特許第6266716号(P6266716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266716単一サイクルでコンディショニングおよび化学選択を組み合わせる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266716
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】単一サイクルでコンディショニングおよび化学選択を組み合わせる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20180115BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20180115BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20180115BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20180115BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20180115BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61K35/28ZMD
   A61K35/12
   A61K31/52
   A61P7/00
   A61P31/00
   A61P31/18
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-164295(P2016-164295)
(22)【出願日】2016年8月25日
(62)【分割の表示】特願2014-506605(P2014-506605)の分割
【原出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-8090(P2017-8090A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】61/477,440
(32)【優先日】2011年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】笠原 典之
(72)【発明者】
【氏名】シストル ロバート エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ハッケ カトリーン
(72)【発明者】
【氏名】シャークメアリ アコス
(72)【発明者】
【氏名】クルックス ガイ エム.
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5997257(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0032003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 31/33−33/44
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-チオグアニン(6TG)、6-メルカプトプリン(6-MP)、またはアザチオプリン(AZA)から選択されるプリン塩基アナログを含む、非照射造血幹細胞(HSC)移植によって、対象における、造血の障害、血小板産生の障害および抗菌機能の障害の症状ならびにヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染および後天性免疫不全症候群(AIDS)の症状から成る群より選択される症状を治療する方法に用いるための薬剤であって、該方法が、
(a)プレコンディショニング工程として、哺乳動物対象に、該プリン塩基アナログを、2〜10mg/kg体重にて一回または二回用量で投与する工程;
(b)該プレコンディショニング工程の48〜72時間以内に、対象にヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)欠損ドナーHSCを生着させる工程; および
(c)対象に約1〜5mg/kgのプリン塩基アナログを2〜4日毎に2〜8週間という単一サイクルで継続的に投与する工程であって、該投与が、該生着させる工程(b)の直後から開始される工程
を含み、放射線を介するプレコンディショニング無しで行われる方法である、薬剤。
【請求項2】
症状が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染または後天性免疫不全症候群(AIDS)の症状である、請求項1記載の薬剤。
【請求項3】
症状が、造血の障害、血小板産生の障害または抗菌機能の障害の症状である、請求項1記載の薬剤。
【請求項4】
造血の障害が、異常ヘモブロビン症である、請求項3記載の薬剤。
【請求項5】
方法が、骨髄または造血幹細胞の移植をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項6】
前記対象が、ヒトである、請求項1〜5のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項7】
前記プリン塩基アナログが6TGである、請求項1〜6のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項8】
工程(a)および(c)において前記対象に投与される総6TG投薬量が105mgを超えない、請求項7記載の薬剤。
【請求項9】
工程(a)および(c)において前記対象に投与される総6TG投薬量が75mgを超えない、請求項7記載の薬剤。
【請求項10】
前記(c)の投与する工程が、前記生着させる工程の後に、3日毎にかつ4週間以内行われる、請求項1〜9のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項11】
前記対象が、75%を超える遺伝子操作された造血細胞を示す、請求項1〜10のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項12】
前記対象が、95%を超える遺伝子操作された造血細胞を示す、請求項1〜10のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項13】
前記移植されるHPRT欠損HSCが遺伝子操作されている、請求項1〜12のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項14】
前記移植されたHSCが自家または同系である、請求項1〜13のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項15】
前記移植されたHSCが同種異系である、請求項1〜13のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項16】
前記対象が骨髄破壊的な放射線で処置されない、請求項1〜15のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項17】
前記移植されるHPRT欠損HSCが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、小断片相同組換え(SFHR)鋳型鎖、阻害性RNA(siRNA)もしくはマイクロRNA(miRNA)、アンチセンスRNA、トランススプライシングRNA、リボザイム、細胞内抗体、またはドミナントネガティブもしくは競合的阻害タンパク質をコードする配列を導入することで、HPRT欠損にされている、請求項1〜16のいずれか一項記載の薬剤。
【請求項18】
前記移植されるHPRT欠損HSCが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)をコードする配列を導入することで、HPRT欠損にされている、請求項17記載の薬剤。
【請求項19】
前記移植されるHPRT欠損HSCが、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)をコードする配列を導入することで、HPRT欠損にされている、請求項17記載の薬剤。
【請求項20】
前記移植されるHPRT欠損HSCが、阻害性RNA(siRNA)をコードする配列を導入することで、HPRT欠損にされている、請求項17記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年4月20日に出願された米国仮出願第61/477,440号の恩典を主張し、その内容全体が参照により全体的に本明細書に組み入れられる。本出願を通して、様々な文献を参照する。本発明が関連する先端技術をさらに十分に説明するために、これらの文献の開示が全体的に本出願に組み入れられる。
【0002】
連邦政府から資金援助を受けた研究についての記載
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により付与されたグラント番号AI067769号の下、政府の支援を受けて行ったものである。政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
造血幹細胞移植(HSCT)は、多くの遺伝性障害およびリンパ造血悪性腫瘍の治療の頼みの綱である(1)。さらに、造血幹細胞(HSC)は一般的に、エクスビボ遺伝子療法の重要な標的の典型的なものである。HSCへの遺伝子導入により、単一遺伝子欠損を修正すること、および細胞毒性薬に対する正常BMの薬物感受性を変化させることの両方のための可能性のある戦略が提供される。これらの応用は有意な治療上の可能性を有するが、HSCへの低遺伝子導入によって限定されてきた。エクスビボ操作の間に専念する必要を最小限にする改善されたサイトカイン、フィブロネクチン支援型遺伝子導入、および遺伝子導入前にHSCを富化させる等の最近の進歩により、ヒト細胞への遺伝子導入の効率が改善され、ヒト遺伝子療法治験が向上されてきた(2)。しかし、この技術の応用を広げて、癌および単一遺伝子疾患の治療の成果を上げるために、HSCへの遺伝子導入の効率、および多数の形質導入細胞の生着が、大きな課題として残っている。
