【文献】
Blood[online],2010年,Vol.116, No.21,Abstract3846,[平成29年7月31日検索]<URL:http://www.bloodjournal.org/content/116/21/3846>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着間質細胞の約60%未満が、アイソタイプ対照と比較して、フローサイトメトリーによって検出される、マーカーCD200が陽性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
前記接着間質細胞の約60%未満が、アイソタイプ対照と比較して、免疫蛍光法によって検出される、マーカーOCT−4が陽性である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
外因性造血幹細胞が、前記第1の治療有効量の投与のときに前記対象に投与されず、少なくとも1つの追加的な治療有効量が、マッチした外来性造血幹細胞の同定後に投与される、請求項11または12に記載の組成物。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様によると、放射線被曝後に対象を治療するための方法であって、放射線被曝の17以上の影響を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む方法を提供する。特定の実施形態において、この放射線は電離放射線である。特定の実施形態において、この電離放射線は放射線治療である。特定の実施形態において、この曝露は、電離放射線への偶発的な曝露である。
【0009】
実施形態のいくつかにおいて、放射線被曝の影響は、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、発熱、体重減少、神経症状、白血球減少症、貧血、血小板減少症、疲労、脱力、紫斑、出血、脱毛、またはショックのうちの1つ以上であり得る。同様に、本発明のこの態様の実施形態のいくつかにおいて、放射線被曝の影響は、呼吸器系への損傷、神経系への損傷、胃腸系への損傷、心血管系への損傷、皮膚への損傷、または腎臓系への損傷のうちの1つ以上であり得る。特定の実施形態において、神経症状は、認知機能障害、発作、振戦、運動失調、または嗜眠である。
【0010】
実施形態のいくつかにおいて、この放射線被曝は、進行中であってよい。
【0011】
実施形態のいくつかにおいて、この対象は、化学療法も受けている。
【0012】
実施形態のいくつかにおいて、この投与は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、くも膜下腔内注射、皮下注射、または吸入によるものであってよい。特定の実施形態において、投与は、筋肉注射または静脈注射によるものである。
【0013】
実施形態のいくつかにおいて、外因性造血幹細胞は、この対象に投与されない。
【0014】
実施形態のいくつかにおいて、本発明は、さらに、第1の投与後約2日〜約21日目に、少なくとも1つの追加的な治療有効量の接着間質細胞を投与する工程を含んでよい。
【0015】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量の投与およびこの少なくとも1つの追加的な治療有効量の投与は、筋肉注射によるものであってよい。
【0016】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、曝露後約0日目〜約1日目、2日目、または3日目に投与され、この少なくとも1つの追加的な治療有効量は、約2日後、約3日後、約4日後、または約5日後に投与される。
【0017】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、放射線被曝前に投与される。本発明のこのさらなる態様の実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、曝露の約1日前、約2日前、約3日前、約4日前、または約5日前に投与される。いくつかの実施形態において、この少なくとも1つの追加的な治療有効量の少なくとも一部も、曝露前に投与される。
【0018】
本発明の別の態様によると、化学療法を受けている対象を治療するための方法であって、化学療法の1以上の影響を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0019】
実施形態のいくつかにおいて、化学療法の影響は、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、発熱、体重減少、神経症状、白血球減少症、貧血、血小板減少症、疲労、脱力、紫斑、出血、脱毛、またはショックのうちの1つ以上であり得る。同様に、実施形態のいくつかにおいて、化学療法の影響は、呼吸器系への損傷、神経系への損傷、胃腸系への損傷、心血管系への損傷、皮膚への損傷、または腎臓系への損傷のうちの1つ以上であり得る。特定の実施形態において、神経症状は、認知機能障害、発作、振戦、運動失調、または嗜眠である。
【0020】
実施形態のいくつかにおいて、この化学療法は、進行中であってよい。
【0021】
実施形態のいくつかにおいて、この対象は、放射線にも曝露されている。
【0022】
実施形態のいくつかにおいて、この投与は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、くも膜下腔内注射、皮下注射、または吸入によるものであってよい。特定の実施形態において、投与は、筋肉注射または静脈注射によるものである。
【0023】
実施形態のいくつかにおいて、外因性造血幹細胞は、この対象に投与されない。
【0024】
実施形態のいくつかにおいて、本発明は、さらに、第1の投与後約2日〜約21日目に、少なくとも1つの追加的な治療有効量の接着間質細胞を投与する工程を含んでよい。
【0025】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量の投与およびこの少なくとも1つの追加的な治療有効量の投与は、筋肉注射によるものであってよい。
【0026】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、曝露後約0日目〜約1日目、2日目、または3日目に投与され、この少なくとも1つの追加的な治療有効量は、約2日後、約3日後、約4日後、または約5日後に投与される。
【0027】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、化学療法前に投与される。本発明のこのさらなる態様の実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、化学療法の約1日前、約2日前、約3日前、約4日前、または約5日前に投与される。いくつかの実施形態において、この少なくとも1つの追加的な治療有効量の少なくとも一部も、化学療法前に投与される。
【0028】
別の態様によると、内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための方法であって、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0029】
実施形態のいくつかにおいて、内因性造血細胞の再増殖は、内因性造血細胞数の増加を含んでもよい。一実施形態において、内因性造血細胞の再増殖は、CD45を発現する造血細胞数の増加を含んでもよい。
【0030】
実施形態のいくつかにおいて、この内因性造血系は、放射線被曝または化学療法により損なわれる。
【0031】
実施形態のいくつかにおいて、この放射線被曝または化学療法は進行中である。
【0032】
実施形態のいくつかにおいて、放射線被曝または化学療法の影響は、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、発熱、体重減少、神経症状、白血球減少症、貧血、血小板減少症、疲労、脱力、紫斑、出血、脱毛、またはショックのうちの1つ以上であり得る。同様に、本発明のこの態様の実施形態のいくつかにおいて、放射線または化学療法の影響は、呼吸器系への損傷、神経系への損傷、胃腸系への損傷、心血管系への損傷、皮膚への損傷、または腎臓系への損傷のうちの1つ以上であり得る。特定の実施形態において、神経症状は、認知機能障害、発作、振戦、運動失調、または嗜眠である。
【0033】
実施形態のいくつかにおいて、この投与は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、くも膜下腔内注射、皮下注射、または吸入によるものであってよい。特定の実施形態において、投与は、筋肉注射または静脈注射によるものである。
【0034】
実施形態のいくつかにおいて、外因性造血幹細胞は、この対象に投与されない。
【0035】
実施形態のいくつかにおいて、本発明は、さらに、第1の投与後約2日〜約21日目に、少なくとも1つの追加的な治療有効量の接着間質細胞を投与する工程を含んでよい。
【0036】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量の投与およびこの少なくとも1つの追加的な治療有効量の投与は、筋肉注射によるものであってよい。
【0037】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、曝露後約0日目〜約1日目、2日目、または3日目に投与され、この少なくとも1つの追加的な治療有効量は、約2日後、約3日後、約4日後、または約5日後に投与される。
【0038】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、放射線被曝前に投与される。いくつかの実施形態において、この第1の治療有効量は、曝露の約1日前、約2日前、約3日前、約4日前、または約5日前に投与される。
【0039】
別の態様によると、放射線被曝または化学療法によって内因性造血系に損傷を受けた対象の治療法であって、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、放射線被曝または化学療法後の指定期間内に第1の治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、内因性造血細胞の再増殖をさらに誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、少なくとも1つの追加的な治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、を含む方法を提供する。
【0040】
実施形態のいくつかにおいて、内因性造血細胞の再増殖は、内因性造血細胞数の増加を含んでもよい。一実施形態において、内因性造血細胞の再増殖は、CD45を発現する造血細胞数の増加を含んでもよい。
【0041】
実施形態のいくつかにおいて、この放射線被曝または化学療法は進行中である。
【0042】
実施形態のいくつかにおいて、放射線被曝または化学療法の影響は、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、発熱、体重減少、神経症状、白血球減少症、貧血、血小板減少症、疲労、脱力、紫斑、出血、脱毛、またはショックのうちの1つ以上であり得る。同様に、本発明のこの態様の実施形態のいくつかにおいて、放射線または化学療法の影響は、呼吸器系への損傷、神経系への損傷、胃腸系への損傷、心血管系への損傷、皮膚への損傷、または腎臓系への損傷のうちの1つ以上であり得る。特定の実施形態において、神経症状は、認知機能障害、発作、振戦、運動失調、または嗜眠である。
【0043】
実施形態のいくつかにおいて、この指定期間は0〜10日以内である。特定の実施形態において、この指定期間は7〜10日以内である。さらに他の実施形態において、この指定期間は5〜6日以内である。さらに他の実施形態において、この指定期間は2〜4日以内である。さらなる実施形態において、この指定期間は1〜2日以内である。いくつかの実施形態において、この指定期間は約1日以内である。
【0044】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、放射線被曝または化学療法前に投与される。実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、曝露の約1日前、約2日前、約3日前、約4日前、または約5日前に投与される。
【0045】
実施形態のいくつかにおいて、少なくとも1つの第2の治療有効量の投与は、第1の治療有効量の投与後約2日〜約21日目であってよい。特定の実施形態において、この少なくとも1つの第2の治療有効量の投与は、第1の治療有効量の投与後約2日〜約10日目である。他の実施形態において、この少なくとも1つの第2の治療有効量の投与は、第1の治療有効量の投与後約2日〜約5日目である。
【0046】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量の投与は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、皮下注射、または吸入によるものであってよい。
【0047】
実施形態のいくつかにおいて、この少なくとも1つの追加的な治療有効量の投与は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、皮下注射、または吸入によるものであってよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、この第1の治療有効量の投与およびこの少なくとも1つの第2の治療有効量の投与は、筋肉注射によるものである。
【0049】
さらに別の態様によると、放射線被曝または化学療法によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための方法であって、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、放射線被曝または化学療法後の指定期間内に第1の治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、内因性造血細胞の再増殖をさらに高めるために、曝露の次のマッチング期間後に外因性造血幹細胞と共に少なくとも1つの第2の治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、を含む方法を提供する。対象とマッチする外因性造血幹細胞を見つけるのに必要な期間は、「マッチング期間」と呼ばれる。
【0050】
実施形態のいくつかにおいて、内因性造血細胞の再増殖は、内因性造血細胞数の増加を含んでもよい。一実施形態において、内因性造血細胞の再増殖は、CD45を発現する造血細胞数の増加を含んでもよい。
【0051】
本発明のこの態様の実施形態のいくつかにおいて、放射線被曝または化学療法は進行中である。
【0052】
実施形態のいくつかにおいて、放射線被曝または化学療法の影響は、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、発熱、体重減少、神経症状、白血球減少症、貧血、血小板減少症、疲労、脱力、紫斑、出血、脱毛、またはショックのうちの1つ以上であり得る。同様に、実施形態のいくつかにおいて、放射線または化学療法の影響は、呼吸器系への損傷、神経系への損傷、胃腸系への損傷、心血管系への損傷、皮膚への損傷、または腎臓系への損傷のうちの1つ以上であり得る。特定の実施形態において、神経症状は、認知機能障害、発作、振戦、運動失調、または嗜眠である。
【0053】
実施形態のいくつかにおいて、この指定期間は0〜10日以内である。特定の実施形態において、この指定期間は7〜10日以内である。さらに他の実施形態において、この指定期間は5〜6日以内である。さらに他の実施形態において、この指定期間は2〜4日以内である。さらなる実施形態において、この指定期間は1〜2日以内である。いくつかの実施形態において、この指定期間は約1日以内である。
【0054】
実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、放射線被曝または化学療法前に投与される。実施形態のいくつかにおいて、この第1の治療有効量は、曝露の約1日前、約2日前、約3日前、約4日前、または約5日前に投与される。
【0055】
実施形態のいくつかにおいて、この少なくとも1つの第2の治療有効量の投与は、第1の治療有効量の投与後約2日〜約21日目であってよい。特定の実施形態において、この少なくとも1つの第2の治療有効量の投与は、第1の治療有効量の投与後約2日〜約10日目である。他の実施形態において、この少なくとも1つの第2の治療有効量の投与は、第1の治療有効量の投与後約2日〜約5日目である。
【0056】
実施形態のいくつかにおいて、第1の治療有効量の投与は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、皮下注射、または吸入によるものであってよい。
【0057】
実施形態のいくつかにおいて、この少なくとも1つの追加的な治療有効量の投与は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、皮下注射、または吸入によるものであってよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、この第1の治療有効量の投与およびこの少なくとも1つの第2の治療有効量の投与は、筋肉注射によるものである。
【0059】
実施形態のいくつかにおいて、本発明は、さらに、外因性造血幹細胞を対象とマッチさせる工程を含んでもよい。対象とマッチする外因性造血幹細胞を見つけるのに必要な期間は、「マッチング期間」と呼ばれる。
【0060】
実施形態のいくつかにおいて、この外因性造血幹細胞は、マッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞である。
【0061】
実施形態のいくつかにおいて、この外因性造血幹細胞は対象とマッチするが、この接着間質細胞はこの造血幹細胞とマッチしないか、および/またはこの接着間質細胞はレシピエント対象とマッチしない。
【0062】
別の態様によると、放射線被曝または化学療法によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するためのキットであって、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、無菌パッケージ内に治療有効量の接着間質細胞と、治療有効量の投与のための取扱説明書と、を含むキットを提供する。
【0063】
実施形態のいくつかにおいて、この無菌パッケージは、血管内注射用、筋肉注射用、腹腔内注射用、皮下注射用、または吸入用に構成される。
【0064】
実施形態のいくつかにおいて、本発明は、さらに、内因性造血細胞の再増殖をさらに高めるために、第2の無菌パッケージに第2の治療有効量の接着間質細胞を含んでもよい。
【0065】
実施形態のいくつかにおいて、この第2の治療有効量の接着間質細胞は、この第2の無菌パッケージ内に外因性造血幹細胞と共に包装される。
【0066】
実施形態のいくつかにおいて、この外因性造血幹細胞は、同種の臍帯血細胞または骨髄細胞である。
【0067】
実施形態のいくつかにおいて、この第1および第2の無菌パッケージは、血管内注射用、筋肉注射用、腹腔内注射用、皮下注射用、または吸入用に構成される。
【0068】
さらに別の態様によると、放射線被曝後、放射線被曝の影響を軽減するために、対象を治療するための接着間質細胞を提供する。
【0069】
別の態様によると、化学療法の影響を軽減するために、化学療法を受けている対象を治療するための接着間質細胞を提供する。
【0070】
さらに別の態様によると、放射線被曝および化学療法後に、放射線被曝および化学療法の影響を軽減するために、対象を治療するための接着間質細胞を提供する。
【0071】
さらなる態様によると、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための接着間質細胞を提供する。
【0072】
別の態様によると、放射線被曝または化学療法によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための接着間質細胞であって、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、放射線被曝または化学療法後の指定期間内に第1の治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、内因性造血細胞の再増殖をさらに誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために少なくとも1つの追加的な治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、を含む接着間質細胞を提供する。
【0073】
さらなる態様によると、放射線被曝または化学療法によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための接着間質細胞であって、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、放射線被曝または化学療法後の指定期間内に第1の治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、内因性造血細胞の再増殖をさらに高めるために、曝露の次のマッチング期間後に外因性造血幹細胞と共に第2の治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、を含む接着間質細胞を提供する。対象とマッチする外因性造血幹細胞を見つけるのに必要な期間は、「マッチング期間」と呼ばれる。
【0074】
別の態様において、治療有効量の開示された接着間質細胞のいずれかを含む医薬組成物を提供する。
【0075】
さらなる態様において、無菌パッケージ中の開示された医薬組成物のいずれかと、この医薬組成物を投与するための取扱説明書と、を含むキットを提供する。
