(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266691
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】サインライトのための光学構造体
(51)【国際特許分類】
F21S 41/00 20180101AFI20180115BHJP
F21S 43/00 20180101ALI20180115BHJP
F21S 45/00 20180101ALI20180115BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20180115BHJP
F21W 104/00 20180101ALN20180115BHJP
F21W 105/00 20180101ALN20180115BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20180115BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20180115BHJP
【FI】
F21S8/12 140
F21S8/10 170
F21S8/12 110
F21S8/12 150
F21W101:10
F21Y101:00
【請求項の数】24
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-93252(P2016-93252)
(22)【出願日】2016年5月6日
(65)【公開番号】特開2016-213191(P2016-213191A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年6月14日
(31)【優先権主張番号】15166297.0
(32)【優先日】2015年5月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー キースリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ ピュルシュティンガー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ダナー
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0284197(US,A1)
【文献】
国際公開第2015/031924(WO,A1)
【文献】
特開2013−225414(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/031925(WO,A1)
【文献】
特開2015−035337(JP,A)
【文献】
特開2007−265864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00−19/00
F21V 1/00− 8/00
F21V 9/00−15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車投光器の照射装置(2)のための光学構造体であって、
前記照射装置(2)は、前記照射装置(2)の前方の領域に非修正の第1配光(3)を構成するように光を放射するために配設されており、
前記光学構造体(1)は、前記照射装置(2)の全ての光の流れの少なくとも一部分が前記光学構造体(1)を通過するように、前記照射装置(2)に付設されているか又は前記照射装置(2)の一部を成しており、
前記照射装置(2)により発生された非修正の前記第1配光(3)は、前記光学構造体(1)により、予め設定可能な修正された第2配光(4)に修正されており、
前記光学構造体(1)は、2つか3つか又はそれよりも多くの光学的な構造体要素(5、5’)から成り、
各前記構造体要素(5、5’)は、光散乱作用を有し、
第1部分集合部を構成する第1構造体要素(5)は、これらの第1構造体要素(5)へ入射する前記照射装置(2)により発生された光線束(6)が前記第1構造体要素(5)を通過するように構成されており、
各前記光線束(6)は、各々の前記第1構造体要素(5)により、第1出射光線束(7)へ、第2出射光線束(8)へ、そして少なくとも1つの更なる出射光線束(9a)へ屈折されているという形式の光学構造体であり、
前記第1構造体要素(5)は、少なくとも、上昇領域(17)と、張出領域(18)と、1つか2つか又はそれよりも多くの立上り側面部(19a、19b、19c)とを有し、
前記上昇領域(17)は、各々の前記第1構造体要素(5)へ入射する前記照射装置(2)により発生された光線束(6)を、第1出射光線束(7)へ屈折し、
前記張出領域(18)は、各々の前記第1構造体要素(5)へ入射する前記照射装置(2)により発生された光線束(6)を、第2出射光線束(8)へ屈折し、
1つか2つか又はそれよりも多くの前記立上り側面部(19a、19b、19c)は、各々の前記第1構造体要素(5)へ入射する前記照射装置(2)により発生された光線束(6)を、少なくとも1つの更なる出射光線束(9a)へ屈折すること
を特徴とする光学構造体。
【請求項2】
前記出射光線束(7、8、9a)の少なくとも2つは、散乱像において重なり合わないこと
を特徴とする、請求項1に記載の光学構造体。
【請求項3】
第2部分集合部を構成する第2構造体要素(5’)は、これらの第2構造体要素(5’)へ入射する光が正に1つの光線束のかたちで散乱されているように構成されていること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の光学構造体。
【請求項4】
前記構造体要素(5、5’)は、六角形の底面(10)を有し、つまり前記構造体要素(5、5’)の前記底面(10)は、六角形の格子(13)を完全に覆っており、前記格子(13)の頂点(12)と頂点(12)の間にある面(11)は、正に1つの前記構造体要素(5、5’)の前記底面(10)により覆われていること
を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項5】
前記構造体要素(5、5’)は、正六角形の底面(10)を有し、つまり前記構造体要素(5、5’)の前記底面(10)は、正六角形の格子(13)を完全に覆っており、前記格子(13)の頂点(12)と頂点(12)の間にある面(11)は、正に1つの前記構造体要素(5、5’)の前記底面(10)により覆われていること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項6】
前記底面(10)は、正六角形として形成されており、六角形の前記格子(13)は、正六角形の格子(13)として形成されており、正六角形の前記格子は、1つか2つか又はそれよりも多くの平行に延在する列(14)を有し、該列(14)は、前記面(11)のうち1つの面の2つの辺を介した対角線(15)により定義される方向(16)と平行に延在しており、前記第1構造体要素(5)における正六角形として形成された前記底面(10)は、各2番目の列(14’)を覆っていること
を特徴とする、請求項4又は5に記載の光学構造体。
【請求項7】
前記上昇領域(17)は、少なくとも1つの前記立上り側面部(19a、19b、19c)へ連続的に移行し、及び/又は、少なくとも1つの前記立上り側面部(19a、19b、19c)は、前記張出領域(18)へ連続的に移行すること
を特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項8】
前記第1構造体要素(5)は、各々、各々の前記第1構造体要素(5)の幾何学的な中心点(24)を通り2つの辺を介した対角線(15)と平行に延在する軸線(20)に関し、対称に形成されていること
を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項9】
