特許第6266679号(P6266679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266679電気加熱層を備える透明な板ガラス、およびそのための製造プロセス
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  • 特許6266679-電気加熱層を備える透明な板ガラス、およびそのための製造プロセス 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266679
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】電気加熱層を備える透明な板ガラス、およびそのための製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20180115BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20180115BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20180115BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20180115BHJP
   H05B 3/86 20060101ALI20180115BHJP
   B60J 1/20 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C03C27/12 M
   B60S1/02 B
   B60J1/00 H
   H05B3/20 326B
   H05B3/20 327B
   H05B3/86
   B60J1/20 C
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-63995(P2016-63995)
(22)【出願日】2016年3月28日
(62)【分割の表示】特願2013-553872(P2013-553872)の分割
【原出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2016-190785(P2016-190785A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年4月26日
(31)【優先権主張番号】11154735.2
(32)【優先日】2011年2月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ロイル
(72)【発明者】
【氏名】ズザンネ・リシンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ギユンター・シヤル
(72)【発明者】
【氏名】サビーネ・フエルデン
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−193355(JP,A)
【文献】 特開2000−235889(JP,A)
【文献】 特開平06−302375(JP,A)
【文献】 実開平05−059918(JP,U)
【文献】 特開2008−056225(JP,A)
【文献】 特開平09−086965(JP,A)
【文献】 実開平09−000003(JP,U)
【文献】 特表2010−516551(JP,A)
【文献】 特表2009−502703(JP,A)
【文献】 特開2006−168728(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0270280(US,A1)
【文献】 米国特許第05128513(US,A)
【文献】 国際公開第2011/006743(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B60J 1/00
B60J 1/20
B60S 1/02
B60S 1/58
B32B 17/06
H05B 3/20
H05B 3/84 − 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも板ガラス表面の一部にわたって広がり、かつ接続手段(10、11、12、13、13’)を介して電源に電気的に接続されることができる電気的な加熱層(6)を備える、透明な板ガラス(1)であって、接続手段は帯状の第1のバスバー(10)および帯状の第2のバスバー(11)を含み、それぞれが、供給電圧の印加後、加熱電流が加熱層(6)によって形成される加熱フィールド(14)に流れるように、帯の長さ全体にわたって加熱層(6)に直接導電接続され、第1のバスバー(10)は、少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブル(12)に直接接触で導電接続され、第2のバスバー(11)は、少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブル(13、13’)に直接接触で導電接続されており、供給電圧を第1のバスバー(10)および第2のバスバー(11)に提供するように、少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブル(12)が、電源の一方の端子に接続されるものであり、かつ少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブル(13、13’)が、電源の他方の端子に接続されるものであり、板ガラスは少なくとも1つの加熱フィールドフリー板ガラスゾーン(9)を有しており、その中に、少なくとも1つの電気的なゾーン加熱素子(15)が配置され、ゾーン加熱素子(15)が、加熱フィールドフリー板ガラスゾーン(9)が供給電圧の印加によって加熱可能なようにオーム抵抗を有しており、ゾーン加熱素子(15)が、加熱フィールド(14)に対して電気的並列回路で、少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブル(12)および少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブル(13)と直接接触で導電接続され、ゾーン加熱素子(15)が、第1のバスバー(10)および第2のバスバー(11)の両方に直接導電接続されず、少なくとも1つの電気的なゾーン加熱素子が一体型の加熱ワイヤの形で設計される、板ガラス。
