(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266786
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ケースに取付けられたバッテリを有する埋込み可能な医療装置用の構造
(51)【国際特許分類】
A61N 1/375 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
A61N1/375
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-540288(P2016-540288)
(86)(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公表番号】特表2016-530964(P2016-530964A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】US2014053305
(87)【国際公開番号】WO2015034763
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2016年3月7日
(31)【優先権主張番号】61/874,197
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/469,872
(32)【優先日】2014年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507213592
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック ニューロモデュレイション コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】バニヤン ナヴィン エヌ
(72)【発明者】
【氏名】トン ロバート アール
(72)【発明者】
【氏名】ハンプトン カート ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ファンダーバーク ジェフリー
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0082977(US,A1)
【文献】
米国特許第04399819(US,A)
【文献】
国際公開第2013/119439(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0018600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/375
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込み可能な医療装置であって、
ケースと、
前記ケース内に配置された支持構造部と、
前記ケース内に配置され、埋込み可能な医療装置の機能を実行するように構成された回路と、
前記ケース内に配置され、前記回路に電気的に結合され、前記支持構造部に固定されたバッテリと、
前記バッテリの少なくとも一部分を包囲し、少なくとも1つの孔を有する絶縁スリーブと、
前記少なくとも1つの孔を介して前記バッテリを前記ケースに取付ける第1の接着剤と、を有し、
前記バッテリは、前記絶縁スリーブ及び前記第1の接着剤によって前記ケースから電気的に絶縁される、埋込み可能な医療装置。
【請求項2】
前記バッテリは、一次バッテリを含む、請求項1に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項3】
前記絶縁スリーブは、前記バッテリの上を滑るように構成されたプラスチックスリーブを含む、請求項1又は2に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項4】
前記第1の接着剤は、のりを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項5】
前記バッテリは、前記バッテリのバッテリ端子面のところで前記支持構造部に取付けられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項6】
前記支持構造部は、前記第1の接着剤を用いて前記ケースに取付けられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項7】
