(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号7、配列番号8、配列番号3に記載されたものであり、かつ、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号42、配列番号23、配列番号11に記載されたものであり、
さらに、前記CDRは、Kabatの定義に従って説明される、請求項3または4に記載の医薬組成物。
配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号1、配列番号2、配列番号3に記載されたものであり、かつ、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号41、配列番号5、配列番号6に記載されたものであり、
さらに、前記CDRは、Chothiaの定義に従って説明される、請求項3または4に記載の医薬組成物。
配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号7、配列番号8、配列番号3に記載されたものであり、かつ、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号42、配列番号23、配列番号11に記載されたものであり、
さらに、前記CDRは、Kabatの定義に従って説明される、請求項13または14に記載の医薬組成物。
配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号1、配列番号2、配列番号3に記載されたものであり、かつ、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号41、配列番号5、配列番号6に記載されたものであり、
さらに、前記CDRは、Chothiaの定義に従って説明される、請求項13または14に記載の医薬組成物。
炎症性障害または状態の治療において使用するための医薬の製造のための、ヒトホモ二量体IL−17Aおよびヒトヘテロ二量体IL−17AFに結合する抗体またはその抗原結合部分の使用であって、
前記抗体またはその抗原結合部分は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、
a.ここで、前記VHは、順番に、アミノ酸配列として配列番号7、配列番号8、配列番号3に記載の3つの相補性決定領域(CDR)を含み、かつ、前記VLは、順番に、アミノ酸配列として配列番号42、配列番号23、配列番号11に記載の3つのCDRを含むか;または
b.ここで、前記VHは、順番に、アミノ酸配列として配列番号1、配列番号2、配列番号3に記載の3つのCDRを含み、かつ、前記VLは、順番に、アミノ酸配列として配列番号41、配列番号5、配列番号6に記載の3つのCDRを含む、使用。
炎症性障害または状態の治療において使用するための医薬の製造のための、ヒトホモ二量体IL−17Aおよびヒトヘテロ二量体IL−17AFに結合する抗体またはその抗原結合部分の使用であって、
前記抗体またはその抗原結合部分は、VHおよびVLを含み、
ここで、前記VHは、配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRを含み、かつ、前記VLは、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRを含む、使用。
炎症性障害または状態の治療において使用するための医薬の製造のための、ヒトホモ二量体IL−17Aおよびヒトヘテロ二量体IL−17AFに結合する抗体またはその抗原結合部分の使用であって、
前記抗体またはその抗原結合部分は、重鎖および軽鎖を含み、
ここで、前記重鎖は、配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRを含み、かつ、前記軽鎖は、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRを含む、使用。
前記炎症性障害または状態が、関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、ブドウ膜炎、汗腺膿瘍、多発性硬化症、または嚢胞性線維症である、請求項24〜26のいずれか一項に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0107】
発明の詳細な説明
本開示は、部分的には、ホモ二量体IL−17Aおよびヘテロ二量体IL−17AFに
特異的に結合するが、ホモ二量体IL−17Fには特異的に結合しない抗体分子の発見に
基づくものである。本開示は、完全なIgGフォーマット抗体ならびに以下でさらに説明
されるその抗原結合部分を含むタンパク質の両方に関する。
【0108】
したがって、本開示は、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ラット、マウスま
たはヒトのうちの1つまたは複数から選択されるものなどのいくつかの種について驚くべ
きことに類似する結合能力を有する抗体ならびにその抗原結合部分を含むタンパク質、な
らびにそのような抗体および組成物の医薬組成物、製造方法、および使用方法を提供する
。
【0109】
組換え抗体
本開示の抗体は、以下の表1に記載される全長重鎖および軽鎖アミノ酸配列により誘導
、単離および構造的に特徴付けられた、ヒト組換え抗体XAB1ならびに抗体誘導体XA
B2、XAB3、XAB4およびXAB5を含む。
【0111】
本開示のそのような単離された抗体XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびX
AB5の対応する可変領域V
HおよびV
Lアミノ酸配列を、以下の表2に示す。
【0113】
本開示の他の抗体は、アミノ酸の欠失、挿入または置換により変異しているが、上記の
抗体に対して、特に、上記の配列中に記載されるCDR領域において、少なくとも70%
、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%
、98%、99%または100%の同一性を依然として有するアミノ酸を有するものを含
む。いくつかの実施形態においては、本開示の抗体は、XAB1、XAB2、XAB3、
XAB4およびXAB5のいずれか1つの変異バリアントであり、前記変異バリアント抗
体は、1、2、3、4または5個を超えないアミノ酸が、上記の配列中に記載されたCD
R領域と比較した場合、CDR領域中のアミノ酸欠失、挿入または置換により変異された
、変異アミノ酸配列を含む。
【0114】
XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の全長軽鎖および重鎖ヌクレ
オチドコード配列を、以下の表3に示す。
【0116】
XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の可変軽鎖および重鎖ヌクレ
オチドコード配列を、以下の表4に示す。
【0118】
本開示の抗体をコードする他の核酸は、ヌクレオチドの欠失、挿入または置換により変
異しているが、上記の配列または以下の表5および表6に記載のコード領域に対応するC
DRに対して少なくとも60、70、80、90、95または100パーセントの同一性
を依然として有する核酸を含む。
【0119】
いくつかの実施形態においては、それは、1、2、3、4または5個を超えないヌクレ
オチドが、上記の配列または以下の表5および表6に記載のCDRコード領域を有するC
DRコード領域においてヌクレオチド欠失、挿入または置換により変化したバリアント核
酸を含む。
【0120】
同じエピトープに結合する抗体については、V
H、V
L、全長軽鎖、および全長重鎖配
列(ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列)を、「混合および一致(mixed and matched
)」させて、本開示の他の抗IL−17A結合分子を作出することができる。そのような
「混合および一致」した抗体のIL−17A結合を、上記の結合アッセイまたは他の従来
の結合アッセイ(例えば、ELISA)を用いて試験することができる。これらの鎖が混
合および一致した場合、特定のV
H/V
L対に由来するV
H配列を、構造的に類似するV
H配列と置き換えるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対に由来する全長重
鎖配列を、構造的に類似する全長重鎖配列と置き換えるべきである。同様に、特定のV
H
/V
L対に由来するV
L配列を、構造的に類似するV
L配列と置き換えるべきである。同
様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対に由来する全長軽鎖配列を、構造的に類似する全長軽
鎖配列と置き換えるべきである。したがって、一態様において、本開示は、配列番号12
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号13、25、3
5、43および53からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有し
、前記重鎖および軽鎖領域が、抗体がIL−17Aに特異的に結合するように選択される
、単離された組換え抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を提供する。
【0121】
本開示によるいくつかの抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質のV
HCDR1
(用いられるCDR定義に応じてHCDR1またはHCDR1’とも呼ばれる)、V
HC
DR2(用いられるCDR定義に応じてHCDR2またはHCDR2’とも呼ばれる)、
V
HCDR3(用いられるCDR定義に応じてHCDR1またはHCDR1’とも呼ばれ
る)、V
LCDR1(用いられるCDR定義に応じてLCDR1またはLCDR1’とも
呼ばれる)、V
LCDR2(用いられるCDR定義に応じてLCDR2またはLCDR2
’とも呼ばれる)、V
LCDR3(用いられるCDR定義に応じてHCDR3またはHC
DR3’とも呼ばれる)のアミノ酸配列の例を、表5および表6に示す。
【0122】
表5において、本開示のいくつかの抗体のCDR領域は、Kabatのシステム(Kaba
t, E. A., et al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Ed
ition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242
、また、Zhao&Lu 2009, Molecular Immunology 47:694-700も参照されたい)を用いて説
明される。
【0123】
読解を容易にするために、CDR領域がKabatの定義に従って説明される場合、そ
れらは以後、それぞれ、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2
、LCDR3と呼ばれる。
【0125】
コンセンサス配列、配列番号73、配列番号74および配列番号75は、Xと命名され
る、いくつかの可変アミノ酸を含む。XAB2〜XAB5の配列の配列アラインメントに
基づいて、配列番号73中の4つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することが
できる:第1の可変アミノ酸(X1)を、Gly(G)およびVal(V)からなる群か
ら選択することができる;第2の可変アミノ酸(X2)を、Tyr(Y)、Asn(N)
およびIle(I)からなる群から選択することができる;第3の可変アミノ酸(X3)
を、Trp(W)およびSer(S)からなる群から選択することができる;ならびに第
4の可変アミノ酸(X4)をGlu(E)およびAla(A)からなる群から選択するこ
とができる。配列番号9は、配列番号22と比較して91%の配列同一性を有し、配列番
号34および配列番号42と比較して73%の配列同一性を有する。配列番号22は、配
列番号34および配列番号42と比較して64%の配列同一性を有する。配列番号34は
、配列番号42と比較して91%の配列同一性を有する。
【0126】
同様に、配列番号74中の1つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することが
できる:X1を、Asn(N)およびGln(Q)からなる群から選択することができる
。配列番号10は、配列番号23と比較して86%の配列同一性を有する。
【0127】
配列番号75中の1つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することができる:
X1を、Asn(N)およびAsp(D)からなる群から選択することができる。配列番
号11は、配列番号24と比較して89%の配列同一性を有する。
【0128】
表6において、本開示のいくつかの抗体のCDR領域は、Chothiaのシステム、
Al-Lazikani et al. 1997, J. Mol. Biol. 273:927-948を用いて説明される。読解を容易
にするために、CDR領域がChothiaの定義に従って説明される場合、それらは以
後、それぞれ、HCDR1’、HCDR2’、HCDR3’、LCDR1’、LCDR2
’、LCDR3’と呼ばれる。
【0130】
コンセンサス配列、配列番号71および配列番号72は、Xと命名されるいくつかの可
変アミノ酸を含む。XAB2〜XAB5の配列の配列アラインメントに基づいて、配列番
号71中の4つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することができる:第1の可
変アミノ酸(X1)を、Gly(G)およびVal(V)からなる群から選択することが
でき、第2の可変アミノ酸(X2)を、Tyr(Y)、Asn(N)およびIle(I)
からなる群から選択することができる;第3の可変アミノ酸(X3)を、Trp(W)お
よびSer(S)からなる群から選択することができる;第4の可変アミノ酸(X4)を
、Glu(E)およびAla(A)からなる群から選択することができる。配列番号4は
、配列番号20と比較して86%の配列同一性を有し、配列番号33および配列番号41
と比較して57%の配列同一性を有する。配列番号20は、配列番号33および配列番号
41と比較して43%の配列同一性を有する。配列番号33は、配列番号41と比較して
86%の配列同一性を有する。
【0131】
同様に、配列番号72中の1つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することが
できる:X1を、Asn(N)およびAsp(D)からなる群から選択することができる
。配列番号6は、配列番号21と比較して86%の配列同一性を有する。
【0132】
これらの抗体がそれぞれIL−17Aに結合することができ、抗原結合特異性が主にC
DR1、2および3領域により提供されることを考慮すれば、V
HCDR1、2および3
配列ならびにV
LCDR1、2および3配列を「混合および一致」させることができる(
すなわち、異なる抗体に由来するCDRを混合および一致させることができ、V
HCDR
1、2および3ならびにV
LCDR1、2および3を含有するそれぞれの抗体は本開示の
他の抗IL−17A結合分子を作出する)。そのような「混合および一致」した抗体のI
L−17A結合を、上記および実施例に記載の結合アッセイまたは他の従来のアッセイ(
例えば、ELISA)を用いて試験することができる。V
HCDR配列を混合および一致
させる場合、特定のV
H配列に由来するCDR1、CDR2および/またはCDR3配列
を、構造的に類似するCDR配列と置き換えるべきである。同様に、V
LCDR配列を混
合および一致させる場合、特定のV
L配列に由来するCDR1、CDR2および/または
CDR3配列を、構造的に類似するCDR配列と置き換えるべきである。新規V
Hおよび
V
L配列を、1つまたは複数のV
Hおよび/またはV
LCDR領域配列を、本開示のモノ
クローナル抗体について本明細書に示されるCDR配列に由来する構造的に類似する配列
で置換することにより作出することができることが当業者には容易に明らかとなる。
【0133】
一実施形態においては、単離された組換え抗体、またはその抗原結合部分を含むタンパ
ク質は、配列番号7に記載の重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の重鎖可変領域C
DR2;配列番号3に記載の重鎖可変領域CDR3;配列番号9、22、34、42およ
び73からなる群から選択される、好ましくは、配列番号9、22、34、42からなる
群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号10、23、およ
び74からなる群から選択される、好ましくは、配列番号10および23からなる群から
選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;ならびに配列番号11、24およ
び75からなる群から選択される、好ましくは、配列番号11および24からなる群から
選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を有し、前記CDR領域は、本開示
の抗体またはタンパク質がIL−17Aに特異的に結合するように選択される。
【0134】
別の実施形態においては、単離された組換え抗体、またはその抗原結合部分を含むタン
パク質は、配列番号1に記載の重鎖可変領域HCDR1’;配列番号2に記載の重鎖可変
領域HCDR2’;配列番号3に記載の重鎖可変領域HCDR3’;配列番号4、20、
33、41および71からなる群から選択される、好ましくは配列番号4、20、33、
41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域LCDR1’;配列番号
5に記載の軽鎖可変領域LCDR2’;ならびに配列番号6、21、および72からなる
群から選択される、好ましくは、配列番号6および21からなる群から選択されるアミノ
酸配列を含む軽鎖可変領域LCDR3’を有し、前記CDR領域は本開示の抗体またはタ
ンパク質がIL−17Aに特異的に結合するように選択される。
【0135】
ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列
番号7、配列番号8および配列番号3;配列番号12;またはc)配列番号14を含む。
【0136】
本明細書で用いられる場合、ヒト抗体は、抗体の可変領域または全長の鎖がヒト生殖系
列免疫グロブリン遺伝子を用いる系から得られる場合、特定の生殖系列配列「の生成物(
the product of )」であるか、またはそれ「から誘導される(derived from)」重鎖も
しくは軽鎖可変領域または全長重鎖もしくは軽鎖を含む。そのような系は、ヒト免疫グロ
ブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスを、対象の抗原で免疫すること、また
はファージ上に展示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを対象の抗原でスクリ
ーニングすることを含む。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の生成物」であるか、また
はそれ「から誘導される」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロ
ブリンのアミノ酸配列と比較し、ヒト抗体の配列に対して順番に最も近い(すなわち、最
大の同一性%)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択することにより、そのようなもの
として同定され得る。特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の生成物」であるか、ま
たはそれ「から誘導される」ヒト抗体は、例えば、自然に生じる体細胞変異または部位特
異的突然変異の意図的な導入のため、生殖系列配列と比較した場合にアミノ酸の相違を含
んでもよい。しかしながら、選択されるヒト抗体は、典型的には、ヒト生殖系列免疫グロ
ブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列において少なくとも90%
同一であり、ヒト抗体を、他の種(例えば、マウス生殖系列配列)の生殖系列免疫グロブ
リンアミノ酸配列と比較した場合、ヒトであると同定するアミノ酸残基を含有する。ある
特定の事例においては、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされる
アミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも60%、70%、80%、90%、も
しくは少なくとも95%、またはさらには少なくとも96%、97%、98%、もしくは
99%同一であってもよい。典型的には、特定のヒト生殖系列配列から誘導されるヒト抗
体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との10個を
超えないアミノ酸の相違を示す。ある特定の事例においては、ヒト抗体は、生殖系列免疫
グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との5個を超えない、またはさらには
4、3、2または1個を超えないアミノ酸の相違を示してもよい。
【0137】
本開示において、潜在的な治療抗体の結合のための標的として特に好ましいIL−17
A上のエピトープが同定された。このエピトープはXAB1、ならびにXAB1の配列の
改変により開発されたバリアント抗体XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5によ
り結合する。このエピトープは、残基Arg78とTrp90の間で、IL−17A配列
上に見出される。
【0138】
エピトープは、IL−17A内に以下の最も好ましいアミノ酸残基を含むと考えられ得
る:Arg78、Glu80、Trp90。さらに、以下のアミノ酸残基も好ましい:T
yr85、Arg124。他の重要なアミノ酸残基は、Pro82、Ser87、Val
88である。さらに寄与するアミノ酸残基は、Val45
*、Leu49、Asp81、
Glu83、Pro86、Pro130、Phe133、Lys137
*であり、ここで
(
*)の印を付けたアミノ酸はホモ二量体IL−17Aの第2のIL−17Aサブユニッ
トにより寄与される残基を示す。
【0139】
IL−17A上のこのエピトープを標的とする抗体は、IL−17Aのその受容体への
結合を遮断して、in vitroでIL−17Aに媒介される効果を阻害し、抗原誘導
性関節炎の実験的in vivoモデルの重症度を低下させることが示された。さらに、
このエピトープに結合する抗体は、IL−17AFヘテロ二量体により媒介されるin
vitroでの効果を阻害し、また、標的分子のマウスおよび他の種のバリエーションか
ら誘導されるIL−17AおよびIL−17AFに対する予想外に高い親和性を保持する
ことが予想外にも示された。
【0140】
かくして、このエピトープはまた、IL−17AFヘテロ二量体の構造内に接近可能な
形式で予想外に保存されるため、特に好ましい。したがって、本開示の好ましい抗体は、
IL−17AFヘテロ二量体にも結合する。理論によって束縛されることを望むものでは
ないが、IL−17AFヘテロ二量体の構造はIL−17Aと十分に類似しているか、ま
たは本開示の抗体との相互作用は、それをIL−17Aと十分に類似するものにし、結合
が依然として起こると予測される。
【0141】
in silicoでの予測と組み合わせた、IL−17A、IL−17Fならびにこ
れらの分子とX線結晶分析(当技術分野で公開されており、本発明者らによって行われた
)により得られた抗体または受容体との間の相互作用に関する利用可能な構造に基づく構
造分析により、本開示の抗体への結合、または本開示の抗体とIL−17AFとの交差反
応性が必ずしも起こらないことが示唆されたため、これは予想外である。より具体的には
、ヘテロ二量体のIL−17FモノマーサブユニットのN末端領域は、本開示の抗体のI
L−17AFヘテロ二量体への結合を立体的に阻害すると予測された。かくして、予想は
、IL−17AFとの抗体の有意な交差反応性が存在しないことであった。
【0142】
しかしながら、これらの予測にも拘らず、本発明者らは、開示された抗体によるIL−
17AFへの交差結合が起こると決定した。これは、いくつかの理由から実際に有利であ
り得る。上記で考察された通り、IL−17AFも炎症促進性サイトカインとして関与し
、IL−17Aについて記載されるか、または疑われる同じ病理学的状態または望ましく
ない生物学的事象の多くに関与し得る。したがって、本開示の抗体は、IL−17AとI
L−17AFとの両方を標的とするか、または阻害することができるため、特に治療的に
有用であり得る。
【0143】
さらに、本発明者らは、本開示の抗体とIL−17AFとの間のこの結合が、in v
itroアッセイにおいて観察されたように、IL−17AFの生物学的活性の阻害とも
相関することを証明した。したがって、本開示の抗体は、IL−17Aの活性だけでなく
、IL−17AFの活性も同様に効率的に標的化し、拮抗/中和する。
【0144】
本発明者らによって行われた研究のさらに予想外の結果は、以下のようなものである。
元の「親」抗体XAB1の親和性成熟もまた、高い親和性を保持する抗体のセット、また
はカニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ラット、もしくはマウスなどの他の種から
誘導されるIL−17Aバリアントに対する改善された親和性をもたらした。
【0145】
ヒトIL−17Aに対する本開示の抗体の親和性を改善する努力において、IL−17
Aの種バリアントに対する得られる抗体の親和性をも改善することは予想されないため、
これは予想外であった。事実、通常はその反対が予想され得る。標的抗原の特異的種バリ
アント(すなわち、ヒト)に対する抗体親和性を改善するための努力は通常、その抗原の
他の種バリアントに対する親和性を低下させると予想される。種バリアント(またはホモ
ログ/パラログ)の概念は、所与の種の共通の祖先を認識するが、進化の過程にわたって
多様性が生じたことを受け入れるものである。したがって、異なる種において同定された
特定の分子のバリアント間に良好な程度の配列保存が存在する場合であっても、ある種バ
リアントに対する改善された親和性が別の種バリアントに対する親和性に対する改善を有
すると推測することはできない。事実、異なる種の配列間の多様性は、一般に、あるバリ
アントに対する親和性の改善が別の種バリアントに対する結合親和性の低下(またはさら
には消失)をもたらす可能性がより高いとの予想をもたらす。マウスとヒトIL−17A
の間の配列同一性は、62%に過ぎない(Moseley et al. 2003, Cytokine & Growth Fac
tor Reviews 14:155-174)。
【0146】
しかしながら、本件においては、これは観察されず、本発明者らによって作製された抗
体バリアントは他の種に由来するIL−17Aバリアントに対する高い親和性を保持して
いた。有用な治療分子として候補抗体分子を開発するために必要な研究中に、他の種にお
いて、または他の種(カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ラットもしくはマウス
など)の、もしくはそれから誘導される成分を含む細胞、分子もしくは系に対して様々な
試験およびアッセイを実行する必要があり得るため、これは有用である。これは、本開示
の抗体を、さらなる開発にとって特に好適なものにする。
【0147】
したがって、本明細書に開示される抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質は、
様々な望ましい特性を共有し得、これらとしては、IL−17Aに対する高い親和性、マ
ウス、ラット、カニクイザルおよびマーモセットなどの他の種に由来するIL−17Aと
の交差反応性、IL−17Fなどの他のIL−17アイソタイプに対する交差反応性の欠
如、他のサイトカイン(ヒトもしくはマウスサイトカインなど)に対する交差反応性の欠
如、ヘテロ二量体IL−17AFとの交差反応性、IL−17Aの、IL−17RAなど
のその受容体への結合を遮断する能力、IL−6もしくはGRO−アルファ分泌の刺激な
どのIL−17Aにより誘導される生物学的効果を阻害もしくは中和する能力、および/
または抗原誘導性関節炎モデルにおいて観察される腫れなどのIL−17A(および/も
しくはIL−17AF)により媒介されるin vivoでの効果を阻害する能力が挙げ
られる。
【0148】
本明細書に開示される抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質はまた、抗体−I
L−17A複合体の遅い除去、リガンドの遅い回転率および長期間のIL17A捕捉を提
供することが示された。これらの抗体およびタンパク質のさらなる有利な特徴は、詳細な
実施形態に提供される。
【0149】
同種抗体(homologous antibodies)
さらに別の実施形態においては、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合部分を
含むタンパク質は、上記の、特に表1に記載の抗体XAB1、XAB2、XAB3、XA
B4およびXAB5のアミノ酸またはヌクレオチド配列に対してホモロガス(相同(homo
logous))である、全長重鎖および軽鎖アミノ酸配列;全長重鎖および軽鎖ヌクレオチド
配列、可変領域重鎖および軽鎖ヌクレオチド配列、または可変領域重鎖および軽鎖アミノ
酸配列、または6つ全部のCDR領域アミノ酸配列またはヌクレオチドコード配列を有し
、ここで、本開示の抗体またはタンパク質は、元のXAB1、XAB2、XAB3、XA
B4およびXAB5抗体の望ましい機能的特性を保持する。
【0150】
元のXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5抗体の望ましい機能的特
性を、
(i)例えば、実施例に記載のような、Biacore(商標)アッセイにおいて測定
した場合、例えば、K
Dが1nM以下、100pM以下、または10pM以下である、I
L−17Aに対する結合親和性(IL−17Aに対する特異的結合);
(ii)例えば、実施例に記載のような、in vitro競合結合アッセイにおいて
測定した場合、例えば、IC
50が10nM以下、または1nM以下、または100pM
以下である、IL−17Aに結合するIL−17Rの競合的阻害;
(iii)実施例に記載のような、細胞アッセイにおいて測定した場合、例えば、IC
50が10nM以下、または1nM以下、または100pM以下である、IL−17A依
存的活性、例えば、IL−6またはGRO−アルファの生成の阻害;
(iv)実施例に記載のような、in vivo抗原誘導性関節炎アッセイにおいて測
定した場合、観察される効果、例えば、膝の腫れの阻害;
(v)カニクイザル、アカゲザル、ラット、またはマウスIL−17Aポリペプチドと
の交差反応性;
(vi)ヒトまたはマウスIL−17AFポリペプチドとの交差反応性;
(vii)例えば、実施例に記載のような、Biacore(商標)アッセイにおいて
測定した場合、例えば、K
Dが1nM以下、100pM以下、または10pM以下である
、IL−17AFに対する結合親和性(IL−17AFに対する特異的結合);
(viii)実施例に記載のようなin vitro競合結合アッセイにおいて測定し
た場合、例えば、IC
50が200nM以下、150nM以下、または100nM以下で
ある、IL−17AFの阻害;
(ix)薬物開発のための好適な特性、特に、高濃度、すなわち、50mg/ml超で
も製剤中で安定であり、凝集しないこと
からなる群から選択することができる。
【0151】
例えば、本開示は、CDR配列、すなわち、6つのCDR領域;HCDR1、HCDR
2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3またはHCDR1’、HCDR2
’、HCDR3’、LCDR1’、LCDR2’、LCDR3’が、XAB1、XAB2
、XAB3、XAB4およびXAB5の少なくとも1つの抗体の対応するCDR配列に対
する少なくとも60、70、90、95または100%の配列同一性を共有し、前記同種
抗体(homologous antibody)またはその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原
結合断片が、IL−17Aに特異的に結合し、抗体またはタンパク質が以下の機能特性:
それがIL−17Aのその受容体への結合を阻害する、それが細胞アッセイにおけるIL
−17A依存的IL−6もしくはGRO−アルファ生成を阻害する、またはin viv
o抗原誘導性関節炎アッセイにおいて観察される効果の阻害、のうちの少なくとも1つを
示す、可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)配列を含む、XAB1、XAB2、XA
B3、XAB4およびXAB5の同種抗体(またはその抗原結合部分を含むタンパク質)
に関する。関連する特定の実施形態においては、同種抗体またはタンパク質は、1nM以
下のK
DでIL−17Aに結合し、in vitro競合結合アッセイにおいて測定した
場合、IL−17Aのその受容体への結合を、1nM以下のIC
50で阻害する。XAB
1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5のCDRは、上記の表5および表6に
定義される。
【0152】
本開示はさらに、抗体XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいず
れか1つの対応する重鎖および軽鎖可変領域と少なくとも80%、90%、または少なく
とも95%または100%同一である重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むXAB1、
XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の同種抗体(またはその抗原結合部分を含
むタンパク質などのその抗原結合断片)に関する;同種抗体またはタンパク質はIL−1
7Aに特異的に結合し、それは以下の機能的特性:それがIL−17Aのその受容体への
結合を阻害する、それが細胞アッセイにおけるIL−17A依存的IL−6もしくはGR
O−アルファ生成を阻害する、またはin vivo抗原誘導性関節炎アッセイにおいて
観察される効果の阻害、のうちの少なくとも1つを示す。関連する特定の実施形態におい
ては、同種抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原結合断片は、1
nM以下のK
DでIL−17Aに結合し、in vitro競合結合アッセイにおいて測
定した場合、IL−17Aのその受容体への結合を、1nM以下のIC
50で阻害する。
XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5のV
HおよびV
Lアミノ酸配列
は、上記の表2に定義される。
【0153】
別の例では、本開示は、全長重鎖および全長軽鎖を含み、可変重鎖がXAB1、XAB
2、XAB3、XAB4およびXAB5の可変重鎖および軽鎖の対応するコードヌクレオ
チド配列と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同
一であるヌクレオチド配列によりコードされ、同種抗体またはその抗原結合部分を含むタ
ンパク質などのその抗原結合断片が、IL−17Aに特異的に結合し、それが以下の機能
特性:それがIL−17Aのその受容体への結合を阻害する、それが細胞アッセイにおけ
るIL−17A依存的IL−6もしくはGRO−アルファ生成を阻害する、またはin
vivo抗原誘導性関節炎アッセイにおいて観察される効果の阻害、のうちの少なくとも
1つを示す、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の同種抗体(また
はその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原結合断片)に関する。関連する特定
の実施形態においては、同種抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗
原結合断片は、1nM以下のK
DでIL−17Aに結合し、in vitro競合結合ア
ッセイにおいて測定した場合、IL−17Aへの結合を、1nM以下のIC
50で阻害す
る。XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の可変領域のコードヌクレ
オチド配列を、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の全長コードヌ
クレオチド配列を示す表3ならびにXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXA
B5の可変領域のアミノ酸配列を示す表2から誘導することができる。
【0154】
様々な実施形態において、抗体または抗体の抗原結合部分を含むタンパク質などのその
抗原結合断片は、1つもしくは複数、2つ以上、3つ以上、または4つ以上の上記で考察
された所望の機能特性を示してもよい。本開示の抗体またはタンパク質は、例えば、ヒト
抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であってもよい。一実施形態においては、抗体または
タンパク質は、完全ヒトサイレントIgG1抗体などの完全ヒトサイレント抗体である。
【0155】
沈黙化されたエフェクター機能を、抗体のFc定常部分における変異により取得するこ
とができ、当技術分野で記載されている:Strohl 2009(LALA & N297A);Baudino 2008,
D265A (Baudino et al. 2008, J. Immunol. 181:6664-69, Strohl, CO 2009, Biotechn
ology 20:685-91)。サイレントIgG1抗体の例は、IgG1 Fcアミノ酸配列中に
L234AおよびL235A変異を含むいわゆるLALA変異体を含む。サイレントIg
G1抗体の別の例は、D265A変異を含む。D265A変異はまた、好ましくは、P3
29A変異(DAPA)と組み合わせることもできる。別のサイレントIgG1抗体は、
無グリコシル化(aglycosylated)または非グリコシル化抗体をもたらす、N297A変
異を含む。
【0156】
アミノ酸配列変異体を含む抗体を、コード核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異
的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発)、次いで、本明細書に記載の機能的ア
ッセイを用いて保持された機能(すなわち、上記の機能)についてコードされ変化した抗
体の試験により取得することができる。
【0157】
保存的改変を有する抗体
ある特定の実施形態においては、本開示の抗体(またはその抗原結合部分を含むタンパ
ク質)は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3配列(またはHCDR1’、HCD
R2’およびHCDR3’)を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LCDR2およびLC
DR3配列(またはLCDR1’、LCDR2’およびLCDR3’)を含む軽鎖可変領
域とを有し、これらのCDR配列の1つまたは複数は、本明細書に記載の抗体XAB1、
XAB2、XAB3、XAB4もしくはXAB5に基づく特定のアミノ酸配列またはそれ
らの保存的改変を有し、抗体またはタンパク質は、本開示の抗IL−17A抗体の所望の
機能特性を保持する。
【0158】
本明細書で用いられる用語「保存的配列改変」は、アミノ酸残基が類似する側鎖を有す
るアミノ酸残基で置き換えられたアミノ酸置換を指すことが意図される。類似する側鎖を
有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリー
としては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、
酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖
を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン
、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、ア
ラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)
、ベータ分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)およ
び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン
、ヒスチジン)が挙げられる。かくして、本開示の抗体のCDR領域内の1つまたは複数
のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーに由来する他のアミノ酸残基と置き換え、変化し
た抗体を、本明細書に記載の機能的アッセイを用いて保持された機能について試験するこ
とができる。
【0159】
部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発などの、当技術分野で公知の
標準的な技術により、改変を本明細書に開示される抗体中に導入することができる。
【0160】
操作および改変された抗体
他の抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質などの抗原結合断片を、出発材料と
して上記に示されたXAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の1つまた
は複数のV
Hおよび/またはV
L配列を有する抗体を用いて調製して、出発抗体から変化
した特性を有してもよい改変された抗体を操作することができる。抗体を、可変領域の一
方または両方(すなわち、V
Hおよび/またはV
L)内、例えば、1つまたは複数のCD
R領域内および/または1つまたは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基
を改変することにより操作することができる。さらに、またはあるいは、抗体を、定常領
域内の残基を改変して、例えば、抗体のエフェクター機能を変化させることにより操作す
ることができる。
【0161】
実施することができる1つの型の可変領域操作は、CDR移植である。抗体は、主とし
て6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)中に位置するアミノ酸残基を介して標
的抗原と相互作用する。この理由から、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列
よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列は多くの抗体−抗原相互作用を担うた
め、異なる特性を有する異なる抗体に由来するフレームワーク配列上に移植された特定の
天然に存在する抗体に由来するCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特
定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることができる(例えば
、Riechmann, L. et al. 1998, Nature 332:323-327;Jones, P. et al. 1986, Nature 3
21:522-525;Queen, C. et al. 1989, Proc. Natl. Acad. See. U.S.A. 86:10029-10033
;Winterの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらの米国特許第
5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,
180,370号を参照されたい)。
【0162】
したがって、本開示の別の実施形態は、表5または表6に定義されたXAB1、XAB
2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの6つのCDR領域を含むが、元
の抗体とは異なるフレームワーク配列を依然として含有する、単離された組換えCDR移
植(グラフト化)抗IL−17A抗体に関する。
【0163】
そのようなフレームワーク配列を、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータ
ベースまたは公開された参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖および軽
鎖可変領域遺伝子に関する生殖系列DNA配列を、「VBase」ヒト生殖系列配列デー
タベース(www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseでインターネット上で利用可能)、ならびにKab
at, E. A., et al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth E
dition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-324
2;Tomlinson, I. M., et al. 1992, J. Mol. Biol. 227:776-798;およびCox, J. P. L.
