【文献】
村椿康隆,ショ糖脂肪酸エステルを応用した製剤化技術,月刊フードケミカル,2006年12月 1日,Vol.22, No.12,p.87-91
【文献】
製品一覧|リョートーシュガーエステル|三菱化学フーズ,検索日:2016年11月14日,URL,http://www.mfc.co.jp/product/nyuuka/ryoto_syuga/list.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、重曹、酸、乳化剤、基材を含む口腔内洗浄用組成物を提供する。
【0008】
本発明の口腔内洗浄用組成物は、重曹と酸が、互いに反応して発泡することにより、口腔内洗浄効果を発揮する。重曹は、炭酸水素ナトリウム、あるいは重炭酸ナトリウムとも言われる。酸は生体に悪影響がなければ特に限定されず、例としてコハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、フマル酸、酢酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、リン酸またはクエン酸を挙げることができる。これらは、酸味料としても働く。
【0009】
乳化剤は、泡の広がりや持続性の向上といった効果で、口腔内洗浄効果を増強するものと考えられる。
【0010】
乳化剤の例として、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)などを挙げることができる。
【0011】
本発明の口腔内洗浄用組成物においては、乳化剤は、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が3以上のものが1種以上含まれることが好ましく、また、乳化剤の配合量は5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。なお、HLBとは乳化剤の親水性、親油性のバランスを表す値である。HLBは0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高い。HLBは計算または実測により計測される。計算式としては、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法などが知られる。なお、乳化剤の混合物のHLB値は各成分のHLB値の加重平均となる。
【0012】
本発明においては、乳化剤として、シュガーエステルを使用するのが特に好ましい。シュガーエステルとは、ショ糖と脂肪酸がエステル結合により結合したものである。
【0013】
本発明において、乳化剤として、シュガーエステルを用いる場合、HLBが3以上のものが1種類以上含まれることが好ましい。また、好ましい例として、シュガーエステルとして、HLBが5未満のものを1種以上、HLBが5以上のものを1種以上含むことが挙げられ、また、別の好ましい例として、HLBが3以下のものを1種以上、HLBが7以上のものを1種以上含むこと、さらに、HLB値が3のものと、HLB値が7のもののうち、いずれか1または混合物が用いられることを挙げられる。
【0014】
シュガーエステルの具体的な例としては、三菱化学フーズ株式会社で市販されるS−070、S−170、S−270、S−370、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1570、S−1670などのショ糖ステアリン酸エステル;P−170、P−1570、P−1670などのショ糖パルミチン酸エステル;M−1695などのショ糖ミリスチン酸エステル;O−170、O−1570などのショ糖オレイン酸エステル;L−195、L−595、L−1695などのショ糖ラウリン酸エステル;B−370などのショ糖ベヘニン酸エステル;ER−190、ER−290などのショ糖エルカ酸エステル、また、第一工業製薬株式会社で市販されるDKエステルSS、F−160、F−140、F−110、F−90、F−70、F−50、F−20W、F−10、F−A10Eなどを例としてあげることができ、さらに好ましくは、S−370、S−770、あるいはこれらの混合物である。
【0015】
また、シュガーエステルの配合量の好ましい範囲は5重量%以上20重量%以下である。
【0016】
基材は、粉末状または顆粒状の食品素材であり、本発明の口腔内洗浄用組成物の配合のうち、およそ30重量%〜90重量%を占める素材であって、様々な物質を使用することができる。