前記ケースは、互いに平行な第1の側面及び第2の側面を含み、前記バッテリ及び前記支持構造部は、前記第1の側面のみに取付けられる、請求項6に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項8】
前記回路は、前記支持構造部に取付けられた回路基板を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項9】
更に、前記支持構造部に取付けられたアンテナを有し、前記アンテナは、前記回路基板に電気的に結合され、通信コイル、充電コイル、又は通信及び充電組合せコイルを含む、請求項8に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項10】
前記アンテナと前記回路基板は互いに平行であり、前記支持構造部の両側に配置される、請求項9に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項11】
前記バッテリは、前記バッテリのバッテリ端子面のところで前記支持構造部に取付けられ、前記バッテリ端子面は、前記アンテナ及び前記回路基板に対して垂直である、請求項10に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項12】
前記バッテリは、前記ケース内の第1の領域を占め、前記支持構造部、前記回路基板及び前記アンテナは一緒に、前記ケース内の第2の領域を占め、前記第1の領域及び前記第2の領域は重なり合わない、請求項9〜11のいずれか1項に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項13】
前記バッテリは、第1の厚さを有し、前記支持構造部、前記回路基板及び前記アンテナは一緒になって第2の厚さを有し、前記第2の厚さは、前記第1の厚さと等しい又は前記第1の厚さ未満である、請求項12に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項14】
更に、前記ケースを貫通する複数の貫通ピンを有し、前記貫通ピンは、前記回路に電気的に結合され、前記支持構造部は、前記複数の貫通ピンを収容する側壁間隙を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の埋込み可能な医療装置。
【請求項15】
更に、前記ケースの外部に配置された少なくとも1つのリードコネクタを有し、前記少なくとも1つのリードコネクタは、複数の電極接点を含み、前記貫通ピンは、前記電極接点に電気的に結合される、請求項14に記載の埋込み可能な医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2013年9月5日に出願された「内部支持構造部を用いた埋込み可能な医療装置の組立て」という名称の米国仮特許出願第61/874,194号に関連する。
【0002】
本発明は、埋込み可能な医療装置に関し、具体的には、埋込み可能な医療装置の改善された設計及び組立て方法に関する。
【背景技術】
【0003】
埋込み可能な刺激装置は、様々な生物学的疾患を治療するための電気刺激を体内神経及び組織に送出し、不整脈を治療するペースメーカ、心細動を治療する除細動器、難聴を治療する蝸牛刺激器、盲目を治療する網膜刺激器、協調四肢運動を引き起こす筋肉刺激器、慢性疼痛を治療する脊髄刺激器、運動障害及び精神障害を治療する脳皮質及び脳深部刺激器、及び尿失禁、睡眠時無呼吸、肩亜脱臼などを治療するその他の神経刺激器などがある。以下の説明は、一般に、米国特許第6,516,227号に開示されているような脊髄刺激(SCS)システムにおいて本発明を使用することに焦点を当てたものである。しかしながら、本発明は、あらゆる埋込み可能な医療装置又はあらゆる埋込み可能な医療装置システムと共に応用することができる。
【0004】
通常、脊髄刺激(SCS)システムは、例えばチタンなどの導電材料で形成された生体適合性装置ケースを有する埋込み可能なパルス発生器(IPG)を含む。通常、このケースは、埋込み可能なパルス発生器(IPG)の回路、及び回路に電力を供給するバッテリを保持する。バッテリは、埋込み可能なパルス発生器(IPG)を使用する患者の特定のニーズ及び状況に応じて、充電式とすることも、又は非充電式一次バッテリとすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,516,227号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの埋込み可能なパルス発生器(IPG)は、充電式バッテリを使用するが、一次バッテリの使用が有利となり得る状況もある。