(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部、ハロゲン系難燃剤5〜100重量部、および、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤1〜30重量部を含む樹脂組成物であって、前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤は、アンチモンを含み、かつ、前記熱可塑性樹脂100重量部に対する、アンチモンを含む難燃助剤の配合量が、0.5重量部以下であることを特徴とする。
上述のとおり、本発明者が検討したところ、特許文献5に記載のようなハロゲン系難燃剤を含む樹脂組成物に、LDS添加剤を配合しても、メッキが形成できないことが分かった。この点について、詳細に検討したところ、ハロゲン系難燃剤を用いる場合、難燃助剤として、アンチモンを含む難燃助剤が用いられることが問題であることを見出した。すなわち、ハロゲン系難燃剤は、単独では難燃性を発揮しにくく、通常、アンチモンを含む難燃助剤が併用されるが、かかる難燃助剤がメッキ性を低下させていることが分かった。
さらに驚くべきことに、ハロゲン系難燃剤と共に、用いるLDS添加剤として、特許文献1等に記載のような、銅クロム酸化物ではなく、アンチモンを含むLDS添加剤を用いることにより、メッキを形成でき、かつ、アンチモンを含む難燃助剤を用いなくても、ハロゲン系難燃剤の難燃性を発揮させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、本発明の樹脂組成物は、各種機械的強度にも優れたものとすることができる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0010】
<熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂の種類は特に定めるものではなく、例えば、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂のアロイ、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂のアロイ、メチルメタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂、メチルメタクリレート/スチレン共重合樹脂、メチルメタクリレート樹脂、ゴム強化メチルメタクリレート樹脂等が挙げられる。本発明では、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリアセタール樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリアミド樹脂の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
以下に好ましい実施形態について説明する。
【0011】
<<ポリアミド樹脂を主成分とする態様>>
本発明における熱可塑性樹脂の第1の実施形態として、熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含む場合が挙げられる。本実施形態では、組成物に含まれる全樹脂成分中、ポリアミド樹脂が80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましく、99重量%以上であることが特に好ましい。本実施形態における、全樹脂成分中のポリアミド樹脂の量の上限は、100重量%であってもよい。ポリアミド樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0012】
<<<ポリアミド樹脂>>>
ポリアミド樹脂としては、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合、ジアミンと二塩基酸の重縮合により得られる酸アミドを繰り返し単位とする高分子であり、具体的には、ポリアミド6、11、12、46、66、610、612、6I、6/66、6T/6I、6/6T、66/6T、66/6T/6I、ポリアミドMX、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド等が挙げられる。なお、上記「I」はイソフタル酸成分、「T」はテレフタル酸成分を示す。
本発明に使用されるポリアミド樹脂としては、これらのポリアミド樹脂の有する種々の特性と目的とする成形品の用途等を勘案して適切なポリアミド樹脂を選択する。
【0013】
上述のポリアミド樹脂の中、原料のジカルボン酸成分に芳香環を有する半芳香族ポリアミド或いは原料のジアミン成分に芳香環を有するポリアミドMXもしくはこれらを混合したポリアミド樹脂は、強度を高める無機充填剤を比較的多く配合したコンパウンドを容易に得られるので好ましい。
半芳香族ポリアミドとしては具体的に、6I、6T/6I、6/6T、66/6T、66/6T/6I等が挙げられる。
またジアミン成分に芳香環を有するキシリレンジアミンとα,ω−二塩基酸の重縮合で得られるポリアミドMX樹脂は、特に高強度の樹脂組成物が得られるので好ましい。パラキシリレンジアミンおよび/またはメタキシリレンジアミンと、炭素数6〜12のα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸または芳香族二塩基酸の重縮合で得られるポリアミド樹脂が挙げられ、特に、ジカルボン酸成分としてセバシン酸および/またはアジピン酸を使用したポリアミドMX樹脂が好ましい。
これらの芳香環を有するポリアミド樹脂と脂肪族ポリアミド樹脂の混合物も好ましく使用される。脂肪族ポリアミド樹脂単独では充填材を多く配合すると外観や物性が充分でない場合にも、上述の芳香環を有するポリアミド樹脂と混合することで外観や物性か改良される。
【0014】
ポリアミドMX樹脂は、70重量%まで脂肪族または半芳香族ポリアミド樹脂で置換する(すなわちMX樹脂を30重量%以上含有するポリアミド樹脂混合物とする)ことが出来る。
【0015】
<<熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とする態様>>
本発明における熱可塑性樹脂の第2の実施形態として、熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリエステル樹脂を含む場合が挙げられる。本実施形態では、組成物に含まれる全樹脂成分中、熱可塑性ポリエステル樹脂が80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましく、99重量%以上であることが特に好ましい。本実施形態における、全樹脂成分中の熱可塑性ポリエステル樹脂の量の上限は、100重量%であってもよい。熱可塑性ポリエステル樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0016】
<<<熱可塑性ポリエステル樹脂>>>
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、特開2010−174223号公報の段落番号0013〜0016の記載を参酌することができる。