【請求項2】
1つまたは複数の接続セクション(23)が、少なくとも加熱層(6)と物理的接触する領域で、第1および/または第2のフラットリボンケーブル(12、13、13’)へのゾーン加熱素子(15)の電気的接続のために配置され、加熱層(6)と接触して配置される接続セクション(23)の領域が環境に対して電気的絶縁被覆を提供される、請求項1に記載の板ガラス(1)。
【請求項3】
1つまたは複数の接続セクション(23)が、少なくとも板ガラスの加熱層フリー縁ゾーン(7)の領域で、第1および/または第2のフラットリボンケーブル(12、13、13)へのゾーン加熱素子(15)の電気的接続のために配置される、請求項1に記載の板ガラス(1)。
【請求項4】
熱可塑性樹脂系接着剤層(4)により互いに接着された個々の2つの板ガラス(2、3)を含む複合板ガラスとして実装され、加熱層(6)が個々の板ガラスの少なくとも1つの表面上に配置され、および/または個々の板ガラス間に配置されたキャリアーの表面上に配置され、少なくとも1つのゾーン加熱素子(15)が個々の2つの板ガラス間に配置される、請求項1から3のいずれか1項に記載の板ガラス(1)。
【請求項5】
ゾーン加熱素子(15)が接着剤層(4)の少なくともセクションにより埋め込まれている、請求項4に記載の板ガラス(1)。
【請求項6】
加熱ワイヤ(15)が、35から150μmの範囲の直径を有しており、および/または特に12から24ボルトの範囲の供給電圧で、板ガラス表面で300から1000W/mの範囲の除氷能力が使用可能にできるように設計されている、請求項に記載の板ガラス(1)。
【請求項7】
加熱ワイヤ(15)が少なくとも1つの湾曲したワイヤセクションを有し、該湾曲したワイヤセクションが4mmより大きい曲率半径を有している、請求項6に記載の板ガラス(1)。
【請求項8】
自動車のフロントガラスとして実装され、少なくとも1つの加熱フィールドフリー板ガラスゾーン(9)が、外部環境とのコミュニケーションのためのコミュニケーションウィンドウ(22)および/または板ガラスを拭うために備えられたフロントガラスのワイパーの休止または停止位置として機能する、請求項1からのいずれか1項に記載の板ガラス(1)。
【請求項9】
ゾーン加熱素子(15)が板ガラスの下縁(5a’)に隣接して配置されるバスバー(11)とオーバーラップして配置される、請求項に記載の板ガラス(1)。
【請求項10】
少なくとも板ガラス表面の一部にわたって広がり、かつ接続手段を介して電源に電気的に接続されることができる電気的な加熱層(6)を備える、透明な板ガラス(1)を製造するための方法であって、接続手段は、帯状の第1のバスバー(10)および帯状の第2のバスバー(11)を含み、それぞれが、供給電圧の印加後、加熱電流が加熱層によって形成される加熱フィールド(14)にわたって流れるように、帯の長さ全体にわたって加熱層に直接接触で導電接続され、第1のバスバー(10)は、少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブル(12)に直接接触で導電接続され、第2のバスバー(11)は、少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブル(13、13’)に直接接触で導電接続されており、供給電圧を第1のバスバー(10)および第2のバスバー(11)に提供するように、少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブル(12)が、電源の一方の端子に接続されるものであり、かつ少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブル(13、13’)が、電源の他方の端子に接続されるものであり、板ガラスは、少なくとも1つの加熱フィールドフリー板ガラスゾーン(9)を有しており、その中に、
− 加熱フィールドフリー板ガラスゾーン(9)が供給電圧の印加によって加熱可能なようなオーム抵抗を有する、少なくとも1つの電気的なゾーン加熱素子(15)が、加熱フィールドフリー板ガラスゾーン(9)に実装されており、ゾーン加熱素子(15)が一体型の加熱ワイヤの形で配置され、
− ゾーン加熱素子(15)が、加熱フィールド(14)に対して電気的に並列回路で、少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブル(12)および少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブル(13、13’)に直接導電接続され、ゾーン加熱素子(15)が、第1のバスバー(10)および第2のバスバー(11)に直接導電接続されない、方法。
【請求項11】
ゾーン加熱素子(15)が少なくとも、加熱層(6)と物理的には接触し、電気的には絶縁されているセクションによって配置される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