前記第1構造体要素(5)は、各々、各々の前記第1構造体要素(5)の幾何学的な中心点(24)を通り2つの辺を介した対角線(15)と平行に延在する軸線(20)に関し、鏡面対称に形成されていること
を特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項10】
少なくとも1つの前記立上り側面部(19a)は、底面(10)と平行な面に沿った任意の前記第1構造体要素(5)の断面において、V字形状に形成されていること
を特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項11】
少なくとも1つの前記立上り側面部(19a)は、底面(10)と平行な面に沿った任意の前記第1構造体要素(5)の断面において、前記第1構造体要素(5)の幾何学的な中心点(24)を通り2つの辺を介した対角線(15)と平行に延在する軸線(20)に関し、対称に又は鏡面対称に形成されており、頂点(21)と開角(22)を有し、
該開角(22)は、2°と180°の間か、10°と180°の間か、20°と180°の間か、30°と180°の間か、40°と180°の間か、50°と180°の間か、60°と180°の間か、70°と180°の間か、80°と180°の間か、90°と180°の間か、100°と180°の間か、110°と180°の間か、120°と180°の間か、130°と180°の間か、140°と180°の間か、150°と180°の間か、160°と180°の間か、又は170°と180°の間にあること
を特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項12】
前記第1構造体要素(5)は、上昇領域(17)と、張出領域(18)と、正に1つの立上り側面部(19a)とを有し、
各前記第1構造体要素の前記上昇領域(17)へ入射する光線束(6)の部分は、第1出射光線束(7)へ屈折されており、該第1出射光線束(7)は、h軸線の下側に散乱されており、その前記第1構造体要素の前記張出領域(18)へ入射する光線束(6)の部分は、第2出射光線束(8)へ屈折されており、該第2出射光線束(8)は、h軸線の上側に散乱されており、その前記第1構造体要素の前記立上り側面部(19a)へ入射する光線束(6)の部分は、第3出射光線束(9a)へ屈折されており、該第3出射光線束(9a)は、h軸線の上側に散乱されており、
前記第2出射光線束(8)は、h軸線の上側の0°と3°の間の領域へ散乱されており、
前記立上り側面部(19a)は、5°と20°の間の範囲内の立上り勾配か、又はほぼ13.8°ないし18.9°の立上り勾配を有し、前記第3出射光線束(9a)は、h軸線の上側の2°と4°の間か、4°と5°の間か、又は5°と7°の間の領域へ散乱されていること
を特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項13】
前記第1構造体要素(5)は、上昇領域(17)と、張出領域(18)と、正に3つの立上り側面部(19a、19b、19c)とを有し、
各前記第1構造体要素の前記上昇領域(17)へ入射する光線束(6)の部分は、第1出射光線束(7)へ屈折されており、該第1出射光線束(7)は、h軸線の下側に散乱されており、その前記第1構造体要素の前記張出領域(18)へ入射する光線束(6)の部分は、第2出射光線束(8)へ屈折されており、該第2出射光線束(8)は、h軸線の上側に散乱されており、その前記第1構造体要素の前記立上り側面部(19a、19b、19c)へ入射する光線束(6)の部分は、各々、第3出射光線束と第4出射光線束と第5出射光線束へ屈折されており、これらの出射光線束は、h軸線の上側の領域へ散乱されており、前記第4出射光線束は、散乱像において前記第3出射光線束とも前記第5出射光線束とも重なり合うことはなく、
前記第2出射光線束(8)は、h軸線の上側の0°と3°の間の領域へ散乱されており、
第1立上り側面部(19a)と第3立上り側面部(19c)は、8°と12°の間の範囲内の立上り勾配か、又はほぼ10°の立上り勾配を有し、第2立上り側面部(19b)は、12°と16°の間の範囲内の立上り勾配か、又はほぼ14°の立上り勾配を有し、前記第3出射光線束と前記第5出射光線束は、h軸線の上側の4°と6°の間の領域へ散乱されており、前記第4出射光線束は、h軸線の上側の6°と8°の間の領域へ散乱されていること
を特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項14】
前記第1構造体要素(5)は、上昇領域(17)と、張出領域(18)と、側面部(19a)とを有し、
前記側面部(19a)は、V字形状に形成されており、頂点(21)と開角(22)を有し、該頂点(21)は、前記第1構造体要素の底面(10)の幾何学的な中心点(24)に位置し、各前記第1構造体要素の前記上昇領域(17)へ入射する光線束(6)の部分は、第1出射光線束(7)へ屈折されており、該第1出射光線束(7)は、h軸線の下側に散乱されており、その前記第1構造体要素の前記張出領域(18)へ入射する光線束(6)の部分は、第2出射光線束(8)へ屈折されており、該第2出射光線束(8)は、h軸線の上側に散乱されており、その前記第1構造体要素のV字形状の前記側面部(19a)へ入射する光線束(6)の部分は、各々、第3出射光線束と第4出射光線束へ屈折されており、これらの出射光線束は、h軸線の上側の領域へ散乱されており、前記第3出射光線束と前記第4出射光線束は、散乱像において重なり合うことはなく、
V字形状の前記側面部(19a)は、8°と20°の間の範囲内の立上り勾配か、又はほぼ18.9°の立上り勾配を有し、及び、前記第3出射光線束は、垂直方向において3°と7°の間の領域へ、水平方向において−12°と−7°の間の領域へ散乱されており、及び、前記第4出射光線束は、垂直方向において3°と7°の間の領域へ、水平方向において+7°と+12°の間の領域へ散乱されていること
を特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項15】
底面(10)に関し、各前記第1構造体要素(5)のサイズは、可視光の波長よりも遥かに大きいこと
を特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項16】
底面(10)に関し、各前記第1構造体要素(5)の外周円直径(25)は、可視光の波長よりも遥かに大きいこと
を特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項17】
底面(10)に関し、各前記第1構造体要素(5)の最大間隔(23)は、可視光の波長よりも遥かに大きいこと
を特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項18】
前記光学構造体は、以下の光学系要素、即ち前記照射装置(2)の拡散ディスク(26)又はカバーディスク(26)、前記照射装置(2)のレンズ(27)、前記照射装置(2)の投射レンズである光学系要素の1つ又は複数において少なくとも1つの境界面上に配設されていること
を特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項19】
前記光学構造体は、以下の光学系要素、即ち前記照射装置(2)の拡散ディスク(26)又はカバーディスク(26)、前記照射装置(2)のレンズ(27)、前記照射装置(2)の投射レンズである光学系要素の1つ又は複数において正に1つの境界面上に配設されていること
を特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項20】
