱エネルギーよりも先に前記熱電モジュールの前記第一および第二の熱伝導性側面における熱的な不均衡を拡散して軽減すべく前記熱電モジュールの前記第一および第二の熱伝導性側面を通して熱エネルギーが優先的に拡散し、前記柔軟接着剤の前記第一および前記第二の層は、前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面と前記サーマルマウントの前記第二の面との間と、前記熱電モジュールの前記第二の熱伝導性側面と前記ヒートシンクとの間とで、唯一の熱的かつ機械的な結合を形成し、
前記柔軟接着剤の前記第一および第二の層の柔軟性および厚みは、それらの熱膨張率の相違により、前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面と前記サーマルマウントの前記第二の面の間と、前記熱電モジュールの前記第二の熱伝導性側面と前記ヒートシンクとの間とで、それらの間の前記熱的かつ機械的な結合を維持しつつ、異なる熱膨張率を補償することを特徴とする化学的及び生化学的又はそのいずれかのシステム。
【請求項2】
前記柔軟接着剤は、シリコーン接着剤の中に熱伝導性材料が分散されたシリコーン接着剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記柔軟接着剤は、前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面と前記サーマルマウントの前記第二の面との間と、前記熱電モジュールの前記第二の熱伝導性側面と前記ヒートシンクとの間とに熱的異方性要素を提供することを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記熱的異方性要素は、少なくとも一つの熱伝導性シートで隔てられる前記柔軟接着剤の少なくとも二つの層で形成され、それらが合わさって接着剤積層構造を構成していることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記導線は細く、前記熱電モジュールの動作中に熱を生産する電気抵抗を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記細い導線により生産される熱は、さもなければ前記導線によって前記熱電モジュールから伝導される熱エネルギーを平衡させるために用いられることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記熱電モジュールの動作中に熱を生産するために、少なくとも一つの抵抗体が、少なくとも一つの前記電気接点に接続されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記抵抗体は、前記熱電モジュールの動作中に熱を生産するために、前記電気接点の間に並列に接続されることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記抵抗体により生産される熱は、前記導線によって前記熱電モジュールから伝導される熱エネルギーを平衡させるために用いられることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面の中心部またはその周辺の温度を測定するように設けられた少なくとも一つの第一の温度センサと、
前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面の端部またはその周辺の温度を測定するように設けられた少なくとも一つの第一の温度センサとをさらに有し、
前記第一のセンサと前記第二のセンサとは温度制御部に接続され、
前記温度制御部は、前記熱電モジュールの端部に隣接して配置される熱エネルギー源に接続され、測定された温度に基づいて、前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面の端部と中心部とにおける温度の平衡を保つように前記熱エネルギー源を制御することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記導線と電源との間に接続される電源制御部と、該電源制御部に接続される少なくとも一つの大容量コンデンサとを更に有し、
前記電源制御部は、一方向に電流を供給して前記熱電モジュールに一方向に熱を伝達させ、かつ逆方向に電流を供給して前記熱電モジュールに逆の方向に熱を伝達させることが可能であり、
前記電源制御部は、前記コンデンサを放電することで電流源として使用し、又は前記コンデンサを充電することで電流シンクとして使用し、
前記電源制御部は前記電源を電流源として使用可能であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記熱電モジュールに接続された少なくとも一つの大容量コンデンサと、前記電源からの電力を制御するために前記大容量コンデンサと前記電源との間に接続された制御部とを更に有し、
前記熱電モジュールが比較的に低い電力を引き出す熱サイクルの静止期の間は、前記コンデンサは前記電源によって充電され、前記熱電モジュールが比較的に高い電力を引き出す前記熱サイクルの温度変化期の間は、前記コンデンサは放電して前記熱電モジュールに所要電力の少なくとも一部を供給することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記熱電モジュールに接続された大容量コンデンサバンクを有することを特徴とする請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも一つの励起光源と、
前記励起光源からの励起光をフィルタリングする少なくとも一つのフィルタと、
フィルタリングされた前記励起光を均一化するホモジナイザと、
複数の光ファイバとを更に有し、
前記複数の光ファイバは、フィルタリングされ均一化された前記励起光を受光するために、第一の終端が前記ホモジナイザに隣接し、かつ前記励起光を前記反応容器それぞれへ導くために、第二の終端それぞれが前記反応容器それぞれに隣接して設けられることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ホモジナイザは、各光ファイバをより均一に照明するために、前記ホモジナイザの中で励起光を複数回反射する、光を伝達する材料の六角プリズム又は円柱を含むことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
少なくとも一つの第二の励起光源を更に有し、
前記第二の励起光源は、前記第一の励起光源とは異なる波帯の励起光を供給することを特徴とする請求項14または15に記載のシステム。
【請求項17】
少なくとも一つの励起光源と、前記励起光源からの励起光を検出する少なくとも一つのセンサと、前記センサと前記励起光源とに接続された光源制御部とを更に有し、
前記光源制御部は、前記センサに検出された光量に基づいて、所定の光量が検出された場合に前記励起光源を消灯するように制御することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記センサは、第一の終端が前記ホモジナイザの出力部に隣接して設けられ、かつ第二の終端が前記センサに隣接して設けられた光ファイバからの励起光を受光するように配置されることを特徴とする、請求項14乃至16のいずれか一項を引用する請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記光源制御部は、前記励起光を、前記センサの積分時間に同期するように制御することを特徴とする請求項17または18に記載のシステム。
