特許第6266945号(P6266945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266945医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266945
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   A61M5/168 530
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-223234(P2013-223234)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-84798(P2015-84798A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】和田 朋之
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04559831(US,A)
【文献】 特表2010−540146(JP,A)
【文献】 特開2008−279424(JP,A)
【文献】 特開平11−304561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
G01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ内を流れる医療用液体の流量を求める医療用液体流量演算装置であって、
前記チューブ内を流れる前記医療用液体に微小気泡を発生させる気泡発生手段と、
前記気泡発生手段の下流側に配置されて前記チューブ内の微小気泡を検出する気泡検出手段と、を備える、
医療用液体流量演算装置。
【請求項2】
前記気泡発生手段は、前記医療用液体をキャビテーションさせることにより微小気泡を発生させる、
請求項1に記載の医療用液体流量演算装置。
【請求項3】
前記気泡発生手段は、超音波により前記医療用液体に微小気泡を発生させる超音波発生装置である、
請求項1又は2に記載の医療用液体流量演算装置。
【請求項4】
前記気泡検出手段が、超音波の受発信により微小気泡を検出する超音波受発信装置である、
請求項1〜3の何れか一項に記載の医療用液体流量演算装置。
【請求項5】
前記気泡発生手段が微小気泡を発生させた時刻と、前記気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、に基づいて、前記チューブ内を流れる前記医療用液体の流量を算出する流量演算手段を更に備える、
請求項1〜4の何れか一項に記載の医療用液体流量演算装置。
【請求項6】
前記気泡検出手段は、第一気泡検出手段と、前記第一気泡検出手段の下流側に配置される第二気泡検出手段と、を有する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の医療用液体流量演算装置。
【請求項7】
前記第一気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、前記第二気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、に基づいて、前記チューブ内を流れる前記医療用液体の流量を算出する流量演算手段を更に備える、
請求項6に記載の医療用液体流量演算装置。
【請求項8】
チューブ内を流れる医療用液体の流量を求める医療用液体流量演算装置であって、
前記チューブ内の微小気泡を検出する第一気泡検出手段と、
前記第一気泡検出手段の下流側に配置されて前記チューブ内の微小気泡を検出する第二気泡検出手段と、を備える、
医療用液体流量演算装置。
【請求項9】
前記第一気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、前記第二気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、に基づいて、前記チューブ内を流れる前記医療用液体の流量を算出する流量演算手段を更に備える、
請求項8に記載の医療用液体流量演算装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載された医療用液体流量演算装置と、
前記チューブ内に前記医療用液体を供給するポンプ部と、
前記医療用液体流量演算装置が求めた前記医療用液体の流量に基づいて前記ポンプ部により供給される前記医療用液体の流量を制御する流量制御部と、を備える、