機能性単一部品として、ならびに、備品、装置、および建造物の組み込み部分としてのほか、陸上、空中、または水上での運搬の手段、具体的には、自動車において、例えば、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、および/またはガラスルーフとして、請求項1からのいずれか1項に記載の透明な板ガラス(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラス技術の領域で、電気加熱層を備える透明な板ガラスのほか、そのための製造の方法にも関する。
【0002】
電気加熱層を備える透明な板ガラスは、それ自体よく知られており、すでに特許文献の中で何回も説明されている。単に、例示的な目的ではあるが、この点に関しては、独国特許出願公開第10200705286号明細書、独国特許出願公開第102008018147号明細書、および独国特許出願公開第102008029986号明細書に対して参照が行われている。自動車では、法令により、中央の視野には実質的に視覚制限があってはならないので、透明な板ガラスが、フロントガラスとしてよく使用される。加熱層により生成された熱によって、凝結した水滴、氷、および雪が短時間で除去されることが可能である。
【0003】
加熱電流は、一般的に少なくとも一組の帯状またはバンド形状の電極によって加熱層に導入される。バスバーとして、これらは加熱電流を可能な限り均一に加熱層に導入し、幅広く分配する必要がある。加熱層の電気的なシート抵抗は、工業的な連続生産で現在使用される材料の場合、比較的高く、平方あたり約数オームになる場合がある。それでもやはり、適切な加熱出力を得るために、供給電圧はそれに対応して高くなければならないが、例えば、自動車の場合、標準的には、12から24ボルトの車上電圧のみが使用可能である。加熱層のシート抵抗は加熱電流の電流パスの長さに応じて増大するので、反対極のバスバーは、バスバー間で可能な限り距離を短くする必要がある。通常、高さより横幅が長い自動車の板ガラスの場合、バスバーは、結果的に、加熱電流が板ガラスの高さのより短いパスを介して流れることができるように、板ガラスの2つの長い方の縁に沿って配置される。しかしながら、この設計では、板ガラスを拭くために装備される、フロントガラスのワイパーの休止または停止位置の領域は、通例、不適切な加熱出力が残存しないように加熱領域の外側に置かれ、そのためにワイパーが定位置で凍り付いてしまうという結果になる。
【0004】
欧州特許出願公開第0524537号明細書では、電気加熱層を備えたフロントガラスが提示されており、ここでは、ワイパー保管の領域に、2つの平らな加熱帯が加熱素子として装備されている。加熱帯は、それぞれ、板ガラスの下縁に隣接して配置された下の方のバスバーを介して、1つの端子、およびリードワイヤを介して、電源のもう一方の端子に電気的に接続されている。この配置では、下の方のバスバーに2つの加熱帯の電流で追加の負荷がかかるという欠点がある。
【0005】
独国特許出願公開第102007008833号明細書では、電気的に加熱可能なフロントガラスを提示しており、それでは、ワイパー保管の領域も追加的に加熱可能である。この目的のため、接地コネクターとして下の方のバスバーに接続された加熱ワイヤが備えられている。加熱ワイヤには、視野の板ガラスの加熱とは独立して、電源が供給される。この配置も同様に、下の方のバスバーに加熱ワイヤの電流で追加の負荷がかかるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10200705286号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102008018147号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102008029986号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0524537号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102007008833号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電気加熱層を備える透明な板ガラスを有利向上させることにある。この目的および他の目的は、独立請求項の特徴を示す透明な板ガラスによる本発明の提案により達成される。本発明の有利となる実施形態は、従属請求項の特徴により示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、自動車のフロントガラスとして特に設計されている、電気的に加熱可能の透明な層(以後の部分では、「加熱層」と呼ばれる)を備える透明な板ガラスが提示される。加熱層は、少なくとも、板ガラス表面のかなりの部分、特に、その(中央部分)視野に広がり、電気接続手段により、電気的に電源に接続されることが可能である。接続手段には、電源の2つの端子への接続のために備えられた外部コネクターがある。さらに、接続手段には少なくとも2つの接続電極が含まれており、これらの接続電極は、加熱電流を加熱層に導入するために機能し、供給電圧の印加後、加熱電流が加熱層によって形成される加熱フィールドに流れるように、加熱層に対して、直接、導電接続されている。本発明に関連して、「加熱フィールド」という用語は、接続電極への電源電圧の印加によって生成される加熱電流によって直接加熱可能な加熱層の該当領域を指している。
【0009】
