(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しつつ本発明について詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下において、「C8」は炭素数が8であることを意味し、「C9」は炭素数が9であることを意味し、「C8A」はC8芳香族化合物、すなわち炭素数8の芳香族化合物を意味し、「C9A」はC9芳香族化合物、すなわち炭素数9の芳香族化合物を意味する。
【0015】
〔HIDiCの基本構成〕
HIDiCは次のものを含む。
【0016】
・濃縮部の全部もしくは一部を含み、相対的に高圧で気液接触を行う高圧部
・回収部の全部もしくは一部を含み相対的に低圧で気液接触を行う低圧部
蒸留操作における「濃縮部」および「回収部」は、蒸留装置、特には連続蒸留装置に関して、古くから使用されている用語である。濃縮部は、単一の塔で構成される従来型の蒸留塔における原料供給位置よりも上の部分に相当する。回収部は、従来型の蒸留塔における原料供給位置よりも下の部分に相当する。つまり、濃縮部は、原料と比較してより軽質な留分が流れる、蒸留装置(典型的には塔)の部分である。また、回収部は、原料と比較してより重質な留分が流れる、蒸留装置(典型的には塔)の部分である。
【0017】
濃縮部の温度を回収部より高くし、間接的熱交換によって濃縮部から回収部への熱移動が可能となるように、高圧部の運転圧力が低圧部の運転圧力より高く設定される。ここでいう「相対的に高圧もしくは低圧」は、低圧部と高圧部の圧力の比較に関する。
【0018】
高圧部は基本的には濃縮部に相当し、低圧部は基本的には回収部に相当する。したがって、HIDiCの最も基本的な構成においては、高圧部が濃縮部を含むが回収部は含まず、低圧部が回収部を含むが濃縮部は含まない。つまり高圧部が濃縮部の全部を含み、低圧部が回収部の全部を含む。しかし、この限りではなく、低圧部が回収部の全部と濃縮部の一部を含み、高圧部が濃縮部の残りの部分を含むことができる。あるいは、高圧部が濃縮部の全部と回収部の一部を含み、低圧部が回収部の残りの部分を含むことができる。
【0019】
換言すれば、HIDiCの基本構成は、従来型の蒸留塔を、原料供給位置を境に二つの領域(濃縮部の全部を含む高圧部、および、回収部の全部を含む低圧部)に区画したような構成である。しかしHIDiCの構成は、この構成に限定されるわけではない。従来型の蒸留塔の原料供給位置より上において二つの領域に区画したような構成、すなわち、濃縮部の中間位置を境に単一の塔を二つの領域(回収部の全部と濃縮部の一部とを含む低圧部、および、回収部を含まず濃縮部の残りの部分を含む高圧部)に区画したような構成が可能である。あるいは、従来型の蒸留塔を、回収部の中間位置を境に二つの領域(濃縮部の全部と回収部の一部を含む高圧部、および、濃縮部を含まず回収部の残りの部分を含む低圧部)に区画したような構成も可能である。
【0020】
なお、当然ではあるが、高圧部および低圧部の一方が濃縮部と回収部との両者を含む場合、他方が濃縮部と回収部の両方を含むことはない。
【0021】
高圧部および低圧部はそれぞれ典型的には一つの塔(容器)によって形成される。高圧部を形成する高圧塔と、低圧部を形成する低圧塔とが、互いに離れて設けられていてもよい。あるいは、高圧塔と低圧塔とが構造物として一体的に設けられていてもよく、例えば単一の容器の内部を隔壁(流体が通過不能な部材)によって区画することにより、二つの領域を形成し、一方の領域を高圧塔として利用し、他方の領域を低圧塔として利用することができる。
【0022】
・低圧部の塔頂蒸気を高圧部の塔底部に導くライン
従来型の蒸留塔では、塔の下部(回収部)から上部(濃縮部)へと蒸気が上昇する。HIDiCでは基本的には回収部と濃縮部とが分離(区画)されているため、この蒸気の流れを実現するために、このラインを設ける。
【0023】
このラインには低圧部(相対的に低圧)から高圧部(相対的に高圧)に蒸気を送るために、コンプレッサーなどの昇圧手段が設けられる。
【0024】
・高圧部の塔底液を低圧部の塔頂部に導くライン
従来の蒸留塔では、塔の上部(濃縮部)から下部(回収部)へと液が下降する。HIDiCでは基本的には回収部と濃縮部とが分離(区画)されているため、この液の流れを実現するために、このラインを設ける。この流れを「中間還流」と呼ぶことがあり、このラインを「中間還流ライン」と呼ぶことがある。
【0025】
・濃縮部から回収部に熱を移動させる熱交換構造
特許文献1もしくは2に記載されるように、管の内部および外部を濃縮部(高圧部)および回収部(低圧部)として利用する場合、管壁が伝熱面として機能する。つまり、シェルアンドチューブ型の熱交換構造を採用することができる。
【0026】