前記第1出射光線束(7)は、修正された前記第2配光(4)がより低い勾配のHD境界を有するように、非修正の前記第1配光(3)を修正された前記第2配光(4)に修正すること、そして前記更なる出射光線束は、非修正の前記第1配光(3)を修正された前記第2配光(4)に修正して「サインライト」部分配光を構成すること
を特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の光学構造体。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の光学構造体(1)を少なくとも1つ備えた照射装置。
【請求項22】
前記照射装置(2)は、投射系であり、
前記照射装置(2)は、少なくとも1つの光源(29)と、少なくとも1つのリフレクタ(30)と、少なくとも1つのレンズ(27)又は少なくとも1つの投射レンズとを含んでおり、
少なくとも1つの前記光学構造体(1)は、前記レンズ(27)上に配設されており、及び/又は、追加的な光学系要素(31)として構成されていること
を特徴とする、請求項21に記載の照射装置。
【請求項23】
前記照射装置(2)は、反射系であり、
前記照射装置(2)は、少なくとも1つのフリーフォームリフレクタ(30)と、少なくとも1つの光源(29)と、少なくとも1つの拡散ディスク(26)及び/又は少なくとも1つのカバーディスク(26)とを含んでおり、
少なくとも1つの前記光学構造体(1)は、少なくとも1つの前記拡散ディスク(26)上に及び/又は少なくとも1つの前記カバーディスク(26)上に配設されており、及び/又は、追加的な光学系要素(31)として構成されていること
を特徴とする、請求項21に記載の照射装置。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか一項に記載の照射装置を少なくとも1つ備えた車両投光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の記載)
本出願は、2015年5月4日出願の欧州特許出願第15166297.0号の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は、引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。
【0002】
本発明は、特に自動車投光器(例えば前照灯)の照射装置(照明装置)のための光学構造体に関するものである。特に下記の照射装置に用いられるものである。照射装置は、前記照射装置の前方の領域に非修正の第1配光を構成するように光を放射するために配設されており、この際、前記光学構造体は、前記照射装置の全ての光の流れの少なくとも一部分が前記光学構造体を通過するように、前記照射装置に付設されているか又は前記照射装置の一部を成しており、この際、前記照射装置により発生された非修正の配光は、前記光学構造体により、予め設定可能な修正された第2配光に修正されており、この際、前記光学構造体は、2つか3つか又はそれよりも多くの光学的な構造体要素から成り、この際、各構造体要素は、光散乱作用(光拡散作用)を有する。
【0003】
更に本発明は、前記光学構造体を備えた車両投光器用の照射装置に関する。
【0004】
更に本発明は、前記照射装置を少なくとも1つ備えた車両投光器に関する。
【0005】
法的な規程により、車両投光器の配光は、一連の前提条件を満たさなくてはならない。
【0006】
例えばECE(欧州規格)及びSAE(米国規格)により、明暗ライン(HDライン)の上側、即ち主に照射される範囲以外では、所定の領域において最小光度と最大光度が要求される。これらの光度は「サインライト」として機能し、通過する車両からの照射により頭上標識を照らすことを可能にする。使用される光度は、通常、通常の散乱光値を超えるが、HDラインの下側の光度よりも遥かに低い。要求される光値は、眩惑作用ができる限り少ないように達成されなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2015/031924 A1
【特許文献2】WO 2015/031925 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
「サインライト」は、通常、投射レンズにおける特別な小面(ファセット:大きさは少なくとも数ミリメートル)によるか、又は非連続的な小さい隆起部により実現される。この際、特にそれらの構造体が外部から明るい光点として知覚可能であり、従って特に設計上の理由から採用を拒否されることが多いことは、欠点である。更にこの種の装置は、その後方に位置する光学系へ適合されており、それらの装置について変更が行われると、努力して達成された機能は、もはや保証されない。
【0009】
更に法的な理由から規定された不鮮明な明暗境界が必要とされており、従ってHDラインは、鮮明すぎたりぼやけすぎたりすることなく結像される必要があり、つまりHDラインの最大鮮明度は、法的に規定されている。またHDラインのそのようなぼけは、HDラインが運転者により「ソフト」で且つ主観的により快適に感じられることをもたらしてくれる。
【0010】
このHD移行部の定量化は、明暗境界を通る垂直断面に沿った勾配(明るさ勾配)の最大値により行われる。そのために照明強度(照射強度)の対数が(垂直方向の)0.1°間隔の複数の測定点において算出され、それらの差が形成され、それにより勾配関数が得られる。この勾配関数の最大値は、HD境界(明暗境界)の勾配(明るさ勾配)と称される。この定義は、人間の輝度知覚能力を不正確にのみ再現しているので、異なって知覚される複数のHDラインが同じ測定勾配値をもつこともあり、或いは、類似と見える複数のHDラインにおいて異なる勾配が測定されることもある。(尚、本明細書において「°」は、角度表示を表わす。)
【0011】
勾配の緩和は、通常、照射装置のレンズのレンズ表面の変更により行われる。従来技術により様々な解決策が一般に用いられている:レンズ表面を統計的に粗面化することにより、例えばよりソフトなHD境界を達成することは可能であるが、それにより対向車の運転者に眩惑(ないし眩しさ Blendung)をもたらすことになる。他のバリエーションでは、変調(モジュレーション:例えば、2つの正弦波の重ね合わせ、球欠の形状の複数の小さな凹部など)がレンズ表面に施される。この種の解決策は、レンズを通る光の流れの分布に強く依存しており、この際、例えば光学技術の変更による光の流れの分布に関する変更は、発生される光の流れの分布に対し、強く且つ部分的にネガティブな影響を及ぼすことになる。
【0012】
従来技術の上述の欠点は、解消されるべきである。従って本発明の課題は、法的な規定値を満たし、同時に不快感を与えることのない、「サインライト」を有する光像(ライトイメージ)を実現可能とする屈折性の光学部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、冒頭に記述した光学構造体において、本発明により、複数の構造体要素の第1部分集合部(erste Teilmenge)は、前記構造体要素のこの第1部分集合部へ入射する照射装置により発生された光線束が前記構造体要素の第1部分集合部を通過するように構成されており、各光線束は、各々の前記構造体要素から、第1出射光線束へ、第2出射光線束へ、そして少なくとも1つの更なる出射光線束へ屈折されていることにより解決される。
【0014】
即ち本発明の第1の視点により、下記の如き自動車投光器の照射装置のための光学構造体が提供される。前記照射装置は、前記照射装置の前方の領域に非修正の第1配光を構成するように光を放射するために配設されており、前記光学構造体は、前記照射装置の全ての光の流れの少なくとも一部分が前記光学構造体を通過するように、前記照射装置に付設されているか又は前記照射装置の一部を成しており、前記照射装置により発生された非修正の前記第1配光は、前記光学構造体により、予め設定可能な修正された第2配光に修正されており、前記光学構造体は、2つか3つか又はそれよりも多くの光学的な構造体要素から成り、各前記構造体要素は、光散乱作用を有