医療用液体用ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ内を流れる医療用液体の流量を求める医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
患者に対して、薬液の投与や栄養あるいは水分の補給を行なう手段として輸液がある。輸液は、薬液の入ったボトルやバックと静脈内に留置した注射針とをチューブで接続して、ボトルやバックからチューブ及び注射針を介して薬液を患者に投与する方法である。輸液の方法としては、ボトルやバックを高い位置に吊り下げて、重力の作用により薬液を患者に投与する方法の他、チューブを複数のフィンガにより順次押圧することで輸液する蠕動式ポンプや、回転するローラでチューブを扱きながら輸液するローラ式ポンプなどの輸液ポンプを用いた方法等がある。
【0003】
このような輸液では、輸液量を精度良くコントロールする必要があるが、チューブ内を流れる薬液の流量は直接計測できない。このため、重力の作用を利用した点滴では、看護師等が、単位時間当たりの滴下数を計測することにより、輸液量を算出している。
【0004】
一方、輸液ポンプを用いた点滴では、輸送ポンプにより輸液量をコントロールしているが、実際には、長時間の使用におけるポンプ部のチューブ劣化や輸液ラインの装着状態等で輸液量が変化したり、通常閉塞状態にあるチューブが誤操作により開放されて意図しない薬液の注入、いわゆるフリーフローが発生したりする問題が報告されている。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1には、輸液回路の一部に点滴筒を設け、その点滴筒内の単位時間あたりの滴下数を検出することによって輸液量を算出し、この算出した輸液量に基づいて薬液の流量制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】2002−177385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の方法では、何れも、滴下一滴の容量が常に一定の値でなければ精度良く輸液量を知ることができない。実際の輸液においては様々な薬液が使用され、その薬液の粘度等の特性によって滴下一滴の容量は変化する。また、点滴筒内の滴下口の形状のばらつきでも同様に滴下一滴の容量は変化する。一方で、輸液ポンプの適用は、麻酔薬や抗がん剤等の厳密な投与量の管理が必要な薬液にまで広がってきていることから、輸液量をより正確にコントロールできる輸液ポンプが求められている。
【0008】
また、患者の血液を体外循環させて浄化する透析治療等は、チューブ内の血液をチューブポンプにより循環させるが、この場合も、上述した点滴の場合と同様の観点から、血液の循環量を正確にコントロールすることが求められている。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、より高精度に医療用液体の流量を求めることができる医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る医療用液体流量演算装置は、チューブ内を流れる医療用液体の流量を求める医療用液体流量演算装置であって、チューブ内を流れる医療用液体に微小気泡を発生させる気泡発生手段と、気泡発生手段の下流側に配置されてチューブ内の微小気泡を検出する気泡検出手段と、を備える。
【0011】
本発明に係る医療用液体流量演算装置によれば、気泡発生手段によりチューブ内を流れる医療用液体に微小気泡を発生させると、この微小気泡は医療用液体と略同速度でチューブ内を流れる。このため、気泡発生手段により発生させた微小気泡を気泡検出手段が検出することで、高精度に医療用液体の流量を求めることができる。
【0012】
この場合、気泡発生手段は、医療用液体をキャビテーションさせることにより微小気泡を発生させるものとすることができる。このように、医療用液体をキャビテーションさせることで、外部から医療用液体に気泡を混入させなくても、チューブ内の医療用液体に微小気泡を発生させることができる。しかも、キャビテーションにより発生した微小気泡は、もともと医療用液体に溶け込まれていた気体が気泡化したものであるため、暫くすると医療用液体に再溶解される。このため、医療用液体に微小気泡が残留するのを防止することができる。
【0013】
また、気泡発生手段は、超音波により医療用液体に微小気泡を発生させるものとすることができる。このように、超音波発生装置を用いることで、医療用液体を容易にキャビテーションさせて微小気泡を発生させることができる。