接続電極は、バスバーとして、広く分配される加熱電流を加熱層に導入するために、帯状またはバンド状の電極(「バスバー」)の形で設計されている。こうして、本発明による板ガラスでは、バンド形状の第1のバスバーとバンド形状の第2のバスバーが備えられており、これらのバスバーは、それぞれ直接、全帯状の長さにわたり(すなわち、長い方向のバスバーの長さ全体にわたり)、直接、加熱層に、導電接続されている。この目的のために、2つのバンド形状のバスバーは、例えば、(スクリーン)印刷方法の印刷により、加熱層上に十分に付けられるが、そのようにすることで、原理上、各バスバーがバスバーの全長に沿って伸びる接続セクションで加熱層に付けられるには十分でもある。こうして、バスバーは、それぞれで、十分な帯状の長さにわたり伸び、かつ加熱層と直接に電気的接触を行う接触領域を有する。高いオーム性の加熱層に比べ、バスバーには、それ自体が電気的加熱には事実上、まったく影響しないような比較的少ないまたは低いオーム性の電気抵抗を有する。自動車のフロントガラスで、2つのバスバーが板ガラスまたは自動車の横断方向に通るように、第1のバスバーは、板ガラスの上縁に隣接して配置され、第2のバスバーは、板ガラスの下縁に隣接して配置される。
【0010】
本発明による板ガラスのバスバーは、それぞれ、長さ全体にわたり、直接、加熱層に導電接続されているので、バスバーは板ガラスの横断方向にのみ通っている。こうして、バスバーは、板ガラスの2つの側縁、特に、コーティングされていない、または加熱層でコーティングされているが加熱フィールドから直流的に分離されている板ガラスの縁の領域では、接続されることはない。板ガラスの側縁ではバスバーが装備されていないことのために、バスバーの電気的抵抗の増大および関連する電力損失は、有利に回避されることが可能である。処理技術の観点から、バスバーが板ガラスの側縁に装備されていなので、バスバーの印刷による板ガラスの弱体化が回避されることが可能であるという理由から、(スクリーン)印刷によりバスバーが印刷されることは有利となる。
【0011】
板ガラスには、追加の接続手段として、直接接触で、バスバーに導電接続されているフラットリボンケーブル(例えば、帯状の金属箔)がある。こうして、第1のバスバーは直接、少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブルに導電接続され、第2のバスバーは直接、少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブルに導電接続されている。例えば、この目的のために、フラットリボンケーブルは、それぞれのバスバーの接続セクションに付けられている。こうして、フラットリボンケーブルには、それぞれに、直接、関連するバスバーに導電的に接触している接触領域がある。
【0012】
本発明による板ガラスには、少なくとも1つの加熱フィールドフリー板ガラスゾーンがあり、このゾーンは、バスバーを介して加熱層に導入された加熱電流によっては直接加熱されることができない。詳細には、加熱フィールドフリー板ガラスゾーンは、例えば、加熱層のその後の除去または層を付ける際のマスキングによって形成されることが可能な加熱層フリー板ガラスゾーンとすることができる。あるいは、加熱層は、実際のところ、加熱層が供給電圧によって影響されることのできず、加熱電流が流されることのできない(すなわち、直接加熱不可能である)加熱フィールドフリー板ガラスゾーンに配置されることも可能である。
【0013】
少なくとも1つの電気的に加熱可能な加熱素子(以後の部分では、「ゾーン加熱素子」と呼ばれる)が加熱フィールドフリー板ガラスゾーンに配置され、この加熱素子はオーム加熱のために機能し、加熱フィールドフリー板ガラスゾーンが、加熱層については、同じ供給電圧の印加によって電気的に加熱可能であるようなオーム抵抗を有している。ここでは、ゾーン加熱素子が、加熱フィールドに対して電気的並列回路で加熱層の電気的接続手段と電気接続されていることが不可欠である。ゾーン加熱素子は、この目的のために、直接接触で第1のバスバーに導電接触されている、少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブル、および直接、第2のバスバーに導電接触されている、少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブルに導電接続されている。こうして、ゾーン加熱素子はバスバーに直接、導電接続されている。
【0014】
ゾーン加熱素子は、有利には、別個の外部コネクターなしで行うことが可能なように、加熱層と同じ供給電圧で、フラットリボンケーブルを介して電源を供給されることが可能である。さらに、ゾーン加熱素子はバスバーと直接、導電接続されていないので、バスバーがゾーン加熱素子の電流による追加の電気的負荷による影響を回避されることが可能なことは有利となる。その代わり、ゾーン加熱素子の電流は、バスバーをバイパスして、フラットリボンケーブルからゾーン加熱素子に直接給電される。ゾーン加熱素子の電流は、関連した比較的大きな電気的損失が回避されることが可能なように、バスバーに誘導されないので、板ガラスは、とりわけ高効率で加熱されることが可能であることは有利となる。
【0015】
本発明による板ガラスが、自動車のフロントガラスとして実装される場合、加熱フィールドフリー板ガラスゾーンは、しかし、必ずしも加熱層フリー板ガラスゾーンではないが、例えば、電磁信号に対して透過性のあるコミュニケーションウィンドウ、または板ガラスを拭うために備えられたフロントガラスのワイパーの休止または停止位置の領域とすることができる。特に、後者の場合、本発明による板ガラスは、ゾーン加熱素子への別個の電気線を必要としないことを可能にすることはとりわけ有利となる。