し、第1部分集合部を構成する第1構造体要素は、
これらの第1構造体要素へ入射する前記照射装置により発生された光線束が前記
第1構造体要素を通過するように構成されており、各前記光線束は、各々の前記
第1構造体要素により、第1出射光線束へ、第2出射光線束へ、そして少なくとも1つの更なる出射光線束へ屈折されている
という形式の光学構造体であり、前記第1構造体要素は、少なくとも、上昇領域と、張出領域と、1つか2つか又はそれよりも多くの立上り側面部とを有し、前記上昇領域は、各々の前記第1構造体要素へ入射する前記照射装置により発生された光線束を、第1出射光線束へ屈折し、前記張出領域は、各々の前記第1構造体要素へ入射する前記照射装置により発生された光線束を、第2出射光線束へ屈折し、1つか2つか又はそれよりも多くの前記立上り側面部は、各々の前記第1構造体要素へ入射する前記照射装置により発生された光線束を、少なくとも1つの更なる出射光線束へ屈折することを特徴とする光学構造体が提供される。
更に本発明の第2の視点により、前記光学構造体を少なくとも1つ
備えた照射装置が提供される。
更に本発明の第3の視点により、前記照射装置を少なくとも1つ備えた車両投光器が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記された図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、本発明を後続段落で説明する具体的な実施例、特に図示の形態に限定するものではないことを付言する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記第1の視点により、上記課題に対応する効果、即ち法的な規定値を満たし、同時に不快感を与えることのない、「サインライト」を有する光像(ライトイメージ)を実現可能とする屈折性の光学部材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)自動車投光器の照射装置のための光学構造体であって、前記照射装置は、前記照射装置の前方の領域に非修正の第1配光を構成するように光を放射するために配設されており、前記光学構造体は、前記照射装置の全ての光の流れの少なくとも一部分が前記光学構造体を通過するように、前記照射装置に付設されているか又は前記照射装置の一部を成しており、前記照射装置により発生された非修正の前記第1配光は、前記光学構造体により、予め設定可能な修正された第2配光に修正されており、前記光学構造体は、2つか3つか又はそれよりも多くの光学的な構造体要素から成り、各前記構造体要素は、光散乱作用を有するという形式の光学構造体であり、前記構造体要素の第1部分集合部は、前記構造体要素のこの第1部分集合部へ入射する前記照射装置により発生された光線束が前記構造体要素の前記第1部分集合部を通過するように構成されており、各前記光線束は、各々の前記構造体要素により、第1出射光線束へ、第2出射光線束へ、そして少なくとも1つの更なる出射光線束へ屈折されていること。
(形態2)前記光学構造体において、前記出射光線束の少なくとも2つは、散乱像において重なり合わないことが好ましい。
(形態3)前記光学構造体において、前記構造体要素の第2部分集合部は、前記構造体要素のこの第2部分集合部へ入射する光が正に1つの光線束のかたちで散乱されているように構成されていることが好ましい。
(形態4)前記光学構造体において、前記構造体要素は、六角形の底面、好ましくは正六角形の底面を有し、つまり前記構造体要素の前記底面は、六角形の格子、好ましくは正六角形の格子を完全に覆っており、前記格子の頂点と頂点の間にある面は、正に1つの前記構造体要素の前記底面により覆われていることが好ましい。
(形態5)前記光学構造体において、前記底面は、正六角形として形成されており、六角形の前記格子は、正六角形の格子として形成されており、正六角形の前記格子は、1つか2つか又はそれよりも多くの平行に延在する列を有し、該列は、前記面のうち1つの面の2つの辺を介した対角線により定義される方向と平行に延在しており、前記構造体要素の前記第1部分集合部における正六角形として形成された前記底面は、各2番目の列を覆っていることが好ましい。
(形態6)前記光学構造体において、前記構造体要素の前記第1部分集合部は、少なくとも、上昇(ないし肉厚)領域と、張出(ないし突出)領域と、1つか2つか又はそれよりも多くの立上り側面部とを有し、前記上昇(ないし肉厚)領域は、各々の前記構造体要素へ入射する前記照射装置により発生された光線束を、第1出射光線束へ屈折し、前記張出(ないし突出)領域は、各々の前記構造体要素へ入射する前記照射装置により発生された光線束を、第2出射光線束へ屈折し、1つか2つか又はそれよりも多くの前記立上り側面部は、各々の前記構造体要素へ入射する前記照射装置により発生された光線束を、少なくとも1つの更なる出射光線束へ屈折することが好ましい。
(形態7)前記光学構造体において、前記上昇(ないし肉厚)領域は、少なくとも1つの前記立上り側面部へ連続的に移行し、及び/又は、少なくとも1つの前記立上り側面部は、前記張出(ないし突出)領域へ連続的に移行することが好ましい。
(形態8)前記光学構造体において、前記構造体要素は、各々、前記構造体要素の幾何学的な中心点を通り2つの辺を介した対角線と平行に延在する軸線に関し、対称に形成され、特に鏡面対称に形成されていることが好ましい。
(形態9)前記光学構造体において、少なくとも1つの前記立上り側面部は、底面と平行な面に沿った前記構造体要素の断面において、実質的にV字形状に形成されていることが好ましい。
(形態10)前記光学構造体において、少なくとも1つの前記立上り側面部は、底面と平行な面に沿った前記構造体要素の断面において、前記構造体要素の幾何学的な中心点を通り2つの辺を介した対角線と平行に延在する軸線に関し、対称に形成され、特に鏡面対称に形成されており、頂点(ないし頂部エッジ線)と開角を有し、該開角は、好ましくは、2°と180°の間か、10°と180°の間か、20°と180°の間か、30°と180°の間か、40°と180°の間か、50°と180°の間か、60°と180°の間か、70°と180°の間か、80°と180°の間か、90°と180°の間か、100°と180°の間か、110°と180°の間か、120°と180°の間か、130°と180°の間か、140°と180°の間か、150°と180°の間か、160°と180°の間か、又は170°と180°の間にあることが好ましい。
(形態11)前記光学構造体において、前記構造体要素は、上昇(ないし肉厚)領域と、張出(ないし突出)領域と、正に1つの立上り側面部とを有し、前記構造体要素の前記上昇領域へ入射する光線束の部分は、第1出射光線束へ屈折されており、該第1出射光線束は、h軸線の下側に散乱されており、前記構造体要素の前記張出領域へ入射する光線束の部分は、第2出射光線束へ屈折されており、該第2出射光線束は、h軸線の上側に散乱されており、前記構造体要素の前記立上り側面部へ入射する光線束の部分は、第3出射光線束へ屈折されており、該第3出射光線束は、h軸線の上側に散乱されており、前記第2出射光線束は、好ましくは、h軸線の上側の0°と3°の間の領域へ散乱されており、前記立上り側面部は、好ましくは、5°と20°の間の範囲内の立上り勾配か、又はほぼ13.8°ないし18.9°の立上り勾配を有し、前記第3出射光線束は、好ましくは、h軸線の上側の2°と4°の間か、4°と5°の間か、又は5°と7°の間の領域へ散乱されていることが好ましい。
