(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266683
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】固定径アポダイズド絞りの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03B 9/02 20060101AFI20180115BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20180115BHJP
G02B 27/58 20060101ALI20180115BHJP
G03B 9/04 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
G03B9/02 A
G02B5/00 A
G02B27/58
G03B9/04
【請求項の数】23
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-76712(P2016-76712)
(22)【出願日】2016年4月6日
(62)【分割の表示】特願2015-503255(P2015-503255)の分割
【原出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-164673(P2016-164673A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】61/616,152
(32)【優先日】2012年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/792,442
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502080368
【氏名又は名称】ピーピージー インダストリーズ オハイオ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ウォルターズ,ロバート,ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】タン,ロバート・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】セイバート,ケヴィン・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ブラックバーン,フォレスト・アール
【審査官】
辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−145052(JP,A)
【文献】
特開昭51−109009(JP,A)
【文献】
特開2005−062733(JP,A)
【文献】
特開2003−241252(JP,A)
【文献】
特開2002−040623(JP,A)
【文献】
特開2004−334014(JP,A)
【文献】
特開2005−004067(JP,A)
【文献】
特開2005−215225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/02
G02B 5/00
G02B 27/58
G03B 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定径アポダイズド絞りの製造方法であって、
a.前記固定径アポダイズド絞りのための光学基材を提供する工程と、
b.前記光学基材上にマスクを堆積する工程と、
c.前記光学基材上に、光学ダイを含有する材料を堆積する工程と、
d.前記光学基材上に堆積された前記光学ダイを含有する前記材料を硬化する工程と、を有し、
e.硬化により前記光学ダイを前記光学基材中に拡散させて、前記光学ダイが、前記マスクと前記光学基材との上方から見て、少なくとも部分的に前記マスクの下方に前記光学基材中に拡散し、それによって前記固定径アポダイズド絞りを形成する、
固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項2】
前記固定径アポダイズド絞りの有効径は、前記マスクの有効径と、前記eの前記拡散のレベルとによって決まる、請求項1に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項3】
前記マスクはほぼ前記固定径アポダイズド絞りを中心とする実質的に円形のマスクである、請求項1に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項4】
前記マスクは光学的に透明なコートである、請求項3に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項5】
前記マスクは前記固定径アポダイズド絞りの一部を形成する、請求項1に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項6】
前記マスクは実質的に円形の光学透明コートである、請求項1に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項7】
更に、平坦化工程を有する、請求項1に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項8】
前記平坦化工程は、前記マスクの少なくとも部分的除去を含む、請求項7に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項9】
前記平坦化工程は、平坦化層の追加を含む、請求項7に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項10】
複数の絞りを同時に形成するために複数のマスクが単一の光学基材に塗付される、請求項1に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項11】
前記光学基材は、UV硬化性材料、熱硬化性材料、及び熱可塑性材料からなるグループから選択されたものから形成される、請求項1に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項12】
前記光学ダイは、325〜850nmの光を吸収する材料から形成される、請求項1に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項13】
固定径アポダイズド絞りを製造する方法であって、
a.前記固定径アポダイズド絞りのための透明光学基材を提供する工程と、
b.前記固定径アポダイズド絞り用のダイ含有光学基材を前記固定径アポダイズド絞りのための前記透明光学基材を包囲する状態で提供する工程と、
c.前記ダイ含有光学基材からの光学ダイを、前記透明光学基材中に側方に向かって拡散させて前記固定径アポダイズド絞りを形成する工程と、
を有する、固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項14】
固定径アポダイズド絞りを製造する方法であって、
a.上部から底部へと径方向外方に分岐する分岐面を有する前記固定径アポダイズド絞り用の透明光学基材を提供する工程と、
b.前記固定径アポダイズド絞り用のダイ含有光学基材を、前記固定径アポダイズド絞り用の前記透明光学基材を包囲する状態でキャスティングする工程と、