【0004】
遺伝子組換えHSCの生着を向上させ、HSCT後のリンパ造血再構築に必要な時間を短縮するために、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)等の薬耐性遺伝子(3)、または複数の薬耐性遺伝子1(MDR1)(4、US1996/017660)を採用するインビボ選択戦略が試験されてきたが、許容できない毒性(5)、または不十分な選択効率(6)のために、概して失敗に終わってきた。現在、O6-メチルグアニン-DNA-メチルトランスフェラーゼ(MGMT)の変異型がO6-ベンジルグアニンと組み合わせられた場合に、BCNUまたはテモゾロマイドに対する化学防御をもたらす能力について検査されているが(2、7、US1997/004917)、これらの薬剤はかなりの毒性の危険を及ぼし、最近の観察によると、変異型MGMTが高レベルで発現された場合には選択的不都合をもたらしうることが示唆されている(8)。US2003032003AAには、6TGにより、HPRT欠損細胞をインビボで選択するための選択戦略が記載されている。しかし、この特許出願においては、インビボ選択前のプレコンディショニングにおいて照射がまだ使用されているか、6TG投与の間を回復期としたサイクルでインビボ選択が行われている。
【0005】
さらに、示唆されている6TG用量は高く、長期にわたり投与される(55日間にわたり200mg/kgの総用量)。また、BMにおけるHPRT発現を不活化した後、6TGによってドナー細胞をインビボで選択するアプローチが、PorterおよびDiGregoriによって「干渉RNA仲介型プリンアナログ抵抗」(「iPAR」)として報告されている。この報告は、Hprtを標的とするshRNAを発現するレンチウイルスベクターによってHSCにおいてHPRTを不活化すること、およびこれらの変性造血細胞を6TGによりマウスにおいてインビボで富化することの実現可能性を実証した。しかし、このレポートでは、プレコンディショニングはまだ全身照射によって行われ、インビボ化学選択は移植の少なくとも4週間後まで開始されない。さらに、6TGは、短パルスとして、または中度の骨髄抑制しかないように選ばれる投薬量のいずれかで投与され、彼らの研究において採用される第二世代レンチウイルスベクターによって十分なレベルのHSC形質導入が得られたのか否かは明らかではない。全体的にみると、報告された生着レベルは変動しており、比較的中度のものであった。
【0006】
骨髄細胞を再構築しながら毒性を回避できる、より有効なHSCT方法の必要性が残っている。
【0007】
参考文献:
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明は、非照射造血幹細胞(HSC)移植の方法を提供する。典型的に、本方法は、プレコンディショニング工程として、哺乳動物対象に、一回または二回用量の2〜10mg/kg(体重)のプリン塩基アナログを投与する工程を包含する。本方法は、前記プレコンディショニング工程の48〜72時間以内に、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)欠損ドナーHSCを対象に生着させる工程;および対象に約1〜5mg/kgのプリン塩基アナログを2〜4日毎に生着後2〜8週間投与する工程をさらに包含する。本方法は、放射線を介したプレコンディショニング無しに行われる。従って、対象は、移植に備えるために骨髄破壊的な放射線で処置されないため、対象は骨髄破壊的な放射線により誘導される毒性を受けない。
【0009】
プリン塩基アナログの代表例としては: 6-チオグアニン(6TG)、6-メルカプトプリン(6- MP)、およびアザチオプリン(AZA)が挙げられる。一態様において、プリン塩基アナログは6TGである。一部の態様において、対象に投与される総6TG投薬量は105 mgを超えない; 典型的に、対象に投与される総6TG投薬量は75 mgを超えない。一態様において、プリン塩基アナログの投与は、3日毎に、そして生着工程の後4週間以内行われる。
【0010】
本方法により処置される対象は、75%を超える遺伝子操作された造血細胞を示す。一部の態様において、対象は95%を超える遺伝子操作された造血細胞を示す。
【0011】
移植されるHPRT欠損HSCは、当業者に公知の従来の方法を使用してHPRT欠損にされ得る。代表的な方法としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、小断片相同組換え(SFHR)鋳型鎖、阻害性RNA(siRNA)もしくはマイクロRNA(miRNA)、アンチセンスRNA、トランススプライシングRNA、リボザイム、細胞内抗体、またはドミナントネガティブもしくは競合的阻害タンパク質をコードする配列を導入することが挙げられるがこれらに限定されない。移植されたHSCは、自家、同系、または同種異系であり得る。
【0012】
一部の態様において、移植されるHPRT欠損HSCは遺伝子操作されている。対象は、遺伝性障害もしくは遺伝子障害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染もしくは後天性免疫不全症候群(AIDS)等のリンパ造血細胞に影響する後天性疾患、またはリンパ造血悪性腫瘍を有し得る。ドナーHSCの遺伝子操作は、細胞をHPRT欠損させるだけに留まらず、症状を治療または是正する働きもしてよい。
[本発明1001]
(a)プレコンディショニング工程として、哺乳動物対象に、6-チオグアニン(6TG)、6-メルカプトプリン(6-MP)、またはアザチオプリン(AZA)から選択されるプリン塩基アナログを、2〜10mg/kg体重にて一回または二回用量で投与する工程;
(b)該プレコンディショニング工程の48〜72時間以内に、対象にヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)欠損ドナーHSCを生着させる工程; および
(c)該生着させる工程の後に、対象に約1〜5mg/kgのプリン塩基アナログを2〜4日毎に2〜8週間投与する工程
を含む、非照射造血幹細胞(HSC)移植の方法であって、放射線を介するプレコンディショニング無しで行われる、方法。
[本発明1002]
前記プリン塩基アナログが6TGである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記対象に投与される総6TG投薬量が105mgを超えない、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記対象に投与される総6TG投薬量が75mgを超えない、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記(c)の投与する工程が、前記生着させる工程の後に、3日毎にかつ4週間以内行われる、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記対象が、75%を超える遺伝子操作された造血細胞を示す、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記対象が、95%を超える遺伝子操作された造血細胞を示す、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記移植されるHPRT欠損HSCが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、小断片相同組換え(SFHR)鋳型鎖、阻害性RNA(siRNA)もしくはマイクロRNA(miRNA)、アンチセンスRNA、トランススプライシングRNA、リボザイム、細胞内抗体、またはドミナントネガティブもしくは競合的阻害タンパク質をコードする配列を導入することで、HPRT欠損にされている、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記移植されるHPRT欠損HSCが遺伝子操作されている、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記移植されたHSCが自家または同系である、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記移植されたHSCが同種異系である、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記対象が骨髄破壊的な放射線で処置されない、本発明1001の方法。
[本発明1013]
前記対象が、遺伝性障害もしくは遺伝子障害、リンパ造血細胞に影響を及ぼす後天性疾患、またはリンパ造血悪性腫瘍を有する、本発明1001の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】6TGコンディショニングレジメンの最適化。用量決定調査として、HPRT-wtマウスに、1日目にビヒクル対照もしくは表記の通り2.5〜10mg/kgの間の様々な用量の6TG(n=3/群)、または1日目および3日目に2回用量の10mg/kg(n=3)をそれぞれ腹腔内注射した。最初の6TG投与から4日目に、パラホルムアルデヒド固定された骨切片をH&Eで染色し、BM組織構造を調べた。代表的な顕微鏡写真(40x倍率)をそれぞれの6TGコンディショニングレジメンについて示す。
図1B】6TGコンディショニングレジメンの最適化。対照ビヒクル、または1日目および3日目における二回用量の10mg/kgの6TGで構成された最適化されたコンディショニングレジメンで処置されたHPRT-wtマウスから得た、低(10x)および高(100x)倍率における全体および詳細なBM組織構造の代表的な顕微鏡写真である。4日目に組織学的分析を上述したように行った。