et al. 1994, Eur. J Immunol. 24:827-836に見出すことができる。
【0164】
フレームワーク配列の例は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5
のいずれか1つで用いられるフレームワーク配列と構造的に類似するものである。V
HC
DR1、2および3配列、ならびにV
LCDR1、2および3配列を、フレームワーク配
列が誘導する生殖系列免疫グロブリン遺伝子中に見出されるものと同一の配列を有するフ
レームワーク領域上に移植してもよいし、またはCDR配列を、生殖系列配列と比較して
1つまたは複数の変異を含有するフレームワーク領域上に移植してもよい。例えば、ある
特定の例においては、フレームワーク領域内の残基を変異させて、抗体の抗原結合能力を
維持するか、または増強することが有益であることが見出されている(例えば、Quee
nらの米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,76
2号および第6,180,370号を参照されたい)。
【0165】
別の型の可変領域改変は、「親和性成熟」として知られる、V
Hおよび/またはV
LC
DR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させることによっ
て、対象の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、親和性)を改善することである。
部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発を実施して、変異を導入し、抗
体結合に対する効果、または他の対象の機能特性を、本明細書に記載され、実施例に提供
されるin vitroまたはin vivoアッセイにおいて評価することができる。
したがって、一実施形態においては、本開示は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB
4またはXAB5抗体の1つから誘導される親和性成熟した抗体に関する。保存的改変(
上記で考察されたもの)を導入することができる。変異は、アミノ酸置換、付加または欠
失であってもよい。さらに、典型的には、CDR領域内の1、2、3、4または5個を超
えない残基を変化させる。例えば、本開示の抗体は、XAB1、XAB2、XAB3、X
AB4またはXAB5の1つの6つのCDRを含み、CDR領域内の1、2、3、4また
は5個を超えない残基が変化した親和性成熟した抗体である。
【0166】
したがって、別の実施形態においては、本開示は、操作された抗体の重鎖および/また
は軽鎖アミノ酸配列が元の配列と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠
失または付加を含有することを除いて、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4または
XAB5抗体の少なくとも1つの対応する重鎖および軽鎖可変領域と同一である重鎖可変
領域および軽鎖可変領域を含む単離され操作された抗IL−17A抗体を提供する。
【0167】
代替フレームワークまたは足場への抗原結合ドメインの移植
得られるポリペプチドがIL−17Aに特異的に結合するXAB1、XAB2、XAB
3、XAB4またはXAB5の少なくとも1つの結合領域を含む限り、様々な抗体/免疫
グロブリンフレームワークまたは足場を用いることができる。そのようなフレームワーク
または足場は、5つの主要なイディオタイプのヒト免疫グロブリン、またはその断片(本
明細書の他の場所に開示されるものなど)を含み、好ましくは、ヒト化された態様を有す
る、他の動物種の免疫グロブリンを含む。ラクダ科において同定されたものなどの単一重
鎖抗体(single heavy-chain antibody)は、この点で特に興味深い。新規フレームワー
ク、足場および断片が、当業者によって探索および開発され続けている。
【0168】
一態様において、本開示は、本開示のCDRを移植することができる非免疫グロブリン
足場を用いた、非免疫グロブリンに基づく抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質
の作製に関する。配列番号76の標的タンパク質に特異的な結合領域を含む限り、既知の
、または将来の(future)非免疫グロブリンフレームワークおよび足場を用いることがで
きる。そのような化合物を、本明細書では、「標的特異的結合領域を含むポリペプチド」
と呼ぶ。非免疫グロブリンフレームワークの例は、以下のセクションでさらに説明される
(ラクダ科抗体および非抗体足場)。
【0169】
ラクダ科抗体
ラマ種(ラマ・パッコス(Lama paccos)、ラマ・グラマ(Lama glama)およびラマ・
ビクグナ(Lama vicugna))などの新世界メンバーを含む、ラクダおよびヒトコブラクダ
(カメルス・バクトリアヌス(Camelus bactrianus)およびカレルス・ドロマデリウス(
Calelus dromaderius)科のメンバーから得られた抗体タンパク質が、サイズ、構造的複
雑性およびヒト対象に対する抗原性に関して特徴付けられている。自然に見出されるこの
科の哺乳動物に由来するある特定のIgG抗体は軽鎖を含まず、かくして、他の動物に由
来する抗体の、2つの重鎖と2つの軽鎖とを有する典型的な4鎖四次構造とは構造的に異
なる。PCT公開番号WO94/04678を参照されたい。
【0170】
V
HHとして同定される小さい単一可変ドメインであるラクダ科抗体の領域を、「ラク
ダ科ナノボディ」として知られる低分子量抗体由来タンパク質をもたらす、標的に対する
高い親和性を有する小さいタンパク質をもたらす遺伝子操作により取得することができる
。1998年6月2日に発行された米国特許第5,759,808号を参照されたい;ま
た、Stijlemans, B. et al. 2004, J Biol Chem 279: 1256-1261;Dumoulin, M. et al.
2003, Nature 424: 783-788;Pleschberger, M. et al. 2003, Bioconjugate Chem 14: 4
40-448;Cortez-Retamozo, V. et al. 2002, Int J Cancer 89: 456-62;およびLauwerey
s, M. et al. 1998, EMBO J 17: 3512-3520も参照されたい。ラクダ科抗体および抗体断
片の操作されたライブラリーは、例えば、Ablynx、Ghent、Belgiumか
ら商業的に入手可能である。非ヒト起源の他の抗体と同様、ラクダ科抗体のアミノ酸配列
を組換え的に変化させて、ヒト配列とより密接に類似する配列を得ることができる、すな
わち、ナノボディを「ヒト化」することができる。かくして、ヒトに対するラクダ科抗体
の自然の低い抗原性を、さらに低下させることができる。
【0171】
ラクダ科ナノボディはヒトIgG分子の約1/10の分子量を有し、そのタンパク質は
わずか数ナノメートルの物理的直径を有する。小さいサイズの1つの結果は、より大きい
抗体タンパク質には機能的に不可視である抗原性部位に結合するラクダ科ナノボディの能
力である、すなわち、ラクダ科ナノボディは、さもなければ古典的な免疫学的技術を用い
た場合には解明できない抗原を検出する試薬として、また、可能性のある治療剤として有
用である。かくして、小さいサイズのさらに別の結果は、ラクダ科ナノボディが標的タン
パク質の溝または狭い裂け目中の特異的部位への結合の結果として阻害することができ、
したがって、古典的な抗体よりも古典的な低分子量の薬物の機能とより密接に類似する能
力において役立ち得ることである。
【0172】
低分子量およびコンパクトなサイズは、極端に熱安定性であり、極端なpHおよびタン
パク質分解的消化に対して安定であり、抗原性が低いラクダ科ナノボディをさらにもたら
す。別の結果は、ラクダ科ナノボディは循環系から組織へ容易に移動し、さらに血液脳関
門を通過し、神経組織に影響する障害を処置することができることである。ナノボディは
、血液脳関門をわたる薬物輸送をさらに容易にすることができる。2004年8月19日
に公開された米国特許出願公開第20040161738号を参照されたい。ヒトに対す
る低い抗原性と組み合わせたこれらの特徴は、高い治療潜在能力を示す。さらに、これら
の分子は、大腸菌(E.coli)などの原核細胞中で完全に発現させることができ、バクテリ
オファージ中で融合タンパク質として発現され、機能的である。
【0173】
操作されたナノボディを、45分から2週間のレシピエント対象中での半減期を有する
ように遺伝子操作によりさらにカスタマイズすることができる。特定の実施形態において
は、ラクダ科抗体またはナノボディは、本開示のヒト抗体、XAB1、XAB2、XAB
3、XAB4またはXAB5のうちの1つの重鎖または軽鎖のCDR配列を、例えば、P
CT公開番号WO94/04678に記載のような、ナノボディまたは単一ドメイン抗体
フレームワーク配列中に移植することにより得られる。
【0174】
非抗体足場
公知の非免疫グロブリンフレームワークまたは足場としては、限定されるものではない
が、アドネクチン(フィブロネクチン)(Compound Therapeutics
,Inc.、Waltham、MA)、アンキリン(Molecular Partne
rs AG、Zurich、Switzerland)、ドメイン抗体(Domanti
s,Ltd(Cambridge、MA)およびAblynx nv(Zwijnaar
de、Belgium))、リポカリン(アンチカリン)(Pieris Proteo
lab AG、Freising、Germany)、小モジュラー免疫医薬品(Tru
bion Pharmaceuticals Inc.、Seattle、WA)、マキ
シボディ(Avidia,Inc.(Mountain View、CA))、プロテイ
ンA(Affibody AG、Sweden)およびアフィリン(ガンマ−クリスタリ
ンまたはユビキチン)(Scil Proteins GmbH、Halle、Germ
any)、タンパク質エピトープ模倣物質(Polyphor Ltd、Allschw
il、Switzerland)が挙げられる。
【0175】
(a)フィブロネクチン足場
フィブロネクチン足場は、好ましくは、フィブロネクチンIII型ドメイン(例えば、
フィブロネクチンIII型の10番目のモジュール(10Fn3ドメイン))に基づくも
のである。フィブロネクチンIII型ドメインは、それ自身、互いに対して包み、タンパ
ク質のコアを形成する2つのベータシート間に分布し、さらにベータ鎖を互いに接続し、
溶媒露出したループを含有する(CDRと類似する(analogous))7つまたは8つのベ
ータ鎖を有する。ベータシートサンドイッチのそれぞれの端部には少なくとも3つのその
ようなループが存在し、その端部はベータ鎖の方向に対して垂直なタンパク質の境界であ
る(米国特許第6,818,418号)。
【0176】
これらのフィブロネクチンに基づく足場は免疫グロブリンではないが、全体の折畳みは
、ラクダおよびラマのIgG中の全抗原認識単位を含む、最も小さい機能的抗体断片、重
鎖の可変領域のものと密接に関連する。この構造のため、非免疫グロブリン抗体は、天然
で類似する抗原結合特性およびこれらの抗体に対する親和性を模倣する。これらの足場を
、in vivoでの抗体の親和性成熟のプロセスと類似するin vitroでのルー
プ無作為化およびシャッフリング戦略において用いることができる。これらのフィブロネ
クチンに基づく分子を、その分子のループ領域を標準的なクローニング技術を用いてXA
B1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のうちの1つのCDRと置き換える
ことができる足場として用いることができる。
【0177】
(b)アンキリン−分子パートナー
この技術は、異なる標的への結合のために用いることができる可変領域を担持させるた
めの足場としてアンキリン由来反復モジュールを有するタンパク質を用いることに基づく
ものである。アンキリン反復モジュールは、2つの逆平行αヘリックスとβターンとから
なる33アミノ酸のポリペプチドである。可変領域の結合は、リボソームディスプレイを
用いることによって最適化されることが多い。
【0178】
(c)マキシボディ/アビマー−アビジア
アビマーは、LRP−1などの天然Aドメイン含有タンパク質から誘導される。これら
のドメインは、天然でタンパク質間相互作用のために用いられ、ヒトにおいては250を
超えるタンパク質が構造的にAドメインに基づく。アビマーは、アミノ酸リンカーにより
連結されたいくつかの異なる「Aドメイン」モノマー(2〜10)からなる。例えば、米
国特許出願公開第20040175756号;第20050053973号;第2005
0048512号;および第20060008844号に記載の方法を用いて、標的抗原
に結合することができるアビマーを作出することができる。
【0179】
(d)プロテインA−Affibody
Affibody(登録商標)親和性リガンドは、プロテインAのIgG結合ドメイン
の1つの足場に基づく3ヘリックスバンドルを含む小さく単純なタンパク質である。プロ
テインAは、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)細菌に由来す
る表面タンパク質である。この足場ドメインは、58アミノ酸からなり、そのうちの13
は多数のリガンドバリアントを含むAffibody(登録商標)ライブラリーを作製す
るために無作為化される(例えば、米国特許第5,831,012号を参照されたい)。
Affibody(登録商標)分子は抗体を模倣する;それらは150kDaである抗体
の分子量と比較して、6kDaの分子量を有する。その小さいサイズにも拘らず、Aff
ibody(登録商標)分子の結合部位は、抗体のものと類似している。
【0180】
(e)アンチカリン−Pieris
Anticalin(登録商標)は、Pieris ProteoLab AG社によ
り開発された製品である。それらは、化学的に感受性であるか、または不溶性である化合
物の生理学的輸送または保存に通常関与する広範囲の小さく強固なタンパク質であるリポ
カリンから誘導される。いくつかの天然リポカリンはヒト組織または体液中に存在する。
【0181】
タンパク質構造は、免疫グロブリンに類似しており、剛性フレームワークの頂部に超可
変ループを有する。しかしながら、抗体またはその組換え断片とは対照的に、リポカリン
は160〜180アミノ酸残基を有する単一ポリペプチド鎖を含み、単一免疫グロブリン
ドメインよりもほんのわずかに大きい。
【0182】
結合ポケットを作り上げる4つのループのセットは、顕著な構造可塑性を示し、様々な
側鎖を許容する。かくして、高い親和性および特異性を有する異なる形状の所定の標的分
子を認識するように結合部位を特許プロセスで再形成させることができる。
【0183】
リポカリンファミリーの1つのタンパク質である、オオモンシロチョウ(Pieris Brass
icae)のビリン結合タンパク質(BBP)は、4つのループのセットを突然変異誘発する
ことによってアンチカリンを開発するために用いられてきた。「アンチカリン」を記載す
る特許出願の一例は、PCT公開WO199916873である。
【0184】
(f)Affilin−Scilタンパク質
Affilin(商標)分子は、タンパク質および低分子に対する特異的親和性のため
に設計された低分子非免疫グロブリンタンパク質である。新しいAffilin(商標)
分子を、それぞれ異なるヒト由来足場タンパク質に基づく2つのライブラリーから非常に
迅速に選択することができる。
【0185】
Affilin(商標)分子は、免疫グロブリンタンパク質に対していかなる構造的相
同性も示さない。Scilタンパク質は、2つのAffilin(商標)足場を用いるも
のであり、その一方はガンマ結晶性ヒト構造接眼レンズタンパク質であり、他方は「ユビ
キチン」スーパーファミリータンパク質である。両方のヒト足場は非常に小さく、高温安
定性を示し、pH変化および変性剤に対してほぼ耐性である。この高い安定性は主に、タ
ンパク質の拡張されたベータシート構造に起因する。ガンマ結晶由来タンパク質の例はW
O200104144に記載されており、「ユビキチン様」タンパク質の例はWO200
4106368に記載されている。
【0186】
(g)タンパク質エピトープ模倣物質(PEM)
PEMは、タンパク質間相互作用に関与する主要な二次構造であるタンパク質のベータ
−ヘパリン二次構造を模倣する、中サイズの環状のペプチド様分子(MW1〜2kDa)
である。
【0187】
フレームワークまたはFc操作
本開示の操作された抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質は、例えば、抗体の
特性を改善するために、V
Hおよび/またはV
L内のフレームワーク残基に対して改変を
行ったものを含む。典型的には、そのようなフレームワーク改変は、抗体の免疫原性を低
下させるために作製される。例えば、1つの手法は、1つまたは複数のフレームワーク残
基を、対応する生殖系列配列に「復帰変異」させることである。より具体的には、体細胞
変異を受けた抗体は、抗体が誘導される生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含
有してもよい。そのような残基を、抗体フレームワーク配列と、抗体が誘導される生殖系
列配列とを比較することにより同定することができる。フレームワーク領域配列をその生
殖系列配置に戻すために、体細胞変異を、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR
媒介性突然変異誘発により、生殖系列配列に「復帰変異」させることができる。そのよう
な「復帰変異」抗体も、本開示によって包含されることが意図される。
【0188】
別の型のフレームワーク改変は、フレームワーク領域内、またはさらには1つもしくは
複数のCDR領域内の1つまたは複数の残基を変異させて、T細胞エピトープを除去する
ことによって、抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。この手法は、「脱免疫
化」とも呼ばれ、Carrらによる米国特許出願公開第20030153043号にさら
に詳細に記載されている。
【0189】
フレームワークまたはCDR領域内で作製される改変に加えて、またはその代わりに、
Fc領域内に改変を含むように、典型的には、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、
および/または抗原依存的細胞性細胞傷害性などの、抗体の1つまたは複数の機能特性を
変化させるように、本開示の抗体を操作することができる。さらに、本開示の抗体を化学
的に改変する(例えば、1つまたは複数の化学部分を抗体に結合させることができる)か
、または改変してそのグリコシル化を変化させ、再度、抗体の1つまたは複数の機能特性
を変化させることができる。これらの実施形態はそれぞれ、以下でさらに詳細に説明され
る。
【0190】
本明細書で用いられる用語「Fc領域」は、天然(ネイティブ)配列Fc領域およびバ
リアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる
。ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、IgG抗体の位置C226から、またはP230か
らカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むものと定義される。Fc領域中の残基の番
号は、KabatのEUインデックスのものである。Fc領域のC末端リシン(残基K4
47)を、例えば、抗体の生成または精製中に除去することができる。したがって、本開
示の抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去さ
れない抗体集団、ならびにK447残基を含む、および含まない抗体の混合物を有する抗
体集団を含んでもよい。
【0191】
一実施形態においては、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が
変化する、例えば、増加するか、または減少するように改変される。この手法は、Bod
merらの米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領
域中のシステイン残基の数を、例えば、軽鎖および重鎖の集合を容易にするため、または
抗体の安定性を増加もしくは低下させるために変化させる。
【0192】
別の実施形態においては、抗体のFcヒンジ領域を変異させて、抗体の生物学的半減期
を低下させる。より具体的には、1つまたは複数のアミノ酸変異を、抗体が天然(ネイテ
ィブ)のFc−ヒンジドメインSpA結合と比較して減じられたスタフィロコッカスプロ
テインA(SpA)結合を有するようにFc−ヒンジ断片のCH2−CH3ドメイン境界
領域中に導入する。この手法は、Wardらによる米国特許第6,165,745号にさ
らに詳細に記載されている。
【0193】
別の実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を、その生物
学的半減期を増加させるように改変する。様々な手法が可能である。例えば、Wardの
米国特許第6,277,375号に記載のように、以下の変異のうちの1つまたは複数を
導入することができる:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減
期を増加させるために、Prestaらによる米国特許第5,869,046号および第
6,121,022号に記載のように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのルー
プから取ったサルベージ受容体結合エピトープを含有するように、CH1またはCL領域
内で抗体を変化させることができる。
【0194】
さらに他の実施形態においては、少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残
基と置き換えて、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質のエフェクター機能を変
化させることによって、Fc領域を変化させる。例えば、抗体がエフェクターリガンドに
対する変化した親和性を有するが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、1つまたは
複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基と置き換えることができる。親和性を変化させるエ
フェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であってもよい。この
手法は、両方ともWinterらによる米国特許第5,624,821号および第5,6
48,260号にさらに詳細に記載されている。
【0195】
別の実施形態においては、抗体が変化したC1q結合および/または低下した、もしく
は消失した補体依存的細胞傷害性(CDC)を有するように、アミノ酸残基から選択され
る1つまたは複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基と置き換えることができる。この手
法は、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載さ
れている。
【0196】
別の実施形態においては、1つまたは複数のアミノ酸残基を変化させることによって、
補体を固定する抗体の能力を変化させる。この手法は、BodmerらによるPCT公開
WO94/29351にさらに記載されている。
【0197】
さらに別の実施形態においては、Fc領域を改変して、抗体またはその抗原結合部分を
含むタンパク質が、抗体依存的細胞性細胞傷害性(ADCC)を媒介し、かつ/または1
つまたは複数のアミノ酸を改変することによりFcγ受容体に対する抗体の親和性を増加
させる能力を増加させる。この手法は、PrestaによるPCT公開WO00/420
72にさらに記載されている。さらに、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよ
びFcRnのためのヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、結合が改変され
たバリアントが記載されている(Shields, R.L. et al. 2001, J. Biol. Chem 276:6591-
6604を参照されたい)。
【0198】
ある特定の実施形態においては、IgG1アイソタイプのFcドメインを用いる。いく
つかの特定の実施形態においては、IgG1 Fc断片の変異バリアント、例えば、抗体
依存的細胞性細胞傷害性(ADCC)を媒介し、かつ/またはFcγ受容体に結合する融
合ポリペプチドの能力を低下させるか、または除去するサイレントIgG1 Fcを用い
る。IgG1アイソタイプのサイレント変異体の例は、Hezareh et al. 2001, J. Virol
75:12161-8により記載されたような、アミノ酸位置234と235でロイシンがアラニン
により置き換えられたIgG1である。IgG1アイソタイプのサイレント変異体の別の
例は、D265A変異を有するIgG1である(アスパラギン酸が位置265でアラニン
により置換されている)。ある特定の実施形態においては、Fcドメインは、Fcドメイ
ンの位置297でのグリコシル化を防止するサイレントFc変異体である。例えば、Fc
ドメインは、位置297にアスパラギンのアミノ酸置換を含有する。そのようなアミノ酸
置換の例は、グリシンまたはアラニンによるN297の置き換えである。
【0199】
さらに別の実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質のグリ
コシル化を改変する。例えば、無グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、
抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化を変化させて、例えば、抗原に対する抗体の
親和性を増加させることができる。そのような炭水化物改変を、例えば、抗体配列内の1
つまたは複数のグリコシル化部位を変化させることにより達成することができる。例えば
、1つまたは複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらすことによ
って、その部位のグリコシル化を除去する1つまたは複数のアミノ酸置換を作製すること
ができる。そのような無グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。そ
のような手法は、Coらによる米国特許第5,714,350号および第6,350,8
61号にさらに詳細に記載されている。
【0200】
さらに、またはあるいは、フコシル残基の量が低下した低フコシル化抗体または二分岐
のGlcNac構造が増加した抗体などの、変化した型のグリコシル化を有する抗体また
はその抗原結合部分を含むタンパク質を作製することができる。そのような変化したグリ
コシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが証明されている。そのよう
な炭水化物改変を、例えば、グリコシル化機構が変化した宿主細胞中で抗体を発現させる
ことによって達成することができる。グリコシル化機構が変化した細胞は、当技術分野で
記載されており、本開示の組換え抗体を発現させることによってグリコシル化が変化した
抗体を生成する宿主細胞として用いることができる。例えば、HangらによるEP11
76195は、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊
された細胞系を記載しており、そのような細胞系中で発現された抗体は低フコシル化を示
す。したがって、一実施形態においては、本開示の抗体は、低フコシル化パターンを示す
細胞系、例えば、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現が欠損
した哺乳動物細胞系中での組換え発現により生成される。PrestaによるPCT公開
WO03/035835は、フコースをAsn(297)結合炭水化物に結合させる能力
が低下し、また、その宿主細胞中で発現される抗体の低フコシル化をもたらす、バリアン
トCHO細胞系、Lecl3細胞を記載する(Shields, R.L. et al. 2002, J. Biol. Ch
em. 277:26733-26740も参照されたい)。UmanaらによるPCT公開WO99/54
342は、操作された細胞系中で発現された抗体が、抗体のADCC活性の増加をもたら
す二分岐GlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質改変グリコシルトランスフ
ェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI
II(GnTIII))を発現するように操作された細胞系を記載する(Umana et al. 1
999, Nat. Biotech. 17:176-180も参照されたい)。あるいは、本開示の抗体およびその
抗原結合部分を含むタンパク質を、哺乳動物のようなグリコシル化パターンのために操作
され、グリコシル化パターンとしてフコースを欠く抗体を生成することができる酵母また
は糸状菌中で生成させることができる(例えば、EP1297172を参照されたい)。
【0201】
本開示により企図される本明細書に開示される抗体およびその抗原結合部分を含むタン
パク質の別の改変は、ペグ化である。これらの分子を、例えば、その生物学的(例えば、
血清)半減期を増加させるためにペグ化することができる。例えば、抗体をペグ化するた
めに、抗体、またはその断片を、典型的には、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗
体断片に結合されるようになる条件下で、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導
体などの、ポリエチレングリコール(PEG)と反応させる。ペグ化を、反応性PEG分
子(または類似する反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によ
って実行することができる。本明細書で用いられる用語「ポリエチレングリコール」は、
モノ(C1〜C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまた
はポリエチレングリコール−マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために用い
られてきた任意の形態のPEGを包含することが意図される。ある特定の実施形態におい
ては、ペグ化される抗体は、無グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための
方法は当技術分野で公知であり、本開示の抗体に適用することができる。例えば、Nis
himuraらによるEP0154316およびIshikawaらによるEP0401
384を参照されたい。
【0202】
本開示により企図される抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質の別の改変は、
得られる分子の半減期を増加させるための、ヒト血清アルブミンまたはその断片などの血
清タンパク質との、本開示の抗体の少なくとも抗原結合領域のコンジュゲートまたはタン
パク質融合物である。そのような手法は、例えば、BallanceらのEP03220
94に記載されている。
【0203】
別の可能性は、得られる分子の半減期を増加させるためにヒト血清アルブミンなどの血
清タンパク質に結合することができるタンパク質との、本開示の抗体の少なくとも抗原結
合領域の融合物である。そのような手法は、例えば、NygrenらのEP048652
5に記載されている。
【0204】
変化した抗体を操作する方法
上記で考察されたように、本明細書に示されるV
HおよびV
L配列または全長重鎖およ
び軽鎖配列を有する抗IL−17A抗体を用いて、全長重鎖および/もしくは軽鎖配列、
V
Hおよび/もしくはV
L配列、またはそれに結合した定常領域を改変することによって
、新しい抗IL−17A抗体を作出することができる。かくして、本開示の別の態様にお
いて、本開示の抗IL−17A抗体の構造的特徴は、ヒトIL−17Aへの結合およびま
た、in vivoアッセイにおけるIL−17Aの1つまたは複数の機能特性(例えば
、IL−17AもしくはIL−17AFのその受容体への結合の阻害、IL−6、GRO
−アルファのIL−17AもしくはIL−17AFにより誘導される生成の阻害など)阻
害活性の阻害などの、本明細書に開示される抗体の少なくとも1つの機能特性を保持する
、構造的に関連する抗IL−17A抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を作出
するために用いられる。
【0205】
IL−17Aと実質的に同じ結合特性を保持する他の抗体としては、XAB1、XAB
2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの同じVHおよびVL領域、また
はCDR領域と、異なる定常領域またはフレームワーク領域(例えば、異なるアイソタイ
プ、例えば、IgG4またはIgG2から選択される異なるFc領域)を保持する、XA
B1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つのキメラ抗体または
CDR移植抗体が挙げられる。
【0206】
例えば、上記で考察された通り、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしくはX
AB5のいずれか1つ、またはその変異の1つまたは複数のCDR領域を、既知のフレー
ムワーク領域および/または他のCDRと組換え的に組み合わせて、本開示のさらなる組
換え操作された抗IL−17A抗体を作出することができる。他の型の改変としては、以
前のセクションに記載されたものが挙げられる。操作方法のための出発材料は、上記の表
に提供されたXAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしくはXAB5の1つもしくは
複数のV
Hおよび/もしくはV
L配列、またはその1つもしくは複数のCDR領域である
。操作された抗体を作出するために、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしくは
XAB5の1つもしくは複数のV
Hおよび/もしくはV
L配列、またはその1つもしくは
複数のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現させ
る)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報は、元の配列から誘導される「第2世代」
配列を作出するための出発材料として用いられ、次いで、「第2世代」配列はタンパク質
として調製および発現される。
【0207】
第2世代配列は、例えば、少なくとも1つの変化した抗体配列を作出するために、XA
B1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの重鎖可変領域抗体
配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基のDNAコ
ード配列を変化させること;ならびに変化した抗体配列をタンパク質として発現させるこ
とによって誘導される。
【0208】
したがって、別の実施形態においては、本開示は、XAB1、XAB2、XAB3、X
AB4またはXAB5のいずれか1つの全長重鎖抗体配列、全長軽鎖抗体配列からなる哺
乳動物細胞中での発現について最適化された抗IL−17A抗体を調製し;ヌクレオチド
コード配列中の少なくとも1つのコドンであって、少なくとも1つの変化した抗体配列を
作出するために全長重鎖抗体配列および/または全長軽鎖抗体配列内のアミノ酸残基をコ
ードする前記コドンを変化させ;ならびに変化した抗体配列をタンパク質として発現させ
るための方法を提供する。
【0209】
また、変化した抗体配列を、それぞれXAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしく
はXAB5のいずれか1つのユニークな重鎖および軽鎖CDR3配列、または米国特許出
願公開第20050255552号に記載の最小必須結合決定基、ならびにCDR1およ
びCDR2配列のための代替配列を有する抗体ライブラリーをスクリーニングすることに
よって調製することもできる。スクリーニングを、ファージディスプレイ技術などの、抗
体ライブラリーから抗体をスクリーニングするのに好適な任意のスクリーニング技術に従
って実施することができる。
【0210】
標準的な分子生物学技術を用いて、変化した抗体配列を調製し、発現させることができ
る。変化した抗体配列によりコードされる抗体は、本明細書に記載の抗IL−17A抗体
の所望の機能特性の1つ、いくつか、または全部を保持するものであり、その機能特性と
しては、限定されるものではないが、ヒトIL−17Aへの特異的結合;および/または
IL−17Aのその受容体への結合の阻害;および/または例えば、IL−6もしくはG
RO−アルファのIL−17Aに誘導される生成の阻害などが挙げられる。
【0211】
変化した抗体は、上記で考察された1つもしくは複数、2つ以上、または3つ以上の機
能特性を示してもよい。
【0212】
本開示の抗体を操作する方法のある特定の実施形態においては、抗IL−17A抗体コ
ード配列の全部または一部に沿って無作為または選択的に変異を導入し、得られる改変さ
れた抗IL−17A抗体を、本明細書に記載のように結合活性および/または他の機能特
性についてスクリーニングすることができる。変異方法は、当技術分野で記載されている
。例えば、ShortによるPCT公開WO02/092780は、飽和突然変異誘発、
合成ライゲーションアセンブリ、またはその組合せを用いる抗体変異を作出し、スクリー
ニングするための方法を記載する。あるいは、LazarらによるPCT公開WO03/
074679は、抗体の物理化学的特性を最適化するためのコンピュータスクリーニング
法の使用方法を記載する。
【0213】
本開示の抗体をコードする核酸分子
本開示の別の態様は、本開示の抗体またはタンパク質をコードする核酸分子に関する。
可変軽鎖ヌクレオチド配列の例は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXA
B5のいずれか1つの可変軽鎖アミノ酸配列をコードするものであり、後者の配列は表3
(XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の重鎖および軽鎖の全ヌクレ
オチドコード配列を示す)および表2(XAB1、XAB2、XAB3、XAB4または
XAB5の可変領域のアミノ酸配列を示す)から誘導される。
【0214】
本開示はまた、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞系におけるタンパク質発現のために
最適化されている後者の配列から誘導される核酸分子に関する。
【0215】
核酸は、全細胞、細胞溶解物中に存在してもよく、または部分的に精製された、もしく
は実質的に純粋な形態の核酸であってもよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsCl
バンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当技術分野で
周知の他の技術などの標準的な技術により、他の細胞成分または他の夾雑物、例えば、他
の細胞核酸またはタンパク質から精製された場合、「単離される」または「実質的に純粋
にされる」。F. Ausubel, et al., ed. 1987, Current Protocols in Molecular Biology
, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照されたい。本開示の核酸
は、例えば、DNAまたはRNAであってもよく、イントロン配列を含有しても、または
しなくてもよい。ある実施形態において、核酸は、cDNA分子である。核酸は、ファー
ジディスプレイベクターなどのベクター中、または組換えプラスミドベクター中に存在し
てもよい。
【0216】
本開示の核酸を、標準的な分子生物学技術を用いて取得することができる。一度、例え
ば、V
HおよびV
LセグメントをコードするDNA断片が得られたら、これらのDNA断
片を、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作して、例えば、可変領域遺伝子を、
全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子またはscFv遺伝子に変換することができる。こ
れらの操作においては、V
LまたはV
HをコードするDNA断片は、別のDNA分子、ま
たは抗体定常領域もしくは可撓性リンカーなどの別のタンパク質をコードする断片に作動
可能に連結される。本文で用いられる用語「作動可能に連結される」は、例えば、2つの
DNA断片によりコードされるアミノ酸配列がインフレームにあるか、またはタンパク質
が所望のプロモーターの制御下に発現されるように、2つのDNA断片が機能的様式で連
結されることを意味することが意図される。
【0217】
V
HをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードす
る別のDNA分子に作動可能に連結することによって、V
H領域をコードする単離された
DNAを、全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当
技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., el al. 1991, Sequences of Proteins o
f Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Ser
vices, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA
断片を、標準的なPCR増幅によって取得することができる。重鎖定常領域は、IgG1
、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であっ
てもよい。いくつかの実施形態においては、重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプのう
ちから選択される。Fab断片重鎖遺伝子については、V
HをコードするDNAを、重鎖
CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することができる。
【0218】
V
LをコードするDNAを、軽鎖定常領域、CLをコードする別のDNA分子に作動可
能に連結することにより、V
L領域をコードする単離されたDNAを全長軽鎖遺伝子(な
らびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当
技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. 1991, Sequences of Proteins o
f Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Ser
vices, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA
断片を、標準的なPCR増幅により取得することができる。軽鎖定常領域は、カッパまた
はラムダ定常領域であってもよい。
【0219】
scFv遺伝子を作出するために、V
HおよびV
LをコードするDNA断片を、可撓性
リンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4−Ser)
3をコードする別の
断片に作動可能に連結し、V
HおよびV
L配列を、可撓性リンカーにより連結されたV
L
およびV
H領域と共に、連続単一鎖タンパク質として発現させることができる(例えば、
Bird et al. 1988, Science 242:423-426;Huston et at. 1988, Proc. Natl. Acad. Sci
. USA 85:5879-5883; McCafferty et al. 1990, Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0220】
本開示の組換え抗体の単離
抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質をスクリーニングする様々な方法が、当
技術分野で記載されている。そのような方法を、抗原免疫化の際に完全ヒト抗体を生成す
ることができるトランスジェニックマウスなどのin vivo系と、抗体DNAコード
ライブラリーを作製すること、抗体生成のための適切な系中でDNAライブラリーを発現
させること、親和性選択基準を用いて標的に結合する抗体候補を発現するクローンを選択
すること、および選択されたクローンの対応するコード配列を回収することからなるin
vitro系とに分けることができる。これらのin vitro技術はディスプレイ
技術として公知であり、限定されるものではないが、ファージディスプレイ、RNAまた
はDNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、酵母または哺乳動物細胞ディスプレイ
が挙げられる。それらは当技術分野でよく記載されている(概説については、例えば、Ne
lson et al. 2010, Nature Reviews Drug discovery, “Development trends for human
monoclonal antibody therapeutics” (Advance Online Publication)およびHoogenboom
et al. 2001, Method in Molecular Biology 178:1-37, O’Brien et al., ed., Human P
ress, Totowa, N.J.を参照されたい)。1つの特定の実施形態においては、本開示のヒト
組換え抗体は、HuCAL(登録商標)ライブラリーなどの、ヒト組換え抗体ライブラリ
ーのライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を用いて単離さ
れる。
【0221】
V
HおよびV
L遺伝子または関連するCDR領域のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖
反応(PCR)により別々にクローニングするか、またはDNA合成装置により合成し、
ファージライブラリー中で無作為に組換えた後、抗原結合クローンについてスクリーニン
グすることができる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、
当技術分野で確立されているか、または以下の実施例に記載される。例えば、Ladne
rらの米国特許第5,223,409号;第5,403,484号;および第5,571
,698号;Dowerらの米国特許第5,427,908号および第5,580,71
7号;McCaffertyらの米国特許第5,969,108号および第6,172,
197号ならびにGriffithsらの米国特許第5,885,793号;第6,52
1,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,91
5号および第6,593,081号を参照されたい。
【0222】
ある特定の実施形態においては、IL−17Aに対するヒト抗体を、マウス系よりもむ
しろヒト免疫系の部分を担持するトランスジェニックまたはトランス染色体マウスを用い
て同定することができる。これらのトランスジェニックおよびトランス染色体マウスは、
本明細書ではそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明
細書では「ヒトIgマウス」と集合的に呼ばれる。
【0223】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex,Inc.)は、内因性μおよびκ鎖
遺伝子座を不活化する標的化された変異と一緒に、再配置されていないヒト重鎖(μおよ
びγ)ならびにκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺
伝子座を含有する(例えば、Lonberg, et al. 1994, Nature 368:856-859を参照されたい
)。したがって、マウスは、マウスIgMまたはκの発現の低下を示し、免疫化に応答し
て、導入されたヒト重鎖および軽鎖トランス遺伝子は、クラススイッチングおよび体細胞
変異を受けて、高親和性ヒトIgGκモノクローナルを生成する(Lonberg, N. et al. 1
994, supra; Lonberg, N., 1994 Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101
に概説されている; Lonberg, N. and Huszar, D. 1995, Intern. Rev. Immunol. 13:65-9
3、およびHarding, F. and Lonberg, N. 1995, Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:536-546)。
HuMAbマウスの調製および使用、ならびにそのようなマウスにより担持されるゲノム
改変は、Taylor, L. et al. 1992, Nucleic Acids Research 20:6287-6295;Chen, J. et
at. 1993, International Immunology 5:647-656;Tuaillon et al. 1993, Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 94:3720-3724;Choi et al. 1993, Nature Genetics 4:117-123;Chen,
J. et al. 1993, EMBO J. 12: 821-830;Tuaillon et al. 1994, J. Immunol. 152:2912
-2920;Taylor, L. et al. 1994, International Immunology 579-591;およびFishwild,
D. et al. 1996, Nature Biotechnology 14: 845-851にさらに記載されている。さらに
、全てLonbergおよびKayの米国特許第5,545,806号;第5,569,
825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号
;第5,877,397号;第5,661,016号;第5,814,318号;第5,
874,299号;および第5,770,429号;Suraniらの米国特許第5,5
45,807号;全てLonbergおよびKayのPCT公開WO92103918、
WO93/12227、WO94/25585、WO97113852、WO98/24
884およびWO99/45962;ならびにKormanらのPCT公開WO01/1
4424も参照されたい。
【0224】
別の実施形態においては、本開示のヒト抗体を、ヒト重鎖トランス遺伝子およびヒト軽
鎖トランス染色体を担持するマウスなどの、トランス遺伝子およびトランス染色体上にヒ
ト免疫グロブリン配列を担持するマウスを用いて生じさせることができる。本明細書では
「KMマウス」と呼ばれるそのようなマウスは、IshidaらのPCT公開WO02/
43478に詳細に記載されている。
【0225】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替トランスジェニック動物系が当技術
分野で利用可能であり、これを用いて本開示の抗IL−17A抗体を生じさせることがで
きる。例えば、Abgenix,Inc.からのXenomouseと呼ばれる代替トラ
ンスジェニック系を用いることができる。そのようなマウスは、例えば、Kucherl
apatiらの米国特許第5,939,598号;第6,075,181号;第6,11
4,598号;第6,150,584号および第6,162,963号に記載されている
。当業者には明らかであるように、Trianni,Inc.からのTrianni(商
標)マウス、Regeneron Pharmaceuticals,Inc.からのV
elocImmune(商標)マウス、またはKymab LimitedからのKym
ouse(商標)マウスなどの、いくつかの他のマウスモデルを用いることができる。
【0226】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替的なトランス染色体動物系が当技術
分野で利用可能であり、これを用いて本開示の抗IL−17A抗体を生じさせることがで
きる。例えば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖トランス染色体と、ヒト軽鎖トラン
ス染色体との両方を担持するマウスを用いることができる;そのようなマウスは、Tomizu
ka et al. 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727に記載されている。
【0227】
また、免疫化の際にヒト抗体応答を生成することができるようにヒト免疫細胞が再構成
されたSCIDマウスを用いて、本開示のヒトモノクローナル抗体を調製することもでき
る。そのようなマウスは、例えば、Wilsonらの米国特許第5,476,996号お
よび第5,698,767号に記載されている。
【0228】
マウス系からの本開示のモノクローナル抗体の生成
従来のモノクローナル抗体法、例えば、Kohler and Milstein 1975, Nature 256:495の
標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術などの、様々な技術によって、モノクローナ
ル抗体(mAb)を生成することができる。モノクローナル抗体を生成するための多くの
技術、例えば、Bリンパ球のウイルスまたはがん形質転換を用いることができる。
【0229】
ハイブリドーマを調製するための動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリ
ドーマ生成は、よく確立された手順である。融合のための免疫化された脾細胞の単離のた
めの免疫化プロトコールおよび技術は当技術分野で公知である。融合パートナー(例えば
、マウスミエローマ細胞)および融合手順も公知である。
【0230】
本開示のキメラまたはヒト化抗体を、上記のように調製されたマウスモノクローナル抗
体の配列に基づいて調製することができる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする
DNAを、対象のマウスハイブリドーマから取得し、標準的な分子生物学技術を用いて非
マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含有するように操作することができる。例
えば、キメラ抗体を作出するために、当技術分野で公知の方法を用いて、マウス可変領域
をヒト定常領域に連結することができる(例えば、Cabillyらの米国特許第4,8
16,567号を参照されたい)。ヒト化抗体を作出するために、当技術分野で公知の方
法を用いて、マウスCDR領域をヒトフレームワーク中に挿入することができる。例えば
、Winterの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらの米国特許第
5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,
180,370号を参照されたい。
【0231】
ヒトモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマの作製
本開示のヒトモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを作製するために、免疫化
されたマウスに由来する脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、マウスミエローマ
細胞系などの適切な不死化細胞系に融合することができる。得られるハイブリドーマを、
抗原特異的またはエピトープ特異的抗体の生成についてスクリーニングすることができる
。例えば、免疫化されたマウスに由来する脾臓リンパ球の単一細胞懸濁液を、50%PE
Gを用いて、1/6の数のP3X63−Ag8.653非分泌マウスミエローマ細胞(A
TCC、CRL1580)に融合することができる。細胞を平底マイクロタイタープレー
ト中、約2x145で塗布した後、20%胎児クローン血清、18%「653」条件培地
、5%オリゲン(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、
5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50ユニット/ml
ペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシンおよび
1X HAT(Sigma;HATは融合の24時間後に添加される)を含有する選択培
地中で2週間インキュベートする。約2週間後、HATをHTで置き換えた培地中で細胞
を培養することができる。次いで、ヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体について
ELISAにより個々のウェルをスクリーニングすることができる。一度、広範囲のハイ
ブリドーマ増殖が生じたら、通常は培地を10〜14日後に観察することができる。抗体
を分泌するハイブリドーマを再塗布し、再度スクリーニングし、ヒトIgGについて依然
として陽性である場合、限界希釈によって1回または2回、モノクローナル抗体をサブク
ローニングすることができる。次いで、安定なサブクローンをin vitroで培養し
て、特徴付けのために組織培養培地中に少量の抗体を生成させることができる。
【0232】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマを、モノクロー
ナル抗体精製のために2リットルの回転式フラスコ中で増殖させることができる。上清を
濾過し、濃縮した後、プロテインA−セファロース(Pharmacia、Piscat
away、N.J.)を用いる親和性クロマトグラフィーを行うことができる。溶出した
IgGをゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによりチェックし、純度を確保
することができる。バッファー溶液をPBSに交換し、1.43の吸光係数を用いてOD
280により濃度を決定することができる。モノクローナル抗体をアリコートにし、−8
0℃で保存することができる。
【0233】
モノクローナル抗体を生成するトランスフェクトーマの作製
本開示の抗体を、例えば、当技術分野で周知である(例えば、Morrison, S. 1985, Sci
ence 229:1202)組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法との組合せを用いて
、宿主細胞トランスフェクトーマ中で生成することができる。
【0234】
例えば、抗体、またはその抗体断片を発現させるために、部分的または全長軽鎖および
重鎖をコードするDNAを、標準的な分子生物学または生化学技術(例えば、DNA化学
合成、PCR増幅もしくは対象の抗体を発現するハイブリドーマを用いるcDNAクロー
ニング)により取得し、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように
、DNAを発現ベクター中に挿入することができる。この文脈において、用語「作動可能
に連結された」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳
を調節するその意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中にライゲートさ
れることを意味することが意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、用いられる
発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別
のベクター中に挿入されるか、またはより典型的には、両遺伝子は同じ発現ベクター中に
挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の
相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲー
ション)により発現ベクター中に挿入される。本明細書に記載の抗体の軽鎖および重鎖可
変領域を用いて、V
Hセグメントがベクター内のC
Hセグメントに作動可能に連結され、
V
Lセグメントがベクター内のC
Lセグメントに作動可能に連結されるように、所望のア
イソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクター中にそれらを挿
入することにより、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作出することができる。
さらに、またはあるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を容易に
する、リーダー配列とも呼ばれるシグナルペプチドをコードしてもよい。シグナルペプチ
ドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、抗体鎖遺伝子をベク
ター中にクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナル
ペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質に由来す
るシグナルペプチド)であってもよい。そのようなシグナルペプチドの例は表7に見出さ
れ、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の例は表8に見出される。
【0237】
抗体鎖遺伝子に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞中での抗体鎖遺伝子
の発現を制御する調節配列を担持する。用語「調節配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または
翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポ
リアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような調節配列は、例えば、Goed
del 1990, Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press,
San Diego, CAに記載されている。当業者であれば、調節配列の選択などの発現ベクター
の設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、望まれるタンパク質の発現レベルなど
の因子に依存してもよい。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列としては、サイトメガ
ロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデ
ノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマから誘導されるプ
ロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、哺乳動物細胞中での高レベルのタンパク
質発現を指令するウイルスエレメントが挙げられる。あるいは、ユビキチンプロモーター
またはP−グロビンプロモーターなどの、非ウイルス調節配列を用いてもよい。さらに、
調節エレメントは、SV40初期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長
い末端反復に由来する配列を含有する、SRaプロモーター系などの、異なる起源に由来
する配列を含む(Takebe, Y. et al. 1988, Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
【0238】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞中で
のベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子などの
、さらなる配列を担持してもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細
胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,66
5号および第5,179,017号、全てAxelら、を参照されたい)。例えば、典型
的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に対して、G418、ハ
イグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。選択マーカ
ー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選
択/増幅と共にdhfr−宿主細胞中での使用のため)およびneo遺伝子(G418選
択のため)が挙げられる。
【0239】
軽鎖および重鎖の発現のために、標準的な技術を適用して、宿主細胞に重鎖および軽鎖
をコードする発現ベクターをトランスフェクトした。様々な形態の用語「トランスフェク
ション」は、外因性DNAの原核または真核宿主細胞への導入のために一般的に用いられ
る様々な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、DEAE−デ
キストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。理論的には、原核ま
たは真核宿主細胞中で本開示の抗体を発現させることができる。真核細胞、例えば、哺乳
動物宿主細胞、酵母または糸状菌中での抗体の発現は、適切に折畳まれ、免疫学的に活性
な抗体を集合させ、分泌する可能性が原核細胞よりも高いため、そのような真核細胞、特
に、哺乳動物細胞が考察される。
【0240】
1つの特定の実施形態においては、本開示によるクローニングまたは発現ベクターは、
好適なプロモーター配列に作動可能に連結された、表3に由来するコード配列のいずれか
少なくとも1つを含む。別の特定の実施形態においては、本開示によるクローニングまた
は発現ベクターは、好適なプロモーター配列に作動可能に連結された、表4に由来するコ
ード配列のいずれか少なくとも1つを含む。
【0241】
本開示の組換え抗体を発現させるための哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハム
スター卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、R.J. Kaufman and P.A. Sharp 1982, Mol. Bio
l. 159:601-621に記載のDHFR選択マーカーと共に用いられる、Urlaub and Chasin 19
80, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されたdhfr−CHO細胞を含
む)、CHOK1dhfr+細胞系、NSOミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細
胞が挙げられる。特に、NSOミエローマ細胞と共に使用するための、別の発現系は、P
CT公開WO87/04462、WO89/01036およびEP0338841に示さ
れたGS遺伝子発現系である。一実施形態においては、本開示の組換え抗体を発現させる
ための哺乳動物宿主細胞としては、例えば、米国特許第6,946,292号に記載のよ
うな、FUT8遺伝子発現について欠損した哺乳動物細胞系が挙げられる。
【0242】
抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞中に導入する場合、宿
主細胞中での抗体の発現または宿主細胞を増殖させる培養培地中への抗体の分泌を可能に
するのに十分な時間にわたって宿主細胞を培養することにより、抗体を生成する。標準的
なタンパク質精製方法を用いて、培養培地から抗体を回収することができる(例えば、Ab
hinav et al. 2007, Journal of Chromatography 848:28-37を参照されたい)。
【0243】
1つの特定の実施形態においては、本開示の宿主細胞は、好適なプロモーター配列に作
動可能に連結された、それぞれ、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB
5の発現にとって好適な、配列番号18、31、51、19、28、32、38、40、
46、48、52、56、および58からなる群から選択されるコード配列を有する発現
ベクターをトランスフェクトされた宿主細胞である。
【0244】
次いで、後者の宿主細胞を、それぞれ、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4また
はXAB5からなる群から選択される本開示の抗体の発現および生成のための好適な条件
下でさらに培養することができる。
【0245】
イムノコンジュゲート
別の態様において、本開示は、細胞毒素、薬物(例えば、免疫抑制剤)または放射性毒
素などの活性または治療部分にコンジュゲートされた、本開示の抗IL−17A抗体、ま
たはその断片を特徴とする。そのようなコンジュゲートを、本明細書では「イムノコンジ
ュゲート」と呼ぶ。IL−17AがTh17細胞の表面上に発現される場合、これは特に
好ましい(Brucklacher-Waldert et al. 2009, J Immunol. 183:5494-501)。
【0246】
1つまたは複数の細胞毒素を含むイムノコンジュゲートは、「イムノトキシン」と呼ば
れる。細胞毒素または細胞傷害剤は、細胞にとって有害である(例えば、殺傷する)任意
の薬剤を含む。例としては、タキソン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジ
ウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラ
スチン、t.コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシン
ジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテスト
ステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロー
ル、およびピューロマイシンならびにその類似体または相同体が挙げられる。また、治療
剤としては、例えば、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、
6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、除去剤(ablati
ng agent)(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(chloraxnbucil)、メ
ルファラン(meiphalan)、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、
シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、スト
レプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis−ジクロロジアミン白金(II)(D
DP)シスプラチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイ
シン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノ
マイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、
ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)も挙げられる。
【0247】
本開示の抗体にコンジュゲートすることができる治療的細胞毒素の他の例としては、デ
ュオカルマイシン、カリケアミシン、メイタンシンおよびオーリスタチン、ならびにその
誘導体が挙げられる。カリケアミシン抗体コンジュゲートの例は、商業的に入手可能であ
る(Mylotarg(商標);Wyeth−Ayerst)。
【0248】
当技術分野で利用可能なリンカー技術を用いて、細胞毒素を本開示の抗体にコンジュゲ
ートすることができる。細胞毒素を抗体にコンジュゲートするために用いられてきたリン
カー型の例としては、限定されるものではないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル
、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーが挙げられる。例えば、リソソーム区画内で
低いpHによる切断を受けやすいか、またはカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D
)などの腫瘍組織中で選択的に発現されるプロテアーゼなどの、プロテアーゼによる切断
を受けやすいリンカーを選択することができる。
【0249】
細胞毒素の型、リンカーおよび治療剤を抗体にコンジュゲートするための方法のさらな
る考察については、Saito, G. et al. 2003, Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215;Trail
, P.A. et al. 2003, Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337;Payne, G. 2003, Canc
er Cell 3:207-212;Allen, T.M. 2002, Nat. Rev. Cancer 2:750-763;Pastan, I. and
Kreitman, R. J. 2002, Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091;Senter, P.D. and
Springer, C.J. 2001, Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264も参照されたい。
【0250】
また、本開示の抗体を、放射性同位体にコンジュゲートして、ラジオイムノコンジュゲ
ートとも呼ばれる、細胞傷害性放射性医薬品を作製することもできる。診断的または治療
的に用いるために抗体にコンジュゲートすることができる放射性同位体の例としては、限
定されるものではないが、ヨウ素
131、インジウム
111、イットリウム
90、および
ルテチウム
177が挙げられる。ラジオイムノコンジュゲートを調製するための方法は、
当技術分野で確立されている。ラジオイムノコンジュゲートの例は、Zevalin(商
標)(DEC Pharmaceuticals)およびBexxar(商標)(Cor
ixa Pharmaceuticals)などの、市販のものであり、同様の方法を用
いて、本開示の抗体を用いてラジオイムノコンジュゲートを調製することができる。
【0251】
本開示の抗体コンジュゲートを用いて、所与の生物応答を改変することができるが、薬
物部分は古典的化学療法剤に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は
、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。そのようなタ
ンパク質としては、例えば、酵素的に活性な毒素、またはその活性断片、例えば、アブリ
ン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素;腫瘍壊死因子もしくはイ
ンターフェロン−γなどのタンパク質;または、例えば、リンホカイン、インターロイキ
ン−1(「IL1」)、インターロイキン−2(「IL2」)、インターロイキン−6(
「IL6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コ
ロニー刺激因子(「G−CSF」)、もしくは他の増殖因子などの、生物応答改変剤が挙
げられる。
【0252】
抗体にそのような治療部分をコンジュゲートするための技術は周知であり、例えば、Am
on et al.1985, "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Th
erapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp.
243-56; Hellstrom et at. 1987, "Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Dr
ug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 ; Thorpe 1985, "Antibo
dy Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Anti
bodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 47
5-506; Thorpe et al. 1982, Immunol. Rev., 62:119-58を参照されたい。
【0253】
二特異的分子
別の態様において、本開示は、本開示の抗IL−17A/AF抗体またはその抗原結合
部分を含むタンパク質を含む二特異的または多特異的分子を特徴とする。本開示の抗体ま
たはタンパク質を、別の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、
別の抗体または受容体のリガンド)に誘導体化または連結して、少なくとも2つの異なる
結合部位または標的分子に結合する二特異的分子を作製することができる。本開示の抗体
またはタンパク質は事実、1つより多い他の機能的分子に誘導体化または連結して、2つ
より多い異なる結合部位および/または標的分子に結合する多特異的分子を作製すること
ができる;そのような多特異的分子も、本明細書で用いられる用語「二特異的分子」によ
り包含されることが意図される。本開示の二特異的分子を作出するために、本開示の抗体
またはタンパク質を、二特異的分子が得られる別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合
模倣物質などの、1つまたは複数の他の結合分子に機能的に連結することができる(例え
ば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合その他による)。
【0254】
したがって、本開示は、IL−17A、例えば、XAB1、XAB2、XAB3、XA
B4またはXAB5のいずれか1つの、1つの抗原結合部分に対する少なくとも1つの第
1の結合特異性と、第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性とを含む二特異的分
子を含む。例えば、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープとは異なるIL−1
7Aの別のエピトープである。別の例は、IL−17A、例えば、XAB1、XAB2、
XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの、1つの抗原結合部分に対する少な
くとも1つの第1の結合特異性と、IL−17A内または別の標的抗原内の他の場所のエ
ピトープに対する第2の結合特異性とを含む二特異的分子である。
【0255】
さらに、二特異的分子が多特異的である本開示について、前記分子は、第1および第2
の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含んでもよい。
【0256】
一実施形態においては、本開示の二特異的分子は、結合特異性として、例えば、Fab
、Fab’、F(ab’)
2、Fv、または一本鎖Fvを含む、少なくとも1つの抗体、
またはその抗体断片を含む。抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖二量体、またはFvもしくは
Ladnerらの米国特許第4,946,778号に記載の単一鎖構築物などの任意のそ
の最小断片であってもよい。
【0257】
本開示の二特異的分子中で用いることができる他の抗体は、マウス、キメラおよびヒト
化モノクローナル抗体である。
【0258】
本開示の二特異的分子を、当技術分野で公知の方法を用いて、構成結合特異性をコンジ
ュゲートすることにより調製することができる。例えば、二特異的分子のそれぞれの結合
特異性を別々に作製した後、互いにコンジュゲートすることができる。結合特異性がタン
パク質またはペプチドである場合、様々なカップリング剤または架橋剤を共有的コンジュ
ゲーションのために用いることができる。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジ
イミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’
−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oP
DM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)
、およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カ
ルボキシレート(スルホ−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al. 1984, J
. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al. 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を
参照されたい)。他の方法としては、Paulus 1985, Behring Ins. Mitt. No. 78,118-132
; Brennan et al. 1985, Science 229:81-83、およびGlennie et al. 1987, J. Immunol.
