特許第6266752号(P6266752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6266752-シリル化ポリマーを含む組成物 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266752
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】シリル化ポリマーを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20180115BHJP
   C08L 85/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08L85/00
【請求項の数】18
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-509356(P2016-509356)
(86)(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公表番号】特表2016-516865(P2016-516865A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014056504
(87)【国際公開番号】WO2014173638
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】13165285.1
(32)【優先日】2013年4月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500030150
【氏名又は名称】ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】ファノポウロス,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ホルフート,セルヴァース
(72)【発明者】
【氏名】デセスケル,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】クライン,ルネ・アレクサンデル
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−30711(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/04
C08L 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のシリル化ポリウレタンと少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンを含んでなる組成物であって、
少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンが、下式:
【化1】
[式中、Xが−Mであり、Mが、Ti、ZrおよびHfからなる群より選ばれ、Lは−OHまたは−O−C1−10アルキルから選ばれ、R、R、R、Rが、それぞれ独立してC1−6アルキルであり、Z、ZおよびZが、それぞれ独立してC1−6アルキルである]
で示される化合物である、上記組成物。
【請求項2】
がTiである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
がO−i−プロピルである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
、ZおよびZが、それぞれi−ブチルである、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
、R、RおよびRが、それぞれi−ブチルである、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
がTiであり、LがO−i−プロピルであり、Z、ZおよびZが、それぞれi−ブチルであり、R、R、RおよびRが、それぞれi−ブチルである、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のシリル化ポリウレタンと少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンを含んでなる組成物であって、
少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンが、下式:
【化2】
[式中、Mは、Ti、ZrおよびHfからなる群より選ばれ;xは、0または1から選ばれる整数であり;yは、0または1から選ばれる整数であり;RとRは、それぞれ独立して1−6アルキルであり;R10とR11は、それぞれ独立して1−6アルキルであり;R1225は、それぞれ独立して1−6アルキルから選ばれる]
で示される化合物である、上記組成物。
【請求項8】
xとyがそれぞれ0であり;MがTiであり;R、R、R10、R11が、それぞれ独立してC1−6アルキルであり;R12〜R25が、それぞれ独立してC1−6アルキルである、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
とRがそれぞれi−プロピルであり;R12〜R25がそれぞれi−ブチルである、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
とRがそれぞれi−プロピルであり;R12〜R25がそれぞれi−オクチルである、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記シリル化ポリウレタンが、アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記シリル化ポリウレタンが、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物ならびに少なくとも1種のアルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物と少なくとも1種のイソシアネートとの反応によって得られるシリル化ポリウレタンである、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
アルコキシシラン化合物がアミノアルコキシシランである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンの量が、組成物の総重量を基準として0.001重量%〜5重量%、好ましくは0.01重量%〜2重量%、さらに好ましくは0.1重量%〜2重量%である、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、フィラー、接着促進剤、水分スカベンジャー、可塑剤、紫外線安定剤、チキソトロープ剤、またはこれらの組み合わせを含む群から選ばれる1種以上の添加剤をさらに含み、好ましくは前記1種以上の添加剤がシランである、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が0.001重量%未満の錫を含有する、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1種のシリル化ポリウレタンと少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンとを接触させ、これによって硬化組成物を得る工程を含む、請求項1〜16のいずれかに記載の組成物の硬化方法。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載の組成物を含む生成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むシリル化ポリマーを含んでなる組成物、さらに詳細にはシリル化ポリウレタンを含んでなる組成物、ならびにこのような組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化性シリル化ポリマーを含有する工業用組成物が種々知られており、さまざまな用途で工業的に使用されている。たとえばシリル化ポリウレタン樹脂は、塗料、接着剤、シーラント、及び工業用弾性物品として有用である。こうした湿気硬化性シリル化ポリマー組成物を硬化させるには、硬化剤を使用する必要がある。有機錫化合物(たとえばジブチル錫ジラウレート(DBTDL))は、シリル化ポリマーの加水分解/縮合反応を含む硬化プロセスを触媒するのに最も効果的な化合物であることがわかっている。しかしながら、こうした有機錫化合物は、毒性のある化合物として分類されており、したがってヒトや動物用に使用される物品に対しては、これらの使用を避けるか、あるいは限定すべきである。
【0003】
したがって、有機錫化合物に取って代わることができて、これら有機錫化合物と比較して少なくともほぼ同等の性能レベルを示す錫非含有硬化剤が求められている。
従来、錫の毒性に関する問題は、最終的に得られるポリマー中の錫の量を制限することによって(単に、錫のレベルを0.1重量%未満に減らすことによって)対処されてきた。これとは別に、たとえばZr、Bi、Ti等をベースとする他の有機金属硬化剤が選別されている。さらに、シリル化ポリマーに対しては、アミン及び/又は酸を硬化剤として使用するpH駆動の硬化プロセスも使用されている。
【0004】
しかしながら、こうした代替手段は満足できるものではないことがわかっている(毒性という観点から、錫のレベルがまだ高すぎるか、あるいは代替硬化剤が錫と同じ程度にて機能しない)。さらに、幾つかの代替硬化剤は、ポリマーの強い変色を引き起こすことが知られており、これは好ましい特徴ではない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1種のシリル化ポリマーと少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンとを含んでなる組成物が提供される。
第2の態様によれば、本発明はさらに、本発明の第1の態様に従った組成物の硬化方法を包含し、前記硬化方法は、少なくとも1種のシリル化ポリマーと少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンとを接触させる工程(これにより硬化組成物が得られる)を含む。
【0006】
さて驚くべきことに、錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサン化合物(POMS)を硬化剤として使用すると、有機官能性のアルコキシシリル基及び/又はシラノール基の加水分解・縮合速度が増大することが実証される、ということがわかった。具体的に言うとシリル化ポリマー系において、そしてより具体的にはシリル化ポリウレタン系において、これらの硬化剤は、表面硬化実験にて、有機錫化合物と比較して2倍高い活性を示した。
【0007】
本発明の文脈においては、錫非含有とは、錫のレベルが0.001重量%未満であるということを意味する。独立クレームと従属クレームは、本発明の特定の特徴と好ましい特徴を述べている。従属クレームからの特徴は、必要に応じて、独立クレームまたは他の従属クレームの特徴と組み合わせることができる。
【0008】
本発明の上記の特性、特徴、および利点、ならびに他の特性、特徴、及び利点は、本発明の原理を例を挙げて説明している添付図面と関連させて考察すれば、下記の詳細な説明から明らかとなろう。下記に引用の参照数字は添付図面を指している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、触媒作用を受けたシリル化ポリウレタン樹脂に対するスタート・オープニング・タイム(Start Opening Time)を触媒の重量%の関数としてプロットしたグラフを表わしている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物と配合物について説明する前に、理解しておかねばならないことは、本発明は、説明されている特定の組成物と配合物に限定されない、という点である。当然のことながら、このような組成物と配合物はいろいろ変わってよいからである。さらに理解しておかねばならないことは、本明細書で使用されている術語は、限定的であるようには意図されていない、という点である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
【0011】
本明細書で使用している単数形(「a」、「an」、および「the」)は、文脈が明確に規定していない限り、単数の指示物と複数の指示物の両方を含む。
本明細書で使用している術語「〜を含む」(comprising)、「〜を含む」(comprises)、および「〜で構成される」(comprised of)は、「〜を含む」(including)、「〜を含む」(includes)、「〜を含む」(containing)、または「〜を含む」(contains)と同義であり、範囲の端を含むか(inclusive)、オープンエンドであり(open-ended)、非記載のさらなる構成員、要素、または工程を除外しない。言うまでもないが、本明細書で使用されている術語「〜を含む」(comprising)、「〜を含む」(comprises)、および「〜で構成される」(comprised of)は、術語「〜からなる」(consisting of)、「〜からなる」(consists)、および「〜からなる」(consists of)を含む。
【0012】
端点による数値範囲の記載は、記載の端点に加えて、それぞれの範囲内に包含される全ての数と分数を含む。
本明細書に引用の全文献の全内容を、参照により本明細書に含める。特に、具体的に言及している全文献の開示内容を、参照により本明細書に含める。
【0013】
特に明記しない限り、本発明を開示する上で使用されている用語(技術用語と科学用語を含む)は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。さらなるガイダンスによって本発明の開示内容がより良く理解できるよう、用語の定義を以下に記載する。
【0014】
「置換されている」(substituted)という用語が本発明において使用されている場合、この用語は常に、指示されている原子の通常の原子価を超えないという条件で、「置換されている」(substituted)を使用する表示において指示されている原子上の1つ以上の水素原子が、指示されている基から選択される基で置き換えられている、ということを示すように意図されている。
【0015】
