【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、風または水からエネルギーを取り出すアッセンブリと、前記アッセンブリを支持する浮体と、を備え、流体エネルギーの少なくとも一つとして風力を利用する浮体式流体力利用システムであって、前記アッセンブリは、その重心が水面下に配置されていると共に、前記アッセンブリは、流体力を受ける受力部と、前記受力部を支持する支柱と、を有し、前記浮体に対して前記支柱の中心軸回りに回転可能に支持され、前記受力部は、空中で風力を受ける受風部を含んで構成され、前記支柱は、前記受風部を支持する上支柱と、水面下に配置されたバラストを支持する下支柱と、を備えてなり、前記上支柱と前記下支柱とは、前記支柱の中心軸に関して剛な状態で、ベアリングを介して相対的に同軸回転可能に連結されて構成されていることを特徴とする。
あるいは、本発明は、風または水からエネルギーを取り出すアッセンブリと、前記アッセンブリを支持する浮体と、を備え、流体エネルギーの少なくとも一つとして風力を利用する浮体式流体力利用システムであって、前記アッセンブリは、その重心が水面下に配置されていると共に、前記アッセンブリは、流体力を受ける受力部と、前記受力部を支持する支柱と、を有し、前記浮体に対して前記支柱の中心軸回りに回転可能に支持され、前記受力部は、空中で風力を受ける受風部と、水平軸水車又は垂直軸水車を含んで構成され、前記水平軸水車又は前記垂直軸水車は、水面下に配置されてバラスト又はその一部として機能し、前記支柱は、前記受風部を支持する上支柱と、水面下に配置されたバラストを支持する下支柱と、を備えてなることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、アッセンブリは、その重心が水面下に配置されているので、アッセンブリは流体力を受けると傾斜するが、水面下にある重心にかかる重力が揺動軸の支持部を中心に傾斜を戻そうとする復元力を発生する。この復元力は傾斜が大きくなるに従い大きくなり、失われることはないので、アッセンブリ自身がアッセンブリの転倒モーメントに対抗することができる。
なお、受力部としては、風を受けるセイル、固定翼、水平型あるいは垂直型風車、潮流力を受ける潮流力セイル、キール、水平型あるいは垂直型水車などを利用することが考えられる。
【0015】
また、前記アッセンブリは、ピンジョイント、ユニバーサルジョイント、ピロボール型球面軸受及び弾性体支持機構のいずれか一つを介して、前記浮体に対して揺動可能に支持されている構成としてもよい。
【0016】
このような構成によれば、揺動を許容しながら大きな重量のアッセンブリを簡便、確実に浮体に支持することができる。
【0017】
また、前記アッセンブリは、前記浮体に対して前記支柱の中心軸回りに回転可能に支持されている構成としてもよい。
【0018】
このような構成によれば、受力部が回転が必要なタイプの場合に、アッセンブリ全体を一体に組み上げたまま、回転を許容することができる。
【0019】
また、前記流体エネルギーの少なくとも一つとして風力を利用する浮体式流体力利用システムであって、前記受力部は、空中で風力を受ける受風部を含んで構成され、前記支柱は、前記受風部を支持する上支柱と、水面下に配置されたバラストを支持する下支柱と、を備えてなる構成としてもよい。
【0020】
このような構成によれば、受力部は、空中で風力を受ける受風部を含んで構成され、前記支柱は、前記受風部を支持する上支柱と、水面下に配置されたバラストを支持する下支柱と、を備えて構成されるので、浮体を貫通するように配置した支柱で受風部とバラストを支持しながら、アッセンブリ全体を回転可能に支持することができる。
なお、例えば受風部が固定翼である場合、風向に合わせて受力部の向きを変える必要があるが、水中でバランスをとるバラストを円柱状あるいは球状(支柱の回転軸に対して回転対称な形状)としておけば、受力部を空中に保持する上支柱とバラストを水中に保持する下支柱を一体に構成することができる。
【0021】
また、前記上支柱と前記下支柱とは、前記支柱の中心軸に関して剛な状態で、ベアリングを介して相対的に同軸回転可能に連結されている構成としてもよい。
【0022】
かかる構成によれば、前記上支柱と前記下支柱とは、前記支柱の中心軸に関して剛な状態で、ベアリングを介して相対的に同軸回転可能に連結されているので、上支柱と受力部が回転していても下支柱とバラストは回転しないように構成することができる。そのため、例えば、下支柱とバラストが浮遊物を巻き込むことを防止することができる。また、例えば、水面上に固定翼を設けると共に、水面下にキールとバラストを設けている場合でも、それぞれを最適な角度に保つことができる。
