(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数本の金属フィラメントを撚り合わせることなく一列に引き揃えた主フィラメント束の周りにラッピング材を巻き付けてなるスチールコードであって、前記ラッピング材が非金属繊維に硬化性樹脂を含浸し硬化させたものである、ゴム補強用スチールコードの製造方法であって、
前記主フィラメント束に対応した扁平な断面形状を持つ型を用いて、エポキシ樹脂に架橋ゴム粒子を配合したエポキシ樹脂組成物である硬化性樹脂を含浸させた非金属繊維を前記型の周りに巻き付けた後、前記硬化性樹脂を加熱硬化させることにより前記ラッピング材を型付けし、型付けされたラッピング材を前記型から取り外した後、引き揃えられた前記主フィラメント束の周りに巻き付ける、
ゴム補強用スチールコードの製造方法。
前記非金属繊維が、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、炭素繊維、及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載のゴム補強用スチールコードの製造方法。
【背景技術】
【0002】
空気入りラジアルタイヤは、一般に、カーカスプライの外面とトレッドゴムとの間に、複数のベルトプライを交差させ積層したベルトを備えており、ベルトプライには、優れた引張り強度や引張り弾性を有するスチールコードが使用されている。従来、このようなスチールコードとしては、複数本のフィラメントを撚り合わせたものが一般的である。例えば、1×n構造(n=3〜5)のものや、引き揃えた複数本のフィラメントの周りに金属フィラメントを撚り合わせてなるm+n構造のものが挙げられる。
【0003】
近年、車両の低燃費化の要請から空気入りラジアルタイヤの軽量化が求められており、ベルトについても、スチールコードを被覆するゴム厚みを減少させるなどして、軽量化が図ることが検討されている。その具体的手段の一つとして、複数本のフィラメントを並列に配置し、その周囲に1本の金属フィラメントを巻き付けてラッピングしてなる扁平なスチールコードが提案されている(特許文献1〜3参照)。しかしながら、このようにラッピング材にスチールフィラメントを用いた場合、主フィラメントとの摩擦により、主フィラメントにフレッチング摩耗が生じ、スチールコードの強力を低下させる要因となる。
【0004】
特許文献4には、かかるフレッチング摩耗を抑制するために、ラッピング材として有機繊維を用いることが開示されている。また、特許文献5には、ラッピング材として、タイヤ加硫成形時に溶融する融点50〜200℃の高分子材料を用いることが開示されている。しかしながら、有機繊維をそのまま用いたのでは、形状が不安定であり、一列に引き揃えて配置された主フィラメント束からなるコード形状を維持することは困難である。また、加硫成形時に溶融するラッピング材でも、加硫前の段階では有機繊維そのままであるため、同様にコード形状を維持することは困難である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、実施形態の空気入りタイヤは、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、左右一対のビード部(1)及びサイドウォール部(2)と、左右のサイドウォール部(2)の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部(2)間に設けられたトレッド部(3)とを備えて構成されており、一対のビード部(1)間にまたがって延びるカーカス(4)が設けられている。
【0013】
カーカス(4)は、トレッド部(3)からサイドウォール部(2)をへて、ビード部(1)に埋設された環状のビードコア(5)にて両端部が係止された少なくとも1枚のカーカスプライからなる。カーカスプライは、有機繊維コード等からなるカーカスコードをタイヤ周方向に対し実質上直角に配列してなる。
【0014】
トレッド部(3)におけるカーカス(4)の外周側(即ち、タイヤ径方向外側)には、カーカス(4)とトレッドゴム部(8)との間に、ベルト(7)が配されている。ベルト(7)は、カーカス(4)のクラウン部の外周に重ねて設けられており、1枚又は複数枚のベルトプライ、通常は少なくとも2枚のベルトプライで構成することができ、本実施形態では、カーカス(4)側の第1ベルトプライ(7A)と、トレッドゴム部(8)側の第2ベルトプライ(7B)との2枚のベルトプライで構成されている。ベルト(7)の外周側には、タイヤ周方向に対して0〜5度の角度で螺旋状に巻回する有機繊維コードからなるベルト補強層(9)が、ベルト(7)の幅方向全体を覆うように設けられている。
【0015】
ベルトプライ(7A)(7B)は、スチールコード(10)をタイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、15〜35度)で傾斜させかつタイヤ幅方向に所定の間隔にて配列させてなるものであり、
図2に示すようにコーティングゴム(11)で被覆されている。スチールコード(10)は、上記2枚のベルト層(7A)(7B)間で互いに交差するように配設されている。
【0016】
本実施形態では、スチールコード(10)として、
図3に示すように、金属フィラメント(以下、主フィラメントという。)(12)を、複数本撚り合わせることなく一列に引き揃えて配置した主フィラメント束(13)と、該主フィラメント束(13)の周りに巻き付けられた1本のラッピング材(14)と、を備えてなるn+1構造の扁平なコードが用いられている。