例えば、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、フコース、ソルボース、フルクトース、ラムノース、リボース、N−アセチルグルコサミンなどの単糖類;イソトレハロース、スクロース、トレハルロース、トレハロース、ネオトレハロース、パラチノース、マルトース、メリビオース、ラクチュロース、ラクトースなどの二糖類;α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノースなど)、オリゴ−N−アセチルグルコサミン、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル (β1−3) ガラクトピラノシル (β1−4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1−3) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1−6) ガラクトピラノシル (β1−4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1−6) グルコピラノース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオース)など)、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオースなど)、スタキオース、テアンデオリゴ、ニゲロオリゴ糖(ニゲロースなど)、パラチノースオリゴ糖、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストースなど)、フラクトフラノシルニストース、ポリデキストロース、マルトシル−β−サイクロデキストリン、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオースなど)、ラフィノース、大豆オリゴ糖、転化糖などのオリゴ糖類;イソマルチトール、エリスリトール、キシリトール、グリセロール、ソルビトール、パラチニット、マルチトール、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マンニトール、ラクチトール、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖などの糖アルコールを挙げることができる。
【0017】
本発明の口腔内洗浄用組成物は、上記のほか、増粘剤、甘味料、香料、酸味料、固結防止剤、水など、適宜加えることができる。
【0018】
増粘剤に限定はないが、例としては、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、キトサン、タマリンドガム、カラギーナン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの多糖類およびその誘導体、他にも、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カゼインナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールなどを挙げることができる。甘味料は特に限定はないが、例として、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、フコース、ソルボース、フルクトース、ラムノース、リボース、異性化液糖、N−アセチルグルコサミンなどの単糖類;イソトレハロース、スクロース、トレハルロース、トレハロース、ネオトレハロース、パラチノース、マルトース、メリビオース、ラクチュロース、ラクトースなどの二糖類;α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノースなど)、オリゴ−N−アセチルグルコサミン、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル (β1−3) ガラクトピラノシル (β1−4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1−3) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1−6) ガラクトピラノシル (β1−4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1−6) グルコピラノース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオースなど)、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオースなど)、スタキオース、テアンデオリゴ、ニゲロオリゴ糖(ニゲロースなど)、パラチノースオリゴ糖、パラチノースシロップ、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストースなど)、フラクトフラノシルニストース、ポリデキストロース、マルトシル−β−サイクロデキストリン、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオースなど)、ラフィノース、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴などのオリゴ糖類;イソマルチトール、エリスリトール、キシリトール、グリセロール、ソルビトール、パラチニット、マルチトール、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