基が置換されていてもよい場合、このような基は、1つ以上(好ましくは1つ、2つ、または3つ)置換されていてもよい。置換基は、たとえばアルコール官能基、カルボン酸官能基、エステル官能基、アミノ官能基、アミド官能基、ケトン官能基、エーテル官能基、およびハライド官能基を含む基(たとえばハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、アミド、カルボキシ、アミノ、ハロC1-6アルコキシ、およびハロC1-6アルキル)から選択することができるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書で使用されている「置換もしくは非置換C1-20アルキル」、「置換もしくは非置換C3-6シクロアルキル」、「置換もしくは非置換C2-20アルケニル」、または「置換もしくは非置換C6-10アリール」等の用語は、「それぞれが置換されていてもよいC1-20アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-20アルケニル、C6-10アリール」と同義である。
【0017】
本明細書で使用されている「それぞれが置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アリール、またはシクロアルキル」、あるいは「置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アリール、またはシクロアルキル」等の用語は、「置換されていてもよいアルキル」、「置換されていてもよいアルケニル」、「置換されていてもよいアリール」、および「置換されていてもよいシクロアルキル」を包含する。
【0018】
基もしくは基の一部としての「C1-24アルキル」という用語は、式CnH2n+1(式中、nは1〜24の数である)のヒドロカルビル基を表わす。アルキル基は、1〜20個の炭素原子(たとえば1〜10個の炭素原子、たとえば1〜6個の炭素原子、たとえば1〜4個の炭素原子)を含む。アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、本明細書に記載のように置換されていてもよい。炭素原子の後に下付き文字が使用されているとき、下付き文字は、指定の基が含む炭素原子の数を表わす。従って、たとえばC1-20アルキルは1〜20個の炭素原子を含むアルキルを意味する。従って、たとえばC1-6アルキルは1〜6個の炭素原子を含むアルキルを意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル(i-プロピル)、ブチル、イソブチル(i-ブチル)、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチルとその炭素鎖異性体、またはヘキシルとその炭素鎖異性体が挙げられる。用語「アルキル」が、別の用語に続く接尾辞として使用される場合(たとえば「ヒドロキシアルキル」のような)、これは他の具体的に指定された基(本明細書に明記の基)から選ばれる1つ又は2つ(好ましくは1つ)の置換基で置換されたアルキル基(上記のような)を表わすように意図されている。従って、用語「ヒドロキシアルキル」は-Ra-OH基(式中、Raは本明細書に明記のアルキレンである)を表わす。
【0019】
基もしくは基の一部としての「C3-24シクロアルキル」という用語は、環状アルキル基、すなわち、1つ又は2つの環状構造を有する、一価の飽和もしくは不飽和ヒドロカルビル基を表わす。シクロアルキルは、1〜2個の環を有する全ての飽和炭化水素基(単環式基や二環式基を含む)を含む。シクロアルキル基は、環中に3個以上の炭素原子を含んでよく、本発明によれば、一般には3〜24(好ましくは3〜6)の炭素原子を含む。「C3-6シクロアルキル」基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0020】
基もしくは基の一部としての「C2-20アルケニル」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい不飽和ヒドロカルビル基を表わす。従って好ましいアルケニル基は、2〜20個の炭素原子(たとえば2〜10個の炭素原子、たとえば2〜6個の炭素原子)を含む。C2-20アルケニル基の例としては、エテニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニルとその炭素鎖異性体、2-ヘキセニルとその炭素鎖異性体、及び2,4-ペンタジエニル等があるが、これらに限定されない。
【0021】
基もしくは基の一部としての「C1-12アルキレン」という用語は、二価の(すなわち、他の2つの基に結合するための2つの単結合を有する)C1-12アルキル基を表わす。アルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、本明細書に記載のように置換されていてもよい。アルキレン基の例としては、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2-CH2-)、メチルメチレン(-CH(CH3)-)、1-メチル-エチレン(-CH(CH3)-CH2-)、n-プロピレン(-CH2-CH2-CH2-)、2-メチルプロピレン(-CH2-CH(CH3)-CH2-)、3-メチルプロピレン(-CH2-CH2-CH(CH3)-)、n-ブチレン(-CH2-CH2-CH2-CH2-)、2-メチルブチレン(-CH2-CH(CH3)-CH2-CH2-)、4-メチルブチレン(-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-)等があるが、これらに限定されない。
【0022】
基もしくは基の一部としての「アリール」という用語は、単環(すなわちフェニル)、または一般に6〜24個の炭素原子(好ましくは6〜10個の炭素原子)を含む、縮合(たとえばナフチル)もしくは共有結合している複数芳香環(少なくとも1つの環が芳香環である)、を有するポリ不飽和芳香族ヒドロカルビル基を表わす。芳香環は、必要に応じて、それに縮合した1〜2個のさらなる環を含んでもよい。アリールはさらに、本明細書に列挙されている炭素環系の部分水素化誘導体を含むように意図されている。アリールの例としては、フェニル、ビフェニリル、ビフェニレニル、5-テトラニリル、6-テトラニリル、1-アズレニル、2-アズレニル、3-アズレニル、4-アズレニル、5-アズレニル、6-アズレニル、7-アズレニル、8-アズレニル、ナフタレン-1-イル、ナフタレン-2-イル、4-インデニル、5-インデニル、6-インデニル、7-インデニル、1-アセナフチレニル、2-アセナフチレニル、3-アセナフチレニル、4-アセナフチレニル、5-アセナフチレニル、3-アセナフテニル、4-アセナフテニル、5-アセナフテニル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、10-フェナントリル、1-ペンタレニル、2-ペンタレニル、4-インダニル、5-インダニル、5-テトラヒドロナフチル、6-テトラヒドロナフチル、7-テトラヒドロナフチル、8-テトラヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、1-ピレニル、2-ピレニル、3-ピレニル、4-ピレニル、または5-ピレニル等があるが、これらに限定されない。「C6-10アリール」は、6〜10個の炭素原子を有していて、少なくとも1つの環が芳香環であるアリールを表わす。C6-10アリールの例としては、フェニル、ナフチル、インダニル、または1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフチル等がある。
【0023】
基もしくは基の一部としての「アルコキシ」または「アルキルオキシ」という用語は、式-ORb(式中、Rbは本明細書に記載のアルキルである)を有する基を表わす。アルコキシは、C1-6アルコキシであるのが好ましく、C1-4アルコキシであるのがさらに好ましい。
【0024】
基もしくは基の一部としての「ヘテロアリール」という用語は、一般には5〜6個の炭素原子を含有する縮合もしくは共有結合した1〜2環(このうちの少なくとも1つが芳香族であり、これら環の1つ以上中の1つ以上の炭素原子を酸素原子、窒素原子、またはイオウ原子で置き換えることができ、このとき窒素ヘテロ原子とイオウヘテロ原子が酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子が四級化されていてもよい)を含む、5〜12個の炭素原子で構成される芳香環または芳香環系を表わすが、これらに限定されない。
【0025】
このような環は、アリール環、シクロアルキル環、ヘテロアリール環、またはヘテロサイクリル環に縮合することができる。このようなヘテロアリールの例としては、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリルテトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾリル、チエノ[3,2-b]フラニル、チエノ[3,2-b]チオフェニル、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾリル、チエノ[2,3-d]イミダゾリル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、1,3-ベンゾオキサゾリル、1,2-ベンゾイソオキサゾリル、2,1-ベンゾイソオキサゾリル、1,3-ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-ベンゾオキサジアゾリル、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル、1,2,3-ベンゾチアジアゾリル、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル、チエノピリジニル、プリニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソ-ピリダジン-1(2H)-イル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソ-ピリジン-1(2H)-イル、1,3-ベンゾジオキソリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、およびキノキサリニル等があるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で使用されているメタロイドという用語は下記の元素を含む:ホウ素(B)、炭素(C)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、およびアスタチン(At)を包含する。
【0027】
以下の節において、本発明の異なる態様をさらに詳細に説明する。明記されているそれぞれの態様は、組み合わせることができないことがはっきり示されていない限り、他のいかなる態様とも組み合わせることができる。特に、好ましいか又は有利であると示されている任意の特徴を、好ましいか又は有利であると示されている他のいかなる特徴と組み合わせることができる。
【0028】
本明細書の全体にわたる「1つの実施態様」(one embodiment)もしくは「ある実施態様」(an embodiment)への言及は、当該実施態様と関連して説明されている特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施態様中に含まれる、ということを意味している。従って、本明細書の全体にわたる種々の箇所において「1つの実施態様では」(in one embodiment)もしくは「ある実施態様では」(in an embodiment)というフレーズが出てきても、必ずしも全て同じ実施態様に言及しているわけではない(同じ場合もあるが)。さらに、本明細書の開示内容から当業者には明らかなように、特定の特徴、構造、または特性を、任意の適切な仕方で1つ以上の実施態様において組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載の幾つかの実施態様は、他の実施態様に含まれている幾つかの特徴を含む(他の特徴は含まない)が、異なる実施態様の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内であるように意図されており、異なる実施態様を形成する(当業者であればわかることである)。たとえば添付の特許請求の範囲において、特許請求されている実施態様のどれでも、任意の組み合わせにて使用することができる。
【0029】
本発明は、シリル化ポリマーと錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサン(POMS)とを含む組成物に関する。
幾つかの実施態様では、多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、式(I)
【0030】
【化1】
【0031】
