特許第6266769号(P6266769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266769
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】液晶ディスプレイの光学補償方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13363 20060101AFI20180115BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G02F1/13363
   G02B5/30
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-524648(P2016-524648)
(86)(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公表番号】特表2016-528536(P2016-528536A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】CN2013079240
(87)【国際公開番号】WO2015003371
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】201310288042.5
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516010618
【氏名又は名称】深▲せん▼市華星光電技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CHINA STAR OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】康 志聡
(72)【発明者】
【氏名】海 博
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/032060(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第202886791(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13363
G02F 1/1335
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ディスプレイの光学補償方法であって、
正の単軸複屈折A−補償膜の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲を92nm≦Ro≦184nmに調整する手順と、
前記正の単軸複屈折A−補償膜の面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲を46nm≦Rth≦92nmに調整する手順と、
の単軸複屈折C−補償膜の補償値Rthの値の範囲をY1≦Rth≦Y2に調整する手順と、を含み、
ここで、Y1、Y2は下記の式
Y1=0.0000826x−0.022868x+2.4074x-114.326x+2251.5、
Y2=−0.00006472x+0.017705x−1.8284x+84.4843x−1181.17を満たし、
Xは、前記正の単軸複屈折A−補償膜の面外リターデーションの補償値Rthであり、
前記正の単軸複屈折A−補償膜と負の単軸複屈折C−補償膜は、前記液晶ディスプレイの第1基板と第1偏光膜の間または第2基板と第2偏光膜の間に設けられている、液晶ディスプレイの光学補償方法。
【請求項2】
前記正の単軸複屈折A−補償膜の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲を92nm≦Ro≦184nmに調整し、かつ前記正の単軸複屈折A−補償膜の面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲を46nm≦Rth≦92nmに調整するとき、下記の式
Ro=(Nx−Ny)*d1、
Rth=[(Nx+Ny)/2−Nz]*d1によって得られ、
ここで、Nxは、前記正の単軸複屈折A−補償膜面内の提供する最大屈折率のX方向の屈折率であり、
Nyは、前記正の単軸複屈折A−補償膜面内とX方向の直交するY方向の屈折率であり、
Nzは、前記正の単軸複屈折A−補償膜の厚さ方向の屈折率であり、
d1は、前記正の単軸複屈折A−補償膜の厚さであり、かつNx>Ny、Ny=Nzである、請求項1に記載の液晶ディスプレイの光学補償方法。
【請求項3】
前記負の単軸複屈折C−補償膜の補償値Rthの値の範囲をY1≦Rth≦Y2に調整するとき、下記の式
Rth=[(Mx+My)/2−Mz]*d2により調整して得られ、
そのうち、Mxは、負の単軸複屈折C−補償膜面内の提供する最大屈折率のX方向の屈折率であり、
Myは、負の単軸複屈折C−補償膜面内とX方向の直交するY方向の屈折率であり、
Mzは、負の単軸複屈折C−補償膜の厚さ方向の屈折率であり、
d2は、前記負の単軸複屈折C−補償膜の厚さであり、かつMx=My、My>Mzである、請求項1に記載の液晶ディスプレイの光学補償方法。