特許文献3に記載されるような蒸留装置の場合、熱交換構造は、次のaおよびbのうちの一方または両方を含むことができる。
a)濃縮部(典型的には高圧部に含まれる濃縮部)に設けられた熱交換器と、回収部(典型的には低圧部に含まれる回収部)から液を抜き出してこの熱交換器を経由してこの回収部に戻すライン、
b)回収部(典型的には低圧部に含まれる回収部)に設けられた熱交換器と、濃縮部(典型的には高圧部に含まれる濃縮部)から蒸気を抜き出してこの熱交換器を経由してこの濃縮部に戻すライン。
【0027】
あるいは、高圧部の外部かつ低圧部の外部(典型的には高圧塔の外部かつ低圧塔の外部)に熱交換器を設け、回収部(典型的には低圧部に含まれる回収部)から液を抜き出してこの熱交換器を経由してこの回収部に戻すとともに、濃縮部(典型的には高圧部に含まれる濃縮部)から蒸気を抜き出してこの熱交換器を経由してこの濃縮部に戻し、これら流体の間で熱交換を行う構造を採用することもできる。
【0028】
また、熱交換構造は、結果的に濃縮部から回収部に熱を移動させることのできる構造であればよく、濃縮部内の流体および回収部内の流体のいずれも直接用いなくともこの熱交換構造は実現できる。例えば、濃縮部内の流体に替えて、濃縮部から排出された相対的に高圧(高温)の流体を用いることができる。また、回収部内の流体に替えて、回収部に流入する相対的に低圧(低温)の流体を用いることができる。例えば、回収部(典型的には低圧部に含まれる回収部)に流入する原料と濃縮部(典型的には高圧部に含まれる濃縮部)の塔頂から抜き出された塔頂蒸気を熱交換させれば、濃縮部から回収部に熱を移動させることができる。
【0029】
熱交換構造は一つだけ用いてもよく、あるいは複数の熱交換構造を用いてもよい。
【0030】
ここで、低圧部が回収部の全部と濃縮部の一部とを含み、高圧部が濃縮部の一部を含む場合を考える。例えば、低圧塔が回収部の上に濃縮部の一部を有し、高圧塔が濃縮部の残りの部分を含む形態が、この場合に含まれる。このような形態では、低圧塔の塔頂流体(低圧塔に含まれる濃縮部から排出される流体)を、コンプレッサーを経由して高圧塔の塔底部に送ることができるが、このとき、コンプレッサーの出口流体が持つ熱を、低圧塔の回収部内の流体に、熱交換によって与えることができる。例えば、低圧塔の回収部内(例えば低圧塔の塔底部のすぐ上の段)に熱交換構造を設け、低圧塔の塔頂流体を、コンプレッサーとこの熱交換構造を経て高圧塔の塔底部に供給することができる。このような熱交換によって、低圧塔に含まれる濃縮部から、低圧塔に含まれる回収部へと熱を移動させることができる。このような構成の例は、特願2012−080525号に提案されている。
【0031】
本願出願人と同一の出願人によって出願された特願2012−080525号および国際出願PCT/JP2010/066498(国際公開第2011/043199号パンフレット)の全体が、参照によって本明細書に取り込まれる。
【0032】
〔HIDiCの制御〕
単一の容器(塔)によって構成される従来の蒸留塔では、通常、製品純度を安定して維持するために、塔頂外部還流の流量を制御する。つまり、塔頂から抜き出された塔頂蒸気をコンデンサーによって冷却かつ凝縮させ、得られた液を蒸留塔に還流させるが、その還流の流量を制御する。
【0033】
これと同様に、HIDiCにおいても塔頂外部還流の流量を制御することが考えられる。しかし、本発明者らの検討によれば、HIDiCにおいては、濃縮部と回収部との間の熱交換量によって中間還流の流量が変動することがあり、塔頂外部還流流量を制御しても、外乱によってこの熱交換量が変動してしまうと、中間還流の流量が大きく変動し、それによって蒸留塔内部の温度や組成が乱れ、結果として製品純度が損なわれることがあると考えられる。塔頂外部還流流量ではなく、中間還流の流量を制御すると、蒸留塔内部が外乱に対してより安定し、結果として製品純度を維持することが容易であるという知見を本発明者らは得た。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0034】
中間還流の流量を制御する場合に用いることのできるHIDiCの概略構成例を
図1に示す。
図1に示すHIDiCは、高圧部(ここでは相対的に高圧で運転される塔である高圧塔1)と低圧部(ここでは相対的に低圧で運転される塔である低圧塔2)を備える。低圧塔は回収部の全部と濃縮部の一部を含む。低圧塔2において、原料供給位置の下の部分が回収部であり、原料供給位置の上の部分が濃縮部の一部である。高圧塔1は濃縮部の残りの部分を含む。
【0035】
原料が低圧塔2に供給される。低圧塔2の塔頂蒸気を高圧塔1の塔底部に導くライン23が設けられ、ライン23にはコンプレッサー4が設けられる。また、高圧塔の塔底液を低圧塔(特には低圧塔の頭頂部)に導くライン(中間還流ライン)40が設けられる。この中間還流ラインに流量制御弁101が設けられ、これによって中間還流の流量が所定値(制御における目標値)に制御される。