〔式中、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立してSiまたはM1から選ばれ、ここでM1は、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ、M1は、Ti、Zr、およびHfからなる群から選ばれる金属であるのが好ましく;Z1、Z2、およびZ3は、それぞれ独立してL2、R5、R6、またはR7から選ばれ、ここでL2は、-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれ、たとえばL2は、-OHまたは-O-C1-8アルキルから選ぶことができ、たとえばL2は、-OHまたは-O-C1-6アルキルから選ぶことができ、L2は、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、およびO-イソブチルを含む群から選べるのが好ましく;R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して置換もしくは非置換C1-20アルキル、置換もしくは非置換C3-6シクロアルキル、置換もしくは非置換C2-20アルケニル、または置換もしくは非置換C6-10アリールから選ばれ;Y1とY2は、それぞれ独立して-O-M2-L3であるか、あるいはY1とY2は、結合して一緒になって-O-M2(L3)-O-または-O-を形成し、ここでL3は、-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれ、たとえばL3は、-OHまたは-O-C1-8アルキルから選ぶことができ、たとえばL3は、-OHまたは-O-C1-6アルキルから選ぶことができ、L3は、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、およびO-イソブチルを含む群から選べるのが好ましく、M2は、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ、M2は、Ti、Zr、およびHfからなる群から選ばれる金属であるのが好ましく;ならびに、X4は-M3L1またはM3であり、Q1とQ2は、それぞれM3に結合した単結合であり、ここでL1は、-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれ、たとえばL1は、-OHまたは-O-C1-8アルキルから選ぶことができ、たとえばL1は、-OHまたは-O-C1-6アルキルから選ぶことができ、M3は、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ、M3は、Ti、Zr、およびHfからなる群から選ばれる金属であるのが好ましく;あるいは、X4が-M3L1であり、Q2がM3に結合した単結合であり、Q1が-M4L4または-SiR38であり、ここでM4は、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ、M4は、Ti、Zr、およびHfからなる群から選ばれる金属であるのが好ましく、L4は、-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれ、たとえばL4は、-OHまたは-O-C1-8アルキルから選ぶことができ、たとえばL4は、-OHまたは-O-C1-6アルキルから選ぶことができ、L4は、-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、およびO-イソブチルを含む群から選べるのが好ましく、R38は、置換もしくは非置換C1-20アルキル、置換もしくは非置換C3-6シクロアルキル、置換もしくは非置換C2-20アルケニル、または置換もしくは非置換C6-10アリールから選ばれ;あるいは、X4、Q1、およびQ2は、それぞれ独立して-M3L1であり;あるいは、X4が-Si(R38)-O-M3L1であり、Q2がX4のSiに結合した単結合であり、Q1が-M4L4であり;あるいは、X4が-Si(R38)-O-M3L1であり、Q2がX4のSiに結合した単結合であり、Q1がX4のM3に結合した単結合である〕で示される化合物である。
【0032】
幾つかの実施態様では、M1、M2、M3、およびM4は、それぞれ独立して、6-配位金属中心をもたらす金属であり、ここで該金属は、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、およびアクチニド金属からなる群から選ぶことができる。M1、M2、M3、およびM4は、それぞれ独立してTi、Zr、およびHfからなる群から選ばれるのが好ましい。たとえばM1、M2、M3、およびM4は、それぞれ独立してTiであってよい。
【0033】
幾つかの実施態様では、L1、L2、L3、およびL4は、それぞれ独立して-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれるリガンドである。たとえばL1、L2、L3、およびL4は、それぞれ独立して-OHまたは-O-C1-8アルキルであり、L1、L2、L3、およびL4は、それぞれ独立して-OHまたは-O-C1-6アルキルであるのが好ましく、たとえばL1、L2、L3、およびL4は、それぞれ独立して-OH、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-オクチル、-O-イソプロピル、およびO-イソブチルからなる群から選ばれる。各リガンドは、独立して上記の群から選ぶことができる。好ましい実施態様では、リガンドは同一である。
【0034】
幾つかの実施態様では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR38は、それぞれ独立して1〜20個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐鎖状で置換もしくは非置換の炭化水素基から選択される。たとえばR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR38は、それぞれ独立して置換もしくは非置換C1-20アルキル、置換もしくは非置換C3-6シクロアルキル、置換もしくは非置換C2-20アルケニル、または置換もしくは非置換C6-10アリールから選ばれる。たとえばR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR38は、それぞれ独立してC1-20アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-20アルケニル、またはC6-10アリールから選ばれる基であってよく、それぞれの基が、アルコール官能基、エステル官能基、アミノ官能基、ケトン官能基、エーテル官能基、およびハライド官能基を含む基から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR38基に対する適切なアルキル基とシクロアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、およびシクロヘキシル基などがあるが、これらに限定されない。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR38基はさらに、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、およびオクテニル基等のアルケニル基、ならびにフェニル基等のアリール基を含んでよい。
【0035】
幾つかの実施態様では、錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、X1、X2、およびX3が、それぞれ独立してSiであり;X4が-M3L1であり;Q1とQ2が、それぞれM3に結合した単結合であり;Z1、Z2、およびZ3が、それぞれ独立してC1-6アルキルであり;R1、R2、R3、およびR4が、それぞれ独立して置換もしく非置換C1-20アルキルであり、たとえばC1-10アルキルであり、好ましくはC1-6アルキルであり;Y1とY2が一緒に結びついて、-O-を形成している、という場合の式(I)の化合物である。
【0036】
幾つかの実施態様では、錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、以下の式(II)で示される化合物である:
【0037】
【化2】
【0038】
[式中、X4、R1、R2、R3、R4、Z1、Z2、およびZ3は、上記にて定義したのと同じ意味を有する]。
幾つかの好ましい実施態様では、本発明の組成物において使用するのに適した錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、Z1、Z2、およびZ3がそれぞれイソブチルであり;R1、R2、R3、およびR4がそれぞれイソブチルであり;X4が-M3L1であり;M3がTiであり;そしてL1がO-イソプロピルである、という場合の式(II)の化合物である。
【0039】
幾つかの実施態様では、錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、式(III)
【0040】
【化3】
【0041】
〔式中、Mは、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ、Mは、Ti、Zr、およびHfを含む群から選ばれる金属であるのが好ましく、MはTiであるのが好ましく;xは、0または1から選ばれる整数であり;yは、0または1から選ばれる整数であり;R8とR9は、それぞれ独立してC1-20アルキルであり、幾つかの実施態様では、R8とR9は同一であるのが好ましく、幾つかの実施態様では、R8またはR9のそれぞれがC1-10アルキルであり、たとえばC1-6アルキルであり、たとえばイソブチル基、n-ブチル基、イソプロピル基、またはn-プロピル基であり;R10とR11は、それぞれ独立してC1-20アルキルであり、幾つかの実施態様では、R10とR11は同一であるのが好ましく、幾つかの実施態様では、R10またはR11のそれぞれがC1-6アルキルであり、たとえばイソブチル基、n-ブチル基、イソプロピル基、またはn-プロピル基であり;R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換環状炭化水素基、置換もしくは非置換直鎖状炭化水素基、または置換もしくは非置換分岐鎖状炭化水素基から選ばれる〕
で示される化合物である。たとえばR12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25は、それぞれ独立して置換もしくは非置換C1-20アルキル、置換もしくは非置換C3-6シクロアルキル、置換もしくは非置換C2-20アルケニル、または置換もしくは非置換C6-10アリールから選ばれる。幾つかの実施態様では、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25は、それぞれ独立してC1-20アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-20アルケニル、またはC6-10アリールから選ばれる基であってよく、それぞれの基が、置換基としてのアルコール官能基、エステル官能基、アミノ官能基、ケトン官能基、エーテル官能基、およびハライド官能基から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい。R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25基に対するアルキル基とシクロアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、およびシクロヘキシル基などがあるが、これらに限定されない。R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25基はさらに、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、およびオクテニル基等のアルケニル基、ならびにフェニル基等のアリール基を含んでよい。R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25基は、それぞれ独立してイソブチル基、n-ブチル基、イソプロピル基、またはn-プロピル基から選ぶのが最も好ましい。
【0042】
このような基は、POMS(多面体オリゴマー金属シルセスキオキサン)構造中のSi-原子に結合しており、本明細書ではリガンドと呼ぶ。R12〜R25は、全て異なっていてもよいし、あるいはこれらリガンドの幾つかが互いに同一であってもよいが、これらリガンドが全て同一というわけではない。R12〜R25が同一であるのが最も好ましい。
【0043】
幾つかの好ましい実施態様では、本発明の第1の態様に従った組成物において使用される錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、式(III)の化合物である。幾つかの好ましい実施態様では、本発明の組成物中に使用するのに適した錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、xとyがそれぞれ0であり;MがTiであり;R8、R9、R10、およびR11がそれぞれ独立してC1-6アルキルであり;R12〜R25がそれぞれ独立してC1-6アルキルである、という場合の式(III)の化合物である。
【0044】
たとえば、2つのTi金属を含み、R8、R9、R10、およびR11がイソブチル基である場合の式(III)の化合物である。
幾つかの好ましい実施態様では、本発明の組成物中に使用するのに適した錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、xとyがそれぞれ0であり;MがTiであり;R8とR9がそれぞれイソプロピルであり;R12〜R25がそれぞれイソブチルである、という場合の式(III)の化合物である。
【0045】
幾つかの好ましい実施態様では、本発明の組成物中に使用するのに適した錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、xとyがそれぞれ0であり;MがTiであり;R8とR9がそれぞれイソプロピルであり;R12〜R25がそれぞれイソオクチルである、という場合の式(III)の化合物である。
【0046】
幾つかの実施態様では、多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、以下の式(IV)、(V)、(VI)、(VII)、または(VIII)で示される化合物である:
【0047】
【化4】
【0048】
【化5】
【0049】
【化6】
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
〔式中、Mは、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ、Mは、Ti、Zr、およびHfを含む群から選ばれる金属であるのが好ましく、MはTiであるのが好ましく;L1は、-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれ、たとえばL1は、-OHまたは-O-C1-8アルキルから選ぶことができ、たとえばL1は、-OHまたは-O-C1-6アルキルから選ぶことができ、zは、0、1、または2から選ばれる整数であり;nは、1〜10の範囲から選ばれる整数であり;R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、およびR27は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有する置換もしくは非置換環状炭化水素基、置換もしくは非置換直鎖状炭化水素基、または置換もしくは非置換分岐鎖状炭化水素基から選ぶことができる〕。
【0053】