【0014】
また、気泡検出手段が、超音波の受発信により微小気泡を検出する超音波受発信装置であるものとすることができる。このように、超音波受発信装置により微小気泡を検出することで、チューブ内の微小気泡をチューブの外部において検出することができる。
【0015】
また、気泡発生手段が微小気泡を発生させた時刻と、気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、に基づいて、チューブ内を流れる医療用液体の流量を算出する流量演算手段を更に備えるものとすることができる。気泡発生手段による微小気泡の発生位置及び気泡検出手段による微小気泡の検出位置は、気泡発生手段及び気泡検出手段の配置により決まるため、医療用液体の流量は、気泡発生手段が微小気泡を発生させた時刻及び気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻により求めることができる。そこで、これらの時刻に基づいてチューブ内を流れる医療用液体の流量を算出する流量演算手段を設けることで、医療用液体の流量を簡易かつ高精度に求めることができる。なお、流量演算手段は、気泡発生手段による微小気泡の発生位置から気泡検出手段による微小気泡の検出位置までの距離を、気泡発生手段が微小気泡を発生させてから気泡検出手段が当該微小気泡を検出するまでの時間で割ることで、チューブ内を流れる医療用液体の流速を求めることができ、この流速にチューブの内断面積を掛け合わせることで、チューブ内を流れる医療用液体の流量を求めることができる。
【0016】
また、気泡検出手段は、第一気泡検出手段と、第一気泡検出手段の下流側に配置される第二気泡検出手段と、を有するものとすることができる。気泡発生手段により微小気泡を発生させた直後は、医療用液体における微小気泡の位置が安定しない。これに対し、気泡発生手段の下流側に第一気泡検出手段と第二気泡検出手段とを設けると、気泡発生手段により発生された微小気泡は、第一気泡検出手段による微小気泡の検出位置及び第一気泡検出手段による微小気泡の検出位置を、医療用液体における位置が安定した状態で通過する。このため、第一気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と第二気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻とに基づいてチューブ内を流れる医療用液体の流量を求めることで、より高精度に医療用液体の流量を求めることができる。
【0017】
また、第一気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、第二気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、に基づいて、チューブ内を流れる医療用液体の流量を算出する流量演算手段を更に備えるものとすることができる。第一気泡検出手段による微小気泡の検出位置及び第二気泡検出手段による微小気泡の検出位置は、第一気泡検出手段及び第二気泡検出手段の配置により決まるため、医療用液体の流量は、第一気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻及び第二気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻により求めることができる。そこで、これらの時刻に基づいてチューブ内を流れる医療用液体の流量を算出する流量演算手段を設けることで、医療用液体の流量を簡易かつ高精度に求めることができる。なお、流量演算手段は、第一気泡検出手段による微小気泡の検出位置から第二気泡検出手段による微小気泡の検出位置までの距離を、第一気泡検出手段が微小気泡を検出してから第二気泡検出手段が当該微小気泡を検出するまでの時間で割ることで、チューブ内を流れる医療用液体の流速を求めることができ、この流速にチューブの内断面積を掛け合わせることで、チューブ内を流れる医療用液体の流量を求めることができる。
【0018】
本発明に係る医療用液体流量演算装置は、チューブ内を流れる医療用液体の流量を求める医療用液体流量演算装置であって、チューブ内の微小気泡を検出する第一気泡検出手段と、第一気泡検出手段の下流側に配置されてチューブ内の微小気泡を検出する第二気泡検出手段と、を備える。
【0019】
医療用液体内には、元々微小気泡が存在する場合があり、このような微小気泡は、医療用液体と略同速度でチューブ内を流れる。そこで、チューブ内の微小気泡を第一気泡検出手段及び第二気泡検出手段により検出することで、医療用液体に強制的に気泡を発生させなくても、高精度に医療用液体の流量を求めることができる。