マンニトール、ラクチトール、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴などの糖アルコール;α−グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アリテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、グリチルリチン酸三アンモニウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、クルクリン、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スクラロース、ステビア抽出物、ステビア末、ズルチン、タウマチン(ソーマチン)、テンリョウチャ抽出物、ナイゼリアベリー抽出物、ネオテーム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、フラクトシルトランスフェラーゼ処理ステビア、ブラジルカンゾウ抽出物、ミラクルフルーツ抽出物、ラカンカ抽出物、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウなどの高甘味度甘味料を挙げることができる。
【0019】
香料の例としては、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、タンジェリン油、マンダリン油などの柑橘精油類、ペパーミント油、スペアミント油などのミント精油類、オールスパイス、アニスシード、バジル、ローレル、カルダモン、セロリー、クローブ、シンナモン、クミン、ディル、ガーリック、パセリ、メース、マスタード、オニオン、パプリカ、パセリ、ローズマリー、ペッパーのような公知のスパイス精油類またはオレオレジン類、リモネン、リナロール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、シトラール、L−メントール、オイゲノール、シンナミックアルデハイド、アネトール、ペリラアルデハイド、バニリン、γ−ウンデカラクトン、カプロン酸アリル、L−カルボン、マルトールなどのような公知の単離、または合成香料、及び、これら柑橘精油類、ミント精油類、スパイス精油類、合成香料を目的に沿った割合で混合したシトラスミックス、ミックスミント、各種フルーツなどを表現させた調合香料を挙げられる。固結防止剤の例としては、微粒酸化ケイ素、リン酸三カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどを挙げることができる。
【実施例1】
【0021】
口腔内洗浄用組成物の例として、表1の組成からなる発泡性タブレットを作製した。製法は以下のとおりである。まず基材とグァーガム、シュガーエステルの一部、香料の一部を混合して、平均粒子径が70μm〜500μm程度の大きさになるよう造粒させ、造粒させたものにその他の原料であるリンゴ酸や重曹、残りのシュガーエステルなどを加えて混合し、この混合物を圧縮打錠することにより成形して製造した。なお、基材のみを最初に平均粒子径が70μm〜500μm程度の大きさになるよう造粒させ、造粒させた基材にその他の原料を加えて混合し、この混合物を圧縮打錠することにより成形して製造しても良い。本実施例にて製造される発泡性タブレットの重量は1.55gであり、形状は扁平円柱状である。
【0022】
表1中、各原料の割合は、完成後の重量%で示されている。乳化剤には、三菱化学フーズ株式会社で市販されるシュガーエステルであるS−170、S−370、S−770及びS−1670の1または2種類以上を様々な割合で加えた。これらのシュガーエステルの特性を表2に示す。基材にはマルチトールまたはソルビトールを用いた。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【実施例2】
【0025】
シュガーエステルの種類が異なる発泡性タブレットの口腔内洗浄効果の比較
試料
実施例1の方法で、以下の4種類のタブレットを作製した。ただし基材としては、いずれもソルビトールを用いた。
発泡性タブレット S−170 10.0%配合品
発泡性タブレット S−370 10.0%配合品
発泡性タブレット S−370 5.0%、S−770 5.0%配合品
発泡性タブレット S−1670 10.0%配合品
【0026】
食べかす除去効果確認試験
(タブレット無摂食条件)
ヤマザキナビスコ社製のクリームをはさんだクッキーであるオレオ(登録商標)1枚を平常通り咀嚼し、飲み込んだ後、水20mlを口に含み、180回/分のペースで口を動かし、10秒間洗口を行った。10秒間経過後、洗口液を全量回収した。洗口液に対し、8000×g、10分間の遠心分離を行い、上清を除いた沈殿物を減圧乾燥後、重量を測定した(以下、乾燥重量A)。
【0027】
(タブレット摂食条件)