たとえばR12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、およびR27は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1-20アルキル、置換もしくは非置換C3-6シクロアルキル、置換もしくは非置換C2-20アルケニル、または置換もしくは非置換C6-10アリールから選ぶことができる。幾つかの実施態様では、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、およびR27は、それぞれ独立してC1-20アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-20アルケニル、またはC6-10アリールから選ばれる基であってよく、それぞれの基が、置換基としてのアルコール官能基、エステル官能基、アミノ官能基、ケトン官能基、エーテル官能基、およびハライド官能基から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい。R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、およびR27基に対するアルキル基とシクロアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、およびシクロヘキシル基などがあるが、これらに限定されない。R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、およびR27基はさらに、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、およびオクテニル基等のアルケニル基、ならびにフェニル基等のアリール基を含んでよい。R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、およびR27は、それぞれ独立してイソブチル基、n-ブチル基、イソプロピル基、またはn-プロピル基から選ぶのが最も好ましい。
【0054】
このような基は、POMS(多面体オリゴマー金属シルセスキオキサン)構造中のSi-原子に結合しており、本明細書ではリガンドと呼ぶ。R12〜R27は、全て異なっていてもよいし、あるいはこれらリガンドの幾つかが互いに同一であってもよいが、これらリガンドが全て同一というわけではない。R12〜R27が同一であるのが最も好ましい。
【0055】
幾つかの実施態様では、錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサン(POMS)の組み込み量は、組成物の総重量を基準として0.001重量%〜5重量%の範囲であり、好ましくは0.01重量%〜2重量%であり、さらに好ましくは0.1重量%〜2重量%である。
【0056】
驚くべきことに、錫含有硬化剤と比較して、同等の硬化性能を達成するのに必要とされる前記錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンの量がかなり少ない、ということが見出された。幾つかの実験により、たとえばTiは、Snと比較して必要量が1/8である、ということがわかった。たとえばシリル化ポリウレタン中0.23重量%のTi-POMSが、同じシリル化ポリウレタン中0.47重量%のジブチル錫ジラウレートと比較して同等の硬化特性をもたらした。金属含量についても同様に、0.012重量%のTiが、0.087重量%のSnと比較して同等の硬化プロフィールをもたらした。
【0057】
本発明において使用するための好適なポリマーはシリル化ポリマーである。シリル化ポリマーの例は、シリル化ポリウレタン、シリル化シリコーン、シリル化ポリエーテル(MSポリマー)、シリル化ポリカーボネート、シリル化ポリオレフィン、シリル化ポリエステル、シリル化ポリアクリレート、シリル化ポリビニルアセテート、これらの混合物、およびこれらのコポリマーを含む群から選ぶことができるが、これらに限定されない。
【0058】
幾つかの好ましい実施態様では、前記シリル化ポリマーは、1つ以上のアルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリマーを表わす。アルコキシシリル及び/又はシラノール含有ポリマーは、シラン末端ポリマー、シラングラフトポリマー、または主鎖中にシランが組み込まれたいかなるポリマーであってもよい。シリル化ポリマーは、アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリマーであるのが好ましい。
【0059】
本発明において使用するための、アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含む好適なポリマーは、アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリウレタン;アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むシリコーン;アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリエーテル;アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリカーボネート;アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリオレフィン;アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリエステル;アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリアクリレート;アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリビニルアセテート;これらの混合物;およびこれらのコポリマー;を含む群から選ばれる。
【0060】
本発明において使用するための好適なポリマーのシリル化は、アルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物を使用することによって、当業者に公知の任意の可能な方法で行うことができる。
【0061】
ある実施態様では、好適なシリル化ポリマーはシリル化ポリウレタン、たとえばアルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリウレタンである。
シリル化ポリウレタンは公知であり、市販されている。市販シリル化ポリウレタンの例としては、Momentive社から市販のSPUR材料及び/又はEvonik社から市販のPolymer STなどがあるが、これらに限定されない。幾つかの実施態様では、シリル化ポリウレタンは、少なくとも1種のイソシアネートと、イソシアネート反応性水素原子を有する1種以上の化合物ならびに1種以上のアルコキシシリル化合物及び/又はシラノール化合物とを、任意の可能な付加順序にて接触させることによって製造することができる。
【0062】
シリル化ポリウレタンの製造方法の例がWO2011/161011に記載されているが、これに限定されない。たとえばシリル化ポリウレタンは、ポリイソシアネートとイソシアネート反応性化合物(たとえば、ポリアルキレングリコール等のポリオール)とを接触させ、引き続きこの混合物をアルコキシシランでシリル化することによって製造することができる。
【0063】
シリル化ポリウレタンの製造において使用するための好適なイソシアネートは、芳香族有機ポリイソシアネート、脂環式有機ポリイソシアネート、複素環式有機ポリイソシアネート、アリール脂肪族有機ポリイソシアネート、または脂肪族有機ポリイソシアネートであってよい。好適なイソシアネートは、ポリイソシアネートも含む。
【0064】
シリル化ポリウレタン成分を製造する際に使用するための好適なポリイソシアネートは、Ra-(NCO)x(式中、xは少なくとも1であり;Raは、芳香族基または脂肪族基である)のタイプのポリイソシアネート(たとえばジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、または類似のポリイソシアネート等)を含む。
【0065】
本発明において使用できる好適なポリイソシアネートの例としては、任意の有機ポリイソシアネート化合物もしくは有機ポリイソシアネート化合物の混合物(該有機ポリイソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基を有する)などがあるが、これらに限定されない。有機ポリイソシアネートの例としては、ジイソシアネート(特に芳香族ジイソシアネート)およびより高い官能価のイソシアネートなどがあるが、これらに限定されない。本発明の配合物中に使用できる有機ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;2,4'-異性体、2,2'-異性体、4,4'-異性体、およびこれらの混合物の形のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(ピュアMDIとも呼ばれる)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とそれらのオリゴマーとの混合物(当業界では「クルード」MDIまたはポリメリックMDIとして知られている)、m-フェニレンジイソイアネートとp-フェニレンジイソイアネートとこれらの任意の適切な異性体混合物、トリレン-2,4-ジイソシアネートとトリレン-2,6-ジイソシアネートとこれらの任意の適切な異性体混合物〔トルエンジイソシアネートとしても知られており、TDIとも呼ばれる(たとえば2,4-TDIや2,6-TDI)〕、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニレン-4,4'-ジイソシアネート、4,4'-ジイソシアネート-3,3'-ジメチル-ジフェニル、3-メチル-ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、およびジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;シクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-2,3-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキシル-2,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキシル-2,6-ジイソシアネート、これらの混合物、およびビス-(イソシアナートシクロヘキシル)メタン〔たとえば4,4'-ジイソシアナートジシクロヘキシルメタン(H12MDI)〕等の脂環式ジイソシアネート;トリイソシアネート(たとえば、2,4,6-トリイソシアナートトルエンや2,4,4-トリイソシアナートジフェニルエーテル);イソホロンジイソシアネート(IPDI);ブチレンジイソシアネート;トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;イソシアナートメチル-1,8-オクタンジイソシアネート;テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI);1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CDI);トリジンジイソシアネート(TODI);上記ポリイソシアネートの任意の好適な混合物;上記ポリイソシアネートの1種以上と、2,4'-異性体、2,2'-異性体、4,4'-異性体、およびこれらの混合物の形のMDI(ピュアMDIとも呼ばれる)との任意の適切な混合物;ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とそれらのオリゴマーとの混合物(当業界では「クルード」MDIまたはポリメリックMDIとして知られている);ならびに、イソシアネート反応性水素原子を有する成分、およびシリル化ポリイソシアネートポリマー(いわゆるシリル化プレポリマー)を形成させるためのアルコキシシラン化合物(たとえばアミノアルコキシシラン)と、ポリイソシアネート(たとえば上記のポリイソシアネート、好ましくはMDIベースのポリイソシアネート)との反応生成物;などがあるが、これらに限定されない。トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)タイプのイソシアネート、およびこれらイソシアネートのプレポリマーを使用するのが好ましい。
【0066】
イソシアネートは、ポリメリックメチレンジフェニルジイソシアネートを含むのが好ましい。好ましい実施態様では、イソシアネートは、少なくとも1.0(好ましくは少なくとも2.0)の官能価を有する。本明細書で使用している「官能価」という用語は、1分子当たりのイソシアネート基の平均数(イソシアネート中に存在する統計的に関連した分子数に対して平均される)を表わす。
【0067】
ポリメリックメチレンジフェニルジイソシアネートは、ピュアMDI(2,4'-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,2'-メチレンジフェニルジイソシアネート、および4,4'-メチレンジフェニルジイソシアネート)と以下の式(I)に係る高級同族体との任意の混合物であってよい:
【0068】
【化9】
【0069】
[式中、nは1〜10の、好ましくは1〜5の整数である]。
シリル化ポリウレタンの製造において使用するためのポリイソシアネートはプレポリマーは、0.5重量%〜33重量%(好ましくは0.5重量%〜12重量%、さらに好ましくは0.5重量%〜6重量%、最も好ましくは1重量%〜6重量%)のプレポリマーというイソシアネート価を有してよい。
【0070】
イソシアネート反応性化合物は、アルコール(たとえば、グリコール、または比較的高い分子量のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等のポリオール)、メルカプタン、カルボン酸(たとえば多塩基酸)、アミン、ポリアミン、少なくとも1つのアルコール基と少なくとも1つのアミン基を含む成分(たとえばポリアミンポリオール)、ウレア、およびアミドであってよい。
【0071】
幾つかの好ましい実施態様では、イソシアネート反応性化合物は通常、イソシアネート反応性水素原子を有する成分であり、グリコール、ヒドロキシル末端ポリエステル(ポリエステルポリオール)、ヒドロキシル末端ポリエーテル(ポリエーテルポリオール)、ヒドロキシル末端ポリカーボネート、またはこれらの混合物等のポリオール、ならびにこれらのポリオールと1種以上の連鎖延長剤との混合物(これらはいずれも当業者によく知られている)を含む。
【0072】