【請求項4】
前記正の単軸複屈折A−補償膜と負の単軸複屈折C−補償膜は、液晶層の相異なる両側に設けられ、かつ前記第1基板と前記第1偏光膜の間または第2基板と第2偏光膜の間に設けられている、請求項1に記載の液晶ディスプレイの光学補償方法。
【請求項5】
前記正の単軸複屈折A−補償膜と負の単軸複屈折C−補償膜は、液晶層の同じ側に設けられ、かつ前記第1基板と前記第1偏光膜の間または第2基板と第2偏光膜の間に設けられている、請求項1に記載の液晶ディスプレイの光学補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示の技術分野に関し、特に液晶ディスプレイとその光学補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの普及に伴って、液晶表示パネルの表示品質に対する要求がますます高まっている。例えば、薄膜電界効果トランジスタ液晶ディスプレイ(Thin Film Transistor LCD、TFT−LCD)は、TFT−LCDの観察角度が徐々に増大するに伴い、画面のコントラストが段々低くなり、画面の鮮鋭度も徐々に低くなっている。これは、液晶層内の液晶分子の複屈折率が観察角度の変化により変化しており、広視野角補償膜を採用して補償することにより、効果的に暗状態画面の光漏れを低減して、所定の視野角内で画面のコントラストを大幅に向上させている。
【0003】
補償膜の補償原理は、通常、液晶の異なる視野角で生じる位相差を補正することにより、液晶分子の複屈折特性が、対称性を有する補償を得ることである。
【0004】
異なる液晶表示モードでは、異なる補償膜を使用し、大きいサイズの液晶テレビの使用する補償膜は、ほとんど垂直配向(Vertical Alignment、VA)モードを使用し、初期ではKonica会社のN−TACを使用し、その後、OPOTES会社のZeonor、富士通のF−TACシリーズ、日東電工のX−Plateなどが使われている。
【0005】
同じの液晶リターデーションに対して、補償膜の補償値が異なる場合、大きい視野角の暗状態での光漏れが異なり、コントラストも異なる。図1図2において、図1は、従来技術で正の単軸複屈折A−補償膜(uniaxial positive birefringence A−Plate)と負の単軸複屈折C−補償膜(uniaxial Negative birefringence C−Plate)を用いて補償された暗状態の光漏れにおける等輝度分布(Isoluminance contour)を示す図であり、図2は、従来技術でA−PlateとC−Plateを用いて補償した後の全視野角の同じコントラストの分布(Equal contrast ratio contour)を示す図であり、前記A−PlateとC−Plateの補償値は下記の表に示す。

【0006】
図1図2により、従来技術のA−PlateとC−Plateの補償値を用いて、暗状態で観察する大きい視野角は、光漏れ現象がひどくなり、大きい視野角のコントラストが非常に悪くて、視野角の範囲が非常に小さいことがわかった。そのため、上述のような問題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術のA−PlateとC−Plateの補償値が暗状態で観察する大きい視野角は、光漏れ現象がひどくなり、大きい視野角のコントラストが非常に悪く、視野角の範囲が非常に小さい技術的問題を解決するために、液晶ディスプレイとその光学補償方法を提供することである。
【0008】
前記技術的問題を解決するために本発明は液晶ディスプレイを提供し、該液晶ディスプレイの波長は550nmであり、前記液晶ディスプレイの550nmでの液晶リターデーションLC△NDの範囲は324.3nm≦LC△ND≦342.8nmであり、前記液晶ディスプレイは、
第1基板と、
第2基板と、
前記第1基板と第2基板の間に設けられている液晶層と、
前記第1基板の外側に設けられている第1偏光膜と、
前記第2基板の外側に設けられている第2偏光膜と、
正の単軸複屈折A−補償膜と、
負の単軸複屈折C−補償膜と、を含み、
前記正の単軸複屈折A−補償膜と前記負の単軸複屈折C−補償膜は、前記第1基板と前記第1偏光膜の間または第2基板と第2偏光膜の間に設けられており、
前記正の単軸複屈折A−補償膜の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲は92nm≦Ro≦184nmであり、その面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲は46nm≦Rth≦92nmであり、前記負の単軸複屈折C−補償膜の補償値Rthの値の範囲はY1≦Rth≦Y2であり、
ここで、Y1、Y2は、下記の式
Y1=0.0000826x−0.022868x+2.4074x-114.326x+2251.5、
Y2=−0.00006472x+0.017705x−1.8284x+84.4843x−1181.17を満たし、
Xは、前記正の単軸複屈折A−補償膜の面外リターデーションの補償値Rthである。
【0009】