オレオ1枚を平常通り咀嚼し、飲み込んだ後、発泡性タブレット1枚をよく噛み砕き、5秒間口を動かさず保持を行った後、飲み込みを行った。その際、飲み込む回数は1回とした。直後、水20mlを口に含み、180回/分のペースで口を動かし、10秒間洗口を行った。10秒間経過後、洗口液を全量回収した。洗口液に対し、8000×g、10分間の遠心分離を行い、上清を除いた沈殿物を減圧乾燥後、重量を測定した(以下、乾燥重量B)。
【0028】
以上の実験結果らから、食べかす除去量を以下のように求めた。
食べかす除去量(mg)=(乾燥重量A)−(乾燥重量B)
【0029】
また、食べかす除去率は、以下のように求めた。
食べかす除去率(%)=
(各条件の食べかす除去量)/(乾燥重量A)
×100
【0030】
結果
本実施例では、シュガーエステルが口腔内の食べかす除去効果に及ぼす影響を確認する目的で、HLB値の異なるシュガーエステルを合計10.0%配合した発泡性タブレットを用意し、食べかす除去効果確認試験を行った。各発泡性タブレット摂食時の食べかす乾燥重量を
図1に、食べかす除去量を
図2に、食べかす除去率を表3に示す。結果、シュガーエステルを組み合わせたS−370・5.0%、S−770・5.0%配合品が最も高い除去量を示し、以下、S−1670・10%配合品、S−370・10%配合品、S−170・10%配合品の順に除去量が減少した。このうち、S−170・10%配合品を除く3種では、80%を超える食べかす除去率が認められた。
【0031】
HLB値が最も低いS−170配合品の除去量が低かった要因としては、発泡性が弱く、泡が口全体に広がらないこと、物性が脆いため口腔内に滞留する時間が短いことが考えられた。この傾向は、HLB値が3以上のシュガーエステル(S−370)で改善され、S−1670配合品についても、S−170配合品と比較して高い食べかす除去量が確認された。また、最も除去量が高かったS−370・S−770配合品と比較して、S−370配合品は、発泡性は強いものの、泡の質が荒いため、個々の泡の消泡が早く、S−1670配合品は、泡の質が過度にクリーミーで、個々の泡の持続時間は長いものの、泡の広がりはやや弱い印象であった(実施例6、表8参照)。従って、食べかす除去にあたり、泡の質としては、適度な消泡感・広がり・持続時間を有した性質が望まれ、S−370・S−770配合品は両シュガーエステルの長所を活かした配合と考えられた。
【0032】
【表3】
【実施例3】
【0033】
シュガーエステルの配合量が異なる発泡性タブレットの口腔内洗浄効果
試料
実施例1の方法で、以下の6種類のタブレットを作製した。ただし基材としては、いずれもソルビトールを用いた。
発泡性タブレット シュガーエステル未配合品
発泡性タブレット S−370 0.5%、S−770 0.5%配合品
発泡性タブレット S−370 2.5%、S−770 2.5%配合品
発泡性タブレット S−370 5.0%、S−770 5.0%配合品
発泡性タブレット S−370 10.0%、S−770 10.0%配合品
発泡性タブレット S−370 12.5%、S−770 12.5%配合品
【0034】
食べかす除去効果確認試験
実施例2の「食べかす除去効果確認試験」と同様に行った。
【0035】
結果
本実施例では、実施例2の結果において、最も食べかす除去効果が高かったS−370、S−770の組み合わせについて、各シュガーエステルの配合量を0%〜12.5%の間で段階的に分けてタブレットに配合し、食べかす除去効果に及ぼす影響を確認した。各発泡性タブレット摂食時の食べかす乾燥重量を
図3に、食べかす除去量を
図4に、食べかす除去率を表4に示す。結果によると、5.0%ずつシュガーエステルを配合した発泡性タブレットが最も高い除去率を示し、シュガーエステル未配合品が最も低い除去率を示すことが確認された。各シュガーエステルの配合量について、5.0%を間に挟む、2.5%配合品と10.0%配合品は5.0%配合品と比較してやや除去率は低くなるものの、これらを間に挟む0.5%配合品、12.5%配合品と比較して高い除去率を維持した。各シュガーエステルの配合量が2.5%、5.0%、10.0%配合品では、80%を超える値が認められた。
【0036】
シュガーエステル未配合品の除去率が低かった要因としては、重曹による発泡は生じるものの、泡の広がり、泡の持続時間がほとんどなかったためと考えられる(実施例6、表8参照)。また、各シュガーエステル0.5%配合品についても、シュガーエステルの配合量が十分でなく、同様の傾向が確認された。各シュガーエステル12.5%配合品については、各シュガーエステル5.0%配合品と比較して、物性がかなり脆く、タブレットが口に滞留する時間が短く感じられた。また、泡の特徴についても、5.0%配合品と比較して、広がる速さが遅く、持続時間がやや劣るため、除去率が低くなったと考えられた。
【0037】
【表4】
【実施例4】
【0038】
基材が異なる発泡性タブレットの口腔内洗浄効果
試料
実施例1の方法で、以下の3種類のタブレットを作製した。
発泡性タブレット S−370 10.0%配合品(基材としてブドウ糖を用いた)
発泡性タブレット S−370 10.0%配合品(基材としてソルビトールを用いた)