【0023】
また、前記受力部は、水平軸風車又は垂直軸風車を含んで構成されているのが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、受力部を水平軸風車又は垂直軸風車で構成した場合でも、アッセンブリの重心が水面下に配置されているので、転倒モーメントに対抗することができるとともに、浮体の傾斜や大型化を抑制することができる。
【0025】
また、前記受力部は、水平軸水車又は垂直軸水車を含んで構成され、前記水平軸水車又は前記垂直軸水車は、水面下に配置されてバラスト又はその一部として機能するように構成してもよい。
【0026】
かかる構成によれば、受力部を水平軸水車又は垂直軸水車で構成した場合でも、アッセンブリの重心が水面下に配置されているので、転倒モーメントに対抗することができるとともに、浮体の傾斜や大型化を抑制することができる。
また、水平軸水車又は垂直軸水車が、バラスト又はその一部として機能するので、別途バラストを設ける必要がなく、構造の簡素化を図ることができる。さらには、支柱の上下に風車と水車を設ける構成とすることができる。
【0027】
また、前記上支柱と前記下支柱とは、所定の相対的回転関係を保って同軸回転するように、ギアシステムを介して互いに連結されているとともに、前記浮体に対して相対回転可能かつ揺動可能に支持されている構成としてもよい。
【0028】
このような構成によれば、上支柱と下支柱とがギアシステムを介して互いに連結されることにより、両者が所定の相対的回転関係を保って同軸回転するので、設計潮流速と設計風速が異なる場合に風車と水車をそれぞれの効率のよい回転数で回転させながら両方のエネルギーを取り出す構成とすることができる。例えば、受風部は垂直軸風車、バラスト部は垂直軸水車として構成し、上支柱と下支柱を、軸線は剛なままに、ベアリングと遊星ギアシステムまたは差動ギアシステムを介して連結し、下支柱と垂直軸水車が1回転する間に上支柱と受風部が複数回回転するように構成すれば、両方のエネルギーを効率よく取り出すことができる。
【0029】
また、前記上支柱と前記下支柱とは、所定条件下で前記上支柱及び前記下支柱のうちの一方の回転を他方に伝達し、他の条件下で前記上支柱及び前記下支柱のうちの一方の回転を他方に伝達しない機構を有している構成としてもよい。
【0030】
このような構成によれば、上支柱と下支柱との間に例えばラチェットギア、クラッチ、ビスカスカップリング、トルクリミッタ等を組み込むことによって、相互回転を切り離したり、回転の伝達を一方通行にしたり、過回転を防止したり相互回転をロックしたりすることができる。
【0031】
また、前記アッセンブリは、前記受力部の回転から回転エネルギーを取り出す回転エネルギー取出部を備え、前記上支柱と下支柱とは、互いに同軸逆回転させるように構成され、前記回転エネルギー取出部は、前記上支柱及び下支柱から回転エネルギーを取り出す際に生じるトルクが互いに打ち消されるように配置されている構成としてもよい。
【0032】
このような構成によれば、上支柱と下支柱とが、互いに同軸逆回転するように構成され、回転エネルギー取出部が、エネルギーを取り出す際に生じるトルクが互いに打ち消されるように取り付けられているので、浮体の回転や浮体の係留システムの負担を抑制することができる。
【0033】
さらに詳しく説明すると、例えば、水車が上から見て例えば時計回りに回転する際そのエネルギーを浮体に取りだすと浮体をも時計まわりに回そうとするトルクが生じる。同様に、風車の垂直軸回転もそこからエネルギーを取り出す際には浮体を一緒に回転させようとするトルクが生じる。これらの場合、浮体が回転しその係留システムがひねられ、場合によっては浮体側面に巻き取られて張力が上がり、前記トルクに対抗する反トルクを発生してバランスするまで浮体の回転は止まらず、係留システムの構成要素に過大な曲げや疲労、摩耗を生じることになる。そこで、本発明のように、例えば垂直軸水車が設けられた下支柱と垂直軸風車が設けられた上支柱とが必ず逆回転するように、例えば風車及び水車の翼の進行方向を設定したり、上支柱と下支柱の間に逆回転ギアシステムを介設したりすれば、トルクはお互いに打ち消しあい、問題を解消または低減することができる。
【0034】
また、前記回転エネルギー取出部は、ローターとステーターとを備える発電機であり、前記発電機は、前記上支柱及び前記下支柱のいずれか一方に前記ローターを接続し、他方に前記ステーターを接続し、前記ローターと前記ステーターの差動により発電する構成としてもよい。
【0035】