【0036】
なお、中間還流の流量は、弁(流量調節弁)で制御することができ、あるいはポンプの回転数制御など、その他の流量制御手段により制御される場合もある。中間還流の目標値は、製品(後述する缶出製品や留出製品など)の不純物濃度が、所定の値以下になるよう調整される。
図1には示さないが、中間還流ラインにはポンプ等の圧送手段を設けることができる。
【0037】
低圧塔2の塔底液の一部がリボイラー3にて加熱されて低圧塔に戻され、残りの部分が缶出液(缶出製品)として取り出される。高圧塔の塔頂蒸気は、コンデンサー7によって冷却されて凝縮し、その一部が高圧塔に戻され(塔頂外部還流)、残りが留出液(留出製品)として取り出される。液面制御弁102は、高圧塔の塔底に溜まった液の量(液面の高さ)を調節するために設けられる。なお、
図1においては、濃縮部から回収部へ熱移動を行うための熱交換構造は示していない。
【0038】
また、比較対照として、塔頂外部還流の流量を制御する場合の例を
図2に示す。比較対照として
図2に示されたHIDiCでは、流量制御弁101が塔頂外部還流ラインに設けられ、塔頂外部還流の流量が所定値(目標値)に制御される。中間還流ライン40に設けられた液面制御弁102は、高圧塔に溜まった液の量を調節するために用いられる。これら以外は
図1に示した例と同様である。
【0039】
さて
図1に示される構成を有するHIDiCを、キシレン塔に使用した場合について、塔内の蒸気および液の負荷(塔内の蒸気の流量および液の流量)の例を、シミュレーションにより求めた。
【0040】
ここで検討に用いたHIDiCについて
図3を用いてより詳細に説明する。このHIDiCは通常、高圧塔1の塔頂圧力約400kPaA、低圧塔2の塔頂圧力約250kPaAで運転される。HIDiCには、原料として混合キシレン(p−、m−およびo−キシレン)およびC9芳香族化合物からなる原料(フィード)が供給され、HIDiCによる蒸留によって、塔頂(高圧塔の塔頂)から留出液として混合キシレンが得られ、塔底(低圧塔の塔底)から缶出液としてC9芳香族化合物が得られる。留出液中にC9芳香族化合物が混入し、缶出液中に混合キシレンが混入するが、製品純度を維持するため、製品中に混入したこれら不純物の濃度は、要求仕様値以下に抑える必要がある。なお、このキシレン塔の要求仕様値は、留出液についてはC9芳香族化合物濃度0.7mol%、缶出液については混合キシレン濃度1.8mol%である。
【0041】
図3に示すように、このHIDiCはその内部にA〜Gの領域を有する。領域A〜Cが濃縮部、領域D〜Gが回収部である。領域AおよびBは高圧塔に含まれる濃縮部である。領域Cは低圧塔に含まれる濃縮部であり、回収部(領域D〜G)の上に位置する。領域A〜Gのいずれの領域も、内部に棚段塔部或いは充填塔部を有し、いずれの領域においても気液接触が行われる。
【0042】
高圧塔1の内部は領域AおよびBに分けられ、これらの間に熱交換器E1が設けられる。低圧塔2の領域EとFとの間から抜き出された流体(液)が、この熱交換器E1で加熱されて気液二相流となり、領域EとFとの間に戻される。なお
図3には、簡単のために、熱交換のための流体の取り出しおよび戻りが正確には示されておらず、その替わり、白抜き矢印によって熱交換による熱の移動が示されている(E1に関してのみでなく、後述のE2〜E4についても同様である)。
【0043】
低圧塔2の内部は領域C〜Gに分けられる。領域CとDとの間に原料が供給される。領域DとEとの間に熱交換器E2が設けられる。塔頂蒸気(高圧塔の塔頂蒸気)の一部がコンデンサー7の上流で分岐されて熱交換器E2に導入され、熱交換器E2において回収部内の流体によって冷却されて液化し、コンデンサー7の出口に合流する。つまり熱交換器E2は、コンデンサー7と並列に設けられ、コンデンサー7の機能の一部を代替する。領域EとFとの間から、上述のように液が抜き出され、領域EとFとの間に気液二相流が戻される。領域FとGとの間には熱交換器E3が設けられ、この熱交換器E3においてコンプレッサー4の出口ガスによって低圧塔2の回収部内の流体が加熱される。さらに、原料供給ラインに熱交換器E4が設けられる。塔頂蒸気(高圧部の塔頂蒸気)の別の一部がコンデンサー7の上流で分岐されて熱交換器E4に導入され、熱交換器E4において原料によって冷却されて液化し、コンデンサー7の出口に合流する。つまり熱交換器E4も、コンデンサー7と並列に設けられ、コンデンサー7の機能の一部を代替する。
【0044】
シミュレーションにより塔内の蒸気および液の負荷(塔内の蒸気の流量および液の流量)の例を求めたところ、
図4に示すようになった。
