特許第6266695号(P6266695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266695
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】血液浄化装置及びそのプライミング方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   A61M1/36 121
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-112989(P2016-112989)
(22)【出願日】2016年6月6日
(65)【公開番号】特開2017-217161(P2017-217161A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2017年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晋也
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−245970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14−1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を体外循環可能な動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有する血液回路と、
前記動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、
前記血液回路に接続されるとともに、プライミング液を流通可能なプライミング液流通ラインと、
前記血液回路にて血液を体外循環させつつ前記血液浄化手段で血液を浄化させて血液浄化治療を行う前、前記プライミング液流通ラインを介して前記血液回路に対してプライミング液を供給又は排出させて当該血液回路のプライミングを行わせる制御手段と、
を具備した血液浄化装置において、
前記制御手段は、前記プライミング終了後であって前記血液浄化治療前に、前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させ得ることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記プライミング液流通ラインは、前記血液回路に形成された気液分離のためのエアトラップチャンバに接続されるとともに、当該エアトラップチャンバに対して空気を供給又は排出させて液面を調整し得る液面調整手段を具備して構成され、前記制御手段は、前記液面調整手段を作動させて空気を供給させることにより前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させ得ることを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記プライミング液流通ラインは、前記血液回路に形成された気液分離のためのエアトラップチャンバに接続されるとともに、前記制御手段は、前記血液浄化装置が具備するポンプ又は電磁弁を動作させることにより前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を当該エアトラップチャンバ内に吸入させて空気と置換させ得ることを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記プライミング液流通ラインは、プライミング時において前記血液回路内からプライミング液を排出させ得るオーバーフローラインから成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記プライミング液流通ラインは、プライミング時において前記血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインから成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項6】
患者の血液を体外循環可能な動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有する血液回路と、
前記動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、
前記血液回路に接続されるとともに、プライミング液を流通可能なプライミング液流通ラインと、
前記血液回路にて血液を体外循環させつつ前記血液浄化手段で血液を浄化させて血液浄化治療を行う前、前記プライミング液流通ラインを介して前記血液回路に対してプライミング液を供給又は排出させて当該血液回路のプライミングを行わせる制御手段と、
を具備した血液浄化装置のプライミング方法において、
前記プライミング終了後であって前記血液浄化治療前に、前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させることを特徴とする血液浄化装置のプライミング方法。
【請求項7】
前記プライミング液流通ラインは、前記血液回路に形成された気液分離のためのエアトラップチャンバに接続されるとともに、当該エアトラップチャンバに対して空気を供給又は排出させて液面を調整し得る液面調整手段を具備して構成され、前記液面調整手段を作動させて空気を供給させることにより前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させ得ることを特徴とする請求項6記載の血液浄化装置のプライミング方法。
【請求項8】
前記プライミング液流通ラインは、前記血液回路に形成された気液分離のためのエアトラップチャンバに接続されるとともに、前記血液浄化装置が具備するポンプ又は電磁弁を動作させることにより前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を当該エアトラップチャンバ内に吸入させて空気と置換させ得ることを特徴とする請求項6記載の血液浄化装置のプライミング方法。
【請求項9】
前記プライミング液流通ラインは、プライミング時において前記血液回路内からプライミング液を排出させ得るオーバーフローラインから成ることを特徴とする請求項6〜8の何れか1つに記載の血液浄化装置のプライミング方法。
【請求項10】