図2】HPRT欠損マウスにおける、コンディショニング用量の6TGで注射した後の進行性骨髄毒性の欠如、および6TGコンディショニングのみの場合の低生着率。(図2A)HPRT-wtおよびHPRT欠損マウスに、1および3日目に10mg/kg 6TGを腹腔内注射した。最初の6TG投与から7日後、パラホルムアルデヒド固定された骨切片をH&Eで染色し、BM組織構造を調べた。代表的な顕微鏡写真(40x倍率)を示す。(図2B)処置スケジュール:HPRT-wt雌レシピエントマウス(n=4)は-2日目に初回コンディショニング用量の6TG(10mg/kg、腹腔内)を受けた後、HPRT欠損雄BMを移植され、その後0日目に二回目のコンディショニング用量の6TG(10mg/kg、腹腔内)を受けた。初回6TG投与の7日後にBMを分析した。H&Eで染色されたパラホルムアルデヒド固定された骨切片(40x倍率)を示す。
図3】HPRT-wt対HPRT欠損マウスにおける、慢性低用量6TG骨髄毒性の用量反応および経時変化。HPRT野生型マウスおよびHPRT欠損マウスを、各パネルの上部に示すように、異なる投薬量の6TGまたはビヒクル対照で3日毎に処置した(n=3/群)。HPRT野生型マウスについては、処置の開始から60日後まで以下の時点において組織構造を調べた:ビヒクル対照(60日目)、6TG 0.25mg/kg(60日目)、6TG 0.5mg/kg(60日目)、6TG 1.0mg/kg(38日目)、6TG 2.5mg/kg(28日目)、6TG 5.0mg/kg(22日目)。HPRT欠損マウスについては、60日目に全動物について組織構造を調べた。H&Eで染色されたパラホルムアルデヒド固定された骨切片の代表的な顕微鏡写真(本来は40x倍率)を示す。
図4】6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択戦略の組み合わせの最適化。処置スケジュール:HPRT-wt雌レシピエントマウスは、-2日目に初回コンディショニング用量の6TG(10mg/kg、腹腔内)を受けた後、0日目に二回目のコンディショニング用量の6TG(10mg/kg、腹腔内)と共にHPRT欠損雄BMを移植された。次に、図示するように2.5mg/kgまたは5.0mg/kg 6TGの腹腔内注射を3日毎、2週間(図4A)または4週間(図4B)の間繰り返して、インビボ化学選択を行った。H&Eで染色されたパラホルムアルデヒド固定された切片から得た骨髄の代表的な顕微鏡写真(本来は40x倍率)を示す。
図5】6TGコンディショニングおよび化学選択を組み合わせて、HPRT-wtレシピエントにHPRT欠損ドナー由来BMを移植した後の長期造血再構築。棒グラフは、表記の通り4週間目(すなわち、化学選択期間直後)、ならびに移植後4ヶ月目、7ヶ月目および12ヶ月目にXY染色体FISH分析で決定した骨髄(BM)および末梢血白血球(PBL)中におけるドナー由来細胞のパーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本発明は、6TG骨髄毒性における6-チオグアニン(6TG)のチオグアニンヌクレオチドへのヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)媒介型変換の重要な役割を有効に活かす新規インビボ化学選択戦略を提供する。HPRT欠損自体は造血細胞発生または機能を損なわないため、移植に使用するための造血細胞から取り除くことができる。インビボ化学選択戦略は、HPRT野生型レシピエントの骨髄破壊的なコンディショニング、およびドナー細胞の単一サイクルインビボ化学選択プロセスの両方に6TGを使用して、HPRT欠損ドナーHSCでHSCTを行うことを含む。本発明は、HPRT活性が欠損している生着HSCが6TGの細胞毒性影響に対して高度に耐性であり、造血組織外に悪影響を全く及ぼすことなく6TGが選択的骨髄除去を誘導するような投薬スケジュールの開発および発見に基づいている。6TGコンディショニングおよび化学選択を組み合わせるこの戦略により、全体的に毒性の低い、HPRT欠損ドナーHSCの効率的かつ高度な生着が得られる。6TGインビボ化学選択は、HPRT欠損ドナー(または生着)BMから自己複製能を持つ多能性HSC集団を増幅させることで、免疫表現型が正常な骨髄(BM)の長期再構築を可能にする。
【0015】
本明細書に記載の高効率のかつ全体的に非毒性のコンディショニングおよび単一サイクルインビボ化学選択のための方法は、概して、HSCT生着効率および移植成果を改善し、エクスビボ遺伝子療法後に遺伝子操作された細胞に選択的優位性をもたらす戦略として応用可能である。インビボ化学選択戦略は、HPRT欠損ドナーHSCのプレコンディショニングおよび単一サイクル化学選択の両方のために、もっぱら6TG、または他のプリン塩基アナログを採用し、レシピエントBMの>95%を置き換えて高効率な生着および長期再構築を得ることが可能である。この戦略は、多数のエクスビボ操作されたHSCの生着を改善して、遺伝子療法の応用を全般的に広めるのに適用できる。
【0016】
定義
本出願において使用する全ての科学的および技術的用語は、特に定めない限り、当該分野において通常使用される意味を有する。本出願において、以下の語または句は明記する意味を有する。
【0017】
本明細書で使用する「非照射造血幹細胞(HSC)移植」とは、レシピエントが放射線を介する骨髄破壊的なコンディショニングに供されないことを意味する。代わりに、6TGを投与すること、典型的にはドナーHSCの生着前の48時間(生着当日も含む)の間に投与することによってコンディショニングを行う。
【0018】
本明細書で使用する「HPRT欠損」は、天然でHPRT欠損である細胞、および遺伝子操作を介してHPRT欠損にされた細胞の両方を含む。
【0019】
本明細書で使用する「ドナーHSC」または「ドナー細胞」とは、HSCが移植のレシピエントまたは別の対象に由来するのかどうかとは無関係に生着させる細胞を指す。従って、対象から収穫した細胞は改変され、同じ被検体に戻されて生着して「ドナー細胞」となり得る。これらは、本明細書において「ドナー細胞」、「生着細胞」または「移植細胞」と称され得る。
【0020】
本明細書で使用する「a」または「an」は、特に明記しない限り、少なくとも1つということを意味する。
【0021】
造血移植のためのコンディショニングおよび化学選択の組み合わせ
本発明は、非照射造血幹細胞(HSC)移植の方法を提供する。典型的に、本方法は、哺乳動物対象に一回または二回用量の2〜10mg/kg体重のプリン塩基アナログを投与する工程をプレコンディショニング工程として包含する。本方法はさらに、前記プレコンディショニング工程後48〜72時間以内に、対象にヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)欠損ドナーHSCを生着させる工程;および対象に約1〜5mg/kgのプリン塩基アナログを該生着工程後2〜8週間の間2〜4日毎に投与する工程を包含する。
【0022】
本方法は、放射線を介するプレコンディショニング無しに行われる。従って、対象は、移植に備えて骨髄破壊的な放射線で処置されることがないため、対象は骨髄破壊的な放射線により誘導される毒性を受けない。本方法は、どのような種類の放射線処置も受けたことのない対象、骨髄破壊的な放射線処置を全く受けたことのない対象、および過去に骨髄破壊的な処置を受けたことはあるが本明細書に記載の方法のためのプレコンディショニングの期間内および/または投薬においては受けていない対象等の多様な対象に対する使用が期待されている。例えば、対象は、典型的に、本明細書に記載するコンディショニングおよび化学選択を組み合わせる方法の2週間以内、さらには8週間以内に骨髄破壊的な放射線を受けてないものである。
【0023】
プリン塩基アナログの代表例としては、6-チオグアニン(6TG)、6-メルカプトプリン(6- MP)、およびアザチオプリン(AZA)が挙げられる。一態様において、プリン塩基アナログは6TGである。一部の態様において、対象に投与される総6TG投薬量は105 mgを超えない; 典型的に対象に投与される総6TG投薬量は75 mgを超えない。一態様において、プリン塩基アナログの投与は、生着工程後に4週間以内、3日毎に、行われる。
【0024】
6TGの代替物がプリン塩基アナログとして使用される場合、本発明の方法において使用する際の適切な用量を確認するための熟練の臨床医のための手引きとして公知のオンライン(例えば、rxlist.com)およびその他のリソースが利用可能である。例えば、小児患者および成人に対する6TG単剤化学療法の通常の経口用量は2mg/kg体重/日であり;4週間後に治療反応がみとめられない場合には、用量を3mg/kgまで増やすことができる。単回経口用量で35mg/kgもの量を与え、可逆的骨髄抑制がみとめられた。
【0025】
急性リンパ性白血病については、小児患者および成人に対する通常の初回投薬量は2.5mg/kg体重/日の6-MPである(平均的な成人において100〜200 mg、および平均的な5歳児において50mg)。急性白血病を患っている小児患者は、大抵の場合問題なくこの用量を許容した;これは、患者によっては数週間以上毎日継続され得る。もしこの投薬量で4週間後に臨床的改善およびはっきりとした白血球または血小板減少の兆候が無い場合には、毎日の投薬量を5mg/kgまで上げることができる。2.5mg/kg/日の投薬量は、急性リンパ性白血病を患う成人によっては1〜2週間以内に白血球数が急激に減少して、高い合計白血球数をもたらし得る。完全な血液学的寛解が得られたら、維持療法が必須と考えられる。維持用量は、患者によって変動する。6-MPの毎日の維持用量は、通常、単回用量が1.5〜2.5mg/kg/日である。
【0026】