前記技術的問題を解決するために本発明は液晶ディスプレイを提供し、前記液晶ディスプレイは、
第1基板と、
第2基板と、
前記第1基板と第2基板の間に設けられている液晶層と、
前記第1基板の外側に設けられている第1偏光膜と、
前記第2基板の外側に設けられている第2偏光膜と、
正の単軸複屈折A−補償膜と、
負の単軸複屈折C−補償膜と、を含み、
前記正の単軸複屈折A−補償膜と前記負の単軸複屈折C−補償膜は、前記第1基板と前記第1偏光膜の間または第2基板と第2偏光膜の間に設けられており、
前記正の単軸複屈折A−補償膜の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲は92nm≦Ro≦184nmであり、その面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲は46nm≦Rth≦92nmであり、前記負の単軸複屈折C−補償膜の補償値Rthの値の範囲はY1≦Rth≦Y2であり、
ここで、Y1、Y2は下記の式
Y1=0.0000826x−0.022868x+2.4074x−114.326x+2251.5、
Y2=−0.00006472x+0.017705x−1.8284x+84.4843x−1181.17を満たし、
Xは、前記正の単軸複屈折A−補償膜の面外リターデーションの補償値Rthである。
【0010】
前記技術的問題を解決するために本発明は液晶ディスプレイの光学補償方法を提供し、該方法は、
前記正の単軸複屈折A−補償膜の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲を92nm≦Ro≦184nmに調整する手順と、
前記正の単軸複屈折A−補償膜の面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲を46nm≦Rth≦92nmに調整する手順と、
前記負の単軸複屈折C−補償膜の補償値Rthの値の範囲をY1≦Rth≦Y2に調整する手順と、を含み、
ここで、Y1、Y2は下記の式
Y1=0.0000826x−0.022868x+2.4074x−114.326x+2251.5、
Y2=−0.00006472x+0.017705x−1.8284x+84.4843x−1181.17を満たし、
Xは、前記正の単軸複屈折A−補償膜の面外リターデーションの補償値Rthであり、前記正の単軸複屈折A−の補償膜と負の単軸複屈折C−補償膜は、前記液晶ディスプレイの第1基板と第1偏光膜の間または第2基板と第2偏光膜の間に設けられている。
【0011】
本発明は、液晶ディスプレイで正の単軸複屈折A−補償膜と負の単軸複屈折C−補償膜の補償値を変更して大きい視野角における暗状態の光漏れ現象を減少させ、本発明は効果的に大きい視野角(非水平、垂直方位角の大きい視野角)のコントラストと鮮鋭度を増大させることができる。
【0012】
本発明の上述の内容を更にわかりやすくするため、下記では好ましい実施例と図面を用いて、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、従来技術のA−PlateとC−Plateの補償値を用いて補償された暗状態の光漏れにおける等輝度分布を示す図である。
図2図2は、従来技術のA−PlateとC−Plateの補償値を用いて補償した後の全視野角の同じコントラストの分布を示す図である。
図3図3は、本発明の液晶ディスプレイの第1の好ましい実施例の構造を示す図である。
図4図4は、本発明の液晶ディスプレイの第2の好ましい実施例の構造を示す図である。
図5図5は、本発明の液晶ディスプレイの第3の好ましい実施例の構造を示す図である。
図6図6は、本発明の液晶ディスプレイの第4の好ましい実施例の構造を示す図である。
図7図7は、液晶ディスプレイのシミュレーションで光漏れ量の遅延値に伴う変化曲線を示す図である。
図8図8は、液晶ディスプレイのシミュレーションで光漏れ量の遅延値に伴う変化曲線を示す図である。
図9図9は、A−PlateとC−Plateの本発明の1実施例における補償値を使用した後の暗状態の光漏れにおける等輝度分布を示す図である。
図10図10は、A−PlateとC−Plateの本発明の1実施例における補償値を使用した後の全視野角の同じコントラストの分布を示す図である。
図11図11は、A−PlateとC−Plateの本発明の他の1実施例における補償値を使用した後の暗状態の光漏れにおける等輝度分布を示す図である。
図12図12は、A−PlateとC−Plateの本発明の他の1実施例における補償値を使用した後の全視野角の同じコントラストの分布を示す図である。
図13図13は、A−PlateとC−Plateの本発明の他の1実施例における補償値を使用した後の暗状態の光漏れにおける等輝度分布を示す図である。
図14図14は、A−PlateCとPlateの本発明の他の1実施例における補償値を使用した後の全視野角の同じコントラストの分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下は、図面を参照しながら、本発明で実施可能な所定の実施例を説明する。本発明で言及する方向の用語、例えば「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「内」、「外」、「側面」などは、図面での方向を基準にしている。そのため、使用された方向の用語は本発明を説明、理解するためであり、本発明を制限するものではない。図面で、構造の類似するユニットは同じ符号を用いて表示している。
