特許第6266694号(P6266694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266694
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】多段式駐車装置とその改造方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/06 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   E04H6/06 V
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-106672(P2016-106672)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-210847(P2017-210847A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513256284
【氏名又は名称】株式会社IHI扶桑エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】井口 勝
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−209799(JP,A)
【文献】 実開昭60−182450(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00−6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースを有する多段式駐車装置であって、
車両を載せて前記駐車スペースにそれぞれ収容可能な複数のパレットと、
前記車両が入出庫する入出庫高さと、前記駐車スペースとの間で、各パレットを昇降可能な昇降装置と、を備え、
前記昇降装置は、複数の前記パレットを一体的に昇降する昇降フレームと、
前記昇降フレームを昇降させる昇降駆動装置と、を有し、
さらに、前記昇降フレームに固定され、前記パレットの少なくとも1つを車両支持位置からその上方又は下方のシフト位置に移動させるシフト装置を備え、
前記駐車スペースにおける前記パレットの少なくとも1つが、上方又は下方にシフト可能に構成されている、多段式駐車装置。
【請求項2】
前記シフト装置は、前記昇降フレームに固定され、前記パレットを前記シフト位置に移動させる第1昇降具を備える、請求項に記載の多段式駐車装置。
【請求項3】
前記第1昇降具は、チェーン式又は油圧式の直動アクチュエータ又はスクリュージャッキ、或いは、ピンとピン穴、ボルトとボルト穴、又はドリルビスである、請求項に記載の多段式駐車装置。
【請求項4】
同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースを有する既設の多段式駐車装置の改造方法であって、
前記多段式駐車装置は、車両を載せて前記駐車スペースにそれぞれ収容可能な複数のパレットと、
前記車両が入出庫する入出庫高さと、前記駐車スペースとの間で、各パレットを昇降可能な昇降装置と、を備えており、
前記昇降装置は、複数の前記パレットを一体的に昇降する昇降フレームと、
前記昇降フレームを昇降させる昇降駆動装置と、を有し、
さらに、前記昇降フレームに固定され、前記パレットの少なくとも1つを車両支持位置からその上方又は下方のシフト位置に移動させるシフト装置を備え、
前記駐車スペースにおける前記パレットの少なくとも1つを、その上方又は下方にシフトする、多段式駐車装置の改造方法。
【請求項5】
前記パレットの前記シフトは、直動アクチュエータ又はスクリュージャッキ、又は、ボルト留め、ドリルビス留め、ピンとピン穴、又は溶接による、請求項に記載の多段式駐車装置の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースを有する多段式駐車装置とその改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多段式駐車装置は、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースが設けられ、入出庫高さと駐車スペースとの間で車両を載せたパレットを昇降させるものである。
かかる多段式駐車装置は、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−22227号公報
【特許文献2】特開2003−97075号公報
