【実施例】
【0044】
以下の実施例は、本発明を例示し、当業者が本発明を実行および使用するのを助けるために提示する。実施例は、本発明の範囲を限定することを全く意図していない。
【0045】
実施例1: 6-チオグアニンのみでのプレコンディショニングおよびインビボ化学選択の組み合わせは、HPRT欠損骨髄での正常造血の高効率な再構築を達成する
6-チオグアニン(6TG)等のプリンアナログは、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)によるヌクレオチドへの変換の際に骨髄毒性を生じる。本実施例は、HPRT欠損HSCのコンディショニングおよびインビボ化学選択の両方のために、6TGを単剤として採用する新規かつ高効率の戦略の開発を示す。HPRT野生型マウスおよびHPRT欠損トランスジェニックマウスにおける6TG骨髄毒性の用量応答および経時変化をまず比較した。骨髄抑制コンディショニング、そして直後の同系HPRT野生型レシピエントに移植されたHPRT欠損トランスジェニックドナー骨髄(BM)のインビボ化学選択に6TGを採用するために投薬量およびスケジュールパラメーターを最適化した。
【0046】
適切な用量において、6TGは、HPRT野生型マウスにおいて範囲外の造血組織に悪影響を全く及ぼすことなく選択的骨髄毒性を誘導し、他方で、HPRT活性が欠けているHSCはその細胞毒性影響に高度に耐性であった。6TGコンディショニングおよび移植後化学選択の組み合わせは、着実に約95%のHPRT欠損ドナーBMの生着を達成し、総合的な毒性は低かった。一次および二次レシピエントの両方において免疫表現型が正常なBMの長期的な再構築を達成した。これらの結果は、6TGの単剤が、照射を必要としない骨髄抑制コンディショニング、およびHPRT欠損ドナー細胞のインビボ化学選択の両方に使用できるという概念の実証を提供する。これらの結果は、6TGの骨髄抑制効果を、移植の前(コンディショニングとして)および後(化学選択として)の両方に適用することによって、HPRT欠損造血幹細胞の高効率の生着が達成できることを示す。
【0047】
造血幹細胞を使用するエクスビボ遺伝子療法の臨床的有効性は、移植細胞に選択的優位性を授けることに依存したままである[1、2]。生着を向上させ、リンパ造血再構築に必要な時間を短縮するために、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)[3]または多剤耐性遺伝子1(MDR1)[4、5]等の薬耐性遺伝子を採用するインビボ選択戦略が検査されたが、許容できない毒性[6]または不十分な選択効率[7]によって全般的に失敗している。現在、O
6-メチルグアニン-DNA-メチルトランスフェラーゼ(MGMT)の変異型が、O
6-ベンジルグアニンと組み合わせて、BCNUまたはテモゾロマイドに対する化学防御をもたらす能力について試験されているが[8、9]、これらの剤もかなりの毒性リスクを引き起こし、最近の観察によれば変異型MGMTは高レベルで発現された場合には選択的不都合をもたらし得ることが示唆されている[10]。
【0048】
とりわけ、これらのアプローチは、外因性薬耐性遺伝子を過剰発現している造血前駆細胞を、骨髄破壊的な照射でプレコンディショニングされたレシピエントに移植することに依存してきた; しかし、通常は細胞毒性薬の活性化に必須である内因性酵素のレベルを低減することによっても化学的抵抗を与えることができる。これに関連して、本発明者らは、高レベルのプリンヌクレオチドサルベージ経路酵素ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)が、プリンアナログ6-チオグアニン(6TG)に対する感受性を高めることを以前に観察している[11]。6TGの代謝変換の最初の工程は、リボース5-リン酸の添加を媒介してチオグアノシンモノリン酸(TGMP)を生成するHPRTにより触媒される[12]。従って、6TGの細胞毒性は、チオ-dGTPへのHPRT媒介型変換について本質的に含意し、次にこれがDNAに導入されて、無益なミスマッチ修復およびその後のアポトーシスを誘導する。
【0049】
活性の低減により骨髄保護を授けるためには、内因性薬物活性化酵素は、造血前駆細胞において通常は高発現しなければならず、これは正常造血には必須ではない。実際、造血前駆細胞は通常は高レベルのHPRTを発現し[13-16]、これにより6TGに対して極度に感受性が高くなる。確かに、6-メルカプトプリン(6MP)、アザチオプリン(Aza)、および6TG等のプリンアナログは、半世紀の間、白血病の治療、特に小児患者のため[17]、そして臓器移植患者における免疫抑制のため、より最近では自己免疫疾患のために臨床的に使用されてきた。6TGが高用量で臨床的に使用された際には、骨髄毒性が最も頻度が高く一貫した悪影響であり、適切な濃度で短期間の間に投与された場合には、6TGは骨髄抑制が強力で、正常HPRT野生型動物において他の組織に対して毒性がほとんどない[11]。
