(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266903
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ゲーム音声の音量レベル調整プログラムおよびゲームシステム
(51)【国際特許分類】
A63F 13/54 20140101AFI20180115BHJP
A63F 13/22 20140101ALI20180115BHJP
G10L 21/057 20130101ALI20180115BHJP
【FI】
A63F13/54
A63F13/22
G10L21/057
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-128161(P2013-128161)
(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-2768(P2015-2768A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100123940
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 辰一
(72)【発明者】
【氏名】北村 武
【審査官】
上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−209604(JP,A)
【文献】
特開2000−184310(JP,A)
【文献】
特開2010−278791(JP,A)
【文献】
特開2000−237449(JP,A)
【文献】
特開2002−258842(JP,A)
【文献】
特開2008−048097(JP,A)
【文献】
特開2008−158892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/24,13/00−13/98
G06F 3/16
G10L 13/00−13/10,19/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の音量レベルでゲーム音声信号を生成する音源と、生成されたゲーム音声を所定のボリューム値で増幅して放音するオーディオ回路と、ユーザによって操作される操作部と、を備えたゲームシステムのコンピュータに、
基準となる音量レベルの音声である基準音声を生成し、この基準音声の音量が適当な大きさになるように前記ボリューム値を調整する操作を受け付ける準備手順、
前記音源でテスト用音声を生成し、この音声の音量レベルを徐々に上昇させてゆく第1手順、
前記テスト用音声が聴き取れた旨の操作を受け付ける第2手順、
前記聴き取れた旨の操作がされたときの前記テスト用音声の音量レベルに基づいて、前記ゲーム音声の音量レベルを調整する第3手順、
を実行させるゲーム音声の音量レベル調整プログラム。
【請求項2】
前記音源は、複数のゲーム音声信号を生成し、
前記第3手順は、前記複数のゲーム音声の音量レベルを調整する
請求項1に記載のゲーム音声の音量調整プログラム。
【請求項3】
前記複数のゲーム音声は、それぞれ個別に初期音量レベルが予め設定されており、
前記第3手順は、前記複数のゲーム音声の音量レベルを、前記初期音量レベルの大小関係を崩さないようそれぞれ個別に調整する請求項2に記載のゲーム音声の音量レベル調整プログラム。
【請求項4】
前記第1手順は、前記テスト用音声として、前記複数のゲーム音声のうち最も小さい初期音量レベルが設定されているものを用いる請求項3に記載の音量レベル調整プログラム。
【請求項5】
前記第3手順は、前記複数のゲーム音声の調整された音量レベルの平均値が、前記複数のゲーム音声の前記初期音量レベルの平均値から変動しないように、各ゲーム音声の音量レベルを調整する請求項3または請求項4に記載の音量レベル調整プログラム。
【請求項6】
音声信号を生成し、該生成する音声の音量レベルを制御可能な音源と、
生成された音声を増幅して出力し、該増幅のボリューム値を制御可能なオーディオ回路と、
複数のゲーム音声およびゲームプログラムを記憶した記憶部と、
ユーザによって操作される操作部と、
前記ゲーム音声およびゲームプログラムを用いてゲームを実行する制御部と、
を備えたゲームシステムであって、