【0015】
図3は、本発明の実施例の液晶ディスプレイの第1の好ましい実施例の構造を示す図である。
【0016】
本発明の実施例における前記液晶ディスプレイは垂直配向(Vertical Alignment、VA)の液晶ディスプレイが好ましく、前記液晶ディスプレイは波長範囲が可視光線(380nm、760nm)の区間にあり、好ましくは550nmであり、前記液晶ディスプレイの550nmでの液晶リターデーションLC△NDの範囲が324.3nm≦LC△ND≦342.8nm、即ち、区間[324.3nm、342.8nm]であり、液晶のプレチルト角Pretilt angleの範囲は85°≦Pretilt angle<90°、即ち、区間[85°、90°]である。
【0017】
図3に示される第1の実施例では、前記液晶ディスプレイは、第1基板31、第2基板32、液晶層33、第1偏光膜34、第2偏光膜35を含み、正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37を更に含む。前記液晶層33は前記第1基板31と第2基板32の間に設けられ、前記第1偏光膜34は前記第1基板31の外側に設けられ、前記第2偏光膜35は前記第2基板32の外側に設けられている。
【0018】
具体的な実施では、前記正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37は、前記液晶層の相異なる両側に設けられ、かつ前記第1基板31と前記第1偏光膜34または第2基板32と第2偏光膜35の間に設けられてもよい。
【0019】
図3に示す第1の好ましい実施例では、前記正の単軸複屈折A−補償膜36は前記第1基板31と前記第1偏光膜34の間に設けられ、前記負の単軸複屈折C−補償膜37は前記第2基板32と第2偏光膜35の間に設けられている。
【0020】
図4に示す第2の好ましい実施例では、前記正の単軸複屈折A−補償膜36は前記第2基板32と第2偏光膜35の間に設けられ、前記負の単軸複屈折C−補償膜37は前記第1基板31と前記第1偏光膜34の間に設けられている。
【0021】
もちろん、他のいくつかの実施例では、前記正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37は、前記液晶層の同じ側に設けられ、かつ前記第1基板31と前記第1偏光膜34または第2基板32と第2偏光膜35の間に設けられてもよい。
【0022】
図5に示す第3の好ましい実施例では、前記正の単軸複屈折A−補償膜36と前記負の単軸複屈折C−補償膜37は、貼り合わせて連結され、かつ前記第1基板31と前記第1偏光膜34の間に設けられている。
【0023】
図6に示す第4の好ましい実施例では、前記正の単軸複屈折A−補償膜36と前記負の単軸複屈折C−補償膜37は、貼り合わせて連結され、かつ前記第2基板32と前記第2偏光膜35の間に設けられている。
【0024】
前記液晶ディスプレイの好ましい実施例では、前記第1偏光膜34の吸収軸は0度であり、前記第2偏光膜35の吸収軸は90度である。いくつかの他の実施例では、前記第1偏光膜34の吸収軸は90度であり、かつ前記第2偏光膜35の吸収軸は0度であるとき、前記正の単軸複屈折A−補償膜36または負の単軸複屈折C−補償膜37の遅軸がその液晶層33の同じ側での偏光膜(第1偏光膜34または第2偏光膜35)の吸収軸と垂直になるように保証されれば、本発明に適用される。
【0025】
さらに、本発明は異なる正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値を設けて暗状態の光漏れ現状をシミュレーションし、かつシミュレーション結果に基づいて暗状態の光漏れの対応する補償値の範囲を取得する。
【0026】
好ましい補償効果を得るために、シミュレーション過程では、まず、前記正の単軸複屈折A−補償膜36と前記負の単軸複屈折C−補償膜37の遅軸と、その対応する偏光膜の吸収軸と、が成す角度を90°に設定し、かつ前記液晶ディスプレイの液晶プレチルト角を[85°、90°]の範囲に設定し、4つの象限内の液晶方位角pretwistを45°に設定し、液晶リターデーションLC△NDを[324.3nm、342.8nm]の区間に設定し、かつシミュレーションで用いる光源はブルーレイ−YAG(Yttrium Aluminum Garnet)LEDスペクトルであり、その中央の輝度を100nitにし、光源はランベルト(Lambert)分布になっている。
【0027】
