(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プレス機械の上流側または下流側に配置されており、ワークを搬送するための少なくとも1台の搬送機構と、該搬送機構を駆動制御する駆動制御装置とを有するワーク搬送装置であって、
前記搬送機構は、
フレームと、
基端側が前記フレームに揺動可能に設けられたレバーと、
前記レバーの先端側に回転可能に設けられた第1スライド部材と、
前記フレームに昇降可能に設けられた第2スライド部材と、
前記第2スライド部材に回転可能に設けられた第3スライド部材と、
前記第1スライド部材及び前記第3スライド部材に長手方向に移動可能に取り付けられたアーム部材と、
前記アーム部材の先端側に設けられ、ワークを保持可能に形成されたワーク保持部と、
前記レバーを揺動させる揺動駆動部と、
前記第2スライド部材を昇降させる昇降駆動部と、
前記アーム部材を前記第3スライド部材に対して前記アーム部材の長手方向に移動させる移動駆動部とを備えていることを特徴とするワーク搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常のスコットラッセル機構を備えたワーク搬送装置では、アーム部材の長手方向中央にアーム部材を回動するレバーの先端部が連結されており、レバーの揺動により、アーム部材の先端が水平移動する。アーム先端部には、ワークを吸着保持したりその吸着保持を開放するための吸着部を備えたクロスバーが備えられている。吸着部は、電磁的なものや、吸引による真空吸着によるものなどが採用される。搬送動作は、まず、搬送装置のアーム先端部をワークが置かれた位置の上部に移動させ、次いで、搬送装置全体をワークの表面まで下降させ、吸着部がワークを吸着させる。ワークを吸着後、搬送装置を上昇させる。上昇後、搬送装置のレバーの回転駆動を行うことにより、スコットラッセル機構のアーム部の先端が搬送方向に水平移動する。この水平移動による搬送は、吸着しているワークの搬送場所(下流側プレス機械内のワーク加工位置)まで行われ、その場所で、搬送装置全体を下降させる。これにより、ワークは、搬送位置に載置される。その後、吸着部の吸着力を消失させワークをその位置で開放する。吸着解放後、搬送装置全体を上昇させ、搬送装置のレバーを搬送時とは逆方向に回動させることにより、アーム部材を搬送とは逆の方向に移動させる。このようにして、ワークはプレス加工を行うプレス機械内に次々と搬送させることができる。この従来公知のスコットラッセル機構を備えた搬送装置では、アーム部材の先端を上下方向に移動(昇降および下降)させるため、レバー及びその揺動駆動部を全体として昇降させる構造になっている。このように、従来のスコットラッセル機構を用いたワーク搬送装置では、昇降駆動に必要な駆動力として搬送装置全体を上昇したり下降させる必要があり、駆動力の大きな昇降駆動部を用いる必要があった。
【0005】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送動作時のワーク保持手段の昇降動作を行うための駆動力を小さくすることができるワーク搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るワーク搬送装置は、プレス機械の上流側または下流側に配置され、ワークを搬送するための少なくとも1台の搬送機構と、該搬送機構を駆動制御する駆動制御装置とを有するワーク搬送装置において、前記搬送機構は、フレームと、基端側が前記フレームに揺動可能に設けられたレバーと、前記レバーの先端側に回転可能に設けられた第1スライド部材と、前記フレームに昇降可能に設けられた第2スライド部材と、前記第2スライド部材に回転可能に設けられた第3スライド部材と、前記第1スライド部材及び前記第
3スライド部材に長手方向に移動可能に取り付けられたアーム部材と、前記アーム部材の先端側に設けられ、ワークを保持可能に形成されたワーク保持部と、前記レバーを揺動させる揺動駆動部と、前記第2スライド部材を昇降させる昇降駆動部と、前記アーム部材を前記第3スライド部材に対して前記アーム部材の長手方向に移動させる移動駆動部とを備える。
【0007】
