特許第6266877号(P6266877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266877グリチルレチン酸ステアリル配合乳化組成物
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  • 特許6266877-グリチルレチン酸ステアリル配合乳化組成物 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266877
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】グリチルレチン酸ステアリル配合乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20180115BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20180115BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180115BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20180115BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61K8/63
   A61K8/37
   A61K8/81
   A61K8/34
   A61K8/55
   A61K8/46
   A61K8/36
   A61K8/44
   A61K8/06
   A61Q19/00
   A61Q17/04
   A61Q1/02
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-254111(P2012-254111)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2013-173728(P2013-173728A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-15394(P2012-15394)
(32)【優先日】2012年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 正大
(72)【発明者】
【氏名】顧 一凡
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕子
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正美
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−013100(JP,A)
【文献】 特開2002−191387(JP,A)
【文献】 特開2007−126438(JP,A)
【文献】 特開平10−194920(JP,A)
【文献】 特開平07−149621(JP,A)
【文献】 特開2004−091360(JP,A)
【文献】 特開平04−077409(JP,A)
【文献】 特開2006−232732(JP,A)
【文献】 Highside, Japan,Emulsion Gel,Mintel GNPD,2011年10月,ID:1656833,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/
【文献】 Fancl, Japan,Cream,Mintel GNPD,2009年 5月,ID:1115024,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/
【文献】 USANA Health Sciences, USA,Intensive Hand Therapy,Mintel GNPD,2010年 3月,ID:1287084,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/
【文献】 Unza, Malaysia,Cellu-Age Therapy Night Moisturising Cream,Mintel GNPD,2005年12月,ID:423131
【文献】 Yakult Honsha, Japan,Balance Up Eye Film,Mintel GNPD,2005年12月,ID:421513,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/
【文献】 Yakult Honsha, Japan,Essence,Mintel GNPD,2011年 7月,ID:1601829,URL,http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E);
(A)グリチルレチン酸ステアリル
(B)イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、及びミリスチン酸イソプロピルから選ばれる1種以上のエステル油
(C)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
(D)乳化剤
(E)エタノール
を配合し、成分(D)が(D−1)〜(D−4);
(D−1)リン脂質
(D−2)N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム
(D−3)炭素数16〜22の高級脂肪酸をアルカリ金属又はトリエタノールアミンで中和した
(D−4)N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム
から選ばれる1種以上であることを特徴とする乳化組成物。
【請求項2】
前記成分(A)と成分(B)の配合質量比が、(A):(B)=1:1〜1:15であることを特徴とする請求項1記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記乳化組成物が、化粧料又は皮膚外用剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリチルレチン酸ステアリル配合乳化組成物に関し、さらに詳細には、グリチルレチン酸を析出させることなく、乳化組成物中に安定に配合することが可能であり、経時での乳化安定性、更には使用性において、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさに優れる乳化組成物に関する。また、該乳化組成物を用いた化粧料並びに皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グリチルレチン酸ステアリルは、抗炎症効果が知られている(非特許文献1)ため、化粧料や皮膚外用剤に抗炎症効果を付与する目的で、0.3質量%以下の配合量で古くから汎用されてきた。近年、グリチルレチン酸ステアリルに美白作用があること及び、その詳細な作用機序が明らかにされ(特許文献1)、グリチルレチン酸ステアリルを配合した化粧料や皮膚外用剤はさらに有用なものとなっている。一方で、グリチルレチン酸ステアリルの十分な美白効果を得るためには、0.05〜5.0質量%の高濃度で化粧料や皮膚外用剤に配合することが必要とされている(特許文献1)。