(形態12)前記光学構造体において、前記構造体要素は、上昇(ないし肉厚)領域と、張出(ないし突出)領域と、正に3つの立上り側面部とを有し、前記構造体要素の前記上昇領域へ入射する光線束の部分は、第1出射光線束へ屈折されており、該第1出射光線束は、h軸線の下側に散乱されており、前記構造体要素の前記張出領域へ入射する光線束の部分は、第2出射光線束へ屈折されており、該第2出射光線束は、h軸線の上側に散乱されており、前記構造体要素の前記立上り側面部へ入射する光線束の部分は、各々、第3出射光線束と第4出射光線束と第5出射光線束へ屈折されており、これらの出射光線束は、h軸線の上側の領域へ散乱されており、前記第4出射光線束は、散乱像において前記第3出射光線束とも前記第5出射光線束とも重なり合うことはなく、前記第2出射光線束は、好ましくは、h軸線の上側の0°と3°の間の領域へ散乱されており、第1立上り側面部と第3立上り側面部は、好ましくは、8°と12°の間の範囲内の立上り勾配か、又はほぼ10°の立上り勾配を有し、第2立上り側面部は、12°と16°の間の範囲内の立上り勾配か、又はほぼ14°の立上り勾配を有し、前記第3出射光線束と前記第5出射光線束は、好ましくは、h軸線の上側の4°と6°の間の領域へ散乱されており、前記第4出射光線束は、h軸線の上側の6°と8°の間の領域へ散乱されていることが好ましい。
(形態13)前記光学構造体において、前記構造体要素は、上昇(ないし肉厚)領域と、張出(ないし突出)領域と、側面部とを有し、前記側面部は、V字形状に形成されており、頂点(ないし頂部エッジ線)と開角を有し、該頂点は、前記構造体要素の底面の幾何学的な中心点に位置し、前記構造体要素の前記上昇領域へ入射する光線束の部分は、第1出射光線束へ屈折されており、該第1出射光線束は、h軸線の下側に散乱されており、前記構造体要素の前記張出領域へ入射する光線束の部分は、第2出射光線束へ屈折されており、該第2出射光線束は、h軸線の上側に散乱されており、前記構造体要素のV字形状の前記側面部へ入射する光線束の部分は、各々、第3出射光線束と第4出射光線束へ屈折されており、これらの出射光線束は、h軸線の上側の領域へ散乱されており、前記第3出射光線束と前記第4出射光線束は、散乱像において重なり合うことはなく、V字形状の前記側面部は、好ましくは、8°と20°の間の範囲内の立上り勾配か、又はほぼ18.9°の立上り勾配を有し、及び/又は、前記第3出射光線束は、垂直方向において3°と7°の間の領域へ、水平方向において−12°と−7°の間の領域へ散乱されており、及び/又は、前記第4出射光線束は、垂直方向において3°と7°の間の領域へ、水平方向において+7°と+12°の間の領域へ散乱されていることが好ましい。
(形態14)前記光学構造体において、前記構造体要素のサイズ、例えば外周円直径及び/又は底面に対する最大間隔は、可視光の波長よりも大きい、特に遥かに大きいことが好ましい。
(形態15)前記光学構造体において、前記光学構造体は、前記照射装置の拡散ディスクの形式か又はカバーディスクの形式で構成されている光学系要素の少なくとも1つの境界面上、好ましくは正に1つの境界面上に配設されており、及び/又は、前記照射装置のレンズの形式、特に投射レンズの形式の光学系要素の少なくとも1つの表面上に配設されており、及び/又は、前記レンズの光出射面側に配設されていることが好ましい。
(形態16)前記光学構造体において、前記第1出射光線束は、修正された前記第2配光がより低い勾配のHD境界を有するように、非修正の前記第1配光を修正された前記第2配光に修正すること、そして前記更なる出射光線束は、非修正の前記第1配光を修正された前記第2配光に修正して「サインライト」部分配光を構成することが好ましい。
(形態17)前記光学構造体を少なくとも1つ、好ましくは正に1つ備えた照射装置。
(形態18)前記照射装置において、前記照射装置は、投射系であり、前記照射装置は、好ましくは、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つのリフレクタと、少なくとも1つのレンズ、特に少なくとも1つの投射レンズとを含んでおり、少なくとも1つの前記光学構造体は、好ましくは、前記レンズ上に配設されており、及び/又は、追加的な光学系要素として構成されていることが好ましい。
(形態19)前記照射装置において、前記照射装置は、反射系であり、前記照射装置は、好ましくは、少なくとも1つのフリーフォームリフレクタと、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つの拡散ディスク及び/又は少なくとも1つのカバーディスクとを含んでおり、少なくとも1つの前記光学構造体は、好ましくは、前記少なくとも1つの拡散ディスク上に及び/又は前記少なくとも1つのカバーディスク上に配設されており、及び/又は、追加的な光学系要素として構成されていることが好ましい。
(形態20)前記照射装置を少なくとも1つ備えた車両投光器。
【0017】
照射装置により発生される上述の光像は、個々の構造体要素の散乱像(拡散像)の重ね合わせとして構成される。この際、個々の構造体要素の散乱像は、構造体要素を通過した光により発生される。
【0018】
散乱像内の異なる領域は、出射光線束の少なくとも2つが散乱像において重なり合わないものとして照らされる。
【0019】
この際、構造体要素(複数)の第2部分集合部(zweite Teilmenge)は、この第2部分集合部の構造体要素へ入射する光が正に1つの光線束のかたちで散乱されているように構成されている。
【0020】
この際、構造体要素(複数)の第2部分集合部が空(leer)であり(即ち第2部分集合部を構成する構造体要素がないということ)、光学構造体が第1部分集合部の構造体要素からのみ構成されていることも勿論可能である。第2部分集合部の大きさは、例えば、どのくらいの光が上述の更なる出射光線束の形式で散乱されなくてはならないかに依存することができる。
【0021】
光学構造体の製造は、構造体要素が、六角形の底面、好ましくは正六角形の底面を有すると比較的容易に自動化することが可能であり、つまり構造体要素の底面は、六角形の格子、好ましくは正六角形の格子を完全に覆っており、格子の頂点(複数)の間にある面は、正に1つの構造体要素の底面により覆われている。
【0022】
この場合、底面が正六角形として形成されており、六角形の格子が正六角形の格子として形成されており、正六角形の格子が、1つか2つか又はそれよりも多くの平行に延在する列を有し、該列が、面(格子面)のうち1つの面の2つの辺を介した対角線により定義される方向と平行に延在すると有利であり得て、この際、構造体要素の第1部分集合部における正六角形として形成された底面は、各2番目の列を覆っている。
【0023】
光像内のサインライト領域を最適に照らすためには、構造体要素の第1部分集合部は(各々の構造体要素について)少なくとも、上昇領域(台状に上昇した肉厚領域 Anstiegsbereich)と、張出(突出)領域(Auslaufbereich)と、1つか2つか又はそれよりも多くの立上り側面部(ansteigende Flanke)とを有すると有利であり得て、この際、上昇領域は、各々の構造体要素へ入射する照射装置により発生された光線束を、第1出射光線束へ屈折し、張出領域は、各々の構造体要素へ入射する照射装置により発生された光線束を、第2出射光線束へ屈折し、1つか2つか又はそれよりも多くの立上り側面部は、各々の構造体要素へ入射する照射装置により発生された光線束を、少なくとも1つの更なる出射光線束へ屈折する。
【0024】
この際、上昇領域は、実質的に直線的な延在経過を有し、及び/又は、張出領域は、実質的にS字形状の延在経過、好ましくはcos関数に類似の延在経過を有することを考慮することができる。
【0025】
それに加え、製造のためには、上昇領域が少なくとも1つの立上り側面部へ連続的に移行し、及び/又は、少なくとも1つの立上り側面部が張出領域へ連続的に移行すると特に有利である。