を有する、固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項15】
前記固定径アポダイズド絞りの有効径は、前記透明光学基材の有効径と、前記分岐面の形状とによって決まる、請求項14に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項16】
複数の絞りが同時に形成される、請求項13又は14に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項17】
更に、平坦化工程を有する、請求項13、14及び16のいずれか1項に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項18】
固定径アポダイズド絞りを製造する方法であって、
a.基材を提供する工程と、
b.前記基材の上に、前記固定径アポダイズド絞り用の流動可能な透明光学基材を提供する工程と、
c.前記基材の上に、前記固定径アポダイズド絞り用の流動可能なダイ含有光学基材を前記固定径アポダイズド絞りのための前記透明光学基材を包囲する状態で提供する工程と、
d.前記透明光学基材と前記ダイ含有光学基材とを、前記基材の上で両者を拡げて、前記ダイ含有光学基材からの光学ダイを、前記透明光学基材中に拡散させて前記固定径アポダイズド絞りを形成するように同時に提供する工程と、
を有する、固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項19】
前記固定径アポダイズド絞りの有効径は、前記透明光学基材の有効径と、請求項13における前記行程c又は請求項18における前記工程dの拡散のレベルとによって決まる、請求項13又は18に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項20】
前記透明光学基材は実質的に円形であり、ほぼ前記固定径アポダイズド絞りを中心とする、請求項13〜15、18及び19のいずれか1項に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項21】
前記ダイ含有光学基材と前記透明光学基材とを分注するために一対の可動プリントヘッドが使用される、請求項18に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項22】
前記ダイ含有光学基材と前記透明光学基材とを分注するために一対の同軸プリントヘッドが使用される、請求項18に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【請求項23】
前記透明光学基材と前記ダイ含有光学基材とは、射出成型により形成される、請求項18に記載の固定径アポダイズド絞りの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年3月27日出願の「少なくとも1つの固定径アポダイズド絞りを備えるインデキシングステージを有する光学機構とその製造方法」と題する米国仮特許出願第61/616152号の利益を請求するものである。
【0002】
本発明は、一般に、少なくとも1つの固定径アポダイズド絞りを備えるインデキシングステージを有する光学機構とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
実質的に写真の出現以来、正しく露出された写真を得るに当たって、調節可能なカメラ設定が重要とされてきた。これらの調節は、「シャッタ速度」(「フィルム」の露出時間の調節)、「フィルム速度」(フィルム感度の選択)、レンズ絞り(レンズの絞りの調節)を含む。フィルムの露出に影響を与えることに加えて、これらの調節はその他の重要な利点を提供するものである。例えば、シャッタ速度調節は、写真家が高速で移動するシーンを時間的に凍結することを可能にする。フィルム速度は、写真家が画像において所望のきめを得ることを可能にする。レンズ絞り調節は、写真家が所望の被写界深度を得ることを可能にする。
【0004】
デジタルカメラにおいては、機械式シャッタは多くの場合電子シャッタ制御(撮像センサの積分時間の調節)に取って代わられるが、これは、撮像センサに入射する光の量を制御するためのみならず、関連する画像における所望の被写界深度を達成するためにも必須のツールであるレンズ絞り調節の必要性を無くするものではない。
【0005】
デジタルカメラ用のレンズ絞り調節の一つの一般的な形態は、機械式アイリス絞り又は機械式アイリスである。機械式アイリスは、調節可能な擬似円形ポリゴン絞りを形成するべく互いに対して移動可能な複数のブレードから構成される。多くの場合、これらのブレードは、機械式アイリスを調節するために相対移動可能な内側リングと外側リングとに取り付けられている。大半のフィルムカメラと、多くのデジタルカメラとは、機械式アイリス又は、その他なんらかの形態のレンズ絞り調節(たとえば、基本的な絞りホイール)を内蔵している。
【0006】
しかしながら、注目に値するいくつか例外、即ち、使い捨て式フィルムカメラ、非常に安価なデジタルカメラおよび多くの携帯電話、が存在する。これらの分野においてレンズ絞り調節を使用しない主要な理由はコストである。例えば、廉価な機械式アイリス構成はカメラ装置全体の小売価格のおそらく1%の1/2以下のコストのデジタルカメラの手ごろな部品であるが、この同じ廉価なアイリスコンポーネントは、使い捨てカメラのコストの1/3以上、又はコンピュータや携帯電話用途に意図されたカメラモジュールのコストの1/3以上である。従って携帯電話カメラ(携帯電話カメラモジュールとも呼ばれる)のほとんどすべてはレンズ絞り調節を持たない。
【0007】
携帯電話カメラは、もともと、伝統的なカメラに置き換わるものとして設計されたものではない。携帯電話カメラモジュールは、光の少ない条件下においてフラッシュ無しで許容可能な画像を作り出すように意図されたものであった。この理由により、それらは被写界深度を犠牲にして、感度を最大化するために大きな固定絞り(たとえば、f2.8)を有するレンズを備え、露出レベルを調節するために電子シャッタに依存するものであった。その結果、絞り調節無しのこれらの携帯電話カメラの作り出す画像は、不都合な撮影ノイズと読み出しノイズによる低光レベルで、そして、被写界深度不良とレンズ収差によるシャープネスの減少とによって高光レベルとにおいて、その画質には問題がある。
【0008】
しかしながら、携帯電話カメラモジュールは、それらの非常に大きな人気(既にその売上げはフィルムおよびデジタルカメラを上回っている)によって、今や、伝統的なカメラに取って代わろうとしている。人気に関する判断基準として、2010年の末において、全世界では53億人以上、又は世界人口の3/4以上、の携帯電話契約数があり、その内、アメリカが8.8億の契約数、ヨーロッパが7.4億の契約数、であった。携帯電話カメラの使用に関して、2010年12月の調査に依れば、米国での携帯電話ユーザの52.7%、ヨーロッパでは57.5%、日本では62.9%、が写真を撮るのに彼らの携帯電話装置を利用した。
【0009】