シミュレーション結果は、図7図8に示す光漏れ量の遅延値に伴う変化曲線により示されており、図7は、液晶リターデーションLC△NDは342.3nmであり、プレチルト角が89°と85°であるとき、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内遅延Roと厚さ方向の遅延Rth、負の単軸複屈折C−補償膜37の厚さ方向の遅延Rthが異なる値を有する際の光漏れ量における変化曲線を示しており、図8は、液晶リターデーションLC△NDは342.8nmであり、プレチルト角が89°と85°であるとき、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内遅延Roと厚さ方向の遅延Rth、負の単軸複屈折C−補償膜37の厚さ方向の遅延Rthが異なる値を有する際の光漏れ量における変化曲線を示している。図7図8のA−Plate Roは、正の単軸複屈折A−補償膜36の面内遅延Roを示し、A−Plate Rthは、正の単軸複屈折A−補償膜36の厚さ方向の遅延Rthを示し、C−Plate Rthは、負の単軸複屈折C−補償膜37の厚さ方向の遅延Rthを示す。
【0028】
上述の前記シミュレーションでは、異なるプレチルト角では、前記正の単軸複屈折A−補償膜36と前記負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値は暗状態の光漏れ現状に対する影響傾向は一致し、異なるプレチルト角でも、暗状態の光漏れが最小の場合、対応する補償値の範囲が同じで、かつシミュレーション結果に基づいて液晶リターデーションLC△NDが[324.3nm、342.8nm]、プレチルト角が[85°、90°]、暗状態の光漏れが0.2nitより小さい場合(プレチルト角=89°の場合にシミュレーションした暗状態の光漏れ値、非実測値)、対応する正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37の遅延値の範囲は下記の通りである。
前記正の単軸複屈折A−補償膜36の波長550nmでの面内リターデーションの補償値Roの値の範囲は、92nm≦Ro≦184nmであり,面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲は、46nm≦Rth≦92nmであり、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値Rthの値の範囲は、Y1≦Rth≦Y2であり、
ここで、Y1、Y2は下記の式(1)と(2)を満たし、
Y1=0.0000826x−0.022868x+2.4074x−114.326x+2251.5 (1)、
Y2=−0.00006472x+0.017705x−1.8284x+84.4843x−1181.17 (2)
、式(1)と(2)におけるXは、前記正の単軸複屈折A−補償膜の面外リターデーションの補償値Rthである。
【0029】
下記の表に前記補償値の範囲を示す。

具体的に、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内リターデーションの補償値Roと面外リターデーションの補償値Rthの範囲は式(3)と(4)の調整により得られる。
Ro=(Nx−Ny)*d1 (3)
Rth=[(Nx+Ny)/2−Nz]*d1 (4)
ここで、Nxは前記正の単軸複屈折A−補償膜の36面内の提供する最大屈折率のX方向の屈折率であり、Nyは前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内とX方向の直交するY方向の屈折率であり、Nzは前記正の単軸複屈折A−補償膜36の厚さ方向の屈折率であり、d1は前記正の単軸複屈折A−補償膜36の厚さであり、かつNx>Ny、Ny=Nzである。
【0030】
前記負の単軸複屈折C−補償膜の補償値Rthの範囲は下記の式(5)の調整により得られる。
Rth=[(Mx+My)/2−Mz]*d2 (5)
ここで、Mxは負の単軸複屈折C−補償膜37の面内の提供する最大屈折率のX方向の屈折率であり、Myは負の単軸複屈折C−補償膜37の面内とX方向の直交するY方向の屈折率であり、Mzは負の単軸複屈折C−補償膜37の厚さ方向の屈折率であり、d2は負の単軸複屈折C−補償膜37の厚さであり、かつMx=My、My>Mzである。
【0031】
下記の3つの実施例A、B、Cを用いて、前記式(3)、(4)と(5)に基づいて正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37を調整する方法を詳しく説明する。
【0032】
(A)、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の屈折率がNx、Ny、Nzの値である場合、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の厚さd1を調整し、式(3)と(4)に基づいて、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲が92nm≦Ro≦184nmになるように調整し、その面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲を46nm≦Rth≦92nmに調整する。