【0003】
グリチルレチン酸ステアリルは脂溶性が高いので、通常、皮膚外用剤や化粧料に配合するためには、油剤中に溶解もしくは懸濁した状態にする必要がある。そのため、油溶性薬剤を配合した皮膚外用剤や化粧料は、油剤の配合による使用時のベタつきや油っぽさが生じてしまう。一方、配合する油分量を減らした場合、油のべたつきは改良されるが、保湿効果、ハリ感などの乳化組成物としての使用性が低下するだけでなく、高濃度の油溶性薬剤の配合が難しくなり、一旦は配合できたとしても経時で析出するなどの安定性上の問題点があった。
特許文献2には、微細ワックス中に油溶性薬剤を内包させ、これを水性成分分散媒中に分散させることで、油溶性薬剤を配合させながらみずみずしい感触を実現する技術も開示されている。しかし、主として常温固形のワックスと非イオン界面活性剤が水性成分に配合されるため、皮膚への柔軟性付与効果や、なめらかな伸び広がりに乏しいものであった。
【非特許文献1】「化粧品技術者会誌」,31巻,4号,p461−465,1997年発行
【特許文献1】特開2004−300048号公報
【特許文献2】特開2009−155326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような状況から油溶性薬剤であるグリチルレチン酸ステアリルを高濃度で安定に配合でき、且つ使用性に優れた化粧料並びに皮膚外用剤を開発することが求められていた。すなわち、本発明の目的は、経時でグリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合でき、更には経時での乳化安定性にも優れ、且つ使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさに優れた使用性を有する乳化組成物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者らは経時でグリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合でき、更には乳化安定性及び使用性にも優れた乳化組成物を得るための検討を行った。その過程で、特定のエステル油を用いるとグリチルレチン酸ステアリルの皮膚への浸透が促進されることを見出し、グリチルレチン酸ステアリルの薬効を高められることが示唆された。さらにこの特定のエステル油はグリチルレチン酸ステアリルとの相溶性に優れており、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく乳化物に安定に配合できること、また、この特定のエステル油をアルキル変性カルボキシビニルポリマーにて乳化すると、乳化安定性が優れるだけでなく使用性にも優れるという知見を得て、本発明を完成させた。また、乳化安定性や使用性をさらに向上させるためには、これらに乳化剤及び/又はエタノールを配合すべきであるという知見も得た。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(C);
(A)グリチルレチン酸ステアリル
(B)イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、及びミリスチン酸イソプロピルから選ばれる1種以上のエステル油
(C)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
を配合することを特徴とする乳化組成物に関する。
【0007】
また、本発明の成分(A)と成分(B)の配合質量比が、(A):(B)=1:1〜1:15であることを特徴とする乳化組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、成分(D)乳化剤を配合することを特徴とする乳化組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、成分(D)が(D−1)〜(D−4);
(D−1)リン脂質
(D−2)N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム
(D−3)炭素数16〜22の高級脂肪酸
(D−4)N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム
から選ばれる1種以上であることを特徴とする乳化組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、成分(E)エタノールを配合することを特徴とする乳化組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、化粧料又は皮膚外用剤であることを特徴とする乳化組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のグリチルレチン酸ステアリル配合乳化組成物は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく、乳化組成物中へ安定に配合することができるため、グリチルレチン酸ステアリルが有する抗炎症、美白効果を十分に発揮させることが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさに優れる乳化組成物に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】エステル油によるグリチルレチン酸ステアリルの皮膚浸透促進効果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
本発明の成分(A)のグリチルレチン酸ステアリルは、グリチルレチン酸のステアリルアルコールエステルである。グリチルレチン酸は、たとえばマメ科カンゾウ属Glycyrrhiza Glabraなどの植物から得ることができる。本発明に用いられるグリチルレチン酸ステアリルは、抗炎症、美白効果を付与させる成分として配合されるもので、通常の化粧料に使用されているものであれば製造方法や純度等は特に限定されないが、医薬部外品原料規格に収載の「グリチルレチン酸ステアリル」に適合するものが好ましい。