携帯電話カメラモジュールは、伝統的なカメラのコストのほんのわずかなコストで伝統的なカメラの画像品質に近づき、又は、匹敵することが求められる。この問題は、価格圧力と、より多くの画素数に対する市場の需要によっていっそう難しくなる。半導体技術の進歩に伴って、画像センサはよりシャープになり、画素は更に小さくなって、同じ感度を維持するためにはより大きな絞りのレンズが必要とされる。この必要性は、よりシャープなレンズ(より広い絞りによってより大きなレンズ収差が生じるため)と、より大きな被写界深度(より広い絞りによって被写界深度の減少が生じるため)に対する必要性と矛盾する。
【0010】
携帯電話カメラモジュールの改善を試みた二つの解決手段は、「リキッドレンズ」を使用する光学オートフォーカスと、画像処理アルゴニズムを使用する「位相マスク」アプローチである。リキッドレンズを使用する光学オートフォーカスの場合、被写界深度は増大しない。むしろ、焦点は単純に特定の距離に対して調節される。位相マスクアプローチの場合は、レンズのフォーカスは実際には劣化する。位相マスク(レンズ素子の一つの上に設けられる)は、大きな被写界深度全体に渡って比較的一定量の焦点ぼけをもたらす。その後、シャープネスは、デジタル的に画像処理アルゴリズムを使用することによって部分的に回復される。残念ながら、シャープネス回復アルゴリズムも、画像に大量のノイズをもたらす。
【0011】
これらの解決策のいずれも安価な調節可能レンズ絞りに対する必要性を真に無くするものではなく、携帯電話カメラモジュールに対するこの必要性を実現する適切な技術的具体化が存在しないことは明らかである。現在の機械式アイリスは、予想される10億の携帯電話モジュール市場を満足させるにはあまりに高価で、嵩高く、壊れやすくあまりにも消費電力が大きすぎる。機械式アイリスには、更に、それらの円形の絞りを通る回折によって小さな絞り設定、たとえば、f/5.6以上等の大きなf値の場合に画像シャープネスが大幅に劣化するというもう一つの重大な技術的欠陥がある。
【0012】
アポダイズド絞りは、回折を引き起こすシャープなエッジを最小化することによって小絞りサイズ(F/7+等の高いf値)での有害な回折作用を大幅に低減する。大きな絞りサイズ(F2.8以上)に対するアポダイズド絞りの利点も指摘されている。光センサ画素密度又は数の増大および/又は画素サイズの減少、に伴って、アポダイズド絞りはますます有利になる。
【0013】
ここに参考文献として合体させる米国特許第7585122号(特許文献1)等のように、特許文献においてこれらの欠陥に対応することを試みるいくつかの提案がなされてきた。前記米国特許は、少なくとも二つの電極と、これら電極間に電界を形成するために当該電極に対して電圧を印加する電気回路とから成る、携帯電話等のための電子機械調節可能絞りカメラを開示している。ここに参考文献として合体させる米国特許第7929220号(特許文献2)は、フォトクロミック材を使用して構成された調節可能なアポダイズドレンズ絞りを開示している。ここに参考文献として合体させる米国特許第6621616号(特許文献3)は、シャッタ、可変光透過フィルタ、そしてアイリスとして同時に使用可能な、カメラ用のエレクトロクロミック素子を提供する実施例を開示している。ここに参考文献として合体させる米国特許出願公開第20100134866号(特許文献4)は、印加電圧の振幅に応答する可変光透過率を有するエレクトロクロミックアポダイズド絞りを備える光学素子の広い概念を教示している。米国特許第6621616(特許文献3)号および/又は米国特許出願公開第20100134866号(特許文献4)に特に開示されているもののような従来技術の一般的なエレクトロクロミックアポダイズド絞り解決手段は、その複雑性により、効率的な大量生産のためにコスト的に有利に実施されないかもしれない。
【0014】
コストの問題に加えて、携帯電話は、通常、伝統的なデジタル又はフィルムカメラよりも遥かに乱暴な扱いを受けるので携帯電話環境においては耐久性が必要とされる。従って、携帯電話での実施を意図した設計においてはある程度の頑丈性が必要とされる。
【0015】
携帯電話等に見られるような、カメラの絞りを変化させるための低コストで、耐久性が高く、頑丈なメカニズムがいまだに求められている。本発明の課題は、カメラ絞りのための複数の別個のアポダイズド絞りを提供することが可能な光学素子と、当該光学素子の、携帯電話等の安価なカメラユニットに内蔵される効率的で効果的な製造に適した製造方法とを提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第7585122号
【特許文献2】米国特許第7929220号
【特許文献3】米国特許第6621616号
【特許文献4】米国特許出願公開第20100134866号
【発明の概要】
【0017】
本発明は、携帯電話等に見られるような、カメラ絞りを備えるカメラ用の光学機構を提供する。前記光学機構は、少なくとも二つの別個位置間で移動可能なインデキシングステージを有する。少なくとも1つの第1固定径アポダイズド絞りが前記ステージに取り付けられ、これは前記インデキシングステージの前記別個位置の一方において前記カメラ絞りとアラインメントされるように構成され、ここで、前記第1固定径アポダイズド絞りは、前記インデキシングステージの前記別個位置の他方においては前記カメラ絞りとアラインメントされない。前記機構は、前記ステージを前記別個位置のそれぞれの間において移動させるためのアクチュエータを備える。
【0018】
前記光学機構は、更に、前記ステージを各別個位置においてアラインメントするように構成された、リニア式又は回転式アクチュエータ等のアラインメント機構を更に備えることができる。前記ステージは、前記別個位置のそれぞれの間のリニア又は回転移動用に構成することができる。前記光学素子は、その非限定的一具体例において、前記ステージの種々の別個位置において、約F2.0〜約F11.0のカメラのFストップ値を提供することができる。一具体例において、前記ステージは、前記インデキシングステージのために、少なくとも二つ、三つ又は四つの別個位置を備えることができる。
【0019】
本発明の非限定的実施例による前記光学機構は、各固定径アポダイズド絞りが光学基材に拡散するダイを有するように提供できる。更に、各固定径アポダイズド絞りは、透明なトップコーティングを備えることができる。
【0020】
本発明の別の態様は、固定径アポダイズド絞りの製造方法を提供し、当該方法は、以下の工程を有する。即ち、前記アポダイズド絞りのための光学基材を提供する。前記基材上にマスクを堆積する。前記基材上に、光学ダイを含有する材料を堆積する。前記光学ダイを前記光学基材内に拡散させる。ここで、前記ダイは、前記マスクと前記基材との上方から見て、少なくとも部分的に前記マスクの下方に前記基材に対して拡散し、それによってアポダイズド絞りを形成する。
【0021】
本発明の一態様に依れば、固定径アポダイズド絞りを形成する前記方法は、前記アポダイズド絞りの有効径が、前記マスクの有効径と、前記ダイの拡散レベルとによって決まるように構成することができる。更に、前記マスクは、前記アポダイズド絞りの一部材を形成することができる。
【0022】
固定径アポダイズド絞りを形成する前記方法は、更に、平坦化工程を含むことができ、ここで、当該平坦化工程は、前記マスクの少なくとも部分的除去を含むか、もしくは、前記平坦化工程は平坦化層の追加を含む。
【0023】
本発明による固定径アポダイズド絞りを形成する前記方法は、簡単な大量生産を可能にし、複数のマスクを単一の光学基材に適用して複数の絞りを同時に製造する。