一次バッテリは、充電電流を流しても電気化学反応が逆にならないバッテリであり、従って非充電式である。一次バッテリは、一方又は両方の電極の材料を使い尽くし、従って寿命が限られているが、通常は充電式バッテリよりも安価であり、同じ信頼性問題を生じない。従って、例えば一次バッテリの予想寿命が患者の余命を超えると予想される場合、或いは身体的又は精神的制約のある患者がバッテリを上手く充電できない状況などの適切な場合には、埋込み可能な医療装置において一次バッテリを使用することが好ましい。しかしながら、一般に一次バッテリは充電式バッテリよりもサイズが大きく、埋込み可能なパルス発生器(IPG)のサイズを増大させることは最適でないので、埋込み可能なパルス発生器(IPG)において一次バッテリを使用すると、埋込み可能なパルス発生器(IPG)の設計及び組立てに課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの例では、開示する埋込み可能な医療装置が、ケースと、埋込み可能な医療装置の機能を実行するように構成された、ケース内の回路(例えば、回路基板)と、支持構造部に電気的に結合された、ケース内のバッテリ(例えば、一次バッテリ)と、バッテリとケースとの間の、少なくとも1つの孔を含む絶縁体とを含む。第1の接着剤が、少なくとも1つの孔を通じてバッテリをケースに取付け、このバッテリは、絶縁体及び第1の接着剤によってケースから電気的に絶縁される。
【0008】
絶縁体は、バッテリの上を滑るように構成されたプラスチックスリーブを含むことができ、及び/又はバッテリを少なくとも部分的に包囲することができる。第1の接着剤は、のりを含む。
【0009】
埋込み可能な医療装置は、支持構造部をさらに含むことができる。バッテリは、例えばバッテリのバッテリ端子面において支持構造部に取付けることができる。支持構造部は、第1の接着剤を用いてケースに取付けることもでき、バッテリ及び支持構造部は、ケースの第1の側面のみに取付けることができる。
【0010】
埋込み可能な医療装置は、支持構造部に取付けられて回路に電気的に結合されたアンテナをさらに含むことができ、このアンテナは、通信コイル、充電コイル、又は通信コイルと充電コイルとの組合せを含むことができる。アンテナと回路基板は平行であって支持構造部の両側に存在することができ、支持構造部に取付けられたバッテリのバッテリ端子面は、アンテナ及び回路基板に垂直になる。
【0011】
バッテリは、ケース内の第1の領域を占めることができ、支持構造部、回路基板及びアンテナの組合せは、共にケースの重複しない第2の領域を占める。バッテリは、第1の厚さを有することができ、支持構造部、回路基板及びアンテナの組合せは、共に第1の厚さと同等又はそれ未満の第2の厚さを有する。
【0012】
埋込み可能な医療装置は、ケースを貫通する複数の貫通ピンをさらに含むことができ、ケース内では、貫通ピンが回路に電気的に結合され、支持構造部が、複数の貫通ピンを収容する側壁間隙を含む。ケースに外付けされた、複数の電極接点を含む少なくとも1つのリードコネクタを含めることもでき、貫通ピンは、電極接点に電気的に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】改善された埋込み可能なパルス発生器(IPG)、及びIPGに電極リードを取付ける方法を示す図である。
【
図2】改善された埋込み可能なパルス発生器(IPG)のケースを省略した底面図及び平面図である。
【
図3】改善された埋込み可能なパルス発生器(IPG)のケースを省略した底面斜視図及び上面斜視図である。
【
図4A】改善された埋込み可能なパルス発生器(IPG)の構成要素の底面分解斜視図である。
【
図4B】改善された埋込み可能なパルス発生器(IPG)の構成要素を示す上面分解斜視図である。
【
図5】改善された埋込み可能なパルス発生器(IPG)において使用する支持構造部の底面斜視図及び上面斜視図である。
【
図6A】改善された埋込み可能なパルス発生器(IPG)のサブアセンブリの1つの組立て段階における平面図である。
【
図6B】改善された埋込み可能なパルス発生器(IPG)のサブアセンブリの1つの組立て段階における断面図である。
【
図7】別の組立て段階における、サブアセンブリ内のバッテリ上のバッテリカバーの位置を示す図である。
【
図8】別の組立て段階における、サブアセンブリ内の接着孔の位置に対応する埋込み可能なパルス発生器(IPG)ケース部分上の接着剤液滴の配置を示す図である。
【
図9】別の組立て段階における、接着剤液滴を用いてサブアセンブリをケース部分に取付け、サブアセンブリを埋込み可能なパルス発生器(IPG)ケースで包囲する様子を示す図である。
