(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る液晶表示装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る表示装置の構成を示す概略の平面図である。
液晶表示装置は、液晶表示パネルPNLと、液晶表示パネルPNLを背面側から照明するバックライトBLTと、を備えている。そして液晶表示パネルPNLには、マトリクス状に配置された表示画素PXを含む表示部が設けられている。
【0015】
図2は、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネルPNLの表示画素部の断面を示す図である。
【0016】
液晶表示パネルPNLは、アレイ基板100、対向基板200と、この一対の基板100、200間に挟持された液晶層LQとを備えている。
【0017】
対向基板200には、透明絶縁性基板SB2、カラーフィルタ層CF、及びオーバコート層L2が設けられている。カラーフィルタ層CFは、透明絶縁性基板SB2上に配置された赤(R)、緑(G)、青(B)各色の着色層を含んでいる。オーバコート層L2は、カラーフィルタ層CFを覆って設けられ、カラーフィルタ層CFに含まれる物質が液晶層LQへ流出することを防止する。
【0018】
アレイ基板100は、透明絶縁性基板SB1、対向電極(第1電極)COM、及び複数の画素電極(第2電極)PEを備えている。画素電極PEは、窒化シリコン(SiN)等の絶縁層L1を介して対向電極COM上に配置されている。画素電極PEは表示画素PX毎に配置され、スリット状の開口部SLTが形成されている。対向電極COMと画素電極PEとは、例えばITO(Indium Tin Oxide)によって形成された透明電極である。
【0019】
図1に示すように、アレイ基板100は、表示部において、複数の表示画素PXが配列する行に沿って延びる走査線GL(GL1、GL2…)と、複数の表示画素PXが配列する列に沿って延びる信号線SL(SL1、SL2…)と、走査線GLと信号線SLが交差する位置近傍に配置された画素スイッチSWとを備えている。
【0020】
画素スイッチSWは薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を備えている。画素スイッチSWのゲート電極は対応する走査線GLと電気的に接続されている。画素スイッチSWのソース電極は対応する信号線SLと電気的に接続されている。画素スイッチSWのドレイン電極は対応する画素電極PEと電気的に接続されている。
【0021】
アレイ基板100は、複数の表示画素PXを駆動する駆動手段として、ゲートドライバGD(左側GD−Lおよび右側GD−R)とソースドライバSDとを備えている。複数の走査線GLはゲートドライバGDの出力端子と電気的に接続されている。複数の信号線SLはソースドライバSDの出力端子と電気的に接続されている。
【0022】
ゲートドライバGDとソースドライバSDとは、表示部の周囲の領域に配置されている。ゲートドライバGDは複数の走査線GLにオン電圧を順次印加して、選択された走査線GLに電気的に接続された画素スイッチSWのゲート電極にオン電圧を供給する。ゲート電極にオン電圧が供給された画素スイッチSWの、ソース電極−ドレイン電極間が導通する。ソースドライバSDは、複数の信号線SLのそれぞれに対応する出力信号を供給する。信号線SLに供給された信号は、ソース電極−ドレイン電極間が導通した画素スイッチSWを介して対応する画素電極PEに印加される。
【0023】
ゲートドライバGDとソースドライバSDとは、液晶表示パネルPNLの外部に配置された制御回路CTRにより動作を制御される。また制御回路CTRは、対向電極COMに対向電圧Vcomを供給している。さらに制御回路CTRは、バックライトBLTの動作を制御する。
【0024】
制御回路CTRは、通常駆動のほかに駆動電力低減のために間欠駆動の機能を備えている。なお、画素の映像信号書き換えが行われる時間間隔を「フレーム周期」あるいは「1フレーム」と呼び、その逆数を「フレーム周波数」と呼ぶが、本願においては低周波駆動、間欠駆動に関しても、同様に呼ぶものとする。
【0025】