【0050】
対照的に、HPRT欠損動物由来の骨髄(BM)は6TGに対して高度に耐性である[11]。しかし、とりわけ、本発明者ら[11]およびその他[18]は、造血がHprt-ノックアウト動物においては表現型的および機能的に正常であることをみとめ、または巨赤芽球性貧血の症例がヒトにおける遺伝性HPRT欠損(レッシュ-ナイハン症候群)に関連するが[19]、これはアデニンの経口投与によく反応することが報告されている[20]。さらに、HPRT欠損は、ヒトまたは動物における免疫系の全般的な障害に全く関連しないと思われた[21]。
【0051】
これらの観察は、6TG耐性であるがそれ以外は正常であるHPRT欠損造血前駆細胞が、6TG処置を受けているHPRT野生型レシピエントに移植された際に選択的優位性を有するべきこと、およびこの戦略を使用してエクスビボ遺伝子療法の成果を改善できることを示唆している。実際、PorterおよびDeGregori[22]は、Hprt標的型shRNAを発現しているレンチウイルスベクターでHSCを形質導入すること、およびこれらの操作された造血細胞をマウスにおける6TG化学選択によってインビボで富化させることの実現可能性を既に実証している。しかし、この先の報告において、6TGは中度にしか骨髄抑制でないように選択された投薬量か、移植後4週間以上経って開始される短期間のみの選択のいずれかで採用され、全身照射によるプレコンディショニングにも関わらず、生着の成果は比較的中度で、5〜50%の間で大きく変動した[22]。
【0052】
本発明者らは今回、6TG投与の用量、タイミングおよび継続時間を改変した際の、HPRT欠損骨髄を移植後の生着および造血再構築に対する影響を系統的に検査した。変数としてのベクター形質導入効率を排除するために、Hprtノックアウト動物由来のBMを「理想的な」ドナー細胞として採用することで、(i)HPRT野生型レシピエントの骨髄抑制コンディショニングのために移植前、および(ii)HPRT欠損ドナー細胞集団の化学選択的増幅のために移植後、の両方において6TG投薬量、およびスケジュールパラメーターを改変することによる影響に焦点を当てることができた。それゆえに、プレコンディショニングおよびインビボ化学選択の両方のために6TGを単剤として連続して採用する新規レジメンの開発を本明細書に記載し、この組み合わせレジメンが高効率の生着および長期再構築を迅速かつ着実に達成することを示す。
【0053】
材料および方法
マウス
Hprt欠損B6.129P2-Hprt1
b-m3/J(CD45.2)マウス、Hprt野生型(wt)C57BL/6J、およびB6.SJL-Ptprc
aPepc
b/BoyJ(CD45.1)マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から最初に得た。B6.129P2- Hprt1
b-m3/Jマウスは、プロモーターにわたる55kbの欠失、およびHprt遺伝子の最初の2エキソンを担持する[23]。マウスを繁殖させ、施設ガイドラインに準じた標準的な条件下で施設特有の非病原体動物施設にて維持した。
【0054】
6TG処置
C57BL/6JおよびB6.129P2-Hprt1
b-m3/Jマウスに、200μlの様々な用量の6TG(Sigma-Aldrich、Saint Louis、MO)を、異なる時点にて、図面のキャプションに記載の通りに腹腔内(i.p.)注射した。対照動物には200μlの滅菌H
20を腹腔内注射した。
【0055】
骨髄移植および6TGインビボ化学選択
雌レシピエントC57BL/6J(HPRT-wt)またはB6.SJL-Ptfprc
aPepc
b/BoyJ(HPRT-wt、CD45.1)マウスを、HSCTの48時間前に10mg/kgの6TGで腹腔内注射により処置した。HSCTについては、B6.129P2-Hprt1
b-m3/J雄マウスから単離した0.8〜1 x 10
7の有核BM細胞(CD45.2)をHPRT-wtレシピエントに静脈内注射した。6TG(10mg/kg)を再び2時間後に、その後は3日毎に5mg/kgで4週間、腹腔内注射により投与した。二次レシピエントマウスへの連続移植を、上記と同じ細胞用量および6TGプレコンディショニング/化学選択レジメンを使用して、ただし6ヶ月前に6TGインビボ化学選択を用いた移植を経た一次レシピエントマウス由来のBMを使用して、行った。
【0056】
マウス染色体XおよびY特異的蛍光インサイチューハイブリダイゼーション