ヒドロキシル末端ポリエステル(ポリエステルポリオール)は一般に、約500〜約10000の、望ましくは約700〜約5000の、好ましくは約700〜約4000の数平均分子量(Mn);および、一般には1.3未満の、好ましくは0.8未満の酸価;を有するポリエステルであってよい。分子量は末端官能基の分析によって決定され、こうして得られる分子量は数平均分子量に関するものである。ヒドロキシル末端ポリエステルは、(1)1種以上のグリコールと1種以上のジカルボン酸もしくは酸無水物とのエステル化反応によって、あるいは(2)エステル交換反応(すなわち、1種以上のグリコールとジカルボン酸のエステルとの反応)によって製造することができる。グリコール対酸のモル比は一般に、末端ヒドロキシル基が優勢となる直鎖が得られるよう、1より大きいモル比が好ましい。好適なポリエステルはさらに、種々のラクトン〔たとえば、カプロラクトンと二官能性開始剤(ジエチレングリコール等)から製造されるポリカプロラクトン〕を含む。望ましいポリエステルを製造するためのジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはこれらの組み合わせであってよい。単独もしくは混合物の形で使用することができる好適なジカルボン酸は一般に、合計で4〜15個の炭素原子を有し、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸などがある。上記ジカルボン酸の無水物(たとえば、フタル酸無水物やテトラヒドロフタル酸無水物など)も使用することができる。好ましいジカルボン酸はアジピン酸である。望ましいポリエステル中間体が得られるよう反応させるグリコールは、脂肪族グリコール、芳香族グリコール、またはこれらの組み合わせであってよく、合計で2〜12個の炭素原子を有し、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、およびドデカメチレングリコールなどがある。好ましいグリコールは1,4-ブタンジオールである。
【0073】
ヒドロキシル末端ポリエーテルは、合計で2〜15個の炭素原子を有するジオールもしくはポリオールから誘導されるポリエーテルポリオールであるのが好ましく、アルキルジオールまたはアルキルグリコールと、2〜6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド(一般にはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはこれらの混合物)を含めたエーテルとを反応させて得られるのが好ましい。
【0074】
たとえば、ヒドロキシル官能性ポリエーテルは、最初にプロピレングリコールとプロピレンオキシドとを反応させ、引き続きエチレンオキシドと反応させることによって製造することができる。エチレンオキシドに由来する第一ヒドロキシル基は、第二ヒドロキシル基より反応性が高く、したがって好ましい。有用な市販ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシドとエチレングリコールとを反応させて得られるポリ(エチレングリコール)、プロピレンオキシドとプロピレングリコールとを反応させて得られるポリ(プロピレングリコール)、および水とテトラヒドロフラン(THF)とを反応させて得られるポリ(テトラメチレングリコール)(PTMG)などがある。ポリエーテルポリオールとしてさらに、アルキレンオキシドのポリアミド付加物があり、たとえば、エチレンジアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物で構成されるエチレンジアミン付加物、ジエチレントリアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物で構成されるジエチレントリアミン付加物、および類似のポリアミドタイプのポリエーテルポリオールを含んでよい。本発明においては、コポリエーテルも使用することができる。代表的なコポリエーテルとしては、グリセロールとエチレンオキシドとの反応生成物、またはグリセロールとプロピレンオキシドとの反応生成物がある。種々のポリエーテルは、約500〜約10000の、望ましくは約500〜約5000の、そして好ましくは約700〜約3000の数平均分子量(Mn)(末端官能基の分析によって決定される)を有してよい。
【0075】
ヒドロキシル末端ポリカーボネートは、グリコールとカーボネートとを反応させることによって製造することができる。ヒドロキシル末端ポリカーボネートとその製造についての開示内容に関し、米国特許第4,131,731号を参照により本明細書に含める。このようなポリカーボネートは直鎖であるのが好ましく、末端ヒドロキシル基を有していて、本質的に他の末端基が存在しない。反応物はグリコールとカーボネートである。好適なグリコールは、4〜40個(好ましくは4〜12個)の炭素原子を有する脂環式ジオールと脂肪族ジオール、および1分子当たり2〜20個のアルコキシ基(それぞれのアルコキシ基が2〜4個の炭素原子を有する)を有するポリオキシアルキレングリコールから選ばれる。好適なジオールとしては、ブタンジオール-1,4、ペンタンジオール-1,4、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール-1,6、2,2,4-トリメチルヘキサンジオール-1,6、デカンジオール-1,10、水素化ジリノレイルグリコール、および水素化ジオレイルグリコール等の、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール-1,3、ジメチロールシクロヘキサン-1,4、シクロヘキサンジオール-1,4、ジメチロールシクロヘキサン-1,3、および1,4-エンドメチレン-2-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環式ジオール;ならびにポリアルキレングリコール;などがあるが、これらに限定されない。反応において使用されるジオールは、最終生成物において求められる特性に応じて、ジオール単独であっても、あるいはジオールの混合物であってもよい。好適なカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2-プロピレンーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-エチレンカーボネート、1,3-ペンチレンカーボネート、1,4-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、および2,4-ペンチレンカーボネートなどがあるが、これらに限定されない。ジアルキルカーボネート、脂環式カーボネート、およびジアリールカーボネートも好適である。ジアリールカーボネートは、それぞれのアルキル基中に2〜5個の炭素原子を有してよく、これらの特定の例としては、ジエチルカーボネートとジプロピルカーボネートが挙げられる。脂環式カーボネート、特にジ脂環式カーボネートは、それぞれの環状構造中に4〜7個の炭素原子を有してよく、このような構造が1つ又は2つ存在してよい。1つの基が脂環式であれば、他の基はアルキルまたはアリールであってよい。他方、1つの基がアリールであれば、他の基はアルキルまたは脂環式であってよい。各アリール基中に6〜20個の炭素原子を有してよいジアリールカーボネートの好ましい例は、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、およびジナフチルカーボネートである。
【0076】
イソシアネート反応性成分は、延長剤であるグリコールと共に、ポリイソシアネートと反応させることができる。
好適な延長剤グリコール(すなわち鎖延長剤)の例としては、約2〜10個の炭素原子を有する低級脂肪族グリコールまたは短鎖グリコールが挙げられ、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、ジ(ヒドロキシエチル)エーテル、およびネオペンチルグリコールなどがあるが、これらに限定されない。
【0077】
シリル化ポリウレタンの製造において使用すべき好適なシリル化合物は、アルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物を含む。
たとえば、本発明の組成物において使用するためのシリル化ポリウレタンは、前記の少なくとも1種のイソシアネートと、前記の少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物ならびに少なくとも1種のアルコキシシラン及び/又はシラノール化合物とを混合することによって製造することができる。
【0078】
シリル化ポリマー(好ましくはシリル化ポリウレタン)の製造において使用するための好適なシラン化合物またはシラノール化合物としては、アミノアルコキシシラン、アルコキシシラン、脂肪族ヒドロキシシラン、脂環式ヒドロキシシラン、芳香族ヒドロキシシラン、エポキシシラン、グリシドキシシラン、イソシアナートシラン、シラン無水物、アルデヒドシラン、チオシラン、スルホネートシラン、ホスフェートシラン(phosphate silanes)、カプロラクタムシラン、アクリレートシラン、スクシンイミドシラン、シルセスキオキサンシラン、アミドシラン、カルバメートシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、シラノール、ケイ素上に少なくとも1つの水素原子を有するシラン、およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。
【0079】
ある実施態様では、好適なアルコキシシラン化合物またはシラノール化合物はアミノアルコキシシランである。
好適なアミノアルコキシシランとしては、以下の式(IX)で示されるアミノアルコキシシランがある:
【0080】
【化10】
【0081】
[式中、R46は、H、置換されていてもよいC1-24アルキル、置換されていてもよいC3-24シクロアルキル、置換されていてもよいC6-24アリール、または置換されていてもよいヘテロアリールから選ばれ;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基に対する好適な置換基は、たとえば、ハロゲン原子およびCOOH基から選ぶことができ;R47はC1-20アルキレンまたはC6-20アリーレンであり;R48とR49は、それぞれ独立してC1-20アルキルまたはC6-20アリールから選ばれ;mは、0、1、または2から選ばれる整数である]。
【0082】
R47は、C1-12アルキレンまたはC6-10アリーレン〔たとえば、C1-10アルキレンまたはフェニレン(たとえば、C1-6アルキレンまたはフェニレン)〕であるのが好ましく、好ましくはC1-4アルキレンである。たとえばR47は、メチレン-(CH2)-またはプロピレン-(CH2)3-である。
【0083】
R48とR49は、それぞれ独立してC1-18アルキルまたはC6-18アリールから選ばれる。
R48とR49は、それぞれ独立してC1-4アルキルまたはC6-10アリールから選ばれるのがさらに好ましい。最も好ましい実施態様では、R48とR49は同一であり、メチル、エチル、プロピル、またはブチルから選ばれる。式(IX)中のmは、0または1であるのが好ましい。
【0084】
好適なアミノアルコキシシランの例としては、γ-N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、α-N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、γ-N-フェニルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、α-N-フェニルアミノメチルジメトキシメチルシラン、γ-N-フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、α-N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、γ-N-フェニルアミノプロピルジエトキシエチルシラン、α-N-フェニルアミノメチルジエトキシエチルシラン、α-N-フェニルアミノメチルジエトキシエチルシラン、α-N-ブチルアミノメチルトリメトキシシラン、γ-N-ブチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、α-N-ブチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、γ-N-ブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、α-N-ブチルアミノメチルトリエトキシシラン、γ-N-ブチルアミノプロピルジエトキシエチルシラン、α-N-ブチルアミノメチルジエトキシエチルシラン、γ-N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、α-N-ブチルアミノメチルトリメトキシシラン、γ-N-メチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、α-N-メチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、γ-N-メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、α-N-メチルアミノメチルトリエトキシシラン、γ-N-メチルアミノプロピルジエトキシエチルシラン、α-N-メチルアミノメチルジエトキシエチルシラン、γ-N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、α-N-シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン、γ-N-シクロヘキシルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、α-N-シクロヘキシルアミノメチルジメトキシメチルシラン、γ-N-シクロヘキシルアミノプロピルトリエトキシシラン、α-N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、γ-N-シクロヘキシルアミノプロピルジエトキシエチルシラン、α-N-シクロヘキシルアミノメチルジエトキシエチルシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、α-アミノメチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、α-アミノメチルジメトキシメチルシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、α-アミノメチルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルジエトキシエチルシラン、およびα-アミノメチルジエトキシエチルシランなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