発泡性タブレット S−370 10.0%配合品(基材としてマルチトールを用いた)
【0039】
食べかす除去効果確認試験
実施例2の「食べかす除去効果確認試験」と同様に行った。
【0040】
結果
実施例2,3では、基材としてソルビトールを用いた発泡性タブレットで実験を行った。本実施例では、シュガーエステルS−370を10.0%配合した発泡性タブレットを対象に、基材の種類を変えて、食べかす除去効果に及ぼす影響を確認した。各発泡性タブレット摂食時の食べかす乾燥重量を
図5、
図6に、食べかす除去量を
図7に、食べかす除去率を表5に示す。結果から、食べかす除去率については、ソルビトール基材が最も高い81.5%を示し、次いで、マルチトール基材が80.1%、ブドウ糖基材が75.0%を示した。
食べかす除去率について、今回用いたタブレット3種の差は最大6.5%(ソルビトール基材とブドウ糖基材の差)であった。実施例2、実施例3では、最大の除去率の差は順に14.7%、15.2%であるから、本実施例における食べかすの除去率の差はこれまでの結果と比較して小さいことが確認された。従って、シュガーエステルを配合した発泡性タブレットについて、基材が食べかす除去効果に及ぼす影響はそれ程大きくないと考えられた。ただし、官能評価の結果を含めると、ブドウ糖基材の発泡性タブレットは食感が脆いため(実施例6、表8参照)、物性面を考慮すると、ソルビトール、マルチトールが、よりタブレットに適した基材と考えられた。
【0041】
【表5】
【実施例5】
【0042】
発泡性タブレットの口腔内洗浄効果
試料
実施例1の方法で、以下のタブレットを作製した。
S−370 5.0%、S−770 5.0%配合品、(基材としてマルチトールを用いた)。
【0043】
食べかす除去効果確認試験
実施例2と同様に行った。
【0044】
結果
実施例1に従い作製した発泡性タブレットを用いて、食べかす除去効果に及ぼす影響を確認した。食べかすの乾燥重量を
図8、食べかす除去量を
図9、食べかす除去率を表6に示す。結果、食べかす除去率については80.4%の値が認められた。同じマルチトール基材の表5のS−370・10.0%配合品の食べかす除去率が80.1%であったことから、差は小さいものの、表3のソルビトール基材を使用した場合と同様、マルチトール基材を使用した場合についてもS−370・10.0%配合品と比較して、 S−370・5.0%、S−770・5.0%配合品の方が除去効果が高い可能性が示唆された。また、S−370・5.0%、S−770・5.0%配合品に着目すると、表3のソルビトール基材を使用した場合の除去率87.1%は、表6のマルチトール基材を使用した場合の除去率80.4%より高く、表5と同様、シュガーエステルの種類が異なっても、ソルビトール基材を使用した場合の方がマルチトール基材を使用した場合より、高い除去効果を示す可能性が示唆された。
【0045】
【表6】
【実施例6】
【0046】
発泡性タブレットの官能評価試験
専門パネル4名がこれまでの実施例に用いられた発泡性タブレットについて官能評価を実施した。官能試験では、「泡の質」「泡の広がり」「泡の持続感」「食感」の4項目について、各タブレットを噛んで食し、1〜10の10段階で評価を行った。 評価4項目について、点数の指標は表7の通りである。官能評価の結果は表8のとおりである。
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【実施例7】
【0049】
表9の配合を有する発泡性タブレットを作製した。仕上がり量は、造粒工程において原料を混合し乾燥させた結果100.0重量%になることを表している。この発泡性タブレットにおいても、口中にて保持させた際に、顕著な食べかす除去効果が見られた。
【0050】
【表9】
【実施例8】
【0051】
表10の配合を有する発泡性タブレットを作製した。仕上がり量は、造粒工程において原料を混合し乾燥させた結果100.0重量%になることを表している。表10の発泡性タブレットにおいても、口中にて保持させた際に、顕著な食べかす除去効果が見られた。
【表10】
【0052】
実施例のまとめ
シュガーエステルを1種用いる場合、HLB値3以上のシュガーエステルを配合することで、口腔内食物残渣の顕著な除去効果を得ることができる。
シュガーエステルを少なくとも2種以上用いる場合、HLB値3以下のシュガーエステル1種以上と、HLB値7以上のシュガーエステル1種以上を組み合わせて配合すると、HLB値3以上のシュガーエステル1種を配合した条件と比較して、高い食べかす除去効果が得られる。
シュガーエステルの配合量は発泡性タブレット総量中5%〜20%の範囲で、シュガーエステル未配合品よりも高い食べかす除去効果を示し、特に10%配合品が最も高い効果を示す。
シュガーエステルを配合した発泡性タブレットの、口腔内食物残渣に対する除去効果は、基材の影響を受けにくく、いずれの基材についても食べかす除去効果を維持している。特に、食べかす除去効果と物性面を考慮すると、基材としてソルビトールまたはマルチトールを使用するのが望ましい。