【0020】
この場合、第一気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、第二気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻と、に基づいて、チューブ内を流れる医療用液体の流量を算出する流量演算手段を更に備えるものとすることができる。第一気泡検出手段による微小気泡の検出位置及び第二気泡検出手段による微小気泡の検出位置は、第一気泡検出手段及び第二気泡検出手段の配置により決まるため、医療用液体の流量は、第一気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻及び第二気泡検出手段が微小気泡を検出した時刻により求めることができる。そこで、これらの時刻に基づいてチューブ内を流れる医療用液体の流量を算出する流量演算手段を設けることで、医療用液体の流量を簡易かつ高精度に求めることができる。なお、流量演算手段は、第一気泡検出手段による微小気泡の検出位置から第二気泡検出手段による微小気泡の検出位置までの距離を、第一気泡検出手段が微小気泡を検出してから第二気泡検出手段が当該微小気泡を検出するまでの時間で割ることで、チューブ内を流れる医療用液体の流速を求めることができ、この流速にチューブの内断面積を掛け合わせることで、チューブ内を流れる医療用液体の流量を求めることができる。
【0021】
本発明に係る医療用液体用ポンプは、上記の何れかの医療用液体流量演算装置と、チューブ内に医療用液体を供給するポンプ部と、医療用液体流量演算装置が求めた医療用液体の流量に基づいてポンプ部により供給される医療用液体の流量を制御する流量制御部と、を備える。
【0022】
本発明に係る医療用液体用ポンプによれば、上記の医療用液体流量演算装置を備えることで、高精度に医療用液体の流量を求めることができるため、流量制御部は、チューブ内に医療用液体を供給するポンプ部に対して高精度な流量制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より高精度に医療用液体の流量を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態に係る医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプを含む輸液装置を示す概念図である。
図2】第2の実施形態に係る医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプを含む輸液装置を示す概念図である。
図3】第3の実施形態に係る医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプを含む輸液装置を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0026】
図1は、第1の実施形態に係る医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプを含む輸液装置を示す概念図である。図1に示すように、輸液装置1は、治療室の床に立設される輸液スタンド2と、薬液や血液等の医療用液体が収容されて輸液スタンド2に吊り下げられる輸液収容袋3と、輸液収容袋3の下端に接続されて医療用液体が流れるチューブ4と、チューブ4の途中部分に接続されて医療用液体が滴下される点滴筒5と、チューブ4の先端部に接続されて患者の静脈に留置される注射針6と、を備える。そして、輸液装置1には、チューブ4内に医療用液体を供給する医療用液体用ポンプ10が取り付けられている。
【0027】
医療用液体用ポンプ10は、チューブ4内の医療用液体を下流側(注射針6側)に送液することで、輸液収容袋3に収容された医療用液体をチューブ4内に供給するものである。このため、医療用液体用ポンプ10は、医療用液体流量演算装置11と、ポンプ部12と、流量制御部13と、を備える。
【0028】
医療用液体流量演算装置11は、チューブ4内を流れる医療用液体の流量を求めるものであり、気泡発生装置14と、気泡検出装置15と、流量演算部16と、を備える。
【0029】
気泡発生装置14は、チューブ4内を流れる医療用液体に微小気泡を発生させる超音波発生装置である。気泡発生装置14は、流量演算部16の制御により超音波を発生するものであり、チューブ4の外側を挟み込むようにチューブ4に直接的に取り付けられている。そして、気泡発生装置14が超音波を発生すると、チューブ4内を流れる医療用液体に超音波が照射され、チューブ4内を流れる医療用液体にキャビテーションが発生する。これによりチューブ4内を流れる医療用液体に微小気泡が発生する。