前記制御部は、基準となる音量レベルの音声である基準音声を生成し、この基準音声がユーザによって適当なボリューム値に調整されたのち前記音源を用いてテスト用音声を生成し、この音声の音量レベルを徐々に上昇させてゆき、前記操作部から前記テスト用音声が聴き取れた旨の操作がされたとき、その時点での前記テスト用音声の音量レベルに基づいて、前記複数のゲーム音声の生成時の音量レベルをそれぞれ個別に設定するゲームシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のゲーム音声を出力するゲームシステムで用いられるレベル調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲームの実行中に再生される音声であるゲーム音声は、ゲームを進めるうえで重要な要素である。ゲーム音声には、例えば、プレイヤキャラクタの声、敵キャラクタの鳴き声、効果音、更にBGMなど種々のものがあり、これらによって、ユーザ(ゲームプレイヤ)は、ゲームに対してリアリティや迫力などを感じることができる。また、ゲームにおいて、ユーザは、足音などで敵キャラクタの気配を感じることができ、ゲーム音声を敵キャラクタからの防御に役立てることもできる。
【0003】
上記のように、ゲーム音声には、多くの種類があり、それぞれゲームの進行に応じた様々なタイミングで様々な音量で発生される。このため、上記複数のゲーム音声は、各々別々の音声データとしてゲームプログラムとともに記憶される。たとえば、特許文献1に記載のゲーム装置では、ゲームのリアリティや迫力を表現するために複数の音声を発生し、各音声データにはそれぞれ音量レベルが設定されている。ゲームの実行中に各音声データが再生される場合、この設定された音量レベルで再生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−086819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ゲームが実行される条件(condition)によって、ユーザに対するゲーム音声の聴こえ方が異なる。ここで、条件とは、例えば、ゲーム機が据置機であるかポータブル機であるか、据置機の場合、そのゲーム機に接続されている音響装置がどのようなもの(マルチチャンネルオーディオ機器、小型のテレビ受像機など)であるか、ゲーム機が設置されている部屋の形状や騒音がどうであるか、さらには、ユーザの聴覚機能がどうであるかなどである。
【0006】
条件が良い場合には、小さい音まで良く聴こえるが、条件が悪い場合には、小さい音が聴こえにくく、小さい音が聴こえるように全体の音量を大きくすると、音が大きすぎて不快であり、周囲に迷惑をかけることもある。
【0007】
そこで、本発明は、ゲームが実行される条件にかかわらず、全てのゲーム音声を聴きやすく制御することができるゲーム音声の音量レベル調整プログラムおよびゲームシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゲーム音声の音量レベル調整プログラムは、ゲームシステムのコンピュータに、複数のゲーム音声の音量レベルを個別に調整させるためのプログラムである。ゲームシステムは、所定の音量レベルでゲーム音声信号を生成する音源、生成されたゲーム音声を所定のボリューム値で増幅して放音するオーディオ回路、および、ユーザによって操作される操作部を備えている。ゲーム音声の音量レベルとは、音源が音声信号を生成するときの振幅レベルである。このプログラムでは、
基準となる音量レベルの音声である基準音声を生成し、この基準音声の音量が適当な大きさになるように前記ボリューム値を調整する操作を受け付ける準備手順、音源でテスト用音声を生成し、この音声の音量レベルを徐々に
上昇させてゆく第1手順、テスト用音声が聴き取れた旨の操作(聴取確認操作)を受け付ける第2手順、聴取確認操作がされたときのテスト用音声の音量レベルに基づいて、複数のゲーム音声の音量レベルをそれぞれ個別に調整する第3手順が実行される。
【0009】
この発明において、音源が複数のゲーム音声信号を生成し、第3手順は、複数のゲーム音声の音量レベルを調整してもよい。
【0011】
この発明において、複数のゲーム音声には、それぞれ個別に初期音量レベルが予め設定されており、第3手順では、複数のゲーム音声の音量レベルを、初期音量レベルの大小関係を崩さないよう調整するようにしてもよい。
【0012】
この発明において、テスト用音声として、複数のゲーム音声のうち最も小さい初期音量レベルが設定されているものを用いてもよい。
【0013】
この発明において、第3手順では、複数のゲーム音声の調整済音量レベルの平均値が、初期音量レベルの平均値から変動しないように、各ゲーム音声の音量レベルを調整してもよい。
【0014】
この発明のゲームシステムは、音源と、オーディオ回路と、記憶部と、操作部と、制御部とを備える。音源は、音声信号を生成し、且つこの音声の音量レベルを制御可能である。オーディオ回路は、生成された音声を増幅し、且つボリュームを制御可能である。記憶部は、複数のゲーム音声およびゲームプログラムを記憶している。操作部は、ユーザによって操作される。制御部は、ゲーム音声およびゲームプログラムを用いてゲームを実行するものであって、