前記プライミング液流通ラインは、プライミング時において前記血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインから成ることを特徴とする請求項6〜8の何れか1つに記載の血液浄化装置のプライミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液を体外循環させつつ浄化するための血液浄化装置及びそのプライミング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の血液浄化装置としての透析装置として、例えば特許文献1にて開示されているように、患者の血液を体外循環させる血液回路と、当該血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ等の血液浄化手段と、生理食塩液等のプライミング液を血液回路に供給し得るプライミング液供給手段と、血液回路に接続されたエアトラップチャンバから延設されたオーバーフローラインとを具備し、血液回路にて血液を体外循環させつつダイアライザにて血液浄化治療を行わせるものが提案されている。
【0003】
かかる従来の透析装置は、透析治療前(血液浄化治療前)、プライミング液を血液回路等に充填させるプライミングが行われている。かかるプライミングは、通常、プライミング液供給手段にて血液回路にプライミング液を供給して充填させるとともに、そのプライミング液をオーバーフローラインにてオーバーフローさせて外部に排出することにより行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−273693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の血液浄化装置においては、プライミング後、血液浄化治療を行うべく血液回路にて血液を体外循環させる際、オーバーフローラインに残留したプライミング液に血液回路を流れる血液が触れて混入してしまう虞があった。その場合、血液浄化治療後において血液回路及びオーバーフローラインを装置本体から取り外す際、血液が混入したプライミング液がオーバーフローラインから吐出して周囲に飛散してしまう虞がある。さらに、上記のような問題は、プライミング液を排出させるオーバーフローラインに限らず、プライミング液を供給するためのプライミング液供給ラインを含むプライミング液流通ラインを有する血液浄化装置において生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、血液浄化治療後、プライミング液流通ラインから血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる血液浄化装置及びそのプライミング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、患者の血液を体外循環可能な動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有する血液回路と、前記動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、前記血液回路に接続されるとともに、プライミング液を流通可能なプライミング液流通ラインと、前記血液回路にて血液を体外循環させつつ前記血液浄化手段で血液を浄化させて血液浄化治療を行う前、前記プライミング液流通ラインを介して前記血液回路に対してプライミング液を供給又は排出させて当該血液回路のプライミングを行わせる制御手段とを具備した血液浄化装置において、前記制御手段は、前記プライミング終了後であって前記血液浄化治療前に、前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させ得ることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記プライミング液流通ラインは、前記血液回路に形成された気液分離のためのエアトラップチャンバに接続されるとともに、当該エアトラップチャンバに対して空気を供給又は排出させて液面を調整し得る液面調整手段を具備して構成され、前記制御手段は、前記液面調整手段を作動させて空気を供給させることにより前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させ得ることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記プライミング液流通ラインは、前記血液回路に形成された気液分離のためのエアトラップチャンバに接続されるとともに、前記制御手段は、前記血液浄化装置が具備するポンプ又は電磁弁を動作させることにより前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を当該エアトラップチャンバ内に吸入させて空気と置換させ得ることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記プライミング液流通ラインは、プライミング時において前記血液回路内からプライミング液を排出させ得るオーバーフローラインから成ることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記プライミング液流通ラインは、プライミング時において前記血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインから成ることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、患者の血液を体外循環可能な動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有する血液回路と、前記動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、前記血液回路に接続されるとともに、プライミング液を流通可能なプライミング液流通ラインと、前記血液回路にて血液を体外循環させつつ前記血液浄化手段で血液を浄化させて血液浄化治療を行う前、前記プライミング液流通ラインを介して前記血液回路に対してプライミング液を供給又は排出させて当該血液回路のプライミングを行わせる制御手段とを具備した血液浄化装置のプライミング方法において、前記プライミング終了後であって前記血液浄化治療前に、前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の血液浄化装置のプライミング方法において、前記プライミング液流通ラインは、前記血液回路に形成された気液分離のためのエアトラップチャンバに接続されるとともに、当該エアトラップチャンバに対して空気を供給又は排出させて液面を調整し得る液面調整手段を具備して構成され、前記液面調整手段を作動させて空気を供給させることにより前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させ得ることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の血液浄化装置のプライミング方法において、前記プライミング液流通ラインは、前記血液回路に形成された気液分離のためのエアトラップチャンバに接続されるとともに、前記血液浄化装置が具備するポンプ又は電磁弁を動作させることにより前記プライミング液流通ライン内のプライミング液を当該エアトラップチャンバ内に吸入させて空気と置換させ得ることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項6〜8の何れか1つに記載の血液浄化装置のプライミング方法において、前記プライミング液流通ラインは、プライミング時において前記血液回路内からプライミング液を排出させ得るオーバーフローラインから成ることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項6〜8の何れか1つに記載の血液浄化装置のプライミング方法において、前記プライミング液流通ラインは、プライミング時において前記血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、6の発明によれば、プライミング終了後であって血液浄化治療前に、プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させるので、血液浄化治療後、プライミング液流通ラインから血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる。
【0018】
請求項2、7の発明によれば、液面調整手段を作動させて空気を供給させることによりプライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させ得るので、液面調整手段がエアトラップチャンバの液面調整機能に加え、プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させる機能を兼ねることができる。
【0019】
請求項3、8の発明によれば、血液浄化装置が具備するポンプ又は電磁弁を動作させることによりプライミング液流通ライン内のプライミング液を当該エアトラップチャンバ内に吸入させて空気と置換させ得るので、プライミング液流通ライン内のプライミング液を外部に排出させることなく空気と置換させることができる。
【0020】
請求項4、9の発明によれば、プライミング液流通ラインは、プライミング時において血液回路内からプライミング液を排出させ得るオーバーフローラインから成るので、血液浄化治療後、オーバーフローラインから血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる。
【0021】
請求項5、10の発明によれば、プライミング液流通ラインは、プライミング時において血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインから成るので、血液浄化治療後、プライミング液供給ラインから血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図2】同血液浄化装置の制御内容を示すフローチャート
図3】同血液浄化装置におけるプライミング液と空気との置換工程中の状態を示す模式図
図4】同血液浄化装置におけるプライミング液と空気との置換工程後の状態を示す模式図
図5】本発明の第2の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図6】同血液浄化装置の制御内容を示すフローチャート
図7】同血液浄化装置におけるプライミング液と空気との置換工程(陰圧の形成)中の状態を示す模式図
図8】同血液浄化装置におけるプライミング液と空気との置換工程中の状態を示す模式図
図9】他の形態の血液浄化装置におけるプライミング液と空気との置換工程中の状態を示す模式図
図10】本発明の第3の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図11】同血液浄化装置の制御内容を示すフローチャート
図12】同血液浄化装置に係るプライミング液供給ラインおけるプライミング液と空気との置換工程中の状態を示す模式図
図13】同血液浄化装置に係るオーバーフローラインにおけるプライミング液と空気との置換工程中の状態を示す模式図
図14】同血液浄化装置に係るオーバーフローラインにおけるプライミング液と空気との置換工程中の状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させつつ浄化し得る血液浄化治療(血液透析治療)で使用されるもので、図1に示すように、患者の血液を体外循環可能な動脈側血液回路2及び静脈側血液回路3を有する血液回路と、動脈側血液回路2と静脈側血液回路3との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ1(血液浄化手段)と、透析装置本体B内に配設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を含む配管部と、制御手段18とを具備して構成されている。
【0024】
ダイアライザ1は、血液を浄化するためのもので、ポート1a、1bを介して血液回路を構成する動脈側血液回路2及び静脈側血液回路3とそれぞれ接続されるとともに、ポート1c、1dを介して透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。動脈側血液回路2には、しごき型ポンプから成る血液ポンプ4が配設されており、かかる血液ポンプ4を駆動させることにより、血液回路にて透析液等の液体を送液させ得るようになっている。
【0025】
動脈側血液回路2には、気液分離のための動脈側エアトラップチャンバ5が形成されるとともに、静脈側血液回路3には、気液分離のための静脈側エアトラップチャンバ6が形成されており、これら動脈側エアトラップチャンバ5及び静脈側エアトラップチャンバ6にて血液回路を流れる液体中の気泡を除去し得るようになっている。なお、本実施形態に係る動脈側血液回路2の先端部及び静脈側血液回路3の先端部には、血液浄化治療中、動脈側血液回路2又は静脈側血液回路3を流れる血液中の気泡を検出し得る気泡検出器(D1、D2)が接続されている。
【0026】
また、動脈側血液回路2の先端及び静脈側血液回路3の先端には、それぞれ動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針が取り付け可能なコネクタが形成されており、これらコネクタ同士を接続して閉回路を形成してプライミングが行われるとともに、プライミング後、コネクタに動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を取り付けて患者に穿刺させ、血液ポンプ4を駆動させることにより、動脈側穿刺針から採取された患者の血液を血液回路にて体外循環させ、ダイアライザ1にて血液浄化及び除水した後、静脈側穿刺針から患者に戻すようになっている。