【0024】
本発明の別の態様による固定径アポダイズド絞りを製造する方法は以下の工程を有する。即ち、前記アポダイズド絞りのための透明な光学基材を提供する。前記アポダイズド絞り用のダイ含有光学基材を前記アポダイズド絞りのための前記透明光学基材を包囲する状態で提供する。そして、前記ダイ含有光学基材からの前記光学ダイを、前記透明光学基材に拡散させてアポダイズド絞りを形成する。
【0025】
本発明の別の態様による固定径アポダイズド絞りを製造する方法は以下の工程を有する。即ち、その透明光学基材の上部から底部へと径方向外方に分岐する面を有する前記アポダイズド絞り用の透明な光学基材を提供する。そして、前記アポダイズド絞り用のダイ含有光学基材を、前記アポダイズド絞り用の前記透明分岐面光学基材を包囲する状態で成形する。
【0026】
本発明の別の態様による固定径アポダイズド絞りを製造する方法は以下の工程を有する。即ち、前記アポダイズド絞り用の透明な光学基材を提供する。前記アポダイズド絞り用のダイ含有光学基材を前記アポダイズド絞りのための前記透明光学基材を包囲する状態で提供する。前記透明光学基材と前記ダイ含有光学基材とを、前記ダイ含有光学基材からの前記光学ダイを、前記透明光学基材に拡散させてアポダイズド絞りを形成するように同時に提供する。
【0027】
本発明のこれらおよびその他の利点は、それら全体を通じて類似の参照番号によって類似の部材を示す添付の図面を参照して、好適実施例の詳細説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一態様による固定径アポダイズド絞りを備える2ストップインデキシングステージから構成される光学機構を概略図示している。
【
図2】本発明の一態様による一対の固定径アポダイズド絞りを備える3ストップインデキシングステージから構成される光学機構を概略図示している。
【
図3】本発明の一態様による三つの固定径アポダイズド絞りを備える4ストップインデキシングステージから構成される光学機構を概略図示している。
【
図4A】本発明の一態様による拡散方法によって別個の開口サイズの一連のアポダイズド絞りを形成するための光学基材上の一連のハードコートマスクの概略平面図である。
【
図4B】
図4Aの光学基材上の一連のハードコートマスクの概略断面図である。
【
図5A】本発明の一態様による別個開口サイズの一連のアポダイズド絞りの拡散形成中における
図4Aおよび
図4Bの一連のハードコートマスクを有する光学基材に塗付されたダイの概略平面図である。
【
図5B】
図5Aの一連のハードコートマスクを有する光学基材に塗付された前記ダイの概略断面図である。
【
図6】
図5Aおよび5Bのダイ塗付後の前記一連のハードコートマスクを有する光学基材内の拡散したダイの概略断面図である。
【
図7A】別個の平坦化オプション後の
図6の光学基材内の拡散したダイの概略断面図である。
【
図7B】別個の平坦化オプション後の
図6の光学基材内の拡散したダイの概略断面図である。
【
図8A】本発明の別態様による拡散方法での、別個開口サイズを有する一連のアポダイズド絞りを形成するための初期の光学基材構造の概略平面図である。
【
図8B】
図8Aの一連のアポダイズド絞りを形成するための初期の光学基材構造の概略平面図である。
【
図8C】
図8Aおよび
図8Bのセットアップ後の前記光学基材内の拡散したダイの概略断面図である。
【
図9A】本発明の別の態様による成形方法での、別個開口サイズを有する一連のアポダイズド絞りを形成するための初期の光学基材構造の概略平面図である。
【
図9B】
図9Aの一連のアポダイズド絞りを形成するための初期の光学基材構造の概略断面図である。
【
図10B】前記
図10Aの一連のアポダイズド絞りを形成するためのダイおよび光学基材構造の概略断面図である。
【
図10C】平坦化工程後の
図10Aおよび
図10Bの一連のアポダイズド絞りを形成するためのダイおよび光学基材の概略断面図である。
【
図10D】
図10Aの構成から僅かに改造した一連のアポダイズド絞りを形成するためのダイと光学基材構成の概略断面図である。
【
図11A】本発明の別の態様による同時成形又はプリント方法でのアポダイズド絞りを形成するための初期の光学基材構成の概略平面図である。
【
図11B】
図11Aのアポダイズド絞りを形成するための初期の光学基材構成の概略断面図である。
【
図11C】
図11Aおよび
図11Bの前記同時成形又はプリント方法でのアポダイズド絞りを形成するための一体化光学基材構成の概略平面図である。
【
図11D】
図11Cのアポダイズド絞りを形成するための一体化光学基材構成の概略断面図である。
【
図12】本発明によって形成されたテスト用アポダイズド絞りのベンチテストの例1のテストの結果を示し、図面の右側のグリーンカウント値プロファイルに隣接させたアポダイズド絞りの画像を含む。
【
図14】本発明によって形成されたテスト用アポダイズド絞りのベンチテストの例2のテストの結果を示し、図面の右側のグリーンカウント値プロファイルに隣接させたアポダイズド絞りの画像を含む。
【
図16】本発明によって形成されたテスト用アポダイズド絞りのベンチテストの例3のテストの結果を示し、図面の右側のグリーンカウント値プロファイルに隣接させたアポダイズド絞りの画像を含む。
【
図18】従来技術のピンホール絞りをテストした結果の例示である。
【
図19】従来技術のピンホール絞りをテストした結果の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書および添付の請求項において、単数形は、一つの指示物に言及するものとして特に明確に記載されない限り複数を含むものであることが明記される。ここに提供される種々の実施例および例は、本発明の範囲に関してそれぞれ非限定的なものと理解される。
【0030】
本発明は、カメラ絞りを備えるカメラのための光学機構を提供するものであり、その三つの実施例が
図1−3に概略図示されるとともに以下に詳述される。各実施例の前記光学機構は、少なくとも二つの別個の位置の間で移動可能なインデキシングステージ12を有する。所望の別個の光学特性に応じて、前記ステージ12には任意の数の別個の位置を組み込むことができ、前記所望の別個の光学特性のうちの1つは、各別個のステージ位置に提供される。ここに概略図示されているような前記ステージ12は、光学的に透明な材料から形成することができる。あるいは、非光学的透明材料、たとえば、金属、によってステージ12を形成することも可能であり、その場合、カメラの絞りとアラインメントされる前記ステージ12の複数の別個位置は、それらを貫通する開口部を含むことができ、および/又は、前記アポダイズド絞り10は、前記ステージ12の挿入窓として形成することができる。
【0031】
本説明は、主として、カメラが任意の所望のf/ストップ範囲、たとえば、F/2.0サイズとF/11.0サイズのとの間で効率的かつ効果的に移動することを可能にするような、カメラ絞りのための別個の有効な絞り開口部を提供する別個のアポダイズド絞り10開口部サイズについて主として記載する。但し、本発明のアポダイズド絞り10は、各別個位置において更に別の別個の所望の特性を提供するために拡大レンズ(たとえば2xズームレンズ)および/又はフィルタ(たとえば、カラーフィルタ)等の光学装置と一体化することも可能である。これらレンズおよび/又はフィルタ自身の形成については本説明においてはこれ以上詳細に記載しない。