【0015】
本発明の乳化組成物における成分(A)の配合量は、0.05〜1質量%(以下、「%」と略記する)が好ましく、更に好ましくは0.2〜0.7%である。この範囲であると、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが容易であり、更には乳化安定性、油のべたつきの無さ、及びハリ感に優れる。
【0016】
本発明の成分(B)は、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、またはミリスチン酸イソプロピルから選ばれる1種以上のエステル油である。これらのエステル油は、グリチルレチン酸ステアリルとの相溶性に優れる成分として配合されるもので、脂肪酸と分岐アルコールがエステル結合したモノエステル油である。本発明に用いられるエステル油は、通常の化粧料に使用されているものであれば特に限定されない。これらのエステル油は必要に応じて一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。皮膚への柔軟性付与効果およびグリチルレチン酸ステアリルの皮膚浸透促進効果の点から、特にミリスチン酸イソプロピルが好ましい。
【0017】
本発明の乳化組成物における成分(B)の配合量は、0.05%〜15%が好ましく、0.4%〜7.0%が特に好ましい。この範囲であると、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、皮膚への柔軟性付与、及び油のべたつきの無さに優れる。
【0018】
本発明の成分(A)と成分(B)の配合質量比は、(A):(B)=1:1〜1:15が好ましく、更に好ましくは(A):(B)=1:2〜1:10である。この範囲であると、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、皮膚への柔軟性付与、及び油のべたつきの無さに優れる。
【0019】
本発明の成分(C)のアルキル変性カルボキシルビニルポリマーは、アクリル酸とメタクリル酸アルキルのコポリマー、またはメタクリル酸アルキルのホモポリマーをいう。本発明においては、乳化剤として、また乳化安定性の向上、使用時ののび広がり、みずみずしさを良好なものとするために用いられる。成分(C)のアルキル変性カルボキシルビニルポリマーは、通常の化粧品に使用されているものであれば特に限定されないが、医薬部外品原料規格に収載されている「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体」が好ましく、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーが特に好ましい。市販品としては、具体的には、「Carbopol ETD 2020 Polymer」、「Carbopol 1342 Polymer」、「Carbopol 1382 Polymer」、「Carbopol Ultrez 20 Polymer」、「Pemulen TR−1」、「Pemulen TR−2」(以上、いずれもNoveon社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明の乳化組成物における成分(C)の配合量は、0.05〜0.5%が好ましく、更に好ましくは0.1〜0.3%である。この範囲であると、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり及び、みずみずしさに優れる。
【0021】
本発明の成分(D)の乳化剤は、通常の化粧料や皮膚外用剤に使用されているものであれば特に限定されず、ノニオン系乳化剤、アニオン系乳化剤、及びカチオン系乳化剤があげられる。これらの乳化剤は、本発明の乳化組成物の乳化安定性を向上させ、使用性をより優れたものにするために配合される。これらの乳化剤は必要に応じて一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。本発明における乳化剤としては、(D−1)リン脂質、(D−2)N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、(D−3)炭素数16〜22の高級脂肪酸、(D−4)N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムより選ばれる乳化剤を用いると、より乳化安定性を良くすることができ、使用性においては、保湿効果、ハリ感を付与することができる。中でもリン脂質が特に好ましい。
【0022】
本発明の乳化組成物における成分(D)の配合量は、0.1〜5%が好ましく、更に好ましくは1〜4%である。この範囲であると、乳化安定性が優れ、使用性においては、保湿効果及び、ハリ感に優れる。
【0023】
本発明の成分(D−1)のリン脂質は、乳化剤としての機能を発揮するものであり、天然の大豆や卵黄から抽出した大豆レシチン、卵黄レシチン及び/又はこれらを水素添加した水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチンや合成リン脂質など、一般にリン脂質として知られるものや、アシル化リン脂質、糖やポリエチレングリコールなどで修飾したリン脂質誘導体などが使用できる。リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びホスファチジルイノシトールなどが好ましく用いられる。リン脂質を構成する脂肪酸としては、炭素数7〜22の飽和あるいは不飽和カルボン酸が挙げられる。本発明のリン脂質は、単独、あるいは二種以上を混合して使用してもよい。この中でもホスファチジルコリンを30%以上配合するリン脂質であると、均一な乳化滴が得られるためより好ましい。
【0024】
本発明の成分(D−2)のN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムは、乳化剤としての機能を発揮するものであり、従来から化粧料等で乳化剤として使用されているものであれば特に限定されない。
【0025】
本発明の成分(D−3)の炭素数16〜22の高級脂肪酸は、乳化剤としての機能を発揮するものであり、従来から化粧料等でアニオン性乳化剤として使用されているものであれば特に限定されない。例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。これらの高級脂肪酸は、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。これらの高級脂肪酸の中でも、パルミチン酸、ステアリン酸及びベヘニン酸であると、乳化安定性が高く、保湿効果、ハリ感のある乳化組成物が得られるため、より好ましい。これらの高級脂肪酸は、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属やトリエタノールアミンにより中和して用いるのが好ましい。