139: 2367-2375に記載のものが挙げられる。コンジュゲート剤はSATAおよびスルホ
−SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.(Rockfor
d、IL)から入手可能である。
【0259】
結合特異性が抗体である場合、それらを2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリ
ル結合によりコンジュゲートすることができる。特定の実施形態においては、ヒンジ領域
を改変して、コンジュゲーションの前に、奇数の、例えば、1のスルフヒドリル残基を含
有させる。
【0260】
あるいは、両方の結合特異性を、同じベクター中にコードさせ、同じ宿主細胞中で発現
および集合(アセンブリ)させることができる。この方法は、二特異的分子がmAb x
mAb、mAb x Fab、Fab x F(ab’)
2またはリガンドx Fab
融合タンパク質である場合に特に有用である。本開示の二特異的分子は、1つの一本鎖抗
体と結合決定基とを含む一本鎖分子、または2つの結合決定基を含む一本鎖二特異的分子
であってもよい。二特異的分子は、少なくとも2つの一本鎖分子を含んでもよい。二特異
的分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;米国特許第
5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,40
5号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第
5,013,653号;米国特許第5,258,498号;および米国特許第5,482
,858号に記載されている。
【0261】
二特異的分子のその特異的標的への結合を、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(EL
ISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、
増殖阻害)、またはウェスタンブロットアッセイにより確認することができる。これらの
アッセイはそれぞれ、一般には、特定の対象のタンパク質−抗体複合体の存在を、対象の
複合体に特異的な標識された試薬(例えば、抗体)を用いることにより検出する。
【0262】
多価抗体
別の態様において、本開示は、例えば、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4また
はXAB5のいずれか1つの抗原結合部分から選択される、IL−17Aに結合する本開
示の抗体の少なくとも2つの同一のまたは異なる抗原結合部分を含む多価抗体を提供する
。一実施形態においては、多価抗体は、抗体の少なくとも2、3または4つの抗原結合部
分を提供する。抗原結合部分を、タンパク質融合により、または共有もしくは非共有連結
により一緒に連結することができる。あるいは、連結方法は、二特異的分子について記載
されている。例えば、本開示の抗体を、本開示の抗体の定常領域、例えば、Fcまたはヒ
ンジ領域に結合する抗体と架橋することにより、四価化合物を取得することができる。
【0263】
医薬組成物
別の態様において、本開示は、医薬的に許容される担体と一緒に製剤化された(formul
ated)、本開示の抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質の1つまたは組合せ、例
えば、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5からなる群から選択され
る1つの抗体を含有する、組成物、例えば、医薬組成物を提供する。そのような組成物は
、1つもしくは組合せの(例えば、2つ以上の異なる)本開示の抗体、またはイムノコン
ジュゲートもしくは二特異的分子を含んでもよい。例えば、本開示の医薬組成物は、標的
抗原上の異なるエピトープに結合するか、または相補的活性を有する抗体またはタンパク
質の組合せを含んでもよい。
【0264】
本開示の医薬組成物はまた、組合せ療法において、すなわち、他の薬剤と組み合わせて
投与することもできる。例えば、組合せ療法は、少なくとも1つの他の抗炎症剤または別
の化学療法剤、例えば、免疫抑制剤と組み合わせた、本開示の抗IL−17A抗体または
タンパク質、例えば、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5からなる
群から選択される1つの抗体を含んでもよい。組合せ療法において用いることができる治
療剤の例は、本開示の抗体またはタンパク質の使用に関する以下のセクションにより詳細
に記載される。
【0265】
本明細書で用いられる場合、「医薬的に許容される担体」は、生理的に適合する任意か
つ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅
延剤などを含む。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば
、注射または輸注による)に好適であるべきである。一実施形態においては、担体は、皮
下経路に好適であるべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体、イム
ノコンジュゲート、または二特異的分子を材料中で被覆して、酸の作用および化合物を不
活化し得る他の自然条件から化合物を保護することができる。
【0266】
本開示の医薬組成物は、1つまたは複数の医薬的に許容される塩を含んでもよい。「医
薬的に許容される塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、任意の望ましくない毒
性効果に影響しない塩を指す(例えば、Berge, S.M., et al. 1977, J. Pharm. Sci. 66:
1-19を参照されたい)。そのような塩の例としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げら
れる。酸付加塩としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リ
ン酸などの非毒性無機酸、ならびに脂肪族モノ−およびジ−カルボン酸、フェニル置換ア
ルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの非毒
性有機酸から誘導されるものが挙げられる。塩基付加塩としては、ナトリウム、カリウム
、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、ならびにN,N’−ジベンジルエ
チレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミ
ン、エチレンジアミン、プロカインなどの非毒性有機アミンから誘導されるものが挙げら
れる。
【0267】
本開示の医薬組成物はまた、医薬的に許容される酸化防止剤を含んでもよい。医薬的に
許容される酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウ
ム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;パルミチ
ン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトル
エン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどの油溶性
酸化防止剤;およびクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒
石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0268】
本開示の医薬組成物中で用いることができる好適な水性および非水性担体の例としては
、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエ
チレングリコールなど)、およびその好適な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびに
オレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルが挙げられる。例えば、レシチンなどの
コーティング材料の使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、および界面活
性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。
【0269】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含
有してもよい。滅菌手順と、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロ
ブタノール、フェノールソルビン酸などの含有との両方により、微生物の存在の防止を確
保することができる。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含有させるこ
とも望ましい場合がある。さらに、注射可能な医薬形態の吸収の延長を、モノステアリン
酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の含有によりもたらすことが
できる。
【0270】
医薬的に許容される担体は、滅菌注射溶液または分散物の即興の調製のための滅菌水溶
液または分散物および滅菌粉末を含む。医薬的に活性な物質のためのそのような媒体およ
び薬剤の使用は、当技術分野で公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合し
ない場合を除いて、本開示の医薬組成物におけるその使用が企図される。また、追加活性
化合物を組成物中に含有させることもできる。
【0271】
治療組成物は、典型的には、製造および保存の条件下で無菌かつ安定でなければならな
い。組成物を、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度にとって
好適な他の規則的構造(ordered structure)として製剤化することができる。担体は、
例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、
および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその好適な混合物を含有する、溶媒ま
たは分散媒体であってもよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散
物の場合は必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維
持することができる。多くの場合、当業者は、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソル
ビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含有させることがで
きる。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に
含有させることにより、注射可能な組成物の吸収の延長をもたらすことができる。
【0272】
安定なタンパク質(例えば、抗体)製剤の開発に関する概説は、Cleland et al. 1993,
Crit. Reviews. Ther. Drug Carrier Systems 10(4):307-377およびWei Wang 1999, Int
. J. Pharmaceutcs 185:129-88に見出すことができる。抗体に関するさらなる製剤の考察
は、例えば、Daugherty and Mrsny 2006, Advanced Drug Delivery Reviews 58: 686-706
;米国特許第6,171,586号、第4,618,486号、米国特許出願公開第20
060286103号、PCT公開WO 06/044908、WO07/095337
、WO04/016286、Colandene et al. 2007, J. Pharm. Sci 96: 1598-1608;Sc
hulman 2001, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 164:S6-S11および他の公知の参考文献に
見出すことができる。
【0273】
皮内または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は、典型的には、以下の成分
:注射用水、塩水溶液(saline solution)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセ
リン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコール
またはメチルパラベンなどの抗細菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど
の酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩またはリ
ン酸塩などのバッファー、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性の調
整のための薬剤のうちの1つまたは複数を含む。塩酸または水酸化ナトリウムなどの、酸
または塩基を用いてpHを調整することができる。そのような調製物を、ガラスまたはプ
ラスチック製のアンプル、使い捨て注射筒または複数用量バイアル中に封入することがで
きる。
【0274】
適切な溶媒中に必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記で列挙された成分の1つま
たは組合せと共に含有させた後、滅菌マイクロ濾過を行うことにより、滅菌注射溶液を調
製することができる。一般的には、分散物は、本開示の抗体またはタンパク質を、基本分
散媒体と、上記で列挙されたものに由来する必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中
に含有させることにより調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製
方法は、活性成分の粉末と、予め滅菌濾過されたその溶液に由来する任意のさらなる所望
の成分とをもたらす減圧乾燥および凍結(フリーズ)−乾燥(凍結乾燥)である。
【0275】
1つの特定の実施形態においては、抗体XAB1、XAB2、XBA3、XAB4また
はXAB5を、バイアル中の液体製剤として投与した。バイアルあたりの薬物の量は、1
50mgであった。液体は、150mg/mLの抗体、4.8mMのL−ヒスチジン、1
5.2mMのL−ヒスチジン−HCl、220mMのスクロースおよび0.04%のポリ
ソルベート20、pH6.0±0.5を含有していた。20%の過剰充填(overfill)を
添加して、意図される用量の完全な取り出しを可能にした。
【0276】
単一剤形(single dosage form)を生成するために担体材料と組み合わせることができ
る活性成分の量は、処置される対象、および特定の投与様式に応じて変化する。単一剤形
を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的には、治
療効果をもたらす組成物の量である。一般に、100%のうち、この量は、医薬的に許容
される担体と組み合わせた、約0.01%〜約99%の活性成分、約0.1%〜約70%
、または約1%〜約30%の活性成分である。
【0277】
投薬レジメン(dosage regimen)は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供す
るように調整される。例えば、単一ボーラスを投与し、数回に分割された用量を経時的に
投与するか、または治療状況の要件によって示されるように用量を比例的に減少もしくは
増加させることができる。投与の容易性および投薬の均一性のために、単位剤形(dosage
unit form)中に非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で用いられ
る単位剤形とは、処置される対象のために単一の投薬として適合させた物理的に個別の単
位を指す;各単位は、必要とされる医薬的担体と共に、所望の治療効果をもたらすように
算出された所定量の活性化合物を含有する。本開示の単位剤形に関する明細は、活性化合
物の独特の特徴および達成しようとする特定の治療効果、個体における感受性の処置のた
めのそのような活性化合物を組み合わせる際の当技術分野において固有の制限によって決
定され、それに直接依存する。
【0278】
抗体またはタンパク質の投与のために、投薬範囲は、宿主体重の5、15および50m
g/kg皮下投与、より通常は0.01〜5mg/kgなどの約0.0001〜150m
g/kgである。例えば、投薬量(dosage)は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体
重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重または1〜10mg
/kgの範囲内であってもよい。例示的な処置レジメンは、週1回、2週間毎に1回、3
週間毎に1回、4週間毎に1回、月1回、3カ月毎に1回または3〜6カ月毎に1回の投
与を必要とする。本開示の抗IL−17A抗体またはタンパク質のための投薬レジメンは
、静脈内投与による1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg、10mg/k
g、20mg/kgまたは30mg/kgを含み、抗体は以下の投与スケジュール(dosi
ng schedule)の1つ:6つの投薬について4週間毎、次いで、3カ月毎;3週間毎;3
mg/kg体重で1回、次いで、1mg/kg体重で3週間毎を用いて与えられる。
【0279】
いくつかの方法においては、異なる結合特異性を有する2つ以上の抗体が同時に投与さ
れ、その場合、投与される各抗体の投薬量は指示される範囲内にある。本開示の抗体また
はタンパク質は通常、複数の機会に投与される。単一投薬間の間隔は、例えば、毎週、毎
月、3カ月毎または毎年であってもよい。また、間隔は患者における標的抗原に対する抗
体の血中レベルを測定することにより示される通り、不規則であってもよい。いくつかの
方法においては、投薬量は、約1〜1000μg/mlおよびいくつかの方法においては
約25〜300μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調整される。
【0280】
あるいは、抗体またはタンパク質を、持続放出製剤として投与することができ、この場
合、低頻度の投与が必要とされる。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に応
じて変化する。一般に、ヒト抗体が、最長の半減期を示し、次いで、ヒト化抗体、キメラ
抗体、および非ヒト抗体である。投与の投薬量および頻度は、処置が予防的であるか、ま
たは治療的であるかどうかに応じて変化してもよい。予防的適用においては、比較的低い
投薬量が比較的頻繁でない間隔で、長期間にわたって投与される。いくらかの患者は、そ
の余生にわたって処置を受け続ける。治療的適用においては、比較的短い間隔での比較的
高い投薬量が、疾患の進行が低下もしくは終結するまで、または患者が疾患症状の部分的
もしくは完全な改善を示すまで必要となることもある。その後、患者を予防的レジメで投
与することができる。
【0281】
本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性であるこ
となく、特定の患者、組成物、および投与様式に関する所望の治療応答を達成するのに有
効である、活性成分の量を取得するために変化させることができる。選択される投薬量レ
ベルは、用いられる本開示の特定の組成物、またはそのエステル、塩もしくはアミド、投
与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出速度、処置の持続期間、用いられる特
定の組成物と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物および/または材料、処置される
患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および以前の病歴、ならびに医学界で周知の
同様の因子などの、様々な薬物動態因子に依存する。
【0282】
本開示の抗IL−17A抗体またはタンパク質の「治療上有効な投薬量(therapeutica
lly effective dosage)」は、疾患症状の重症度の低下、無疾患症状期間の頻度および持
続期間の増加、または疾患の苦痛に起因する悪化もしくは障害の防止をもたらし得る。
【0283】
本開示の組成物は、当技術分野で公知の様々な方法の1つまたは複数を用いて1つまた
は複数の投与経路によって投与することができる。当業者には明らかであるように、投与
の経路および/または様式は、所望の結果に応じて変化する。本開示の抗体のための投与
経路としては、例えば、注射または輸注による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、
脊髄または他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書で用いられる語句「非経口投与」
は、通常は注射による、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、限定されるもので
はないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内(intrathecal)、嚢内、眼窩内、心臓内、
皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内(intraspina
l)、硬膜外および胸骨内(intrastemal)注射および輸注が挙げられる。
【0284】
あるいは、本開示の抗体またはタンパク質を、局所、表皮または粘膜投与経路、例えば
、鼻内、経口、経膣、直腸、舌下または局所などの非経口経路により投与することができ
る。
【0285】
本開示の抗体またはタンパク質を、埋込み体(インプラント)、経皮パッチ、およびマ
イクロカプセル送達系などの、制御放出製剤などの、迅速な放出に対して抗体を保護する
担体を用いて調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリ
コール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適
合性ポリマーを用いることができる。そのような製剤の調製のための多くの方法が特許さ
れているか、または当業者には一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled R
elease Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York,
1978を参照されたい。
【0286】
治療組成物を、当技術分野で公知の医学的デバイスを用いて投与することができる。例
えば、一実施形態においては、本開示の治療組成物を、米国特許第5,399,163号
;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,
941,880号;第4,790,824号または第4,596,556号に示されたデ
バイスなどの、針のない皮下注射デバイスを用いて投与することができる。本開示におい
て有用な周知の埋込み体およびモジュールの例としては、制御された速度で薬剤(medica
tion)を分注するための埋込み可能なマイクロ注入ポンプを示す米国特許第4,487,
603号;皮膚を介して薬剤を投与するための治療デバイスを示す米国特許第4,486
,194号;正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを示す米国特許第4
,447,233号;連続的薬物送達のための可変流埋込み可能注入装置を示す米国特許
第4,447,224号;マルチチャンバ区画を有する浸透圧薬物送達系を示す米国特許
第4,439,196号;および浸透圧薬物送達系を示す米国特許第4,475,196
号が挙げられる。他の多くのそのような埋込み体、送達系、およびモジュールが、当業者
には公知である。
【0287】
ある特定の実施形態においては、本開示の抗体またはタンパク質を、in vivoで
の適切な分布を確保するために製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)
は、多くの高親水性化合物を排除する。本開示の治療化合物がBBBを通過するのを確保
するために(必要に応じて)、例えば、リポソーム中でそれらを製剤化することができる
。リポソームを製造する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;第
5,374,548号;および第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、
特定の細胞または器官に選択的に輸送され、かくして、標的化された薬物送達を増強する
1つまたは複数の部分を含んでもよい(例えば、V.V. Ranade 1989, J. Cline Pharmacol
. 29:685を参照されたい)。例示的標的化部分としては、葉酸またはビオチン(例えば、
Lowらの米国特許第5,416,016号を参照されたい);マンノシド(Umezawa et
al. 1988, Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al.
1995, FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al. 1995, Antimicrob. Agents Chernother. 3
9:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoe et al. 1995, Am. J. Physiol.1233:
134);p120(Schreier et al. 1994, J. Biol. Chem. 269:9090)が挙げられる;ま
た、Keinanen and Laukkanen 1994, FEBS Lett. 346:123;Killion and Fidler 1994, Im
munomethods 4:273も参照されたい。
【0288】
本開示の使用および方法
本開示の抗体またはタンパク質は、in vitroおよびin vivoでの診断的
および治療的有用性を有する。例えば、これらの分子を、培養物中、例えば、in vi
troもしくはin vivoで、または対象中、例えば、in vivoで細胞に投与
して、様々な障害を処置、防止または診断することができる。
【0289】
方法は、IL−17Aと関連する障害および/または自己免疫性および炎症性障害、例
えば、関節リウマチ、または乾癬を処置、防止または診断するのに特に好適である。
【0290】
特に、本開示は、IL−17Aと関連する障害および/または自己免疫性および炎症性
障害を処置する方法を提供する。ある特定の実施形態においては、方法は、本開示による
、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を、それを必要とする対象に
投与するステップを含む。
【0291】
本開示はまた、細胞を、治療上有効用量(therapeutically effective dose)の本開示
の抗体を含む組成物と接触させることによって、標的細胞または組織中でのIL−17A
またはIL−17AFにより誘導されるシグナリング応答を低下させるか、または抑制す
るための方法も提供する。
【0292】
本開示はまた、細胞を、本開示による抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質な
どの抗原結合断片と接触させるステップを含む、細胞中のIL6、CXCL1、IL−8
、GM−CSFおよび/またはCCL2のレベルを低下させるための方法も提供する。
【0293】
本明細書において、語句「IL−17A/AF媒介性疾患」または「IL−17A/A
F関連障害」は、直接的または間接的であっても、疾患または状態の原因、発生、進行、
持続性または病理を含む疾患または医学的状態において、IL−17AまたはIL−17
AFが役割を果たす全ての疾患および医学的状態を包含する。したがって、これらの用語
は、異常なIL−17A/AFレベルと関連するか、もしくはそれを特徴とする状態およ
び/または標的細胞もしくは組織中のIL−17A/AFにより誘導される活性、例えば
、IL−6もしくはGRO−アルファの生成を低下させるか、もしくは抑制することによ
って処置することができる疾患もしくは状態を含む。これらのものは、関節炎、関節リウ
マチ、または乾癬などの、炎症状態および自己免疫疾患を含む。これらのものは、アレル
ギーおよびアレルギー状態、過敏性反応、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症および臓器ま
たは組織移植拒絶をさらに含む。
【0294】
例えば、本開示の抗体またはタンパク質を、同種移植拒絶または異種移植拒絶を含む、
心臓、肺、混合心肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜移植のレシピエントの処置のた
めに、ならびに骨髄移植後などの移植片対宿主疾患および臓器移植関連動脈硬化症の防止
のために用いることができる。
【0295】
本開示の抗体またはタンパク質は、限定されるものではないが、自己免疫疾患および炎
症状態、特に、関節炎(例えば、関節リウマチ、進行性慢性関節炎および変形性関節炎)
および骨量減少、炎症性疼痛、強直性脊椎炎を含む脊椎関節症、ライター症候群、反応性
関節炎、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎および腸炎性関節炎を含む炎症状態およびリ
ウマチ疾患を含むリウマチ疾患、腱付着部炎、過敏症(気道過敏症と皮膚過敏症の両方を
含む)ならびにアレルギーなどの自己免疫成分を含む病因を有する炎症状態の処置、防止
または改善にとって有用である。本開示の抗体を用いることができる特定の自己免疫疾患
としては、自己免疫性血液障害(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆および
特発性血小板減少症など)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、炎症性
筋疾患(皮膚筋炎)、歯周炎、多発性軟骨炎、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、
慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプ
ルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病および過敏性腸症候
群など)、内分泌眼病、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、全身性硬化症
、線維症、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病(I型糖尿病)、ブドウ膜炎、乾性角結膜
炎および春季カタル、間質性肺線維症、プロテーゼ周囲骨溶解、糸球体腎炎(ネフローゼ
症候群、例えば、特発性ネフローゼ症候群または微小変化ネフローゼ症候群を含む、およ
び含まない)、多発性ミエローマ、他の型の腫瘍、皮膚および角膜の炎症疾患、筋炎、骨
埋込み体の緩み、代謝障害(肥満、アテローム性動脈硬化症および拡張型心筋症などの他
の心血管疾患、心筋炎、II型糖尿病、および脂質異常症など)、および自己免疫性甲状
腺疾患(橋本甲状腺炎など)、小血管および中血管原発性血管炎、巨細胞性動脈炎を含む
大血管血管炎、汗腺膿瘍、視神経脊髄炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病、アトピ
ー性および接触性皮膚炎、細気管支炎、炎症性筋疾患、自己免疫性末梢性ニューロパシー
、免疫性腎疾患、肝疾患および甲状腺疾患、炎症およびアテローム血栓症、自己炎症性熱
症候群、免疫血液障害、ならびに皮膚および粘膜の水疱性疾患が挙げられる。解剖学的に
は、ブドウ膜炎は、前部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、または全ブド
ウ膜炎であってもよい。それは慢性または急性であってもよい。ブドウ膜炎の病因は、全
身性疾患と関連する自己免疫性もしくは非感染性、感染性、または白点症候群であっても
よい。
【0296】
また、本開示の抗体またはタンパク質は、喘息、気管支炎、細気管支炎、特発性間質性
肺炎、じん肺症、肺気腫、およびその他の気道の閉塞性または炎症性疾患の処置、防止、
または改善にとっても有用であってよい。
【0297】
また、本開示の抗体またはタンパク質は、変形性関節症、骨粗鬆症および他の炎症性関
節炎、ならびに加齢に伴う骨量減少、特に、歯周病などの一般的な骨量減少を含む骨代謝
の疾患を処置するのに有用であってもよい。
【0298】
さらに、本開示の抗体またはタンパク質はまた、慢性カンジダ症および他の慢性真菌症
を処置するのに有用であってもよく、ならびに寄生虫による感染の合併症、および喫煙の
合併症、ならびにウイルス感染およびウイルス感染の合併症は有望な処置手段と考えられ
る。
【0299】
IL−17およびその受容体の阻害は、慢性炎症性疾患の処置のための最も有望な新し
い作用様式(MOA)であり、乾癬が、IL−17モジュレーター薬物開発のために現在
研究されているいくつかの疾患のうち、最も進んだ適応症である(Miossec P and Kolls
JK. 2012, Nat Rev Drug Discov.10:763-76)。いくつかの研究により、中程度から重度
の尋常性乾癬を有する患者におけるIL−17Aの遮断が短期間で安全であり、非常に顕
著な改善を誘導することが一義的に証明された(例えば、Hueber W, Patel DD, Dryja T,
et al 2010, Sci Transl Med. ;2:52ra72)。これらの知見は、予想を超えるものであり
、IL−17Aが乾癬の発症における鍵となるシグナリング分子であるという仮説を確認
するものであった(Garber K. 2012,Nat Biotechnology 30:475-477)。
【0300】
さらに、最も一般的な多発性硬化症(MS)モデル実験的自己免疫性脳脊髄炎を含むい
くつかの動物モデルにおいて、IL−17は炎症プロセスにおいて中枢的なものである(
Bettelli E, et al 2008, Nature; 453:1051-57, Wang HH, et al 2011, J Clin Neurosc
i; 18(10):1313-7, Matsushita T, et al 2013, PLoS One; 8(4):e64835)。IL−17
の効果は主に炎症促進性であり、他のサイトカインと相乗作用する。上皮細胞によるケモ
カイン生成の誘導、マクロファージにおけるインターロイキン(IL)−1b、腫瘍壊死
因子アルファ(TNFa)およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)−9の上
方調節、ならびにIL6、IL−8およびプロスタグランジンE2の分泌の誘導などのI
L−17の効果は、MS病理の多くの態様と良好に適合する。また、マウスにおけるトラ
ンスジェニック過剰発現モデルを含む、神経炎症におけるIL−17の中枢的役割に反論
するデータもある(Haak S et al 2009, JCI; 119:61-69)。
【0301】
喘息は、気道閉塞の症状により臨床的に示される気道の異質性炎症疾患(heterogeneou
s inflammatory disease)であり、自発的に、または処置に応答して重症度が変化する。
喘息は2型ヘルパーT細胞(Th2)およびその生成物により誘導されると考えられるが
、最近のデータにより、Th2の高い遺伝子特性は喘息を有する対象の約50%のみの気
道に存在することが示唆されている(Woodruff PG et al 2009, Am J Respir Crit Care
Med 180:388-95)。好中球炎症は急性重症喘息において優勢である;喘息を有するいくら
かの個体は顕著な喀痰好中球増加症および吸入ステロイドに対する弱い臨床応答を示す;
ならびに喀痰好中球増加症は、高用量の吸入および/または経口ステロイドを摂取する喘
息個体において顕著である(Wenzel 2012, Nature Med 18:716-25)。
【0302】
喘息の重症度と相関するIL−17Aのレベルの増加が、健康な対照と比較して喘息を
有する個体の循環および気道中で報告されている。アレルギー性肺炎症のマウスモデルに
おける前臨床試験は、好中球性気道炎症およびステロイド耐性気道過敏性におけるIL−
17Aおよびその受容体(IL−17RA)に関する要件を包含していた。かくして、i
n vitroでのIL−17Aの特性、喘息における量の増加の存在、および疾患の前
臨床モデルは、ステロイドに対してあまり応答しない好中球および/または低Th2型の
疾患におけるIL−17Aの役割を支援する(Cosmi L et al 2009, Am J Respir Crit C
are Med 180:388-95)。
【0303】
かくして、以下の状態一覧は、本開示による抗体またはその抗原結合部分を含むタンパ