このような構成によれば、回転エネルギーを電力に変換して取り出そうとする場合に、上支柱と下支柱のどちらか片方にローターを接続すると共に、他方にステーターを接続し、差動により発電するように構成すれば、トルクを相殺させるとともに相対的に高い回転数となって、例えば発電機の極数を減らしてより小型の発電機を使用することができる。
【0036】
また、前記受力部は、揚力型の垂直軸風車と抗力型の垂直軸水車とを含んで構成され、前記垂直軸風車は、前記垂直軸水車の回転によって起動する構成としてもよい。
【0037】
このような構成によれば、一般に自己起動性に乏しい揚力型の垂直軸風車を、比較的起動性のよい抗力型の垂直軸水車によって起動させることができる。また、垂直軸水車は水面下に設けられているので、垂直軸風車にあたる風流が乱れることがなく、風車の回転効率の低下を抑制することができる。
【0038】
さらに詳しく説明すると、一般に垂直軸風車は、ダリウス型に代表される揚力型の風車の効率がよく、またどの風向からの風でも何ら調整する必要がないという利点があるが、初動時に回転を与えないと自己起動はできないという欠点がある。これを解決するものとして、風上と風下等の位置によって迎角を変えるリンク機構を加えて自己起動を可能にしたジャイロミル型風車もあるが、風向や、回転速度と風速との関係によっての調整を必要とし、かつ機構が手の届かない位置に搭載されるため、洋上ではメンテナンスが難しいという欠点がある。ダリウス型を主ローターとした上で、効率は低いが起動特性のよいサボニウス型等の風車を組み合わせてダリウス型風車の内側に設置し、自己起動力不足を補う方式も実用化されているが、サボニウス型風車がダリウス型風車にあたる風流を乱して効率を下げるという欠点がある。本発明では、例えば風車にダリウス型を使用し、水面下の潮流力にサボニウス型を使用してダリウス型風車を起動することができる。このように構成すれば、サボニウス型水車がダリウス型風車にあたる流体流を乱すことはない。
【0039】
また、前記受力部は、揚力型の垂直軸風車と抗力型の垂直軸水車とを含んで構成され、前記垂直軸水車は、増速装置を介して前記垂直軸風車に連結され、前記増速装置は、垂直軸風車の回転速度が前記垂直軸水車の増速後の回転速度以下の場合には前記垂直軸水車の回転を前記垂直軸風車に伝達し、前記垂直軸風車の回転速度が前記垂直軸水車の増速後の回転速度よりも大きい場合には前記垂直軸水車の回転を前記垂直軸風車に伝達しない構成としてもよい。
【0040】
このような構成によれば、垂直軸風車の回転速度が垂直軸水車の増速後の回転速度以下の場合には垂直軸水車の回転が垂直軸風車に伝達されるので、揚力型の垂直軸風車の起動性を高めることができる。また、垂直軸風車の回転速度が垂直軸水車の増速後の回転速度よりも大きい場合には垂直軸水車の回転が垂直軸風車に伝達されないので、垂直軸水車が抵抗になることがない。
【0041】
さらに詳しく説明すると、一般的に潮流の設計速度は風の設計風速より格段に遅く、更にサボニウス型ローターはローターの最大径部の周速が流体速度と同程度で効率がよいのに対しダリウス型ローターは周速が風速の4〜6倍程度で効率がよいため、サボニウス型水車の軸回転は増速してダリウス型風車の軸回転に伝えるのがよく、また風速が上がった場合には風車軸の回転は水車がブレーキにならないよう回転の伝達を切り離すか一方通行にするのがよい。なお、潮流速は一般にかなり遅いが、水は空気の800倍近い比重を持つため、空中に設置される起動用サボニウス風車と同程度の大きさの起動用サボニウス水車を水中に設置すれば空中のダリウス型風車を起動することができる。このような構成は、潮流は流速が遅いものの比較的多くの時間流れており、風速は吹けば速いが止むことが多く、風向が一定ではない等の特徴を持つ日本近海含む海域では特に有用である。
【0042】
また、前記アッセンブリは、前記アッセンブリの自重と釣り合う程度の浮力を有しているとともに、前記浮体に対して相対的に上下動可能に支持されており、前記アッセンブリと前記浮体との相対的上下動からエネルギーを取り出す上下動エネルギー取出部を備える構成としてもよい。
【0043】
このような構成によれば、アッセンブリは、アッセンブリの自重と釣り合う程度の浮力を有しているとともに、浮体に対して相対的に上下動可能に支持されているので、両者に作用する浮力が波により変動すると、それに対するそれぞれの浮体の追従性の差によって相対的に上下動する。そして、上下動エネルギー取出部によって、浮体とアッセンブリの相対的上下動からエネルギー(波浪エネルギー)が取り出されることになる。
なお、アッセンブリは比較的重量が大きく、また水面貫通部が比較的細いために喫水変動による浮力変化が比較的少なく、長い周期で上下に揺れる一方、浮体の方は比較的重量が軽く、かつ水面貫通部が大きいため波浪によく追従するので、波浪中で相対的上下動が生じる。
【0044】