【特許文献3】特開2012−241382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の多段式駐車装置は、入庫する基準車両の最大寸法(車長、車幅、車高、重量)が設定されている。そのため、基準車両の最大寸法を超える車両の入庫はできない。
しかし、近年、車高の高い車両(例えば、ハイルーフ車、ミニバン、SUV、重量車)の普及率が高まり、入庫する車両が既設の多段式駐車装置の最大車高を超えることがある。
このような場合、従来は、車高の高い車両(以下、「高車両」)は、外部の平置き駐車場などに駐車しているが、移動時間のロスやセキュリティの問題が発生する。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、既設の多段式駐車装置の改造に適用でき、基準車両の最大車高を超える高車両を、入庫させて装置内部に収容することができる多段式駐車装置とその改造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースを有する多段式駐車装置であって、
車両を載せて前記駐車スペースにそれぞれ収容可能な複数のパレットと、
前記車両が入出庫する入出庫高さと、前記駐車スペースとの間で、各パレットを昇降可能な昇降装置と、を備え、
前記昇降装置は、複数の前記パレットを一体的に昇降する昇降フレームと、
前記昇降フレームを昇降させる昇降駆動装置と、を有し、
さらに、前記昇降フレームに固定され、前記パレットの少なくとも1つを車両支持位置からその上方又は下方のシフト位置に移動させるシフト装置を備え、
前記駐車スペースにおける前記パレットの少なくとも1つが、上方又は下方にシフト可能に構成されている、多段式駐車装置が提供される。
【0008】
前記シフト装置は、前記昇降フレームに固定され、前記パレットを前記シフト位置に移動させる第1昇降具を備える。
【0009】
前記第1昇降具は、チェーン式又は油圧式の直動アクチュエータ又はスクリュージャッキ、或いは、ピンとピン穴、ボルトとボルト穴、又はドリルビスである。
【0015】
また本発明によれば、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースを有する既設の多段式駐車装置の改造方法であって、
前記多段式駐車装置は、車両を載せて前記駐車スペースにそれぞれ収容可能な複数のパレットと、
前記車両が入出庫する入出庫高さと、前記駐車スペースとの間で、各パレットを昇降可能な昇降装置と、を備えており、
前記昇降装置は、複数の前記パレットを一体的に昇降する昇降フレームと、
前記昇降フレームを昇降させる昇降駆動装置と、を有し、
さらに、前記昇降フレームに固定され、前記パレットの少なくとも1つを車両支持位置からその上方又は下方のシフト位置に移動させるシフト装置を備え、
前記駐車スペースにおける前記パレットの少なくとも1つを、その上方又は下方にシフトする、多段式駐車装置の改造方法が提供される。
【0016】
前記パレットの前記シフトは、直動アクチュエータ又はスクリュージャッキ、又は、ボルト留め、ドリルビス留め、ピンとピン穴、又は溶接による。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明によれば、既設の多段式駐車装置の駐車スペースにおけるパレットの少なくとも1つを、上方又は下方にシフト可能に構成することにより、既設の多段式駐車装置の改造に適用できる。新設の多段式駐車装置の場合も同様である。
このシフトにより、下方又は上方の駐車スペースの入庫可能な車高が基準車両の最大車高よりも高くなるので、基準車両の最大車高を超える高車両を、入庫させて装置内部に収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による第1実施形態の多段式駐車装置の正面図である。
図2】昇降フレームの正面図である。
図3】連結ブラケットの説明図である。
図4】本発明による第2実施形態の多段式駐車装置の正面図である。
図5図1の右側面図である。
図6】本発明による第3実施形態の多段式駐車装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明による第1実施形態の多段式駐車装置10の正面図である。この例において、本発明の多段式駐車装置10は、地上1段、地下2段の3列昇降式であり、3列の同一の設置スペースA,B,Cにそれぞれ2段以上(この例で3段)の駐車スペースS(S1,S2,S3)が設けられている。
なお、設置スペースA,B,Cとは、多段式駐車装置10が設置されている敷地を示している。
【0021】