【0026】
本発明の成分(D−4)のN−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムは、乳化剤としての機能を発揮するものであり、従来から化粧料等で使用されているものであれば特に限定されない。
【0027】
本発明の乳化組成物における成分(E)のエタノールは、例えば95度未変性エタノール、種々の変性エタノール等の市販されているものでよく、本発明のエタノール中の水含有量は、一般に0.5〜20%である。本発明の乳化組成物におけるエタノールは、析出抑制効果を向上させ、みずみずしい使用感を付与することを目的として特定の濃度で配合させるものである。
【0028】
本発明の乳化組成物における成分(E)のエタノールの配合量は、0.1〜15%であることが好ましく、更に好ましくは1〜10%である。この範囲であると、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、使用性においては、油のべたつきの無さ及び、みずみずしさに優れる。
【0029】
本発明の乳化組成物の形態(水中油型、油中水型、多重乳化、マイクロエマルション等)はいずれでもよく、用途や目的に応じて適宜選択することができる。なめらかな伸び広がり、油のべたつきの無さ、及びみずみずしさの点から、水中油型の乳化組成物が好ましい。
【0030】
本発明の乳化組成物には、上記必須成分の他に水が配合されるが、化粧料等に一般に用いられるものであれば、特に制限されない。水の他にも精製水、温泉水、深層水、或いは植物の水蒸気蒸留水でもよく、必要に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また配合量は、特に限定されず、適宜、他の成分量に応じて配合することができるが、水中油型乳化組成物であれば50〜90%、油中水型であれば30〜80%が好ましい。
【0031】
本発明の乳化組成物の製造方法としては、水相や油相の粘度に応じて分散乳化法、転相乳化法、ゲル乳化法、PIT乳化法など種々の方法を使用することができるが、その一つの水中油型乳化組成物の例としては、次の転相乳化による方法が挙げられる。すなわち、成分(A)のグリチルレチン酸ステアリル、成分(B)のエステル油、成分(D)の乳化剤を70℃以上の温度で均一に分散させ、ついでこの分散液へ70℃以上に加温した水を徐々に添加撹拌して、徐々に室温まで冷却後、エタノールを添加攪拌することにより得られる。
【0032】
また、本発明の乳化組成物には、上記必須成分の他に一般に化粧料等に使用される成分、例えば、水可溶性成分、保湿剤、増粘剤、粉体、色素、紫外線吸収剤、被膜形成性剤、pH調整剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等、通常の化粧料等に用いられる成分を本発明の効果を損なわない量的質的範囲において適宜配合することができる。
【0033】
本発明の乳化組成物は、種々の用途の化粧料として利用できる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、パック化粧料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、メーキャップ化粧料、化粧用下地化粧料等の化粧料を例示することができる。その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【0034】
本発明の乳化組成物は、皮膚外用剤の用途としても利用可能である。例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等が挙げられる。またその使用方法は、前記した化粧料と同様に挙げることができる。
【試験例】
【0035】
以下、エステル油のグリチルレチン酸ステアリルの皮膚浸透促進効果について、試験例をあげて詳細を説明する。
【0036】
(皮膚浸透促進性の評価)
(1)各試料液の準備
表1に示す組成の試料液を下記の製法により調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
(2)製造方法
A:成分(1)〜(6)を80℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(7)を80℃に加熱する。
C:BにAを徐々に添加し、ホモミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、得られた水中油型乳化物を試料液とした。
【0039】
(3)各試料液の評価
香粧会誌,31(1),1−7(2007)記載の藤井らの方法に従い、Yucatanmicropig(YMP)皮膚(日本チャールズリバー社)の皮下組織及び皮下脂肪を取り除いた後、この皮膚をフランツ型セルにセットし、真皮側(レセプター相)にPBS、角層側(ドナー相)に上記各試料液の10μL/cm2を適用した。一定時間適用後、表皮と真皮とに分離し、HPLC(Jasco LC−2000plus PDA検出器)を用いて各部位に含まれるグリチルレチン酸ステアリルをそれぞれ定量した。
その他、上記実験については、「OECD In vitro経皮吸収試験法」、「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」を参考にして実施した。
【0040】
図1に、表皮に含まれていたグリチルレチン酸ステアリルの量を示す。この結果から、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリンやオレイルアルコールに比べ、イソノナン酸イソノニル及びミリスチン酸イソプロピルはグリチルレチン酸ステアリルの皮膚への浸透を促進する効果に優れることがわかった。
【実施例1】
【0041】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0042】
本発明品1〜33及び比較品1〜5:水中油型乳化化粧料
表2〜5に示す水中油型乳化化粧料を下記の製法により調整した。得られた水中油型乳化化粧料における、グリチルレチン酸ステアリルの析出の有無、更には乳化安定性、使用性における、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさについて下記の方法により評価し、組成と併せて表2〜5に示した。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