基準となる音量レベルの音声である基準音声を生成し、この基準音声がユーザによって適当なボリューム値に調整されたのち音源を用いてテスト用音声を生成し、この音声の音量レベルを徐々に上昇させてゆき、操作部から聴取確認操作がされたとき、その時点でのテスト用音声の音量レベルに基づいて、複数のゲーム音声信号の生成時の音量レベルをそれぞれ個別に設定する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ユーザが聴き取り可能な音量レベルを測定し、この測定結果に基づいて複数のゲーム音声の音量レベルを個別に調整するため、単なるボリューム操作と異なり、小さい音を大きく、大きい音を小さくするなど、条件に応じた音量レベルの個別の調整が可能であり、大きい騒音があるなど環境条件が悪い場合や、夜など大きい音が出せない場合でも、複数のゲーム音声を快適に聴くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明が適用されるゲーム装置のブロック図である。
【
図2】ゲーム音声の種類と音量の関係を示す図である。
【
図3】この発明の実施形態であるゲームシステムの機能ブロック図である。
【
図4】ゲーム音声の音量レベルの調整手順を示す図である。
【
図5】ゲーム音声の音量レベル調整テストの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照してこの発明が適用されるゲームプログラムおよびゲームシステムについて説明する。
【0019】
まず、本発明の概略を説明する。上述したように、騒音の大小やゲーム装置の種類などのゲームが実行される条件によって、ユーザに対するゲーム音声の聞こえ方が異なる。そこで、この発明のゲームシステムは、ゲーム開始に先立って、またはゲーム開始時に、音量レベル調整モードを実行し、複数のゲーム音声をそれぞれ適切な音量レベルに調整する。音量レベル調整モードでは、ゲームシステムが、特定のテスト用音声を生成して徐々に音量レベルを上昇させ、どの音量レベルでユーザがテスト用音声を聞き取れるかをテストする。そして、ゲームシステムは、このテスト結果に基づいて、複数のゲーム音声の音量レベルをそれぞれ個別に調整する。こののち、ゲームシステムは、ゲーム実行モードに切り換えられてゲームが実行され、調整された音量レベルでゲーム音声が発生される。
【0020】
図1を参照して、ゲームシステムのハードウェアであるゲーム装置の構成を説明する。この実施形態では、家庭用の据置型のゲーム装置1を例にあげて説明する。ゲーム装置1は、外部のスピーカ103およびモニタ105に接続されて使用される。スピーカ103は、スピーカユニットおよびオーディオアンプを含むスピーカシステムであってもよい。外部のスピーカ103およびモニタ105は、たとえばテレビ受像機などである。
【0021】
ゲーム装置1は、バス19上に、制御部20、操作部30、およびメディアインタフェース31を備えている。制御部20は、CPU21、ROM(フラッシュメモリ)22、RAM23、画像プロセッサ24および音声プロセッサ25を含んでいる。画像プロセッサ24には、ビデオRAM(VRAM)26が接続され、VRAM26は、画像インタフェース27を介して外部のモニタ105に接続されている。音声プロセッサ25は、アンプ28に接続され、アンプ28は音声インタフェース29を介して、外部のスピーカ103に接続されている。
【0022】
操作部30は、ゲームコントローラなどユーザが手に持って操作するデバイスであり、複数のボタンスイッチを含んでいる。操作部30は、ユーザによるボタンスイッチの操作を検出し、その操作信号を制御部20(CPU21)に入力する。
【0023】
メディアインタフェース31にはゲームメディア5が接続される。ゲームメディア5としては、ゲーム装置1専用の半導体メディアやSDカード(登録商標)などの汎用のメディアが用いられる。ゲームメディア5には、ゲームプログラム50が記憶されている。また、ゲームメディア5には、ゲームプログラム50とともに、このゲームの実行中に再生される音声のデータであるゲーム音声データおよびこの音声の初期音量レベル値が記憶されている。ゲーム音声としては、プレイヤキャラクタの声(ボイス)、敵キャラクタの鳴き声や足音、BGM、効果音など複数種類の音声が用いられる。ゲーム音声データは、正規化された波形データであり、初期音量レベル値は、ゲーム音声データによって生成された信号の振幅をそのゲーム音声の通常の音量レベル(初期音量レベル)に制御するためのパラメータである。なお、波形データとして、正規化波形でなく、初期音量レベルに振幅を制御されたものを用い、初期音量レベル値を省略してもよい。
【0024】
各ゲーム音声の初期音量レベルは、それぞれその音声の特徴に合わせた大きさに設定されている。たとえば、爆発音などは大きい音量レベルに設定され、足音などは小さい音量レベルに設定されている。