【0030】
ここで、キャビテーションにより発生した微小気泡は、もともと医療用液体に溶け込まれていた気体が気泡化したものであるため、暫くすると医療用液体に再溶融される。これは、医療用液体に微小気泡を残留させない観点から好ましいことである。一方、後述するように、この微小気泡を気泡検出装置15で検出するため、気泡検出装置15に至るまでは微小気泡が完全に再溶融しない方が良い。そこで、気泡発生装置14が発生させた微小気泡が気泡検出装置15の検出位置まで残留するように、気泡発生装置14の出力や周波数を適宜調整することが好ましい。
【0031】
気泡検出装置15は、気泡発生装置14の下流側に配置されて、チューブ4内の微小気泡を検出する超音波受発信装置である。気泡検出装置15は、超音波送信部15aと、超音波受信部15bと、を備える。
【0032】
超音波送信部15aは、チューブ4内の医療用液体に超音波を送信する装置である。超音波受信部15bは、超音波送信部15aから送信されてチューブ4内の医療用液体を伝搬した超音波を受信する装置である。そして、超音波送信部15aと超音波受信部15bとは、チューブ4を挟んで対向する位置に配置されている。
【0033】
そして、気泡検出装置15は、超音波送信部15aが送信した超音波と超音波受信部15bが受信した超音波とを対比することで、チューブ4内の微小気泡を検出する。チューブ4内の微小気泡は、例えば、送信した超音波の波形と受信した超音波の波形とに異なる部分が生じたか否かを判断することにより検出することができる。そして、気泡検出装置15は、超音波受信部15bがチューブ4内の微小気泡を検出すると、チューブ4内の微小気泡を検出したことを示す微小気泡検出情報を流量演算部16に送信する。
【0034】
流量演算部16は、気泡発生装置14が微小気泡を発生させた時刻t1と、気泡検出装置15が微小気泡を検出した時刻t2と、に基づいて、チューブ4内を流れる医療用液体の流量を算出する。
【0035】
詳しく説明すると、流量演算部16は、まず、気泡発生装置14による微小気泡の発生位置から気泡検出装置15による微小気泡の検出位置までの距離Lを取得する。ここで、気泡発生装置14による微小気泡の発生位置は、チューブ4に対する気泡発生装置14の取付位置であり、気泡検出装置15による微小気泡の検出位置は、チューブ4の超音波送信部15aと超音波受信部15bとに挟まれた位置である。このように、気泡発生装置14による微小気泡の発生位置及び気泡検出装置15による微小気泡の検出位置は、気泡発生装置14及び気泡検出装置15の配置により決まる。このため、気泡発生装置14及び気泡検出装置15の配置が決まっている場合は、予め距離Lを登録しておいてもよく、気泡発生装置14及び気泡検出装置15の配置が任意に設定できる場合は、操作者が距離Lを計測して適宜入力してもよい。
【0036】
次に、流量演算部16は、気泡発生装置14が微小気泡を発生させた時刻t1と、気泡検出装置15が微小気泡を検出した時刻t2と、を検出する。なお、気泡発生装置14が微小気泡を発生させた厳密な時刻及び気泡検出装置15が微小気泡を検出した厳密な時刻の検出は難しい。このため、流量演算部16が気泡発生装置14に超音波を発生させた(指令を出した)時刻を、気泡発生装置14が微小気泡を発生させた時刻t1とし、流量演算部16が気泡検出装置15から微小気泡検出情報を受信した時刻を、気泡検出装置15が微小気泡を検出した時刻t2としてもよい。
【0037】
次に、流量演算部16は、気泡発生装置14による微小気泡の発生位置から気泡検出装置15による微小気泡の検出位置までの距離Lを、気泡発生装置14が微小気泡を発生させた時刻t1から超音波受信部15bが微小気泡を検出した時刻t2までの時間(t2−t1)で割ることで、チューブ4内を流れる医療用液体の流速を求める。
【0038】
次に、流量演算部16は、求めた医療用液体の流速にチューブ4の内断面積を掛け合わせることで、チューブ4内を流れる医療用液体の流量を求める。
【0039】
そして、流量演算部16は、チューブ4内を流れる医療用液体の流量を求めると、この求めた流量を流量制御部13に送信する。
【0040】
ポンプ部12は、チューブ4内の医療用液体を下流側(注射針6側)に送液するチューブポンプである。ポンプ部12は、チューブ4内の医療用液体を下流側に送液することで、チューブ4内の医療用液体を注射針6から患者の静脈に供給するとともに、輸液収容袋3に収容された医療用液体をチューブ4内に供給する。なお、ポンプ部12としては、公知の様々なチューブポンプを採用することができる。