ポリエステル樹脂としては、通常はポリブチレンテレフタレート樹脂、又はポリブチレンテレフタレート樹脂が60重量%以上、好ましくは80重量%以上を占める混合物を用いる。例えばポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合物であって、前者が60重量%以上、更には80重量%以上を占めるものは、本発明で用いるポリエステル樹脂として好ましいものの一つである。また、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合物において、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、10〜40重量%含まれることが好ましく、20〜40重量%含まれることがさらに好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂は、周知のように、テレフタル酸又はそのエステルと、1,4−ブタンジオール又はエチレングリコールとの反応により、大規模に製造され、市場に流通している。本発明では市場で入手し得るこれらの樹脂を用いることができる。市場で入手し得る樹脂には、テレフタル酸成分と1,4−ブタンジオール成分又はエチレングリコール成分以外の共重合成分を含有しているものもあるが、本発明では共重合成分を少量、通常は10重量%以下、好ましくは5重量%以下で含有するものも用いることができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、通常、0.5〜1.5dl/gであり、特に0.6〜1.3dl/gであることが好ましい。0.5dl/gより小さいと機械的強度に優れた樹脂組成物を得るのが困難である。また1.5dl/gより大きいと樹脂組成物の流動性が低下し、成形性が低下する場合がある。また、末端カルボキシル基量は30meq/g以下であることが好ましい。さらに1,4−ブタンジオールに由来するテトラヒドロフランの含有量は300ppm以下であることが好ましい。
またポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、通常、0.4〜1.0dl/gであり、特に0.5〜1.0dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.4未満であると樹脂組成物の機械的特性が低下し易く、1.0を超えると流動性が低下し易い。なお、いずれの固有粘度も、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)混合溶媒中、30℃での測定値である。
【0017】
<<ポリアセタール樹脂を主成分とする態様>>
本発明における熱可塑性樹脂の第3の実施形態として、熱可塑性樹脂がポリアセタール樹脂を含む場合が挙げられる。本実施形態では、組成物に含まれる全樹脂成分中、ポリアセタール樹脂が80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましく、99重量%以上であることが特に好ましい。本実施形態における、全樹脂成分中のポリアセタール樹脂の量の上限は、100重量%であってもよい。ポリアセタール樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0018】
<<<ポリアセタール樹脂>>>
ポリアセタール樹脂としては、特開2003−003041号公報の段落番号0011、特開2003−220667号公報の段落番号0018〜0020の記載を参酌することができる。
ポリフェニレンサルファイド樹脂としては、特開平10−292114号公報の段落番号0014〜0016の記載、特開平10−279800号公報の段落番号0011〜0013の記載、特開2009−30030号公報の段落番号0011〜0015の記載を参酌できる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、組成物の合計の40重量%以上が樹脂成分であることが好ましく、50重量%以上が樹脂成分であることがより好ましく、55重量%以上が樹脂成分であることがさらに好ましい。無機充填剤を配合する場合は、無機充填剤と樹脂成分の合計で、60重量%以上を占めることが好ましい。
【0020】
<LDS添加剤>
本発明で用いるレーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(LDS添加剤)は、アンチモンを含む。
【0021】
本発明におけるLDS添加剤は、三菱ガス化学社製PXD10(後述する実施例で合成しているPXD10)100重量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を4重量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力10W、周波数80kHz、速度3m/sにて照射し、その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製M−Copper85のメッキ槽にて実施し、前記レーザー照射面に金属を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。例えば、仮に上記樹脂に添加剤を添加した場合にYAGレーザーの吸収が悪く、樹脂の表面がきれいに焼けない場合、レーザーで表面を焼くために酸化チタンを10〜40重量部添加して評価しても良い。
本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品はLDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。公知のLDS添加剤は、黒色のものが多かったが、本発明では、黒色でないLDS添加剤も広く採用できるので、樹脂成形品に色をつけることが可能になる。
【0022】
本発明で用いるLDS添加剤は、アンチモンを含むが、アンチモンと錫を含むことが好ましく、アンチモンと錫を含み、アンチモンよりも錫の方が含有量が多いことがさらに好ましい。また、本発明で用いるLDS添加剤は、酸化アンチモンおよび酸化錫の少なくとも一方を含むことが好ましく、酸化アンチモンと酸化錫を含むことがより好ましい。
本発明で用いるLDS添加剤におけるアンチモンと錫の重量比は、1:99〜50:50が好ましく、2:98〜40:60がより好ましい。
【0023】
本発明で用いられるLDS添加剤として、アンチモンがドープされた錫、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫を好ましく用いることができる。
【0024】
LDS添加剤の重量平均粒径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性が良好になる傾向にある。
【0025】
本発明の樹脂組成物における、LDS添加剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、1〜30重量部である。LDS添加剤の配合量の下限値は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、5重量部以上が好ましく、8重量部以上がより好ましい。LDS添加剤の配合量の上限値は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、28重量部以下が好ましい。