(製造方法)
A:成分(1)〜(5)及び成分(8)〜(12)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(6)、(7)及び成分(14)、(15)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、成分(13)を徐々に添加し、デスパミキサーにて混合し、水中油型乳化化粧料を得た。
【0048】
(評価方法:乳化安定性)
製造直後及び50℃の恒温槽に1ヶ月間保管した各試料の乳化滴の平均粒子径を、コールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製:サブミクロン粒子アナライザーN5)で測定し、製造直後を基準として平均粒子径の変化率を以下の4段階判定基準にて評価した。また外観性状は目視にて、以下の4段階判定基準に従って乳化状態を評価した。
【0049】
4段階評価判断基準
(判定基準) (評価)
平均粒子径の変化率が±25%未満、かつ外観に変化なし :◎
平均粒子径の変化率が±25%以上±50%未満、かつ外観に変化なし :○
平均粒子径の変化率が±50%以上、又は外観上わずかな離しょう :△
平均粒子径の変化率が±50%以上、かつ外観上乳化不良又は著しく離しょう :×
【0050】
(評価方法:析出抑制)
製造直後及び50℃の恒温槽に1ヶ月間保管した各試料を、倍率100倍、露光時間1/200秒にて正立型顕微鏡(オリンパス社製)を用いて偏光下にて観察した。偏光下では、グリチルレチン酸ステアリルが乳化組成物中に析出した場合、白色の光輝物として観察されるので、グリチルレチン酸ステアリルの析出の有無を、以下の3段階判定基準に従って評価した。
【0051】
3段階評価判断基準
(判定基準) (評価)
白色の光輝物が全く観察されない :○
不明瞭な白色の光輝物が観察される :△
明瞭な白色の結晶光輝物が観察される :×
【0052】
(評価方法:均一な伸び広がり)
各試料を専門パネル20名が前腕内側部に適量塗擦する使用テストを行い、各人が下記絶対評価にて4段階に評価し評点を付けた。さらに試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
なお、伸び広がりは、乳化状態や、グリチルレチン酸ステアリルの析出の有無によっても大きく影響を及ぼす。乳化状態が良好で、グリチルレチン酸ステアリルの析出がない場合は、均一な伸び広がりとなるが、乳化状態が悪く、グリチルレチン酸ステアリルの析出が多くなることにより、使用感にも影響する場合がある。
【0053】
4段階絶対評価
(評価) (評点)
非常に滑らかで均一な伸び広がりである :4点
滑らかで均一な伸び広がりである :3点
やや不均一な伸び広がりである :2点
不均一な伸び広がりである :1点
【0054】
4段階判定基準
(評点の平均点) (判定)
3.5点を越える :非常に良好 :◎
3点を超える3.5点以下 :良好 :○
2点を超える3点以下 :やや不良 :△
2点以下 :不良 :×
【0055】
(評価方法:皮膚への柔軟性付与)
各試料を専門パネル20名が前腕内側部に適量塗擦する使用テストを行い、各人が下記絶対評価にて4段階に評価し評点を付けた。さらに試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
なお皮膚への柔軟性付与は、乳化状態や、グリチルレチン酸ステアリルの析出の有無によっても大きく影響を及ぼす。乳化状態が良好で、グリチルレチン酸ステアリルの析出がない場合は、皮膚へ柔軟性を付与させるが、乳化状態が悪く、グリチルレチン酸ステアリルの析出が多くなることにより、使用感にも影響する場合がある。
【0056】
4段階絶対評価
(評価) (評点)
非常に皮膚が柔軟になる :4点
皮膚が柔軟になる :3点
皮膚がやや柔軟になる :2点
変わらない :1点
【0057】
4段階判定基準
(評点の平均点) (判定)
3.5点を越える :非常に良好 :◎
3点を超える3.5点以下 :良好 :○
2点を超える3点以下 :やや不良 :△
2点以下 :不良 :×
【0058】
(評価方法:油のべたつきの無さ)
各試料を専門パネル20名が前腕内側部に適量塗擦する使用テストを行い、各人が下記絶対評価にて4段階に評価し評点を付けた。さらに試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
なお、油のべたつきの無さは、乳化状態や、グリチルレチン酸ステアリルの析出の有無によっても大きく影響を及ぼす。乳化状態が良好で、グリチルレチン酸ステアリルの析出がない場合は、油のべたつきの無さを感じるが、乳化状態が悪く、グリチルレチン酸ステアリルの析出が多くなることにより、使用感にも影響する場合がある。
【0059】
4段階絶対評価
(評価) (評点)
非常に油のべたつきが無い :4点
油のべたつきが無い :3点
やや油のべたつきがある :2点
油のべたつきがある :1点
【0060】
4段階判定基準
(評点の平均点) (判定)
3.5点を越える :非常に良好 :◎
3点を超える3.5点以下 :良好 :○
2点を超える3点以下 :やや不良 :△
2点以下 :不良 :×
【0061】
(評価方法:保湿効果)
はじめに前腕内側部において何も化粧料が塗布されていない皮膚の初期水分量を、SKICON−200EX(アイ・ビイ・エス社製)にて測定した後、製造直後の各サンプルを塗布してから10時間後における皮膚水分量を測定した。各サンプルは、5人の健常人にて評価し、初期状態の水分量を100とした場合、10時間後の水分量を相対値として算出し、各パネルの相対値平均水分量により以下の4段階判定基準に従って保湿効果を評価した。
【0062】
4段階評価判断基準
(評価) (判定基準)
初期水分量に対して相対値平均水分量が150%以上 :◎
初期水分量に対して相対値平均水分量が150%未満130%以上 :○
初期水分量に対して相対値平均水分量が130%未満110%以上 :△
初期水分量に対して相対平均水分量が110%未満 :×
【0063】
(評価方法:ハリ感)
各試料を専門パネル20名が前腕内側部に適量塗擦する使用テストを行い、各人が下記絶対評価にて4段階に評価し評点を付けた。さらに試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
なお、ハリ感は、乳化状態や、グリチルレチン酸ステアリルの析出の有無によっても大きく影響を及ぼす。乳化状態が良好で、グリチルレチン酸ステアリルの析出がない場合は、ハリを感じるが、乳化状態が悪く、グリチルレチン酸ステアリルの析出が多くなることにより、使用感にも影響する場合がある。