【0041】
流量制御部13は、ポンプ部12により供給される医療用液体の流量を制御する制御部である。医療用液体用ポンプ10は、輸液の目的等によって医療用液体の流量を設定することが可能となっている。そこで、流量制御部13は、ポンプ部12により供給される医療用液体の流量が、医療用液体用ポンプ10に設定された流量となるように、ポンプ部12を駆動制御する。ここで、ポンプ部12により供給される医療用液体の実際の流量は、流量演算部16が求めた医療用液体の流量となる。そこで、流量制御部13は、流量演算部16が求めた医療用液体の流量に基づいて、ポンプ部12により供給される医療用液体の流量を制御する。つまり、流量制御部13は、流量演算部16が求めた医療用液体の流量が、医療用液体用ポンプ10に設定された流量となるように、ポンプ部12を駆動制御する。
【0042】
このように、本実施形態によれば、気泡発生装置14によりチューブ4内を流れる医療用液体に微小気泡を発生させると、この微小気泡は医療用液体と略同速度でチューブ内を流れる。このため、気泡発生装置14により発生させた微小気泡を気泡検出装置15が検出することで、高精度に医療用液体の流量を求めることができる。
【0043】
この場合、気泡発生装置14による超音波の発生により医療用液体をキャビテーションさせることで、外部から医療用液体に気泡を混入させなくても、チューブ4内の医療用液体に微小気泡を発生させることができる。しかも、キャビテーションにより発生した微小気泡は、もともと医療用液体に溶け込まれていた気体が気泡化したものであるため、暫くすると医療用液体に再溶解される。このため、医療用液体に微小気泡が残留するのを防止することができる。
【0044】
また、気泡検出装置15により微小気泡を検出することで、チューブ4内の微小気泡をチューブ4の外部において検出することができる。
【0045】
また、気泡発生装置14が微小気泡を発生させた時刻t1と気泡検出装置15が微小気泡を検出した時刻t2とに基づいてチューブ4内を流れる医療用液体の流量を算出する流量演算部16を設けることで、医療用液体の流量を簡易かつ高精度に求めることができる。
【0046】
しかも、医療用液体流量演算装置11を備えることで、高精度に医療用液体の流量を求めることができるため、流量制御部13は、チューブ4内に医療用液体を供給するポンプ部12に対して高精度な流量制御を行うことができる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、基本的に第1の実施形態と同様であり、医療用液体用ポンプの構成のみ第1の実施形態と相違する。このため、以下の説明では、第1の実施形態と相違する事項のみを説明し、第1の実施形態と同様の説明を省略する。
【0048】
図2は、第2の実施形態に係る医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプを含む輸液装置を示す概念図である。図2に示すように、第2の実施形態の医療用液体用ポンプ20は、第1の実施形態の医療用液体流量演算装置11に対応する医療用液体流用演算装置21と、第1の実施形態と同様のポンプ部12及び流量制御部13と、を備える。
【0049】
医療用液体流用演算装置21は、チューブ4内を流れる医療用液体の流量を求めるものであり、第1の実施形態と同様の気泡発生装置14と、第1の実施形態の気泡検出装置15に対応する第一気泡検出装置25及び第二気泡検出装置26と、第1の実施形態の流量演算部16に対応する流量演算部27と、を備える。
【0050】
第一気泡検出装置25は、気泡発生装置14の下流側に配置されて、チューブ4内の微小気泡を検出する気泡検出装置である。第一気泡検出装置25は、第一超音波送信部25aと、第一超音波受信部25bと、を備える。
【0051】
第一超音波送信部25aは、チューブ4内の医療用液体に超音波を送信する装置である。第一超音波受信部25bは、第一超音波送信部25aから送信されてチューブ4内の医療用液体を伝搬した超音波を受信する装置である。第一超音波送信部25aと第一超音波受信部25bとは、チューブ4を挟んで対向する位置に配置されている。
【0052】