【0016】
本発明による板ガラスでは、ゾーン加熱素子は、第1および/または第2のフラットリボンケーブルに接続セクションを介して直接、導電接続されている。ここで、特に製造技術の観点から、接続セクションが、少なくとも環境から電気的に絶縁する被覆が装備される加熱層または加熱フィールドと物理的に接触して配置される接続セクションの領域とともに、少なくとも、加熱層と、特に加熱フィールドと物理的に接触する領域に配置されることは有利となる場合がある。そのような被覆は、例えば、ポリウレタンコーティングの形で実装されることが可能である。接続セクションが、板ガラスの加熱層フリーまたは加熱フィールドフリー縁ゾーンで少なくとも部分的に配置されることも同様に可能である。後者の場合、接続セクションの電気的絶縁被覆なしで済ますことが可能である。
【0017】
本発明による特に有利となる板ガラスの実施形態では、熱可塑性樹脂系接着剤層により互いに接着された個々の2つの板ガラスを含む複合板ガラスとして実装され、加熱層は個々の板ガラスの少なくとも1つの表面上に配置され、および/または個々の板ガラス間に配置されたキャリアーの表面上に配置される。ゾーン加熱素子は、個々の2つの板ガラス間に配置され、具体的には、ゾーン加熱素子のとりわけ簡単かつ信頼できる固定を達成するため、少なくともセクションにより接着剤層に組み込まれることができる。個々の2つの板ガラスは必ずしも完全にガラスから作られる必要はなく、例えばプラスチックなどの、非ガラス材料から作られることも可能であることを理解されるようにしていただきたい。特に、ゾーン加熱素子は、加熱層として複合板ガラスの同じ側(例えば、「側面3」)、言い換えれば、特にはまた、接着剤層の同じ側に配置されることができる。あるいは、ゾーン加熱素子および加熱層が、接着剤層の異なる側に配置されることも同様に可能なはずである。
【0018】
本発明による別の有利となる板ガラスの実施形態によると、少なくとも1つのゾーン加熱素子が、例えば、金属加熱ワイヤまたは加熱箔の形で設計され、それによって、とりわけ単純かつ経済的な技術実装が可能になる。加熱ワイヤは、35から150μmの範囲の直径を有しており、特に12から24ボルトの範囲の供給電圧で、目的の加熱出力が得られることが可能であるように、0.1から1オーム/mの範囲のオーム抵抗を有しているように設計されることが好適である。加熱ワイヤは、12から24ボルトの範囲の供給電圧で、板ガラス表面で300から1000W/mの範囲の加熱出力が使用可能にできるように設計されることが好適である。加熱ワイヤが少なくとも1つの湾曲したワイヤセクションを有している場合、湾曲したワイヤセクションが、配置中の実際の扱いやすさが改善され、破損のリスクが低減されるように、4mmより大きい曲率半径を有するようにすることが好適である。
【0019】
工業的な連続生産で、加熱ワイヤとして実装されるゾーン加熱素子は、技術的にとりわけ単純かつ経済的なやり方で配置される可能性がある。この目的のために、加熱ワイヤの1つの平面で実質的に可動なガイドヘッドを使用することが可能であり、このガイドヘッドは、加熱ワイヤが、個々の2つの層の接着のために接着剤層に押し込まれるような、加熱押圧ローラーに結合される。加熱押圧ローラーによって、接着剤層の局部的軟化が得られることが可能である。
【0020】
自動車のフロントガラスとしての本発明による板ガラスの一実施形態では、ゾーン加熱素子が板ガラスの下縁に隣接して配置されるバスバーとオーバーラップして配置されることが有利となる。この方策によって、下の方のバスバーの領域でも板ガラスの加熱を達成することが可能となり有利となる。下の方のバスバーは通常、非常に低いオーム性加熱出力のみ有しており、加熱フィールドの外側に位置する。こうして、板ガラスのこの帯状領域でも、氷や雪の層の信頼できかつ安全な除去が可能である。
【0021】
本発明はさらに、少なくとも板ガラス表面のかなりの部分にわたって広がり、電気的接続手段を介して電源に電気的に接続されることができる、電気的加熱層を備える透明な板ガラスを製造する方法にも拡張する。この方法において、接続手段は帯状の第1のバスバーおよび帯状の第2のバスバーを含み、それぞれは、供給電圧の印加後、加熱電流が加熱層によって形成される加熱フィールドに流れるように、帯の長さ全体にわたって加熱層に直接、導電接続され、第1のバスバーは少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブルに直接、導電接続され、第2のバスバーは少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブルに直接、導電接続されており、板ガラスは少なくとも1つの加熱フィールドフリー板ガラスゾーンを有している。この方法では、加熱フィールドフリー板ガラスゾーンが供給電圧の印加によって加熱可能であるようなオーム抵抗を有する、少なくとも1つの電気的ゾーン加熱素子が、加熱フィールドフリー板ガラスゾーンに配置され、ゾーン加熱素子は、加熱フィールドおよび少なくとも1つの第2のフラットリボンケーブルに対して電気的並列回路で少なくとも1つの第1のフラットリボンケーブルに直接、導電接続されている。本方法の有利となる実施形態では、ゾーン加熱素子は、少なくとも、加熱層と物理的には接触し、電気的には絶縁されているセクションによって配置される。処理技術の観点から、ゾーン加熱素子が一体型の加熱ワイヤの形で配置されることは有利となる。
【0022】