一例として液晶表示装置の標準のフレーム周波数が60Hz(すなわち(1/60)secごとに画素への映像信号の書き換えが行われる)であるとする。動画表示の場合には標準の60Hzでの動作とするが、動画視認性がそれほど重視されない静止画像などを表示する場合には、制御回路CTRは、間欠駆動を実行する。
【0026】
制御回路CTRは、(1/60)secをかけて書き込み動作(画面の上から下までの走査)を行った後に、例えば(1/60)sec、(3/60)sec、(7/60)sec、あるいは(59/60)secの休止期間を設ける。休止期間において制御回路CTRの書き込み動作を停止すればその間の回路消費電力は実質0になり、書き込み時も含めた時間平均としての回路消費電力はそれぞれ、1/2、1/4、1/8、あるいは1/60に低減される。
【0027】
ところで、上述のような駆動方式では各画素PXに画素電圧を書き込んだ後、その画素電圧を長時間保持することが必要である。そのため、TFTにはオフリーク電流の小さいものを用いることが望ましい。例えばIGZO(In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)から構成される酸化物)を用いたTFTは一般にオフリーク電流が小さく、上記の低周波駆動に適したTFTであるといわれている。
【0028】
本実施の形態に係る液晶表示装置は、対向電極COMと画素電極PEとに印加される電圧の電位差により、液晶層LQに電界を生じさせ、液晶層に含まれる液晶分子の配向方向を制御するFFS(Fringe−Field Switching)モードの液晶表示装置である。液晶分子の配向方向により、バックライトBLTから出射される光の透過光量が制御される。
【0029】
図2に示すように、画素電極PEと対向電極COMとが絶縁層L1を挟んで対向する部分には、容量成分Cs0が発生する。この他に液晶層LQ内に回り込む電界に対応する補助容量成分Cs1および液晶容量Clcも存在する。画素電極PEと対向電極COM間に存在する全容量をCsと表すと、
図1に示すようにTFTのドレインと対向電極COMの間に容量Csを挟みこんだ等価回路で表現することができる。
【0030】
次に、フリッカを低減するための駆動方式について説明する。
【0031】
液晶材料は長時間DC電圧を印加しておくとチャージアップにより表示特性に経時変化が生じるため、1フレーム毎に正負極性を反転させてDC平均がほぼ0になるようにして駆動するフレーム駆動が一般的である。しかし、正負での応答特性(輝度−電圧特性)にずれがあると正負フレームでの輝度が異なり、1フレーム毎に明暗の差が生じてフリッカ(ちらつき)が発生する。信号の正負平均(DC平均値)に微小なオフセット電圧を加えたり、対向電極電位を調整したりすることでフリッカを極小化することは可能であるが、経時的な輝度−電圧特性のシフトや階調間の最適条件のずれなども完全に吸収してフリッカを皆無にすることは困難である。
【0032】
このようなフリッカを低減するための手段として、例えばライン反転、カラム反転、ドット反転などの反転駆動が知られている。例えばライン反転では、時間的な正負極性反転の位相を1行毎に逆にして分布させることにより、正負での輝度応答の差を巨視的に相殺して、フリッカが視認されないようにすることができる。カラム反転やドット反転も同様であり、前者は1列毎に、後者は市松パターン状に正負極性反転の位相を逆にすることでフリッカが視認されないようにすることができる。
【0033】
これらの反転方式のうちライン反転とドット反転は画面走査時に1ライン毎に極性反転しながら画素への書き込みを行うため、1H期間(1水平周期)毎にパネル内の信号線の充放電を行う必要があり、回路消費電力が大きくなる。一方、カラム反転は行方向の極性反転が無いため回路消費電力低減という観点で有利である。モバイル用液晶表示装置においては製品仕様に応じて各種反転方式が採用されるが、電力低減という観点ではカラム反転方式が最も望ましい。
【0034】
続いて、液晶表示装置の輝度応答波形について説明する。
【0035】
図3は、本実施の形態に係る液晶表示装置の輝度応答波形の一例を示す図である。
【0036】