【
図10A-10B】
図10Aは、完成した埋込み可能なパルス発生器(IPG)の断面図であり、
図10Bは、接着剤液滴がバッテリ及び支持構造部をケースに接着する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、埋込み可能な医療装置の改善された設計及び組立て方法を提供し、特に大型の一次バッテリを有する埋込み可能な医療装置を提供する。しかしながら、この設計及び組立て方法は、一次バッテリを用いた埋込み可能な医療装置に限定されるものではなく、充電式バッテリ埋込み可能なパルス発生器(IPG)にも使用することができる。この改善された設計は、組立てが容易であり、機械的に強固であり、使用する部品が少ない。
【0015】
図1に、埋込み可能なパルス発生器(IPG)10を有する脊髄刺激(SCS)システムを示す。埋込み可能なパルス発生器(IPG)10は、埋込み可能なパルス発生器(IPG)が機能するために必要な回路及びバッテリ34(
図2)を保持する生体適合性装置ケース30を含む。埋込み可能なパルス発生器(IPG)10は、電極アレイ12を形成する1又は2以上の電極リード14を介して電極16に結合される。電極16は、可撓性の本体18上に存在し、可撓性の本体18は、各電極に結合された個々の信号線20も収容する。信号線20は、例えばエポキシを含むことができる、ヘッダ28内に固定された1又は2以上のリードコネクタ24において埋込み可能なパルス発生器(IPG)10に接続される。図示の実施形態では、2つのリード14に分割された16個の電極が存在するが、リード及び電極の数は用途固有のものであり、従って様々とすることができる。脊髄刺激(SCS)用途では、通常、患者の脊髄内の硬膜の右側及び左側に電極リード14を埋込む。次に、患者の皮膚内を通じて、リード14の近位端22を埋込み可能なパルス発生器(IPG)ケース30が埋込まれた臀部などの遠位位置に通し、この地点でリードコネクタ24に結合する。
【0016】
図2、
図3、
図4A及び
図4Bは、改善された埋込み可能なパルス発生器(IPG)10の底部側(通信コイル40に近い側)及び上部側(プリント基板(PCB)42に近い側)の様々な斜視図である。
図2及び
図3では、いくつかの内部構成要素を確認できるように、図示の例では2つのケース部分30a及び30bとして形成されているケース30を取除いており、以下、埋込み可能なパルス発生器(IPG)10の組立てについて説明する前にこれらの内部構成要素の一部を紹介する。
【0017】
図示のように、ケース30の内部空間の大部分は、この例では恒久的非無線充電式バッテリであるバッテリ34によって占められる。ケース30内の残りの空間は、支持構造部38と、この例ではコイルを含む通信アンテナ40と、プリント回路基板(PCB)42とによって多くが占められる。通信コイル40は、埋込み可能なパルス発生器(IPG)10と患者の外部の装置(図示せず)との間の通信を可能にし、従って磁気誘導による双方向通信の発生を可能にする。プリント回路基板(PCB)42は、埋込み可能な医療装置の機能を実行するように構成された回路を含む。後述するように、リードコネクタ24は、ヘッダ28を埋込み可能なパルス発生器(IPG)10に固定する前に最終的にケース30に溶接される貫通部32を貫通する貫通ピン48によってプリント回路基板(PCB)42に結合される。ヘッダ内の縫合孔41及び43は、手術中に患者の身体に埋込み可能なパルス発生器(IPG)を縫合するために使用される。
【0018】
埋込み可能なパルス発生器(IPG)10の組立てについて、
図5の底部斜視図及び上部斜視図に示す支持構造部38の説明から開始する。支持構造部38は、埋込み可能なパルス発生器(IPG)10に多くの利点をもたらす。支持構造部38は、コイル40及びプリント回路基板(PCB)42の両方を受入れ、保持し、保護する単一部品で構成される。支持構造部38には、コイル40、プリント回路基板(PCB)42及びバッテリ34が取付けられ、支持構造部38は、これらの構成要素の接続部を一体化して、衝撃及び振動に耐える機械的に強固な埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92(
図6A)をもたらす。支持構造部38は、コイル40とプリント回路基板(PCB)42(後述するコイルピン44を除く)との間、バッテリ34(特にバッテリ34の正端子46a)とコイル40、プリント回路基板(PCB)42又は貫通ピン48との間、及び貫通ピン48とコイル40との間の電気的分離も行い、従ってこれらの構成要素の望ましくない短絡を防ぐ。