【0027】
さらに、動脈側血液回路2には、先端側(プライミング液供給ラインLaが接続された部位より上流(先端)側)にクランプ手段Vaが配設されるとともに、静脈側血液回路3には、先端側(静脈側エアトラップチャンバ6が形成された部位より下流(先端)側)にクランプ手段Vbが配設されている。動脈側エアトラップチャンバ5には、血液回路におけるダイアライザ1の入口側液圧を検出し得るセンサが接続されるとともに、静脈側エアトラップチャンバ6には、治療時における血液回路内の静脈圧を検出し得るセンサが接続されている。
【0028】
またさらに、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2には、所定濃度に調製された透析液をダイアライザ1に供給し、当該ダイアライザ1からの排液を排出させる送液ポンプとしての複式ポンプ7が接続されている。すなわち、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って複式ポンプ7が配設されており、かかる複式ポンプ7を駆動させることにより、ダイアライザ1に対して透析液導入ラインL1にて透析液を導入及び透析液排出ラインL2にて透析液(排液)を排出させ得るよう構成されているのである。
【0029】
また、透析液導入ラインL1には、フィルタ11、12が接続されており、ダイアライザ1に導入する透析液をフィルタ11、12にて濾過し得るとともに、電磁弁V1、V7、V8にて任意タイミングで流路を遮断又は開放可能とされている。なお、透析液導入ラインL1は、バイパスラインL7、L8、L9にて透析液排出ラインL2と接続されており、これらバイパスラインL7、L8、L9には、電磁弁V3、V4、V12がそれぞれ接続されている。さらに、透析液導入ラインL1には、当該透析液導入ラインL1を流れる透析液を採取可能な採取口10(サンプルポート)が接続されている。
【0030】
透析液排出ラインL2は、電磁弁V2、V9にて任意タイミングで流路を遮断又は開放可能とされているとともに、複式ポンプ7を迂回する迂回ラインL3、L4が接続されており、迂回ラインL3には除水ポンプ8が接続されている。なお、迂回ラインL4には、電磁弁V5が接続されている。これにより、血液回路にて患者の血液を体外循環させる過程で除水ポンプ8を駆動させることにより、ダイアライザ1を流れる血液から水分を取り除いて除水し得るようになっている。
【0031】
さらに、透析液排出ラインL2における複式ポンプ7より上流側(図中左側)には、当該複式ポンプ7における透析液排出ラインL2の液圧調整を行う加圧ポンプ9が接続されており、当該加圧ポンプ9と複式ポンプ7との間からは、脱ガスチャンバ13を介して迂回ラインL5が延設されている。かかる脱ガスチャンバ13は、複式ポンプ7より上流側の透析液排出ラインL2を流れる透析液中の気泡を捕捉し、複式ポンプ7を迂回して迂回ラインL5から外部へ排出させるためのものである。
【0032】
この迂回ラインL5には、電磁弁V6が接続されており、その電磁弁V6より上流側(脱ガスチャンバ13と電磁弁V6との間)とバイパスラインL9との間には、これらの流路を連通する分岐ラインL6が接続されている。かかる分岐ラインL6は、透析液排出ラインL2から分岐した迂回ラインL5の更なる分岐ラインから成るとともに、電磁弁V10及び電磁弁V11が接続されており、当該電磁弁V10と電磁弁V11との間には、オーバーフローラインLbの一端を接続可能な接続ポート14が取り付けられている。
【0033】
本実施形態に係る電磁弁V10は、接続ポート14と除水ポンプ8との間の流路に配設されるとともに、電磁弁V11は、接続ポート14を挟んで電磁弁V10とは反対側の流路に配設されている。そして、静脈側エアトラップチャンバ6の上部から延設されたオーバーフローラインLbの先端を接続ポート14に接続することにより、血液回路内に供給されたプライミング液を透析液排出ラインL2まで流動させ得るようになっている。なお、図中符号15は、分岐ラインL6に取り付けられたフィルタ15を示しており、このフィルタ15によって血液回路内から流動させた液体に含まれる異物を捕捉し得るようになっている。
【0034】
オーバーフローラインLbは、オーバーフロークランプVd(クランプ手段)によって流路が開閉可能とされるとともに、一端が静脈側エアトラップチャンバ6の上部及び他端が接続ポート14に接続されている。そして、プライミング時、オーバーフロークランプVdを開状態とすることにより、血液回路内に供給されたプライミング液を透析液排出ラインL2に流動させ、そこから外部に排出させ得るようになっている。
【0035】
透析装置本体Bは、ダイアライザ1に透析液を導入する透析液導入ラインL1及び当該ダイアライザ1から透析液を排出する透析液排出ラインL2を含む配管部と、制御手段18とを有している。本発明に係る配管部は、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2の他、これら透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2から分岐した迂回ライン(L3、L4、L5)、分岐ラインL6及びバイパスライン(L7、L8、L9)等を含み、透析液等を流通させ得るものである。
【0036】
一方、透析液導入ラインL1の途中に形成された採取口10には、プライミング液供給ラインLaの一端が接続されている。かかるプライミング液供給ラインLaは、クランプ手段Vcによって流路が開閉可能とされるとともに、一端が採取口10及び他端が動脈側血液回路2(クランプ手段Vaと血液ポンプ4との間の部位)にそれぞれ接続されている。そして、プライミング時、クランプ手段Vaを開状態とすることにより、血液導入ラインL1中の透析液をプライミング液として血液回路内に供給し得るようになっている。
【0037】
また、プライミング液供給ラインLaの途中からは、補液ラインLcが分岐して延設されている。かかる補液ラインLcは、しごき型ポンプから成る補液ポンプ16が配設されるとともに、一端がプライミング液供給ラインLa及び他端が動脈側エアトラップチャンバ5の上部にそれぞれ接続されている。そして、補液ポンプ16を駆動させることにより、透析液導入ラインL1中の透析液を補液として血液回路内に供給し得るようになっている。なお、補液ポンプ16が停止した状態においては、その補液ポンプ16が具備するローラにて補液ラインLcの流路が閉止されるようになっている。
【0038】