【0032】
少なくとも1つの固定径アポダイズド絞り10が前記ステージ12に取り付けられ、これは、前記インデキシングステージ12の前記別個位置の一つにおいて前記カメラ絞りと選択的にアラインメントされるように構成されている。下記のいくつかの実施例において、複数の別個の固定径アポダイズド絞り10を設けることができる。本開示は、種々の固定径を有する別個のアポダイズド絞り10を例示するが、但し、別個の光学装置と組み合わせて、同一の固定径を有する別個の絞り10を設けることも可能である。例えば、前記ステージ12上の二つの別個のアポダイズド絞り10は、一方がズームレンズ光学装置(たとえば4xズームレンズ)を備えて、同一の有効固定径(たとえば、例示的に、カメラ絞りに対する有効F/6開口を提供する)を有することができ、それによって、二つの同じサイズのアポダイズド絞り10が、それぞれ一方は4xズームレンズと共に有効F/6.0サイズを提供し、他方は光学装置無しで有効F/6.0サイズを提供するように構成できる。
【0033】
更に、前記別個絞り10は、ここで、本発明によるステージ12を形成するために最も効率的であるものとして記載されかつ、そのように考えられるものではあるが、但し、単数又は複数の別個のアポダイズド絞り10が前記ステージ12上に反復されたとしても本発明によるステージ12の作動をなんら妨げるものではない。例えば、多数の別個の絞り(たとえば10+)を備えるステージ12構成において、前記光学機構は、最も一般的な設定用のアポダイズド絞り10がステージ12に沿った複数の位置において反復されるならば、より効率的なものとすることができる。一般に、別個絞り10が、以下の例に示されるように、ステージ12上において一度のみ存在する場合に、より効果的かつ効率的であると考えられる。
【0034】
以下の説明から明らかなように、ステージ12上の各固定径アポダイズド絞り10は、前記インデキシングステージ12の前記別個位置の選択された他方の位置において前記カメラ絞りと選択的にアラインメントされない。
【0035】
本発明の前記光学機構は、一般に、前記ステージ12を前記別個位置のそれぞれの間で移動させるための、電気リニア又は回転式のアクチュエータ16を備えている。前記光学機構が、自動式電気リニア又は回転アクチュエータの代わりに、手動式のアクチュエータを備えることも可能であるが、但し、本発明の前記光学機構の最も望ましい用途においては、自動化アクチュエータ16が望ましいと想定される。
【0036】
次に、
図1に具体的に図示されている本発明の前記光学機構の例に言及すると、この図は、カメラ絞りとアラインメントされた時の一つの有効開口サイズに関連する固定開口の単一のアポダイズド絞り10と、それがカメラ絞りとアラインメントされた時にカメラの既存の絞りサイズに関連するオープンスペース14とを備える2ストップインデキシングステージ12を概略図示している。前記オープンスペースを利用することによって、前記ステージ12は、カメラのための一つの有効なF/ストップサイズとして本来のカメラ開口部を利用することが可能となる。もしもステージ12が、光学的に不透明な材料、たとえば、金属の基材から形成される場合、前記オープンスペース14は、前記ステージ12の開口部として、又は、光学的に透明な窓、として形成することができる。
【0037】
図1の例示の2ストップ又は2位置式ステージ12において、ソレノイド等のリニア移動機構16によって、前記ステージ12を二つの位置の間でインデックス移動(index)することができ、これらの位置の一つは、前記単一の絞り10がカメラ開口部とアラインメントし前記オープンスペース14が、第1有効カメラ絞り開口用のものではない状態を提供するものであり、前記位置の第2のものは、前記単一の絞り10がカメラ開口部とアラインメントせず前記オープンスペース14が、第2有効カメラ絞り開口(これは前記本来のカメラ開口部に等しい)用の前記カメラ開口部とアラインメントする状態を提供するものである。
【0038】
本発明の前記光学機構において、そして
図1に概略図示されているように、前記ステージは、図示のバネ付勢揺動式デテント部材20等の、機械式ストップと関連するアラインメント機構18を備えることができる。これらのアラインメント機構によって、前記ステージ12が、当該ステージ12の前記別個位置のそれぞれに関して前記カメラに対して適切に位置決めされることを確実にすることができる。
【0039】
図2は、別個のサイズの固定開口部の一対のアポダイズド絞り10と、カメラの既存の絞りサイズに関連するオープンスペース14とを備える3ストップ式インデキシングステージ12を概略図示している。この実施例は、カメラの有効開口が、本来のカメラ開口部から二つの代替の別個有効開口部サイズを介して変動することを可能にする三つの位置を図示している。従って、図示されているように、前記インデキシングステージ上にはちょうど二つの固定径アポダイズド絞り10が存在し、ここで、前記光学素子は、たとえば、前記別個位置の一つにおいて、前記ステージで約F/2.0〜約F/4.0のカメラのFストップ値を提供し、前記別個位置の第2の位置において前記ステージで約F/4.5〜約F/7.5のFストップ値を提供し、前記別個位置の第3の位置において前記カメラ絞りによって、約F/8.0〜約F/11.0のFストップ値を提供することができる。各位置に対して選択される前記特定の有効絞り開口サイズは、所望に選択可能であって、これらの具体例は本発明の広い多様性を例示することだけを意図するものである。
【0040】
図2の具体例は、前記絞り10の一つが前記カメラ開口部とアラインメントされるか、もしくは、前記オープンスペース14が前記カメラ開口部とアラインメントされる、位置の間で前記ステージ12をインデックス移動させることが可能なソレノイド等の自動リニア式移動機構16を備えている。前記ステージ12は、更に、図示のバネ付勢揺動式デテント部材20等の、機械式ストップと関連するアラインメント機構18を備えることができる。前記ステージ12は、前記アクチュエータ16のピン26に係合するスロット24によって枢支部22に取り付けられ、それにより、前記ステージ12の回転運動が前記リニア式アクチュエータ16によって許容されかつ駆動される、揺動部材として図示されている。
【0041】
図3は、別個のサイズの固定開口部の3つのアポダイズド絞り組10と、カメラの既存の絞りサイズに関連するオープンスペース14とを備える4ストップ式インデキシングステージ12を概略図示している。回転モータ等の回転移動機構16によって前記ステージ12を、前記絞り10の一つが前記カメラ開口部とアラインメントされるか、もしくは、前記オープンスペース14が前記カメラ開口部とアラインメントされる、位置の間でインデックス移動させることができる。前記ステージ12は、更に、図示のバネ付勢揺動式デテント部材20等の、機械式ストップと関連するアラインメント機構18を備えることができる。前記ステージ12は、ハブ又は枢支部22に取り付けられた回転部材として図示されている。
【0042】
図示される具体例は、
図1ではリニアアクチュエータ16を備えるリニア移動ステージ12を、
図2ではリニアアクチュエータ16を備える回転移動ステージ12を、