マウス特異的全染色体Y-paintプローブ/RAB9(XqF1)DNAプローブミックス(Kreatech、Amsterdam、Netherlands)を製造元のプロトコールに従って用いて、BMおよびPBL細胞に対してFISHを行った。雌レシピエントC57BL/6Jマウス中の雄ドナーHPRT-wt細胞のパーセンテージを決定するために、適切な二重および三重カラーフィルターを備えた蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いて200個の核/スライドを数えた。FISHを分析するために以下の基準を適用した:(1)核の質をDAPI染色を介して評価した、(2)Y-染色体についての緑色蛍光シグナルを採点した、(3)X-染色体についての赤色蛍光シグナルを採点した、(4)Y-染色体核についての緑色蛍光シグナルが不在の場合は、1つしかX-染色体が検出されなくても、雌と記録した(補足
図S1;補足図についてはExperimental Hematology 2012、40:3-13を参照のこと)。
【0057】
造血組織の免疫表現型分析
マウスBD Fcブロック(BD Biosciences、San Jose、CA)でブロックした後、BM、PBL、胸腺、または脾臓細胞を、CD45、CD45.2、CD4、CD8、Mac1/Gr1、B220、Sca-1、c-kit、および系統抗体カクテルに対するFITC-、PE-、PerCP-またはAPC-結合ラット抗マウス抗体で染色した。抗体は、Biolegend(San Diego、CA)またはBD Biosciencesから受け取った。フローサイトメトリーデータはBD FACSDivaを実行してBD LSRII(BD Biosciences)上で獲得し、FlowJoソフトウェア(TreeStar、Ashland、OR)(補足
図S2)を用いて分析した。
【0058】
病理組織分析
この調査で使用した全マウスの剖検、ならびに全ての胸郭、腹部器官、および骨髄の組織学的検査はUCLA Division of Laboratory Animal Medicine Diagnostic Service Laboratoryにより行われた。組織は必要であれば通常通りに処理または脱灰し、パラフィン切片を切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。
【0059】
統計的分析
QuickCalcs統計ソフトウェアプログラム(Graphpad Software Inc.)を用いてデータを分析した。対応のないt検定を使用して、p値を計算し、p<0.05を統計的に有意と考慮した。
【0060】
結果
HPRT-wtマウスにおける6TGの急性骨髄毒性
造血前駆細胞における高レベルのHPRT発現は、6TGの選択的骨髄毒性影響を媒介し、コンディショニングレジメンとしての使用が可能であると推定された。従って、本発明者らは、HPRT-wtマウスに6TGを様々な投薬量でボーラス注射した後のBMに対する短期間の影響を検査した。2.5mg/kg、5.0mg/kg、または10mg/kgの単回用量の6TGでの腹腔内注射を1日目に、または10mg/kgの二回用量での注射を1および3日目に行い、BM組織構造を4日目に検査した。総6TG投薬量が増加すると共に骨髄毒性の上昇がみとめられた(
図1A)。血管構造が徐々に顕著になり、赤血球および骨髄系統の両方の細胞が枯渇した。血管内皮、間葉細胞、いくらかの成熟顆粒球およびマクロファージ、ならびに時折造血前駆細胞のみが、試験された最高用量の6TGで残っていた(
図1B)。
【0061】
上記レジメンのいずれでも、4日目に容易にみとめられる臨床的兆候は観察されなかったが、観察期間を延長した際には、7日目までに体重減少および四肢の蒼白が見られた。BMの組織学的検査は、追加用量の6TGを投与しなくても、4および7日目の間に重症度が上昇することを示した(
図1A、2A)。臨床および組織学的所見に従って、二回用量の10mg/kg 6TGで処置し、7日目に分析したHPRT-wtマウスのBMは、ビヒクル対照で処置されたHPRT-wtマウス(1.1x10
7±0.2x10
7、n=3)(p<0.01)と比べて、1本の大腿骨および脛骨から回収したBM有核細胞数の有意な定量的減少(4.7x10
6±1.0x10
6、n=3)を示した。
【0062】
フローサイトメトリーによる残ったBM造血細胞の免疫表現型分析(表1)から、長期多分化再構築活性を有するHSCを含むKLS(lin
-/c-kit
+/sca-1
+)前駆細胞の相対的比率が[24]、4日目までに有意に3分の1に減少し(p<0.01)、7日目までに10分の1に減少した(p<0.001)ことが明らかになった(表1-iii、1-iv)。成熟CD8+およびCD4+T細胞の相対的パーセンテージは、6TG投与の後、時間とともに徐々に上昇し、7日目までには対照と比べて7倍まで到達し(p<0.001)、これは、BM組織構造においても見られるように大々的に拡張した血管および末梢血/出血の流入によるものと思われる。B220+細胞の相対的パーセンテージは、4日目までに有意な変化は示さなかったが、6TG投与後7日目までには対照の二倍になった。
【0063】
(表1)
6TGコンディショニングレジメン後のBM造血細胞の免疫表現型分析