このワーク搬送装置によれば、レバーを揺動させるとともに第2スライド部材を昇降させ且つアーム部材を長手方向に移動させることで、アーム部材の先端を水平方向及び上下方向に移動させることができる。このため、レバーや揺動駆動部を全体として昇降させる駆動力の大きな駆動部を必要とすることなく、小さな駆動力によってワークを搬送するワーク搬送装置を提供することができる。
【0008】
また、本発明の好ましいワーク搬送装置の前記搬送機構は、前記レバー、前記第1スライド部材、前記第2スライド部材、前記アーム部材、前記ワーク保持部、前記揺動駆動部、前記昇降駆動部、及び前記移動駆動部の前記搬送機構全体を、ワーク搬送装置が搬送動作を行っていない期間に昇降動作させ、搬送動作時のフィードレベルを調節するフィードレベル調整機構を設けている。
【0009】
この好ましいワーク搬送装置では、搬送装置が運転中においては小さな駆動力でワーク搬送を行うことができるとともに、プレス加工の種類により異なる金型の種類に合わせて搬送装置のフィードレベル(搬送動作時の平均的な高さ位置)を調整することができるので、金型の変更があってもより安定した搬送を実現することができる。
【0010】
また、本発明の好ましいワーク搬送装置は、前記搬送機構を、少なくとも第1および第2のプレス機械を有するプレスラインにおいて、該第1プレス機械の上流側と、該第1プレス機械と該第2プレス機械間と、該第2のプレス機械の下流側とに、配置している構成である。
【0011】
この構成では、コンパクトな搬送装置を実現することができる。特に、多数のプレス機械を直列に配置したタンデムプレスラインに好ましい搬送装置を実現する。
【0012】
また、本発明の好ましいワーク搬送装置は、上記いずれかの構成を採用したワーク搬送装置であって、前記搬送機構は、搬送方向と直交する方向(左右方向)に一対設けられており、前記ワーク保持部は、クロスバーと、該クロスバーに設置された吸着装置とからなり、該クロスバーの夫々の端部は前記一対の搬送機構の前記各アーム部材先端部に架設されている構成である。
【0013】
この構成によるワーク搬送装置は、搬送機構の上昇加工時の駆動力の低減とともに、安定したワーク搬送を実現することができる。また、また、安定な搬送を実現できることから、搬送速度を上昇させることができる。
【0014】
また、本発明の好ましいワーク搬送装置は、上記いずれかのワーク搬送装置において、前記搬送機構はプレス機械の搬送方向の前面または後面に取付けられている。
【0015】
この構成のワーク搬送装置は、構造が簡単で、プレス機械とワーク搬送装置との間隔を狭くすることができるので、プレス機械を複数台有するプレスラインに適用するのに適している。
【0016】
更に、より好ましくは、左右の搬送装置を同期して駆動し、クロスバーの両端部の移動速度、移動加速度を同期させる制御を行うことにより、より安定した搬送動作を実現する
ことができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴や構成、及びそれら特徴や構成がもたらす作用効果は、後述する本発明の実施態様の記載から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態におけるワーク搬送装置の簡略的な斜視図を示す。この図では、上流と下流に設置される2台のプレス機械1Aと1Bと、その間に設けられたワーク搬送装置10の左右一対の搬送機構11Lと11Rを示している。しかし、後述するように、本発明の実施態様におけるプレスラインは、2台以上のプレス機械間に夫々搬送機構11が配設される。ワーク搬送装置10の一対の搬送機構11L,11Rは、プレス機械1Aと下流側のプレス機械1Bとの間に設置されている。この実施態様では、プレス機械1Bの搬送側側面に設置されている。プレス機械の搬送側や搬入側の側面(搬送方向の前面または後面)にワーク搬送装置の搬送機構を取付けると全体の構成がコンパクトになる。もちろん、搬送機構11は、プレス機械間に別途取付用の支持部を設け、その支持部に取付けても良い。その場合、別途支持部が必要となるが、プレス機械の振動などの影響を低減できるので好ましい。
【0021】