図2は複数のゲーム音声の初期音量レベルがそれぞれ異なる様子を示す図である。なお、
図2では、各ゲーム音声を第1〜第5音声と表している。一例として、第1音声は足音、第2音声はBGM、第3音声はボイス音声、第4音声はピストルの発射音、第5音声は爆発音である。第3音声であるボイス音声は、例えば、キャラクタやナレータの声であり、その初期音量レベルはゲームにおいて基準となる(中間的でユーザに聴き取りやすい)レベルに調整されている。そして、複数のゲーム音声の初期音量レベルは、その平均値が−24dBになるように調整されている。
【0025】
RAM23には、ゲームプログラム50およびゲーム音声データが、ゲームのステージ単位で読み込まれるとともに、CPU20がゲームプログラム50を実行する際に使用されるワークエリアが設定される。ワークエリアには、ゲームの進行に伴って発生する各種パラメータなどが記憶される。ROM22には、ゲームプログラム50を実行するための基本プログラムが記憶されている。また、ROM22はフラッシュメモリであり、基本プログラムのほか、ユーザによるゲームプレイの履歴データなども記憶される。
【0026】
画像プロセッサ24は、ゲーム映像を生成するGPU(Graphics Processing Unit,グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を備えている。画像プロセッサ24は、CPU21の指示に従ってゲーム空間を生成し、このゲーム空間を仮想のカメラで撮影した画像をゲーム画像としてVRAM26上に描画する。VRAM26上に描画されたゲーム画像は、画像インタフェース(I/F)27により、モニタ105に出力される。
【0027】
音声プロセッサ25は、デジタル音声信号であるゲーム音声を生成する音源として機能するDSP(Digital Signal Processor:デジタル・シグナル・プロセッサ)を備えている。音声プロセッサ25は、ゲームの場面や進行に応じてRAM23からゲーム音声データを読み出して、所定の音量レベルでゲーム音声を生成および出力する。また、音声プロセッサ25は、複数のゲーム音声を同時に生成した場合、これらをミキシングして出力する。音声プロセッサ25から出力されたゲーム音声は、アンプ42に出力される。アンプ42は、このゲーム音声をユーザによって設定されたボリューム値で増幅し、音声インタフェース29を介してスピーカ103に出力する。
【0028】
すなわち、音声プロセッサ25は、複数のゲーム音声をそれぞれ個別の音量レベルで生成し、アンプ28は、複数のゲーム音声を一括して同じボリューム値で増幅する。
【0029】
図3は、音量レベル調整モードのゲームシステム100の機能ブロック図である。ゲームシステム100は、ゲーム装置1(ハードウェア)にゲームメディア5のゲームプログラム50(ソフトウェア)が読み込まれることによって実現される。ゲームシステム100は、操作データ入力部60、音声データ記憶部65、音声再生部70、放音処理部75、音量レベル調整部80、調整値記憶部81、および、画面描画部85を有している。放音処理部75はスピーカ103に接続されている。画面描画部85はモニタ105に接続されている。
【0030】
操作データ入力部60は、制御部20、操作部30とゲームプログラム50との協働によって実現される。操作データ入力部60は、ユーザによる操作部30の操作によって発生した操作信号を取り込み、操作データとして音量レベル調整部80に入力する。ユーザは、操作データ入力部60を用いて、例えば、テスト用音声の発生を開始させる旨の入力や、テスト用音声を聴き取れた旨の入力などを行う。
【0031】
音声データ記憶部65は、制御部20のRAM23を含む。音声データ記憶部65は、音量レベル調整モードに用いられる音声データおよびこの音声データの音量レベル値を記憶している。音量調整モードに用いられる音声データは、音量レベル調整に先だって放音処理部75のボリューム値を適度に調整するための音声データである基準音声データ、および、ゲーム装置1の設置環境などの条件下におけるユーザの最低可聴音量レベルを検出する音量調整テストを行うためのテスト用音声データである。
【0032】
基準音声データおよびテスト用音声データは、任意の音声データを使用可能であるが、この実施形態では、基準音声データとしてゲーム音声データ中の第3音声データを用い、テスト用音声データとしてゲーム音声データ中の第1音声データを用いる。上述したように、第3音声は、キャラクタの声やナレーションなどの人の声(ボイス音声)である。ボイス音声は、すべてのゲーム音声のなかで平均的な音量で再生される音声であり、ユーザは、ゲームをする場合やテレビを見る場合、人の声(ボイス音声)が最適な音量で聴こえるようにボリュームを調整するのが一般的である。そこで、この実施形態のゲームシステム100では、基準音声としてボイス音声である第3音声が用いられる。