BM細胞を以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC、CD4-PE、CD8-APC、B220-PerCP、Mac1/Gr1-PE、Sca-1-PE、およびc-kit-FITC、フローサイトメトリーで検査した。処置および分析スケジュールは小文字のローマ数字で示し、
図1と同じである。(i): 1日目にビヒクル対照、4日目に分析。(ii)1日目に10mg/kgの単回用量の6TG、4日目に分析。(iii):1および3日目に10mg/kgの二回用量の6TG、4日目に分析。(iv)および(v):1および3日目に10mg/kgの二回用量の6TG、7日目に分析。最後の2つの欄は、HPRT-wt(iv)およびHPRT欠損(v)マウスにおける同じ6TG投薬量およびスケジュール(10mg/kg 6TG×二回用量)の結果をそれぞれ示す。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは合計CD45+細胞の平均%±SDとして表す(n=3/群)。
【0064】
とりわけ、肝臓酵素はHPRT-wtマウスにおけるこのコンディショニングレジメンの後に上昇せず、この投薬量における造血前駆細胞についての6TG細胞毒性の選択性を示し、骨髄抑制コンディショニングレジメンとしての使用の可能性を示唆している。
【0065】
HPRT欠損マウスにおける6TGコンディショニング投薬量での骨髄毒性の欠如
上記所見とは対照的に、HPRT欠損マウスを最大投薬量で処置した場合(1および3日目に10mg/kgの二回用量の6TG)、骨髄組織構造は7日目に完全に影響を受けないままであり(
図2A)、ビヒクル対照群のものに匹敵した(
図1A)。重要なことに、6TG処置されたHPRT欠損マウスの1本の大腿骨および脛骨から得た有核BM細胞の総計数(1.5x10
7±0.3x10
7、n=3)も、ビヒクル対照で処置されたHPRT-wtマウスのものに匹敵し(1.1x10
7±0.2x10
7、n=3)、同じ6TGレジメンで処置されたHPRT-wtマウス(4.7x10
6±1.0x10
6、n=3)よりも有意に高かった(p<0.005)。
【0066】
さらに、6TG処置されたHPRT欠損マウスのBM中の造血細胞亜集団の比率(表1-v)は、ビヒクル対照で処置されたHPRT-wtマウス(表1-i)および未処置HPRT-wtマウス(表2、BM%の欄)、ならびに未処置HPRT欠損マウス(表3、BM%の欄)のものに匹敵した。
【0067】
(表2)
処置を受けていないHPRT-wtマウスにおける造血細胞の免疫表現型分析
BM、PBL、脾臓(S)および胸腺(T)を、以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC(BM、PBL、T、S)、CD4-PE(BM、PBL、T、S)、CD8-APC(BM、PBL、T、S)、Mac1/Gr1-PE(BM、PBL、S)、B220-PerCP(BM、PBL、S)、Sca-1-PE(BM)、およびc-kit-FITC(BM)、フローサイトメトリーで検査した。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45+細胞の平均%±SDとして表した(n=3/群)。
【0068】
(表3)
処置を受けていないHPRT欠損マウスにおける造血細胞の免疫表現型分析
BM、PBL、脾臓(S)および胸腺(T)を、以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC(BM、PBL、T、S)、CD4-PE(BM、PBL、T、S)、CD8-APC(BM、PBL、T、S)、Mac1/Gr1-PE(BM、PBL、S)、B220-PerCP(BM、PBL、S)、Sca-1-PE(BM)、およびc-kit-FITC(BM)、フローサイトメトリーで検査した。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45+細胞の平均%±SDとして表した(n=3/群)。
【0069】
まとめると、これらの結果は、7日間にわたって骨髄毒性が次第に上昇する中、10mg/kgの二回用量までの6TGが、HSCT前に3日間の間良好に耐えることができる有効なコンディショニングレジメンとして採用され得ることを示唆した。
【0070】
HPRT-wtレシピエントにおける6TGコンディショニング後のHPRT欠損BMの移植
上記確立したスケジュールに基づいて、本発明者らは、HPRT-wtレシピエント(CD45.1)において6TG(10mg/kg腹腔内)をコンディショニングレジメンとして採用し、上記確立したスケジュールごとに、移植48時間前に一回用量(今回は1日目ではなく-2日目に指定)、および移植当日に一回用量(3日目ではなく0日目に指定)を投与した。コンディショニング後、HPRT-wtレシピエントにHPRT欠損コンジェニックドナー(CD45.2)由来のBMを移植した。
【0071】
4日目に、髄は、初期前駆細胞が少なくなり、血管分布が増え、細胞充実度の低減を示し(