ク質を用いる処置のための特に好ましい標的を含む:多発性硬化症、乾癬、喘息、全身性
エリテマトーデス(SLE)、およびループス腎炎。
【0304】
本開示の抗体またはタンパク質を、唯一の活性成分として、または例えば、上記の疾患
の処置または防止のために、他の薬物、例えば、免疫抑制剤もしくは免疫調節剤または他
の抗炎症剤または他の細胞傷害剤もしくは抗がん剤と一緒に、例えば、それに対するアジ
ュバントとして、またはそれと組み合わせて投与することができる。例えば、本開示の抗
体を、DMARD、例えば、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、メトトレキサート
、D−ペニシラミン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、タクロリムス、シロリムス、
ミノサイクリン、レフルノミド、糖質コルチコイド;カルシニューリン阻害剤、例えば、
シクロスポリンAまたはFK506;リンパ球再循環のモジュレーター、例えば、FTY
720およびFTY720類似体;mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン、40−O−
(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP2357
3またはTAFA−93;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えば、ABT−28
1、ASM981など;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプリン;レ
フルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリン
またはその免疫抑制相同体、類似体もしくは誘導体;免疫抑制モノクローナル抗体、例え
ば、白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD
4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、
CD86またはそのリガンド;他の免疫調節化合物、例えば、CTLA4の細胞外ドメイ
ンの少なくとも一部またはその変異体、例えば、非CTLA4タンパク質配列、例えば、
CTLA4Ig(例えば、ATCC68629と指定される)またはその変異体、例えば
、LEA29Yに連結されたCTLA4の少なくとも細胞外部分またはその変異体を有す
る組換え結合分子;接着分子阻害剤、例えば、LFA−1アンタゴニスト、ICAM−1
または−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニス
ト;または化学療法剤、例えば、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソ
ルビシンもしくは5−フルオロウラシル;抗TNF剤、例えば、TNFに対するモノクロ
ーナル抗体、例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、CDP870、またはTNF−
RIもしくはTNF−RIIに対する受容体構築物、例えば、エタネルセプト、PEG−
TNF−RI;炎症促進性サイトカインの遮断剤、IL1遮断剤、例えば、アナキンラま
たはIL1トラップ、カナキヌマブ、IL13遮断剤、IL4遮断剤、IL6遮断剤、他
のIL17遮断剤(セクキヌマブ、ブロアダルマブ、イクセキズマブなど);ケモカイン
遮断剤、例えば、プロテアーゼ、例えば、メタロプロテアーゼの阻害剤または活性化因子
、抗IL15抗体、抗IL6抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗CD20抗体、N
SAID、例えば、アスピリンまたは抗感染剤(一覧は上記の薬剤に限定されない)と組
み合わせて用いることができる。
【0305】
上記により、本開示はさらなる態様において、
本明細書に開示される治療上有効量の抗IL−17A抗体またはその抗原結合部分を含
むタンパク質と、例えば、上記に示されたような、免疫抑制剤/免疫調節剤、抗炎症性化
学療法剤または抗感染剤である、少なくとも1つの第2の薬物物質とを、例えば、同時に
、または連続的に同時投与する(co-administration)工程を含む上記で定義された方法
、
【0306】
または、治療上有効量のa)本明細書に開示される抗体またはその抗原結合部分を含む
タンパク質と、b)例えば、上記に示されたような、免疫抑制剤/免疫調節剤、抗炎症性
化学療法剤または抗感染剤から選択される少なくとも1つの第二の物質とを含む、治療的
組合せ(therapeutic combination)、例えば、キット
を提供する。キットは、その投与のための説明書を含んでもよい。
【0307】
本明細書に開示される抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を他の免疫抑制/
免疫調節剤、抗炎症性化学療法または抗感染療法と共に投与する場合、同時投与される組
合せ化合物の投薬量は勿論、用いられる同時薬物(co-drug)の種類、例えば、それがD
MARD、抗TNF、IL1遮断剤その他であるかどうか、用いられる特定の薬物、処置
される状態などに応じて変化する。
【0308】
一実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を用いて、IL
−17Aのレベル、またはIL−17Aを含有する細胞のレベルを検出することができる
。これは、例えば、試料(in vitroの試料など)および対照試料を、抗IL−1
7A抗体(またはタンパク質)と、抗体とIL−17Aとの間の複合体の形成を可能にす
る条件下で接触させることにより達成することができる。抗体(またはタンパク質)とI
L−17Aとの間で形成される任意の複合体を、試料および対照中で検出および比較する
。例えば、ELISAおよびフローサイトメトリーアッセイなどの、当技術分野で周知の
標準的な検出方法を、本開示の組成物を用いて実施することができる。
【0309】
したがって、一態様において、本開示は、試料中のIL−17A(例えば、ヒトIL−
17A抗原)の存在を検出するため、またはIL−17Aの量を測定するための方法であ
って、試料、および対照試料を、抗体またはその部分とIL−17Aとの間の複合体の形
成を可能にする条件下で、IL−17Aに特異的に結合する、本開示の抗体もしくはタン
パク質、またはその抗原結合部分と接触させる工程を含む、前記方法をさらに提供する。
次いで、試料と対照試料との間の複合体形成の差異が試料中のIL−17Aの存在を示す
、複合体の形成を検出する。
【0310】
また、本開示の組成物(例えば、抗体、タンパク質、ヒト抗体および二特異的分子)と
、使用のための説明書とからなるキットも本開示の範囲内にある。キットは、少なくとも
1つのさらなる試薬、または本開示の1つもしくは複数のさらなる抗体もしくはタンパク
質(例えば、第1の抗体とは異なる標的抗原上のエピトープに結合する相補的活性を有す
る抗体)をさらに含有してもよい。キットは、典型的には、キットの内容物の意図される
使用を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キット上で、もしくはそれと共に供給さ
れる、またはそうでなければキットに付随する任意の文書(writing)、または記録され
た材料を含む。キットは、患者が上記で定義されたような抗IL−17A抗体処置に応答
する群に属するかどうかを診断するための手段をさらに含んでもよい。
【0311】
完全に説明された本開示を、以下の実施例および特許請求の範囲によってここでさらに
例示するが、これらは例示的なものであり、さらなる限定を意味するものではない。
【実施例】
【0313】
XAB1は、ヒトIgG1/κモノクローナル抗体である。それを標準的な分子生物学
技術を用いて作製した。簡単に述べると、Medarexシステムを用いた。マウスを、
組換えヒトIL−17Aで免疫した。マウスを、CO
2吸入により安楽死させ、脾細胞を
収獲し、PEG4000を用いてミエローマ細胞系と融合させた。融合した細胞を腹膜細
胞のフィーダー層と共にウェル中に播種した。培養細胞から上清を取得し、ELISAに
よりIL−17A反応性mAbについてアッセイした。IL−17A mAbの生成につ
いて陽性のクローンを選択し、取り出した。
【0314】
in vitroアッセイにおけるIL−17Aに対する結合親和性、IL−17Aの
その受容体への結合を遮断する能力、およびIL−17Aにより媒介される生物効果を遮
断する能力などの、初期の有望な抗体/抗原結合特性に基づいて、XAB1の分泌を担う
ハイブリドーマをさらなる特徴付けのために同定した。
【0315】
XAB1のアミノ酸配列は、配列番号14(重鎖)および配列番号15(軽鎖)である
。XAB1を、その後の親和性成熟のために選択した。
【0316】
構造誘導性親和性成熟に対する第1のステップとして、遊離状態のXAB1 Fabな
らびにヒトIL−17Aとの対応するFv複合体の結晶構造を、以下に記載のように決定
した。ヒトIL−17AとのXAB1 Fv複合体の三次元構造の分析により、合理的な
親和性成熟プロセスと同時に、その代わりとして、より無作為化されたプロセスを実行す
ることができた。さらなる詳細を以下に提供する。
【0317】
さらに、X線結晶学を用いて、作製されたいくつかの親和性成熟したバリアント抗体を
特徴付けた。親和性成熟したバリアントからの結晶データの分析により、バリアント抗体
の結合挙動のより深い理解が可能になり、以下でさらに説明されるように、いくつかの予
想外の特性が発見された。
【0318】
実施例1 遊離状態のXAB1 Fabの結晶構造
(i)材料および方法
標準的な分子生物学プロトコールを用いて、XAB1 Fab抗体断片を取得した。簡
単に述べると、Fabをクローニングし、重鎖上にC末端ヘキサヒスチジンタグと共に大
腸菌(E.coli)W3110中で発現させた。組換えタンパク質を、Ni−キレートクロマ
トグラフィー、次いで、10mM TRIS pH7.4、25mM NaCl中、SP
X−75カラム上でのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。次いで、XAB1
Fabを限外濾過により10.4mg/mlまで濃縮し、結晶化させた。
【0319】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロッ
プ中での蒸気拡散法を用いて、SD2 96穴プレート中、19℃で成長させた。タンパ
ク質ストックを、40%PEG300、0.1Mリン酸−クエン酸ナトリウムpH4.2
を含有する結晶化バッファーと1:1で混合した。全液滴サイズは0.4μlであった。
X線データ収集の前に、1つの結晶をナイロン製cryo−loop中に載せ、液体窒素
中で直接的に簡易冷却した。
【0320】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡
単に述べると、2.1Å解像度のX線データを、Swiss Light Source
、ビームラインX10SAで、MAR225 CCD検出器、1.0000ÅのX線照射
を用いて収集した。合計で、それぞれ1.0°の振動の180の画像を、190mmの結
晶−検出器距離で記録し、HKL2000ソフトウェアパッケージを用いてプロセッシン
グした。結晶は、セルパラメータa=51.63Å、b=132.09Å、c=77.2
5Å、α=90.00°、β=98.88°、γ=90.00°および非対称単位中の1
個のXAB1 Fab分子を有する空間群C2に属していた。2.1Å解像度でのR−s
ymは10.4%であり、データ完全性は99.0%であった。
【0321】
構造を、プログラムPHASERを用いる分子置換により決定した。V
H/V
Lおよび
C
H1/C
Lドメインの検索モデルを、PDBエントリー1HEZから作成した。反復モ
デルの構築および精密化を、さらなる有意な改善をモデルに対して行うことができなくな
るまで、プログラムCoot(Crystallographic Object−Or
iented Toolkit)およびCNX(Crystallography &
NMR eXplorer)バージョン2002を用いて実施した。全てのデータに関す
る最終的なR−およびR−フリーは、それぞれ、0.188および0.231であった。
最終的な精密化されたモデルは、それぞれ、0.004Åおよび0.9°の理想的な結合
長および結合角に由来する平均二乗偏差(RMSD)を示した。
【0322】
(ii)結果
XAB1 FabのX線精密化の結果を表9に提供し、三次元構造を
図1に示す。
【0323】
【表9】
【0324】
図1は、実施例1で得られたXAB1 Fabの三次元構造を提供する。
図1Aは、空
間充填表示である。
図1Bは、略画表示である。XAB1 Fabの重鎖および軽鎖は、
それぞれ暗灰色および明灰色で見える。
【0325】
実施例2 ヒトIL−17AとのXAB1 Fv複合体の結晶構造:構造誘導性親和性成
熟(structure-guided affinity maturation)のためのパラトープの分析
(i)材料および方法
標準的な分子生物学プロトコールを用いて、XAB1 Fv抗体断片を取得した。簡単
に述べると、Fvをクローニングし、重鎖上のC末端ヘキサヒスチジンタグおよび軽鎖上
のC末端Strepタグと共に大腸菌(E.coli)W3110中で発現させた。組換えタン
パク質を、Ni−キレートクロマトグラフィーにより精製した。
【0326】
次いで、ヒトIL−17AとのXAB1 Fv断片複合体を、標準的な方法を用いて調
製した。簡単に述べると、ヒトIL−17A(1.1mg)を過剰のFv(2.7mg)
と混合し、複合体を、10mM TRIS pH7.4、25mM NaCl中でのS1
00サイズ排除クロマトグラフィー上で泳動した。次いで、タンパク質複合体を限外濾過
により21.2mg/mlまで濃縮し、結晶化させた。
【0327】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロッ
プ中での蒸気拡散法を用いて、SD2 96穴プレート中、19℃で成長させた。タンパ
ク質ストックを、10%PEG20,000、0.1MビシンpH9.0、2.0%(v
/v)ジオキサンを含有する結晶化バッファーと1:1で混合した。全液滴サイズは0.
4μlであった。X線データ収集の前に、1つの結晶を結晶化バッファーと20%PEG
20,000、30%グリセロールとの1:1混合物中に簡単に移した後、液体窒素中で
簡易冷却した。
【0328】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡
単に述べると、3.0Å解像度のX線データを、Swiss Light Source
、ビームラインX10SAで、MAR225 CCD検出器、1.0000ÅのX線照射
を用いて収集した。合計で、それぞれ1.0°の振動の110の画像を、300mmの結
晶−検出器距離で記録し、HKL2000ソフトウェアパッケージを用いてプロセッシン
グした。結晶は、セルパラメータa=184.31Å、b=55.81Å、c=70.9
9Å、α=β=γ=90°を有する空間群P2
12
12に属していた。3.0Å解像度で
のR−symは11.2%であり、データ完全性は99.9%であった。
【0329】
構造を、プログラムPHASERを用いる分子置換により決定した。XAB1 Fvの
検索モデルを、以前に決定されたXAB1 Fabの結晶構造から作成した(実施例1を
参照されたい)。IL−17Aの検索モデルを、公開されたヒトIL−17F結晶構造(
PDBエントリー1jpy)から作成した。反復モデルの構築および精密化を、さらなる
有意な改善をモデルに対して行うことができなくなるまで、Coot(Crystall
ographic Object−Oriented Toolkit)およびCNX(
Crystallography & NMR eXplorer)バージョン2002
を用いて実施した。全てのデータに関する最終的なR−およびR−フリーは、それぞれ、
0.215および0.269であった。最終的な精密化されたモデルは、それぞれ、0.
007Åおよび1.0°の理想的な結合長および結合角に由来する平均二乗偏差(RMS
D)を示した。
【0330】
(ii)結果
分子置換計算により、1個のIL−17Aホモ二量体と、結合した2個のXAB1 F
v断片とを含む二量体複合体が示された。ヒトIL−17AとのXAB1 Fv複合体の
X線精密化の結果を表10に提供し、この複合体の三次元構造を
図2に示す。それぞれの
XAB1 Fvは両方のIL−17Aサブユニットへの接触を作るが、分子間接触の大部
分(埋まった表面の約96%)は1つのIL−17Aサブユニットのみによって寄与され
る。
【0331】
【表10】
【0332】
図2は、実施例2で得られたような、ヒトIL−17AとのXAB1 Fv複合体の三
次元構造を提供する。
図2Aは、空間充填表示における2つのXAB1 Fv断片を示す
;IL−17Aホモ二量体は略画表示で示される。
図2Bは、略画表示における2つのX
AB1 Fv断片を示す;IL−17Aホモ二量体は空間充填表示で示される。XAB1
Fvの重鎖および軽鎖は、それぞれ、暗灰色および明灰色で示される。IL−17Aホ
モ二量体の一方の鎖は明灰色で示され、他方は暗灰色で示される。
【0333】
複合体の詳細な分析を実施した。プログラムCootおよびPymolを用いる結晶構
造の注意深い視覚的検査を実行し、抗体−抗原境界面に埋まったタンパク質表面の量を、
CCP4プログラムスイートのプログラムAREAIMOLを用いて算出した。抗体と抗
原の原子間の3.9Åのカットオフ距離を用いて、分子間接触を定義した。結合の概要を
以下のようにまとめることができる。XAB1の結合は対称的である;それぞれのFv断
片はIL−17Aホモ二量体上の等価なエピトープに結合する。
【0334】
それぞれのFv断片の結合は、平均1732Å
2の組み合わせた表面上に埋まっており
、30の抗体および25のIL−17Aアミノ酸残基を含んでいた。XAB1軽鎖(約5
60Å
2)の埋まった表面への寄与は、重鎖のもの(約275Å
2)よりも大きかった。
さらに、CDRH2はIL−17Aへの直接的接触を作らず、親和性成熟のための機会を
提供するにはタンパク質抗原から遠すぎると考えられた。CDRH1の寄与は1個のアミ
ノ酸側鎖のみ(Tyr32)に限られると考えられた;このCDRも、アミノ酸置換を介
する親和性成熟のための機会を提供するにはIL−17Aから遠すぎた。XAB1 CD
RH3は、IL−17Aと複数の緊密な接触を作った。しかしながら、この領域における
構造の注意深い検査は、点突然変異によりこれらの接触をさらに増強するための機会を示
すことができなかった;したがって、CDRH3は、親和性増強のための標的領域として
好適ではないと見なされた。対照的に、軽鎖CDRの検査により、親和性成熟のための複
数の機会が示された。3つの軽鎖CDRのうち、CDRL1は最も有望であると考えられ
、この観察に基づいて、本発明者らはIL−17A残基Arg124、Phe133およ
びTyr85への接触を強化する試みにおいて軽鎖の位置30〜32を無作為化すること
を提唱した。
【0335】
合理的設計による親和性成熟
上記の結果に基づいて、ホモ二量体IL−17AとのXAB1境界面が比較的小さく、
軽鎖からの優勢な寄与、CDRH2からの関与がなく、CDRH1により主に間接的な寄
与(すなわち、CDRH3の安定化による)を特徴とすることが見出された。したがって
、XAB1の重鎖は親和性成熟のための有望な機会を提供するとは考えられなかった。
【0336】
対照的に、XAB1軽鎖は、最大4個のアミノ酸残基の任意の挿入を有するアミノ酸残
基30〜32(CDRL1)、アミノ酸51〜53および56(CDRL2)ならびに最
大4個のアミノ酸残基の任意の挿入を有するアミノ酸残基92および93においていくら
かの機会を提供した。
【0337】
ホモ二量体ヒトIL−17Fに関する公開された結晶構造、およびヒト受容体IL−1
7RAとの複合体にあるホモ二量体IL−17Fの構造の利用可能性により、結晶化され
たIL−17AおよびXAB1(およびそのバリアント)と複合体にあるIL−17Aの
観察された構造に基づいて予測を行うことができた。
【0338】
IL−17FとIL−17Aとの間で予測された構造類似体(配列同一性および相同性
に基づく)を精査した。IL−17FおよびIL−17Aは、構造的類似性を担持してい
た。本発明者らは、IL−17Aが公開されたIL−17F/IL−17RA複合体につ
いて示されたもの(Ely LK et al 2009, Nat Immunol. 10:1245-51)と同じ様式でその受
容体のN末端ドメインに結合するとの仮説を立てた。
【0339】
他の種から誘導されるIL−17Aの配列と共に、ヒトIL−17AおよびIL−17
Fの既知の配列の観察された構造および比較に基づいて、本発明者らは、いくつかのさら
なる予測を行った。
【0340】
XAB1(およびXAB1により標的とされるエピトープに対する親和性が改善された
、それから誘導される抗体バリアント)は、ヒトIL−17Aに高度に特異的であると予
想された。そのような抗体は他の種に由来するIL−17Aとのいくらかの交差反応性を
保持すると仮定された(種間の高い程度の保存された配列同一性または相同性に基づく)
。しかしながら、利用可能な配列データおよび構造予測に基づいて、IL−17Aの種バ
リアントとのどの程度の交差反応性を予想することができるかは明らかではなかった。他
のインターロイキンとの構造的類似性の欠如を考慮すれば、そのような分子(ヒトまたは
他の種に由来する)との交差反応性は非常に可能性が低いと予想された。
【0341】
さらに、IL−17AとIL−17Fの配列間の差異(特に、N末端領域)により、本
開示の抗IL−17A抗体がIL−17Fに結合しないという予測が得られた。例えば、
2つの結晶構造の重ね合わせにより、立体障害がこれらの抗体とIL−17Fとの間の結
合を阻害することが示された。さらに、IL−17AFヘテロ二量体の構造への外挿によ
り、特に、N末端領域におけるそのような干渉が抗体のIL−17AFヘテロ二量体への
結合を阻害し、それによって、IL−17AFへの結合の欠如、すなわち、IL−17A
Fヘテロ二量体に関するこれらの抗体による交差反応性の欠如をもたらすことも示唆され
た。
【0342】
実施例3 親和性成熟抗体バリアントの作製
初期抗体XAB1の実際の親和性成熟は、上記で考察された理由のため、軽鎖に焦点を
当てたものであった。本研究は、3つのステップ:(i)ライブラリー作製、(ii)ラ
イブラリースクリーニング、および(iii)候補特徴付けで実行された。
【0343】
取り扱いが容易であるため、タンパク質工学研究(すなわち、親和性成熟)を、Fab
断片形式で実行した。操作の後に候補を完全なIgGに初期化して戻した。
【0344】
(i)ライブラリー作製
軽鎖の可変ドメインをコードするDNA配列を変異させて、遺伝子バリアントのライブ
ラリーを作出した。2つの異なる手法(AおよびB)を、ライブラリー作製のために用い
、2つの別々のライブラリーを提供した。
【0345】
1)方法A−エラープローンPCRによる無作為変異:
XAB1の軽鎖の可変ドメインをコードするDNA領域を、エラープローンPCRを用
いて無作為に変異させた。より詳細には、この領域を、高頻度で変異を導入するポリメラ
ーゼMutazyme IIを用いて増幅させた(さらなる詳細については、Strat
agene #200550により供給されるGeneMorph II無作為突然変異
誘発キットと共に供給される指針を参照されたい)。しかしながら、任意の好適な無作為
変異技術または戦略を用いることができる。
【0346】
次いで、XAB1の発現ベクター中に切断および貼付することにより、PCR断片バリ
アントのプールをクローニングした。本質的には、親である非変異配列を発現ベクターか
ら切出し、その場所に貼付された無作為突然変異誘発された配列で置き換えた。標準的な
分子生物学技術を用いて、これを達成した。
【0347】
この結果、様々な無作為に変異した可変ドメイン配列を含む発現ベクターバリアントの
ライブラリーが得られた。
【0348】
2)方法B−合理的設計による変異:
この手法の下では、ライブラリーの作製を、親和性成熟の先駆けとして実行された構造
分析により誘導した。特定のアミノ酸残基(特に、XAB1の軽鎖のCDR1中の)を、
上記の結晶構造から誘導されるエピトープおよびパラトープ情報に基づいて標的化した。
【0349】
結晶構造情報に基づいて選択された、3つのアミノ酸残基を完全に無作為化した。標準
的な分子生物学的手法を、構築のために用いた。
【0350】
第1に、縮重オリゴヌクレオチドを用いて、適切なCDRをコードする可変領域の断片
と、軽鎖フレームワークの第1の部分とをPCRにより増幅した。すなわち、CDRをコ
ードするオリゴヌクレオチドを、規定の位置(複数可)に様々な塩基を提供するような方
法で合成した。オリゴヌクレオチドの設計により、NNK縮重コドン(Nは4つ全ての塩
基、A、T、CおよびGを表し、KはGおよびTを表す)によるCDR中の特異的に標的
化されたアミノ酸位置の無作為化が可能になり、これらの位置で20種全部の天然アミノ
酸が可能になった。
【0351】
この第1のステップの後、第1のものと重複し、残りの部分の軽鎖をコードする第2の
断片も、PCRにより増幅した。次いで、両断片を「アセンブリ」PCRにより集合させ
、完全な可変軽鎖を作製し、「切断および貼付」様式で発現ベクター中にクローニングし
戻した。それにより、親配列を、一定範囲の合理的に変異した配列と置き換え、それによ
って特定のアミノ酸位置で、20種全部のアミノ酸を表した。
【0352】
(ii)ライブラリースクリーニング
一度、XAB1バリアントをコードする配列を含むライブラリーが作製されたら、それ
らをスクリーニングして、親XAB1配列よりも優れた特徴、例えば、IL−17Aに対
するより高い親和性を有するものを選択した。
【0353】
2つのスクリーニング技術を用いた。第1に、高効率スクリーニングを、「コロニー濾
過スクリーニング」(CFS)により行った。このアッセイにより、多数のクローンの好
都合のスクリーニングが可能になった。それはELISAスクリーニング前に陽性ヒット
を減少させ、特に、ライブラリーサイズが「方法B」におけるライブラリーサイズ(80
00のみ)と比較してはるかに大きい(>10
5)ため、無作為手法「方法A」にとって
有用であった。ELISAスクリーニングは、10
4個以下のクローンにとって好都合で
あり、より定量的な結果を与える。
【0354】
1)コロニー濾過スクリーニング(CFS):
CFSのプロトコールは、Skerra et al. 1991, Anal Biochem 196:151-155に基づくも
のであった。いくつかの適合化を行った。
【0355】
Fabバリアントライブラリーを発現する大腸菌(E.coli)を、LB寒天およびグルコ
ースを含有するペトリ皿の上、フィルター上で増殖させた。同時に、PVDF膜を標的タ
ンパク質(IL−17A)で被覆した。被覆された膜を寒天プレート上に置いた。大腸菌
(E.coli)を発現するFab断片のコロニーを含むフィルターを、膜の上に置いた。細胞
により発現されたFab断片はコロニーから拡散し、標的IL−17Aに結合した。次い
で、かくしてPVDF膜上に捕捉されたFab断片を、ウェスタン染色のためにアルカリ
ホスファターゼとコンジュゲートさせた二次抗体を用いて検出した。結合特性が改善され
たバリアントのみを選択するための条件は、参照としてXAB1を用いて以前に確立され
たものであった。
【0356】
より具体的には、大腸菌(E.coli)をライブラリーで形質転換した後、細胞を、LB寒
天+1%グルコース+対象の抗生物質を含有するペトリ皿上に置いたDurapore(
商標)膜フィルター(0.22μm GV、Millipore(登録商標)、カタログ
番号GVWP09050)上に塗布した。プレートを30℃で一晩インキュベートした。
【0357】
PVDF膜(Immobilon−P、Millipore(登録商標)、カタログ番
号IPVH08100)をメタノール中で予め湿らせ、PBS中で洗浄し、PBS中の1
μg/mlのhuIL−17A溶液で被覆した。膜を室温で一晩インキュベートした。被
覆後、膜をTris緩衝生理食塩水(TBS)+0.05%Tween(TBST)中で
2回洗浄し、5%ミルクTBST中、室温で2時間遮断した。次いで、膜をTBST中で
4回洗浄し、1mM IPTGを含む2xYT培地中に浸した。捕捉膜と呼ばれるこの膜
を、1mM IPTG+対象の抗生物質を含むLB寒天プレート上に置き、上にコロニー
を含むDurapore膜で覆った。得られるサンドイッチを30℃で4時間インキュベ
ートした。
【0358】
このインキュベーションの後、捕捉膜をTBSTで4回洗浄し、室温で1時間、5%ミ
ルクTBST中でブロッキングした。次いで、膜をTBSTで1回洗浄し、室温で1時間
、二次抗体(抗huカッパ軽鎖抗体、アルカリホスファターゼ(AP)コンジュゲート、
Sigma#A3813、2%ミルクTBST中で1:5000に希釈)と共にインキュ
ベートした。その後、膜をTBSTで4回、TBS中で1回洗浄し、基質溶液(Sigm
aFast BCIP/NBTタブレット、10ml H
2O中で1タブレット)中でイ
ンキュベートした。シグナルが予想された強度に達した時、膜を水で洗浄し、乾燥させた
。
【0359】
捕捉膜上でシグナルを展開させた後、親XAB1よりも強いシグナルを与えるコロニー
を拾い、以下に記載の2回目のELISAスクリーニングに進めさせた。
【0360】
2)ELISAスクリーニング:
CFSの後、ELISAを用いて、CFSにより選択された候補をスクリーニングした
。簡単に述べると、エラープローンPCR突然変異誘発により同定された比較的少数のバ
リアント(すなわち、ライブラリーA)について、ELISAを96穴形式で手動で行っ
た。対照的に、合理的設計(方法B)により構築されたライブラリーについては、IL−
17Aに対するその異なる結合親和性を識別し、最も高い親和性を有するクローンを同定
することができるために、より多数の改善されたクローンをELISAレベルでスクリー
ニングする必要があった。384穴プレート形式でその目的のためにELISAロボット
を用いた。しかしながら、ELISAプロトコールはそれぞれ同じであったが、唯一の相
違は試薬の量であった。
【0361】
a)細胞培養:
クローンを、最初に2xYT培地+1%グルコース+対象の抗生物質中、30℃、90
0rpmで一晩増殖させた。これらの培養物を含有するプレートを、マスタープレートと
呼んだ。次の日、マスタープレートからの培養物のアリコートを、2xYT培地+0.1
%グルコース+対象の抗生物質を含有する発現プレートに移した。これらのプレートを3
0℃、900rpmで約3時間インキュベートした。次いで、イソプロピルβ−D−1−
チオガラクトピラノシド(IPTG)溶液を0.5mMの最終濃度で添加した。プレート
を30℃、900rpmで一晩インキュベートした。
【0362】
次の日、溶解バッファー((2x)ホウ酸緩衝生理食塩水(BBS)溶液(Tekno
va#B0205)+2.5mg/mlリゾチーム+10u/mlベンゾナーゼ)を培養
物に添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした後、遮断のために12.5%
ミルクTBSTを添加した。30minインキュベートした後、細胞溶解物を2%ミルク
TBST中で1:10に希釈し、ELISAプレート中に移した。
【0363】
b)ELISA:
ELISAプレート(Nunc Maxisorp)を、1時間、1μg/mlのhu
IL−17A溶液で被覆した。プレートをTBSTで1回洗浄し、5%ミルクTBSTで
1時間遮断した。遮断後、プレートをTBSTで3回洗浄した後、希釈した細胞溶解物を
プレート上に載せ、1時間インキュベートした。その後、プレートをTBSTで3回洗浄
し、APコンジュゲート化二次抗体と共に1時間インキュベートした。
【0364】
最後にプレートをTBSTで3回洗浄した後、基質溶液(AttoPhos基質セット
、Roche#11681982001)と共にインキュベートした。全プロセスを室温
で実施した。
【0365】
上記の「古典的」ELISAに加えて、標的タンパク質に対する非常に高い親和性(ピ
コモル濃度範囲)を有するクローン間のより良好な識別のために、改変型ELISAも行
った。以下に詳述するように、「オフレート(off-rate)」ELISAおよび「競合」E
LISAを、この目的のために開発した。
【0366】
c)「オフレート」ELISA:
このアッセイのために、「古典的」ELISAプロトコールと比較した改変は、結合ス
テップ後の洗浄ステップであった(ELISAプレート中での細胞溶解物のインキュベー
ション)。「古典的」プロトコールにおいては、プレートをTBSTで3回洗浄した。洗
浄溶液を分注し、インキュベーション時間なしにすぐに吸引した。「オフレート」ELI
SAについては、プレートを少なくとも3時間で6回洗浄した。この長い洗浄は、アッセ
イのストリンジェンシーを増大させ、遅いオフレートを有するクローンを同定することが
できた。
【0367】
d)「競合」ELISA:
この改変型ELISAプロトコールは、結合ステップの後に追加のステップを含んでい
た。細胞溶解物のインキュベーション後、プレートをTBSTで3回洗浄した後、親XA
B1の溶液(2%ミルクTBST中の200nM)を室温で一晩インキュベートした。過
剰の親Fabと一緒のこの長いインキュベーションにより、「オフレート」ELISAの
場合と同様、ピコモル濃度範囲の親和性を有するクローン間のより良好な識別をもたらす
、遅いオフレートを有するクローンを同定することができた。残りのプロトコールは、「
古典的」ELISAプロトコールと同様であった。ライブラリーに由来するFabバリア
ントは、競合のために用いられた親XAB1 Fabではなく、重鎖のC末端にFlag
タグを有していたため、この場合に用いられた二次抗体は、APコンジュゲート化抗Fl
agタグ抗体であった。
【0368】
(iii)候補特徴付け
スクリーニング中に同定されたヒットを、さらなる物理化学的特徴付けのために、IL
−17Aに結合する高い親和性を確認するため、および/またはさらなるアッセイにおけ
る他の有利な特性のため、より大規模で生成した。これらのものは以下により詳細に記載
される。
【0369】
(iv)結果:XAB1の親和性成熟後の候補のスクリーニングおよび初期特徴付け
1)無作為突然変異誘発手法(方法A):
エラープローンPCRライブラリー作製後の変異率は、遺伝子あたり2〜3個の変異で
ピークに達することがわかった。約3x10
4個のクローンを、コロニー濾過スクリーニ
ングによりスクリーニングし、いくつかの94のクローンを改善されたものと同定し、結
合、オフレートおよび競合ELISAに進行させた。配列決定の結果と組み合わせたEL
ISAデータは、改善のための3つの潜在的なホットスポット、LCDR1中の位置28
のGlyからVal(G28V);フレームワーク3中の位置66のGlyからVal(
G66V)またはSer(G66S);LCDR3中のAsn92からAsp(N92D
)(データは示さないが、位置はXAB2、VL、すなわち、配列番号25のものと同一
である)を強調する6つの候補の同定をもたらした。
【0370】
用いられた大腸菌(E.coli)株はリードスルーを可能にするアンバーサプレッサーであ
るため、停止コドンは1つのクローンにおいて観察されたが、関連していなかった。得ら
れたデータに基づいて、G28VおよびG66V変異が最良の改善を引き起こすと考えら
れた。記載の2つの点突然変異を担持するXAB1のバリアントを、標準的な分子生物学
技術によって作製した。潜在的な翻訳後脱アミド化部位(N92、S93)の除去が有益
であるかどうかを試験するために、それに加えてN92D置換を有するさらなるバリアン
トをクローニングした。より詳細なプロファイリングを、これらの2つのバリアント、特
に、XAB2を最終的にもたらすXAB_A2と呼ばれる三重変異バリアントに対して行
った。XAB2においては、Kabatの定義によるアミノ酸番号1〜23はフレームワ
ーク1であり、アミノ酸番号24〜34(Kabat)はLCDR1であり、アミノ酸番
号35〜49(Kabat)はフレームワーク2であり、アミノ酸50〜56(Kaba
t)はLCDR2であり、アミノ酸57〜88(Kabat)はフレームワーク3であり
、アミノ酸89〜97(Kabat)はLCDR3であり、アミノ酸98〜107(Ka
bat)はフレームワーク4である。本開示の実施形態による他のVL配列の同じ細分も
適用される。
【0371】
かくして、上記のG66V置換はフレームワーク領域中にあり、外側ループと呼ばれる
。このフレームワーク領域は、いくつかの場合、結合に寄与することができる。利用可能
な構造情報に基づいて、この変異が実際にIL−17Aの領域と相互作用することができ
、結晶構造から分解することができないが、外側ループに近接し得ることが回顧的に示唆
された。
【0372】
2)合理的突然変異誘発手法(方法B):
無作為化された位置でのアミノ酸分布のスナップショットを、32の無作為に拾ったメ
ンバーの配列決定により作成した。有意な偏りはなかったが、この少数の配列を用いた場
合、統計処理を行うことはできない。8000の理論的ライブラリーサイズをオーバーサ
ンプリングした約4x10
4個のクローンをスクリーニングした。多数のヒットが同定さ
れ、2630個のクローンをELISAスクリーニングに進行させた。結合、オフレート
および競合ELISAを実施し、最も高い改善を示した60個のクローンを配列決定した
。これらの60個のクローンの中で、22個のユニークな配列が見出されたが、その結果
を表11にまとめる。
【0373】
【表11】
【0374】
22個のユニークなクローンのうち、6個を、0.5Lスケールの標準的な大腸菌(E.