【請求項20】
前記反応容器または各反応容器は、光が放射可能な放射領域を有する受容部を含み、
前記システムは、前記反応容器または各反応容器に対してそれぞれ少なくとも一つの光ファイバを有し、該光ファイバは、前記放射領域から放射される光中の一つ以上の波長の光を検出するために、前記放射領域から光検出器へと光を導くように設けられることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記光検出器は、前記光ファイバから受光した光のスペクトルから特定の波長又は波帯を選択する一つ以上の特定波長用フィルタを含むことを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記反応は、ポリメラーゼ連鎖反応であることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの化学反応及び生化学反応又はそのいずれかのためのシステムの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの化学反応及び生化学反応は高精度な温度変化の制御を必要とする。多くの場合、このような反応は望む効果を得るためには幾つか又は多くの温度変化サイクルを通る必要がある。さらに、特定の反応条件下で発生する、又は変わる検出可能な光シグナル、例えば蛍光シグナルあるいは化学発光シグナル、生物発光シグナル等を生成する多くのこのような化学反応と生化学反応が行われている。このようなシグナルは、特定の条件下で、例えば励起エネルギーの印加等で、試薬或いは反応の結果により光が放射されることにより発生、又は反応自体により発生させられる。
【0003】
このような光シグナルの検出は様々な用途に使用することができる。特に、それによって、試験サンプル中のある試薬の有無を示しうる反応の発生を検出でき、或いは、ある反応の進行状況や動態(kinetics)に関する情報を提供できる。「光」という用語は、一般的には可視光線を指すが、反応から発生し検知され得る光学シグナルは、スペクトルの赤外線および紫外線領域内でも発生し得ると理解されており、用語「光」は、反応から放射され得る、検出可能なあらゆる波長の全ての光信号を含む。
【0004】
当然、正確な蛍光測定は、正確な励起光源に依存する。すなわち、これは緻密に制御された励起光源あるいは励起光源群に依存するだけでなく、その光源あるいは各光源から反応容器への光結合が均一になるよう正確に制御され、かつ光の強度および波長が正確に制御されていることにも依存する。現在周知のシステム系では、そのような光源の光源制御と反応容器との結合はみられない。
【0005】
高精度に制御された温度変化サイクルが要求され、検知可能なシグナル、特に蛍光シグナルが観測されるような反応の特殊な例のひとつが核酸増幅技術、特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRによるDNAの増幅は分子生物学の基礎技術の一つである。PCRは広く利用され、サンプル内の特殊な核酸の存在を検知し、特にそのターゲットの核酸が微量にしか入っていない場合には有効な技術である。このようにこの技術は、研究分野のみならず、診療や検出を含むさまざまな分野で有効な技術である。
【0006】
PCRによる核酸分析は、サンプルの準備、増幅、かつ生成物分析を必要とする。これらの段階は通常、連続的に行われるが、増幅と分析は同時に行える。
【0007】
PCRの過程で、特定のターゲットの核酸が、以下のステップのサイクルの一連の繰り返しによって増幅される。すなわち、反応混合物中に存在する核酸が相対的に高温度、例えば、95°Cで変性され(変性)、それからその反応混合物が、短いオリゴヌクレオチドプライマーが一本鎖のターゲット核酸に結合する温度、例えば55°C、まで冷却される(アニーリング)。その後、プライマーは、例えば72°Cで、ポリメラーゼ酵素によって延長され(延長)、その結果、最初の核酸の配列が複製される。変性、アニーリング、及び延長のサイクルの繰り返しで、結果的にサンプル内のターゲット核酸の量が飛躍的に増加する。
【0008】
この温度プロファイルを変更することは、例えば、変性とアニーリングの温度間のみで循環することや、サイクルからサイクルにかけて一つまたは一つ以上の温度を変えることなどにより、可能である。
【0009】
多数のこのような化学または生化学反応は、複数の、時には多数の、配列に並べた受容器をもつ装置の内部で発生する。その反応に影響を与えないために、受容器は、しばしば1枚のプレート中の窪みの配列としてポリプロピレンで形成される。その窪みは、温度を操作できる金属ブロックの中に挿入されて、その結果窪みはその壁を通して、熱伝導性によって熱的に制御される。必要な温度操作には様々な方法がある。その中で最も一般的なものの一つとしては、(モジュール内の電流方向によって)加熱と冷却をする熱電モジュール、例えば、ペルチェモジュールを使用する方法がある。ペルチェモジュールは良く知られているのでここで詳細を記載しないが、それは本質的には一対のセラミックの熱伝導性の板で、その間に半導体が連続的に取り付けられ、pn接合及びnp接合を形成する。各接合は、熱伝導板と熱的に接触している。一方向の電流にスイッチを入れると、熱伝導板間に温度差ができ、一方の板が熱くなりヒートシンクとして働き、もう一方の板は冷え、冷却装置として働く。
[発明の概要]
しかしながら、ペルチェモジュールはそもそも温度サイクルを目的にして設計されておらず、正確な繰り返しの熱サイクルのためには多数の欠点がある。第一に、ペルチェモジュールそのものが熱伝導性がよいので、そのデバイスを通して電力の損失が生じる。第二に、電流反転は、半導体の接合を通したドーパントの非対称的な移動を引き起こし、その結果、接合は、異なる半導体間の接合点としての機能を、実際上徐々に失う。
【0010】
さらに、反復的な温度変化は、ペルチェモジュールにおいて対称的ではない反復的な膨張および収縮サイクルを引き起こす。ペルチェモジュールが、窪みを支持するサーマルマウントと熱的に接触し、かつそれ自身が異なる速度で膨張・収縮する様々な金属でしばしばできていることによって、機械的な問題が発生する。これらは、高圧でモジュールを機械的にクランプすること、例えば、窪みを保持するサーマルマントから伸び、ペルチェモジュールを通してヒートシンクにまで入り込むボルト等を使用することで和らげられるが、機械的な問題は依然残る。更に、ボルト自体が熱的経路を形成し、熱サイクルの正確な制御に悪影響を与えることがあり得る。これは電源をペルチェモジュールに電気的に接続する配線も同じである。温度の上げ下げにおいてペルチェモジュールは大電力を必要とするので、大電源が必要となり、その結果として電源をペルチェモジュールに接続するためには太い配線が使用されている。これらの配線も、ペルチェモジュールへ又はペルチェモジュールからの無制御の熱経路を提供する。当然、ペルチェモジュールの端の温度も、温度又は他の性質が変化し得る無制御の周囲空気に囲まれていることにより、より制御しにくい。最後に、ペルチェモジュールの動作の特質により、ペルチェモジュールの表面にはホットスポットとコールドスポットができ、それは、多くの場合はアルミニウム、銅、又は銀で形成された巨大な熱伝導性のヒートシンクとの接触、及び、多くの場合はアルミニウム又は銅で形成された巨大な熱伝導性のマウントとの接触により和らげ、加熱を平均化することが可能であるが、それによって、さらなる機械的な問題が起こる。