図1から明らかなように、ワーク搬送装置10は、上流側プレス機械1Aでプレス加工されたワークを、次の工程のプレス加工を行う下流側プレス機械1Bに搬送する。一対の搬送機構11L,11Rの夫々の搬送アーム部材の先端にはクロスバー13の端部が夫々接続されている。クロスバー13には、真空吸着によりワークを吸着するバキュームカップ14を装着している。この場合、吸着装置としては、バキュームカップ以外の吸着装置でも良い。例えば、ワークが磁力より吸着できる場合には、電磁的な吸着装置(電磁石)などでも良い。ここでは、非電磁的なワークでも吸着可能であるバキュームカップを用いた。左右一対の搬送機構11Lと11Rは、後述する制御装置により、クロスバー13の移動動作の安定化のため同期して駆動制御される。この同期制御により、クロスバー13に取付けたバキュームカップが保持するワークを安定して搬送することができる。
【0022】
図2は、本実施形態に係るワーク搬送装置とプレス機械とを備えたプレスラインの正面図である。プレスラインは、複数台のプレス機械1と複数台のワーク搬送装置10がワーク搬送方向(図中右方向)に交互に配列されている、ワーク搬送装置10を用いて上流側
のプレス機械1から下流側のプレス機械1へワークを搬送しつつ、各プレス機械1においてプレス加工させるように形成されている。ここでは、4台のプレス機械1A、1B、1C、1Dと、5台のワーク搬送装置10A、10B、10C、10D、10E(より正確には、搬送機構11A、11B、11C、11D、11E)が搬送方向に並んで配置されている。夫々の搬送機構11は、
図1に示すように、左右方向に離間して鏡像的に一対(11L,11R)配置されている。
【0023】
図2に示す例では、搬送機構11は下流側のプレス機械1(1A,1B,1C,1D)に取り付けられているが、ワーク搬送装置10を上流側のプレス機械1に取り付けてもよいし、隣接する2台のプレス機械1の間に独立して設置してもよい。また、第1番目のプレス機械の上流側の搬送機構は、第1番目のプレス機械の上流側側面に取付けても良いし、別途支持部材を設けて取付けることでも良い。同様に、第4番目のプレス機械の下流側の搬送機構は、4番目のプレス機械の下流側側面に取付けても良いし、別途支持部材を設けて取付けることでも良い。
【0024】
各プレス機械1(1A,1B,1C,1D)は、昇降可能なスライド2と、スライド2の下面に取り付けられた上型(図示省略)と、上型と組み合わされてプレス加工する下型(図示省略)と、下型を上面に載置固定したボルスタ3とを含む。プレス機械1のスライド2を駆動する駆動機構は、
図2では省略している。スライド駆動機構としては、公知のスライド駆動機構を採用することができる。例えば、駆動電動機に回転駆動されるクランク軸と、クランク軸に回動可能に取付けられ回転駆動を直線運動に変換してスライドを上昇下降するためのコネクティングロッドで構成されるスライド駆動機構を採用できる。
【0025】
ワーク搬送装置10の搬送機構11は、
図2において、図中奥行き方向に離隔配設された1対(右側搬送機構、左側搬送機構)からなる。図では、左側の搬送機構が示されている。右側搬送機構と左側搬送機構の間には、ワークを保持するワーク保持部12が架設される。右側搬送機構11Rと左側搬送機構11Lは、左右対称に鏡像的に構成されているため、以下では、搬送機構11の説明は一方についてのみ説明し、必要に応じて左右の動作を説明する。
【0026】
図3は、本発明の一実施態様における搬送機構11(11L,11R)の詳細な構成を示す正面図である。搬送機構11は、フレーム20と、レバー30と、第1スライド部材40と、第2スライド部材50と、第3スライド部材53と、アーム部材60と、揺動駆動部70と、昇降駆動部80と、移動駆動部83と、姿勢制御部90とを含む。
【0027】
レバー30は、基端側がフレーム20に揺動可能に設けられ、揺動駆動部70により基端側の回転軸31を中心に回転駆動(揺動駆動)される。
【0028】
第1スライド部材40は、レバー30の先端側に回転可能に設けられている。第2スライド部材50は、フレーム20に昇降可能に設けられ、昇降駆動部80によりフレーム20に対して昇降駆動される。フレーム20には、鉛直方向に延びる第1ガイド51が取り付けられており、第2スライド部材50は、第1ガイド51にガイドされることでフレーム20に対して昇降可能となっている。第3スライド部材53は、第2スライド部材50に回転可能に設けられている。