【0033】
音量レベル調整モードを実行するためには、基準音声データおよびテスト用音声データのみ読み込まれていればよいが、基準音声データおよびテスト用音声データとしてゲーム音声データを用いる場合、ゲーム(1ステージ)実行用のゲーム音声データを全て読み込み、音量レベル調整モードが終了したのち速やかにゲーム実行モードに移行できるようにしてもよい。
【0034】
音声再生部70は、制御部20(特に音声プロセッサ25)とゲームプログラム50との協働によって実現される。音声再生部70は、音声データ記憶部65から基準音声データおよびテスト用音声データを読み出して音声信号を生成する。音声生成部70が生成する音声信号、および、その音量レベルは後述の音量レベル調整部80によって制御される。音声再生部70によって生成された音声信号は、放音処理部75に入力される。放音処理部75は、アンプ28および音声インタフェース29を含む。放音処理部75は、入力された音声信号を所定のボリューム値で増幅する。増幅された音声信号はスピーカ103に入力され、スピーカ103によって放音される。なお、放音処理部75のボリューム値の調整は操作データ入力部60から行われてもよく、別の操作部から行われてもよい。
【0035】
音量レベル調整部80は、制御部20(特にCPU21)とゲームプログラム50との協働によって実現される。音量レベル調整部80は、音量レベル調整モードの動作を制御する。音量レベル調整部80は、最初に音声生成部70に基準音声を生成させる。ユーザは、放音される基準音声を聴きながら、この基準音声が最適な音量で放音されるようにボリューム値を調整する。こののち、音量レベル調整部80は、このボリューム値で以下の音量調整テストを行う。まず、音量レベル調整部80は、音声生成部70に初期音量レベルでテスト用音声を生成させ、ユーザからこのテスト用音声が聴き取れた旨の操作入力(聴取確認操作)があるまで徐々にその音量レベルを上昇させてゆく。ユーザによる聴取確認操作があると、テスト用音声の生成を停止し、そのときの音量レベルに基づいて、複数のゲーム音声データの音量レベルをそれぞれ個別に調整する。調整された各ゲーム音声データの音量レベル値(調整済音量レベル値)は、調整値記憶部65に記憶される。なお、この説明では、調整値記憶部65には、調整済音量レベル値が記憶されるとしているが、初期音量レベル値から調整済音量レベル値へのシフト値を記憶するようにしてもよい。
【0036】
画面描画部85は、制御部20およびVRAM26と、ゲームプログラム50との協働によって実現される。画面描画部85は、音量レベル調整部80からの指示に従い、モニタ41に音量調整のテストを開始する旨やテストを終了した旨などのメッセージなどを表示する。
【0037】
図4を参照して、ゲームシステム100によるゲーム音量レベルの調整方式について説明する。この例では、基準音声として第3音声を用い、テスト用音声として第1音声を用いた場合について説明する。
【0038】
図4(A)は、初期音量レベルによる(第3音声で調整されたボリューム値で増幅された)第1音声〜第5音声の放音音量(実際に放音して測定した音量ではなく推定音量)と、ユーザの最低可聴音量との関係を示している。この例では、初期音量レベルでは、第1音声の放音音量が最低可聴音量よりも小さく、このままでは聴こえないことが示されている。また、第2音声の放音音量と最低可聴音量とがほぼ同じであることが示されている。
【0039】
図4(B)は、音量調整テストを行って、テスト用音声である第1音声の音量レベルが最低可聴音量(よりも若干上)に設定された状態を示している。すなわち、第1音声の音量レベルは、音量レベルを徐々に上昇させながらテスト用音声として放音され、ユーザによる聴取確認操作があったときの音量レベルに設定されている。第1音声は、この音量レベルに調整されることにより、ユーザに聴こえるようになるが、殆ど第2音声と同じ音量レベルになり、初期設定の音量レベルの大小関係が失われてしまう。
【0040】
そこで、
図4(C)に示すように、第2音声の音量レベルを初期音量レベルから若干(第3音声よりも大きくならない程度に)上昇させる。そして、このままでは、第1音声〜第5音声の平均音量レベルが−24dBよりも大きくなってしまうため、
図4(D)に示すように、第4音声、第5音声の音量レベルを初期音量レベルから若干低下させ、平均音量レベルが−24dBに戻るようにする。このように調整された第1〜第5音声の音量レベル値が、調整済音量レベル値として調整値記憶部65に記憶される。
【0041】
図4(C),(D)において、第1〜第5音声の音量差(音量比)は、初期音量レベルにおける音量差(音量比)が維持されるように調整されるのが好適である。