【0017】
主フィラメント(12)としては、各種炭素鋼からなるスチールフィラメントを用いることができ、その直径(フィラメント径)dは、特に限定されない。例えば、直径dが0.15〜0.30mmのものを用いてもよい。
【0018】
主フィラメント束(13)は、同一径の複数本の主フィラメント(12)を、撚り合わせることなく横一列に引き揃えて配置することにより形成することができる。すなわち、主フィラメント(12)は、一つの平面に沿って1層をなすように並列される。そのため、得られるスチールコード(10)は扁平であり、
図2に示すように長径D1と短径D2を持つ。長径D1と短径D2の値は特に限定されない。例えば、長径D1が1.00〜1.50mm、短径D2が0.30〜0.60mmであってもよい。主フィラメント束(13)を構成する主フィラメント(12)の本数(上記のn)も、特に限定されない。例えば、該本数は2〜6本(即ち、n=2〜6)としてもよく、より好ましくは3〜6本である。
【0019】
なお、主フィラメント(12)としては、
図3に示すように、波付けされていない真直な金属フィラメントであってもよく、あるいはまた、波付け加工された金属フィラメントを用いることもできる。波付け加工する場合、主フィラメントは、スチールコードの長径方向にのみ波付けされること、すなわち、長径方向及び長手方向に沿った平面内にて、二次元的に波付けされることが好ましい。この場合、複数本の金属フィラメントを長手方向に同じ波高さ及び波長で型付けしたものを用いてもよい。また、その場合、波付けの位相を複数本の金属フィラメントで一致させて引き揃えてもよく、あるいはまた、位相をずらして引き揃えてもよい。
【0020】
スチールコード(10)は、上記主フィラメント束(13)の周りにラッピング材(14)を螺旋状に巻き付けてなるものである。本実施形態では、ラッピング材(14)として、硬化性樹脂を含浸させた非金属繊維が用いられている。一般に、非金属繊維はスチールフィラメントよりも柔らかいので、かかる非金属繊維をラッピング材(14)として用いることにより、主フィラメント(12)に対するフレッチング摩耗を抑制することができる。また、非金属繊維をそのまま用いるのではなく、硬化性樹脂を含浸させ硬化させることにより、コード形状を維持する効果を発揮することができる。そのため、耐フレッチング性とコード形状の保持を両立することができる。
【0021】
非金属繊維としては、主フィラメント束(13)に対する巻き付け作業性、及び巻き付け後のコード形状保持性の点から、高強度の繊維を用いることが好ましい。具体的には、引張強度が2000MPa以上の繊維を用いることが好ましい。なお、引張強度の上限は特に限定しないが、通常は6000MPa以下である。
【0022】
このような高強度の非金属繊維としては、例えば、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維(PBO繊維)、ポリビニルアルコール繊維(高弾性PVA繊維)などの高強度有機繊維、炭素繊維などを挙げることができる。これらはいずれか1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
アラミド繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維が挙げられ、前者の例としては、東レ・デュポン社製「ケブラー」、帝人テクノプロダクツ社製「トワロン」、「テクノーラ」等が挙げられ、後者の例としては、デュポン社製「ノーメックス」、帝人テクノプロダクツ社製「コーネックス」等が挙げられる。全芳香族ポリエステル繊維としてはクラレ社製「ベクトラン」等、PBO繊維としては東洋紡績社製「ザイロン」等、高弾性PVA繊維としてはクラレ社製「クラロンK−II」等が挙げられる。炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が挙げられる。
【0024】
なお、かかる非金属繊維としては、多数のフィラメントを束ねてなるヤーンを撚ることなくそのまま用いてもよく、該ヤーンを撚って形成される片撚り構造のコードを用いてもよく、複数の該ヤーンを撚り合わせてなる双撚り構造のコードを用いてもよい。
【0025】
ラッピング材(14)の太さは、材質により異なり特に限定されないが、有機繊維の場合、400〜1670dtexであることが好ましい。また、炭素繊維の場合、1000フィラメント〜6000フィラメントであることが好ましい。
【0026】
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂などを挙げることができる。好ましくはエポキシ樹脂を用いることであり、より詳細には、主剤としてのエポキシ樹脂に、硬化剤と、靭性付与剤としての架橋ゴム粒子を配合したエポキシ樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0027】
該主剤としては、液状のビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、特に好ましくは、特には液状低粘度ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることである。
【0028】