さらに、本発明は、上述のとおり、機能性単一部品として、さらには、備品、装置、および建造物の組み込み部分としての透明な板ガラスの使用のほか、陸上、空中、または水上での運搬の手段、具体的には、自動車においては、例えば、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、および/またはガラスルーフとしての透明な板ガラスの使用に拡張するものである。
【0023】
様々な実施形態が単一または何らかの組み合わせで実現されることが可能であることを理解していただきたい。特に、前述の特徴および続く部分で説明される事柄は、示されている組み合わせでのみ使用されることが可能なだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせまたは単体でも使用されることが可能である。
【0024】
次に、本発明は、添付図面を参照して、例示的な実施形態を使用して、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】簡略化した縮尺通りではない表示で、自動車のフロントガラスとしての一実施形態での本発明による板ガラスの一例示的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面では、本発明による板ガラスが、例えば、全体が参照文字1で参照されている自動車のフロントガラスの形で具現化されている。フロントガラス1は、複合の板ガラスとして実装され、(挿入された断面表示から識別されることが可能なとおり)、硬質の外側板ガラス2と硬質の内側板ガラス3とを備え、両方が個々の板ガラスとして実装され、熱可塑性樹脂系接着剤層4、ここでは、例えば、ポリビニルブチラールフィルム(PVB)、エチレン酢酸ビニールフィルム(EVA)、またはポリウレタンフィルム(PU)により互いに接着される。そのような複合の板ガラスの基本構造は、ここで詳細に説明する必要がまったくないほど、例えば、自動車の工業的な連続生産から当業者にはよく知られている。個々の2つの板ガラス2、3は、ほとんど同じサイズで、おおよそ台形に湾曲した輪郭を有し、例えば、ガラスから作られているが、プラスチックなどの、非ガラス材料から作ることも同様に可能である。フロントガラスとして以外の適用の場合、個々の2つの板ガラス2、3を可撓性材料から作ることも可能である。
【0027】
フロントガラス1の輪郭は、板ガラス5の縁部によって画定され、台形状に対応しており、2つの長い側縁5a、5a’(設置位置の上側と下側)および2つの短い側縁5b、5b’(設置位置の左側と右側)からなっている。フロントガラス1を電気的に加熱するために機能する、透明な加熱層6は、接着剤層4に接着された内側の板ガラス3の側面(「側面3」)に配置されている。加熱層6は実質的に内側の板ガラス3の表面全体にわたり付けられており、内側の板ガラス3の全辺の周状の縁帯7は、加熱層縁8が板ガラス5の縁に対して内側に後退するようにコーティングされない。この方策は、外側に対して加熱層6の電気的絶縁のために機能する。さらに、加熱層6は板ガラス5の縁からの腐食の浸透から保護される。
【0028】
加熱層6は、それ自体知られているやり方で、少なくとも1つの導電性のある金属副層、好適には、銀、およびオプションで、反射防止層やブロッカー層などの他の副層を含む層順序を備えている。層順序は、有利には損傷なく、板ガラスの屈曲に必要な通常600℃を超える温度に耐えるような高い熱的安定性があるが、低い熱的安定性の層順序も提供されることができる。内側の板ガラス3に直接付けられる代わりに、例えば、外側および内側の板ガラス2、3に続けてぴったりとくっついているプラスチックフィルム上に付けられることも可能なはずである。加熱層6は、例えば、スパッタリング(マグネトロンカソードスパッタリング)により付けられる。加熱層6のシート抵抗は、例えば、0.1から0.6オーム/平方の範囲である。
【0029】
加熱層6は、(上部)第1のバスバー10および(下部)第2のバスバー11に直接、導電接続されている。2つのバスバー10、11は、それぞれ、バンド状または帯状で実装され、加熱層6への供給電流の広範な導入のための接続電極として機能する。この目的のために、バスバー10、11は加熱層6上に配置され、第1のバスバー10は板ガラス5aの上部の長い縁に沿って伸びており、第2のバスバー11は板ガラス5a’の下部の長い縁に沿って伸びている。こうして、2つのバスバー10、11は、帯状の長さ全体に沿って加熱層6に直接、導電接続され、加熱層6と、それぞれで、下側に配置されている接触領域で接触する。2つのバスバー10、11は板ガラスの長い縁5a、5a’に沿ってのみ通っているが、板ガラスの短い縁5b、5b’に沿っては通ってはいない。2つのバスバー10、11は、同じ材料から作られており、例えば、スクリーン印刷方法などにより加熱層6上にペーストを印刷することにより製造されることが可能である。あるいは、例えば、銅またはアルミニウムの狭い金属箔帯からバスバー10、11を作ることも可能なはずである。これらは、例えば、接着剤層4に固定され、外側および内側の板ガラス2、3の接着時に、加熱層6に配置されることが可能である。電気的接触は、個々の板ガラスの接着時の熱と圧力の作用で確実にされることが可能である。単に完全性の目的で、加熱層6の最上層は電気的な絶縁物質から作られることができるということが言及される。バスバー10、11が印刷される場合、電気的接触を行うための、加熱層6のわずかなエッチングは、例えば、印刷ペーストのガラスフリットによって達成されることが可能である。バスバー10、11が金属箔帯として付けられる場合、加熱層6の絶縁材料から作られる最上層は、例えば、はんだごてによって局部的に除去されることが可能である。
【0030】