シリル化ポリウレタンを製造する際には、ポリイソシアネートとイソシアネート反応性化合物とを前記アルコキシシランの存在下にて反応させて、いわゆるシリル化イソシアネート官能性プレポリマーを形成させることができる。
【0086】
ある実施態様では、好適なシリル化ポリマーはシリル化ポリオレフィン(たとえば、アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリオレフィン)である。
シリル化ポリオレフィンは公知であり、本明細書に後述のように製造することができる。シリル化ポリオレフィンを製造するに際して、シリル基は、オレフィンの重合の前にモノマーに結合させることもできるし、オレフィンの重合の後にモノマーに結合させることもできるし、あるいは幾つかの中間段階時にモノマーに結合させることもできる。さらに、ペンダント基をモノマーまたはポリマーに結合させ、次いで化学的に変性を施して適切なシリル基を生成させることもできる。
【0087】
シリル化ポリオレフィンの製造方法の例が、EP1396511および米国特許第5,994,474号(該特許文献を参照により本明細書に含める)に説明されているが、これらに限定されない。たとえば、ポリオレフィンは、エチレン性不飽和有機部分に結合したトリアルコキシシラン基を有するシラン分子およびラジカルドナーと、ポリオレフィンとを溶融ブレンドすることによってシラングラフトすることができる。好適なアルコキシシラン化合物またはシラノール化合物は、シリル化ポリウレタンの製造に関して前記したものと同じである。
【0088】
ポリオレフィンは、任意のオレフィンホモポリマー、またはオレフィンと1種以上のコモノマーとの任意のコポリマーであってよい。ポリオレフィンは、アタクチック、シンジオタクチック、またはアイソタクチックでよい。オレフィンは、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または1-オクテンだけでなく、たとえばシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、またはノルボルネン等のシクロオレフィンであってよい。コモノマーは、オレフィンとは異なり、オレフィンとの共重合に対して適切であるように選ばれる。コモノマーはさらに、上記のオレフィンであってもよい。コモノマーは、脂肪族C2-C20α-オレフィン(これに限定されない)を含んでよい。好適な脂肪族C2-C20α-オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセンなどがある。
【0089】
オレフィンコポリマーの例としては、プロピレンとエチレンのコポリマー、プロピレンと1-ブテンのランダムコポリマー、プロピレンとエチレンのヘテロ相コポリマー、エチレン-ブテンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマー、エチレン-オクテンコポリマー、エチレンとビニルアセテートのコポリマー(EVA)、およびエチレンとビニルアルコールのコポリマー(EVOH)などがある。
【0090】
ポリオレフィン(たとえばポリエチレン)は、当業界に公知の任意の触媒の存在下で製造することができる。本明細書で使用している「触媒」という用語は、重合反応の速度の変化を引き起こす物質を表わす。好適な触媒の例は、メタロセン触媒、クロム触媒、およびチーグラー・ナッタ触媒である。
【0091】
ある実施態様では、好適なシリル化ポリマーはシリル化ポリエステル、たとえばアルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリエステルである。
シリル化ポリエステルは公知である。シリル化ポリエステルの適切な製造方法の例は、WO2010/0136511に記載の製造方法を含むが、これらの例に限定されない。この製造方法は、ポリエステルをアルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物でシリル化する工程を含んでよい。好適なアルコキシシラン化合物またはシラノール化合物は、シリル化ポリウレタンの製造に関して前記したものと同じである。
【0092】
たとえばシリル化ポリエステルは、ポリエステルとジイソデシルフタレートとを接触させ、引き続き触媒の存在下にて該混合物とアルコキシシラン(たとえばイソシアネートアルキルトリアルコキシシラン)とを反応させることによって製造することができる。好適なアルコキシシラン化合物またはシラノール化合物は、シリル化ポリウレタンの製造に関して前記したものと同じである。
【0093】
使用することができるポリエステルは、エステル構造-C(=O)O-を含む。好適なポリエステルの例は、モノマーユニットとして次の化学構造[-C(=O)-C6H4-C(=O)O-(CH2-CH2)n-O-](式中、nは1〜10の整数であり、好ましい値は1または2である)を含んでよいが、これらの例に限定されない。こうした好適なポリエステルの特定の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)である。好適なポリエステル(およびそれらの製造方法)のさらなる例は、グリコール酸の重縮合によって得られるポリグリコリドまたはポリグリコール酸(PGA);ラクチドの開環重合によって、あるいは乳酸から直接得られるポリ乳酸(PLA);3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、ブチロラクトン、およびバレロラクトン(触媒としてアルミノキサンオリゴマー)の共重合によって得られるポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート(PHBV);テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンテレフタレート(PET);テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとの重縮合によって得られるポリブチレンテレフタレート(PBT);テレフタル酸と1,3-プロパンジオールとの重縮合によって得られるポリトリメチレンテレフタレート(PTT);少なくとも1種のナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとの重縮合によって得られるポリエチレンナフタレート(PEN);ならびに、4-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸との重縮合によって得られるベクトラン;を含むが、これらに限定されない。
【0094】
ある実施態様では、好適なシリル化ポリマーはシリル化ポリカーボネートである。
シリル化ポリカーボネートの製造方法は、ポリカーボネートをアルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物でシリル化する工程を含んでよい。好適なアルコキシシラン化合物またはシラノール化合物は、シリル化ポリウレタンの製造に関して前記したのものと同じである。使用することができるポリカーボネートはカーボネート基(-O-(C=O)-O-)を有する。
【0095】
ある実施態様では、好適なシリル化ポリマーはシリル化ポリエーテル、たとえばアルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリエーテルである。
好適なポリエーテルは公知である。シリル化ポリエーテルの製造方法の例が、WO2011075254(該特許文献を参照により本明細書に含める)に記載されているが、これに限定されない。好適なアルコキシシラン化合物またはシラノール化合物は、シリル化ポリウレタンの製造に関して前記したのものと同じである。たとえば、好適なシリル化ポリエーテルは、ポリエーテルとアルコキシシランとを反応させることによって製造することができる。たとえば、シリル化ポリエーテルは、OH部分を含むポリエーテルとイソシアナートアルコキシシランとを反応させることによって得ることができる。OH部分を含む好適なポリエーテルは、ポリオールの種々のアルコキシ化生成物の混合物であってよい。好ましいポリオールは、重合したプロピレンオキシド単位及び/又は重合したエチレンオキシド単位が存在するポリオールを含む。これらの単位は、統計的な分布にて、ポリエチレンオキシドブロックが鎖中に及び/又は末端に存在する形で配列することができる。ポリエーテルは、1〜6の平均公称官能価を有してよく、1〜4の官能価であるのがさらに好ましく、1または2の官能価であるのが最も好ましい。
本明細書で使用されている「平均公称官能価」という用語は、これが、配合物中に使用される開始剤の数平均官能価であると仮定して、ポリエーテルの数平均官能価(1分子当たりの官能基の数)を示すために使用されているが、実際には、末端不飽和が幾らか存在するためにやや低いことが多い。本明細書で使用されている「平均」という用語は、特に明記しない限り数平均を表わす。官能基は、アルコキシシリル反応性官能基及び/又はシラノール反応性官能基(すなわち、アルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物に対して反応性である基)であるのが好ましい。アルコキシシリル反応性基及び/又はシラノール反応性基の例は、ヒドロキシル、アミノ、及びチオールを含む基から選ぶことができるが、これらに限定されない。好適なポリエーテルの例としては、たとえば開始剤化合物の存在下(好ましくは1種以上の多官能開始剤の存在下)におけるエチレンオキシドの重合によって得られる生成物〔エチレンオキシドと他の環状オキシド(たとえばプロピレンオキシド)との共重合によって得られる生成物を含む〕があるが、これらに限定されない。好適な開始剤化合物は、複数の活性水素原子を含有し、水と低分子量ポリエーテル(たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、レソルシノール、ビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、およびペンタエリスリトール等)を含む。開始剤及び/又は環状オキシドの混合物を使用することができる。好適なポリエーテルとしては、二官能もしくは三官能開始剤へのプロピレンオキシドとエチレンオキシドの逐次付加によって得られるポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)ジオール及び/又はポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)トリオール(先行技術にて充分に説明されている)がある。
前記ジオールとトリオールの混合物も有用である。好ましいのはモノオールとジオールである。ポリエーテルは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノペンチルエーテル、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノベンジルエーテル、およごこれらの混合物を含む群から選ぶことができる。幾つかの実施態様によれば、ポリエーテルは、62〜40000(たとえば100〜20000、たとえば200〜10000、たとえば400〜6000)の平均分子量Mwを有してよい。
【0096】
ある実施態様では、好適なシリル化ポリマーはシリル化ポリビニルアセテート(たとえば、アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリビニルアセテート)である。
【0097】
シリル化ポリビニルアセテートは、アルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物を使用してポリビニルアセテートをシリル化することによって製造することができる。好適なアルコキシシラン化合物またはシラノール化合物は、シリル化ポリウレタンの製造に関して前述したものと同じである。
【0098】
好適なポリビニルアセテートは、-(C4H6O2)-をモノマー単位として有してよい。好適なポリビニルアセテートは、一般式(X)
【0099】
【化11】
【0100】
〔式中、Rは、C1-6アルキルまたはC6-10アリール(たとえばメチル、エチル、またはフェニル)である〕
をモノマー単位として有するポリビニルエステルを含む。ポリビニルアセテートは、ビニルアセテートモノマーの重合(ビニルアセテートモノマーのラジカルビニル重合)によって製造することができる。さらに、ビニルアセテートと他のモノマーとを重合させてコポリマー〔たとえばエチレン-ビニルアセテート(EVA)、ビニルアセテート-アクリル酸(VA/AA)、ポリビニルクロライドアセテート(PVCA)、およびポリビニルピロリドン等〕を製造することもできる。ビニルアセテートのホモポリマーとコポリマーも使用することができる。
【0101】
ある実施態様では、好適なシリル化ポリマーはシリル化ポリアクリレート(たとえば、アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むポリアクリレート)である。
シリル化ポリアクリレートは公知であり、たとえばDE102004055450や米国特許第4,333,867号(該特許文献を参照により本明細書に含める)に記載のように製造することができる。好適なアルコキシシラン化合物またはシラノール化合物は、シリル化ポリウレタンの製造に関して前述したものと同じである。たとえば、シリル化ポリアクリレートは、スチレン/エチルアクリレート/アクリル酸コポリマーをミキシングし、本混合物とアルコキシシラン〔たとえば(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシシラン〕とを、スチレンとアクリル酸の存在下で反応させることによって製造することができる。
【0102】
ポリアクリレートは、アクリルモノマーを重合させることによって製造することができる。好適なアクリルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸の誘導体(たとえば、1つのビニル水素とカルボン酸水素の両方がメチル基で置換されたメチルメタクリレート)、およびカルボン酸基が関連したニトリル基で置換されたアクリロニトリルなどがある。好適なアクリレートモノマーの例としては、メタクリレート、エチルアクリレート、2-クロロエチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート、およびブチルメタクリレートなどがあるが、これらに限定されない。