図3(a)は、フレーム周期50msec(フレーム周波数20Hz)で駆動したときの1画素の輝度応答である。図中の縦軸は輝度を表し、横軸は時間を表している。なお、輝度は、平均値が1となるように規格化している。画素に書き込まれる映像信号の極性は1フレーム毎に反転しており、それぞれ矢印で示した区間が負フレームおよび正フレームに対応する。
【0037】
図3(a)に示す輝度応答では、正フレームでは輝度値が約1.3まで上昇するが、負フレームでは輝度値が約0.8まで下降し、正負フレームで輝度が大きく異なっている。
【0038】
また別の特徴として、負フレームから正フレームに切り替わった直後数msec間に輝度が一瞬低下していることが確認される。これはFFSモード特有の現象であり、液晶のフレクソエレクトリック効果に起因して液晶分子が自発分極を持ち、電界の反転に即座に応答して液晶分子の配向方向が変化するためであると考えられる。
【0039】
次に、
図3(a)の正負フレームそれぞれの輝度応答を平均化した波形(2つの波形を足し合わせて2で割ったもの)を
図3(b)に示す。
図3(b)に示す波形は、液晶表示装置をライン反転、カラム反転、ドット反転などで駆動した場合に、巨視的に(正負各極性の画素をほぼ同数ずつ含む十分な広さの領域に注目したときに)観測される輝度応答波形に相当する。正負平均化することにより正負フレームでの輝度差の影響は相殺される。しかし、極性反転直後(フレームの先頭)において一瞬輝度が低下する現象が見られ、結果的に50msec周期での明暗の輝度変動が残っている。このフレーム先頭での輝度低下は、上述したフレクソエレクトリック効果によるものであり、輝度変動が正負平均化によっても相殺されずに残ったものであると考えられる。
【0040】
ところで、一般に人間の視覚におけるフリッカ視認感度は周波数依存を持つことが知られており、同振幅の輝度変動であっても周波数が低くなるほどフリッカとして視認されやすいという特徴がある。
【0041】
図4は、フリッカが視認されない輝度振幅の上限値とフレーム周波数との関係を主観評価により求めて表した図である。フレーム周波数が40Hzを超えるところでグラフが急峻に立ち上がっている。これはフレーム周波数が40Hzより大きい周波数であれば輝度振幅が大きくてもフリッカとして視認されないが、フレーム周波数が40Hz以下の周波数では輝度振幅が小さくてもフリッカとして視認されることを示している。
【0042】
この主観評価の結果を参照すると、仮に
図3(b)程度の振幅の輝度変動がある場合、一般的なフレーム周波数60Hzの場合にはフリッカが視認されなくても40Hz以下にまで下げるとフリッカが視認されると考えられる。
【0043】
発明者らは、上述のように液晶表示装置をライン反転、カラム反転、ドット反転などで駆動した場合であっても視認されるフリッカを防止するための対応について検討を重ね、フリッカ発生の原因として、フレクソエレクトリック効果に起因するものと、液晶及び配向膜のインピーダンス不整合に起因するものとが存在することを明らかにした。
【0044】
まずフレクソエレクトリック効果に起因するフリッカについて説明する。
【0045】
フレクソエレクトリック効果とは、電界が作用された際に液晶分子が分極する現象のことである。特に横電界モードでは、縦電界モードに比較すると電極のエッジ部に強電界が作用する。この強電により液晶分子が逆分極し、電界の極性が変化したときにこの分極が瞬時に反応することで
図3(b)に示す輝度変動が発生すると考えられる。従って、フレクソエレクトリック効果が発生しにくい液晶を用いることで、この輝度変動を低減してフリッカが視認されることを防止することができる。
【0046】
図5は、フレクソ係数の異なる材料について生じる輝度振幅を、
図4に示す特性図に重ねて表した図である。曲線Cは、従来液晶を用いた場合の、フレーム周波数と輝度振幅との関係を示している。曲線Aは、低フレクソ液晶A用いた場合の、フレーム周波数と輝度振幅との関係を示している。低フレクソ液晶Aは、フレクソ係数(e11、e33)の絶対値が1.6pC/mである。曲線Bは、低フレクソ液晶B用いた場合の、フレーム周波数と輝度振幅との関係を示している。低フレクソ液晶Bは、フレクソ係数(e11、e33)の絶対値が0.8pC/mである。
【0047】