coli)発現ならびにIMAC(Ni−NTA)およびSECによる2ステップの精製のた
めに選択した。次いで、精製されたFabを用いて、ELISAにより結合の改善を確認
した。
【0375】
XAB1と比較した、選択および精製されたFab候補のELISAの結果を
図3に示
し、ここでグラフ番号は以下のような候補指定に対応する:1はMB440である;2は
MB464である;3はMB468である;4はMB444である;5はMB435であ
る;6はMB463である;7はXAB1である。
【0376】
図3Aは、正規化されたシグナルとFab濃度(M)を示すグラフである。全ての選択
されたクローンがXAB1よりも高いシグナルをもたらすことがわかる。
図3Bは、正規
化された残存シグナルと洗浄インキュベーション時間(時間)を示すグラフである。全て
の選択されたクローンが、XAB1よりも高いシグナルをもたらす。
図3Cは、正規化さ
れたシグナルとFab競合剤濃度(M)を示すグラフである。再度、全ての選択されたク
ローンがXAB1よりも高いシグナルをもたらすことがわかる。
【0377】
実施例4 潜在的な翻訳後脱アミド化部位の標的化
本発明者らは、アミノ酸モチーフ、アスパラギン、次いでグリシン(NG)、またはよ
り低い程度で、セリン(NS)の場合も、翻訳後脱アミド化を受けやすいと仮定した。そ
のようなモチーフは抗体XAB1のL−CDR2(位置56/57)およびL−CDR3
(92/93)中に存在する。4つのIgGバリアントを作製して、結合および活性特性
に影響することなくNG部位を除去することができるかどうかを試験した。これらの4つ
の点突然変異バリアントを標準的な分子生物学手順によりクローニングし、100mlス
ケールでHEK細胞の標準的な一過的トランスフェクションにより生成し、プロテインA
カラムにより精製した。
【0378】
精製されたIgGバリアントをin vitro中和アッセイ(例えば、実施例12お
よび13に記載のような)において分析して、その活性を親XAB1 IgGと比較した
。その結果、これらの4つのバリアントのうち、3つの活性が低下したことが示された。
しかし、候補XAB_B12(変異N56Q)は、親XAB1と比較して活性を保持して
いた。
【0379】
【表12】
【0380】
かくして最も好適な置換を同定したが、それは親和性成熟プロセス中に同定された最も
有望なヒットに導入され、XAB2(XAB_A2 N56Q)、XAB3(MB468
N56Q)、XAB4(MB435 N56Q)が得られた。それらをHEK細胞の標
準的な一過的トランスフェクションにより生成し、XAB5(MB435)と共にプロテ
インAカラムにより精製したところ、NG部位を依然として担持していた。
【0381】
NGモチーフはXAB2、XAB3、XAB4について除去(N56Q)されたが、X
AB5には依然として存在していた。無作為親和性成熟手法中に見出されたように、L−
CDR3中のNSモチーフはXAB2において除去された(N92D)。したがって、潜
在的な部位の脱アミド化に対する感受性を試験するための最適なセットのバリアントが利
用可能であった。
【0382】
4つの精製された候補をpH8のバッファー中に希釈し、40℃でインキュベートして
、脱アミド化反応を起こさせた。いくつかの時点でアリコートを取得し、当業者には周知
の原理に従う陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)により脱アミド化の程度を決定
し、細胞に基づくアッセイによりin vitroでの中和活性を決定した(例えば、実
施例12および13に記載のように)。
【0383】
CEXの結果により、任意のIgGについて予想された通り、おそらくは抗体フレーム
ワーク中の翻訳後改変部位のため、経時的な酸性バリアントの百分率の増加が示されたが
、増加の程度は、他の候補よりもXAB5についてより高かった、すなわち、1週間後で
72%対46%および4週間後で94%対83%であった。最後に、in vitro中
和活性アッセイの結果はCEXの結果と相関し、XAB5は強制的な脱アミド化条件中、
4週間のインキュベーション後に活性を失ったことを示している。当業者には周知のサイ
ズ排除クロマトグラフィー−多角度光散乱法(SEC−MALS)を用いて、試料中の凝
集レベルをモニタリングした。
【0384】
そのデータを表13にまとめる。
【0385】
【表13】
【0386】
これらのデータは、抗体活性に対する効果を有していた潜在的な翻訳後脱アミド化部位
の除去の成功を示していた。翻訳後脱アミド化は生成または保存の間に起こり、抗体活性
に影響し得るため、XAB2、XAB3およびXAB4はしたがって、XAB1よりも均
質な生成物を達成する可能性があるため、これは有利である。
【0387】
実施例5 親和性成熟により誘導される抗体バリアントのX線分析:XAB2
簡単に述べると、XAB2 Fvをクローニングし、当業者には周知の原理に従って、
重鎖上にC末端ヘキサヒスチジンタグを有し、軽鎖上にC末端Strepタグを有する大
腸菌(E.coli)TGf1−中で発現させた。組換えタンパク質をNi−キレートクロマト
グラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SPX−75)により精製した。
【0388】
次いで、ヒトIL−17AとのXAB2 Fv断片複合体を、標準的な方法を用いて調
製した。簡単に述べると、ヒトIL−17A(1.5mg)を、過剰のXAB2 Fv(
3.7mg)と混合し、複合体を、10mM TRIS pH7.4、25mM NaC
l中でのS100サイズ排除クロマトグラフィー上で泳動した。次いで、タンパク質複合
体を限外濾過により26.3mg/mlまで濃縮し、結晶化した。
【0389】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロッ
プ中での蒸気拡散法を用いて、SD2 96穴プレート中、19℃で成長させた。タンパ
ク質ストックを、0.2M酢酸カルシウム、20%PEG3,350を含有する結晶化バ
ッファーと1:1で混合した。総液滴サイズは0.4μlであった。X線データ収集の前
に、1つの結晶を、30%PEG3,350、30%グリセロールを含む結晶化バッファ
ーの1:1混合物中に簡単に移した後、液体窒素中で簡易冷却した。
【0390】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡
単に述べると、2.0Å解像度のX線データを、Swiss Light Source
、ビームラインX06DAで、MAR225 CCD検出器、1.0000ÅのX線照射
を用いて収集した。合計で、それぞれ0.5°の振動の360の画像を、190mmの結
晶−検出器距離で記録し、XDSソフトウェアパッケージを用いてプロセッシングした。
結晶は、セルパラメータa=184.72Å、b=55.56Å、c=71.11Å、α
=β=γ=90°を有する空間群P2
12
12に属していた。2.0Å解像度でのR−s
ymは5.2%であり、データ完全性は100.0%であった。
【0391】
XAB2 Fv複合体の結晶はXAB1 Fv複合体の結晶と高度に同形であったため
(実施例2)、後者の構造を、プログラムCNXを用いる結晶学的精密化の初期実行のた
めの入力モデルとして用いた。反復モデルの補正および精密化を、さらなる有意な改善を
結晶学的モデルに対して行うことができなくなるまで、Coot(Crystallog
raphic Object−Oriented Toolkit)およびCNX(Cr
ystallography & NMR eXplorer)バージョン2002を用
いて実施した。全てのデータに関する最終的なR−およびR−フリーは、それぞれ、0.
214および0.259であった。最終的な精密化されたモデルは、それぞれ、0.00
5Åおよび0.9°の理想的な結合長および結合角に由来する平均二乗偏差(RMSD)
を示した。
【0392】
結果
ヒトIL−17AとのXAB2 Fv複合体のX線精密化の結果を表14に提供し、こ
の複合体の三次元構造を
図4に示す。X線結晶分析により、バリアント抗体XAB2が標
的特異性を保持し、親XAB1抗体と本質的に同じエピトープに対する高い親和性で結合
することが確認された。しかしながら、XAB1複合体構造においては、Gly66を含
む軽鎖ループは、この残基をバリンに変異させた場合、もはや可能ではないコンフォメー
ションを採用する。結果として、XAB2複合体において、Gly66のバリン変異(G
66V)は、ループに新しいコンフォメーションを採用させ、バリン側鎖はIL−17A
のIle51への疎水性接触を作る(
図5)。2つのさらなるIL−17A残基、Pro
42およびArg43は、この結晶構造において見えるようになる(規則的)。これらの
抗原残基は、XAB2抗体とのさらなる結合相互作用、特に、Val28との疎水性接触
を作る(
図5)。
【0393】
【表14】
【0394】
図4は、ヒトIL−17AとのXAB2 Fv複合体の三次元構造を提供する。
図4A
は、空間充填表示における2つのXAB2 Fvを示し、IL−17Aホモ二量体を略画
表示で示す。
図4Bは略画表示における2つのXAB2 Fv断片を示し、IL−17A
ホモ二量体を空間充填表示で示す。XAB2 Fvの重鎖および軽鎖を、それぞれ、暗灰
色および明灰色で示す。IL−17Aホモ二量体の一方の鎖を明灰色で示し、他方を暗灰
色で示す。
【0395】
図5は、グリシンからバリンへの変異(それぞれ、G28VおよびG66V)を担持す
る、抗体L−CDR1および外側ループ領域の詳細図としてのヒトIL−17AとのXA
B2 Fv複合体の三次元構造を提供する。G66V変異は、外側ループのコンフォメー
ション中の変化、ならびにIL−17A残基Pro42、Arg43およびIle51と
のさらなる抗体−抗原接触をもたらす。XAB2 Fvを明灰色の略画で示し、ヒトIL
−17Aホモ二量体を灰色のより暗い影で示す。Ile51はPro42およびArg4
3と同じIL−17Aサブユニットに属さない。
【0396】
実施例6 親和性成熟により誘導される抗体バリアントのX線分析:XAB5
XAB5 Fvをクローニングし、重鎖上にC末端ヘキサヒスチジンタグを有し、軽鎖
上にC末端Strepタグを有する大腸菌(E.coli)TGf1−中で発現させた。組換え
タンパク質を、PBSバッファー中での、Ni−キレートクロマトグラフィー、次いで、
SPX−75カラム上でのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。LC−MS分
析により、重鎖に関する予想された質量(13703.4Da)、および2つの形態の軽
鎖:全長(115aa;12627.3Da;約27%)およびトランケートされたSt
repタグ(A1〜Q112;12222.8Da;約73%)の存在が示された。
【0397】
次いで、ヒトIL−17AとのXAB5 Fv断片複合体を、標準的な方法を用いて調
製した。簡単に述べると、ヒトIL−17A(1.4mg)を、過剰のXAB5 Fv(
3.4mg)と混合し、複合体を10mM TRIS pH7.4、25mM NaCl
中でのS100サイズ排除クロマトグラフィー上で泳動した。次いで、タンパク質複合体
を限外濾過により16.5mg/mlまで濃縮し、結晶化した。
【0398】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロッ
プ中での蒸気拡散法を用いて、SD2 96穴プレート中、19℃で成長させた。タンパ
ク質ストックを、15%PEG5,000MME、0.1M MES pH6.5、0.
2M硫酸アンモニウムを含有する結晶化バッファーと1:1で混合した。総液滴サイズは
0.4μlであった。X線データ収集の前に、1つの結晶を、20%PEG5,000M
ME、40%グリセロールを含む結晶化バッファーの1:1混合物中に簡単に移した後、
液体窒素中で簡易冷却した。
【0399】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡
単に述べると、3.1Å解像度のX線データを、Swiss Light Source
、ビームラインX10SAで、Pilatus検出器、1.00000ÅのX線照射を用
いて収集した。合計で、それぞれ0.25°の振動の720の画像を、520mmの結晶
−検出器距離で記録し、XDSソフトウェアパッケージを用いてプロセッシングした。結
晶は、セルパラメータa=55.37Å、b=84.08Å、c=156.35Å、α=
β=γ=90°を有する空間群C222
1に属していた。3.1Å解像度でのR−sym
は8.9%であり、データ完全性は99.7%であった。
【0400】
構造を、以前に決定されたXAB2 Fv複合体から誘導された検索モデルを用いて、
プログラムPhaserを用いる分子置換により決定した。反復モデルの補正および精密
化を、さらなる有意な改善を結晶モデルに対して行うことができなくなるまで、Coot
(Crystallographic Object−Oriented Toolki
t)およびCNX(Crystallography & NMR eXplorer)
バージョン2002を用いて実施した。全てのデータに関する最終的なR−およびR−フ
リーは、それぞれ、0.222および0.305であった。最終的な精密化されたモデル
は、それぞれ、0.008Åおよび1.2°の理想的な結合長および結合角に由来する平
均二乗偏差(RMSD)を示した。
【0401】
結果
ヒトIL−17AとのXAB5 Fv複合体のX線精密化の結果を表15に提供し、こ
の複合体の三次元構造を
図6に示す。この結晶構造において、XAB5 Fv複合体は正
確な結晶学的2倍対称を有する:結晶の非対称単位は二量体複合体の全体の半分しか含有
しない。XAB5 Fvは両方のIL−17Aサブユニットとの接触を作るが、分子間接
触の大部分は一方のサブユニットのみに対するものである(XAB5 Fvにより埋めら
れたIL−17A表面の約90%は一方のIL−17Aサブユニットによって寄与される
)。X線結晶分析により、バリアント抗体XAB5が標的特異性を保持し、親XAB1抗
体と本質的に同じエピトープに高い親和性で結合することが確認された。しかしながら、
XAB5複合体構造においては、軽鎖CDRL1はヒトIL−17Aへの結合が増強され
た3つの点突然変異を担持する。XAB5軽鎖のTrp31はIL−17AのTyr85
、より低い程度で、IL−17AのPhe133との強い疎水性/芳香族相互作用に関与
する。XAB5軽鎖のAsn30は、IL−17AのPro130の主鎖カルボニルにH
結合を提供し、Leu49(同じIL−17Aサブユニット)およびVal45(他のI
L−17Aサブユニット)とのvan der Waals接触にある。XAB5軽鎖の
Glu32は、分子内H結合相互作用を介してCDRL1ループを安定化する。さらに、
Glu32は、IL−17AのArg124との好ましい静電相互作用を作るが、「ヘッ
ドトゥヘッド」の塩架橋相互作用には関与しない(
図7)。
【0402】
【表15】
【0403】
図6は、ヒトIL−17AとのXAB5 Fv複合体の三次元構造を提供する。正確な
結晶学的2倍対称を有する完全ホモ二量体複合体をここに示す。
図6Aは空間充填表示に
おける2つのXAB5 Fv断片を示し、IL−17Aホモ二量体を略画表示で示す。図
6Bは略画表示における2つのXAB5 Fv断片を示し、IL−17Aホモ二量体を空
間充填表示で示す。XAB5 Fvの重鎖および軽鎖を、それぞれ、暗灰色および明灰色
で示す。IL−17Aホモ二量体の一方の鎖を明灰色で示し、他方を暗灰色で示す。
【0404】
図7は、ヒトIL−17AとのXAB5 Fv複合体の三次元構造を提供する。構造誘
導性バイアスライブラリー手法により見出された3つの変異を担持する抗体L−CDR1
の詳細図:Asn30、Trp31およびGlu32。これらのXAB5側鎖は、抗原ヒ
トIL−17A、特に、IL−17A残基Tyr85、Phe133、Arg124、P
ro130、Leu49(全て同じIL−17Aサブユニットに由来する)およびVal
45(他のIL−17Aサブユニットに由来する)に対する新しい結合相互作用に寄与す
る。
【0405】
実施例7 親和性成熟により誘導される抗体バリアントのX線分析:XAB4
XAB4 Fvをクローニングし、重鎖上のC末端ヘキサヒスチジンタグを有し、軽鎖
上のC末端Strepタグを有する大腸菌(E.coli)TG1細胞中で発現させた。組換え
タンパク質を、Ni−キレートクロマトグラフィーにより精製した。
【0406】
次いで、ヒトIL−17AとのXAB4 Fv断片複合体を、標準的な方法を用いて調
製した。簡単に述べると、ヒトIL−17A(0.5mg)を過剰のXAB4 Fv(1
.2mg)と混合し、複合体を、10mM TRIS pH7.4、25mM NaCl
中でのSPX−75サイズ排除クロマトグラフィー上で泳動した。次いで、タンパク質複
合体を限外濾過により6.9mg/mlまで濃縮し、結晶化した。
【0407】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロッ
プ中での蒸気拡散法を用いて、VDX 24穴プレート中、19℃で成長させた。タンパ
ク質ストックを、15%PEG5,000MME、0.1M MES pH6.5、0.
2M硫酸アンモニウムを含有する結晶化バッファーと2:1で混合した。総液滴サイズは
3.0μlであった。X線データ収集の前に、1つの結晶を、25%PEG5,000M
ME、20%グリセロールを含む結晶化バッファーの1:1混合物中に簡単に移した後、
液体窒素中で簡易冷却した。
【0408】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡
単に述べると、3.15Å解像度のX線データを、Swiss Light Sourc
e、ビームラインX10SAで、Pilatus検出器、0.99984ÅのX線照射を
用いて収集した。合計で、それぞれ0.25°の振動の720の画像を、500mmの結
晶−検出器距離で記録し、XDSソフトウェアパッケージを用いてプロセッシングした。
結晶は、セルパラメータa=55.76Å、b=87.11Å、c=156.31Å、α
=β=γ=90°を有する空間群C222
1に属していた。3.15Å解像度でのR−s
ymは5.5%であり、データ完全性は99.9%であった。
【0409】
XAB4 Fv複合体の結晶はXAB5 Fv複合体の結晶と高度に同形であったため
(実施例6)、後者の構造を、プログラムPhaserを用いる分子置換により構造決定
のための入力モデルとして用いた。反復モデルの補正および精密化を、さらなる有意な改
善を結晶学的モデルに対して行うことができなくなるまで、Coot(Crystall
ographic Object−Oriented Toolkit)およびAuto
busterバージョン1.11.2(Busterバージョン2.11.2)を用いて
実施した。全てのデータに関する最終的なR−およびR−フリーは、それぞれ、0.19
7および0.253であった。最終的な精密化されたモデルは、それぞれ、0.009Å
および1.0°の理想的な結合長および結合角に由来する平均二乗偏差(RMSD)を示
した。
【0410】
(i)結果
ヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体のX線精密化の結果を表16に提供し、こ
の複合体の三次元構造を
図8に示す。この結晶構造において、XAB5複合体におけると
同様(実施例6)、XAB4 Fv複合体は正確な結晶学的2倍対称を有する:結晶の非
対称単位は二量体複合体の全体の半分しか含有しない。XAB4 Fvは両方のIL−1
7Aサブユニットとの接触を作るが、分子間接触の大部分は一方のサブユニットのみに対
するものである(XAB4 Fvにより埋められたIL−17A表面の93%は一方のサ
ブユニットによって寄与される)。X線結晶分析により、バリアント抗体XAB4が標的
特異性を保持し、親XAB1抗体と本質的に同じエピトープに高い親和性で結合すること
が確認された。しかしながら、XAB4複合体構造においては、XAB5複合体構造にお
けると同様、軽鎖CDRL1はヒトIL−17Aへの結合が増強された3つの点突然変異
を担持する。XAB5複合体について既に記載された通り(実施例6)、XAB4のTr
p31はIL−17AのTyr85、より低い程度で、IL−17AのPhe133との
強い疎水性/芳香族相互作用に関与する。XAB4軽鎖のAsn30は、IL−17Aの
Pro130の主鎖カルボニルにH結合を提供し、Leu49(同じIL−17Aサブユ
ニット)およびVal45(他のIL−17Aサブユニット)とのvan der Wa
als接触にある。XAB4軽鎖のGlu32は、分子内H結合相互作用を介してCDR
L1ループを安定化する。さらに、Glu32は、IL−17AのArg124との好ま
しい静電相互作用を作るが、「ヘッドトゥヘッド」の塩架橋相互作用には関与しない(図
9)。XAB4はまた、潜在的な脱アミド化部位を除去するように設計されたAsnから
Glnへの変異の結果として、軽鎖の位置56においてXAB1と異なる。X線分析によ
り、XAB4のGln56がタンパク質抗原残基Leu76およびTrp90に対する接
触を作り、Tyr67およびSer64の溶媒接近性を低下させることが示される(
図1
0)。
【0411】
【表16】
【0412】
図8は、ヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体の三次元構造を提供する。
図8A
は空間充填表示における2つのXAB4 Fv断片を示し、IL−17Aホモ二量体を略
画表示で示す。
図8Bは略画表示における2つのXAB4 Fv断片を示し、IL−17
Aホモ二量体を空間充填表示で示す。XAB4 Fvの重鎖および軽鎖を、それぞれ暗灰
色および明灰色で示す。IL−17Aホモ二量体の一方の鎖を明灰色で示し、他方を暗灰
色で示す。
【0413】
図9は、構造誘導性バイアスライブラリー手法により見出された3つの変異を担持する
抗体L−CDR1の詳細図としての、ヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体の三次
元構造を提供する:Asn30、Trp31およびGlu32。これらのXAB4側鎖は
、抗原ヒトIL−17A、特に、IL−17A残基Tyr85、Phe133、Arg1
24、Pro130、Leu49(全て同じIL−17Aサブユニットに由来する)およ
びVal45(他のIL−17Aサブユニットに由来する)に対する新しい結合相互作用
に寄与する。
【0414】
図10は、Asn56からGlnへの変異を示す抗体L−CDR2の詳細図としてのヒ
トIL−17AとのXAB4 Fv複合体の三次元構造を提供する。このXAB4側鎖は
、IL−17A残基Trp90およびLeu76への結合接触に寄与し、Tyr67およ
びSer64(全て同じIL−17Aサブユニットに由来する)の溶媒接近性を低下させ
る。
【0415】
まとめると、X線結晶分析により、さらなる分析のために選択されたバリアント抗体が
、その標的特異性を保持し、親XAB1抗体と本質的に同じエピトープに高い親和性で結
合することが確認された。さらなる、または改善された結合接触の結果として、それぞれ
のバリアント抗体とIL−17Aとのより緊密な結合が観察された(以下の表17を参照
されたい)。
【0416】
バリアント抗体のさらなる特徴付けを、以下に記載のように行った。
【0417】
【表17】
【0418】
実施例8 Biacore(商標)により測定される親和性測定および交差反応性
動的結合パラメータの決定を、光学バイオセンサBiacore(商標)T200また
はT100(http://www.biacore.com)を用いる表面プラズモン共鳴測定により達成した
。この技術は、リガンドの受容体への結合(k
a)および解離(k
d)に関する顕微鏡的
速度定数の標識を用いない決定を可能にする。したがって、それは抗体−抗原相互作用を
特徴付けるのに特に適している。
【0419】
抗体のBiacore(商標)チップ表面への間接的結合を、固定化バッファー(10
mM酢酸ナトリウムpH5.0)中の25μg/mlの抗ヒトIg抗体(GE Heal
thcare Bio−Sciences AB;カタログ番号BR−1008−39)
により、または固定化バッファー(10mM酢酸ナトリウムpH5.0もしくはpH4.