【0103】
ある実施態様では、好適なシリル化ポリマーはシリル化シリコーン(たとえば、アルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含むシリコーン)である。
シリル化シリコーンは公知である。上記シリル化シリコーンの製造方法の例がWO2003/018704とDE102008054434に説明されているが、これらに限定されない。シリル化シリコーンは、ポリシロキサンとシラン化合物とをミキシングすることによって製造することができる。たとえば、好適なシリル化シリコーンは、α-ω-ビスアミノプロピルポリジメトキシシロキサンと、イソホロンジイソシアネートおよびイソシアナートプロピルトリメトキシシランとを接触させることによって製造することができる。好適なシリコーンとしてはポリシロキサン(重合したシロキサン)がある。好適なシリコーンは、化学式[R2SiO]n〔式中、Rは、C1-6アルキルまたはC6-10アリール等の有機基(たとえばメチル、エチル、またはフェニル)〕を有する無機-有機混合ポリマーを含む。有機側基Rを使用して、これら-Si-O-主鎖の2つ以上を結び付けることができる。-Si-O-鎖長、側基、および架橋を変えることによって、さまざまな特性と組成を有するシリコーンを合成することができる。
【0104】
本発明の組成物はさらに、1種以上のシランを含んでよい。好適なシランは、シリル化ポリマーを製造するために前記したもの(たとえばアミノシラン、アルコキシシラン、脂肪族ヒドロキシシラン、脂環式ヒドロキシシラン、芳香族ヒドロキシシラン、エポキシシラン、グリシドキシシラン、イソシアナートシラン、シラン無水物、チオシラン、スルホネートシラン、ホスフェートシラン、カプロラクタムシラン、アクリレートシラン、スクシンイミドシラン、シルセスキオキサンシラン、アミドシラン、カルバメートシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、シラノール、ケイ素上に少なくとも1つの水素原子を有するシラン、およびこれらの混合物等)から選ぶことができる。
【0105】
本発明の組成物は、1種以上の添加剤を含んでよい。幾つかの実施態様では、前記1種以上の添加剤は、フィラー、接着促進剤、水分スカベンジャー、可塑剤、紫外線安定剤、チキソトロープ剤、またはこれらの組み合わせを含む群から選ぶことができる。幾つかの実施態様では、前記1種以上の添加剤はシランであってよい。
【0106】
添加剤は可塑剤であってよい。組成物中の可塑剤の量は制限するのが好ましい。幾つかの実施態様では、組成物は可塑剤を、シリル化ポリマー総重量を基準として0.0重量%〜高くても50.0重量%の量にて含む。
【0107】
本発明において使用するための好適な可塑剤は、当業界に公知の従来の可塑剤(たとえば、二塩基性もしくは多塩基性カルボン酸と一価アルコールとのエステル)を含む。
好適な可塑剤の他の例は、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジメチルフタレート、およびジブチルフタレート等のフタル酸エステル;トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート(TEP)、トリフェニルホスフェート、およびクレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル;塩素化ビフェニル;芳香族オイル;ジイソノニルアジペートやジ-(2-エチルヘキシル)アジペート等のアジピン酸エステル;ならびにこれらの組み合わせを含む群から選ぶことができる。
【0108】
好適な可塑剤の他の例は、分岐脂肪族アルコールのリン酸エステル、分岐脂環式アルコールのリン酸エステル、分岐芳香族アルコールのリン酸エステル、非分岐脂肪族アルコールのリン酸エステル、非分岐脂環式アルコールのリン酸エステル、非分岐芳香族アルコールのリン酸エステルを含む。必要に応じて、ハロゲン化アルコールのリン酸エステル(たとえばトリクロロエチルホスフェート)も使用することができる。言うまでもないが、前記アルコールと前記カルボン酸の混合エステルも使用することができる。いわゆるポリメリック可塑剤も、本発明の目的に対して使用することができる。
【0109】
添加剤は、接着促進剤または水分スカベンジャーであってよい。
本発明の配合物においては、他の添加剤も使用することができる。触媒、安定剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、および紫外線安定剤等の添加剤を、組成物の0〜5重量%(好ましくは0〜2重量%)の量にて使用することができる。
【0110】
本発明の組成物はさらに、特定の酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、スズ酸塩、酸化物水酸化物混合物、酸化物水酸化物炭酸塩、水酸化物ケイ酸塩、水酸化物ホウ酸塩、またはこれら物質の混合物等の非難燃性の無機フィラーを含んでよい。たとえば酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、ベーマイト、ジヒドロタルサイト、ハイドロカルマイト、または炭酸カルシウム等を使用することができる。好ましい化合物は、ケイ酸塩と水酸化物ケイ酸塩である。これらのフィラーは通常、配合物を基準として1〜50重量%(好ましくは1〜30重量%)の量にて加える。
【0111】
上記添加剤のいずれもスズを含有しない。したがって本発明の組成物は実質的にスズ非含有である(すなわちスズ含量が0.001重量%未満)。
本発明は、シリル化ポリマーの触媒反応を起こさせるために錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンを使用することを説明しているが、前記錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンは、少なくとも1つの-Si(OR50)pR513-p(式中、R50は、H、置換されていてもよいC1-24アルキル、置換されていてもよいC3-24シクロアルキル、置換されていてもよいC6-24アリール、または置換されていてもよいヘテロアリールから選ぶことができ;R51は、H、置換されていてもよいC1-24アルキル、置換されていてもよいC3-24シクロアルキル、置換されていてもよいC6-24アリール、または置換されていてもよいヘテロアリールから選ぶことができ;pは0または1であってよい)基を有するあらゆる化合物(低分子量物質を含み、シランであってもよい)に触媒作用を及ぼすのに使用することができる。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基に対する好適な置換基は、たとえばハロゲン原子やCOOH基から選ぶことができるが、これらに限定されない。
【0112】
本発明はさらに、少なくとも1種のシリル化ポリマーを含む組成物を硬化させるために、少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンを使用することを包含する。好適なシリル化ポリマーは前述したとおりである。
【0113】
本発明はさらに、本発明の第1の態様に従った組成物の硬化方法を包含し、該硬化方法は、少なくとも1種のシリル化ポリマーと少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンとを接触させる工程を含む。本発明はさらに、シリル化ポリマーを含む組成物の硬化方法を包含し、該硬化方法は、シリル化ポリマーと少なくとも1種のPOMS(前述の通り)とを接触させる工程を含む。本発明はさらに、シリル化ポリマーと少なくとも1種のPOMS(前述の通り)とを接触させ、これによって該シリル化ポリマーを硬化させる工程、を含むシリル化ポリマーの硬化方法を包含する。
【0114】
ある実施態様では、前記錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンの量は、組成物の総重量を基準として0.001重量%〜5重量%(好ましくは0.01重量%〜2重量%、さらに好ましくは0.1重量%〜2重量%)である。
【0115】
ある実施態様では、前記硬化方法は、少なくとも1種のニートもしくは配合したシリル化ポリウレタンと少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンとを接触させ、これによって硬化シリル化ポリウレタンを得る工程、を含む。幾つかの実施態様では、前記硬化方法は、少なくとも1種のシリル化ポリウレタン形成混合物を調製する工程;および該混合物と1種以上のPOMSとを本明細書中に前述したように接触させる工程;を含む。ある実施態様では、前記シリル化ポリウレタン形成混合物は、少なくとも1種のイソシアネート;イソシアネート反応性水素原子を含有する1種以上の成分;および1種以上のアルコキシシラン化合物もしくはシラノール化合物;を含む。ある実施態様では、硬化プロセスは、最初に前記シリル化ポリウレタン形成混合物を反応させ、これによりシリル化ポリウレタンを得、次いで1種以上のPOMSと該シリル化ポリウレタンとを接触させることによって果たされる。
【0116】
可塑剤、接着促進剤、水分スカベンジャー、フィラー、チキソトロープ剤、および紫外線安定剤等、ならびにこれらの混合物などの成分は全て、直接ミキシングや溶媒による導入を含めた、当業者に公知の可能な任意の仕方で組成物に加えることができる。
【0117】
本発明の材料は、たとえば、接着剤、シーラント、フォーム、塗料、エラストマー、または封入剤への応用に対して極めて適している。
ある実施態様では、本発明による組成物は、接着剤、シーラント、塗料、エラストマー、封入剤、軟質フォーム、および硬質もしくは半硬質フォームに使用することができる。
【0118】
本発明は、本発明に従った組成物を含んでなる生成物を包含する。本発明はさらに、本発明の第1の態様に従った組成物を硬化させることによって得られる生成物を包含する。本発明によって包含される好適な生成物の例は、接着剤、シーラント、塗料、エラストマー、封入剤、軟質フォーム、および硬質もしくは半硬質フォームを含むが、これらに限定されない。
【0119】
幾つかの実施態様では、生成物が接着剤であってよい。幾つかの実施態様では、生成物がシーラントであってよい。他の実施態様では、生成物がエラストマーであってよい。さらに他の実施態様では、生成物がフォーム(たとえば、軟質フォームや硬質もしくは半硬質フォーム)であってよい。さらに他の実施態様では、生成物が封入剤であってよい。さらに他の実施態様では、生成物が塗料であってよい。
【0120】
幾つかの実施態様では、組成物がシリル化ポリウレタンを含み、生成物がポリウレタン生成物であってよい。幾つかの実施態様では、生成物がポリウレタン接着剤であってよい。幾つかの実施態様では、生成物がポリウレタンシーラントであってよい。幾つかの実施態様では、生成物がポリウレタンエラストマーであってよい。さらに他の実施態様では、生成物がポリウレタンフォーム(たとえば、軟質ポリウレタンフォームや硬質もしくは半硬質ポリウレタンフォーム)であってよい。さらに他の実施態様では、生成物がポリウレタン封入剤であってよい。さらに他の実施態様では、生成物がポリウレタン塗料であってよい。
【実施例】
【0121】
特に明記しない限り、以下の実験例と明細書全体における部とパーセント値は、それぞれ重量部と重量%である。
シリル化ポリウレタン1: メチレンジフェニレンジイソシアネート(MDI、Suprasec3050、Huntsman Polyurethanes社、2,4-異性体と4,4-異性体の50/50混合物)、ポリプロピレングリコール(PPG2000,Daltocel F456, Huntsman社製造)、およびN-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan1189,Evonik Industries社から入手)から製造。
【0122】
これとは別に、Momentive社からのSPUR材料、及び/又は、Evonik社からのPolymer ST等の市販のシリル化ポリウレタンをシリル化ポリウレタンとして使用することができる。
実験例において使用されているイソブチルPOMSチタンは、一般式I(式中、X1=X2=X3=Si;Z1=Z2=Z3=i-ブチル;R1=R2=R3=R4=i-ブチル;Y1とY2は共に-O-であり;X4は-TiO-i-プロピルであり;Q1とQ2はそれぞれ、Tiに結びついた単結合である)を有する多面体オリゴマー金属シルセスキオキサン(ここでは「イソブチルPOMSチタンイソプロポキシド」と呼ぶ)である。
【0123】
以下の全実験例に対し、下記のようなBKドライヤー実験によって表面硬化特性を調べた。
305×24.5×2.45mm3のガラス片上に塗料(厚さ500μm)を塗布した。試験サンプルを、温度23℃および相対湿度50%の制御された雰囲気下でBKドライヤー記録計上に置いた。試験サンプルと垂直接触状態にある金属針を固定速度にてガラス片に沿ってドラッグし、硬化プロフィールを記録した。全ての実験例に対し、特徴的な硬化段階に対応するSOTポイント、EOTポイント、およびESポイントを以下に記す。
【0124】
SOT=スタート・オープニング・タイム、永続的な跡が視認できる時点に対応する。
EOT=エンド・オープニング・タイム、スキンの裂けがなくなる時点に対応するが、表面はまだ完全には硬化していない。
【0125】
ES=エンド・オブ・スクラッチ・タイム
実験例1(本発明)
イソブチルPOMSチタンイソプロポキシドをDINP(ジ-イソノニルフタレート)中に超音波浴中にて室温で30分溶解し、次いで2500rpmで6分ミキシングすることによって、イソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの2.7重量%DINP溶液を調製した。本溶液とシリル化ポリウレタン樹脂1とを配合した。本溶液は、91.3重量%のシリル化ポリウレタン樹脂と8.7重量%のイソブチルPOMSチタンイソプロポキシド溶液を含む。本混合物を窒素でフラッシングし、2500rpmで5分混合した。シリル化ポリウレタン樹脂中のイソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの最終含量は0.23重量%(0.012重量%のTi)であった。500μmでのキャスティングを行い、BKドライヤー記録計により硬化特性を調べた。
【0126】
スタート・オープン・タイム:42分、エンド・オブ・スクラッチ・タイム:110分。
実験例2(比較例:Sn硬化シリル化ポリウレタン樹脂)