図3では回転アクチュエータ16を備える回転移動ステージ12、を図示している。これらの構成のいずれもが、いくつかのアポダイズド絞り10を備えることができる。前記具体的な移動機構16とステージ12の移動は、おそらくは、最終的な装置における空間的制約によって決められるものであって、これらは単に例示にすぎない。
【0043】
本発明の一非限定的実施例による前記光学機構は、各固定径アポダイズド絞り10が光学基材30に拡散されたダイを有するように構成することができる。更に、各固定径アポダイズド絞り10は、後述する、透明トップコート32および36を備えることができる。
【0044】
本発明の別の態様は、
図4A〜
図6に概略図示されているように、固定径アポダイズド絞り10を、効率的かつ効果的に製造する、たとえば、大量生産する、方法を提供し、当該方法は、
図7Aおよび
図7Bに図示されているような平坦化工程を含むことができる。当該方法は、後に詳述するように、以下の工程を有する。即ち、前記アポダイズド絞り10のための光学基材30を提供する。前記基材30上にマスク32を堆積する。前記基材30上に、光学ダイを含有する材料34を堆積する。そして、前記光学ダイを前記光学基材30中に拡散させる。ここで、前記ダイは、前記マスク32と前記基材30との上方から見て、少なくとも部分的に前記マスク32の下方に前記基材30中に拡散し、それによってアポダイズド絞り10を形成する。
【0045】
前記基材30は、その内部に選択されたダイが拡散することが可能な、多様な公知の光学材料から形成することができる。前記光学材料30用の非限定的な材料のリストは、UV硬化性(カチオン重合、アニオン重合、フリーラジカル)材、熱硬化性(熱硬化性−フリーラジカル、縮合重合体、アルコール/アミン+イソシアネート、等)材、非硬化性(熱可塑剤)−シロキサン、アクリレート、メタクリレート、ポリウレタン、ポリウレア、PMMA、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、を含む。前記マスク32は、類似のリストの材料から形成することができるが、その材料は、溶解係数によるか、又は、拡散係数によるかの如何に関わらず、前記コーティングの透過性に基づいてダイ抑制に対するバリアとして作用するべく選択されなければならない。実際には、前記マスク32および基材30用に適したこれらの材料は、多かれ少なかれ同じリストになるが、架橋密度/フレキシビリティ、および関連のパラメータの制御によって、それらの材料を、基材30用の拡散により適したものとし、もしくは、マスク32用には適合性が低い(又は、実質的には不適合)なものとすることが可能である。
【0046】
固定径アポダイズド絞り10を形成するための前記方法は、アポダイズド絞り10の有効径がマスク32の有効径と材料34からのダイの拡散レベルとによって決められるように構成することにができる。大半の実施例において、前記マスク32は、前記アポダイズド絞り10をほぼ中心とする実質的に円形のマスク32とすることができ、光学的に透明なコートとして形成することができる。更に、前記マスク32は、完成品のアポダイズド絞り10の一部を形成することも可能である。
【0047】
図面を参照すると、
図4Aおよび
図4Bは、別個の開口サイズの一連のアポダイズド絞り10を形成するための光学基材30に対する透明ハードコートマスク32の塗付を概略図示している。当該概略図示において、三種類の別個サイズの9つの絞り10が、本発明の拡散方法によって、前記基材30上に形成されている。各基材30を同じサイズの絞り10を備えて形成するほうがより効率的でありうるので、各基材は、必ずしも別個のサイズを有するものとする必要はない。前記透明コート又はマスク32は、プリントヘッドとも称することができる単数又は複数の分注ノズルによって堆積させることができる。前記透明コート32用の前記分注ノズルは、前記基材30に対して、相対移動可能であってもよいし、相対移動不能であってもよい。例えば、前記システムは、単数又は複数のノズルに対して前記基材30を移動させるインデックス移動加工片ホルダ又はコンベアを使用することができる。あるいは、前記マスク32用の前記分注ノズルを形成するプリントヘッドを、静止基材30上で移動するべくXYインデックス移動スライド上に設けることも可能である。前記堆積によってマスク32のサイズが制御される。前記透明コート又はマスク32は、蒸着(又はその他の堆積方法)された二酸化ケイ素(ガラス)であってもよい。前記マスク32を基材30上に堆積するためには多数の有効かつ低コストの方法が存在し、これらは単に例示例に過ぎない。
【0048】
図5Aおよび
図5Bは、
図4Aおよび
図4Bの透明ハードコートマスクされた光学基材30上のダイ層34の塗付を概略図示している。このダイ層34は、噴射、注入、その他の公知の塗付方法によって塗付可能である。前記ダイ含有層34には様々な公知のダイを使用することができる。原則的には、不要な光を除去するために、425〜650nmの光を十分に吸収する任意のダイ又はダイの組み合わせを使用することができる。適当な具体例は当業者に知られており、たとえば、“The Sigma−Aldrich Handbook of Stains, Dyes and Indicators, Floyd Green, 1990, Aldrich Chemical Company”を参照することができる。この特定の公知参考文献は、適当なダイとダイファミリの膨大な選択肢を有している。
【0049】
前記層34の堆積後、前記システムは前記ダイが基材30中に分散又は拡散することを許容するべく硬化される。
図6は、
図5Aおよび
図5Bのダイが前記光学基材中に分散してアポダイズド絞り10を形成していることを図示している。図示されているように、前記マスク32を設けることによってアポダイズド絞り10を基材に形成することが可能となっている。この時点において、前記絞り10は、従来の切断およびエッジ研磨技術を使用して、従来技術と同様に、基材30から切り離すことができる。
【0050】
図6の基材30からの個々の絞り10の分離の前に、前記絞り10の平坦化等の後表面処理を行ってもよい。
図7Aは、絞り10からハードコートマスク32を効果的に除去する研磨および/又はラッピング等の平坦化工程を更に含む
図6のアポダイズド絞り10を図示している。あるいは、
図7Bは、平坦化層36を追加する平坦化工程を更に含む
図6のアポダイズド絞り10を図示している。前記平坦化層36は、前記基材30およびマスク32に類似の公知の許容可能な光学材料から形成される。当該層36は、たとえば、スピンコーティング等の任意の公知の方法で塗付することができる。個々の絞り10は、最終表面処理の後に、基材30(および、それが設けられている場合には前記層36)の残り部分から、除去又は分離することができる。
【0051】
前記絞り10を個々のコンポーネント又は絞り10に分離して、これらをステージ12に取り付ける代わりに、前記基材30を、ステージ12の材料から形成し、それによって、絞り10がステージ12上に直接形成されるようにすることができる。例えば、
図4には、そのそれぞれのステージ12が4つの位置と3つの絞り12を備える三つのリニアに作動されるステージ12を示すことも可能であろう。その上での絞り10の形成後の前記三つのステージ12は、分離されるだけでよく、アラインメント機構18が追加されてアセンブリが完成する。従って、前記ステージ(単数又は複数)12を形成する材料として前記基材30を形成することによって、前記絞り10が基材30上に適宜離間配置されることを要件とする製造上の利点を提供することができる。あるいは、間隔の制約無しで多くの絞り10を大量生産し、個々の絞り10を後で別個のステージ12に取り付けることに関連するコストの節約が可能である。