また、前記上下動エネルギー取出部は、トランスレーターとステーターとを備えるリニア発電機であり、前記リニア発電機は、前記アッセンブリ及び前記浮体のいずれか一方に前記トランスレーターを接続し、他方に前記ステーターを接続し、前記トランスレーターと前記ステーターの差動により発電する構成としてもよい。
【0045】
このような構成によれば、上下動エネルギー取出部は、トランスレーターとステーターとを備えるリニア発電機であり、リニア発電機は、アッセンブリ及び浮体のいずれか一方にトランスレーターを接続し、他方にステーターを接続しているので、アッセンブリと浮体の相対的上下動から直接発電することができる。
【0046】
また、上下動エネルギー取出部は、ボールねじ、ラックアンドピニオン、コンロッドとクランク機構及びジャイロのいずれか一つからなる回転力変換機構を備えてなる構成としてもよい。
【0047】
このような構成によれば、ボールねじ、ラックアンドピニオン、コンロッドとクランク機構、またはジャイロなどの回転力変換機構によって、上下動が回転に変換されるので、上下動エネルギーをより効率のよい回転型の発電機での発電に利用することができる。
【0048】
また、前記受力部は、揚力型の垂直軸型風車及び揚力型の垂直軸水車の少なくともいずれか一つを備え、前記回転力変換機構によって得られた回転力によって起動する構成としてもよい。
【0049】
このような構成によれば、回転力変換機構によって得られた回転力をダリウス型風車やダリウス型水車に伝えて、これらの起動に利用することができ、かつ風力エネルギーや潮流力エネルギーをひとまとめにして回転型発電機で発電することができる。
【0050】
また、本発明は、前記した浮体式流体力利用システムを用いた風力推進船であって、前記浮体は、船体であり、前記受力部は、空中で風力を受ける受風部を含んで構成され、前記支柱は、前記受風部を支持する上支柱と、水面下に配置されたバラストを支持する下支柱と、を備え、水面下に配置され、前記受風部に受けた風力によって略水平軸回りに回転するプロペラを備えることを特徴とする。
【0051】
このような構成によれば、受風部に受けた風力によって略水平軸回りに回転するプロペラによって、船体を推進することができる。このとき、受風部と支柱とからなるアッセンブリの重心は水面下に配置されているので、十分な推力が得られるほど大きな受力部を持つ風車を設置しても、十分な復元力を持つ安全な風力推進船とすることができるとともに、船体の傾斜と大型化を抑制することができる。
なお、アッセンブリは、航行中は、アッセンブリの揺動方向を拘束する拘束装置によって、船体のロール方向のみに揺動可能なように拘束されているのが好ましい。
【0052】
また、前記風力推進船のプロペラは、前記バラストに設置されている構成としてもよい。
【0053】
このような構成によれば、例えば、バラスト内を下まで貫通するシャフトに垂直軸風車の回転を増速して伝え、バラスト内に設けた傘歯車により水平軸回転に変え、そこに設けたプロペラを回転し推進するように構成することができる。
【0054】
また、前記バラストまたは前記下支柱は、揚力型のキールとして機能するように構成するのがよい。
【0055】
このような構成によれば、前記バラストまたは前記下支柱は、揚力型のキールとして機能するので、下支柱の回転によってキールの迎角を調整することができる。
【0056】
さらに詳しく説明すると、大きな風力エネルギーを受けて推進する船は、横風を受けて進むときには風に押されて風下側に滑りながら進むことになる。これはヨットでも同じであり、高性能ヨットの場合、横滑り速度があると前進速度との合成速度が水中のキールに迎角を作るために風上側へヨットを押す揚力がキールに生じることでバランスを保っているが、ある程度の横滑りがあって初めて釣り合う構成となっているため、横滑り分船体抵抗が増えることを避けられない。本発明では、回転可能に支持されたバラストキールシステムによって、横滑りが生じていなくても風上に押す揚力をキールに発生させられるようにキールに迎角をつけることができるため、船体は進行方向を向いたまま直進でき、船体抵抗を減じることができる。
【0057】
また、前記船体の前後に配置された2つの前記アッセンブリを備え、前記2つのキールは、横風を受けての直進時には同じ向きに迎角を持つように回転し、旋回時には前端の前記キールと後端の前記キールが互いに逆向きの迎角を持つように回転する構成としてもよい。
【0058】
このような構成によれば、2つのキールが、横風を受けての直進時には同じ向きに迎角を持つように回転し、旋回時には前端の前記キールと後端の前記キールが互いに逆向きの迎角を持つように回転するので、ラダーを廃して抵抗の少ない高性能な風力推進船とすることができる。