6-TGおよび6-MPの投薬量はいくぶんか比較可能である一方で、AZAの投薬量は比較するのがより難しい。なぜなら、まず6-MPに生物活性化する必要があり、白血病を治療するために通常は使用されないからである。固形臓器移植を受けた患者については、拒絶を防ぎ、毒性を最小限するために必要なAZAの用量は、個々の患者によって変動し、注意深い管理が必要となる。初回用量は、通常、毎日3〜5mg/kgであり、移植時から開始する。AZAは、通常、一日一回の用量で、移植当日に、および少数の事例では移植の1〜3日前に与えられる。毎日1〜3mg/kgの維持レベルまで用量を減らすことが通常可能である。AZAの用量は、拒絶の恐れがあるため、毒性レベルまで増量するべきではない。
【0027】
HPRT欠損ドナーHSCは、天然型のHPRT欠損であってもよいし、または遺伝子操作によってHPRT欠損にされ得る。これに関連して、「ドナーHSC」とは、HSCが移植のレシピエントまたは別の対象に由来するのかとは関係なく生着される細胞を指す。移植されるHSCは、自家、同系、または同種異系であり得る。
【0028】
遺伝子操作は、当業者に公知の様々な手段のいずれを使用しても行うことができる。遺伝子操作の適切な手段の例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、小断片相同組換え(SFHR)鋳型鎖、阻害性RNA(siRNA)もしくはマイクロRNAs(miRNA)、アンチセンスRNA、トランススプライシングRNA、リボザイム、細胞内抗体、またはドミナントネガティブもしくは競合的阻害タンパク質をコードする配列を導入することが挙げられるが、これらに限定されない。操作は、ドナーHSCまたは前駆細胞を用いて直接行うことができる。これらの技術は、造血前駆細胞または造血幹細胞に直接、および造血前駆細胞または造血幹細胞に分化または転移分化できる他の種類の成人もしくは胚幹細胞または誘導多能性幹細胞を含むが、これらに限定されない、様々な種類の細胞型の遺伝子操作に使用できる。
【0029】
一部の態様において、移植されるHPRT欠損HSCは、特定の治療目的に適するように遺伝子操作されている。例えば、ドナーHSCを操作して、遺伝性遺伝子欠陥を修正するか、細胞毒性薬に対する正常骨髄の薬物感受性を変化させて、リンパ造血細胞に影響を及ぼす感染性微生物への耐性を授けるか、内因性免疫系を置き換えるかもしくはリセットするか、または内因性骨髄の置き換えおよび移植片対白血病/リンパ腫効果の誘導によってリンパ造血悪性腫瘍と闘うことができる。
【0030】
さらに具体的には、遺伝性遺伝子欠陥としては、鎌状赤血球貧血、サラセミア、遺伝性球状赤血球症、G6PD欠損等の異常ヘモブロビン症を含む造血の障害、重度の複合免疫不全(SCID)、慢性肉芽腫性疾患(CGD)等の免疫学系または抗菌機能の障害、ウィスコット-アルドリッチ症候群(WAS)等の凝固障害をもたらす血小板産生の障害、ならびに様々な形態の表皮水疱症(EB)およびムコ多糖症等の組織損傷の部位に移動する造血細胞の遺伝子工学によって改善され得るその他の遺伝的構造または代謝障害が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
化学毒性薬に対する骨髄の薬物感受性の改変が有利になり得る疾患としては、最大許容投薬量が骨髄毒性によって限定される化学療法剤により治療される悪性疾患が挙げられるがこれらに限定されない。これらとしては、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、肝臓癌、頭頸部癌、腎細胞癌、膀胱癌、子宮頸癌、卵巣癌、皮膚癌、肉腫、および神経膠腫が挙げられる。
【0032】
骨髄または造血幹細胞の移植を使用して、内因性免疫系を置き換えるかまたはリセットする疾患としては、炎症性腸疾患、強皮症、およびエリテマトーデスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0033】
感染性微生物に対する耐性を授けることが有利となり得る疾患としては、HIV感染およびAIDS、HTLV感染、およびパルボウイルスB19感染が挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
骨髄または造血幹細胞の移植により治療されるリンパ造血の悪性または前悪性疾患としては、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、リンパ腫、および骨髄異形成症候群が挙げられるがこれらに限定されない。
【0035】
本技術の治療的適用の別の例は、放射線損傷および化学毒素によって生じる内因性リンパ造血に対する後天性損傷の後で骨髄または造血幹細胞移植の成果を改善することである。
【0036】
本技術の非治療的であるが商業的に有用な応用としては、内因性リンパ造血がほぼ完全にヒトドナー由来の細胞で置き換えられるヒト化動物モデルを作製するために使用することがある。このような動物が作製されれば、例えば、ヒト疾患への用途を検討している新規薬の骨髄毒性を試験するために使用できる。動物の種によって様々な薬に対する造血の感受性は異なり得るためこれは有利であり、ヒト化動物モデルにおいてそのような薬を試験することが最も望ましい。
【0037】
典型的に、対象は哺乳動物である。哺乳動物対象は、マウス、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、霊長類またはヒトであり得る。一態様において、対象はヒトである。
【0038】
投与および投薬量
組成物は、しばしば医薬上許容可能な担体と共に、任意の適切な手法によって投与される。本発明に関連して対象に投与処置するための適切な方法が存在し、特定の組成物を投与するために複数の経路が使用できるが、多くの場合に別の経路よりも特定の経路がより即時的かつより有効な反応を提供する。
【0039】
本発明に関連して患者に投与される用量は、患者において有益な治療反応を時間とともにもたらすか、または疾患の進行を阻害するのに十分なものであるべきである。従って、組成物は、有効な応答を引き出す、および/または疾患に由来する症状および/もしくは合併症を緩和、低減、治癒するか、もしくは少なくとも部分的に阻むのに十分な量で、対象に投与される。これを達成するのに十分な量を「治療上有効な用量」と定義する。
【0040】
本明細書に開示する治療的組成物を投与する経路および頻度、ならびに投薬量は、個体ごとおよび選択される薬によって変動し、これは標準的な技術を使用して簡単に確立し得る。一般的に、医薬組成物は、注射により(例えば、皮内、腫瘍内、筋内、静脈内もしくは皮下)、経鼻的に(例えば、吸引)、または経口的に投与され得る。個々の患者については代替的なプロトコールが適切でありうる。
【0041】
当業者に理解されるように、用量は、mg/kg体重からmg/体表面積に変換でき、後者はヒトを含む大きい哺乳動物対象で使用するのに適している。相対成長率の計算機は当該分野で公知であり、オンラインで簡単に入手できる。一般的に、相対成長率は0.75〜0.80の指数を使用する。詳細については、WestおよびBrown、J Exp Bio 208、1575-1592、2005を参照のこと。さらに、米国食品医薬品局は「Guidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」を発行しており、これはOffice of Training and Communications Division of Drug Information、HFD-240 Center for Drug Evaluation and Research、米国食品医薬品局、5600 Fishers Lane Rockville、MD 20857から入手できる。
【0042】
例えば、5mg/kgの6TGは、20gのマウスに対する15.08mg/m2の用量に相当する。これは、65kgのヒトに対する0.4mg/kgに相当する。6TGの経口投与後の吸収は30%と推定されるため、マウスにおけるこの腹腔内用量は、ヒトにおける経口投与後の約1.3mg/kgの吸収用量に相当する。小児患者および成人における6TG単剤化学療法のための従来の経口用量は、2mg/kg体重/日であり;4週間後に治療反応がみとめられない場合には、用量を3mg/kgに増やすことができる。
【0043】
本発明の方法は、対象に対する過剰照射または過剰6TG投薬量のいずれかの後の毒性を回避するという予想外の利点を提供する。驚くべきことに、治療過程の間に105mg未満の総6TG投薬量を使用し、2〜8週間の間に、有効なコンディショニングおよび骨髄の再構築を達成することができる。65mg未満の総6TG投薬量、かつわずか2週間で、有効な生着が観察された。さらに、請求の方法は、個々の対象における毒性をモニタリングし、および各対象について最小の毒性で有効な生着を最適化するように投薬を調節するという選択肢を与える。一部の態様において、対象は、生着後処置の間に1〜2.5mg/kg体重の6TGを投与される。本方法に従って処置される対象は、75%を超える遺伝子操作造血細胞を呈する。一部の態様において、対象は、95%を超える遺伝子操作造血細胞を呈する。移植および化学選択の後の様々な間隔において末梢血または骨髄をサンプリングすることによって、対象における生着の成果を確認できる。当業者に一般的に馴染みのある多様な標準的な技術を用いて、HPRT遺伝子破壊、ノックダウン、または機能活性の低減のレベルをモニタリングすることによって末梢血単核細胞を検査でき、該標準的な技術としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量リアルタイムPCR(Q-PCR)、サーベイヤーヌクレアーゼアッセイ(「Cel-I アッセイ」とも称される)、サザンブロット分析、ウェスタンブロット/免疫ブロット分析、免疫組織化学または免疫細胞化学、細胞内染色を用いるフローサイトメトリー分析、HPRT酵素活性分析、HPLC、質量分析等が挙げられるがこれらに限定されない。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、本発明を例示し、当業者が本発明を実行および使用するのを助けるために提示する。実施例は、本発明の範囲を限定することを全く意図していない。