さらに、本実施形態においては、動脈側エアトラップチャンバ5及び静脈側エアトラップチャンバ6の液面を調整し得る液面調整手段17を具備している。この液面調整手段17は、静脈側エアトラップチャンバ6の上部(空気層)から延設された延設チューブL10と、動脈側エアトラップチャンバ5の上部(空気層)から延設された延設チューブL11と、延設チューブL10及びL11に接続された接続チューブL12と、一端が接続チューブL12に接続されるとともに他端が大気開放された開放チューブL13と、開放チューブL13に配設された液面調整ポンプ17aとを有して構成されている。なお、接続チューブL12には、延設チューブL10側を開閉する電磁弁Ve及び延設チューブL11側を開閉する電磁弁Vfがそれぞれ取り付けられている。
【0039】
液面調整ポンプ17aは、正回転駆動及び逆回転駆動可能なしごき型ポンプから成るもので、開放チューブL13をその長手方向に向かってしごくことで、動脈側エアトラップチャンバ5の上部又は静脈側エアトラップチャンバ6の上部に対する空気の導入又は排出を任意に行い得るよう構成されている。しかして、液面調整ポンプ17aを正回転駆動(図中時計回りの駆動)させると、開放チューブL13の先端から空気が吸引されるので、電磁弁Veが開状態のとき、延設チューブL10を介して静脈側エアトラップチャンバ6に空気が導入されて液面を下降させることができるとともに、液面調整ポンプ17aを逆回転駆動(図中反時計回りの駆動)させると、開放チューブL13の先端から空気が排出されるので、電磁弁Veが開状態のとき、延設チューブL10を介して静脈側エアトラップチャンバ6から空気が排出されて液面を上昇させることができる。
【0040】
同様に、液面調整ポンプ17aを正回転駆動させると、開放チューブL13の先端から空気が吸引されるので、電磁弁Vfが開状態のとき、延設チューブL11を介して動脈側エアトラップチャンバ5に空気が導入されて液面を下降させることができるとともに、液面調整ポンプ17aを逆回転駆動させると、開放チューブL13の先端から空気が排出されるので、電磁弁Vfが開状態のとき、延設チューブL11を介して動脈側エアトラップチャンバ5から空気が排出されて液面を上昇させることができる。
【0041】
制御手段18は、透析装置本体Bに配設されたマイコン等から成り、血液回路にて血液を体外循環させつつダイアライザ1(血液浄化手段)で血液を浄化させて血液浄化治療を行う前、プライミング液供給ラインLaを介して血液回路に対してプライミング液を供給するとともに、オーバーフローラインLbを介して血液回路に対してプライミング液を排出させて当該血液回路のプライミングを行わせるものである。
【0042】
すなわち、動脈側血液回路2の先端のコネクタと静脈側血液回路3の先端のコネクタとを互いに接続して閉回路を形成した後、制御手段18による制御によって、プライミング時、クランプ手段Vcを開状態として透析液導入ラインL1の透析液をプライミング液として血液回路に供給し充填させるとともに、オーバーフロークランプVdを開状態として、血液回路内のプライミング液をオーバーフローラインLbにオーバーフローさせ、接続ポートを介して透析液排出ラインL2に排出するよう構成されているのである。
【0043】
そして、透析液導入ラインL1から透析液排出ラインL2に透析液を流動させることにより、ダイアライザ1における透析液流路に透析液を充填させることにより、所謂ガスパージが行われることとなる。これにより、プライミングが終了するので、動脈側血液回路2の先端及び静脈側血液回路3の先端の接続を解除して、それぞれに穿刺針を取り付けて患者に穿刺し、血液回路にて患者の血液を体外循環させることによりダイアライザ1による血液浄化治療が行われることとなる。
【0044】
ここで、本実施形態に係る制御手段18は、プライミング終了後であって血液浄化治療前に、オーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液(本実施形態においてはオーバーフローラインLbに残留したプライミング液としての透析液)を空気と置換させ得るよう構成されている。具体的には、本実施形態に係る制御手段18は、液面調整手段17を作動(すなわち、液面調整ポンプ17aを駆動)させて静脈側エアトラップチャンバ6内に空気を供給させることによりオーバーフローラインLb内のプライミング液を空気と置換させ得るようになっている。
【0045】
例えば、プライミングが終了して血液回路にプライミング液が充填された状態において、図3に示すように、オーバーフロークランプVd及び電磁弁Veを開状態及びクランプ手段Vb及び電磁弁Vfを閉状態としつつ液面調整ポンプ17aを正回転駆動(図中時計回りの駆動)させることにより、静脈側エアトラップチャンバ6に空気が導入されるので、その空気がオーバーフローラインLb内のプライミング液を透析液排出ラインL2に押し出すことにより、当該オーバーフローラインLb内がプライミング液から空気に置換されることとなる。
【0046】
以下、第1の実施形態に係る制御手段18による具体的制御について、図2のフローチャートを用いて説明する。
先ず、S1にて血液回路のプライミング及びダイアライザ1のガスパージが終了したか否か判定され、プライミングが終了したと判定されると、S2以降の工程に進む。このとき、動脈側血液回路2の先端及び静脈側血液回路3の先端は、互いに接続されて閉回路が形成されている(すなわち、プライミングの状態が維持されている)とともに、血液回路及びオーバーフローラインLbには、プライミング液としての透析液が充填されている。
【0047】
そして、S1にてプライミングが終了したと判定されると、図3に示すように、オーバーフロークランプVdを開状態とする(S2)。このとき、同図に示すように、血液回路側のクランプ手段(Vb、Vc、Vf)は閉状態及びクランプ手段Veは開状態(クランプ手段Vaは開閉何れの状態でもよい)とされており、配管側の電磁弁(V1、V2、V4〜V6、V10、V12)は閉状態及び電磁弁(V3、V7〜V9、V11)は開状態とされている。なお、電磁弁(V3、V7、V8)は、複式ポンプ7が駆動している場合は、上記のように開状態とされているが、複式ポンプ7が停止している場合は、開閉何れの状態でもよい。
【0048】
その後、S3に進み、液面調整手段17を作動させて液面調整ポンプ17aを正回転駆動させることによって、静脈側エアトラップチャンバ6内に空気を供給し、オーバーフローラインLb内のプライミング液を透析液排出ラインL2に流動させつつ空気と置換させる。そして、S4にて液面調整ポンプ17aの駆動開始から規定時間経過したか、或いは液面調整ポンプ17aの駆動開始から空気が規定量送り出されたか否かを判定し、規定時間又は規定量駆動したと判定されると、オーバーフローラインLb内のプライミング液が全て空気に置換されたと推定し、図4に示すように、液面調整ポンプ17aを停止させる(S5)とともに、オーバーフロークランプVdを閉状態とする(S6)。