図4(a)には蒸気負荷を、同図(b)には液負荷を示す。太い実践は60%負荷(内部熱交換しながら全還流運転、即ち原料供給や製品払出しがない状態で運転している状態)、破線は80%負荷(原料供給及び製品払出し開始後)、細い実践は100%負荷(原料供給及び製品払出し開始後)の場合を示す。縦軸は、塔(高圧塔および低圧塔)内の位置(段)を表す。横軸は各位置における負荷(流量)を表す。横軸の単位における「A」は実流量を意味する。
【0045】
図4から、塔頂(高圧塔の塔頂)や塔底(低圧塔の塔底)に比べて、中間の段のほうが、負荷が高いことがわかる。
図4(b)には、塔頂外部還流の流量(領域Aの液負荷)に比べて、中間還流の流量(領域Cの液負荷)が約5倍大きいことが示されている。このような特性は、シェルアンドチューブ型のHIDiCについても同様である。
【0046】
したがって、中間還流は塔頂外部還流より流量が大きい分、塔内に与える影響も大きく、例え塔頂外部還流の流量を一定に制御できたとしても、中間還流が変動してしまうと塔内の状態が乱れてしまい、結果として製品の純度が損なわれる可能性がある。一方、中間還流の流量を一定に制御すれば、より塔内の状態が安定し、ひいては製品の純度を安定させることができる。
【0047】
〔外乱に対するロバスト性〕
次に示すプロセスIおよびIIにつき、外乱に対するHIDiCのロバスト性を、ダイナミックシミュレータを用いて評価した。
【0048】
プロセスI:
図3に示した本発明に係るHIDiC。中間還流の流量を所定値に固定した。プロセスIでは、
図3および4に関連して説明した前述のHIDiCの制御に係る検討において用いた蒸留装置と同様の蒸留装置を検討対象とした(原料も同様である)。従ってこの装置は領域A〜Gを有し、熱交換器(E1〜E4)やこれら熱交換器に関する流体の抜き出しおよび戻しラインを有する。
【0049】
プロセスII:比較対照用のHIDiCを用い、塔頂外部還流、すなわちコンデンサー7(および熱交換器E2およびE4)から高圧塔に戻される還流の流量を所定値に固定した。ここで検討対象としたHIDiCは、流量制御弁101と液面制御弁102の位置を
図2に示すように変更した以外は、プロセスIと同様とした。
【0050】
また各制御はPID制御で行い、各制御におけるPIDパラメータはプロセスIとIIとで同じ値を用いた。
【0051】
各プロセスにおいて、HIDiCに加えた外乱は次に示す2種類とした。ただし、いずれの種類についてもプラス側とマイナス側の外乱を加えた。例えば、一つ目の種類についてプラス側の外乱を与えた場合を1a、マイナス側の外乱を与えたケースを1bと呼ぶ。
1a.原料の組成変化(C9芳香族化合物の濃度を+30%変化させた)
1b.原料の組成変化(C9芳香族化合物の濃度を−30%変化させた)
2a.熱交換器E2に導かれる高圧塔塔頂蒸気の流量設定値変化(約+10%)
2b.熱交換器E2に導かれる高圧塔塔頂蒸気の流量設定値変化(約−10%)
各ケースにおいて、プロセスI(本発明に従う)およびプロセスII(比較対照)のそれぞれについて時刻0にて外乱を与え、塔頂製品および塔底製品、すなわち塔頂(高圧塔の塔頂)から得られる留出液および塔底(低圧塔の塔底)から得られる缶出液の組成の経時変化を調べた。
【0052】
図5にケース1a(原料組成変化+30%)の検討結果を示す。図中、要求仕様値を破線で示した。
【0053】
図5aに留出液中のC9芳香族化合物の濃度(モル%)の経時変化を示す。本発明に従うプロセスIの場合、留出液中のC9芳香族化合物の濃度(モル%)が初期値(0.53モル%)から上昇し、1〜2時間のうちに約0.68%で安定した。一方、比較対照のプロセスIIにおいては、留出液中のC9芳香族化合物の濃度は、同じ初期値からいったん0.76モル%程度の最大値をとり、その後減少して約0.72モル%で安定した。要求仕様値は0.70モル%である。すなわち、プロセスIの場合の方が明らかに製品純度の変動が小さく、外乱に対してよりロバストであった。
【0054】
図5bに缶出液中のC8芳香族化合物の濃度(モル%)の経時変化を示す。プロセスIの場合、缶出液中のC8芳香族化合物の濃度は、初期値(0.70モル%)からいったん上昇して1時間ほどで0.85モル%程度の最大値をとり、その後下降して0.75モル%程度で安定した。一方、プロセスIIの場合、缶出液中のC8芳香族化合物の濃度は同じ初期値からいったん上昇して約0.77モル%となり、次いで下降し、再び上昇し、約65時間後に約0.82モル%となった。要求仕様値は1.80モル%である。すなわち、缶出液の製品純度については、プロセスIの場合とプロセスIIの場合とで、有意な差は見られなかった。
【0055】
図6にケース1b(原料組成変化−30%)の検討結果を示す。
図6aには、留出液中のC9芳香族化合物の濃度(モル%)の経時変化を、
図6bには、缶出液中のC8芳香族化合物の濃度(モル%)の経時変化を示す。