【0052】
図8Aおよび
図8Bは、別個開口サイズの一連のアポダイズド絞りを形成するための本発明による別の分散方法の構成を概略図示している。この代替の「側方」分散方法は、各絞り10の中央部分を形成する実質的に透明な光学基材42と周囲のダイ含有光学基材44の提供から始まる。これら基材42および44とダイ用の適当な基材材料は、上述した基材30と層34のダイと同じである。
図8Aおよび
図8Bに図示されているような基材の提供は、多くのアセンブリ方法によって行うことができ、その内の一つは、層44に開口部を、材料層42からのインサートを、ダイカットし、材料42のインサートを材料44の開口部に配置する方法である。その他の許容可能な大量生産技術も実施可能である。
【0053】
図8Aおよび
図8Bに図示されているような絞り10のコンポーネント(隣接する層42と44)の提供の後、前記方法は、前記ダイ含有光学基材44から光学ダイを前記透明光学基材42中に拡散させてアポダイズド絞り10を形成する工程を有する。
図8Cは、
図8Aおよび
図8Bの基材44のダイを光学基材42中に側方から分散させてアポダイズド絞り10を形成する工程を図示している。絞り10は従来方法によって分離するだけでよい。平坦化層の追加、又は、フィルタ等の光学層の追加、又は、その他の処理、等の絞り10の分離の前のその後の処理も、適宜、行うことができる。
【0054】
本発明は、更に、
図9A〜
図10Dに概略図示される固定径アポダイズド絞りを製造するための成形又は注入キャスティング方法を含み、これは、透明光学基材52の上部から底部へ径方向外方に分岐する複数の面を有するアポダイズド絞り10のための透明光学基材52を提供する工程を有する。前記形状は、凸、凹、直線、又はこれらの組み合わせとすることができる。凹面を備える上面が平坦な円錐台形状の基材52がこれらの図面に図示されているが、様々な形状のものでも十分である。例えば、涙滴型が効果的で経済的に形成可能であるかもしれない。
図9Aおよび
図9Bは、別個開口サイズの一連のアポダイズド絞り10(この図面の三種類のサイズの6つの絞りは例示にすぎない)を形成するための本発明によるこの注入成形又はキャスティング方法の構成を概略図示している。当該方法は、記載したように、傾斜面(凹、凸、直線又はそれらの組み合わせ)を備える各絞り10の中央部分を形成する実質的に透明な光学基材52から始まる。前記基材52は、図示のように別体のベース30上に設けることも可能であるし、あるいは、
図10Dに関連して後述される実施例において前記ベース30’の一部であってもよい。当該基材52を形成する材料は、前記基材30又はマスク32に関連して上述したもと同じである。
【0055】
図9〜
図10のキャスティング方法は、前記アポダイズド絞り10用のダイ含有光学基材54を、前記アポダイズド絞り10用の透明分岐面光学基材52を包囲する状態にキャスティング又は注入成形することを含む。
図10Aおよび
図10Bは、
図9Aおよび
図9Bのベース30および基材52に対して前記注入成形ダイ含有光学基材54を追加して本発明のアポダイズド絞り10を形成することを図示している。ここでも、スピンコーティング等を含む多くの成形技術を使用することができる。この方法において、前記ダイは、層54から52中へと分散される必要はなく、材料は、上述したマスク層32として有効に形成することができる。前記基材52の傾斜面によって、完成品の絞り10においてアポダイズド作用が作り出される。
【0056】
絞り10は従来方法によって分離するだけでよい。平坦化層の追加、又は、フィルタ等の光学層の追加、又は、ベース30の除去等のその他の処理、等の絞り10の分離の前の(又はその後の)後処理も、行うことができる。
図10Cは、
図10Aおよび
図10Bのモールド形成されたアポダイズド絞り10からのベース30の除去を図示している。
【0057】
図10Dは、前記基材52がベース30’と一体である
図10A、
図10Bに類似の本発明によるアポダイズド絞り10をキャスティングための実施例を図示している。これは基材52とベース30’とを成形すること、又は、基材型52をベース30’に加工又はプレスすること、によって達成することができる。
【0058】
本発明は、更に、本発明の固定径アポダイズド絞り10を製造するための同時形成方法を含む。この方法は、
図11A〜
図11Dに図示され、これは以下の工程を含む。アポダイズド絞り10のための透明光学基材62を提供する。アポダイズド絞りのためのダイ含有光学基材64を前記アポダイズド絞り用の前記透明光学基材を包囲する状態で提供する。そして、前記透明光学基材62と前記ダイ含有光学基材64とを、前記ダイ含有光学基材64からの光学ダイを前記透明光学基材62中に効果的に拡散させてアポダイズド絞り10を形成するように、同時に提供する。
【0059】
上述した処理と同様、固定径アポダイズド絞り10を形成する前記同時成形方法は、前記アポダイズド絞り10の有効径が、前記透明光学基材の有効径と、前記拡散レベルとによって決まるように構成する。更に、前述した他の方法と同様にこの実施例において図示されているように、前記透明光学基材62は、実質的に円形であり、ほぼ前記アポダイズド絞り10をその中心としている。但し、カメラ絞りによっては、そして絞り10の意図される作動に応じて、本発明によって任意の形状のアポダイズド絞りを形成することができる。
【0060】
図11A〜
図11Dの同時成形構成の前記「拡散」処理は、上述したものと僅かに異なりうる。なぜなら、この「拡散」は、それらが最終的に構成に設定される前の二つの材料62および64の混合であってもよいからである。更に、この同時成形は、キャスティング式成形あるいは、注入式成形処理によるものであってもよい。
【0061】
具体的には例示的に、
図11A〜
図11Dは、透明の流動可能な中央基材62が、
図11Aおよび
図11Bに図示されているようなそれらの間に初期definition又は空間66が介在する状態でベース30上に載置されるアポダイズド絞り10を製造するための同時形成方法を図示している。前記両材料62および64の設定中、前記空間66は、これら基材62および64の混合物によって満たされて
図11Cおよび
図11Dに図示されるようなアポダイズド絞りを形成する。この同時成形は、前記ダイ含有光学基材64と前記透明光学基材62とを同時に分注するために使用される一対の可動プリントヘッドの使用を含む。プリントヘッドを高速で移動することによって、所望の混合を可能にするのに十分迅速に材料64のリングを置くことが可能となる。あるいは、前記ダイ含有光学基材と透明光学基材とを分注するために一対の同軸上の分与ノズルを使用することも可能である。
【0062】
絞り10は従来方法によって分離するだけでよい。平坦化層の追加、又は、フィルタ等の光学層の追加、又は、その他の処理、等の絞り10の分離の前のその後の処理も、所望の場合、行うことができる。
【0063】
固定アポダイズド絞り10のベンチテスト例
【0065】