【0011】
従って、上記の問題の幾つかを解決、或いは少なくとも軽減するために化学的及び生化学的又はそのいずれかのシステムの改善を提供することが目的である。反応はポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)或いはリガーゼ連鎖反応(Ligase Chain Reaction)、核酸配列に基づく増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)、ローリングサークル増幅(Rolling Circle Amplification)、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification)、ヘリカーゼ依存増幅(Helicase-Dependent Amplification)、又は転写媒介増幅(Transcription Mediated Amplification)等のような他の反応であっても良い。
【0012】
よって、第一の態様によると、化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定の温度と最低の所定の温度との間で循環し、前記システムは、前記反応容器を支持するサーマルマウントを含み、該サーマルマウントは、熱電モジュールの第一の熱伝導性側面と熱的に結合され、前記熱電モジュールの第二の熱伝導性側面は、ヒートシンクと熱的に結合されるとともに、電源へ接続するための二つの導線が接続する二つの電気接点を有し、前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面と前記サーマルマウントとの間と、前記熱電モジュールの前記第二の熱伝導性側面と前記ヒートシンクとの間とに、柔軟接着剤が設けられ、前記柔軟接着剤は、前記第一と第二の熱伝導性側面と比較して断熱的であり、前記熱電モジュールと前記サーマルマウントとの間と、前記熱電モジュールと前記ヒートシンクとの間との、熱的又は機械的な唯一の結合を形成することを特徴とする化学的及び生化学的又はそのいずれかのシステムが提供される。
【0013】
第二の態様によると、化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的又はそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度の間で循環し、前記システムは、前記反応容器を支持するサーマルマウントを含み、前記サーマルマウントは、熱電モジュールの第一の熱伝導性側面と熱的に結合され、前記熱電モジュールの第二の熱伝導性側面は、ヒートシンクと熱的に結合されるとともに電源へ接続するための二つの導線が接続する二つの電気接点を有し、前記導線は細く、前記熱電モジュールの動作中に熱を生産するに十分な電気抵抗を有することを特徴とする化学的及び生化学的又はそのいずれかのシステムが提供される。
【0014】
第三の態様によると、化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度の間で循環し、前記システムは、前記反応容器を支持するサーマルマウントを含み、該サーマルマウントは、熱電モジュールの第一の熱伝導性側面と熱的に結合され、前記熱電モジュールの第二の熱伝導性側面はヒートシンクと熱的に結合されるとともに電源へ接続するための二つの導線が接続する二つの電気接点を有し、前記導線は断熱性をもつことを特徴とする化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムが提供される。
【0015】
第四の態様によると、化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度との間で循環し、前記システムは、前記反応容器を支持するサーマルマウントを含み、該サーマルマウントは、熱電モジュールの第一の熱伝導性側面と熱的に結合され、前記熱電モジュールの第二の熱伝導性側面はヒートシンクと熱的に結合されるとともに、電源へ接続するための二つの導線が接続する二つの電気接点を有し、前記熱電モジュールの動作中に熱を生産するために、少なくとも一つの抵抗体が、少なくとも一つの前記電気接点に接続されることを特徴とする化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムが提供される。
【0016】
第五の態様によると、化学及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度との間で循環し、前記システムは、前記反応容器を支持するサーマルマウントを含み、該サーマルマウントは、熱電モジュールの第一の熱伝導性側面と熱的に結合され、前記熱電モジュールの第二の熱伝導性側面はヒートシンクと熱的に結合されるとともに、電源へ接続するための二つの導線が接続する二つの電気接点を有し、前記システムは更に、少なくとも一つの第一の温度センサ及び少なくとも一つの第二の温度センサを含み、前記第一の温度センサは、前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面の中心部またはその周辺の温度を測定するように設けられ、前記第二の温度センサは、前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面の端部またはその周辺の温度を測定するように設けられ、前記第一および第二のセンサは温度制御部に接続され、前記温度制御部は、前記熱電モジュールの端部に隣接して配置される熱エネルギ源に接続され、測定された温度に基づいて、前記熱電モジュールの前記第一の熱伝導性側面の端部と中心部とにおける温度の平衡を保つように前記熱エネルギ源を制御することを特徴とする化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムが提供される。
【0017】
第六の態様によると、化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度との間で循環し、前記システムは、前記反応容器を支持するサーマルマウントを含み、該サーマルマウントは、熱電モジュールの第一の熱伝導性側面と熱的に結合され、前記熱電モジュールの第二の熱伝導性側面はヒートシンクと熱的に結合されるとともに、電源へ接続するための二つの導線が接続する二つの電気接点を有し、前記ヒートシンクは、小型かつ高効率のヒートシンクを含むことを特徴とする化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムが提供される。
【0018】
第七の態様によると、化学反応及び生化学反応が起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度との間で循環し、前記システムは、前記反応容器を支持するサーマルマウントを含み、該サーマルマウントは、熱電モジュールの第一の熱伝導性側面と熱的に結合され、前記熱電モジュールの第二の熱伝導性側面はヒートシンクと熱的に結合されるとともに、電源へ接続するための二つの導線が接続する二つの電気接点を有し、前記システムは更に、前記熱電モジュールに電流源を提供する少なくとも一つの大容量コンデンサと、前記電源からの電力を制御するために前記大容量コンデンサと前記電源との間に接続された制御部とを含み、熱サイクルの静止期の間、前記熱電モジュールが比較的小さい電力を引き出しているときに前記コンデンサは電源によって充電され、熱サイクルの温度変化期の間、前記熱電モジュールが比較的大きい電力を引き出しているときに前記コンデンサは放電して前記熱電モジュールの所要電力の少なくとも一部を供給することを特徴とする化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムが提供される。