フラットリボンケーブル(例えば、狭い金属箔)として実装される第1の接続リード12は、第1のバスバー10と直接接触で、導電接続されており、電源電圧を使用可能にするために、電源の端子(例えば、負端子)と接続するために装備される第1の外部コネクター20を有している。第1の接続リード12は、第1のバスバー10と垂直な板ガラス5aの上部の長い縁の中央におおよそは配置される。2つの第2の接続リード13、13’は、第2のバスバー11と直接接触で、導電接続され、それらのコネクターも、それぞれで、フラットリボンケーブル(例えば、狭い金属箔)として実装され、それぞれ、第2の外部コネクター21、21’を有しており、これらは、電源の別の端子(例えば、負端子)に接続するために装備されている。2つの第2の接続リード13、13’は、次の部分で説明される加熱フィールドフリーゾーン9の中央領域16の両側の一定の距離で、第2のバスバー11に垂直に配置される。接続リード12、13、13’は、それぞれ、下側に配置された接触領域で関連するバスバー10、11と接触する。
【0031】
供給電圧の印加時に加熱電流が流れる、加熱フィールド14は、2つのバスバー10、11によって囲まれている。加熱層6に比べるとオーム抵抗は無視できるので、バスバー10、11は、事実上 ヒートアップせず、加熱出力に対して感知できるような影響は及ぼさない。
【0032】
序論ですでに説明されたとおり、加熱層6のシート抵抗は、加熱電流の電流パスの長さとともに増大するので、2つのバスバー10、11がそれらの間で可能な限り最短距離を有することが満足できる加熱出力に関して、有利となる。この理由のために、下の方の板ガラス領域を実装することが有用であり、この板ガラス領域は、もはや視野の一部ではないが、加熱フィールドフリーゾーン9として、板ガラスを拭うために備えられるフロントガラスのワイパーの休止または停止位置の領域に対応する。それでもなお、加熱層6は加熱フィールドフリーゾーン9に置かれているが、2つのバスバー10、11の間に置かれているのではなく、加熱電流が流れることはできず、こうして、直接には加熱することができない。
【0033】
加熱フィールドフリーゾーン9を加熱するために、そこには、電気的に加熱可能ゾーン加熱素子として機能する加熱ワイヤ15がある。加熱ワイヤ15は、例えば、ポリウレタンワニスなどの電気的な絶縁被覆により囲まれる。加熱ワイヤ15は、中央領域16の両側に置かれる2つの加熱ゾーン17、17’を形成し、加熱ワイヤ15の曲がりくねり湾曲した経路によって画定される。加熱ワイヤ15の曲がりくねり湾曲した経路は、少なくともおおよその、加熱フィールドフリーゾーン9のエリアル加熱のために機能する。加熱ワイヤ15の第1のワイヤ端18は一方(図では左側)の第2の接続リード13に直接接触で、導電接続されており、同時に、その第2のワイヤ端19はもう一方(図では右側)の第2の接続リード13’に直接接触で、導電接続されている。具体的には、加熱ワイヤ15は、一方の加熱ゾーン17の第1のワイヤ端18から始まり、中央領域16を横断することなく、曲がりくねり湾曲した経路を有し、下の方つまり第2のバスバー11の上部または上でおよそ、バスバーの半分の長さにわたり配置され、板ガラスの左側の短い縁5bに沿った加熱層フリー縁帯7に伸び、さらに、板ガラスの上部長い縁5aに沿って上部つまり第1のバスバー10の上部または上でバスバーの長さ全体わたり伸びており、さらに板ガラスの右側の短い縁5b’に沿って加熱層フリー縁帯7に伸びているので、次に、もう一方の加熱ゾーン17’では、中央領域16を横断することなく、曲がりくねり湾曲した経路が想定され、下の方つまり第2のバスバー11の上部または上でおよそ、バスバーの半分の長さにわたり伸び、最終的に、第2のワイヤ端19で終了する。ここで、加熱ワイヤ15は板ガラスの上部の長い縁5a上で、1つの接触スポットにおいて、第1の接続リード12と直接、電気的接触しているが、電気的被覆により、第1のバスバー10とは直接の電気的接触をしていない。第1の接触スポット24での加熱ワイヤ15と第1の接続リード12との間の直接の電気的接触では、加熱ワイヤ15の電気的絶縁被覆は第1の接続リード12の領域で局部的に除去されるが、これは、例えば、ワニス層の除去のために、はんだごてを利用することで、連続生産で達成されることが可能である。類似して、加熱ワイヤ15の電気的被覆は、それぞれの第2の接触スポット25を形成するために2つの第2の接続リード13、13’で除去される。別の方法では、加熱ワイヤ15は絶縁ワニス層により完全に囲まれる。
【0034】
こうして、2つの加熱ゾーン17、17’の外側に置かれた加熱ワイヤ15の接続セクション23は、第1の接続リード12との電気的接続のために機能する。2つのバスバー10、11に供給電圧を印加することで、加熱フィールド14および加熱ワイヤ15は、このようにして同時に加熱されることが可能であるが、バスバー10、11には、加熱ワイヤ15の電流による負荷がかからない。その代わり、電流は、例えば、第1の接続リード12によって、直接、加熱ワイヤ15に導入され、そこで、加熱ワイヤ15の並列電流パスに分散され、再度、2つの第2の接続リード13、13’から出るように導かれる。こうして、2つのバスバー10、11には、追加の電気的損失が有利に回避されるように加熱ワイヤ15の加熱電流からの負荷はかからない。
【0035】
必須ではないが、加熱ワイヤ15が金属材料、特に銅またはタングステンから作られることは好適である。加熱ワイヤ15は、例えば、オーム抵抗が0.1オームから1オーム/mとなるよう、35から150μmの直径を有しており、それは、12から24Vの自動車の通例の車上電圧での実用のためには適した加熱出力を有する。板ガラス表面で300から1000W/mの範囲の加熱出力を利用できるようにされることは好適である。湾曲したセクションでは、加熱ワイヤ15が4mmの最小曲率半径を有することが好適で、それによって、簡単に配置されることが可能である。