【0076】
別の態様は、開示された方法のいずれかを実施するための薬剤調製における接着間質細胞の使用を提供する。
【0077】
一態様によると、放射線被曝後に対象を治療するための薬剤調製における接着間質細胞の使用であって、治療が、放射線被曝の影響を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む接着間質細胞の使用を提供する。
【0078】
一態様によると、化学療法を受けている対象を治療するための薬剤調製における接着間質細胞の使用であって、治療が、化学療法の影響を軽減するために治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む接着間質細胞の使用を提供する。
【0079】
一態様によると、内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための薬剤調製における接着間質細胞の使用であって、治療が、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む接着間質細胞の使用を提供する。
【0080】
一態様によると、放射線被曝または化学療法によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための薬剤調製における接着間質細胞の使用であって、治療が、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、放射線被曝または化学療法後の指定期間内に第1の治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、内因性造血細胞の再増殖をさらに誘導するために、少なくとも1つの追加的な治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、を含む接着間質細胞の使用を提供する。
【0081】
一態様によると、放射線被曝または化学療法によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための薬剤調製における接着間質細胞の使用であって、治療が、内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、放射線被曝または化学療法後の指定期間内に第1の治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、内因性造血細胞の再増殖をさらに高めるために、曝露の次のマッチング期間後に外因性造血幹細胞と共に第2の治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程と、を含む接着間質細胞の使用を提供する。対象とマッチする外因性造血幹細胞を見つけるのに必要な期間は、「マッチング期間」と呼ばれる。
【0082】
いくつかの前述の態様のいずれかの特定の実施形態において、これらの接着間質細胞の入手源は、胎盤、脂肪組織、または骨髄である。
【0083】
いくつかの前述の態様のいずれかの特定の実施形態において、これらの接着間質細胞は、細胞増殖を支援する三次元培養条件下で培養される。
【0084】
いくつかの前述の態様のいずれかの特定の実施形態において、これらの接着間質細胞の入手源は、胎盤、脂肪組織、または骨髄であり、これらの接着間質細胞は、分化することなく、細胞増殖を支援する三次元培養条件下で培養される。
【0085】
いくつかの前述の態様のいずれかの特定の実施形態において、これらの接着間質細胞は、分化することなく、細胞増殖を支援する三次元培養条件下で、バイオリアクター中で培養された胎盤接着間質細胞である。
【0086】
いくつかの前述の態様のいずれかの特定の実施形態において、これらの胎盤接着間質細胞の約60%未満は、アイソタイプ対照と比較して、フローサイトメトリーによって検出される、マーカーCD200が陽性である。
【0087】
いくつかの前述の態様のいずれかの特定の実施形態において、これらの胎盤接着間質細胞の約60%未満は、アイソタイプ対照と比較して、免疫蛍光法によって検出される、マーカーOCT−4が陽性である。
【0088】
いくつかの前述の態様のいずれかの特定の実施形態において、これらの接着間質細胞は、Flt−3リガンド、IL−6、およびSCFを分泌する。
【0089】
いくつかの前述の態様のいずれかの特定の実施形態において、外因性造血幹細胞は、この対象に投与されない。
【0090】
さらなる態様によると、内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための方法であって、内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、少なくとも1つの治療有効量の接着細胞をこの対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0091】
さらなる態様によると、放射線被曝または化学療法後10日以内に投与するための治療有効量の接着細胞を含むことを特徴とする指定された投与計画において、放射線被曝または化学療法による内因性造血系の損傷の治療に使用するための薬剤製造用の接着細胞の使用を提供する。
【0092】
さらなる態様によると、放射線被曝または化学療法によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するためのキットであって、放射線被曝または化学療法後の指定期間内に投与するための、無菌パッケージ内に治療有効量の接着細胞を含むキットを提供する。
【0093】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの接着細胞は、内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減する。
【0094】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの内因性造血細胞は、対象の造血系によって生産された。
【0095】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、内因性造血細胞の再増殖は、対象の内因性造血系の造血細胞数の増加を含む。
【0096】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、内因性造血細胞の再増殖は、CD45マーカーを発現する造血細胞数の増加を含む。
【0097】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、この対象は放射線に曝露された。
【0098】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、この放射線曝露は進行中である。
【0099】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、この対象は、造血系に損傷を与える化学物質に曝露された。
【0100】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、この対象は、化学療法で治療された。
【0101】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、この化学療法は進行中である。
【0102】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、接着細胞の入手源は、胎盤、脂肪組織、または骨髄である。
【0103】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの接着細胞は、細胞増殖を支援する三次元培養条件下で培養された。
【0104】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの胎盤接着間質細胞の約60%未満は、アイソタイプ対照と比較して、フローサイトメトリーによって検出される、マーカーCD200が陽性である。
【0105】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの胎盤接着間質細胞の約60%未満は、アイソタイプ対照と比較して、免疫蛍光法によって検出される、マーカーOCT−4が陽性である。
【0106】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの接着間質細胞は、Flt−3リガンド、IL−6、およびSCFを分泌する。
【0107】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの接着細胞の入手源は、胎盤、脂肪組織、または骨髄であり、これらの接着細胞は、分化することなく細胞増殖を支援する三次元培養条件下で培養された。
【0108】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの接着細胞の入手源は胎盤であり、これらの接着細胞は、分化することなく細胞増殖を支援する三次元培養条件下で培養された。
【0109】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの接着細胞は、筋肉注射によって投与される。
【0110】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの接着細胞は、少なくとも2回、3回、4回、5回、または最大10回投与される。
【0111】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの接着細胞は、少なくとも2回投与され、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日間隔で投与される。
【0112】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、これらの接着細胞は、少なくとも2回筋肉内投与され、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日間隔で投与される。
【0113】
別の態様によると、損なわれた造血系に罹患している対象の内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するための治療有効量の接着細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0114】
さらなる態様によると、放射線または化学物質への曝露によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための方法であって、放射線または化学物質への曝露後の指定期間内に第1の治療有効量の接着細胞をこの対象に投与する工程と、曝露の次のマッチング期間後に、外因性造血幹細胞と共に第2の治療有効量の接着細胞をこの対象に投与する工程と、を含む方法を提供する。対象とマッチする外因性造血幹細胞を見つけるのに必要な期間は、「マッチング期間」と呼ばれる。いくつかの実施形態において、この造血幹細胞は、マッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞である。いくつかの実施形態において、この治療法は、この対象において内因性造血細胞の再増殖を誘導する。いくつかの実施形態において、この治療法は、対象において内因性造血細胞数の減少を軽減する。いくつかの実施形態において、この化学物質への曝露は化学療法である。いくつかの実施形態において、放射線は電離放射線である。
【0115】
さらに別の態様によると、放射線または化学物質への曝露によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための方法であって、放射線または化学物質への曝露後の指定期間内に第1の治療有効量の接着細胞をこの対象に投与する工程と、少なくとも1つの追加的な治療有効量の接着細胞をこの対象に投与する工程と、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、治療有効量の接着細胞のそれぞれの入手源は、胎盤、脂肪組織、または骨髄であり、これらの接着細胞は、細胞増殖を支援する三次元培養条件下で培養された。いくつかの実施形態において、この治療法は、対象において内因性造血細胞の再増殖を誘導する。いくつかの実施形態において、この治療法は、対象において内因性造血細胞数の減少を軽減する。いくつかの実施形態において、この化学物質への曝露は化学療法である。いくつかの実施形態において、放射線は電離放射線である。
【0116】
さらなる態様によると、放射線または化学物質への曝露によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するためのキットであって、放射線または化学物質への曝露後の指定期間内に投与するための、第1の無菌パッケージ内の第1の治療有効量の接着細胞と、曝露の次のマッチング期間後に投与するための、第2の無菌パッケージ内の造血幹細胞と共に必要に応じて提供される第2の治療有効量の接着細胞と、第1および第2の治療有効量の投与のための取扱説明書と、を含むキットを提供する。造血幹細胞がキットの一部として提供されるそれらの実施形態において、特定の実施形態において、これらの造血細胞は、マッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞として提供される。いくつかの実施形態において、この治療法は、対象において内因性造血細胞の再増殖を誘導する。いくつかの実施形態において、この治療法は、対象において内因性造血細胞数の減少を軽減する。いくつかの実施形態において、この化学物質への曝露は化学療法である。いくつかの実施形態において、放射線は電離放射線である。
【0117】
さらなる態様によると、放射線被曝または化学療法後10日以内に第1の治療有効量の接着細胞を、かつ第2の指定期間後に少なくとも1つの第2の治療有効量の接着細胞を投与する工程を含むことを特徴とする指定された投与計画において、放射線被曝または化学療法による内因性造血系の損傷の治療に使用するための薬剤製造用の接着細胞の使用を提供する。いくつかの実施形態において、この治療法は、対象における内因性造血細胞の再増殖を誘導する。いくつかの実施形態において、この治療法は、対象における内因性造血細胞数の減少を軽減する。いくつかの実施形態において、化学物質への曝露は化学療法である。いくつかの実施形態において、放射線は電離放射線である。
【0118】
記載した実施形態のさらなる特徴によると、この少なくとも1つの第2の治療有効量が、マッチした同種の臍帯血細胞または骨髄細胞をさらに含み、その際、第2の指定期間は、対象とマッチさせる細胞をマッチングするマッチング期間である。
【0119】
さらに別の態様によると、放射線または化学物質に曝露された対象を治療する方法であって、治療有効量の接着間質細胞を曝露された対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、この化学物質への曝露は化学療法である。いくつかの実施形態において、放射線は電離放射線である。いくつかの実施形態において、この曝露は、治療されないままであると、一般に、約1〜2日以内(例えば、30Gyを上回る電離放射線(IR)の曝露)、2日〜2週間以内(例えば、約8〜30GyのIRの曝露)、または約2〜4週間以内(例えば、約2〜8GyのIRの曝露)に、この対象にとって致死的であるような曝露である。
【0120】
さらに別の態様によると、放射線障害または有毒化学物質への曝露に関連する症状を軽減する方法であって、治療有効量の接着間質細胞を曝露された対象に投与する工程を含む方法も提供する。いくつかの実施形態において、放射線障害は急性である。いくつかの実施形態において、この有毒化学物質は、化学療法の一部として投与される。これらの実施形態のいずれにおいても、症状には、吐き気、嘔吐、下痢、頭痛、発熱、体重減少、神経症状(例えば、認知機能障害、発作、振戦、運動失調、嗜眠)、白血球減少症、貧血、血小板減少症、疲労感、脱力、紫斑、出血、脱毛、およびショックが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、放射線または化学療法は、呼吸器系への損傷、神経系への損傷、胃腸系への損傷、心血管系への損傷、皮膚への損傷、または腎臓系への損傷を引き起こす。
【0121】
これらの態様の様々な実施形態のいくつかにおいて、投与期間、投与回数および投与経路は上記のとおりである。
【0122】
これらの様々な態様の特定の実施形態において、外因性造血幹細胞は、対象に投与されない。
【0123】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと同様または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験に用いることができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む本特許明細書が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【発明を実施するための形態】
【0167】
本発明には、細胞増殖の方法ならびに細胞および細胞によって生成される馴化培地の使用が含まれる。有害なレベルの放射線の被曝後に対象を治療する方法であって、放射線被曝の影響を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む方法が本発明に包含される。化学療法を受けている対象を治療するための方法であって、化学療法の影響を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む方法も本発明に包含される。これらの方法は、放射線照射または化学療法後に対象に投与される接着間質細胞がこの対象の生存を促進し、損なわれた造血系を有する対象において、これらの接着間質細胞が、対象の内因性造血系の回復を促進し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するという本発明者の認識に由来する。
【0168】
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明を参照することでよりよく理解することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されるかまたは実施例によって例示される細部への適用において限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施するかまたは行うことが可能である。本明細書で用いられる表現および専門用語は、説明の目的のためであり、限定するものとみなされるべきではないことも理解されたい。
【0169】
本発明を実施に向けてまとめる一方で、本発明者らは、胎盤、脂肪組織、または骨髄由来の接着細胞を効率的に三次元培養条件で増殖させることができることを発見した。従って、胎盤、脂肪組織、または骨髄由来の接着細胞、およびそれから生成される馴化培地を、移植、組織再生およびインビボでのHSC支援などの治療法のために使用することができる。
【0170】
以下の本明細書および下記の実施例のセクションに示すとおり、本発明者らは、3D設定で脂肪、骨髄、および胎盤由来の接着細胞を増殖させることができた。それに応じて、増殖させた細胞は、接着アッセイおよび再増殖アッセイ(実施例1参照)から明らかなように、低温保存後に生存能力があることが見出された。胎盤由来の接着細胞のフローサイトメトリー分析により、異なるマーカーの発現パターンが明らかになった(
図3a〜3b参照)。最も重要なことに、2Dまたは3Dの設定で増殖させた脂肪および胎盤由来の接着細胞は、HSC生着を支援することができ(実施例2参照)、このことが、クリニックにおける本発明の細胞の使用を示した。
【0171】
したがって、本発明の一態様によると、細胞増殖の方法であって、細胞増殖を支援する三次元(3D)培養条件下で胎盤、脂肪組織、または骨髄由来の接着細胞を培養する工程を含む方法を提供する。
【0172】
本明細書で使用する「増殖(expanding)」および「増殖(expansion)」という用語は、実質的には細胞の分化の無い維持(differentiationless maintenance)、および最終的には細胞成長、すなわち、このような増加に伴って分化することのない細胞集団の増加(例えば、少なくとも2倍)を表す。
【0173】
本明細書で使用する「維持(maintaining)」および「維持(maintenance)」という用語は、実質的に分化の無い細胞の再生、すなわち、このような定常性に伴って分化することのない実質的に定常な細胞集団を表す。
【0174】
本明細書で使用する「接着細胞」という語句は、足場依存的な、すなわち、インビトロで成長するために表面への付着を必要とする細胞の同種集団または異種集団を表す。
【0175】
本明細書で使用する「脂肪組織」という語句は、脂肪細胞(fat cell)(脂肪細胞(adipocyte))を含む結合組織を表す。
【0176】
本明細書で使用する「胎盤組織」という用語は、子宮壁の内側を覆い、妊娠中、胎児を包む哺乳類の雌の臓器の部分を表し、その部分に胎児は臍帯によって付着している。出産後、胎盤は取り除かれる(産後の胎盤ともいわれる)。
【0177】
本明細書で使用する「三次元培養条件」という語句は、細胞成長に適合する一方で、細胞が複数の層で成長するのを可能にする条件に細胞を置くことを表す。三次元構造として生体(または組織)中の細胞の原位置の環境はよく理解されている。細胞は、他の細胞によって囲まれている。細胞は、様々な局所微小環境の確立を可能にする細胞外マトリックスのナノスケール繊維の複雑なネットワーク中で保持される。それらの細胞外リガンドは、基底膜への付着を仲介するだけでなく、様々な血管およびリンパ管へアクセスする。酸素、ホルモンおよび栄養素は細胞へ運ばれ、老廃物は運び出される。本発明の三次元培養条件は、例えば、以下でさらに例示するような環境を模倣するように設計される。
【0178】