【0019】
また、支持構造部38は、1又は2以上のケース接触面76に少なくとも1つの接着孔60を提供して、支持構造部38、従って既に強固である埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92をケース30に接着できるようにもする。後述するように、埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92は、さらにバッテリ34によってケース30に接着することもできる。
【0020】
支持構造部38は、コイル40が取付けられる凹部74を含む。コイル40は、事前にボビン(図示せず)に巻回される。以下で詳細に説明するように、コイル40は、埋込み可能なパルス発生器(IPG)10を組立てた時点で、コイル40を保護してケース30からオフセットさせるために支持構造部38のケース接触面76よりも凹んでいることが好ましい。コイル40の端部は、支持構造部38の底部側のコイルピン44にはんだ付けされ、このコイルピン44は、組立て中に支持構造部38を貫通して支持構造部38内に成形されることが好ましい。組立て工程の後半には、コイルピン44の他方(上部)側を支持構造部38の上部側のプリント回路基板(PCB)42にはんだ付けして、変調回路及び/又は復調回路などのプリント回路基板(PCB)42上の電子部品にコイルを電気的に結合する。コイル40は、エポキシ又はその他の接着剤を用いて凹部74内にさらに取付けることができる。図示のように、コイル40は、貫通ピン48から電気的に分離されるようにテープ72で覆い、組立て中の後半で支持構造部38の側壁80の間隙84内に配置することができる。
【0021】
後述するように、支持構造部38は、コイル40及びその他の構造に対するコイルピン44のはんだ付けに耐えられる高融点材料で作製されることが好ましい。また、支持構造部38の材料は、機械的な堅牢性を与えるように機械的に剛性であることが好ましく、埋込み可能な医療装置における電気部品との使用に適合する低水分含量を有するべきである。1つの実施形態では、材料が液晶高分子(LCP)を含む。
【0022】
図5では、上述した利点のいくつかを提供する支持構造部38の複数の特徴が顕著である。例えば、支持構造部38の上面は、組立ての後半で支持構造部38に取付けられるプリント回路基板(PCB)42の支持及び位置決めを支援する支持リブ86及び取付けピン88を含む。支持構造部38は、プリント回路基板(PCB)42上の背の高い構成要素のための空間を提供するキャビティ78も含む。キャビティ78は、コイル40のための凹部74を定める役にも立ち、上述したように支持構造部を埋込み可能なパルス発生器(IPG)のケース30に接着する際に有用な、支持構造部38の底部側に接着孔60を有する2つのケース接触面76を提供する。支持構造部38の側壁80は、ここでも凹部74を定めてコイル40を分離する役に立ち、後述するようにバッテリ34が取付けられる部分82をさらに含む。側壁の分離構造部90及び間隙83は、組立て中の後半にバッテリ34の正端子46a及び負端子46bを収容する。支持構造部38の底部には、ジグ取付け孔106を確認することもでき、この機能については後述する。
【0023】
支持構造部38の形成後には、例えば支持構造部38、プリント回路基板(PCB)42、バッテリ34及びリードコネクタサブアセンブリ95(後述)などの埋込み可能なパルス発生器(IPG)10の様々な要素を電気的及び機械的に取付けて、
図6A及び
図6Bの平面図及び断面図に示すような埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92を形成することができる。
【0024】
組立ては、バッテリ34のバッテリ端子(
図4A及び
図4B)を含む面57に両面テープ58を接着することによって開始する。両面テープ58の他方側は、支持構造部38の側壁部分82に接着する。上述したように、支持構造部38は、コイルピン44に予めはんだ付けされたコイル40を予め含んでいることが好ましいが、コイルは、この時点で支持構造部に取付けることも、或いは後で構成要素をプリント回路基板(PCB)42にはんだ付けする際などの組立て中の後半に支持構造部に取付けることもできる。支持構造部38の底部上のケース接触面76及びバッテリ34の底面は平らであることが好ましいので、支持構造部38及びバッテリ34は、共に平面上でスライドさせることによって両面テープ58で取付けることができる。両面テープ58を用いてバッテリ34を支持構造部38に取付けることは必須ではなく、のり又はその他の接着剤を使用することもできる。