また図1において、本発明の多段式駐車装置10は、各設置スペースA,B,Cにそれぞれ、複数(この例で3枚)のパレット12(この例で、12a,12b,12c)と昇降装置14とを備える。
【0022】
昇降装置14は、ピットPの底に固定され鉛直に延びる複数の柱15と、複数のパレット12を一体的に昇降する昇降フレーム16と、昇降フレーム16を昇降させる昇降駆動装置17と、を有する。昇降フレーム16は、複数(例えば4本)の柱15の内側近傍に位置する。
昇降駆動装置17は、例えばチェーン又はワイヤロープと、これを吊上げて昇降させる減速機付きの電動機又は直動アクチュエータからなる。なお、昇降駆動装置17は、油圧式であってもよい。
【0023】
図2は、昇降フレーム16の正面図であり、(A)はシフト前、(B)はシフト後を示している。
図2(A)(B)において、昇降フレーム16は、鉛直に延びる4本の継ぎ支柱16aと、複数のパレット12の四隅を継ぎ支柱16aに固定する複数の連結ブラケット16bとを有する。複数の連結ブラケット16bは、パレット12の四隅にそれぞれボルト又は溶接により固定されている。
【0024】
この例で、複数(3枚)のパレット12は、連結ブラケット16b,16cを介して継ぎ支柱16aに位置決めされ、その上の駐車スペースS(S1,S2,S3)に車両1(図2(A)では基準車両1a)を載せてそれぞれ収容可能に設定されている。
【0025】
上述した構成により、図1において、昇降装置14により、車両1が入出庫する入出庫高さHと、各駐車スペースS(S1,S2,S3)との間で、各パレット12を昇降可能である。
【0026】
この例において、最下段と最上段のパレット12a,12cは、それぞれ連結ブラケット16bを介して継ぎ支柱16aの最上部と最下部にボルト又は溶接により固定されている。この構成により、最下段と最上段のパレット12a,12cに、基準車両1a又は高車両1bを載せて装置内部に収容することができる。
高車両1bは、基準車両1aの最大車高を超える車両1(例えば、ハイルーフ車、ミニバン、SUV、重量車)である。重量車とは、基準車両1aの最大車高及び最大重量を超える車両1(例えば、ベンツ)である。
【0027】
図2(A)(B)において、駐車スペースSにおけるパレット12の少なくとも1つ(この例ではパレット12b)が、上方又は下方にシフト可能に構成されている。
この例において、本発明の多段式駐車装置10は、昇降フレーム16に固定されたシフト装置18を備える。シフト装置18は、パレット12の少なくとも1つ(この例ではパレット12b)を車両支持位置h1からその上方のシフト位置h2に移動できるようになっている。
車両支持位置h1は、この例では、昇降フレーム16において基準車両1aを支持するパレット12bの位置(高さ)であり、シフト位置h2は、昇降フレーム16においてパレット12aが高車両1bを支持するときのパレット12bの位置(高さ)である。シフト位置h2は、高車両1bの車高に応じて、設定することが好ましい。
【0028】
図3は、連結ブラケット16cの説明図である。この図において、(A)は、図2のC部拡大図である。
図3(A)において、中間段のパレット12bは、連結ブラケット16cを介して継ぎ支柱16aの中間段に位置決めされる。
【0029】
図2図3(A)の例において、シフト装置18は、複数の支持金具18aと第1昇降具18bとを備える。複数の支持金具18aは、昇降フレーム16にボルト又は溶接で固定され、車両支持位置h1においてパレット12bを支持する。なお、支持金具18aは、必須ではなく、これを省略してもよい。
この例において、第1昇降具18bは、昇降フレーム16に固定され、連結ブラケット16cに固定されたパレット12bを車両支持位置h1からシフト位置h2に移動させる。
【0030】
第1昇降具18bは、例えば、チェーン式又は油圧式の直動アクチュエータ又はスクリュージャッキであるのがよい。
この場合、連結ブラケット16cに固定されたパレット12bのシフト(移動)を短時間にでき、入庫する車両1の種類(基準車両1a又は高車両1b)に応じて、車両支持位置h1又はシフト位置h2を選択することができる。
【0031】
図3(B)は連結ブラケット16cの第2実施形態である。
【0032】
図3(B)において、第1昇降具18bは、ピンとピン穴、ボルトとボルト穴、又はドリルビスであり、これらにより、パレット12bをシフト位置h2に移動させて連結ブラケット16cを昇降フレーム16に固定する。
この場合、昇降フレーム16には、連結ブラケット16cを固定するための複数のボルト穴又はピン穴が設けられる。また複数のボルト穴又はピン穴は、昇降フレーム16の中間に2箇所以上設けられ、その位置(高さ)に連結ブラケット16bを介してパレット12bをシフト可能に固定するようになっている。