胎盤由来の接着間質細胞は、胎盤の胎児部分(すなわち、羊膜または胎盤の内部の部分)および母方部分(すなわち、基底脱落膜、および壁側脱落膜)の両方から得ることができる。したがって、胎盤由来の「母方」接着間質細胞は、胎盤の母方部分由来の細胞を少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、98%、99%または100%含む。同様に、「胎児」接着間質細胞は、胎盤の胎児部分由来の接着細胞を少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、98%、99%または100%含む。
【0179】
母方由来および胎児由来の接着間質細胞を調製し、特徴付ける方法については、WO2011/064669に記載されており、これは参照により組み込まれる。いくつかの実施形態において、母方および胎児の胎盤接着間質細胞は、遺伝子型および/または核型(例えば、FISH)分析に基づいて同定される。例えば、雄胚の胎盤由来の接着間質細胞は、核型分析に基づいて胎児および母方の細胞に分離することができる(すなわち、XX細胞は母方であるが、XY細胞は胎児である)。いくつかの実施形態において、(例えば、絨毛膜絨毛から成るまたは絨毛膜絨毛を含む)胎盤の胎児部分由来の接着間質細胞は、CD200を発現する。すなわち、負の発現を明確にするためのアイソタイプ対照を用いてフローサイトメトリーにより測定した場合に、これらの細胞の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%は、CD200を発現する。いくつかの実施形態において、負の発現を明確にするためのアイソタイプ対照を用いてフローサイトメトリーにより測定した場合に、母方部分由来の接着間質細胞の3.5%以下、3%以下、2%以下、または1%以下がCD200を発現する。
【0180】
母方由来の胎盤接着細胞、胎児由来の胎盤接着細胞、または混合された母方と胎児由来の胎盤接着細胞が調製されるか否かにかかわらず、組織標本を生理的緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはハンクス緩衝液)で洗浄する。単一細胞懸濁液を、消化酵素で組織を処理するか(下記参照)、および/またはナイロンフィルター(ファルコン、ベクトン・ディッキンソン、サンノゼ、カリフォルニア州)に通すか、穏やかにピペッティングすることによって組織部分を刻み、洗浄培地で洗い流すことによって作製する。
【0181】
脂肪組織由来の接着間質細胞は、当業者に周知の様々な方法により単離することができる。例えば、このような方法は、米国特許第6,153,432号に記載されている。脂肪組織は、大網/内臓、乳房、生殖腺、または他の脂肪組織の部位に由来してもよい。脂肪組織の好ましい供給源は、大網脂肪である。ヒトにおいて、脂肪は、典型的には、脂肪吸引により単離される。
【0182】
脂肪組織から単離した接着間質細胞は、コラゲナーゼ、トリプシンおよび/もしくはディスパーゼなどの消化酵素、ならびに/または有効濃度のヒアルロニダーゼもしくはDNAse、ならびにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)で、10分〜3時間の間の期間、25〜50℃の間の温度でこの組織を処理することによって取得することができる。次いで、これらの細胞を、20ミクロン〜800ミクロンの間のナイロンまたはチーズクロスのメッシュフィルターに通過させてもよい。次いで、これらの細胞を、培地中で直接、あるいはフィコール上もしくはパーコール上、または他の粒子の勾配で分画遠心法に供する。細胞を、100×g〜3000×gの間の速度で、1分〜1時間の間、4〜50℃の間の温度で遠心分離する(米国特許第7,078,230号参照)。
【0183】
胎盤または脂肪組織由来の接着間質細胞に加えて、本発明は、他の細胞源由来の接着間質細胞の使用も想定している。例えば、特定の実施形態において、これらの接着間質細胞は、骨髄から得られる。接着間質細胞を取得することができる他の組織源には、臍帯血、毛包(例えば、米国特許出願第20060172304号に記載されている)、睾丸(例えば、Guan K.,et al.,Nature.2006 Apr 27;440(7088):1199−203に記載されている)、ヒトの嗅粘膜(例えば、Marshall,CT.,et al.,Histol Histopathol.2006 Jun;21(6):633−43に記載されている)、胚卵黄嚢(例えば、Geijsen N,Nature.2004 Jan 8;427(6970):148−54に記載されている)、ならびに羊水(Pieternella et al.(2004)Stem Cells 22:1338−1345)が含まれるが、これらに限定されない。これらの組織源由来の接着間質細胞は、接着面上でこれらの細胞を培養することによって単離することができるので、最初の集団内の他の細胞から接着間質細胞を単離することができる。
【0184】
入手源(例えば、胎盤、脂肪組織、または骨髄)に関係なく、細胞の取得は、一般に、無菌条件下で行われる。一度単離細胞を取得すると、単離細胞は、(例えば、面として構成されている)接着材料に接着でき、それによって接着間質細胞を単離することができる。これは、3D培養条件での培養の前(実施例1参照)または3D培養条件での培養に付随して行われてもよい。
【0185】
本明細書で使用する「接着材料」は、表面上で細胞を保持することができる化学構造(例えば、荷電表面に曝露される基)を有する合成材料、天然材料または非細胞毒性の(すなわち、生物学的に適合した)合成もしくは天然の材料の組み合わせを表す。
【0186】
本発明のこの態様にしたがって使用することができる接着材料の例としては、ポリエステル、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースアセテート、ガラス繊維、セラミック粒子、マトリゲル、細胞外マトリックス成分(例えば、フィブロネクチン、コンドロネクチン、ラミニン)、コラーゲン、ポリL乳酸および不活性金属繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
特定のマーカーを発現する細胞の精製または濃縮のさらなるステップは、当技術分野で公知の方法を用いて(本明細書の以下でさらに記載するような、接着間質細胞のマーカー発現を用いるFACSなどによって)行ってもよい。
【0188】
本発明に係る培養に有用な基礎培地の非限定的な例としては、最小必須培地イーグル、ADC−I、LPM(ウシ血清アルブミンを含まない)、F1O(HAM)、F12(HAM)、DCCM1、DCCM2、RPMI 1640、BGJ培地(フィットン・ジャクソン改変の有無にかかわらず)、基礎培地イーグル(アール塩の塩基(Earle’s salt base)を添加したBME)、ダルベッコ改変イーグル培地(血清を含まないDMEM)、Yamane、IMEM−20、グラスゴー変更イーグル培地(GMEM)、リーボビッツL−15培地(Leibovitz L−15 Medium)、マッコイ5A培地、培地M199(アール塩の塩基を含むM199E)、培地M199(ハンクス塩の塩基を含むM199H)、最小必須培地イーグル(アール塩の塩基を含むMEM−E)、最小必須培地イーグル(ハンクス塩の塩基を含むMEM−H)および最小必須培地イーグル(非必須アミノ酸を含むMEM−NAA)、数ある中でもとりわけ、培地199、CMRL1415、CMRL1969、CMRL1066、NCTC135、MB75261、MAB8713、DM145、ウィリアムズ’G、ニューマン&タイテル(Neuman&Tytell)、Higuchi、MCDB301、MCDB202、MCDB501、MCDB401、MCDB411、MDBC153が挙げられる。本発明の使用に好ましい培地は、DMEMである。これらおよび他の有用な培地は、とりわけ、ギブコ社((GIBCO)、グランドアイランド、ニューヨーク州、米国)およびBiological Industries社(Bet HaEmek、イスラエル)から入手可能である。多数のこれらの培地は、William B.JakobyおよびIra H.Pastanによって編集され、アカデミックプレス社から出版された酵素学の方法(Methods in Enzymology)、第58版「細胞培養(Cell Culture)」のページ62〜72にまとめられている。
【0189】
この培地に、ウシまたは他の種の胎児血清などの血清、および必要に応じてまたはあるいは、成長因子、サイトカイン、およびホルモン(例えば、成長ホルモン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、インターロイキン3、インターロイキン6、インターロイキン7、マクロファージコロニー刺激因子、c−kitリガンド/幹細胞因子、オステオプロテゲリンリガンド、インスリン、インスリン様成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、毛様体神経栄養因子、血小板由来成長因子、および骨形成タンパク質などを、pg/mlからmg/mlの間のレベルの濃度で補充してもよい。
【0190】
さらに、追加の成分を培地に添加してもよいことが認識される。このような成分は、抗生物質、抗真菌剤、アルブミン、アミノ酸、当技術分野で公知の細胞培養用の他の成分であってよい。さらに、必要なときに分化過程を高めるための成分を添加してもよい(さらに以下を参照)。
【0191】
接着間質細胞は、従来の二次元(2D)培養条件によってまたは三次元(3D)培養条件下で、インビトロで増殖させることができる。「二次元培養」または「2D」という語句は、細胞が主に組織培養皿のような1つのプレート中で成長する培養を表す。
【0192】
一度接着間質細胞を入手すると、それらの細胞は三次元設定で継代してもよい(以下の実施例のセクションの実施例1参照)。しかし、これらの細胞は、(前述のとおり)単離直後に、3D構成マトリックスに移してもよいことが理解されよう。
【0193】
「三次元培養」または「3D」という語句は、細胞成長に適合し、細胞が三次元で細胞接触することを可能にする足場を含む条件下で細胞が培養される培養を表す。
【0194】
したがって、本発明の3D態様の接着材料は3D培養用に構成され、それによって、組織(例えば、胎盤)の基盤を模倣するために、接着間質細胞の接着に利用可能な接着表面を実質的に増加させる成長マトリックスを提供する。
【0195】
例えば、高さ0.5mmの成長マトリックスについては、成長マトリックスの基部上の推定によって計算すると、この増加は少なくとも5〜30倍である。このような約5〜30倍の増加は、単位層あたりであり、積み重ねられるか、またはスペーサなどによって分離されるこのような多数の層が用いられる場合、それぞれのこのような構造あたり5〜30倍が適用される。このマトリックスがシート形態で用いられる場合には、このマトリックスは不織繊維シート、または開孔発泡ポリマーのシートであってよい。シートの厚さは、約50〜1000μmまたはそれ以上であり、細胞の進入、栄養素の進入およびシートからの老廃物の除去に適する空隙率を提供することができる。一実施形態によると、細孔は、10μm〜100μmの有効径を有する。このようなシートは、様々な厚さの繊維から調製することができる。いくつかの実施形態において、繊維厚または繊維径は、約0.5μm〜20μmの範囲である。例えば、これらの繊維は、直径10μm〜15μmの範囲であり得る。
【0196】
本発明の構造は、寸法安定性および物理的強度を提供する多孔性支援シートまたはスクリーンによって支援されるか、またはそれに結合していてもよい。このようなマトリックスシートを切断するか、穴を開けるか、または細断して、推定面積が約0.2mm
2〜約10mm
2の大きさで、同程度の厚さ(約50〜1000μm)を有する粒子を提供してもよい。
【0197】
接着面は、四角形、リング、ディスク、および十字形からなる群から選択される形状を有してよい。いくつかの実施形態において、培養は、3Dバイオリアクター中で行われる。
【0198】
このようなバイオリアクターの例としては、栓流バイオリアクター(plug flow bioreactor)、連続撹拌槽型バイオリアクターおよび静止層バイオリアクターが挙げられるが、これらに限定されない。実施例のセクションの実施例1に示すように、三次元(3D)栓流バイオリアクター(米国特許第6,911,201号に記載されている)は、接着間質細胞の成長および長期維持を支援することができる。このバイオリアクターでは、接着間質細胞を、ポリエステルの不織布マトリックスから作られた多孔性担体(porrosive carrier)上に播種し、ガラスカラムに充填することによって、比較的少量からの大型細胞数の増加を可能にする。
【0199】
他の3Dバイオリアクターを、本発明と共に使用することができる。別の非限定的な例としては連続攪拌槽型バイオリアクターが挙げられ、これは、培地を連続的にバイオリアクターに供給し、生成物を連続的にくみ出し、リアクター内で時定数定常状態を維持する。繊維状床バスケットを有する撹拌槽型バイオリアクターは、例えば、New Brunswick Scientific社(エジソン、ニュージャージー州)から入手できる。他の例としては、固定床バイオリアクター、エアーリフトバイオリアクター(このバイオリアクターでは、典型的には、空気が中央通気管の底に供給され、気泡を形成しながら上に流れ、カラムの上部から排気ガスを解放する)、ポリアクティブ発泡体を有する細胞播種灌流バイオリアクター(Wendt,D.et al.,Biotechnol Bioeng 84:205−214,(2003)に記載されている)、およびラジアルフロー灌流バイオリアクター内の管状ポリ−L−乳酸(PLLA)多孔質足場(Kitagawa et al.,Biotechnology and Bioengineering 93(5):947−954(2006)に記載されている)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に従って使用することができる他のバイオリアクターは、米国特許第6,277,151号、同第6,197,575号、同第6,139,578号、同第6,132,463号、同第5,902,741号および同第5,629,186号に記載されている。
【0200】
バイオリアクター中で使用されるマトリックスは、例えば、シートの形態で有り得る。このシートは、不織繊維シート、または開孔発泡ポリマーのシートであってよい。いくつかの実施形態において、シートの厚さは、約50〜1000μmまたはそれ以上であり、細胞の進入、栄養素の進入およびシートからの老廃物の除去に適する空隙率が提供される。
【0201】
いくつかの実施形態において、細胞播種は、播種時に100,000〜1,500,000細胞/mmで行われる。
【0202】
いくつかの実施形態において、制御されない分化および老化を避けながら、少なくとも約40%、60%または80%のコンフルエンスに達すると、細胞は収集される。
【0203】
いくつかの実施形態において、培養は、少なくとも約2日間、3日間、5日間、10日間、20日間、1ヶ月間またはそれ以上行われる。バイオリアクターでの培養はこの期間を長くしてもよいことが理解されるであろう。継代培養を行って、細胞数を増加させてもよい。
【0204】
本発明の細胞は、接着間質細胞(ASC)である。したがって、例えば、これらの細胞は、紡錘状であってもよい。あるいはまたはさらに、これらの細胞は、接着間質細胞に典型的なマーカーまたはマーカーの一群(例えば、表面マーカー)を発現してもよい。接着間質細胞表面マーカー(陽性および陰性)の例としては、CD105+、CD29+、CD44+、CD73+、CD90+、CD34−、CD45−、CD80−、CD19−、CD5−、CD20−、CD11B−、CD14−、CD19−、CD79−、HLA−DR−、およびFMC7−が挙げられるが、これらに限定されない。他の接着間質細胞マーカーには、チロシンヒドロキシラーゼ、ネスチンおよびH−NFが含まれるが、これらに限定されない。
【0205】
接着間質細胞に典型的な機能的表現型の例としては、T細胞の抑制活性(T細胞を刺激せず、逆にT細胞を抑制する)および造血幹細胞支援活性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
いくつかの実施形態において、これらの接着間質細胞は分化しない。別の実施形態において、これらの細胞は、脂肪生成能、肝形成能、骨形成能および神経分化能のうちの1つ以上を有するが、これらの細胞は、これらの能力の全ては持っていない。一実施形態において、これらの接着間質細胞は、骨形成分化能を有していない。一実施形態において、これらの接着間質細胞は神経分化能を有していない。一実施形態において、これらの接着間質細胞は、全3つの胚葉の細胞に分化しない。これらの構造的または機能的特徴のいずれかを用いて、本発明の細胞を適任とすることができる(以下の実施例のセクションの実施例1〜2参照)。
【0207】
本発明の接着間質細胞とは対照的に、間葉系幹細胞(間質)細胞は、造骨細胞分化、脂肪細胞分化、および軟骨細胞分化の全てが可能である接着細胞である(Dominici et al.,Cytotherapy 8(4):315−17(2006))。したがって、本発明の様々な態様および実施形態のいくつかにおいて、「接着間質細胞」または「ASC」という用語は、間葉系幹(間質)細胞を除外する。
【0208】
他の場所で述べたように、ASCは、胎盤、脂肪組織、および骨髄を含むが、これらの限定されない様々な組織の供給源から調製されてもよい。これらの細胞が三次元培養で成長する場合には、これらの細胞は「3D−ASC」と呼ばれる。これらの細胞が3D培養で生産された胎盤ASCである場合には、これらの細胞は「PLX」細胞とも呼ぶことができる。
【0209】
いくつかの実施形態において、本教示に係る細胞の集団は、実施例のセクションの実施例1に示すとおりの固有のタンパク質発現プロファイルによって特徴付けられる。したがって、例えば、本教示に従って生産された胎盤、脂肪組織、または骨髄の接着間質細胞は、高レベルの選択された因子を発現および/または分泌することができる。例えば、このような細胞は、2D培養で成長した胎盤、脂肪組織、または骨髄の接着間質細胞が発現または分泌する量よりも、SCF、Flt−3、H2AFまたはALDH Xを少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、またはさらに12倍多く発現または分泌する。さらにまたはあるいは、本発明の細胞集団は、2D培養で成長した胎盤、脂肪組織、または骨髄の接着間質細胞が発現または分泌する量よりも、IL−6、EEEF2、RCN2またはCNN1を少なくとも2、3、または5倍多く分泌または発現する。さらにまたはあるいは、本発明の細胞集団は、2D培養細胞と比較して、様々な他のタンパク質の発現レベルが低いことによって特徴付けられる。したがって、本発明の細胞集団は、例えば、2D培養で成長した胎盤、脂肪組織、または骨髄の接着間質細胞が発現または分泌するHnrphl、CD44抗原アイソフォーム2前駆体、Papss2またはrpL7aの発現レベルの0.6、0.5、0.25または0.125倍未満を分泌または発現する。
【0210】
いくつかの実施形態において、3D条件下での培養によって生産される胎盤接着間質細胞の単離集団は、フローサイトメトリーによって検出される場合に、アイソタイプ対照と比較して、マーカーCD200については、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%未満が陽性である。いくつかの実施形態において、3D条件下での培養によって生産される接着間質細胞の単離集団は、フローサイトメトリーによって検出される場合に、アイソタイプ対照と比較して、マーカーHLA−Gについては、約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、または60%未満が陽性である。いくつかの実施形態において、3D条件下での培養によって生産される胎盤接着間質細胞の単離集団は、免疫蛍光によって検出される場合に、アイソタイプ対照と比較して、マーカーOCT−4については、約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、または60%未満が陽性である。
【0211】
本発明を実施に向けてさらにまとめる一方で、本発明者らは、接着間質細胞、特に、3D培養接着間質細胞(3D−ASC)が、免疫抑制活性を示したことを認識している。以下の実施例のセクションの実施例2に示すとおり、接着間質細胞、特に、3D−ASCは、MLRアッセイにおいてヒト臍帯血単核細胞の免疫反応を抑制することが見出された。したがって、本発明の細胞は、クリニックで優先的に使用され得る生物活性(例えば、T細胞の抑制活性、造血幹細胞の支援活性)を含んでもよい。
【0212】
これらの細胞の馴化培地も、クリニックで優先的に使用され得る生物活性(例えば、T細胞の抑制活性、造血幹細胞の支援活性)を含んでもよい。
【0213】
したがって、本発明は、馴化培地の収集およびそのままでのその使用、または当技術分野で周知の方法を用いる凝縮、濃縮または分画の以下のさらなるステップをさらに想定する。いくつかの実施形態において、本発明の馴化培地は、細胞の高い生存率の中間対数培養物から得られる。
【0214】
上述したとおり、本発明の細胞および馴化培地は、少なくとも1つの接着間質細胞の表現型によって特徴付けられ、そのようなものとして、このような細胞の使用から利益を得ることができる任意の研究および臨床応用に用いることができる。そのような典型的な1つの応用は、造血幹細胞(HSC)支援を提供している。
【0215】
本明細書で使用する「幹細胞」という語句は、自己再生ができ、2種類以上の細胞型に分化することができる(すなわち、多能性である)細胞を表す。「造血幹細胞」(HSC)は、例えば、臍帯血(CB)または骨髄(BM)由来であり得る幹細胞である。HSCは、複数の血球種に分化することができる。将来、HSCは、胚性幹細胞などに由来する他の供給源からHSCを得ることができる可能性がある。
【0216】
移植されたHSCによる生着および造血の開始は、移植された細胞、ECMおよびニッチの間葉細胞間の物理的な接触を確立しながら、ホーミング、ケモカインの勾配に従って内皮細胞障壁を通って骨髄に進むこと、ならびに適切なニッチにとどまることを含む複雑なプロセスに依存する。全てのこれらのプロセスは、サイトカイン、ホルモン、ステロイド、細胞外マトリックスタンパク質、成長因子、細胞間相互作用および接着タンパク質、ならびにマトリックスタンパク質などの複雑な数々の分子を含む。