【0026】
更に構造体要素が、各々、構造体要素の幾何学的な中心点を通り2つの辺を介した対角線(2つの隣接した辺の両端の角を結ぶ対角線)と平行に延在する軸線に関し、対称に形成され、特に鏡面対称に形成されていると有利である。
【0027】
本発明の特に有利な一実施形態においては、少なくとも1つの立上り側面部が、底面と平行な面に沿った構造体要素の断面において、実質的にV字形状に形成されていることが考慮されている。
【0028】
少なくとも1つの立上り側面部が、底面と平行な面に沿った構造体要素の断面において、構造体要素の幾何学的な中心点を通り2つの辺を介した対角線と平行に延在する軸線に関し、対称に形成され、特に鏡面対称に形成されており、頂点(ないし頂部エッジ線)と開角を有することを考慮することができる。
【0029】
2つの立上り側面部の間の開角(Oeffnungswinkel)が、2°と180°の間か、10°と180°の間か、20°と180°の間か、30°と180°の間か、40°と180°の間か、50°と180°の間か、60°と180°の間か、70°と180°の間か、80°と180°の間か、90°と180°の間か、100°と180°の間か、110°と180°の間か、120°と180°の間か、130°と180°の間か、140°と180°の間か、150°と180°の間か、160°と180°の間か、又は170°と180°の間にあると有利である。
【0030】
同様に本発明による光学構造体は、照射装置により放射された光を、減光(防眩)された配光の形式、特にロービーム配光の形式で結像するように配設されている照射装置にとって有利であり、この際、減光された配光、特にロービーム配光は、HD境界を有し、この際、本発明により、照射装置の光の流れの一部分がHD境界の上側の所定の領域へ結像されるように、光学構造体、特に構造体要素が形成されている。
【0031】
このようにして本発明による光学構造体を用い、例えば各光学的な構造体要素が、この構造体要素を通過する光の流れの僅かな部分を対応する所定の領域へ偏向させることにより、冒頭に記述したサインライトを最適の状態で発生させることが可能である。この際、水平線(h軸線)と垂直線(v軸線)を有する直交座標系が定義されている散乱像において、個々の出射光線束の偏向角度を観察することは、目的に適っている。
【0032】
本発明の具体的な一実施形態において、構造体要素は、上昇領域と、張出領域と、正に1つの立上り側面部とを有することが考慮されており、この際、構造体要素の上昇領域へ入射する光線束の部分は、第1出射光線束へ屈折されており、該第1出射光線束は、h軸線の下側に散乱されており、構造体要素の張出領域へ入射する光線束の部分は、第2出射光線束へ屈折されており、該第2出射光線束は、h軸線の上側に散乱されており、構造体要素の立上り側面部へ入射する光線束の部分は、第3出射光線束へ屈折されており、該第3出射光線束は、h軸線の上側に散乱されている。
【0033】
この際、第2出射光線束がh軸線の上側の0°と3°の間の領域へ散乱されていると目的に適うと分かった。
【0034】
出射光線束の所望の偏向を保証するために、立上り側面部が5°と20°の間の範囲内の立上り勾配(所定の屈折・散乱を生ずる立上り勾配)か、又はほぼ13.8°ないし18.9°の立上り勾配を有し、第3出射光線束がh軸線の上側の2°と4°の間か、4°と5°の間か、又は5°と7°の間の領域へ散乱されていると目的に適っている。尚、立上り勾配の角度は、底面
に対し、規定できる。
【0035】
本発明の具体的な更なる一実施形態において、構造体要素は、上昇領域と、張出領域と、正に3つの立上り側面部とを有することを考慮することができ、この際、構造体要素の上昇領域へ入射する光線束の部分は、第1出射光線束へ屈折されており、該第1出射光線束は、h軸線の下側に散乱されており、構造体要素の張出領域へ入射する光線束の部分は、第2出射光線束へ屈折されており、該第2出射光線束は、h軸線の上側に散乱されており、構造体要素の立上り側面部へ入射する光線束の部分は、各々、第3出射光線束と第4出射光線束と第5出射光線束へ屈折されており、この際、これらの出射光線束は、h軸線の上側の領域へ散乱されており、第4出射光線束は、散乱像において第3出射光線束とも第5出射光線束とも重なり合わない。
【0036】
この際、第2出射光線束がh軸線の上側の0°と3°の間の領域へ散乱されていると目的に適っている(好都合である)。
【0037】
それに加え、第1立上り側面部と第3立上り側面部が8°と12°の間の範囲内の立上り勾配(所定の屈折・散乱を生じる立上り勾配)か、又はほぼ10°の立上り勾配を有し、第2立上り側面部が12°と16°の間の範囲内の立上り勾配か、又はほぼ14°の立上り勾配を有し、第3出射光線束と第5出射光線束がh軸線の上側の4°と6°の間の領域へ散乱されており、第4出射光線束がh軸線の上側の6°と8°の間の領域へ散乱されていると目的に適っている。
【0038】
更に構造体要素は、上昇領域と、張出領域と、側面部(傾斜側面部)とを有することが考慮されており、この際、側面部は、V字形状に形成されており、頂点と開角を有し、頂点は、構造体要素の底面の幾何学的な中心点に位置し、この際、構造体要素の上昇領域へ入射する光線束の部分は、第1出射光線束へ屈折されており、該第1出射光線束は、h軸線の下側に散乱されており、構造体要素の張出領域へ入射する光線束の部分は、第2出射光線束へ屈折されており、該第2出射光線束は、h軸線の上側に散乱されており、構造体要素のV字形状の側面部へ入射する光線束の部分は、各々、第3出射光線束と第4出射光線束へ屈折されており、この際、これらの出射光線束は、h軸線の上側の領域へ散乱されており、第3出射光線束と第4出射光線束は、散乱像において重なり合わない。
【0039】
この際、有利には、V字形状の側面部が8°と20°の間の範囲内の立上り勾配(所定の屈折・散乱を生じる立上り勾配)か、又はほぼ18.9°の立上り勾配を有し、第3出射光線束が垂直方向において3°と7°の間の領域へ、水平方向において−12°と−7°の間の領域へ散乱されており、第4出射光線束が垂直方向において3°と7°の間の領域へ、水平方向において+7°と+12°の間の領域へ散乱されていることが考慮されている。
【0040】
また構造体要素が、それらの底面の幾何学的な中心点において底面に対してそれらの最大間隔を有すると有利である。
【0041】
干渉作用を回避するために、構造体要素のサイズ、例えば外周円直径(Umkreisdurchmesser)及び/又は底面に対する最大間隔が、可視光の波長よりも大きい、特に遥かに大きいと有利である。
【0042】
この際、具体的には、底面に対する最大間隔がマイクロメートルの領域(オーダ)にあることを考慮することができる。
【0043】
この際、底面に対する最大間隔は、5〜10マイクロメートルの範囲内か、10〜13マイクロメートルの範囲内か、13〜17マイクロメートルの範囲内か、ほぼ9.3マイクロメートルか、ほぼ10.6マイクロメートルか、ほぼ12.15マイクロメートルか、又はほぼ16.6マイクロメートルであると有利である。
【0044】
本発明の具体的な一実施形態において、構造体要素の外周円直径ないし長さは、ミリメートルの領域(オーダ)にあることが考慮されている。
【0045】
この際、構造体要素の直径ないし長さが、0.5〜2ミリメートルか、ほぼ1ミリメートルであると有利であり得る。
【0046】
好ましくは、光学構造体は、照射装置の拡散ディスク(散乱ディスク Streuscheibe)の形式か又はカバーディスクの形式で構成されている光学系要素の少なくとも1つの境界面上、好ましくは正に1つの境界面上に配設されていることが考慮されている。
【0047】
本発明の具体的な一実施形態において、光学構造体は、照射装置のレンズの形式、特に投射レンズの形式の光学系要素の少なくとも1つの表面上に配設されていることを考慮することができる。