図2B)、HPRT欠損BMを移植されたこれらの6TGコンディショニングされたHPRT-wtマウス(3.8x10
6±0.5x10
6、n=4)から回収した有核BM細胞の総計数は、ビヒクル対照で処置したHPRT-wt群(1.1 x10
7±0.2x10
7、n=3)と比べてまだ有意に低減していた(p<0.001)。BMのフローサイトメトリー分析から、4日目には17.8%±4.4%の合計細胞集団しか、ドナーHPRT欠損CD45.2+造血細胞から誘導されなかったことが示された。
【0072】
慢性低用量6TGでの処置後の骨髄毒性の閾値
本発明者らの上記結果は、6TGプレコンディショニングのみでは高レベルの生着を得るのに十分ではないかもしれないことを示すため、本発明者らは、次に、低用量の6TGでの慢性処置を施された移植されていないマウスにおいて用量決定調査を行った。HPRT-wtおよびHPRT欠損マウス(n=3/群)には、ビヒクルのみ、0.25mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.5mg/kg、または5.0mg/kgの6TGを、3日毎に、長くて60日間腹腔内注射した。HPRT-wtマウスにおいて、ビヒクル対照群、ならびに0.25mg/kgおよび0.5mg/kgの6TG群は、60日間にわたり100%の生存率を示し、0.25mg/kgおよび0.5mg/kgの6TG群におけるBMの組織学的検査は60日目に正常細胞充実度を示した(
図3)。
【0073】
対照的に、HPRT-wt1.0mg/kg 6TG群では、38日目(13mg/kg合計投薬量)、42日目(14mg/kg合計投薬量)、および51日目(17mg/kg 合計投薬量)に死亡を招いた(表S1)。より高い投薬量にて、2.5mg/kgまたは5mg/kgの6TGの注射を繰り返し受けたHPRT-wtマウスは、苦痛(不活発、前かがみの姿勢、毛繕いの欠如、食欲不振)、貧血(四肢の蒼白)、および>10%の体重減少の進行性の臨床的兆候を一貫して示し、28日目(2.5mg/kg 6TG群;22.5mg/kg合計投薬量)および22日目(5.0mg/kg 6TG群;35mg/kg合計投薬量)に施設ガイドラインに従った屠殺をそれぞれ必要とした。1.0mg/kg 6TG群から得たBMの組織学的検査では、いくつかのアポトーシスの外観、および低投薬量群よりも多くの芽細胞が観察され、損傷に対する初期活性化応答を反映していると思われた(
図3;38日目)。高投薬量群も、細胞充実度が有意に低減し、血管構造の拡大を示し、病変の重症度がそれぞれの群における6TGの累積投薬量に比例していた。2.5mg/kgの用量の6TGで繰り返し処置されたマウスは、細胞充実度の低減および広範囲のアポトーシスを示した(28日目)。5mg/kgの最も高い慢性投薬量において、BMは顕著に枯渇し、生存している細胞のほとんどが骨髄系統のものであった(22日目)。
【0074】
HPRT-wtマウスとは対照的に、全てのHPRT欠損マウスは、注射した6TGの投薬量(上記と同じ投薬スケジュールに従って105mg/kgの最大総用量まで投与された)とは無関係に、実験の継続期間(60日間)の間生存した(表S1)。6TG投薬量に関係なく、どのHPRT欠損マウスにおいても、60日目の実験終了時において有意なBM病理は観察されなかった(
図3)。心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓および脾臓を含むその他の検査組織において、処置に関連する有意な異常は観察されなかった。従って、HPRT欠損マウスは、HPRT-wtマウスにおいては致死的な骨髄毒性を生じた1.0mg/kg、2.5mg/kg、および5.0mg/kg用量での慢性6TG処置で毒性影響は示さなかった。
【0075】
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択の組み合わせは、HPRT欠損BMの着実かつ高効率の生着を達成する
上記用量決定調査に基づいて、本発明者らは、次に、6TGプレコンディショニングを低用量の6TGの継続的な投与と組み合わせて、HPRT-wtレシピエントにおけるHPRT欠損BMの移植直後に開始した場合に、生着ドナー細胞のさらなる化学選択的増幅を達成できるかどうかを問うた。従って、雌HPRT-wtマウスを6TG(10mg/kg、腹腔内)でプレコンディショニングし、先に確立したコンディショニングスケジュールごとに、移植の48時間前(-2日目)に一回用量および移植当日(0日目)に一回用量を投与した。次に、HPRT-wt雌レシピエントにHPRT欠損雄BMを移植し、上記慢性骨髄毒性の結果に基づいて、レシピエントをさらに、2.5mg/kgの用量の6TGで3日毎に2週間(30mg/kg合計投薬量)もしくは4週間(42.5mg/kg)繰り返し処置するか、または5.0mg/kgの用量の6TGで3日毎に2週間(40mg/kg合計投薬量)もしくは4週間(65mg/kg合計投薬量)繰り返し処置した。2週間または4週間のインビボ化学選択期間の直後に分析をそれぞれ行った(