【0217】
輸血されたHSCのわずか1〜5%が、移植後2〜3日目のレシピエントのBM中で検出されることが知られている(Kerre et al,J Immunol.167:3692−8(2001);Jetmore et al.,Blood.99:1585−93(2002))。造血移植への間葉系幹細胞(MSC)の寄与は、部分的には、移植片対宿主病を引き起こすドナー由来のT細胞生産の阻害により(GvHD,Charbord P.,and Moore,K.,Ann.KY.Acad.ScL 1044:159−167(2005);Maitra B,et al.,Bone Marrow Transplant.33(6):597−604(2004);米国特許第6,010,696号;同第6,555,374号)、かつ部分的には、造血幹細胞(HSC)支援を提供すること(すなわち、造血幹細胞の増殖、成熟および/またはホーミングを維持し、支援すること)による。理論に縛られることなく、本発明の接着間質細胞は、少なくとも部分的には、MSCの機構と同様の機構によって内因性造血系に損傷を受けた患者においてそれらの有益な効果を媒介することが可能である。
【0218】
以下の実施例のセクションに示すとおり、胎盤および脂肪組織由来の接着間質細胞は、驚くべきことに、化学療法または放射線照射後でさえHSC生着を支援することが判明した。したがって、骨髄などの他の供給源由来の接着間質細胞も、HSC生着を潜在的に支援する。
【0219】
これらの結果を考慮すると、本発明の細胞または培地は、幹細胞移植が使用される全ての臨床応用に使用できると考えられる。
【0220】
したがって、本発明の別の態様によると、接着間質細胞移植から利益を得ることができる医学的状態(例えば、症状、疾患、症候群)を治療する方法であって、それを必要としている対象において治療する方法を提供する。
【0221】
本明細書で使用する「治療する」という用語は、症状の進行を阻止もしくは停止すること、および/または症状の減少、寛解、または退行を引き起こすことを表す。当業者は、様々な方法およびアッセイを用いて、症状の進行を評価することができ、同様に、様々な方法およびアッセイを用いて、症状の減少、寛解、または退行を評価してもよいことを理解するであろう。「治療する」という用語は、癌疾患と関連する症候を軽減するか、または減少させることを表す。一実施形態において、治療は、状態と関連する症候を治癒する、例えば、実質的に排除する。しかし、治癒が意図された最終結果であることを指定しない限り、「治療」は、対象の「治癒」を必要としない。
【0222】
本明細書で使用する「接着間質細胞移植から利益を得ることができる医学的状態」とは、本発明の細胞/培地の投与によって軽減され得る全ての医学的状態を表す。
【0223】
「移植」という用語または語句は、対象への細胞の導入を表す。
【0224】
本明細書で使用する「対象」という用語は、任意の対象(例えば、哺乳類)、例えば、ヒト対象を表す。
【0225】
本発明のこの態様の方法は、(上記に記載の)本発明の治療有効量の細胞または培地を対象に投与し、それによって、対象における接着間質細胞移植から利益を得ることができる状態を治療する工程を含む。
【0226】
本発明のこの態様に従って投与され得る細胞は、二次元または三次元の設定のいずれかで培養され得る上記の接着間質細胞が含まれる。
【0227】
別の実施形態において、間葉系および非間葉系の部分的に分化したまたは高分化した幹細胞誘導体は、接着間質細胞と組み合わせて使用してもよい。幹細胞由来の系列特異的な細胞を得る方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,486,359号、同第5,942,225号、同第5,736,396号、同第5,908,784号、および同第5,902,741号を参照されたい。これらの細胞は未処理のままであってもよく、または興味のある系統を得るために遺伝的に改変されてもよい(米国特許出願第20030219423号参照)。
【0228】
本発明の細胞および培地は、新鮮なまたは凍結(例えば、凍結保存)した調製物の自己または非自己の供給源(すなわち、同種または異種)で作ったものであってよい。
【0229】
医学的状態に応じて、対象に、追加の薬物(例えば、免疫調節用、化学療法用など)または追加の細胞を投与してもよい。
【0230】
したがって、例えば、幹細胞の生着を改善する(例えば、レシピエントのBM中の生存HSCの数を増加させ、正常な白血球数を最適に改善する)ために、本発明の細胞/培地を、HSC移植前、HSC移植と同時に、またはHSC移植後に投与してもよい。
【0231】
いくつかの実施形態において、これらのHSCおよび接着間質細胞は、共通のHLA抗原を共有しない。他の実施形態において、これらのHSCおよび接着間質細胞は、共通のHLA抗原を共有する。
【0232】
いくつかの実施形態において、これらのHSCおよび接着間質細胞は、単一個体に由来する。あるいは、これらのHSCおよび接着間質細胞は、異なる個体に由来する。
【0233】
いくつかの実施形態において、接着間質細胞/培地が内因性HSCの死を軽減するために、レシピエントのBM中の生存HSCの数は少なくとも部分的に増加する。あるいは、またはさらに、本発明の細胞/培地の投与後に、このレシピエントの内因性細胞が増殖するために、レシピエントのBM中の生存HSCの数は、少なくとも部分的に増加する。
【0234】
驚くべきことに、本明細書に記載の接着間質細胞、例えば、3D接着間質細胞は、特定の場合において、それを必要としているレシピエントの内因性造血系の再増殖を高め、支援する重要な刺激的役割を果たし得ることが見出された。免疫欠損または免疫が損なわれた対象に接着間質細胞を投与すると、内因性造血が高まった。したがって、以下の結果および所見は、内因性造血系の再構築を含む接着間質細胞の今発見された免疫特性により、接着間質細胞を用いることのさらなる臨床的利益を提供する。
【0235】
開示される3D接着間質細胞(3D−ASC)の2つの特質によって、これらの接着間質細胞は、原子力発電所における事故またはテロ攻撃などの大災害によって引き起こされ得る人口の放射線曝露の大量治療に特に適するものとなる。第1に、開示される方法および3Dバイオリアクターで生産される3D−ASC細胞は免疫原性が低いため、曝露直後の期間、個別に患者に投与される細胞を特にマッチさせる必要がなく、全ての患者に同じ種類の細胞を使用することができる。第2に、この3Dバイオリアクターは、3D−ASC細胞の大量生産を可能にし、それによって大規模な治療を可能にする膨大な量の細胞を提供することができる。
【0236】
実施例に示すとおり、内因性造血は、3D−ASCおよびPLX細胞を含むASCの投与によって誘導される。これらの実施例において、内因性CD45の発現が、内因性造血細胞の増殖および/または再増殖の上方制御を示す急激な増加を実証する。
【0237】
レシピエントに対するこの造血促進効果は、3D−ASCおよびPLXを含むこれらのASCの認められていない機能であり、臍帯血またはHSCと共移植しなくても生じる。
【0238】
したがって、他の箇所でより詳細に説明するとおり、3D−ASCおよびPLXを含む接着間質細胞を用いて、例えば、急性放射線障害を軽減するために、免疫欠損対象またはレシピエントを治療することができる。具体的には、これらの対象(またはレシピエント)は、致死線量または亜致死線量の放射線を照射された人々で有り得る。さらに、これらの対象(またはレシピエント)は、化学療法で事前に治療された人々であり得る。
【0239】
3D−ASCおよびPLXを含む接着間質細胞の投与は、放射線および化学療法後の造血回復を向上させるための補助的治療として役立ち得る。造血幹細胞および/または前駆細胞の回復を高める3D接着間質細胞の能力は、造血細胞の自己再生能および増殖能を向上させることができるHSC支援サイトカインを分泌する3D接着間質細胞の能力、またはHSCの増殖に必要な、損傷を受けた造血微小環境を再構築するこれらの細胞の能力に起因し得る。
【0240】
内因性造血系を再増殖させる治療としての接着間質細胞の使用は、移植用骨髄(BM)細胞およびヒト臍帯血(HUCB)細胞を上回る有望な利点を示す。一般に、接着間質細胞は、レシピエントに対する組織の分類およびマッチングを必要としない。これとは対照的に、BMおよびHUCBは、実質的にそれらの可用性を制限する組織のマッチングを必要とする。さらに、本明細書で示すとおり、接着間質細胞は、継続維持できる細胞の供給源を大量生産し、提供することができる。
【0241】
以下により詳細に説明するとおり、本発明の細胞/培地は、HSC移植なしで投与することもでき、その上さらに、レシピエントBM中の生存可能なHSC数の増加を引き起こすこともできる。同様に、放射線被曝の影響を軽減するために、たとえ外因性造血幹細胞を対象に投与しなくても、本発明の細胞/培地を有害なレベルの放射線の被曝後に対象に投与してもよい。同様に、化学療法の影響を軽減するために、外因性造血幹細胞を対象に投与しなくても、本発明の細胞/培地を、化学療法を受けている対象に投与してもよい。
【0242】
したがって、一態様において、本発明は、有害なレベルの放射線の被曝後に対象を治療するための方法であって、放射線被曝の影響を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む方法を提供する。この態様のいくつかの実施形態において、外因性造血幹細胞は、この対象に投与されない。
【0243】
さらに別の態様において、本発明は、化学療法を受けている対象を治療するための方法であって、化学療法の影響を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む方法を提供する。この態様のいくつかの実施形態において、外因性造血幹細胞は、この対象に投与されない。
【0244】
さらに別の態様において、本発明は、内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための方法であって、内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞をこの対象に投与する工程を含む方法を提供する。この態様のいくつかの実施形態において、外因性造血幹細胞は、この対象に投与されない。
【0245】
本明細書で使用する「内因性」、「内因性造血細胞」または「内因性造血系」という用語は、レシピエント哺乳類、ヒト((すなわち、治療される対象)接着間質細胞で治療されているレシピエント)内で生来見られるか、またはレシピエント哺乳類内で生じる造血細胞を表す。これらの造血細胞は、レシピエント哺乳類体内で生来見られるか、またはその体内で生じ、レシピエント体内によって生産される。すなわち、それらは、外因性造血細胞ではない。
【0246】
いくつかの実施形態において、これらの接着間質細胞は、本明細書に開示される接着間質細胞のいずれかで有り得る。例えば、これらの接着間質細胞は、胎盤、脂肪組織、または骨髄由来であり得る。
【0247】
本明細書で使用する「外因性」、「外因性供給源」または「外因性ドナー」という用語は、レシピエントあるいは他の方法で治療される対象に対して外部の供給源に由来する細胞を表す。つまり、外因性細胞は、レシピエント対象以外のドナー由来の細胞である。
【0248】
いくつかの実施形態において、外因性接着間質細胞は、同種または異種のドナーから得られる。いくつかの実施形態において、これらの接着間質細胞は、同種または異種のHSC移植なしで投与される。いくつかの実施形態において、これらの接着間質細胞は、内因性造血系の再構築または再増殖のための主要な治療として投与される。
【0249】
一般に、細胞/組織の最初の供給源が、レシピエント(内因性)または別の供給源(外因性)であったか否かは知られているので、細胞/組織は、レシピエントに対して内因性または外因性であるか否かは容易に明らかになるであろう。それにもかかわらず、細胞または組織は、レシピエントに対して内因性または外因性であるか否かは、遺伝子型判定によって決定することもできる。「遺伝子型」という用語は、個体または細胞における相同染色体の対上の遺伝子座の中の1以上の多型部位のセットの位置で見られるヌクレオチド対の5’から3’(方向)の配列を表す。本明細書で使用する遺伝子型には、完全な遺伝子型が含まれる。非限定的な例として、完全な遺伝子型という用語には、レシピエント個体における相同染色体の対上の複数の多型部位で見られるヌクレオチド対の配列が含まれる。
【0250】
「放射線照射」という用語は、レシピエント哺乳類、ヒト、もしくは治療される対象の放射線被曝の状況または状態を表す。いくつかの実施形態において、この放射線は電離放射線である。他の実施形態において、この放射線は非電離放射線である。放射線には、X線および/またはガンマ線を含む電磁放射線が含まれる。この放射線という用語は、放射性放射線も包含する。この用語は、放射性元素の崩壊から生じる放射線も包含する。
【0251】
いくつかの実施形態において、この放射線は電離放射線である。一実施形態において、この電離放射線は、臨床電離放射線であり、すなわち、癌または腫瘍の治療などの少なくとも1つの治療目的のために病院またはクリニックで生成される電離放射線である。別の実施形態において、この電離放射線は、放射性同位体に由来する。別の実施形態において、この放射線は、核分裂または融合に由来する。
【0252】
一実施形態において、この放射線は太陽放射線ではない。
【0253】
レシピエント哺乳類、ヒト、または対象に対して「放射線照射された」という用語は、レシピエント哺乳類、ヒト、または対象が放射線に曝露されたことを意味する。放射線照射の効果は、以下に記載されるものなどのいくつかの方法のいずれかで明らかにされ得る。いくつかの実施形態において、放射線照射は、内因性造血系を損なう放射線被曝を意味する。いくつかの実施形態において、この損なわれた造血系は、造血細胞の数(count)または数(number)の減少によって明らかにされる。いくつかの実施形態において、この損なわれた造血系は、内因性造血CD45+発現細胞の数の減少によって明らかにされる。いくつかの実施形態において、この損なわれた造血系は、血小板数の減少によって明らかにされる。これらの実施形態において、この対象は、出血を示し得る。いくつかの実施形態において、この損なわれた造血系は、赤血球数の減少によって明らかにされる。これらの実施形態において、この対象は貧血を示し得る。
【0254】
いくつかの実施形態において、放射線照射は、消化管症状を引き起こす放射線被曝を意味する。これらの実施形態において、この消化管症状には、悪心、嘔吐、食欲不振、または腹痛のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0255】
いくつかの実施形態において、放射線照射は、神経症状を引き起こす放射線被曝を意味する。これらの実施形態において、神経症状には、めまい、頭痛、または意識のレベルの低下のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0256】
いくつかの実施形態において、放射線照射は、皮膚症状を引き起こす放射線被曝を意味する。これらの実施形態において、皮膚症状には、発赤、水疱、潰瘍、脱毛、皮脂腺および/もしくは汗腺の損傷、萎縮、線維症、皮膚の色素沈着の低下もしくは増加、または壊死が含まれるが、これらに限定されない。
【0257】
放射線は、放射線が意図される効果またはさらなる有益な効果も引き起こすか否かにかかわらず、損なわれた造血系、消化管症状、または神経症状のうちの1つ以上などの、対象における望ましくない1以上の効果を引き起こす時に「有害」である。したがって、有害な放射線照射は、癌治療に使用される治療的放射線照射を包含する。
【0258】
「化学物質への曝露」という用語は、レシピエント哺乳類、ヒト、または対象の内因性造血系を損なう全ての細胞毒性物質への曝露を包含する。化学物質への曝露の一例として、「化学療法」が挙げられる。いくつかの実施形態において、化学療法は、レシピエント哺乳類、ヒトまたは治療される対象の細胞毒性治療計画を包含する。したがって、一実施形態において、化学療法は、癌を治療するために用いられる抗腫瘍薬もしくは抗腫瘍化合物またはこれらの薬物の組み合わせを表す。いくつかの実施形態において、レシピエント哺乳類、ヒト、または対象は、放射線療法に加えて、化学療法を受ける。他の実施形態において、レシピエント哺乳類、ヒト、もしくは対象は、テロ攻撃、化学プラントもしくは研究室での事故、化学物質の輸送における事故、または他の偶発的曝露で生じ得る、臨床設定を除く有毒な化学物質へ曝露される。いくつかの実施形態において、レシピエント哺乳類、ヒト、または治療される対象の内因性造血系への損傷または損害は、それらの有毒な特性のために化学兵器として使用される化学物質である細胞毒性物質への曝露によって引き起こされる。
【0259】
化学物質への曝露または化学療法の効果は、いくつかの方法のいずれかで明らかにされ得る。いくつかの実施形態において、造血系への損傷は、造血細胞の数(count)または数(number)の減少によって明らかにされる。いくつかの実施形態において、この損なわれた造血系は、内因性造血CD45+発現細胞の数の減少によって明らかにされる。いくつかの実施形態において、この損なわれた造血系は、血小板数の減少によって明らかにされる。これらの実施形態において、この対象は、出血を示し得る。いくつかの実施形態において、この損なわれた造血系は、赤血球数の減少によって明らかにされる。これらの実施形態において、この対象は貧血を示し得る。
【0260】
いくつかの実施形態において、この化学療法は、消化器症状を引き起こす。これらの実施形態において、この消化器症状には、悪心、嘔吐、食欲不振、または腹痛のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0261】
いくつかの実施形態において、化学療法は神経症状を引き起こす。これらの実施形態において、神経症状には、めまい、頭痛、または意識のレベルの低下のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0262】
「損なわれた内因性造血系」という用語は、接着間質細胞の投与(または治療)から恩恵を受けることができる状態を意味する。非限定的な例として、この状態は、内因性造血系の再増殖および/または促進を必要とする。別の非限定的な例としては、治療される対象のBMにおける(CD45発現細胞などの)造血細胞の数が少ない状態が挙げられる。熟練した医師は、正常レベルの造血細胞に対する造血細胞数の減少を決定することを知っている。
【0263】
「移植」という用語または語句は、対象への細胞の導入を表す。これらの細胞は、レシピエントに由来するか、または同種もしくは異種のドナーに由来し得る。
【0264】
いくつかの実施形態において、この対象は、非自己細胞の拒絶反応を避けるためにさらに治療されるであろう。これらの治療には、レシピエントの免疫系を抑制する工程または移植前に免疫単離用半透膜中にこれらの非自己細胞をカプセル化する工程のいずれかが含まれ得る。
【0265】
カプセル化技術は、一般に、小さな球状のビヒクルを含むマイクロカプセル化、ならびにより大きなフラットシートおよび中空糸膜を含むマクロカプセル化として分類されている(Uludag,H.et al.Technology of mammalian cell encapsulation.Adv Drug Deliv Rev.2000;42:29−64)。
【0266】
マイクロカプセルの調製法は当技術分野において公知であり、例えば、Lu MZ,et al.,Cell encapsulation with alginate and alpha−phenoxycinnamylidene−acetylated poly(allylamine).Biotechnol Bioeng.2000,70:479−83,Chang TM and Prakash S.Procedures for microencapsulation of enzymes,cells and genetically engineered microorganisms. Mol Biotechnol.2001,17:249−60、ならびにLu MZ,et al.,A novel cell encapsulation method using photosensitive poly(allylamine alpha−cyanocinnamylideneacetate).J Microencapsul.2000,17:245−51に開示されるものなどを含む。
【0267】
例えば、マイクロカプセルは、変性コラーゲンを、2−ヒドロキシエチルメチルアクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MAA)およびメチルメタクリレート(MMA)のターポリマーのシェルと複合体化することによって調製され、カプセルの厚さは2〜5μmになる。このようなマイクロカプセルは、負に帯電した滑面を付与し、血漿タンパク質吸収を最小限にするために、追加の2〜5μmのターポリマーシェルでさらにカプセル化することができる(Chia,S.M.et al.Multi−layered microcapsules for cell encapsulation Biomaterials.2002 23:849−56)。
【0268】
他のマイクロカプセルは、アルギン酸塩、海産多糖類(Sambanis,A.Encapsulated islets in diabetes treatment.Diabetes Technol.Ther.2003,5:665−8)またはその誘導体をベースとする。例えば、マイクロカプセルは、塩化カルシウムの存在下で、ポリカチオンのポリ(メチレン−コ−グアニジン)塩酸塩と、ポリアニオンのアルギン酸ナトリウムおよびセルロース硫酸ナトリウムとの間の高分子電解質複合体形成によって調製することができる。
【0269】