なお、溶接により、昇降フレーム16に連結ブラケット16cを固定してもよい。
【0033】
図3(C)は、連結ブラケット16cの第3実施形態である。図3(D)は、図3(C)のD−D矢視図である。
この例において、連結ブラケット16cは、第1L形金具16c1と第2L形金具16c2とからなる。第1L形金具16c1は、パレット12bの幅方向外側にボルト又は溶接により固定される。1対の第2L形金具16c2は、第1L形金具16c1にそれぞれ固定され、かつ継ぎ支柱16aの両側面に固定される。
この固定方法は、ボルト留め、ドリルビス留め、ピンとピン穴、又は溶接であり、これらにより、パレット12bをシフト位置h2に移動させて連結ブラケット16cを昇降フレーム16に固定する。
【0034】
上述した第1実施形態の構成により、駐車スペースSのパレット12の少なくとも1つ(例えば、パレット12b)を上方又は下方にシフトすることができる。
このシフトにより、下方又は上方の駐車スペースS(図2(B)のS1)の入庫可能な車高が基準車両1aの最大車高よりも高くなるので、基準車両1aの最大車高を超える高車両1bを、入庫させて装置内部に収容することができる。
【0035】
例えば、基準車両1aの最大寸法は、車長4700mm、車幅1700mm、車高1550mm、重量1600kgであり、車高の高い高車両1bの最大寸法は、車長4700mm、車幅1700mm、車高2000mm、重量2000kgである。
【0036】
この場合、図2(B)に示すように、車高の高い高車両1bを、駐車スペースS1に入庫させて装置内部に収容することができる。
なお、図2(B)において、シフト位置h2を車両支持位置h1の下方に設定し、高車両1bを、駐車スペースS2に入庫させて装置内部に収容してもよい。
【0037】
また、この場合、パレット12bのシフトにより、上方の駐車スペースS(図2(B)のS2)は、全高が低く車両1の入庫はできなくなる。その結果、昇降フレーム16に載る車両1の総重量は、1600×3=4800kgから2000×2=4000kgに軽減される。
従って、基準車両1aの最大重量を超える高車両1bを、同一の昇降装置14を用いて入庫させて装置内部に収容することができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した基準車両1a及び高車両1bの最大寸法に限定されず、同一のパレット12を利用できる限りで、車長又は車幅が相違してもよい。例えば、車長(車両1の全長)が、4700mm、4900mm又は5050mm、車幅(車両1の全幅)が1700mm又は1850mmであってもよく、それ以外でもよい。
【0039】
図1において、本発明の多段式駐車装置10は、さらに制御装置30を備える。
制御装置30は、各パレット12の昇降を制御し、車両1が入出庫する入出庫高さHと、各駐車スペースS(S1,S2,S3)との間で、各パレット12を昇降させる。
また、シフト装置18によりパレット12の少なくとも1つをシフト位置h2に移動した場合に、制御装置30は、車両1が入庫できないパレット12(例えば12b)が入出庫高さHに停止しないようにインターロックする。この場合、その設置スペースの段数はその分少なくなる。
【0040】
図4は、本発明による第2実施形態の多段式駐車装置10の正面図であり、図5図3の右側面図である。この例において、本発明の多段式駐車装置10は、地上3段の3列昇降横行式であり、3列の同一の設置スペースA,B,Cにそれぞれ2段以上(この例で3段)の駐車スペースS(この例でS1,S2,S3)が設けられている。
【0041】
また図4において、本発明の多段式駐車装置10は、各設置スペースA,B,Cにそれぞれ収容可能な複数のパレット12(この例で、12a,12b,12c)と昇降装置14とを備える。
【0042】
図4において、1段目のパレット12aは、幅方向に横行可能であり、2段目のパレット12bは、横行と昇降が可能であり、3段目のパレット12cは、昇降のみが可能になっている。
従って、この例において、車両1の収容台数は、パレット12の横行に空スペースが必要となる1段目に2台、パレット12の昇降に1台分の空スペースが必要となる2段目に2台、3段目に3台で計7台である。
【0043】
1段目のパレット12aの下には、パレット12aを幅方向(図4で左右方向)に横行する横行装置(図示せず)を備える。
【0044】
昇降装置14は、パレット12の少なくとも1つ(この例で、パレット12b,12c)を単独に昇降する複数の吊上げ装置19を有する。