LDS添加剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、アンチモンを含むLDS添加剤以外の他のLDS添加剤を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、例えば、他のLDS添加剤の配合量が、アンチモンを含むLDS添加剤の配合量の、例えば5重量%以下、さらには1重量%以下であることをいう。
【0026】
本発明の樹脂組成物では、LDS添加剤とハロゲン系難燃剤の重量比(LDS添加剤/ハロゲン系難燃剤)が0.01〜5であることが好ましく、0.05〜4であることがより好ましく、0.1〜3であることがさらに好ましく、0.1〜0.9がより好ましく、0.2〜0.9とすることもでき、さらには0.2〜0.8とすることもできる。このような範囲とすることにより、メッキ性及び難燃性をバランスよくより効果的に向上させることができる。
【0027】
<ハロゲン系難燃剤>
本発明の樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤を含む。ハロゲン系難燃剤の好ましい具体例としては、臭素系難燃剤であり、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ブロム化イミド等が挙げられ、臭素化ポリスチレン樹脂がより好ましい。
これら化合物の具体例としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等の低分子量有機臭素化合物、臭素化ポリスチレン(例えば、臭素化スチレンの重合、あるいはポリスチレンの臭素化等の方法により製造される、ポリマーあるいはオリゴマー)、臭素化ポリカーボネート(例えば、臭素化ビスフェノールAとカーボネート前駆体との重合等の方法により製造される、ポリマーあるいはオリゴマー)、臭素化エポキシ化合物及び/又は臭素化フェノキシ化合物(例えば、臭素化ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応等の方法により製造されるジエポキシ化合物や、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化エポキシポリマー、臭素化フェノキシポリマー、及びこれらの片末端あるいは両末端封鎖物)、臭素化ポリフェニレンエーテル、ポリ臭素化ベンジルアクリレート、臭素化ビスフェノールA/塩化シアヌル/臭素化フェノールの縮等の臭素化されたポリマーやオリゴマー等が挙げられる。
ハロゲン系難燃剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは5〜100重量部である。配合量の下限値は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、10重量部以上が好ましく、20重量部以上がより好ましく、25重量部以上がさらに好ましく、30重量部以上が一層好ましい。配合量の下限値としては、熱可塑性樹脂100重量部に対し、80重量部以下が好ましく、60重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましく、45重量部以下が一層好ましい。
ハロゲン系難燃剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
<<他の難燃剤>>
本発明では、上述の難燃剤以外の他の難燃剤を用いてもよい。他の難燃剤としては、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤を例示することができる。
【0029】
<難燃助剤>
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対する、アンチモンを含む難燃助剤の配合量が、0.5重量部以下である。アンチモンを含む難燃助剤は、通常、ハロゲン系難燃剤の難燃性の効果を発揮させるために併用されるが、本発明では、アンチモンを含むLDS添加剤を含むことにより、アンチモンを含む難燃助剤の量を、熱可塑性樹脂100重量部の0.5重量部以下としても、高い難燃性を発揮できる。さらに、アンチモンを含む難燃助剤は、メッキ性を低下させていたが、本発明の樹脂組成物は、アンチモンを含む難燃剤の量を、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.5重量部以下としているため、良好なメッキ性が達成できる。
本発明の樹脂組成物における、熱可塑性樹脂100重量部に対する、アンチモンを含む難燃助剤の配合量は、0.4重量部以下が好ましく、0.3重量部以下がより好ましく、0.2重量部以下がさらに好ましく、0.1重量部以下が特に好ましく、0重量部であってもよい。
アンチモンを含む難燃助剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、等の酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、燐酸アンチモンなどが挙げられる。
【0030】
<樹脂組成物中のアンチモンの量>
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物中の、アンチモンの量が0.1重量%以上であることが好ましく、0.2重量%以上であることがより好ましく、0.3重量%以上がさらに好ましい。上限値としては、特に定めるものではないが、例えば、2重量%以下とすることができ、さらには、1.8重量%以下が好ましく、1.0重量%以下がより好ましく、0.9重量%以下がさらに好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
特に、組成物中のアンチモンの量を0.2重量%以上、好ましくは、0.2〜1.0重量%とし、かつ、LDS添加剤/難燃剤の重量比を0.2以上とすることにより、難燃性とメッキ性に特に優れた組成物が得られる。前記LDS添加剤/難燃剤の重量比は、下限値が0.3以上であることがより好ましい。前記LDS添加剤/難燃剤の重量比は、上限値が2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、0.9以下であってもよい。
【0031】
<無機充填剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、無機充填剤を含んでいてもよい。無機充填剤としては、炭素繊維およびガラス繊維が例示され、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維としては、チョップドストランド、ミルドファイバー、フレーク、ビーズおよびバルーンから選択される少なくとも1種が好ましく、チョップドファイバー、ミルドファイバー、フレークがより好ましい。
【0032】
チョップドストランドとは、ガラス繊維を1〜10mmに切りそろえものであり、ミルドファイバーとは、ガラス繊維を長さ10〜500μm程度に粉砕したものである。ガラス繊維としては、日本電気硝子社より、市販されており、容易に入手可能である。
ガラスフレークとは、厚さ1〜20μm、一辺の長さ0.05〜1.0mmの鱗片状のものであり、例えば、日本板硝子社より、「フレカ」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