より小さなカプセルが使用される場合に、細胞カプセル化が改善されることが理解されるであろう。したがって、カプセルサイズが1mmから400μmに低下した場合に、品質管理、機械的安定性、拡散特性、およびカプセル化細胞のインビトロ活性は改善される(Canaple L.et al,Improving cell encapsulation through size control.J Biomater Sci Polym Ed.2002;13:783−96)。さらに、7nmほど小さなよく制御された細孔径、適合した界面化学および正確な微小構造を有するナノ多孔性バイオカプセルは、細胞の微小環境をうまく免疫単離できることが見出された(Williams D.Small is beautiful:microparticle and nanoparticle technology in medical devices.Med Device Technol.1999,10:6−9;Desai,T.A. Microfabrication technology for pancreatic cell encapsulation.Expert Opin Biol Ther.2002,2:633−46)。
【0270】
免疫抑制剤の例としては、メトトレキサート、シクロホスファミド、シクロスポリン、シクロスポリンA、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン(スルファサラゾピリン)、金塩、D−ペニシラミン、レフルノミド、アザチオプリン、アナキンラ、インフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト、TNFα遮断薬、炎症性サイトカインを標的にする生物製剤、および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられるが、これらに限定されない。NSAIDの例としては、アセチルサリチル酸、サリチル酸コリンマグネシウム、ジフルニサル、サリチル酸マグネシウム、サルサレート、サリチル酸ナトリウム、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、ナプロキセン、ナブメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、Cox−2阻害剤およびトラマドールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0271】
本明細書に記載の方法のいくつかにおいて、細胞または培地は、それ自体で、または薬学的に許容される担体をさらに含む医薬組成物の一部として投与することができる。
【0272】
本明細書で使用する「医薬組成物」は、薬学的に適切な担体および賦形剤などの他の化学成分を有する、本明細書に記載の化学コンジュゲートのうちの1以上の製剤を表す。医薬組成物の目的は、対象への化合物の投与を促進することである。
【0273】
以下の、「薬学的に許容される担体」という用語は、対象に著しい刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物活性および特性を抑制しない担体または希釈剤を表す。担体の制限の無い例としては、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルジョンおよび有機溶媒と水の混合物が挙げられる。
【0274】
本明細書の「賦形剤」という用語は、化合物の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加される不活性物質を表す。賦形剤の限定されない例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖および様々な種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0275】
本発明の好ましい実施形態によると、この医薬担体は、生理食塩水の水溶液である。
【0276】
製剤化および薬物投与の技術は、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、Mack Publishing社、イーストン、ペンシルベニア州、最新版で見つけることができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0277】
(以下に詳述するとおり)全身的に医薬組成物を投与してもよい。あるいは、例えば、患者の組織領域に医薬組成物を直接注射することにより、局所的に医薬組成物を投与してもよい。
【0278】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠、粉末化、乳化、カプセル化、捕捉または凍結乾燥のプロセスによって製造することができる。
【0279】
したがって、本発明に従って使用するための医薬組成物は、薬学的に使用することができる製剤への有効成分の加工を促進する賦形剤および助剤を含む、1以上の生理学的に許容される担体を用いて、従来の方法で製剤化してもよい。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0280】
注射のために、医薬組成物の有効成分は、水溶液、例えば、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液中に製剤化してもよい。経粘膜投与については、透過すべき障壁に適する浸透剤が製剤化で使用される。このような浸透剤は、一般に当技術分野で公知である。
【0281】
本発明の方法で使用される全ての製剤では、治療有効量または治療有効用量は、最初に、インビトロアッセイおよび細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、一般に、動物モデルにおいて所望の濃度または力価を達成するように製剤化される。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0282】
本明細書に記載の有効成分の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物において、インビトロで標準的な薬学的手順によって決定することができる。
【0283】
これらのインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイならびに動物研究から得られたデータを、ヒトにおける使用のための用量範囲で製剤化する際に用いることができる。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な製剤化、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる(例えば、Finglら、1975,「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1参照)。例えば、化学療法患者は、治療に積極的な反応を示す消化管症状の改善について症候的に監視することができる。
【0284】
注射については、医薬組成物の有効成分は、水溶液、例えば、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液中に製剤化してもよい。
【0285】
投与量および投与間隔は、移植細胞によって神経伝達物質の合成を効果的に調節するのに十分な有効成分のレベルに個別に調整してもよい。所望の効果を達成するのに必要な投与量は、個々の特徴および投与経路に依存する。検出アッセイを用いて、血漿濃度を決定することができる。
【0286】
治療すべき症状の重症度および反応性に依存して、投薬は、数日から数週間続き、疾患状態の減少が達成される治療過程で単回投与または複数回投与であり得る。
【0287】
いくつかの実施形態において、本発明の細胞または培地は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、皮下注射、気管内注射、または吸入によって投与される。一実施形態において、接着間質細胞は、静脈注射によって投与される。一実施形態において、接着間質細胞は、筋肉注射によって投与される。
【0288】
本発明の細胞または培地は、一度だけ投与されてもよく、またはそれらは、少なくとも2回、3回、4回、5回、もしくは最大10回またはそれ以上投与されてもよい。複数回投与の場合には、個々の投与は、治療過程において全て同じ経路を介してもよく、または異なる投与経路を異なる投与のために利用してもよい。
【0289】
本発明の細胞または培地は、放射線または化学物質への曝露に関して回数の組み合わせ前に、回数の組み合わせ中に、回数の組み合わせ後に投与してもよい。投与が少なくとも2回の投与を含む場合に、各投与は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日間隔でもよい。あるいは、各投与は、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、または6ヶ月間隔でもよい。
【0290】
投薬は、放射線または化学物質への曝露の日に開始してもよい。投薬は、曝露後約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日目に開始してもよい。投薬は、放射線または化学物質への曝露が進行している間、継続してもよい。いくつかの実施形態において、投薬は、曝露前、例えば、放射線療法または化学療法の日程の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日前に開始する。投薬が曝露前に開始する場合に、上述したとおり、曝露の日または曝露後に再び投薬を開始してもよい。
【0291】
1つの例示的な投薬計画において、接着間質細胞は、少なくとも2回筋肉内に投与され、1、2、3、4、または5日間隔で投与される。他の例示的な投薬計画を、実施例に提供する。
【0292】
投与される組成物の量は、もちろん、治療される個体、苦痛の重症度、投与様式、処方する医師の判断などに依存する。投与量および投与のタイミングは、個々の変化する状態の注意深い連続監視に応答する。例えば、治療される化学療法患者は、監視の指示に基づいて、化学療法の症候を緩和するのに十分な細胞量で投与される。
【0293】
一実施形態において、移植後、本発明の細胞は、治療効果が観察されるように、しばらくの間、患者の中で生存する。
【0294】
互換性のある薬学的担体中に製剤化される本発明の製剤を含む組成物も調製され、適当な容器に入れられ、示される状態の治療のためにラベルを付けられてもよい。
【0295】
本発明の組成物は、必要であれば、FDAが承認したキットなどの、パックまたはディスペンサーデバイスで提供されてもよく、これは、有効成分を含む1以上の単位剤形を含んでもよい。このパックは、例えば、ブリスターパックなどの金属ホイルまたはプラスチックホイルを含んでもよい。このパックまたはディスペンサーデバイスは、投与のための取扱説明書が添付されてもよい。このパックまたはディスペンサーは、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式で、容器に付随する通知と共に収容されてもよく、この通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与についての機関による承認を反映している。このような通知は、例えば、処方薬についての米国食品医薬品局によって承認されるラベリングまたは承認された製品の添付文書であってもよい。
【0296】
本発明のいくつかの態様はキットを含む。一実施形態において、このキットは、放射線被曝の影響を軽減するために、有害なレベルの放射線の被曝後に対象を治療するためのものである。一実施形態において、このキットは、化学療法の影響を軽減するために、化学療法を受けている対象を治療するためのものである。一実施形態において、このキットは、内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するためのものである。
【0297】
これらの実施形態のいくつかにおいて、このキットは、無菌パッケージ内に少なくとも1つの治療有効量の接着間質細胞、および治療有効量の細胞の投与のための取扱説明書を含んでもよい。このキットは、さらに、放射線または化学物質への曝露後の指定期間内の投与のための取扱説明書を含んでもよい。
【0298】
一実施形態において、このキットは、内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、放射線被曝または化学療法後の指定期間内に投与するための第1の治療有効量の接着間質細胞を第1の無菌パッケージ内に含み、必要に応じて、内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖をさらに高めるために、曝露後のマッチング期間後に投与するための、造血幹細胞と共に提供される第2の治療有効量の接着間質細胞を第2無菌パッケージ内に含み、さらに第1および第2の治療有効量の投与のための取扱説明書を含む。
【0299】
いくつかの実施形態において、この治療有効量は、対象における内因性造血細胞の再増殖を誘導するか、またはさらに誘導する。いくつかの実施形態において、化学物質への曝露は化学療法である。いくつかの実施形態において、放射線は電離放射線である。一実施形態において、これらの接着間質細胞は、3D条件下で培養された胎盤、脂肪組織、または骨髄由来の接着間質細胞である。
【0300】
この無菌パッケージは、互いに独立して、できる限り対象に適合できる血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、くも膜下腔内注射、皮下注射、または吸入による投与を可能にするように構成されてもよい。異なるパッケージを有する異なるキットを、投与方法に従って使用してもよい。
【0301】
本発明のいくつかの実施形態は、放射線または化学物質への曝露によって損なわれた内因性造血系の、指定された投与計画での治療において使用するための医薬製造用の接着間質細胞の使用を含む。例えば、この指定された投与計画は、放射線または化学物質への曝露後10日以内に投与される治療有効量の接着間質細胞を含んでもよい。別の例において、この指定された投与計画は、放射線または化学物質への曝露後10日以内に投与される第1の治療有効量の接着間質細胞、および第2の指定期間後に投与される少なくとも1つの第2の治療有効量の接着間質細胞を含んでもよい。いくつかの実施形態において、この治療有効量は、対象における内因性造血細胞の再増殖を誘導するか、またはさらに誘導する。いくつかの実施形態において、化学物質への曝露は化学療法である。いくつかの実施形態において、放射線は電離放射線である。一実施形態において、この接着間質細胞は、3D条件下で培養された胎盤、脂肪組織、または骨髄由来の接着間質細胞である。
【0302】
少なくとも1つの第2の治療有効量を含むそれらの実施形態において、この第2の治療量は、必要に応じて、マッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞を含んでもよい。これらの実施形態は、必要に応じて、これらの細胞を対象とマッチさせるマッチング期間であり得る(第2の)指定期間を含んでもよい。例えば、この第1の治療有効量は、曝露後2日以内に投与されてもよく、このマッチング期間は、少なくとも4日間であってもよい。
【0303】
少なくとも1つの第2の治療有効量は、例えば、曝露後毎週、毎月、1〜4ヶ月ごとに、または4〜6ヶ月ごとに投与されてもよい。
【0304】
第1および任意の少なくとも1つの第2の治療有効量は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、皮下注射、または吸入によって投与されてもよい。
【0305】
別の態様において、本発明は、損なわれた内因性造血系を引き起こす造血の疾患、障害、欠乏または症候群に罹患している対象を治療するための方法であって、治療有効量の接着間質細胞を投与する工程を含む方法を対象にする。
【0306】
本発明は、内因性造血系に損傷を受けた対象を治療するための方法であって、内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、治療有効量の接着間質細胞を対象に投与する工程を含む方法にも関する。
【0307】
さらに別の態様において、本目的は、治療有効量の接着間質細胞を含む医薬組成物に関する。一実施形態において、この医薬組成物は、有害なレベルの放射線の被曝後に、放射線被曝の影響を軽減するために対象を治療するための治療有効量の接着間質細胞を含む。別の実施形態において、この医薬組成物は、化学療法の影響を軽減するために、化学療法を受けている対象を治療するための治療有効量の接着間質細胞を含む。一実施形態において、この医薬組成物は、損なわれた造血系に罹患している対象の内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するための治療有効量の接着間質細胞を含む。
【0308】
一実施形態において、この医薬組成物は、さらに、外因性造血幹細胞を含まない。
【0309】
別の態様において、本発明は、医薬組成物の調製における治療有効量の接着間質細胞の使用に関する。一実施形態において、この医薬組成物は、有害なレベルの放射線の被曝後に、放射線被曝の影響を軽減するために、対象の治療に使用するための治療有効量の接着間質細胞を含む。別の実施形態において、この医薬組成物は、化学療法の影響を軽減するために、化学療法を受けている対象の治療に使用するための治療有効量の接着間質細胞を含む。一実施形態において、この医薬組成物は、内因性造血系に損傷を受けた対象の内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するのに使用するための治療有効量の接着間質細胞を含む。
【0310】
一実施形態において、この医薬組成物は、さらに、外因性造血幹細胞を含まない。
【0311】
いくつかの実施形態において、この内因性造血細胞は、対象の造血系によって生産される。したがって、いくつかの実施形態において、この内因性造血細胞は、レシピエント哺乳類、例えば、ヒト(すなわち、治療される対象)である。この内因性造血細胞は、レシピエント哺乳類、例えば、ヒト(すなわち、治療される対象)の完全な遺伝子型を有することができる。いくつかの実施形態において、移植された接着間質細胞の遺伝子型は、レシピエントの内因性造血細胞の遺伝子型と異なる、すなわち同一でない。
【0312】
いくつかの実施形態において、内因性造血系における内因性造血細胞の再増殖は、対象の造血系における内因性造血細胞数の増加を含む。
【0313】
いくつかの実施形態において、内因性造血系における内因性造血細胞の再増殖は、CD45マーカーを発現する内因性造血細胞数の増加を含む。
【0314】
いくつかの実施形態において、この対象は放射線に曝露されている。
【0315】
いくつかの実施形態において、この対象は、化学療法に起因する免疫欠損症である。いくつかの実施形態において、この対象は、内因性造血系を損なう細胞毒性物質に曝露された。
【0316】
いくつかの実施形態において、これらの接着間質細胞の入手源は、胎盤、脂肪組織、または骨髄である。
【0317】
いくつかの実施形態において、これらの接着間質細胞は、細胞増殖を支援する三次元培養条件下で培養された。いくつかの実施形態において、この培養された接着間質細胞は、Flt−3リガンド、IL−6、およびSCFを培地中に分泌する。
【0318】
いくつかの実施形態において、これらの接着間質細胞の入手源は、胎盤、脂肪組織、または骨髄であり、これらの接着間質細胞は、細胞増殖を支援する三次元培養条件下で培養された。
【0319】
いくつかの実施形態において、これらの接着間質細胞の入手源は、胎盤、脂肪組織、または骨髄であり、これらの接着間質細胞は、分化することなく、細胞増殖を支援する三次元培養条件下で培養された。
【0320】
これらの接着間質細胞は、治療される対象に由来するか、または同種もしくは異種のドナーに由来し得る。
【0321】
非限定的な例として、外因性HSCを移植しなくても、本発明の方法のいずれかを使用することができる。したがって、様々な態様のいくつかの実施形態において、本方法は、患者または対象に外因性HSCを投与する工程を含まないという条件を提供する。
【0322】
いくつかの実施形態において、この損なわれた内因性造血系は、造血細胞の数(count)または数(number)の減少によって明らかにされる。いくつかの実施形態において、この損なわれた造血系は、内因性造血CD45発現細胞の数の減少によって明らかにされる。
【0323】
理論に縛られることなく、これらの接着間質細胞は、一般に、治療される対象の造血系の再増殖を支援し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減することによって作用すると考えられている。したがって、説明したとおり、いくつかの実施形態において、これらの接着間質細胞は、それを必要とする対象における内因性造血細胞の発現、増殖および/または分化を増加させることによって作用する。他の実施形態において、これらの接着間質細胞は、対象における外因性造血幹細胞の生着を支援することによって作用する。他の実施形態において、投与される接着間質細胞の治療効果は、放射線または化学物質に曝露される対象を治療すること、または曝露された対象における放射線または化学物質への曝露の1以上の症候を改善することである。
【0324】
したがって、別の態様において、本発明は、放射線または化学物質に曝露された対象を治療する方法であって、治療有効量の接着間質細胞をこの曝露された対象に投与する工程を含む方法も提供する。いくつかの実施形態において、この治療は、対象、例えば、致死線量の放射線に曝露された対象の生存を延長する。致死線量とは、約2〜8Gyの電離放射線(IR)の曝露(一般に、約2〜4週間以内に死亡)、約8〜30GyのIR(一般に、約2日〜2週間以内に死亡)の曝露、または約30Gyを超えるIRの曝露(一般に、約1〜2日以内に死亡)を意味する。本発明は、さらなる態様において、放射線、例えば、電離放射線被曝に関連する症候、または化学療法後などの有毒化学物質への曝露に関連する症候を軽減する方法であって、治療有効量の接着間質細胞をこの曝露された対象に投与する工程を含む方法も提供する。これらの実施形態において、症候には、悪心、嘔吐