【0019】
第八の形態によると、化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度との間で循環し、前記システムは、前記反応容器を支持するサーマルマウントを含み、該サーマルマウントは、熱電モジュールの第一の熱伝導性側面と熱的に結合され、前記熱電モジュールの第二の熱伝導性側面はヒートシンクと熱的に結合されるとともに電源へ接続するための二つの導線が接続する二つの電気接点を有し、前記システムは更に、前記導線と前記電源との間に接続された電源制御部と、該電源制御部に接続された少なくとも一つの大容量コンデンサを含み、前記電源制御部は、前記熱電モジュールに一方向に電流を供給して一方向に熱を伝達させ、かつ、前記熱電モジュールに逆方向に電流を供給して逆方向に熱を伝達させることが可能であり、前記電源制御部はさらに、前記コンデンサを放電することで電流源として使用し、又は前記コンデンサを充電することで電流シンクとして使用し、前記電源制御部は前記電源を電流源として使用できることを特徴とする化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムが提供される。
【0020】
第九の形態によると、化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度との間で循環し、前記システムは、少なくとも一つの励起光源と、該励起光源からの励起光をフィルタリングする少なくとも一つのフィルタと、フィルタリングされた励起光を均一化するホモジナイザと、複数の光ファイバとを更に有し、前記複数の光ファイバは、フィルタリングされ均一化された励起光を受光するために前記複数の光ファイバの第一の終端が前記ホモジナイザの出力端に隣接し、かつ、励起光をそれぞれの反応容器へ導くために前記複数の光ファイバの第二の終端それぞれが前記反応容器それぞれに隣接して設けられることを特徴とする化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムが提供される。
【0021】
第十の形態によると、化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度との間で循環し、前記システムは、少なくとも一つの励起光源と、前記励起光源からの励起光を検出する少なくとも一つのセンサと、前記センサと前記励起光源とに接続された光源制御部とを含み、該光源制御部は、前記センサに検出された光量に基づいて、所定の光量が検出された場合に前記励起光源を消灯するように制御することを特徴とする化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムが提供される。
【0022】
第十一の形態によると、化学反応及び生化学反応またはそのいずれかが起こり得る少なくとも一つの反応容器を有する化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムであって、前記反応容器の温度は、少なくとも最高の所定温度と最低の所定温度との間で循環し、前記反応容器の各々は、光を放射可能な放射領域を有する受容器を含み、前記システムは、前記反応容器各々に対して少なくとも一つの光ファイバを有し、該光ファイバは、前記放射領域から放射される光の中の一つ以上の波長の光を検出するために、前記放射領域から光検出器へと光を導くように設けられることを特徴とする化学的及び生化学的またはそのいずれかのシステムが提供される。
【0023】
以上の改善点それぞれは、以下詳しく説明する特定の組み合わせに制限されず、他の改善点から独立して、又は、一つ以上のほかの改善点とどのように組み合わせても提供できることは理解されるであろう。
【0024】
添付の図面を参照して、様々な改善点を組み込むシステムの実施態様を例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施態様による、先行技術について幾つかの改善を示すPCRシステムの模式図である。
【
図2】先行技術について他の改善を示すPCRシステムの模式図である。
【
図4】先行技術について他の改善を示す熱電モジュールの略平面図である。
【
図5】先行技術について他の改善を示す熱電モジュールの略平面図である。
【
図6】先行技術について他の改善を示す熱電モジュールの略平面図である。
【
図7】先行技術について他の改善を示すPCRシステムの模式図である。
【
図8】先行技術について他の改善を示すPCRシステムの模式図である。
【
図9】先行技術について他の改善を示すPCRシステムの模式図である。
【
図10】先行技術について他の改善を示すPCRシステムの主な電源の構成要素を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
従って、
図1に示すように、PCRシステム1は、容器3の配列2を含む。配列2は、周知タイプのペルチェモジュールのような熱電ヒータ/クーラ5の上に配置したサーマルマウント4の中に配置する。周知であるように、ペルチェモジュールは加熱するためと冷却するために使用可能であり、ペルチェモジュールは必要に応じて熱エネルギの貯蔵をするようにヒートシンク6の上に配置される。必要に応じて放熱を促進するために、ヒートシンク6には、ヒートシンク6の下側のファンマウント8に取り付けたファン7を備えている。
【0027】
サーマルマウント4は、熱伝導性と密度と熱容量とが良好な材料、通常は金属や銀(但し銅も可)で作られており、サーマルマウント4の温度の制御により容器3内の温度が制御されるように、容器3がフィットする凹みすなわち窪みが設けてある。従来、容器はポリプロピレンで作られている。配列2の各容器3は、円錐の一般的形状に形成され、容器3へアクセスするための開口部9を有する。配列2は相対的に薄いフィルム10に覆われ、容器3の開口部9の縁部を封止して試薬や反応生成物を容器3内に保持する。反応の進行中は容器3内に相当の圧力が生じる可能性があるため、高圧力によってフィルム10が開口部9の縁部から離れて、試薬及び反応生成物又はそのいずれかが漏れる又は混ざる可能性を減らすために、フィルム10は容器3の開口部9の縁部とクランプ部材12の間でクランプされる。反応進行中に容器の内部を観察することを可能にするため、各容器3の内部が目で見えるようにフィルム10は透明又は半透明な材料で作られ、クランプ部材12は容器3の開口部9に一致する開口部13を有する。クランプ部材12は上乗せの熱蓋(不図示)と取り替えることが可能である。熱蓋は通常開口部の縁部のシールに圧力をかけるように設けてあり、フィルム10の内部の凝縮を減じるために加熱され、また通常は透明であるか適当な開口部を有しており反応容器からの光を出射できる。これらの要素は周知なため、示されていない。
【0028】
図1に示されたように、反応容器3から放出される光を分光素子(例えばプリズム15等)へ導くように、光ファイバ14は反応容器3の開口部9に隣接する第一の終端を有する。光ファイバ14の第一の終端はクランプ部材12又は熱蓋の上に配置された取付板(不図示)に取り付けられるか、又は反応容器3の開口部9を封止するフィルム10に隣接するような別な配置をすることもできる。ファイバ14の反対側の終端は配列プレート17の開口部16の中に、又はその上に取り付けられていることが示されている。光ファイバ14は各反応容器から光を導き、所定の配列でプリズム15へ誘導することが分かる。配列プレート17内の光ファイバ14の終端から出る光は、各ファイバ14からの(つまり各反応容器3からの)光を模式的に