また、ガラスビーズとは、外径10〜100μmの球状のものであり、例えば、東芝バロティーニ社より、商品名「EGB731」として市販されており、容易に入手可能である。
バルーンとは、中空のガラスビーズであり、東海工業社より、「PZ6000」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
【0033】
原料ガラスの組成は、無アルカリのものが好ましく、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Rガラス等が挙げられるが、本発明では、Eガラスが好ましく用いられる。
【0034】
無機充填剤は、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、その付着量は、通常、無機充填剤の重量の0.01〜1重量%である。さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等の混合物で表面処理されたものを用いることもできる。
【0035】
本発明の樹脂組成物における、無機充填剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは10〜150重量部であり、より好ましくは15〜90重量部であり、さらに好ましくは20〜80重量部であり、一層好ましくは、40〜80重量部である。
本発明の樹脂組成物では、通常、熱可塑性樹脂と無機充填剤で、全成分の70重量%以上を占める。
無機充填剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0036】
<他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、離型剤、タルク、酸化チタン、熱安定剤、光安定剤、アルカリ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
また、これらの成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
<<離型剤>>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0038】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0039】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0040】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0041】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0042】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5,000以下である。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
【0043】
離型剤の含有量は、熱可塑性樹脂と無機充填剤の合計100重量部に対して、0.001〜3重量部であることが好ましく、0.01〜2重量部であることがより好ましい。離型剤の含有量を0.001重量部以上とすることにより、離型性の効果がより効果的に発揮され、3重量部以下とすることにより、耐加水分解性が低下し、射出成形時の金型汚染が効果的に抑制される。
【0044】
<<タルク>>
本発明の樹脂組成物はタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、レーザーを照射した部分のメッキ性能がより向上する傾向にある。
本発明の樹脂組成物における、タルクの配合量は、樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜25重量部であることがより好ましく、1〜20重量部であることがさらに好ましく、7〜15重量部であることがより好ましい。
【0045】
<<酸化チタン>>
本発明の樹脂組成物は、酸化チタンを含んでいてもよい。
本発明で使用する酸化チタンとしては、例えば、一酸化チタン(TiO)、三酸化ニチタン(Ti
2O
3)、二酸化チタン(TiO
2)などが挙げられ、これらのいずれを使用してもよいが、二酸化チタンが好ましい。また、酸化チタンとしては、ルチル型の結晶構造を有するものが好ましく使用される。
【0046】
酸化チタンの重量平均一次粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.001〜0.5μmの範囲内であることがより好ましく、0.002〜0.1μmの範囲内であることがさらに好ましい。酸化チタンの平均粒径をこのような範囲とし、配合量を上記の範囲内とすることにより、白色度が高く、表面反射率の高い成形品を与える樹脂組成物を得ることができる。
【0047】
酸化チタンとして、表面処理を施したものを使用してもよい。表面処理剤としては、無機材料および/または有機材料が好ましい。具体的には、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛等の金属酸化物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機酸、ポリオール、シリコーン等の有機材料などが挙げられる。
また、酸化チタンとして、市販されているものを使用することができる。さらには、塊状のものや平均粒径が大きなものを適宜粉砕し、必要に応じて篩い等によって分級して、上記した平均粒径となるようにしたものを使用してもよい。
【0048】
本発明の樹脂組成物における酸化チタンの配合量は、配合する場合、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは30〜150重量部で。酸化チタンは1種のみ含んでいても良く、2種以上含んでいても良い。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0049】
<<熱安定剤>>
本発明の樹脂組成物は、有機系および/または無機系熱安定剤をさらに含有していてもよく、有機系熱安定剤を含むことがより好ましい。
本発明で用いる熱安定剤は、実質的に、銅を含まないことが好ましい。実質的にとは、検出限界以下であることをいう。このように銅の配合量を少なくすることにより、変色を抑えることが可能になる。
有機系熱安定剤としては、フェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物、及びイオウ系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
熱安定剤としては、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
フェノール系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系化合物を挙げることができる。ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、N,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などが挙げられる。