【0045】
実施例1: 6-チオグアニンのみでのプレコンディショニングおよびインビボ化学選択の組み合わせは、HPRT欠損骨髄での正常造血の高効率な再構築を達成する
6-チオグアニン(6TG)等のプリンアナログは、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)によるヌクレオチドへの変換の際に骨髄毒性を生じる。本実施例は、HPRT欠損HSCのコンディショニングおよびインビボ化学選択の両方のために、6TGを単剤として採用する新規かつ高効率の戦略の開発を示す。HPRT野生型マウスおよびHPRT欠損トランスジェニックマウスにおける6TG骨髄毒性の用量応答および経時変化をまず比較した。骨髄抑制コンディショニング、そして直後の同系HPRT野生型レシピエントに移植されたHPRT欠損トランスジェニックドナー骨髄(BM)のインビボ化学選択に6TGを採用するために投薬量およびスケジュールパラメーターを最適化した。
【0046】
適切な用量において、6TGは、HPRT野生型マウスにおいて範囲外の造血組織に悪影響を全く及ぼすことなく選択的骨髄毒性を誘導し、他方で、HPRT活性が欠けているHSCはその細胞毒性影響に高度に耐性であった。6TGコンディショニングおよび移植後化学選択の組み合わせは、着実に約95%のHPRT欠損ドナーBMの生着を達成し、総合的な毒性は低かった。一次および二次レシピエントの両方において免疫表現型が正常なBMの長期的な再構築を達成した。これらの結果は、6TGの単剤が、照射を必要としない骨髄抑制コンディショニング、およびHPRT欠損ドナー細胞のインビボ化学選択の両方に使用できるという概念の実証を提供する。これらの結果は、6TGの骨髄抑制効果を、移植の前(コンディショニングとして)および後(化学選択として)の両方に適用することによって、HPRT欠損造血幹細胞の高効率の生着が達成できることを示す。
【0047】
造血幹細胞を使用するエクスビボ遺伝子療法の臨床的有効性は、移植細胞に選択的優位性を授けることに依存したままである[1、2]。生着を向上させ、リンパ造血再構築に必要な時間を短縮するために、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)[3]または多剤耐性遺伝子1(MDR1)[4、5]等の薬耐性遺伝子を採用するインビボ選択戦略が検査されたが、許容できない毒性[6]または不十分な選択効率[7]によって全般的に失敗している。現在、O6-メチルグアニン-DNA-メチルトランスフェラーゼ(MGMT)の変異型が、O6-ベンジルグアニンと組み合わせて、BCNUまたはテモゾロマイドに対する化学防御をもたらす能力について試験されているが[8、9]、これらの剤もかなりの毒性リスクを引き起こし、最近の観察によれば変異型MGMTは高レベルで発現された場合には選択的不都合をもたらし得ることが示唆されている[10]。
【0048】
とりわけ、これらのアプローチは、外因性薬耐性遺伝子を過剰発現している造血前駆細胞を、骨髄破壊的な照射でプレコンディショニングされたレシピエントに移植することに依存してきた; しかし、通常は細胞毒性薬の活性化に必須である内因性酵素のレベルを低減することによっても化学的抵抗を与えることができる。これに関連して、本発明者らは、高レベルのプリンヌクレオチドサルベージ経路酵素ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)が、プリンアナログ6-チオグアニン(6TG)に対する感受性を高めることを以前に観察している[11]。6TGの代謝変換の最初の工程は、リボース5-リン酸の添加を媒介してチオグアノシンモノリン酸(TGMP)を生成するHPRTにより触媒される[12]。従って、6TGの細胞毒性は、チオ-dGTPへのHPRT媒介型変換について本質的に含意し、次にこれがDNAに導入されて、無益なミスマッチ修復およびその後のアポトーシスを誘導する。
【0049】
活性の低減により骨髄保護を授けるためには、内因性薬物活性化酵素は、造血前駆細胞において通常は高発現しなければならず、これは正常造血には必須ではない。実際、造血前駆細胞は通常は高レベルのHPRTを発現し[13-16]、これにより6TGに対して極度に感受性が高くなる。確かに、6-メルカプトプリン(6MP)、アザチオプリン(Aza)、および6TG等のプリンアナログは、半世紀の間、白血病の治療、特に小児患者のため[17]、そして臓器移植患者における免疫抑制のため、より最近では自己免疫疾患のために臨床的に使用されてきた。6TGが高用量で臨床的に使用された際には、骨髄毒性が最も頻度が高く一貫した悪影響であり、適切な濃度で短期間の間に投与された場合には、6TGは骨髄抑制が強力で、正常HPRT野生型動物において他の組織に対して毒性がほとんどない[11]。
【0050】
対照的に、HPRT欠損動物由来の骨髄(BM)は6TGに対して高度に耐性である[11]。しかし、とりわけ、本発明者ら[11]およびその他[18]は、造血がHprt-ノックアウト動物においては表現型的および機能的に正常であることをみとめ、または巨赤芽球性貧血の症例がヒトにおける遺伝性HPRT欠損(レッシュ-ナイハン症候群)に関連するが[19]、これはアデニンの経口投与によく反応することが報告されている[20]。さらに、HPRT欠損は、ヒトまたは動物における免疫系の全般的な障害に全く関連しないと思われた[21]。
【0051】
これらの観察は、6TG耐性であるがそれ以外は正常であるHPRT欠損造血前駆細胞が、6TG処置を受けているHPRT野生型レシピエントに移植された際に選択的優位性を有するべきこと、およびこの戦略を使用してエクスビボ遺伝子療法の成果を改善できることを示唆している。実際、PorterおよびDeGregori[22]は、Hprt標的型shRNAを発現しているレンチウイルスベクターでHSCを形質導入すること、およびこれらの操作された造血細胞をマウスにおける6TG化学選択によってインビボで富化させることの実現可能性を既に実証している。しかし、この先の報告において、6TGは中度にしか骨髄抑制でないように選択された投薬量か、移植後4週間以上経って開始される短期間のみの選択のいずれかで採用され、全身照射によるプレコンディショニングにも関わらず、生着の成果は比較的中度で、5〜50%の間で大きく変動した[22]。
【0052】
本発明者らは今回、6TG投与の用量、タイミングおよび継続時間を改変した際の、HPRT欠損骨髄を移植後の生着および造血再構築に対する影響を系統的に検査した。変数としてのベクター形質導入効率を排除するために、Hprtノックアウト動物由来のBMを「理想的な」ドナー細胞として採用することで、(i)HPRT野生型レシピエントの骨髄抑制コンディショニングのために移植前、および(ii)HPRT欠損ドナー細胞集団の化学選択的増幅のために移植後、の両方において6TG投薬量、およびスケジュールパラメーターを改変することによる影響に焦点を当てることができた。それゆえに、プレコンディショニングおよびインビボ化学選択の両方のために6TGを単剤として連続して採用する新規レジメンの開発を本明細書に記載し、この組み合わせレジメンが高効率の生着および長期再構築を迅速かつ着実に達成することを示す。
【0053】
材料および方法
マウス
Hprt欠損B6.129P2-Hprt1b-m3/J(CD45.2)マウス、Hprt野生型(wt)C57BL/6J、およびB6.SJL-PtprcaPepcb/BoyJ(CD45.1)マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から最初に得た。B6.129P2- Hprt1b-m3/Jマウスは、プロモーターにわたる55kbの欠失、およびHprt遺伝子の最初の2エキソンを担持する[23]。マウスを繁殖させ、施設ガイドラインに準じた標準的な条件下で施設特有の非病原体動物施設にて維持した。
【0054】
6TG処置
C57BL/6JおよびB6.129P2-Hprt1b-m3/Jマウスに、200μlの様々な用量の6TG(Sigma-Aldrich、Saint Louis、MO)を、異なる時点にて、図面のキャプションに記載の通りに腹腔内(i.p.)注射した。対照動物には200μlの滅菌H20を腹腔内注射した。
【0055】
骨髄移植および6TGインビボ化学選択
雌レシピエントC57BL/6J(HPRT-wt)またはB6.SJL-PtfprcaPepcb/BoyJ(HPRT-wt、CD45.1)マウスを、HSCTの48時間前に10mg/kgの6TGで腹腔内注射により処置した。HSCTについては、B6.129P2-Hprt1b-m3/J雄マウスから単離した0.8〜1 x 107の有核BM細胞(CD45.2)をHPRT-wtレシピエントに静脈内注射した。6TG(10mg/kg)を再び2時間後に、その後は3日毎に5mg/kgで4週間、腹腔内注射により投与した。二次レシピエントマウスへの連続移植を、上記と同じ細胞用量および6TGプレコンディショニング/化学選択レジメンを使用して、ただし6ヶ月前に6TGインビボ化学選択を用いた移植を経た一次レシピエントマウス由来のBMを使用して、行った。
【0056】
マウス染色体XおよびY特異的蛍光インサイチューハイブリダイゼーション