【0064】
4段階絶対評価
(評点) (評価)
非常にハリを感じる :4点
ハリを感じる :3点
ややハリを感じる :2点
ハリを感じない :1点
【0065】
4段階判定基準
(評点の平均点) (判定)
3.5点を越える :非常に良好 :◎
3点を超える3.5点以下 :良好 :○
2点を超える3点以下 :やや不良 :△
2点以下 :不良 :×
【0066】
(評価方法:みずみずしさ)
各試料を専門パネル20名が前腕内側部に適量塗擦する使用テストを行い、各人が下記絶対評価にて4段階に評価し評点を付けた。さらに試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
なお、みずみずしさは、乳化状態や、グリチルレチン酸ステアリルの析出の有無によっても大きく影響を及ぼす。乳化状態が良好で、グリチルレチン酸ステアリルの析出がない場合は、みずみずしさを感じるが、乳化状態が悪く、グリチルレチン酸ステアリルの析出が多くなることにより、使用感にも影響する場合がある。
【0067】
4段階絶対評価
(評点) (評価)
非常にみずみずしさを感じる :4点
みずみずしさを感じる :3点
ややみずみずしさを感じる :2点
みずみずしさを感じない :1点
【0068】
4段階判定基準
(評点の平均点) (判定)
3.5点を越える :非常に良好 :◎
3点を超える3.5点以下 :良好 :○
2点を超える3点以下 :やや不良 :△
2点以下 :不良 :×
【0069】
表2〜4の結果からも明らかなように、本発明に係わる本発明品1〜33は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる水中油型の乳化組成物であった。表5に示す比較例1は、本発明の構成とは異なる、グリチルレチン酸ステアリルとの相溶性が悪い非極性油である炭化水素系を用いた場合、比較例2は、油剤を抜去した場合、比較例3は、本発明の構成成分であるアルキル変性カルボキシビニルポリマーを、アルキル基を持たない、すなわち乳化能を持たないカルボキシビニルポリマーに置換した場合、比較例4は、本発明の構成成分であるアルキル変性カルボキシビニルポリマーを抜去し、乳化剤であるリン脂質を配合した場合、比較例5は、本発明の構成であるアルキル変性カルボキシビニルポリマー、及び乳化剤を全く配合しない場合、何れもグリチルレチン酸ステアリルを析出の抑制、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与できない水中油型の乳化組成物であった。
【0070】
実施例34:水中油型化粧水
(成分) (%)
(1)グリチルレチン酸ステアリル 0.5
(2)イソノナン酸イソトリデシル 0.05
(3)リン脂質 0.3
(4)精製水 20
(5)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー ※5
0.05
(6)水酸化ナトリウム 0.01
(7)1,3−ブチレングリコール 20
(8)防腐剤 0.1
(9)エタノール 12
(10)精製水 残量
※5 Carbopol 1342 Polymer(Noveon社製)
【0071】
下記の製法により、化粧水を調製した。
(製造方法)
A:成分(1)〜(3)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(4)〜(7)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、これに成分(8)〜(10)と混合し、化粧水を得た。
【0072】
実施例34の化粧水は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる水中油型の化粧水であった。
【0073】
実施例35:水中油型乳液
(成分) (%)
(1)グリチルレチン酸ステアリル 0.7
(2)ミリスチン酸イソプロピル 8
(3)パルミチン酸 0.2
(4)ステアリン酸 0.5
(5)防腐剤 0.1
(6)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー ※6
0.1
(7)水酸化ナトリウム 0.15
(8)グリセリン 5
(9)1,3−ブチレングリコール 7
(10)N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.2
(11)精製水 残量
(12)エタノール 3
(13)香料 0.05
※6 Pemulen TR−2(Noveon社製)
【0074】
下記の製法により、乳液を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(5)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(6)〜(11)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:BにAを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、これに成分(12)及び(13)と混合し、水中油型の乳液を得た。
【0075】
実施例35の水中油型乳液は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる水中油型の乳液であった。
【0076】
実施例36:水中油型クリーム
(成分) (%)
(1)グリチルレチン酸ステアリル 1
(2)イソノン酸イソトリデシル 5
(3)イソノナン酸イソノニル 5
(4)ミリスチン酸イソプロピル 5
(5)ステアリン酸 2
(6)ベヘン酸 0.5
(7)ベヘニルアルコール 1
(8)防腐剤 0.1
(9)精製水 残量
(10)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー※7
0.4
(11)水酸化ナトリウム 0.5
(12)グリセリン 7
(13)1,3−ブチレングリコール 3
(14)N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.2
(15)キサンタンガム 0.1
(16)エタノール 7
(17)香料 0.1
※7 Carbopol 1382 Polymer(Noveon社製)
【0077】
下記の製法により、クリームを調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(8)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(9)〜(15)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:BにAを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、これに成分(16)及び(17)と混合し、水中油型のクリームを得た。