、下痢、頭痛、発熱、体重減少、神経症状(例えば、認知機能障害、痙攣、振戦、運動失調、嗜眠)、白血球減少症、貧血、血小板減少症、疲労、脱力、紫斑、出血、脱毛、およびショックが含まれるが、これらに限定されない。これらの症候も、前述したとおり、呼吸器系、神経系、胃腸系、心血管系、皮膚、または腎臓系のうちの1つ以上への損傷として明らかにされ得る。
【0325】
本発明のこれらの態様の様々な実施形態のいくつかにおいて、投与のタイミング、投与回数、および投与経路には、造血系の再増殖および/または内因性造血細胞数の減少の軽減を伴う様々な態様について記載されたものが含まれる。
【0326】
図15は、放射線または化学療法などの有毒化学物質への曝露によって内因性造血系に損傷を受けた対象を治療する方法200を示す高レベルフローチャートである。
【0327】
方法200は、内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖を誘導し、および/または内因性造血細胞数の減少を軽減するために、放射線被曝または化学療法(ステージ210)後の指定期間内(例えば、10日以内、例えば、7〜10日以内、5〜6日以内、3〜4日以内、1〜2日以内、または約1日以内)に、第1の治療有効量の接着間質細胞を対象に投与する工程(ステージ212)、ならびに内因性造血系において内因性造血細胞の再増殖をさらに高める(ステージ222)ために、曝露の次のマッチング期間(例えば、4〜21日)後に、マッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞と共に第2の治療有効量の接着間質細胞を対象に投与する工程(ステージ220)を含む。
【0328】
方法200は、さらに、接着間質細胞単独の投与を繰り返す工程(ステージ214)またはマッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞と共に接着間質細胞の投与を繰り返す工程(ステージ224)を含んでもよい。
【0329】
実施形態において、方法200は、接着間質細胞単独の(例えば、毎週、毎月、1〜4ヶ月ごと、もしくは4〜6ヶ月ごとの)投与を繰り返す工程(ステージ214)のみを含むか、またはマッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞と共に接着間質細胞の(例えば、毎週、毎月、1〜4ヶ月ごと、もしくは4〜6ヶ月ごとの)投与を繰り返す工程(ステージ224)のみを含んでもよい。
【0330】
方法200は、さらに、同種の臍帯血細胞または骨髄細胞を対象とマッチさせる工程(ステージ215)を含んでもよい。
【0331】
投与210、投与220は、血管内注射、筋肉注射、腹腔内注射、皮下注射、または吸入投与によって行ってもよい。投与方法は、対象に適合させてもよく、投与210と投与220間で異なってもよい。
【0332】
図16は、本発明のいくつかの実施形態に係るいくつかの投与計画を示す。接着間質細胞(ASC)の投与、および造血幹細胞、例えば、マッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞(CB/BM)を有するASCの投与を、放射線被曝または化学療法後の時間に対して示す。ドナーを見つける期間(すなわち、「マッチング期間」)は、造血を支援するために、同種の臍帯血細胞または骨髄細胞を投与する可能性を決定するために、典型的には2〜5日であるが、それより長くても短くてもよい。一般的に言えば、(必要に応じてCB/BMを含む)ASCの第1の即時投与は、急性毒性から保護するが、ASCまたはCB/BMを有するASCのいずれかの次の投与は、造血を支援し、対象の回復に応じて行われてもよい。
【0333】
次のリストは、開示される使用および方法に適用できる様々な投薬計画を示す。
【0334】
1−例えば、曝露後約10日以内、例えば、7〜10日以内、5〜6日以内、3〜4日以内、1〜2日以内、または約1日以内の接着間質細胞(ASC)単独の投与。
【0335】
2−1の後−例えば、毎週、毎月、1〜4ヶ月ごと、または4〜6ヶ月ごとの接着間質細胞単独の追加投与。
【0336】
3−臍帯血または骨髄のドナーが見つかった場合−曝露後約10日以内、例えば、7〜10日以内、5〜6日以内、3〜4日以内、1〜2日以内、または約1日以内の、接着間質細胞およびマッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞(CB/BM)の投与。
【0337】
4−3の次−マッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞の有無にかかわらず、例えば、毎週、毎月、1〜4ヶ月ごと、または4〜6ヶ月ごとの接着間質細胞の追加投与。
【0338】
5−筋肉内経路を介して、曝露後約0〜5日以内に少なくとも2回、例えば、曝露後1日目と5日目における接着間質細胞単独の投与。
【0339】
6−臍帯血または骨髄ドナーが見つかった場合−曝露後2日以内の、接着間質細胞およびマッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞の投与。
【0340】
7−5または6の次−曝露後4〜21日目(臍帯血または骨髄ドナーを見つけるために必要な期間)の、マッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞の投与。
【0341】
8−7の後−必要な時に、マッチさせた同種の臍帯血細胞または骨髄細胞の有無にかかわらず、接着間質細胞の追加投与。
【実施例】
【0342】
上記の説明と共に、非限定的な方法で本発明を例証する以下の実施例について以降言及する。
【0343】
一般に、本明細書で使用する命名法および本発明で利用する実験方法には、分子、生化学、微生物学および組換えDNAの技術が含まれる。このような技術は文献に十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I−III巻 Ausubel,R.M.,編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley&Sons社、ボルティモア、メリーランド州(1989);Perbal,「A Practical Guide to Molecular Cloning」,John Wiley&Sons社、ニューヨーク州(1988);Watsonら「Recombinant DNA」,Scientific American Books社、ニューヨーク州;Birrenら(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1−4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、ニューヨーク州(1998);米国特許第4,666,828号、同第4,683,202号、同第4,801,531号、同第5,192,659号、および同第5,272,057号に記載の方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」,I−III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunolgy」I−III巻、Coligan J.E.編(1994);Stitesら(編),「Basic and Clinical Immunology」(第8版),Appleton&Lange、ノーウォーク、コネティカット州(1994);MishellおよびShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freemanら、ニューヨーク州(1980)を参照されたい;利用可能な免疫アッセイは、特許および科学文献で広範に説明されており、例えば、米国特許第3,791,932号、同第3,839,153号、同第3,850,752号、同第3,850,578、同第3,853,987号、同第3,867,517号、同第3,879,262号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、同第4,098,876号、同第4,879,219号、同第5,011,771号および同第5,281,521号;「Oligonucleotide Synthesis」 Gait, M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.,およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.,およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.L,編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press社,(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.,(1984)および「Methods in Enzymology」1−317巻,Academic Press社;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」,Academic Press社、サンディエゴ、カリフォルニア州(1990);Marshakら「Strategies for Protein Purification andCharacterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press社(1996)を参照されたい。これらの全ては、本明細書で十分に記載されるように、参照により組み込まれる。他の一般的な参考文献は、この文書全体の中に提供される。その中の手順は、当技術分野において公知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。その中に含まれる情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0344】
実施例1
骨髄、胎盤および脂肪組織由来の接着間質細胞(ASC)の生産および培養
特定の細胞マーカー発現プロファイルによって特徴付けられる3D−ASC細胞を生産するために、3D担体を含むバイオリアクターシステムで接着間質細胞を培養した。成長効率を、細胞数を介して試験した。これらの細胞の分化能を、分化培地で培養することにより試験した。
【0345】
材料および実験手順
骨髄接着間質細胞
骨髄(BM)の接着間質細胞を、開胸手術またはBM生検を受ける血液学的に健常なドナーの吸引された胸骨の骨髄から得た。骨髄吸引物を、ハンクス平衡塩溶液(HBSS;GIBCO BRL/Invitrogen社、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)で3倍希釈し、フィコール−ハイパック(Robbins Scientific社、サニーベール、カリフォルニア州)密度勾配遠心分離を行った。その後、骨髄単核細胞(<1.077gm/cm
3)を収集し、HBSSで3回洗浄し、10%FCS(GIBCO BRL社)、10
−4Mのメルカプトエタノール(Merck社、ホワイトハウスステーション、ニュージャージー州)、Pen−Strep−ナイスタチン混合物(100U/ml:100μg/ml:1.25un/ml、Beit Ha’Emek社)、2mMのL−グルタミン(Beit Ha’Emek)を補充した成長培地(DMEM(Biological Industries社、Beit Ha’Emek、イスラエル))に再懸濁した。個々のドナーからの細胞を、37℃(5%CO
2)で組織培養フラスコ(Corning社、アクトン、マサチューセッツ州)に別々にインキュベートし、培地を1週間ごとに交換した。細胞を、0.25%トリプシン−EDTA(Beit Ha’Emek)を用いて、3〜4日ごとに分けた。2〜40回継代した後、60〜80%コンフルエンスに達した時に、細胞を分析のためにまたはバイオリアクターで培養するために収集した。
【0346】
胎盤由来の接着間質細胞
満期分娩の胎盤の内部の部分(Bnei Zion医療センター、ハイファ、イスラエル)を、無菌条件下で切り、ハンクス緩衝液で3回洗浄し、0.1%コラゲナーゼ(1mg/mlの組織、Sigma−Aldrich社、セントルイス、ミズーリ州)と37℃で3時間インキュベートした。その後、穏やかにピペッティングし、懸濁細胞を、10%FCS、Pen−Strep−ナイスタチン混合物(100U/ml:100μg/ml:1.25un/ml)および2mMのL−グルタミンを補充したDMEMで洗浄し、75cm
2フラスコに播種し、37℃で、5%CO
2を含む加湿条件下の組織培養インキュベーター内でインキュベートした。その後、細胞を、72時間プラスチック表面に接着させ、その後、培地を3〜4日ごとに交換した。60〜80%コンフルエンスに達した時(通常、10〜12日)、0.25%トリプシン−EDTAを用いて、細胞を成長フラスコから剥離し、新しいフラスコに播種した。その後、培養細胞は、分析のためにまたはバイオリアクターで培養するために収集した。
【0347】
脂肪由来の接着間質細胞
接着間質細胞を、脂肪吸引手順(Rambam ハイファ、イスラエル)のヒト脂肪組織から得た。脂肪組織を、等量のPBSで十分に洗浄し、37℃で30分間、コラゲナーゼ(20mg/ml)で消化した。その後、細胞を、10%FCS、Pen−Strep−ナイスタチン混合物(100U/ml:100μg/ml:1.25un/ml)およびL−グルタミンを含むDMEMで洗浄し、室温で10分間、1200rpmで遠心分離し、溶解液(1:10;Biological Industries社、Beit Ha’emek、イスラエル、赤血球を廃棄するため)に再懸濁し、遠心分離して、10%FCS、Pen−Strep−ナイスタチン混合物(100U/ml:100μg/ml:1.25un/ml)およびL−グルタミンを含むDMEMに再懸濁した。その後、洗浄細胞を、3〜10×10
7細胞/フラスコで、無菌の組織培養培地のフラスコに播種した。翌日、細胞をPBSで洗浄し、残留RBCおよび死細胞を除去した。これらの細胞を、5%CO
2を含む加湿条件下で組織培養インキュベーター中37℃に保持した。培地を3〜4日ごとに交換した。60〜80%コンフルエンスの時点で、これらの細胞を0.25%トリプシン−EDTAを用いて成長フラスコから剥離し、新しいフラスコに播種した。2〜40回の継代後に、細胞が60〜80%コンフルエンスに達した時、細胞を分析のためにまたはバイオリアクターで培養するために収集した。
【0348】
PluriX(商標)栓流バイオリアクター
PluriX(商標)栓流バイオリアクター(Pluristem社、ハイファ、イスラエル;
図1gに示す、米国特許第6,911,201号も参照されたい)に、ポリエステルの不織布マトリックスから作られた1〜100ml充填用の3D多孔性担体(porrosive carrier)(直径4mm)を充填した。これらの担体は、比較的少量で大細胞数の増殖を可能にする。ガラス製品は、Pluristem社が設計し、製造した。このバイオリアクターは、37℃のインキュベーター内で維持され、流速は、バルブ(
図1gの6a)、および蠕動ポンプ(
図1gの9)によって調節され、監視された。このバイオリアクターは、サンプリングポイントおよび注入ポイント(
図1gの4)を含み、細胞の連続播種を可能にする。培地を、貯蔵所(
図1gの1)から、pH6.7〜7.4で供給した。この貯蔵所には、バイオリアクター中の細胞密度に応じて、異なる比率で空気/CO
2/O
2を含む濾過したガス混合物(
図1gの2、3)が供給された。O
2の割合は、モニター(
図1gの6)によって測定される、バイオリアクターの出口における溶存O
2のレベルに適していた。このガス混合物は、シリコンチューブまたは拡散器(Degania Bet社、Emek Hayarden、イスラエル)を経て貯蔵所に供給された。培地を、循環している非接着細胞の収集を可能にする分離容器(
図1gの7)に通過させた。培地の循環は、蠕動ポンプ(
図1gの9)が行った。このバイオリアクターは、さらに、追加のサンプリングポイント(
図1gの10)および連続培地交換用の容器を備えていた。
【0349】
3D−接着間質細胞(3D−ASC)の生産
上記のように成長させたコンフルエントでない初代ヒト接着間質細胞の2D培養物を、トリプシン処理し、洗浄し、10%FBS、Pen−Strep−ナイスタチン混合物(100U/ml:100μg/ml:1.25un/ml)および2mMのL−グルタミンを補充したDMEMに再懸濁し、注入ポイントを介して、無菌の栓流バイオリアクター(
図1g参照)内の3D担体上に播種した(10
3〜10
5細胞/ml)。接種前に、バイオリアクターに、PBS−Ca−Mg(Biological Industries社、Beit Ha’emek、イスラエル)を充填し、これをオートクレーブ処理(120℃、30分間)し、10%熱不活性化ウシ胎児血清およびPen−Strep−ナイスタチン混合物(100U/ml:100μg/ml:1.25un/ml)を含むダルベッコ成長培地で洗浄した。流れを、0.1〜5ml/分の速度で維持した。播種プロセスには、2〜48時間の循環の中断が含まれ、それによって、細胞がこれらの担体上で定着するのを可能にした。バイオリアクターを、必要に応じて、無菌の空気およびCO
2が供給されるインキュベーターを用いて、制御された温度(37℃)およびpH条件(pH=6.7〜7.4)下で維持した。成長培地を週に2〜3回交換した。循環培地を、4時間〜7日ごとに新鮮なDMEM培地と交換した。1×10
6〜1×10
7細胞/mlの密度(成長の12〜40日後)で、培地の全量をこのバイオリアクターから除去し、担体をPBSで3〜5回洗浄した。その後、3D−ASC細胞を、トリプシン−EDTA(Biological Industries社、Beit Ha’emek、イスラエル;3〜15分穏やかに攪拌しながら、1〜5回)を用いてこれらの担体から脱離させ、その後、DMEMに再懸濁して、凍結保存した。
【0350】
3D−ASCの品質の生物学的アッセイ
凍結保存した3D−ASC細胞を解凍し、数を数えた。細胞生存率の評価のために、2×10
5細胞を150cm
2組織培養フラスコに播種し、それらの接着力および再増殖を、播種後の7日以内に評価した。その後、3D−ASCの膜マーカーの表現型を、蛍光モノクローナル抗体のフローサイトメーター(Beckman Coulter社、フラートン、カリフォルニア州)を用いて分析した。
【0351】
フローサイトメトリーアッセイを用いた、3D培養接着間質細胞と2D培養接着間質細胞との間での細胞膜マーカープロファイルの比較
2D培養物および3Dフロー方式培養物の100,000〜200,000個の接着間質細胞を、5mlチューブ中の培地0.1mlに懸濁し、飽和濃度の以下のMAbのそれぞれとインキュベートした(4℃、30分、暗い条件):FITC結合抗ヒトCD90(Chemicon International社、テメキュラ、カリフォルニア州)、PE結合抗ヒトCD73(Bactlab Diagnostic社、Ceasarea、イスラエル)、PE結合抗ヒトCD105(eBioscience社、サンディエゴ、カリフォルニア州)、FITC結合抗ヒトCD29(eBioscience社、サンディエゴ、カリフォルニア州)、Cy7−PE結合抗ヒトCD45(eBiosience社)、PE結合抗ヒトCD19(IQProducts社、グローニンゲン、オランダ)、PE結合抗ヒトCD14MAb(IQProducts社)、FITC結合抗ヒトCD11b(IQProducts社)およびPE結合抗ヒトCD34(IQProducts社)またはFITC結合抗ヒトHLA−DRのMAb(IQProducts社)。インキュベーション後、これらの細胞を、1%熱不活性化FCSを含む氷冷PBSで2回洗浄し、0.5%ホルムアルデヒド500μlに再懸濁し、FC−500フローサイトメーター(Beckman Coulter社、フラートン、カリフォルニア州)を用いて分析した。
【0352】
質量分析法を用いた3D培養接着間質細胞と2D培養接着間質細胞との間でのタンパク質プロファイルの比較
2Dおよび3Dの培養手順によるASCを、上述したとおり胎盤から生産した。簡単に説明すると、これらの2D培養物は、60〜80%コンフルエンスに達するまで37℃の加湿5%CO
2雰囲気下で4日間、175cm
2フラスコ内で0.3〜0.75×10
6細胞を培養することによって生産した。これらの3D培養物は、2000担体を含むバイオリアクター中で2〜10×10
6細胞/gを播種し、18日間培養することによって生産した。収集後、細胞を洗浄し(×3)、全ての血清を除去し、ペレット化して、凍結させた。タンパク質を、(Tri試薬キット(Sigma社、セントルイス、米国)を用いて)ペレットから単離し、トリプシンで消化し、メーカーのプロトコールに従ってiTRAQ試薬(Applied Biosciences社、フォスターシティ、カリフォルニア州)で標識した。簡単に説明すると、iTRAQ試薬は、非ポリマー性の等圧タグ付き試薬である。各試料中のペプチドを、それらのN−末端および/またはリジン側鎖を介して4つの等圧の同位体コード化タグのうちの1つで標識した。これらの4つ標識試料を混合し、ペプチドを、質量分析で分析した。ペプチド断片化の際、各タグは異なる質量のレポーターイオンを放出するので、4つのレポーターの比率は、試料中の特定のペプチドの相対存在量を与える(情報元:http://docs.appliedbiosystems.com/pebiodocs/00113379.pdf)。
【0353】