マウス特異的全染色体Y-paintプローブ/RAB9(XqF1)DNAプローブミックス(Kreatech、Amsterdam、Netherlands)を製造元のプロトコールに従って用いて、BMおよびPBL細胞に対してFISHを行った。雌レシピエントC57BL/6Jマウス中の雄ドナーHPRT-wt細胞のパーセンテージを決定するために、適切な二重および三重カラーフィルターを備えた蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いて200個の核/スライドを数えた。FISHを分析するために以下の基準を適用した:(1)核の質をDAPI染色を介して評価した、(2)Y-染色体についての緑色蛍光シグナルを採点した、(3)X-染色体についての赤色蛍光シグナルを採点した、(4)Y-染色体核についての緑色蛍光シグナルが不在の場合は、1つしかX-染色体が検出されなくても、雌と記録した(補足図S1;補足図についてはExperimental Hematology 2012、40:3-13を参照のこと)。
【0057】
造血組織の免疫表現型分析
マウスBD Fcブロック(BD Biosciences、San Jose、CA)でブロックした後、BM、PBL、胸腺、または脾臓細胞を、CD45、CD45.2、CD4、CD8、Mac1/Gr1、B220、Sca-1、c-kit、および系統抗体カクテルに対するFITC-、PE-、PerCP-またはAPC-結合ラット抗マウス抗体で染色した。抗体は、Biolegend(San Diego、CA)またはBD Biosciencesから受け取った。フローサイトメトリーデータはBD FACSDivaを実行してBD LSRII(BD Biosciences)上で獲得し、FlowJoソフトウェア(TreeStar、Ashland、OR)(補足図S2)を用いて分析した。
【0058】
病理組織分析
この調査で使用した全マウスの剖検、ならびに全ての胸郭、腹部器官、および骨髄の組織学的検査はUCLA Division of Laboratory Animal Medicine Diagnostic Service Laboratoryにより行われた。組織は必要であれば通常通りに処理または脱灰し、パラフィン切片を切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。
【0059】
統計的分析
QuickCalcs統計ソフトウェアプログラム(Graphpad Software Inc.)を用いてデータを分析した。対応のないt検定を使用して、p値を計算し、p<0.05を統計的に有意と考慮した。
【0060】
結果
HPRT-wtマウスにおける6TGの急性骨髄毒性
造血前駆細胞における高レベルのHPRT発現は、6TGの選択的骨髄毒性影響を媒介し、コンディショニングレジメンとしての使用が可能であると推定された。従って、本発明者らは、HPRT-wtマウスに6TGを様々な投薬量でボーラス注射した後のBMに対する短期間の影響を検査した。2.5mg/kg、5.0mg/kg、または10mg/kgの単回用量の6TGでの腹腔内注射を1日目に、または10mg/kgの二回用量での注射を1および3日目に行い、BM組織構造を4日目に検査した。総6TG投薬量が増加すると共に骨髄毒性の上昇がみとめられた(図1A)。血管構造が徐々に顕著になり、赤血球および骨髄系統の両方の細胞が枯渇した。血管内皮、間葉細胞、いくらかの成熟顆粒球およびマクロファージ、ならびに時折造血前駆細胞のみが、試験された最高用量の6TGで残っていた(図1B)。
【0061】
上記レジメンのいずれでも、4日目に容易にみとめられる臨床的兆候は観察されなかったが、観察期間を延長した際には、7日目までに体重減少および四肢の蒼白が見られた。BMの組織学的検査は、追加用量の6TGを投与しなくても、4および7日目の間に重症度が上昇することを示した(図1A、2A)。臨床および組織学的所見に従って、二回用量の10mg/kg 6TGで処置し、7日目に分析したHPRT-wtマウスのBMは、ビヒクル対照で処置されたHPRT-wtマウス(1.1x107±0.2x107、n=3)(p<0.01)と比べて、1本の大腿骨および脛骨から回収したBM有核細胞数の有意な定量的減少(4.7x106±1.0x106、n=3)を示した。
【0062】
フローサイトメトリーによる残ったBM造血細胞の免疫表現型分析(表1)から、長期多分化再構築活性を有するHSCを含むKLS(lin-/c-kit+/sca-1+)前駆細胞の相対的比率が[24]、4日目までに有意に3分の1に減少し(p<0.01)、7日目までに10分の1に減少した(p<0.001)ことが明らかになった(表1-iii、1-iv)。成熟CD8+およびCD4+T細胞の相対的パーセンテージは、6TG投与の後、時間とともに徐々に上昇し、7日目までには対照と比べて7倍まで到達し(p<0.001)、これは、BM組織構造においても見られるように大々的に拡張した血管および末梢血/出血の流入によるものと思われる。B220+細胞の相対的パーセンテージは、4日目までに有意な変化は示さなかったが、6TG投与後7日目までには対照の二倍になった。
【0063】
(表1)6TGコンディショニングレジメン後のBM造血細胞の免疫表現型分析
BM細胞を以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC、CD4-PE、CD8-APC、B220-PerCP、Mac1/Gr1-PE、Sca-1-PE、およびc-kit-FITC、フローサイトメトリーで検査した。処置および分析スケジュールは小文字のローマ数字で示し、図1と同じである。(i): 1日目にビヒクル対照、4日目に分析。(ii)1日目に10mg/kgの単回用量の6TG、4日目に分析。(iii):1および3日目に10mg/kgの二回用量の6TG、4日目に分析。(iv)および(v):1および3日目に10mg/kgの二回用量の6TG、7日目に分析。最後の2つの欄は、HPRT-wt(iv)およびHPRT欠損(v)マウスにおける同じ6TG投薬量およびスケジュール(10mg/kg 6TG×二回用量)の結果をそれぞれ示す。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは合計CD45+細胞の平均%±SDとして表す(n=3/群)。
【0064】
とりわけ、肝臓酵素はHPRT-wtマウスにおけるこのコンディショニングレジメンの後に上昇せず、この投薬量における造血前駆細胞についての6TG細胞毒性の選択性を示し、骨髄抑制コンディショニングレジメンとしての使用の可能性を示唆している。
【0065】
HPRT欠損マウスにおける6TGコンディショニング投薬量での骨髄毒性の欠如
上記所見とは対照的に、HPRT欠損マウスを最大投薬量で処置した場合(1および3日目に10mg/kgの二回用量の6TG)、骨髄組織構造は7日目に完全に影響を受けないままであり(図2A)、ビヒクル対照群のものに匹敵した(図1A)。重要なことに、6TG処置されたHPRT欠損マウスの1本の大腿骨および脛骨から得た有核BM細胞の総計数(1.5x107±0.3x107、n=3)も、ビヒクル対照で処置されたHPRT-wtマウスのものに匹敵し(1.1x107±0.2x107、n=3)、同じ6TGレジメンで処置されたHPRT-wtマウス(4.7x106±1.0x106、n=3)よりも有意に高かった(p<0.005)。
【0066】
さらに、6TG処置されたHPRT欠損マウスのBM中の造血細胞亜集団の比率(表1-v)は、ビヒクル対照で処置されたHPRT-wtマウス(表1-i)および未処置HPRT-wtマウス(表2、BM%の欄)、ならびに未処置HPRT欠損マウス(表3、BM%の欄)のものに匹敵した。
【0067】
(表2)処置を受けていないHPRT-wtマウスにおける造血細胞の免疫表現型分析
BM、PBL、脾臓(S)および胸腺(T)を、以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC(BM、PBL、T、S)、CD4-PE(BM、PBL、T、S)、CD8-APC(BM、PBL、T、S)、Mac1/Gr1-PE(BM、PBL、S)、B220-PerCP(BM、PBL、S)、Sca-1-PE(BM)、およびc-kit-FITC(BM)、フローサイトメトリーで検査した。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45+細胞の平均%±SDとして表した(n=3/群)。
【0068】
(表3)処置を受けていないHPRT欠損マウスにおける造血細胞の免疫表現型分析
BM、PBL、脾臓(S)および胸腺(T)を、以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC(BM、PBL、T、S)、CD4-PE(BM、PBL、T、S)、CD8-APC(BM、PBL、T、S)、Mac1/Gr1-PE(BM、PBL、S)、B220-PerCP(BM、PBL、S)、Sca-1-PE(BM)、およびc-kit-FITC(BM)、フローサイトメトリーで検査した。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45+細胞の平均%±SDとして表した(n=3/群)。
【0069】
まとめると、これらの結果は、7日間にわたって骨髄毒性が次第に上昇する中、10mg/kgの二回用量までの6TGが、HSCT前に3日間の間良好に耐えることができる有効なコンディショニングレジメンとして採用され得ることを示唆した。
【0070】
HPRT-wtレシピエントにおける6TGコンディショニング後のHPRT欠損BMの移植
上記確立したスケジュールに基づいて、本発明者らは、HPRT-wtレシピエント(CD45.1)において6TG(10mg/kg腹腔内)をコンディショニングレジメンとして採用し、上記確立したスケジュールごとに、移植48時間前に一回用量(今回は1日目ではなく-2日目に指定)、および移植当日に一回用量(3日目ではなく0日目に指定)を投与した。コンディショニング後、HPRT-wtレシピエントにHPRT欠損コンジェニックドナー(CD45.2)由来のBMを移植した。
【0071】