【0029】
アーム部材60は、第1スライド部材40及び第3スライド部材53に長手方向に移動可能に取り付けられ、移動駆動部83により長手方向に移動駆動される。アーム部材60には、アーム部材60の長手方向に延びる第2ガイド41が取り付けられており、第1スライド部材40及び第3スライド部材53が第2ガイド41にガイドされることで、アーム部材60は長手方向に移動可能となっている。なお、第1スライド部材40をガイドす
るガイド部材と、第3スライド部材53をガイドするガイド部材とを、別個にアーム部材60に設けてもよい。
【0030】
揺動駆動部70は、フレーム20に固定された第1揺動駆動用モータ71と、第1揺動駆動用モータ71に連結された図示しない減速機とを備えている。第1揺動駆動用モータ71を回転制御することで、レバー30をその基端側の回転軸31を中心に揺動させることができる。
【0031】
昇降駆動部80は、フレーム20に固定された昇降駆動用モータ81と、鉛直方向に配置され、昇降駆動用モータ81に連結されたボールねじ82とを備えている。昇降駆動用モータ81の駆動力をボールねじ82に伝達する場合、この例では駆動力を直接伝達する構成としたが、必要であれば公知の減速機を介して伝達する構成にしても良い。第2スライド部材50には、ボールねじ82に螺合するナット部52が固定されている。昇降駆動用モータ81を回転制御してボールねじ82を回転駆動することで、第2スライド部材50をフレーム20に対して昇降させることができる。なお、第2スライド部材50を昇降させる機構は、ボールねじを用いたものに限らず、ベルトやラックアンドピニオン等を用いた機構により第2スライド部材50を昇降させるように構成してもよい。
【0032】
移動駆動部83は、アーム部材60の基端側に固定された移動駆動用モータ84と、アーム部材60の長手方向に配置され、移動駆動用モータ84に連結されたボールねじ85とを備えている。移動駆動用モータ84の駆動力をボールねじ85に伝達する場合、この例では駆動力を直接伝達する構成としたが、必要であれば公知の減速機を介して伝達する構成にしても良い。第3スライド部材53には、ボールねじ85に螺合するナット部54が固定されている。移動駆動用モータ84を回転制御してボールねじ85を回転駆動することで、アーム部材60を第3スライド部材53(及び、第2スライド部材50)に対してアーム部材60の長手方向に移動させることができる。なお、アーム部材60を長手方向に移動させる機構は、ボールねじを用いたものに限らず、ベルトやラックアンドピニオン等を用いた機構によりアーム部材60を長手方向に移動させるように構成してもよい。
【0033】
図4は、アーム部材60が上向きに起立した状態(
図2のワーク搬送装置10A、10E参照)における、レバー30、第1スライド部材40及びアーム部材60の構成を一部断面で示す平面図である。
図4に示すように、第1スライド部材40には回転軸42が固定され、回転軸42はレバー30の先端側に回転可能に装着されている。また、第1スライド部材40は、アーム部材60に設けられた第2ガイド41に移動可能に取り付けられている。
【0034】
図5は、アーム部材60が上向きに起立した状態における、第2スライド部材50、第3スライド部材53及びアーム部材60の構成を一部断面で示す平面図である。
図5に示すように、第2スライド部材50は、フレーム20に設けられた第1ガイド51に昇降可能に取り付けられている。第3スライド部材53には回転軸55が固定され、回転軸55は第2スライド部材50に回転可能に装着されている。また、第3スライド部材53は、アーム部材60に設けられた第2ガイド41に移動可能に取り付けられている。アーム部材60内部に設けられたボールねじ85は、第3スライド部材53に固定されたナット部54に螺合している。
【0035】
図3の説明に戻ると、ワーク保持部12の姿勢を調節する姿勢制御部90は、基端側がアーム部材60の先端側に支持され、先端側がワーク保持部12を支持する。姿勢制御部90は、アーム部材60の先端側に固定された第2揺動駆動用モータ91と、ワーク保持部12と連結するブラケット92とを備えている。第2揺動駆動用モータ91を回転制御することで、ブラケット92とワーク保持部12とを介してワークの姿勢を制御(変更)