2段目に位置する2つのパレット12bは、横行枠20に設けられた吊上げ装置19によって吊り上げられている。横行枠20は、長さ方向両端部に車輪を有し、2段目に設けられた2本の水平レール21に沿って水平駆動装置(図示せず)により幅方向に水平に横行する。
3段目の3つのパレット12cは、吊上げ装置19によって吊り上げられている。
【0045】
上述した構成により、昇降装置14により、車両1が入出庫する入出庫高さH(図1参照)と、各駐車スペースS(S1,S2,S3)との間で、各パレット12を昇降させることができる。
この作動行程は、従来の昇降横行式の多段式駐車装置と同様である。
【0046】
吊上げ装置19は、パレット12の昇降にロープを用いるロープ式、パレット12の昇降にチェーンを用いるチェーン式、又は駆動源に油圧を用いる油圧式であるのがよい。
【0047】
図5において、吊上げ装置19の少なくとも1つは、パレット12(この例で、パレット12b)を車両支持位置h1からその上方又は下方のシフト位置h2に移動させるシフト装置22を備える。
車両支持位置h1は、この例では、駐車スペースS2において基準車両1aを支持するパレット12bの位置(高さ)であり、シフト位置h2は、駐車スペースS1においてパレット12aが高車両1bを支持するときのパレット12bの位置(高さ)である。シフト位置h2は、高車両1bの車高に応じて、設定することが好ましい。
【0048】
この例において、シフト装置22は、4組の吊ロープ23と第2昇降具24とを備える。
4組の吊ロープ23は、一端23aがパレット12bに固定され、パレット12bを吊下げて鉛直上方に延びる。
第2昇降具24は、4組の吊ロープ23を案内する複数のシーブ24aと、シーブ24aを移動させるシーブ移動装置24bと、を有し、4組の吊ロープ23の吊下げ長さを変化させて、パレット12を車両支持位置h1からシフト位置h2に移動させる。
【0049】
シーブ移動装置24bは、例えば、直動アクチュエータ又はスクリュージャッキである。
この場合、シーブ移動装置24bによりパレット12のシフト(移動)を短時間にでき、入庫する車両1の種類(基準車両1a又は高車両1b)に応じて、車両支持位置h1又はシフト位置h2を選択することができる。
【0050】
なお、第2昇降具24は、吊ロープ23の一端23aとパレット12の間に設けられ、その間の高さを変更可能な連結金具(例えば、ボルトとナット)であってもよい。
【0051】
上述した第2実施形態の構成により、パレット12の少なくとも1つ(図4図5のパレット12b)を上方にシフトすることができる。
このシフトにより、下方の駐車スペースS(図4のS1)の入庫可能な車高が基準車両1aの最大車高よりも高くなるので、高車両1bを入庫させて装置内部に収容することができる。
【0052】
この場合、このシフトにより、上方の駐車スペースS(図4のS2)は、全高が低いため、基準車両1aの入庫はできなくなる。
なお、3段目のパレット12cをシフトするシフト装置22を備え、図4図5のパレット12cを上方にシフトし、その下方のパレット12bに高車両1bを入庫させてもよい。
また、パレット12の少なくとも1つ(例えば、3段目のパレット12c)を撤去又は移動しても、同じ目的を達成することができる。
【0053】
例えば、上述した基準車両1a及び高車両1bの最大寸法の場合に、図4図5に示すように、高車両1bを駐車スペースS1に入庫させて装置内部に収容することができる。
【0054】
また、この場合、昇降装置14(吊上げ装置19)がブレーキなどで停止した状態で、シーブ移動装置24bによりシーブ24aを移動させるので、昇降装置14に過大な負荷が作用しない。従って、基準車両1aの最大重量を超える高車両1bを、同一の昇降装置14を用いて入庫させて装置内部に収容することができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した基準車両1a及び高車両1bの最大寸法に限定されず、同一のパレット12を利用できる限りで、車長又は車幅が相違してもよい。
また、本発明の多段式駐車装置10が昇降横行式の場合には、高車両1bを載せて幅方向に横行するパレット12a(又は12b)が支障なく横行できるように、高車両1bと干渉するパレット12b(又は12c)の全てを同様にシフトすることが好ましい。
【0056】
図4において、本発明の多段式駐車装置10は、さらに制御装置30を備える。
制御装置30は、各パレット12の横行及び昇降を制御し、車両1が入出庫する入出庫高さHと、各駐車スペースS(S1,S2,S3)との間で、各パレット12を昇降させる。