4.8gのl−メチル−2−ピロリジノン、9.7gのテトラヒドロフルフリルアルコール、11.4gのジエチレングリコールジメチルエーテル、6.5gのプロピレングリコールブチルエーテル、及び4.0gのヒドロキシプロピルセルロースを撹拌機付きの適切な容器に投入した。これらの材料を、溶液が均一になるまで約2時間混合した。
【0067】
撹拌機付きの適切な容器には、10.0gの膨潤樹脂及び0.30gのスダンブラックを添加した。当該混合物を60℃で60分間撹拌した。
【0069】
BPA 2EO DMA(4.0g)、BPA 30EO DMA(6.0g)、AIBN(0.015g)を撹拌機付きの適切な容器に投入した。この混合物を2時間撹拌してAIBNを溶解させた。その後、溶液を真空チャンバ内の減圧下で脱気した。
【0071】
32.4gのガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、345.5gのメチルトリメトキシシラン、292gの脱イオン水(7kgの水に対して1gのHNO
3)、228gの1−メトキシ−2−プロパノル、0.45gのTMAOH(MeOH中25%の水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)、BYK306(2.0グラム)を撹拌機付きの適当な容器に投入した。溶液を均一になるまで撹拌した。
【0073】
二つのガラス顕微鏡スライド間に500μmプラスチックガスケットを使用してガラス鋳型を組み付けた。約1mlのモノマ調合物を注入するために3mlのシリンジを使用して鋳型に当該モノマ調合物を充填した。前記モノマ調合物を120℃で2時間硬化させその後、室温まで冷却した。その後、透明な2”x3”のポリマフィルムを前記ガラススライドから分離した。前記マスキング溶液を、AST Products社のVCA 2500 VEビデオ接触角システムを使用して、前記透明なポリマ基材上に別個の小滴として塗付した。三枚のシートのそれぞれに、5列の3小滴を互い異なる小滴サイズ(0.3, 0.5および0.7μL)でプリントした。マスキング溶液のこれら小滴を100℃で60分間、硬化させた。
【0074】
約1.5mlのダイ膨潤樹脂を、前記フィルムに対して、1200RPMの15秒間のスピンコーティングによって塗付した。コーティングされたサンプルを石鹸と水で洗浄し、その後、フィルムを10重量%NaOH溶液に浸漬し音波処理によって60℃に加熱してマスキング溶液小滴を除去した。これらのフィルムを、小片(各小片に3つの絞り)にカットし、その後、拡散速度とアポダイズド絞りのサイズを異ならせるために、拡散処理を、前記例において報告した互いに異なる時間、継続した。
【0076】
撮像のために選択された絞りは、Olympus SZH10ズームステレオ顕微鏡を使用して、前記絞りを通して1 x 1mmのグリッドを見た時、明らかな画像歪を示さなかった。設定は1.5x対物、2.0xズーム、であった。2/3”カメラセンサに適応するために光路中の二つの伝達光学素子2.5 xおよび0.3xを使用して、カメラを通して4.45mm x 3.5 mmの被写界深度を得た。
【0078】
AVT Stingray 145CデジタルカメラをOlympus SZHズームステレオ顕微鏡にマウント(Cマウント)して45xの倍率にして、画像を得た。側方からの迷光をカットアウトするために、サンプルを、5.1mmの絞りを有する専用ホルダによって位置保持した。最大の被写界深度を得るために顕微鏡の絞りを6にセットした。カメラを、下記の設定を有するカメラに含まれるAVTsソフトウエアを使用してセットアップした。露出時間=115ms(50マイクロ秒*2300ステップ)、ホワイトバランスは固定された。RAW16フォーマットで撮影毎に平均8の画像で高S/N比をONにセットした。迷光、特に、暗撮像時における、を除去するために、前記オリンパス社顕微鏡とアイピースを、ThorLabs社の遮光材でカバーした。暗撮像を、手動シャッタを光源と顕微鏡ステージ上のサンプルとの間で閉じることによって収集した。
【0079】
データを、WaveMetrics routines社の特注IGOR PRO(登録商標)を使用して処理した。
【0080】
様々な幅の固定アポダイズド絞を以下のようにして得た。強度プロファイルは、水平方向又は垂直方向に抽出された。この情報から暗レベルを減算し、S/N比を改善するためにいくつかの「ボックスカー型」平均化(8画素)を行った。画像センサに対するグリーン応答のプロファイルを、ガウス関数で曲線適合させた(curve fit with a Gaussian function)。Igorの曲線適合からのガウス幅は、標準偏差の2の平方根(√2)、即ち、1.4142倍である。ビームウェストを得るために、前記幅を、1.4142で割って、その後、2を掛けた。
【0081】
前記画像センサのグリーン応答の透過プロファイルを、ポリマフィルムの代わりにガラススライドの参照画像と、暗画像(手動シャッタ閉じ)と各サンプルのサンプル画像画像(サンプル定位置)を撮ることによって計算した。前記画像センサのグリーン応答の透過プロファイルは、下記の式と画像のプロファイルにまたがるデータ(下の等式を参照)を使用して計算された。透過画像が計算され、透過グリーンプロファイルが、グリーンカウント値プロファイルとして同じ座標軸に沿って抽出された。
【0082】
透過=(サンプル画像−暗撮像)/(参照画像−暗画像)
【0083】
例1(2010−FRB−61)は
図12〜
図13に示されている。
【0084】
アポダイズド部分の画像は図の左側、グリーンカウント値プロファイルは
図12の右側である。小滴サイズは0.3マイクロリットルであり、膨潤時間は2時間であった。グリーン応答のビームウェスト(カウント値)は0.88mmであった。
【0085】
ビームウェストを、カウントプロファイルをIgorProのガウス関数で曲線適合することによって得た。ガウス幅パラメータを、ガウス幅に2/√2をかけることによってビームウェストに換算した。これによって画素単位でのビームウェストが得られた。これらの画素を、1x1mm較正格子を使用して画素/ミリメートル(この場合は303画素/mm)の数を計算することによってmmに換算した。前記部分にまたがる透過プロファイルを
図13に示す。
【0087】
小滴サイズは0.5マイクロリットルであり、膨潤時間は8時間であった。グリーン応答のビームウェスト(カウント値)は1.21mmであった。前記部分にまたがる透過プロファイルを
図15に示す。
【0089】
小滴サイズは0.7マイクロリットルであり、膨潤時間は8時間であった。グリーン応答のビームウェスト(カウント値)は1.21mmであった。前記部分にまたがる透過プロファイルを
図17に示す。
【0090】
「通常の」非アポダイズド絞りの比較例は、
図18および19に図示の1000μ径のピンホール絞り(エドムンドオプティクス)である。前記部分にまたがる透過プロファイルを
図19に示す。
【0091】
以上、本発明をその特定の実施例の具体的詳細を参照して説明した。そのような詳細は、それらが添付の請求項に含まれている場合を除き、本発明の範囲に対する限定と見なされてはならない。本発明に対する多くのバリエーションが当業者には明らかであろう。そして、これらのバリエーションは、本発明の要旨および範囲から逸脱するものではない。本発明の範囲は、添付の請求項とその均等物とによって定義されるものである。