することができる。なお、姿勢制御部90は、第2揺動駆動用モータ91の回転を調節するために必要であれば減速機構を設けることができる。
【0036】
ワーク保持部12は、右側搬送機構と左側搬送機構の間に架設される(ブラケット92に連結される)クロスバー13と、クロスバー13に固着され、ワークを吸着及び開放するバキュームカップ14とを備えている。なお、ワークを保持する機構は、吸着式の装置に限らず、ワークを保持可能に構成されていればどのようなものであってもよい。
【0037】
本実施形態に係るワーク搬送装置10の搬送機構11では、アーム部材60が、レバー30の先端側に回転可能に設けられた第1スライド部材40と、第2スライド部材50に回転可能に設けられた第3スライド部材53とにガイドされることで、アーム部材60の長手方向に移動可能に設けられており、アーム部材60の駆動点61(第1スライド部材40の回転中心)がアーム部材60の長手方向に移動可能となっている。すなわち、アーム部材60は、レバー30によって、アーム部材60の長手方向に移動可能な駆動点61で駆動される。
【0038】
通常のスコットラッセル機構では、駆動点の位置がアーム部材の長手方向中央に固定されているため、レバーの揺動により、アーム部材の先端が水平移動する。そのため、スコットラッセル機構を備えた従来のワーク搬送装置では、アーム部材の先端を上下方向に移動させるために、レバーと揺動駆動部とを全体として昇降させる必要がある。この構成では大きな駆動力を必要とする。
【0039】
これに対して、
図3に示す搬送機構11では、揺動駆動部70によってレバー30の角度を変更しつつ、昇降駆動部80により第2スライド部材50(アーム部材60の基端側)の上下位置を変更し、且つ、移動駆動部83によりアーム部材60の長手方向の位置を変更することで、駆動点61のアーム部材60長手方向における位置を任意に変更することができる。すなわち、本実施形態に係るワーク搬送装置10の搬送機構11では、通常のスコットラッセル機構と異なり、アーム部材60の長手方向に移動可能な駆動点61を支点としてアーム部材60の姿勢(角度)を変えることができるため、アーム部材60の先端部を水平方向だけでなく上下方向にも移動させることができる。
【0040】
図6の(a)〜(g)は、ワーク搬送装置10の搬送機構11の動作を時系列順に示す図である。
図6の(a)は、アーム部材60の先端部が上流側のプレス機械1の加工領域内にある状態を示しており、(g)は、アーム部材60の先端部が下流側のプレス機械1の加工領域内にある状態を示しており、(b)〜(f)は、(a)の状態から(g)の状態に至るまでの途中の状態を示している。
図6に示すように、本実施形態に係るワーク搬送装置10では、装置全体を昇降させることなく、レバー30の揺動運動と第2スライド部材50の昇降運動とアーム部材60の長手方向に沿った移動運動との協働により、アーム部材60の先端部を軌跡R(ワーク搬送軌跡)に沿って移動させることができる。
【0041】
このように、本実施形態に係るワーク搬送装置10の搬送機構11では、レバー30を揺動させるとともに第2スライド部材50を昇降させ、且つアーム部材60を長手方向に移動させることで、アーム部材60の先端を水平方向及び上下方向に移動させることができるため、フレーム20、レバー30、揺動駆動部70、アーム部材60等を全体として昇降させるための駆動力の大きな駆動部(駆動力の大きなアクチュエータ、大きな駆動力に耐えられる強度を有するガイド等の機械要素)を必要とすることなくワークを搬送することができる。また、重量の大きな機械要素を移動させる必要がなくなるため、プレス機械1の振動による加速度の影響が軽減され、ワーク搬送装置10の駆動制御を容易にすることができる。
【0042】
図7は、
図3に示す搬送機構11の駆動制御を行う駆動制御装置100の構成を示す図である。この
図7では、1台のワーク搬送装置の駆動制御を行う駆動制御装置として記載したが、
図3に示すようなプレスラインにおけるワーク搬送装置を駆動制御する場合には、夫々のワーク搬送装置に対して