図4)。
【0076】
予想通り、6TGコンディショニング、HSCT、および6TGインビボ化学選択手順の組み合わせは良好に許容され、苦痛の兆候は観察されなかった。全ての6TG処置群において、移植された動物の100%が生存した(2週間の処置:n=3、および4週間の処置:n=8)。6TG処置動物において移植後初めの1週間目の間に体重は減少したが安定し、全ての動物がその後正常な体重を取り戻した。病理組織学的分析により、6TG化学選択投薬量または継続時間とは無関係に、移植された動物における総合的な細胞充実度および造血が、未処置HPRT-wt対照と変わらないことが示された(
図4)。
【0077】
染色体XY-FISH[25、26]は、2週間の6TG化学選択を受けた群において、その時点のBMが既に89.3%±1.7(2.5mg/kg群)および95.5%±1.2(5mg/kg群)のレベルのドナー由来髄で高度に再構築されていることを示した。2週間目のドナー由来末梢血白血球(PBL)のパーセンテージは、それぞれ13.0%±4.6(2.5mg/kg群)および12.7%±2.9(5.0mg/kg群)であった(表4)。インビボ化学選択をHSCT後4週間継続した場合、ドナー由来BM細胞のパーセンテージは、同じく2.5mg/kg群(95.3%±0.9)および5.0mg/kg群(96.7%±1.2)の両方において極めて高いことが分かった。とりわけ、ドナー由来PBLのパーセンテージは、4週間目で2.5mg/kg群(29.9%±1.9)と比べて5.0mg/kg群(39.7%±3)において有意に高く(p<0.005)、いずれかの用量で化学選択を2週間受けている群よりも有意に高かった(p<0.0002) (表4)。従って、-2日目および0日目における10mg/kgの6TGのプレコンディショニングと5mg/kgの6TGを3日毎に4週間行う継続的インビボ化学選択との組み合わせにより、HPRT欠損ドナー細胞による最大レベルのBM生着および最大レベルのドナー由来PBLが生じた; このレジメンを引き続き研究に採用した。
【0078】
(表4)
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択の組み合わせ後の生存率および生着
インビボ化学選択の処置スケジュールは表記の通りである:2.5mg/kgの6TGで2週間、5.0mg/kgの6TGで2週間、2.5mg/kgの6TGで4週間、または5.0mg/kgで4週間のインビボ化学選択。全ての処置群が100%の生存率を示した。HPRT-wt雌レシピエントBMおよびPBLにおけるHPRT欠損雄造血細胞の生着を染色体XY-FISHにより決定した(平均%±SD)。
【0079】
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択の組み合わせはHPRT欠損BMの長期再構築をもたらす
上記確立した6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択レジメンの組み合わせを用いたHPRT欠損ドナーBMによる生着の持続性を、移植の4ヶ月、7ヶ月、または12ヶ月後(すなわち、4週間のインビボ化学選択期間終了からそれぞれ3ヶ月、6ヶ月、および11ヶ月後)に検査した。全ての移植動物(4ヶ月:n=8;7ヶ月:n=6;12ヶ月:n=5)は生存し、かつ健康なままで、検査した全ての時点でいかなる病的状態も不快症状の兆候も示さなかった。これらの動物の全般的な病理学的および組織学的検査からは、有意な異常は明らかにならなかった。
【0080】
ドナー由来前駆細胞によるリンパ造血の多分化再構築を、6TGプレコンディショニングおよびインビボ化学選択を組み合わせるHSCTの4ヶ月後、すなわち4週間の化学選択期間終了の3ヶ月後、に評価した。HPRT欠損CD45.2マウスをドナーとして、およびHPRT-wtCD45.1マウスをレシピエントとして(n=5)用いて、コンジェニックCD45.1/CD45.2移植セッティングにおいてBM、PBL、胸腺、および脾臓の免疫表現型検査を行った。全ての造血組織が、75%を超える合計骨髄レベルでCD45.2+ドナー細胞の高い生着を示した(表5)。ドナー由来CD45.2+集団の免疫表現型検査は、T細胞(CD4/CD8)、B220+細胞、およびマクロファージ/顆粒球(Mac-1 /Gr1)の相対的パーセンテージが治療を受けていない対照に匹敵することを示した(表2および3)。
【0081】
(表5)
コンジェニックCD45.1/CD45.2移植モデルにおいて6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択レジメンを用いた移植後4ヶ月目の造血組織の免疫表現型分析