曲線A−Cの内、フリッカが視認されない特性曲線よりも上の領域内でフリッカが視認される。曲線C(従来液晶)では、20〜30Hz以下のフレーム周波数で、フリッカが視認されている。曲線A(低フレクソ液晶A)では、10〜20Hz以下のフレーム周波数で、フリッカが視認されている。曲線B(低フレクソ液晶B)では、1Hz以上のフレーム周波数で、フリッカが視認されなかった。
【0048】
この
図5によれば、フレクソ係数(e11、e33)の絶対値が低いほどフリッカが視認されるフレーム周波数が低くなっていることがわかる。従って、
図5に基づいて、使用するフレーム周波数帯に応じて使用する液晶を選定することで、フリッカが視認されないようにすることができる。
【0049】
例えば、フレーム周波数が10〜20Hzの範囲では、フレクソ係数(e11、e33)の絶対値が1.6pC/m以下の液晶を用いる。フレーム周波数が10Hz以下の範囲では、フレクソ係数(e11、e33)の絶対値が0.8pC/m以下の液晶を用いる。
【0050】
ここで、低周波駆動時におけるセル起因の輝度変動の原因を検討する際に使用する対称成分と反対称成分とについて説明する。
【0051】
図6は、本実施の形態の液晶表示装置における対称成分と反対称成分とを説明するための図である。
図6の輝度応答波形は正フレームの輝度と負フレームの輝度とがフレーム毎に繰り返した波形である。
【0052】
ここで、対称成分とは、正フレームの輝度波形と負フレームの輝度波形との平均の波形、即ち、
図3(b)に示す波形である。フレーム毎に同じ波形(対称な波形)が繰り返すため、対称成分なる名称が付されている。
図6(b)に対称成分の例を示している。もし、対称波形がフラット(平坦)な特性である場合は、平均化されることでフラットな特性になることを表しているため、上述のようにライン反転、カラム反転、ドット反転などで駆動することにより輝度振幅がない(フリッカが生じない)として視認され得る。従って、対称成分は、反転駆動によっても解消されない成分である。
【0053】
一方、反対称成分とは、正フレームの輝度波形と負フレームの輝度波形との平均の波形をもとめ、この平均の波形を0として(基準として)表した波形である。従って、正の波形と負の波形とが現れる。このことから反対称成分なる名称が付されている。
図6(c)に反対称成分の例を示している。もし、反対称成分が基準線に対して対称な特性である場合は、上述のようにライン反転、カラム反転、ドット反転などで駆動することにより輝度振幅がない(フリッカが生じない)として視認される。従って、反対称成分は、反転駆動によって解消可能な成分である。
【0054】
図7は、本実施の形態の液晶表示装置におけるフレクソ係数の異なる材料について対称成分、反対称成分がどのように変化するかを示す図である。
図7(a)は、フレクソ係数による対称成分の変化を示し、
図7(b)は、フレクソ係数による反対称成分の変化を示している。
【0055】
この
図7を参照すると、フレクソ係数を小さくすることで、対称成分、反対称成分の双方の輝度振幅を低減できることがわかる。一方、ライン反転、カラム反転、ドット反転を用いることで、反対称成分は、巨視的にキャンセルされてフリッカを低減することが可能であるが、対称成分は、キャンセルすることができない。従って、対称成分を低減するためには、フレクソ係数を低減することが効果的であることがわかる。
【0056】
次に液晶及び配向膜のインピーダンス不整合に起因するフリッカについて説明する。
【0057】
上述のように間欠駆動方式では各画素PXに画素電圧を書き込んだ後、その画素電圧を長時間保持することが必要である。そのため、TFTにはオフリーク電流の小さいものを用いることが望ましいが、更に、液晶及び配向膜のインピーダンスを整合させることが必要である。
【0058】
図8は、本実施の形態の液晶表示装置における液晶及び配向膜のインピーダンス不整合に起因する液晶保持電圧の変化を説明するための図である。
【0059】
図8(a)に示す液晶パネルの等価回路のモデルでは、画素電極PEと対向電極COMとが対向する部分に存在する保持容量Cs、液晶層LQ内に回り込む電界に対応する配向膜の容量C2、及び液晶容量Clで構成されている。また、液晶容量Cl、容量C2に並列にそれぞれ抵抗R1、R2が設けられている。なお、保持容量Cs、容量C2、液晶容量Clは、それぞれ