【0036】
これは図面に図示されていないが、加熱ワイヤ15が、そこで物理的接触をする加熱層6上の少なくともセクションで、2つの加熱ゾーン17、17’の外側を通ることも同様に可能なはずである。加熱ワイヤ15は、この場合、例えば、加熱層6と接着剤層4の同じ側に配置されるが、接着剤層4のもう一方の側に配置されることも可能なはずである。加熱ワイヤ15が、曲がりくねり湾曲した経路が中央領域16を越えるか、または2つの電気的に隔離されたセクションに分割されることにより、単一の加熱ゾーンを形成することも同様に可能なはずである。一体型または一部品型の加熱ワイヤ15は、連続的な導体ループを形成するので、処理技術の観点から、ワイヤのとりわけ単純かつ経済的な配置が可能にされる。2つの第2の接続リード13、13’の代わりに、例えば、第2のバスバー11の中央部分に配置される、単一の第2の接続リードのみも同様に、おそらく設けられることができるはずである。
【0037】
図1に図示しているように、フロントガラスは、別の加熱フィールドフリーゾーン9として設計されているコミュニケーションウィンドウ22をさらに含んでいる。コミュニケーションウィンドウ22は外部環境とのコミュニケーションのために機能し、この目的のために、電磁波を通すことができる。コミュニケーションウィンドウ22の正確な機能は、ここで詳細には説明される必要がないような本発明の理解には重要でないものである。加熱層6の接続リード12、13、13’と直接接触で、導電接続されることが可能な加熱ワイヤは、コミュニケーションウィンドウを直接、加熱するために、コミュニケーションウィンドウ22にも同様に配置されることが可能であることを理解していただきたい。
【0038】
図面では、ゾーン加熱素子が、例示的な方法により、加熱ワイヤ15の形で具現化されているが、さらにこれは、例えば、接着剤層4に固定されることが可能な、狭い金属箔帯からゾーン加熱素子を製造することも同様に可能である。
【0039】
次の部分では、フロントガラス1の製造方法が、例示的な方法で、その必須ステップにより説明されている。
【0040】
最初に、外側および内側の板ガラス2、3がガラスブランクから目的の台形の輪郭にカットされる。次に、内側の板ガラス3は、マスクを使用するスパッタリングにより、加熱層6がコーティングされるが、縁帯7はコーティングされない。フロントガラスのワイパーの休止または停止位置として機能する下の方の板ガラス領域が、コーティングされないことも可能なはずである。あるいは、最初にガラスブランクをコーティングして、次にそれから内側の板ガラス3がカットされることも可能なはずである。このように事前処理された内側の板ガラス3は、コミュニケーションウィンドウ22を形成するために非コーティング化され、これは、例えば、機械的に剥離する砥石を使用した連続生産で行われることが可能である。別の方法として、縁領域7、およびおそらくはフロントガラスのワイパーの休止または停止位置として機能する下の方の板ガラス領域も、非コーティング化により生産され得る。次いで、2つのバスバー10、11が、例えば、スクリーン印刷方法で、内側の板ガラス3上に印刷される。例えば、銀製の印刷用ペーストが印刷用ペーストとして使用されることが可能である。次いで、印刷用ペーストは事前に焼成され、それに続いて高温で板ガラス2、3を曲げて、接続リードを接着して、はんだ付けするほか、外側および内側の板ガラス2、3を共に配置し、接着剤層4によりそれらを接着する。
【0041】
外側および内側の板ガラス2、3を共に配置する前に、加熱ワイヤ15は、例えば、プレスツールの印加ヘッドによって、接着剤層4にプレスされることができ、また加熱ワイヤ15は、とりわけ、例えば、PVBの比較的低い融点に基づく簡単なやり方で、接着剤層4で熱固定を行うために、おそらく加熱される。別の方法では、接着剤層4に加熱ワイヤ15のための溝を設け、加熱ワイヤをそこに設置することも可能なはずである。加熱ワイヤ15は、この目的のために、ほどくことで徐々に供給されることが可能なように、実用的な仕方で糸巻きに巻かれている。第1および第2の接続リード12、13、13’の間の電気的接続は、例えば、超音波溶接プロセスにおいて導電接着剤によりはんだ付けまたは固定されることによって行われることができる。加熱ワイヤ15が絶縁ワニス層によってシールドされている場合では、接続リード12、13、13’との電気的接続は、はんだごてを使う単純なやり方で行われることが可能で、ワニス層は高温の作用により除去される。
【0042】
本発明は、電気的加熱層を備える透明な板ガラスを使用できるようにし、バスバーに電気的に接続されている箔導体に接続される、少なくとも1つのゾーン加熱素子が少なくとも1つの加熱フィールドフリー板ガラスゾーンに配置される。ゾーン加熱素子用に別個の外部導体なしで済ませることは可能であり、有利となる。
【符号の説明】
【0043】
1 フロントガラス
2 外側の板ガラス
3 内側の板ガラス
4 接着剤層
5 板ガラスの縁
5a、5a’ 板ガラスの長い縁
5b、5b’ 板ガラスの短い縁
6 加熱層
7 縁帯
8 加熱層縁
9 加熱フィールドフリーゾーン
10 第1のバスバー
11 第2のバスバー
12 第1の接続リード
13、13’ 第2の接続リード
14 加熱フィールド
15 加熱ワイヤ
16 中央領域
17、17’ 加熱ゾーン
18 第1のワイヤ端
19 第2のワイヤ端
20’ 第1の外部コネクター
21、21’ 第2の外部コネクター
22 コミュニケーションウィンドウ
23 接続セクション
24 第1の接触スポット
25、25’ 第2の接触スポット
図1