図1に示してあるようにスペクトル19へと分光するプリズム15(又は回析格子等の他の分光素子)へと光路18に沿って誘導される。スペクトル19は検出器20の像面21に結像する。このように、反応容器3から放射される光のスペクトルは検出器20に提供される。
【0029】
一つの実施形容では、検出器20は1/2" (12mm)の白黒CMOSセンサと共に適切な電子機器やソフトウェアを含み、各画素に対し実際に測定した光レベルを与える「生」のフレームの撮像が可能である。これはメガピクセルの撮影レンズアセンブリと共に使用され、センサチップ上の空間内の或る平面からの光を合焦することが可能なカメラを形成する。ここで「レンズ」とは、「光学レンズ」、一片のガラス、又は「写真レンズ/レンズアセンブリ」のいずれかと言い替え可能な意味で使用しており、つまりCMOSセンサ等のようなセンサ平面上で撮像するために使用される一揃いの、一つ以上のレンズを意味している。カメラは、ファイバ配列の上の単体のガラスレンズと30°のコーティングされていないガラス製のプリズムを通して撮像するために利用される。
【0030】
各画素に対し実質的に同等な露光間隔を与える全体的なシャッタ制御を提供するセンサは、画像全体に同じ期間露光することで、その画像の各スペクトルの各チャンネルが、可変励起強度等、時間により変化する状態によって同じ様に影響うを受けるため、このシステムでの使用に良く適している。各反応容器について、各チャンネルは、反応容器内の時間的に変化する状態、例えば凝縮、温度、泡の形成等の物的移動等にも等しく影響される。
【0031】
このシステムでの利用に適切なセンサは、異なるパラメータ(例えば、アナログゲインやオフセット、ADC基準電圧、画素のポテンシャル障壁等の電子パラメータ、又は他の一般に制御されているキャプチャ設定パラメータ)で、センサ配列にわたる異なる画素のサブセットを取得することが可能なセンサを含む。例としては、画素を2x2ブロックにグループ化し、各ブロックの左上の画素群は一つのサブセットに属し、右上の画素群はもう一つのサブセットに属し、左下と右下の画素群も同様であるMicron MT9T001のようなセンサーがある。これらのサブセット各々は異なるADCゲインパラメータを持つことができる。これは効果的にセンサのダイナミックレンジを拡張するために使用できる。例えば、4xのゲインを偶数行に利用し、奇数行には8xのゲインを利用する設定にすると、実際上は分光画像は、ゲインレベルが異なる半解像度の画像二つとして取得され、そして低ゲイン側の画像では、飽和する最大光レベルがより高く、高ゲイン側の画像では低光レベルにおいてより高精細となる。もう一つの例としては、画像が矩形領域の配列に分割され、各矩形領域は個々のデジタルゲインやゲイン制御設定を持つことが可能であるAptina/Micron MT9V024がある。分光画像は、分光画像と一致するように領域を配列することができ、スペクトルの異なる領域すなわち異なる波長に対して異なるゲインを設定できるので、異なる領域に対して異なるゲインを与えるセンサに特に適している。これは、異なる強度レベルのスペクトル領域を取得し、各領域に対して最適のSNRと最低の量子化ノイズを与えるために使用できる。
【0032】
出力符号対光レベルに関して非線形な応答を提供するセンサはこのシステムに適しており、特にセンサの応答がプログラミング可能な場合、例えば複数の線形応答領域を用いるか、又は圧伸するか、またはその両方を用いる場合に適している。このようなセンサの例としては、Aptina/Micron MT9V024があり、これは12ビットから10ビット圧伸使用が可能で、3領域までの異なる線形応答も可能であり、より広いダイナミックレンジを提供するものである。例えば、このようなセンサは、低光レベルで光対出力ゲイン比がより高く、測定精度が重要であるPCRサイクルの初期に関連する光レベルでは良いSN比及び感度を示すが、測定精度の重要性が低いPCRサイクルの中間期や後期の停滞期に関連する高い光レベルではより低いゲインを示す。励起光の反射に関係する非常に高い光レベルでの更に低いゲインの最終領域は、均一な高いゲインレベルからもたらされる飽和を起こすことなく反射光の測定を可能にするために利用できる。
【0033】
励起光を反応容器3まで送るように、光ファイバ22は第一の終端を一つ以上の励起光源23、24に隣接して配置され、反対の終端は反応容器3の開口部に隣接するように配置される。励起ファイバ22は、内方への光の誘導を容易にするために励起受光端で結束されてもよい。このためには穴の開いたプレート25を使用してもよいが、多くの場合はおおよそ六角型の束にファイバを束ねるほうが容易である。
【0034】
この実施形態では、励起光源の一つは非球面レンズを備える青色高輝度LED23でよい。もう一つの励起光源としては緑色LED24でよい。LED23、24は両方からの励起光を合成し、ホモジナイザ27(本質的にガラス製の六角プリズム又は円柱)へ誘導するためにダイクロイックミラーの両側に配置される。ダイクロイックミラー26は青色LED23からの青色光を透過させ、緑色LED24からの緑色光をホモジナイザ27の中へ反射させることによって、各励起導波路を、励起光をホモジナイザ27内で数回反射させることによってより均一に照明する。この組み合わせによって、励起ファイバ22の束の研磨端が空間的に均一に照明され、各反応容器3は平等に等しい励起を受ける。ダイクロイックミラー26は別の光誘導手段と入れ替えてもよく、例えば、Y型の導波路の使用や、LED両方がファイバを照らすように傾けて配置してもよい。
【0035】
もう一つの実施態様は16組の放射/励起ファイバを、複数の円柱形の金属性のフェルール内に取り付け、各フェルールに励起ファイバ一つと放射ファイバ一つを備える。そしてフェルールは、使用に際しては従来の熱蓋の穴に配置できる。ファイバは、110°Cまでの熱蓋との接触に耐えるために耐熱性のプラスチックで作られる。
【0036】
そして、反応容器からのスペクトルを検知するため、励起源(青又は緑)を点灯し、短時間安定させておき、そしてファイバの端部の画像を取得する。様々な補正処理をこの画像に適用し得る。例えば、取得した画像から「ダーク」画像を差し引いて、読み取りにおけるオフセットを補正することが可能である。このダーク画像は、光のない状況でさえ画素から測定される一定のオフセットを測定するため、センサを最小の光にさらしながら取得したものである(一般的な光学補正手段である)。次の処理ステップでは信頼性の低い光の測定をする画素、例えば、漏電電流や製造上の欠陥によるホットピクセルと呼ばれる画素を破棄する。
【0037】
光学素子やファイバの配置による固有誤差の補正をするためには、較正を行ってもよい。較正は、装置の初期使用時又は物理的衝撃や解体等により装置に支障がでた場合のみに必要であろう。較正は、単に空の容器配列を使用して励起光を各ファイバへ反射することでよい。励起光は狭い周波数帯を有するので、比較的に明瞭なファイバ端の画像が見える。その結果反応容器の個々の輝点の位置は手動又は自動で検出でき、これらは各反応容器についてのスペクトルの固定した基準点として利用できる。各容器についてのスペクトルの矩形(又は他の形)の領域が定義され、較正と共に記憶される。