胎盤由来のASCの2D培養対3D培養のプロテオミクス解析を、QTOF−Premier上のLC−MS/MS(Waters社、サンフランシスコ、カリフォルニア州)を用いて、Smolerプロテオミクスセンター(Technion社の生物事業部、ハイファ、イスラエル)で行い、同定および解析を、nrデータベースのヒトの部分に対してPep−Minerソフトウエア(Beer,I.,et al.,Proteomics,4,950−60(2004)によって行った。以下のタンパク質の解析を行った:ヘテロ核リボヌクレオタンパク質H1(Hnrphl GeneBankアクセッション番号NP_005511)、H2Aヒストンファミリー(H2AF、GeneBankアクセッション番号NP_034566.1)、真核生物の翻訳伸長因子2(EEEF2、GeneBankアクセッション番号NP_031933.1)、レティキュロカルビン(reticulocalbin)3、EFハンドカルシウム結合ドメイン(RCN2、GeneBankアクセッション番号NP 065701)、CD44抗原アイソフォーム2前駆体(GeneBankアクセッション番号ΝΡ^ΟΟ 1001389、カルポニン1、塩基性、平滑筋(CNN1、GeneBankアクセッション番号NP_001290)、3−ホスホアデノシン−5−ホスホ硫酸シンターゼ2アイソフォームa(Papss2、GeneBankアクセッション番号NP 004661)、リボソームタンパク質L7a(rpL7a、GeneBankアクセッション番号NP_000963)およびアルデヒド脱水素酵素X(ALDH X、GeneBankアクセッション番号P47738)。全ての実験を二回行った。解析の性質により、全てのタンパク質は、試料中に出現するペプチドの数に従って分析した(各分析においてタンパク質が2〜20回出現)。
【0354】
ELISAを用いた3D培養接着間質細胞と2D培養接着間質細胞との間での分泌タンパク質の比較
2Dおよび3Dの培養手順によって胎盤から生産させるASCを、上述したとおり、24日間、3D培養で生産した。その後、馴化培地を収集し、3つの独立した実験で、ELISA(R&D Systems社、ミネアポリス、ミネソタ州)を用いて、Flt−3リガンド、IL−6、トロンボポエチン(TPO)および幹細胞因子(SCF)について分析した。結果を、1×10
6細胞/mlに対して規準化した。
【0355】
結果
PluriX(商標)バイオリアクターシステムは、生理的環境のような微小環境を作り出す
接着間質細胞にとって効率的な培養条件にさせるために、生理的環境のような環境(
図1aに示す)を、PluriXバイオリアクター(Pluristem社、ハイファ、イスラエル;担体を
図1gに示し、
図1bに播種前の状態を示す)を用いて人工的に作り出した。
図1c〜
図1fに示すとおり、骨髄生産3D−ASC細胞を十分に培養し、播種後20日間(
図1b〜
図1c、それぞれ150倍および250倍に拡大)ならびに40日間(
図1c〜
図1d、それぞれ350倍および500倍に拡大)、3Dマトリックス上で増殖させた。
【0356】
PluriXバイオリアクターシステム内で成長した細胞は著しく増殖した
異なる生産ロットの胎盤由来の3D−ASC細胞を、PluriXバイオリアクターシステム内で成長させた。播種密度は、13,300細胞/担体(全部で2×10
6細胞)であった。播種後14日目に、細胞密度は15倍増し、約200,000細胞/担体(
図2)、または150担体のバイオリアクター中30×10
6個に達した。別の実験では、細胞を、1.5×10
4細胞/mlの密度でバイオリアクターに播種し、播種後30日目に、これらの担体は、50倍を超える高い細胞数、すなわち、約0.5×10
6細胞/担体、または0.5×10
7細胞/mlを含んでいた。様々なレベルの成長カラムの担体上の細胞密度は一貫しており、細胞への酸素および栄養素の移送が均質であることが示された。したがって、この3D培養系は、生着および移植の成功を支援する目的のために十分な量まで効率よく成長させることができる、高密度の間葉系細胞培養物の成長および長期維持のための支援条件を提供することが証明された。
【0357】
3D−ASCは特有の膜マーカー特性を示す
3D培養法を模倣する骨環境によって与えられる可溶性分子の分泌プロファイルおよびタンパク質生産の違いを定義するために、FACS分析を行った。
図3aに示すとおり、細胞マーカーのFACS分析は、3D−ASCが2D条件で成長させた接着間質細胞とは異なるマーカー発現パターンを示すことを表す。2D培養細胞は、3D培養細胞と比較して、著しく高いレベルの陽性膜マーカーCD90、CD105、CD73およびCD29を発現した。例えば、CD105は、3D培養細胞中では56%の発現を示し、それに対して、2D培養細胞中では87%の発現を示した。2D胎盤培養物と3D胎盤培養物の両方のASCは、造血膜マーカーを発現しなかった(
図3b)。
【0358】
3D−ASCは可溶性因子の特有のプロファイルを示す
造血のニッチには、豊富なサイトカイン、ケモカインおよび成長因子を生産する支援細胞が含まれる。2D培養ASCと3D培養ASCの違いをさらに定義するために、2D ASC培養物および3D ASC培養物の馴化培地中の4つの主要な造血分泌タンパク質のプロファイルをELISAにより調べた。
図4a〜
図4cは、3D条件で成長させた細胞が、高レベルのFlt−3リガンド(
図4a)、IL−6(
図4b)、およびSCF(
図4c)を有する馴化培地を生成するが、2D培養物の馴化培地では、低レベルのIL−6、ならびに0に近いレベルのFlt−3リガンドおよびSCFが検出されたことを示す。トロンボポエチン(TPO)の生産は、非常に低く、両方の培養物で等しかった。
【0359】
3D−ASCは、質量スペクトル分析で特有のタンパク質プロファイルを示す
2D培養ASCと3D培養ASCの違いをさらに定義するために、これらの細胞のタンパク質プロファイルを、質量分析によって分析した。
図4dは、2D培養ASCおよび3D培養ASCが、非常に異なるタンパク質発現プロファイルを示すことを示す。以下の表1に示すとおり、3D培養細胞は、非常に高い発現レベル(それぞれ、9倍および12倍を上回る高さ)のH2AFおよびALDH X、ならびに高レベルのタンパク質EEEF2、RCN2およびCNN1を示す(それぞれ、約3倍、約2.5倍および約2倍)。さらに、3D培養細胞は、タンパク質HnrphlおよびCD44抗原アイソフォーム2前駆体が約半分の発現レベルであり、Papss2およびrpL7aが約3分の1の発現レベルであることを示す。
【0360】
実施例2
2D培養ASCおよび3D培養ASCによるリンパ球反応の抑制
接着間質細胞、特に、3D−ASCは、MLRアッセイにおいてヒト臍帯血単核細胞の免疫反応を抑制することが見出された。
【0361】
材料および実験手順
混合リンパ球反応(MLR)アッセイ
胎盤から生産される2Dおよび3D培養手順によるASCの免疫抑制ならびに免疫特権の特性は、反応(増殖)細胞および刺激(非増殖)細胞の混合培養における不適合リンパ球の増殖率によって影響されるように、HLA遺伝子座で組織適合性を測定するMLRアッセイによって影響を受けた。ヒト臍帯血(CB)単核細胞(2×10
5)を反応細胞として使用し、放射線照射(3000Rad)した等量(10
5)のヒト末梢血由来の単球(PBMC)と共培養するか、胎盤から生産された2Dもしくは3D培養の接着間質細胞と共培養するか、または接着間質細胞とPBMCの組み合わせで共培養することによって刺激した。各アッセイを3回繰り返した。細胞を、96ウェルプレート中の(37℃の加湿5%CO
2雰囲気下で、20%FBSを含む)RPMI 1640培地で4日間共培養した。プレートを、培養の最後の18時間中に、1μCの
3H−チミジンでパルスした。その後、細胞を、グラスファイバーフィルター上で収集し、チミジン取り込みを、シンチレーションカウンターを用いて定量した。
【0362】
結果
図7は、PBMCで刺激した時に、CB細胞の増殖が上昇することによって示されるCB細胞の免疫反応を示し、これは、理論によって縛られることなく、おそらく、HLA不適合性に反応するT細胞増殖に関連付けられる。しかし、本発明の接着間質細胞とインキュベートした時に、かなり低いレベルの免疫反応がこれらの細胞によって示された。さらに、PBMCに対するCB免疫反応は、これらの接着細胞と共培養したときに、実質的に低下した。したがって、ASCは、GvHDに特有の、ドナー細胞のT細胞増殖を低下させる潜在能力を有することが見出された。2Dおよび3Dの両方の培養物は、リンパ球の免疫反応を低下させるが、上記の3D−ASCの他の利点と一致して、これらの3D−ASCはより強い免疫抑制を示した。
【0363】
実施例3
胎盤由来の3D−ASCのHSC生着を改善する能力の評価
HSC生着の3D−ASC支援を、亜致死線量の放射線照射または化学療法で前処理した免疫欠損NOD−SCIDマウスで検出されるヒト造血細胞(hCD45+)のレベルにより評価した。
【0364】
材料および実験手順
CD34+細胞の単離
臍帯血試料を、分娩中無菌条件下で取得し(Bnei Zion医療センター、ハイファ、イスラエル)、単核細胞を、Lymphoprep(Axis−Shield PoC As、オスロ、ノルウェー)密度勾配遠心分離を用いて分画し、凍結保存した。解凍した単核細胞を洗浄し、抗CD34抗体とインキュベートし、midi MACS(Miltenyl Biotech社、Bergish Gladbach、ドイツ)を用いて単離した。2種類以上の試料からの細胞を、所望の量(50,000〜100,000細胞)に達するまでプールした。
【0365】
放射線照射マウスにおける移植細胞の検出
7週齢の雄および雌のNOD−SCIDマウス(NOD−CB 17−Prkdcscid/J;Harlan/Weizmann Inst.,Rehovot、イスラエル)を、無菌のオープンシステムケージ内で維持し、無菌の食事およびオートクレーブした酸性水を与えた。これらのマウスに亜致死線量(350cGy)の放射線を照射し、その後(放射線照射後48時間)、胎盤または脂肪組織由来の追加のASC(0.5×10
6〜1×10
6)を含む場合と含まない場合とで(各群3〜7匹のマウス)、外側尾静脈への静脈注射によって50,000〜100,000個のhCD34
+細胞を移植した。移植後4〜6週間目に、これらのマウスを脱臼により屠殺し、BMを、FACS緩衝液(PBS50ml、FBS5ml、5%アジ化ナトリウム0.5ml)で大腿骨と脛骨の両方を洗い流すことによって収集した。マウスBMにおけるヒト細胞をフローサイトメトリーによって検出し、治療したNOD−SCIDマウスにおけるヒトおよびマウスのCD45造血細胞マーカー発現細胞の割合を、抗ヒトCD45−FITC(IQ Products、Groningen、オランダ)と細胞をインキュベートすることによって測定した。明確なヒト生着についての最低の閾値は0.5%であった。
【0366】
化学療法で治療したマウスにおける移植細胞の検出
6.5週齢の雄のNOD−SCIDマウス(NOD.CB17/JhkiHsd−scid;Harlan、Rehovot、イスラエル)を、放射線照射マウスについて上記に記載したとおりに維持し、ブスルファンを腹腔内に注射した(2日連続−25mg/kg)。第2のブスルファン注射後2日目に、マウスに、CD34+細胞を単独で、または胎盤から生産された0.5×10
6個のASCと共に注射した。移植後3.5週目に、マウスを屠殺し、放射線照射マウスについて記載したとおりに、ヒト造血細胞の存在を決定した。
【0367】
結果
放射線照射マウスにおける3D−ASCによって改善されたHSCの生着
ヒトCD34+造血細胞および胎盤または脂肪に由来する3D−ASCを、放射線照射NOD−SCIDマウスに共移植した。生着率を共移植後4週目に評価し、HSCを単独で移植したマウスと比較した。表2および
図5に示すとおり、3D−ASCおよびUCB CD34+細胞の共移植は、UCB CD34+細胞単独で治療したマウスと比較して、レシピエントマウスのBMにおいてかなり高い生着率およびより高レベルのヒト細胞を与えた。
【0368】
図14は、異なるバッチのhCD45+細胞の割合および3D−ASCの用量を示す生着の結果を示す。放射線照射の代わりにブスルファンを使用した場合にも同様の生着の結果が得られ、放射線照射または化学療法によって損なわれた内因性造血系を治療するための、併用治療の有効性および相乗効果が示された。
【0369】
化学療法で治療したマウスにおける3D−ASCによって改善されたHSCの生着
ヒトCD34+造血細胞を、化学療法で前処理したNOD−SCIDマウスに、胎盤由来の500,000個の2D−ASCまたは3D−ASCと共移植した。共移植後3.5週目に、生着効率を評価し、HSCを単独で移植したマウスと比較した。表3に示すとおり、ASCおよびUCB CD34+細胞の共移植は、UCB CD34+細胞単独と比較して、レシピエントマウスのBMにおいてより高レベルの生着が得られた。さらに、表3に示すとおり、生着の平均レベルは、従来の静的な2D培養条件(フラスコ)で成長させた同じドナー由来の細胞を共移植したマウスよりも、PluriXバイオリアクターシステムで成長させた胎盤由来の接着間質細胞(3D−ASC)と共移植したマウスにおいてより高かった。
【0370】
図6a〜
図6bに示すFACS解析結果は、ASCとhHSCの共移植の利点(
図6b)、およびHSC移植後の造血系の回復を改善するASCの能力を示す。
【0371】
まとめると、これらの結果は、ASCが、HSC移植(自己または同種異系)後の造血回復を改善するために支援細胞として役立ち得ることを示す。HSC移植後の造血幹細胞および/または前駆細胞の生着を高める3D−ASCの能力は、移植細胞のホーミング、自己再生および増殖の能力を向上させることができるHSC支援サイトカインを分泌する3D−ASCの能力に起因するか、または移植可能なHSCのホーミングおよび増殖に必要な損傷を受けた造血微小環境を再構築するそれらの細胞の能力に起因し得る。
【0372】
実施例4
放射線照射および化学損傷後にHSC回復を改善する胎盤由来の3D−接着間質細胞の
能力の評価
レシピエントの内因性HSC回復の3D−接着間質細胞による支援を、亜致死線量の放射線照射または化学療法で前処理した免疫欠損NOD−SCIDマウスにおいて検出されるマウスの造血細胞(mCD45+)のレベルによって評価した。
【0373】
材料および実験手順
放射線照射マウスにおける回復した細胞の検出
7週齢の雄および雌のNOD−SCIDマウス(NOD−CB17−Prkdcscid/J;Harlan/Weizmann Inst.,Rehovot、イスラエル)を、無菌のオープンシステムケージ内で維持し、無菌の食事およびオートクレーブした酸性水を与えた。これらのマウスに亜致死線量(350cGy)の放射線を照射し、その後(放射線照射後48時間)、2Dまたは3D条件下で成長させた胎盤由来の接着間質細胞(0.5×10
6〜1×10
6)を含む場合と含まない場合とで(各群3〜7匹のマウス)、50,000〜100,000個のhCD34
+細胞を移植した。細胞を、外側尾静脈への静脈注射によって投与した。移植後4〜6週間目に、これらのマウスを脱臼により屠殺し、BMを、FACS緩衝液(PBS50ml、FBS5ml、5%アジ化ナトリウム0.5ml)で大腿骨と脛骨の両方を洗い流すことによって収集した。マウス造血系の回復を表す、治療したNOD−SCIDマウスにおけるマウスCD45造血細胞マーカー発現細胞の測定を、抗マウスCD45−FITC(IQ Products、Groningen、オランダ)と細胞をインキュベートすることによって行った。
【0374】
化学療法で治療したマウスにおける回復した細胞の検出
6.5週齢の雄のNOD−SCIDマウス(NOD.CB17/JhkiHsd−scid;Harlan、Rehovot、イスラエル)を、放射線照射マウスについて上記に記載したとおりに維持し、ブスルファンを腹腔内に注射した(2日連続−25mg/kg)。第2のブスルファン注射後2日目に、マウスに、ヒトCD34+細胞を単独で注射するか、または胎盤から生産された0.5×10
6個の接着間質細胞と共に注射した。移植後3.5週目に、マウスを屠殺し、放射線照射マウスについて上記に記載したとおりに、ヒト造血細胞の回復を測定した。
【0375】
結果
放射線照射マウスにおける3D−接着間質細胞によって改善されたHSCの生着
ヒトCD34+造血細胞および胎盤または脂肪組織に由来する3D−接着間質細胞を、放射線照射NOD−SCIDマウスに共移植した。マウス造血系の回復効率を共移植後4週目に評価し、胎盤接着間質細胞を含めないで、hHSCを移植したマウスの自己回復と比較した。表4に示すとおり、2D−接着間質細胞とUCB CD34+細胞および3D−接着間質細胞とUCB CD34+細胞の両方の共移植は、UCB CD34+細胞単独で治療したマウスと比較して、mCD45の発現レベルによって示されるように、かなり高い回復率を与えた。改善は、3D増殖細胞においてより高かったことに留意されたい。
【0376】
化学療法で治療したマウスにおける3D−接着間質細胞によって改善されたHSCの生着
ヒトCD34+造血細胞を、化学療法で前処理したNOD−SCIDマウスに、胎盤由来の接着間質細胞と共移植した。レシピエントマウスの造血系の回復効率を、共移植後3.5週目に評価し、HSCを単独で移植したマウスと比較した。表5に示すとおり、接着間質細胞およびUCB CD34+細胞の共移植が、UCB CD34+細胞単独と比較して、レシピエントマウスの造血系のより高い回復率を与えた。さらに、表5に示すとおり、回復の平均レベルは、投与した接着間質細胞の数に対して用量依存的であった。
【0377】
図8A〜
図8Bに示すFACS分析結果は、hHSC単独(
図8A)と比較した、hHSCを脂肪由来の接着間質細胞と共移植する(
図8B)利点、ならびにレシピエントの造血系の回復を改善する接着間質細胞の能力を示す。
【0378】
図8A〜
図8Bは、さらに、本発明の接着間質細胞の移植または投与後に、レシピエントの内因性造血系が実質的に回復されたことを示す。これは、内因性造血細胞の数の増加を与えた。本発明の接着間質細胞は、とりわけ、レシピエント内因性造血系の回復および/または構成物を改善または誘導する。おそらく回復は、制御された造血細胞の分化および増殖に必要な可溶性サイトカインまたは常在性サイトカインを提供することによって促進される。
【0379】
実施例5
放射線照射マウスの生存に対する3D−ASC(PLX)細胞の効果を、放射線照射(850cGy)後24時間に、C3Hマウスに3D増殖ASCを静脈内投与した後に検討した。
【0380】
材料および実験手順
調製
マウス(C3H雄、20g、約8週齢)を、Harlan社から購入した。動物を、実験前の馴化のためにSPF施設で1週間飼育した。30匹のC3H雄マウスに全身放射線照射(850cGy)した。放射線照射後24時間に、15匹のマウスに、外側尾静脈の1つへのゆっくりとした静脈注射(約1分)によって、マウス1匹あたりplasmaLyte A250μl中の3D−ASC細胞(1×10
6個)を注射した。凝集を防ぐために、注射ステップの初めから細胞を穏やかに混合した。15匹のマウスの残りの対照群に、等量(250μ1)のplasmaLyte A(ビヒクル)を注射した。
【0381】
9日目に、(放射線照射も、3D−ASC細胞の注射もしなかった)追加の3匹の対照マウスと共に、各群3匹の動物を屠殺した。脾臓および骨髄を収集した。BM中の全有核細胞数を数え、脾臓をコロニー形成アッセイのために取得した。
【0382】
残りのマウスの生存についての追跡調査を23日間行った。実験中、マウスをSPF条件下で監視した。動物を、週に2〜3回検査し、重さを測定した。最終時点まで生存したマウスを、CO
2吸入により屠殺し、それらのBMを、有核BM細胞の数を数えるために収集した。
【0383】
結果
図9は、BALB/cおよびC3Hマウスにおける2種類の放射線量の電離放射線照射後のマウス(3D−ASC治療なし)の生存率の追跡調査を示す。
【0384】
図10は、放射線を照射していないC3HマウスおよびBALB/cマウスの体重変化における異なる用量の3D−ASC(PLX)細胞の効果を示し、0.5×10
6および1×10
6個の細胞用量の静脈注射の安全性を示す。
【0385】
図11は、放射線被曝後のC3Hマウスの生存(パネルA)および規準化した体重変化(パネルB)を示す。「PLX」は、3D−ASC細胞を用いた治療を表す。「ビヒクル」は、PLX細胞を含めないで、plasmaLyte Aを受け取る対照マウスを表す。
【0386】
図12は、PLX細胞で治療していない放射線照射マウス(左)または治療した放射線照射マウス(右)の固定した脾臓重量および対応するマウス群から調製した代表的な脾臓をさらに視覚的に示す。C3Hマウスに亜致死線量の放射線照射を行い、続いて、3D−ASC(PLX)を注射した後9日目に調製を行い、BM細胞の再生を、脾臓コロニー形成アッセイにより試験した。これらのコロニーは、BMに再懸濁した前駆細胞に由来した。
【0387】
図13は、骨髄前駆細胞の再増殖を示す。有核BM細胞を、PBSで洗浄し、続いて、溶解溶液を用いるRBC溶解により、マウスの両方の後四肢の大腿骨および脛骨から収集し、次いで、直接数を数えた。非放射線照射マウスの正常なBM細胞数は、約30×10
6個に及ぶ。3D−ASC(PLX)で治療したマウスは、放射線被曝後9日目および23日目には、非常に高レベルの全有核骨髄細胞数を有していた。
【0388】
まとめるために、亜致死線量の放射線照射マウスに対する3D−ASC治療の効果の以下の態様を示した:組織の組織学(肺、脾臓、腸、肝臓、皮膚)、BM細胞の総数の関数としてのBMの再構成、脾臓コロニーおよび生存。
【0389】
実施例6
放射線照射マウスの生存に対する胎盤由来の3D−増殖接着間質細胞(PLX)の効果を、放射線照射(770cGy)後24時間に、C3Hマウスに静脈内投与した後に検討した。
【0390】
材料および実験手順
調製
マウス(C3H雄、20g、約6週齢)を、Harlan社から購入した。動物を、実験開始前の馴化のためにSPF施設で2週間飼育した。30匹のC3H雄マウスに全身放射線照射(770cGy)した。放射線照射後24時間に、15匹のマウスに、外側尾静脈の1つへのゆっくりとした静脈注射(約1分)によって、マウス1匹あたりplasmaLyte A250μl中の3D−ASC細胞(1×10
6個)を注射した。凝集を防ぐために、注射ステップの初めから細胞を穏やかに混合した。15匹のマウスの残りの対照群に、同量(250μ1)のplasmaLyte A(ビヒクル)を注射した。
【0391】
8日目に、(放射線照射も、3D−ASC細胞の注射もしなかった)追加の3匹の対照マウスと共に、各群3匹の動物を屠殺した。完全な血液化学(CBC)の血液を屠殺前に取得した。骨髄(BM)を収集し、BM内の全有核細胞数を計数することによって決定した。肝臓、肺、および腸を、組織学的検査のために固定した。
【0392】
残りのマウスの生存についての追跡調査を18日間行った。実験中、マウスをSPF条件下で監視した。動物を、週に2〜3回検査し、重さを測定した。最終時点まで生存したマウスを、CO