前記負の単軸複屈折C−補償膜37の屈折率がMx、My、Mzの値である場合、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の厚さd2を調整し、式(5)に基づいて、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値Rthの値の範囲をY1≦Rth≦Y2に調整する。
【0033】
(B)、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の厚さd1の場合、式(3)と(4)に基づいて、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の屈折率Nx、Ny、Nzを調整し、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲を92nm≦Ro≦184nmに調整し、その面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲を46nm≦Rth≦92nmに調整する。
前記負の単軸複屈折C−補償膜37の厚さd2の場合、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の屈折率Mx、My、Mzを調整し、式(5)に基づいて、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値Rthの値の範囲をY1≦Rth≦Y2に調整する。
【0034】
(C)、まず、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の屈折率Nx、Ny、Nzと厚さd1を同時に調整し、式(3)と(4)に基づいて、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲を92nm≦Ro≦184nmに調整し、その面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲を46nm≦Rth≦92nmに調整し、その後、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の屈折率Mx、My、Mzと厚さd2を同時に調整し、式(5)に基づいて、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値Rthの値の範囲をY1≦Rth≦Y2に調整する。
【0035】
下記では、3つの具体的な実施例1)、2)と3)を用いて本発明の技術的効果を説明する。
1)、液晶リターデーションLC△ND=333.5nm、プレチルト角が89°、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の補償値Ro=144nm、Rth=72nm、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値Rth=195nm、図9に示す前記補償値の対応する暗状態の光漏れにおける等輝度分布、図10に示す対応する全視野角の同じコントラスト分布において、前記補償値を下記の表に示す。

【0036】
2)、液晶リターデーションLC△ND=333.5nm、プレチルト角が89°、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の補償値Ro=144nm、Rth=72nm、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値Rth=230nm、図11に示す前記補償値の対応する暗状態の光漏れにおける等輝度分布、図12に示す対応する全視野角の同じコントラスト分布において、前記補償値を下記の表に示す。

【0037】
3)、液晶リターデーションLC△ND=333.5nm、プレチルト角が89°、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の補償値Ro=144nm、Rth=72nm、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値Rth=282nm、図13に示す前記補償値の対応する暗状態の光漏れにおける等輝度分布、図14に示す対応する全視野角の同じコントラスト分布において、前記補償値を下記の表に示す。

【0038】
本発明の実施例の補償値の暗状態の光漏れにおける等輝度分布の効果における図9、11、13と従来技術の効果における図1を比較すると、本発明の実施例の補償値の正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37を用いて補償した後の暗状態の光漏れの最大値は0.2以内に低減されて、従来技術の1.89よりはるかに低くなることがわかった。
【0039】
本発明の実施例の補償値の全視野角の同一コントラストの効果における図10、12、14と従来技術の効果における図2を比較すると、本発明の実施例の補償値の正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37を用いて補償した後の全視野角のコントラスト分布は、従来技術の全視野角のコントラスト分布より優れていたことがわかった。これにより、本発明は従来技術でA−plateとC−plateを使用した補償値による暗状態の光漏れ現象が激しい問題を改善し、効果的に大きい視野角(非水平垂直方位角)のコントラストと鮮鋭度を高めている。