【0078】
実施例36の水中油型のクリームは、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる水中油型のクリームであった。
【0079】
実施例37:水中油型美容液
(成分) (%)
(1)グリチルレチン酸ステアリル 0.8
(2)ミリスチン酸イソプロピル 10
(3)水素添加大豆リン脂質 2
(4)ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート 3
(5)セタノール 1
(6)防腐剤 0.1
(7)キサンタンガム 0.1
(8)アルカリゲネス産生多糖体 0.1
(9)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー ※8
0.35
(10)水酸化カリウム 0.1
(11)グリセリン 5
(12)1,3−ブチレングリコール 15
(13)精製水 残量
(14)エタノール 12
(15)ヘキシジルカルバミン酸コレステリルプルラン 0.05
(16)香料 0.05
※8 Carbopol ETD 2020 Polymer(Noveon社製)
【0080】
下記の製法により、美容液を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(6)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(7)〜(13)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、これに成分(14)〜(16)と混合し、水中油型の美容液を得た。
【0081】
実施例37の水中油型美容液は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる水中油型の美容液であった。
【0082】
実施例38:水中油型ボディ用化粧料
(成分) (%)
(1)グリチルレチン酸ステアリル 1.5
(2)イソノナン酸イソトリデシル 2
(3)ミリスチン酸イソプロピル 3
(4)水素添加大豆リン脂質 1
(5)ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート 0.5
(6)セタノール 0.5
(7)防腐剤 0.1
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.05
(9)カラギーナン 0.05
(10)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー ※9
0.2
(11)グリセリン 10
(12)ジプロピレングリコール 15
(13)水酸化ナトリウム 0.05
(14)精製水 残量
(15)N−ステアロイル−N−メチルタウリン酸ナトリウム 0.5
(16)エタノール 10
(17)香料 0.1
※9 Pemulen TR−1(Noveon社製)
【0083】
下記の製法により、ボディ用化粧料を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(7)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(8)〜(15)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:BにAを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、これに成分(16)及び(17)と混合し、水中油型のボディ用化粧料を得た。
【0084】
実施例38の水中油型ボディ用化粧料は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる水中油型のボディ用化粧料であった。
【0085】
実施例39:水中油型パック化粧料
(成分) (%)
(1)グリチルレチン酸ステアリル 0.05
(2)イソノナン酸イソノニル 0.03
(3)ミリスチン酸イソプロピル 0.02
(4)精製水 残量
(5)N−ステアロイル−N−メチルタウリン酸ナトリウム 0.1
(6)N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.1
(7)防腐剤 0.1
(8)ポリエチレングリコール6000 5
(9)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー ※10
0.5
(10)水酸化ナトリウム 0.15
(11)エタノール 15
(12)香料 0.05
※10 Carbopol Ultrez 20 Polymer」(Noveon社製)
【0086】
下記の製法により、パック化粧料を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(3)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(4)〜(10)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、これに成分(11)、(12)と混合し、水中油型の乳化物を得た。
E:Dで得た乳化物を、不織布(目、鼻、口部分に穴や切り込みのある略顔形)に不織布質量の10倍程度含浸させてパック料を調製した。
【0087】
実施例39の水中油型パック化粧料は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる水中油型のパック化粧料であった。
【0088】
実施例40:水中油型マッサージ化粧料
(成分) (%)
(1)グリチルレチン酸ステアリル 1
(2)イソノナン酸イソトリデシル 3
(3)水素添加大豆リゾリン脂質 0.5
(4)水素添加卵黄リン脂質 0.5
(5)セタノール 0.5
(6)ベヘニルアルコール 0.5
(7)防腐剤 0.1
(8)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー ※5
0.3
(9)水酸化カリウム 0.1
(10)ポリアクリル酸ナトリウム 0.05
(11)1,3−ブチレングリコール 10
(12)精製水 残量
(13)エタノール 0.5
(14)香料 0.05
【0089】