【0051】
ホスファイト系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4'−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))・1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイトなどが挙げられる。
【0052】
ホスファイト系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物を挙げることもできる。ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・メチル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−エチルヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ラウリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソトリデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・シクロヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ベンジル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・エチルセロソルブ・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ブチルカルビトール・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,6−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−シクロヘキシルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0053】
ペンタエリストール型ホスファイト化合物としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2、6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが好ましく、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
【0054】
ヒンダードアミン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β',β'−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物などが挙げられる。
【0055】
トリアジン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン類が挙げられる。
ヒドロキシフェニルトリアジン類としては、例えば、2,4,6−トリス(2'−ヒドロキシ−4'−オクチルオキシ−フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2'−ヒドロキシ−4'−ヘキシルオキシ−フェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2',4'−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2',4'−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2',4'−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2'−ヒドロキシ−4'−プロピルオキシ−フェニル)−6−(2',4'−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4'−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2'−ヒドロキシ−4'−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2',4'−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2'−ヒドロキシ−4'−イソプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2'−ヒドロキシ−4'−n−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、及び2,4,6−トリス(2'−ヒドロキシ−4'−エトキシカルボニルメトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0056】
イオウ系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、及びジステアリル3,3'−チオジプロピオネートなどを挙げることができる。
【0057】
無機系熱安定剤の例としては、金属水酸化物が好ましく、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムや、三酸化アンチモンが例示され、よりメッキ性を向上させる観点からは、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが好ましい。特に、LDS添加剤が酸性物質のときに、無機系熱安定剤として、アルカリを添加すると、後述するLDS添加剤の色合いを均一するためのアルカリ成分を兼ねることができる。また、このようなアルカリは、熱安定剤としても働く場合がある。
【0058】
熱安定剤の含有量は、本発明の樹脂組成物100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部であることが好ましく、0.03〜4重量部であることがより好ましい。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0059】
<<光安定剤>>
本発明の樹脂組成物は、有機系および/または無機系光安定剤を含むことが好ましく、有機系光安定剤を含むことがより好ましい。
有機系光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びシアノアクリレート系化合物などの紫外線吸収効果のある化合物、並びにヒンダードアミン系化合物及びヒンダードフェノール系化合物などのラジカル捕捉能力のある化合物などが挙げられる。
光安定剤としては、紫外線吸収効果のある化合物とラジカル捕捉能力のある化合物を併用することにより、より高い安定化効果を発揮させることができる。
光安定剤としては、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
ベンゾフェノン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0061】
サリシレート系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、及びp−オクチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。