【0025】
バッテリ34の端子46a及び46bは、バッテリ34の平らなバッテリ端子面に対して90度曲げられ、従ってこの時点では
図5の平面図で最も良く分かるように上を向いている。
図5では、負端子46bが支持構造部38の側壁80の間隙83を貫通し、バッテリ34の正端子46aが、支持構造部38内に形成された分離構造部90によって少なくとも部分的に取り囲まれている。従って、支持構造部38は、他の機能に加え、正のバッテリ端子46aを負のバッテリ端子46b、並びにコイル40及びプリント回路基板(PCB)42などの埋込み可能なパルス発生器(IPG)10の他の構成要素への短絡から分離する役割も果たす。分離構造部90は、様々な方法で作製することができる。分離構造部90を用いて負のバッテリ端子46bを分離することもできる。
【0026】
次に、
図6Bに示すように、受入れる要素の形状に一致する凹部を有する組立てジグ94内に、組合せた支持構造部38とバッテリ34を配置し、組立て中にこれらの要素を位置合わせして保持する。図示のように、ジグ94は、支持構造部38の底部側のジグ取付け孔106に嵌合して、組合せた支持構造部38とバッテリ34をジグ94内に固定して保持できるように設計された取付け部98を有する。ジグ94を用いた他の支持手段を使用することもできる。
【0027】
次に、ジグ94内にリードコネクタサブアセンブリ95を配置する。リードコネクタサブアセンブリ95は、リードコネクタ24、電極接点26、キャリア64(電極接点26を収容して支持するために使用、
図4A及び
図4Bを参照)、貫通ピン48、及び貫通部32を含み、この組立て段階よりも前に予め形成しておくことができる。例えば、リードコネクタサブアセンブリ95は、貫通ピン48を貫通部32に通し、貫通ピン48の一端をリードコネクタ24内の適切な電極接点26にはんだ付けし、(必要に応じて)貫通ピン48を貫通部32にはんだ付けして密封することによって形成することができる。(
図4Bで最も良く分かるように)貫通ピン48の自由端は、貫通部32に対して90度曲げられ、従ってジグ94内に配置された時点で上を向く。また、上述したように、貫通ピン48は、支持構造部38の側壁80の間隙84(
図5)内に位置付けられる。
【0028】
次に、支持構造部38の上部側に、予め電気部品と共に加工しておくことが好ましいプリント回路基板(PCB)42を取付ける。この点に関し、プリント回路基板(PCB)42は、コイルはんだピン孔50、バッテリ端子はんだ孔52、貫通ピンはんだ孔54、及び支持構造部取付け孔56を含み、これらに上向きコイルピン44、貫通ピン48、バッテリ端子46a及び46b、並びに支持構造部38の取付けピン88をそれぞれ通して接触させる。プリント回路基板(PCB)42は、これらの構造上に滑り込むと支持リブ86(
図5)で停止し、プリント回路基板(PCB)42が曲がらないように保持するのに適した機械的支持をもたらす。次に、コイルピン44、貫通ピン48、バッテリ端子46a及び46bを、コイルはんだピン孔50、貫通ピンはんだ孔54、及びバッテリ端子はんだ孔52それぞれにはんだ付けして、これらをプリント回路基板(PCB)42に電気的に結合する。支持リブ86、取付けピン88及びはんだ付けされた接続部を組合せた効果により、プリント回路基板(PCB)42が支持構造部38にしっかりと取付けられ保護されて埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92が完成する。図示してはいないが、プリント回路基板(PCB)42は、他の構造から電気的に分離してさらなる機械的保護を行うように、支持構造部38内に奥まって配置することもできる。
【0029】
埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92は、組立てた時点でジグ94から取除かれ、
図7に示すように、バッテリ34上にバッテリカバー68を滑らせる。バッテリカバー68は、典型的には薄いプラスチックスリーブを含み、バッテリ34のケースを、異なる電位の場合がある埋込み可能なパルス発生器(IPG)10のケース30から電気的に分離するために使用される。バッテリカバー68は、所望の電気的分離を行いながらバッテリ34をケース30に接着できる少なくとも1つのバッテリカバー接着孔70を含む。
【0030】