5.4重量%のジブチル錫ジラウレート(DBTDL)とDINP(ジ-イソノニルフタレート)とを2500rpmで5分せん断処理することによって混合物を調製した。この溶液とシリル化ポリウレタン樹脂とを配合した。本溶液は、91.3重量%のシリル化ポリウレタン樹脂1と8.7重量%のDBTDL溶液を含む。本混合物を窒素でフラッシングし、2500rpmで5分混合した。シリル化ポリウレタン樹脂中のDBTDLの最終含量は0.47重量%(0.087重量%のSn)であった。500μmでのキャスティングを行い、BKドライヤー記録計により硬化特性を調べた。
【0127】
スタート・オープン・タイム:41分、エンド・オブ・スクラッチ・タイム:105分。
実験例1と2から、シリル化ポリウレタン樹脂に加えるイソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの量が、DBTDLと比較して半分でほぼ同等の硬化特性が得られる、ということがわかった。あるいはこれとは別に、シリル化ポリウレタン樹脂中の金属の重量分率に関して、チタンの量が錫の約1/8でほぼ同等の硬化特性が得られる、ということがわかった。POMSの有効性は、金属含量の比較に基づいた予想をはるかに凌いでいる。
【0128】
実験例3(本発明)
イソブチルPOMSチタンイソプロポキシドをトルエン中に超音波浴中にて室温で30分溶解し、次いで2500rpmで6分ミキシングすることによって、イソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの3.3重量%トルエン溶液を調製した。本溶液とシリル化ポリウレタン樹脂1とを配合した。本溶液は、94.1重量%のシリル化ポリウレタン樹脂と6.9重量%のイソブチルPOMSチタンイソプロポキシド溶液を含む。本混合物を窒素でフラッシングし、2500rpmで5分混合した。シリル化ポリウレタン樹脂中のイソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの最終含量は0.23重量%であった。500μmでのキャスティングを行い、BKドライヤー記録計により硬化特性を調べた。
【0129】
スタート・オープン・タイム:43分、エンド・オブ・スクラッチ・タイム:115分。
実験例4(比較例:Sn硬化シリル化ポリウレタン樹脂)
6.8重量%のジブチル錫ジラウレート(DBTDL)とトルエンとを2500rpmで5分せん断処理することによって混合物を調製した。この溶液とシリル化ポリウレタン樹脂1とを配合した。本溶液は、9.31重量%のシリル化ポリウレタン樹脂と6.9重量%のDBTDL溶液を含む。本混合物を窒素でフラッシングし、2500rpmで5分混合した。シリル化ポリウレタン樹脂中の金属DBTDLの最終含量は0.47重量%であった。500μmでのキャスティングを行い、BKドライヤー記録計により硬化特性を調べた。
【0130】
スタート・オープン・タイム:45分、エンド・オブ・スクラッチ・タイム:120分。
実験例3と4から、シリル化ポリウレタン樹脂に加えるイソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの量が、DBTDLと比較して半分でほぼ同等の硬化特性が得られる、ということがわかった。あるいはこれとは別に、シリル化ポリウレタン樹脂中の金属の重量分率に関して、チタンの量が錫の約1/8である、ということがわかった。POMSの有効性は、金属含量の比較に基づいた予想をはるかに凌いでいる。
【0131】
実験例5(比較例:Sn硬化シリル化ポリウレタン樹脂)
3.3重量%のジブチル錫ジラウレート(DBTDL)とトルエンとを2500rpmで5分せん断処理することによって混合物を調製した。この溶液とシリル化ポリウレタン樹脂1とを配合した。本溶液は、93.1重量%のシリル化ポリウレタン樹脂と6.9重量%のDBTDL溶液を含む。本混合物を窒素でフラッシングし、2500rpmで5分混合した。シリル化ポリウレタン樹脂中の金属DBTDLの最終含量は0.23重量%であった。500μmでのキャスティングを行い、BKドライヤー記録計により硬化特性を調べた。
【0132】
スタート・オープン・タイム:65分、エンド・オブ・スクラッチ・タイム:160分。
実験例3と5から、DBTDLとイソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの濃度(重量%での)がほぼ同等でも、POMS触媒された樹脂のほうがより高い硬化速度をもたらす、ということがわかった。あるいはこれとは別に、シリル化ポリウレタン樹脂中の金属の重量分率に関して、チタンの量が錫の約1/4でより高い硬化速度をもたらす、ということがわかった。POMSの有効性は、金属含量の比較に基づいた予想をはるかに凌いでいる。
【0133】
実験例6(本発明)
イソブチルPOMSチタンイソプロポキシドをトルエン中に超音波浴中にて室温で30分溶解し、次いで2500rpmで6分ミキシングすることによって、イソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの1.63重量%トルエン溶液を調製した。本溶液とシリル化ポリウレタン樹脂1とを配合した。本溶液は、93.1重量%のシリル化ポリウレタン樹脂と6.9重量%のイソブチルPOMSチタンイソプロポキシドを含む。本混合物を窒素でフラッシングし、2500rpmで5分混合した。シリル化ポリウレタン樹脂中のイソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの最終含量は0.119重量%であった。500μmでのキャスティングを行い、BKドライヤー記録計により硬化特性を調べた。
【0134】
スタート・オープン・タイム:56分、エンド・オブ・スクラッチ・タイム:300分。
実験例7(比較例:Sn硬化シリル化ポリウレタン樹脂)
1.63重量%のジブチル錫ジラウレート(DBTDL)とトルエンとを2500rpmで5分せん断処理することによって混合物を調製した。この溶液とシリル化ポリウレタン樹脂とを配合した。本溶液は、93.1重量%のシリル化ポリウレタン樹脂と6.9重量%のDBTDL溶液を含む。本混合物を窒素でフラッシングし、2500rpmで5分混合した。シリル化ポリウレタン樹脂中の金属DBTDLの最終含量は0.119重量%であった。500μmでのキャスティングを行い、BKドライヤー記録計により硬化特性を調べた。
【0135】
スタート・オープン・タイム:90分、エンド・オブ・スクラッチ・タイム:250分。
実験例6と7から、DBTDLとイソブチルPOMSチタンイソプロポキシドの濃度(重量%での)がほぼ同等でも、POMS触媒された樹脂のほうがより高い硬化速度をもたらす、ということがわかった。あるいはこれとは別に、シリル化ポリウレタン樹脂中の金属の重量分率に関して、チタンの量が錫の約1/4でより高い硬化速度をもたらす、ということがわかった。POMSの有効性は、金属含量の比較に基づいた予想をはるかに凌いでいる。
実験例3〜7のスタート・オープニング・タイム値(分)を図1に示す。
【0136】
本発明による実施態様を提供するために、好ましい実施態様及び/又は好ましい材料について説明してきたが、本発明の要旨を逸脱することなく種々の改良や変更を行うことができる、という点を理解しておかねばならない。
(1) 少なくとも1種のシリル化ポリマーと少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンを含んでなる組成物。
(2) 前記少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンが、式(I)
【表1】
〔式中、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立してSiまたはM1から選ばれ、ここでM1は、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ;
Z1、Z2、およびZ3は、それぞれ独立してL2、R5、R6、またはR7から選ばれ、ここでL2は、-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれ;
Y1とY2は、それぞれ独立して-O-M2-L3であるか、あるいはY1とY2は、結合して一緒になって-O-M2(L3)-O-または-O-を形成し、ここでL3は、-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれ、M2は、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して置換もしくは非置換C1-20アルキル、置換もしくは非置換C3-6シクロアルキル、置換もしくは非置換C2-20アルケニル、または置換もしくは非置換C6-10アリールから選ばれ;ならびに、
X4は-M3L1またはM3であり、Q1とQ2は、それぞれM3に結合した単結合であり、ここでL1は、-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれ、M3は、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ;あるいは、X4が-M3L1であり、Q2がM3に結合した単結合であり、Q1が-M4L4または-SiR38であり、ここでM4は、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ、L4は、-OHまたは-O-C1-10アルキルから選ばれ、R38は、置換もしくは非置換C1-20アルキル、置換もしくは非置換C3-6シクロアルキル、置換もしくは非置換C2-20アルケニル、または置換もしくは非置換C6-10アリールから選ばれ;あるいは、X4、Q1、およびQ2は、それぞれ独立して-M3L1であり;あるいは、X4が-Si(R38)-O-M3L1であり、Q2がX4のSiに結合した単結合であり、Q1が-M4L4であり;あるいは、X4が-Si(R38)-O-M3L1であり、Q2がX4のSiに結合した単結合であり、Q1がX4のM3に結合した単結合である〕
で示される化合物である、(1)に記載の組成物。
(3) X1、X2、およびX3が、それぞれ独立してSiであり;X4が-M3L1であり、Q1とQ2が、それぞれM3に結合した単結合であって、M3が好ましくはTiであり、L1が好ましくはO-i-プロピルであり;Z1、Z2、およびZ3が、それぞれ独立してC1-6アルキルであって、好ましくはそれぞれi-ブチルであり;R1、R2、R3、およびR4が、それぞれ独立してC1-6アルキルであって、好ましくはそれぞれi-ブチルであり;Y1とY2が結合して-O-を形成する、(2)に記載の組成物。
(4) M1、M2、M3、およびM4が、それぞれ独立してTi、Zr、およびHfからなる群から選ばれる、(2)または(3)に記載の組成物。
(5) 前記少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンが式(II)
【表2】
(式中、X4、R1、R2、R3、R4、Z1、Z2、およびZ3が、(2)、(3)または(4)に記載したものと同じ意味である)
で示される化合物である、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の組成物。
(6) 前記少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンが、式(III)
【表3】
(式中、Mは、s-ブロック金属、錫を除いたp-ブロック金属、d-ブロック遷移金属、f-ブロック遷移金属、ランタニド金属、アクチニド金属、およびメタロイドからなる群から選ばれ;xは、0または1から選ばれる整数であり;yは、0または1から選ばれる整数であり;R8とR9は、それぞれ独立してC1-20アルキルであり;R10とR11は、それぞれ独立してC1-20アルキルであり;R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25は、それぞれ独立して置換もしくは非置換C1-20アルキル、置換もしくは非置換C3-6シクロアルキル、置換もしくは非置換C2-20アルケニル、または置換もしくは非置換C6-10アリールから選ばれる)
で示される化合物である、(1)に記載の組成物。
(7) xとyがそれぞれ0であり;MがTiであり;R8、R9、R10、およびR11が、それぞれ独立してC1-6アルキルであり;R12〜R25が、それぞれ独立してC1-6アルキルである、(6)に記載の組成物。
(8) R8とR9がそれぞれi-プロピルであり;R12〜R25がそれぞれi-ブチルである、(7)に記載の組成物。
(9) R8とR9がそれぞれi-プロピルであり;R12〜R25がそれぞれi-オクチルである、(7)に記載の組成物。
(10) 前記シリル化ポリマーが、シリル化ポリウレタン、シリル化シリコーン、シリル化ポリエーテル(MSポリマー)、シリル化ポリカーボネート、シリル化ポリオレフィン、シリル化ポリエステル、シリル化ポリアクリレート、シリル化ポリビニルアセテート、これらの混合物、およびこれらのコポリマーからなる群から選ばれる、(1)〜(9)のいずれかに記載の組成物。
(11) 前記シリル化ポリマーがアルコキシシリル部分及び/又はシラノール部分を含む、(1)から(10)のいずれかに記載の組成物。
(12) 前記シリル化ポリマーが、少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物ならびに少なくとも1種のアルコキシシラン化合物及び/又はシラノール化合物と少なくとも1種のイソシアネートとの反応によって得られるシリル化ポリウレタンである、(10)または(11)に記載の組成物。
(13) アルコキシシラン化合物がアミノアルコキシシランである、(12)に記載の組成物。
(14) 前記錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンの量が、組成物の総重量を基準として0.001重量%〜5重量%、好ましくは0.01重量%〜2重量%、さらに好ましくは0.1重量%〜2重量%である、(1)〜(13)のいずれかに記載の組成物。
(15) 前記組成物が、フィラー、接着促進剤、水分スカベンジャー、可塑剤、紫外線安定剤、チキソトロープ剤、またはこれらの組み合わせを含む群から選ばれる1種以上の添加剤をさらに含み、好ましくは前記1種以上の添加剤がシランである、(1)〜(14)のいずれかに記載の組成物。
(16) 前記組成物が0.001重量%未満の錫を含有する、(1)〜(15)のいずれかに記載の組成物。
(17) 少なくとも1種のシリル化ポリマーと少なくとも1種の錫非含有多面体オリゴマー金属シルセスキオキサンとを接触させ、これによって硬化組成物を得る工程を含む、(1)〜(16)のいずれかに記載の組成物の硬化方法。
(18) (1)〜(16)のいずれかに記載の組成物を含む生成物。
図1