そして、第一気泡検出装置25は、第一超音波送信部25aが送信した超音波と第一超音波受信部25bが受信した超音波とを対比することで、チューブ4内の微小気泡を検出する。チューブ4内の微小気泡は、例えば、送信した超音波の波形と受信した超音波の波形とに異なる部分が生じたか否かを判断することにより検出することができる。そして、第二気泡検出装置26は、チューブ4内の微小気泡を検出すると、チューブ4内の微小気泡を検出したことを示す第一微小気泡検出情報を流量演算部27に送信する。
【0053】
第二気泡検出装置26は、第一気泡検出装置25の下流側に配置されて、チューブ4内の微小気泡を検出する気泡検出装置である。第二気泡検出装置26は、第二超音波送信部26aと、第二超音波受信部26bと、を備える。
【0054】
第二超音波送信部26aは、チューブ4内の医療用液体に超音波を送信する装置である。第二超音波受信部26bは、第二超音波送信部26aから送信されてチューブ4内の医療用液体を伝搬した超音波を受信する装置である。第二超音波送信部26aと第二超音波受信部26bとは、チューブ4を挟んで対向する位置に配置されている。
【0055】
そして、第二気泡検出装置26は、第二超音波送信部26aが送信した超音波と第二超音波受信部26bが受信した超音波とを対比することで、チューブ4内の微小気泡を検出する。チューブ4内の微小気泡は、例えば、送信した超音波の波形と受信した超音波の波形とに異なる部分が生じたか否かを判断することにより検出することができる。そして、第二気泡検出装置26は、チューブ4内の微小気泡を検出すると、チューブ4内の微小気泡を検出したことを示す第二微小気泡検出情報を流量演算部27に送信する。
【0056】
ここで、気泡発生装置14により微小気泡を発生させた直後は、医療用液体における微小気泡の位置が安定しない場合が考えられる。そこで、流量演算部27は、第一気泡検出装置25が微小気泡を発生させた時刻t1と、第二気泡検出装置26が微小気泡を検出した時刻t2と、に基づいて、チューブ4内を流れる医療用液体の流量を算出する。
【0057】
詳しく説明すると、流量演算部27は、まず、第一気泡検出装置25による微小気泡の検出位置から第二気泡検出装置26による微小気泡の検出位置までの距離Lを取得する。ここで、第一気泡検出装置25による微小気泡の検出位置は、チューブ4の第一超音波送信部25aと第一超音波受信部25bとに挟まれた位置であり、第二気泡検出装置26による微小気泡の検出位置は、チューブ4の第二超音波送信部26aと第二超音波受信部26bとに挟まれた位置である。このように、第一気泡検出装置25による微小気泡の検出位置及び第二気泡検出装置26による微小気泡の検出位置は、第一気泡検出装置25及び第二気泡検出装置26の配置により決まる。このため、第一気泡検出装置25及び第二気泡検出装置26の配置が決まっている場合は、予め距離Lを登録しておいてもよく、第一気泡検出装置25及び第二気泡検出装置26の配置が任意に設定できる場合は、操作者が距離Lを計測して適宜入力してもよい。
【0058】
次に、流量演算部27は、第一気泡検出装置25が微小気泡を検出した時刻t1と、第二気泡検出装置26が微小気泡を検出した時刻t2と、を検出する。なお、第一気泡検出装置25及び第二気泡検出装置26が微小気泡を検出した厳密な時刻の検出は難しい。このため、流量演算部16が第一気泡検出装置25及び第二気泡検出装置26から微小気泡検出情報を受信した時刻を、それぞれ第一気泡検出装置25及び第二気泡検出装置26が微小気泡を検出した時刻t1及び時刻t2としてもよい。
【0059】
次に、流量演算部27は、第一気泡検出装置25による微小気泡の検出位置から第二気泡検出装置26による微小気泡の検出位置までの距離Lを、第一気泡検出装置25が微小気泡を検出した時刻t1から第二気泡検出装置26が微小気泡を検出した時刻t2までの時間(t2−t1)で割ることで、チューブ4内を流れる医療用液体の流速を求める。
【0060】
次に、流量演算部27は、求めた医療用液体の流速にチューブ4の内断面積を掛け合わせることで、チューブ4内を流れる医療用液体の流量を求める。
【0061】
そして、流量演算部27は、チューブ4内を流れる医療用液体の流量を求めると、この求めた流量を流量制御部13に送信する。
【0062】
このように、本実施形態によれば、気泡発生装置14により微小気泡を発生させた直後は医療用液体における微小気泡の位置が安定しないが、気泡発生装置14の下流側に第一気泡検出装置25と第二気泡検出装置26とが設けられているため、気泡発生装置14により発生された微小気泡は、第一気泡検出装置25による微小気泡の検出位置及び第一気泡検出装置25による微小気泡の検出位置を、医療用液体における位置が安定した状態で通過する。このため、第一気泡検出装置25が微小気泡を検出した時刻t1と第二気泡検出装置26が微小気泡を検出した時刻t2とに基づいてチューブ4内を流れる医療用液体の流量を求めることで、より高精度に医療用液体の流量を求めることができる。