【0056】
ケース1bについてもケース1a同様、缶出液の製品純度についてはプロセスIの場合とプロセスIIの場合とで、有意な差は見られなかったが、留出液の製品純度については、プロセスIの場合の方が明らかに製品純度の変動が小さく、外乱に対してよりロバストであった。
【0057】
図7にケース2a(熱交換器E2に導かれる高圧塔塔頂蒸気の流量設定値変化:+10%)の検討結果を示す。
図7aには、留出液中のC9芳香族化合物の濃度(モル%)の経時変化を、
図7bには、缶出液中のC8芳香族化合物の濃度(モル%)の経時変化を示す。
【0058】
ケース2aでは、留出液の製品純度も缶出液の製品純度も、プロセスIの場合のほうが変動が小さく、外乱に対してよりロバストであった。
【0059】
図8にケース2b(熱交換器E2に導かれる高圧塔塔頂蒸気の流量設定値変化:−10%)の検討結果を示す。
図8aには、留出液中のC9芳香族化合物の濃度(モル%)の経時変化を、
図8bには、缶出液中のC8芳香族化合物の濃度(モル%)の経時変化を示す。
【0060】
ケース2bでは、留出液の製品純度も缶出液の製品純度も、プロセスIの場合のほうが変動が小さく、外乱に対してよりロバストであった。
【0061】
図5から
図8より、塔底製品(缶出液)の製品純度の変動に関しては、プロセスIの場合とプロセスIIの場合とで有意な差が見られないか、あるいはプロセスIのほうがよりロバストであることがわかる。塔頂製品(留出液)に関しては明らかにプロセスIの場合のほうが製品純度の変動が小さく、ロバストであることがわかる。つまり、本発明の制御方法は外乱に対して、特に塔頂製品(留出液)の製品純度の変動を抑えるのに有効である。
【0062】
〔好適なHIDiCの例〕
シェルアンドチューブ型の構造を有するHIDiCの場合、製品のサイドカットを行うこと、原料供給段(フィード段)の最適化を行うこと、等が困難である。この観点から、特許文献3に記載されるような蒸留装置が好ましく用いられる。したがって、本発明は、次のようなHIDiCに好適に適用することができる。
【0063】
1)濃縮部として利用される棚段塔部或いは充填塔部を含む高圧塔と、
前記高圧塔よりも高い位置に配置され、回収部として利用される棚段塔部或いは充填塔部を含む低圧塔と、
前記低圧塔の塔頂部と前記高圧塔の塔底部を連通させる第一の配管と、
前記第一の配管の途中に設置され、前記低圧塔の塔頂部からの蒸気を圧縮して前記高圧塔の塔底部に送るコンプレッサーと、
前記高圧塔(特には高圧塔に含まれる濃縮部)の所定の段に配置された熱交換器と、
前記低圧塔(特には低圧塔に含まれる回収部)の所定の段に配置され、該所定の段から一部の液を塔外部へ抜き出す液抜き部と、
前記液抜き部からの液を前記熱交換器へ導入する第二の配管と、
前記第二の配管を経由して前記熱交換器へ導入された後に該熱交換器より流出する流体を前記液抜き部の直下の段へ導入する第三の配管と、
を備えたHIDiC。
【0064】
2)濃縮部として利用される棚段塔部或いは充填塔部を含む高圧塔と、
前記高圧塔よりも高い位置に配置され、回収部として利用される棚段塔部或いは充填塔部を含む低圧塔と、
前記低圧塔の塔頂部と前記高圧塔の塔底部を連通させる第一の配管と、
前記第一の配管の途中に設置され、前記低圧塔の塔頂部からの蒸気を圧縮して前記高圧塔の塔底部に送るコンプレッサーと、
前記低圧塔(特には低圧塔に含まれる回収部)の所定の段に設けられ、上から流下してきた液を溜める液溜め部と、
前記低圧塔の前記液溜め部内に配置された熱交換器と、
前記高圧塔(特には高圧塔に含まれる濃縮部)の所定の位置に設けられた、上下の段を完全に仕切る仕切板と、
前記仕切板の下側の蒸気を前記熱交換器へ導入する第二の配管と、
前記第二の配管を経由して前記熱交換器へ導入された後に前記熱交換器より流出する流体を前記仕切板の上側へ導入する第三の配管と、
を備えたHIDiC。
【0065】
3)前記仕切板を挟んで上下に位置する空間を連通させる、制御弁を備えた配管をさらに備えた、2)に記載のHIDiC。
【0066】
4)前記低圧塔の塔頂部に、及び/又は、前記棚段塔部或いは充填塔部の所定の段に原料を供給する原料供給配管をさらに備えた、1)から3)のいずれか1項に記載のHIDiC。
【0067】
5)前記高圧塔の塔底部に溜まった液を前記原料供給配管へ圧送するためのポンプ及び配管をさらに備えた、4)に記載のHIDiC。
【0068】
〔前述の1)の例の詳細〕
図9は前述の1)の例のHIDiCの全体構成図を示している。このHIDiCは、高圧塔1と、高圧塔1よりも高い位置に配置された低圧塔2とを有している。高圧塔1は、塔底部1aと、棚段塔部(或いは充填塔部)1bと、塔頂部1cとから構成されている。低圧塔2もまた、塔底部2aと、棚段塔部(或いは充填塔部)2bと、塔頂部2cとから構成されている。