バッテリカバー68は、バッテリ34を完全に包囲することもできるが、図示のようにバッテリ34を部分的にしか包囲せず、バッテリ34のバッテリ端子面57以外の全ての表面を保護する。しかしながら、バッテリカバー68は限定ではなく、他の絶縁体を使用することもできる。例えば、バッテリ34のケース上に絶縁コーティングを施し、必要に応じてコーティング内に接着孔70を形成するようにマスキングすることもできる。或いは、バッテリ34のケースと埋込み可能なパルス発生器(IPG)ケース30とが接触する場合、又は接触しそうな場合には、これらの間に介在する絶縁層又は絶縁シートを使用することもできる。
図10A及び
図10Bに関してさらに後述するように、バッテリ34はケース30の底部側に取付けられ、バッテリとケースの上部側との間には空隙「x」が存在し、従ってこの空隙によってバッテリ34とケース30が短絡する可能性が低いという理由でこちら側には絶縁体が必要ないので、この代替の単一の絶縁層又は絶縁シートの使用は、埋込み可能なパルス発生器(IPG)10において使用する良好な選択肢である。バッテリカバー68又はその他の絶縁体が、コイル40及びプリント回路基板(PCB)42が取付けられた支持構造部などの埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92の他の部分を保護して、やはりこれらの構造がケース30に短絡するのを防ぐこともできる。
【0031】
図8に示すように、支持構造部38の支持接着孔60及びバッテリカバー68のバッテリカバー接着孔70の位置に対応する底部ケース部分30bの内側の複数箇所には、接着剤液滴96が配置される。
図9に示すように、埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92を底部ケース部分30b内に位置付けることにより、
図10Bに関して後述するように、接着剤液滴96は、バッテリカバー68の接着孔70に浸透してバッテリ34に接触し、支持構造部38の接着孔60に浸透するようにする。或いは、接着剤液滴96を、埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92上の孔60及び70の位置に配置し、その後に底部ケース部分30b内に位置付けることもできる。本出願に適した接着剤液滴96は、NuSil(登録商標)Med3−4213シリコンを含むが、他のタイプののり又は他の接着剤を使用することもできる。例えば、接着剤液滴96の代わりに両面テープを使用することもできる。この段階で使用する接着剤は、バッテリ34を支持構造部38に取付けるために使用するものと同じ接着剤(58)を含むことができる。
【0032】
図9にさらに示すように、接着剤液滴92を介して埋込み可能なパルス発生器(IPG)サブアセンブリ92を底部ケース部分30bに取付けた後には、埋込み可能なパルス発生器(IPG)アセンブリ92の少なくとも一部(ただしリードコネクタサブアセンブリ95は除く)をケース部分30a及び30b内に包囲し、ケース部分30a及び30bの切欠き部62a及び62b(
図4A及び
図4B)が貫通部32に合致するように上部ケース部分30aを位置付ける。(なお、ケースを正しく位置合わせする援助としてアプリケータ66(
図4A及び
図4B)が使用される)。次に、好ましくはケース部分30a及び30bを互いにレーザ溶接し、貫通部32にもレーザ溶接するが、ろう付け、或いは密封接着剤又はその他の接着剤の使用などの、他の密封方法を使用することもできる。
【0033】
上部側と底部側が平行な上部ケース部分30a及び底部ケース部分30bは必須ではなく、ケース30は、一般に「カップ」に似た一様構造を含み、この中にサブアセンブリ92を配置して取付けることもできる。このようなカップ状のケースは、平行な上部側及び底部側を有することもできる。その後、このカップの開放端に、貫通部32を含むことができるカップを溶接することができる。
【0034】
その後、ケース30のリードコネクタ24及び貫通部32の周囲に標準的な方法でエポキシヘッダ28(
図1)を取付けて密封シールを形成し、この時点で埋込み可能なパルス発生器(IPG)10の組立てが完成する。
【0035】
図10Aは、埋込み可能なパルス発生器(IPG)の設計のいくつかの態様及び利点を理解できる完全に組立てた埋込み可能なパルス発生器(IPG)10の断面図である。バッテリ34の底部側と、支持構造部38のケース接触面76とは同一平面を成し、機械的堅牢性を加えることが好ましい時には、これらの両方を底部ケース部分30bに取付ける。しかしながら、これは必須ではなく、代わりにバッテリ34及び支持構造部38の一方のみを取付けることもできる。同様に、バッテリ34の底部側と支持構造部38のケース接触面76とが同一平面を成す必要もない。なお、支持構造部38のケース接触面76は、コイルの短絡を防ぐためにコイル40を底部ケース部分30bからオフセットしている。