記述のように6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択を行った。レシピエントBMおよびPBLを、以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45.2-FITC(BM、PBL、T、S)、CD4-PE(BM、PBL、T、S)、CD8-APC(BM、PBL、T、S)、Mac1/Gr1-PE(BM、PBL)、B220-PerCP(BM、PBL、S)、フローサイトメトリーで検査した。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45.2+細胞の平均%±SDとして表した(n=5/群)。
【0082】
移植後4ヶ月、7ヶ月、および12ヶ月の時点で、染色体XY-FISHによっても生着レベルを評価した。ドナー由来BMによる安定した高レベルの長期再構築が、移植後の全ての時点において、それぞれ97.7%±0.5%(4ヶ月)、94.7%±1.9%(7ヶ月)、および93.0%±0.8%(12ヶ月)の生着レベルで観察された(
図5)。さらに、ドナー由来PBLのパーセンテージは、4週間の6TG選択期間の直後のもの(39.7%±3.0%)と比べて有意に上昇した(4ヶ月にて67.4%±10.6%、p=0.01;7ヶ月にて73.3%±7.9%、p<0.01;12ヶ月にて73.0%±10.7%、p<0.01)。
【0083】
CD4+およびCD8+細胞、B220+細胞、ならびにMac-1+/Gr1+細胞、そしてKLS(lin
-/sca-1
+/7c-kit
+)HSCの相対的パーセンテージを、4ヶ月、7ヶ月、および12ヶ月のBMにおける免疫表現型検査によって決定し(表6)、処置を受けない雌HPRT-wt(表2)および処置を受けない雄HPRT欠損(表3)対照マウスと比較した。各細胞集団の相対的パーセンテージは、3つの全ての時点において対照のものに匹敵したが、KLS細胞はHSCT後4ヶ月および7ヶ月目に上昇し、12ヶ月目に正常範囲内になった。従って、HPRT欠損ドナー由来髄は、正常造血の長期再構築を移植後少なくとも12ヶ月間は達成できた。
【0084】
(表6)
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択レジメンを使用したHPRT欠損BMでの移植後4ヶ月目、7ヶ月目、および12ヶ月目のBMの免疫表現型分析
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択でのHSCT後の表記時点において、レシピエントBM細胞を以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC、CD4-PE、CD8-APC、Mac1/Gr1-PE、B220-PerCP、Sca-1-PE、およびc-kit-FITC、フローサイトメトリーで検査した。表記した造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45+細胞の平均%±SDとして表した。
【0085】
6TGコンディショニングおよび化学選択を組み合わせたHPRT欠損ドナーBMの連続移植後の二次レシピエントの造血再構築
6TGコンディショニングを化学選択と組み合わせた最適化レジメンが長期再構築性HSCについて選択するか否かをさらに評価するために、次に本発明者らは、移植後7ヶ月目の一次レシピエント由来のBMを、同じレジメンを使用して二次レシピエントに移植した[27]。その後、二次移植レシピエントを、4週間の6TGインビボ化学選択過程の終了後3ヶ月間維持した(補足
図S3)。6TGコンディショニングおよび化学選択の後、一次レシピエントに生着したHPRT欠損雄ドナー細胞は、二次雌レシピエントに連続して高レベルで再構築することができた(XY-FISHにより測定した場合に95.5%±1.1%)。免疫表現型分析により、二次レシピエントのBMおよびPBL中で検査された全ての細胞集団のパーセンテージ(表7)が、処置を受けない対照にやはり匹敵する(表2および3)ことが明らかになった。
【0086】
(表7)
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択によるHPRT欠損BMの連続移植後の二次レシピエントにおける造血細胞の免疫表現型分析
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択レジメンによる連続移植を、
図S3に記載の通りに行った。二次レシピエントBMおよびPBLを、以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC(BM、PBL)、CD4-PE(BM、PBL)、CD8-APC(BM、PBL)、Mac1/Gr1-PE(BM、PBL)、およびB220-PerCP(BM、PBL)、フローサイトメトリーで検査した。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45+細胞の平均%±SDとして表した(n=6/群).