硬化剤としては、エポキシ樹脂に一般的に使用されているものを用いることができ、カルボン酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸ヒドラジド基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基等の官能基を含有する公知の有機化合物が挙げられる。具体的には、酸無水物系硬化剤(無水メチルナジック酸など)、アミン系硬化剤(メタフェニレンジアミン、メチルジアニリン、エチルメチルイミダゾール、イソホロンジアミンなど)、ポリアミノアミド系硬化剤、フェノール系硬化剤(ビスパラキドロキシフェニルスルフォンなど)、ポリメルカプタン系硬化剤、潜在性硬化剤(ジシアンジアミドなど)が挙げられる。特に好ましくは、酸無水物系硬化剤であり、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水メチルハイミック酸等が挙げられる。
【0029】
靱性付与剤である架橋ゴム粒子としては、例えば、NBR(ニトリルゴム)、SBR(スチレンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)、CSM(クロロスルフォン化ゴム)、ウレタンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム微粒子が挙げられる。
【0030】
非金属繊維に対する硬化性樹脂の含浸量(固形物としての付着量)は、特に限定されないが、非金属繊維100質量部に対して10〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜30質量部である。
【0031】
主フィラメント束(13)にラッピング材(14)を巻き付ける際の巻きピッチpは、特に限定されず、例えば2.0〜30.0mmとすることができる。
【0032】
このようなラッピング材(14)によるラッピング方法としては、特に限定されないが、以下の2つの代表的な方法が挙げられる。
【0033】
第1の方法は、主フィラメント束(13)に対応した扁平な断面形状(
図4参照)を持つ型を用いて、硬化性樹脂を含浸させた非金属繊維をこの型の周りに所定ピッチで巻き付けた後、硬化性樹脂を加熱硬化させることにより型付けする。その後、型から取り外し、得られた型付け後の非金属繊維をラッピング材(14)として、別途引き揃えられた主フィラメント束(13)の周りに巻き付ける。
【0034】
第2の方法は、硬化性樹脂を含浸させた非金属繊維をラッピング材(14)として、別途引き揃えられた主フィラメント束(13)の周りに該ラッピング材(14)を所定ピッチで巻き付けた後、硬化性樹脂を加熱硬化させる。
【0035】
図2に示すように、ベルトプライ(7A)(7B)は、スチールコード(10)を、その長径方向(B)がベルト面(即ち、ベルト外周面)に平行になるように配置することで形成されている。すなわち、ベルトプライ内において、スチールコード(10)は、その短径方向(A)がベルトプライの厚み方向(K)と一致するようにして、所定間隔でコード被覆ゴム(11)内に埋設されている。そのため、スチールコード(10)は、その長径方向(B)がトレッド面に平行になるように配置される。このように構成することにより、スチールコード(10)をゴム被覆する際に加工しやすく、またベルトプライの厚みを薄くしてタイヤ質量の増加を抑えることができる。また、得られたベルトプライでは、タイヤ幅方向における曲げ剛性が高くなるので、操縦安定性能を向上することができる。
【0036】
ベルトプライにおけるスチールコード(10)のエンド数(打ち込み本数)は、コード引張強力等に応じて適宜に設定することができ、特に限定されないが、10〜25本/25mmであることが好ましい。
【0037】
なお、上記実施形態では、スチールコード(10)をベルトプライに用いた場合について説明したが、ベルトプライに限らず、例えばカーカスプライなどに用いてもよい。また、タイヤに限らず、例えばコンベヤベルトなど、各種ゴム製品の補強材として用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例における各測定方法は以下の通りである。
【0040】
・フィラメント径、コード径:JIS G3510に準拠し、所定の厚み計により金属フィラメント及びスチールコードの直径を計測した。コード径については、長径側の外径(長径D1)と短径側の外径(短径D2)を計測した。
【0041】
・ラッピング材の繊維の引張強度:JIS L1017に準拠し繊度と引張強力から強度を求めた。引張試験には島津製作所社オートグラフを使用した。
【0042】
・コード形状保持性能:タイヤ周上における任意の位置を2箇所(両者の位置は90°以上離れる)で切断し、その切断面でコードの並びを観察した。1断面あたり2枚のベルトプライのそれぞれの両端から15本、中央部で15本、計90本のコードを観察した。そして、短径/長径>0.5となっているコード本数の割合(%)を算出し、その値を表に示した。この値が小さいほど、コード形状は維持されており、良好である。
【0043】
・コード強力保持率:使用リムと空気圧をJATMA YEAR BOOK 2012所載の条件としたタイヤを、乗用車に装着し、直径14mの円を2つ合わせた8字形のコースを400回旋回した後に、タイヤを分解し、スチールコードを取り出して、そのコード強力(引張強力)を測定した。また、未走行のタイヤから取り出したスチールコードを用いて同様にコード強力を測定し、それぞれ、未走行タイヤのコード強力に対する走行後のコード強力の保持率(%)を算出した。保持率が高いほど、フレッチング摩耗による強力低下が少なく、耐久性に優れることを意味する。なお、コード強力は、JIS G3510に準拠して、スチールコードの強伸度特性を引張試験機(島津製作所(株)製オートグラフ)を用いて測定することにより算出した。