図7のような駆動制御装置100を夫々設けて制御するか、あるいは、1台の駆動制御装置100がプレス機械間に配備された複数台のワーク搬送装置を制御するように構成する。以下の説明では、簡単のために、1台のワーク搬送装置を制御する場合を説明する。本実施態様におけるワーク搬送装置は、左右一対の搬送機構11L,11Rで構成されているので、駆動制御装置は、それら一対の搬送機構を夫々制御する。
【0043】
図7において、駆動制御装置100は、CPU、記憶部(ROM、RAM、ハードディスク装置)を備えた制御部101と、設定部102とを含み、左右一対の搬送機構11L,11Rの駆動モータを夫々制御するための信号を各ドライバに出力する。具体的には、制御部101は、左側搬送機構11Lの第1揺動駆動用モータ71Lを駆動する第1のモータドライバ71DL、同じく左側搬送機構11Lの昇降駆動用モータ81Lを駆動する第2のモータドライバ81DL、同じく左側搬送機構11Lの移動駆動用モータ84Lを駆動する第3のモータドライバ84DL、同じく左側搬送機構11Lの第2揺動駆動用モータ91Lを駆動する第4のモータドライバ91DLに制御信号を出力する。また、同様に、制御部101は、右側搬送機構11Rを駆動するために、第1揺動駆動用モータ71Rを駆動する第1のモータドライバ71DR、昇降駆動用モータ81Rを駆動する第2のモータドライバ81DR、移動駆動用モータ84Rを駆動する第3のモータドライバ84DR、第2揺動駆動用モータ91Rを駆動する第4のモータドライバ91DRに制御信号を出力する。第1のモータドライバ71D(71DL,71DR)は、制御信号に基づき、第1揺動駆動用モータ71(71L,71R)を回転制御して、レバー30(30L,30R)を夫々揺動駆動する。
【0044】
この場合、左右一対の搬送機構11L,11Rは鏡像的に配置されているので、第1揺動駆動用モータ71Lと71Rの回転方向は逆方向になるよう制御される。これにより、左右の揺動動作を同一搬送方向に制御でき、夫々のアーム部材先端部に架設されたクロスバー13は同一搬送方向に移動する。第2のモータドライバ81D(81DL,81DR)は、制御信号に基づき、昇降駆動用モータ81(81L,81R)を回転制御して、第2スライド部材50を昇降駆動する。第3のモータドライバ84D(84Dl,84DR)は、制御信号に基づき、移動駆動用モータ84(84L,84R)を回転制御して、アーム部材60を移動駆動する。第4のモータドライバ91D(91DL,91DR)は、制御信号に基づき、第2揺動駆動用モータ91(91L,91R)を回転制御して、ワーク保持部12を揺動駆動する。また、駆動制御装置100は、バキュームコントローラ15に吸着・開放制御信号を出力してワーク保持部12(バキュームカップ14)の吸着・開放を制御する。
【0045】
ここで、左右一対の搬送機構を制御する制御信号は、原則として、左右において同様の制御信号であり、一方の搬送機構(例えば左側搬送機構)の各制御信号をマスターとし、他方の搬送機構の各制御信号をスレーブとして駆動することにより、左右搬送機構を同期制御させることができ、安定した搬送を実現する。
【0046】
ワーク搬送プログラムを構成する基本的な固定的情報(例えば、ワーク搬送情報、姿勢調整情報、吸着・開放情報等)は記憶部に格納されており、選択的情報(例えば、ワークの種類)は設定部102を用いて設定変更(例えば選択)でき、この情報も記憶部に記憶される。
【0047】
プレス運転に際しては、設定部102を用いて複数のワーク搬送プログラムの中からそ
の1つを選択設定することができる。制御部101は選択設定されたワーク搬送プログラムを実行する。なお、プレス機械1側の各種動作(例えば、スライド昇降動作)は、図示しないプレス運転制御盤からの信号により実行される。このプレス機械1側の動作は、プレス動作信号として通信線103を介して伝送され、駆動制御装置100はこのプレス動作信号を用いてタイミング同期させつつワーク搬送の駆動制御を行う。
【0048】