【0038】
最後に、所与の画像を解釈するため、各容器についてスペクトル領域が抽出される。そして、該当容器についてのスペクトル領域は較正結果から調べられ、スペクトル領域は単に左から右へスキャンされ、各領域の画素の輝度の平均を取り、該画素に対応する周波数帯内のスペクトル自体についての輝度とする。様々な変換手段はあるが、シンプルでかつ適切な手段としては、スペクトル領域の各縦列の画素全部の平均を取り、垂直にスペクトルの中心におけるより明るい画素に対してはより大きな重みを加える方法がある。そして各列の平均はその列すなわち測定のチャネルの強度となる。修正の最後のステップは、それらチャネルを、画像の各列に分光された実際の波長に対してマッピングすることであって、例えばプリズムの分光作用をモデル化すること、すなわち既知のスペクトルを測定することで行えるが、波長別ではなくチャンネル別にスペクトルを比較することが可能であるため、必ずしも必要ではない。
【0039】
上記の記載には、反応容器からの光は反応容器の最も上側の領域から放射されているように示されているが、当然放射領域はどの位置にあってもよいことは明らかであろう。ファイバは、光に対して透明な、又は光が放射される、反応容器のどの位置に隣接して配置することができる。従って、例えばサーマルマウント4はくぼみ2の底から穴が開けられていてもよい。そのとき反応容器3は、光に透明な領域が先細形状の反応容器3の最下部に配置されるように形成され得る。そして励起ファイバも各くぼみの底にある第二の開口部に配置し得る。
【0040】
別の構成では、受光ファイバ及び励起ファイバまたはそのいずれかを、光に対して透明な領域へファイバの終端を導くサーマルマウント4の穴に取り付けることも可能であり、その穴は反応容器の側面にあってもよい。励起光が反応容器3内へ放出され、そして反応容器3から発する光が集光され、光検出器へ誘導される限り、どのような構成が適用されても良いことは明らかであろう。そして、必要とする検知の性質に応じて、光検出要素が光を観測し、検知するように適切に制御されているのであれば、分光要素は必要でないことが理解されるであろう。
【0041】
上記のように、ペルチェモジュール5は、電気接点33を用いて交互に接続された複数の半導体素子28を含み、それにより
図3〜
図5に最もよく示されたように半導体接合をもたらしている。半導体素子28は一対の熱伝導性のプレート29、30の間に設けられる。ペルチェモジュールは非常に正確な熱サイクルを踏まえてデザインされたものではなく、前述したように機械的な問題を生じるので、ペルチェモジュール5の熱伝導性プレート29、30それぞれをサーマルマウント4とヒートシンク6とに十分な圧力でクランプしてそれらの間における相対的な屈曲を実質的に防止するように、上位のクランプ部材12(又は熱蓋)とサーマルマウント4とペルチェモジュール5とヒートシンク6とに入り込むボルトを設けることが一般的である。しかし、ボルト自体が熱の流路となるので、システム制御の正確度が低くなる。他の既知のシステムでは、熱伝導性プレート29、30とサーマルマウント4とヒートシンク6との間に黒鉛のマットが、生じる可能性のあるヒートスポットの分散を促進する圧縮層を提供するように設けられるものがある。場合によっては、固定しなければペルチェモジュールと黒鉛マットとは相対的に互いに横方向に動く可能性があるので、粘着剤の薄層を、黒鉛マットをその位置に固定するために利用できる。もう一つの方法は、熱伝導性プレート29、30をそれぞれサーマルマウント4とヒートシンク6に、エポキシ樹脂を使用して接着することも知られている。但しこのような樹脂は硬化すると剛体であり、熱サイクルの間に生じする熱応力および相対的な屈曲によって機械的に損傷する可能性がある。
【0042】
よって、
図1に示されたように、本発明の一実施形態では、ボルトクランピング機構を備えておらず、ペルチェモジュール5の熱伝導性プレート29、30は、熱伝導性材料を中に分散したシリコーン接着剤等の、熱伝導性プレートと比較して相対的に断熱性が高い柔軟接着剤の層31、32によって、サーマルマウント4とヒートシンク6とに接続している。様々な要素が熱サイクル中に機械的な損傷を起こすことなく屈曲できるようにする「弾力性」を与えるべくその接着剤は弾性的であり、そのうえ、熱伝導性のプレート29、30それぞれとサーマルマウント4とヒートシンク6の間で熱伝達を可能とするように、その接着剤は相対的に断熱的であるべきである。接着剤は、制御された均一な厚さにつくられ、そのため全体にわたって均一な熱伝導性をもつ。しかし、接着剤はペルチェモジュール5の熱伝導性のプレート29,30と、サーマルマウント4とヒートシンク6とと比較して、相対的に断熱的であるから、Z方向に接着剤を通して熱が伝わる前に、熱エネルギはまず熱伝導性プレート29,30上のX-Y平面方向に広がり、ホットスポットを除去する。適切な接着剤としては、メーカーArlon Silicone Technologies LimitedのThermabond(米国登録商標)が使用可能である。
【0043】
現在実務者に使われている熱電モジュールとサーマルマウントとの間の結合層は、物理的に共形であって、熱伝導的であるようにデザインされている。このような界面材料を、隣接する他の要素と良好な熱的接触を維持するために物理的に共形とすることと、隣接する要素との間で効率的な熱伝達を促進するために、熱伝導性の材料とすることは当業者にとっては明らかである。しかし、本発明ではある条件下、熱的性能、具体的にサーマルマウントの均一性が、熱電モジュールとサーマルマウント又はヒートシンク及びその両方との間に配置した熱的に異方性をもつ要素によってより良好になることが分かった。
【0044】
サーマルマウントに隣接する熱電モジュールの伝導性のプレートの温度の不均一性を起こす要因は多数ある。このような要因には、ペルチェ素子の効率に関する局所的な違い、伝導性、及びシステムの他の素子(ヒートシンク又は配線)との熱的接触またはそれらの少なくともいずれかを含む。熱電モジュールの温度における不均一性によって起こる(通常は等方的な)マウント内の不均一性を低減させるためには、熱電モジュールと、サーマルマウント及びヒートシンクまたはそのいずれかとの間に熱拡散層を設けることが望ましい。このような熱拡散素子は、熱伝導性に関して異方的であれば機能する。Z軸と比較して、X及びY軸の熱伝導率は高くすべきである。これにより、直観に反して、熱的な界面に異方性を付与するために、熱的な界面のZ軸方向への考えられる熱伝導率をより小さくするほどシステム効率は改善される。
【0045】
従って
図2をみると、柔軟で相対的に断熱的な接着剤が、ペルチェモジュール5の熱伝導性プレート29,30それぞれと、サーマルマウント4及びヒートシンク6との間に、二つ以上の層31a、31b、32b、32bとして設けてある代替的な実施形態が示されている。この場合は、金属等の熱伝導性材料の一つ以上の薄板36が接着剤の層31a、31b、32a、32bの間に設けられ、接着材の層と伝導性薄板の層とを交互に設けることで接着性の積層構造を形成し、接着性の層は、ペルチェモジュール5の熱伝導性のプレート29、30と、サーマルマウント4及びヒートシンク6とに接着するように外側の層とする。熱伝導性シート36は、(熱伝導性プレート29,30と同様)接着剤よりわずかに熱伝導性が高く、また、熱エネルギは、接着剤を通してZ方向に伝達される前に、まず熱伝導性シート36上でX-Y平面に広がり、ホットスポットを除去する。よって、ペルチェモジュールの熱伝導性プレート29、30と、サーマルマウント4及びヒートシンク6との間に備えられるものは、熱的に異方的な素子である。