【0062】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2'−ヒドロキシ−3'−(3'',4'',5'',6''−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}、及び6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−t−オクチル−6'−t−ブチル−4'−メチル−2,2'−メチレンビスフェノールなどが挙げられる。
【0063】
シアノアクリレート系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、及びエチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0064】
ヒンダードアミン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)n−ブチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸の縮合物、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−第三オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンの直鎖状又は環状縮合物、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,1'−(1,2−エタンジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−2−n−ブチル−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジル)マロネート、3−n−オクチル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)スクシネート、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレンジアミンと4−モルホリノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンの直鎖状又は環状縮合物、2−クロロ−4,6−ビス(4−n−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンの縮合物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス−(3−アミノプロピルアミノ)エタンの縮合物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、3−ドデシル−1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、4−ヘキサデシルオキシ−と4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの混合物、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−シクロヘキシルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンの縮合物、1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン並びに4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの縮合物(CAS登録番号[136504−96−6]);1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン並びにN,N−ジブチルアミンと4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの縮合物(CAS登録番号[192268−64−7]);N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−n−ドデシルスクシンイミド、N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−n−ドデシルスクシンイミド、2−ウンデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−4−オキソ−スピロ[4.5]デカン、7,7,9,9−テトラメチル−2−シクロウンデシル−1−オキサ−3,8−ジアザ−4−オキソ−スピロ[4.5]デカンとエピクロロヒドリンの反応生成物、1,1−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)−2−(4−メトキシフェニル)エテン、N,N'−ビス−ホルミル−N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン、4−メトキシメチレンマロン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジンとのジエステル、ポリ[メチルプロピル−3−オキシ−4−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)]シロキサン、マレイン酸無水物−α−オレフィンコポリマーと2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン又は1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジンとの反応生成物、2,4−ビス[N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N−ブチルアミノ]−6−(2−ヒドロキシエチル)アミノ−1,3,5−トリアジン、1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)−4−オクタデカノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、5−(2−エチルヘキサノイル)オキシメチル−3,3,5−トリメチル−2−モルホリノン、サンドゥバー(Sanduvor)(クラリアント(Clariant);CAS登録番号[106917−31−1])、5−(2−エチルヘキサノイル)オキシメチル−3,3,5−トリメチル−2−モルホリノン、2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−ピペリジン−4−イル)ブチルアミノ]−6−クロロ−s−トリアジンとN,N'−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン)との反応生成物、1,3,5−トリス(N−シクロヘキシル−N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−3−オン−4−イル)アミノ)−s−トリアジン、1,3,5−トリス(N−シクロヘキシル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペラジン−3−オン−4−イル)アミノ)−s−トリアジン、N,N',N",N'''−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10ジアミン、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などが挙げられ、中でもビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、N,N',N",N'''−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10ジアミンなどが挙げられる。