4日目に、髄は、初期前駆細胞が少なくなり、血管分布が増え、細胞充実度の低減を示し(図2B)、HPRT欠損BMを移植されたこれらの6TGコンディショニングされたHPRT-wtマウス(3.8x106±0.5x106、n=4)から回収した有核BM細胞の総計数は、ビヒクル対照で処置したHPRT-wt群(1.1 x107±0.2x107、n=3)と比べてまだ有意に低減していた(p<0.001)。BMのフローサイトメトリー分析から、4日目には17.8%±4.4%の合計細胞集団しか、ドナーHPRT欠損CD45.2+造血細胞から誘導されなかったことが示された。
【0072】
慢性低用量6TGでの処置後の骨髄毒性の閾値
本発明者らの上記結果は、6TGプレコンディショニングのみでは高レベルの生着を得るのに十分ではないかもしれないことを示すため、本発明者らは、次に、低用量の6TGでの慢性処置を施された移植されていないマウスにおいて用量決定調査を行った。HPRT-wtおよびHPRT欠損マウス(n=3/群)には、ビヒクルのみ、0.25mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.5mg/kg、または5.0mg/kgの6TGを、3日毎に、長くて60日間腹腔内注射した。HPRT-wtマウスにおいて、ビヒクル対照群、ならびに0.25mg/kgおよび0.5mg/kgの6TG群は、60日間にわたり100%の生存率を示し、0.25mg/kgおよび0.5mg/kgの6TG群におけるBMの組織学的検査は60日目に正常細胞充実度を示した(図3)。
【0073】
対照的に、HPRT-wt1.0mg/kg 6TG群では、38日目(13mg/kg合計投薬量)、42日目(14mg/kg合計投薬量)、および51日目(17mg/kg 合計投薬量)に死亡を招いた(表S1)。より高い投薬量にて、2.5mg/kgまたは5mg/kgの6TGの注射を繰り返し受けたHPRT-wtマウスは、苦痛(不活発、前かがみの姿勢、毛繕いの欠如、食欲不振)、貧血(四肢の蒼白)、および>10%の体重減少の進行性の臨床的兆候を一貫して示し、28日目(2.5mg/kg 6TG群;22.5mg/kg合計投薬量)および22日目(5.0mg/kg 6TG群;35mg/kg合計投薬量)に施設ガイドラインに従った屠殺をそれぞれ必要とした。1.0mg/kg 6TG群から得たBMの組織学的検査では、いくつかのアポトーシスの外観、および低投薬量群よりも多くの芽細胞が観察され、損傷に対する初期活性化応答を反映していると思われた(図3;38日目)。高投薬量群も、細胞充実度が有意に低減し、血管構造の拡大を示し、病変の重症度がそれぞれの群における6TGの累積投薬量に比例していた。2.5mg/kgの用量の6TGで繰り返し処置されたマウスは、細胞充実度の低減および広範囲のアポトーシスを示した(28日目)。5mg/kgの最も高い慢性投薬量において、BMは顕著に枯渇し、生存している細胞のほとんどが骨髄系統のものであった(22日目)。
【0074】
HPRT-wtマウスとは対照的に、全てのHPRT欠損マウスは、注射した6TGの投薬量(上記と同じ投薬スケジュールに従って105mg/kgの最大総用量まで投与された)とは無関係に、実験の継続期間(60日間)の間生存した(表S1)。6TG投薬量に関係なく、どのHPRT欠損マウスにおいても、60日目の実験終了時において有意なBM病理は観察されなかった(図3)。心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓および脾臓を含むその他の検査組織において、処置に関連する有意な異常は観察されなかった。従って、HPRT欠損マウスは、HPRT-wtマウスにおいては致死的な骨髄毒性を生じた1.0mg/kg、2.5mg/kg、および5.0mg/kg用量での慢性6TG処置で毒性影響は示さなかった。
【0075】
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択の組み合わせは、HPRT欠損BMの着実かつ高効率の生着を達成する
上記用量決定調査に基づいて、本発明者らは、次に、6TGプレコンディショニングを低用量の6TGの継続的な投与と組み合わせて、HPRT-wtレシピエントにおけるHPRT欠損BMの移植直後に開始した場合に、生着ドナー細胞のさらなる化学選択的増幅を達成できるかどうかを問うた。従って、雌HPRT-wtマウスを6TG(10mg/kg、腹腔内)でプレコンディショニングし、先に確立したコンディショニングスケジュールごとに、移植の48時間前(-2日目)に一回用量および移植当日(0日目)に一回用量を投与した。次に、HPRT-wt雌レシピエントにHPRT欠損雄BMを移植し、上記慢性骨髄毒性の結果に基づいて、レシピエントをさらに、2.5mg/kgの用量の6TGで3日毎に2週間(30mg/kg合計投薬量)もしくは4週間(42.5mg/kg)繰り返し処置するか、または5.0mg/kgの用量の6TGで3日毎に2週間(40mg/kg合計投薬量)もしくは4週間(65mg/kg合計投薬量)繰り返し処置した。2週間または4週間のインビボ化学選択期間の直後に分析をそれぞれ行った(図4)。
【0076】
予想通り、6TGコンディショニング、HSCT、および6TGインビボ化学選択手順の組み合わせは良好に許容され、苦痛の兆候は観察されなかった。全ての6TG処置群において、移植された動物の100%が生存した(2週間の処置:n=3、および4週間の処置:n=8)。6TG処置動物において移植後初めの1週間目の間に体重は減少したが安定し、全ての動物がその後正常な体重を取り戻した。病理組織学的分析により、6TG化学選択投薬量または継続時間とは無関係に、移植された動物における総合的な細胞充実度および造血が、未処置HPRT-wt対照と変わらないことが示された(図4)。
【0077】
染色体XY-FISH[25、26]は、2週間の6TG化学選択を受けた群において、その時点のBMが既に89.3%±1.7(2.5mg/kg群)および95.5%±1.2(5mg/kg群)のレベルのドナー由来髄で高度に再構築されていることを示した。2週間目のドナー由来末梢血白血球(PBL)のパーセンテージは、それぞれ13.0%±4.6(2.5mg/kg群)および12.7%±2.9(5.0mg/kg群)であった(表4)。インビボ化学選択をHSCT後4週間継続した場合、ドナー由来BM細胞のパーセンテージは、同じく2.5mg/kg群(95.3%±0.9)および5.0mg/kg群(96.7%±1.2)の両方において極めて高いことが分かった。とりわけ、ドナー由来PBLのパーセンテージは、4週間目で2.5mg/kg群(29.9%±1.9)と比べて5.0mg/kg群(39.7%±3)において有意に高く(p<0.005)、いずれかの用量で化学選択を2週間受けている群よりも有意に高かった(p<0.0002) (表4)。従って、-2日目および0日目における10mg/kgの6TGのプレコンディショニングと5mg/kgの6TGを3日毎に4週間行う継続的インビボ化学選択との組み合わせにより、HPRT欠損ドナー細胞による最大レベルのBM生着および最大レベルのドナー由来PBLが生じた; このレジメンを引き続き研究に採用した。
【0078】
(表4)6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択の組み合わせ後の生存率および生着
インビボ化学選択の処置スケジュールは表記の通りである:2.5mg/kgの6TGで2週間、5.0mg/kgの6TGで2週間、2.5mg/kgの6TGで4週間、または5.0mg/kgで4週間のインビボ化学選択。全ての処置群が100%の生存率を示した。HPRT-wt雌レシピエントBMおよびPBLにおけるHPRT欠損雄造血細胞の生着を染色体XY-FISHにより決定した(平均%±SD)。
【0079】
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択の組み合わせはHPRT欠損BMの長期再構築をもたらす
上記確立した6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択レジメンの組み合わせを用いたHPRT欠損ドナーBMによる生着の持続性を、移植の4ヶ月、7ヶ月、または12ヶ月後(すなわち、4週間のインビボ化学選択期間終了からそれぞれ3ヶ月、6ヶ月、および11ヶ月後)に検査した。全ての移植動物(4ヶ月:n=8;7ヶ月:n=6;12ヶ月:n=5)は生存し、かつ健康なままで、検査した全ての時点でいかなる病的状態も不快症状の兆候も示さなかった。これらの動物の全般的な病理学的および組織学的検査からは、有意な異常は明らかにならなかった。
【0080】
ドナー由来前駆細胞によるリンパ造血の多分化再構築を、6TGプレコンディショニングおよびインビボ化学選択を組み合わせるHSCTの4ヶ月後、すなわち4週間の化学選択期間終了の3ヶ月後、に評価した。HPRT欠損CD45.2マウスをドナーとして、およびHPRT-wtCD45.1マウスをレシピエントとして(n=5)用いて、コンジェニックCD45.1/CD45.2移植セッティングにおいてBM、PBL、胸腺、および脾臓の免疫表現型検査を行った。全ての造血組織が、75%を超える合計骨髄レベルでCD45.2+ドナー細胞の高い生着を示した(表5)。ドナー由来CD45.2+集団の免疫表現型検査は、T細胞(CD4/CD8)、B220+細胞、およびマクロファージ/顆粒球(Mac-1 /Gr1)の相対的パーセンテージが治療を受けていない対照に匹敵することを示した(表2および3)。
【0081】
(表5)コンジェニックCD45.1/CD45.2移植モデルにおいて6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択レジメンを用いた移植後4ヶ月目の造血組織の免疫表現型分析
記述のように6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択を行った。レシピエントBMおよびPBLを、以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45.2-FITC(BM、PBL、T、S)、CD4-PE(BM、PBL、T、S)、CD8-APC(BM、PBL、T、S)、Mac1/Gr1-PE(BM、PBL)、B220-PerCP(BM、PBL、S)、フローサイトメトリーで検査した。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45.2+細胞の平均%±SDとして表した(n=5/群)。