ワーク搬送運転に関しては、駆動制御装置100は、レバー30を揺動させつつ、第2スライド部材50を昇降させ、且つアーム部材60を長手方向に移動させて、ワーク保持部12を水平方向及び上下方向に移動させる。これと並行して、ワーク保持部12の姿勢を制御する。すなわち、駆動制御装置100は、アーム部材60の先端部を、
図6に示す軌跡Rに沿って移動させる。
【0049】
駆動制御装置100は、設定部102で設定されたワーク搬送軌跡(アーム部材60先端部の目標位置)と、レバー30、第2スライド部材50及びアーム部材60それぞれの動作可能範囲(単位時間当たりの変位量の上限)とに基づいて、レバー30の目標角度と第2スライド部材50の目標位置とアーム部材60の長手方向の目標位置とを決定し、決定した目標角度に基づき第1揺動駆動用モータ71を回転制御するとともに、決定した第2スライド部材50の目標位置に基づき昇降駆動用モータ81を回転制御し、決定したアーム部材60の目標位置に基づき移動駆動用モータ84を回転制御する。
【0050】
なお、本実施形態に係るワーク搬送装置10の搬送機構11では、レバー30の角度と第2スライド部材50の上下位置とアーム部材60の長手方向位置の組み合わせは、アーム部材60の先端部の位置から一意には決まらないため、アーム部材60先端部の目標位置が決まっていても、レバー30の角度とアーム部材60の姿勢とをある程度自由に決定することができる。そのため、アーム部材60先端部の目標位置を維持しつつ、レバー30の角度及びアーム部材60の姿勢がプレス機械1(スライド2、金型)や他の機器との干渉を回避できるような角度及び姿勢となるように、レバー30の目標角度と第2スライド部材50の目標位置とアーム部材60の長手方向の目標位置とを決定することもできる。
【0051】
上記
図7において、通信線103は、ワーク搬送装置10と上流側と下流側のプレス機械1との連携制御を行うための情報通信に利用される。ワーク搬送装置10のアーム部材60がプレス機械1へ侵入した場合、プレス機械1のスライド2の位置や速度との協調制御をしないと、ワーク搬送装置10のアーム部材60がプレス機械1のスライド2と接触する可能性があるが、ワーク搬送装置10からプレス機械1のコントローラ(図示せず)にワーク搬送装置10の状況(アーム部材60の位置情報や速度情報)を送信しておくことにより、機械の接触事故のリスクを少なくすることができる。また、この通信線103により、プレス機械1のコントローラからプレス機械1の状況信号(プレス機械1のスライド位置やプレスの加工速度など)を受信することができ、ワーク搬送装置10がプレス機械1と接触しないように制御することを可能にする。なお、
図7における破線で囲んだ部分は、搬送機構11(11R,11L)の構成部分を示している。
【0052】
図1〜
図7に示す本発明の実施態様においては、高速で安定した搬送を実現するために左右一対の搬送機構を設けた構成としたが、本発明はこの実施態様に限定されない。すなわち、各プレス機械間に、各1台の搬送機構(搬送装置)を設け、この搬送機構のアーム部材の先端部においてクロスバーを把持する構成とすることもできる。アーム部材がクロスバーを保持する位置は、搬送動作の安定のためには、クロスバーの略中心位置が良い。つまり、クロスバー中心部を1台の搬送機構のアームで保持する構成が好ましい。この場合、搬送機構が1台なので、当然、制御は1台の搬送機構を制御することになる。この実施態様では、上述した実施態様の場合と比較すると、高速での安定性に欠けるが、比較的
低速での搬送を行うプレスラインでは問題はない。クロスバー中心部を1台の搬送機構のアームで保持する構成の実施態様の場合、搬送装置全体の構成は簡単になるので、低コストで実現できる。また、構造が簡単なことから、コンパクト化に寄与する。
【0053】
次に、本発明のワーク搬送装置の他の実施態様を説明する。本発明の他の実施態様は、主に
図8、
図9により説明するが、この実施態様の場合も、当然
図2に示すプレスラインに適用できる。また、搬送動作に関しては
図6に示す動作と同様である。
【0054】
本発明の他の実施態様における搬送機構11の詳細を、
図8に示す。
図8において、
図3に示す各機器と同じものについては、同じ符号(番号)を付し、その説明を省略する。ワークを実際に搬送する搬送時の搬送動作についてみると、
図8の実施態様の場合と、