【0065】
ヒンダードフェノール系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド、トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ハイドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3ハイドロキシ−2,6−ジメチルベンジ)イソシアネートなどが挙げられる。
【0066】
光安定剤の含有量は、本発明の樹脂組成物100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部であることが好ましく、0.01〜4重量部であることがより好ましい。
【0067】
<<アルカリ>>
本発明の樹脂組成物はアルカリを含んでいてもよい。本発明で用いるLDS添加剤が酸性物質(例えば、pH6以下)の場合に、組み合わせによって自身が還元することで色目がまだら模様となるケースがあるが、アルカリを添加することにより、得られる樹脂成形品の色あいをより均一にすることができる。アルカリの種類は特に定めるものではなく、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を用いることができる。アルカリは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物における、アルカリの配合量は、LDS添加剤の種類及びアルカリの種類にもよるが、LDS添加剤の配合量の、好ましくは0.01〜20重量%であり、より好ましくは0.05〜15重量%である。
【0068】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法が採用される。
例えば、熱可塑性樹脂、無機充填剤、LDS添加剤等をV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。あるいは、二段階練込法として、予め、無機充填剤以外の成分等を、十分混合後、ベント付き押出機で溶融混練りしてペレットを製造した後、そのペレットと無機充填剤を混合後、ベント付き押出機で溶融混練りする方法が挙げられる。
更に、無機充填剤以外の成分等を、V型ブレンダー等で十分混合したものを予め調製しておき、それをベント付き二軸押出機の第一シュートより供給し、無機充填剤は押出機途中の第二シュートより供給して溶融混練、ペレット化する方法が挙げられる。
【0069】
押出機の混練ゾーンのスクリュー構成は、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。
混練を促進するエレメントとしては、順送りニーディングディスクエレメント、直交ニーディングディスクエレメント、幅広ニーディングディスクエレメント、および順送りミキシングスクリューエレメント等が挙げられる。
【0070】
溶融混練に際しての加熱温度は、通常180〜360℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0071】
<樹脂成形品>
本発明は、また、本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品を開示する。
樹脂成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
【0072】
本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品は、樹脂成形品の表面にメッキを有する、メッキ付樹脂成形品として好ましく用いられる。本発明の樹脂成形品におけるメッキはアンテナとしての性能を保有する態様が好ましい。
【0073】
<メッキ付き樹脂成形品の製造方法>
次に、本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキを形成することを含む、メッキ付樹脂成形品の製造方法について開示する。
図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。
図1では、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。また、得られるメッキ付き樹脂成形品は、最終製品に限らず、各種部品も含む趣旨である。
【0074】
再び
図1に戻り、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm〜1200nmである。特に好ましくは800〜1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。この活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として、銅、ニッケル、銀、金、およびパラジウムの少なくとも1種以上からなるメッキ液(特に、無電解のメッキ液)が好ましく、銅、ニッケル、銀、および金の少なくとも1種以上からなるメッキ液(特に、無電解のメッキ液)がより好ましく、銅を含むメッキ液(特に、無電解のメッキ液)がさらに好ましい。すなわち、本発明におけるメッキは、金属成分が、上記金属の少なくとも1種からなることが好ましい。
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ5が形成される。
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回線間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。メッキは、形成した回路の腐食や劣化を抑えるために、例えば無電解メッキを実施した後にニッケル、金で更に保護することも出来る。また、同様に無電解メッキ後に電解メッキを用い、必要な膜厚を短時間で形成することも出来る。
また、上記メッキ付樹脂成形品の製造方法は、上記メッキ付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法として好ましく用いられる。
【0075】
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、例えば、コネクタ、スイッチ、リレー、導電回路等の電子部品(特に、携帯電子機器部品)、ランプリフレクタ等の反射板、ギヤ、カム等のような摺動部品、エアインテークマニホールドなどの自動車部品、流し台などの水回り部品、種々の装飾部品、あるいは、フィルム、シート、繊維などの種々の用途に用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、難燃性が高く、平均厚さ1.5mmにおける樹脂成形品のUL−94試験の評価がV−0を満たすものとすることができる。