【0082】
移植後4ヶ月、7ヶ月、および12ヶ月の時点で、染色体XY-FISHによっても生着レベルを評価した。ドナー由来BMによる安定した高レベルの長期再構築が、移植後の全ての時点において、それぞれ97.7%±0.5%(4ヶ月)、94.7%±1.9%(7ヶ月)、および93.0%±0.8%(12ヶ月)の生着レベルで観察された(図5)。さらに、ドナー由来PBLのパーセンテージは、4週間の6TG選択期間の直後のもの(39.7%±3.0%)と比べて有意に上昇した(4ヶ月にて67.4%±10.6%、p=0.01;7ヶ月にて73.3%±7.9%、p<0.01;12ヶ月にて73.0%±10.7%、p<0.01)。
【0083】
CD4+およびCD8+細胞、B220+細胞、ならびにMac-1+/Gr1+細胞、そしてKLS(lin-/sca-1+/7c-kit+)HSCの相対的パーセンテージを、4ヶ月、7ヶ月、および12ヶ月のBMにおける免疫表現型検査によって決定し(表6)、処置を受けない雌HPRT-wt(表2)および処置を受けない雄HPRT欠損(表3)対照マウスと比較した。各細胞集団の相対的パーセンテージは、3つの全ての時点において対照のものに匹敵したが、KLS細胞はHSCT後4ヶ月および7ヶ月目に上昇し、12ヶ月目に正常範囲内になった。従って、HPRT欠損ドナー由来髄は、正常造血の長期再構築を移植後少なくとも12ヶ月間は達成できた。
【0084】
(表6)6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択レジメンを使用したHPRT欠損BMでの移植後4ヶ月目、7ヶ月目、および12ヶ月目のBMの免疫表現型分析
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択でのHSCT後の表記時点において、レシピエントBM細胞を以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC、CD4-PE、CD8-APC、Mac1/Gr1-PE、B220-PerCP、Sca-1-PE、およびc-kit-FITC、フローサイトメトリーで検査した。表記した造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45+細胞の平均%±SDとして表した。
【0085】
6TGコンディショニングおよび化学選択を組み合わせたHPRT欠損ドナーBMの連続移植後の二次レシピエントの造血再構築
6TGコンディショニングを化学選択と組み合わせた最適化レジメンが長期再構築性HSCについて選択するか否かをさらに評価するために、次に本発明者らは、移植後7ヶ月目の一次レシピエント由来のBMを、同じレジメンを使用して二次レシピエントに移植した[27]。その後、二次移植レシピエントを、4週間の6TGインビボ化学選択過程の終了後3ヶ月間維持した(補足図S3)。6TGコンディショニングおよび化学選択の後、一次レシピエントに生着したHPRT欠損雄ドナー細胞は、二次雌レシピエントに連続して高レベルで再構築することができた(XY-FISHにより測定した場合に95.5%±1.1%)。免疫表現型分析により、二次レシピエントのBMおよびPBL中で検査された全ての細胞集団のパーセンテージ(表7)が、処置を受けない対照にやはり匹敵する(表2および3)ことが明らかになった。
【0086】
(表7)6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択によるHPRT欠損BMの連続移植後の二次レシピエントにおける造血細胞の免疫表現型分析
6TGコンディショニングおよびインビボ化学選択レジメンによる連続移植を、図S3に記載の通りに行った。二次レシピエントBMおよびPBLを、以下のラット抗マウス抗体で染色し:CD45-FITC(BM、PBL)、CD4-PE(BM、PBL)、CD8-APC(BM、PBL)、Mac1/Gr1-PE(BM、PBL)、およびB220-PerCP(BM、PBL)、フローサイトメトリーで検査した。表記の造血細胞亜集団のパーセンテージは、合計CD45+細胞の平均%±SDとして表した(n=6/群).
【0087】
本発明者らは、移植前コンディショニング、そしてHPRT欠損ドナーHSCの継続的な移植後インビボ化学選択のために6TGを単剤としてを採用する最適化されたレジメンを開発した。この6TGコンディショニングと化学選択との組み合わせ戦略により、総合的な毒性が低く、レシピエント宿主はあったとしてもほとんど苦痛が無く、100%の生存率を示す進行性かつ同時置き換えプロセスを経て効率的なHSCの生着が達成され、BMが迅速かつほぼ完璧にHPRT欠損ドナー細胞に置き換えられて、XY-FISHにより約95%、およびCD45.2免疫表現型検査により>75%の生着を着実に達成した。ドナー由来PBLのパーセンテージは、4週間の6TG選択期間直後と比べて、時間とともに有意に上昇した(移植後4および7ヶ月) 。PBL中の残存レシピエント細胞は、PBL中の低いターンオーバーの非分裂成熟細胞を反映していると思われる。BMの安定した長期再構築が、一次および二次レシピエントの両方で達成された。BM、PBL、脾臓、および胸腺の免疫表現型分析により、長期再構築の後、6TGインビボ化学選択により造血分化が影響を受けなかったことが示された。
【0088】
これらの結果はまた、6TGが適切な濃度において、範囲外の造血組織に悪影響を全く与えることなく選択的骨髄毒性を誘導すると思われるという本発明者らの先の観察を裏付ける。HPRTは全ての体細胞において低レベルで発現され[30]、HPRTの遺伝的欠如はレッシュ-ナイハン症候群を引き起こし[31]、これは中枢神経系において、特に神経発達の間に[32]、高レベルのHPRT発現および活性がみとめられた場合に重度の知的発達遅および行動異常として現れる。しかし、完全に分化したニューロンは複製を経ないため、これらの高レベルは成熟成人においてより高い6TG神経毒性に翻訳されない。
【0089】
PorterおよびDeGregoriによる先の研究においては[22]、4.5Gyの全身照射を使用して骨髄除去を行い、6TGはその後の期間に化学選択のためだけに採用した。対照的に、本発明者らのレジメンにおいては、単剤としての6TGは、コンディショニング(宿主BMの細胞減少)および化学選択的薬(ドナーBMの増幅)の二重の役割を果たす。6TG毒性は、アポトーシスをもたらすために2ラウンドのDNA複製を必要とすることが知られており[33]、従って、遅延的影響を示す。本発明者らの結果は、6TGの用量および時間依存的な骨髄毒性影響も示した。従って、移植前に10mg/kgの6TGでコンディショニングすることによって、6TG骨髄毒性の遅延を相殺し、移植時にHSCに十分な生かし所を与えることで、6TGインビボ化学選択の成果が改善され得る。
【0090】
さらに、Porterらは、6TGを、0.25〜2mg/kgの間のかなり低用量で、移植後1ヶ月以上経ってから開始する短期間で採用し、5〜50%の間の多様な生着レベルを生じた。本発明者らの現行の研究においては、Hprt欠損BMを移植されたマウスは、移植後直後に開始される化学選択的薬の投与により、大幅に長い選択期間にわたり継続して5〜40倍も高い6TG用量を許容できることを確認した。
【0091】
6TGインビボ化学選択戦略の使用を臨床的に実現可能なアプローチに翻訳するために、正常HSCを遺伝子操作してHPRT欠損にする、つまり6TG耐性にする方法を開発する必要がある。さらに、本発明者らの現行の研究において、この戦略が、自家移植セッティングの状況のモデルである同系マウスにおける骨髄移植への採用に限定されることが重視されなければならない。この戦略が同種異系セッティングにおいても同等に有用であるか否かは、従来の骨髄破壊的なレジメンの毒性を回避するために強度を低くしたコンディショニングレジメンが通常使用されるため現時点では不明である。取り組む必要のあり得る潜在的な課題としては、造血悪性腫瘍のための同種異系移植の後に白血病細胞において生じる自発的な6TG耐性の可能性、および同種異系ドナー細胞がインビボで選択的に増幅された場合の移植片対宿主疾患の可能性のある憎悪が挙げられる。
【0092】
参考文献
【0093】
実施例2:HPRT欠損細胞の作製
本実施例は、異なるHPRT標的型shRNA候補配列を発現している第三世代レンチウイルスベクター、およびHPRTを標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)のヌクレオフェクションの両方を採用する、自家セッティングにおけるエクスビボ遺伝子療法への翻訳的応用に関する。標的遺伝子の永久的なノックアウトを達成するためにZFN構築物の一過性発現しか必要でなく、遺伝子工学手順の結果としての挿入突然変異誘発の可能性を軽減するため、後者のアプローチが有利である。これに関連して、この戦略は、新たな導入遺伝子を挿入して化学耐性を得るのではなく酵素欠損によって移植された細胞に選択的優位性を授けることを特徴とする。HPRT標的型shRNAは、HPRTを検出不能なレベルまで下方制御することに成功した。さらに、HPRTは、ZFNを使用してうまくノックアウトされている。
【0094】
上述のとおり、本明細書においては本発明の特定の態様を例示の目的で記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な改変を行うことができることが理解されよう。従って、本発明は添付の請求の範囲以外によって限定されない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5