【0042】
なお、この例では、第3音声の初期音量レベルは−24dBであるため、調整時に変化させていないが、変化させてもよい。また、第3音声の処理音量レベルは−24dBに限定されない。
【0043】
図5は、音量レベル調整モードのゲームシステム100の動作を示すフローチャートである。ゲームシステム100は、音量レベル調整テストを開始するか否かの選択を求めるメッセージをモニタ105に表示する(S1)。このとき、同時に、音量レベル調整テストを行うことで、ゲーム実行中に様々なゲーム音声をバランス良く発生可能である旨などを表示してもよい。ユーザは、音量レベル調整テストを行う場合には、モニタ105に表示されたメッセージに従って音量レベル調整テストの実行を選択する。ゲームシステム100は、音量レベル調整テストの実行が選択されると(S2でYES)、以下の手順を実行する。
【0044】
まず、ゲームシステム100は、ユーザに対して、第3音声を再生するので聞き取りやすい音量に調整するよう指示するメッセージをモニタ105に表示する(S3)。そして、音声再生部70が初期音量レベルで第3音声を生成し、放音処理部75がこの音声信号を増幅し、基準音声としてスピーカ103から放音させる(S4)。ユーザは、スピーカ103から放音される第3音声が最適な音量になるようにボリューム値を制御する。こののち、ユーザからボリューム調整が完了した旨の入力がされると(S5)、ゲームシステム100は、ユーザに対して、第1音声を再生するので聴こえたときに所定の操作をするよう指示するメッセージをモニタ105に表示する(S6)。そして、音声再生部70が、初期音量レベルで第1音声を生成し、放音処理部75がこの音声信号を増幅し、テスト用音声としてスピーカ103から放音させる(S7)。テスト用音声の生成・放音を継続しながら、その音量レベルを徐々に大きくし(S9)、ユーザから聴取確認操作があるかを監視する(S8)。聴取確認操作があったとき(S8でYES)、その時のテスト用音声(第1音声)の音量レベルに基づいて、各ゲーム音声データの音量レベルを調整する(S10)。
【0045】
こののち、ゲームシステム100は、ゲーム実行モードに移行し、ゲームを実行しつつ、調整済音量レベルを用いてゲーム音声を生成する。
【0046】
以上のように、本発明のゲームシステム100は、複数のゲーム音声の音量レベルを個別に調整するので、騒音の大きい環境でゲームを実行してもゲーム音声が騒音に埋もれたり、ゲーム音声が異常に大きくなったりすることがなく、全てのゲーム音声を適度な音量でバランスよく生成・放音することができる。
【0047】
なお、以上の説明では、ゲーム装置は家庭用ゲーム機の場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、ゲームセンターに設置するアミューズメント用のゲーム機や、ユーザが携帯する携帯型ゲーム機にも適用できる。また、ハードウェアとして専用のゲーム装置1を例示しているが、ゲーム装置1は、専用機でないスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどでもよい。また、ゲーム音声を放音するデバイスはスピーカに限らず、ヘッドホンやイヤホンでもよい。
【0048】
以上説明した実施形態では、騒音などの環境条件によって小さい音声が聴こえない条件で、全てのゲーム音声がバランスよく放音されるように音量レベルを調整する場合について説明したが、夜など大きい音が出せない環境下でも同様に、ダイナミックレンジを圧縮して小さい音でも全てのゲーム音声を聴きやすくすることもできる。
【0049】
また、第1音声が最低可聴音量よりも大きい場合(例えば第1音声よりも小さい音声信号をテスト用音声として用い、第1音声の初期音量レベルよりも小さい音声レベルで聴取確認操作がされた場合)、第1音声(第2音声)の音量レベルを下げ、且つ第5音声(第4音声)の音量レベルを上げてダイナミックレンジを伸ばしてもよい。
【0050】
以上の実施形態では、テスト用音声を徐々に上昇させて音量調整を行なっているが、テスト用音声を徐々に下降させてもよく、また、ランダムなど不連続な変化をさせてもよい。
【0051】
また、音量レベル調整モードのプログラムは、ゲームメディア5に記憶されていてもよく、ゲーム装置1本体、たとえばROM22に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ゲーム装置
5 ゲームメディア
20 制御部
28 アンプ
28A 電子ボリューム
30 操作部
50 ゲームプログラム
60 操作データ入力部
65 音声データ記憶部
70 音声再生部
75 放音処理部
80 音量レベル調整部
81 調整値記憶部
85 画面描画部
100 ゲームシステム