【0076】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0078】
原材料
以下に示す原材料を用いた。
<ポリアミド樹脂PXD10の合成>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸(伊藤製油(株)製、製品名セバシン酸TA)8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.074mol)、酢酸ナトリウム6.45g(0.079mol)を秤量して仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.4MPaに加圧し、撹拌しながら20℃から190℃に昇温して55分間でセバシン酸を均一に溶融した。次いでパラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)5960g(43.76mol)を撹拌下で110分を要して滴下した。この間、反応容器内温は293℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.42MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。パラキシリレンジアミン滴下終了後、反応容器内圧力0.42MPaにて20分間重縮合反応を継続した。この間、反応容器内温は296℃まで上昇させた。その後、30分間で反応容器内圧力を0.42MPaから0.12MPaまで減圧した。この間に内温は298℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で減圧し、20分間で0.08MPaまで減圧し、分子量1,000以下の成分量を調整した。減圧完了時の反応容器内の温度は301℃であった。その後、系内を窒素で加圧し、反応容器内温度301℃、樹脂温度301℃で、ストランドダイからポリマーをストランド状に取出して20℃の冷却水にて冷却し、これをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。なお、冷却水中での冷却時間は5秒、ストランドの引き取り速度は100m/分とした。以下、「PXD10」という。融点は、290℃であった。
【0079】
<ポリアミド樹脂MP6の合成>
アジピン酸(ローディア製)を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミンのモル比が4:6の混合ジアミンを、ジアミンとジカルボン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を上昇させた。滴下終了後、所定の粘度になるまで攪拌、反応を続けた後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂(MP6)を得た。融点は、254℃であった。
【0080】
PA66:ポリアミド66、デュポン製、Zytel 101NC−10、融点265℃
【表1】
上記表1において、wt%は、重量%を示している。
【0081】
実施例1
<コンパウンド>
後述する下記表3に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、無機充填剤を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、無機充填剤をサイドフィードして樹脂ペレットを作製した。二軸押出機の温度設定は、300℃とした。
【0082】
<ノッチありシャルピー衝撃強度>
上記で得られたISO引張り試験片(4mm厚)を用い、ISO179に準拠し、23℃の条件で、ノッチ有シャルピー衝撃強度を測定した。
【0083】
<難燃性(UL−94試験)>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所社製のJ50−EP型射出成形機を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度130℃の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、平均厚さ1.5mmのUL−94試験用試験片を成形した。
【0084】
難燃性の評価は、上述の方法で得られたUL−94試験用試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL−94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL−94試験は、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表に示す基準を満たすことが必要となる。
【0085】
【表2】
【0086】
ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(not rated)と評価した。
【0087】
<メッキ性(LDS活性)−Plating Index>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業製、SG75−MIIを用いて、シリンダー温度は、300℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、3mm厚さのプレートを成形した。
上記で得られた3mm厚のプレートに1064nmのYAGレーザーを用い、出力2.6〜13Wの範囲のいずれか、速度1〜2m/sのいずれか、周波数10〜50μsの範囲のいずれかの条件から組み合わされた各種条件でレーザー照射により印字し、続いて、試験片を硫酸にて脱脂後、キザイ社製THPアルカリアクチ及びTHPアルカリアクセで処理後、キザイ社製SELカッパ―にてメッキ処理を行った。メッキ処理後の試験片を目視にて判定し、下記3段階に分類した。
A:一面にメッキが乗っており良好な外観を確認
B:部分的なメッキの乗りだが実用レベル
C:全くメッキが乗っていない、もしくは部分的なメッキの乗りであり実用レベルではない
【0088】
実施例2〜9、比較例1〜7
実施例1において、表3または表4に記載のとおり、各成分の量を変更し、また、シリンダー温度について、樹脂として、MP6またはPA66を用いたものは、280℃に変更し、金型は、PA66を用いたものは80℃とし、他は同様に行った。
【0089】
【表3】
【表4】
【0090】
上記表3および表4から明らかなとおり、本発明の組成物は、高い難燃性を有し、かつ、メッキ性にも優れていた。特に、組成物中のアンチモンの量を所定量以上とし、かつ、LDS添加剤/難燃剤の重量比を所定の値以上とすることにより、より優れた難燃性及びメッキ性の両立が可能になった。
これに対し、ハロゲン系難燃剤を含んでいても、LDS添加剤がアンチモンを含まない場合(比較例1、2および4)、難燃性が劣っていた。一方、アンチモンを含まないLDS添加剤を用い、アンチモン系難燃助剤を配合した場合(比較例3、5、6)、難燃性はV−0を達成できたが、メッキ性が劣ってしまった。また、アンチモンを含むLDS添加剤を用いても、アンチモン系難燃助剤を配合した場合、難燃性は優れていたが、メッキ性が劣ってしまった(比較例7)。