【0063】
また、第一気泡検出装置25が微小気泡を検出した時刻t1と第二気泡検出装置26が微小気泡を検出した時刻t2とに基づいてチューブ4内を流れる医療用液体の流量を算出する流量演算部27を設けることで、医療用液体の流量を簡易かつ高精度に求めることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、基本的に第2の実施形態と同様であり、医療用液体用ポンプの構成のみ第2の実施形態と相違する。このため、以下の説明では、第2の実施形態と相違する事項のみを説明し、第2の実施形態と同様の説明を省略する。
【0065】
図3は、第3の実施形態に係る医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプを含む輸液装置を示す概念図である。図3に示すように、第3の実施形態の医療用液体用ポンプ30は、第2の実施形態の医療用液体流用演算装置21に対応する医療用液体流用演算装置31と、第2の実施形態と同様のポンプ部12及び流量制御部13と、を備える。
【0066】
医療用液体流用演算装置31は、第2の実施形態と同様の第一気泡検出装置25、第二気泡検出装置26及び流量演算部27を備えるが、第2の実施形態の気泡発生装置14に対応する構成は備えていない。つまり、第3の実施形態では、超音波発生装置により発生した微小気泡に基づいて医療料液体の流量を求めるのではなく、元々医療用液体内に存在している微小気泡に基づいて医療用液体の流量を求めるものである。元々医療用液体内に存在している微小気泡としては、例えば、点滴筒5内における医療用液体の滴下により発生した微小気泡等が挙げられる。
【0067】
そして、流量演算部27は、第2の実施形態と同様に、第一気泡検出装置25が微小気泡を発生させた時刻t1と、第二気泡検出装置26が微小気泡を検出した時刻t2と、に基づいて、チューブ4内を流れる医療用液体の流量を算出する。
【0068】
このように、第3の実施形態によれば、医療用液体に強制的に微小気泡を発生させなくても、元々医療用液体内に存在している微小気泡を第一気泡検出装置25及び第二気泡検出装置26により検出することで、高精度に医療用液体の流量を求めることができる。
【0069】
また、第一気泡検出装置25が微小気泡を検出した時刻t1と第二気泡検出装置26が微小気泡を検出した時刻t2とに基づいてチューブ4内を流れる医療用液体の流量を算出する流量演算部27を設けることで、医療用液体の流量を簡易かつ高精度に求めることができる。
【0070】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0071】
例えば、第1〜第3の実施形態では、本発明に係る医療用液体流量演算装置及び医療用液体用ポンプを輸液装置に用いるものとして説明したが、透析装置等の血液浄化装置等に用いてもよい。
【0072】
また、第1及び第2の実施形態では、気泡発生手段として超音波を発生させる超音波発生措置を用い、医療用液体をキャビテーションさせることにより医療用液体に微小気泡を発生させるものとして説明したが、医療用液体に微小気泡を発生させる手法は、これに限定されるものではなく、公知の様々な手法を用いることができる。
【0073】
また、第1〜第3の実施形態では、気泡検出手段として超音波の受発信により微小気泡を検出する超音波受発信装置用い、チューブ内の微小気泡を検出するものとして説明したが、チューブ内の微小気泡を検出する手法は、これに限定されるものではなく、公知の様々な手法を用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1…輸液装置、2…輸液スタンド、3…輸液収容袋、4…チューブ、5…点滴筒、6…注射針、10…医療用液体用ポンプ、11…医療用液体流量演算装置(流量演算手段)、12…ポンプ部、13…流量制御部、14…気泡発生装置(気泡発生手段)、15…気泡検出装置(気泡検出手段)、15a…超音波送信部、15b…超音波受信部、16…流量演算部、20…医療用液体用ポンプ、21…医療用液体流用演算装置(流量演算手段)、25…第一気泡検出装置(第一気泡検出手段)、25a…第一超音波送信部、25b…第一超音波受信部、26…第二気泡検出装置(第二気泡検出手段)、26a…第二超音波送信部、26b…第二超音波受信部、27…流量演算部、30…医療用液体用ポンプ、31…医療用液体流用演算装置(流量演算手段)。
図1
図2
図3