図3の実施態様の場合とは同様の搬送動作を行う。したがって、
図8の搬送動作の説明は省略する。
【0055】
図8の搬送機構11と
図3の搬送機構11との違いは、
図3の場合、搬送機構11の本体はフレームに固定される構造であるのに対し、
図8の場合は、この搬送機構11本体を昇降可能に構成した点が異なる。つまり、
図8においては、搬送動作時においては
図3と同様に、搬送機構11本体を持ち上げる必要はない(このため、搬送時の昇降時の駆動力を低減できる)が、搬送動作とは別に、搬送機構本体の位置を上昇したり下降したりする方が便利な場合がある。つまり、プレス加工では、加工する製品が違うと、プレス機械に取付ける金型が異なる。金型が異なると、当然、その高さや大きさは異なるので、搬送装置が搬送するフィードレベルも、それに合わせて適切な高さに調整した方が、より安定した搬送を実現することができ、また、より小さな駆動力での駆動が可能となる。
【0056】
そのため、
図8の搬送機構11では、フィードレベル調整を行うことが可能な構成にしたものである。この機能を実現するフィードレベル調整機構250は、プレス機械のワーク搬送側(またはワーク搬出側)の側面に取付けたベース230と、そのベース230に取付けられた駆動モータ220と、その駆動モータ220の回転駆動軸に接続されたボールねじ210と、揺動駆動部70に固定されたナット部240で実現できる。なお、
図8の昇降駆動部200は、駆動モータ220とボールねじ210とで構成したが、それ以外の公知の昇降駆動手段を使用することができる。例えば、ボールねじの代わりに、ベルトやラックアンドピニオン等を用いた機構を用いて昇降動作をさせるように構成してもよい。
【0057】
このフィードレベル調整機構250に用いられる駆動力源である駆動モータ220は、搬送動作の都度、高速に昇降駆動を行う訳ではないので、低コストの小型モータを用いることができる。したがって、フィードレベル調整機構250を設けたとしても、従来のような大きな駆動力は必要としない。
【0058】
フィードレベル調整機構250は、プレスラインにおけるプレス加工が開始される前の段階、及び対処とする製品のプレス加工が終了し、次の金型をプレス機械に装着した状態などにおいて、ワーク搬送装置による搬送のフィードレベルを調整するために用いられ、プレス加工が開始されワーク搬送装置が搬送動作を行っている場合には、動作させない。
【0059】
図9は、
図8に示す搬送機構11の駆動制御を行う駆動制御装置100の構成を示す図である。
図9における構成機器は、基本的に
図7の構成機器と同様であり、
図7と同じ機器には同一符号(番号)を付し、その説明は省略する。また、搬送動作時の搬送機構11の制御は、
図9の駆動制御装置を用いた制御と、
図7の駆動制御装置を用いた制御とが同じなので、説明を省略する。
図9では、
図7の機能に、更にフィードレベル調整機構250を制御する機能が追加されているので、その制御について説明する。
【0060】
図9において、220Dはモータドライバである、左側の搬送機構11Lに対応するモータドライバが220DLであり、右側の搬送機構11Rに対応するモータドライバが220DRである。各モータドライバ220DL,220DRは、夫々、左右の各モータ220L,220Rを駆動する。左右一対の搬送機構11L,11Rは同期して駆動制御される。搬送時の駆動制御動作は、
図9と
図6とは全く同様の動作となるので、説明は省略する。
図9では、搬送動作を行っていない期間に、加工する金型の違い等により搬送フィードレベルを調整する必要が生じた場合、制御部101が、モータドライバ220D(220DL,220DR)に制御信号を出力し、このモータドライバ220Dが駆動用のモータ220(220L,220R)を駆動する。このモータ駆動により、左右の搬送機構のボールねじ210を駆動し、左右の搬送機構本体、つまりワーク搬送装置本体を昇降動作する。繰り返すが、このフィードレベルの調節は、ワーク搬送装置10が搬送動作している状態では行わず、ワーク搬送装置10の搬送動作が行われていない状況下で行われる。
【0061】
なお、上記のように本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能である。