【0046】
図1から
図5はさらに、ヒートシンク6に隣接する熱伝導性プレート30の延長部61に設けた一つ又は二つのエッジ電気接点33を示す。電気配線34はペルチェモジュール5に給電するために、エッジ電気接点33を電源35に接続する。前述のように、ペルチェモジュールは温度の上昇および下降の間には相当な大電力を必要とする。したがって、電源35は大きい必要があり、よって大きい(太い)配線を使用してペルチェモジュール5へ電源35を接続している。これらの配線はペルチェモジュールへの無制御の熱経路も提供する。
【0047】
しかし、ペルチェモジュールが大電力を必要とするのは、温度の上昇および下降の間のみであることが分かっており、一定の温度が維持されている間に必要とするのは、より小さい電力である。よって、より小さい電源の使用も可能であり、より細い線34も使用可能である。細線34は、吸熱性が低いことはさておき、太線よりも相当大きな抵抗をもつ。このような抵抗は配線34に電流が流れるときに自己発熱の原因となる。適切な抵抗や自己発熱レベルの線を選択することによって、放熱性を低減又は均衡するのに十分な熱を発生することを判定でき、ペルチェモジュールからのヒートロスを軽減又は除去することが可能である。接点パッド33と配線34との間に直列に適当な抵抗を設けることによって同様な効果が得られることが理解されるであろう。そこで、
図3と
図4は、電気接点33のうち一つ又は両方とそれぞれ電気配線34との間に直列に設置した抵抗体11を示す。
【0048】
当然、ペルチェモジュールの熱伝導性プレートの端の温度は、温度及び他の特性が変化し得る、制御されていない周囲空気に囲まれていることにより、制御しにくい。プレートも、そのひとつが、接点パッド33が取り付けられる延長部61をもつ場合、非対称的である。よって、もう一つの改善法によると、局所的に加熱して電気配線からの熱損失及び熱伝導性プレート端部からの熱損失またはそのいずれかを均衡させるために、
図5に示されたように、接点パッド33に跨って並列に抵抗体11を設けることが望ましい。或いは、又はそれに加えて、ペルチェモジュールの端部の適切な位置に熱源を配置することも可能である。加熱器の熱的性質及び抵抗またはそのいずれかを正確に制御するためには、
図6に示したように、ペルチェモジュールの熱伝導性プレートの中心又はその周辺や、プレートの端部の温度を測定するために温度センサ55を設置することが可能であり、温度を均衡させるように、必要に応じて加熱器及び抵抗またはそのいずれかを制御部56で制御することも可能である。配線の放熱効果を軽減するために、電気配線を、伝導性ではあるが断熱的な材料でつくることもできる。
【0049】
プレートのひとつが抵抗体が取り付けられた延長部61を持ち、プレートが非対称の場合、熱電モジュール5の延長部61とヒートシンク6との間に接着剤の層、又は異方性素子を備えないことが望ましい。
図1と
図2からわかるように、配線34により別の放熱経路が提供される熱電モジュール5の端部における熱電モジュール5からヒートシンク6への放熱効率を低減させることにより、熱均一性が改善される。つまり、熱電モジュール5端部を、配線34に隣接するヒートシンク6へ結合しないことにより、熱電モジュール5から配線34への放熱による熱不均一性を軽減する。
【0050】
システムの熱的制御をよりよく実現するためのさらなる改善は、従来のヒートシンク6をより小さい、高効率のヒートシンクと取り替えることである(不図示)。このようなヒートシンクは複数の熱伝導性のロッドを有し、それらロッドはペルチェモジュールに熱的結合している熱伝導性のブロックから下向きに伸びる。ロッドの使用は、より効率が高く、フィンで熱エネルギを放熱する従来のヒートシンクよりは高い放熱効果を提供する。
【0051】
次は
図7を参照すると、
図1と
図2のシステムの光学部のみが、中に配置された反応容器3を有するサーマルマウント4とともに概略的に示されている。ファイバ14とファイバ22とは、その端部が容器3の開口部9に隣接し、反応容器3の開口部9の上に配置されたプレート38の開口部37内に取り付けられていることが示されている。シールや他の要素はこの図に示されていない。この場合は、ただ一つのLED23が示さ、LED23からの光を、フィルタ41を介してホモジナイザ27の入力開口部40へと平行化するためにレンズ39が備えられていることがわかる。LED自体が正確に希望する波長のみを放射しない場合に、励起に必要な光の正確な波長を適切に選択するためにフィルタを使用する。複数のLEDを、一つ又は一つ以上のフィルタもしくはLEDそれぞれに関連した独立したフィルタと共に、同様な構成で使用できることが理解される。二つ以上のLEDが備えられた場合、フィルタが同じ又は異なる波長を通過させ、LEDが同色又は異色であっても良い。レンズ39の替わりに、又はレンズ39に加えて、別の光の平行化の手段を利用してもよい。例として、一つ以上のプライバシ・フィルタの使用を使用でき、またホモジナイザの入力開口部自体がコリメータ要素として使用されることが可能である。
【0052】
図8も、
図1と
図2のシステムの光学部のみを、中に配置された反応容器3を有するサーマルマウント4とともに概略的に示す。ファイバ14とファイバ22の端部は、
図1と
図2のように、反応容器3の開口部9の上のシール10に隣接するクランピングプレート12の中の開口部13の中に配置されている。この場合は、LED23、24の両方が、ダイクロイックミラー26とともに表示されている。しかし、LED23、24から放射される光の輝度を測定するために、光センサ42が配置されている。一つ以上の光センサ、例えば各LEDにつき一つのセンサを使用することも可能であることは理解されるであろう。センサは制御部43に接続され、制御部43はLED23、24それぞれにも接続されている。よって、LEDは、反応容器3へ正確に制御された励起光を提供するためにスイッチがオンおよびオフされる。所定の光量がLEDから検出されると制御部はそのLEDのスイッチを切り、その結果各サイクルについて反応容器に所定量の光だけが提供される。当然、制御部はLEDからファイバ22に伝わる光量の制御をするために開口部又は他の「ゲート」を制御することも可能である。よって、「ゲート」された励起はセンサの積分期間と同期させてもよい。その結果はノイズの低減及び信号雑音比の改善である。
【0053】
ホモジナイザ27の出力面から受光するように、プレート25にさらに光ファイバ57を取り付け、LED23、24によって放射される光の輝度を測定する別の方法が
図9に図示される。ファイバ57はホモジナイザ27からの光を光センサ58へ伝達する。光センサ58は、光の輝度を測定し、LED23、24の一方又は両方のスイッチを切るLED制御部60に接続された露光制御部59に接続されている。よって、システムは以下のステップで操作を行う。・LEDのスイッチを入れる
・放射された光の総量の連続的な推定を行うために光レベルを測定する(放射光の代表的な一部のみ測定されているので推定値である)
・光の総量の推定値が所定の値に達した場合、LEDのスイッチを切る
・必要に応じて繰り返す
図10はシステムの主な電気的な構成要素を概略的に示す。図に示されているように、ペルチェ制御部45に給電する24V主電源44と、例えば様々な電気処理装置に低圧電力を給電する低圧電源と、LEDに給電するLED駆動部47と、ファン7に給電するファン駆動部48と、熱蓋のヒータに給電する蓋駆動部49とが設けられている。これらの要素の通常の所要電力は図示されている。理解できるよう、いろいろな負荷があり、中には大電流が流れる場合もあり、所要電力が電力容量を超える可能性もある。この場合、システムは、図示されているように、二つのペルチェモジュール5a,5b(ペルチェA、ペルチェB)を含む。