【0048】
それに加え、光学構造体が前記レンズの光出射面側に配設されていると、特に有利である。
【0049】
全ての光の流れからある1つの所定の(非修正の)光束を見た場合、該光束は、光像内の配光に対してある特定の寄与分を構成する(全ての光の流れが(全)配光を発生させている)。例えば非修正の光束は、ある所定の形状を伴う配光寄与分を発生させ、即ち路面上又は測定スクリーン上では、所定の領域が照射され、その他の領域は照射されていない(即ち明の領域と暗の領域を形成する)。
【0050】
本発明の具体的な一実施形態において、第1出射光線束は、非修正の第1配光を修正された第2配光に修正し、それにより修正された第2配光は、より低い勾配(明るさ勾配)のHD境界を有する。
【0051】
この際、更なる出射光線束(1つ以上)が、非修正の第1配光を修正された第2配光に修正して「サインライト」部分配光を構成すると目的に適うことができる。
【0052】
また最終的に本発明は、上述の光学構造体を少なくとも1つ、好ましくは正に1つ備えた照射装置(照明装置)に関する。
【0053】
例えば、照射装置は、投射系(投射システム Projektionssystem)である。
【0054】
この場合、好ましくは、照射装置は、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つのリフレクタ(反射器)と、少なくとも1つのレンズ、特に少なくとも1つの投射レンズとを含んでいることが考慮されている。
【0055】
この際、少なくとも1つの前記光学構造体が、前記レンズ上に配設されており、及び/又は、追加的な光学系要素として構成されていると有利であり得る。
【0056】
しかしまた、照射装置が反射系(反射システム Reflexionssystem)であることも考慮することができる。
【0057】
この場合、照射装置は、少なくとも1つのフリーフォームリフレクタ(自由形式反射器)と、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つの拡散ディスク及び/又は少なくとも1つのカバーディスクとを含んでいると目的に適うと分かった。
【0058】
この際、少なくとも1つの前記光学構造体が、前記少なくとも1つの拡散ディスク上に及び/又は前記少なくとも1つのカバーディスク上に配設されており、及び/又は、追加的な光学系要素として構成されていると有利である。
【0059】
以下、本発明を、有利であり限定されない実施例に基づき更に詳細に説明するが、これらの実施例は、3つの構成形態における構造体要素に関するものであり、添付の各々の図面に図示されている。尚、以下の実施例は、本発明の理解の容易化のためのものであって、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者により実施可能な付加や置換、開示された各要素の選択ないし選択的組合せ等を排除することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】直線的な側面部を有する構造体要素の一実施例の側面断面図を示す図であり、この図には、当該構造体要素へ入射する光線束と、3つの出射光線束とが図示されている。
【
図2】
図1による構造体要素の散乱像を示す図である。
【
図3】六角形の底面をもち、1つの立上り側面部を有する構造体要素を上から見た図である。
【
図4】
図3による構造体要素のA-A線に沿った側面断面図を示す図である。
【
図5】
図3による構造体要素の斜視図を示す図である。
【
図6】六角形の底面をもち、3つの立上り側面部を有する構造体要素を上から見た図である。
【
図7】
図6による構造体要素のB-B線に沿った側面断面図を示す図である。
【
図8】
図6による構造体要素の斜視図を示す図である。
【
図9】
図6による構造体要素の散乱像を示す図である。
【
図10】六角形の底面をもち、V字形状の立上り側面部を有する構造体要素を上から見た図である。
【
図11】
図10による構造体要素のC-C線に沿った側面断面図を示す図である。
【
図15】六角形の格子の2列ごとの構造体要素の配設構成(配列)を示す図である。
【
図16】従来技術による一投射モジュールを模式的に示す図である。
【
図17】従来技術による一反射モジュールを模式的に示す図である。
【
図18】レンズの外面部において本発明による光学構造体を備えた一投射モジュールを模式的に示す図である。
【
図19】カバーディスク又は拡散ディスクの外面部において本発明による光学構造体を備えた一反射モジュールを模式的に示す図である。
【
図20】ディスクのような追加的な光学系要素において本発明による光学構造体を備えた一投射モジュールを模式的に示す図である。
【
図21】ディスクのような追加的な光学系要素において本発明による光学構造体を備えた一反射モジュールを模式的に示す図である。
【
図22】非修正の一ロービーム配光を示す図である。
【
図23】修正された一ロービーム配光を示す図である。
【実施例】
【0061】
先ず
図1について説明するが、
図1は、上昇(肉厚)領域(Anstiegsbereich)17と、張出(突出)領域(Auslaufbereich)18と、側面部(傾斜側面部)19aとを有する一構造体要素5の側面断面図を示している。ここでは非図示の照射部により放射された入射光束(光線束)6は、構造体要素5を通過し、出射時には、光線束6の通過部分が上昇領域17から出射するか、張出領域18から出射するか、又は側面部19aから出射するかにより異なって屈折される。この際、全体として、散乱像において重なり合わない3つの異なる光線束7、8、9aが構成される。この際に発生する散乱像は、
図2に示されており、
図2は、側面部19aを有する構造体要素5の散乱像を示している。この際、光線束7は、修正された第2配光の勾配(明るさ勾配:
図2の領域GA)の緩和に寄与し、またこの際、光線束9aにより上述のサインライトが実現される(
図2の領域SL)。
【0062】
図1の構造体要素5は、
図3〜
図5において様々な目視点から図示されている。この際、
図3は、六角形の底面10をもち、1つの立上り側面部19aを有する構造体要素5を上から見た図(平面図)を示している。構造体要素5は、構造体要素5の幾何学的な中心点24を通り六角形の底面10の2つの辺を介した対角線(隣接する2つの辺の両端の角を結ぶ対角線)15と平行に延在する線A-Aに関し、鏡面対称に構成されている。
図3におけるA-A線に沿った構造体要素5の側面断面図が
図4に示されており、この際、上昇領域(台状に上昇した肉厚領域)17が直線的に延在し、張出(突出)領域18が実質的にS字形状で延在し、好ましくはcos関数に類似するかたちで延在していることを見ることができる。また
図5は、
図3による構造体要素5の斜視図を示している。
【0063】
図6〜
図13は、構造体要素5の更なる2つの実施例と、それらに対応する散乱像(
図9と
図13)に関するものである。
【0064】
図6は、六角形の底面10をもち、3つの立上り側面部19a、19b、19cを有する構造体要素5を上から見た図を示している。この際、入射光線束の通過時には、5つの異なる光線束が構成される。側面部19aと側面部19cの立上り勾配角は、同じであり、側面部19bの立上り勾配角とは異なっている。このことは、散乱像において、側面部19aにおいて出射する光線束が、側面部19cにおいて出射する光線束と重なり合うことをもたらし、このことは、散乱像においてサインライトの領域SLの光関与分が3つの区域ではなく2つの区域を含んでいるという
図9において図示された散乱像から見て取れる。
図7は、
図6による構造体要素5のB-B線に沿った側面断面図を示しており、この際、前記側面部の異なる立上り勾配角が明確にされている。