【0087】
本発明者らは、移植前コンディショニング、そしてHPRT欠損ドナーHSCの継続的な移植後インビボ化学選択のために6TGを単剤としてを採用する最適化されたレジメンを開発した。この6TGコンディショニングと化学選択との組み合わせ戦略により、総合的な毒性が低く、レシピエント宿主はあったとしてもほとんど苦痛が無く、100%の生存率を示す進行性かつ同時置き換えプロセスを経て効率的なHSCの生着が達成され、BMが迅速かつほぼ完璧にHPRT欠損ドナー細胞に置き換えられて、XY-FISHにより約95%、およびCD45.2免疫表現型検査により>75%の生着を着実に達成した。ドナー由来PBLのパーセンテージは、4週間の6TG選択期間直後と比べて、時間とともに有意に上昇した(移植後4および7ヶ月) 。PBL中の残存レシピエント細胞は、PBL中の低いターンオーバーの非分裂成熟細胞を反映していると思われる。BMの安定した長期再構築が、一次および二次レシピエントの両方で達成された。BM、PBL、脾臓、および胸腺の免疫表現型分析により、長期再構築の後、6TGインビボ化学選択により造血分化が影響を受けなかったことが示された。
【0088】
これらの結果はまた、6TGが適切な濃度において、範囲外の造血組織に悪影響を全く与えることなく選択的骨髄毒性を誘導すると思われるという本発明者らの先の観察を裏付ける。HPRTは全ての体細胞において低レベルで発現され[30]、HPRTの遺伝的欠如はレッシュ-ナイハン症候群を引き起こし[31]、これは中枢神経系において、特に神経発達の間に[32]、高レベルのHPRT発現および活性がみとめられた場合に重度の知的発達遅および行動異常として現れる。しかし、完全に分化したニューロンは複製を経ないため、これらの高レベルは成熟成人においてより高い6TG神経毒性に翻訳されない。
【0089】
PorterおよびDeGregoriによる先の研究においては[22]、4.5Gyの全身照射を使用して骨髄除去を行い、6TGはその後の期間に化学選択のためだけに採用した。対照的に、本発明者らのレジメンにおいては、単剤としての6TGは、コンディショニング(宿主BMの細胞減少)および化学選択的薬(ドナーBMの増幅)の二重の役割を果たす。6TG毒性は、アポトーシスをもたらすために2ラウンドのDNA複製を必要とすることが知られており[33]、従って、遅延的影響を示す。本発明者らの結果は、6TGの用量および時間依存的な骨髄毒性影響も示した。従って、移植前に10mg/kgの6TGでコンディショニングすることによって、6TG骨髄毒性の遅延を相殺し、移植時にHSCに十分な生かし所を与えることで、6TGインビボ化学選択の成果が改善され得る。
【0090】
さらに、Porterらは、6TGを、0.25〜2mg/kgの間のかなり低用量で、移植後1ヶ月以上経ってから開始する短期間で採用し、5〜50%の間の多様な生着レベルを生じた。本発明者らの現行の研究においては、Hprt欠損BMを移植されたマウスは、移植後直後に開始される化学選択的薬の投与により、大幅に長い選択期間にわたり継続して5〜40倍も高い6TG用量を許容できることを確認した。
【0091】
6TGインビボ化学選択戦略の使用を臨床的に実現可能なアプローチに翻訳するために、正常HSCを遺伝子操作してHPRT欠損にする、つまり6TG耐性にする方法を開発する必要がある。さらに、本発明者らの現行の研究において、この戦略が、自家移植セッティングの状況のモデルである同系マウスにおける骨髄移植への採用に限定されることが重視されなければならない。この戦略が同種異系セッティングにおいても同等に有用であるか否かは、従来の骨髄破壊的なレジメンの毒性を回避するために強度を低くしたコンディショニングレジメンが通常使用されるため現時点では不明である。取り組む必要のあり得る潜在的な課題としては、造血悪性腫瘍のための同種異系移植の後に白血病細胞において生じる自発的な6TG耐性の可能性、および同種異系ドナー細胞がインビボで選択的に増幅された場合の移植片対宿主疾患の可能性のある憎悪が挙げられる。
【0092】
参考文献
【0093】
実施例2:HPRT欠損細胞の作製
本実施例は、異なるHPRT標的型shRNA候補配列を発現している第三世代レンチウイルスベクター、およびHPRTを標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)のヌクレオフェクションの両方を採用する、自家セッティングにおけるエクスビボ遺伝子療法への翻訳的応用に関する。標的遺伝子の永久的なノックアウトを達成するためにZFN構築物の一過性発現しか必要でなく、遺伝子工学手順の結果としての挿入突然変異誘発の可能性を軽減するため、後者のアプローチが有利である。これに関連して、この戦略は、新たな導入遺伝子を挿入して化学耐性を得るのではなく酵素欠損によって移植された細胞に選択的優位性を授けることを特徴とする。HPRT標的型shRNAは、HPRTを検出不能なレベルまで下方制御することに成功した。さらに、HPRTは、ZFNを使用してうまくノックアウトされている。
【0094】
上述のとおり、本明細書においては本発明の特定の態様を例示の目的で記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な改変を行うことができることが理解されよう。従って、本発明は添付の請求の範囲以外によって限定されない。