【0054】
電力は外部の24V主電源44から発生する。電源は最大150W(6.25A)の電力を給電するとする。しかし、必要に応じて220W(9.16A)の装置に増強することも可能である。測定部51によって示されるように、電流及び電圧(したがって電力)はシステムの多くの位置で測定される。各測定部51は、電力制御用電界効果トランジスタ(FET)を駆動するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に対して制御レート情報を提供するデュアルチャネルの12ビットADCにより形成される。
【0055】
装置内に三つの低電力部分:ファン駆動部48、LED駆動部47、低圧電源46がある。これらは比較的低い、そして一定の、合計30Wを超えない電力を消費する。熱蓋駆動部49には比較的高い電流が流れることがあるが、ペルチェモジュール5a,5bが低電力「維持」モードにいる場合にのみ最大電力で運転される。このような状況では、外部電源が熱蓋のヒータ50の所要電力を充足できる。その他の場合は、熱蓋のヒータ50は20Wだけを引き出す低電力維持モードに設定される。
【0056】
システム内の主な高電力装置は二つのペルチェモジュール5a,5bであり、それぞれは独立の降圧レギュレータHブリッジ(buck-regulator H-bridge)52a,52bに駆動される。上述の値を考慮すると、150Wの電源は大電力装置の駆動のために最高100Wを提供することと、220Wの電源の場合はこれらの装置の駆動のために最高170Wを提供することが可能であることが分かる。
【0057】
ペルチェモジュール5a,5bはそれぞれ12Vで150Wの定格と、それに対応する12.5Aのピーク電流をもつ。よって、ペルチェモジュール5a、5bの両方を駆動する場合、所要電力は300W、そして流れる電流は25Aである。よってペルチェモジュール5a、5bの所要電力のピークは予備の電力容量を超える。外部電源の容量を超えたレートで駆動するために、短期に大電流を提供する超コンデンサバンク53を備える。ペルチェモジュール5a、5bと超コンデンサ53の双方は、電流制限降圧レギュレータでもあるペルチェ制御部45によって主電源44から絶縁されている。
【0058】
図11は、電力制御システムの臨界パラメータが高電力加熱サイクル中にどう変化するかを示す。休止(維持)状態では、超コンデンサ53はペルチェ制御部45を介して主電源44から24Vに充電される。加熱サイクル中、ペルチェモジュール5a,5bの所要電力300Wは超コンデンサ53と主電源44との組み合わせから得られる。150Wの電源を利用するとすれば、100Wの寄与がある。これはペルチェ制御部45の入力に接続された測定部51のFPGAにより規制され、ペルチェ制御部45に流れる電流は100W/24V=4.2Aを超えないことを保証する。休止(維持)区間から出る際、ペルチェ制御部出力電力と超コンデンサ53は両方24Vにある。各Hブリッジ52a, 52bには6.25Aが流れる。電流が流れると、超コンデンサ53は放電し、そして他の場合なら充電した状態に維持するために主電源からさらに電流が流れる。しかし、ペルチェ制御部45はすでに電流限界にあり、よって出力電力を低減させ、したがって超コンデンサ53を充電する試みは行われない。実際上、ペルチェ制御部45の出力電圧は、超コンデンサ53が放電している期間の電圧を追随いる。
【0059】
ペルチェ制御部45はスイッチングモード降圧レギュレータ(switch-mode buck regulator)であり、出力電圧を下げると、ペルチェ制御部の電流供給能力は増大する。損失を無視すれば、全体の電力(つまり、出力圧力と出力電流との積)は一定に維持される。よって、主電源44による寄与は安定に保たれる。稼働は、超コンデンサ53がおよそ12Vまで放電すると同時に終了するように設計される。ペルチェ制御部45の出力電圧が12Vまで追随すると、出力電流は着実に8.4Aまで上がる。注意すべきことは、Hブリッジ52a,52bへの供給は24Vから12Vまで変化することである。これは、Hブリッジ52a,52bはそれ自体が適合的であり、ペルチェモジュール5a,5bに必要な12Vまで入力電圧を変換して落とすので問題ではない。
【0060】
休止状態に再び入る時は、ペルチェモジュール5a,5bに流れる電流は劇的に下がり、電流はペルチェモジュール5a,5bから超コンデンサ53へ戻るように流れ始める。これらは主電源44の100W(24V@4.2A)給電に限定されるレートで充電される。超コンデンサ53が充電されるとき、ペルチェ制御部45の出力電圧は、安定な24Vの充電レベルが得られるまで並行して追随する。この時点では、システムは次の加熱サイクルの準備が整っている状態である。
【0061】
よって、電力制御部は熱電モジュールが一方向に熱を伝達するよう、一方向に電流を供給することができ、かつ熱電モジュールは反対方向に熱を伝達するよう、反対方向に電流を供給することができ、かつ、制御部がコンデンサを電流源として利用可能な場合にはコンデンサを放電し、又は制御部はコンデンサを電流シンクとして利用可能な場合かつ電源を電流源として利用可能な場合にはコンデンサを充電することがわかる。加熱サイクルの休止期間内のこの制御部の動作は、熱電モジュールが比較的小電力を使用している場合は、制御部は電源からの電流の一部を使用して熱電モジュールを駆動し、熱サイクルの温度変化期間中、熱電モジュールが比較的大電力を使用している場合は、制御部には電源及びコンデンサの両方からの電流を利用して熱電モジュールを駆動し、コンデンサを放電するような動作であってもよい。制御部は、電源に電流が決して戻らないことと、各構成要素への電流及び各構成要素からの電流が仕様内であることを保証する手段を提供する。
【0062】
電流の測定の全ては0-16Aのスケールで動作し、よって16Aは絶対的な測定上限である。しかし、動作中の予測される最高の電流は12.5Aである。
【0063】
大電流では、小電流検出抵抗器は、かなりの量の電力を浪費する可能性がある。よって、電流検出抵抗器はできる限り低い抵抗値のもの、例えば5ミリオームを選択する。実際には、定格の連続出力が1Wの抵抗器も使える。測定上限での電力浪費はこれを超えるが、この状況には(場合により過渡的事象は別として)使用中に実際に遭うはずがない。電流測定器では12ビットのADCが使われ、4mA以下の理論的解像度が可能である。この例外は、バイポーラであるペルチェの電流測定の場合である。この場合は、解像度は約半分のおよそ8mAになる。
【0064】
ここで、この発明の特有な実施形態の幾つかを詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく多くの変更及び修正を当業者により実行できることは了承されよう。例えば、本明細書で用いている「熱センサ」という表現は、温度を測定のために利用できる要素のすべての組み合わせをも含む意図があり、かつ、センサの出力になんらかの処理を施して適切な温度測定値を提供する一つ以上のセンサを含み得ることは明らかであろう。同様に、本明細書で用いている「光センサ」は、光を測定するために利用できる要素のすべての組み合わせを含む意図があり、センサの出力に何らかの処理を施して適切な光測定値を提供する一つ以上のセンサを含み得る。