図8は、
図6による構造体要素5の斜視図を示している。
【0065】
図10は、六角形の底面10をもち、V字形状の立上り側面部19aを有する構造体要素を上から見た図を示している。この際、V字形状の側面部19aは、開角22を有し、V字形状の側面部19aの頂点(エッジ線の中央部)21が、六角形の底面10の幾何学的な中心点と同じである構造体要素5の幾何学的な中心点21に位置しているように構成されている。側面部19aのV字形状により、入射光線束6の出射時には、全体として、異なる空間的な方向へ伝播する4つの出射光線束が構成され、これらは、散乱像において重なり合うことはない。
図13におけるサインライトの領域SLへの光関与分は、実質的に、h軸線に対して傾斜した縦長の2つの区域から構成される。構造体要素5のこの実施例において、勾配緩和(明るさ勾配緩和 Gradientenaufweichung)GAのための光関与分は、比較的大きい。
【0066】
図11は、
図10による構造体要素5のC-C線に沿った側面断面図を示している。
図12は、
図10による構造体要素5の斜視図を示している。
【0067】
構造体要素5のこれらの全ての実施例は、例えば、底面10に対する構造体要素5の(突出高さ)最大間隔23や、外周円直径25のような固有値を有する。これらの固有値は、各々、マイクロメートルないしミリメートルの範囲にあり、干渉作用を発生させないために、照射装置により放射される光の典型的な波長と比べて十分に大きい。
【0068】
全ての構造体要素は、
図14において図示されている六角形の格子13を覆っている。
図14における格子(ないし格子構造)13は、格子の規則性からのずれを勿論考えることができるが、正六角形の格子(ないしこれらの集合体)である。構造体要素5、5’(
図15参照)の底面10は、格子13の頂点12と頂点12の間にある面11を完全に覆っており、この際、各面(各格子面)11は、正に1つの構造体要素5、5’の底面10により覆われている。更に格子13は、平行に延在する複数の列14、14’に分割して見ることが可能である。そのような列14、14’は、隣り合う複数の面11から成り、1つの面11の2つの辺を介した対角線(隣接する2つの辺の両端の角を結ぶ対角線)15により定義される方向16へ延在している。
【0069】
図15は、構造体要素5の底面10が六角形の格子13を2列14’ごと(即ち1列おき)に覆っており、その他の構造体要素5’の底面が六角形の格子13の残った面を覆っているという光学構造体の一実施例を示している。
【0070】
更に照射装置2における、構造体要素5、5’から構成される光学構造体1の配設可能性について説明する。
【0071】
図16は、投射系(投射モジュール)の形式の一照射装置2を模式的に示しており、該照射装置2は、リフレクタ30と、光源29と、(オプションとして)シールド部材(遮光スクリーン部材)32と、湾曲した外面部28及び平坦な内面部を有する投射レンズ27(以下、単に「レンズ27」とも称する)とを備えている。
【0072】
図17は、反射系(反射モジュール)の形式の一照射装置2を模式的に示しており、該照射装置2は、リフレクタ30と、光源29と、拡散ディスクないしカバーディスク26(以下、単に「ディスク26」とも称する)とを備えている。
【0073】
図18は、
図16による投射系の模式的な図を示しているが、本発明による光学構造体1がレンズ27の外面部28に配設されている。この際、この光学構造体1は、好ましくはレンズ27の外面部28の全体を覆っている。
【0074】
図19は、拡散ディスクないしカバーディスク26の外面部において本発明による光学構造体1を備えた、
図17による反射モジュールの模式的な図を示しており、この際、好ましくは、光学構造体1は、ディスク26の外面部の全体を覆っている。
【0075】
図20は、
図16に図示された投射モジュールの模式的な図を再度示しているが、ディスク(ないしプレート)のような追加的な光学系要素31として本発明による光学構造体1が備えられており、この際、その光学系要素31は、シールド部材32とレンズ27との間に配設されている。
【0076】
最後に
図21は、光源29と拡散ディスクないしカバーディスク26との間に配設されているディスクのような追加的な光学系要素31として本発明による光学構造体1を備えた、
図17による反射モジュールの模式的な図を示している。
【0077】
これらの図は、専ら本発明による光学構造体1の配設構成の可能性の幾つかを具体的に図示するためのものである。基本的に照射装置は、複数の光源を有することも可能であるし、例えば光源としてLEDを有することも可能であり、また光成形体(ライトフォーミングボディ)は、1つ又は複数の光導体やリフレクタなどの形式で構成することも可能である。
【0078】
全般的なこととして、光学構造体1は、照射装置2の全ての光の流れの少なくとも一部分、好ましくは光学的に重要な全ての光の流れが光学構造体1を通過するように、照射装置2に付設されているか又は照射装置2の一部であるということが該当する。
【0079】
特に、光学構造体1が均等に照らされているように、光学構造体1が配設され、及び/又は構成されていると有利である。
【0080】
最後に、
図22及び
図23は、非修正の第1配光3及び修正された第2配光4を示している。この際、
図22における非修正の第1配光3は、直線的なHD境界を有するロービーム配光3として図示されている。
図23における修正された第2配光4は、第1配光3を修正したものであり、本発明による光学構造体1の使用により追加的に発生する2つの領域を含んでいる。即ち勾配緩和(明るさ勾配緩和)の領域GAと、サインライトの領域SLである。
【0081】
図23では、サインライトを発生させるために、HD境界の上側の領域SLがある特定の照射強度で照射されることが見て取れる。この際、照射装置2の光の流れの一部分がこの領域SLへ、即ちHD境界の上側に結像される。このようにして本発明による光学構造体1は、最適の状態で、冒頭に記述したサインライトを発生させることが可能である。
【0082】
HD境界は、非修正の配光のHD境界よりも低い勾配(明るさ勾配)を有し、このことは、明暗境界(HD境界)の領域における等照度線の間隔が(
図22のものと比べて)より大きいことにより模式的に示されている。従って修正された第2配光4のHD境界は「よりソフト」(weicher)である。
【0083】
尚、本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また本発明の全開示の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。即ち本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0084】
1 光学構造体
2 照射装置
3 非修正の第1配光
4 修正された第2配光
5、5’ 構造体要素
6 入射光束(光線束)
7 光線束(出射)
8 光線束(出射)
9a 光線束(出射)
10 底面
11 格子の頂点の間にある面
12 格子の頂点
13 格子
14、14’ 格子の列
15 対角線(隣接する2つの辺の両端の角を結ぶ対角線)
16 格子の列の方向
17 上昇領域(台状に上昇した肉厚領域)
18 張出領域(突出領域)
19a 側面部(立上り側面部)
19b 側面部(立上り側面部)
19c 側面部(立上り側面部)
20 対角線15と平行な軸線
21 頂点/中心点
22 開角
23 底面に対する最大間隔(又は底面への垂直線)
24 幾何学的な中心点
25 外周円直径(外接円直径)
26 拡散ディスクないしカバーディスク
27 投射レンズ
28 外面部
29 光源
30 リフレクタ
31 光学系要素
32 シールド部材
GA 勾配緩和(明るさ勾配緩和)の領域
SL サインライトの領域