【0049】
以上で、一連のプライミン終了後の工程であって血液浄化治療前の工程が終了する。これにより、プライミング終了後であって血液浄化治療前に、オーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液を空気と置換させるので、血液浄化治療時に血液回路内で血液が体外循環してもオーバーフローラインLbに残留したプライミング液に血液が触れて混入してしまうのを防止することができる。したがって、血液浄化治療後、オーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)から血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、液面調整手段17を作動させて空気を供給させることによりオーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液を空気と置換させ得るので、液面調整手段17が静脈側エアトラップチャンバ6の液面調整機能に加え、オーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液を空気と置換させる機能を兼ねることができる。特に、適用されるプライミング液流通ラインは、プライミング時において血液回路内からプライミング液を排出させ得るオーバーフローラインLbから成るので、血液浄化治療後、オーバーフローラインLbから血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、第1の実施形態と同様、患者の血液を体外循環させつつ浄化し得る血液浄化治療(血液透析治療)で使用されるもので、図5に示すように、患者の血液を体外循環可能な動脈側血液回路2及び静脈側血液回路3を有する血液回路と、動脈側血液回路2と静脈側血液回路3との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ1(血液浄化手段)と、透析装置本体B内に配設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を含む配管部と、制御手段18とを具備して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0052】
本実施形態に係るオーバーフローラインLbは、静脈側エアトラップチャンバ6の上部から延設されるとともに、その先端が排液手段19(余液受け)の上方の位置で開口して固定されている。かかる排液手段19は、上方に開口した液体の受け部19aを有するとともに、その受け部19aで受けた液体を流出させて外部に排出し得る排出チューブ19bを有して構成されている。
【0053】
なお、オーバーフローラインLbの先端は、受け部19aの上方で開口されているため、大気開放となっており、静脈側エアトラップチャンバ6内の液体を受け部19aに吐出させることができるとともに、外気を吸い込むことが可能とされている。また、排出チューブ19bの先端は、プライミング液を排出させ得る部位或いは場所であれば何れでもよく、例えば透析液排出ラインL2に接続するようにしてもよい。なお、オーバーフローラインLbの先端をバケツなどの容器の上方にて開口させ、当該容器に液体を吐出するようにしてもよい。
【0054】
ここで、本実施形態に係る制御手段18は、プライミング終了後であって血液浄化治療前に、オーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液(本実施形態においてはオーバーフローラインLbに残留したプライミング液としての透析液)を空気と置換させ得るよう構成されている。具体的には、本実施形態に係る制御手段18は、本血液浄化装置が具備するポンプ又は電磁弁を動作させることにより、静脈側エアトラップチャンバ6内を陰圧にして、オーバーフローラインLb内のプライミング液を当該静脈側エアトラップチャンバ6内に吸入させて空気と置換させ得るようになっている。
【0055】
例えば、プライミングが終了して血液回路にプライミング液が充填された状態において、図7に示すように、オーバーフロークランプVd及びクランプ手段Vbを閉状態(液面調整手段17の電磁弁(Ve、Vf)は閉状態)としつつ除水ポンプ8を駆動させることにより、ダイアライザ1の透析液流路内を陰圧とする。これにより、ダイアライザ1の濾過膜(中空糸膜)を介して血液回路内、特に静脈側エアトラップチャンバ6内を陰圧とすることができ、オーバーフローラインLb内のプライミング液が静脈側エアトラップチャンバ6内に流入しつつ先端の開口から空気が導入されるので、当該オーバーフローラインLb内がプライミング液から空気に置換されることとなる。
【0056】
なお、本実施形態においては、装置が具備するポンプ又は電磁弁を動作させることにより、静脈側エアトラップチャンバ6内を陰圧にして、オーバーフローラインLb内のプライミング液を当該静脈側エアトラップチャンバ6内に吸入させて空気と置換させているが、血液浄化装置が具備するポンプ又は電磁弁を動作させてオーバーフローラインLb内のプライミング液を静脈側エアトラップチャンバ6内に吸入させて空気と置換させれば、静脈側エアトラップチャンバ6内に陰圧を形成しなくてもよい。
【0057】
以下、第2の実施形態に係る制御手段18による具体的制御について、図6のフローチャートを用いて説明する。
先ず、S1にて血液回路のプライミング及びダイアライザ1のガスパージが終了したか否か判定され、プライミングが終了したと判定されると、S2以降の工程に進む。このとき、動脈側血液回路2の先端及び静脈側血液回路3の先端は、互いに接続されて閉回路が形成されている(すなわち、プライミングの状態が維持されている)とともに、血液回路及びオーバーフローラインLbには、プライミング液としての透析液が充填されている。
【0058】
そして、S1にてプライミングが終了したと判定されると、図7に示すように、制御手段18による制御によって、配管部の除水ポンプ8を駆動させて陰圧を形成する(S2)。このとき、同図に示すように、血液回路側のクランプ手段(Vb、Vc、Ve、Vf)、オーバーフロークランプVdは閉状態(クランプ手段Vaは開閉何れの状態でもよい)とされており、配管側の電磁弁(V1、V4〜V6、V12)は閉状態及び電磁弁(V2、V3、V7〜V9)は開状態とされている。なお、電磁弁(V3、V7、V8)は、複式ポンプ7が駆動している場合は、上記のように開状態とされているが、複式ポンプ7が停止している場合は、開閉何れの状態でもよい。また、配管側の電磁弁V5を開状態とすることにより高低差(ヘッド差)で圧力が生じる場合、その高低差による圧力にて陰圧を形成するようにしてもよい。