【0069】
棚段塔部1b,2bは塔内に水平な棚板(トレイ)をいくつも設置したタイプの塔である。それぞれの棚板間の空間を段という。各段では気液接触が促進され物質移動が行われる結果、より揮発性の高い成分に富むことになった気相は上の段に送られ、より揮発性の低い成分に富むことになった液相は下の段へ流れ落ち、そこでまた新たな液相、或いは気相と気液接触を行い物質移動が行われる。このようにして塔の上部の段ほど揮発性の高い成分に富み、下部の段ほど揮発性の低い成分に富むことになり、蒸留操作が行われる。
【0070】
棚段塔部に置換可能な充填塔部は中空の塔内に何らかの充填物を入れ、その表面で気液接触を行わせるタイプの塔である。棚段塔部と同じ機構により塔の上部ほど揮発性の高い成分に富み、下部ほど揮発性の低い成分に富むことになり、蒸留操作が行われる。
【0071】
図9では棚段塔部1b,2b(或いは充填塔部)の内部が空白に描かれているが、実際は上記のような構造が採られている。
【0072】
さらに高圧塔1および低圧塔2の各々について個別に詳述する。まずは、低圧塔2を説明する。
【0073】
低圧塔2の塔底部2aの外側には、リボイラーと呼ばれる加熱器3が配設されており、配管21が塔底部2aの空間下部から加熱器3を介して塔底部2aの空間上部へ設けられている。したがって、低圧塔2の棚段塔部2b(或いは充填塔部)を流下した液は塔底部2aに溜まり、この液の一部は加熱器3で加熱されて蒸気になって塔底部2aに戻る。また、塔底部2aの最底から、揮発性の低い成分に富んだ缶出液が配管22を通して得られる。
【0074】
低圧塔2の塔頂部2cは原料を供給する位置となっている。塔頂部2cはコンプレッサー4を介して高圧塔1の塔底部1aに、配管(低圧部の塔頂蒸気を高圧部の塔底部に導くライン)23を用いて接続されている。ここでは原料供給位置を低圧塔2の塔頂部2cとしたが、原料供給位置は棚段塔部2b(或いは充填塔部)の任意の段であってもよい。この場合、低圧塔の原料供給位置より上の部分は濃縮部であり、低圧塔の原料供給位置より下の部分は回収部であり、高圧塔の内部は濃縮部である。
【0075】
また、原料供給箇所は1カ所のみであってもよいが、原料が複数存在してもよく(すなわち原料供給箇所が相異なる複数の箇所であってもよく)、この場合例えば、原料供給位置は低圧塔2の塔頂部2cと、それ以外の任意の段(高圧塔1の段も含む)とすることが可能である。本発明に関して、原料供給位置が複数存在する場合、複数の原料供給位置のうちの任意の一つを選び、その選んだ原料供給位置を境に、上の部分を濃縮部、下の部分を回収部と考えることができる(ここでいう「上」および「下」は、蒸留操作の観点からの上および下を意味し、機器の実際の配置とは必ずしも一致しない。高圧塔が低圧塔より低い位置に配置されていたとしても、高圧塔の内部は、常に低圧塔の内部より「上」である)。
【0076】
加えて、低圧塔2の棚段塔部2b(或いは充填塔部)は所定の段(特には回収部内の段)に液抜き部2dを有している。液抜き部2dは、
図10に示すように、低圧塔2の上部から流下してきた液10を液溜め用棚板5に溜め、液10の一部を低圧塔2の外部へ抜き出す。液抜き部2dには、液10の一部を高圧塔1へ向かわせる配管24が接続されている。また、液抜き部2dの直ぐ下の段には、高圧塔1側からの配管25が低圧塔2の外壁を貫通して挿入されている。液抜き部2dの直ぐ下の段に挿入された配管25からは、後述するように蒸気11と液12が混ざった流体が導入され、蒸気11は上昇し、液12は下へ落ちる。
【0078】
高圧塔1の塔底部1aの最底には配管26の一端が接続されており、この配管26の他端は、低圧塔2の塔頂部2cへ原料を供給する配管27と接続されている。高圧塔1の塔底部1aに溜まった液を、高圧塔1よりも高い位置に位置する低圧塔2の塔頂部2cに還流するため、配管26の途中には送出ポンプ6が必要となる。配管26および配管27の一部(配管26の合流点から下流)によって、高圧部の塔底液を低圧部、特には低圧部の塔頂部に導くラインが形成される。
【0079】
高圧塔1の塔頂部1cの外側には、コンデンサーと呼ばれる凝縮器7が配設されており、配管28が塔頂部1cの空間上部から凝縮器7へ設けられている。したがって、高圧塔1の塔頂部1cに移動してきた蒸気は凝縮器7で冷却されて液体になり、揮発性の高い成分に富んだ留出液が得られる。また、その液体の一部は必要に応じて塔頂部1cに還流される。
【0080】
加えて、高圧塔1の棚段塔部1b(或いは充填塔部)には所定の段(特には濃縮部内の段)にチューブバンドル型熱交換器8が差し込まれている。チューブバンドル型熱交換器8のU形チューブにおける平行なチューブ部分は、凝縮した液を一度溜め、また上昇蒸気を整流するための液溜め用トレイ9に沿って配されている。該平行なチューブ部分のうち下側のチューブ部分8aは、低圧塔2の液抜き部2dに接続された配管24と繋がっている。そして上側のチューブ部分8bは、液抜き部2dの直ぐ下の段に挿入されている配管25と繋がっている。