2吸入により屠殺した。屠殺前に、CBCのために、後眼窩洞(retro−orbital sinus)から血液を収集した。その後、骨髄を収集した。1脚(脛骨および大腿骨)からの有核BM細胞の全細胞数を直接数え、スメアを他の脚(脛骨および大腿骨)から調製した。肝臓、肺、および腸を、組織学的検査のために取得した。
【0393】
結果
PLX細胞で治療したマウス(●)およびPLX治療を受けていないマウス(○)についての、770cGyの放射線量での放射線照射後の生存率を
図17に示す。
図18は、規準化した体重変化(
図18A)または平均体重変化(
図18B)のいずれかの18日間の体重変化を経時的に示す。
【0394】
図19は、8日目(
図19A;全群 n=3)および18日目(
図19B;対照 n=2、PLX n=9、およびビヒクル n=1)の対照マウス、ビヒクル治療マウス、ならびにPLX治療マウスの全骨髄細胞数(片側からの脛骨および大腿骨)を示す。8日目に、PLX群のBM細胞数は、対照の数と同様であったが、ビヒクル群におけるBM細胞数は非常に低かった。18日目の骨髄細胞数は低かったが、これらの群は、ビヒクル治療群と比較して、PLX群におけるより高い細胞数と同じ傾向を示した。
【0395】
図20は、8日目(
図20A)および18日目(
図20B)における異なる群の赤血球(RBC)数を示す。18日目の放射線照射群のRBC数は、対照マウスと比較して非常に低かった。しかし、ほとんどのPLX治療マウスにおいて、RBC数は、ビヒクル治療マウスよりも高かった。
【0396】
図21A〜
図21Bでは、8日目(
図21A)および18日目(
図21B)の白血球(WBC)数を比較している。WBCは、8日目に、放射線照射マウスの両群において大幅に低下している。18日目の数は低いままである。
【0397】
図22A〜
図22Dは、8日目(
図22A、
図22C)および18日目(
図22B、
図22D)における有核RBCのデータを示す。上のグラフ(
図22A、
図22B)は、有核RBCの未熟な細胞型の割合を示す。下のグラフ(
図22C、
図22D)は、1μlあたりの有核RBCの絶対数×10
3を示す。有核RBCの割合と総数の両方は、対照マウスと比較して増加した。18日目において、唯一生き残ったビヒクル対照マウスは、細胞があまりにも少なかったため、数が不正確となるため報告しなかった。
【0398】
測定した他の血液パラメータには、ヘモグロビン数(
図23)、血小板数(
図24)、およびヘマトクリット値(
図25)が含まれた。それぞれの図において、パネルAは、8日目の結果を示し、パネルBは18日目の結果を示す。RBC数に関しては、PLX細胞で治療したマウスと比較したビヒクル対照のヘモグロビンは、両方の時点で減少した。血小板数も、ビヒクル対照と比較して、PLX治療マウスで上昇した。ヘマトクリット値も、ビヒクル対照と比較して、PLXマウスにおいておそらく上昇した。非放射線照射対照マウスも、それぞれの日およびアッセイについて、比較として示す。
【0399】
結論
これらの結果は、使用する放射線照射線量が使用するマウス系統に致死的であったことを示す。770cGyにおいて、ビヒクル治療群の12匹のマウスのうち1匹だけが18日目まで生存した(生存率8%)。PLX細胞の静脈注射は、同じ線量の放射線照射後に、生存マウスの割合を75%(9/12)まで増加させる。追跡調査期間中、PLX治療マウスは、ビヒクル治療マウスよりもよく食べた。18日目に、PLXマウスは平均体重まで増えたが、たった1匹生き残ったビヒクル治療マウスは、さらに体重を失っていた。IV PLX注射によって治療した群も、8日目および18日目の両方において、より高い骨髄細胞数を有していた。18日目の血液パラメータ、特に、RBCおよび血小板も、一般に、PLX治療マウスで良好であった。これらの効果は、生存率が低下する時期の開始前である8日目においては明らかでなかった。
【0400】
実施例7
放射線照射マウスの血清サイトカインプロファイルに対する胎盤由来の3D−増殖接着間質細胞(PLX)の効果を、放射線照射(770cGy)後24時間に、C3HマウスにPLXを静脈内投与した後1日目および4日目に検討した。
【0401】
材料および実験手順
調製
マウス(C3H雄、20g、約6週齢)を、Harlan社から購入した。動物を、実験前の馴化のためにSPF施設で2週間飼育した。4匹のマウスを未治療対照マウスとする一方で、26匹に770cGyの放射線を照射した。放射線照射後24時間に、8匹のマウスにPLXをIV注射し、8匹のマウスにPlasmalyteを注射した。IV注射後の予期せぬ死亡の場合のために、6匹を予備として飼育した。PLX注射後1日目および4日目に、2匹の非放射線照射対照マウス、2匹の放射線照射した対照マウス、4匹のビヒクル注射マウス、および4匹のPLX注射マウスから動脈血を収集した。血清をこの血液から分離し、次いで、650μlの十分な量を得るために、各2匹のマウスからの血清を一緒にプールした。以下のサイトカイン/成長因子IL1A、IL1B、IL2、IL4、IL6、IL10、IL12、IL17A、IFNγ、TNFα、G−CSF、およびGM−CSFについて「マウスの炎症性サイトカイン多検体ELISAアレイキット(Mouse Inflammatory Cytokines Multi−Analyte ELISArray Kit」(SABiosciences社;カタログ番号MEM−004A)を用いた解析まで、収集した血清を−20℃で保管した。
【0402】
結果
図26A〜
図26Bは、PLX細胞またはビヒクルでの注射後1日目(
図26A)および4日目(
図26B)におけるサイトカインプロファイルを示す。最も顕著な変化は、放射線処理した全マウスにおいてG−CSFレベルが増加したことであった。
【0403】
実施例8
放射線照射マウスの生存に対する3D−ASC(PLX)細胞の効果を、放射線照射(770cGy)後24時間に、C3Hマウスに3D増殖ASCを筋肉内投与した後に検討した。
【0404】
材料および実験手順
調製
マウス(C3H雄、約24g、7週齢)を、Harlan社から購入した。動物を、実験前の馴化のためにSPF施設で2週間飼育した。C3H雄マウスに全身放射線照射(770cGy)した。放射線照射後約24時間に、12匹のマウス(「放射線照射+PLX」群)に、インスリン注射器および25g針を使用して、それぞれの尾筋肉に、2×10
6細胞/マウスの総量に対して3D−ASC細胞50μl(バッチPD061210 153B04、plasmaLyte A中20×10
6細胞/mL)を注射した。第2群(「放射線照射+PLX−2X」)には、最初に同じ量の注射をしたが、さらに、4日の間隔で、第2の2×10
6個の3D−ASCをそれぞれの尾筋肉に筋肉注射した。全ての注射について、凝集を防ぐために、注射ステップの初めから細胞を穏やかに混合した。放射線照射マウスの対照群は、plasmaLyte A(ビヒクル)を同量(全部で100μl、尾筋肉あたり50μ1)、同じ方法で筋肉注射した。
【0405】
これらのマウスを21日間追跡調査した。実験中、マウスをSPF条件下で監視した。動物を週に3回検査し、生存マウスの体重を計った。最終時点まで生存したマウスを屠殺し、それぞれのBMを、有核BM細胞の数を数えるために収集した。
【0406】
結果
図27は、770cGy電離放射線を与えたC3Hマウスの生存率(
図27A)および体重変化(
図27B)を示す。放射線照射後1日目および5日目(丸)に、2×10
6細胞/用量の2回の筋肉注射を与えたマウスは、放射線照射後1日目に1回の筋肉注射を与えたマウスまたはPLX細胞を一切与えなかった対照の放射線照射マウスと比較して、生存率が改善した。
【0407】
実施例9
放射線照射マウスの生存率に対する胎盤由来の3D−増殖接着間質細胞(PLX)の効果を、放射線照射(770cGy)後24時間および/または5日目に、C3Hマウスに2種類の異なる用量(1万細胞または2万細胞/注射)の3D増殖ASCを筋肉内投与した後に検討した。
【0408】
材料および実験手順
44匹のC3Hマウスに、ハダサヘブライ大学医療センターの腫瘍学のシャレット研究所(Sharett Institute of Oncology at Hadassah Hebrew University Medical Center)で全身放射線照射(770cGy)した。放射線照射マウスを4群に分け(11匹/群)、以下のように治療した:
1.1×10
6PLX細胞を2回注射した:放射線照射後24時間および放射線照射後5日目(注射した全細胞数2×10
6個)。
2.2×10
6PLX細胞を2回注射した:放射線照射後24時間および放射線照射後5日目(注射した全細胞数4×10
6個)。
3.放射線照射後5日目に2×10
6PLX細胞を1回注射した。
4.対照群として、PlasmaLyte A(ビヒクル)のみを注射した。
【0409】
全注射を、マウス1匹あたりPlasmaLyte A100μlを筋肉内(IM)に行った(各脚の2つの筋肉部位に25μl×2回として、各脚の筋肉に50μl注入した)。
【0410】
マウスの生存についての追跡調査を23日間行った。動物を毎日検査し、週に3回体重を計った。重要な時には、これらの動物を毎日2回検査した。実験中、これらのマウスをSPF条件で監視した。
【0411】
23日目において、2匹の追加の非放射線照射マウスと共に生存マウスを、後眼窩洞から血液を用いて、完全な血液化学(CBC)について検査した。その後、マウスを屠殺し、骨髄を収集した。それぞれの生存動物における大腿骨と脛骨の両方における骨髄細胞の総数も数えた。
【0412】
結果
図28A〜
図28Bは、770cGyの放射線量での放射線照射後の生存率(
図28A)および平均体重変化(
図28B)を示す。ビヒクルで治療した11匹のマウスのうちの3匹(△)が、監視期間生存した。5日目に2×10
6PLX細胞単独で治療した11匹のマウスのうちの5匹(○)が生存した。1日目および5日目に1×10
6PLX細胞で治療した11匹のマウスのうちの9匹(●)が生存した。1日目および5日目に2×10
6PLX細胞を投与した場合(上部の黒丸のセット)、11匹のうち10匹が生存した。
【0413】
23日目における各群の骨髄細胞の平均細胞数を
図29に示す。生存データと一致して、1日目および5日目に2×10
6PLX細胞で治療したマウスは、最も高い全骨髄細胞数を有していた。
【0414】
実験終了(23日目)時の白血球(WBC)および赤血球(RBC)の数を
図30A〜
図30Dに示す。各マウスについてのそれぞれの数を、パネルA(WBC)およびパネルB(RBC)に示す。パネルC(WBC)およびパネルD(RBC)は、各群のプールしたデータを示す。本例においても、1日目および5日目に2×10
6PLX細胞で治療したマウスは、WBCとRBCの両方について最も高い平均数を有していたが、マウスごとに変動があった。ビヒクル治療マウスの平均細胞数と比較して、1日目および5日目に2×10
6PLX細胞で治療した群のWBC数およびRBC数は、有意に増加した(p<0.0001)。1日目および5日目に1×10
6PLX細胞で治療した群(p<0001)ならびに5日目だけ2×10
6PLX細胞で治療した群(p<005)のRBCの平均数も、ビヒクル治療マウスと比較して有意に増加した。
【0415】
図31A〜
図31Bは、個々のマウス(
図31A)および平均群(
図31B)の23日目の血小板数を示す。血小板数の増加は、1日目および5日目に2×10
6PLX細胞で治療した群において最大であった。この増加は、ビヒクル治療マウスと比較して統計的に有意であった(p<0.005)。
【0416】
図32A〜
図32Dは、個々のマウス(
図32A、
図32B)および群ごとに平均を求めた値(
図32C、
図32D)のヘモグロビン(
図32A、
図32C)ならびにヘマトクリット値(
図32B、
図32D)の23日目の結果を示す。これらのパラメータについて、全ての群が、ビヒクル治療マウスと比べて有意な増加を示したが、本例においても、この増加は、1日目および5日目に2×10
6PLX細胞で治療した群において最大であった。
【0417】
実施例10
3D−増殖させ、混合した母方/胎児PLX細胞と比較した、放射線照射マウスの生存率に対する3D−増殖させた胎盤由来の母方接着間質細胞(PLX)の効果を、放射線照射(770cGy)後24時間および5日目に、C3Hマウスに2百万細胞/注射の3D増殖ASCを筋肉内投与した後に検討した。
【0418】
少なくとも約90%が母方由来の細胞である(遺伝子型または核型に基づく)胎盤由来の接着間質細胞を、「母方」PLX細胞として用いた。「混合」PLX細胞は、母方由来の細胞を約70%および胎児由来の細胞を約30%含んでいた。
【0419】
27匹の9週齢のC3Hマウスに、ハダサヘブライ大学医療センターの腫瘍学のシャレット研究所で全身放射線照射(770cGy)した。放射線照射マウスを3群に分け(9匹/群)、以下のように治療した:
1.2×10
6細胞/マウスでPLX−1(混合)を2回注射した:放射線照射後24時間および5日目(注射した全細胞数4×10
6個)。
2.2×10
6細胞/マウスでPLX−2(母方)を2回注射した:放射線照射後24時間および5日目(注射した全細胞数4×10
6個)。
3.PlasmaLyte Aを2回注射した:放射線照射後24時間および5日目。
【0420】
全注射を、マウス1匹あたりPlasmaLyte Aを100μl筋肉内(IM)に行った(2つの筋肉部位に25μlとして、各脚の筋肉に50μl注入した)。
【0421】
生存を23日間監視した。動物を毎日検査し、週に3回体重を計った。実験中、これらのマウスをSPF条件で監視した。
【0422】
23日目において、2匹の追加の非放射線照射マウスと共に生存マウスを、後眼窩洞から血液を用いて、完全な血液化学(CBC)について検査した。マウスを屠殺し、骨髄を収集した。それぞれの生存動物の大腿骨と脛骨の両方における骨髄細胞の総数も数えた。
【0423】
結果
図33A〜
図33Bは、770cGyの放射線量での放射線照射後の生存率(
図33A)および平均体重変化(
図33B)を示す。混合PLX細胞(□;9/9生存)は、母方PLX(△;7/9生存)よりも23日の生存率は良好であったが、両群とも、ビヒクル治療マウスと比較して生存率が改善した(◇;3/9生存)。
図33Bに示すとおり、混合PLX細胞で治療したマウスは、高い割合の初期体重も保持していた。
【0424】
23日目の血液検査の結果を
図34A〜
図34Dに示す。
図34Aは全骨髄細胞数を、
図34Bは白血球数を、
図34Cは赤血球数を、
図34Dは血小板数を示す。
図35は、23日目のヘモグロビン(
図35A)およびヘマトクリット値(
図35B)を示す。それぞれのパラメータについて、これらの混合PLX細胞は、ビヒクル治療マウスまたは母方PLX治療マウスと比較して、良好な回復値を与えた。
【0425】
結論
IM投与した母方PLX細胞とPLX細胞の混合バッチの両方は、生存率を改善した。この混合PLXバッチは、生存率をより効果的に改善した。混合PLXも、BM有核細胞および末梢血白血球百分率(differential count)のパラメータによって示されるとおり、BM再増殖を引き起こすのにより効果的であった。
【0426】
実施例11
3D−増殖させ、混合した胎盤由来の母方/胎児接着間質細胞と比較した、放射線照射マウスの血清サイトカインに対する3D−増殖させた胎盤由来の母方接着間質細胞(PLX)の効果を、放射線照射(770cGy)後24時間および5日目に、C3Hマウスに2百万細胞/注射の3D増殖ASCを筋肉内投与した後に検討した。
【0427】
15匹のC3H雄マウス(体重約27g、9週齢)に、典型的には、約8MeV X線(光子)放射線照射によって、770cGyの放射線量を全身曝露した。設定された正確な線量校正は、シャレット研究所の物理学者が計算した。実験中、これらのマウスをSPF条件下で維持し、監視した。
【0428】
8日目に、1匹の追加の(細胞も与えず、放射線照射もしない)対照マウスと共にこれらのマウスを、後眼窩洞から収集した血液を用いて、CBCについて分析した。血清を分離し、以下のサイトカイン/成長因子IL1A、IL1B、IL2、IL4、IL6、IL10、IL12、IL17A、IFNγ、TNFα、G−CSF、およびGM−CSFについて「マウスの炎症性サイトカイン多検体ELISAアレイキット(SABiosciences社;カタログ番号MEM−004A)を用いて試験した。
【0429】
骨髄細胞数の評価のために、1脚(脛骨および大腿骨)から骨髄を収集した。さらに、第2の後肢の大腿骨を、脱灰および組織病理診断のために送った。
【0430】
結果
図36は、PLX細胞またはビヒクルの注射後8日目のサイトカインプロファイルを示す。G−CSFレベルは、放射線処理した全マウスにおいて増加した。この増加は、母方PLX細胞で治療したマウスで最大であった。
【0431】
図37A〜
図37Dに示すとおり、全骨髄細胞数(
図37A)、白血球数(
図37B)、赤血球数(
図37C)、および血小板数(
図37D)に関しての放射線照射群間の違いは、8日目において23日目ほど明らかではなかった。しかし、混合PLX細胞で治療したマウスは、最高の全骨髄細胞数を有していた(
図37A)。
【0432】
図38A〜
図38Bは、同様に、ヘマトクリット値(
図38A)またはヘモグロビン(
図38B)に関しても、8日目において放射線照射群間でほとんど違いは無かったことを示す。脱灰した大腿骨の組織診断結果を
図39に示す。低倍率の複合画像の左側にある四角の挿入図を、各試料について右側に拡大する。
【0433】
結論
全身的な炎症の急性発症は、放射線照射後8日目のマウスでは検出されなかった。顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レベルにのみ顕著な変化があった。G−CSFは骨髄を刺激し、顆粒球および幹細胞を生産し、その後、骨髄を刺激して、それらを血液中に放出する。G−CSFは、放射線照射マウスの血清、特に、母方PLX注射群において上昇した。
【0434】
実施例12
3D−混合(PLX)細胞と比較した、放射線照射マウスの生存率、血液学的パラメータ、および血清サイトカインに対する3D−母方(PLX)細胞の効果を、放射線照射(770cGy)後48時間および5日目に、C3Hマウスに2百万細胞/注射の3D増殖ASCを筋肉内投与した後に検討した。
【0435】
36匹のC3Hマウスに、ハダサヘブライ大学医療センターの腫瘍学のシャレット研究所で全身放射線照射(770cGy)した。放射線照射マウスを、以下のとおりに3群(12匹/群)に分けた:
1.2×10
6個の混合PLX細胞を2回注射した:放射線照射後48時間および5日目(注射した全細胞数4×10
6個)。
2.2×10
6個の母方PLX細胞を2回注射した:放射線照射後48時間および5日目(注射した全細胞数4×10
6個)。
3.PlasmaLyte Aを2回注射した:放射線照射後48時間および5日目。
【0436】
全注射を、マウス1匹あたりPlasmaLyte A100μlを筋肉内に行った(各脚の2つの筋肉部位に25μl×2として、各脚の筋肉に50μl注入した)。
【0437】
生存を23日間監視した。動物を毎日検査し、週に3回体重を計った。実験中、これらのマウスをSPF条件で監視した。
【0438】
23日目において、2匹の追加の非放射線照射マウスと共に生存マウスを、後眼窩洞からの血液を用いて、完全な血液化学(CBC)について検査した。マウスを屠殺し、骨髄を収集した。それぞれの生存動物の大腿骨と脛骨の両方における骨髄細胞の総数も数えた。
【0439】
結果
図40A〜
図40Bは、770cGyの放射線量で放射線照射し、放射線照射後48時間および5日目に治療した後の生存率(
図40A)および平均体重変化(
図40B)を示す。第1の注射を、放射線照射後24時間に行った場合のように、混合PLX細胞(□)は、母方PLX(△)よりも良好な日数の生存を与えたが、本例においても、両群とも、ビヒクル治療マウス(◇)と比較して生存率が改善した。
図40Bに示すとおり、混合PLX細胞で治療したマウスは、対照の生存マウスと比較して、より高い割合の初期体重も保持していた。母方の細胞の性質または混合細胞の性質に関わらず、24時間および5日目における治療と比較して、第1の治療を48時間まで遅らせると、全体的な生存率がわずかに減少した。
【0440】
23日目の血液検査の結果を
図41A〜
図41Dに示す。
図41Aは全骨髄細胞数を、
図41Bは白血球数を、
図41Cは赤血球数を、
図41Dは血小板数を示す。
図42は、23日目のヘモグロビン(
図42A)およびヘマトクリット値(
図42B)を示す。それぞれのパラメータについて、混合PLX細胞は、ビヒクル治療マウスまたは母方PLX治療マウスと比較して、良好な回復値を与えた。
【0441】
結論
第1の治療が24時間〜48時間遅れたとしても、I.M.投与した母方PLX細胞とPLX細胞の混合バッチの両方は生存率を改善した。しかし、本例においても、混合PLX細胞が、良好な生存率を与えた。混合PLXは、本例においても、BM有核細胞および末梢血白血球百分率のパラメータによって示されるとおり、BM再増殖を引き起こすのにより効果的でもあった。
【0442】
明確にするために、別々の実施形態の文脈に記載されている本発明の特定の特徴も、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈に記載されている本発明の様々な特徴も、別々にまたは任意の適切な部分的組み合わせで提供され得る。
【0443】
本発明を、その特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、修正および変形が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に入るそのような全ての代替、修正および変形を包含することが意図される。本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的に、かつ個別に参照により本明細書に組み込まれると示される場合と同じ程度に、本明細書に参照によりその全体が組み込まれる。参照により組み込まれる構成要素が、本明細書における開示と競合する場合には、本明細書が優先される。さらに、本願中の全ての参考文献の引用または同定は、そのような参考文献が、本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。