【0059】
さらに、加圧ポンプ9についても駆動又は停止の何れであってもよく、図9に示すように、除水ポンプ8に代えて加圧ポンプ9を駆動させて陰圧を形成することもできる。この場合、同図に示すように、血液回路側のクランプ手段(Vb、Vc、Ve、Vf)、オーバーフロークランプVdは閉状態(クランプ手段Vaは開閉何れの状態でもよい)とされており、配管側の電磁弁(V1、V4、V5、V12)は閉状態及び電磁弁(V2、V3、V6〜V9)は開状態とされている。なお、電磁弁(V3、V7、V8)は、複式ポンプ7が駆動している場合は、上記のように開状態とされているが、複式ポンプ7が停止している場合は、開閉何れの状態でもよい。
【0060】
そして、S3に進み、除水ポンプ8(又は加圧ポンプ9)の駆動開始から規定量の流量に達しているか、或いは除水ポンプ8(又は加圧ポンプ9)の駆動開始から規定圧に達したか否かを判定し、規定量又は規定圧に達したと判定されると、除水ポンプ(又は加圧ポンプ9)を停止させて陰圧形成を停止する(S4)。その後、図8に示すように、オーバーフロークランプVdを開状態とするとともに(S5)、その開状態から規定時間経過したか否か判定し、規定時間経過したと判定されると、オーバーフローラインLb内のプライミング液が全て空気に置換されたと推定し、オーバーフロークランプVdを閉状態とする(S7)。なお、本実施形態においては、予め陰圧を形成した後、オーバーフロークランプVdを開状態としているが、陰圧の形成とオーバーフロークランプVdを開状態とするタイミングを同時に行うようにしてもよい。
【0061】
以上で、一連のプライミン終了後の工程であって血液浄化治療前の工程が終了する。これにより、プライミング終了後であって血液浄化治療前に、オーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液を空気と置換させるので、血液浄化治療時に血液回路内で血液が体外循環してもオーバーフローラインLbに残留したプライミング液に血液が触れて混入してしまうのを防止することができる。したがって、血液浄化治療後、オーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)から血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、血液浄化装置が具備するポンプ又は電磁弁を動作させることにより、オーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液を当該静脈側エアトラップチャンバ6内に吸入させて空気と置換させ得るので、オーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液を外部に排出させることなく空気と置換させることができる。特に、適用されるプライミング液流通ラインは、プライミング時において血液回路内からプライミング液を排出させ得るオーバーフローラインLbから成るので、血液浄化治療後、オーバーフローラインLbから血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる。
【0063】
次に、本発明の第3の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、第1、2の実施形態と同様、患者の血液を体外循環させつつ浄化し得る血液浄化治療(血液透析治療)で使用されるもので、図10に示すように、患者の血液を体外循環可能な動脈側血液回路2及び静脈側血液回路3を有する血液回路と、動脈側血液回路2と静脈側血液回路3との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザ1(血液浄化手段)と、透析装置本体B内に配設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を含む配管部と、制御手段18とを具備して構成されている。なお、第1、2の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施形態に係るプライミング液供給ラインLdは、動脈側エアトラップチャンバ5の上部から延設されるとともに、その先端が透析液導入ラインL1における採取口10に接続され、その途中に第1の実施形態及び第2の実施形態と同様のしごき型の補液ポンプ16が配設されている。そして、補液ポンプ16を駆動させると、透析液導入ラインL1の透析液がプライミング液として血液回路に導入されることにより、血液浄化治療前のプライミングが可能とされている。なお、本実施形態においては、プライミング液供給ラインLd及びオーバーフローラインLbの両方が本発明の「プライミング液流通ライン」を構成している。
【0065】
ここで、本実施形態に係る制御手段18は、プライミング終了後であって血液浄化治療前に、プライミング液供給ラインLd及びオーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液(本実施形態においてはプライミング液供給ラインLd及びオーバーフローラインLbに残留したプライミング液としての透析液)を空気と置換させ得るよう構成されている。具体的には、本実施形態に係る制御手段18は、補液ポンプ16を駆動させて動脈側エアトラップチャンバ5内に空気を供給させることによりプライミング液供給ラインLd内のプライミング液を空気と置換させ得るようになっている。
【0066】
例えば、プライミングが終了して血液回路にプライミング液が充填された状態において、図13に示すように、プライミング液供給ラインLdの先端を採取口10から取り外して大気開放としつつ補液ポンプ16を駆動させることにより、プライミング液供給ラインLdの先端から吸い込まれた空気がプライミング液を動脈側エアトラップチャンバ5内に押し出し、当該オーバーフローラインLb内がプライミング液から空気に置換されることとなる。
【0067】
以下、第3の実施形態に係る制御手段18による具体的制御について、図11のフローチャートを用いて説明する。
先ず、S1にて血液回路のプライミング及びダイアライザ1のガスパージが終了したか否か判定され、プライミングが終了したと判定されると、S2以降の工程に進む。このとき、動脈側血液回路2の先端及び静脈側血液回路3の先端は、互いに接続されて閉回路が形成されている(すなわち、プライミングの状態が維持されている)とともに、血液回路、プライミング液供給ラインLd及びオーバーフローラインLbには、プライミング液としての透析液が充填されている。
【0068】