【0040】
本発明は液晶ディスプレイを用いる光学補償方法を更に提供し、該方法はVA液晶ディスプレイを用い、かつ前記液晶ディスプレイは波長範囲が可視光線(380nm、760nm)の区間であり、好ましくは550nmであり、前記液晶ディスプレイの波長550nmでの液晶リターデーションLC△ND範囲が[324.3nm、342.8nm]であり、その液晶のプレチルト角の範囲は[85°、90°]である。図3図4に示すように、前記液晶ディスプレイは、正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37を含み、前記正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37は、前記液晶層33の相異なる両側に設けられ、かつ前記第1基板31と前記第1偏光膜34または第2基板32と第2偏光膜35の間に設けられている。図5図6に示すように、前記正の単軸複屈折A−補償膜36と負の単軸複屈折C−補償膜37は、前記液晶層33の同じ側に設けられ、かつ前記第1基板31と前記第1偏光膜34または第2基板32と第2偏光膜35の間に設けられている。
【0041】
本発明の実施例の液晶ディスプレイの光学補償方法は下記を含む。
(1)、正の単軸複屈折A−補償膜36の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲を92nm≦Ro≦184nmに調整する。
【0042】
(2)、正の単軸複屈折A−補償膜36の面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲を46nm≦Rth≦92nmに調整する。
【0043】
(3)、負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値Rthの値の範囲をY1≦Rth≦Y2に調整し、ここで、
Y1=0.0000826x−0.022868x+2.4074x−114.326x+2251.5、
Y2=−0.00006472x+0.017705x−1.8284x+84.4843x−1181.17、
Xは正の単軸複屈折A−補償膜36の面外リターデーションの補償値Rthである。
ここで説明するべきは、前記手順(1)、(2)と(3)は、行う順番が決まっていない。
具体的な実施では、前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内リターデーションの補償値Roの値の範囲を92nm≦Ro≦184nmに調整し、かつ前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面外リターデーションの補償値Rthの値の範囲を46nm≦Rth≦92nmに調整し、その調整は下記の式により行われる。
Ro=(Nx−Ny)*d1、
Rth=[(Nx+Ny)/2−Nz]*d1、
ここで、Nxは前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内の提供する最大屈折率のX方向の屈折率であり、Nyは前記正の単軸複屈折A−補償膜36の面内とX方向の直交するY方向の屈折率であり、Nzは前記正の単軸複屈折A−補償膜36の厚さ方向の屈折率であり、d1は前記正の単軸複屈折A−補償膜36の厚さであり、かつNx>Ny、Ny=Nzである。
【0044】
具体的な実施では、前記負の単軸複屈折C−補償膜37の補償値Rthの値の範囲をY1≦Rth≦Y2に調整、その調整は下記の式により行われる。
Rth=[(Mx+My)/2−Mz]*d2、
ここで、Mxは負の単軸複屈折C−補償膜37の面内の提供する最大屈折率のX方向の屈折率であり、Myは負の単軸複屈折C−補償膜の面内とX方向の直交するY方向の屈折率であり、Mzは負の単軸複屈折C−補償膜37の厚さ方向の屈折率であり、d2は負の単軸複屈折C−補償膜37の厚さであり、かつMx=My、My>Mzである。
【0045】
具体的に補償値を調整する過程は、上述した液晶ディスプレイに対する説明を参照し、ここでは更に説明しない。
本発明の実施例は主に、該液晶ディスプレイにおいて、波長550nm、液晶リターデーションLC△ND[324.3nm、342.8nm]、液晶のプレチルト角の範囲[85°、90°]の2種類の光学の補償膜に対して説明する。正の単軸複屈折A−補償膜と負の単軸複屈折C−補償膜は、前記2種類の補償膜の補償値を調整して、大きい視野角の暗状態の光漏れ現象を減少させて、本発明により効果的に大きい視野角(非水平、垂直方位角の大きい視野角)のコントラストと鮮鋭度を高めている。
【0046】
上述したように、本発明はすでに実施例を用いて説明したが、好ましい前記実施例は本発明を制限するものではなく、当業者にとって、本発明の精神と範囲から離れない前提で、いろんな変更と修飾を行うことができるため、本発明の保護範囲は特許請求の範囲を準ずる。
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