下記の製法により、マッサージ化粧料を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(7)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(8)〜(12)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:BにAを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、これに成分(13)及び(14)と混合し、水中油型のマッサージ化粧料を得た。
【0090】
実施例40の水中油型マッサージ化粧料は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる水中油型のマッサージ化粧料であった。
【0091】
実施例41:水中油型化粧用下地化粧料
(成分) (%)
(1)グリチルレチン酸ステアリル 0.5
(2)イソノナン酸イソトリデシル 10
(3)ステアリン酸 1.5
(4)ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート 2
(5)精製水 50
(6)ポリエチレングリコール400 1.5
(7)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー ※7
0.2
(8)アルギニン 0.95
(9)精製水 残量
(10)エタノール 7
(11)防腐剤 0.1
(12)ポリビニルピロリドン 0.5
(13)合成金雲母 1
(14)メタクリル酸メチルクロスポリマー 0.5
(15)酸化亜鉛 0.1
(16)シリカ 0.05
(17)酸化鉄 0.05
(18)タルク 0.5
【0092】
下記の製法により、化粧用下地化粧料を調製した
(製造方法)
A:成分(1)〜(4)を75℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分(5)〜(8)を75℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cに成分(9)〜(12)を加え均一に混合する
E:Dを室温まで冷却し、成分(13)〜(18)と混合し、水中油型の化粧用下地化粧料を得た。
【0093】
実施例41の水中油型化粧用下地化粧料は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる水中油型の化粧用下地化粧料であった。
【0094】
実施例42:油中水型クリーム状日焼け止め化粧料
( 成 分 ) (%)
(1)ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート 0.5
(2)精製水 残量
(3)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー ※5
0.05
(4)水酸化ナトリウム 0.01
(5)ジプロピレングリコール 10
(6)硫酸マグネシウム 0.5
(7)アスコルビルリン酸マグネシウム 3
(8)ローズマリーエキス 0.1
(9)ポリオキシエチレン(平均付加モル数11)メチルポリシロキサン 3
(10)デカメチルシクロペンタシロキサン 10
(11)イソノナン酸イソトリデシル 10
(12)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5
(13)グリチルレチン酸ステアリル 0.3
(14)ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト 1.2
(15)エタノール 5
【0095】
( 製造方法 )
A:成分(1)〜(8)を均一に分散する。
B:成分(9)〜(13)を均一に分散する。
C:成分(14)及び(15)を均一に分散する。
D:BとCを均一に混合する。
C:Dを攪拌しながら徐々にAを加えて乳化し、油中水型クリーム状日焼け止め化粧
料を得た。
【0096】
実施例42の油中水型クリーム状日焼け止め化粧料は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる油中水型のクリーム状日焼け止め化粧料であった。
【0097】
実施例43:油中水型リキッドファンデーション
( 成 分 ) (%)
(1)ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート 0.3
(2)精製水 残量
(3)グリセリン 1
(4)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー ※5
0.05
(5)水酸化カリウム 0.02
(6)ポリオキシエチレン(平均付加モル数9)メチルポリシロキサン 2
(7)デカメチルシクロペンタシロキサン 27
(8)ミリスチン酸イソプロピル 3
(9)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5
(10)グリチルレチン酸ステアリル 0.2
(11)ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト 1
(12)エタノール 7
(13)ベンガラ 0.2
(14)黄色酸化鉄 1.5
(15)微粒子酸化チタン 3
(16)顔料級酸化チタン 5
(17)ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート 0.1
【0098】
( 製造方法 )
A:成分(1)〜(5)を均一に分散する。
B:成分(6)〜(10)を均一に分散する。
C:成分(11)〜(17)を均一に分散する。
D:BとCを均一に混合する。
C:Dを攪拌しながら徐々にAを加えて乳化し、油中水型リキッドファンデーションを得た。
【0099】
実施例43の油中水型リキッドファンデーションは、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく安定に配合することが可能であり、更には乳化安定性、使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさを付与することができる油中水型のリキッドファンデーションであった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上詳述したように、本発明のグリチルレチン酸ステアリル配合乳化組成物は、グリチルレチン酸ステアリルを析出させることなく、乳化組成物中に安定に配合することが可能であり、経時での乳化安定性、更には使用性においては、なめらかな伸び広がり、皮膚への柔軟性付与、油のべたつきの無さ、保湿効果、ハリ感、及び、みずみずしさに優れる乳化組成物に関する。また、該乳化組成物を用いた化粧料並びに皮膚外用剤に関する。
図1