図2に示す容量成分Cs0、Cs1およびClcに対応している。
【0060】
次に、
図8(b)を参照しつつ、液晶及び配向膜のインピーダンス不整合に起因する液晶保持電圧の変化を説明する。
【0061】
ケース1に示す例では、保持容量Csが無く、液晶及び配向膜のインピーダンスが不整合(R1・C1<<R2・C2)である。この場合、TFTがOFFとなり画素電圧保持状態になると、液晶、配向膜はそれぞれ独立に放電する。液晶側の時定数R1・C1が配向膜側の時定数R2・C2よりも小さいため、液晶保持電圧V1の減衰が支配的となる。従って、ケース1では液晶保持電圧は減衰し、輝度変動が生ずる。
【0062】
ケース2に示す例では、保持容量Csが設けられ、液晶及び配向膜のインピーダンスが不整合(R1・C1<<R2・C2)である。この場合、TFTがOFFとなり画素電圧保持状態になると、液晶、配向膜はそれぞれ独立に放電するが、放電によるV1+V2の減衰分を補うように保持容量Csから電荷が供給される。しかし、放電による電荷減少は液晶保持電圧V1側が大きいのに対し、電荷供給は等量に配分されるため、V1は時間と共に減少し、V2は時間とともに増大する。従って、ケース2では液晶保持電圧は減衰し、輝度変動が生ずる。
【0063】
ケース3に示す例では、保持容量Csが設けられ、液晶及び配向膜のインピーダンスが整合(R1・C1≒R2・C2)している。この場合、TFTがOFFとなり画素電圧保持状態になると、液晶、配向膜はそれぞれ独立に放電するが、インピーダンスが整合しているため、放電の時定数が同じである。このため、放電による電荷減少と保持容量Csからの電荷供給とがバランスし、V1及びV2は一定の状態を維持する。従って、ケース3では、輝度変動が低減しフリッカが改善する。
【0064】
以上の回路モデルに基づき液晶保持電圧の変化をシミュレーション計算によって確認した。
【0065】
図9は、本実施の形態の液晶表示装置におけるシミュレーションに用いた回路モデルと、計算条件とを示す図である。
図9(a)は、回路モデルを示し、
図9(b)は、計算条件を示している。なお、計算条件では間欠駆動としてフレーム周期0.5秒(フレーム周波数2Hz)を使用した。
【0066】
図10は、本実施の形態の液晶表示装置における保持期間の液晶印加電圧変化率のシミュレーション結果を示す図である。
図10では、配向膜抵抗率と液晶抵抗率とに対応して液晶印加電圧変化率を示している。なお、液晶印加電圧変化率は、保持期間において低下または増加した液晶印加電圧の割合を表す指数であり、(Vf−Vi)/Viとして定義される値である。
【0067】
図10の中央部は、液晶印加電圧変化率が最も小さい領域である。配向膜抵抗率が小さくなるにつれて、実線の矢印で示すように液晶印加電圧変化率は増加する。液晶抵抗率が小さくなるにつれて、点線の矢印で示すように液晶印加電圧変化率は減少する。このシミュレーション結果からも、液晶及び配向膜のインピーダンスを整合することによって1フレーム内の輝度変動を低減できることがわかる。
【0068】
ここで輝度変動を定量化するための指標として、1フレーム内の輝度傾斜(1/sec)を導入する。
図11は、本実施の形態の液晶表示装置における1フレーム内の輝度傾斜を示す図である。1フレーム内の輝度傾斜は、1フレームにおける輝度(規格化値)の減少値あるいは増加値として規定することができる。
【0069】
フリッカが視認されない1フレーム内の輝度傾斜の絶対値の上限値を主観評価により求めると0.03を得た。従って、このことと、
図10に示すシミュレーション結果とに基づいて、配向膜の抵抗率1×10
13〜5×10
14Ω・cm、液晶の抵抗率1×10
13〜5×10
14Ω・cmとすることで、1フレーム内の傾斜輝度の絶対値を0.03以下とすることができる。
【0070】
以上説明したように、フレクソ効果以外にフリッカの原因として、液晶と配向膜とのインピーダンスマッチングの不整合がある。従って、
図5で説明した、フレーム周波数に対応したフレクソ係数をもつ液晶を用い、液晶及び配向膜のインピーダンスを略等しくすることによって、効果的にフリッカを抑制することができる。
【0071】
上述のいくつかの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。