また、シフト装置22によりパレット12の少なくとも1つをシフト位置h2に移動した場合に、制御装置30は、車両1が入庫できない駐車スペースSのパレット12が入出庫高さHに停止しないようにインターロックする。この場合、その設置スペースの段数はその分少なくなる。
【0057】
図6は、本発明による第3実施形態の多段式駐車装置10の正面図である。この例において、本発明の多段式駐車装置10は、地上3段、地下2段の3列昇降横行式であり、3列の同一の設置スペースA,B,Cにそれぞれ2段以上(この例で5段)の駐車スペースS(S1,S2,S3、S4,S5)が設けられている。
【0058】
この例において、地下2段の構成は、第1実施形態の最上段のパレット12cがない点を除き、第1実施形態と同様である。また、この例において、地上3段の構成は、第2実施形態と同様である。
【0059】
上述した第3実施形態の構成により、パレット12の少なくとも1つ(この例では、パレット12b,12e)を、上方又は下方にシフト可能に構成することができる。
このシフトにより、下方又は上方の駐車スペースS(図6のS1,S4)の入庫可能な車高が基準車両1aの最大車高よりも高くなるので、高車両1bを入庫させて装置内部に収容することができる。
その他の構成は、上述した第1〜第2実施形態と同様である。
【0060】
本発明の多段式駐車装置10の改造方法は、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースSを有する既設の多段式駐車装置の改造方法であり、駐車スペースSのパレット12の少なくとも1つを、その上方又は下方にシフトする。
このパレット12のシフトは、直動アクチュエータ又はスクリュージャッキ、又は、ボルト留め、ドリルビス留め、ピンとピン穴、又は溶接によるのがよい。
なお、駐車スペースSのパレット12の少なくとも1つを撤去又は移動しても、同じ目的を達成することができる。
【0061】
上述した本発明の改造方法によれば、既設の多段式駐車装置の駐車スペースSにおけるパレット12の少なくとも1つを、上方又は下方にシフト可能に構成することにより、既設の多段式駐車装置の改造に適用できる。新設の多段式駐車装置10の場合も同様である。
このシフトにより、下方又は上方の駐車スペースSの入庫可能な車高が基準車両1aの最大車高よりも高くなるので、高車両1bを入庫させて装置内部に収容することができる。
【0062】
上述したように本発明は、以下の効果を有する。
(1)基準車両1aの最大車高を超える高車両1bを、入庫させて装置内部に収容することができる。
(2)基準車両1aの最大重量を超える高車両1bを、同一の昇降装置14を用いて入庫させて装置内部に収容することができる。
(3)既設の多段式駐車装置10の改造と、新設の多段式駐車装置10の両方に適用できる。
(4)第1昇降具18b又は第2昇降具24によりパレット12のシフト(移動)を短時間にでき、入庫する車両1の種類(基準車両1a又は高車両1b)に応じて、車両支持位置h1又はシフト位置h2を選択することができる。
【0063】
また本発明により、以下の付随する効果が得られる。
(5)外部の平置き駐車場などに高車両1bを駐車させる必要がなくなり、高車両1bの移動時間のロスを低減し、セキュリティを高めることができる。
(6)外部の平置き駐車場などの外部契約が減り、多段式駐車装置10の利用率(すなわち賃貸料)が増加する。
【0064】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースSを有する多段式駐車装置10である限り、多段式駐車装置10の列数、地下又は地上の段数を、任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0065】
A,B,C 設置スペース、H 入出庫高さ、h1 車両支持位置、h2 シフト位置、
P ピット、S,S1,S2,S3,S4,S5 駐車スペース、
1 車両、1a 基準車両、1b 高車両、10 多段式駐車装置、
12,12a,12b,12c,12d,12e パレット、
14 昇降装置、15 柱、16 昇降フレーム、16a 継ぎ支柱、
16b,16c 連結ブラケット、16c1 第1L形金具、16c2 第2L形金具、
17 昇降駆動装置、18 シフト装置、18a 支持金具、18b 第1昇降具、
19 吊上げ装置、20 横行枠、21 水平レール、22 シフト装置、
23 吊ロープ、23a 一端、24 第2昇降具、24a シーブ、
24b シーブ移動装置、30 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6