【0081】
ここで、チューブバンドル型熱交換器8の作用について説明する。
本装置では低圧塔2の塔頂部2cから出た蒸気はコンプレッサー4にて昇圧および昇温されて高圧塔1の塔底部1aに供給される。この昇温された蒸気13(
図11参照)は棚段塔部1bに導入されて上昇し、チューブバンドル型熱交換器8のUチューブと接触する。このとき、熱交換器8の下側のチューブ部分8aには低圧塔2の任意の段(特には回収部内の段)における液が配管24により導入されているため、このチューブ部分8a内の液が蒸気13の熱で加熱されるとともに、チューブ部分8aに接触した蒸気13の一部は液14となって下へと落ちる。さらに、熱交換器8の上側のチューブ部分8bも蒸気13の熱で加熱されているので、配管24から熱交換器8内に導入された液体は下側のチューブ部分8aから上側のチューブ部分8bを移動するにつれて、液相と気相が混ざった流体に変わる。そして、この流体は塔外の配管25を通って低圧塔2の液抜き部2dの直ぐ下の段に導入される(
図9参照)。このような流体の循環においては、本構成がサーモサイフォン方式となっているため、ポンプなどの圧送手段を特に必要としない。
【0082】
つまり、低圧塔2の液抜き部2dから高圧塔1の熱交換器8の下側のチューブ部分8aまでを配管24で接続し、さらには、高圧塔1の熱交換器8の上側のチューブ部分8bから低圧塔2の液抜き部2dの直ぐ下の段までを配管25で接続しているため、低圧塔2から高圧塔1へ重力により液体が流れ、これによって上記の流体はポンプが無くても高圧塔1から低圧塔2へ押し流される。
【0083】
以上のように本例では、熱交換器8によって高圧塔1内の蒸気の熱を奪い、この熱を配管25によって高圧塔1(特には濃縮部)から低圧塔2(特には回収部)へ移動させることができる。本例のように配管24,25および熱交換器8を用いた熱移動システムは、あたかも、高圧塔1の任意の段(特には濃縮部内の段)にサイドコンデンサーが設置されると同時に低圧塔2の任意の段(特には回収部内の段)にサイドリボイラーが設置されているかのような構成である。したがって、上記熱移動システムを備えない蒸留装置と比べて、高圧塔1のコンデンサー7の除熱量が小さくでき、低圧塔2のリボイラー3の入熱量も小さくでき、結果、エネルギー効率の極めて高い蒸留装置を提供することができる。
【0084】
なお、
図9では上記熱移動システムが1セットだけ示されているが、例えば全理論段数の10〜30%に相当するセット数の熱移動システムを設置することができる。勿論、熱移動システムの設置数、熱交換器や配管の配置位置は設計に応じて任意に決められている。
【0085】
このようなHIDiCにおいて、
図1に示すように流量制御弁101を中間還流ライン(特には配管26)に設け、中間還流の流量を制御することができる。なお、中間還流の流量は、ポンプの回転数制御など、その他の流量制御手段により制御される場合もある。
【0086】
〔前述の2)の例の詳細〕
次に前述の2)の例のHIDiCを説明するが、1)の例と同じ構成要素については同じ符号を使用して説明することにする。
【0087】
図12は前述の2)の例の熱交換型蒸留装置の全体構成図を示している。この蒸留装置は、高圧塔1と、高圧塔1よりも高い位置に配置された低圧塔2とを有している。高圧塔1は、塔底部1aと、棚段塔部(或いは充填塔部)1bと、塔頂部1cとから構成されている。低圧塔2もまた、塔底部2aと、棚段塔部(或いは充填塔部)2bと、塔頂部2cとから構成されている。棚段塔部或いは充填塔部の具体的構成は1)の例と同様である。
【0088】
この例は、チューブバンドル型熱交換器8が低圧塔2(特には回収部)側に配置されている点が1)の例と異なっている。
【0089】
本例の低圧塔2については、塔底部2aと塔頂部2cに付属する構成(リボイラー3、配管21,22,23,27など)は
図12に示すように前述の1)の例と同じであるが、棚段塔部2b(或いは充填塔部)に関する構成が1)の例と比べて変更されている。
【0090】
棚段塔部2b(或いは充填塔部)は所定の段(特には回収部内の段)に液溜め部2eを有している。液溜め部2eは、上から流下してきた液10を液溜め用棚板15上に所定量貯留し、液溜め用棚板15から溢れた液は下へ落とせるようになっている。液溜め部2eに貯留された液の中にチューブバンドル型熱交換器8のUチューブが浸漬されるように、液溜め部2e内にチューブバンドル型熱交換器8が差し込まれている(
図13参照)。チューブバンドル型熱交換器8のU形チューブにおける平行なチューブ部分8a,8bは、液溜め用棚板15に沿って配されている。