【0044】
下記表1に示す構造を持つスチールコードを作製した。
【0045】
詳細には、従来例のスチールコードは、0.2mmに伸線後のスチールフィラメントを5本撚り合わせて作製した。
【0046】
比較例1では、0.2mmに伸線された5本のスチールフィラメントを撚り合わせることなく一列に引き揃えた後に、0.15mmの軟鉄のフィラメント(炭素含有量=0.72質量%)を用いてラッピングした。
【0047】
比較例2,3では、0.2mmに伸線された5本のスチールフィラメントを撚り合わせることなく一列に引き揃えた後に、500dtex/1の片撚りポリエステルコード、又は420dtex/1の片撚りアラミドコードを用いてラッピングした。なお、比較例2については、他例と同様の速度でラッピングすると、ポリエステルコードが切れて巻けなかったので、巻き付けが可能となるまで巻き付け速度を落として作製した。
【0048】
実施例1,2では、まず、マトリクスとなるエポキシ樹脂組成物を含浸させたそれぞれの繊維コードを、
図4に示す断面形状を持つ型の周りに巻き付けた後、130℃で30分間加熱してエポキシ樹脂を硬化させた。その後、型から外して、型付けされた繊維コードを巻き取った。次いで、0.2mmに伸線された5本のスチールフィラメントを撚り合わせることなく一列に引き揃えた後、上記で得られた型付けされた繊維コードを用いてラッピングした。
【0049】
ここで、繊維コードとしては、実施例1では、420dtex/1の片撚りアラミドコードを用いた。実施例2では、炭素繊維1000フィラメントを用いた。また、エポキシ樹脂組成物としては、熱硬化性の液状低粘度ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂)を主成分とし、該エポキシ樹脂100質量部に対して、硬化剤としてメチルテトラヒドロ無水フタル酸(日立化成工業社製)100質量部と、靱性付与剤としてエチレンプロピレンゴム(EPDM)ラテックス(住友精化社製)5質量部を配合したものを用いた。繊維に対する硬化性樹脂の含浸量(固形分としての付着量)は、繊維100質量部に対して20質量部とした。
【0050】
なお、実施例及び比較例のスチールコードにおいて、ラッピング材の巻きピッチp=4.5mmとした。
【0051】
得られたスチールコードをベルトコードとして用いて、
図1に示す断面形状を持つタイヤサイズ:195/50R15 82Hのラジアルタイヤを、常法に従い加硫成形した。各タイヤについて、ベルト以外の構成は、全て共通の構成とした。
【0052】
ベルトプライ(7A)/(7B)におけるスチールコードの角度は、タイヤ周方向に対して+25°/−25°とした。スチールコードのエンド数は15本/25.4mmとした。また、ベルトプライは、スチールコードの上下のゴム被覆厚みが0.2mmとなるようにトッピングゲージを表1記載の通りに設定し、カレンダー装置を用いてトッピング反とすることにより作製した。その際、実施例及び比較例では、スチールコードをその長径方向がベルト面に平行になるように配置した。作製したトッピング反の質量を測定して、タイヤ一本当たりのベルト質量を算出し、従来例を100とする指数で、表1中に示した。
【0053】
なお、カーカスプライは、ポリエステルコード1670dtex/2、打ち込み数22本/25mmで1プライとした。また、ベルト補強層は、ナイロン66コード1400dtex/1、打ち込み本数24本/25mmとした。
【0054】
得られた各タイヤについて、コード形状保持性能とコード強力保持率を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、従来の複層撚り構造のスチールコードを用いた従来例に対し、n+1構造の扁平なスチールコードを用いた比較例1では、ベルト質量が小さく、軽量化が図られていた。但し、比較例1では、主フィラメント束に巻き付けるラッピング材としてスチールフィラメントを用いていたため、フレッチング摩耗によりコード強力保持率が低下しており、耐久性に劣るものであった。
【0057】
比較例2では、ラッピング材としてポリエステルコードを用いたことにより、フレッチング摩耗によるコード強力保持率については、比較例1よりも改善されていたが、コード形状保持性能に劣り、スチールコードの形状を十分に維持できていなかった。ラッピング材としてアラミドコードを用いた比較例3についても、同様であった。
【0058】
これに対し、ラッピング材としてアラミドコードにエポキシ樹脂を含浸硬化させたものを用いた実施例1では、フレッチング摩耗が抑制されてコード強力が保持されており、しかも、コード形状保持性能に優れており、スチールコードの形状が維持されていた。ラッピング材として炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸硬化させたものを用いた実施例2についても、同様であった。
【0059】
このように本実施形態によれば、ラッピング材として非金属繊維を用いた上で、該繊維に硬化性の樹脂を含浸させ硬化させたことにより、耐フレッチング性能とスチールコードの形状維持を両立することができる。