【0036】
図示のように、ケース30の第1の領域11aは、比較的大きな一次バッテリ34が占め、ケース30のより小さな第2の領域11bは、支持構造部38、コイル40及びプリント回路基板(PCB)42が占める。領域11a及び11bは、重なり合わないことが好ましい。このことは、支持構造部38、コイル40及びプリント回路基板(PCB)42が重なり合う場合でも、バッテリ34を薄くする必要がないので有利である。バッテリ34は、これらの構造の厚さによって制約されないので、バッテリ34の厚さをケース30の厚さとほぼ等しく(例えば15%以内)することができる。第2の領域11bでは、コイル40とプリント回路基板(PCB)42とが平行であって互いに重なり合い、ケース30の上部側及び底部側と平行であり、バッテリ34のバッテリ端子面57及び貫通部32に対して垂直である。図示のように、支持構造部38、コイル40及びプリント回路基板(PCB)42は、全てバッテリ34の厚さと同等又はそれ未満になるように作製することができ、このことも、バッテリ34がケース30の内部に有することができる厚さを制限しない。しかしながら、これは必須ではない。
【0037】
バッテリ34及び支持構造部38の上部側と上側ケース部分30aとの間には、2つのケース部分30a及び30bの溶接中にバッテリ34を熱から保護するのに有用なわずかな空隙「x」が介在する。この熱に対するさらなる保護として、
図9に最も良く示すように、埋込み可能なパルス発生器(IPG)アセンブリ92の周辺回りにバックアップバンド36(
図3には図示せず)を設けることができる。しかしながら、空隙xの使用は必須ではない。例えば、空隙を残さずにバッテリ34を上部及び底部ケース部分30a及び30bの両方に取付ける(例えば、接着する)こともでき、この場合、バッテリカバー68の両側にバッテリカバー接着孔70が必要になる。
【0038】
図10Bは、バッテリカバー68の接着孔70及びケース接触面76の接着孔60の拡大図である。接着剤96は、支持構造部38の逆側まで接着孔60を完全に貫通し、従って乾燥時にマッシュルーム形を形成して支持構造部38を底部側ケース部分30bに係止するように十分に提供されることが好ましい。しかしながら、この好ましい形態は必須ではなく、実際には孔60が存在しない場合でも、ケース接触面76を底部ケース部分30bに接着し、又は取付けることができる。
【0039】
図10Bは、接着剤96がバッテリカバー68の接着孔70にどのように浸透してバッテリ34を底部ケース部分30bに接着するかも示す。一般に、バッテリカバー68の材料は接着に適していないので、この例では接着孔70が特に有利である。接着剤96の材料は絶縁性であるため、(バッテリカバー68が介在するにも関わらず)ケース30にバッテリ34を取付けても依然として電気的に絶縁され、上述したように、これらは異なる電位の場合があるので、この絶縁性は好ましい。
【0040】
なお、上記の組立てステップは、設計された埋込み可能なパルス発生器(IPG)10をいかにして組立てるかについての一例にすぎず、他の方法も可能である。例えば、組立てステップは、異なる順序で行うことも、或いは異なる下位ステップ、又はステップの統合を含むこともできる。
【0041】
開示した埋込み可能なパルス発生器(IPG)設計及び組立て方法は、大型の一次バッテリの使用から生じたものであるが、充電式バッテリを有する埋込み可能なパルス発生器(IPG)に使用することもできる。このような場合、埋込み可能なパルス発生器(IPG)は、バッテリを充電するように整流された充電場を無線で受け取るための、別のコイルなどの追加アンテナ(図示せず)を有することができる。開示した支持構造部38には、通信コイル40と同様に、このような追加の充電コイルを取付けることもできる。或いは、開示したコイル40は、通信機能と充電機能の両方を実行できる通信及び充電組合せコイルを含むこともできる。
【0042】
本発明の特定の実施形態を図示し説明したが、上記の説明は本発明をこれらの実施形態に限定するものではないと理解されたい。当業者には、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行えることが明らかであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲に定める本発明の思想及び範囲に含まれ得る代替物、修正物及び同等物も対象とすることが意図されている。