【0091】
該平行なチューブ部分のうち上側のチューブ部分8bには、高圧塔1から低圧塔2へ流体を送る配管29(
図12参照)が接続されている。下側のチューブ部分8aには、低圧塔2から高圧塔1へ流体を送る配管30(
図12参照)が接続されている。
【0092】
ここで、液溜め部2eでの熱交換器8の作用について説明する。
【0093】
本装置では低圧塔2の塔頂部2cから棚段或いは充填層を通って原料液が流下してくる。この液10(
図13参照)は、任意の段(特には回収部内の段)に設けられた液溜め用棚板15上の液溜め部2eに溜まる。液溜め部2e内にはチューブバンドル型熱交換器8のU形チューブが配置されているため、該U形チューブは液10の中に浸漬されることとなる。この状態において熱交換器8の上側のチューブ部分8bに高圧塔1内の高温蒸気が配管29によって導入されたとき、高温蒸気が移動するチューブ部分8b,8aの外壁と接している液10の一部は加熱され蒸気18になって上昇する(
図13参照)。また配管29から熱交換器8に導入された高温蒸気は、上側のチューブ部分8bから下側のチューブ部分8aを移動するにつれて、液相と気相が混ざった流体に変わる。この流体は塔外の配管30を通り、後述するような高圧塔1の仕切板16上の段に導入される(
図12参照)。仕切板16上は仕切板16下よりも低い操作圧力に設定されており、この圧力差により流体の循環が行われる。このような流体の循環においては、本構成は1)の例と同じようにポンプなどの圧送手段を特に必要としない。
【0094】
つまり、高圧塔1における所定の段(特には濃縮部内の段)から低圧塔2における熱交換器8の上側のチューブ部分8bまでを配管29で接続し、低圧塔2における熱交換器8の下側のチューブ部分8aから高圧塔1における前記所定の段までを配管30で接続しているため、仕切板16上下の圧力差により、高圧塔1内の高圧蒸気は低圧塔2における熱交換器8に向かって配管29を上昇し、これによって、熱交換器8内で蒸気から変移した液が低圧塔2から塔外の配管30に押し出され、高圧塔1へ重力により流れる。したがって、ポンプなどの圧送手段は不要である。
【0096】
高圧塔1についても、塔底部1aと塔頂部1cに付属する構成(コンデンサー7、配管23,26,28など)は
図12に示すように1)の例と同じであるが、棚段塔部1b(或いは充填塔部)に関する構成が1)の例と比べて変更されている。具体的には、高圧塔1の棚段塔部1b(或いは充填塔部)は途中の位置(特には濃縮部内の位置)で仕切板16により上下の段が完全に仕切られている。仕切板16の直ぐ下の段は配管29と連通しており、この段での上昇蒸気は、鉛直方向に延びる配管29によって、低圧塔2の液溜め部2eに配置された熱交換器8の上側のチューブ部分8bに送られる。
【0097】
仕切板16の上側の段には、低圧塔2側からの配管30が高圧塔1の外壁を貫通して挿入されている。この配管30から仕切板16の上側の段に、蒸気と液が混ざった流体が導入され、蒸気は上昇し、液は下へ落ちて仕切板16上に溜まる。その上昇蒸気は塔頂部1cに移動すると、配管28を通って凝縮器7で冷却される。結果、揮発性の高い成分に富んだ留出液が得られる。
【0098】
また仕切板16を挟んで上下に位置する二つの段は、制御弁17を備えた配管31により連絡可能となっている。仕切板16上に溜まった液は、制御弁17の開放操作により、仕切板16の下方の段へ適時送られる。
【0099】
以上のように本例では、配管29によって高圧塔1内(特には濃縮部内)の蒸気を塔外に抜き出し、その蒸気を低圧塔2内(特には回収部内)の熱交換器8に導入することで、高圧塔1内の熱(特には濃縮部内の熱)を奪い低圧塔2内(特には回収部内)に移動させることができる。本例のように配管29,30および熱交換器8を用いた熱移動システムは、あたかも、高圧塔1の任意の段(特には濃縮部内の段)にサイドコンデンサーが設置されると同時に低圧塔2の任意の段(特には回収部内の段)にサイドリボイラーが設置されているかのような構成である。したがって、上記熱移動システムを備えない蒸留装置と比べて、高圧塔1のコンデンサー7の除熱量が小さくでき、低圧塔2のリボイラー3の入熱量も小さくでき、結果、エネルギー効率の極めて高い蒸留装置を提供することができる。
【0100】
なお、
図12では上記熱移動システムが1セットだけ示されているが、本例の場合も1)の例のように、熱移動システムの設置数、熱交換器や配管の配置位置は設計に応じて任意に決められている。
【0101】
このようなHIDiCにおいても、
図1に示すように流量制御弁101を中間還流ライン(特には配管26)に設け、中間還流の流量を制御することができる。なお、中間還流の流量は、ポンプの回転数制御など、その他の流量制御手段により制御される場合もある。