そして、S1にてプライミングが終了したと判定されると、図12に示すように、プライミング液供給ラインLdの先端を採取口10から取り外して大気開放とする(S2)とともに、オーバーフロークランプVdを開状態とする(S3)。このとき、同図に示すように、血液回路側のクランプ手段(Vb、Ve、Vf)は閉状態(クランプ手段Vaは開閉何れの状態でもよい)とされており、配管側の電磁弁(V1、V2、V4〜V6、V12)は閉状態及び電磁弁(V3、V7〜V9)は開状態とされている。なお、電磁弁(V3、V7、V8)は、複式ポンプ7が駆動している場合は、上記のように開状態とされているが、複式ポンプ7が停止している場合は、開閉何れの状態でもよい。
【0069】
その後、S4に進み、補液ポンプ16を駆動させることによって、プライミング液供給ラインLdの先端から空気を吸い込み、プライミング液供給ラインLd内のプライミング液を動脈側エアトラップチャンバ5内に流動させつつ空気と置換させる。そして、S5にて補液ポンプ16の駆動開始から規定時間経過したか、或いは補液ポンプ16の駆動開始からプライミング液が規定量送り出されたか否かを判定し、規定時間又は規定量駆動したと判定されると、プライミング液供給ラインLd内のプライミング液が全て空気に置換されたと推定し、補液ポンプ16を停止させる(S6)とともに、オーバーフロークランプVdを閉状態とする(S7)。
【0070】
続いて、S8に進み、図13に示すように、制御手段18による制御によって、配管部の除水ポンプ8を駆動させて陰圧を形成する(S8)。このとき、同図に示すように、血液回路側のクランプ手段(Vb、Ve、Vf)、オーバーフロークランプVdは閉状態(クランプ手段Vaは開閉何れの状態でもよい)とされており、配管側の電磁弁(V1、V4〜V6、V12)は閉状態及び電磁弁(V2、V3、V7〜V9)は開状態とされている。なお、電磁弁(V3、V7、V8)は、複式ポンプ7が駆動している場合は、上記のように開状態とされているが、複式ポンプ7が停止している場合は、開閉何れの状態でもよい。また、配管側の電磁弁V5を開状態とすることにより高低差(ヘッド差)で圧力が生じる場合、その高低差による圧力にて陰圧を形成するようにしてもよい。
【0071】
そして、S9に進み、電磁弁V5を開状態とした時点から透析液排出ラインL2の透析液が規定量の流量に達しているか、或いは電磁弁V5を開状態とした時点から規定圧に達したか否かを判定し、規定量又は規定圧に達したと判定されると、電磁弁V5を閉状態として陰圧形成を停止する(S10)。その後、図14に示すように、オーバーフロークランプVdを開状態とするとともに(S11)、その開状態から規定時間経過したか否か判定し(S12)、規定時間経過したと判定されると、オーバーフローラインLb内のプライミング液が全て空気に置換されたと推定し、オーバーフロークランプVdを閉状態とする(S13)。
【0072】
以上で、一連のプライミン終了後の工程であって血液浄化治療前の工程が終了する。これにより、プライミング終了後であって血液浄化治療前に、プライミング液供給ラインLd及びオーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)内のプライミング液を空気と置換させるので、血液浄化治療時に血液回路内で血液が体外循環してもオーバーフローラインLbに残留したプライミング液に血液が触れて混入してしまうのを防止することができる。したがって、血液浄化治療後、プライミング液供給ラインLd及びオーバーフローラインLb(プライミング液流通ライン)から血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、補液ポンプ16を駆動させて空気を供給させることによりプライミング液供給ラインLd(プライミング液流通ライン)内のプライミング液を空気と置換させ得るので、補液ポンプ16がプライミング液の供給機能に加え、プライミング液供給ラインLd(プライミング液流通ライン)内のプライミング液を空気と置換させる機能を兼ねることができる。特に、適用されるプライミング液流通ラインは、プライミング時において血液回路内にプライミング液を供給し得るプライミング液供給ラインLdから成るので、血液浄化治療後、プライミング液供給ラインLdから血液が混入したプライミング液が周囲に飛散してしまうのを確実に防止することができる。
【0074】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えばプライミング時に供給されるプライミング液は、透析液に限らず、生理食塩液や他の電解液等であってもよい。また、第1、2の実施形態においては、プライミング終了後であって血液浄化治療前に、オーバーフローラインLb内のプライミング液を空気と置換させ得るものとされているが、プライミング液供給ラインLa内のプライミング液を空気と置換させ得るものとしてもよい。
【0075】
さらに、プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させる方法については、上記実施形態に限定されず、プライミング終了後であって血液浄化治療前にプライミング液と空気とを置換させる種々の形態に適用することができる。なお、本実施形態が適用される血液浄化装置は、何れの形態のものであってもよく、例えば、複式ポンプ7に代えてチャンバにて透析液を導入又は排出させるもの、ダイアライザ1に代えて他の形態の血液浄化器を具備したもの等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
プライミング終了後であって血液浄化治療前に、プライミング液流通ライン内のプライミング液を空気と置換させ得る血液浄化装置及びそのプライミング方法であれば、装置の外観形状が異なるもの、或いは他の機能が付加されたもの等にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 ダイアライザ(血液浄化手段)
2 動脈側血液回路
3 静脈側血液回路
4 血液ポンプ
5 動脈側エアトラップチャンバ
6 静脈側エアトラップチャンバ
7 複式ポンプ
8 除水ポンプ
9 加圧ポンプ
10 採取口
11、12 フィルタ
13 脱ガスチャンバ
14 接続ポート
15 フィルタ
16 補液ポンプ
17 液面調整手段
17a 液面調整ポンプ
18 制御手段
19 排液手段
L1 透析液導入ライン
L2 透析液排出ライン
L3、L4、L5 迂回ライン
L6 分岐ライン
L7、L8、L9 バイパスライン
La プライミング液供給ライン
Lb オーバーフローライン(プライミング液流通ライン)
Lc 補液ライン
Ld プライミング液供給ライン(プライミング液流通ライン)
Vd オーバーフロークランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14