0)中の20μg/mlのプロテインA(RepliGen:rPA−50)により行っ
た。
【0420】
抗体を、ブランクバッファー中で1.00または1.25μg/mlの最終濃度に希釈
した。
【0421】
XAB4またはXAB1の解離定数の決定のための親和性測定を、間接的カップリング
/結合法(上記を参照されたい)を用いて、組換えhuIL−17A(配列番号78、例
えば、0.14〜8.8nMの2倍増加濃度)、組換えhuIL−17A/Fヘテロ二量
体(例えば、0.13〜8nMの2倍増加濃度)、組換えhuIL−17F(配列番号7
7;例えば、7.8〜500nMの2倍増加濃度)、カニクイザルIL−17A(配列番
号79;例えば、0.63〜40nMの2倍増加濃度)、アカゲザルIL−17A(配列
番号82;例えば、1.6〜100nMの2倍増加濃度)、マーモセットIL−17A(
配列番号82;例えば、0.63〜40nMの2倍増加濃度)、組換えmIL−17A(
配列番号83;例えば、0.78〜50nMの2倍増加濃度)、組換えmIL−17A/
F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号5390−IL;例えば、1.2
5〜40nMの2倍増加濃度)、ラットIL−17A(配列番号85;例えば、0.78
〜50nMの2倍増加濃度)について実施し、表面を10mMグリシンpH1.75また
はMgCl
2(3M)を用いて再生した。1つのチップ表面を被覆し、結合能力を有意に
喪失させることなく再使用した。K
Dより下で開始し、K
Dより10倍高い濃度で終わる
ようにリガンド濃度を選択した。
【0422】
類似するが同一ではない条件を用いて、XAB2およびXAB3の親和性を測定した。
【0423】
動的痕跡を、Biacore(商標)T200 Control Softwareバ
ージョン1.0を用いて評価した。増加する濃度と共にこれらの痕跡の完全なセットを一
緒に取り、ランと呼ぶ。2つのゼロ濃度試料(ブランクラン)をそれぞれの分析物濃度シ
リーズに含有させ、データ評価中の二重参照を可能にした。
【0424】
結果
抗IL−17抗体XAB4、XAB1、XAB2およびXAB3の、ヒト、カニクイザ
ル、マーモセット、アカゲザル、マウスおよびラットIL−17A、ヒトおよびマウスI
L−17A/Fヘテロ二量体ならびにヒトIL−17Fへの結合を、Biacore(商
標)技術を用いる表面プラズモン共鳴により決定した。結合(k
a)および解離(k
d)
の動的速度定数、ならびに解離平衡定数(K
D)を算出した。
【0425】
XAB4の親和性データを表18に示し、XAB1の親和性データを表19に示し、X
AB2の親和性データを表20に示し、XAB3の親和性データを表21に示す。XAB
1、XAB2およびXAB3の親和性成熟は、ヒト、カニクイザル、マウスおよびラット
IL−17Aに対する親和性を増加させた。
【0426】
【表18】
【0427】
【表19】
【0428】
【表20】
【0429】
【表21】
【0430】
XAB2、XAB3およびXAB5の親和性および動的速度定数は、XAB4について
観察されるものと同等である。
【0431】
実施例9 ELISAにおけるIL−17Aおよび他のファミリーメンバーへの結合
異なる抗原上での対象の抗体の滴定を実行した。簡単に述べると、ELISAマイクロ
タイタープレート(Nunc ImmunoプレートMaxiSorp:Invitro
gen、カタログ番号4−39454A)のウェルを、CaおよびMgを含まないリン酸
緩衝生理食塩水(PBS)(10x;Invitrogenカタログ番号14200−0
83)0.02%NaN
3(Sigmaカタログ番号S−8032)中の1μg/mlの
組換えhuIL−17A(配列番号76;1.8mg/ml)、組換えhuIL−17A
/F(0.59mg/ml)、組換えhuIL−17F(配列番号77;1.8mg/m
l)、組換えhuIL−17B(R&D Systems(登録商標)カタログ番号12
48IB/CF)、組換えhuIL−17C(R&D Systems(登録商標)カタ
ログ番号1234IL/CF)、組換えhuIL−17D(R&D Systems(登
録商標)カタログ番号1504IL/CF)、組換えhuIL−17E(R&D Sys
tems(登録商標)カタログ番号1258−IL/CF)、組換えcynoIL−17
A(配列番号79;0.21mg/ml)、組換えcynoIL−17F(配列番号80
;1.525mg/ml)、組換えmIL−17A(配列番号83;2.8mg/ml)
、組換えmIL−17A/F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号539
0−IL)、組換えmIL−17F(配列番号84;0.2mg/ml)および組換えr
atIL−17A(配列番号85;3.8mg/ml)(100μl/ウェル)で被覆し
、4℃で一晩インキュベートした。
【0432】
次の日、マイクロタイタープレートを300μlのPBS/2%BSA(画分V;Ro
cheカタログ番号10735094001)/0.02%NaN
3で37℃で1h、遮
断した。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20(Sigmaカタログ番
号P7949)/0.02%NaN
3で4回洗浄した。XAB4またはXAB1を、室温
で3h、3組のウェル(100μl/ウェル)中に1μg/mlで添加した。
【0433】
プレートへの抗原の被覆を検証するために、対照抗体、特に、マウスmAb抗huIL
−17F(Novartis、5μg/ml)、ヤギ抗huIL−17B(R&D Sy
stems(登録商標)カタログ番号AF1248;10μg/ml)、マウスmAb抗
huIL−17C(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB1234;
10μg/ml)、ヤギ抗huIL−17D(R&D Systems(登録商標)カタ
ログ番号AF1504;10μg/ml)、マウスmAb抗huIL−17E(R&D
Systems(登録商標)カタログ番号MAB1258;10μg/ml)、マウス抗
mIL−17Aまたは抗mIL−17A/F(Novartis;1μg/ml)、およ
びラット抗mIL−17F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB2
057;1μg/ml)(PBS、0.02%NaN
3中100μl/ウェル、RTで3
h)を用いた。
【0434】
次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaN
3で4回洗
浄した。次いで、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Si
gmaカタログ番号A9544)を、1/20000の希釈率の試験抗体(100μl/
ウェル)をRTで2h30minにわたって受けたウェルに添加した。マウスmAbを受
けたこのウェルに、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG抗体(
Sigmaカタログ番号A7434)を1/10000の希釈率(100μl/ウェル)
でRTで2h30minにわたって添加した。アルカリホスファターゼコンジュゲート化
マウス抗ヤギIgG抗体(Sigmaカタログ番号A8062)を、1/50000の希
釈率(100μl/ウェル)でRTで2h30minにわたってヤギ抗体に添加した。次
いで、プレートを4回洗浄し、ジエタノールアミンバッファーpH9.8に溶解し、1m
g/mlの最終濃度にした100μlの基質(p−ニトロフェニルリン酸錠剤;Sigm
a;5mgカタログ番号N9389;20mgカタログ番号N2765)を各ウェルに添
加した。
【0435】
プレートを、405および490nmのフィルターを用いてSpectra Max
M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)中で30min
後に読取った。値は3回の値の平均±SEMである。
【0436】
結果
これらの試験は、XAB4およびXAB1がヒトおよびマウスIL−17A、ならびに
ヒトおよびマウスIL−17A/Fに結合することができることを示す。さらに、XAB
4がカニクイザルおよびラットIL−17Aに結合することができることが示される。ヒ
ト、カニクイザルおよびマウスIL−17Fへの結合ならびに他のヒトファミリーメンバ
ー(IL−17B、IL−17C、IL−17DおよびIL−17E)への結合は、これ
らの実験条件下では検出されなかった。
【0437】
【表22】
【0438】
実施例10 ELISAによる他のヒト、マウスおよびラットインターロイキンとの交差
反応性
別のセットの実験において、選択されたヒト、マウスまたはラットサイトカインに対す
る本開示の抗体の交差反応性を評価した。
【0439】
ELISAマイクロタイタープレート(Nunc ImmunoプレートMaxiSo
rp:Invitrogenカタログ番号4−39454A)の3組のウェルを、Caお
よびMgを含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(10x;Invitrogenカ
タログ番号14200−083)0.02%NaN
3(Sigmaカタログ番号S−80
32)中、0.5μg/mlで被覆した組換えmIL−6、組換えmIL−12および組
換えmTNFαを除いて、1μg/mlで100μl/ウェルの下記サイトカイン:組換
えhuIL1β(Novartis)、組換えhuIL−3(R&D Systems(
登録商標)カタログ番号203−IL/CF)、組換えhuIL−4(R&D Syst
ems(登録商標)カタログ番号204−IL/CF)、組換えhuIL−6(R&D
Systems(登録商標)カタログ番号206−IL−1010/CF)、組換えhu
IL−8(R&D Systems(登録商標)カタログ番号208−IL−010/C
F)、組換えhuIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号219
−IL−005/CF)、組換えhuIL−13(Novartis)、組換えhuIL
−17A(配列番号76)、組換えhuIL−17A/F、組換えhuIL−17F(配
列番号77)、組換えhuIL−18(MBLカタログ番号B003−5)、組換えhu
IL−20(Novartis)、組換えhuIL−23(R&D Systems(登
録商標)カタログ番号1290−IL−010/CF)、組換えhuIFNγ(Roch
e)、組換えhuTNFα(Novartis)、組換えhuEGF(Sigmaカタロ
グ番号E9644.)、組換えhuTGFβ2(Novartis)、組換えmIL−1
β(R&D Systems(登録商標)カタログ番号401−ML)、組換えmIL−
2(R&D Systems(登録商標)402−ML−020/CF)、組換えmIL
−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号406−ML−010/CF)
、組換えmIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号419−ML
−010/CF)、組換えmIL−17A(配列番号83)、組換えmIL−17A/F
(R&D Systems(登録商標)カタログ番号5390−IL)、組換えmIL−
17F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号2057−IL/CF)、組
換えmIL−18(MBLカタログ番号B004−5)、組換えmIL−23(R&D
Systems(登録商標)カタログ番号1887−ML)、組換えmIFN−γ(R&
D Systems(登録商標)カタログ番号485−MT)、組換えmTNFα(R&
D Systems(登録商標)カタログ番号410−MT)、組換えratIL−4(
R&D Systems(登録商標)カタログ番号504−RL/CF)、組換えrat
IL−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号506−RL−010)、
組換えratIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号1760−
RL/CF)、組換えratIL−17A(配列番号85)、組換えratIL−23(
R&D Systems(登録商標)カタログ番号3136−RL−010/CF)、組
換えratTNFα(R&D Systems(登録商標)カタログ番号510−RT/
CF)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。
【0440】
次の日、マイクロタイタープレートを300μlのPBS/2%BSA(画分V;Ro
cheカタログ番号10735094001)/0.02%NaN
3で37℃で1h、遮
断した。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20(Sigmaカタログ番
号P7949)/0.02%NaN
3で4回洗浄した。
【0441】
本開示の抗体を、室温で3h、10μg/ml(100μl/ウェル)で添加した。抗
原のプレートへの被覆を検証するために、100μl/ウェルの下記対照抗体:マウス抗
huIL1β(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB601)、マウ
ス抗huIL−3(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB603)、
マウス抗huIL4(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB604)
、マウス抗huIL−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB20
6)、マウス抗hu−IL8(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB
208)、マウス抗huIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号
MAB219)、マウス抗huIL−13(Novartis)、マウス抗huIL−1
7A(Novartis)、マウス抗huIL−17F(Novartis)、マウス抗
huIL−18(MBL カタログ番号D043−3)、マウス抗huIL−20(Ab
cam カタログ番号ab57227)、ヤギ抗huIL−23(R&D System
s(登録商標)カタログ番号AF1716)、マウス抗huIFN−γ(R&D Sys
tems(登録商標)カタログ番号MAB285)、マウス抗huTNF−α(R&D
Systems(登録商標)カタログ番号MAB610)、マウス抗hu−EGF(R&
D Systems(登録商標)カタログ番号MAB236)、ヒト抗huTGFβ2(
Novartis)、ラット抗mIL−1β(R&D Systems(登録商標)カタ
ログ番号MAB401)、ラット抗mIL−2(R&D Systems(登録商標)カ
タログ番号MAB402)、ラット抗mIL−6(R&D Systems(登録商標)
カタログ番号MAB406)、ラット抗mIL−12(R&D Systems(登録商
標)カタログ番号MAB419)、マウス抗m/ラットIL−17A(Novartis
)、ラット抗mIL−17F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB
2057)、ラット抗mIL−18(MBLカタログ番号D047−3)、ラット抗mI
FN−γ(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB485)、ヤギ抗m
TNFα(R&D Systems(登録商標)カタログ番号AF−410−NA)、マ
ウス抗ラットIL−4(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB504
)、ヤギ抗ラットIL−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号AF50
6)、ヤギ抗ラットIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号AF
1760)、マウス抗ラットIL−23(R&D Systems(登録商標)カタログ
番号MAB3510)、マウス抗ラットTNFα(R&D Systems(登録商標)
カタログ番号MAB510)を用いた。それらを、RTで3h、PBS、0.02%Na
H
3中、1または5μg/mlで添加した。
【0442】
次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaN
3で4回洗
浄した。次いで、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Si
gmaカタログ番号A9544)を、1/20000の希釈率(100μl/ウェル)で
ヒト抗体と共にウェルに添加した。アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗マウ
スIgG抗体(Sigmaカタログ番号A1047)を、1/10000の希釈率(10
0μl/ウェル)でマウス抗体と共にウェルに添加した。アルカリホスファターゼコンジ
ュゲート化ウサギ抗ヤギIgG抗体(Sigmaカタログ番号A7650)を、1/10
00の希釈率(100μl/ウェル)でヤギ抗体と共にウェルに添加し、アルカリホスフ
ァターゼコンジュゲート化ウサギ抗ラットIgG抗体(Sigmaカタログ番号A606
6)を1/20000の希釈率(100μl/ウェル)でラット抗体と共にウェルに添加
した。二次抗体をRTで2h30minインキュベートした。次いで、プレートを4回洗
浄し、ジエタノールアミンバッファーpH9.8に溶解し、1mg/mlの最終濃度にし
た100μlの基質(p−ニトロフェニルリン酸錠剤;Sigma;5mgカタログ番号
N9389または20mgカタログ番号N2765)を各ウェルに添加した。
【0443】
プレートをRTで30min後または4℃でON後に、405および490nmのフィ
ルターを用いてSpectra Max M5マイクロプレートリーダー(Molecu
lar Devices)中で読取った。値は3組の値の平均±SEMである。
【0444】
結果
得られたデータは、XAB4とXAB1が両方ともヒト、マウスおよびラット起源のI
L−17Aならびにヒトおよびマウス起源のIL−17A/Fに高度に選択的であること
を示す。さらに、試験した条件下で、ヒトIL−17Fに対する10μg/mlでのXA
B1の反応性(1μg/mlでは見られない、上記を参照されたい)は、XAB4につい
ては観察されない。試験した他のサイトカインに対する反応性は検出されなかった。
【0445】
【表23】
【0446】
NB.負の値はブランク(特異的抗体を含まないウェルのO.D.値)が差し引かれる
という事実によるものである。
【0447】
【表24】
【0448】
NB.負の値はブランク(特異的抗体を含まないウェルのO.D.値)が差し引かれる
という事実によるものである。
【0449】
【表25】
【0450】
NB.負の値はブランク(特異的抗体を含まないウェルのO.D.値)が差し引かれる
という事実によるものである。
【0451】
実施例11 IL−17A−IL−17RAおよびIL−17A/F−IL−17RAの
in vitro競合結合阻害アッセイ
ヒトIL−17RAは、ストック溶液(BTP22599:1.68mg/ml=46
.2μM)から用いた。ELISAマイクロタイタープレートを、PBS/0.02%N
aN
3中のヒトIL−17RA(100μl/ウェル、1μg/ml、約27.5nM)
で被覆した。次の日、プレートを、37℃で1h、300μlのPBS/2%BSA/0
.02%NaN
3でブロッキングした。次いで、プレートをPBS/0.05%Twee
n20/0.02%NaN
3で4回洗浄した。
【0452】
この調製後、抗体バリアント(50μl、IL−17Aについては12nM〜0.12
nMおよびIL−17A/Fについては1200nM〜40nM、3のステップ)の滴定
を、室温で30分間、ヒトIL−17Aビオチン(0.94nMで50μl)またはIL
−17A/F(31nMで50μl)と共に事前にインキュベートした。
【0453】
100μlの混合物を、室温で3時間30分にわたってウェルに添加した。PBS/0
.05%Tween20/0.02%NaN
3で4回洗浄した後、アルカリホスファター
ゼコンジュゲート化ストレプトアビジンを1/10000の最終希釈率(100μl/ウ
ェル)で添加した。室温で45分後、プレートをPBS/0.05%Tween20/0
.02%NaN
3で再度4回洗浄し、ジエタノールアミンバッファーpH9.8中のp−
ニトロフェニルリン酸基質(1mg/ml)を添加した(100μl/ウェル)。
【0454】
プレートを、30分後にSpectra Max M5マイクロプレートリーダー、フ
ィルター405および490nm中で読取った(3回)。異なる抗体バリアントの阻害の
百分率およびIC
50の算出を、4パラメータロジスティックモデル(Excel Xl
fit;FITモデル205)を用いて行った。
【0455】
結果
データは、XAB4とXAB1が両方ともhuIL−17AおよびhuIL−17A/
FのhuIL−17RAへの結合を遮断することができることを示す。IL−17Aおよ
びIL−17A/Fに対するXAB4の親和性が高いほど、阻害能力が高いことを反映す
る。IC
50値を表中に報告する。IL−17A/F−IL−17RA相互作用を遮断す
るのに必要とされるより高い濃度は、IL−17A/Fの約30倍より高い濃度をアッセ
イにおいて用いたという事実によって最も説明される。抗体はA/FのAサブユニットに
結合し、したがって、IL−17RAへのFサブユニットの結合を防止することができな
い。しかしながら、IL−17RAへのFの結合は、300nM範囲ではむしろ弱い。
【0456】
【表26】
【0457】
実施例12 本開示の抗体バリアントによるヒトIL−17AおよびIL−17A/F活
性のin vitroでの中和
(i)C20A4Cl6細胞(ヒト軟骨細胞系)に関するアッセイ
C20A4Cl6、またはC−20/A4、クローン6(Goldring MB, et al 1994, J
Clin Invest; 94:2307-16)細胞を、10%ウシ胎仔血清極低IgG(Gibcoカタロ
グ番号16250−078;ロット1074403)、β−メルカプトエタノール(最終
5x10
−5M)、およびノルモシン(0.1mg/ml;InvivoGenカタログ
番号ant−nr−2)を添加したRPMI(Gibcoカタログ番号61870−01
0)中で培養した。
【0458】
細胞を、Accutase溶液(PAAカタログ番号L11−007)を用いてプラス
チックから剥離させた。ウシ胎仔血清、β−メルカプトエタノール(最終5x10
−5M
)およびノルモシン(0.1mg/ml)を含まないRPMI1640(Gibcoカタ
ログ番号61870−010)中、100μlのウェルに5x10
3の密度で96穴マイ
クロタイタープレート中に細胞を分配した。
【0459】
C20A4Cl6細胞を、一晩プレートに付着させた。次の朝、異なる濃度の組換えh
uIL−17A(配列番号76;MW32000)、組換えhuIL−17A/F(MW
32800)、組換えhuIL−17F(配列番号77;MW30000)、またはヒト
TNFα(Novartis;MW17500)の存在下の対照培地を、50μlの異な
る濃度の試験抗体(XAB4、XAB1)、対照抗体(Simulect(登録商標)1
.1%溶液、Batch C0011;831179)または対照培地の存在下、3つの
ウェルに50μlの容量で添加し、200μl/ウェルの最終容量および0.5%ウシ胎
仔血清の最終濃度を達成した。
【0460】
huIL−17A(30pM)、huIL−17A/F(300pM)およびhuIL
−17F(10nM)を、huTNFα(6pM)と一緒に添加した。XAB4(MW1
50000)を1〜0.003nMの濃度範囲で添加し、huIL−17Aを中和し、1
0〜0.03nMの濃度範囲で添加し、huIL−17A/Fを中和し、3μM〜30n
Mの濃度範囲で添加し、huIL−17Fを中和した。XAB1(MW150000)を
、3〜0.01nMの濃度範囲で添加し、huIL−17Aを中和し、10〜0.03n
Mの濃度範囲で添加し、huIL−17A/Fを中和し、3μM〜30nMの濃度範囲で
添加し、huIL−17Fを中和した。Simulect(登録商標)を、3μM〜10
0nMの濃度範囲で添加した。培養上清を、24hのインキュベーション後に収集し、h
uIL−6生成をELISAにより測定した。
【0461】
(ii)BJ細胞(ヒト線維芽細胞)に関するアッセイ
BJ細胞(ATCCカタログ番号CRL2522からのヒト皮膚線維芽細胞)を、10
%ウシ胎仔血清極低IgG(Gibcoカタログ番号16250−078;ロット107
4403)、β−メルカプトエタノール(最終5x10
−5M)およびノルモシン(0.
1mg/ml;InvivoGenカタログ番号ant−nr−2)を添加したRPMI
(Gibcoカタログ番号61870−010)中で培養した。細胞を、Accutas
e溶液(PAAカタログ番号L11−007)を用いてプラスチックから剥離させた。
【0462】
ウシ胎仔血清、β−メルカプトエタノール(最終5x10
−5M)およびノルモシン(
0.1mg/ml)を含まないRPMI1640中、100μlのウェルに5x10
3の
密度で96穴マイクロタイタープレート中に細胞を分配した。BJ細胞を一晩プレートに
付着させた。次の朝、異なる濃度のrhuIL−17A(配列番号76;MW32000
)、rhuIL−17A/F(MW32800)、rhuIL−17F(配列番号77;
MW30000)、またはヒトTNFα(Novartis;MW17500)の存在下
の対照培地を、50μlの異なる濃度の試験抗体(XAB4、XAB1)、対照抗体(S
imulect(登録商標)1.1%溶液、Batch番号C0011;831179)
または対照培地の存在下、3つのウェルに50μlの容量で添加し、200μl/ウェル
の最終容量および2.5%ウシ胎仔血清の最終濃度を達成した。
【0463】
huIL−17A(30pM)、huIL−17A/F(300pM)およびhuIL
−17F(10nM)を、huTNFα(6pM)と一緒に添加した。XAB4(MW1
50000)を、1〜0.003nMの濃度範囲で添加してhuIL−17Aを中和し、
10〜0.03nMの濃度範囲で添加してhuIL−17A/Fを中和し、3μM〜30
nMの濃度範囲で添加してhuIL−17Fを中和した。XAB1(MW150000)
を、3〜0.01nMの濃度範囲で添加してhuIL−17Aを中和し、10〜0.03
nMの濃度範囲で添加してhuIL−17A/Fを中和し、3μM〜30nMの濃度範囲
で添加してhuIL−17Fを中和した。Simulect(登録商標)を、3μM〜1
00nMの濃度範囲で添加した。培養上清を24hのインキュベーション後に収集し、h
uIL−6およびhuGROα生成をELISAにより測定した。
【0464】
(iii)検出アッセイ
1)ヒトIL−6生成の検出のためのELISA
ELISAマイクロタイタープレートを、PBS0.02%NaN
3中の抗ヒトIL−
6マウスMab(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB206;1μ
g/mlで100μl/ウェル)で被覆し、+4℃で一晩インキュベートした。次の日、
マイクロタイタープレートを室温で3h、300μlのPBS/2%BSA/0.02%
NaN
3でブロッキングした。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/
0.02%NaN
3で4回洗浄した。C20A4Cl6(huIL−17A+huTNF
αで刺激した培養物については最終希釈率1:5、もしくはhuTNFα+huIL−1
7A/FもしくはIL−17Fで刺激した培養物については最終希釈率1:2;100μ
l/ウェル)またはBJ細胞(huIL−17A+huTNFαで刺激した培養物につい
ては最終希釈率1:10、もしくはhuTNFα+huIL−17A/FもしくはIL−
17Fで刺激した培養物については最終希釈率1:5;100μl/ウェル)の培養上清
を添加した。
【0465】
滴定曲線を確立するために、rhuIL−6(Novartis;100μl/ウェル
)を、1:2希釈段階で500pg/mlから7.8pg/mlまで滴定した。室温で一
晩インキュベートした後、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%N
aN
3で4回洗浄した。ビオチンコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIL−6抗体を添加した(
R&D Systems(登録商標)カタログ番号BAF206;30ng/ml;10
0μl/ウェル)。試料を室温で4h反応させた。洗浄(4回)後、アルカリホスファタ
ーゼコンジュゲート化ストレプトアビジン(Jackson Immunoresear
chカタログ番号016−050−084)を、1/10000の最終希釈率で添加した
(100μl/ウェル)。
【0466】
室温で40分後、プレートを再度4回洗浄した。p−ニトロフェニルリン酸基質錠剤(
Sigma;5mg、カタログ番号N9389;20mg、カタログ番号N2765)を
ジエタノールアミンバッファーpH9.8中に溶解し、1mg/mlの最終濃度を得た。
100μlを各ウェルに添加し、405および490nmのフィルターを用いてSpec
tra Max M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices
)中で1h後にO.D.を読取った。
【0467】
2)ヒトGROα生成の検出のためのELISA
ELISAマイクロタイタープレートを、PBS/0.02%NaN
3中の抗ヒトGR
OαマウスmAb(R&D Systems(登録商標)Systems(登録商標)カ
タログ番号MAB275;1.5μg/mlで100μl/ウェル)で被覆し、4℃で一
晩インキュベートした。次の日、マイクロタイタープレートを室温で3h、300μlの
PBS/2%BSA/0.02%NaN
3でブロッキングした。次いで、プレートをPB
S/0.05%Tween20/0.02%NaN
3で4回洗浄した。BJ細胞の培養上
清(最終希釈率1:2;100μl/ウェル)を添加した。
【0468】
滴定曲線を確立するために、ヒトGROα(R&D Systems(登録商標)カタ
ログ番号275−GR/CF;100μl/ウェル)を、1:2希釈段階で2ng/ml
から0.03ng/mlまで滴定した。室温で一晩インキュベートした後、プレートをP
BS/0.05%Tween20/0.02%NaN
3で4回洗浄した。
【0469】
ビオチンコンジュゲート化ヤギ抗ヒトGROα抗体を添加した(R&D System
s(登録商標)カタログ番号BAF275;100ng/ml;100μl/ウェル)。
試料を室温で4h反応させた。洗浄(4回)後、アルカリホスファターゼコンジュゲート
化ストレプトアビジン(Jackson Immunoresearchカタログ番号0
16−050−084)を、1/10000の最終希釈率で添加した(100μl/ウェ
ル)。室温で40分後、プレートを再度4回洗浄した。p−ニトロフェニルリン酸基質錠
剤(Sigma;5mgカタログ番号N9389;20mg、カタログ番号N2765)
をジエタノールアミンバッファーpH9.8に溶解し、1mg/mlの最終濃度を得た。
100μlを各ウェルに添加し、405および490nmのフィルターを用いてSpec
tra Max M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices
)中で1h後にO.D.を読取った。
【0470】
3)算出
データを平均(Means)±SEMとして報告する。4パラメータ曲線適合をELISA
算出のために用いた。抗体によるIL−6およびGRO−α分泌の阻害に関するIC
50
値を、Xlfit(FITモデル205)を用いて算出した。
【0471】
(iv)結果
1)C20A4Cl6細胞(ヒト軟骨細胞系)に関するアッセイ
XAB4とXAB1は両方とも、rhuTNFαの存在下でrhuIL−17Aおよび
rhuIL−17A/Fで刺激したC20A4Cl6細胞によるhuIL−6分泌の誘導
を中和することができる。100nMの対照抗体(Simulect(登録商標))は効
果がない。XAB4およびXAB1のIC
50値(平均±SEM)を表27に報告する。
huIL−17Fに対する阻害は3μMのAb濃度でも観察されない。
【0472】
【表27】
【0473】
これらの実験から、親XAB1抗体がその誘導体と中和活性を共有することが明らかで
ある。XAB4バリアントもまた、XAB1よりも高い中和活性を有することがわかる。
【0474】
さらなる実験において、上記の実験と同様、抗体XAB1〜XAB5を全て、表28に
見られるように比較した。ここで、XAB2、XAB3およびXAB5に関する阻害プロ
ファイルは、XAB4およびXAB1、特に、XAB4について観察されるものと同等で
あることが分かる。
【0475】
【表28】
【0476】
2)BJ細胞(ヒト線維芽細胞)に関するアッセイ
XAB4とXAB1は両方とも、huTNFαの存在下でrhuIL−17Aおよびr
huIL−17A/Fで刺激したBJ細胞によるhuIL−6およびhuGROα分泌の
誘導を中和する。100nMの対照抗体(Simulect(登録商標))は効果がない
。IL−6およびhuGROαの阻害に関するIC
50値を表29および表30に報告す
る。huIL−17Fに対する阻害は3μMのAb濃度でも観察されない。これらの実験
から、親XAB1抗体がその誘導体と中和活性を共有することが明らかである。
【0477】
XAB4バリアントもまた、XAB1よりも高い中和活性を有することがわかる。
【0478】
【表29】
【0479】
【表30】
【0480】
さらなる実験において、上記の実験と同様、抗体XAB1〜XAB5を全て、表31お
よび表32に見られるように比較した。ここで、XAB2、XAB3およびXAB5に関
する阻害プロファイルはXAB4およびXAB1、特にXAB4について観察されるもの
と同等であることがわかる。
【0481】
【表31】
【0482】
【表32】
【0483】
実施例13 本開示の抗体バリアントによるマウスIL−17AおよびIL−17A/F
活性のin vitroでの中和
CMT−93細胞(ATCC CCL−223)を、10%ウシ胎仔血清極低IgG(
Gibcoカタログ番号16250−078;ロット1074403)、β−メルカプト
エタノール(最終5x10
−5M)およびノルモシン(0.1mg/ml;Invivo
Genカタログ番号ant−nr−2)を添加したRPMI(Gibcoカタログ番号6
1870−010)中で培養した。
【0484】
細胞を、Accutase溶液(PAAカタログ番号L11−007)を用いてプラス
チックから剥離させ、ウシ胎仔血清、β−メルカプトエタノールおよびノルモシンを含ま
ないRPMI1640中、100μl/ウェルで5x10
3の密度で96穴マイクロタイ
タープレートに分配した。
【0485】
細胞を、一晩プレートに付着させた。次の朝、1nMのrmIL−17A(配列番号8
3;MW31000)、3nMのrmIL−17A/F(R&D Systems(登録
商標)カタログ番号5390−IL;MW30400)、30nMのrmIL−17F(
配列番号84;MW30000)、1nMのrratIL−17A(配列番号85;MW
31000)または対照培地を、50μlの異なる濃度の試験抗体(XAB4もしくはX
AB1)、対照抗体(Simulect(登録商標)1.1%溶液;C0011、831
179)または対照培地の存在下で3組のウェルに50μlの容量で添加して、200μ
l/ウェルの最終容量および1%ウシ胎仔血清の最終濃度を達成した。
【0486】
培養上清を、24hのインキュベーション後に収集し、KC生成をELISAにより測
定した。
【0487】
(i)マウスKC生成の検出のためのELISA
ELISAマイクロタイタープレートを、PBS/0.02%NaN
3中のラット抗マ
ウスKC MAb(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB453;1
μg/mlで100μl/ウェル)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。次の日、
マイクロタイタープレートを室温で3h、300μlのPBS/2%BSA/0.02%
NaN
3でブロッキングした。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/
0.02%NaN
3で4回洗浄した。CMT−93細胞の培養上清(最終希釈率1:5;
100μl/ウェル)を添加した。
【0488】
滴定曲線を確立するために、マウスKC(R&D Systems(登録商標)カタロ
グ番号453−KC、100μl/ウェル)を、1:2の希釈段階で1ng/mlから0
.016ng/mlまで滴定した。室温で一晩インキュベートした後、プレートをPBS
/0.05%Tween20/0.02%NaN
3で4回洗浄した。0.1μg/mlの
ビオチンコンジュゲート化ヤギ抗マウスKC抗体(R&D Systems(登録商標)
カタログ番号BAF453;100μl/ウェル)を添加した。試料を室温で4h反応さ
せた。洗浄(4回)後、アルカリホスファターゼコンジュゲートストレプトアビジン(J
ackson Immunoresearchカタログ番号016−050−084)を
1/10000の最終希釈率で添加した(100μl/ウェル)。室温で40分後、プレ
ートを再度4回洗浄した。p−ニトロフェニルリン酸基質錠剤(Sigma;5mgカタ
ログ番号N9389;20mgカタログ番号N2765)をジエタノールアミンバッファ
ーpH9.8中に溶解して、1mg/mlの最終濃度を得た。100μlの培養上清を各
ウェルに添加し、405および490nmのフィルターを用いてSpectra Max
M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)中で1h後に
O.D.を読取った。
【0489】
(ii)算出
データを、平均±SEMとして報告する。4パラメータ曲線適合をELISA算出のた
めに用いた。抗体によるKC分泌の阻害に関するIC
50値を、Xlfit(商標)(F
ITモデル205)を用いて算出した。
【0490】
(iii)結果
XAB4とXAB1は両方とも、マウスまたはラットIL−17AおよびマウスIL−
17A/Fで刺激したCMT−93細胞によるマウスKC分泌の誘導を中和することがで
きる。対照抗体(Simulect(登録商標))は効果がない。XAB4およびXAB
1のIC
50値(平均±SEM)を、表33に報告する。huIL−17Fに対する阻害
は10μMのAb濃度でも観察されない。
【0491】
【表33】
【0492】
これらの実験から、両方の親XAB1抗体、ならびにその誘導体が中和活性を有するこ
とが明らかである。XAB4バリアントもまた、XAB1よりも高い中和活性を有するこ
とがわかる。
【0493】
さらなる実験において、上記の実験と同様、抗体XAB1〜XAB5を全て、表34に
見られるように比較した。ここで、XAB2、XAB3およびXAB5に関する阻害プロ
ファイルはXAB4およびXAB1、特にXAB4について観察されるものと同等である
ことがわかる。
【0494】
【表34】
【0495】
実施例14 ラット抗原誘導性関節炎アッセイ(ラットA/A)
メスのLewisラット(120〜150g)を、−21日目および−14日目に完全
Freundアジュバントと1:1でホモジェナイズしたメチル化ウシ血清アルブミン(
mBSA)(5mg/ml mBSAを含有する0.1ml)に対して2つの部位で背部
で皮内的に感作した。0日目に、ラットを5%イソフルラン/空気混合物を用いて麻酔し
、関節内注射のために顔面マスクにより3.5%のイソフルランを用いて維持した。右膝
には5%グルコース溶液中の10mg/mlのmBSA 50μl(抗原注射膝)を投与
したが、左膝には5%グルコース溶液のみ50μl(ビヒクル注射膝)を投与した。次い
で、左膝と右膝の直径を、関節内注射の直後ならびに2、4および7日目に再度、カリパ
スを用いて測定した。
【0496】
処置を、−3日目に単回皮下注射により投与した。本開示の抗体を、0.15、1.5
、15および116mg/kgで注射した。右膝の腫れを、左膝の腫れの比として算出し
、R/L膝腫れ比を時間に対してプロットして対照群および処置群に関する曲線下面積(
AUC)を得た。各処置群のAUCにおける個々の動物の阻害百分率を、Excelスプ
レッドシートを用いて対照群のAUC(0%阻害)に対して算出した。
【0497】
結果
結果を表35に示す。右膝の腫れの用量関連阻害が、XAB4について証明され、ED
50は1.68mg/kg s.c.と算出された。
【0498】
【表35】
【0499】
同様に、膝の腫れの用量関連阻害が、Wistarラットを用いるモデル(データは示
さない)およびマウス抗原誘導性関節炎モデルを用いるモデル(データは示さない)にお
いてXAB4について証明された。
【0500】
実施例15 血管新生機構モデル(Angiogenesis mechanistic model)
マウス中に皮下的に置いた場合、ヒトIL−17A(150〜200ng)を含有する
チャンバは、埋込み体の周囲で新しい血管増殖を引き起こす。血管新生の量は、この領域
において新しく形成される組織の重量と相関する。0.01、0.03、0.1、0.3
、1および3mg/kgのXAB4を用いる予防的処置は、ヒトIL−17により誘導さ
れる血管新生を阻害した。5つのより高い用量は全て、組織チャンバ重量の強力かつ有意
な阻害をもたらした。4つのより高い用量は用量依存性を示さなかったが、0.03mg
/kgの用量は0.1mg/kg以上の用量よりも有効ではなかった。
【0501】
この試験により、IL−17Aの強力な血管新生効果を抗IL−17A抗体を用いて中
和することができ、これはin vivoでのヒトIL−17Aに関するXAB4の有効
性の実験的証拠を提供する。
【0502】
実施例16 実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデル
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルは、多発性硬化症のための公知の動物モデ
ルである(例えば、Constantinescu et al., Br J Pharmacol 2011に概説されている)。
IL−17の阻害はC57Bl/6マウスにおいてEAE重症度を低下させることが示さ
れている(Haak S et al 2009, JCI; 119:61-69)。
【0503】
メスのC57Bl/6マウス(9週齢、Harlan、Germany)を、組換えラ
ットミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質ペプチド(MOG
1−125)(社内で
作製)と、完全Freundアジュバント(CFA、8mg/mlのマイコバクテリウム
・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)株H37RA(Difco)を不完全
Freundアジュバント(IFA、Sigma)に添加することにより作製)との50
/50混合物で免疫した。0日目に尾の基部に200μg/動物のMOG
1−125を皮
下注射することにより、免疫化を実施した。さらに、200ng/動物の百日咳毒素(P
T)を0および2日目に腹腔内注射した。
【0504】
XAB4に関する治療的処置と予防的処置の両方の効果を試験した。
【0505】
治療的処置
治療的処置のために、16匹のマウスを用いた(XAB4について8匹および対照につ
いて8匹)。一度、動物が少なくとも2.5の臨床スコア(重度の後肢弱体化)を3日間
有したら、処置を開始した。この後、15mg/kgのXAB4またはアイソタイプ対照
抗体を単回用量で各週に皮下注射した。
【0506】
結果を、
図11〜15に示す(d.p.iは免疫化後の日数である)。全ての図面にお
いて、XAB4は丸で表され、アイソタイプ対照は四角で表される。治療スコア(平均±
SEM)を
図11に示す。XAB4で処置された動物はアイソタイプ対照よりも低い平均
臨床スコアを有することが明確にわかる。
図12は2群のマウスに関する体重変化(%)
を示し、
図13は累積治療スコアを示す。
図14および15は、処置前後の治療スコアの
比較である。全グラフにおいて、XAB4はアイソタイプ対照と比較して治療効果を有す
ることが明確にわかる。かくして、XAB4を用いる治療的処置は、EAEの重症度を有
意に低下させた。
【0507】
予防的処置
予防的処置のために、19匹のマウスを用いた(XAB4について10匹および対照に
ついて9匹)。各動物を、15mg/kgのXAB4またはアイソタイプ対照で免疫する
前に、単回皮下注射により1日処置した。この後、15mg/kgのXAB4またはアイ
ソタイプ対照抗体を、単回投与で各週に皮下注射した。
【0508】
その結果を、
図16〜20に示す(d.p.iは免疫化後の日数である)。
図16〜1
9において、XAB4は黒丸で表され、アイソタイプ対照は白四角で表される。予防スコ
ア(平均+SEM)を
図16に示す。XAB4で処置された動物はより低い平均臨床スコ
アを有することが明確にわかる。
図17は、2群のマウスに関する体重変化(%)を示し
、
図18は累積予防スコアを示す。最大予防スコアは
図19に見られる。全グラフにおい
て、XAB4はアイソタイプ対照と比較して効果を有することが明確にわかる。さらに、
XAB4が実線で表され、アイソタイプ対照が点線で表される
図20において、EAEの
開始が、アイソタイプ対照で処置されたマウス群と比較して、XAB4で処置されたマウ
ス群についてより遅いことがわかる。
【0509】
かくして、XAB4を用いる予防的処置は、EAEの開始を有意に遅延させ、最大EA
E重症度を低下させることが示される。
【0510】
実施例17 ヒトアストロサイトにおけるIL6、CXCL1、IL−8、GM−CSF
、およびCCL2のIL−17Aにより誘導されるレベルの減衰
ヒト脳の大脳皮質から単離されたアストロサイトにおけるIL6、CXCL1、IL−
8、GM−CSF、およびCCL2のレベルに対するXAB4の効果を調査した。アスト
ロサイトは、それらに細胞コミュニケーション、ニューロン、グリア細胞および免疫細胞
の移動および生存を調節させるいくつかの増殖因子、サイトカインおよびケモカインを放
出する。アストロサイトのエンドフィートと内皮細胞との直接的コミュニケーションも、
アストロサイトに血液脳関門の機能を制御させる。さらに、アストロサイトは、それらに
シナプス伝達および興奮性を調節させるシナプス間隙で、グルタミン酸などの神経伝達物
質を放出し、取込む。アストロサイトはCNS損傷後に瘢痕病理を形成し、かくして、正
常な生理と病態生理における見かけ上反対の役割を有することが有意である。疾患におい
ては、アストロサイトは様々な精神障害、神経障害および神経変性障害において役割を果
たし、神経炎症におけるその役割は重要である可能性があると示唆されている。
【0511】
データは、IL−17AとTNFαとを用いる同時刺激により、IL−6、CXCL1
、IL−8、GM−CSFおよびCCL2の放出が増強され、XAB4がヒトアストロサ
イトにおけるIL−6、CXCL1、IL−8、GM−CSF、およびCCL2のレベル
を阻害することを示していた。これらのデータは、アストロサイトからのサイトカイン放
出におけるIL−17Aの卓越した役割を示し、神経炎症疾患のための薬物標的としての
その使用を支援する。XAB4を用いるヒトアストロサイトの事前処置は、IL−6、C
XCL1、IL−8、GM−CSFおよびCCL2の、TNFαにより誘導されるレベル
に影響することなく、IL−17Aにより誘導されIL−17A/TNFαにより誘導さ
れるレベルを阻害することは注目に値する。総合すると、このデータは、XAB4による
IL−17Aシグナリングの選択的阻害はヒトアストロサイトにおける炎症促進性サイト
カインのレベルを減衰させることを示唆していた。疾患において、アストロサイトは様々
な精神障害、神経障害および神経変性障害において役割を果たし、神経炎症におけるその
役割は重要である可能性があると示唆されている。かくして、アストロサイトの機能を変
化させる新規薬物は有用である可能性があり、アストロサイト機能の調節は治療的に有用
であることがわかる。結果として、XAB4はアストロサイトのIL−6、CXCL1、
IL−8、GM−CSFおよびCCL2生成に対する効果を有することが示されたため、
XAB4は多発性硬化症(MS)の処置などのための有用な治療剤であり得ると結論付け
ることができる。
【0512】
材料および方法
全てのサイトカインを、R&D Systemsから購入した。バシリキシマブ(No
vartis、Basel、Switzerland)をアイソタイプ対照として用いた
。用いた一次抗体は、抗IL−17RA Alexa Fluor 647(BG/hI
L17AR、Biolegend)、抗IL17RC Alexa Fluor 488
(309822、R&D Systems、UK)、抗p65(Santa Cruz、
USA)、マウスIgG Alexa Fluor 647(MOPC−21、Biol
egend、UK)、マウスIgG Alexa Fluor 488(133303、
R&D System、UK)、マウスIgGビオチン(G155−178、BD Bi
osciences、Switzerland)およびラットIgG PE(A95−1
、BD Biosciences、Switzerland)であった。用いた二次抗体
および染料は、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(BA1000、Vector、UK)、
ストレプトアビジンコンジュゲート化Alexa Fluor 488およびAlexa
Fluor 633(S11223およびS2137、Life Technolog
y、USA)、ヤギ抗マウスAlexa Fluor 488およびAlexa Flu
or 633(A1101およびA21050、Life Technology、US
A)、ストレプトアビジンBV421(405226、Biolegend、UK)、H
oechst 34580(H21486、Life Technology、USA)
であった。
【0513】
大脳皮質由来ヒトアストロサイトを、ScienCell Research Lab
oratory(USA)(カタログ番号1800)から購入した。細胞を、提供業者の
説明書に従って増殖させた。簡単に述べると、細胞を、1%アストロサイト増殖補給物質
(ScienCellカタログ番号1852)、5%ウシ胎仔血清(ScienCell
カタログ番号0010)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ScienCel
lカタログ番号0503)を添加したヒトアストロサイト培地(ScienCellカタ
ログ番号1801)中で増殖させた。細胞を、5%CO
2および37℃でT75培養フラ
スコ中で維持し、80%集密となるまで3日毎に培地を交換した。全ての処理について、
ウェルあたり70,000個の細胞を24穴プレート中に播種し、3日間増殖させ、2〜
4h血清飢餓させた後、アストロサイトをXAB4で2h処理し、その後、図面の凡例に
示されたように組換えヒトサイトカインで18〜20h処理した。細胞ペレットを用いて
、qPCRによりサイトカインのmRNAレベルを定量し、上清を用いて、HTRF(C
isbio、France、IL−6、IL−8およびCXCL1について使用)または
AlphaLISA(PerkinElmer、USA、CCL2およびGM−CSFに
ついて使用)によりサイトカインのタンパク質レベルを定量した。
【0514】
サイトカインmRNAの測定を、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
により行った。簡単に述べると、アストロサイトを、350μlの溶解バッファー(1%
β−メルカプトエタノールを含むRLTバッファー)中で穏やかに振とうすることにより
、室温で5min溶解し、全RNAをRNeasy Microkit(74004、Q
iagen、Switzerland)を用いて抽出した。cDNAを、SuperSc
riptIII逆転写酵素(18080−400、Life Technology、S
witzerland)を用いて合成した。各遺伝子の発現レベルを、Viia7 Re
al−time PCR装置(Life Technology、Switzerlan
d)中でのq−PCRにより評価した。Taqmanプローブを、Life Techn
ology、Switzerlandから購入した。各試料を3組分析し、ヒポキサンチ
ン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)に対して正規化した。ヒト
アストロサイト上清(10μl)中のヒトIL6、IL8、CXCL1タンパク質のレベ
ル(ng/ml)を、HTRF(IL6:62IL6PEC;IL8:62IL8PEC
;CXCL1:6FGROPEG、Cisbio、France)により評価し、ヒトア
ストロサイト上清(5μl)中のヒトCCL2タンパク質のレベル(ng/ml)をAl
phaLISAヒトCCL2/MCP1(AL244C、PerkinElmer、US
A)により評価した。全ての測定を、製造業者の説明書に従って実施した。
【0515】
ヒトアストロサイトの細胞懸濁液を、PBS−5mM EDTAを用いて接着培養物か
ら取得した。細胞外染色のために、細胞をPBS2%BSA中、4℃で10min、全マ
ウスIgGと共にインキュベートした後、PBS2%BSA中、4℃で30min、抗体
で染色した。細胞内染色のために、細胞を4℃で20min、Cytofix/Cyto
perm溶液(554714、BD Biosciences、Switzerland
)で透過処理した後、4℃で30min、抗体と共にインキュベートした。70μmの濾
過器により濾過した後、細胞をBDFortessa(BD Biosciences、
Switzerland)上で獲得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star
Inc.、USA)を用いてデータを分析した。
【0516】
化合物処理後、細胞をPBS(Sigma Aldrich、Germany)中で洗
浄した後、氷冷100%メタノール中で10min固定した。細胞を滅菌PBS中で3x
5min洗浄した後、室温で5min、PBS中の0.2%Triton X−100(
Sigma Aldrich、Germany)と共にインキュベートすることにより透
過処理した。非反応部位を、PBS中の10%正常ヤギ血清(Life Technol
ogy、USA)および2%ウシ血清アルブミン(Sigma Aldrich、Ger
many)からなるブロッキングバッファーで+4℃で一晩遮断した。次いで、細胞を4
℃で一晩、一次抗体中でインキュベートした。一次抗体を除去し、細胞を3x5minの
PBSで洗浄した後、二次蛍光抗体を室温で2h適用した。次いで、カバースリップをP
BS中で5x5min洗浄し、Hoescht 34580核染色で対抗染色した。最後
にカバースリップをVectashieldRマウンティング媒体(Vector、UK
)中の顕微鏡スライド上にマウントし、カバースリップの端部をマニキュア液で密封した
。細胞を、Axiovert 200M倒立顕微鏡(Zeiss Ltd、German
y)を用いるZeiss LSM 510 META共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて
画像化した。
【0517】
結果
XAB4によるTNF−αもしくはIL−17A刺激、またはIL−17A/TNF−
α同時刺激の拮抗作用を、
図21A〜25Aに示す。XAB4によるIL−1βまたはI
L−17A/IL−1β同時刺激の拮抗作用を、
図21B〜25Bに示す。
【0518】
図21はIL−6放出に対する拮抗作用を示し、
図22はCXCL1放出に対する拮抗
作用を示し、
図23はIL−8に対する拮抗作用を示し、
図24はGM−CSFに対する
拮抗作用を示し、
図25はCCL2に対する拮抗作用を示す。
【0519】
初代ヒトアストロサイトを、IL−17A(50ng/ml)、TNF−α(10ng
/ml)、IL−1β、IL−17A/TNF−αおよびIL−1β/TNF−αを含む
か、または含まない、増加する濃度のXAB4(0.01nM、0.1nM、1nMおよ
び10nM)で処理した。用いた全濃度を、図面中に示す。示されるデータは、XAB4
0.01nMについては2つの実験、XAB4 0.1nM、1nMおよび10nMに
ついては3つの実験の代表である。示される値は平均±S.E.M.である。
【0520】
図21Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、IL−17A、またはIL−17A
/TNF−αで刺激したアストロサイトからのIL−6の放出に対して、対照とアイソタ
イプの両方と比較して、拮抗作用を有する。IL−6の濃度(ng/ml)はy軸により
表され、XAB4の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについては0、す
なわち、対照、0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイソタイプ
については10nM)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり、次のデ
ータセットはTNF−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、次の
データセットはIL−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、
最後のデータセットはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50ng/m
l)で同時刺激された細胞に関するものである。最後のデータセットは、y軸の約10倍
高い尺度を有する。
図21Bに見られる通り、XAB4(全濃度)は、アイソタイプと比
較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、またはIL−1β(0.1n
g/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に対する拮抗作用を
有さない。
【0521】
図22Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、対照とアイソタイプの両方と比較し
て、IL−17AまたはIL−17A/TNF−αで刺激されたアストロサイトからのC
XCL1の放出に対する拮抗作用を有する。CXCL1の濃度(ng/ml)はy軸によ
り表され、XAB4の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについては0、
すなわち、対照、0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイソタイ
プについては10nM)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり、次の
データセットはTNF−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、次
のデータセットはIL−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり
、最後のデータセットはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50ng/
ml)で同時刺激された細胞に関するものである。最後のデータセットは、y軸の約10
倍高い尺度を有する。
図22Bに見られる通り、XAB4(全濃度)は、アイソタイプと
比較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、またはIL−1β(0.1
ng/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に対する拮抗作用
を有さない。
【0522】
図23Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、対照と比較して、IL−17Aまた
はIL−17A/TNF−αで刺激されたアストロサイトからのIL−8の放出に対する
拮抗作用を有する。アイソタイプと比較して、XAB4(0.1nM、1nMおよび10
nM)はIL−8の放出に対する拮抗作用を有する。IL−8の濃度(ng/ml)はy
軸により表され、XAB4の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについて
は0、すなわち、対照、0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイ
ソタイプについては10nM)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり
、次のデータセットはTNF−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであ
り、次のデータセットはIL−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するもの
であり、最後のデータセットはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50
ng/ml)で同時刺激された細胞に関するものである。最後のデータセットは、y軸の
約5倍高い尺度を有する。
図23Bに見られる通り、XAB4(全濃度)は、アイソタイ
プと比較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、またはIL−1β(0
.1ng/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に対する拮抗
作用を有さない。
【0523】
図24Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、対照とアイソタイプの両方と比較し
て、IL−17A/TNF−αで刺激されたアストロサイトからのGM−CSFの放出に
対する拮抗作用を有する。XAB4(0.1nM、1nMおよび10nM)はアイソタイ
プおよび対照と比較して、IL−17Aで刺激されたアストロサイトからのGM−CSF
の放出に対する拮抗作用を有する。GM−CSFの濃度(ng/ml)はy軸により表さ
れ、XAB4の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについては0、すなわ
ち、対照、0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイソタイプにつ
いては10nM)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり、次のデータ
セットはTNF−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、次のデー
タセットはIL−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、最後
のデータセットはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50ng/ml)
で同時刺激された細胞に関するものである。
図24Bに見られる通り、XAB4(全濃度
)は、アイソタイプと比較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、また
はIL−1β(0.1ng/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された
細胞に対する拮抗作用を有さないか、または低い拮抗作用を有する。
【0524】
図25Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、対照とアイソタイプの両方と比較し
て、IL−17Aで刺激されたアストロサイトからのCCL2の放出に対する拮抗作用を
有する。XAB4(0.1nM、1nMおよび10nM)はアイソタイプおよび対照と比
較して、IL−17A/TNF−αで刺激されたアストロサイトからのCCL2の放出に
対する拮抗作用を有する。CCL2の濃度(ng/ml)はy軸により表され、XAB4
の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについては0、すなわち、対照、0
.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイソタイプについては10n
M)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり、次のデータセットはTN
F−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、次のデータセットはI
L−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、最後のデータセッ
トはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50ng/ml)で同時刺激さ
れた細胞に関するものである。
図25Bに見られる通り、XAB4(全濃度)は、アイソ
タイプと比較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、またはIL−1β
(0.1ng/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に対する
拮抗作用を有さない。
【0525】
総合すると、データは、XAB4によるIL−17Aシグナリングの選択的阻害がヒト
アストロサイトにおける炎症促進性サイトカインのレベルを減衰させることを示唆してい
た。疾患においては、アストロサイトは様々な精神障害、神経障害および神経変性障害に
おいて役割を果たし、神経炎症におけるその役割は重要である可能性があると示唆されて
いる。XAB4はアストロサイトのIL−6、CXCL1、IL−8、GM−CSF、お
よびCCL2生成に対する効果を有することが示されたため、XAB4は多発性硬化症(
MS)の処置などのための有用な治療剤であり得る。
【0526】
配列情報
XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5に関する配列データを、参照
を容易にするために以下にまとめる。
【0527】
表1は、例示的なXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の全長重鎖
および軽鎖のアミノ酸配列(配列番号)を記載する。
【0528】
抗体XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5を、従来の抗体組換え生
成および精製プロセスを用いて生成することができる。例えば、表3または表4に記載さ
れたコード配列を、哺乳動物生成細胞系における組換え発現のための生成ベクター中にク
ローニングする。
【0529】
表2は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5からキメラ抗体を作
製するために用いることができる、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXA
B5の可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)アミノ酸配列をまとめたものである。
【0530】
表5は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5に由来するCDR領
域がKabatの定義に従って定義された、代替的CDR移植抗体を作製するためのXA
B1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の有用なCDR配列(+コンセンサ
ス配列)をまとめたものである。
【0531】
表6は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5に由来するCDR領
域がChothiaの定義に従って定義された、代替的CDR移植抗体を作製するための
XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の有用なCDR配列(+コンセ
ンサス配列)をまとめたものである。
【0532】
本明細書で記載される全ての配列(配列番号)は、表36に見出される。
【0533】
配列表
本発明を実施するための有用なアミノ酸およびヌクレオチド配列は、表36に見出され
る。
【0534】
【表36】
本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質であって、
a)配列番号7、配列番号8および配列番号3によりコードされる配列
に対する少なくとも95%の同一性を有するCDRアミノ酸配列と、
b)配列番号42、配列番号23および配列番号11によりコードされる配列
に対する少なくとも64%の同一性を有するCDRアミノ酸配列と
を含み、
前記抗体またはタンパク質は、ホモ二量体IL−17Aおよびヘテロ二量体IL−17AFには特異的に結合するが、ホモ二量体IL−17Fには特異的に結合しない、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質。
[2]
前記IL−17A、IL−17AFまたはIL−17Fが、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ラット、マウスまたはヒトの1つまたは複数から選択される、上記[1]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[3]
a)配列番号12
に対する少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列と、
b)配列番号43
に対する少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列と
を含む、上記[1]または[2]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[4]
a)配列番号14
に対する少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列と、
b)配列番号44
に対する少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列と
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[5]
a)第1の可変アミノ酸がGly(G)およびVal(V)からなる群から選択され、第2の可変アミノ酸がTyr(Y)、Asn(N)およびIle(I)からなる群から選択され、第3の可変アミノ酸がTrp(W)およびSer(S)からなる群から選択され、第4の可変アミノ酸がGlu(E)およびAla(A)からなる群から選択される、配列番号73の軽鎖CDR1ドメイン;
b)前記可変アミノ酸がAsn(N)およびGln(Q)からなる群から選択される、配列番号74の軽鎖CDR2ドメイン;ならびに
c)前記可変アミノ酸がAsn(N)およびAsp(D)からなる群から選択される、配列番号75の軽鎖CDR3ドメイン
からなる群から選択されるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域を含む、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[6]
順番に、
a)配列番号7、配列番号8および配列番号3を含む重鎖CDRと、
順番に、
b)配列番号42、配列番号23および配列番号11、
c)配列番号42、配列番号10および配列番号11、
d)配列番号34、配列番号23および配列番号11、または
e)配列番号22、配列番号23および配列番号24
を含む軽鎖CDRと
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[7]
a)配列番号12
を含む免疫グロブリン重鎖と、
b)配列番号43、
c)配列番号53、
d)配列番号35、または
e)配列番号25
を含む免疫グロブリン軽鎖と
を含む、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[8]
a)配列番号14
を含む免疫グロブリン重鎖と、
b)配列番号44、
c)配列番号54、
d)配列番号36、または
e)配列番号26
を含む免疫グロブリン軽鎖と
を含む、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[9]
上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質と同じエピトープに結合する、単離された抗体またはタンパク質。
[10]
Arg78、Glu80、およびTrp90を含むIL−17Aエピトープに結合する、上記[9]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[11]
前記エピトープがTyr85またはArg124のいずれか1つまたは複数をさらに含む、上記[10]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[12]
上記項目のいずれか一項に記載の抗体またはタンパク質と同等のエピトープ認識特性を有する抗原認識表面を含む、単離された抗体またはタンパク質。
[13]
上記項目のいずれか一項に記載の抗体の少なくとも1つによりIL−17AまたはIL−17AFへの結合から交差遮断される、単離された抗体またはタンパク質。
[14]
前記抗体またはタンパク質が、
a)ヒトIL−17Fホモ二量体、IL−17Bホモ二量体、IL−17Cホモ二量体、IL−17Dホモ二量体、IL−17Eホモ二量体のいずれか1つもしくは複数、および/または
b)カニクイザルIL−17Fホモ二量体、マウスIL−17Fホモ二量体のいずれか1つもしくは複数、および/または
c)IL−1、IL−3、IL−4、IL−6、IL−8、gIFN、TNFアルファ、EGF、GMCSF、TGFベータ2からなる群から選択される他のヒトサイトカインのいずれか1つもしくは複数、および/または
d)IL−1b、IL−2、IL−4、IL−6、IL−12、IL18、IL23、IFNもしくはTNFからなる群から選択される他のマウスサイトカインのいずれか1つもしくは複数
に特異的に結合しない、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[15]
IL−17Aへの結合が、
a)IL−17Aとその受容体との間の結合を阻害するか、または遮断し、かつ、
b)IL−17A活性を低下させるか、または中和する、
上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[16]
ヒトIL−17Aに対する結合親和性がBiacore(商標)により測定した場合、200pMまたは100pM未満である、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[17]
好ましくは、培養軟骨細胞または線維芽細胞を用いて、in vitroで評価された場合、IL−6分泌、またはGRO−アルファ分泌を阻害することができる、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[18]
in vivoで抗原誘導性関節炎実験モデルにおける膝の腫れを阻害することができる、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[19]
さらなる活性部分にコンジュゲートされた、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[20]
モノクローナル抗体またはその抗原結合部分、好ましくは、キメラ、ヒト化、もしくはヒト抗体またはその部分である、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[21]
1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて、上記項目のいずれか一項に記載の抗体またはタンパク質を含む、医薬組成物。
[22]
1つまたは複数のさらなる活性成分をさらに含む、上記[21]に記載の医薬組成物。
[23]
IL−17Aにより媒介されるか、またはIL−6もしくはGRO−アルファ分泌を阻害することにより処置することができる病理学的障害の処置における使用のための、上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[24]
炎症性障害または状態の処置における使用のための、上記[23]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[25]
関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症、または嚢胞性線維症の処置における使用のための、上記[24]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[26]
IL−17Aにより媒介されるか、またはIL−6もしくはGRO−アルファ分泌を阻害することにより処置することができる病理学的障害の処置における使用のための医薬の製造における上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の抗体またはタンパク質の使用。
[27]
前記病理学的障害が炎症性障害または状態である、上記[26]に記載の使用。
[28]
前記炎症性障害または状態が、関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症または嚢胞性線維症である、上記[27]に記載の使用。
[29]
IL−17Aにより媒介される病理学的障害を処置する方法であって、前記状態が軽減されるように、上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質の有効量を投与する工程を含む、方法。
[30]
前記状態が炎症性障害または状態である、上記[29]に記載の方法。
[31]
前記状態が、関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症または嚢胞性線維症である、上記[30]に記載の方法。
[32]
上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の抗体またはタンパク質のいずれか1つをコードする単離された核酸分子。
[33]
上記[32]に記載の1つまたは複数の核酸配列を含むクローニングまたは発現ベクターであって、前記ベクターは、上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質の組換え生成に好適である、クローニングまたは発現ベクター。
[34]
上記[33]に記載の1つまたは複数のクローニングまたは発現ベクターを含む宿主細胞。
[35]
前記核酸分子がメッセンジャーRNA(mRNA)である、上記[32]に記載の単離された核酸分子。
[36]
上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質を生成するための方法であって、上記[34]に記載の宿主細胞を培養する工程、前記抗体またはタンパク質を精製および回収する工程を含む、方法。